JP4535671B2 - 半導体発光素子の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本 発明は、主に光通信用半導体レーザ技術に係り、特に、高い発光効率、低いしきい値電流、寿命の長い半導体発光素子製造方法関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インターネットの爆発的普に見られるように扱われる情報量が飛躍的に増大しており、今後さらに加速すると考えられる。このため幹線系のみならず、各家庭やオフィスといった加入者系やLAN (Local Area Network)などのユーザに近い伝送路、さらには各機器間や機器内の配線へも光ファイバーが導入され、光による大容量情報伝送技術が極めて重要となる。
【0003】
現在の光ファイバー通信には、石英系光ファイバーでの損失と分散が小さい1.3μm,1.55μm 帯の長波長帯の半導体レーザが用いられている。今後は各端末へも光ファイバー化(Fiber To The Home (FTTH)等)が進み、更には各機器間,機器内においても光による情報伝送が導入され光による情報伝送技術がますます重要になる。
【0004】
これらを実現するためには、光通信モジュールの「桁違い」の低価格化が最重要課題の一つであり、消費電力が小さく、かつ冷却システムを必要としない良好な温度特性の長波長帯半導体レーザが強く求められている。
この波長に対応するバンドギャップを有するIII−V 族半導体であるInP 基板上のGaInPAs 系材料が市場を独占している。しかし、InP 系材料は、クラッド層(スペーサ層)と発光層との間の伝導帯バンド不連続が小さく、発光層への注入電子の閉じ込めが温度上昇とともに悪くなる。
【0005】
これを解決できる材料として、特開平6−37355号公報では、GaAs基板上のGaInNAs系材料が提案されている。GaInNAsは、Nと他のV族元素を含んだIII−V族混晶半導体である。GaAsより格子定数が大きいGaInAsにNを添加することで格子定数をGaAsに格子整合させることが可能であり、更にバンドギャップエネルギーが小さくなり、1.3μm,1.5μm帯での発光が可能な材料である。
【0006】
文献「Jpn.J.Appl.Phys,39,6A(2000)]に報告されている。このレーザは、MOCVD法で作製し、GaInPをクラッド層にし、GaAsをガイド層にしたGaInNAs量子井戸レーザである。発振波長が1.29μmで、特性温度(T0)は205Kでしきい値電流密度は0.92kA/cmであることが示されている。従来のGaInPAs/InP系のレーザと比較すると、GaInNAs系レーザは温度特性が格段に優れ、しきい値電流密度は遜色ないレベルである。
【0007】
【特許文献1】
特開平6−37355号公報
【非特許文献1】
Jpn.J.Appl.Phys,39,6A(2000)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、将来の高速駆動化、寿命化の動向に対応するには、さらに高いレーザ特性が望まれる。このためには、素子の結晶品質、特に活性層の結晶品質の向上が必要である。
よって、我々は、前記文献と同じMOCVD装置を用い、同一の工程で、活性層周辺が同一の構成のエピタキシャル成長膜を形成し、活性層周辺の品質を検討する調査実験を行った。
【0009】
図15は、調査実験での試料の断面構造を示す図である。
図15に示すように、n-GaAs基板201上に、n-GaAsバッファ層202、n-GaInPクラッド層203、GaAsガイド層204、GaAsをバリア層とするGaInNAs2重量子井戸構造活性層(DQW)205、GaAsガイド層206、p-GaInPクラッド層207、p- GaAsコンタクト層208を順次積層しp-GaAs/p-GaInP/GaAs/GaInNAs DQW /GaAs/n-GaInP/n-GaAs//n-GaAs sub.構成の積層膜からなるレーザ構成エピタキシャル成長膜を形成する。
【0010】
導入したガスは、H2ガスをキャリアガスとして、Ga(CH3)(TMG:トリメチルガリウム), In(CH)(TMI:トリメチルインジウム)、AsH(アルシン)、PH(フォスフィン)、DMHy(ジメチルヒドラジン)の窒素化合物である。なお、DMHy(ジメチルヒドラジン)は半導体材料メーカで精製したものを使用した。
【0011】
この試料をSIMS分析(Secondary Ion-microprobe Mass Spectrometry;二次イオン質量分析)を行った。図16は測定条件を示す図である。なお、以後のN濃度とO(酸素)濃度SIMS分析でも、この測定条件を用いた。
【0012】
図17は、活性層付近のN(窒素)濃度とO(酸素)濃度の深さ方向分布を示す図である。
同図によると、GaInNAs/GaAs2重量子井戸構造に対応して、強度は弱いが活性層中に2つのOのピークが見られる。活性層に取りこまれたOは非発光再結合中心を形成するため、活性層の発光効率を低下させ、しきい値電流を上昇させるなどレーザ特性を低下させる知られている。本発明者は、このOの活性層への取り込みを少なくすれば、レーザ特性を向上できると考え、その方法を検討した。
【0013】
活性層に酸素が取り込まれる理由は次ぎのように考えられる。
活性層を成長させる時、N原料として用いるヒドラジン類などのN原料の多くは、Oとの親和性が高く、Oを不純物として成長膜に取り込みやすい。このため、N原料を反応室に導入したとき、反応室やガスラインに残留する酸素ガス、水などと反応しOを膜中にとりこむ。
【0014】
このような考察により、反応室やガスラインに残留する酸素ガス、水などのO発生源を除去する方法を試行し、本発明に至った。
【0015】
本発明の目的は、活性層成長工程で、Oを膜中に取り込みやすいN原料を使用しても、欠陥、不純物が少ない結晶品質の良いGaInNAs系活性層をもつ素子構成、およびその形成技術を提供し、それにより、高い発光効率、低い閾値電流、長い寿命の半導体発光素子製造方法を提供することである。
【0016】
以下、各請求項のより具体的な目的を記す。
請求項1〜記載の発明の目的は、簡便な工程で、高い発光効率、低い閾値電流、長い寿命が得られる長波長の半導体発光素子の製造方法を提供することである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、次のような構成を採用した。
【0021】
本発明は、基板上にNを含むIII―V族化合物半導体からなる活性層を有する半導体発光素子を、MOCVD法により形成する半導体発光素子の製造方法であって、基板と活性層との間にGatIn1-tPuAs1-u(0≦t≦1,0≦u≦1)からなる下部クラッド層および下部光ガイド層を成長する工程を有し、下部クラッド層の成長前に、または、下部クラッド層の成長中、または、下部クラッド層の成長後で下部光ガイド層を成長させる前に、有機Al原料を反応室および原料導入ラインに導入して層厚を0.4μm以下となるAlを含む層を形成することを特徴としている。有機Al原料を反応室に導入後とNを含むIII―V族化合物半導体からなる活性層の成長開始までの間に、前記反応室内および前記導入ラインを真空引きして前記反応室内および前記原料導入ラインにおいて窒素化合物原料が触れる場所に残留したAl原料種を除去する工程、あるいは、反応室内および導入ラインをパージして前記反応室内および前記原料導入ラインにおいて窒素化合物原料が触れる場所に残留したAl原料種を除去する工程を設けることを特徴とする。Al原料種を除去する工程の際に、反応室や導入ラインを加熱する。
【0022】
本発明により特性を向上させようとする半導体発光素子の基本的な構成は次にようになる。
化合物半導体からなる基板の上に、化合物半導体からなる下部周囲層と、前記Nを含むIII−V族化合物半導体層を有する活性層(GaInNAs系活性層)と、化合物半導体からなる上部周囲層を順次し積層したエピタキシャル積層膜構成を有する。さらに、基板と上部周囲層に接続しキャリアを注入するp側とn側の電極を設け、また、必要に応じ光反射ミラー等を設ける構成をとる。
【0023】
基板としては、例えばGaAs, InP, GaP等の化合物半導体基板が用いられる。これらの基板のうち、前記GaInNAs系活性層と周囲層を良好にエピタキシャル成長することが可能なのでGaAs基板を用いることが好ましい。
前記GaInNAs系活性層の材料として、GaNAs、GaInNAs、GaInAsSb、GaInNAsP、GaInNP、GaNP、GaNAsSb、GaInNAsSb、InNAs、InNPAsなどが挙げられる。
【0024】
本発明の素子構成は、これらのGaInNAs系活性層におけるO濃度が、1.5×1017cm−3以下である構成をとることを特徴とする。
後述の実施例1〜3で示すように、O濃度が、1.5×1017cm−3以下であれば高いレーザ特性が得られるようになる。
【0025】
前記周囲層は、光を閉じ込める、または光とキャリアを閉じ込める、または光を導波させる、またはキャリアを活性層に輸送する働きを行う。下部周囲層は、基板と活性層の間の層とする(図1参照)。
【0026】
前記周囲層の全て、または、少なくとも下部周囲層の大部分は、GatIn1-tPuAs1-u(0≦t≦1,0≦u≦1)からなる。これは、GatIn1-tPuAs1-uからなる周囲層がAlを含まないため出力光による端面破壊を起こしにくいこと、また、GaInNAs系活性層よりバンドギャップが大きく屈折率が小さいので、良好に光とキャリアを閉じ込める働きをするためである。
【0027】
周囲層内の層は、光を閉じ込める、または光とキャリアを閉じ込める上部クラッド層(図2の132)および下部クラッド層(同112)と、これらのクラッド層と活性層(同12)との間に、光を導波し活性層への光閉じ込めを向上させる上部光ガイド層(同131)および下部光ガイド層(同113)を設ける構成がレーザ特性の向上のために好ましい(図2参照)。
【0028】
クラッド層は、より大きなバンドギャップをもち、より小さな屈折率をもち、GaAs基板上に良好にエピタキシャル成長するのでGaInPが好ましい。光ガイド層は、GaInNAs系活性層とGatIn1-tPuAs1-u(0≦t≦1,0≦u≦1)の間のバンドギャップと屈折率を有し、GaAs基板上に良好にエピタキシャル成長するのでGaAsが好ましい。
【0029】
この積層膜を微細加工プロセスなどの半導体作製技術を用い加工し、キャリアを注入するp側とn側の電極や必要に応じ光反射ミラー等を設け発光素子を形成する。発光素子の形式は、レーザ素子、LED素子などがある。
【0030】
レーザの素子の形式例を挙げれば、活性層の型により、シングルヘテロ接合型、ダブルヘテロ接合型、分離閉じ込めヘテロ接合(SCH)型、多重量子井戸構造(MQW)型、共振器の形態によりファブリ-ペロ(FP)型、分布帰還(DFB)型、分布ブラッグ反射器(DBR)型があげられるが、これらの型に限定されない。
【0031】
前記積層膜の成長法の形式は、次のようなものが例としてあげられる。
・MOCVD(metalorganic chemical vapor deposition)
・MOMBE(metalorganic molecular beam epitaxy)
・CBE(chemical beam epitaxy)
【0032】
Ga原料の例をあげれば、(CH)Ga:TMG、(CH)Ga、(CH)GaCl、Ga単体などである。
In原料の例をあげれば、(CH)In :TEI、InBr3、In単体などである。P原料の例をあげれば、PH、(CH)P、(CH)P、CHPH、P単体などである。
As原料の例をあげれば、AsH、(CH)As、(CH)As、CHAsH、As単体などである。
【0033】
N原料としては, ヒドラジン類、NH、のほかNHR、NHR、NR(Rはアルキル基またはアリール基)からなるアミン類が含まれる。ヒドラジン類とは、ヒドラジン、モノメチルヒドラジン、ジメチルヒドラジン、ブチルヒドラジン、ヒドラゾベンゼンなどで、NRNR(Rは水素、またはアルキル基、アリール基)の化学式をとる物質とする。
前記下部周囲層の成長中に導入する有機Al原料の例をあげれば、(CH)Al :TMA、(CH)Al :TEA、(CH)AlCl、(CH)AlHなどである。
【0034】
GaInNAs系活性層におけるO濃度を、1.5×1017cm−3以下にする方法は次のようなものがある。
(1)基板を反応室に搬送する前、または、基板を反応室に搬送した後に、反応室および原料導入ラインを真空引きし、反応系から水分、酸素を除去する。
【0035】
(2)基板を反応室に搬送する前、または、基板を反応室に搬送した後に、反応室および原料導入ラインをH2ガス、N2ガスや、Ar,He等の不活性ガスでパージし、反応系から水分、酸素を除去する。
(3)基板を反応室に搬送する前、または、基板を反応室に搬送した後に、反応室および原料導入ラインに水分や酸素と反応しやすいガスを導入し、反応系から水分、酸素を除去する。
【0036】
なお、活性層におけるO濃度1.5×1017cm−3以下とすると、Oが原因となる非発光再結合が起こりにくくなり、高い発光効率、低いしきい値電流、長い寿命をもち、温度特性が優れ、石英系ファイバとの整合性がよい発振波長をもつ長波長半導体レーザが得られる。
【0037】
また、基板と下部クラッド層の間または下部クラッド層中または下部クラッド層と下部光ガイド層の間に該Alを含む層を設け窒素を含む活性層におけるAl濃度、5.0×1016cm−3以下としてもよい
【0038】
この下部周囲層の成長前、または、成長中に、有機Al原料を反応室に導入し、Alを含む層を形成する。このAlを含む層はAlGaInP,AlGaInPAs,AlInP,AlGa
As,AlAs,AlAsP等からなり不純物として少なくともOを含む。導入する有機Al原料の量は、生成するAlを含む層の膜厚が、0.4μm以下であるように設定することが好ましい。これは、0.4 μm 以上であると有機Al原料導入後に成長させるエピタキシャル成長積層膜の結晶品質の低下が顕著になるためである。なお、本発明の下部周囲層には、有機Al原料を反応室に導入した結果生成するAlを含む層も含む。
【0039】
有機Al原料の導入は、下部クラッド層の成長前に、または、下部クラッド層の成長中、または、下部クラッド層の成長後で下部光ガイド層を成長させる前に行うのが好ましい。この結果、Alを含む層は光ガイド層以外の個所に形成される。これは、光ガイド層にこの膜を形成した場合、レーザ駆動時に多数のp,nのキャリアが光ガイド層に同時に存在するため、Alを含む層に取り込まれたOが非発光再結合を増大させ、レーザ特性を低下させるためである。
【0040】
前述発明は、主に次に示す検証実験の結果から導かれた。
前述の調査実験と同じMOCVD装置(後述の図10参照)を用いて、同じ成長条件で、p-GaAs/p-GaInP/GaAs/GaInNAs DQW /GaAs/n-GaInP/n-GaAs//n-GaAs sub.からなるエピタキシャル成長膜Aを形成し、これを加工してブロードストライプレーザAを作製した(このレーザAの作製の詳細は実施例1に示す)。
【0041】
また、クラッド成長中にTMAを2sccmで30sec導入した以外はブロードストライプレーザAの場合と同じ条件、構成でエピタキシャル成長膜Cを形成し、これを用いてブロードストライプレーザCを作製した。
【0042】
さらに、クラッド成長中にTMAを2sccmで30sec導入した後、成長を一次中断してサセプターを加熱した状態で反応室と原料導入ラインを5.0 E-2 Paの圧力まで真空引きを行った以外はブロードストライプレーザAの場合と同じ条件、構成でエピタキシャル成長膜Dを形成し、これを用いてブロードストライプレーザDを作製した。
【0043】
反応室と原料導入ラインを2.0E-4 Paの圧力まで真空引きを行った以外は、エピタキシャル成長膜Dの形成法と同じ手順でエピタキシャル成長膜Eを形成し、ブロードストライプレーザEを作製した。
レーザC,D,Eの作製の詳細は実施例2に示す。
【0044】
これらのエピタキシャル成長膜の活性層でのSIMS分析によるO濃度とAl濃度およびこれらのレーザのしきい値電流密度を図3に示す。図4は、エピタキシャル成長膜Eの活性層付近のO濃度の深さ方向分布を示す図である。
【0045】
レーザAと比較し、レーザCは活性層中のO濃度が1.5×1017cm−3に低減し、しきい値電流密度も低下している。これは、レーザCの場合、下部クラッド層成長中にTMAを短時間導入したので、反応室と原料導入ラインに存在していた酸素、水などが除去されたため活性層中のO濃度が低減したためと考えられる。
【0046】
なお、活性層中のAl濃度は、エピタキシャル成長膜Aではバックグラウンドレベルであるが、エピタキシャル成長膜Cでは、5.0×1016cm−3となりAlが活性層に取り込まれている。これはTMAの導入により反応室と原料導入ラインに存在していた酸素、水などが除去されたが、過剰のTMAおよびその変性物が反応室と原料導入ラインに残り、活性層成長時に、導入されるN原料中に不純物として含まれる水分、アルコール類と反応してAlの酸化物を形成し活性層中にOが取り込まれると考えられた。よって、この残留Al種を除去できれば、さらにレーザ特性を向上できると予想された。
よって、エピタキシャル成長膜Dとエピタキシャル成長膜Eでは、TMA導入後に反応室と原料ラインを真空引きすることにより残留Al種の除去を試みた。
【0047】
真空引きにより活性層中のAl濃度が小さくなり、且つ、活性層中のO濃度も周辺のGaAs光ガイド層と同等レベル(1.0×1017cm−3)まで低下した。この活性層中のO濃度の低下に対応して、レーザのしきい値電流密度が0.5kA/cm2まで低下した。
【0048】
レーザD,Eの場合は、真空引きによりTMA自身およびその変性物が反応室と原料導入ラインから除去されるため、活性層中にOが取り込まれることがなくなり、しきい値電流密度がより低下したと考えられる。よって、Al原料の短時間の導入によってレーザ特性をある程度向上できるが、Al原料の導入後にAl原料とその変性物を除去することによりさらにレーザ特性を向上できることがわかった。
【0049】
図5は、Al濃度のSIMS分析条件を示す図である。本例におけるSIMS分析条件は、1次イオン種O+、一次加速電圧5.5kV、スパッタレート0.3nm/S、測定領域60μmΦ、真空度<3E−7Pa、測定イオンの極性+である。
【0050】
下部周囲層の成長中または前記下部周囲層の成長前に、有機Al原料を反応室に導入しAlを含む層を形成するので、反応室やガスラインに残留する酸素や水が有機Al原料と反応して除去される。このため、その後の活性層成長工程で、残留酸素や水と反応しOを膜中に取り込みやすいN原料を使用しても、欠陥、不純物が少ない結晶品質の良いGaInNAs系活性層を形成することができる。
よって、より高い発光効率、より低い閾値電流、より長い寿命をもつ、温度特性が優れ、石英系ファイバとの整合性がよい発振波長をもつ長波長半導体レーザが得られる。
【0051】
下部クラッド層の成長中または前記下部周囲層の成長前後に、有機Al原料を反応室に導入し、Alを含む層を形成すれば、活性層から離れたクラッド層付近にOが取り込まれる。このため、活性層周辺に多数のp,nのキャリアを同時に注入しても、Oが原因となる非発光再結合が起こらず、より確実に高い発光効率、低いしきい値電流、長い寿命の半導体発光素子が得られる。
【0052】
活性層におけるAl濃度、5.0×1016cm−3以下にすると、Alと一緒に取り込まれるO濃度がより小さくなり、Oが原因となる非発光再結合が起こりにくくなり、より確実に高い発光効率、低いしきい値電流、長い寿命の半導体発光素子が得られる。
【0053】
参考例としての発明は、基板とNを含むIII−V族化合物半導体層を有する活性層との間に下部周囲層を有し、該下部周囲層が主にGatIn1-tPuAs1-u (0≦t≦1, 0≦u≦1)からなる半導体発光素子の製造方法であって、有機Al原料を反応室に導入した後、反応室に基板を搬送し該基板上に膜成長させることを特徴としている。
【0054】
GaInNAs系活性層をもつSCH型端面発光型レーザを、MOCVD装置を使用し作製する場合で請求項5の製造方法を説明する。
反応室とガスラインを高真空まで真空引きした後、TMAの少量を反応室に導入し、つづいて、再度、反応室とガスラインを高真空まで真空引きする。さらにつづけて、高真空下、ロードロック室からGaAs基板を反応室に搬送しサセプター上にセットする。
【0055】
次に、TMG, TMI, AsH, PH、HSeを導入しn-GaAs基板21上にn-GaInAsPクラッド層22をエピタキシャル成長させる。
【0056】
次に、TMG, AsHを導入しGaAsガイド層23を、TMG, TMA、 TMI ,AsH3、DMHyを導入しGaInNAs活性層24を、TMG, AsHを導入しGaAsガイド層25を、TMG, TMA、 AsH, PH、DMZn を導入しp- GaInAsPのクラッド層26、p- GaAsコンタクト層27を順次積層しp-GaAs/p-GaInAsP/GaAs/GaInNAs/GaAs/n-GaInAsP//n-GaAs sub.構成の積層膜からなるレーザ構成エピタキシャル成長膜を形成する。
【0057】
このあと、p-電極部28、n-電極部29を設け、へき開により膜面に平行な共振器を形成し、SCH型端面発光レーザを作製する(以上図6参照)。
【0058】
参考例としての発明の作用効果)
有機Al原料を反応室に導入する前処理を行うことにより、反応室および原料ライン中の酸素および水分が除去される。よって、活性層中のO濃度が低下しOが原因となる非発光再結合が起こりにくくなり、高い発光効率、低いしきい値電流、長い寿命の半導体発光素子が得られる。
【0059】
また、基板とNを含むIII−V族化合物半導体層を有する活性層との間に下部周囲層を有し、該下部周囲層がAlを含まず、主にGatIn1-tPuAs1-u (0≦t≦1, 0≦u≦1)からなる半導体発光素子の製造方法であって、反応室に基板を搬送した後、前記下部周囲層の成長前または成長中に、有機Al原料を反応室に導入し、少なくともOを不純物として含んだAlを含む層を設けるようにしてもよい。
【0060】
GaInNAs系活性層をもつSCH型端面発光型レーザを、MOCVD装置を使用し作製する場合製造方法を説明する。
高真空下、ロードロック室からGaAs基板21を反応室に搬送しサセプター上にセットする。TMG, TMI, AsH, PH、H2Seを導入しn-GaAs基板上にn-GaInAsPクラッド層22のエピタキシャル成長を開始する。このクラッド層成長を一旦中断し、有機Al原料の少量を短時間反応室に導入する。次に、クラッド層成長を再開する。
【0061】
この場合クラッド層成長を中断せず、クラッド層を成長しながら少量の有機Al原料を短時間導入しても良い。また、有機Al原料の導入はクラッド層の成長前やクラッド層の成長後に行っても良い。
【0062】
なお、有機Al原料の導入は、ガイド層成長中に行ってもよいが、請求項3の説明中で示した理由により、クラッド層の成長中または成長前に導入するのが好ましい。
【0063】
次に、TMG, AsHを導入しGaAs光ガイド層23を、TMG, TMA、 TMI ,AsH, DMHyを導入しGaInNAs活性層24を、TMG, AsHを導入しGaAs光ガイド層25を、TMG, TMA、 AsH3、PH3、DMZn を導入しp- GaInAsPのクラッド層26、p- GaAsコンタクト層27を順次積層しp-GaAs/p-GaInAsP/GaAs/GaInNAs/GaAs/n-GaInAsP//n-GaAs sub.構成の積層膜からなるレーザ構成エピタキシャル成長膜を形成する。
【0064】
このあと、上記参考例としての発明の製造例と同様な工程でSCH型端面発光レーザを作製する(図7参照)。
【0065】
有機Al原料を反応室に導入するので、反応室および原料ライン中の酸素および水分が除去される。よって、活性層中のO濃度が低下しOが原因となる非発光再結合が起こりにくくなり、高い発光効率、低いしきい値電流、長い寿命の半導体発光素子が得られる。
【0066】
また、有機Al原料を反応室に導入後とNを含むIII−V族化合物半導体層を有する活性層の成長開始の間に、成長室内および原料導入ラインの窒素化合物原料が触れる場所に残留したAl原料種を除去する工程を設けてもよい。
【0067】
GaInNAs系活性層をもつSCH型端面発光型レーザを、MOCVD装置を使用し作製する場合製造方法を説明する。
【0068】
高真空下、ロードロック室59からGaAs基板21を反応室52に搬送しサセプター上にセットする。TMG, TMI, AsH, PH、HSeを導入しn-GaAs基板上にn-GaInAsPクラッド層221のエピタキシャル成長を開始する。このクラッド層成長中に有機Al原料の少量を短時間反応室に導入する。次に、クラッド層成長221を一旦中断し、反応室52とガスラインを高真空まで真空引きする。この後、クラッド層成長を再開しする。
【0069】
次に、TMG、AsHを導入しGaAs光ガイド層23を、TMG、TMA、TMI、AsH、DMHyを導入しGaInNAs活性層24を、TMG、AsHを導入しGaAs光ガイド層25を、TMG、TMA、AsH、PH、DMZn を導入しp- GaInAsPの上部クラッド層26、p- GaAsコンタクト層27を順次積層しp-GaAs/p-GaInAsP/GaAs/GaInNAs/GaAs/n-GaInAsP//n-GaAs sub.構成の積層膜からなるレーザ構成エピタキシャル成長膜を形成する。
【0070】
このあと、上記参考例としての発明の製造例と同様な工程でSCH型端面発光レーザを作製する(図7参照)。
【0071】
Al原料種を除去する工程は、成長室内および原料導入ラインを真空引きする方法やHガスやNガスやArガスやHeガスで成長室内および原料導入ラインをパージする方法やこれらの方法を組み合わせる方法などがある。これらの方法を、サセプターや反応室や原料導入ラインを加熱しながら実施すると、Al原料種を除去する効果がより大きくなる。
【0072】
また、有機Al原料を反応室に導入後に、成長室内および原料導入ラインに残留したAl原料種を除去する工程を行う、反応室および原料ライン中の酸素および水分と残留したAl原料種が除去されるので、活性層中のO濃度がより低下し、Oが原因となる非発光再結合がより少なくなり、より高い発光効率、より低いしきい値電流、より長い寿命の半導体発光素子が得られる。
【0073】
また、上記半導体発光素子を搭載した光伝送システムも可能である。
【0074】
この光伝送システムの構成例を示す。
図8は、上記半導体発光素子を光源として用いた並列伝送方式光伝送システムの一例である。面発光半導体レーザからの信号を複数のファイバを用い同時に伝送する。
【0075】
図9は、上記半導体発光素子を光源として用いた多波長伝送方式光伝送システムの一例である。複数の発振波長の異なる発光素子からの光信号が、それぞれ光ファイバを介して光合波器に導入される。この波長の異なる複数の光信号は合波され、1本の光ファイバ中に導入され伝送される。伝送された光信号は伝送先の機器に接続される光分波器を通って元の波長の異なる複数の光信号に分離され、それぞれファイバを介して複数の受光素子に達する。
【0076】
この光伝送システムは、長、中距離の通信システムや、コンピューター間、チップ間、チップ内の光インターコネクションや、光コンピューティングにおける伝送に適用される。
【0077】
また、温度特性の優れ、発振波長が石英系ファイバとの整合性がよい発振波長をもつGaInNAs系活性層に用いた長波長半導体レーザが、本発明により、より高い発光効率、より低いしきい値電流、より長い寿命をもつようになる。この半導体レーザを光源として用い光伝送システムを構築するので、光源部に冷却装置を必要としない簡便な構成をもつ、高い信頼性で高性能な光伝送システムを得ることができる。
【0078】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面を用いて詳細に説明する。
(実施例1)
p-GaAs/p-GaInP/GaAs/GaInNAs DQW/GaAs/n-GaInP/n-GaAs//n-GaAs sub.構成の積層膜からなるレーザ構成エピタキシャル成長膜をMOCVD法により形成する工程において、基板を反応室に搬送する前に反応室および原料導入ラインにTMAを導入する工程の効果を確認する。
【0079】
次に、試料作成の工程についてさらに説明する。
図10に示す前述の調査実験と同じMOCVD装置を用いる。
同図において、51は真空ポンプ、52は反応室(成長室)、53はウェハ基板、54はバブラー、55は各種シリンダ、56は水素精製器、57はマスフローコントローラーMFC)、58はガス供給量を制御するバルブ、59はロードロック室、60は原料ガス排気系である。
【0080】
このMOCVD装置は、反応室52中に加熱可能なサセプタを有し、Hガスをキャリアガスとして、TMG, TMA、TMI、DMHy、AsH、PH、SeH,Zn(CH) を反応室52に供給するガスラインを有する。これらのガスはロータリーポンプをもつ原料ガス排気系60により排気される。また、反応室52は、バルブ58を介しターボモレキュラーポンプをもつ高真空排気系が接続されている。
【0081】
前述の調査実験と同じ条件で、ブロードストライプDQWレーザAを作製した。工程の詳細は次のようになる。
【0082】
HCl水溶液で表面を清浄化したn-GaAs基板61をサセプタ上に搬送セットし、サセプタを昇温した後、TMG, AsH、SeHを反応室52に導入し、n-GaAsバッファ層62を成長させる。続けてTMG, TMI、PH 、SeHを反応室52に導入しn-GaInPクラッド層63を成長させる。
【0083】
次に、TMG, AsHを反応室52に導入し、GaAs光ガイド層64を成長させる。さらに、TMG、TMI、AsH3、DMHyを導入しGaInNAs/GaAs DQW活性層65を、TMG、AsHを導入しGaAsガイド層66を、TMG, TMI、PH、DMZn を導入しp- GaInPのクラッド層67を、TMG、AsH、DMZnを導入しp- GaAsコンタクト層68を順次設けp-GaAs/p-GaInP/ GaInNAs DQW /n-GaInP/n-GaAs//n-GaAs sub.構成の積層膜からなるレーザ構成エピタキシャル成長膜Aを形成する。
【0084】
このあと、SiO絶縁膜形成した後、ストライプ状にSiO膜を除去した後、ストライプ状電極(p電極膜)69を蒸着する。次に、基板裏面に下部電極膜(n電極膜)70を蒸着する。最後に、へき開により膜面に平行な共振器を形成し、ブロードストライプDQW端面発光型レーザAを作製する。(以上図11参照)
【0085】
一方、次の工程により、本発明のブロードストライプレーザBを作製した。
反応室52とガスラインを高真空まで真空引きした後、TMAを5sccmで30sec反応室52に導入し、つづいて、再度、反応室52とガスラインを高真空まで真空引きし、さらにつづけて、GaAs基板61を反応室52に搬送しサセプター上にセットした。
【0086】
以後は前述のエピタキシャル成長膜Aと同じ成長条件で、p-GaAs/p-GaInP/GaAs/GaInNAs DQW /GaAs/n-GaInP/n-GaAs//n-GaAs sub.からなるエピタキシャル成長膜Bを形成し、これを、前述のブロードストライプレーザAの場合と同じ工程で加工してブロードストライプレーザBを作製した(図11参照)。
【0087】
これらのエピタキシャル成長膜の活性層でのSIMS分析によるO濃度とこれらのレーザのしきい値電流密度を図12に示す。
【0088】
レーザAと比較し、レーザBは活性層中のO濃度が1.0 E+17 /cm3に低減し、しきい値電流密度も低下している。これは、レーザBの場合、基板搬送の前にTMAを短時間導入したので、反応室と原料導入ラインに存在していた酸素、水などが除去されたため活性層中のO濃度が低減したためと考えられる。
【0089】
(実施例2)
上記実施例1と同じMOCVD装置を用い、基本的構成が実施例1と同じp-GaAs/p-GaInP/GaAs/GaInNAs DQW/GaAs/n-GaInP/n-GaAs//n-GaAs sub.の積層膜からなるレーザ構成エピタキシャル成長膜を形成しながら、下部クラッド層成長中にTMAを短時間導入する効果と真空引きの効果を確認する。
【0090】
試料作成の工程についてさらに説明する。
HCl水溶液で表面を清浄化したn-GaAs基板71を高真空下で反応室のサセプタ上に搬送し、サセプタを昇温した後、TMG, AsH、SeHを反応室52に導入し、n-GaAsバッファ層72を成長させる。続いてTMG、TMI、PH3、SeHを反応室52に導入しながらTMAを2sccmの流量で反応室に30 sec間導入する。
【0091】
続く工程は、試料毎に異なり以下のようになる。
▲1▼エピタキシャル成長膜Cの場合は、続いて、連続してTMG, TMI、PH 、SeHを反応室に導入しn-GaInPクラッド層73を成長させる。
【0092】
▲2▼エピタキシャル成長膜Dの場合は、次に、成長を中断してターボモレキュラーポンプにより5.0E-2 Pa以下まで真空引きを行った後、TMG, TMI、PH、SeHを反応室に導入しn-GaInPクラッド層73を成長させる。
【0093】
▲3▼エピタキシャル成長膜Eの場合は、次に、成長を中断してターボモレキュラーポンプにより2.0E-2 Pa以下まで真空引きを行った後、TMG, TMI、PH 、SeH2を反応室に導入しn-GaInPクラッド層73を成長させる。
【0094】
エピタキシャル成長膜Cおよびエピタキシャル成長膜Dおよびエピタキシャル成長膜Eの場合、このTMA導入工程により、バッファ層とクラッド層の界面にOを含んだAlGaInPの厚さ約10nmの層が生成する。
【0095】
次に、各試料に同一の成長プロセスを行う。つまり、TMG, AsHを反応室に導入し、GaAs光ガイド層74を成長させる。さらに、TMG, TMI ,AsH, DMHyを導入しGaInNAs/GaAs DQW活性層75を、TMG、AsHを導入しGaAs光ガイド層76を、TMG, TMI、PH 、DMZn を導入しp- GaInPの上部クラッド層77を、TMG, AsH、DMZnを導入しp- GaAsコンタクト層78を順次設けp-GaAs/p-GaInP/ GaInNAs DQW /n-GaInP/n-GaAs//n-GaAs sub.構成の積層膜からなるレーザ構成エピタキシャル成長膜C,D,Eを形成する。
【0096】
このあと、SiO絶縁膜形成した後、ストライプ状にSiO膜を除去した後、ストライプ状電極(p電極膜)79を蒸着する。次に、基板裏面に下部電極膜(n電極膜)80を蒸着する。最後に、へき開により膜面に平行な共振器を形成し、ブロードストライプDQW端面発光型レーザC,D,Eを作製する。(以上図13参照)
【0097】
これらのエピタキシャル成長膜の活性層でのSIMS分析によるO濃度とAl濃度およびこれらのレーザのしきい値電流密度および考察は前述の検証実験の説明で示した。
【0098】
クラッド層の成長前にTMAを導入すると、しきい値電流密度が低下した。これはTMAの導入により反応室やガスラインに残留する酸素や水が除去されるため、その後の活性層成長工程で、Oを膜中に取り込みやすいDMHyを導入しても、欠陥、不純物が少ない結晶品質の良いGaInNAs活性層を形成することができたためと考えられる。
【0099】
TMAを導入した後、さらに高真空まで真空引きすると、しきい値電流密度がより低下した。これは、真空引きによりTMA導入による残留Al種が除去されるので、活性層成長時にAlと反応性が高い水分やアルコールを不純物として含むDMHyを導入しても、Oの取り込みがより少ないGaInNAs活性層を形成することができるためと考えられる。
【0100】
(実施例3)
実施例1と同じMOCVD装置を用い、p-GaAs/p-GaInP/GaAs/GaInNAs TQW/GaAs/n-GaInP/n-GaAs//n-GaAs sub.の積層膜からなるレーザ構成エピタキシャル成長膜をMOCVD法により形成しながら、下部クラッド層成長中にTMAを短時間導入し、その後真空引きを行う効果を確認する。
【0101】
試料作成の工程についてさらに説明する。
HCl水溶液で表面を清浄化したn-GaAs基板81を高真空下で反応室52のサセプタ上に搬送し、サセプタを昇温した後、TMG, AsH、SeHを反応室52に導入し、n-GaAsバッファ層82を成長させる。
【0102】
次に、TMG, TMI、PH、SeHを反応室52に導入し、n-GaInPクラッド層83を成長させる。このn-GaInPクラッド層83の成長途中に、成長を中断せずTMAを5sccmの流量で反応室52に50 sec間導入する。
【0103】
その後、n-GaInPクラッド層83の成長を再開する。この工程により、n-GaInPクラッド層83の途中にOを含んだAlGaInPの厚さ60nmの層83’が生成する。n-GaInPクラッド層83の成長が終了した後、ターボモレキュラーポンプにより2.0E-4 Paまで真空引きを行う。
【0104】
次に、TMG, AsHを導入しGaAs光ガイド層84を、TMG, TMI ,AsH, DMHyを導入しGaAsをバリア層とするGaInNAs TQW活性層85を、TMG, AsHを導入しGaAs光ガイド層86を、TMG, TMI、PH 、DMZn を導入しp- GaInPのクラッド層87を、TMG, AsH、DMZnを導入しp- GaAsコンタクト層88を順次設けp-GaAs/p-GaInP/ GaAs/GaInNAs DQW /GaAs/n-GaInP/n-GaAs//n-GaAs sub.構成の積層膜からなるレーザ構成エピタキシャル成長膜を形成する。
【0105】
このあと、実施例1と同様の工程でブロードストライプTQW端面発光型レーザを作製する。(以上図14参照)
【0106】
この素子の活性層中のO濃度は1.0×1017cm−3であり、しきい値電流密度は室温下CWで、0.8 kA/cm2である。
比較として、クラッド層の成長中にTMAを導入することを行わず、連続して作製する同じ構成のブロードストライプTQW端面発光型レーザは、活性層中のO濃度は2.0×1017cm−3であり、しきい値電流密度が、室温下CWで1.3 kA/cm2である。
【0107】
n-GaInPクラッド層83の成長途中にTMAを導入し、その後真空引きを行った場合、しきい値電流密度が低下する。これはTMAの導入により反応室52やガスラインに残留する酸素や水が除去されるうえ、残留Al種も除去されるので、その活性層成長工程で、Oを膜中に取り込みやすいDMHyを導入しても、Oの取り込みの少ないGaInNAs活性層を形成することができるためである。
【0108】
【発明の効果】
本発明によれば、活性層成長工程で、残留酸素や水と反応しOを膜中に取り込みやすいN原料を使用しても、欠陥、不純物が少ない結晶品質の良いGaInNAs系活性層を形成することが可能となり、高い発光効率、低い閾値電流、長い寿命の半導体発光素子製造方法を提供することができる。
【0109】
さらに詳しくは、
請求項1〜記載の発明によれば、高い発光効率、低い閾値電流、長い寿命の半導体発光素子の製造方法を実現できる。
【0110】
なお、下部周囲層の成長中または前記下部周囲層の成長前に、有機Al原料を反応室に導入しAlを含む層を形成するという簡便な工程を付加することにより、反応室やガスラインに残留する酸素や水が有機Al原料と反応して除去される。このため、その後の活性層成長工程で、残留酸素や水と反応しOを膜中に取り込みやすいN原料を使用しても、欠陥、不純物が少ない結晶品質の良いGaInNAs系活性層を形成することができる。
【0111】
簡便な工程を付加することによりOを取り込みにくい活性層が得られる素子構成なので、安価な、高い発光効率、低いしきい値電流、長い寿命をもち、温度特性が優れ、石英系ファイバとの整合性がよい発振波長をもつ長波長半導体レーザが得られる。
【0112】
また、下部クラッド層の成長中または前記下部周囲層の成長前後に、有機Al原料を反応室に導入し、Alを含む層を形成する、活性層から離れたクラッド層付近にOが取り込まれる。このため、活性層周辺に多数のp,nのキャリアを同時に注入しても、Oが原因となる非発光再結合が起こらず、より確実に、安価な、高い発光効率、低いしきい値電流、長い寿命の半導体発光素子が得られる。
【0113】
また、活性層におけるAl濃度、5.0×1016cm−3以下とすると、Alと一緒に取り込まれるO濃度がより小さくなり、Oが原因となる非発光再結合がさらに起こりにくくなり、より確実に、安価な、高い発光効率、低いしきい値電流、長い寿命の半導体発光素子が得られる。
【0115】
また、膜成長工程において、有機Al原料を反応室に導入する、反応室および原料ライン中の酸素および水分が除去される。よって、活性層中のO濃度が低下しOが原因となる非発光再結合が起こりにくくなり、高い発光効率、低いしきい値電流、長い寿命の半導体発光素子が得られる。
【0116】
また、膜成長工程中に有機Al原料を反応室に導入して反応室および原料ライン中の酸素および水を除去した後、さらに、成長室内および原料導入ラインに残留したAl原料種を除去する工程を行い残留したAl原料種も除去する、活性層中のO濃度がより低下し、Oが原因となる非発光再結合がより少なくなり、より高い発光効率、より低いしきい値電流、より長い寿命の半導体発光素子が得られる。
【0117】
また、GaInNAs系活性層に用いた長波長半導体レーザが、本発明により、より高い発光効率、より低いしきい値電流、より長い寿命をもつようになる。本構成によれば、この半導体レーザを光源として用い光伝送システムを構築するので、光源部に冷却装置を必要としない簡便な構成をもつ、高い信頼性で高性能な光伝送システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかる半導体発光素子の基本的な構成を示す図である
【図2】 本発明にかかる半導体発光素子の基本的な構成を示す図である
【図3】 エピタキシャル成長膜(A,C,D,E)の活性層でのSIMS分析によるO濃度とAl濃度およびこれらのレーザ(A,CD,E)のしきい値電流密度を示す図である
【図4】 エピタキシャル成長膜Eの活性層付近のO濃度の深さ方向分布を示す図である
【図5】 Al濃度のSIMS分析条件を示す図である
【図6】 レーザの構成例を示す図である。
【図7】 レーザの構成例を示す図であるである
【図8】 並列光伝送システムの構成例を示す図である
【図9】 波長多重光伝送システムの構成例を示す図である
【図10】 調査実験および本願実施例で用いたMOCVD装置の構成図である。
【図11】 実施例1におけるGaInNAs系端面発光レーザA,Bの構成例を示す図である。
【図12】 エピタキシャル成長膜の活性層でのSIMS分析によるO濃度とこれらのレーザのしきい値電流密度を示す図である。
【図13】 実施例2におけるGaInNAs系端面発光レーザC,D,Eの構成例を示す図である。
【図14】 実施例3におけるGaInNAs系端面発光レーザの構成例を示す図である。
【図15】 調査実験での試料の断面構造を示す図である。
【図16】 調査実験における測定条件を示す図である。
【図17】 調査実験における活性層付近のN濃度とO濃度の深さ方向分布を示す図である。
【符号の説明】
10:基板、11:下部周囲層、111:バッファ層、112:下部クラッド層、113:下部光ガイド層、12:活性層、13:上部周囲層、131:上部光ガイド層、132:上部クラッド層、
21,61,81:GaAs基板、22,221:n-GaInP下部クラッド層、222:Alを含む領域、23:GaAs光ガイド層、24:GaInNAs活性層、25:GaAs光ガイド層、26:p- GaInP上部クラッド層、27:p- GaAsコンタクト層、28:ストライプ状電極、29:下部電極膜、
31:GaInNAs系レーザ、32:電気信号処理部、33:受光素子、34:電気信号処理部、35:光ファイバ、
41:GaInNAs系レーザ、42:合波器、43:電気信号処理部、44:受光素子、45:分波器、46:電気信号処理部、47:光ファイバ、
51:高真空廃棄系(真空ポンプ)、52:反応室(成長室)、53:ウェハ基板、54:バブラー、55:各種シリンダ、56:水素精製器、57:マスフローコントローラーMFC)、58:バルブ、59:ロードロック室、60:原料ガス排気系、
61,71,81:n-GaAs基板、62,72,82:n-GaAsバッファ層、72’,83’:Alを含む領域、63,73,83:n-GaInP下部クラッド層、64,74,84:GaAs光ガイド層、65,75,85:GaInNAs/GaAsTQW活性層、66,76,86:GaAs光ガイド層、67,77,87:p-GaInP上部クラッド層、68,78,88:p-GaAsコンタクト層、69,79,89:ストライプ状電極、70,80,90:下部電極膜、
201:n-GaAs基板、202:n-GaAsバッファ層、203:n-GaInPクラッド層、204:GaAs光ガイド層、205:GaInNAs/GaAsDQW活性層、206:GaAsガイド層、207:p-GaInP上部クラッド層、208:p-GaInPコンタクト層208。

Claims (4)

  1. 基板上にNを含むIII―V族化合物半導体からなる活性層を有する半導体発光素子を、MOCVD法により形成する半導体発光素子の製造方法であって、
    前記基板と前記活性層との間にGatIn1-tPuAs1-u(0≦t≦1,0≦u≦1)からなる下部クラッド層および下部光ガイド層を成長する工程を有し、
    前記下部クラッド層の成長前に、または、前記下部クラッド層の成長中、または、前記下部クラッド層の成長後で前記下部光ガイド層を成長させる前に、有機Al原料を反応室および原料導入ラインに導入して層厚を0.4μm以下となるAlを含む層を形成することを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
  2. 請求項1に記載の半導体発光素子の製造方法において、
    有機Al原料を反応室に導入後とNを含むIII―V族化合物半導体からなる活性層の成長開始までの間に、前記反応室内および前記導入ラインを真空引きして前記反応室内および前記原料導入ラインにおいて窒素化合物原料が触れる場所に残留したAl原料種を除去する工程を設けることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
  3. 請求項1に記載の半導体発光素子の製造方法において、
    有機Al原料を反応室に導入後とNを含むIII―V族化合物半導体からなる活性層の成長開始までの間に、前記反応室内および前記導入ラインをパージして前記反応室内および前記原料導入ラインにおいて窒素化合物原料が触れる場所に残留したAl原料種を除去する工程を設けることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
  4. 請求項2または3に記載の半導体発光素子の製造方法において、
    前記Al原料種を除去する工程の際に、前記反応室や前記導入ラインを加熱することを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
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