JP2004067691A - 窒素複素環のモノメチル化方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】水素原子と結合した少なくとも1つの窒素原子を含む窒素複素環を炭酸ジメチルと反応させて窒素複素環をモノメチル化する方法。
【解決手段】反応を100〜200℃の温度で、0.93×105Pa〜1.07×105Paの圧力で行い、生成するメタノールを反応中に連続的に蒸留分離する。
【選択図】なし

Description

 本発明は窒素を含む複素環のモノメチル化方法に関するものである。
 このような複素環、例えばアゾール類は農薬、医薬、生物学、塗料、染料等の種々の分野で使用される。
 窒素複素環のN-メチル化方法は当業者に公知である。窒素複素環をハロゲン化アルキルまたはアルキル硫酸によってアルキル化する方法には多くの欠点がある。すなわち、反応物、例えば硫酸ジメチル等は毒性が強い。さらに、得られた生成物の精製に複雑な方法を必要とする。そのてめ、環境に対する毒性が低い反応物を用いる方法が提案された。すなわち、炭酸ジメチルをメチル化する方法が種々提案された。
 下記文献の著者は塩基(炭酸カリウム)と相間移動触媒(クラウンエーテル[18-6])の存在下で、窒素複素環を炭酸ジメチルと反応させてイミダゾール、ベンゾイミダールおよびこれらの誘導体をN-メチル化する方法を記載している。
Liebigs Ann.Chem.(Liebigs Ann.Chem.1987,1,77)
 この合成法の欠点はコストが高いことと、クラウンエーテルに毒性がある点にある。さらに、反応終了後に反応媒体から触媒を分離する操作が必要である。
 下記文献にはクラウンエーテルを含まない方法が提案されている。
国際特許第WO96/08537号
 この方法はアルカリ性炭酸塩または水酸化物の存在下で複素環を炭酸ジメチルによってメチル化して有機顔料を製造する方法である。反応は80〜150℃の温度で大気圧下で行う。しかし、この方法は触媒の存在下でも収率が低い。
 下記文献には、イミダゾールと炭酸ジメチルとを120〜200℃、好ましくは160℃で反応させてN-メチル化イミダゾールを合成する方法が開示されている。
日本国特許第JP 9169737号
 しかし、この特許に記載の方法はメチルイミダゾール誘導体を沸点が約250℃の化合物から合成する穂法に限定される。沸点がこれよりも低い複素環で行った試験の結果から、この方法は全ての窒素複素環に対しては一般化できず、特に沸点が190℃以下の窒素複素環には適用できないことがわかっている。
 従って、多くの窒素複素環に一般化でき、実施が容易な窒素複素環のN-メチル化方法が依然として求められている。
 特に、複数の窒素原子を有し、各窒素原子が水素原子と結合している窒素複素環の場合に、モノメチル化物のみを合成することができるような選択的方法が当業者には求められている。
 本発明の目的はこうした要求に答える方法を提供することにある。
 本発明の対象は、水素原子と結合した少なくとも1つの窒素原子を含む窒素複素環を炭酸ジメチルと反応させて窒素複素環をモノメチル化する方法において、反応を100〜200℃の温度で、0.93×105Pa〜1.07×105Paの圧力で行い、生成するメタノールを反応中に連続的に除去することを特徴とする方法にある。
 本発明方法はほぼ大気圧下で100〜200℃の温度で容易に実施できるという利点がある。さらに、メタノールを連続的に除去する(すなわち反応で生じたメタノールを蒸留で分離する)ことによって反応媒体の温度を制御することができ、この反応媒体の温度制御はいくつかの利点がある。すなわち、沸点が高い(例えば約250℃の)複素環だけでなく種々の窒素複素環に適用できる。さらに、本発明方法は反応媒体の温度を下げずに多量の炭酸ジメチルを反応媒体に添加することができる。反応速度は反応媒体中の炭酸ジメチルの量に依存するので、反応を極めて良好な反応速度で行わせることができる。
 本発明方法は沸点が約190℃以上、例えば約250℃の複素環だけでなく、沸点が低い例えば約120℃の複素環にも適用できる。本発明は一般に沸点が120℃以上の複素環に適用される。
 窒素複素環はアゾールおよびアゾールのベンゼン誘導体、インドリン、ピラゾリジン、モルホリン、ピペラジンおよびアゼピンの中から選択するのが好ましい。
 「アゾール」とは水素原子と結合した少なくとも1個の窒素原子を有する5員複素環式化合物を意味する。1個の窒素原子を有するアゾールの例としてはインドールおよびカルバゾールが挙げられ、2個の窒素原子を有するアゾールの例としてはイミダゾール、ベンゾイミダゾール、ピラゾールおよびインダゾールが挙げられる。3個の窒素原子を有するアゾールの例としては特にトリアゾールとベンゾトリアゾールが挙げられ、5個の窒素原子を有するアゾールの例としてはペンタゾールが挙げられる。
 炭酸ジメチルの使用量は窒素複素環1モル当たり1〜5モル、好ましくは窒素複素環1モル当たり1.2〜3モルにする。
 炭酸ジメチルは一般に、0.001モル/基質1モル×時間から1モル/基質1モル×時間の流量で反応媒体に少しずつ添加する。この場合、基質は窒素複素環である。
 反応は0.93×105Pa〜1.07×105Paの圧力、すなわち700mmHg〜800 mmHgで行う。一般に、局所的大気圧はこの範囲内にあり、反応はこの大気圧で行う。
 窒素複素環は水素原子と結合した窒素原子がモノメチル化される。窒素複素環が2個以上の窒素原子を含む場合、すなわち少なくとも2個の窒素原子を含み、各窒素原子が水素原子と結合している場合、反応は選択的になる。これはその化合物が1回だけメチル化され、モノメチル化された化合物のみが合成されることを意味する。そのためには、モノメチル化された化合物を連続的に除去する(すなわち生成と同時に反応媒体から除去する)。窒素複素環が水素原子と結合している窒素原子を少なくとも2つ含む場合、本発明方法を溶媒の存在下で行うことができる。溶媒はメトキシナフタレン、アニソールおよびトリクロロベンゼンからなる群の中から選択される。
 本発明の好ましい実施法を説明する。
 蒸留カラムと還流凝縮器を上部に有し、攪拌装置と温度計とを備えた反応器を使用する。先ず、窒素複素環だけを導入するか、反応に用いる炭酸ジメチルの一部と一緒に導入する。続いて、反応媒体を100℃〜200℃、好ましくは120℃〜180℃の温度に加熱する。本発明方法は連続法または半連続法であるので、0.001〜1モル/基質1モル×時間の流量で反応媒体に連続的に導入する。ここで、基質は窒素複素環である。
 窒素複素環を炭酸ジメチルとの混合物にして連続的に導入することもできる。この場合には炭酸ジメチル:窒素複素環のモル比を1〜10、好ましくは1〜3にする。
 反応で生じたメタノールは蒸留で分離する。反応終了後、反応媒体を周囲温度まで放冷し、メチル化生成物を回収する。窒素複素環が水素原子と結合している窒素原子を少なくとも2つ含む場合には、反応で生じたモノメチル化生成物を生成と同時に抜き出す。
 以下、本発明の実施例を説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
1-メチルイミダゾールの合成
 反応を250mlの反応器で行う。この反応器は撹拌器、温度計および反応中に連続的に供給するための供給系を備えている。反応器の上部には蒸留カラム、還流比ヘッドおよび還流凝縮器が付けてある。
 まず、反応器に34.04g(0.5モル)のイミダゾールを導入する。媒体を170℃に加熱し、この温度を反応全体にわたって維持する。炭酸ジメチルを7時間かけて145mモル/時で導入する。反応で生じたメタノールを蒸留で分離する。全ての炭酸ジメチルを導入した後、反応を170℃で2時間続ける。続いて、反応媒体を周囲温度まで放冷する。33.36g(すなわち0.49モル)の1-メチルイミダゾールを回収する、これは収率98%に相当する。
N-メチルモルホリンの合成
 実施例1と同じ装置を用いた。100gの2-メトキシナフタレンを反応器に導入し、媒体を170℃に加熱し、この温度を反応全体にわたって維持する。続けて、モル比が1/2のモルホリン/炭酸ジメチル混合物を72ミリモル/時で反応器に導入する。モルホリン/炭酸ジメチルの導入に要する時間は7時間である。次いで、炭酸ジメチルだけを100ミリモル/時の流量で2時間反応器に導入する。
 メタノールとN-メチルモルホリンを連続的に抜き出す。22.25g(0.22モル)のN-メチルモルホリンが得られ、これは43%の収率に相当する。
N-メチルピペラジンの合成
 実施例1と同じ装置を用いた。43.07g(0.5モル)のピペラジンを反応器に導入する。次いで、媒体を110℃に加熱し、この温度を反応全体にわたって維持する。炭酸ジメチルは100ミリモル/時で10時間反応器に導入する。
 反応で生じるメタノールは蒸留で分離する。反応媒体の温度を110℃で安定させるために過剰な炭酸ジメチルも蒸留で分離する。
 次いで、反応媒体を周囲温度まで放冷する。14.52g(0.145モル)の1-メチルピペラジンを回収する、これは収率29%に相当する。
N-メチルピラゾールの合成
 実施例1と同じ装置を用いた。20.64g(0.3モル)のピラゾールと、4.5g(0.05モル)の炭酸ジメチルとを反応器に導入する。次いで、媒体を140℃に加熱し、この温度を反応全体にわたって維持する。炭酸ジメチルを60ミリモル/時で8時間反応器に導入する。
 反応で生じるメタノールは蒸留で分離する。反応媒体の温度を110℃で安定させるために過剰な炭酸ジメチルも蒸留で分離する。
 次いで、反応媒体を周囲温度まで放冷する。17.24g(0.21モル)のN-メチルピラゾールを回収する、これは収率70%に相当する。
3,5-ジメチルピラゾールからの1,3,5-トリメチルピラゾールの合成
 実施例1と同じ装置を用いた。24.03g(0.25モル)の3,5-ジメチルピラゾールと、4.5g(0.05モル)の炭酸ジメチルとを反応器に導入する。反応媒体を140℃に加熱し、この温度を反応全体にわたって維持する。
 炭酸ジメチルを50ミリモル/時で6時間反応器に連続的に導入する。
 反応で生じるメタノールは蒸留で分離する。反応媒体の温度を140℃で安定させるために過剰な炭酸ジメチルも蒸留で分離する。全ての炭酸ジメチルを導入した後、反応媒体を周囲温度まで放冷する。15.41g(0.14モル)の1,3,5-トリメチルピラゾールを回収する、これは収率57%に相当する。
 下記の実施例6は本発明ではなく、本発明方法を各種窒素複素環、特に沸点が190℃以下の窒素複素環に対して一般化するためには反応で生じたメタノールを連続的に除去する必要であることを示すために行ったものである。
メタノールを除去せずにN-メチルピラゾールを合成
 実施例1と同じ装置を用いた。20.64g(0.3モル)のピラゾールと、4.5g(0.05モル)の炭酸ジメチルとを反応器に導入する。続いて、反応媒体を140℃に加熱し、次いで、炭酸ジメチルを60ミリモル/時(5.4g/時)で8時間反応器に導入する。
 反応媒体の温度は140℃で1時間安定し、次いで、徐々に下がり、反応終了時には115℃になる。反応媒体を周囲温度まで放冷する。回収されたN-メチルピラゾールはわずか3.53g(0.042モル)である。これは収率14%に相当する。このN-メチルピラゾールの収率(14%)は本発明のメタノールを除去する方法で得られる収率(実施例4の収率70%)よりも著しく低い。

Claims (9)

  1.  水素原子と結合した少なくとも1つの窒素原子を含む窒素複素環を炭酸ジメチルと反応させて窒素複素環をモノメチル化する方法において、
     反応を100〜200℃の温度で、0.93×105Pa〜1.07×105Paの圧力で行い、生成するメタノールを反応中に連続的に除去することを特徴とする方法。
  2.  窒素複素環の沸点が120℃以上である請求項1に記載の方法。
  3.  窒素複素環がアゾール、アゾールのベンゼン誘導体、インドリン、ピラゾリジン、モルホリン、ピペラジンおよびアゼピンの中から選択される請求項2に記載の方法。
  4.  反応を120〜180℃の温度で行う請求項1に記載の方法。
  5.  炭酸ジメチルの量を窒素複素環1モル当たり1〜5モルにする請求項1に記載の方法。
  6.  炭酸ジメチルを反応媒体に少しずつ添加する請求項1に記載の方法。
  7.  炭酸ジメチルを0.001〜1モル/窒素複素環1モル×時の流量で反応媒体に導入する請求項6に記載の方法。
  8.  窒素複素環が、水素原子と結合した少なくとも2つの窒素原子を含む請求項1に記載の方法。
  9.  モノメチル化した窒素複素環を連続的に除去する請求項8に記載の方法。
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