JP2004072010A - 電磁波シールド材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温高湿環境下においても、優れた光透過性と電磁波遮蔽性を併せ持つことは勿論、金属メッシュシートおよび透明基材に対する接着剤層の密着力を十分に保持し得る優れた耐久性を有する電磁波シールド材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも透明基材、熱可塑性を有する硬化型樹脂を含有する接着剤層、金属メッシュシートを順に積層し、特定の温度で熱プレスによって貼り合せた後、貼り合わせ温度よりも高い温度で接着剤層を熱硬化させる。
【選択図】 なし
【解決手段】少なくとも透明基材、熱可塑性を有する硬化型樹脂を含有する接着剤層、金属メッシュシートを順に積層し、特定の温度で熱プレスによって貼り合せた後、貼り合わせ温度よりも高い温度で接着剤層を熱硬化させる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁波を遮蔽する技術に係り、具体的には、電子制御遊戯機、プラズマディスプレイ等の電子機器の目視面に装備されて機器内部から外部へ、あるいは機器外部から内部への電磁波の透過を遮断する電磁波シールド材およびその電磁波シールド材を製造するにあたって好適な電磁波シールド材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、各種電子機器の急速な発展に伴い、それら電子機器から発せられる電磁波により、周辺の高周波電源や電磁波発生源(例えば、携帯電話、小型パソコン、モバイル機器等)を誤作動させたり、使用者の身体に悪影響を及ぼしたり、また、上記とは逆に、周辺の高周波電源や電磁波発生源から発生する電磁波により電子機器に誤作動が起こるといった問題を招来している。そのため、この電磁波の透過に対する防止策として各種の電磁波シールド材が開発・提供されている。
【0003】
従来の電磁波シールド材としては、例えば、導電性金属を、真空蒸着やスパッタリング、あるいは塗料化して塗工する等の手段で、樹脂板上に所定のメッシュパターンに薄膜形成したものや、ポリエステル等の樹脂製繊維に銅やニッケル等の金属を無電解メッキによりコーティングしてなる金属製メッシュを樹脂板上に積層したもの等がある。また、特開平11−350168号公報には、フォトレジスト法を用いたエッチングによって金属箔を所定のメッシュパターンに形成した金属メッシュシートが開示されている。これらの中でも、電気機器の使用者の目視面となる前面の透明基体を透過する電磁波に対する電磁波シールド材としては、開口率を高くするとともに極めて膜厚を薄くすることができ、かつ高い電磁波遮蔽性を得ることができる、つまり、光透過性と電磁波シールド性とをバランスよく両立させた金属メッシュシートが好適に用いられている。
【0004】
この金属メッシュシートは、熱可塑性樹脂からなるシート状の粘着剤層あるいは接着剤層により透明基材上に積層された状態、または、上記のような粘着剤層あるいは接着剤層を介して2つの透明基材間に挟み込まれた状態で、熱プレスによって貼り付けられ、電磁波シールド材に適用される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような電磁波シールド材では、高温高湿環境下において、耐久性が悪く、接着剤層の変色が発生して視認性が悪くなったり、透明基材が接着剤層から剥がれるといった問題を有していた。
【0006】
したがって、本発明は、高温高湿環境下においても、優れた光透過性と電磁波遮蔽性を併せ持つことは勿論、金属メッシュシートおよび透明基材に対する接着剤層の密着力を十分に保持し得る優れた耐久性を有する電磁波シールド材およびその製造方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の電磁波シールド材は、少なくとも透明基材、接着剤層、金属メッシュシートが積層された電磁波シールド材であって、前記接着剤層が熱可塑性を有する硬化型樹脂を含有することを特徴としている。また、本発明の電磁波シールド材は、少なくとも透明基材、接着剤層、金属メッシュシートを特定の温度で貼り合せ、その後に貼り合せ温度よりも高い温度で接着剤層を硬化させて得たことを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、熱可塑性を有する硬化型樹脂を含有する接着剤層を用いることにより、この接着剤が十分な粘着性および接着性を発揮する特定の温度で、金属メッシュシートと透明基材とを貼り合せ、その後、温度を上昇させてこの接着剤を硬化させることができ、これにより、高温高湿環境下においても、接着剤に変色が生じることもなく優れた光透過性を維持しつつ、金属メッシュシートおよび透明基材に対する接着剤層の密着力が十分に保持することができる。そのため、本発明の電磁波シールド材は、高温高湿環境下における電子制御遊戯機、プラズマディスプレイ等の電子機器にも好適に用いることができ、これらの電気機器の目視面からの光透過性を損なうことなく、良好に電磁波を遮蔽することができる。
【0009】
また、本発明においては、貼り合せ温度が、熱可塑性を有する硬化型樹脂の貯蔵弾性率曲線の変曲点−10℃以上であって、かつ損失弾性率曲線の変曲点以下であることが好ましく、また、硬化温度が、熱可塑性を有する硬化型樹脂の貯蔵弾性率が最小値になる温度±10℃であることが好ましい。
【0010】
なお、本発明においては、貯蔵弾性率曲線(G’)の変曲点(X)とは、例えば、図1に示すように、樹脂に対して温度を加え、温度を徐々に高くしていった場合に、急激に貯蔵弾性率が低下しはじめた点(a)と、貯蔵弾性率の低下が緩やかになりはじめた点(b)とを直線でひき、その長さの中点の温度をいう。また、損失弾性率曲線(G’’)の変曲点(Y)とは、樹脂に対して温度を加え、温度を徐々に高くしていった場合に、急激に損失弾性率が低下しはじめた点(c)と、損失弾性率の低下が緩やかになりはじめた点(d)とを直線でひき、その長さの中点の温度をいう。
【0011】
貼り合せ温度が、貯蔵弾性率曲線の変曲点−10℃未満では、接着剤層の弾性率が十分低下していないため、金属メッシュシートおよび透明基体に対する接着剤の密着力、または、金属メッシュシートを挟んだ接着剤層同士の密着力が不足する。一方、貼り合せ温度が、損失弾性率曲線の変曲点より高い温度では、接着剤の流動性が上昇しすぎるため、積層体の端部からのはみ出し不良が発生しやすくなり好ましくない。
【0012】
接着剤層の硬化温度は、熱可塑性を有する硬化型樹脂の貯蔵弾性率が最小値になる温度±10℃の範囲であることが望ましい。その温度範囲よりも低いと硬化が不十分になり、十分な耐久性が得られなくなる可能性がある。一方、その温度範囲よりも高いと急激に硬化が進むため、成形品にゆがみが生じやすい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の電磁波シールド材を構成する部材および製造方法について詳細に説明する。
1.構成部材
A.透明基材
本発明における透明基材としては、電子制御遊戯機、プラズマディスプレイ等の電子機器における前面ガラスに相当するものであり、特に限定されるものではない。この透明基材の透明性は高いもの程良好であるが、光線透過率(JIS C−6714)としては80%以上、より好ましくは90%以上が良い。また、本発明の電磁波シールド材を電子制御遊戯機に用いる場合には、遊技機の前面ガラスは総厚を4mm以下とし、2枚のガラスに金属メッシュシートを挟みこむため、透明基材の厚さは1枚が少なくとも2mm以下である必要がある。
【0014】
また、透明基材に、アルカリ処理、コロナ処理、プラズマ処理、フッ素処理、スパッタ処理等の表面処理や、界面活性剤、シランカップリング剤等の塗布、あるいはSi蒸着などの表面改質処理を行うことにより、透明基材と接着剤層との密着性を向上させることができる。
【0015】
B.熱可塑性を有する硬化型樹脂
本発明における熱可塑性を有する硬化型樹脂とは、熱を加えた場合に特定の温度までは塑性を有し、さらに温度を高くして熱を加えた場合に硬化する樹脂をいうものである。このような熱可塑性を有する硬化型樹脂としては、硬化型エチレン・酢酸ビニル共重合体が最も好適であるが、その他にも、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂等をベースに架橋性官能基を導入し、ブロック化イソシアネートや過酸化物により熱架橋させた樹脂等を用いることができる。
【0016】
また、上記の熱可塑性を有する硬化型樹脂からなる接着剤層の厚さは、透明基材および金属メッシュシートを破損させることなく良好に貼り合せるために、金属メッシュシートの厚さの5倍以上であることが好ましい。
【0017】
C.金属メッシュシート
金属箔の材料としては、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム、金、銀、プラチナ、タングステン、クロム、チタン等の金属およびその酸化物や、これら金属の2種以上の合金(例えば銅−ニッケル合金、ステンレス等)、さらには金属化合物等の、箔化が可能な金属系材料が用いられる。また、酸化防止等、必要に応じて表面をメッキ処理したものも適宜に用いることができる。これら金属の中で、特に好ましくは、箔化が容易でありかつエッチングが容易なことから、銅、アルミニウム、鉄、ニッケルの合金もしくは金属化合物がよい。また、その厚さはできるだけ薄い方が好ましく、5〜50μm、好ましくは8〜40μm、より好ましくは10〜25μmである。
【0018】
本発明における金属メッシュシートのパターンは、フォトレジスト法により、金属箔に形成される孔の形状および開口率(孔に孔の周囲の金属箔の幅(ライン幅)の1/2を加えた外形面積に対する孔の面積比率)を自由に制御することができる。本発明においては、メッシュパターンの孔の形状が、正多角形、平行四辺形、菱形、台形、円形、楕円形等の形状を少なくとも1種有し、かつこれら孔を囲む現像部すなわち金属箔の縦方向および/または横方向のライン幅が略一定であることが好ましい。このようなメッシュパターンは、言い換えると一定の形状および寸法の多数の孔が規則的に配列されることを可能とし、したがって、どの部分においても一定の機能(光透過性および/または電磁波シールド性等)が発揮される点で重要となってくる。また、金属メッシュシートの光透過性は開口率に概ね比例し、逆に光の遮断性は孔の周囲のライン幅に概ね比例する。
【0019】
また、本発明における金属メッシュシートをディスプレイに適用する際には、上記メッシュパターンをディスプレイの画素に対応する形状およびピッチとすることにより、モアレ等の画像障害を防ぐことができる。その好ましい開口率は70〜97%、さらに好ましくは80〜95%、好ましいライン幅は10〜50μm、好ましい孔の幅(ライン幅のピッチ)は200〜350μmである。
【0020】
本発明における金属メッシュシートのパターン形成方法としては、例えば、金属箔にパンチング加工により多数の孔を穿設したり、同様の金属箔にフォトレジスト法を用いてエッチング処理を施して多数の孔を穿設したりする方法が挙げられるが、精細度の高い幾何学模様のメッシュパターンを容易に形成することができるため特に後者が好適である。
【0021】
本発明に用いる金属メッシュシートの最適な製造方法を詳述すると、まず、金属箔の両面にフォトレジスト層をラミネートし、一方の面はフォトマスクを用いて所望のメッシュパターンを露光し、他方の面は全面露光により層全体を硬化させる。フォトレジスト層の厚さは10〜25μm程度が好適であり、また、紫外線の照射量は80〜160mJ程度が好適である。なお、このメッシュパターンの露光は、上記のマスクを用いた紫外線等の照射に代えて、レジスト上にレーザ光を直接照射する印刷手段を用いてもよい。
【0022】
次いで、マスクを除去し、炭酸ソーダ水溶液等のレジスト除去用の処理液に浸漬して、未露光部のレジストを除去する。これにより、一方の面では露光部のレジストからなるメッシュパターンが金属箔の表面に現像され、他方の面ではエッチング工程の際の保護層が形成される。次に、例えば塩酸中に塩化第二鉄を溶解させたエッチング処理液中に全体を浸漬する化学エッチング等のエッチング手段で未現像部に対応する部分の金属箔をエッチングし、その後、苛性ソーダ希釈液等のレジスト除去用処理液に全体を浸漬して、残っている現像部および保護層としたレジストを一度に除去することにより、金属メッシュシート単体を得る。
【0023】
上記フォトレジスト層としては、従来公知の種々のフォトレジストを使用することができるが、光重合タイプの感光性樹脂が好ましく、具体的には、光重合性モノマー、バインダー樹脂、光重合開始剤およびその他の助剤を含んでなる、通常用いられる光硬化性の組成物が好適に用いられる。本発明の金属メッシュシートの製造方法においては、特にアルカリ水現像タイプ等のドライフィルムレジストが好適である。
【0024】
なお、前記フォトレジストには、必要に応じて、増感剤、染料、着色顔料、密着改良剤、重合禁止剤、塗面改良剤、可塑剤等を含有させることができる。また、前記フォトレジストの市販品としては、日本合成化学工業社製のアルフォNITシリーズ、三京化成社製のPMERシリーズ、デュポンジャパン社製のリストンシリーズ等が挙げられる。
【0025】
また、本発明の電磁波シールド材における金属メッシュシートは、電子制御遊戯機、プラズマディスプレイ等の電子機器の目視面に設けられることから、その視認性を向上させるために、その金属メッシュシートの表面、特に、電磁波シールド材の前面側(目視面側)を黒色にすることが好ましい。黒色化処理としては、酸化処理、硫化処理、黒色メッキ処理等の方法が知られているが、具体的には、金属箔メッシュ単体に硫酸によるソフトエッチ処理を行い、金属箔表面の防錆処理膜を除去し、水洗後、水酸化ナトリウムおよび亜塩素酸ナトリウムの水溶液による酸化処理を65〜75℃で10分程度行うことにより、金属メッシュシートを黒色化する。また、本発明における金属メッシュシートは、金属箔表面に粒子径をコントロールした金属メッキを予め行うことにより、金属箔表面を黒色化し、さらに、現像レジスト部を除去する工程の後に、エッチングされた金属メッシュシートを加熱酸化することにより、金属メッキされていない部分の黒色化を行うこともできる。なお、上記のような方法により得られる金属メッシュシートは、粘着剤等を介して基体に貼着された構成ではなく、金属メッシュシート単体であるので、黒色化処理は両面に施すこともできる。
【0026】
また、本発明における金属メッシュシートは、電磁波シールド材を設置する装置本体の金属部分に接地されていることが好ましく、これにより、本発明の電磁波シールド材の電磁波シールド性をさらに向上させることができる。さらに、本発明における金属メッシュシートは、電子機器の光透過性を良好にするために、厚さが20μm以下とすることが好ましい。
【0027】
2.製造方法
本発明の電磁波シールド材の製造方法は、少なくとも透明基材、熱可塑性を有する硬化型樹脂を含有する接着剤層、金属メッシュシートを順に積層し、熱プレスによって貼り合せた後、接着剤層を熱硬化させることを特徴としている。このようにすることにより、上記の本発明の電磁波シールド材を好適に製造することができる。
【0028】
本発明の電磁波シールド材の製造方法においては、貼り合せ工程の温度が、熱可塑性を有する硬化型樹脂の貯蔵弾性率曲線の変曲点−10℃以上であって、かつ損失弾性率曲線の変曲点以下であることが好ましく、また、硬化工程の温度が、熱可塑性を有する硬化型樹脂の貯蔵弾性率が最小値になる温度±10℃であることが好ましい。
【0029】
貼り合せ工程の温度を上記の範囲とすることによって、接着剤層の弾性率を好適な範囲に制御することができ、金属メッシュシートおよび透明基体に対する接着剤の密着力、または、金属メッシュシートを挟んだ接着剤層同士の密着力を十分に発揮させることができる。また、硬化工程の温度を上記の範囲とすることによって、成形品にゆがみを生じることなく、接着剤を十分に硬化させることができ、優れた耐久性を示すことができる。
【0030】
また、本発明の電磁波シールド材の製造方法においては、貼り合せ工程を真空中で行うことが好ましい。このような環境下で貼り合せることによって、金属メッシュシートの孔内への接着剤の入り込みを容易にし、孔内における気泡の形成を防ぐことができ、これにより、電磁波シールド材の光透過性を良好に保つことができる。
【0031】
【実施例】
次に、本発明に基づく実施例と、本発明に対する比較例とを示し、本発明の効果をより明らかにする。
<実施例1>
透明基材として、厚さ1.35mm×410mm×410mmのソーダガラスを用い、接着剤層として、硬化型エチレン・酢酸ビニル共重合体からなる厚さ200μmの接着フィルムを用いた。HAAKE社製のReoStressRS75型を用いて、パラレルプレート、測定ギャップ:約1mm、周波数:1Hz、ストレス:5N、昇温速度:5℃/分の条件下、この接着フィルムの粘弾性を測定した。その測定値から、接着フィルムの貯蔵弾性率曲線G’(Pa)の変曲点温度(X)、損失弾性率曲線G’’(Pa)の変曲点温度(Y)、および貯蔵弾性率が最小値になる温度(Z)を、図1に示すように求めた結果、それぞれ81℃、96℃および127℃であった。また、金属メッシュシートとして、厚さ15μmの銅箔をライン幅20μm、ラインピッチ300μmの銅メッシュシートにエッチングし、次いで、その表面を黒色化処理して黒色化銅メッシュシートを作製した。
【0032】
次に、図3(a)に示すように、透明基材1/接着剤層2/金属メッシュシート3/接着剤層2/透明基材1の順に重ねて合わせた積層体を真空袋に入れ、真空度を−700mmHg以下にし、この真空袋を85℃の雰囲気中に15分放置して貼り合わせを行った後、真空を解除した。次いで、130℃の雰囲気中に15分放置して接着シートを硬化させた後、冷却して図3(b)のような実施例1の電磁波シールド材を得た。
【0033】
<比較例1>
接着剤層として、熱可塑性エチレン樹脂・酢酸ビニル共重合体からなる厚さ200μmの接着フィルム用いた以外は、実施例1と同様の構成材料を用いた。この接着フィルムの粘弾性を実施例1と同様に測定したところ、図2に示すように、貯蔵弾性率曲線G’(Pa)および損失弾性率曲線G’’(Pa)には、変曲点が観測されなかった。また、この接着フィルムについては、加熱温度を上昇させても硬化することがないため、本発明における貯蔵弾性率曲線の最小値は無かった。
【0034】
次に、実施例1と同様に、透明基材1/接着剤層2/金属メッシュシート3/接着剤層2/透明基材1の順に重ねて合わせた積層体を真空袋に入れ、真空度を−700mmHg以下にし、この真空袋を100℃の雰囲気中に15分放置して貼り合わせを行った後、真空を解除し、冷却して比較例1の電磁波シールド材を得た。なお、比較例1における接着フィルムは熱硬化型樹脂ではないため、硬化工程は行わなかった。
【0035】
<比較例2>
実施例1と同様の構成材料を用い、実施例1と同様に、透明基材1/接着剤層2/金属メッシュシート3/接着剤層2/透明基材1の順に重ねて合わせた積層体を真空袋に入れ、真空度を−700mmHg以下にし、この真空袋を65℃の雰囲気中に15分放置して貼り合わせを行った後、真空を解除した。次いで、130℃の雰囲気中に15分放置して接着シートを硬化させた後、冷却して比較例2の電磁波シールド材を得た。
【0036】
<比較例3>
実施例1と同様の構成材料を用い、実施例1と同様に、透明基材1/接着剤層2/金属メッシュシート3/接着剤層2/透明基材1の順に重ねて合わせた積層体を真空袋に入れ、真空度を−700mmHg以下にし、この真空袋を85℃の雰囲気中に15分放置して貼り合わせを行った後、真空を解除した。次いで、100℃の雰囲気中に15分放置して接着シートを硬化させた後、冷却して比較例3の電磁波シールド材を得た。
【0037】
<比較例4>
実施例1と同様の構成材料を用い、実施例1と同様に、透明基材1/接着剤層2/金属メッシュシート3/接着剤層2/透明基材1の順に重ねて合わせた積層体を真空袋に入れ、真空度を−700mmHg以下にし、この真空袋を85℃の雰囲気中に15分放置して貼り合わせを行った後、真空を解除した。次いで、150℃の雰囲気中に15分放置して接着シートを硬化させた後、冷却して比較例4の電磁波シールド材を得た。
【0038】
<評価>
実施例1および比較例1,3の電磁波シールド材を60℃/90%RHの環境下に1000時間放置することにより、耐久性の評価試験を行った。なお、比較例2の電磁波シールド材については、貼り合せ不良による泡が貼り合わせ界面に確認され、比較例4の電磁波シールド材は水平面上に置いたところ反りが認められたため、耐久性評価試験は行わなかった。
【0039】
上記耐久性評価試験の結果、実施例1の電磁波シールド材では、接着シートの変色や透明基体および銅メッシュシートに対する接着シートの剥がれは見られなかった。これに対して、比較例1の電磁波シールド材では、接着シートが薄茶色に変色し、また、比較例3の電磁波シールド材では、透明基体と接着シートとの接着面において端部に微小な剥がれが確認された。
【0040】
すなわち、貼り合わせ温度が熱可塑性を有する硬化型樹脂の貯蔵弾性率曲線の変曲点−10℃未満である比較例2では、接着シートによる透明基材と銅メッシュシートとの貼り合わせが良好に行えず、また、接着シートの硬化温度が熱可塑性を有する硬化型樹脂の貯蔵弾性率が最小値になる温度+10℃を超えた比較例4では、透明基材に反りが生じ、電磁波シールド材として実用に共し得ないものであった。さらに、接着シートに熱可塑性を有する硬化型樹脂が用いられていない比較例1では、高温高湿環境下において、接着シートの変色により光透過性が劣り、また、接着シートの硬化温度が熱可塑性を有する硬化型樹脂の貯蔵弾性率が最小値になる温度−10℃未満である比較例3では、接着シートの硬化が十分ではなく接着面に剥がれが生じ、耐久性に問題を有するものであった。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の電磁波シールド材によれば、少なくとも透明基材、熱可塑性を有する硬化型樹脂を含有する接着剤層、金属メッシュシートを順に積層し、特定の温度で貼り合せた後、貼り合わせ温度よりも高い温度で接着剤層を熱硬化させることによって、高温高湿環境下においても、優れた光透過性と電磁波遮蔽性を併せ持つことは勿論、金属メッシュシートおよび透明基材に対する接着剤層の密着力を十分に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における熱可塑性を有する硬化型樹脂からなる接着剤の温度に対する弾性率を示した線図である。
【図2】従来の熱可塑性樹脂からなる接着剤の温度に対する弾性率を示した線図である。
【図3】本発明の電磁波シールド材の一実施形態である。
【符号の説明】
1…透明基材、2…接着剤層、3…金属メッシュシート。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁波を遮蔽する技術に係り、具体的には、電子制御遊戯機、プラズマディスプレイ等の電子機器の目視面に装備されて機器内部から外部へ、あるいは機器外部から内部への電磁波の透過を遮断する電磁波シールド材およびその電磁波シールド材を製造するにあたって好適な電磁波シールド材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、各種電子機器の急速な発展に伴い、それら電子機器から発せられる電磁波により、周辺の高周波電源や電磁波発生源(例えば、携帯電話、小型パソコン、モバイル機器等)を誤作動させたり、使用者の身体に悪影響を及ぼしたり、また、上記とは逆に、周辺の高周波電源や電磁波発生源から発生する電磁波により電子機器に誤作動が起こるといった問題を招来している。そのため、この電磁波の透過に対する防止策として各種の電磁波シールド材が開発・提供されている。
【0003】
従来の電磁波シールド材としては、例えば、導電性金属を、真空蒸着やスパッタリング、あるいは塗料化して塗工する等の手段で、樹脂板上に所定のメッシュパターンに薄膜形成したものや、ポリエステル等の樹脂製繊維に銅やニッケル等の金属を無電解メッキによりコーティングしてなる金属製メッシュを樹脂板上に積層したもの等がある。また、特開平11−350168号公報には、フォトレジスト法を用いたエッチングによって金属箔を所定のメッシュパターンに形成した金属メッシュシートが開示されている。これらの中でも、電気機器の使用者の目視面となる前面の透明基体を透過する電磁波に対する電磁波シールド材としては、開口率を高くするとともに極めて膜厚を薄くすることができ、かつ高い電磁波遮蔽性を得ることができる、つまり、光透過性と電磁波シールド性とをバランスよく両立させた金属メッシュシートが好適に用いられている。
【0004】
この金属メッシュシートは、熱可塑性樹脂からなるシート状の粘着剤層あるいは接着剤層により透明基材上に積層された状態、または、上記のような粘着剤層あるいは接着剤層を介して2つの透明基材間に挟み込まれた状態で、熱プレスによって貼り付けられ、電磁波シールド材に適用される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような電磁波シールド材では、高温高湿環境下において、耐久性が悪く、接着剤層の変色が発生して視認性が悪くなったり、透明基材が接着剤層から剥がれるといった問題を有していた。
【0006】
したがって、本発明は、高温高湿環境下においても、優れた光透過性と電磁波遮蔽性を併せ持つことは勿論、金属メッシュシートおよび透明基材に対する接着剤層の密着力を十分に保持し得る優れた耐久性を有する電磁波シールド材およびその製造方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の電磁波シールド材は、少なくとも透明基材、接着剤層、金属メッシュシートが積層された電磁波シールド材であって、前記接着剤層が熱可塑性を有する硬化型樹脂を含有することを特徴としている。また、本発明の電磁波シールド材は、少なくとも透明基材、接着剤層、金属メッシュシートを特定の温度で貼り合せ、その後に貼り合せ温度よりも高い温度で接着剤層を硬化させて得たことを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、熱可塑性を有する硬化型樹脂を含有する接着剤層を用いることにより、この接着剤が十分な粘着性および接着性を発揮する特定の温度で、金属メッシュシートと透明基材とを貼り合せ、その後、温度を上昇させてこの接着剤を硬化させることができ、これにより、高温高湿環境下においても、接着剤に変色が生じることもなく優れた光透過性を維持しつつ、金属メッシュシートおよび透明基材に対する接着剤層の密着力が十分に保持することができる。そのため、本発明の電磁波シールド材は、高温高湿環境下における電子制御遊戯機、プラズマディスプレイ等の電子機器にも好適に用いることができ、これらの電気機器の目視面からの光透過性を損なうことなく、良好に電磁波を遮蔽することができる。
【0009】
また、本発明においては、貼り合せ温度が、熱可塑性を有する硬化型樹脂の貯蔵弾性率曲線の変曲点−10℃以上であって、かつ損失弾性率曲線の変曲点以下であることが好ましく、また、硬化温度が、熱可塑性を有する硬化型樹脂の貯蔵弾性率が最小値になる温度±10℃であることが好ましい。
【0010】
なお、本発明においては、貯蔵弾性率曲線(G’)の変曲点(X)とは、例えば、図1に示すように、樹脂に対して温度を加え、温度を徐々に高くしていった場合に、急激に貯蔵弾性率が低下しはじめた点(a)と、貯蔵弾性率の低下が緩やかになりはじめた点(b)とを直線でひき、その長さの中点の温度をいう。また、損失弾性率曲線(G’’)の変曲点(Y)とは、樹脂に対して温度を加え、温度を徐々に高くしていった場合に、急激に損失弾性率が低下しはじめた点(c)と、損失弾性率の低下が緩やかになりはじめた点(d)とを直線でひき、その長さの中点の温度をいう。
【0011】
貼り合せ温度が、貯蔵弾性率曲線の変曲点−10℃未満では、接着剤層の弾性率が十分低下していないため、金属メッシュシートおよび透明基体に対する接着剤の密着力、または、金属メッシュシートを挟んだ接着剤層同士の密着力が不足する。一方、貼り合せ温度が、損失弾性率曲線の変曲点より高い温度では、接着剤の流動性が上昇しすぎるため、積層体の端部からのはみ出し不良が発生しやすくなり好ましくない。
【0012】
接着剤層の硬化温度は、熱可塑性を有する硬化型樹脂の貯蔵弾性率が最小値になる温度±10℃の範囲であることが望ましい。その温度範囲よりも低いと硬化が不十分になり、十分な耐久性が得られなくなる可能性がある。一方、その温度範囲よりも高いと急激に硬化が進むため、成形品にゆがみが生じやすい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の電磁波シールド材を構成する部材および製造方法について詳細に説明する。
1.構成部材
A.透明基材
本発明における透明基材としては、電子制御遊戯機、プラズマディスプレイ等の電子機器における前面ガラスに相当するものであり、特に限定されるものではない。この透明基材の透明性は高いもの程良好であるが、光線透過率(JIS C−6714)としては80%以上、より好ましくは90%以上が良い。また、本発明の電磁波シールド材を電子制御遊戯機に用いる場合には、遊技機の前面ガラスは総厚を4mm以下とし、2枚のガラスに金属メッシュシートを挟みこむため、透明基材の厚さは1枚が少なくとも2mm以下である必要がある。
【0014】
また、透明基材に、アルカリ処理、コロナ処理、プラズマ処理、フッ素処理、スパッタ処理等の表面処理や、界面活性剤、シランカップリング剤等の塗布、あるいはSi蒸着などの表面改質処理を行うことにより、透明基材と接着剤層との密着性を向上させることができる。
【0015】
B.熱可塑性を有する硬化型樹脂
本発明における熱可塑性を有する硬化型樹脂とは、熱を加えた場合に特定の温度までは塑性を有し、さらに温度を高くして熱を加えた場合に硬化する樹脂をいうものである。このような熱可塑性を有する硬化型樹脂としては、硬化型エチレン・酢酸ビニル共重合体が最も好適であるが、その他にも、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂等をベースに架橋性官能基を導入し、ブロック化イソシアネートや過酸化物により熱架橋させた樹脂等を用いることができる。
【0016】
また、上記の熱可塑性を有する硬化型樹脂からなる接着剤層の厚さは、透明基材および金属メッシュシートを破損させることなく良好に貼り合せるために、金属メッシュシートの厚さの5倍以上であることが好ましい。
【0017】
C.金属メッシュシート
金属箔の材料としては、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム、金、銀、プラチナ、タングステン、クロム、チタン等の金属およびその酸化物や、これら金属の2種以上の合金(例えば銅−ニッケル合金、ステンレス等)、さらには金属化合物等の、箔化が可能な金属系材料が用いられる。また、酸化防止等、必要に応じて表面をメッキ処理したものも適宜に用いることができる。これら金属の中で、特に好ましくは、箔化が容易でありかつエッチングが容易なことから、銅、アルミニウム、鉄、ニッケルの合金もしくは金属化合物がよい。また、その厚さはできるだけ薄い方が好ましく、5〜50μm、好ましくは8〜40μm、より好ましくは10〜25μmである。
【0018】
本発明における金属メッシュシートのパターンは、フォトレジスト法により、金属箔に形成される孔の形状および開口率(孔に孔の周囲の金属箔の幅(ライン幅)の1/2を加えた外形面積に対する孔の面積比率)を自由に制御することができる。本発明においては、メッシュパターンの孔の形状が、正多角形、平行四辺形、菱形、台形、円形、楕円形等の形状を少なくとも1種有し、かつこれら孔を囲む現像部すなわち金属箔の縦方向および/または横方向のライン幅が略一定であることが好ましい。このようなメッシュパターンは、言い換えると一定の形状および寸法の多数の孔が規則的に配列されることを可能とし、したがって、どの部分においても一定の機能(光透過性および/または電磁波シールド性等)が発揮される点で重要となってくる。また、金属メッシュシートの光透過性は開口率に概ね比例し、逆に光の遮断性は孔の周囲のライン幅に概ね比例する。
【0019】
また、本発明における金属メッシュシートをディスプレイに適用する際には、上記メッシュパターンをディスプレイの画素に対応する形状およびピッチとすることにより、モアレ等の画像障害を防ぐことができる。その好ましい開口率は70〜97%、さらに好ましくは80〜95%、好ましいライン幅は10〜50μm、好ましい孔の幅(ライン幅のピッチ)は200〜350μmである。
【0020】
本発明における金属メッシュシートのパターン形成方法としては、例えば、金属箔にパンチング加工により多数の孔を穿設したり、同様の金属箔にフォトレジスト法を用いてエッチング処理を施して多数の孔を穿設したりする方法が挙げられるが、精細度の高い幾何学模様のメッシュパターンを容易に形成することができるため特に後者が好適である。
【0021】
本発明に用いる金属メッシュシートの最適な製造方法を詳述すると、まず、金属箔の両面にフォトレジスト層をラミネートし、一方の面はフォトマスクを用いて所望のメッシュパターンを露光し、他方の面は全面露光により層全体を硬化させる。フォトレジスト層の厚さは10〜25μm程度が好適であり、また、紫外線の照射量は80〜160mJ程度が好適である。なお、このメッシュパターンの露光は、上記のマスクを用いた紫外線等の照射に代えて、レジスト上にレーザ光を直接照射する印刷手段を用いてもよい。
【0022】
次いで、マスクを除去し、炭酸ソーダ水溶液等のレジスト除去用の処理液に浸漬して、未露光部のレジストを除去する。これにより、一方の面では露光部のレジストからなるメッシュパターンが金属箔の表面に現像され、他方の面ではエッチング工程の際の保護層が形成される。次に、例えば塩酸中に塩化第二鉄を溶解させたエッチング処理液中に全体を浸漬する化学エッチング等のエッチング手段で未現像部に対応する部分の金属箔をエッチングし、その後、苛性ソーダ希釈液等のレジスト除去用処理液に全体を浸漬して、残っている現像部および保護層としたレジストを一度に除去することにより、金属メッシュシート単体を得る。
【0023】
上記フォトレジスト層としては、従来公知の種々のフォトレジストを使用することができるが、光重合タイプの感光性樹脂が好ましく、具体的には、光重合性モノマー、バインダー樹脂、光重合開始剤およびその他の助剤を含んでなる、通常用いられる光硬化性の組成物が好適に用いられる。本発明の金属メッシュシートの製造方法においては、特にアルカリ水現像タイプ等のドライフィルムレジストが好適である。
【0024】
なお、前記フォトレジストには、必要に応じて、増感剤、染料、着色顔料、密着改良剤、重合禁止剤、塗面改良剤、可塑剤等を含有させることができる。また、前記フォトレジストの市販品としては、日本合成化学工業社製のアルフォNITシリーズ、三京化成社製のPMERシリーズ、デュポンジャパン社製のリストンシリーズ等が挙げられる。
【0025】
また、本発明の電磁波シールド材における金属メッシュシートは、電子制御遊戯機、プラズマディスプレイ等の電子機器の目視面に設けられることから、その視認性を向上させるために、その金属メッシュシートの表面、特に、電磁波シールド材の前面側(目視面側)を黒色にすることが好ましい。黒色化処理としては、酸化処理、硫化処理、黒色メッキ処理等の方法が知られているが、具体的には、金属箔メッシュ単体に硫酸によるソフトエッチ処理を行い、金属箔表面の防錆処理膜を除去し、水洗後、水酸化ナトリウムおよび亜塩素酸ナトリウムの水溶液による酸化処理を65〜75℃で10分程度行うことにより、金属メッシュシートを黒色化する。また、本発明における金属メッシュシートは、金属箔表面に粒子径をコントロールした金属メッキを予め行うことにより、金属箔表面を黒色化し、さらに、現像レジスト部を除去する工程の後に、エッチングされた金属メッシュシートを加熱酸化することにより、金属メッキされていない部分の黒色化を行うこともできる。なお、上記のような方法により得られる金属メッシュシートは、粘着剤等を介して基体に貼着された構成ではなく、金属メッシュシート単体であるので、黒色化処理は両面に施すこともできる。
【0026】
また、本発明における金属メッシュシートは、電磁波シールド材を設置する装置本体の金属部分に接地されていることが好ましく、これにより、本発明の電磁波シールド材の電磁波シールド性をさらに向上させることができる。さらに、本発明における金属メッシュシートは、電子機器の光透過性を良好にするために、厚さが20μm以下とすることが好ましい。
【0027】
2.製造方法
本発明の電磁波シールド材の製造方法は、少なくとも透明基材、熱可塑性を有する硬化型樹脂を含有する接着剤層、金属メッシュシートを順に積層し、熱プレスによって貼り合せた後、接着剤層を熱硬化させることを特徴としている。このようにすることにより、上記の本発明の電磁波シールド材を好適に製造することができる。
【0028】
本発明の電磁波シールド材の製造方法においては、貼り合せ工程の温度が、熱可塑性を有する硬化型樹脂の貯蔵弾性率曲線の変曲点−10℃以上であって、かつ損失弾性率曲線の変曲点以下であることが好ましく、また、硬化工程の温度が、熱可塑性を有する硬化型樹脂の貯蔵弾性率が最小値になる温度±10℃であることが好ましい。
【0029】
貼り合せ工程の温度を上記の範囲とすることによって、接着剤層の弾性率を好適な範囲に制御することができ、金属メッシュシートおよび透明基体に対する接着剤の密着力、または、金属メッシュシートを挟んだ接着剤層同士の密着力を十分に発揮させることができる。また、硬化工程の温度を上記の範囲とすることによって、成形品にゆがみを生じることなく、接着剤を十分に硬化させることができ、優れた耐久性を示すことができる。
【0030】
また、本発明の電磁波シールド材の製造方法においては、貼り合せ工程を真空中で行うことが好ましい。このような環境下で貼り合せることによって、金属メッシュシートの孔内への接着剤の入り込みを容易にし、孔内における気泡の形成を防ぐことができ、これにより、電磁波シールド材の光透過性を良好に保つことができる。
【0031】
【実施例】
次に、本発明に基づく実施例と、本発明に対する比較例とを示し、本発明の効果をより明らかにする。
<実施例1>
透明基材として、厚さ1.35mm×410mm×410mmのソーダガラスを用い、接着剤層として、硬化型エチレン・酢酸ビニル共重合体からなる厚さ200μmの接着フィルムを用いた。HAAKE社製のReoStressRS75型を用いて、パラレルプレート、測定ギャップ:約1mm、周波数:1Hz、ストレス:5N、昇温速度:5℃/分の条件下、この接着フィルムの粘弾性を測定した。その測定値から、接着フィルムの貯蔵弾性率曲線G’(Pa)の変曲点温度(X)、損失弾性率曲線G’’(Pa)の変曲点温度(Y)、および貯蔵弾性率が最小値になる温度(Z)を、図1に示すように求めた結果、それぞれ81℃、96℃および127℃であった。また、金属メッシュシートとして、厚さ15μmの銅箔をライン幅20μm、ラインピッチ300μmの銅メッシュシートにエッチングし、次いで、その表面を黒色化処理して黒色化銅メッシュシートを作製した。
【0032】
次に、図3(a)に示すように、透明基材1/接着剤層2/金属メッシュシート3/接着剤層2/透明基材1の順に重ねて合わせた積層体を真空袋に入れ、真空度を−700mmHg以下にし、この真空袋を85℃の雰囲気中に15分放置して貼り合わせを行った後、真空を解除した。次いで、130℃の雰囲気中に15分放置して接着シートを硬化させた後、冷却して図3(b)のような実施例1の電磁波シールド材を得た。
【0033】
<比較例1>
接着剤層として、熱可塑性エチレン樹脂・酢酸ビニル共重合体からなる厚さ200μmの接着フィルム用いた以外は、実施例1と同様の構成材料を用いた。この接着フィルムの粘弾性を実施例1と同様に測定したところ、図2に示すように、貯蔵弾性率曲線G’(Pa)および損失弾性率曲線G’’(Pa)には、変曲点が観測されなかった。また、この接着フィルムについては、加熱温度を上昇させても硬化することがないため、本発明における貯蔵弾性率曲線の最小値は無かった。
【0034】
次に、実施例1と同様に、透明基材1/接着剤層2/金属メッシュシート3/接着剤層2/透明基材1の順に重ねて合わせた積層体を真空袋に入れ、真空度を−700mmHg以下にし、この真空袋を100℃の雰囲気中に15分放置して貼り合わせを行った後、真空を解除し、冷却して比較例1の電磁波シールド材を得た。なお、比較例1における接着フィルムは熱硬化型樹脂ではないため、硬化工程は行わなかった。
【0035】
<比較例2>
実施例1と同様の構成材料を用い、実施例1と同様に、透明基材1/接着剤層2/金属メッシュシート3/接着剤層2/透明基材1の順に重ねて合わせた積層体を真空袋に入れ、真空度を−700mmHg以下にし、この真空袋を65℃の雰囲気中に15分放置して貼り合わせを行った後、真空を解除した。次いで、130℃の雰囲気中に15分放置して接着シートを硬化させた後、冷却して比較例2の電磁波シールド材を得た。
【0036】
<比較例3>
実施例1と同様の構成材料を用い、実施例1と同様に、透明基材1/接着剤層2/金属メッシュシート3/接着剤層2/透明基材1の順に重ねて合わせた積層体を真空袋に入れ、真空度を−700mmHg以下にし、この真空袋を85℃の雰囲気中に15分放置して貼り合わせを行った後、真空を解除した。次いで、100℃の雰囲気中に15分放置して接着シートを硬化させた後、冷却して比較例3の電磁波シールド材を得た。
【0037】
<比較例4>
実施例1と同様の構成材料を用い、実施例1と同様に、透明基材1/接着剤層2/金属メッシュシート3/接着剤層2/透明基材1の順に重ねて合わせた積層体を真空袋に入れ、真空度を−700mmHg以下にし、この真空袋を85℃の雰囲気中に15分放置して貼り合わせを行った後、真空を解除した。次いで、150℃の雰囲気中に15分放置して接着シートを硬化させた後、冷却して比較例4の電磁波シールド材を得た。
【0038】
<評価>
実施例1および比較例1,3の電磁波シールド材を60℃/90%RHの環境下に1000時間放置することにより、耐久性の評価試験を行った。なお、比較例2の電磁波シールド材については、貼り合せ不良による泡が貼り合わせ界面に確認され、比較例4の電磁波シールド材は水平面上に置いたところ反りが認められたため、耐久性評価試験は行わなかった。
【0039】
上記耐久性評価試験の結果、実施例1の電磁波シールド材では、接着シートの変色や透明基体および銅メッシュシートに対する接着シートの剥がれは見られなかった。これに対して、比較例1の電磁波シールド材では、接着シートが薄茶色に変色し、また、比較例3の電磁波シールド材では、透明基体と接着シートとの接着面において端部に微小な剥がれが確認された。
【0040】
すなわち、貼り合わせ温度が熱可塑性を有する硬化型樹脂の貯蔵弾性率曲線の変曲点−10℃未満である比較例2では、接着シートによる透明基材と銅メッシュシートとの貼り合わせが良好に行えず、また、接着シートの硬化温度が熱可塑性を有する硬化型樹脂の貯蔵弾性率が最小値になる温度+10℃を超えた比較例4では、透明基材に反りが生じ、電磁波シールド材として実用に共し得ないものであった。さらに、接着シートに熱可塑性を有する硬化型樹脂が用いられていない比較例1では、高温高湿環境下において、接着シートの変色により光透過性が劣り、また、接着シートの硬化温度が熱可塑性を有する硬化型樹脂の貯蔵弾性率が最小値になる温度−10℃未満である比較例3では、接着シートの硬化が十分ではなく接着面に剥がれが生じ、耐久性に問題を有するものであった。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の電磁波シールド材によれば、少なくとも透明基材、熱可塑性を有する硬化型樹脂を含有する接着剤層、金属メッシュシートを順に積層し、特定の温度で貼り合せた後、貼り合わせ温度よりも高い温度で接着剤層を熱硬化させることによって、高温高湿環境下においても、優れた光透過性と電磁波遮蔽性を併せ持つことは勿論、金属メッシュシートおよび透明基材に対する接着剤層の密着力を十分に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における熱可塑性を有する硬化型樹脂からなる接着剤の温度に対する弾性率を示した線図である。
【図2】従来の熱可塑性樹脂からなる接着剤の温度に対する弾性率を示した線図である。
【図3】本発明の電磁波シールド材の一実施形態である。
【符号の説明】
1…透明基材、2…接着剤層、3…金属メッシュシート。
Claims (13)
- 少なくとも透明基材、接着剤層、金属メッシュシートが積層された電磁波シールド材であって、前記接着剤層が熱可塑性を有する硬化型樹脂を含有することを特徴とする電磁波シールド材。
- 前記熱可塑性を有する硬化型樹脂が、硬化型エチレン・酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の電磁波シールド材。
- 少なくとも透明基材、接着剤層、金属メッシュシートを特定の温度で貼り合せ、その後に貼り合せ温度よりも高い温度で接着剤層を硬化させて得たことを特徴とする請求項1に記載の電磁波シールド材。
- 前記貼り合せ温度が、熱可塑性を有する硬化型樹脂の貯蔵弾性率曲線の変曲点−10℃以上であって、かつ損失弾性率曲線の変曲点以下であることを特徴とする請求項3に記載の電磁波シールド材。
- 前記硬化温度が、熱可塑性を有する硬化型樹脂の貯蔵弾性率が最小値になる温度±10℃であることを特徴とする請求項3に記載の電磁波シールド材。
- 前記金属メッシュシートは、表面が黒色化処理されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁波シールド材。
- 前記金属メッシュシートは、厚さが20μm以下であり、前記接着剤層は、厚さが金属メッシュシートの5倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の電磁波シールド材。
- 前記透明基材は、接着剤層および金属メッシュシートを挟み込むように配置された2枚のガラスであり、それらの厚さは2枚とも概ね同じで2mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の電磁波シールド材。
- 前記金属メッシュシートは、電磁波シールド材を設置する装置本体の金属部分に接地されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁波シールド材。
- 少なくとも透明基材、熱可塑性を有する硬化型樹脂を含有する接着剤層、金属メッシュシートを順に積層し、熱プレスによって貼り合せた後、接着剤層を熱硬化させることを特徴とする電磁波シールド材の製造方法。
- 前記貼り合せ工程を真空中で行うことを特徴とする請求項10に記載の電磁波シールド材の製造方法。
- 前記貼り合せ工程の温度が、熱可塑性を有する硬化型樹脂の貯蔵弾性率曲線の変曲点−10℃以上であって、かつ損失弾性率曲線の変曲点以下であることを特徴とする請求項10に記載の電磁波シールド材の製造方法。
- 前記硬化工程の温度が、熱可塑性を有する硬化型樹脂の貯蔵弾性率が最小値になる温度±10℃であることを特徴とする請求項10に記載の電磁波シールド材の製造方法。
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2002
- 2002-08-09 JP JP2002232482A patent/JP2004072010A/ja not_active Withdrawn
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