JP2004068001A - ポリエステル樹脂の製造方法およびポリエステル樹脂 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)ジカルボン酸またはジカルボン酸ジアルキルエステルとジオールとを主原料として触媒の存在下エステル化反応またはエステル交換反応させエステル化率又はエステル交換率90%以上のオリゴマーを製造する工程、および(B)オリゴマーを、直列に接続された複数の反応槽を用いて溶融状態で連続的に重縮合反応させる重縮合工程、を有するポリエステルの製造方法において、(B)重縮合工程における、各重縮合反応槽出口側でのプレポリマーの数平均分子量が7000以下である場合に、該重縮合反応槽の撹拌翼外周の周速が0.5〜10m/sであることを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル樹脂の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、耐加水分解性、重合性、色調に優れたポリエステル樹脂の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル樹脂は、成形加工の容易さ、機械的物性、耐熱性、耐薬品性、保香性、その他の物理的、化学的特性に優れていることから、自動車部品、電気・電子部品、精密機器部品、さらにはフィルム、シート、モノフィラメント、繊維等に広く用いられている。
ポリエステル樹脂は一般的には、原料がジカルボン酸の場合はエステル化反応、原料がジカルボン酸ジアルキルエステルの場合にはエステル交換反応を経て、続いて重縮合反応を行うことにより製造されるが、近年、連続的に原料を供給し、連続的にエステル化またはエステル交換反応を行い、さらに連続的に重縮合反応を行ういわゆる連続法が、生産性や製品品質の安定性の観点から注目されている。
【0003】
このように連続的に重縮合を行う製造設備においては、一般的に複数の反応槽で反応条件を変え製造することが行われており、上記用途の要求性能を満足する高分子量のポリエステル樹脂を得ようとすると高温、高真空で長時間反応させる必要がある。しかし高温に長時間さらされたポリエステル樹脂は、ジオール成分どうしの脱水縮合、ビニル末端生成、カルボキシル末端生成等の副反応を誘発し、ひいては製品ポリエステル樹脂の色調を悪化させたり、加水分解性を悪化させたり、重合性を低下させたりするという問題があった。
【0004】
これらの問題点を解決するために例えば特許文献1,2には、次亜燐酸塩等を用いる方法が開示されているが、これらの方法によると、耐加水分解性、熱安定性、色調はある程度改良するものの反応速度の低下を招き、生産性を落とすという欠点があった。一方、特許文献3には触媒としてチタンとマグネシウムを併用し、かつ反応温度を制限することによって上記問題の解決を図っているが、末端ビニル基の低減や重合速度の維持、向上には効果はあるものの依然としてカルボキシル末端は多く、耐加水分解性や重合性が十分改良されているとは言えなかった。
【0005】
【特許文献1】
特公昭57−85818号公報
【特許文献2】
特開平5−230201号公報
【特許文献3】
特開平8−20638号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、重縮合反応の速度を上げ、結果的に重縮合反応時の副反応を抑え、色調や耐加水分解性、重合性が改良されたポリエステル樹脂およびその製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の条件で重縮合反応を行うことにより、色調や耐加水分解性、重合性が改良されたポリエステル樹脂が得られることを見出し、本発明を完成するに至った
即ち本発明の要旨は、(A)ジカルボン酸またはジカルボン酸ジアルキルエステルとジオールとを主原料として触媒の存在下エステル化反応またはエステル交換反応させエステル化率又はエステル交換率90%以上のオリゴマーを製造する工程、および(B)オリゴマーを、直列に接続された複数の反応槽を用いて溶融状態で連続的に重縮合反応させる重縮合工程、を有するポリエステルの製造方法において、(B)重縮合工程における、各重縮合反応槽出口側でのプレポリマーの数平均分子量が7000以下である場合に、該重縮合反応槽の撹拌翼外周の周速が0.5〜10m/sであることを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法に存する。
【0008】
本発明の別の要旨は、上記の製造方法により得られ、末端ビニル基が10μeq/g以下であることを特徴とするポリエステル樹脂に存する。
また、本発明の別の要旨は、上記の製造方法により得られ、末端カルボキシル基が1〜20μeq/gであることを特徴とするポリエステル樹脂に存する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明におけるポリエステル樹脂とは、ジカルボン酸単位及びジオール単位がエステル結合した構造を有する高分子であり、この条件を満たす限りそのモノマー成分に制限はないが、例えばジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、イソホロンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを挙げることができる。中でも、耐熱性や機械的物性の観点からは、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸が好ましく、特には芳香族ジカルボン酸が好ましい。また、結晶性や耐熱性の観点からは、全ジカルボン酸単位の内50モル%以上、さらには70モル%以上、特には80モル%以上、最適には95モル%以上をテレフタル酸単位が占めることが好ましい。
【0010】
これらジカルボン酸成分は、ジカルボン酸として、またはジカルボン酸のアルキルエステル、好ましくはジアルキルエステルとして反応に供与することができ、ジカルボン酸とジカルボン酸アルキルエステルの混合物としてもよい。ジカルボン酸アルキルエステルのアルキル基に特に制限はないが、アルキル基が長いとエステル交換反応時に生成するアルキルアルコールの沸点の上昇を招き反応液中から揮発せず、結果的に末端停止剤として働き重合を阻害するため、炭素数4以下のアルキル基が好ましく、中でもメチル基が好適である。
【0011】
ジオール成分の具体例としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール、ジブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール等の脂肪族ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール等の脂環式ジオール、キシリレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等の芳香族ジオールなどを挙げることができる。中でも、機械的物性の観点からは、脂環式ジオール、脂肪族ジオールが好ましく、特には靱性や機械的物性の観点からは全ジオール単位の内50モル%以上、さらには70モル%以上、特には80モル%以上、最適には95モル%以上を脂肪族ジオール単位が占めることが好ましい。さらに成形性や機械的物性の観点からは、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールが好ましく、結晶性の観点からは1,4−ブタンジオールが好適である。また、ジカルボン酸成分、ジオール成分は異なった構造のものを複数用いて共重合体としてもよい。
【0012】
本発明においては、さらに、乳酸、グリコール酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸、アルコキシカルボン酸、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸などの単官能成分、トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、没食子酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトールなどの三官能以上の多官能成分などを共重合成分として用いることができる。
【0013】
本発明のポリエステル樹脂の分子量に特に制限はないが、機械的物性、ペレット化の安定性、成形性の観点からは、好ましくは数平均分子量で8000〜50000の範囲、さらに好ましくは10000〜40000の範囲である。ポリエステル樹脂の数平均分子量は、末端基滴定、赤外スペクトル、核磁気共鳴スペクトル(NMR)等の手法を用いて測定することができる。
本発明における、ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基濃度に制限はないが、多すぎるとポリエステル樹脂の耐加水分解性を悪化させ、少なすぎると重合性を悪化させるため、1〜20μeq/gであることが好ましく、さらには2〜18μeq/g、中でも3〜15μeq/gであることが好ましい。
【0014】
ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基量は、樹脂を有機溶媒に溶解し、水酸化ナトリウム溶液等のアルカリ溶液を用いて滴定することにより求めることができる。
また本発明で得られるポリエステル樹脂の末端ビニル基濃度は、多すぎると色調の悪化や重合性の悪化を招くため、好ましくは10μeq/g以下、中でも7μeq/g以下、特には5μeq/g以下が好ましい。末端ビニル基はポリエステル樹脂を溶媒に溶かしNMRを測定することによって求めることができる。
【0015】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法は、慣用の製造方法に基づくが、これら公知の方法は大きく分けてジカルボン酸を主原料として用いるいわゆる直接重合法と、ジカルボン酸ジアルキルエステルを主原料として用いるエステル交換法がある。前者は初期のエステル化反応で水が生成し、後者は初期のエステル交換反応でアルコールが生成するという違いがあるが、原料の入手安定性、留出物の処理の容易さ、原料原単位の高さ、また本発明による改良効果という観点からは直接重合法が好ましい。
【0016】
直接重合法の一例としては、ジカルボン酸成分とジオール成分とを、単数若しくは直列に接続された複数のエステル化反応槽内で、エステル化反応触媒の存在下に、通常180〜300℃、好ましくは200〜280℃、特に好ましくは210〜270℃の温度、また、通常10〜250kPa、好ましくは13〜133kPa、特に好ましくは60〜101kPaの圧力下で、0.5〜5時間、好ましくは1〜3時間で、連続的にエステル化反応させ、得られたエステル化反応生成物としてのオリゴマーを重縮合反応槽に移送し、直列に接続された複数の重縮合反応槽内で、重縮合反応触媒の存在下に連続的に、通常210〜300℃、好ましくは220〜290℃の温度、特に好ましくは230〜280℃の温度、中でも重縮合の最終段はポリマーの融点より、好ましくは5〜30℃、より好ましくは5〜20℃、特に好ましくは7〜15℃高い温度で、また通常27kPa以下、好ましくは20kPa以下、特に好ましくは13kPa以下、中でも好ましくは、少なくとも1つの重縮合反応槽においては、2kPa以下の減圧下で、攪拌下に2〜12時間好ましくは3〜10時間で重縮合反応させる方法が挙げられ、中でも、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分として1,4−ブタンジオールを用いる場合には、通常180〜260℃、好ましくは200〜250℃、特に好ましくは210〜245℃の温度、また、通常10〜133kPa、好ましくは13〜101kPa、特に好ましくは60〜90kPa、0.5〜5時間、好ましくは1〜3時間で、連続的にエステル化反応させ、得られたエステル化反応生成物としてのオリゴマーを重縮合反応槽に移送し、直列に接続された複数の重縮合反応槽内で、重縮合反応触媒の存在下に連続的に、通常210〜260℃、好ましくは220〜250℃、特に好ましくは220〜245℃の温度、通常27kPa以下、好ましくは20kPa以下、特に好ましくは13kPa以下、中でも好ましくは、少なくとも1つの重縮合反応槽においては、2kPa以下の減圧下で、攪拌下に2〜12時間好ましくは2〜10時間で重縮合反応させる方法が挙げられる。
【0017】
一方、エステル交換法の一例としては、ジカルボン酸ジアルキルエステル成分とジオール成分とを、単数若しくは直列に接続された複数のエステル交換反応槽内で、エステル交換反応触媒の存在下に、通常110〜300℃、好ましくは140〜280℃、特に好ましくは180〜260℃の温度、また、通常10〜250kPa、好ましくは13〜133kPa、特に好ましくは60〜101kPaの圧力下で、0.5〜5時間、好ましくは1〜3時間で連続的にエステル交換反応させ、得られたエステル交換反応生成物としてのオリゴマーを重縮合反応槽に移送し、直列に接続された複数の重縮合反応槽内で、重縮合反応触媒の存在下に連続的に、通常210〜300℃、好ましくは220〜290℃の温度、特に好ましくは230〜280℃の温度、中でも重縮合の最終段はポリマーの融点より、好ましくは5〜30℃、より好ましくは5〜20℃、特に好ましくは7〜15℃高い温度で、通常27kPa以下、好ましくは20kPa以下、特に好ましくは13kPa以下、中でも好ましくは少なくとも1つの重縮合槽においては2kPa以下の減圧下で、攪拌下に2〜12時間好ましくは3〜10時間で重縮合反応させる方法が挙げられ、中でも、ジカルボン酸ジアルキルエステル成分としてテレフタル酸ジメチル、ジオール成分として1,4−ブタンジオールを用いる場合には、通常110〜260℃、好ましくは140〜245℃、特に好ましくは180〜220℃の温度、また、通常10〜133kPa、好ましくは13〜101kPa、特に好ましくは60〜90kPaの圧力下で、0.5〜5時間、好ましくは1〜3時間で、連続的にエステル交換反応させ、得られたエステル交換反応生成物としてのオリゴマーを重縮合反応槽に移送し、直列に接続された複数の重縮合反応槽内で、重縮合反応触媒の存在下に連続的に、通常210〜260℃、好ましくは220〜250℃、特に好ましくは220〜245℃の温度、通常27kPa以下、好ましくは20kPa以下、特に好ましくは13kPa以下の減圧下、中でも好ましくは、少なくとも1つの重縮合反応槽においては、2kPa以下の減圧下で、攪拌下に2〜12時間好ましくは2〜10時間で重縮合反応させる方法が挙げられる。
【0018】
本発明は、触媒の存在下エステル化またはエステル交換反応させたエステル化率またはエステル交換率90%以上のオリゴマーを製造し、続いて該オリゴマーを直列に接続された複数の反応槽を用いて溶融状態で連続的に重縮合反応させるポリエステルの製造工程において、重縮合反応槽出口側でのプレポリマーの数平均分子量(Mn)が7000以下である場合に、該重縮合反応槽の攪拌翼外周の周速が0.5〜10m/sであることを特徴とする。
本発明の製造方法において連続重縮合反応槽は直列に接続された複数個あることが特徴で、エステル化またはエステル交換率90%以上のオリゴマーは、第一の重縮合反応槽に入り、各重縮合反応槽を移動するにつれ分子量が増加する。従って通常出口側のプレポリマーの数平均分子量が7000以下になるのは、第一の重縮合反応槽あるいは前半の重縮合反応槽に限られる。
【0019】
重縮合反応槽出口側でのプレポリマーの数平均分子量が7000以下である場合に、該重縮合反応槽の攪拌翼外周の周速は、好ましくは1〜9m/s、特に好ましくは2〜8m/sである。
第一の重縮合反応槽出口側でのプレポリマーの数平均分子量が7000を越えると攪拌の負荷が増したり、プレポリマーまたはポリマーの攪拌軸への巻き付きや、攪拌翼が流体に作用を及ぼさないいわゆる空回りの現象が起こり易くなり、本発明の目的を達し得なくなる。
また、攪拌翼外周の周速が0.5m/sより小さいと本発明の効果が現れなくなり、10m/sより大きいと攪拌の負荷が増したり、反応液の飛散やいわゆるエントレインメントを誘発したり、プレポリマーまたはポリマーの攪拌軸への巻き付きや、攪拌翼が流体に作用を及ぼさないいわゆる空回りの現象が起こり易くなり、本発明の目的を達し得なくなる。
【0020】
また、本発明でいうエステル化率とは、ジカルボン酸成分の全カルボキシル基の内、エステル化されたカルボキシル基の比率を表す数値であり、またエステル交換率とは、原料のジカルボン酸ジアルキルの内、原料ジオール成分で置き換わった比率を指す数値であって、以下のように定義する。
エステル化率=((ケン化価−酸価)/ケン化価)×100
エステル交換率=((ジカルボン酸ユニットのモル濃度×2−アルキルエステルの当量)/ジカルボン酸ユニットのモル濃度×2)×100
(但し式中アルキルエステルのアルキルとは原料のジカルボン酸ジアルキルエステル由来のアルキル基を示す)
【0021】
酸価はオリゴマーを溶媒に溶解しアルカリ滴定して求めることができ、ケン化価はオリゴマーをアルカリ加水分解し、酸で逆滴定して求めることができる。また、ジカルボン酸ユニットのモル濃度、アルキルエステルの当量は、例えばオリゴマーを適当な溶媒に溶解させ、1H−NMRを測定し、それぞれのシグナル強度比から求めることができる。
本発明でいう直列に接続された複数の重縮合反応槽とは、一般的には形状や攪拌条件の異なる複数の反応槽が配管等で連結された構造を指し、重縮合反応により得られた樹脂は、通常、最終重縮合反応槽の底部からポリマー抜出ダイに移送されてストランド状に抜き出され、水冷されながら若しくは水冷後、カッターで切断されてペレット状、チップ上の粒状体とされる。
【0022】
本発明におけるエステル化またはエステル交換反応触媒としては、例えば、三酸化二アンチモン等のアンチモン化合物、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等、のチタン化合物、ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキサイド、シクロヘキサヘキシルジスズオキサイド、ジドデシルスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、トリフェニルスズハイドロオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、トリブチルスズクロライド、ジブチルスズサルファイド、ブチルヒドロキシスズオキサイド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸、ブチルスタンノン酸、等のスズ化合物、酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキサイド、燐酸水素マグネシウム、等のマグネシウム化合物、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、カルシウムアルコキサイド、燐酸水素カルシウム、等のカルシウム化合物の他、マンガン化合物、亜鉛化合物等を挙げることができるが、中でもチタン化合物、スズ化合物が好ましく、中でもチタン化合物、特にはテトラブチルチタネートが好ましい。
【0023】
触媒の使用量は特に限定されないが、多すぎると異物の原因となるばかりでなくポリマーの熱滞留時の劣化反応や、ガス発生の原因となり、少なすぎると、主反応速度が低下し副反応が起こりやすくなるため、通常ポリマーに対する金属原子の重量比として、1〜300ppm、好ましくは5〜200ppm、さらに好ましくは5〜150ppm、特に好ましくは20〜100ppm、中でも30〜90ppmが好適である。
また、重縮合反応触媒としては、エステル化またはエステル交換反応時に添加した触媒を引き続いて重縮合反応触媒として用いることとして新たな触媒の添加を行わなくてもよいし、前記触媒を更に添加してもよく、そのときの使用量に特に制限はないが、多すぎると前記のような問題が起こるため、通常ポリマーに対する金属原子の重量比として、300ppm以下、好ましくは150ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下、特に好ましくは50ppm以下とする。
【0024】
また、触媒として有機チタン化合物または有機チタン化合物と有機スズ化合物を用いる場合には、ポリマーの末端カルボキシル基、末端ビニル基生成抑制の観点から、最終的にはポリマー中のチタン原子、スズ原子の合計の金属濃度は250ppm以下であることが好ましく、さらには150ppm以下、中でも120ppm以下、特には90ppm以下が好ましい。これらの金属量は、湿式灰化等の方法でポリマー中の金属を回収した後、原子発光、Induced Coupled Plasma(ICP)等を用いて測定することができる。
【0025】
又、前記エステル化反応、エステル交換反応、重縮合反応において、前記触媒の他に、正燐酸、亜燐酸、次亜燐酸、ポリ燐酸、及びそれらのエステルや金属塩等の燐化合物、水酸化ナトリウム、安息香酸ナトリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属化合物等の反応助剤、2,6−ジ−t−ブチル−4−オクチルフェノール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3’,5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等のフェノール化合物、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−ラウリルチオジプロピオネート)等のチオエーテル化合物、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等の燐化合物等の抗酸化剤、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、モンタン酸やモンタン酸エステルに代表される長鎖脂肪酸及びそのエステル、シリコーンオイル等の離型剤等の他の添加剤を存在させてもよい。
【0026】
重縮合反応槽としては、縦型攪拌重合槽、横型攪拌重合槽、薄膜蒸発式重合槽等公知のものを挙げることができるが、反応液の粘度が上昇する重縮合の後期は、表面更新性とプラグフロー性、セルフクリーニング性に優れた薄膜蒸発機能を有した単数または直列に接続された複数の横型攪拌重合機を選定することが好ましい。
【0027】
図1、図2に実施態様の例を示した。
図1において、2は完全混合型のエステル化反応槽、P1は原料供給配管、2aはエステル化反応槽2の上部に設けられたベント用口、2bはエステル化反応槽2の上部に設けられた触媒供給口である。反応槽2においてオリゴマーを製造する工程(A)が行われる。また、本実施態様では、重縮合工程(B)は、反応槽3〜5の3槽で行われる。3は完全混合型の第一重縮合反応槽、3aは第一重縮合反応槽2の上部に設けられたベント用口、4は完全混合型の第二重縮合反応槽、4aは第二重縮合反応槽4の上部に設けられたベント用口、5は水平方向に2本の攪拌軸およびセルフクリーニング性を有する翼を持つ横型の第三重縮合反応槽、5aは第三重縮合反応槽5の上部に設けられたベント用口、P2、P3、P4はそれぞれの反応槽を繋ぐ配管、P5はポリマーの抜出配管である。この場合の第三重縮合反応槽5は2本の回転軸を有するため同方向、異方向の回転方向を選ぶことができるが、表面更新性を向上させるためには、どちらかというと異方向回転が好ましい。
【0028】
図2の例は図1における完全混合型の第二重縮合反応槽を、水平方向に回転軸を有し薄膜蒸留能を有する横型の反応槽に換えた態様であり、滞留の生じやすい回転軸中心部には軸を持たない構造となっている。
また、本発明の製造法で得られたポリエステル樹脂は、引き続き公知の方法で固相重合させて分子量を上げることもできる。
【0029】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において、ポリエステル樹脂の評価は下記の方法により行った。
(1)末端カルボキシル基濃度
ポリエステル樹脂0.5gをベンジルアルコール25mLに溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/Lベンジルアルコール溶液を用いて滴定した。末端カルボキシル基濃度が小さいほど、耐加水分解性が良好なことを示す。
【0030】
(2)末端ビニル基濃度
ポリエステル樹脂をヘキサフルオロイソプロパノール/重クロロホルム=3/7(v/v)に溶解させ、共鳴周波数400MHzの1H−NMRを測定し求めた。ビニル基濃度が低い方が、製造中の副反応が少なかったことを示すと同時に重合性に優れることを表す。
(3)末端グリコール基濃度および末端アルキル基濃度
ポリエステル樹脂をヘキサフルオロイソプロパノール/重クロロホルム=3/7(v/v)に溶解させ、共鳴周波数400MHzの1H−NMRを測定し求めた。
【0031】
(4)プレポリマー及びポリエステル樹脂の数平均分子量
数平均分子量=2/(総末端基濃度) から求めた。但し、
総末端基濃度=末端カルボキシル基濃度+末端グリコール基濃度+末端ビニル基濃度とした。
(5)ポリエステル樹脂の色調
日本電色(株)製色差計(Z−300A型)を用い、イエローインデックスb値を算出し評価した。値が小さいほど黄ばみが少なく色調が良好であることを示す。
【0032】
(6)オリゴマーのエステル化率
以下のようにして求めた酸価とケン化価を用いて算出した。
[酸価]
オリゴマーをジメチルホルムアミドに溶解させ、0.1NのKOH/メタノール溶液を用いて滴定し求めた。
[ケン化価]
0.5NのKOH/エタノール溶液でオリゴマーを加水分解し、0.5Nの塩酸で逆滴定し求めた。
【0033】
【数1】
エステル化率=((ケン化価−酸価)/ケン化価)×100
【0034】
(7)オリゴマーのエステル交換率
共鳴周波数400MHzの1H NMRを用いて残存メチルエステルを測定し、ケン化価で求めたジカルボン酸ユニットのモル濃度とを用いて下式で算出した。
【0035】
【数2】
エステル交換率=((ジカルボン酸ユニットのモル濃度×2−アルキルエステルの当量)/ジカルボン酸ユニットのモル濃度×2)×100
【0036】
[実施例1]
図3に本実施例のフローチャートを示す。図3において、1はスラリー調製槽、1a及び1bはそれぞれ、スラリー調製槽1の上部に設けられたジカルボン酸成分及びジオール成分の各原料供給口、2はエステル化反応槽、2aはエステル化反応槽2の上部に設けられたベント用口、2bはエステル化反応槽2の上部に設けられた触媒供給口、2cはエステル化反応槽のサンプリング口、3は第一重縮合反応槽、3aは第一重縮合反応槽3の上部に設けられたベント用口、3cは第一重縮合反応槽のサンプリング口、4は水平方向に攪拌軸を有する横型の第二重縮合反応槽、4aは第二重縮合反応槽4の上部に設けられたベント用口、6はポリマー抜き出しダイ、7は回転式カッター、M1、M2、M3、M4は攪拌装置、G1、G2、G3、G4はギヤポンプ、P1、P2、P3、P4は配管である。
【0037】
エステル化反応槽2にあらかじめエステル化率93%のポリブチレンテレフタレートオリゴマーを充填しておき、テレフタル酸1.0モルに対して、1,4−ブタンジオール1.8モルの割合で調製したスラリーをスラリー調製槽1から、ギヤポンプG1により配管P1内を通過せられてスクリュー型攪拌機を有するエステル化反応槽2に、50L/hとなるように連続的に供給すると同時に触媒供給口2bからテトラブチルチタネートをチタン量として理論収量ポリマー当たり100ppmとなるように連続的に供給した。エステル化反応槽2は、垂直回転軸を有する翼径160mmのスクリュー型攪拌翼を取り付けた攪拌装置M2を備えた縦型反応槽であり、エステル化反応槽2の内温は230℃、圧力は78kPaとし、生成する水とテトラヒドロフラン、及び未反応の1,4−ブタンジオールは、減圧機(図示せず)に接続されたベント用口2aから抜き出し、精留塔(図示せず)を経て、未反応の1,4−ブタンジオールの一部はエステル化反応槽2に還流させ、残りの1,4−ブタンジオールと水、テトラヒドロフランは系外に抜き出しながらエステル化反応を行った。この時エステル化槽2の実液が100Lとなるように液面制御をかけながら反応液を抜き出し、第一重縮合反応槽3に連続的に供給した。系が安定した12時間後、サンプリング口2cから採取したオリゴマーのエステル化率は98%であった。
【0038】
第一重縮合反応槽3も、垂直回転軸を有する攪拌装置M3(攪拌翼は直径が510mmのパドル型)を備えた縦型反応槽であり、攪拌翼外周部の周速が2.7m/sになるように回転数を設定した。また、該反応槽3の内温は245℃、圧力2.7kPaとし、実液が60Lになるように液面制御をかけ、生成する水とテトラヒドロフラン、1,4−ブタンジオールを減圧機(図示せず)に接続されたベント用口3aから抜き出しながら、初期重縮合反応を行い、抜き出した反応液は第二重縮合反応槽4に連続的に供給した。系が安定した後、ギヤポンプG3出口のサンプリング口3cからプレポリマーを抜き出し、数平均分子量を測定したところ3800であった。
【0039】
第二重縮合反応槽4は、複数個の攪拌翼ブロックで構成され、攪拌ロータの中心部に回転シャフトを持たない攪拌翼を具備した横型反応槽であり、該反応槽4の内温は240℃、圧力200Paとし、平均滞留時間が0.9hrになるよう(実液が30L)液面制御をかけ、生成する水とテトラヒドロフラン、及び1,4−ブタンジオールを、減圧機(図示せず)に接続されたベント用口4aから抜き出しながら、重縮合反応を進めた。得られたポリマーはギヤポンプG4により配管P4内を経由しポリマー抜き出しダイ5からストランド状に連続的に抜き出し、回転式カッター6でカッティングした。得られたポリマーの数平均分子量は20000、末端カルボキシル基濃度は11μeq/g、末端ビニル基濃度は3μeq/gであり、末端カルボキシル基、末端ビニル基が少なく、色調に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂が得られた。
各実施例、比較例の実施条件及びポリマーの分析値をまとめて表1に示した。
【0040】
[実施例2]
第一重縮合反応槽3の攪拌翼外周部の周速が6.4m/sになるように回転数を設定した他は実施例1と同様に行った。表に示すように末端カルボキシル基、末端ビニル基が少なく、色調に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂が得られた。
【0041】
[実施例3]
テトラブチルチタネートをチタン量として理論収量ポリマー当たり75ppmとなるようにした他は実施例1と同様に行った。表に示すように末端カルボキシル基、末端ビニル基が少なく、色調に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂が得られた。
【0042】
[実施例4]
実施例1の反応槽2にあらかじめエステル交換率93%のポリブチレンテレフタレートオリゴマーを充填しておき、テレフタル酸ジメチル1.0モルに対して1,4−ブタンジオール1.5モルの割合で調製した原料をスラリー調製槽1から供給し。反応槽2の内温を200℃、圧力を101kPaとした他は実施例1と同様の方法で反応を行った。系が安定した12時間後、サンプリング口2cから採取したオリゴマーのエステル交換率は96%であった。また系が安定した後の第一重縮合反応槽3の出口のプレポリマーの数平均分子量は3800であり、得られたポリマーの数平均分子量は19300、末端カルボキシル基濃度は12μeq/g、末端ビニル基濃度は3μeq/gであった。ポリマーの分析値をまとめて表に示した。末端カルボキシル基、末端ビニル基が少なく、色調に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂が得られた。
【0043】
[比較例1]
第一重縮合反応槽3の攪拌翼外周部の周速が0.4m/sになるように回転数を設定した他は実施例1と同様に行った。得られたポリマーの数平均分子量は16800と低かった。
【0044】
[比較例2]
第一重縮合反応槽3の攪拌翼外周部の周速を0.4m/s、第二重縮合槽の内温を252℃に設定した以外は実施例1と同様に行った。得られたポリマーの数平均分子量は実施例1と同等であったが、末端カルボキシル基濃度、末端ビニル基濃度が高く、色調も悪化した。
【0045】
[比較例3]第一重縮合反応槽3の攪拌翼外周部の周速を0.4m/s、第二重縮合槽の内温を252℃に設定した以外は実施例4と同様に行った。得られたポリマーの数平均分子量は実施例4と同等であったが、末端カルボキシル基濃度、末端ビニル基濃度が高く、色調も悪化した。
【0046】
【表1】
【0047】
【発明の効果】
本発明のポリエステル樹脂の製造法によると、重縮合反応にかかる時間を短縮し、副反応を抑え、色調や重合性が改良されたポリエステル樹脂が得られるため産業上の利用価値が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい一実施態様であるポリエステルの製造装置の概略図である。
【図2】本発明の好ましい一実施態様であるポリエステルの製造装置の概略図である。
【図3】実施例1で使用したポリエステルの製造装置の概略図である。
【符号の説明】
1 スラリー調整槽
1a、1b 原料供給口
2 エステル化反応槽
2a ベント用口
2b 触媒供給口
2c サンプリング口
3 第一重縮合反応槽
3a ベント用口
3c サンプリング口
4 第二重縮合反応槽
4a ベント用口
5 第三重縮合反応槽
5a ベント用口
6 ポリマー抜出ダイ
7 回転式カッター
M1、M2、M3、M4 攪拌装置
G1、G2、G3、G4 ギアポンプ
P1 原料供給配管
P2、P3、P4、P5 配管
Claims (7)
- (A)ジカルボン酸またはジカルボン酸ジアルキルエステルとジオールとを主原料として触媒の存在下エステル化反応またはエステル交換反応させエステル化率又はエステル交換率90%以上のオリゴマーを製造する工程、および(B)オリゴマーを、直列に接続された複数の反応槽を用いて溶融状態で連続的に重縮合反応させる重縮合工程、を有するポリエステルの製造方法において、(B)重縮合工程における、各重縮合反応槽出口側でのプレポリマーの数平均分子量が7000以下である場合に、該重縮合反応槽の撹拌翼外周の周速が0.5〜10m/sであることを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
- ジカルボン酸としてテレフタル酸、ジオール成分として1,4−ブタンジオールを用いることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
- ジカルボン酸ジアルキルエステルとしてテレフタル酸ジメチル、ジオール成分として1,4−ブタンジオールを用いることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
- 触媒として有機チタン化合物または有機チタン化合物と有機スズ化合物を用い、チタン原子、スズ原子の合計の金属濃度が250ppm/ポリマー以下であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のポリエステル樹脂の製造方法。
- 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の製造方法により得られ、末端ビニル基が10μeq/g以下であることを特徴とするポリエステル樹脂。
- 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の製造方法により得られ、末端カルボキシル基が1〜20μeq/gであることを特徴とするポリエステル樹脂。
- 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の製造方法により得られ、末端ビニル基が10μeq/g以下、かつ末端カルボキシル基が1〜20μeq/gであることを特徴とするポリエステル樹脂。
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