JP4450269B2 - 半導体発光素子の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体発光素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
窒素(N)を含むIII−V族化合物半導体は、バンドギャップエネルギーが紫外から赤外域まで制御でき、多くが直接遷移型の光学遷移を示すため、特に発光素子として近年開発の進展が著しい。
【0003】
最も注目されている窒素(N)を含むIII−V族化合物半導体の材料系は、GaN系材料とGaNAs系材料である。以下に、これらの材料系の素子と作製法について述べる。
【0004】
先ず、GaN系材料について述べる。GaN系材料を発光層にもつ青色LED及び青色LDは、高輝度青色発光LEDが実現されて以来、勢力的に研究開発がなされ室温連続発振LDが実現され、現在市販されるに至っている。これに伴い、フルカラーディスプレーにおける青色光源,高精細レーザープリンタ用書き込み光源,次世代高密度光記録用光源などへの適用が盛んに検討されている。今後、より高性能,長寿命のGaN系材料のLDが必要とされるので、素子の構成膜の結晶品質の向上が必要とされると考えられる。
【0005】
これらのGaN系材料の素子の多くは、MOCVD法で作製される。ここで、III族原料としては、III族の有機金属や水素化物が用いられる。また、窒素原料としては、多くは安価であるため、NH3ガスが用いられる。NH3ガスは、分解温度が高いので、高い基板温度を必要とする。そのため、成長膜からの構成原子の脱離を引き起こしやすく、結晶品質が低下し高性能の素子が得にくくなる。そのため、例えば特開平7−230953号,特開平9−251957号には、窒素原料として、より低温で分解するヒドラジンを用いる例が示されている。
【0006】
次に、GaNAs系材料について述べる。現在の光ファイバー通信には、石英系光ファイバーでの分散と損失が小さい1.3μm,1 .55μm帯の長波長帯の半導体レーザが用いられている。今後は各端末へも光ファイバー化(Fiber To The Home(FTTH) 等)が進み、更には各機器間,機器内においても光による情報伝送が導入され、光による情報伝送技術がますます重要になると予想される。これらを実現するためには、光通信モジュールの「桁違い」の低価格化が最重要課題の一つであり、消費電力が小さく、かつ冷却システムを必要としない良好な温度特性の長波長帯半導体レーザが強く求められている。
【0007】
この波長に対応するバンドギャップを有するIII−V族半導体であるInP基板上のGaInPAs系材料が現在市場を独占している。しかし、InP系材料は、クラッド層(スペーサ層)と発光層との間の伝導帯バンド不連続が小さく、発光層への注入電子の閉じ込めが温度上昇とともに悪くなる。
【0008】
これを解決できる材料として、特開平6−37355号には、GaAs基板上のGaInNAs系材料が提案されている。GaInNAsは、窒素(N)と他のV族元素を含んだIII−V族混晶半導体である。GaInNAsは、GaAsより格子定数が大きいGaInAsにNを添加することで,格子定数をGaAsに格子整合させることが可能となり、更にバンドギャップエネルギーが小さくなり、1.3μm,1.5μm帯での発光が可能な材料である。文献「Jpn .J .Appl .Phys .Vol.35 (1996 )pp .1273 −1275 」には、近藤らによりバンドラインナップが計算されている。GaInNAsは、GaAs格子整合系なので、AlGaAs等をクラッド層に用いることで、伝導帯のバンド不連続が大きくなる。このため、高特性温度半導体レーザが実現できると予想されている。
【0009】
このGaInNAs系材料は、成長膜中にNを混和させるのが難しい。このため、N2ガスや窒素化合物をプラズマにより活性化させ導入するMBE法(例えば特開平6−334168号)やMOCVD法(例えば特開平6−37355号)が用いられる。
【0010】
さらに、量産性に優れる結晶成長方法であるMOCVD法で、熱分解して活性化しやすい窒素化合物であるジメチルヒドラジン(DMHy)を用いる方法が特開平7−154023号,特開平9−283857号に示されており、実験的にもNが混和することが実証されている。
【0011】
しかし、このDMHyを用いたMOCVD法で良好な発光特性をもつ素子を安定して得ることは難しい。素子構成膜にAlを含む場合、特に低い発光特性を示す場合が多い。そのため、GaInNAs系材料の発光素子は、現時点で市販されるには至っていない。これは、素子構成膜の結晶品質が十分でなく、非発光再結合中心が多数存在しるためと考えられる。
【0012】
上述のように、窒素(N)を含むIII−V族化合物半導体の材料系を用いた素子は、MOCVD法で作製されることが多く、その場合、窒素原料としてはNH3とヒドラジン類が用いられる。今後は、素子構成膜の結晶品質の向上が重要な課題である。
【0013】
上記のような窒素原料は、水分,アルコールを除去しにくい性質をもち、蒸留精製してもそれらを十分には除去できないことが知られている。
【0014】
これらの窒素原料に含まれる不純物が、窒素(N)を含むIII−V族化合物半導体の材料系を用いた素子の構成膜の結晶品質を低下させていることが懸念される。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、不純物が少なく結晶品質の良い窒素(N)を含む活性層を作製することの可能な半導体発光素子の製造方法を提供することを目的としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、MOCVD法により、基板上に、Alを構成元素として含む半導体層と窒素(N)を含む活性層とを順次に成長させる半導体発光素子の製造方法であって、
前記基板と前記活性層の間に有機金属Al原料を用いてAlを構成元素として含む半導体層を成長させる工程と、窒素化合物からなる窒素原料を金属Alまたは金属Alを含む合金に接触させた後に反応室に輸送して前記窒素(N)を含む活性層を成長させる工程とを含み、前記窒素化合物には、少なくともヒドラジン類が含まれていることを特徴としている。
【0017】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の半導体発光素子の製造方法において、金属Alまたは金属Alを含む合金は液相であり、該金属Al又は金属Alを含む合金中に窒素化合物からなる窒素原料ガスをバブリングさせ通過させた後に、反応室に輸送し、窒素(N)を含む活性層を成長させることを特徴としている。
【0019】
また、請求項3記載の発明は、請求項1記載の半導体発光素子の製造方法において、金属Alまたは金属Alを含む合金は固相であり、粒子状または微粒子状または膜状または多孔質であることを特徴としている。
【0020】
また、請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の半導体発光素子の製造方法において、窒素(N)を含む活性層は、GaN系材料であることを特徴としている。
【0021】
また、請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の半導体発光素子の製造方法において、窒素(N)を含む活性層は、GaInNAs系材料であることを特徴としている。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
本願の発明者は、前述したような窒素原料に含まれる不純物の影響を、GaNAs系材料膜を活性層として含む端面発光型のレーザ構成を用いた実験により検討した。
【0030】
図1は、本願の発明者のMOCVD装置で作製したGaInNAs量子井戸層とGaAsバリア層とからなるGaInNAs/GaAs 2重量子井戸構造からなる活性層からの室温フォトルミネッセンススペクトルを示す図である。図2は半導体発光素子の試料構造を示す図である。図2を参照すると、試料構造は、GaAs基板201上に、下部クラッド層202、中間層203、窒素を含む活性層204、中間層203、上部クラッド層205が順次積層されたものとなっている。図1において、符号AはAlGaAsクラッド層202上にGaAs中間層203をはさんで2重量子井戸構造を形成した試料の活性層204からの室温フォトルミネッセンススペクトルであり、符号BはGaInPクラッド層202上にGaAs中間層203をはさんで2重量子井戸構造を連続的に形成した試料の活性層204からの室温フォトルミネッセンススペクトルである。
【0031】
なお、導入したガスは、H2ガスをキャリアガスとして、Ga(CH33(TMG:トリメチルガリウム),Al(CH33:(TMA:トリメチルアルミニウム),In(CH33(TMI:トリメチルインジウム)の有機金属と、AsH3(アルシン),P:PH3(フォスフィン)の水素化物と、DMHy(ジメチルヒドラジン)の窒素化合物である。なお、DMHy(ジメチルヒドラジン)は半導体材料メーカで精製したものを使用した。
【0032】
図1に示すように、試料Aでは試料Bに比べてフォトルミネッセンス強度が半分以下に低下している。従って、1台のMOCVD装置を用いてAlGaAs等のAlを構成元素として含む半導体層上に、GaInNAs等の窒素を含む活性層を連続的に形成すると、活性層の発光強度が劣化してしまうという問題が生じた。そのため、AlGaAsクラッド層上に形成したGaInNAs系レーザの閾電流密度は、GaInPクラッド層上に形成した場合に比べて2倍以上高くなってしまう。
【0033】
本願の発明者は、さらに、この原因解明について検討した。図3は、図2に示した半導体発光素子の一例として、クラッド層202,205をAlGaAsとし、中間層203をGaAsとし、活性層204をGaInNAs/GaAs2重量子井戸構造として構成した素子を1台のエピタキシャル成長装置(MOCVD装置)を用いて形成したときの、窒素(N)濃度と酸素(O)濃度の深さ方向分布を示す図である。測定はSIMSによって行った。次表(表1)に測定条件を示す。
【0034】
【表1】
Figure 0004450269
【0035】
図3において、GaInNAs/GaAs2重量子井戸構造に対応して、活性層204中に2つの窒素(N)ピークが見られる。そして、活性層204において、酸素(O)のピークが検出されている。しかし、NとAlを含まない中間層203における酸素濃度は活性層204の酸素濃度よりも約1桁低い濃度となっている。
【0036】
一方、クラッド層202,205をGaInPとし、中間層203をGaAsとし、活性層204をGaInNAs/GaAs2重量子井戸構造として構成した素子について、酸素(O)濃度の深さ方向分布を測定した場合には、活性層204中の酸素(O)濃度はバックグラウンドレベルであった。
【0037】
すなわち、窒素化合物原料と有機金属Al原料を用いて、エピタキシャル成長装置により、基板201と窒素を含む活性層204との間にAlを含む半導体層を設けた半導体発光素子を連続的に結晶成長すると、窒素を含む活性層204中に酸素が取り込まれることが本願の発明者の実験により明らかとなった。活性層204に取り込まれた酸素は非発光再結合準位を形成するため、活性層204の発光効率を低下させてしまう。この活性層204に取り込まれた酸素が、基板201と窒素を含む活性層204との間にAlを含む半導体層を設けた半導体発光素子における発光効率を低下させる原因であることが新たに判明した。この酸素の起源は、装置内に残留している酸素を含んだ物質、または、窒素化合物原料中に不純物として含まれる酸素を含んだ物質と考えられる。
【0038】
次に、酸素の取り込まれる原因について検討した。図4は、図3と同じ試料のAl濃度の深さ方向分布を示す図である。測定はSIMSによって行った。次表(表2)に測定条件を示す。
【0039】
【表2】
Figure 0004450269
【0040】
図4から、本来Al原料を導入していない活性層204において、Alが検出されている。しかし、Alを含む半導体層(クラッド層202,205)に隣接した中間層(GaAs層)203においては、Al濃度は活性層よりも約1桁低い濃度となっている。これは、活性層204中のAlがAlを含む半導体層(クラッド層202,205)から拡散,置換して混入したものではないことを示している。
【0041】
一方、GaInPのようにAlを含まない半導体層上に窒素を含む活性層を成長した場合には、活性層中にAlは検出されなかった。
【0042】
従って、活性層204中に検出されたAlは、成長室内またはガス供給ラインに残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alが、ヒドラジン中の不純物(水分,アルコール)と結合して活性層204中に取り込まれたものと考えられる。すなわち、ヒドラジンと有機金属Al原料を用いて、基板201と窒素を含む活性層204との間にAlを含む半導体層を設けた半導体発光素子を連続的に結晶成長すると、窒素を含む活性層204中に自然にAlが取り込まれてしまうことが新たにわかった。
【0043】
図3に示した同じ素子における、窒素(N)濃度と酸素(O)濃度の深さ方向分布と比較すると、2重量子井戸活性層中の2つの酸素ピークプロファイルは、窒素濃度のピークプロファイルと対応しておらず、図4のAl濃度プロファイルと対応している。このことから、GaInNAs井戸層中の酸素不純物は、窒素原料と共に取り込まれるというよりも、むしろ井戸層中に取り込まれたAlと結合して一緒に取り込まれることがわかった。すなわち、成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alが窒素化合物原料と接触すると、Alとヒドラジン中に含まれる不純物(水分,アルコール)とが結合して、活性層204中にAlと酸素が取り込まれ、この活性層204に取り込まれた酸素が活性層204の発光効率を低下させることが本願の発明者の実験により初めて明らかとなった。
【0044】
なお、特開平7−230953号,特開平9−251957号には、ヒドラジンの精製法が示されている。
【0045】
すなわち、特開平7−230953号には、ヒドラジンの水分が100重量ppm以下であるIII−V族化合物半導体の気相成長方法が示されており、市販のヒドラジンをカルシウムカーバイドで脱水した後、窒素雰囲気中で蒸留し、MOVPE法でInGaAlN膜を成長させる例が示されている。
【0046】
また、特開平9−251957号には、ヒドラジンとアンモニアを窒素源とするMOCVD法によるInGaAlN膜の製造方法が示されており、市販のヒドラジンをカルシウムカーバイドで脱水した後、窒素雰囲気中で蒸留し、MOVPE法でInGaAlN膜を成長させる例が示されている。
【0047】
しかしながら、窒素(N)を含むIII−V族化合物半導体の材料系を用いた素子の構成膜の結晶品質の向上のためには、特開平7−230953号,特開平9−251957号に示されているような従来の方法で精製しても、水分,アルコールの除去が十分でない。従って、さらに、窒素原料から水分,アルコ−ルを除去することが必要であることがわかった。
【0048】
本発明は、窒素原料から不純物を十分に除去して、不純物が少なく結晶品質の良い窒素(N)を含むIII−V族化合物半導体膜を作製することを意図している。
【0049】
図5は本発明に係る半導体膜成長装置の構成例を示す図である。図5を参照すると、この半導体膜成長装置は、窒素(N)を含むIII−V族化合物半導体膜を基板上に成長させるための反応室1と、反応室1にIII族原料を供給するためのIII族原料源2と、反応室1にV族原料を供給するためのV族原料源3と、窒素原料源(N原料源)4と、N原料源4からの窒素化合物からなる窒素(N)原料から不純物を除去して(窒素(N)原料を精製して)反応室1に供給する精製装置(窒素原料精製装置)5と、ガス排気部6とを有している。
【0050】
このような成長装置の例としては、MOCVD(metalorganic chemical vapor deposition)装置,MOMBE(metalorganic molecular beam epitaxy)装置,CBE(chemical beam epitaxy)装置等が挙げられる。すなわち、反応室1内において、成長法の形式としては、MOCVD,MOMBE,CBE等を用いることができる。
【0051】
また、図5において、III族元素(III族原料)としては、B,Al,Ga,In,Tlを用いることができ、V族元素(V族原料)としては、Nを含むほかP,As,Sb,Biを用いることができる。また、窒素化合物の窒素原料(N原料)としては、NH3,ヒドラジン類のほか、NH2R,NHR2,NR3(Rはアルキル基又はアリール基)からなるアミン類を用いることができる。但し、窒素化合物には、少なくともヒドラジン類が含まれているのが好ましい。
【0052】
すなわち、NH3及びアミン類は、分解温度が高く、十分な濃度の活性種を生成させるには900℃程度の温度条件で必要である。このため、成長膜から構成元素の抜けがおこりやすくなる。InやNを含む成長膜の場合は、特にこれらの原子の抜けが顕著になる。これに対し、ヒドラジン類の分解温度は低く、500℃付近で十分な濃度の活性種を生成させることができ、良質な成長膜が得易くなる。
【0053】
ここで、ヒドラジン類とは、ヒドラジン,モノメチルヒドラジン,ジメチルヒドラジン,ブチルヒドラジン,ヒドラゾベンゼンなどであり、NR2NR2 (Rは水素、又はアルキル基、アリール基)の化学式をとる物質とする。
【0054】
また、図5の半導体成長装置では、精製装置5の精製室中に、金属Al又は金属Alを含む合金が配置されており、精製装置5では、精製室に供給された窒素原料(窒素化合物からなる窒素原料)を、金属Al又は金属Alを含む合金に接触させて精製し(不純物を除去し)、反応室1に供給するようになっている。ここで、窒素原料ガスの輸送は、キャリアガスによる場合や窒素原料ガスの蒸気圧による場合がある。
【0055】
ここで、金属Alを含む合金の例としては、Al−In,Al−Ga,Al−In−Gaなどが挙げられる。これらは、組成により融点を室温付近からAlの融点(660℃)くらいまで変化させることができる。例えは、GaInAlの重量比が100:10:1.8のものは、室温で液体である。
【0056】
図5の構成の半導体膜成長装置では、精製装置5の精製室中に、金属Al又は金属Alを含む合金を予め配置しておく。しかる後、窒素化合物からなる窒素原料(窒素原料ガス)を、H2,He,Ar,N2などをキャリアガスとするか、窒素原料自体の蒸気圧により、精製装置5の精製室中に導入し、金属Alまたは金属Alを含む合金に接触させて精製した後(不純物を除去した後)、反応室1に輸送する。
【0057】
同時に、反応室1に、窒素(N)を含むIII−V族化合物半導体膜の構成元素の、有機金属化合物,水素化物,単体の蒸気を導入し、基板上に窒素(N)を含むIII−V族化合物半導体膜を得ることができる。
【0058】
精製装置5において、金属Alは、酸化物の生成エネルギーが大きく、負であるため、窒素化合物からなる窒素原料ガスが接触すると、窒素原料中の水,アルコールと容易に反応し、窒素原料の純度を高めることができる。
【0059】
このように、本発明では、窒素化合物からなる窒素原料を金属Alまたは金属Alを含む合金に接触させた後、反応室1に輸送し、窒素(N)を含むIII−V族化合物半導体膜を成長させるようにしており、窒素原料を金属Alに接触させるので、窒素原料ガスから水分とアルコールを除去することができ、水分とアルコールが除去された窒素化合物の窒素原料ガス(十分に精製された窒素原料)を反応室1に供給できて、不純物が少なく結晶品質の良い窒素(N)を含むIII−V族化合物半導体膜を得ることができる。
【0060】
また、上記窒素化合物に少なくともヒドラジン類が含まれている場合には、より不純物が少なく、より結晶品質の良い窒素(N)を含むIII−V族化合物半導体膜を得ることができる。すなわち、反応性が高く、良好な結晶品質のエピタキシャル成長膜が得易いヒドラジン類を窒素原料として用いる場合には、本発明の上述した精製方法により水分とアルコールが除去されたヒドラジン類を反応室1に供給できるので、より不純物が少なく、より結晶品質の良い窒素(N)を含むIII−V族化合物半導体膜が得られる。
【0061】
なお、上述した本発明の半導体膜成長方法において、金属Alまたは金属Alを含む合金が液相のものである場合には、金属Alまたは金属Alを含む合金中に窒素化合物からなる窒素原料ガスをバブリングさせ通過させた後に、反応室1に輸送し、窒素(N)を含むIII−V族化合物半導体膜を成長させることができる。
【0062】
図6には、金属Alまたは金属Alを含む合金が液相のものである場合、金属Alまたは金属Alを含む合金中(容融Alまたは容融Al合金中)に窒素化合物からなる窒素原料ガスをバブリングさせ通過させた後に、反応室1に輸送する精製装置5の構成例が示されている。
【0063】
金属Alまたは金属Alを含む合金が液体のものである場合には、窒素原料ガスは、金属Alまたは金属Alを含む合金の液体中をバブリングし通過するので、気液の接触面積が大きくとれ、窒素原料ガス中の水分とアルコールを効率良く除去でき、より不純物が少なく結晶品質の良い窒素(N)を含むIII−V族化合物半導体膜を得ることができる。
【0064】
また、上述した本発明の半導体膜成長方法において、金属Alまたは金属Alを含む合金として固相のものを用いることもできる。
【0065】
金属Alまたは金属Alを含む合金が固相(固体)の場合は、接触面積が大きくなるように、金属Alまたは金属Alを含む合金は、粒子状又は微粒子状又は膜状又は多孔質であることが好ましい。
【0066】
図7には、固体Alまたは固体Al合金のペレットまたは微粒子を用いた精製装置の一例が示されている。また、図8には、固体Alまたは固体Al合金のペレットまたは微粒子を用いた精製装置の他の例が示されている。
【0067】
粒子状の金属Alまたは金属Alを含む合金は、不活性気体中で溶融させた金属Alまたは金属Alを含む合金を、冷却した金属板や冷却したフッ素化油やシリコーン油などの不活性液体中に滴下するなどして作製できる。また、微粒子状の金属Alまたは金属Alを含む合金は、不活性ガス中にこれらの金属Al又は金属Alを含む合金を蒸発させるなどして作製できる。また、膜状の金属Alまたは金属Alを含む合金は、蒸着法やスパッタ法で作製できる。また、ガラスやセラミックの粒子を回転させながら蒸着法やスパッタ法で金属Alまたは金属Alを含む合金の膜を作製することもできる。この場合、ガラスやセラミックが多孔質である場合もある。
【0068】
金属Alまたは金属Alを含む合金が固相である場合にも、これが粒子状又は微粒子状又は膜状又は多孔質である場合には、窒素原料ガスと金属Alまたは金属Alを含む合金との接触面積が大きくとれ、窒素原料ガス中の水分とアルコールを効率よく除去できるので、より不純物が少なく結晶品質の良い窒素(N)を含むIII−V族化合物半導体膜を得ることができる。
【0069】
なお、図5の構成において、反応室1中に、基板を加熱する加熱手段や、原料の反応を励起するプラズマ発生手段や電子線発生手段等の反応励起手段が設けられていても良い。また、原料が液体の場合は、不活性ガスをキャリアガスとするバブリングにより反応室1に導入するのが好ましい。また、原料が固体の場合は、加熱し基板方向に蒸発,昇華させたり、昇華した原料をキャリアガスにより反応室1に輸送することができる。また、減圧または真空中で膜成長を行う場合は、ガス排気部6に真空ポンプが接続される。
【0070】
図9,図10には、窒素原料源が液体である場合に、窒素原料をバブリングによって供給する構成例が示されている。
【0071】
図9の構成例では、窒素原料が入っている第1のバブラ11を設け、この第1のバブラ11と反応室1の間に、精製装置5を設け、H2ガス等をキャリアガスとして窒素原料ガスを反応室1に輸送するように構成されている。
【0072】
また、図10の構成例では、第1のバブラ21の上流に第2のバブラ22と精製装置5を連結して設け、一旦、第2のバブラ22内の窒素原料(N原料)の適量を精製しながら第1のバブラ21に溜めた後、第1のバブラ21をバブリングして精製した窒素原料を反応室1に輸送するように構成されている。
【0073】
なお、図9,図10の構成例において、マスフローコントローラやバルブや圧力計などの設置の有無や配置の場所は限定されない。また、精製装置5中で生成された酸化物がダストとなり反応室1に輸送されるのを防ぐため、精製装置5と反応室1との間の配管にダストフィルタを設けることが望ましい。
【0074】
上述のように、本発明によれば、不純物が少なく結晶品質の良い窒素(N)を含むIII−V族化合物半導体膜を提供できる。そして、窒素(N)を含むIII―V族化合物半導体膜を構成膜として含む素子の範囲は、発光素子,受光素子,太陽電池に限らず、FET,バイポーラトランジスタなどの電子デバイスも含む。
【0075】
本発明において、窒素(N)を含むIII−V族化合物半導体膜を、GaN系材料とすることができる。
【0076】
ここで、GaN系材料としては、GaN,GaInN,AlGaInN,AlGaN,GaPN,GaInPN,AlGaInPN,AlGaPN,BGaN,BGaInN,BAlGaInN,BAlGaN,GaNSb,GaInNSb,AlGaInNSb,AlGaNSbなどが挙げられる。
【0077】
このGaN系材料は、紫外から可視領域のバンドギャップエネルギーをもつ。特に、GaN,GaInN,AlGaInN,AlGaNは,α−Al23,β−SiC,h−ZnOなどの単結晶膜の上のみならず、選択成長GaN膜の上にエピタキシャル成長が可能である。
【0078】
この場合の作製例は次の通りである。すなわち、Ga,In,Al,B,Pの水素化物、有機金属化合物、ハロゲン化物と前述の精製装置5を通した窒素原料とを反応させ、GaInNAs系材料膜を形成することができる。
【0079】
図11には、MOCVD装置でGaN系材料のエピタキシャル成長膜を成長させる場合の装置構成例が示されている。図11の構成例は、GaN,GaInN,AlGaInN,AlGaNのエピタキシャル成長膜を積層できる構成になっている。すなわち、図11の構成例では、真空ポンプにより減圧可能な反応室1中に加熱可能なサセプタを設け、H2ガスをキャリアガスとして、Ga(CH33(TMG:トリメチルガリウム),Al(CH33:(TMA:トリメチルアルミニウム)、In(CH33(TMI:トリメチルインジウム)などの有機金属と、AsH3(アルシン)、PH3(ホスフィン)などの水素化物を反応室1に供給するラインを設けている。さらに、SiH4(シラン)及びZn(CH32(DMZn:ジメチルジンク)のラインを設けている。これらは、それぞれ、n型、p型のドーピング用原料ガスラインである。さらに、NH3ガスのボンベ31を設け、このボンベ31と反応室1との間に、前述した精製装置5を設けている。
【0080】
図11のような構成の装置を用いれば、水分とアルコールが除去された窒素原料ガスを反応室1に供給できるので、不純物が少なく結晶品質の良いGaN系材料膜(GaN系化合物半導体膜)を得ることができる。
【0081】
なお、GaN系化合物半導体膜を構成膜として含む素子の範囲は、発光素子,受光素子,太陽電池に限らず、FET,バイポーラトランジスタなどの電子デバイスも含む。
【0082】
また、本発明において、窒素(N)を含むIII−V族化合物半導体膜を、GaInNAs系材料とすることができる。
【0083】
ここで、GaInNAs系材料としては、GaNAs,GaInNAs,GaInAsSb,GaInNP,GaNP,GaNAsSb,GaInNAsSb,InNAs,InNPAsなどが挙げられる。
【0084】
このGaInNAs系材料を活性層に用いた発光素子は、前述のように、温度特性に優れる上、発光波長が1.1μm以上の長波長帯なので石英系ファイバとの整合性が良い。よって、光通信システムや、コンピューター間、チップ間、チップ内の光インターコネクションや、光コンピューティングにおいて、キーデバイスになると考えられる。
【0085】
GaInNAs系材料は、組成を調整しGaAsと格子整合させることができ、GaAs基板上にエピタキシャル成長させることができる。
【0086】
この場合の作製例は次のとおりである。すなわち、Ga,In,As,Sb,Pの水素化物、有機金属化合物、ハロゲン化物と前述の精製装置5を通した窒素原料とを反応させ、GaInNAs系材料膜を形成することができる。
【0087】
図12には、MOCVD装置でGaInNAs系材料のエピタキシャル成長膜を成長させる場合の装置構成例が示されている。図12の構成例は、GaAlAs,AlAs,GaInPエピタキシャル成長膜も積層できるようにAl原料とP原料の供給ラインも設けられたものとなっている。図12の構成例では、真空ポンプにより減圧可能な反応室1中に加熱可能なサセプタを設け、H2ガスをキャリアガスとして、TMG,TMA,TMIの有機金属と、AsH3(アルシン),PH3(フォスフィン)の水素化物を反応室1に供給するラインを設けている。さらに、SeH2(水素化セレン)及びZn(CH32(DMZn:ジメチルジンク)のラインを設けている。これらは、それぞれn型、p型のドーピング用原料ガスラインである。さらに、窒素原料が入っている第1のバブラ41を設け、この第1のバブラ41と反応室1との間に、本発明の窒素原料精製装置5を設け、H2ガスをキャリアガスとして窒素原料ガスを反応室1に輸送するようになっている。
【0088】
図12のような構成の装置を用いれば、水分とアルコールが除去された窒素原料ガスを反応室1に供給できるので、不純物が少なく結晶品質の良いGaInNAs系材料膜(GaInNAs系化合物半導体膜)を得ることができる。
【0089】
なお、GaInNAs系化合物半導体膜を構成膜として含む素子の範囲は、発光素子,受光素子,太陽電池に限らず、FET,バイポーラトランジスタなどの電子デバイスも含む。
【0090】
具体的に、上記のような本発明の半導体膜成長方法,半導体膜成長装置を用いて、素子として半導体レーザを作製することができる。
【0091】
すなわち、半導体レーザの一例として、窒素(N)を含むIII−V族化合物半導体膜をGaN系材料で構成し、活性層にGaN系材料を含む半導体レーザを構成することができる。
【0092】
このような半導体レーザは、例えば、GaN,GaInN,AlGaInN,AlGaN,GaPN,GaInPN,AlGaInPN,AlGaPN,BGaN,BGaInN,BAlGaInN,BAlGaN,GaNSb,GaInNSb,AlGaInNSb,AlGaNSbなどからなる成長膜を活性層に含む半導体レーザである。
【0093】
半導体レーザの素子構成例としては、端面発光型と面発光型とが挙げられる。端面発光型半導体レーザの場合は、活性層の型により、シングルヘテロ接合型,ダブルヘテロ接合型,分離閉じ込めヘテロ接合(SCH)型,多重量子井戸構造(MQW)型が挙げられ、また、共振器の形態により、ファブリペロー(FP)型,分布帰還(DFB)型,分布ブラッグ反射器(DBR)型が挙げられる。
【0094】
また、面発光型半導体レーザは、基板と垂直方向にレーザ共振器を構成し、光を基板と垂直に出射する構成をとる。面発光型半導体レーザでは、基板の表面に高反射率の半導体多層膜反射鏡や誘電体多層膜反射鏡や金属反射鏡が設けられ、これらの反射鏡の間に活性層が設けられ、活性層と2つの反射鏡の間に、スペーサ層が設けられる。さらに、面発光型半導体レーザでは、閾値電流を小さくするためと、単一モード発振をさせるためと、側壁での非発光再結合を防ぐために、活性層近傍の領域の電流経路を狭める電流狭窄構造を含む場合が多い。
【0095】
面発光型半導体レーザは、2次元並列集積が可能であり、更に、その出力光の広がり角が比較的狭い(10度前後である)ので、光ファイバとの結合が容易である他、素子の検査が容易であるという特徴を有している。そのため、特に、並列伝送型の光送信モジュール(光インタコネクション装置)を構成するのに適した素子と考えられている。光インタコネクション装置の当面の応用対象は、コンピュータ等の筐体間やボード間の並列接続のほか、短距離の光ファイバー通信であるが、将来期待される応用として大規模なコンピュータ・ネットワークが挙げられる。
【0096】
図13には、InGaN膜を活性層とするSCH型レーザー素子の場合で、端面発光型半導体レーザの構成例が示されている。図13を参照すると、この端面発光型半導体レーザは、α−Al23,β−SiC,h−ZnOなどの単結晶や選択成長GaN膜の基板301上に、バッファGaN層302、下地n−GaN層303、n−AlGaNクラッド層304、n−GaNガイド層305、InGaN活性層306、p−GaNガイド層307、p−AlGaNクラッド層308、p−GaNコンタクト層309が順次に積層され、p−GaNコンタクト層309上にp−電極310が形成され、下地n−GaN層303上に、n−電極311が形成され、ドライエッチング等によりにより膜面に平行な共振器が形成されている。
【0097】
図13の端面発光型半導体レーザは、p−クラッド層308とn−クラッド層304に、それぞれ正孔と電子を注入し、活性層306で発光させるようになっている。
【0098】
また、図14には、InGaN膜をウェル層としAlGaNをバリア層とする量子井戸構造(QW)活性層の面発光型半導体レーザの構成例が示されている。図14を参照すると、この面発光型半導体レーザは、α−Al23,β−SiC,h−ZnOなどの単結晶や選択成長GaN膜の基板401上に、AlNバッファ層402、GaNバッファ層403、AlN/GaN20ペア以上からなる半導体多層膜反射鏡(下部半導体分布ブラッグ反射鏡)404、n−GaNコンタクト層405、n−GaNスペーサ層406、InGaN/AlGaN量子井戸(QW)活性層407、p−GaNスペーサ層408、p−GaNコンタクト層409、AlN/GaN20ペア程度からなる半導体多層膜反射鏡(上部半導体分布ブラッグ反射鏡)410が順次に設けられている。さらに、図14の構成例では、活性層407の近傍にプロトンや酸素イオンのインプランテーション等の手法により絶縁領域を形成して電流狭窄部411が設けられている。そして、p−コンタクト層409上にp−電極412が形成され、n−コンタクト層405上にn−電極413が形成され、膜面に垂直な共振器構造をもつ面発光型のものとして構成されている。
【0099】
図14の面発光型半導体レーザでは、p-半導体多層膜反射鏡410とn-半導体多層膜反射鏡404に、それぞれ正孔と電子を注入し、活性層407で発光させるようになっている。
【0100】
このように、窒素(N)を含むIII−V族化合物半導体膜をGaN系材料で構成し、活性層にGaN系材料を含む半導体レーザを構成するときに、窒素化合物からなる窒素原料を金属Alまたは金属Alを含む合金に接触させて窒素原料を精製し、精製した窒素原料を用いることで、良好な結晶品質を持つ半導体レーザ構成膜が得られる。特に、GaN系材料を含む活性層の結晶品質が向上する。さらに、活性層にGaN系材料を含むので、広い応用展開が期待される可視-紫外領域の発振波長が得られる。従って、低いしきい値電流と高い発光効率と高い信頼性をもつ、長寿命の可視-紫外領域に発振波長を持つ半導体レーザが得られる。
【0101】
また、半導体レーザの他の例として、窒素(N)を含むIII−V族化合物半導体膜をGaN系材料で構成し、活性層にGaInNAs系材料を含む半導体レーザを構成することができる。
【0102】
このような半導体レーザは、例えば、GaNAs,GaInNAs,GaInAsSb,GaInNP,GaNP,GaNAsSb,GaInNAsSb,InNAs,InNPAsなどからなる成長膜を活性層に含む半導体レーザである。
【0103】
図15には、GaInNAs膜を活性層とするSCH型レーザー素子の場合で、端面発光型半導体レーザの構成例が示されている。図15を参照すると、この端面発光型半導体レーザは、GaAs単結晶基板501上に、n−AlGaAsやn−GaInPのn−クラッド層502、GaAsやGaInPのガイド層503、GaInNAs活性層504、GaAsやGaInPのガイド層505、p−AlGaAsやp−GaInPのp−クラッド層506が順次に積層され、p−クラッド層506上には、p−電極(ストライプ状電極)507が形成されまた、基板501の裏面には、n−電極(下部電極膜)508が形成されている。そして、へき開により膜面に平行な共振器が形成されて、端面発光型の半導体レーザとして構成されている。
【0104】
この端面発光型半導体レーザは、p−クラッド層506とn−クラッド層502に、それぞれ正孔と電子を注入し、活性層504で発光させる。
【0105】
また、図16には、GaInNAs膜をウェル層としGaAsをバリア層とする量子井戸構造(QW)活性層の面発光型半導体レーザの構成例が示されている。図16を参照すると、この面発光型半導体レーザは、n−GaAs単結晶基板601上に、n−GaInP/n−GaAsなどの25ペア以上からなるn−半導体多層膜反射鏡602、n−GaAs,n−GaInP,n−AlGaAsなどのスペーサ層603、GaInNAs/GaAs量子井戸(QW)活性層604、p−GaAs,p−GaInP,p−AlGaAsなどのスペーサ層605、p−GaInP/p−GaAsなどの20ペア以上からなるp−半導体多層膜反射鏡606、p−コンタクト層607が順次に積層されている。ここで、活性層604は、GaInAs量子井戸活性層604aとGaAsバリア層604bとにより構成されている。さらに、図16の例では、活性層604の近傍にAlAs膜を酸化して絶縁性のAlxy膜を形成したりこの活性層604の近傍にプロトンや酸素イオンのインプランテーション等により絶縁領域を形成して電流狭窄部608が設けられている。また、p−コンタクト層607上にはp側電極609が形成され、また、基板601の裏面にはn側電極610が形成され、膜面に垂直な共振器構造をもつ面発光型半導体レーザとして構成されている。
【0106】
このような構成の面発光型半導体レーザでは、p−半導体多層膜反射鏡606とn−半導体多層膜反射鏡602に、それぞれ正孔と電子を注入し、活性層604で発光させる。
【0107】
このように、窒素(N)を含むIII−V族化合物半導体膜をGaInNAs系材料で構成し、活性層にGaInNAs系材料を含む半導体レーザを構成するときに、窒素化合物からなる窒素原料を金属Alまたは金属Alを含む合金に接触させて窒素原料を精製し、精製した窒素原料を用いることで、良好な結晶品質を持つ構成膜をもつ半導体レーザが得られる。特に、GaInNAs系材料を含む活性層の結晶品質が顕著に向上する。さらに、この半導体レーザは、活性層にGaInNAs系材料を含むので、光ファイバーとの整合性の高い赤外領域で発光する。さらに、キャリアの閉じ込めが良好なので温度の変化に対し発光特性の変化が少ない。従って、低いしきい値電流と高い発光効率と良好な温度特性と高い信頼性をもつ長寿命の、光通信への適用性がよい発振波長をもつ、赤外光半導体レーザが得られる。
【0108】
また、窒素(N)を含むIII−V族化合物半導体膜がGaInNAs系材料であり、活性層にGaInNAs系材料が含まれている半導体レーザにおいて、該半導体レーザをAlxGa(1-x)As/AlyGa(1-y)As(0≦y<x≦1)半導体多層膜反射鏡を少なくとも1つ含む面発光半導体レーザとして構成することができる。
【0109】
面発光型半導体レーザの反射鏡としては、活性層領域と一括で制御性良く形成できることと、レーザを駆動するキャリアも流せるので、低屈折率層と高屈折率層を交互に積層した半導体分布ブラッグ反射鏡が広く用いられている。半導体分布ブラッグ反射鏡の材料としては、活性層から発生する光を吸収しない材料(一般に活性層よりワイドバンドギャップの材料)であって、格子緩和を発生させないために基板に格子整合する材料が用いられる。ここで、反射鏡の反射率は99%以上と極めて高くする必要があり、反射率は積層数を増やすことによって高くなる。しかし、積層数が増加すると、面発光型半導体レーザの作製が困難になってしまう。このため、低屈折率層と高屈折率層の屈折率差が大きい方が好ましい。AlGaAs系材料は、AlAsとGaAsが終端物質であり、格子定数は基板であるGaAsとほぼ同程度であり、組成により屈折率差が大きくとれ、少ない積層数で高反射率を得ることができるので、Al(Ga)As/GaAs、より広義には、AlxGa(1-x)As/AlyGa(1-y)As(0≦y<x≦1)の半導体多層膜を面発光型半導体レーザの反射鏡として用いるのが好適である。
【0110】
しかし、従来、Al(Ga)As/GaAs半導体多層膜を面発光型半導体レーザの反射鏡として用いると、十分な発光効率は得られなかった。これは、前述の実験で検証したように、Alを含んだ材料は、化学的に非常に活性であり、Alに起因する結晶欠陥を作りやすく、GaInNAs系材料を含む活性層を成長中に、反応室に残留しているAl原料又はAl原料反応物がヒドラジン中の水分,アルコールと反応してこれらを結晶中に取り込み、結晶欠陥となって非発光再結合が導入され、発光効率を低下させていたためである。
【0111】
このため、特開平08−340146号や特開平07−307525号には、Alを含まないGaInPとGaAs とから半導体分布ブラッグ反射鏡を構成する提案がなされている。しかしながら、GaInPとGaAsとの屈折率差は、AlAsとGaAsとの屈折率差に比べて約半分であり、反射鏡の積層数が非常に増加してしまい、作製が困難になって、歩留まりが低下し、素子抵抗が増加し、作製に時間がかかり、面発光レーザの総厚が厚くなり、電気配線が困難になる等の問題があった。
【0112】
これに対し、本発明では、窒素化合物からなる窒素原料を金属Alまたは金属Alを含む合金に接触させた後、反応室に輸送し、窒素(N)を含むIII−V族化合物半導体膜を成長させるので、AlxGa(1-x)As/AlyGa(1-y)As(0≦y<x≦1)半導体多層膜を面発光型半導体レーザの反射鏡として用いても、酸素元素の活性層への取り込みが低減できて、少ない層数で高い反射率を得ることができる半導体多層膜をもちながら、欠陥の少ない良好な品質の活性層をもつ面発光型半導体レーザの作製が可能になる。従って、高い歩留まり,低いコストの工程,簡便な構成で作製でき、低い素子抵抗,低いしきい値電流,高い発光効率,高い信頼性をもち温度特性の良い面発光型半導体レーザを得ることができる。
【0113】
また、本発明では、窒素(N)を含むIII−V族化合物半導体膜をGaInNAs系材料で構成し、活性層にGaInNAs系材料を含む半導体レーザ(面発光型半導体レーザ)を光源として用いる光通信システムを構成することができる。
【0114】
図17は、上述した本発明の半導体レーザ(面発光型半導体レーザ)を用いた並列伝送方式光通信システム(光伝送システム)の一例を示す図である。図17の光伝送システムでは、面発光半導体レーザからの信号を複数のファイバを用い同時に伝送することができる。
【0115】
また、図18は、上述した本発明の面発光型半導体レーザを用いた多波長伝送方式光通信システム(光伝送システム)の一例を示す図である。図18の光伝送システムでは、発振波長の異なる複数の発光素子(GaInNAs面発光レーザ)からの光信号は、それぞれ光ファイバを介して光合波器(合波器)に導入され、波長の異なる複数の光信号は光合波器で合波され、1本の光ファイバ中に導入され伝送される。伝送された光信号は伝送先の機器に接続される光分波器(分波器)を通って元の波長の異なる複数の光信号に分離され、それぞれファイバを介して複数の受光素子に達する。
【0116】
前述したように、本発明では、AlxGa(1-x)As/AlyGa(1-y)As(0≦y<x≦1)半導体多層膜を面発光型半導体レーザの反射鏡として用いても、酸素元素の活性層への取り込みを低減できるので、少ない層数で高い反射率を得ることができるAlxGa(1-x)As/AlyGa(1-y)As(0≦y<x≦1)半導体多層膜をもちながら、欠陥の少ない良好な品質でGaInNAs系材料を含む活性層をもつ面発光型半導体レーザの作製が可能になる。従って、高い歩留まり,低いコストの工程,簡便な構成で作製でき、低い素子抵抗,低いしきい値電流,高い発光効率,高い信頼性をもち、温度特性の良い面発光レーザを光通信システムに搭載できるので、冷却装置を必要としない簡便な構成で信頼性の高い高性能な光通信システムを得ることができる。
【0117】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0118】
実施例1
実施例1では、本発明の半導体膜成長装置(MOCVD装置)で、選択成長させたGaN基板上にGaN系材料のエピタキシャル成長膜を成長させ、半導体レーザを作製した。使用したMOCVD装置は図11に示した構成のものである。
【0119】
すなわち、実施例1で使用したMOCVD装置は、真空ポンプにより減圧可能な反応室1中に加熱可能なサセプタが設けられ、H2ガスをキャリアガスとして、TMG,TMA,TMIを反応室1に供給するラインが設けられている。さらに、SiH4(シラン)及びZn(CH32(DMZn:ジメチルジンク)を反応室1に供給するラインが設けられており、これらは、それぞれn型,p型のドーピング用原料ガスラインである。さらに、NH3ガスを供給するラインが設けられ、このラインの途中に、シリンダ中にAlGaIn合金の粒子を充填した窒素原料精製装置5が設けられている。ここで、AlGaIn合金の粒子は次のようにして作製した。すなわち、N2ガス雰囲気中でBNるつぼの中でAlGaIn合金を溶融させた後、冷却したフッ素化油(AUSIMONT S.p.A.製フォンブリンYL−VAC14/6)の中に滴下し、直径1〜5mmのAlGaIn合金の粒子が得られ、これをN2ガス雰囲気中で上記のシリンダに充填した。このような構成では、窒素原料ガスは、H2ガスをキャリアガスとしてこの精製装置5を通して反応室1に輸送される。
【0120】
実施例1では、図11のMOCVD装置を用いて、図19に示すような半導体レーザを作製した。すなわち、c面サファイア単結晶基板701上に基板温度550℃で200Åの厚さの非晶質のバッファGaN層702を成長させた。続いて、基板温度1050℃で2μmの厚さの下地GaN層703を成長させた。次に、試料をMOCVD成長室から大気中に取り出し、CVD法により0.1μmの厚さのSiO2膜704を成長させ、このSiO2膜704をホトリソグラフィーとウェットエッチングにより加工し、4μm幅のストライプ状窓(マスクパターン)を11μm幅の周期で作製する。再び試料をMOCVD成長室に設置し、基板温度1050℃でこのマスクパターン上に選択成長n−GaN膜705を成長させる。この場合、バッファGaN層702から成長したGaN膜がマスクパターン上で横方向に成長し、大面積で欠陥の少ない良質な単結晶膜705が得られた。なお、このような成長膜は、選択成長膜やELOG基板(Epitaxially Laterally Overgrown GaN Substrate)と呼ばれる。続いて、n−GaNコンタクト層706、n−AlGaNクラッド層707、n−GaNガイド層708、In0.02Ga0.98N/In0.15Ga0.85Nの3重のMQW活性層709、p−GaNガイド層710、p−AlGaNクラッド層711、p−GaNコンタクト層712をエピタキシャル成長させた。
【0121】
次に、レーザー素子加工プロセスを行い、図19に示すようなリッジストライプのものとし、p−GaNコンタクト層712上にp型電極713を形成し、n−GaNコンタクト層706上にn型電極714を形成し、半導体レーザ(ブロードストライプレーザ)を作製した。
【0122】
この半導体レーザ素子(ブロードストライプレーザ)の閾値電流は、室温下、CWで50mAであった。比較例として、使用したMOCVD装置において、窒素原料精製装置5を用いないで作製した同じ構成のブロードストライプレーザでは、閾値電流は、室温下、CWで80mAであった。
【0123】
このことからわかるように、本発明では、窒素原料(NH3)を窒素原料精製装置5に通すことにより、水分とアルコールを除去したNH3を反応室1に供給できて、不純物が少なく結晶品質の良いGaN系材料膜が得られ、より低い閾電流で室温連続発振可能なリッジストライプレーザを作製することが可能となった。
【0124】
実施例2
実施例2では、図12に示したMOCVD装置を用いて、半導体レーザを作製した。
【0125】
すなわち、実施例2で使用したMOCVD装置は、真空ポンプにより減圧可能な反応室1中に加熱可能なサセプタを有し、H2ガスをキャリアガスとして、TMG,TMA,TMI,AsH3,PH3,SeH2,Zn(CH32を反応室1に供給するラインを有している。さらに、ジメチルヒドラジンを入れたバブラ41を有し、このバブラ41と反応室1との間に、精製装置(ヒドラジン精製装置)5を有している。精製装置5における精製動作は次のようになる。すなわち、精製装置5中にGaInAl(重量比100:10:1.8)液を入れ、H2ガスをキャリアガスとして、この中にヒドラジン類の蒸気をバブリングさせて精製し、後、反応室1に輸送する。
【0126】
実施例2では、図12に示したMOCVD装置を用いて、図20に示すような半導体レーザを作製した。すなわち、n−GaAs基板720上に、n−AlGaAs下部クラッド層721、GaAs中間層722、GaInNAs/GaAs2重量子井戸構造からなる活性層723、GaAs中間層724、p−AlGaAs上部クラッド層725を順次に積層し、p−クラッド層725上にp型電極(ストライプ状電極)726を形成し、基板720の裏面にn型電極727を形成して、ブロードストライプレーザを作製した。
【0127】
ここで、活性層723中のAl濃度は1×1018cm-3以下であり、活性層723中の酸素(O)濃度は2×1017cm-3以下であった。また、閾電流は室温下、CWで25mAであった。
【0128】
比較例として、使用したMOCVD装置において、精製装置5を用いないで作製した同じ構成のブロードストライプレーザは、活性層中に2×1019cm-3以上のAl及び1×1018cm-3以上の酸素が取り込まれており、閾電流は、室温下、CWで250mA以上と著しく高い値となった。
【0129】
このことからわかるように、本発明では、窒素原料(ヒドラジン)を窒素原料精製装置5に通すことにより、水分とアルコールを除去したヒドラジンを反応室1に供給できて、不純物が少なく結晶品質の良いGaInNAs系材料膜が得られ、より低い閾電流で室温連続発振可能なブロードストライプレーザを作製することが可能となった。
【0130】
実施例3
実施例3では、図21に示したMOCVD装置を用いて、面発光型半導体レーザ素子を作製した。
【0131】
図21のMOCVD装置は、真空ポンプにより減圧可能な反応室1中に加熱可能なサセプタを有し、H2ガスをキャリアガスとして、TMG,TMA,TMI,AsH3,PH3,SeH2,Zn(CH32を反応室1に供給するラインを有している。
【0132】
さらに、ジメチルヒドラジンを入れたバブラ51を有し、このバブラ51と反応室1との間に、精製装置(ヒドラジン精製装置)5を有している。この精製装置(精製シリンダ)5は、第1真空引きバルブ52を介して真空ポンプ53に連結されている。さらに、精製装置(精製シリンダ)5中に抵抗加熱ボートを有し、金属Alを対向するシリンダ内面に蒸着する構成になっている。
【0133】
このような構成の成長装置(MOCVD装置)では、ヒドラジンを反応室1に導入する前に、精製装置(精製シリンダ)5を供給ラインから第1ラインバルブ,第2ラインバルブにより遮断し、ゲートバルブを開け、真空ポンプ53で真空引きを行いながら、精製装置(精製シリンダ)5の内面にAlを蒸着する。次に、ゲートバルブを閉じ、第1ラインバルブ,第2ラインバルブを開けて、H2ガスをキャリアガスとして、DMHyの蒸気をAl蒸着面に接触させた後、反応室1に輸送する。
【0134】
実施例3では、図21の装置を用いて、図22(a),(b)に示すような面発光型半導体レーザを作製した。なお、図22(b)は図22(a)の部分拡大図である。図22(a),(b)の面発光型半導体レーザの作製工程は、次のとおりである。すなわち、n−GaAs(100)基板901上に、n−AlAs/n−GaAsの28ペアからなる下部ミラー層902、第1のGaAsスペーサ層903、3層のGaInNAs活性層904aと2層のGaAsバリア層904bからなる多重量子井戸活性層904、第2のGaAsスペーサ層905、AlAs選択酸化層906、p−AlGaAs/p−GaAsの20ペアからなる上部ミラー層907、p−GaAsコンタクト層908を形成する。
【0135】
次に、この積層構造の30μm×30μmの領域のポスト形状のレーザ発振部の半導体柱が残るように、AlAs選択酸化層906に達する深さ以上までCl2ガスでECRエッチングする。このとき、半導体柱の高さは、6.0μmである。
【0136】
次に、半導体柱の選択酸化AlAs膜の端面から水蒸気を導入し約25μm2の断面の電流経路を残し、絶縁性のAlxy膜(Alxy電流狭さく層)906bに変化させる。次に、非感光性ポリイミド910をスピンコートにより塗布し、エッチングした底面からの高さが4.0μmになるように、350℃で硬化させる。次に、レジストを塗布し、リソグラフィー,O2ガスを用いたRIEエッチングにより、半導体柱の上面の28μm×28μmの領域のポリイミド910を除去する。次に、このポリイミドを除去した半導体柱上面の光出射部を除いた領域とポリイミド表面に、p側電極911及び配線部を電極膜蒸着とリフトオフ法で形成する。また、基板901の裏面にn側電極912を形成する。
【0137】
このように作製した面発光型半導体レーザにおいて、活性層904中の、Al濃度は1×1018cm-3以下であり、酸素(O)濃度は2×1017cm-3以下であった。また、閾電流は室温下、CWで0.7mAであった。
【0138】
比較例として、使用したMOCVD装置において、精製装置(精製シリンダ)5を用いないで作製した同じ構成の面発光型半導体レーザは、活性層904中に3×1019cm-3以上のAl及び2×1018cm-3以上の酸素が取り込まれており、閾電流は室温下、CWで4mA以上と著しく高い値となった。
【0139】
このことからわかるように、本発明では、窒素原料(ヒドラジン)を窒素原料精製装置5に通すことにより、水分とアルコールを除去したヒドラジンを反応室1に供給できるので、不純物が少なく結晶品質の良いGaInNAs系材料膜が得られ、より低い閾電流で室温連続発振可能な面発光型半導体レーザを作製することが可能となった。
【0140】
【発明の効果】
以上に説明したように、請求項1乃至請求項5記載の発明によれば、MOCVD法により、基板上に、Alを構成元素として含む半導体層と窒素(N)を含む活性層とを順次に成長させる半導体発光素子の製造方法であって、
前記基板と前記活性層の間に有機金属Al原料を用いてAlを構成元素として含む半導体層を成長させる工程と、窒素化合物からなる窒素原料を金属Alまたは金属Alを含む合金に接触させた後に反応室に輸送して前記窒素(N)を含む活性層を成長させる工程とを含んでおり、窒素化合物からなる窒素原料を金属Alまたは金属Alを含む合金に接触させることで、水分とアルコールを除去した窒素化合物からなる窒素原料を反応室に供給できるので、不純物が少なく結晶品質の良い窒素(N)を含む活性層を有する半導体発光素子を得ることができる。
【0141】
特に、請求項1乃至請求項5記載の発明によれば、前記窒素化合物には、少なくともヒドラジン類が含まれているので、より不純物が少なくより結晶品質の良い窒素(N)を含む活性層を有する半導体発光素子を得ることができる。すなわち、反応性が高く分解温度が低いことにより、良好な結晶品質のエピタキシャル成長膜が得易いヒドラジン類を窒素原料として用い、このヒドラジン類を請求項1の仕方で精製することで、水分とアルコールを除去したヒドラジン類を反応室に供給できて、より不純物が少なくより結晶品質の良い窒素(N)を含む活性層を有する半導体発光素子を得ることができる。
また、請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の半導体発光素子の製造方法において、金属Alまたは金属Alを含む合金は液相であり、該金属Al又は金属Alを含む合金中に窒素化合物からなる窒素原料ガスをバブリングさせ通過させた後に、反応室に輸送し、窒素(N)を含む活性層を成長させるようになっており、金属Alまたは金属Alを含む合金が液体で、この液体中を窒素原料ガスをバブリングさせ通過させるので、気液の接触面積が大きくとれ、窒素原料ガス中の水分とアルコールを効率よく除去でき、より不純物が少なく結晶品質の良い窒素(N)を含む活性層を有する半導体発光素子を得ることができる。
【0143】
また、請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の半導体発光素子の製造方法において、金属Alまたは金属Alを含む合金は固相であり、粒子状または微粒子状または膜状または多孔質であるので、窒素原料ガスと金属Alまたは金属Alを含む合金との接触面積が大きくとれ、窒素原料ガス中の水分とアルコールを効率よく除去でき、より不純物が少なく結晶品質の良い窒素(N)を含む活性層を有する半導体発光素子を得ることができる。
【0144】
また、請求項4記載の発明によれば、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の半導体発光素子の製造方法において、窒素(N)を含む活性層は、GaN系材料であり、不純物が少なく結晶品質のよいGaN系材料活性層を得ることができる。
【0145】
また、請求項5記載の発明によれば、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の半導体発光素子の製造方法において、窒素(N)を含む活性層は、GaInNAs系材料であり、不純物が少なく結晶品質の良いGaInNAs系材料活性層を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願の発明者のMOCVD装置で作製したGaInNAs量子井戸層とGaAsバリア層とからなるGaInNAs/GaAs 2重量子井戸構造からなる活性層からの室温フォトルミネッセンススペクトルを示す図である。
【図2】半導体発光素子の試料構造を示す図である。
【図3】図2に示した半導体発光素子の一例として、クラッド層をAlGaAsとし、中間層をGaAsとし、活性層をGaInNAs/GaAs2重量子井戸構造として構成した素子を1台のエピタキシャル成長装置(MOCVD装置)を用いて形成したときの、窒素(N)濃度と酸素(O)濃度の深さ方向分布を示す図である。
【図4】図3と同じ試料のAl濃度の深さ方向分布を示す図である。
【図5】本発明に係る半導体膜成長装置の構成例を示す図である。
【図6】金属Alまたは金属Alを含む合金が液相のものである場合、金属Alまたは金属Alを含む合金中を窒素化合物からなる窒素原料ガスをバブリングさせ通過させた後に、反応室に輸送する精製装置の構成例を示す図である。
【図7】固体Alまたは固体Al合金のペレットまたは微粒子を用いた精製装置の一例を示す図である。
【図8】固体Alまたは固体Al合金のペレットまたは微粒子を用いた精製装置の他の例を示す図である。
【図9】窒素原料源が液体である場合に、窒素原料をバブリングによって供給する構成例を示す図である。
【図10】窒素原料源が液体である場合に、窒素原料をバブリングによって供給する構成例を示す図である。
【図11】MOCVD装置でGaN系材料のエピタキシャル成長膜を成長させる場合の装置構成例を示す図である。
【図12】MOCVD装置でGaInNAs系材料のエピタキシャル成長膜を成長させる場合の装置構成例を示す図である。
【図13】InGaN膜を活性層とするSCH型レーザー素子の場合で、端面発光型半導体レーザの構成例を示す図である。
【図14】InGaN膜をウェル層としAlGaNをバリア層とする量子井戸構造(QW)活性層の面発光型半導体レーザの構成例を示す図である。
【図15】GaInNAs膜を活性層とするSCH型レーザー素子の場合で、端面発光型半導体レーザの構成例を示す図である。
【図16】GaInNAs膜をウェル層としGaAsをバリア層とする量子井戸構造(QW)活性層の面発光型半導体レーザの構成例を示す図である。
【図17】本発明の半導体レーザ(面発光型半導体レーザ)を用いた並列伝送方式光通信システム(光伝送システム)の一例を示す図である。
【図18】本発明の面発光型半導体レーザを用いた多波長伝送方式光通信システム(光伝送システム)の一例を示す図である。
【図19】図11のMOCVD装置を用いて作製した半導体レーザを示す図である。
【図20】図12のMOCVD装置を用いて作製した半導体レーザを示す図である。
【図21】MOCVD装置の一例を示す図である。
【図22】実施例3の面発光型半導体レーザ素子を示す図である。
【符号の説明】
201 GaAs基板
202 下部クラッド層
203 中間層
204 活性層
205 上部クラッド層
1 反応室
2 III族原料源
3 V族原料源
4 窒素原料源
5 精製装置
6 ガス排気部
11 第1のバブラ
21 第1のバブラ
22 第2のバブラ
31 NH3ガスのボンベ
41 第1のバブラ
301 選択成長GaN膜の基板
302 バッファGaN層
303 下地n−GaN層
304 n−AlGaNクラッド層
305 n−GaNガイド層
306 InGaN活性層
307 p−GaNガイド層
308 p−AlGaNクラッド層
309 p−GaNコンタクト層
310 p−電極
311 n−電極
401 選択成長GaN膜の基板
402 AlNバッファ層
403 GaNバッファ層
404 半導体多層膜反射鏡(下部半導体分布ブラッグ反射鏡)
405 n−GaNコンタクト層
406 n−GaNスペーサ層
407 InGaN/AlGaN量子井戸(QW)活性層
408 p−GaNスペーサ層
409 p−GaNコンタクト層
410 半導体多層膜反射鏡(上部半導体分布ブラッグ反射鏡)
411 電流狭窄部
412 p−電極
413 n−電極
501 GaAs単結晶基板
502 n−クラッド層
503 ガイド層
504 GaInNAs活性層
505 ガイド層
506 p−クラッド層
507 p−電極(ストライプ状電極)
508 n−電極(下部電極膜)
601 n−GaAs単結晶基板
602 n−半導体多層膜反射鏡
603 スペーサ層
604 GaInNAs/GaAs量子井戸(QW)活性層
605 スペーサ層
606 p−半導体多層膜反射鏡
607 p−コンタクト層
608 電流狭窄部
609 p側電極
610 n側電極

Claims (5)

  1. MOCVD法により、基板上に、Alを構成元素として含む半導体層と窒素(N)を含む活性層とを順次に成長させる半導体発光素子の製造方法であって、
    前記基板と前記活性層の間に有機金属Al原料を用いてAlを構成元素として含む半導体層を成長させる工程と、窒素化合物からなる窒素原料を金属Alまたは金属Alを含む合金に接触させた後に反応室に輸送して前記窒素(N)を含む活性層を成長させる工程とを含み、前記窒素化合物には、少なくともヒドラジン類が含まれていることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
  2. 請求項1記載の半導体発光素子の製造方法において、金属Alまたは金属Alを含む合金は液相であり、該金属Al又は金属Alを含む合金中に窒素化合物からなる窒素原料ガスをバブリングさせ通過させた後に、反応室に輸送し、窒素(N)を含む活性層を成長させることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
  3. 請求項1記載の半導体発光素子の製造方法において、金属Alまたは金属Alを含む合金は固相であり、粒子状または微粒子状または膜状または多孔質であることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の半導体発光素子の製造方法において、窒素(N)を含む活性層は、GaN系材料であることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
  5. 請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の半導体発光素子の製造方法において、窒素(N)を含む活性層は、GaInNAs系材料であることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
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