JP2004072070A - 半導体発光素子の製造方法および半導体発光素子および面発光型半導体レーザ素子の製造方法および面発光型半導体レーザ素子および面発光型半導体レーザアレイおよび光送信モジュールおよび光送受信モジュールおよび光通信システム - Google Patents
半導体発光素子の製造方法および半導体発光素子および面発光型半導体レーザ素子の製造方法および面発光型半導体レーザ素子および面発光型半導体レーザアレイおよび光送信モジュールおよび光送受信モジュールおよび光通信システム Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】活性層への酸素の取り込みを抑え発光効率を低下させないようにするため、下部反射鏡の最上部の低屈折率層中に設けたGaAs層(40nmの厚さ)の成長の途中で成長中断し、一度被成長基板を別室に移動させ、被成長基板を保持していたサセプターを成長室に戻してキャリアガスであるH2ガスを供給しながらサセプターを成長温度より高い温度で加熱させ、Al系残留物を除外した。
【選択図】 図7
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体発光素子の製造方法および半導体発光素子および面発光型半導体レーザ素子の製造方法および面発光型半導体レーザ素子および面発光型半導体レーザアレイおよび光送信モジュールおよび光送受信モジュールおよび光通信システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インターネットの爆発的普及に見られるように、扱われる情報量が飛躍的に増大しており、今後さらに加速すると考えられる。このため、幹線系のみならず、各家庭やオフィスといった加入者系やLAN(Local Area Network)などのユーザに近い伝送路、さらには、各機器間や機器内の配線へも光ファイバーが導入され、光による大容量情報伝送技術が極めて重要となる。
【0003】
更に、同時により多くのデータを伝送するために複数の半導体レーザを集積させた半導体レーザアレイを用いた並列伝送も試みられている。この場合、高速動作が可能なバイポーラトランジスタ駆動回路が良く用いられており、アノードコモンとなるためp型基板を用いた半導体レーザが用いられる。
【0004】
また、安価で、距離を気にしないで、光ネットワーク,光配線の大容量化を図るためには、光源として、シリカファイバーの伝送ロスが小さく整合性の良い1.3μm帯,1.55μm帯の面発光型半導体レーザ素子(VCSEL: Vertical Cavity Surface Emitting Laser:垂直キャビティ面発光型半導体レーザ素子)が極めて有望である。面発光型半導体レーザ素子は、端面発光型レーザに比べて、低価格、低消費電力、小型、2次元集積化に向き、実際にGaAs基板上に形成できる0.85μm帯では、すでに、高速LANである1Gbit/sのイーサネットなどで実用化されている。
【0005】
面発光型半導体レーザ素子では、電流注入を効率良く行うために、AlとAsを主成分とした被選択酸化層の一部を選択的に酸化したAl酸化膜による電流狭窄が行われる。この電流狭窄層は、その目的から、p側領域の活性層に近い位置に設けられる。具体的には、電流狭窄層は、AlGaAs系材料を用い、低屈折率層と高屈折率層を周期的に積層してなる多層膜反射鏡の最も活性層に近い低屈折率層に形成する場合が多い。電流狭窄層を活性層に近づけて形成することで、電流の広がりを抑えることができ、大気に触れない微小領域に効率良くキャリアを閉じ込めることができる。さらに酸化してAl酸化膜とすることで、屈折率が小さくなり、凸レンズの効果でキャリアの閉じ込められた微小領域に効率良く光を閉じ込めることができ、極めて効率が良くなり、しきい値電流を低減することができる。また、容易に電流狭窄構造を形成できることから、製造コストを低減できて、最近は良く用いられている。
【0006】
1.3μm帯ではInP基板上の材料系が一般的であり、端面発光型レーザでは実績がある。しかし、この従来の長波長帯半導体レーザでは、環境温度が室温から80℃になると動作電流が3倍にも増加する大きな欠点を持っている。また、面発光型半導体レーザ素子においては反射鏡に適した材料がないため高性能化は困難であり、実用レベルの特性が得られていないのが現状である。
【0007】
このため、InP基板上の活性層とGaAs基板上のAlGaAs/GaAs反射鏡とを直接接合で貼り合わせた構造により、現状での最高性能が得られている(文献「V. Jayaraman, J.C. Geske, M.H. MacDougal F.H. Peters, T.D. Lowes, and T.T. Char, Electron. Lett., 34, (14), pp. 1405−1406, 1998.」を参照)。
【0008】
しかし、この方法は、コスト上昇を避けられないので、量産性の点で問題があると考えられる。そこで最近、GaAs基板上に1.3μm帯を形成できる材料系が注目され、(Ga)InAs量子ドット、GaAsSbやGaInNAs(例えば、特開平6−37355号を参照)が研究されている。この中でも、GaInNAsは、レーザ特性の温度依存性を極めて小さくすることができる新規な材料として注目されている。
【0009】
GaAs基板上のGaInNAs系半導体レーザは、窒素添加によりバンドギャップが小さくなるので、GaAs基板上に1.3μm帯などの長波長帯を形成できるようになる。In組成10%のとき窒素(N)組成が約3%で1.3μm帯を形成できるが、窒素(N)組成が大きいほど、しきい値電流密度が急激に上昇するという問題がある。
【0010】
図1は、本願の発明者が実験的に求めたしきい値電流密度の窒素組成依存性を示す図であり、横軸は窒素(N)組成割合(%)を、縦軸はしきい値電流密度を示している。このように、しきい値電流密度が窒素組成が大きくなるに伴って急激に上昇する理由は、GaInNAs層の結晶性が窒素組成増加に伴い劣化するためである。
【0011】
このため、いかにGaInNAsを高品質に成長するかが課題となる。このようなGaInNAsの結晶成長方法には、MOCVD法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition;有機金属化学気相成長法)やMBE法(Molecular Beam Epitaxy;分子線エピタキシャル成長法)が試みられている。
【0012】
このうち、MOCVD法は、MBE法のような高真空を必要とせず、また、MBE法では原料供給をセルの温度を変えて制御するのに対して、原料ガス流量を制御するだけでよく、また成長速度を高くすることができ、容易にスループットを上げられることから、極めて量産に適した成長方法である。実際に実用化されている0.85μm帯面発光型半導体レーザ素子の生産には、全て(ほとんどの場合)、MOCVD法が用いられている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、GaInNAs系の面発光型半導体レーザ素子に関する従来の報告では、GaInNAs系の面発光型半導体レーザ素子は、量産に適したMOCVD法で成長された例は少なく、その多くはMBE法によって成長されたものであり、十分な特性を有するものとなっていない。すなわち、MBE法により成長されたものは、p側多層膜反射鏡の抵抗が極めて高いので、p側多層膜反射鏡を電流経路としない方法を用いたりしているが、結局、動作電圧が高くなってしまうなどの問題を有していた。
【0014】
このように、従来では、量産に適したMOCVD法によるGaInNAs系面発光型半導体レーザ素子の製造方法は未だ確立されていないが、本願の発明者等によって徐々に確立されつつある。
【0015】
まず、MOCVD法によるGaInNAs系面発光型半導体レーザ素子の高性能化を阻んでいる原因について、本願の発明者等の実験結果について述べる。
【0016】
図2は、一般的なMOCVD装置の概略を示す図である。MOCVD法は、少なくとも有機金属原料を一部に用い、原料ガスの熱分解と被成長基板との表面反応により結晶成長させる気相成長方法である。MOCVD装置は、図2に示すように、原料ガスが供給される原料ガス供給部と、被成長基板を加熱するための加熱手段(図示せず)と、加熱部(加熱体)と、反応済みのガスを排気するための排気部(排気ポンプなど)とを有している。ここで、空気が成長室(反応室)に入らないように、基板は、通常、基板出し入れ口から入れ、排気部による真空引き後に成長室(反応室)に搬送される。また、原料ガス供給部は、通常、III族ガスラインとV族ガスラインとに分けられている。そして、図2の例では、反応室入り口手前でIII族原料とV族原料とを合流させるように構成されている。
【0017】
また、成長室(反応室)の圧力は50Torr〜100Torr程度の減圧がよく用いられる。その原料には、III族原料として、Ga:TMG(トリメチルガリウム),TEG(トリエチルガリウム),Al:TMA(トリメチルアルミニウム),In:TMI(トリメチルインジウム)などの有機金属が用いられる。また、V族原料には、AsH3(アルシン),TBA(ターシャルブチルアルシン),PH3(フォスフィン),TBP(ターシャルブチルアルシン)などの水素化物ガスや有機化合物が一般に用いられる。
【0018】
また、キャリアガスには、水素ガス(H2)が通常用いられ、キャリアガスは、通常、水素精製器を通して不純物を除去して供給している。そして、窒素を含んだ半導体層成長のための窒素原料には、DMHy(ジメチルヒドラジン),MMHy(モノメチルヒドラジン)等の有機化合物を用いることができる。なお、原料はこれに限られるものではない。有機金属や有機窒素化合物のような液体または固体の原料は、バブラーに入れられてキャリアガスを通してバブリングすることで供給される。また、水素化物はガスシリンダーに入れられ供給される。図2では、TMG,TMA,TMI,DMHyがバブラー(液体,個体原料バブラー)を用い、AsH3とドーパントガス(図2では1種類のみ示している)がガスシリンダーを用いている。
【0019】
原料ガスの経路はバルブで切り変え、供給量をMFCマスフローコントローラー等で制御することで、必要な材料,組成を成長させることができる。一般に、III族ガスライン,V族ガスラインごとに反応室にガスを供給するメインラインと、排気ポンプにガスを供給するベントラインとを有し、さらに、原料ラインの他にダミーライン(図中、ダミーライン1,2を参照)を設けて、それぞれ、メインラインまたはベントラインのどちらか一方に合流するようにバルブを切り替え、メインラインとベントラインとの圧力差をなくすことで、ガス流が極力乱れないようにしている。なお、メインライン,ベントライン,ダミーラインもキャリアガスが供給されている。
【0020】
複数の半導体層を有する半導体発光素子等を成長する場合、各層ごとに必要な原料をメインライン側に供給し、キャリアガスを供給するダミーラインをベント側に供給し、結晶成長が行われる。成長の厚さは原料ガスを供給する時間で制御する。これにより必要な構造を成長できるので、MOCVD法は、スループットが良く、量産に向いた成長方法となっている。
【0021】
図3には、このようなMOCVD装置で作製したGaInNAs量子井戸層(窒素を含んだ半導体層)とGaAsバリア層とからなるGaInNAs/GaAs2重量子井戸構造(活性層)の室温フォトルミネッセンススペクトルが示されている。図4は図3の測定に用いた試料構造を示す図である。この試料構造は、GaAs基板201上に、下部クラッド層202、中間層203、窒素を含む活性層204、中間層203、上部クラッド層205が順次積層されたものとなっている。
【0022】
図3において、符号AはAlGaAsクラッド層上にGaAs中間層をはさんで2重量子井戸構造を形成した試料を示すものであり、符号BはGaInPクラッド層上にGaAs中間層をはさんで2重量子井戸構造を連続的に形成した試料を示すものである。
【0023】
図3に示すように、試料Aでは試料Bに比べてフォトルミネッセンス強度が半分以下に低下している。このことから、1台のMOCVD装置を用いて、AlGaAs等のAlを構成元素として含む半導体層上に、GaInNAs等の窒素を含む活性層を連続的に形成すると、活性層の発光強度が劣化してしまうという問題が生じることがわかる。このため、AlGaAsクラッド層上に形成したGaInNAs系レーザの閾電流密度は、GaInPクラッド層上に形成した場合に比べて数倍高くなってしまう。
【0024】
特に、例えば面発光レーザアレイを作製するために、半導体基板上にp型半導体層を形成した後に窒素を含む活性層を形成する構造とし、p型半導体層中にAlAsを主成分とする被選択酸化層を配置し、配置された被選択酸化層の一部を選択的に酸化して電流狭窄構造を形成する場合には、窒素を含む活性層とAlAs系材料からなる被選択酸化層とが接近した構造となり、上記の結果は極めて問題である(すなわち、活性層の発光強度が劣化してしまうという問題が生じる)。
【0025】
本発明は、p型半導体層を形成した後に窒素を含む活性層を形成する構造とし、p型半導体層中にAlAsを主成分とする被選択酸化層を配置し、配置された被選択酸化層の一部を選択的に酸化して電流狭窄構造を形成する場合にも、活性層の発光強度が劣化してしまうという問題が生じることを防止することの可能な半導体発光素子の製造方法および半導体発光素子および面発光型半導体レーザ素子の製造方法および面発光型半導体レーザ素子および面発光型半導体レーザアレイおよび光送信モジュールおよび光送受信モジュールおよび光通信システムを提供することを目的としている。
【0026】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有し、p型半導体層中にAlAsを主成分とする被選択酸化層を配置し、配置された被選択酸化層の一部を選択的に酸化して電流狭窄構造を形成する半導体発光素子の製造方法であって、被選択酸化層の成長後、窒素を含む活性層の成長開始までの間に、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程を設けることを特徴としている。
【0027】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の半導体発光素子の製造方法において、被選択酸化層の成長後、窒素を含む活性層の成長開始までの間に、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程は、成長を中断し、キャリアガスでガス供給ラインもしくは成長室をパージする工程であることを特徴としている。
【0028】
また、請求項3記載の発明は、請求項2記載の半導体発光素子の製造方法において、前記成長中断中に、サセプターをベーキングすることを特徴としている。
【0029】
また、請求項4記載の発明は、請求項1記載の半導体発光素子の製造方法において、被選択酸化層の成長後、窒素を含む活性層の成長開始までの間に、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程は、エッチングガスを成長室に供給する工程であることを特徴としている。
【0030】
また、請求項5記載の発明は、請求項4記載の半導体発光素子の製造方法において、前記エッチングガスは、有機系窒素化合物ガスであることを特徴としている。
【0031】
また、請求項6記載の発明は、請求項4記載の半導体発光素子の製造方法において、前記エッチングガスは、酸素(O)を含むガスであることを特徴としている。
【0032】
また、請求項7記載の発明は、請求項4記載の半導体発光素子の製造方法において、前記エッチングガスは、塩素(Cl)を含むガスであることを特徴としている。
【0033】
また、請求項8記載の発明は、窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有し、p型半導体層中にAlAsを主成分とする被選択酸化層を配置し、配置された被選択酸化層の一部を選択的に酸化して電流狭窄構造を形成し、また、被選択酸化層と窒素を含む活性層との間に、少なくとも一層のGaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層を形成する半導体発光素子の製造方法であって、被選択酸化層の成長後、前記GaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層の成長が完了するまでの間に、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程を設けることを特徴としている。
【0034】
また、請求項9記載の発明は、請求項8記載の半導体発光素子の製造方法において、被選択酸化層の成長後、前記GaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層の成長が完了するまでの間に、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程は、成長を中断し、キャリアガスでガス供給ラインもしくは成長室をパージする工程であることを特徴としている。
【0035】
また、請求項10記載の発明は、請求項8記載の半導体発光素子の製造方法において、前記成長中断中に、サセプターをベーキングすることを特徴としている。
【0036】
また、請求項11記載の発明は、請求項8記載の半導体発光素子の製造方法において、被選択酸化層の成長後、窒素を含む活性層の成長開始までの間に、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程は、エッチングガスを成長室に供給する工程であることを特徴としている。
【0037】
また、請求項12記載の発明は、請求項8記載の半導体発光素子の製造方法において、前記エッチングガスは、有機系窒素化合物ガスであることを特徴としている。
【0038】
また、請求項13記載の発明は、請求項8記載の半導体発光素子の製造方法において、前記エッチングガスは、酸素(O)を含むガスであることを特徴としている。
【0039】
また、請求項14記載の発明は、請求項8記載の半導体発光素子の製造方法において、前記エッチングガスは、塩素(Cl)を含むガスであることを特徴としている。
【0040】
また、請求項15記載の発明は、窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有し、p型半導体層中にAlAsを主成分とする被選択酸化層を配置し、配置した被選択酸化層の一部を選択的に酸化して電流狭窄構造を形成する半導体発光素子において、窒素を含む活性層中の酸素濃度は1×1018cm−3以下であることを特徴としている。
【0041】
また、請求項16記載の発明は、窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有し、p型半導体層中にAlAsを主成分とする被選択酸化層を配置し、配置した被選択酸化層の一部を選択的に酸化して電流狭窄構造を形成する半導体発光素子において、窒素を含む活性層中のAl濃度は2×1019cm−3以下であることを特徴としている。
【0042】
また、請求項17記載の発明は、窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有し、p型半導体層中に配置されたAlAsを主成分とする被選択酸化層の一部が選択的に酸化されて電流狭窄構造が形成されている半導体発光素子であって、前記被選択酸化層と窒素を含む活性層との間に、少なくとも一層のGaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層が形成されていることを特徴としている。
【0043】
また、請求項18記載の発明は、窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有し、p型半導体層中に配置されたAlAsを主成分とする被選択酸化層の一部が選択的に酸化されて電流狭窄構造が形成されている半導体発光素子において、前記被選択酸化層と窒素を含む活性層との間に、活性層よりもバンドギャップが大きくかつ窒素を含む半導体層が形成されていることを特徴としている。
【0044】
また、請求項19記載の発明は、請求項18記載の半導体発光素子において、活性層よりもバンドギャップが大きくかつ窒素を含む半導体層は、GaNAs,GaInNAs,GaInNP,GaNPAs,GaInNPAsのいずれかであることを特徴としている。
【0045】
また、請求項20記載の発明は、請求項18記載の半導体発光素子において、活性層よりもバンドギャップが大きくかつ窒素を含む半導体層と窒素を含む活性層との間に、その両者よりもバンドギャップエネルギーが大きいGaAs,GaInAs,GaAsP,GaInPAs,GaInPのいずれか1つからなる層が形成されていることを特徴としている。
【0046】
また、請求項21記載の発明は、窒素を含む活性層を有する活性領域と、レーザ光を得るために活性層の上部および下部に設けられた上部反射鏡および下部反射鏡とを含む共振器構造を備え、窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有している面発光型半導体レーザ素子の製造方法であって、前記下部反射鏡は、屈折率が周期的に変化し入射光を光波干渉によって反射する半導体分布ブラッグ反射鏡を含み、該半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が小さい層はAlxGa1− xAs(0<x≦1)からなり、また、該半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が大きい層はAlyGa1− yAs(0≦y<x≦1)からなり、前記p型半導体層の一部を選択的に酸化して電流狭窄を行うためのAlAsを主成分とする被選択酸化層を有し、被選択酸化層と窒素を含む活性層との間に、少なくとも1層のGaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層を形成し、前記被選択酸化層の成長後、前記GaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層の成長が完了するまでの間に、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程を設けることを特徴としている。
【0047】
また、請求項22記載の発明は、請求項21記載の面発光型半導体レーザ素子の製造方法において、被選択酸化層の成長後、窒素を含む活性層の成長開始までの間に、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程は、成長を中断し、キャリアガスでガス供給ラインもしくは成長室をパージする工程であることを特徴としている。
【0048】
また、請求項23記載の発明は、請求項22記載の面発光型半導体レーザ素子の製造方法において、前記成長中断中に、サセプターをベーキングすること特徴としている。
【0049】
また、請求項24記載の発明は、窒素を含む活性層を有する活性領域と、レーザ光を得るために活性層の上部および下部に設けられた上部反射鏡および下部反射鏡とを含む共振器構造を備え、窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有している面発光型半導体レーザ素子であって、前記下部反射鏡は、屈折率が周期的に変化し入射光を光波干渉によって反射する半導体分布ブラッグ反射鏡を含み、該半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が小さい層はAlxGa1− xAs(0<x≦1)からなり、また、該半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が大きい層はAlyGa1− yAs(0≦y<x≦1)からなり、前記p型半導体層の一部を選択的に酸化して電流狭窄を行うためのAlAsを主成分とする被選択酸化層を有し、被選択酸化層と窒素を含む活性層との間に、少なくとも1層のGaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層が形成されていることを特徴としている。
【0050】
また、請求項25記載の発明は、窒素を含む活性層を有する活性領域と、レーザ光を得るために活性層の上部および下部に設けられた上部反射鏡および下部反射鏡とを含む共振器構造を備え、窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有している面発光型半導体レーザ素子であって、前記下部反射鏡は、屈折率が周期的に変化し入射光を光波干渉によって反射する半導体分布ブラッグ反射鏡を含み、該半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が小さい層はAlxGa1− xAs(0<x≦1)からなり、また、該半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が大きい層はAlyGa1− yAs(0≦y<x≦1)からなり、前記p型半導体層の一部を選択的に酸化して電流狭窄を行うためのAlAsを主成分とする被選択酸化層を有し、被選択酸化層と窒素を含む活性層との間に、活性層よりもバンドギャップが大きくかつ窒素を含む半導体層が形成されていることを特徴としている。
【0051】
また、請求項26記載の発明は、請求項25記載の面発光型半導体レーザ素子において、活性層よりもバンドギャップが大きくかつ窒素を含む半導体層は、GaNAs,GaInNAs,GaInNP,GaNPAs,GaInNPAsのいずれかであることを特徴としている。
【0052】
また、請求項27記載の発明は、請求項25記載の面発光型半導体レーザ素子において、活性層よりもバンドギャップが大きくかつ窒素を含む半導体層と窒素を含む活性層との間に、その両者よりもバンドギャップエネルギーが大きいGaAs,GaInAs,GaAsP,GaInPAs,GaInPのいずれか1つからなる層が形成されていることを特徴としている。
【0053】
また、請求項28記載の発明は、請求項24乃至請求項27のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザ素子が複数個配列されて構成されている面発光型半導体レーザアレイである。
【0054】
また、請求項29記載の発明は、請求項24乃至請求項27のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザ素子、または、請求項28記載の面発光型半導体レーザアレイが光源として用いられている光送信モジュールである。
【0055】
また、請求項30記載の発明は、請求項24乃至請求項27のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザ素子、または、請求項28記載の面発光型半導体レーザアレイが光源として用いられている光送受信モジュールである。
【0056】
また、請求項31記載の発明は、請求項24乃至請求項27のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザ素子、または、請求項28記載の面発光型半導体レーザアレイが光源として用いられている光通信システムである。
【0057】
また、請求項32記載の発明は、基板と活性層との間にAlを含む半導体層が設けられる半導体発光素子の製造方法であって、前記Alを含む半導体層を成長した後であって、窒素を含む活性層の成長を開始する前に、エッチングガスとして臭素を含んだガスを成長室内に供給し、成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程を設けたことを特徴としている。
【0058】
また、請求項33記載の発明は、基板と活性層との間にAlを含む半導体層が設けられる半導体発光素子の製造方法であって、前記Alを含む半導体層を成長した後であって、窒素を含む活性層の成長を開始する前に成長を一度中断し、再成長する前にエッチングガスとして臭素を含んだガスを成長室内に供給し、被成長基板の表面の一部を除去する工程を設けたことを特徴としている。
【0059】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0060】
前述したように、1台のMOCVD装置を用いて、AlGaAs等のAlを構成元素として含む半導体層上に、GaInNAs等の窒素を含む活性層を連続的に形成すると、活性層の発光強度が劣化してしまうという問題が生じ、このため、AlGaAsクラッド層上に形成したGaInNAs系レーザの閾電流密度は、GaInPクラッド層上に形成した場合に比べて数倍高くなってしまう。
【0061】
特に、例えば面発光レーザアレイを作製するために、半導体基板上にp型半導体層を形成した後に窒素を含む活性層を形成する構造とし、p型半導体層中にAlAsを主成分とする被選択酸化層を配置し、配置された被選択酸化層の一部を選択的に酸化して電流狭窄構造を形成する場合には、窒素を含む活性層とAlAs系材料からなる被選択酸化層とが接近した構造となり、上記の結果は極めて問題である(すなわち、活性層の発光強度が劣化してしまうという問題が生じる)。
【0062】
そこで、本願の発明者は、この問題の原因解明について検討した。
【0063】
図5は、図4に示した半導体発光素子の一例として、クラッド層202をAlGaAsとし、中間層203をGaAsとし、活性層204をGaInNAs/GaAs2重量子井戸構造として構成した素子を1台のエピタキシャル成長装置(MOCVD)を用いて形成したときの、窒素(N)濃度と酸素(O)濃度の深さ方向分布を示す図である。なお、この測定はSIMSによって行った。次表(表1)に測定条件を示す。
【0064】
【表1】
【0065】
図5において、GaInNAs/GaAs2重量子井戸構造に対応して、活性層204中に2つの窒素ピークが見られる。そして、活性層204において、酸素のピークが検出されている。しかし、NとAlを含まない中間層203における酸素濃度は、活性層204の酸素濃度よりも約1桁低い濃度となっている。
【0066】
一方、クラッド層202をGaInPとし、中間層203をGaAsとし、活性層204をGaInNAs/GaAs2重量子井戸構造として構成した半導体発光素子について、酸素濃度の深さ方向分布を測定した場合には、活性層204中の酸素濃度はバックグラウンドレベルであった。
【0067】
すなわち、窒素化合物原料と有機金属Al原料を用いて、1台のエピタキシャル成長装置により、基板(201)と窒素を含む活性層(204)との間にAlを含む半導体層(202)を設けた半導体発光素子を連続的に結晶成長すると、窒素を含む活性層(204)中に酸素が取りこまれることが本願の発明者の実験により明らかとなった。活性層(204)に取りこまれた酸素は非発光再結合準位を形成するため、活性層(204)の発光効率を低下させてしまう。この活性層(204)に取りこまれた酸素が、基板(201)と窒素を含む活性層(204)との間にAlを含む半導体層(202)を設けた半導体発光素子における発光効率を低下させる原因であることが新たに判明した。この酸素の起源は、装置内に残留している酸素を含んだ物質、または、窒素化合物原料中に不純物として含まれる酸素を含んだ物質と考えられる。
【0068】
次に、酸素の取りこまれる原因について検討した。図6は、図5と同じ試料のAl濃度の深さ方向分布を示す図である。なお、測定はSIMSによって行った。また、次表(表2)に測定条件を示す。
【0069】
【表2】
【0070】
図6から、本来Al原料を導入していない活性層204において、Alが検出されている。しかし、Alを含む半導体層(クラッド層)202,205に隣接した中間層(GaAs層)203においては、Al濃度は活性層204よりも約1桁低い濃度となっている。これは、活性層204中のAlがAlを含む半導体層(クラッド層)202,205から拡散,置換して混入したものではないことを示している。
【0071】
一方、GaInPのようにAlを含まない半導体層上に窒素を含む活性層を成長した場合には、活性層中にAlは検出されなかった。
【0072】
従って、図6において活性層204中に検出されたAlは、成長室内またはガス供給ラインに残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つが、窒素化合物原料または窒素化合物原料中の不純物(水分等)と結合して活性層204中に取りこまれたものである。すなわち、窒素化合物原料と有機金属Al原料を用いて、1台のエピタキシャル成長装置により、基板と窒素を含む活性層との間にAlを含む半導体層を設けた半導体発光素子を連続的に結晶成長すると、窒素を含む活性層中に自然にAlが取りこまてしまうことが本願の発明者により新たにわかった。
【0073】
図5に示した同じ素子における、窒素と酸素濃度の深さ方向分布と比較すると、2重量子井戸活性層204中の2つの酸素ピークプロファイルは、窒素濃度のピークプロファイルと対応しておらず、図6のAl濃度プロファイルと対応している。このことから、GaInNAs井戸層中の酸素不純物は、窒素原料と共に取りこまれるというよりも、むしろ井戸層中に取りこまれたAlと結合して一緒に取りこまれていることが明らかとなった。すなわち、成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つが窒素化合物原料と接触すると、Alと窒素化合物原料中に含まれる水分またはガスラインや反応室中に残留する水分などの酸素を含んだ物質とが結合して、活性層204中にAlと酸素が取りこまれる。この活性層204に取り込まれた酸素が活性層204の発光効率を低下させることが本願の発明者の実験により初めて明らかとなった。
【0074】
通常のMBE法で作製した場合には、基板と窒素を含む活性層との間にAlを含む半導体層を設けた半導体発光素子における発光効率低下については報告されていない。
【0075】
これは、MBE法は超減圧(高真空中)で結晶成長が行われるのに対して、MOCVD法は通常数10Torrから大気圧程度と、MBE法に比べて反応室の圧力が高いため、平均自由行程が圧倒的に短く、供給された原料やキャリアガス等が反応室等でAl系残留物と接触,反応するためと考えられる。
【0076】
よって、MOCVD法のように、反応室やガスラインの圧力が高い成長方法の場合、これを改善するためには、少なくとも装置内に残留したAlが窒素を含む活性層成長時に酸素とともに膜中に取りこまれないように、Al系残留物を除去する工程を設けることが必要であることがわかった。
【0077】
本発明は、p型半導体層を形成した後に窒素を含む活性層を形成する構造とし、p型半導体層中にAlAsを主成分とする被選択酸化層を配置し、配置された被選択酸化層の一部を選択的に酸化して電流狭窄構造を形成する半導体発光素子を作製するときに、装置内に残留したAlが窒素を含む活性層成長時に酸素とともに膜中に取りこまれないようにすることを意図している。
【0078】
第1の実施形態
このため、本発明の第1の実施形態の半導体発光素子の製造方法は、窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有し、p型半導体層中にAlAsを主成分とする被選択酸化層を配置し、配置された被選択酸化層の一部を選択的に酸化して電流狭窄構造を形成する半導体発光素子の製造方法であって、被選択酸化層の成長後、窒素を含む活性層の成長開始までの間に、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程を設けることを特徴としている。
【0079】
上述したように、窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有し、p型半導体層中にAlAsを主成分とする被選択酸化層を配置し、配置された被選択酸化層の一部を選択的に酸化して電流狭窄構造を形成する半導体発光素子の製造方法では、Al系残留物が非発光再結合の原因となる酸素を活性層(窒素を含んだ活性層)に取りこむ原因となっているので、この第1の実施形態のように、Alを含んだ層を形成後、窒素を含んだ活性層の成長の前までに、反応室側壁,加熱帯,基板を保持する治具等に残留しているAl系残留物を除去する工程を設けることで、活性層への酸素の取り込みを抑えることができる。
【0080】
本発明の第1の実施形態の手法によって、窒素を含む活性層中のAl濃度を1×1019cm−3以下に低減することが可能となり、これにより、半導体発光素子の室温連続発振が可能となる。さらに、窒素を含む活性層中のAl濃度を2×1018cm−3以下に低減するときには、Alを含まない半導体層上に形成した場合と同等の発光特性が得られる。
【0081】
次表(表3)は、AlGaAsをクラッド層(Alを含む層)とし、GaInNAs2重量子井戸構造(窒素を含む層)を活性層としたブロードストライプレーザを試作して閾電流密度を評価した結果を示している。
【0082】
【表3】
【0083】
表3から、Alを構成元素として含む半導体層に、窒素を含む活性層を連続的に形成する構造においては、活性層中に2×1019cm−3以上のAlが含まれると、1×1018cm−3以上の酸素が取りこまれ、閾電流密度は10kA/cm2以上と著しく高い値となる。これに対し、活性層中のAl濃度を1×1019cm−3以下に低減することにより、活性層中の酸素濃度が1×1018cm−3以下に低減され、閾電流密度2〜3kA/cm2でブロードストライプレーザが発振した。ブロードストライプレーザの閾電流密度が数kA/cm2以下の活性層品質であれば、室温連続発振が可能である。従って、窒素を含む活性層中のAl濃度を2×1019cm−3以下に抑制することにより、室温連続発振可能な半導体レーザを作製することが可能となる。
【0084】
このように、本発明では、窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有し、p型半導体層中にAlAsを主成分とする被選択酸化層を配置し、配置された被選択酸化層の一部を選択的に酸化して電流狭窄構造を形成する半導体発光素子の製造方法であって、被選択酸化層の成長後、窒素を含む活性層の成長開始までの間に、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程を設けるので、窒素を含んだ活性層の成長時に酸素が取り込まれるのを低減でき、Alを含んだ半導体層の上部に窒素を含んだ活性層が形成される半導体発光素子においても、発光効率を低減させることなく半導体発光素子を結晶成長することができる。
【0085】
なお、上述した本発明の第1の実施形態の半導体発光素子の製造方法において、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程は、成長を中断し、キャリアガスでガス供給ラインもしくは成長室をパージすることによって行なうことができる。
【0086】
すなわち、上述したように、Al系残留物が非発光再結合の原因となる酸素を活性層(窒素を含んだ活性層)に取りこむ原因となっているので、Alを含んだ半導体層を成長後、窒素を含んだ活性層成長の前までに、成長を中断して、キャリアガスを供給してパージすることで、反応室側壁,加熱帯,基板を保持する治具等に残留しているAl系残留物を除去することができ、活性層への酸素の取り込みを抑えることができる。通常、MOCVDでは、キャリアガスとして水素(H2)ガスが用いられるが、窒素ガス(N2)などの不活性ガスを用いることもできる。また、成長中断しているので、この成長中断界面をSIMS分析によれば酸素(O)が観察されるであろう。
【0087】
また、上記成長中断中に、サセプターをベーキングすることもできる。
【0088】
すなわち、サセプターを加熱することで、反応室側壁,加熱帯,基板を保持する治具等に残留しているAl系残留物が蒸発,反応しやすくなるので、Al系残留物を除去する効果が高くなる。また、結晶成長はサセプターを加熱して行われるので、成長を中断して同様に加熱すれば良く、従って、成長中断中のサセプターのベーキングは容易にできる。なお、このとき、ベーキング温度は、結晶成長時の温度よりも高くするのが好ましい。また、被成長基板は、別室に移動しても良く、別室に移動せずにそのまま行っても良い。そのまま行う場合は、V族元素が成長途中の被成長基板から蒸発,脱離しないようにするために、V族原料を供給して行うのが望ましい。
【0089】
また、上述した第1の実施形態の半導体発光素子の製造方法において、被選択酸化層の成長後、窒素を含む活性層の成長開始までの間に、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去するのに、エッチングガスを成長室に供給することもできる。
【0090】
すなわち、Alを含んだ半導体層を成長後、窒素を含んだ活性層の成長の前までに、反応室側壁,加熱帯,基板を保持する治具等に残留しているAl系残留物と反応し除去することのできるガス(エッチングガス)を反応室に供給することで、活性層への酸素の取り込みを抑えることができ、発光効率の高い半導体発光素子を作製することができる。
【0091】
なお、Al系残留物と反応し除去することのできるガス(エッチングガス)としては、有機系窒素化合物ガスを用いることができる。ここで、有機系窒素化合物ガスとしては、DMHyガスが挙げられ、上述のように窒素を含んだ活性層の成長時に、有機系窒素化合物ガスの一つであるDMHyガスをDMHyシリンダーを用いて反応室に供給すると、Al系残留物と反応し、Al系残留物を除去することができる。
【0092】
このように、Alを含んだ半導体層を成長後、窒素を含んだ活性層成長の前までに、有機系窒素化合物ガスを供給すると、この有機系窒素化合物ガスは、反応室側壁,加熱帯,基板を保持する治具等に残留しているAl系残留物と反応して、Al系残留物を除去することができ、これにより、活性層への酸素の取り込みを抑えることができる。更に、エッチングガスとして、窒素を含む活性層の窒素原料と同じガスを用いると、特別にガスラインを追加する必要がないので好ましい。
【0093】
また、上記エッチングガスとして、酸素(O)を含むガスを用いることもできる。すなわち、Al系残留物と反応し除去することのできるガス(エッチングガス)として、O2,H2O等の酸素を含んだガスを用いることもできる。
【0094】
上述したように、窒素を含んだ活性層の成長時にAlとともに酸素が活性層に取りこまれることがわかっている。従って、O2,H2O等の酸素を含んだガスはAl系残留物と反応することがわかる。これによって、Alを含んだ半導体層の成長後、窒素を含んだ活性層の成長の前までに、O2,H2O等の酸素を含んだガスを供給すると、このガスは、反応室側壁,加熱帯,基板を保持する治具等に残留しているAl系残留物と反応して、Al系残留物を除去することができ、これにより、活性層への酸素の取り込みを抑えることができる。図6のSIMSプロファイルを見るとわかるように、窒素を含んだ活性層の1層目に多くのAlが取りこまれていて、2層目にはほとんど取り込まれないことから、ごくわずかの酸素を含んだガスを供給するだけでAl系残留物を除去することができる。もちろん、過剰に供給した酸素を含んだガスは、活性層の成長前に除去する必要があるので、あまり過剰にならない適量を供給することが望ましい(逆に酸素を含んだガスの除外が困難になるからである)。
【0095】
また、上記エッチングガスとして、塩素(Cl)を含むガスを用いることもできる。例えばHClのような塩素系化合物ガスは、成長室内の反応生成堆積物と反応して、エッチング除去する効果がある。従って、Alを含んだ半導体層の成長後、窒素を含んだ活性層の成長の前までに、塩素系化合物ガスを供給すると、この塩素系化合物ガスは、反応室側壁,加熱帯,基板を保持する治具等に残留しているAl系残留物と反応して、Al系残留物を除去することができ、これによって、活性層への酸素の取り込みを抑えることができる。なお、HClガスはガスシリンダーに充填して使用することができる。この場合、塩素系ガスによる装置内部の金属部分の腐食を防止するため、酸素,水分等が少ない高純度のものが好ましい。
【0096】
第2の実施形態
本発明の第2の実施形態の半導体発光素子の製造方法は、窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有し、p型半導体層中にAlAsを主成分とする被選択酸化層を配置し、配置された被選択酸化層の一部を選択的に酸化して電流狭窄構造を形成し、また、被選択酸化層と窒素を含む活性層との間に、少なくとも一層のGaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層を形成する半導体発光素子の製造方法であって、被選択酸化層の成長後、前記GaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層の成長が完了するまでの間に、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程を設けることを特徴としている。
【0097】
この第2の実施形態では、キャリアの注入されない活性領域外で成長中断してAl系残留物を除去することで、残留Alに起因する非発光再結合や、Al系残留物除去工程に起因する非発光再結合により、発光効率が低下することを抑制できる。
【0098】
なお、上述した本発明の第2の実施形態の半導体発光素子の製造方法において、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程は、成長を中断し、キャリアガスで、ガス供給ラインもしくは成長室をパージすることによって行なうことができる。
【0099】
すなわち、前述したように、Al系残留物が非発光再結合の原因となる酸素を活性層(窒素を含んだ活性層)に取りこむ原因となっているので、Alを含んだ半導体層を成長後、窒素を含んだ活性層成長の前までに、成長を中断して、キャリアガスを供給してパージすることで、反応室側壁,加熱帯,基板を保持する治具等に残留しているAl系残留物を除去することができ、活性層への酸素の取り込みを抑えることができる。通常、MOCVDでは、キャリアガスとして水素(H2)ガスが用いられるが、窒素ガス(N2)などの不活性ガスを用いることもできる。また、成長中断しているので、この成長中断界面をSIMS分析によれば酸素(O)が観察されるであろう。
【0100】
また、上記成長中断中に、サセプターをベーキングすることもできる。
【0101】
すなわち、サセプターを加熱することで、反応室側壁,加熱帯,基板を保持する治具等に残留しているAl系残留物が蒸発,反応しやすくなるので、Al系残留物を除去する効果が高くなる。また、結晶成長はサセプターを加熱して行われるので、成長を中断して同様に加熱すれば良く、従って、成長中断中のサセプターのベーキングは容易にできる。なお、このとき、ベーキング温度は、結晶成長時の温度よりも高くするのが好ましい。また、被成長基板は、別室に移動しても良く、別室に移動せずにそのまま行っても良い。そのまま行う場合は、V族元素が成長途中の被成長基板から蒸発,脱離しないようにするために、V族原料を供給して行うのが望ましい。
【0102】
また、上述した第2の実施形態の半導体発光素子の製造方法において、被選択酸化層の成長後、窒素を含む活性層の成長開始までの間に、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去するのに、エッチングガスを成長室に供給することもできる。
【0103】
すなわち、Alを含んだ半導体層を成長後、窒素を含んだ活性層の成長の前までに、反応室側壁,加熱帯,基板を保持する治具等に残留しているAl系残留物と反応し除去することのできるガス(エッチングガス)を反応室に供給することで、活性層への酸素の取り込みを抑えることができ、発光効率の高い半導体発光素子を作製することができる。
【0104】
なお、Al系残留物と反応し除去することのできるガス(エッチングガス)としては、有機系窒素化合物ガスを用いることができる。ここで、有機系窒素化合物ガスとしては、DMHyガスが挙げられ、上述のように窒素を含んだ活性層の成長時に、有機系窒素化合物ガスの一つであるDMHyガスをDMHyシリンダーを用いて反応室に供給すると、Al系残留物と反応し、Al系残留物を除去することができる。
【0105】
このように、Alを含んだ半導体層を成長後、窒素を含んだ活性層成長の前までに、有機系窒素化合物ガスを供給すると、この有機系窒素化合物ガスは、反応室側壁,加熱帯,基板を保持する治具等に残留しているAl系残留物と反応して、Al系残留物を除去することができ、これにより、活性層への酸素の取り込みを抑えることができる。更に、エッチングガスとして、窒素を含む活性層の窒素原料と同じガスを用いると、特別にガスラインを追加する必要がないので好ましい。
【0106】
また、上記エッチングガスとして、酸素(O)を含むガスを用いることもできる。すなわち、Al系残留物と反応し除去することのできるガス(エッチングガス)として、O2,H2O等の酸素を含んだガスを用いることもできる。
【0107】
上述したように、窒素を含んだ活性層の成長時にAlとともに酸素が活性層に取りこまれることがわかっている。従って、O2,H2O等の酸素を含んだガスはAl系残留物と反応することがわかる。これによって、Alを含んだ半導体層の成長後、窒素を含んだ活性層の成長の前までに、O2,H2O等の酸素を含んだガスを供給すると、このガスは、反応室側壁,加熱帯,基板を保持する治具等に残留しているAl系残留物と反応して、Al系残留物を除去することができ、これにより、活性層への酸素の取り込みを抑えることができる。図6のSIMSプロファイルを見るとわかるように、窒素を含んだ活性層の1層目に多くのAlが取りこまれていて、2層目にはほとんど取り込まれないことから、ごくわずかの酸素を含んだガスを供給するだけでAl系残留物を除去することができる。もちろん、過剰に供給した酸素を含んだガスは、活性層の成長前に除去する必要があるので、あまり過剰にならない適量を供給することが望ましい(逆に酸素を含んだガスの除外が困難になるからである)。
【0108】
また、上記エッチングガスとして、塩素(Cl)を含むガスを用いることもできる。例えばHClのような塩素系化合物ガスは、成長室内の反応生成堆積物と反応して、エッチング除去する効果がある。従って、Alを含んだ半導体層の成長後、窒素を含んだ活性層の成長の前までに、塩素系化合物ガスを供給すると、この塩素系化合物ガスは、反応室側壁,加熱帯,基板を保持する治具等に残留しているAl系残留物と反応して、Al系残留物を除去することができ、これによって、活性層への酸素の取り込みを抑えることができる。なお、HClガスはガスシリンダーに充填して使用することができる。この場合、塩素系ガスによる装置内部の金属部分の腐食を防止するため、酸素,水分等が少ない高純度のものが好ましい。
【0109】
第3の実施形態
また、本発明の第3の実施形態の半導体発光素子は、窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有し、p型半導体層中に配置されたAlAsを主成分とする被選択酸化層の一部が選択的に酸化されて電流狭窄構造が形成されている半導体発光素子であって、前記被選択酸化層と窒素を含む活性層との間に、少なくとも一層のGaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層が形成されていることを特徴としている。
【0110】
前述したように、結晶成長途中で、反応室側壁,加熱帯,基板を保持する治具等に残留しているAl系残留物を除去する工程を設けると、被成長基板の表面が酸化やその他のダメージを受け、被成長基板の表面に欠陥が発生する恐れがある。もし、欠陥が発生する場所(領域)がキャリアの注入される活性領域であれば、上記欠陥が非発光再結合中心となり発光素子の動作時に発光効率が低下してしまう恐れがある。
【0111】
これに対し、Al系残留物除去時の表面材料のバンドギャップエネルギーよりも高いバンドギャップエネルギーを有するGaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層を、被選択酸化層と窒素を含む活性層との間に成長すると、Al系残留物除去時の表面への注入キャリアはほとんど無くなるので、欠陥が非発光再結合中心となり発光素子の動作時に発光効率が低下してしまうという事態が生じるのを防止できる。もちろん、GaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層は、B,Tl,Sb等の他のIII−V族材料を含んでいても良い。
【0112】
なお、このような半導体発光素子の結晶成長を行ないながら、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを有機系窒素化合物ガスで除去する工程を行うことができる。例えば、上記Alを含む半導体層と窒素を含む活性層との間でAlを含まない層を成長する時に、エッチングガスであるDMHy等の有機系窒素化合物ガスを供給すると、Alと酸素を取りこむ形で窒素を含む半導体層が成長される。これにより、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去できるので、活性層への酸素の取り込みを抑えることができる。この場合、窒素を含む半導体層は、活性層のバンドギャップよりも大きいバンドギャップとなるように条件を設定する必要がある。例えばDMHy気相比:[DMHy]/([DMHy]+[AsH3])を小さくし、また、成長温度を高くし、また、In組成を大きくすることにより、窒素の取り込まれは低減する。この窒素を含む半導体層をSIMS分析すれば、窒素のほかに酸素(O)またはAlが観察されるであろう。
【0113】
第4の実施形態
また、本発明の第4の実施形態の半導体発光素子は、窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有し、p型半導体層中に配置されたAlAsを主成分とする被選択酸化層の一部が選択的に酸化されて電流狭窄構造が形成されている半導体発光素子において、前記被選択酸化層と窒素を含む活性層との間に、活性層よりもバンドギャップが大きくかつ窒素を含む半導体層が形成されていることを特徴としている。
【0114】
なお、このような半導体発光素子の結晶成長を行ないながら、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを有機系窒素化合物ガスで除去する工程を行うことができる。例えば、上記Alを含む半導体層と窒素を含む活性層との間でAlを含まない層を成長する時に、エッチングガスであるDMHy等の有機系窒素化合物ガスを供給すると、Alと酸素を取りこむ形で窒素を含む半導体層が成長される。これにより、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去できるので、活性層への酸素の取り込みを抑えることができる。この場合、窒素を含む半導体層は、活性層のバンドギャップよりも大きいバンドギャップとなるように条件を設定する必要がある。例えばDMHy気相比:[DMHy]/([DMHy]+[AsH3])を小さくし、また、成長温度を高くし、また、In組成を大きくすることにより、窒素の取り込まれは低減する。この窒素を含む半導体層をSIMS分析すれば、窒素のほかに酸素(O)またはAlが観察されるであろう。
【0115】
上記第4の実施形態の半導体発光素子において、活性層よりもバンドギャップが大きくかつ窒素を含む半導体層として、GaNAs,GaInNAs,GaInNP,GaNPAs,GaInNPAsなどを用いることができる。もちろん、Sb,B,Tl等の他のIII−V族材料を含んでいてもかまわない。
【0116】
また、上記第4の実施形態の半導体発光素子において、活性層よりもバンドギャップが大きくかつ窒素を含む半導体層と窒素を含む活性層との間に、その両者よりもバンドギャップエネルギーが大きいGaAs,GaInAs,GaAsP,GaInPAs,GaInPのいずれか一つからなる層が形成されていても良い。
【0117】
すなわち、活性層よりもバンドギャップが大きくかつ窒素を含む半導体層中には酸素が取りこまれてしまうので、もしこの層がキャリアの注入される活性領域内にあれば、非発光再結合中心となり発光素子動作時発光効率を低下させてしまう恐れがある。これに対し、Al系残留物除去時の表面材料のバンドギャップエネルギーよりも高いバンドギャップエネルギーを有するGaAs,GaInAs,GaInPAs,GaInP,GaPAsのいずれか一つからなる層を窒素を含む活性層との間に成長すると、活性層よりもバンドギャップが大きくかつ窒素を含む半導体層への注入キャリアはほとんど無くなるので、上記の原因によって発光効率が低下してしまうことは無くなる。
【0118】
第5の実施形態
本発明の第5の実施形態の面発光型半導体レーザ素子の製造方法は、窒素を含む活性層を有する活性領域と、レーザ光を得るために活性層の上部および下部に設けられた上部反射鏡および下部反射鏡とを含む共振器構造を備え、窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有している面発光型半導体レーザ素子の製造方法であって、前記下部反射鏡は、屈折率が周期的に変化し入射光を光波干渉によって反射する半導体分布ブラッグ反射鏡を含み、該半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が小さい層はAlxGa1− xAs(0<x≦1)からなり、また、該半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が大きい層はAlyGa1− yAs(0≦y<x≦1)からなり、前記p型半導体層の一部を選択的に酸化して電流狭窄を行うためのAlAsを主成分とする被選択酸化層を有し、被選択酸化層と窒素を含む活性層との間に、少なくとも1層のGaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層を形成し、前記被選択酸化層の成長後、前記GaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層の成長が完了するまでの間に、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程を設けることを特徴としている。
【0119】
面発光型半導体レーザ素子の活性層への酸素の取りこまれを抑制する具体的方法の一つとしては、被選択酸化層の成長後、GaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層の成長が完了するまでの間に成長中断して、ガス供給ラインもしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程を行うことである。これにより、窒素を含む活性層への酸素の取りこまれが抑制され、かつ成長中断して形成された欠陥による非発光再結合の影響が避けられるので、低抵抗で駆動電圧が低く、しかも発光効率が高く低しきい値電流動作し、温度特性が良い面発光型半導体レーザ素子を容易に低コストで実現できる。なお、成長中断しているので、この成長中断界面をSIMS分析すれば、酸素(O)が観察されるであろう。
【0120】
また、上記成長中断中に、サセプターをベーキングするようにすることができる。
【0121】
すなわち、サセプターを加熱することで、反応室側壁,加熱帯,基板を保持する治具等に残留しているAl系残留物が蒸発,反応しやすくなるので、除去する効果が高くなる。また、結晶成長はサセプターを加熱して行われるので、成長中断して同様に加熱すれば良く、従って、成長中断中のサセプターのベーキングは容易にできる。なお、このとき、ベーキング温度は、結晶成長時の温度よりも高くするのが好ましい。また、被成長基板は、別室に移動しても良く、別室に移動せずにそのまま行っても良い。そのまま行う場合は、V族元素が成長途中の被成長基板から蒸発,脱離しないようにするために、V族原料を供給して行うのが望ましい。
【0122】
第6の実施形態
また、本発明の第6の実施形態の面発光型半導体レーザ素子は、窒素を含む活性層を有する活性領域と、レーザ光を得るために活性層の上部および下部に設けられた上部反射鏡および下部反射鏡とを含む共振器構造を備え、窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有している面発光型半導体レーザ素子であって、前記下部反射鏡は、屈折率が周期的に変化し入射光を光波干渉によって反射する半導体分布ブラッグ反射鏡を含み、該半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が小さい層はAlxGa1− xAs(0<x≦1)からなり、また、該半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が大きい層はAlyGa1− yAs(0≦y<x≦1)からなり、前記p型半導体層の一部を選択的に酸化して電流狭窄を行うためのAlAsを主成分とする被選択酸化層を有し、被選択酸化層と窒素を含む活性層との間に、少なくとも1層のGaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層が形成されていることを特徴としている。
【0123】
ここで、窒素を含む活性層には、GaNAs,GaInNAs,InNAs,GaAsNSb,GaInNAsSb,GaNPAs ,GaInNPAs ,InNPAs ,GaAsNPSb ,GaInNPAsSb等を用いることができる。例えばGaInNAsを用いる場合について以下に説明する。GaInNAsは、GaAsよりも格子定数が大きいGaInAsにNを添加することで、GaAsに格子整合させることが可能になるとともに、そのバンドギャップが小さくなり、1.3μm,1.55μm帯での発光が可能となる。また、GaAs基板格子整合系なので、ワイドギャップのAlGaAsやGaInPをクラッド層に用いることができる。
【0124】
さらに、Nの添加により上記のようにバンドギャップが小さくなるとともに、伝導帯,価電子帯のエネルギーレベルがともに下がり、ヘテロ接合における伝導帯のバンド不連続が極めて大きくなる結果、レーザの動作電流の温度依存性を極めて小さくできる。
【0125】
さらに、面発光型半導体レーザ素子は、小型化、低消費電力化及び2次元集積化による並列伝送を行なうのに有利である。面発光型半導体レーザ素子は、従来のGaInPAs/InP系では実用化に耐え得る性能を得るのは困難であるが、GaInNAs系材料によるとGaAs基板を用いた0.85μm帯面発光型半導体レーザ素子などで実績のあるAl(Ga)As/(Al)GaAs系半導体多層膜分布ブラッグ反射鏡や、AlAsの選択酸化による電流狭さく構造が適用できるので、実用化が期待できる。
【0126】
これを実現するためには、GaInNAs活性層の結晶品質の向上や、多層膜反射鏡の低抵抗化、面発光型半導体レーザ素子としての多層膜構造体の結晶品質や制御性の向上が重要であったが、AlAsを主成分とした被選択酸化層と窒素を含む活性層との間に、少なくとも一層のGaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層を形成することで、本発明の製造方法を容易に適用でき、窒素を含む活性層への酸素の取りこまれが抑制され、低抵抗で駆動電圧が低く、しかも発光効率が高く低しきい値電流動作し、温度特性が良い面発光型半導体レーザ素子を容易に低コストで実現できる。更に、この面発光型半導体レーザ素子の構成によれば、p型基板を用いることが可能である。
【0127】
第7の実施形態
また、本発明の第7の実施形態の面発光型半導体レーザ素子は、窒素を含む活性層を有する活性領域と、レーザ光を得るために活性層の上部および下部に設けられた上部反射鏡および下部反射鏡とを含む共振器構造を備え、窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有している面発光型半導体レーザ素子であって、前記下部反射鏡は、屈折率が周期的に変化し入射光を光波干渉によって反射する半導体分布ブラッグ反射鏡を含み、該半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が小さい層はAlxGa1− xAs(0<x≦1)からなり、また、該半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が大きい層はAlyGa1− yAs(0≦y<x≦1)からなり、前記p型半導体層の一部を選択的に酸化して電流狭窄を行うためのAlAsを主成分とする被選択酸化層を有し、被選択酸化層と窒素を含む活性層との間に、活性層よりもバンドギャップが大きくかつ窒素を含む半導体層が形成されていることを特徴としている。
【0128】
例えば、上記Alを含む半導体層と窒素を含む活性層との間でAlを含まない層を成長する時に、エッチングガスであるDMHy等の有機系窒素化合物ガスを供給すると、Alと酸素を取りこむ形で窒素を含む半導体層が成長される。これにより、成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去できるので、活性層への酸素の取り込みを抑えることができる。この場合、窒素を含む半導体層は、活性層のバンドギャップよりも大きいバンドギャップとなるように条件を設定する必要がある。例えばDMHy気相比:[DMHy]/([DMHy]+[AsH3])を小さくし、また、成長温度を高くし、また、In組成を大きくすることにより、窒素の取り込まれは低減する。この窒素を含む半導体層をSIMS分析すれば、窒素のほかに酸素(O)またはAlが観察されるであろう。
【0129】
これにより、窒素を含む活性層への酸素の取りこまれが抑制され、かつ成長中断して形成された欠陥による非発光再結合の影響が避けられるので、低抵抗で駆動電圧が低く、しかも発光効率が高く低しきい値電流動作し、温度特性が良い面発光型半導体レーザ素子を容易に低コストで実現できる。更に、この面発光型半導体レーザ素子の構成によれば、p型基板を用いることが可能となる。
【0130】
上記第7の実施形態の面発光型半導体レーザ素子において、活性層よりもバンドギャップが大きくかつ窒素を含む半導体層として、GaNAs,GaInNAs,GaInNP,GaNPAs、GaInNPAsなどを用いることができる。もちろん、Sb,B,Tl等の他のIII−V族材料を含んでいてもかまわない。
【0131】
また、上記第7の実施形態の面発光型半導体レーザ素子において、活性層よりもバンドギャップが大きくかつ窒素を含む半導体層と窒素を含む活性層との間に、その両者よりもバンドギャップエネルギーが大きいGaAs,GaInAs,GaAsP,GaInPAs,GaInPのいずれか1つからなる層が形成されていても良い。
【0132】
すなわち、活性層よりもバンドギャップが大きくかつ窒素を含む半導体層中には酸素が取りこまれてしまうので、もしこの層がキャリアの注入される活性領域内にあれば、非発光再結合中心となり発光素子動作時発光効率を低下させてしまう恐れがある。これに対し、Al系残留物除去時の表面材料のバンドギャップエネルギーよりも高いバンドギャップエネルギーを有するGaAs,GaInAs,GaInPAs,GaInP,GaPAsのいずれか1つからなる層を窒素を含む活性層との間に成長すると、活性層よりもバンドギャップが大きくかつ窒素を含む半導体層への注入キャリアはほとんど無くなるので、上記の原因によって発光効率が低下してしまうことは無くなる。
【0133】
第8の実施形態
本発明の第8の実施形態の面発光型半導体レーザアレイは、第6または第7の実施形態の面発光型半導体レーザ素子が複数個配列されて構成されていることを特徴としている。
【0134】
第6または第7の実施形態の面発光型半導体レーザ素子によれば、p側を共通電極とすることができ、アノードコモンとすることができるので、高速動作が可能なバイポーラトランジスタ駆動回路を用いることができて、複数の素子をアレイにすることで、同時により多くのデータを伝送することが可能となる。
【0135】
第9の実施形態
本発明の第9の実施形態の光送信モジュールは、第6または第7の実施形態の面発光型半導体レーザ素子、または、第8の実施形態の面発光型半導体レーザアレイが光源として用いられていることを特徴としている。
【0136】
上述したような低抵抗で駆動電圧が低く、低しきい値電流動作し、温度特性が良い第6または第7の実施形態の面発光型半導体レーザ素子、または、第8の実施形態の面発光型半導体レーザアレイを用いることによって、冷却素子が不要な低コストな光送信モジュールを実現することができる。
【0137】
第10の実施形態
本発明の第10の実施形態の光送受信モジュールは、第6または第7の実施形態のいずれかの面発光型半導体レーザ素子、または、第8の実施形態の面発光型半導体レーザアレイが光源として用いられていることを特徴としている。
【0138】
上述したような低抵抗で駆動電圧が低く、低しきい値電流動作し、温度特性が良い第6または第7の実施形態の面発光型半導体レーザ素子、または、第8の実施形態の面発光型半導体レーザアレイを用いることによって、冷却素子が不要な低コストな光送受信モジュールを実現することができる。
【0139】
第11の実施形態
本発明の第11の実施形態の光通信システムは、第6または第7の実施形態の面発光型半導体レーザ素子、または、第8の実施形態の面発光型半導体レーザアレイが光源として用いられていることを特徴としている。
【0140】
上述したような低抵抗で駆動電圧が低く、低しきい値電流動作し、温度特性が良い第6または第7の実施形態の面発光型半導体レーザ素子、または、第8の実施形態の面発光型半導体レーザアレイを用いることによって、冷却素子が不要な低コストの光ファイバー通信システム,光インターコネクションシステムなどの光通信システムを実現することができる。
【0141】
第12の実施形態
本発明の第12の実施形態の半導体発光素子の製造方法は、基板と窒素を含む活性層との間にAlを含む半導体層が設けられる半導体発光素子の製造方法において、Alを含む半導体層を成長した後であって、窒素を含む活性層の成長を開始する前に、エッチングガスとしてCBr4等の臭素を含んだガスを成長室(反応室)内に供給し、成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程を設けたことを特徴としている。
【0142】
前述したように、Al系残留物は、非発光再結合の原因となる酸素を、窒素を含む活性層に取りこむ原因となっているので、Alを含んだ半導体層を成長した後、窒素を含む活性層の成長の前までに、反応室(成長室)側壁,加熱帯,基板を保持する治具等に残留しているAl系残留物と反応してAl系残留物を除去することのできるガスを成長室に供給することで、活性層への酸素の取り込みを抑えることができる。CBr4のような臭素を含んだガスは、成長室内の反応生成堆積物と反応し、エッチング除去する効果がある。よって、Alを含んだ半導体層を成長した後、窒素を含む活性層の成長の前までに、エッチングガスとして臭素を含んだガスを供給すると、このエッチングガスは反応室側壁,加熱帯,基板を保持する治具等に残留しているAl系残留物と反応してAl系残留物を除去することができるので、活性層への酸素の取り込みを抑えることができる。
【0143】
また、臭素を含んだガスは、GaAsなどの半導体層をエッチングする効果がある。成長を一度中断して、成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する場合、エピ基板表面は酸化膜等が形成される可能性がある。従って、成長を一度中断した後、再成長する前に、エッチングガスとして臭素を含んだガスを成長室内に供給し、被成長基板の表面の一部を除去する工程を設けると、酸化膜等を除去できるので、再成長界面での非発光再結合などの素子特性への悪影響を抑えられる。すなわち、基板と活性層との間にAlを含む半導体層が設けられる半導体発光素子の製造方法であって、前記Alを含む半導体層を成長した後であって、窒素を含む活性層の成長を開始する前に成長を一度中断し、再成長する前にエッチングガスとして臭素を含んだガスを成長室内に供給し、被成長基板の表面の一部を除去する工程を設けるのが良い。なお、形成する素子が面発光型半導体レーザの場合、厚さの制御が重要なので、エッチング深さを予想してあらかじめエッチングする分を厚く成長しておくか、再成長時にエッチングする分を厚く成長する必要がある。また、臭素を含んだガスとして、CBr4以外にも、CH3Br等のガスを用いることができる。また、HCl等の塩素を含んだガスを用いてもGaAsなどの半導体層をエッチングできるので、同様な効果を得ることができる。
【0144】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0145】
(第1の実施例)
図7(a),(b)は本発明の第1の実施例のGaInNAs面発光型半導体レーザ素子を示す図である。なお、図7(b)は、図7(a)の部分拡大図である。
【0146】
図7(a),(b)に示すように、この第1の実施例の面発光型半導体レーザ素子では、2インチの大きさの面方位(100)のp−GaAs基板上に、それぞれの媒質内における発振波長λの1/4倍の厚さでp−AlxGa1−xAs(x=0.9)とp−GaAsとを交互に35周期積層した周期構造からなるp−半導体分布ブラッグ反射鏡(下部半導体分布ブラッグ反射鏡:単に下部反射鏡ともいう)が形成されている。なお、この下部反射鏡の最上部の低屈折率層は、被選択酸化層となるAlAsをAlGaAs及びGaInPで挟んだ3λ/4の厚さの低屈折率層からなっている。ここで、AlAsは、厚さを30nmとして、下から2λ/4の位置に来るようにしている。また、p−AlAs被選択酸化層とp−GaInPの間には、40nmの厚さのGaAs層が挿入されている。
【0147】
そして、この第1の実施例の面発光型半導体レーザ素子では、下部反射鏡上に、アンドープ下部GaAsスペーサ層,3層のGaxIn1−xNyAs1−y(x、y)井戸層とGaAsバリア層からなる多重量子井戸活性層,アンドープ上部GaAsスペーサ層が形成されている。
【0148】
そして、その上にn−半導体分布ブラッグ反射鏡(上部半導体分布ブラッグ反射鏡:単に上部反射鏡ともいう)が形成されている。ここで、上部反射鏡は、Siドープのn−AlxGa1−xAs(x=0.9)とn−GaAsとをそれぞれの媒質内における発振波長の1/4倍の厚さで交互に積層した周期構造(例えば、25周期)から構成されている。上部反射鏡と下部反射鏡とにより挟まれた共振器領域の厚さは、GaAsスペーサ層と多重量子井戸活性層とで、1波長分の厚さとした。
【0149】
また、上部反射鏡の最上部のn−GaAs層は、n側電極とコンタクトを取るn−GaAsコンタクト層を兼ねている。また、活性層内の井戸層のIn組成xは37%,窒素組成は0.5%とした。また、井戸層の厚さは7nmとした。また、活性層は、GaAs基板に対して約2.5%の圧縮歪(高歪)を有していた。
【0150】
次いで、所定の大きさのメサを少なくともp−AlAs被選択酸化層の側面を露出させて形成し、側面の現れたAlAsを水蒸気で側面から酸化してAlxOy電流狭さく部を形成した。そして、次に、ポリイミドでエッチング部を埋め込んで平坦化し、n−GaAsコンタクト層上のポリイミドを除去し、n−GaAsコンタクト層上の光出射部以外にn側電極を形成し、また、基板の裏面にp側電極を形成した。
【0151】
このような面発光型半導体レーザ素子は、MOCVD法によって形成することができ、この場合、MOCVD法によるGaInNAs活性層の原料には、TMG(トリメチルガリウム),TMI(トリメチルインジウム),AsH3(アルシン)を用いることができ、また、窒素の原料にはDMHy(ジメチルヒドラジン)を用いることができる。また、キャリアガスにはH2を用いることができる。ここで、DMHyは低温で分解するので、600℃以下のような低温成長に適しており,特に低温成長の必要な歪みの大きい量子井戸層を成長する場合、好ましい原料である。また、この第1の実施例のGaInNAs面発光型半導体レーザ素子の活性層のように歪が大きい場合は、非平衡となる低温成長が好ましい。この第1の実施例では、GaInNAs層は540℃で成長させた。
【0152】
ところで、この第1の実施例では、活性層への酸素の取り込みを抑え発光効率を低下させないようにするため、下部反射鏡の最上部の低屈折率層中に設けたGaAs層(40nmの厚さ)の成長の途中で成長中断し、一度被成長基板を別室に移動させ、被成長基板を保持していたサセプターを成長室に戻してキャリアガスであるH2ガスを供給しながらサセプターを成長温度より高い温度で加熱させ、Al系残留物を除外した。このとき、サセプター以外の成長室内壁等の温度も上昇し、Al系残留物の除外が加速される。これにより、活性層への酸素の取り込みを抑えることができた。この工程は、Alを含んだ半導体層の成長後、窒素を含んだ活性層の成長の前までに行えば良い。望ましくは、この第1の実施例のように、成長中断した界面(この第1の実施例では、GaAs層)のバンドギャップよりも大きいバンドギャップを有しAlを含まない材料(この第1の実施例ではGaInP)を、窒素を含む活性層との間に形成すると良い。
【0153】
すなわち、結晶成長を中断して、反応室側壁,加熱帯,基板を保持する治具等に残留しているAl系残留物を除去する工程を設けることで、被成長基板の表面が酸化やその他のダメージを受けて欠陥が発生する恐れがある。もしこの場所(領域)がキャリアの注入される活性領域であれば、発生した欠陥が非発光再結合中心となり発光素子動作時発光効率が低下してしまう。
【0154】
これに対し、この第1の実施例のように、Al系残留物除去時の表面材料のバンドギャップエネルギーよりも高いバンドギャップエネルギーを有するGaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層を、窒素を含む活性層との間に成長すると、素子動作時にAl系残留物除去時の表面への注入キャリアがほとんど無くなるので、これが原因で発光効率が低下することは無くなり、高い発光効率での動作が可能となる。
【0155】
なお、この第1の実施例では、Al系残留物除去工程は、1台の結晶成長装置を用いて結晶成長するときに、結晶成長を中断して行っているが、Al系材料成長装置と窒素を含む活性層を成長する装置とを別々に用い組み合わせて結晶成長するときにも、結晶成長を中断してAl系残留物除去工程を行なうことができる。すなわち、窒素を含む活性層を成長する時に、装置内のAl系残留物が酸素とともに活性層に取りこまれないようにすれば良い。
【0156】
上述したように作製した面発光型半導体レーザ素子の発振波長は約1.3μmであった。この第1の実施例では、GaInNAsを活性層に用いたので、GaAs基板上に長波長帯の面発光型半導体レーザ素子を形成できた。また、この第1の実施例では、装置内に残留したAlを含む化合物が、窒素を含む活性層の成長時に酸素とともに膜中に取りこまれないように、残留したAlを含む化合物を除外したので、活性層に酸素がAlとともに混入することを抑えることができた。これにより、発光効率が高く低しきい値で発振するGaInNAs面発光型半導体レーザ素子を量産に有利なMOCVD法で製造できた。
【0157】
また、AlとAsを主成分とした被選択酸化層の選択酸化により電流狭さく層を形成したので、しきい値電流は低かった。被選択酸化層を選択酸化したAl酸化膜からなる電流狭さく層を用いた電流狭さく構造によると、電流狭さく層を活性層に近づけて形成することで、電流の広がりを抑えられ、大気に触れない微小領域に効率良くキャリアを閉じ込めることができる。さらに、酸化してAl酸化膜となることで、屈折率が小さくなり、凸レンズの効果でキャリアの閉じ込められた微小領域に効率良く光を閉じ込めることができ、極めて効率が良くなり、しきい値電流を低減することができる。また、容易に電流狭さく構造を形成できることから、製造コストを低減できる。
【0158】
なお、窒素と他のV族を含んだGaInNAs等の半導体層の成長法としては、MBE法が主に用いられていたが、MBE法は原理的に高真空中での成長なので、原料供給量を大きくできない。原料供給量を大きくすると、排気系に負担がかかるという欠点がある。また、MBE法は、高真空排気系の排気ポンプを必要とするが、MBEチャンバー内の残留原料等を除去するなどのために、排気系に負担がかかり故障しやすいことから、スループットは悪い。
【0159】
また、面発光型半導体レーザ素子は、レーザ光を発生する少なくとも1層の活性層を含んだ活性領域を半導体多層膜反射鏡で挟んで構成されている。端面発光型レーザの結晶成長層の厚さが3μm程度であるのに対して、例えば1.3μm波長帯の面発光型半導体レーザ素子では10μmを超える厚さが必要になるが、MBE法では高真空を必要とすることから、原料供給量を高くすることができず、成長速度は1μm/h程度であり、10μmの厚さを成長するには、原料供給量を変えるための成長中断時間を設けないとしても最低10時間かかる。
【0160】
ここで、活性領域の厚さは全体に比べて通常ごくわずかであり(10%以下)、ほとんどが多層膜反射鏡を構成する層である。半導体多層膜反射鏡は、それぞれの媒質内における発振波長の1/4倍の厚さ(λ/4の厚さ)で低屈折率層と高屈折率層を交互に積層して(例えば20〜40ペア)形成されている。GaAs基板上の面発光型半導体レーザ素子では、半導体多層膜反射鏡は、AlGaAs系材料を用いAl組成を変えて低屈折率層(Al組成大)と高屈折率層(Al組成小)としている。しかし実際には、特にp側は各層のヘテロ障壁により抵抗が大きくなるので、低屈折率層と高屈折率層の間に、Al組成が両者の間となる中間層を挿入して多層膜反射鏡の抵抗を低減している。
【0161】
このように、面発光型半導体レーザ素子は、100層を超える組成の異なる半導体層を成長しなければならないことの他に、多層膜反射鏡の低屈折率層と高屈折率層の間にも中間層を設けるなど、瞬時に原料供給量を制御する必要がある素子である。しかし、MBE法では、原料供給を原料セルの温度を変えて供給量を制御しており、臨機応変に組成をコントロールすることができない。よってMBE法により成長した半導体多層膜反射鏡では、その抵抗を低くするのは困難であり動作電圧が高くなってしまう。
【0162】
一方、MOCVD法は、原料ガス流量を制御するだけでよく、瞬時に組成をコントロールできるとともに、MBE法のような高真空を必要とせず、また成長速度を例えば3μm/h以上と高くでき、容易にスループットを上げられることから、極めて量産に適した成長方法である。
【0163】
このように第1の実施例によれば、MOCVD法を用いて、低消費電力で低コストの1.3μm帯の面発光型半導体レーザ素子を実現できた。
【0164】
(第2の実施例)
図8(a),(b)は本発明の第2の実施例のGaInNAs面発光型半導体レーザ素子を示す図である。なお、図8(b)は、図8(a)の部分拡大図である。この第2の実施例が第1の実施例と違うところは、成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程を、多層膜反射鏡内ではなく、共振器内部で行っている点である。これによって、窒素を含む活性層への酸素の混入が抑制され、発光効率を高めることができた。
【0165】
ただし、この第2の実施例では、成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程を、多層膜反射鏡内ではなく、共振器内部で行なうことによって、被成長基板の表面が、酸化やその他のダメージを受けて、欠陥が発生する恐れがあり、この場所(領域)がキャリアの注入される活性領域であれば、発生した欠陥は非発光再結合中心となり、発光素子動作時発光効率が低下してしまう恐れがあるので、Al系残留物除去時の表面材料(この第2の実施例では、成長中断界面であるGaAs)のバンドギャップエネルギーよりも高いバンドギャップエネルギーを有するGaPAs層を窒素を含む活性層との間に設けている。なお、この第2の実施例の活性層は2%を超える大きな圧縮歪を有しており、GaPAsはGaAs基板に対して引張り歪を有していることから、GaPAsは、歪の悪影響を和らげるという効果もある。このため、この第2の実施例では、活性層の上部にも、GaPAs層を設けている。
【0166】
上述の例では、GaPAs層を設けたが、GaPAs層のかわりに、GaInPAs層、または、GaInP層を設けることもできる。
【0167】
これにより、素子動作時にAl系残留物除去時の表面への注入キャリアはほとんど無くなるので、発光効率が低下することは無くなり、高い発光効率で、低しきい値で発振するGaInNAs面発光型半導体レーザ素子を、量産に有利なMOCVD法で製造できた。
【0168】
(第3の実施例)
図9は本発明の第3の実施例のGaInNAs面発光型半導体レーザ素子を示す図である。
【0169】
この第3の実施例が第2の実施例と違うところは、成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程は、GaAs下部スペーサ層の成長途中で、DMHyを供給してGaNAs層を成長することによって行なわれる。このGaNAs層は、GaInNAs活性層よりバンドギャップエネルギーが大きい条件となっている。
【0170】
第3の実施例により作製した面発光型半導体レーザ素子の発振波長は約1.3μmであった。また、第3の実施例では、GaInNAsを活性層に用いているので、GaAs基板上に長波長帯の面発光型半導体レーザ素子を形成できた。
【0171】
また、第3の実施例では、装置内に残留したAlを含む化合物が、窒素を含む活性層の成長時に酸素とともに活性層中に取りこまれないように、エッチングガスであるDMHyを供給してGaNAs層を成長しているので、除去工程を行ったGaNAs層に酸素とともにAlが取りこまれたが、反応室内に残留したAlを含んだ化合物は活性層の成長前に除外され、活性層に酸素がAlとともに混入することを抑えることができる。すなわち、この除去工程を行ったGaNAs層は、活性層のダミー層といえる。これにより、第3の実施例では、発光効率が高く低しきい値で発振するGaInNAs面発光型半導体レーザ素子を量産に有利なMOCVD法で製造できた。
【0172】
(第4の実施例)
図10は本発明の第4の実施例のGaInNAs面発光型半導体レーザアレイ(GaInNAs面発光型半導体レーザアレイチップ)を示す図である。
【0173】
この第4の実施例のGaInNAs面発光型半導体レーザアレイは、第1の実施例の面発光半導体レーザ素子が10個、1次元に並んだものとなっている。なお、第4の実施例のGaInNAs面発光型半導体レーザアレイとしては、第1の実施例の面発光半導体レーザ素子を2次元に集積させたものでも良い。なお、この第4の実施例のGaInNAs面発光型半導体レーザアレイは、p型GaAs半導体基板上に形成されており、上面にn側個別電極が形成され、基板の裏面にp側共通電極が形成されている。
【0174】
この第4の実施例では、p側共通電極となるような構成でしかも高性能化に向いている選択酸化構造を用いた長波長帯の面発光型半導体レーザアレイを、量産性に優れたMOCVD法で作製可能となった。
【0175】
なお、この第4の実施例では、p型基板を用いたが、半絶縁性基板上に、p側、活性層、n側の順番で結晶成長を行なうこともでき、この場合も同様に、p側共通電極の構造が形成可能である。なお、この場合、共通電極は裏面ではなく、n側と同じ側に形成することになる。
【0176】
(第5の実施例)
図11は本発明の第5の実施例の光送信モジュールを示す図であり、この第5の実施例の光送信モジュールは、第4の実施例の面発光型半導体レーザアレイチップと光ファイバーとを組み合わせたものとなっている。この第5の実施例の光送信モジュールでは、1.3μm帯GaInNAsの面発光型半導体レーザ素子からのレーザ光を石英系光ファイバーに入力させて、光伝送を行なうことができる。ここで、波長が光ファイバー通信に適した1.3μmであり、シングルモードファイバーを使うことができた。
【0177】
また、この第5の実施例では、第4の実施例のGaInNAs面発光型半導体レーザアレイを用いており、p側が共通となったので、高速動作が可能なバイポーラトランジスタ駆動回路を採用できた。これにより、高速な並列伝送が可能となり、従来よりも多くのデータを同時に伝送できるようになった。
【0178】
なお、この第5の実施例では、面発光型半導体レーザ素子と光ファイバーとを1対1に対応させたが、発振波長の異なる複数の面発光型半導体レーザ素子を1次元または2次元にアレイ状に配置して、波長多重送信することにより伝送速度を更に増大することが可能となる。
【0179】
さらに、本発明による面発光型半導体レーザ素子を光通信システムに用いると、低コストで信頼性が高い光送信モジュールを実現できる他、これを用いた低コスト,高信頼の光通信システムを実現できる。また、GaInNAsを用いた面発光型半導体レーザ素子は、温度特性が良いこと、及び低しきい値であることにより、発熱が少なく、高温まで冷却なしで使えるシステムを実現できる。
【0180】
(第6の実施例)
図12は本発明の第6の実施例の光送受信モジュールを示す図であり、この第6の実施例の光送受信モジュールは、第5の実施例の面発光型半導体レーザ素子と受信用フォトダイオードと光ファイバーとを組み合わせたものとなっている。
【0181】
本発明による面発光型半導体レーザ素子を光通信システムに用いる場合、面発光型半導体レーザ素子は低コストであるので、図12に示すように送信用の面発光型半導体レーザ素子(1.3μm帯GaInNAs面発光型半導体レーザ素子)と受信用フォトダイオードと光ファイバーとを組み合わせた光送信モジュールを用いた、低コスト,高信頼性の光通信システムを実現できる。また、本発明に係るGaInNAsを用いた面発光型半導体レーザ素子の場合,温度特性が良いこと、動作電圧が低いこと、及び、低しきい値であることにより、発熱が少なく、高温まで冷却なしで使えるより低コストのシステムを実現できる。
【0182】
さらに、1.3μm等の長波長帯で低損失となるフッ素添加POF(プラスチックファイバ)とGaInNAsを活性層に用いた面発光型レーザとを組み合わせると、ファイバが低コストであること、ファイバの径が大きくてファイバとのカップリングが容易で実装コストを低減できることから、極めて低コストのモジュールを実現できる。
【0183】
本発明に係る面発光型半導体レーザ素子を用いた光通信システムとしては、光ファイバーを用いた長距離通信に用いることができるのみならず、LAN(Local Area Network)などのコンピュータ等の機器間伝送、さらにはボード間のデータ伝送、ボード内のLSI間,LSI内の素子間等の光インターコネクションとして短距離通信に用いることができる。
【0184】
近年LSI等の処理性能は向上しているが、これらを接続する部分の伝送速度が今後ボトルネックとなる。システム内の信号接続を従来の電気接続から光インターコネクトに変えると(例えばコンピュータシステムのボード間,ボード内のLSI間,LSI内の素子間等を本発明に係る光送信モジュールや光送受信モジュールを用いて接続すると)、超高速コンピュータシステムが可能となる。
【0185】
また、複数のコンピュータシステム等を本発明に係る光送信モジュールや光送受信モジュールを用いて接続した場合、超高速ネットワークシステムが構築できる。特に面発光型半導体レーザ素子は端面発光型レーザに比べて桁違いに低消費電力化でき2次元アレイ化が容易なので、並列伝送型の光通信システムに適している。
【0186】
以上に説明したように、窒素を含む半導体層(活性層)であるGaInNAs系材料によると、GaAs基板を用いた0.85μm帯面発光型半導体レーザ素子などで実績のあるAl(Ga)As/(Al)GaAs系半導体多層膜分布ブラッグ反射鏡や、AlAsの選択酸化による電流狭さく構造が適用でき、本発明による製造方法で面発光型半導体レーザ素子を製造することにより、GaInNAs活性層の結晶品質の向上や、多層膜反射鏡の低抵抗化、面発光型半導体レーザ素子としての多層膜構造体の結晶品質や制御性の向上ができるので、実用レベルの高性能の1.3μm帯等の長波長帯面発光型半導体レーザ素子を実現でき、さらに、これらの素子を用いると、冷却素子が不要で低コストの光ファイバー通信システム,光インターコネクションシステムなどの光通信システムを実現することができる。
【0187】
(第7の実施例)
第7の実施例のGaInNAs面発光型半導体レーザ素子の構成は、第2の実施例で説明した図8と同じである。第7の実施例は、第2の実施例と次の点で違っている。すなわち、第7の実施例では、成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程は、GaAs下部スペーサ層の成長途中で成長中断し、一度被成長基板を別室に移動させ、被成長基板を保持していたサセプターを成長室に戻して、サセプターを成長温度より高い温度で加熱させて、キャリアガスであるH2ガスとともにCBr4を成長室に供給することによって行っている。
【0188】
第7の実施例では、装置内に残留したAl系残留物が、窒素を含む活性層の成長時に酸素とともに活性層中に取りこまれないように、エッチングガスであるCBr4を供給しているので、反応室内に残留したAl系残留物は活性層の成長前に除外され、活性層中に酸素がAlとともに混入することを抑えることができる。これにより、第7の実施例では、発光効率が高く低しきい値で発振するGaInNAs面発光型半導体レーザ素子を量産に有利なMOCVD法で製造できた。なお、CBr4以外にもCH3Br等のガスを用いることができる。
【0189】
また、本発明のように基板側がp型半導体となる構成であると、以下のような効果も得られる。すなわち、特開平11−274083には、水素(H)のGaInNAs系活性層への混入が、発光特性を悪くするなどの問題の原因となることが示されている。一般的には、原子状水素によってアクセプターが不活性化される現象がGaAs,InP,AlGaInPなどで知られている。これはアニールによって活性化することができる。成長終了後の降温時にAsH3の水素が原子状水素として最表面のp層(例えばp−GaAs)から拡散するものである。原子状水素がp型半導体中の正孔の存在により電子を失い陽子となり拡散速度が加速するという説が検討されている。そして、これは表面をn層(例えばn−GaAs)とすることで阻止できることが知られている。特に、MOCVD法でGaInNAs系材料を形成する場合、H2,AsH3などの水素化物が原料,雰囲気ガスとなっていること、DMHyのようなNの原料など原料に炭素(C)を含むこと、低温成長が好ましいことなどから、膜中にCが取り込まれp型になり易く、水素が混入されやすい。本実施例のように基板側がp型半導体となる構成であると、n型半導体を表面に構成でき、表面からの水素の混入を抑制できるといった効果も得られる。
【0190】
更には、GaInNAs系活性層にn型となるドーパント(例えばSi,Ge,Se,S,Te)を添加しn型半導体とすることで、GaInNAs系活性層の成長中においても原子状水素が進入することを阻止できる。
【0191】
(第8の実施例)
第8の実施例のGaInNAs 面発光型半導体レーザ素子の構成は、第2の実施例及び第7の実施例で説明した図8と同じである。第8の実施例が第2の実施例と違うところは、GaAs下部スペーサ層の成長途中で成長中断し、一度被成長基板を別室に移動させて成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程を行なった後、被成長基板を成長室に戻して、サセプターの温度を所定のエッチング温度に加熱し、キャリアガスであるH2ガスとともにCBr4を成長室に供給して、被成長基板の表面をエッチング除去し、その後に残りの結晶成長(再成長)を行ったことである。
【0192】
Al系残留物の除去を成長中断して行なう場合には、被成長基板の表面が酸化やその他のダメージを受けて欠陥が発生する恐れがある。本実施例では、再成長界面と窒素を含む活性層との間に再成長界面を形成する半導体層(本実施例ではGaAsスペーサ層)よりもバンドギャップの大きいGaPAs層を設けた他に、再成長前に被成長基板の表面をエッチング除去しているので(GaAsなどの化合物半導体をエッチングする効果のある臭素を含むガスを供給して、被成長基板の表面であるGaAsスペーサ層の一部をエッチング除去しているので)、再成長界面での非発光再結合などの素子特性への悪影響をより確実に抑えることができた。なお、面発光レーザでは厚さの制御が重要なので、エッチング深さを予想してあらかじめエッチングする分を厚く成長しておいた。これの他にも再成長時にエッチングする分を厚く成長することでも対応できる。また、臭素を含むガスとして、CBr4以外にも、CH3Br等のガスを用いることができる。
【0193】
これにより、第8の実施例では、発光効率が高く低しきい値で発振するGaInNAs面発光型半導体レーザ素子を量産に有利なMOCVD 法で製造できた。
【0194】
【発明の効果】
以上に説明したように、請求項1乃至請求項7記載の発明によれば、窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有し、p型半導体層中にAlAsを主成分とする被選択酸化層を配置し、配置された被選択酸化層の一部を選択的に酸化して電流狭窄構造を形成する半導体発光素子の製造方法であって、被選択酸化層の成長後、窒素を含む活性層の成長開始までの間に、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程を設けるので、活性層への酸素の取り込みを抑えることができ、発光効率が高い半導体発光素子を作製することができる。
【0195】
特に、請求項2記載の発明では、請求項1記載の半導体発光素子の製造方法において、被選択酸化層の成長後、窒素を含む活性層の成長開始までの間に、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程は、成長を中断し、キャリアガスでガス供給ラインもしくは成長室をパージする工程であるので、反応室側壁,加熱帯,基板を保持する治具等に残留しているAl系残留物を除去し、活性層への酸素の取り込みを抑えることができ、発光効率が高い半導体発光素子を作製できる。
【0196】
また、請求項3記載の発明では、請求項2記載の半導体発光素子の製造方法において、前記成長中断中に、サセプターをベーキングするので、効率的に活性層への酸素の取り込みを抑えることができ、発光効率が高い半導体発光素子を作製できる。
【0197】
また、請求項4記載の発明によれば、請求項1記載の半導体発光素子の製造方法において、被選択酸化層の成長後、窒素を含む活性層の成長開始までの間に、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程は、エッチングガスを成長室に供給する工程であるので、活性層への酸素の取り込みを抑えることができ、発光効率の高い半導体発光素子を得ることができる。
【0198】
また、請求項5記載の発明によれば、請求項4記載の半導体発光素子の製造方法において、前記エッチングガスは、有機系窒素化合物ガスであり、有機系窒素化合物ガスは、反応室側壁,加熱帯,基板を保持する治具等に残留しているAl系残留物と反応しAl系残留物を除去することができるので、活性層への酸素の取り込みを抑えることができ、発光効率の高い半導体発光素子を得ることができる。
【0199】
また、請求項6記載の発明によれば、請求項4記載の半導体発光素子の製造方法において、前記エッチングガスは、酸素(O)を含むガスであり、酸素(O)を含むガスは、反応室側壁,加熱帯,基板を保持する治具等に残留しているAl系残留物と反応しAl系残留物を除去することのできるので、活性層への酸素の取り込みを抑えることができ、発光効率の高い半導体発光素子を得ることができる。
【0200】
また、請求項7記載の発明によれば、請求項4記載の半導体発光素子の製造方法において、前記エッチングガスは、塩素(Cl)を含むガスであり、塩素(Cl)を含むガスは、反応室側壁,加熱帯,基板を保持する治具等に残留しているAl系残留物と反応しAl系残留物を除去することができるので、活性層への酸素の取り込みを抑えることができ、発光効率の高い半導体発光素子を得ることができる。
【0201】
また、請求項8乃至請求項14記載の発明によれば、窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有し、p型半導体層中にAlAsを主成分とする被選択酸化層を配置し、配置された被選択酸化層の一部を選択的に酸化して電流狭窄構造を形成し、また、被選択酸化層と窒素を含む活性層との間に、少なくとも一層のGaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層を形成する半導体発光素子の製造方法であって、被選択酸化層の成長後、前記GaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層の成長が完了するまでの間に、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程を設けるようになっており、キャリアの注入されない活性領域外で、成長中断してAl系残留物を除去することで、残留Alに起因する非発光再結合やAl系残留物除去工程に起因する非発光再結合によって発光効率が低下することを抑制できる。
【0202】
特に、請求項9記載の発明では、請求項8記載の半導体発光素子の製造方法において、請求項8記載の半導体発光素子の製造方法において、被選択酸化層の成長後、前記GaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層の成長が完了するまでの間に、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程は、成長を中断し、キャリアガスでガス供給ラインもしくは成長室をパージする工程であるので、反応室側壁,加熱帯,基板を保持する治具等に残留しているAl系残留物を除去し、活性層への酸素の取り込みを抑えることができ、発光効率が高い半導体発光素子を作製できる。
【0203】
また、請求項10記載の発明では、請求項8記載の半導体発光素子の製造方法において、前記成長中断中に、サセプターをベーキングするので、効率的に活性層への酸素の取り込みを抑えることができ、発光効率が高い半導体発光素子を作製できる。
【0204】
また、請求項11記載の発明によれば、請求項8記載の半導体発光素子の製造方法において、被選択酸化層の成長後、窒素を含む活性層の成長開始までの間に、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程は、エッチングガスを成長室に供給する工程であるので、活性層への酸素の取り込みを抑えることができ、発光効率の高い半導体発光素子を得ることができる。
【0205】
また、請求項12記載の発明によれば、請求項8記載の半導体発光素子の製造方法において、前記エッチングガスは、有機系窒素化合物ガスであり、有機系窒素化合物ガスは、反応室側壁,加熱帯,基板を保持する治具等に残留しているAl系残留物と反応しAl系残留物を除去することができるので、活性層への酸素の取り込みを抑えることができ、発光効率の高い半導体発光素子を得ることができる。
【0206】
また、請求項13記載の発明によれば、請求項8記載の半導体発光素子の製造方法において、前記エッチングガスは、酸素(O)を含むガスであり、酸素(O)を含むガスは、反応室側壁,加熱帯,基板を保持する治具等に残留しているAl系残留物と反応しAl系残留物を除去することのできるので、活性層への酸素の取り込みを抑えることができ、発光効率の高い半導体発光素子を得ることができる。
【0207】
また、請求項14記載の発明によれば、請求項8記載の半導体発光素子の製造方法において、前記エッチングガスは、塩素(Cl)を含むガスであり、塩素(Cl)を含むガスは、反応室側壁,加熱帯,基板を保持する治具等に残留しているAl系残留物と反応しAl系残留物を除去することができるので、活性層への酸素の取り込みを抑えることができ、発光効率の高い半導体発光素子を得ることができる。
【0208】
また、請求項15記載の発明によれば、窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有し、p型半導体層中にAlAsを主成分とする被選択酸化層を配置し、配置した被選択酸化層の一部を選択的に酸化して電流狭窄構造を形成する半導体発光素子において、窒素を含む活性層中の酸素濃度は1×1018cm−3以下であるので、発光効率を低下させずに室温連続発振が可能な半導体発光素子を得ることができる。すなわち、通常、Alを構成元素として含む半導体層に、窒素を含む活性層を連続的に形成する構造においては、活性層中にAlとともに酸素が取り込まれて発光効率を落としてしまうが、窒素を含む活性層中の酸素濃度を1×1018cm−3以下とすることで、発光効率を低下させずに室温連続発振が可能な半導体発光素子を得ることができる。
【0209】
また、請求項16記載の発明によれば、窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有し、p型半導体層中にAlAsを主成分とする被選択酸化層を配置し、配置した被選択酸化層の一部を選択的に酸化して電流狭窄構造を形成する半導体発光素子において、窒素を含む活性層中のAl濃度は2×1019cm−3以下であるので、発光効率を低下させずに室温連続発振が可能な半導体発光素子を得ることができる。すなわち、通常、Alを構成元素として含む半導体層に、窒素を含む活性層を連続的に形成する構造においては、活性層中にAlとともに酸素が取り込まれて発光効率を落としてしまうが、Al濃度を2×1019cm−3以下とすることで、酸素濃度を1×1018cm−3以下にすることができ、発光効率を低下させずに室温連続発振が可能な半導体発光素子を得ることができる。
【0210】
また、請求項17記載の半導体発光素子によれば、窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有し、p型半導体層中に配置されたAlAsを主成分とする被選択酸化層の一部が選択的に酸化されて電流狭窄構造が形成されている半導体発光素子であって、前記被選択酸化層と窒素を含む活性層との間に、少なくとも一層のGaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層が形成されており、Al系残留物を除去する工程中に発生したダメージや、酸素の取りこまれが発生し非発光再結合中心が形成された半導体領域のバンドギャップより大きいバンドギャップを有する半導体層が活性層との間にあるので、非発光再結合中心が形成された半導体領域への注入キャリアを低減でき、発光効率低下を抑制できるので、発光効率を高くできた。半導体レーザの場合、しきい値電流を充分低いものとすることができた。
【0211】
また、請求項18乃至請求項20記載の発明によれば、窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有し、p型半導体層中に配置されたAlAsを主成分とする被選択酸化層の一部が選択的に酸化されて電流狭窄構造が形成されている半導体発光素子において、前記被選択酸化層と窒素を含む活性層との間に、活性層よりもバンドギャップが大きくかつ窒素を含む半導体層が形成されているので、成長時、成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去し、活性層への酸素の取り込みを抑えることができ、発光効率を高くできる。また、半導体レーザの場合、しきい値電流を充分低いものとすることができる。
【0212】
特に、請求項19記載の発明によれば、請求項18記載の半導体発光素子において、活性層よりもバンドギャップが大きくかつ窒素を含む半導体層は、GaNAs,GaInNAs,GaInNP,GaNPAs,GaInNPAsのいずれかであるので、発光効率を高くできる。また、半導体レーザの場合、しきい値電流を充分低いものとすることができる。
【0213】
また、請求項20記載の発明によれば、請求項18記載の半導体発光素子において、活性層よりもバンドギャップが大きくかつ窒素を含む半導体層と窒素を含む活性層との間に、その両者よりもバンドギャップエネルギーが大きいGaAs,GaInAs,GaAsP,GaInPAs,GaInPのいずれか1つからなる層が形成されているので、活性層よりもバンドギャップが大きくかつ窒素を含む半導体層への注入キャリアがほとんど無くなり、発光効率を高くできる。また、半導体レーザの場合、しきい値電流を充分低いものとすることができる。
【0214】
また、請求項21乃至請求項23記載の発明によれば、窒素を含む活性層を有する活性領域と、レーザ光を得るために活性層の上部および下部に設けられた上部反射鏡および下部反射鏡とを含む共振器構造を備え、窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有している面発光型半導体レーザ素子の製造方法であって、前記下部反射鏡は、屈折率が周期的に変化し入射光を光波干渉によって反射する半導体分布ブラッグ反射鏡を含み、該半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が小さい層はAlxGa1− xAs(0<x≦1)からなり、また、該半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が大きい層はAlyGa1− yAs(0≦y<x≦1)からなり、前記p型半導体層の一部を選択的に酸化して電流狭窄を行うためのAlAsを主成分とする被選択酸化層を有し、被選択酸化層と窒素を含む活性層との間に、少なくとも1層のGaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層を形成し、前記被選択酸化層の成長後、前記GaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層の成長が完了するまでの間に、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程を設けるので、窒素を含む活性層への酸素の取りこまれが抑制され、かつ成長中断して形成された欠陥による非発光再結合の影響が避けられ、低抵抗で駆動電圧が低く、しかも発光効率が高く、低しきい値電流動作し、温度特性が良い面発光型半導体レーザ素子を容易に低コストで作製できる。
【0215】
特に、請求項22記載の発明によれば、請求項20記載の面発光型半導体レーザ素子の製造方法において、被選択酸化層の成長後、窒素を含む活性層の成長開始までの間に、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程は、成長を中断し、キャリアガスでガス供給ラインもしくは成長室をパージする工程であるので、窒素を含む活性層への酸素の取りこまれを効率的に抑制でき、低抵抗で駆動電圧が低く、しかも発光効率が高く、低しきい値電流動作し、温度特性が良い面発光型半導体レーザ素子を容易に低コストで実現できる。
【0216】
また、請求項23記載の発明では、成長中断中にサセプターをベーキングするので、窒素を含む活性層への酸素の取りこまれを効率的に抑制でき、低抵抗で駆動電圧が低く、しかも発光効率が高く、低しきい値電流動作し、温度特性が良い面発光型半導体レーザ素子を容易に低コストで実現できる。
【0217】
また、請求項24記載の発明によれば、窒素を含む活性層を有する活性領域と、レーザ光を得るために活性層の上部および下部に設けられた上部反射鏡および下部反射鏡とを含む共振器構造を備え、窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有している面発光型半導体レーザ素子であって、前記下部反射鏡は、屈折率が周期的に変化し入射光を光波干渉によって反射する半導体分布ブラッグ反射鏡を含み、該半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が小さい層はAlxGa1− xAs(0<x≦1)からなり、また、該半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が大きい層はAlyGa1− yAs(0≦y<x≦1)からなり、前記p型半導体層の一部を選択的に酸化して電流狭窄を行うためのAlAsを主成分とする被選択酸化層を有し、被選択酸化層と窒素を含む活性層との間に、少なくとも1層のGaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層が形成されているので、窒素を含む活性層への酸素の取りこまれが抑制され、低抵抗で駆動電圧が低く、しかも発光効率が高く、低しきい値電流動作し、温度特性が良い1.3μm,1.55μm帯等の長波長帯面発光型半導体レーザ素子を容易に低コストで実現できる。更に、本構成によれば、p型基板を用いることができる。
【0218】
また、請求項25乃至請求項27記載の発明によれば、窒素を含む活性層を有する活性領域と、レーザ光を得るために活性層の上部および下部に設けられた上部反射鏡および下部反射鏡とを含む共振器構造を備え、窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有している面発光型半導体レーザ素子であって、前記下部反射鏡は、屈折率が周期的に変化し入射光を光波干渉によって反射する半導体分布ブラッグ反射鏡を含み、該半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が小さい層はAlxGa1− xAs(0<x≦1)からなり、また、該半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が大きい層はAlyGa1− yAs(0≦y<x≦1)からなり、前記p型半導体層の一部を選択的に酸化して電流狭窄を行うためのAlAsを主成分とする被選択酸化層を有し、被選択酸化層と窒素を含む活性層との間に、活性層よりもバンドギャップが大きくかつ窒素を含む半導体層が形成されているので、窒素を含む活性層への酸素の取りこまれが抑制され、低抵抗で駆動電圧が低く、しかも発光効率が高く、低しきい値電流動作し、温度特性が良い面発光型半導体レーザ素子を容易に低コストで実現できる。更に、本構成によれば、p型基板を用いることができる。
【0219】
特に、請求項26記載の発明によれば、請求項25記載の面発光型半導体レーザ素子において、活性層よりもバンドギャップが大きくかつ窒素を含む半導体層は、GaNAs,GaInNAs,GaInNP,GaNPAs,GaInNPAsのいずれかであるので、窒素を含む活性層への酸素の取りこまれが抑制され、低抵抗で駆動電圧が低く、しかも発光効率が高く低しきい値電流動作し、温度特性が良い面発光型半導体レーザ素子を容易に低コストで実現できる。
【0220】
また、請求項27記載の発明によれば、請求項25記載の面発光型半導体レーザ素子において、活性層よりもバンドギャップが大きくかつ窒素を含む半導体層と窒素を含む活性層との間に、その両者よりもバンドギャップエネルギーが大きいGaAs,GaInAs,GaAsP,GaInPAs,GaInPのいずれか1つからなる層が形成されているので、活性層よりバンドギャップが大きくかつ窒素を含む半導体層への注入キャリアがほとんど無くなり、低抵抗で駆動電圧が低く、しかも発光効率が高く、低しきい値電流動作し、温度特性が良い面発光型半導体レーザ素子を容易に低コストで実現できる。
【0221】
また、請求項28記載の発明によれば、請求項24乃至請求項27のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザ素子が複数個配列されて構成されている面発光型半導体レーザアレイであるので、複数の素子により同時により多くのデータを伝送することができる。
【0222】
また、請求項29記載の発明によれば、請求項24乃至請求項27のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザ素子、または、請求項28記載の面発光型半導体レーザアレイが光源として用いられている光送信モジュールであり、上述したような低抵抗で駆動電圧が低く、低しきい値電流動作し、温度特性が良い本発明の面発光型半導体レーザ素子や面発光型半導体レーザアレイが用いられることによって、冷却素子が不要な低コストな光送信モジュールを実現することができる。
【0223】
また、請求項30記載の発明によれば、請求項24乃至請求項27のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザ素子、または、請求項28記載の面発光型半導体レーザアレイが光源として用いられている光送受信モジュールであり、上述したような低抵抗で駆動電圧が低く、低しきい値電流動作し、温度特性が良い本発明の面発光型半導体レーザ素子や面発光型半導体レーザアレイが用いられることによって、冷却素子が不要な低コストな光送受信モジュールを実現することができる。
【0224】
また、請求項31記載の発明によれば、請求項24乃至請求項27のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザ素子、または、請求項28記載の面発光型半導体レーザアレイが光源として用いられている光通信システムであり、上述したような低抵抗で駆動電圧が低く、低しきい値電流動作し、温度特性が良い本発明の面発光型半導体レーザ素子や面発光型半導体レーザアレイが用いられることによって、冷却素子不要な低コストな光ファイバー通信システム,光インターコネクションシステムなどの光通信システムを実現することができる。
【0225】
また、請求項32記載の発明によれば、基板と活性層との間にAlを含む半導体層が設けられる半導体発光素子の製造方法であって、前記Alを含む半導体層を成長した後であって、窒素を含む活性層の成長を開始する前に、エッチングガスとして臭素を含んだガスを成長室内に供給し、成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程を設けたので、発光効率の高い半導体発光素子を得ることができる。すなわち、CBr4のような臭素を含んだガスは、成長室内の反応生成堆積物と反応し、エッチング除去する効果がある。よって、Alを含んだ半導体層を成長した後、窒素を含む活性層の成長の前までに、エッチングガスとして臭素を含んだガスを供給すると、装置内のAl系残留物と反応してAl系残留物を除去することができるので、活性層への酸素の取り込みを抑えることができ、発光効率の高い半導体発光素子を得ることができる。
【0226】
また、請求項33記載の発明によれば、基板と活性層との間にAlを含む半導体層が設けられる半導体発光素子の製造方法であって、前記Alを含む半導体層を成長した後であって、窒素を含む活性層の成長を開始する前に成長を一度中断し、再成長する前にエッチングガスとして臭素を含んだガスを成長室内に供給し、被成長基板の表面の一部を除去する工程を設けたので、発光効率の高い半導体発光素子を得ることができる。すなわち、臭素を含んだガスは、GaAsなどの半導体層をエッチングする効果がある。成長中断をして、成長室内に残留したAl系残留物を除去する場合、エピ基板表面には酸化膜等が形成される恐れがある。再成長する前にエッチングガスとして臭素を含んだガスを成長室内に供給し、被成長基板の表面の一部を除去する工程を設けると、酸化膜等を除去できるので、再成長界面での非発光再結合などの素子特性への悪影響を抑えられ、発光効率の高い半導体発光素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願の発明者が実験的に求めたしきい値電流密度の窒素組成依存性を示す図である。
【図2】一般的なMOCVD装置の概略を示す図である。
【図3】MOCVD装置で作製したGaInNAs量子井戸層(窒素を含んだ半導体層)とGaAsバリア層とからなるGaInNAs/GaAs2重量子井戸構造(活性層)の室温フォトルミネッセンススペクトルを示す図である。
【図4】図3の測定に用いた試料構造を示す図である。
【図5】図4に示した半導体発光素子の一例として、クラッド層をAlGaAsとし、中間層をGaAsとし、活性層をGaInNAs/GaAs2重量子井戸構造として構成した素子を1台のエピタキシャル成長装置(MOCVD)を用いて形成したときの、窒素(N)濃度と酸素(O)濃度の深さ方向分布を示す図である。
【図6】図5と同じ試料のAl濃度の深さ方向分布を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施例のGaInNAs面発光型半導体レーザ素子を示す図である。
【図8】本発明の第2,第7,第8の実施例のGaInNAs面発光型半導体レーザ素子を示す図である。
【図9】本発明の第3の実施例のGaInNAs面発光型半導体レーザ素子を示す図である。
【図10】本発明の第4の実施例のGaInNAs面発光型半導体レーザアレイ(GaInNAs面発光型半導体レーザアレイチップ)を示す図である。
【図11】本発明の第5の実施例の光送信モジュールを示す図である。
【図12】本発明の第6の実施例の光送受信モジュールを示す図である。
Claims (33)
- 窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有し、p型半導体層中にAlAsを主成分とする被選択酸化層を配置し、配置された被選択酸化層の一部を選択的に酸化して電流狭窄構造を形成する半導体発光素子の製造方法であって、被選択酸化層の成長後、窒素を含む活性層の成長開始までの間に、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程を設けることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
- 請求項1記載の半導体発光素子の製造方法において、被選択酸化層の成長後、窒素を含む活性層の成長開始までの間に、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程は、成長を中断し、キャリアガスでガス供給ラインもしくは成長室をパージする工程であることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
- 請求項2記載の半導体発光素子の製造方法において、前記成長中断中に、サセプターをベーキングすることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
- 請求項1記載の半導体発光素子の製造方法において、被選択酸化層の成長後、窒素を含む活性層の成長開始までの間に、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程は、エッチングガスを成長室に供給する工程であることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
- 請求項4記載の半導体発光素子の製造方法において、前記エッチングガスは、有機系窒素化合物ガスであることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
- 請求項4記載の半導体発光素子の製造方法において、前記エッチングガスは、酸素(O)を含むガスであることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
- 請求項4記載の半導体発光素子の製造方法において、前記エッチングガスは、塩素(Cl)を含むガスであることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
- 窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有し、p型半導体層中にAlAsを主成分とする被選択酸化層を配置し、配置された被選択酸化層の一部を選択的に酸化して電流狭窄構造を形成し、また、被選択酸化層と窒素を含む活性層との間に、少なくとも一層のGaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層を形成する半導体発光素子の製造方法であって、被選択酸化層の成長後、前記GaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層の成長が完了するまでの間に、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程を設けることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
- 請求項8記載の半導体発光素子の製造方法において、被選択酸化層の成長後、前記GaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層の成長が完了するまでの間に、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程は、成長を中断し、キャリアガスでガス供給ラインもしくは成長室をパージする工程であることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
- 請求項8記載の半導体発光素子の製造方法において、前記成長中断中に、サセプターをベーキングすることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
- 請求項8記載の半導体発光素子の製造方法において、被選択酸化層の成長後、窒素を含む活性層の成長開始までの間に、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程は、エッチングガスを成長室に供給する工程であることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
- 請求項8記載の半導体発光素子の製造方法において、前記エッチングガスは、有機系窒素化合物ガスであることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
- 請求項8記載の半導体発光素子の製造方法において、前記エッチングガスは、酸素(O)を含むガスであることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
- 請求項8記載の半導体発光素子の製造方法において、前記エッチングガスは、塩素(Cl)を含むガスであることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
- 窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有し、p型半導体層中にAlAsを主成分とする被選択酸化層を配置し、配置した被選択酸化層の一部を選択的に酸化して電流狭窄構造を形成する半導体発光素子において、窒素を含む活性層中の酸素濃度は1×1018cm−3以下であることを特徴とする半導体発光素子。
- 窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有し、p型半導体層中にAlAsを主成分とする被選択酸化層を配置し、配置した被選択酸化層の一部を選択的に酸化して電流狭窄構造を形成する半導体発光素子において、窒素を含む活性層中のAl濃度は2×1019cm−3以下であることを特徴とする半導体発光素子。
- 窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有し、p型半導体層中に配置されたAlAsを主成分とする被選択酸化層の一部が選択的に酸化されて電流狭窄構造が形成されている半導体発光素子であって、前記被選択酸化層と窒素を含む活性層との間に、少なくとも一層のGaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層が形成されていることを特徴とする半導体発光素子。
- 窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有し、p型半導体層中に配置されたAlAsを主成分とする被選択酸化層の一部が選択的に酸化されて電流狭窄構造が形成されている半導体発光素子において、前記被選択酸化層と窒素を含む活性層との間に、活性層よりもバンドギャップが大きくかつ窒素を含む半導体層が形成されていることを特徴とする半導体発光素子。
- 請求項18記載の半導体発光素子において、活性層よりもバンドギャップが大きくかつ窒素を含む半導体層は、GaNAs,GaInNAs,GaInNP,GaNPAs,GaInNPAsのいずれかであることを特徴とする半導体発光素子。
- 請求項18記載の半導体発光素子において、活性層よりもバンドギャップが大きくかつ窒素を含む半導体層と窒素を含む活性層との間に、その両者よりもバンドギャップエネルギーが大きいGaAs,GaInAs,GaAsP,GaInPAs,GaInPのいずれか1つからなる層が形成されていることを特徴とする半導体発光素子。
- 窒素を含む活性層を有する活性領域と、レーザ光を得るために活性層の上部および下部に設けられた上部反射鏡および下部反射鏡とを含む共振器構造を備え、窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有している面発光型半導体レーザ素子の製造方法であって、前記下部反射鏡は、屈折率が周期的に変化し入射光を光波干渉によって反射する半導体分布ブラッグ反射鏡を含み、該半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が小さい層はAlxGa1− xAs(0<x≦1)からなり、また、該半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が大きい層はAlyGa1− yAs(0≦y<x≦1)からなり、前記p型半導体層の一部を選択的に酸化して電流狭窄を行うためのAlAsを主成分とする被選択酸化層を有し、被選択酸化層と窒素を含む活性層との間に、少なくとも1層のGaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層を形成し、前記被選択酸化層の成長後、前記GaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層の成長が完了するまでの間に、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程を設けることを特徴とする面発光型半導体レーザ素子の製造方法。
- 請求項21記載の面発光型半導体レーザ素子の製造方法において、被選択酸化層の成長後、窒素を含む活性層の成長開始までの間に、窒素化合物原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場所となるガス供給ライン中もしくは成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程は、成長を中断し、キャリアガスでガス供給ラインもしくは成長室をパージする工程であることを特徴とする面発光型半導体レーザ素子の製造方法。
- 請求項22記載の面発光型半導体レーザ素子の製造方法において、前記成長中断中に、サセプターをベーキングすること特徴とする面発光型半導体レーザ素子の製造方法。
- 窒素を含む活性層を有する活性領域と、レーザ光を得るために活性層の上部および下部に設けられた上部反射鏡および下部反射鏡とを含む共振器構造を備え、窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有している面発光型半導体レーザ素子であって、前記下部反射鏡は、屈折率が周期的に変化し入射光を光波干渉によって反射する半導体分布ブラッグ反射鏡を含み、該半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が小さい層はAlxGa1− xAs(0<x≦1)からなり、また、該半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が大きい層はAlyGa1− yAs(0≦y<x≦1)からなり、前記p型半導体層の一部を選択的に酸化して電流狭窄を行うためのAlAsを主成分とする被選択酸化層を有し、被選択酸化層と窒素を含む活性層との間に、少なくとも1層のGaInPAs層、または、GaInP層、または、GaPAs層が形成されていることを特徴とする面発光型半導体レーザ素子。
- 窒素を含む活性層を有する活性領域と、レーザ光を得るために活性層の上部および下部に設けられた上部反射鏡および下部反射鏡とを含む共振器構造を備え、窒素を含む活性層と半導体基板との間にp型半導体層を有している面発光型半導体レーザ素子であって、前記下部反射鏡は、屈折率が周期的に変化し入射光を光波干渉によって反射する半導体分布ブラッグ反射鏡を含み、該半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が小さい層はAlxGa1− xAs(0<x≦1)からなり、また、該半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が大きい層はAlyGa1− yAs(0≦y<x≦1)からなり、前記p型半導体層の一部を選択的に酸化して電流狭窄を行うためのAlAsを主成分とする被選択酸化層を有し、被選択酸化層と窒素を含む活性層との間に、活性層よりもバンドギャップが大きくかつ窒素を含む半導体層が形成されていることを特徴とする面発光型半導体レーザ素子。
- 請求項25記載の面発光型半導体レーザ素子において、活性層よりもバンドギャップが大きくかつ窒素を含む半導体層は、GaNAs,GaInNAs,GaInNP,GaNPAs,GaInNPAsのいずれかであることを特徴とする面発光型半導体レーザ素子。
- 請求項25記載の面発光型半導体レーザ素子において、活性層よりもバンドギャップが大きくかつ窒素を含む半導体層と窒素を含む活性層との間に、その両者よりもバンドギャップエネルギーが大きいGaAs,GaInAs,GaAsP,GaInPAs,GaInPのいずれか1つからなる層が形成されていることを特徴とする面発光型半導体レーザ素子。
- 請求項24乃至請求項27のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザ素子が複数個配列されて構成されていることを特徴とする面発光型半導体レーザアレイ。
- 請求項24乃至請求項27のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザ素子、または、請求項28記載の面発光型半導体レーザアレイが光源として用いられていることを特徴とする光送信モジュール。
- 請求項24乃至請求項27のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザ素子、または、請求項28記載の面発光型半導体レーザアレイが光源として用いられていることを特徴とする光送受信モジュール。
- 請求項24乃至請求項27のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザ素子、または、請求項28記載の面発光型半導体レーザアレイが光源として用いられていることを特徴とする光通信システム。
- 基板と活性層との間にAlを含む半導体層が設けられる半導体発光素子の製造方法であって、前記Alを含む半導体層を成長した後であって、窒素を含む活性層の成長を開始する前に、エッチングガスとして臭素を含んだガスを成長室内に供給し、成長室内に残留したAl原料,Al反応物,Al化合物,Alのうちの少なくとも1つを除去する工程を設けたことを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
- 基板と活性層との間にAlを含む半導体層が設けられる半導体発光素子の製造方法であって、前記Alを含む半導体層を成長した後であって、窒素を含む活性層の成長を開始する前に成長を一度中断し、再成長する前にエッチングガスとして臭素を含んだガスを成長室内に供給し、被成長基板の表面の一部を除去する工程を設けたことを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
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