JP2004066562A - ボールペン - Google Patents
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Abstract
【課題】チップ先端に設けられたインク溶剤の蒸発を防止する保護被膜が、筆記することで取り外されるボールペンを提供する。
【解決手段】チップ先端にインク溶剤の蒸発を防止する保護被膜9を備えたボールペンにおいて、筆記動作が、筆記角度60度、筆記速度4.5m/分、ペン体重量を含めた筆記荷重が100gfであって、その筆記距離が500cm以下で、前記保護被膜9が前記筆記動作によってチップ先端から離脱し、筆記可能な状態となることを特徴としている。
【選択図】 図2
【解決手段】チップ先端にインク溶剤の蒸発を防止する保護被膜9を備えたボールペンにおいて、筆記動作が、筆記角度60度、筆記速度4.5m/分、ペン体重量を含めた筆記荷重が100gfであって、その筆記距離が500cm以下で、前記保護被膜9が前記筆記動作によってチップ先端から離脱し、筆記可能な状態となることを特徴としている。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はボールペンに関し、ボールペンのチップ先端にインク溶剤の蒸発を防止する保護被膜を備えたボールペンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ジェルインキボールペンと呼ばれる剪断減粘性を有する水性インキを充填してなるボールペンが知られている。このボールペンはインキが水性であり、インキ粘度が従来の水性インキと比べて非常に高いため、ドライアップし易いという問題があった。
この問題を解決したボールペンとして、チップ内部にスプリングを入れてチップに弁機能を持たせ、先端からの溶剤(水)の蒸発を抑制したジェルインキボールペンが一般に販売されるようになった。
しかし、前記ボールペンであっても、チップ先端部からの溶剤(水)の蒸発を完全に抑制できないことから、ユーザが使用するまでの商品の品質を保証するために、チップ先端にインク溶剤の蒸発を防止する保護被膜が取り付けられている。
【0003】
この保護被膜は、一般的にその外形が小さく、かつ視認性が低い。そのため、ユーザは保護被膜を取り外さずに筆記を試みる(試し書きする)ことがあり、この場合前記保護被膜によって筆記できないため、ユーザはボールペン自体を不良品として認識してしまうことがあった。
【0004】
かかるユーザの誤った認識を防止する対策として、例えば実用新案登録第3076019号公報において、保護被膜の視認性を高めたボールペンが提案されている。このボールペンにあっては保護(樹脂)被膜を有色とすることにより、試し書きの際に、ユーザはチップ先端部の保護被膜に気付き、ボールペンが不良品であると誤って認識することを防止している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記したボールペンにおいては、その組立工程や流通(輸送)段階で起こり得る衝撃等によって、保護被膜がチップから外れないように、チップに対する保護被膜の取り付け(付着)強度を強している。
そのため、ボールペン使用時に手指によってチップから保護被膜を取り除く作業を必要とし、ボールペン使用上の取り扱いを面倒なものにするという技術的課題があった。
【0006】
また、チップ先端に取り付けられた保護被膜について完全に認知されたわけではないため、筆記後(試書き後)も保護被膜が付着していると、この保護被膜がチップに付着した異物として認識され、商品価値が低下するという技術的課題もあった。
【0007】
本発明は、このような技術的課題を解決するためになされたもので、チップ先端に設けられたインク溶剤の蒸発を防止する保護被膜が、筆記することで取り外されるボールペンを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記した目的を達成するためになされた本発明にかかるボールペンは、チップ先端にインク溶剤の蒸発を防止する保護被膜を備えたボールペンにおいて、筆記動作が、筆記角度60度、筆記速度4.5m/分、ペン体重量を含めた筆記荷重が100gfであって、その筆記距離が500cm以下で、前記保護被膜が前記筆記動作によってチップ先端から離脱し、筆記可能な状態となることを特徴としている。
【0009】
このように、インク溶剤の蒸発を防止する保護被膜は、筆記動作によってチップ先端から離脱する取り付け強度(付着強度)をもって形成されている。
その結果、前記保護被膜は筆記することによって容易に取り外されるため、ボールペン使用時に手指によってチップから保護被膜を取り除く作業を行う必要がなく、ボールペン使用上の取り扱いを便利なものにすることができる。
また、前記保護被膜は筆記することによって容易に取り外されるため、該保護被膜について認知していないユーザに対して、この保護被膜がチップに付着した異物として認識されることが少なく、誤った認識による商品価値の低下を防止できる。
しかも、ペン体重量を含めた筆記荷重が100gfは軽い筆圧であり、このような軽い筆圧であっても短時間で筆記可能な状態になすことができ、ユーザにとって使い勝手が良く、ボールペン自体が不良品として認識されることもない。
【0010】
ここで、前記チップ先端に設けられた前記保護被膜の付着量が、0.001g以下であることが望ましい。
このように保護被膜の付着量を0.001g以下とすることで筆記により外れる保護被膜が少なく、紙面等に残る量が極力抑制されるため、使用開始時の違和感がなくなる。
【0011】
なお、チップ先端にインク溶剤の蒸発を防止する観点から、前記保護被膜がワックス、特にパラフィンワックスによって形成されていることが望ましく、該ワックスに他の成分を含有させても良い。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明が適用されたボールペンにつき、図に示す実施の形態に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るボールペンの全体を示す断面図である。図2は、同じく本発明の実施形態に係るボールペンの要部を拡大して示す側面図である。
【0013】
図1に示すように、符号1で示すノック式のボールペンは、ペン本体2およびボールペンリフィール3等を備えている。
前記ペン本体2は、前端軸筒4および後端軸筒5を有している。前記前端軸筒4の後方端部(図1では上方端部)には雄ねじ部4aが形成されると共に、前方端部には口先部4bが形成されている。
また、前記後端軸筒5の前方端部(図1では下方端部)には雌ねじ部5aが形成され、前記雄ねじ部4aと螺合し、一体化するように構成されている。また、前記後端軸筒5の内周面には、後述する係止突起と係合する溝部(図示せず)が形成されている。
【0014】
前記ペン本体2の内部には、ボールペンリフィール3と、前記ボールペンリフィール3を後方(ノック体7側)に常時付勢するスプリング8と、前記ボールペンリフィール3の後端部に接する内筒6とが収容されている。また、前記内筒6の後方端部にはノック体7が連結されて、該ノック体7の一部は前記ペン本体2外に露出され、使用者によって押圧可能に構成されている。
前記内筒6の外周面には係止突起(図示せず)が設けられ、前記溝部(図示せず)と共にカム機構が形成されている。
【0015】
一方、前記ボールペンリフィール3は、中芯3aおよびチップ3b(回転ボール付き)を有し、スプリング8によって後方(ノック体7側)に常時付勢されている。前記中芯3aは、インクを充填してなる管体によって形成されている。このチップ3bの先端部には、図2に示すように、チップ開口部を封止する保護被膜9が取り付けられている。
【0016】
そして、このように構成されたボールペンにあっては、非筆記状態においてペン本体2内(中空部)にボールペンリフィール3を収容し、筆記状態においては使用者がノック体7を押圧することにより、ペン本体2外にボールペンリフィール3の先端部(チップ)を露出させる。
このとき、内筒6の外周面の係止突起(図示せず)が、前記溝部(図示せず)に係止されることにより、ボールペンリフィール3の先端部(チップ)の露出状態が維持される。また、同様に使用者がノック体7を押圧することにより、内筒6の外周面の係止突起(図示せず)と前記溝部(図示せず)との係合が解除され、スプリング8の反発力により、ペン本体2内(中空部)にボールペンリフィール3が収容される。
【0017】
また、前記保護被膜9はワックス、より好ましくはパラフィンワックス(完全飽和のエチレンホモポリマー)によって形成される。このパラフィンワックス(完全飽和のエチレンホモポリマー)として好適なものとしてペトロライト社製のポリワックス655、ポリワックス1000がある。なお、このワックスに他の成分を含有させ、より好適なものになすことができる。また、このワックスに着色をなすため、他の成分を含有させても良い。
【0018】
この保護被膜9の質量は、0.001g以下の質量に設定されている。
このように保護被膜の付着量を0.001g以下とすることで筆記により外れる保護被膜が少なく、紙面等に残る量が極力抑制されるため、使用開始時の違和感がなくなる。
【0019】
また、前記保護被膜9の前記チップ3bに対する取付力(付着力)は、筆記動作による筆記荷重によって保護被膜9をチップ3bから離脱させ、筆記可能な状態とするような付着力に設定されている。
具体的には、筆記動作が、筆記角度60度、筆記速度4.5m/分、ペン体重量を含めた筆記荷重が100gfであって、その筆記距離が500cm以下で筆記可能な状態となるように、付着力に設定されている。
【0020】
その結果、軽い筆圧の筆記であっても、短時間のうちに筆記可能な状態になすことができ、ユーザにとって使い勝手が良く、ボールペン自体が不良品として認識されることもない。また、筆記動作で、チップから保護被膜を離脱させることができるため、ボールペン使用時に手指によってチップから保護被膜を取除く作業が不要となり、ボールペン使用上の取り扱いを便利なものとすることができる。
なお、ユーザによって筆圧が異なるため、上記したペン体重量を含めた筆記荷重が100gfより大きい場合には、より短い筆記距離で筆記が可能となる。
【0021】
以上のように構成されたボールペンをユーザがノック操作によってチップ3b(一部)をペン本体2外に露出させて筆記を試みると、この筆記動作によって筆記荷重を保護被膜9が受ける。この筆記荷重によって保護被膜9はチップ3bから離脱し、ボールペンは筆記可能な状態となる。
【0022】
次に、下記実験を行い、本発明の効果について検証を行った。
<実験1>
〔実験方法〕
実施例1〜4および比較例1に示す保護被膜(各実施例の質量は0.001g,比較例1の質量は0.002g)付きのボールペン(チップのボール径0.38mm,0.7mm)を用い、温度25℃,湿度60%の環境下において、筆記角度を60°とするとともに、筆記速度を4.5m/分とし、かつ筆記荷重を100gfとして機械筆記(機械動作による筆記)を行い、筆記荷重を加えてから筆記が開始されるまでの距離を測定した。
【0023】
ここで、実施例1では、三菱鉛筆株式会社製、ボールペン:ボール径0.38mm、保護被膜:ペトロライト社製ポリワックス655を用いた。
また、実施例2では、三菱鉛筆株式会社製、ボールペン:ボール径0.38mm、保護被膜:ペトロライト社製ポリワックス1000を用いた。
更に、実施例3では、三菱鉛筆株式会社製、ボールペン:ボール径0.7mm、保護被膜:ペトロライト社製ポリワックス655を用いた。
また、実施例4では、三菱鉛筆株式会社製、ボールペン:ボール径0.7mm、保護被膜:ペトロライト社製ポリワックス1000を用いた。
また、比較例1として、三菱鉛筆株式会社製、ボールペン:ボール径0.7mm、保護被膜:エチレン酢ビ共重合樹脂を用いた。
上記実施例1乃至4、及び比較例1の測定の結果を表1に示す。なお、表中の○ははっきり、●はややカスレあり、△はカスレあり、×は筆記されないことを意味している。
【0024】
【表1】
【0025】
表1から明らかなように、実施例1〜4は筆記距離500cm以下で筆記が開始され、これに対し比較例1は筆記距離5000cmであっても筆記が開始されないことが判り、本発明の効果が実証された。
【0026】
<実験2>
〔実験方法〕
前記した実施例1〜4および比較例1に示す保護被膜付きのボールペン(チップのボール径0.38mm,0.7mm)を用い、温度25℃,湿度60%の環境下において「筆記試験」という文字を手筆記(手動作による筆記)を行い、筆記荷重を加えて筆記が開始されるまでの文字数を測定した。その結果を表2に示す。なお、表2中の○ははっきり、●はややカスレあり、▲は一部筆記されていない部分あり、×は筆記されないことを意味している。
【0027】
【表2】
【0028】
この表2から明らかなように、実施例1〜4にあっては、手筆記で文字数2文字以下で筆記が開始され、これに対し比較例1は文字数5文字であっても筆記が開始されないことが判り、本発明の効果が実証された。
【0029】
このように、保護被膜は筆記することによって容易に取り外されるため、ボールペン使用時に手指によってチップから保護被膜を取り除く作業を行う必要がなく、ボールペン使用上の取り扱いを便利なものにすることができる。
また、前記保護被膜は筆記することによって容易に取り外されるため、該保護被膜について認知していないユーザに対して、この保護被膜がチップに付着した異物として認識されることが少なく、誤った認識による商品価値の低下を防止できる。
【0030】
<実験3>
〔実験方法〕
また、実施例3、比較例1を、温度25℃,湿度60%の環境下で揮発減量を測定したところ、保護被膜を付着した場合は0.12mg/日、比較例は0.13mg/日であった。また、保護被膜を付着しない場合は0.41mg/日であった。
この結果から、本発明においても従来の保護被膜と同様なインク溶剤の蒸発防止効果を有することが認められた。
【0031】
本実施形態においては、ノック機構を備えたノック式ボールペンに適用する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、他の形式のノック式ボールペンにも適用可能であり、さらにノック式ボールペン以外のボールペンに適用しても何等差し支えない。
また、本実施形態においては保護被膜がワックス、具体的にはパラフィンワックス(完全飽和のエチレンホモポリマー)である場合について説明したが、本発明は特にこれに限定されるものではなく、他の材質であっても良く、あるいはワックスに他の材料を混合しても良い。
【0032】
なお、上記実施例で用いた「ポリワックス655」「ポリワックス1000」の数値部分は、浸透圧法により測定した分子量を示している。この場合の分子量は150〜3000が望ましい。分子量が150より小さいと付着力が大きすぎる。一方、分子量が3000より大きいと、逆に付着し難くなる。より望ましくは、分子量が600〜2000の範囲である。
【0033】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなとおり、本発明に係るボールペンによると、チップ先端に設けられたインク溶剤の蒸発を防止する保護被膜が、筆記することで取り外されるボールペンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るボールペンの全体を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るボールペンの要部を拡大して示す側面図である。
【符号の説明】
1 ボールペン
2 ペン本体
3 ボールペンリフィール
3a 中芯
3b チップ
4 前端軸筒
5 後端軸筒
6 内筒
7 ノック体
8 スプリング
9 保護被膜
【発明の属する技術分野】
本発明はボールペンに関し、ボールペンのチップ先端にインク溶剤の蒸発を防止する保護被膜を備えたボールペンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ジェルインキボールペンと呼ばれる剪断減粘性を有する水性インキを充填してなるボールペンが知られている。このボールペンはインキが水性であり、インキ粘度が従来の水性インキと比べて非常に高いため、ドライアップし易いという問題があった。
この問題を解決したボールペンとして、チップ内部にスプリングを入れてチップに弁機能を持たせ、先端からの溶剤(水)の蒸発を抑制したジェルインキボールペンが一般に販売されるようになった。
しかし、前記ボールペンであっても、チップ先端部からの溶剤(水)の蒸発を完全に抑制できないことから、ユーザが使用するまでの商品の品質を保証するために、チップ先端にインク溶剤の蒸発を防止する保護被膜が取り付けられている。
【0003】
この保護被膜は、一般的にその外形が小さく、かつ視認性が低い。そのため、ユーザは保護被膜を取り外さずに筆記を試みる(試し書きする)ことがあり、この場合前記保護被膜によって筆記できないため、ユーザはボールペン自体を不良品として認識してしまうことがあった。
【0004】
かかるユーザの誤った認識を防止する対策として、例えば実用新案登録第3076019号公報において、保護被膜の視認性を高めたボールペンが提案されている。このボールペンにあっては保護(樹脂)被膜を有色とすることにより、試し書きの際に、ユーザはチップ先端部の保護被膜に気付き、ボールペンが不良品であると誤って認識することを防止している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記したボールペンにおいては、その組立工程や流通(輸送)段階で起こり得る衝撃等によって、保護被膜がチップから外れないように、チップに対する保護被膜の取り付け(付着)強度を強している。
そのため、ボールペン使用時に手指によってチップから保護被膜を取り除く作業を必要とし、ボールペン使用上の取り扱いを面倒なものにするという技術的課題があった。
【0006】
また、チップ先端に取り付けられた保護被膜について完全に認知されたわけではないため、筆記後(試書き後)も保護被膜が付着していると、この保護被膜がチップに付着した異物として認識され、商品価値が低下するという技術的課題もあった。
【0007】
本発明は、このような技術的課題を解決するためになされたもので、チップ先端に設けられたインク溶剤の蒸発を防止する保護被膜が、筆記することで取り外されるボールペンを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記した目的を達成するためになされた本発明にかかるボールペンは、チップ先端にインク溶剤の蒸発を防止する保護被膜を備えたボールペンにおいて、筆記動作が、筆記角度60度、筆記速度4.5m/分、ペン体重量を含めた筆記荷重が100gfであって、その筆記距離が500cm以下で、前記保護被膜が前記筆記動作によってチップ先端から離脱し、筆記可能な状態となることを特徴としている。
【0009】
このように、インク溶剤の蒸発を防止する保護被膜は、筆記動作によってチップ先端から離脱する取り付け強度(付着強度)をもって形成されている。
その結果、前記保護被膜は筆記することによって容易に取り外されるため、ボールペン使用時に手指によってチップから保護被膜を取り除く作業を行う必要がなく、ボールペン使用上の取り扱いを便利なものにすることができる。
また、前記保護被膜は筆記することによって容易に取り外されるため、該保護被膜について認知していないユーザに対して、この保護被膜がチップに付着した異物として認識されることが少なく、誤った認識による商品価値の低下を防止できる。
しかも、ペン体重量を含めた筆記荷重が100gfは軽い筆圧であり、このような軽い筆圧であっても短時間で筆記可能な状態になすことができ、ユーザにとって使い勝手が良く、ボールペン自体が不良品として認識されることもない。
【0010】
ここで、前記チップ先端に設けられた前記保護被膜の付着量が、0.001g以下であることが望ましい。
このように保護被膜の付着量を0.001g以下とすることで筆記により外れる保護被膜が少なく、紙面等に残る量が極力抑制されるため、使用開始時の違和感がなくなる。
【0011】
なお、チップ先端にインク溶剤の蒸発を防止する観点から、前記保護被膜がワックス、特にパラフィンワックスによって形成されていることが望ましく、該ワックスに他の成分を含有させても良い。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明が適用されたボールペンにつき、図に示す実施の形態に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るボールペンの全体を示す断面図である。図2は、同じく本発明の実施形態に係るボールペンの要部を拡大して示す側面図である。
【0013】
図1に示すように、符号1で示すノック式のボールペンは、ペン本体2およびボールペンリフィール3等を備えている。
前記ペン本体2は、前端軸筒4および後端軸筒5を有している。前記前端軸筒4の後方端部(図1では上方端部)には雄ねじ部4aが形成されると共に、前方端部には口先部4bが形成されている。
また、前記後端軸筒5の前方端部(図1では下方端部)には雌ねじ部5aが形成され、前記雄ねじ部4aと螺合し、一体化するように構成されている。また、前記後端軸筒5の内周面には、後述する係止突起と係合する溝部(図示せず)が形成されている。
【0014】
前記ペン本体2の内部には、ボールペンリフィール3と、前記ボールペンリフィール3を後方(ノック体7側)に常時付勢するスプリング8と、前記ボールペンリフィール3の後端部に接する内筒6とが収容されている。また、前記内筒6の後方端部にはノック体7が連結されて、該ノック体7の一部は前記ペン本体2外に露出され、使用者によって押圧可能に構成されている。
前記内筒6の外周面には係止突起(図示せず)が設けられ、前記溝部(図示せず)と共にカム機構が形成されている。
【0015】
一方、前記ボールペンリフィール3は、中芯3aおよびチップ3b(回転ボール付き)を有し、スプリング8によって後方(ノック体7側)に常時付勢されている。前記中芯3aは、インクを充填してなる管体によって形成されている。このチップ3bの先端部には、図2に示すように、チップ開口部を封止する保護被膜9が取り付けられている。
【0016】
そして、このように構成されたボールペンにあっては、非筆記状態においてペン本体2内(中空部)にボールペンリフィール3を収容し、筆記状態においては使用者がノック体7を押圧することにより、ペン本体2外にボールペンリフィール3の先端部(チップ)を露出させる。
このとき、内筒6の外周面の係止突起(図示せず)が、前記溝部(図示せず)に係止されることにより、ボールペンリフィール3の先端部(チップ)の露出状態が維持される。また、同様に使用者がノック体7を押圧することにより、内筒6の外周面の係止突起(図示せず)と前記溝部(図示せず)との係合が解除され、スプリング8の反発力により、ペン本体2内(中空部)にボールペンリフィール3が収容される。
【0017】
また、前記保護被膜9はワックス、より好ましくはパラフィンワックス(完全飽和のエチレンホモポリマー)によって形成される。このパラフィンワックス(完全飽和のエチレンホモポリマー)として好適なものとしてペトロライト社製のポリワックス655、ポリワックス1000がある。なお、このワックスに他の成分を含有させ、より好適なものになすことができる。また、このワックスに着色をなすため、他の成分を含有させても良い。
【0018】
この保護被膜9の質量は、0.001g以下の質量に設定されている。
このように保護被膜の付着量を0.001g以下とすることで筆記により外れる保護被膜が少なく、紙面等に残る量が極力抑制されるため、使用開始時の違和感がなくなる。
【0019】
また、前記保護被膜9の前記チップ3bに対する取付力(付着力)は、筆記動作による筆記荷重によって保護被膜9をチップ3bから離脱させ、筆記可能な状態とするような付着力に設定されている。
具体的には、筆記動作が、筆記角度60度、筆記速度4.5m/分、ペン体重量を含めた筆記荷重が100gfであって、その筆記距離が500cm以下で筆記可能な状態となるように、付着力に設定されている。
【0020】
その結果、軽い筆圧の筆記であっても、短時間のうちに筆記可能な状態になすことができ、ユーザにとって使い勝手が良く、ボールペン自体が不良品として認識されることもない。また、筆記動作で、チップから保護被膜を離脱させることができるため、ボールペン使用時に手指によってチップから保護被膜を取除く作業が不要となり、ボールペン使用上の取り扱いを便利なものとすることができる。
なお、ユーザによって筆圧が異なるため、上記したペン体重量を含めた筆記荷重が100gfより大きい場合には、より短い筆記距離で筆記が可能となる。
【0021】
以上のように構成されたボールペンをユーザがノック操作によってチップ3b(一部)をペン本体2外に露出させて筆記を試みると、この筆記動作によって筆記荷重を保護被膜9が受ける。この筆記荷重によって保護被膜9はチップ3bから離脱し、ボールペンは筆記可能な状態となる。
【0022】
次に、下記実験を行い、本発明の効果について検証を行った。
<実験1>
〔実験方法〕
実施例1〜4および比較例1に示す保護被膜(各実施例の質量は0.001g,比較例1の質量は0.002g)付きのボールペン(チップのボール径0.38mm,0.7mm)を用い、温度25℃,湿度60%の環境下において、筆記角度を60°とするとともに、筆記速度を4.5m/分とし、かつ筆記荷重を100gfとして機械筆記(機械動作による筆記)を行い、筆記荷重を加えてから筆記が開始されるまでの距離を測定した。
【0023】
ここで、実施例1では、三菱鉛筆株式会社製、ボールペン:ボール径0.38mm、保護被膜:ペトロライト社製ポリワックス655を用いた。
また、実施例2では、三菱鉛筆株式会社製、ボールペン:ボール径0.38mm、保護被膜:ペトロライト社製ポリワックス1000を用いた。
更に、実施例3では、三菱鉛筆株式会社製、ボールペン:ボール径0.7mm、保護被膜:ペトロライト社製ポリワックス655を用いた。
また、実施例4では、三菱鉛筆株式会社製、ボールペン:ボール径0.7mm、保護被膜:ペトロライト社製ポリワックス1000を用いた。
また、比較例1として、三菱鉛筆株式会社製、ボールペン:ボール径0.7mm、保護被膜:エチレン酢ビ共重合樹脂を用いた。
上記実施例1乃至4、及び比較例1の測定の結果を表1に示す。なお、表中の○ははっきり、●はややカスレあり、△はカスレあり、×は筆記されないことを意味している。
【0024】
【表1】
【0025】
表1から明らかなように、実施例1〜4は筆記距離500cm以下で筆記が開始され、これに対し比較例1は筆記距離5000cmであっても筆記が開始されないことが判り、本発明の効果が実証された。
【0026】
<実験2>
〔実験方法〕
前記した実施例1〜4および比較例1に示す保護被膜付きのボールペン(チップのボール径0.38mm,0.7mm)を用い、温度25℃,湿度60%の環境下において「筆記試験」という文字を手筆記(手動作による筆記)を行い、筆記荷重を加えて筆記が開始されるまでの文字数を測定した。その結果を表2に示す。なお、表2中の○ははっきり、●はややカスレあり、▲は一部筆記されていない部分あり、×は筆記されないことを意味している。
【0027】
【表2】
【0028】
この表2から明らかなように、実施例1〜4にあっては、手筆記で文字数2文字以下で筆記が開始され、これに対し比較例1は文字数5文字であっても筆記が開始されないことが判り、本発明の効果が実証された。
【0029】
このように、保護被膜は筆記することによって容易に取り外されるため、ボールペン使用時に手指によってチップから保護被膜を取り除く作業を行う必要がなく、ボールペン使用上の取り扱いを便利なものにすることができる。
また、前記保護被膜は筆記することによって容易に取り外されるため、該保護被膜について認知していないユーザに対して、この保護被膜がチップに付着した異物として認識されることが少なく、誤った認識による商品価値の低下を防止できる。
【0030】
<実験3>
〔実験方法〕
また、実施例3、比較例1を、温度25℃,湿度60%の環境下で揮発減量を測定したところ、保護被膜を付着した場合は0.12mg/日、比較例は0.13mg/日であった。また、保護被膜を付着しない場合は0.41mg/日であった。
この結果から、本発明においても従来の保護被膜と同様なインク溶剤の蒸発防止効果を有することが認められた。
【0031】
本実施形態においては、ノック機構を備えたノック式ボールペンに適用する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、他の形式のノック式ボールペンにも適用可能であり、さらにノック式ボールペン以外のボールペンに適用しても何等差し支えない。
また、本実施形態においては保護被膜がワックス、具体的にはパラフィンワックス(完全飽和のエチレンホモポリマー)である場合について説明したが、本発明は特にこれに限定されるものではなく、他の材質であっても良く、あるいはワックスに他の材料を混合しても良い。
【0032】
なお、上記実施例で用いた「ポリワックス655」「ポリワックス1000」の数値部分は、浸透圧法により測定した分子量を示している。この場合の分子量は150〜3000が望ましい。分子量が150より小さいと付着力が大きすぎる。一方、分子量が3000より大きいと、逆に付着し難くなる。より望ましくは、分子量が600〜2000の範囲である。
【0033】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなとおり、本発明に係るボールペンによると、チップ先端に設けられたインク溶剤の蒸発を防止する保護被膜が、筆記することで取り外されるボールペンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るボールペンの全体を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るボールペンの要部を拡大して示す側面図である。
【符号の説明】
1 ボールペン
2 ペン本体
3 ボールペンリフィール
3a 中芯
3b チップ
4 前端軸筒
5 後端軸筒
6 内筒
7 ノック体
8 スプリング
9 保護被膜
Claims (4)
- チップ先端にインク溶剤の蒸発を防止する保護被膜を備えたボールペンにおいて、
筆記動作が、筆記角度60度、筆記速度4.5m/分、ペン体重量を含めた筆記荷重が100gfであって、その筆記距離が500cm以下で、前記保護被膜が前記筆記動作によってチップ先端から離脱し、筆記可能な状態となることを特徴するボールペン。 - 前記チップ先端に設けられた前記保護被膜の付着量が、0.001g以下であることを特徴とする請求項1に記載されたボールペン。
- 前記保護被膜が、ワックスによって形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたボールペン。
- 前記保護被膜が、パラフィンワックスによって形成されていることを特徴とする請求項3に記載されたボールペン。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2005279979A (ja) * | 2004-03-29 | 2005-10-13 | Zebra Pen Corp | ボールペンチップ及びその製造方法 |
-
2002
- 2002-08-05 JP JP2002226828A patent/JP2004066562A/ja active Pending
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JP2005279979A (ja) * | 2004-03-29 | 2005-10-13 | Zebra Pen Corp | ボールペンチップ及びその製造方法 |
JP4499459B2 (ja) * | 2004-03-29 | 2010-07-07 | ゼブラ株式会社 | ボールペンチップ及びその製造方法 |
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