JP2004066325A - 2ピースホイールの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】リムとディスクとが充分な接合強度をもって接合されてなる2ピースホイールを製造する方法を提供する。
【解決手段】円筒状接合部14を有するディスク12を、外周縁部に、意匠面18とは反対側において意匠面18から離れる方向に延びる円筒状フランジ部20が設けられたリム10に対して、円筒状フランジ部20の外周面が円筒状接合部14の内周面に重ね合わされるように嵌め合わせた後、それら円筒状フランジ部20と円筒状接合部14との重合せ部分22におけるリム10の意匠面18側の部位に対して、高速回転せしめられるピン26を、円筒状接合部14の外周面側から円筒状フランジ部20に達するように差し込み、周方向に相対的に移動させることにより、重合せ部分22におけるリム10の意匠面18側の端部を摩擦撹拌接合するようにした。
【選択図】   図3

Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、2ピースホイールの製造方法に係り、特に、アルミニウム合金製のリムとディスクとを一体的に接合してなる2ピースホイールの有利な製造方法に関するものである。
【0002】
【背景技術】
よく知られているように、近年では、自動車等の車両用ホイールとして、軽量性やデザイン性に優れたアルミニウム合金からなるホイールが多用されてきている。そして、そのようなホイールの一種として、アルミニウム合金製のリムを有し、このリムに対して、一方の面が意匠面とされた、アルミニウム合金製のディスクを嵌め込んで、一体的に接合してなる、所謂2ピースホイールが、知られている。
【0003】
ところで、このアルミニウム合金製の2ピースホイールは、例えば、特開2001−88504号公報等において明らかにされているように、一般に、全体として略円筒形状を呈するリムの内孔内に、ディスクが、その外周面の一部において、リムの内周面に突き合わされるか若しくは重ね合わされるようにして、嵌め込まれた状態下で、それらリムとディスクとが、アーク溶接等の溶融溶接操作により、突き合わせ部において突合せ接合されるか、或いは重ね合わせ部分に形成される隅肉部において隅肉接合される等して、一体的に接合されて、製造されているのであるが、そのように、リムとディスクとを溶融溶接操作にて接合する場合、溶接時の多大な入熱によって、接合部の強度低下や歪みが発生するといった問題が生ずることが、避けられなかったのである。
【0004】
一方、特表2000−509342号公報には、リムとディスクとを、溶融溶接操作に代えて、摩擦撹拌接合操作により、一体的に接合するようした2ピースホイールの製造手法が、開示されている。ここで、リムとディスクとの接合に採用される摩擦撹拌接合操作は、よく知られているように、接合されるべき部分を何等溶融せしめることなく固相状態のままで接合するものであるため、接合時の入熱を効果的に少なく為すことが出来のである。従って、かかる公報に開示される2ピースホイールの製造手法によれば、リムとディスクとを溶融溶接操作によって接合した場合に生ずる、接合部の強度低下や歪みの発生等の問題が、有利に解消され得ることとなるのである。
【0005】
ところが、前記公報に開示される、リムとディスクとを摩擦撹拌接合するようにした従来の2ピースホイールの製造手法にあっては、リムとディスクとを溶融溶接する2ピースホイールの製造手法と同様に、ディスクが、その外周面の一部において、リムの内周面に突き合わされるか、若しくは重ね合わされるようにして、嵌め込まれた状態下で、それらリムとディスクとが、突き合わせ部において突合せ接合されるか、或いは重ね合わせ部分に形成される隅肉部において隅肉接合されているために、リムとディスクとの接合部において、入熱の影響による接合強度の低下は免れるものの、その接合強度が、充分に満足し得るものであるとは、言い難いものであったのである。
【0006】
また、そのような従来手法では、ロッド状の回転治具の先端に同心的に設けられたピンを、回転治具と共に高速回転せしめつつ、リムとディスクとの突き合わせ面間や重ね合わせ面間に差し込んで、それらリムやディスクに対して相対移動せしめることによって、摩擦撹拌接合操作が行なわれるのであるが、その際に、リムとディスクとのそれぞれの接合されるべき部分の変形を防ぐために、リムとディスクとを、ピンから作用せしめられる押圧力に対抗するように、かかる押圧力が作用せしめられる方向とは反対方向から保持するだけでなく、リムとディスクの位置ずれ防止を図る上で、それらの突き合わせ面や重ね合わせ面が互いに離間しないようにするために、更に別の方向からも保持しなければならず、それが、摩擦撹拌接合操作を煩雑なものと為していたのであり、更に、リムとディスクとの重ね合わせ部分の隅肉部に対する隅肉接合を行なう場合に、かかる隅肉部がリムの意匠面側に形成されていると、接合部の表面が、外部から視認されるリムの意匠面に形成され、それによって、リムの意匠面の意匠性が損なわれて、目的とする2ピースホイールの品質が著しく低下するといった重大な問題が惹起されることとなるのである。
【0007】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、リムとディスクとを、より簡単な摩擦撹拌接合操作によって、リムの意匠面の意匠性を損なうことなく、より充分な接合強度をもって容易に接合することが出来、以て優れた品質と強度を有するピースホイールを有利に製造する手法を提供することにある。
【0008】
【解決手段】
そして、本発明にあっては、かかる課題の解決のために、アルミニウム合金材料からなるリムに対して、一方の面が意匠面とされたアルミニウム合金製のディスクを嵌め合わせ、一体的に接合せしめてなる2ピースホイールを製造するに際して、前記ディスクとして、外周縁部に、前記意匠面とは反対側において該意匠面から離れる方向に向かって延びる円筒状フランジ部が設けられてなるものを用いる一方、前記リムとして、内周面が、該ディスクの円筒状フランジ部の外周面に対して重ね合わされる重合面とされた円筒状接合部を有するものを用い、それら円筒状フランジ部の外周面と円筒状接合部の重合面とが互いに重ね合わされるように、該ディスクを該リムに嵌め合わせた後、該ディスクの円筒状フランジ部と該リムの円筒状接合部との重ね合わせ部分における、該ディスクの前記意匠面側の部位に対して、ロッド状の回転治具の先端に同心的に設けたピンを、該回転治具と共に一体回転させつつ、該リムの円筒状接合部の外周面側から、該ディスクの円筒状フランジ部に達するように差し込み、周方向に相対的に移動させることにより、かかる重ね合わせ部分の前記ディスクの意匠面側の部位を摩擦撹拌接合するようにしたことを特徴とする2ピースホイールの製造方法を、その要旨とするものである。
【0009】
要するに、この本発明に従う2ピースホイールの製造方法にあっては、ディスクに設けられた円筒状フランジ部とリムに設けられた円筒状接合部とを互いに重ね合わせた状態下において、それら円筒状フランジ部と円筒状接合部との重ね合わせ部分における、リムの意匠面側となる部位に対して、回転治具と共に一体回転せしめられるピンを、円筒状接合部の外周面側から円筒状フランジ部に達するように差し込み、周方向に相対的に移動させることにより、かかる重ね合わせ部分におけるリムの意匠面側の部位を摩擦撹拌接合するようにしたものである。
【0010】
それ故、このような本発明に係る2ピースホイールの製造方法においては、摩擦撹拌接合によって形成されるリムとディスクとの接合部が、溶融溶接によって形成される場合とは異なって、多大な入熱による悪影響を受けることが有利に回避され得るばかりでなく、突き合わせ部や隅肉部に対する突き合わせ接合や隅肉接合よりも優れた接合強度が得られる、重ね合わせ部分に対する重ね合わせ接合にて形成されることとなり、それによって、かかる接合部において、より優れた接合強度が、極めて充分に確保され得るのである。
【0011】
また、かかる本発明に従う2ピースホイールの製造方法では、摩擦撹拌接合操作が、回転治具と共に一体回転せしめられるピンを、円筒状接合部の外周面側から、それに重ね合わされる円筒状フランジ部に達するように差し込み、周方向に相対的に移動させることにより実施されているところから、そのような摩擦撹拌接合操作にて形成される接合部の表面が、タイヤ等が嵌め込まれるリムの外周面に形成されることとなり、それによって、リムとディスクとがリムの意匠面側たる軸方向一方側の端部において接合されているにも拘わらず、リムの意匠面に、接合部の表面が露呈せしめられるようなことが、効果的に回避され得ることとなるのである。
【0012】
しかも、そのような本発明手法では、上述の如く、回転治具と共に一体回転せしめられるピンが、円筒状接合部と円筒状フランジ部との重ね合わせ部分に対して、円筒状接合部の外周面から円筒状フランジ部に達するように差し込まれて、摩擦撹拌接合操作が行なわれるようになっているため、摩擦撹拌接合操作の実施時において、例えば、それらリムとディスクとを、単に、ピンから作用せしめられる押圧力に対抗するように、かかる押圧力の作用方向とは反対の方向から保持するだけで、かかる押圧力によるリムとディスクとの重ね合わせ部分の変形が防止され得ると共に、リムとディスクとが、それらを保持する所定の保持部材とピンとの間で挟持される状態となって、リムとディスクとの位置ずれが効果的に阻止され得るのであり、それによって、例えば、リムとディスクとを、ピンによる押圧方向とは反対方向以外の方向からも保持しなければならない突き合わせ接合や隅肉接合を行なう場合よりも、摩擦撹拌接合操作の実施時におけるリムとディスクの保持操作、ひいては摩擦撹拌接合操作が、有利に簡素化され得ることとなるのである。
【0013】
従って、かくの如き本発明に従う2ピースホイールの製造方法によれば、リムの意匠面の意匠性を何等損なうことなく、リムとディスクとを、より簡単な摩擦撹拌接合操作にて、更に一層信頼性の高い接合強度をもって容易に接合することが出来、以て優れた品質と充分な強度とを有する高品質のピースホイールを極めて有利に製造することが可能となるのである。
【0014】
なお、このような本発明に従う2ピースホイールの製造方法の好ましい態様の一つによれば、前記ディスクの円筒状フランジ部と前記リムの円筒状接合部の重ね合わせ部分における、前記ディスクの意匠面側の部位とは軸方向において反対側となる部位に対して、所定の接合操作が実施されて、前記リムと該ディスクとが、かかる重ね合わせ部分の軸方向両端部側部位において、それぞれ一体的に接合せしめられることとなる。これによって、リムとディスクとの重ね合わせ部分における軸方向の二箇所に接合部が形成されることとなり、以て、リムとディスクとの接合強度が、更に一層効果的に高められ得るのである。
【0015】
また、本発明に従う2ピースホイールの製造方法の有利な別の態様の一つによれば、前記ディスクの円筒状フランジ部と前記リムの円筒状接合部との重ね合わせ部分における、前記ディスクの意匠面側の部位とは軸方向において反対側となる部位に対して、ロッド状の回転治具の先端に同心的に設けたピンを、該回転治具と共に一体回転させつつ、該リムの円筒状接合部の外周面側から、該ディスクの円筒状フランジ部に達するように差し込み、周方向に相対的に移動させることにより、かかる重ね合わせ部分の前記意匠面側とは反対側の部位が摩擦撹拌接合される手法が採用される。
【0016】
かかる構成を採用すれば、リムとディスクの重ね合わせ部における、リムの意匠面側とは反対側の部位に形成される接合部が、リムの意匠面側の部位に形成される接合部と同様に、簡単な摩擦撹拌接合操作による重ね合わせ接合により、優れた接合強度をもって、より容易に形成され得るのであり、それによって、リムとディスクとが、より強固に接合され得て、更に一層、高い品質を有する2ピースホイールが、有利に製造され得ることとなるのである。
【0017】
さらに、本発明に従う2ピースホイールの製造方法の更に別の望ましい態様の一つによれば、前記ディスクの円筒状フランジ部とリムの円筒状接合部との重ね合わせ部分における、前記ディスクの意匠面側の部位とは軸方向において反対側となる部位の重ね合わせ面間に、ロッド状の回転治具の先端に同心的に設けたピンを、該回転治具と共に一体回転させつつ、該ディスクの前記意匠面側とは反対側から差し込み、周方向に相対的に移動させることにより、かかる重ね合わせ部分の前記意匠面側とは反対側の部位が摩擦撹拌接合されることとなる。これによって、リムとディスクの重ね合わせ部における軸方向両端部にそれぞれ形成される接合部の表面が、リムの外周面と、ホイールの自動車等への装着状態下で、外部から視認不能な、リムの意匠面とは反対側の面とに形成されることとなり、以て、リム、ひいては2ピースホイール全体における優れた意匠性が、より有利に確保され得るのである。
【0018】
なお、そのように、本発明に従う2ピースホイールの製造方法において、回転治具に設けたピンを、回転下で、ディスクの円筒状フランジ部とリムの円筒状接合部との重ね合わせ部分における重ね合わせ面間に、ディスクの意匠面側とは反対側から差し込んで、重ね合わせ部分におけるリムの意匠面側とは反対側の部位を摩擦撹拌接合する際には、有利には、前記ディスクにおける円筒状フランジ部の外周面と、前記リムにおける円筒状接合部の重合面のうちの少なくとも何れか一方に、径方向に突出する突起が設けられる一方、それらのうちの少なくとも何れか他方に、該突起に対して係合することにより、該リムの意匠面側への該ディスクの該リムに対する相対移動を阻止せしめる係合凹部が設けられる。
【0019】
このような構成を有する2ピースホイールの製造方法においては、円筒状フランジ部と円筒状接合部のうちの少なくとも何れか一方に設けられた突起を、それらのうちの少なくとも何れか他方に設けられた係合凹部に係合せしめた状態で、ディスクとリムとを、円筒状フランジ部と円筒状接合部とにおいて重ね合わせつつ、嵌め合わせることによって、それらディスクとリムとの嵌合せ状態下での位置決めが容易に行なわれ得るばかりでなく、回転治具のピンを回転させつつ、ディスクの意匠面側とは反対側から差し込み、相対的に移動させることにより、円筒状フランジ部と円筒状接合部の重ね合わせ部分における、リムの意匠面側とは反対側の部位を摩擦撹拌接合する際に、ディスクのリムに対するリムの意匠面側への相対移動が有利に阻止され得、以て、ディスクとリムが、常に一定の位置で接合された2ピースホイールが有利に製造され得ることとなるのである。
【0020】
また、本発明に従う2ピースホイールの製造方法の他の好ましい態様の一つによれば、前記ディスクの円筒状フランジ部の先端部に、先端に向かうに従って次第に大径化するテーパ状内周面が形成されており、かかるディスクの円筒状フランジ部と前記リムの円筒状接合部とを重ね合わせた状態において、該円筒状フランジ部の前記テーパ状内周面に対して、ロッド状回転治具の先端に同心的に設けたピンを、該回転治具と共に一体回転させつつ、該テーパ状内周面から前記円筒状接合部に達するように、斜めに差し込み、周方向に相対的に移動させることにより、該ディスクの円筒状フランジ部と該リムの円筒状接合部との重ね合わせ部分における、前記ディスクの意匠面側の部位とは軸方向において反対側となる部位が摩擦撹拌接合されることとなる。
【0021】
このような本発明に従う2ピースホイールの製造方法にあっては、円筒状フランジ部と円筒状接合部の重ね合わせ部分における、リムの意匠面側の部位と同様に、それとは軸方向に反対側の部位も、リムとディスクの保持操作が比較的に簡単な摩擦撹拌接合操作にて重ね合わせ接合せしめられることとなり、それによって、かかる重ね合わせ部分におけるリムの意匠面側とは反対側の部位に対しても、優れた接合強度を有する接合部が容易に形成され得、以て、リムとディスクとが、より強固に且つ容易に接合され得て、更に高品質の2ピースホイールが有利に製造され得ることとなるのである。
【0022】
なお、そのように、本発明に従う2ピースホイールの製造方法において、円筒状フランジ部の先端部に、先端に向かうに従って次第に大径化するテーパ状内周面が形成されたディスクを用いる場合には、有利には、かかる円筒状フランジ部の先端部におけるテーパ状内周面が、60〜120°の範囲内のテーパ角度を有して、構成される。このような構成を採用すれば、回転治具のピンが、円筒状フランジ部の先端部におけるテーパ状内周面に対して確実に差し込まれ得て、円筒状フランジ部と円筒状接合部の重ね合わせ部分における、リムの意匠面側とは反対側の部位が、より有利に且つ確実に重ね合わせ接合せしめられ得るのであり、その結果として、リムとディスクとが優れた接合強度をもって一体的に接合されてなる2ピースホイールが、安定的に製造され得ることとなるのである。
【0023】
【発明の実施の形態】
ところで、かくの如き本発明に従う2ピースホイールの製造方法により、例えば、自動車用の2ピースホイールを製造するに際しては、先ず、図1及び図2に示される如きリム10とディスク12とが準備されることとなる。
【0024】
すなわち、ここで準備されるリム10は、図1に示されるように、所定のアルミニウム合金材料からなり、全体として、軸方向の中間部側よりも両端部側が大径化された略段付円筒形状を有している。そして、ここでは、特に、軸方向の両端部に比して小径とされた軸方向中間部分が、軸方向に真っ直ぐに延びる同一径の筒壁部を備えた円筒状接合部14とされており、また、この円筒状接合部14の内周面が、後述するディスク12の円筒状フランジ部(20)に重ね合わされる重合面16として、構成されている(図3参照)。
【0025】
なお、このような形状のリム10を製造するには、従来より公知の手法が、適宜に採用される。つまり、例えば、アルミニウム合金よりなる板材をロールフォーミング等により円筒形状に曲げ加工した状態下で、その周方向において突き合わされる突き合わせ部を、フラッシュバット溶接や摩擦撹拌接合等により、一体的に接合して、管体と為し、更に、この管体に対してスピニング加工やロール加工等のプレス成形加工を施して、全体として段付円筒形状を呈する所望の形状に成形することにより、リム10を得る手法や、アルミニウム合金材料を用いた押出成形操作により、アルミニウム合金製の円筒体を成形し、これを所望の段付円筒形状に成形して、リム10を得る手法、更には、アルミニウム合金からなる板材を絞り加工することにより、有底の円筒体を成形し、そして、この有底円筒体の底部を除去して、軸方向両側において開口する円筒体を得、更に、かかる円筒体を所望の段付円筒形状に成形することにより、リム10を得る手法等が、適宜に採用され得るのである。また、かかるリム10を与えるアルミニウム合金の材質も、何等限定されるものではなく、目的とする2ピースホイールの要求品質等に応じて、適宜に決定されることとなる。
【0026】
一方、リム10と共に準備されるディスク12は、図2に示されるように、所定のアルミニウム合金製で、全体として、リム10に内嵌可能な大きさの略厚肉円板形状を呈しており、一方の面が、所定のデザインが付与された意匠面18とされている。また、このディスク12にあっては、その外周縁部に、意匠面18とは反対側において意匠面18から離隔する方向に向かって延びる同一径の円筒状フランジ部20が一体的に形成されている。つまり、かかるディスク12は、全体として略有底の円筒形状を有しており、その底部の外面が、意匠面18とされていると共に、その筒壁部が、円筒状フランジ部20とされているのである。そして、このディスク12が、リム10に対して内嵌せしめられた状態下で、円筒状フランジ部20の外周面において、リム10の前記円筒状接合部14の重合面16に重ね合わされて、位置せしめられるようになっているのである(図3参照)。
【0027】
なお、このようなディスク12の製造手法も、特に限定されるものではなく、アルミニウム合金材を鋳造や鍛造によって、所定の円板形状に成形する手法等が、適宜に採用され得るのである。また、このディスク12を与えるアルミニウム合金の材質も、何等限定されるものではなく、リム10を与えるアルミニウム合金と同様に、目的とする2ピースホイールの要求品質等に応じて、適宜に決定されるのである。
【0028】
そして、かかるリム10とディスク12とを一体的に接合するに際しては、図3に示されるように、リム10の内孔内にディスク12が挿入されて、ディスク12の円筒状フランジ部20の外周面が、リム10の円筒状接合部14の重合面16に重ね合わされるように、ディスク12がリム10に対して嵌め合わされるのである。そして、そのような嵌合状態下において、円筒状接合部14と円筒状フランジ部20との重ね合わせ部分22における、リム10の意匠面18側の部位が、摩擦撹拌接合操作により、重ね合わせ接合される。なお、ここでは、円筒状接合部14と円筒状フランジ部20との重ね合わせ部分22における、リム10の意匠面18側とは軸方向において反対側となる部位も、摩擦撹拌接合操作により、重ね合わせ接合されることとなる。
【0029】
すなわち、このリム10とディスク12との接合工程では、ロッド状の回転治具24の先端に同心的に設けたピン26が、かかる回転治具24と共に、その軸心回りに一体的に高速回転せしめられつつ、円筒状接合部14と円筒状フランジ部20との重ね合わせ部分22における、リム10の意匠面18側となる軸方向一端部側の部位に対して、円筒状接合部14の外周面側から差し込まれ、更に、図3に二点鎖線で示されるように、かかるピン26が、円筒状接合部14を貫通して、円筒状フランジ部20の所定の深さに達し、且つ回転治具24の下部が、円筒状接合部14の外周面に当接するまで、差し込まれる。これによって、高速回転せしめられるピン26及び回転治具24の下部と、かかるピン26が差し込まれる重ね合わせ部分22における軸方向一端部側部位との間に摩擦熱が発生し、その摩擦熱にて、重ね合わせ部分22におけるリム10の意匠面18側の部位が可塑化せしめられると共に、ピン26の高速回転に伴う撹拌作用により、かかる重ね合わせ部分22の軸方向一端部側部位における円筒状接合部14と円筒状フランジ部20の組織が互いに入り交じり合わされるのである。
【0030】
そして、重ね合わせ部分22の軸方向一端部側部位に差し込んだピン26が、かかる重ね合わせ部分22に対して、その周方向に相対的に移動せしめられることにより、組織が入り交じり合わされた円筒状接合部14と円筒状フランジ部20にて、接合部が、重ね合わせ部分22の軸方向一端部側部位において、その周方向に延びるように形成され、以て、リム10の円筒状接合部14とディスク10の円筒状フランジ部20との重ね合わせ部分22が、リム10の意匠面18側となる軸方向一端部側部位において、摩擦撹拌接合操作により、重ね合わせ接合されるのである。
【0031】
また、本工程では、回転治具24のピン26が、回転治具24と共に高速回転せしめられつつ、円筒状接合部14と円筒状フランジ部20との重ね合わせ部分22における、リム10の意匠面18とは軸方向において反対側となる軸方向他端部側の部位に対しても、円筒状接合部14の外周面側から差し込まれ、更に、図3に二点鎖線で示されるように、かかるピン26が、円筒状接合部14を貫通して、円筒状フランジ部20の所定の深さに達し、且つ回転治具24の下部が、円筒状接合部14の外周面に当接するまで、差し込まれる。そして、そのような状態下において、ピン26が、重ね合わせ部分22に対して、その周方向に相対移動せしめられる。これによって、重ね合わせ部分22の軸方向他端部側部位に対して、軸方向一端部側部位に形成された接合部と同様な接合部が形成され、以て、リム10の円筒状接合部14とディスク12の円筒状フランジ部20との重ね合わせ部分22が、その軸方向他端部側部位においても、摩擦撹拌接合操作により、重ね合わせ接合されるのである。
【0032】
かくして、本工程で、リム10の円筒状接合部14とディスク12の円筒状フランジ部20との重ね合わせ部分22が、リム10の意匠面18側の部位と、それとは軸方向において反対側となる部位の二箇所において、摩擦撹拌接合操作により、重ね合わせ接合せしめられることによって、リム10とディスク12とが、一体的に接合され、以て、目的とする2ピースホイールが得られることとなるのである。
【0033】
なお、このようなリム10とディスク12の摩擦撹拌接合操作による重ね合わせ接合を行なう際には、図示されてはいないものの、必要に応じて、ディスク12の円筒状フランジ部20における、前記回転治具24のピン26が差し込まれる部分の内側に、適当な裏当て部材が、円筒状フランジ部20に接触して配置される。これによって、リム10の円筒状接合部14やディスク12の円筒状フランジ部20へのピン26の差込み時に、その押圧力(差込み荷重)によって、それら円筒状接合部14や円筒状フランジ部20が変形せしめられるようなことが、有利に防止され得るばかりでなく、かかる裏当て部材とピン26との間で、円筒状接合部14と円筒状フランジ部20との重ね合わせ部分22が挟圧保持されて、摩擦撹拌接合操作の実施時におけるリム10とディスク12との位置ずれの発生も、効果的に阻止され得ることとなる。
【0034】
このように、本実施形態では、ディスク12の円筒状フランジ部20の外周面が、リム10の円筒状接合部14の重合面16に重ね合わされるように、ディスク12をリム10に対して嵌め合わせた状態下で、円筒状フランジ部20と円筒状接合部14との重ね合わせ部分22における、リム10の意匠面18側の部位とその反対側の部位、つまり、かかる重ね合わせ部分22における軸方向両端部側部位を、それぞれ摩擦撹拌接合して、リム10とディスク12とを一体化するものであるところから、リム10とディスク12との重ね合わせ部分22における軸方向両端部側部位の二箇所に、接合部が形成され得ることとなり、それによって、例えば、重ね合わせ部22の一箇所の部位を、所定の接合操作により接合する場合よりも、リム10とディスク12とが、より強固に接合され得るのであり、また、摩擦撹拌接合特有の効果であるところの入熱による接合部の強度低下や歪み等の接合不良の発生の防止効果が有利に享受され得て、リム10とディスク12とが、優れた接合品質をもって、極めて有利に接合され得るのである。
【0035】
しかも、このような本実施形態においては、リム10とディスク12との重ね合わせ部分22における、リム10の意匠面18側の部分とその反対側の部分にそれぞれ形成される接合部が、何れも、重ね合わせ接合によって形成されるようになっているところから、それぞれの接合部において、例えば、突き合わせ接合や隅肉接合にて形成される接合部よりも優れた接合強度が得られ、これによっても、リム10とディスク12とが、より強固に接合され得るのであり、また、重ね合わせ接合にて形成された各接合部の表面が、タイヤ等が嵌め込まれるリム10の外周面に形成されることとなるため、リム10とディスク12とが、それらの重ね合わせ部分22におけるリム10の意匠面18側の端部において接合されているにも拘わらず、リム10の意匠面18に、接合部が露呈せしめられるようなことが有利に回避され得るのである。
【0036】
従って、かくの如き本実施形態に係る2ピースホイールの製造手法によれば、リム10の意匠面18の意匠性を何等損なうことなく、リム10とディスク12とが、より強固に且つ確実に接合され得、以て、接合不良のない、優れた接合品質と強度とを有する高品質の2ピースホイールが、極めて有利に製造され得ることとなるのである。
【0037】
また、本実施形態においては、前述せる如く、リム10の円筒状接合部14とディスク12の円筒状フランジ部20との重ね合わせ部分22における軸方向両端部側部位に対して、円筒状接合部14の外周面側から、高速回転せしめられるピン26を差し込んで摩擦撹拌接合を行なう際に、必要に応じて、適当な裏当て部材を円筒状フランジ部20の内側に配置するだけで、円筒状接合部14と円筒状フランジ部20の変形やそれらの位置ずれが阻止され得るようになっているところから、摩擦撹拌接合時におけるリム10とディスク12の保持操作が、極めて容易に実施され得るのである。
【0038】
ところで、前記実施形態では、リム10の円筒状接合部14とディスク12の円筒状フランジ部20との重ね合わせ部分22における軸方向両端部側部位に対して、回転治具24と共に高速回転せしめられるピン26が、円筒状接合部14の外周面側から円筒状フランジ部20に達するように差し込まれて、周方向に相対移動せしめられる摩擦撹拌接合操作による重ね合わせ接合が行なわれることによって、それら重ね合わせ部分22における、リム10の意匠面18側の部位と、該意匠面18とは反対側の部位とが、一体的に接合されるようになっていたが、本発明手法においては、少なくとも、重ね合わせ部分22における、リム10の意匠面18側の部位に対して、摩擦撹拌接合操作による重ね合わせ接合が行なわれておれば良いのであって、重ね合わせ部分22における、リム10の意匠面18側とは反対側の部位が、必ずしも接合されている必要はなく、また、かかる部位を接合するに際しても、その接合方式が、特に限定されるものではないのである。
【0039】
従って、例えば、図4に示されるように、リム10の円筒状接合部14とディスク12の円筒状フランジ部20との重ね合わせ部分22における、リム10の意匠面18側の部位に対して、前記実施形態と同様な摩擦撹拌接合操作による重ね合わせ接合が行なわれる一方、かかる重ね合わせ部分22における、リム10の意匠面18側とは軸方向において反対側となる部位に対して、高速回転せしめられるピン26が、リム10の意匠面18側とは反対側から、円筒状接合部14と円筒状フランジ部20との重ね合わせ面間に、それら円筒状接合部14と円筒状フランジ部20の各端面に対して回転治具24の下部が当接するまで差し込まれ、そして、その差込み状態下で、重ね合わせ部分22に対して、その周方向に相対移動せしめられることによって、重ね合わせ部分22における、リム10の意匠面18側とは反対側の部位が摩擦撹拌接合されるように為しても良いのである。
【0040】
このような本実施形態手法にあっても、円筒状接合部14と円筒状フランジ部20の重ね合わせ部分22における、リム10の意匠面18側の部位とそれとは反対側の部位において、リム10に対するタイヤの装着状態下や、2ピースホイールの自動車への装着状態下で、外部から視認不能な二箇所が摩擦撹拌接合されて、リム10とディスク12とが一体的に接合されており、また、特に、重ね合わせ部分22における、リム10の意匠面18側の部位が、重ね合わせ接合されるようになっているところから、前記第一の実施形態と同様な効果が、有利に享受され得るのである。
【0041】
また、上述の如く、重ね合わせ部分22における、リム10の意匠面18側とは反対側の部位に対して、摩擦撹拌接合操作による突き合わせせ接合を行なう場合にあっては、有利には、図5に示される如く、ディスク12が、円筒状フランジ部20に突起28を有して構成される一方、リム10が、円筒状接合部14に係合凹部30を有して構成されることとなる。
【0042】
すなわち、ここでは、ディスク12の円筒状フランジ部20の先端側外周面に対して、径方向に所定高さ突出し、且つ周方向に連続して延びる突条形態を呈する突起28が、一体的に形成されており、また、かかる突起28の二つの側面のうち、円筒状フランジ部20の基部側、つまりディスク12の意匠面18側に位置する側面が、軸方向に対して直角な方向に広がる円環形状を呈する係合面32として、構成されている。
【0043】
一方、リム10の円筒状接合部20の重合面16において、ディスク12の突起28の形成側部位に対応する部位には、係合凹部30が、かかる突起28が嵌入可能な状態で、周方向に連続して延びる切欠溝形態をもって、形成されている。また、かかる係合凹部30にあっては、突起28の嵌入状態下で、該突起28の係合面32と接触する側面が、かかる係合面32に対応した形状を有すると共に、該係合面32に対して軸方向に係合する係合面34とされている。
【0044】
そして、本実施形態において、リム10とディスク12とを一体的に接合する際には、先ず、ディスク12における円筒状フランジ部20の突起28が、リム10における円筒状接合部14の係合凹部30に嵌入せしめられて、該突起28の係合面32が係合凹部30の係合面34に係合しつつ、円筒状フランジ部20の外周面と円筒状接合部14の重合面16とが互いに重ね合わされることによって、ディスク12のリム10に対する意匠面18側への相対移動が阻止された状態で、ディスク12がリム10に嵌め合わされる。その後、前述せるように、円筒状フランジ部20と円筒状接合部14の重ね合わせ部分22における、リム10の意匠面18側の部位が、摩擦撹拌接合操作により重ね合わせ接合される一方、それとは反対側の部位が、摩擦撹拌接合操作により突き合わせ接合されることとなる。
【0045】
このような本実施形態手法によれば、円筒状フランジ部20と円筒状接合部14の重ね合わせ部分22における、リム10の意匠面18側とは反対側の部位が摩擦撹拌接合により突き合わせ接合される際に、回転治具24と共に高速回転せしめられるピン26の押圧力にて、円筒状フランジ部20と円筒状接合部14の重ね合わせ位置の軸方向へのズレが有利に防止され得るのであり、それによって、リム10とディスク12とが、常に一定の位置で接合された2ピースホイールが有利に製造され得ることとなるのである。
【0046】
なお、ここでは、ディスク12における円筒状フランジ部20の外周面に対して、突起28が、周方向に連続して延びる一つの突条形態をもって、一体形成される一方、リム10の円筒状接合部14の重合面16に、係合凹部30が、かかる突起28が嵌入可能な、周方向に連続して延びる切欠溝形態をもって形成されていたが、突起28を、円筒状フランジ部20の外周面に対して、周方向に断続的に延びる幾つかの突条形態か、若しくは周方向に延出せしめられることなく、周方向に所定の距離を隔てた位置において、互いに独立して突出する山状形態をもって形成する一方、係合凹部30を、そのような突起28の形態にそれぞれ対応した凹溝形態若しくは凹所形態をもって形成することも、可能である。
【0047】
また、かくの如き突起28を、リム10における円筒状接合部14の重合面16に形成する一方、係合凹部30を、ディスク12における円筒状フランジ部20の外周面に形成したり、或いは、それら突起28と係合凹部30とを、リム10における円筒状接合部14の重合面16とディスク12における円筒状フランジ部20の外周面の両方に形成したりしても、良いのである。
【0048】
更に、突起28における前記係合面32と先端面とにて形成される角部を、角張った形状ではなく、湾曲面形態をもって形成しても良いが、その際には、かかる角部の湾曲面の曲率半径が5mm以下とされていることが、望ましい。それによって、突起28と前記係合凹部30との係合状態が、より安定的に確保され得るのである。
【0049】
また、上述せる如き手法とは異なって、図6に示されるように、円筒状フランジ部20の先端部に、先端に向かうに従って次第に大径化するテーパ状内周面36が形成されたディスク12を用いて、目的とする2ピースホイールを得ることも、可能である。
【0050】
すなわち、この円筒状フランジ部20の先端部にテーパ状内周面36が形成されたディスク12を用いる場合には、先ず、前記せる幾つかの実施形態と同様に、ディスク12における円筒状フランジ部20の外周面とリム10における円筒状接合部14の重合面16とが互いに重ね合されるように、ディスク10がリム10に対して嵌め合わされる。その後、円筒状フランジ部20と円筒状接合部14との重ね合わせ部分22における、リム10の意匠面18側の部位が、前記実施形態と同様にして、摩擦撹拌接合操作により重ね合わせ接合せしめられる。そして、その一方で、重ね合わせ部分22における、リム10の意匠面18側とは反対側の部位に対して、回転治具24と共に高速回転せしめられるピン26が、円筒状フランジ部20の先端部のテーパ状内周面36から斜めに差し込まれ、更に、かかるピン26が、円筒状フランジ部20を貫通して、円筒状接合部14の所定の深さに達するまで、差し込まれる。そして、そのような差込み状態下において、ピン26が、円筒状フランジ部20と円筒状接合部14の重ね合わせ部分22に対して、その周方向に相対移動せしめられる。
【0051】
かくして、円筒状フランジ部20と円筒状接合部14との重ね合わせ部分22における、リム10の意匠面18側の部位とそれとは反対側の部位とが、それぞれ、摩擦撹拌接合操作により重ね合わせ接合せしめられて、リム10とディスク12とが一体的に接合され、以て、目的とする2ピースホイールが得られることとなるのである。
【0052】
このような本実施形態手法にあっても、円筒状接合部14と円筒状フランジ部20の重ね合わせ部分22における、リム10の意匠面18側の部位とそれとは反対側の部位において、リム10に対するタイヤの装着状態下や、2ピースホイールの自動車への装着状態下で、外部から視認不能な二箇所に、接合部が、摩擦撹拌接合操作による重ね合わせ接合によって形成されるようになっているところから、前記第一の実施形態と同様な効果が、有利に享受され得るのである。
【0053】
なお、かくの如き本実施形態手法を採用する場合にあっては、有利には、ディスク12の円筒状フランジ部20の先端部に形成されたテーパ状内周面36が、60〜120°の範囲内のテーパ角度を有するように構成される。何故なら、かかるテーパ角度が60°よりも小さい場合には、回転治具24と共に高速回転せしめられるピン26が、円筒状接合部14と円筒状フランジ部20の重ね合わせ部分22における、リム10の意匠面18側とは反対側の部位に対して、テーパ状内周面36から斜めに差し込まれて、周方向に相対移動せしめられることにより、摩擦撹拌接合操作が実施される際に、ピン26と回転治具24の差込み方向が、軸方向に対して、より直角に近い方向となるため、回転治具24やそれに取り付けられるモータ等が、重ね合わせ部分22における、ピン26が差し込まれるる部位とは径方向の反対側の部分等に干渉せしめられて、摩擦撹拌接合操作の円滑な進行が妨げられる恐れがあるからであり、また、テーパ状内周面36のテーパ角度が120°よりも大きい場合には、逆に、摩擦撹拌接合操作を行なう際におけるピン26と回転治具24の差込み方向が、軸方向に対して、より平行に近い方向となるため、重ね合わせ部分22における、リム10の意匠面18とは反対側の部位に対して、ピン26を、テーパ状内周面36から円筒状接合部14の所定の深さにまで達するように差し込むことが困難となり、そのために、かかる部位に形成される接合部において、充分な接合強度が得られなくなってしまう恐れがあるからである。
【0054】
従って、ここでは、ディスク12の円筒状フランジ部20の先端部に形成されたテーパ状内周面36が、60〜120°の範囲内のテーパ角度を有するように構成されることによって、回転治具24のピン26が、円筒状フランジ部20のテーパ状内周面36からリム10の円筒状接合部14に達するように、確実に差し込まれ得て、それら円筒状フランジ部20と円筒状接合部14の重ね合わせ部分22における、リム10の意匠面18側とは反対側の部位が、より有利に且つ確実に重ね合わせ接合せしめられ得るのであり、その結果として、リム10とディスク12とが優れた接合強度をもって一体的に接合されてなる2ピースホイールが、安定的に且つ確実に製造され得ることとなるのである。
【0055】
また、そのように、ディスク12の円筒状フランジ部20の先端部にテーパ状内周面36を形成する場合には、少なくとも、かかる先端部における、回転治具24と共に高速回転せしめられるピン26が差し込まれる部位がテーパ状内周面36とされておれば、必ずしも、かかる先端部の全周に亘って、テーパ状内周面36が形成されている必要はない。即ち、かかる先端部に対して、テーパ状内周面36が、部分的に形成されていても良いのである。
【0056】
以上、本発明の具体的な構成について、幾つかの実施形態を示しつつ、詳述してきたが、それらはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0057】
例えば、前記せる幾つかの実施形態では、リム10の円筒状接合部14とディスク12の円筒状フランジ部20との重ね合わせ部分22における、リム10の意匠面18側の部位とそれとは反対側の部位のうち、先ず、リム10の意匠面18側の部位が接合された後、それとは反対側の部位が接合されるようになっていたが、その接合順序は、何等限定されるものではなく、重ね合わせ部分22における、リム10の意匠面18側の部位を先に接合したり、或いはそれら二つの部位を同時に接合したりしても、良いのである。また、重ね合わせ部分22における、リム10の意匠面18側の部位のみが、接合されるようになっていても、何等差し支えない。
【0058】
さらに、前記実施形態では、リム10の円筒状接合部14とディスク12の円筒状フランジ部20との重ね合わせ部分22における、リム10の意匠面18側の部位とそれとは反対側の部位とが、何れも、摩擦撹拌接合操作によって、接合されていたが、かかる重ね合わせ部分22における、リム10の意匠面18とは反対側の部位を、例えば、アーク溶接等の溶融溶接によって接合することも、可能なのである。
【0059】
更にまた、リム10やディスク12の形状も、特に限定されるものではなく、円筒状接合部14や円筒状フランジ部20が設けられてなるものであれば、例示されるもの以外の形状も、適宜に採用され得るのである。
【0060】
加えて、前記せる全ての実施形態では、自動車用2ピースホイールの製造方法に対して、本発明を適用したものの具体例を示したが、本発明は、その他、自動車以外の車両に用いられる2ピースホイールの何れに対しても、有利に適用され得るものであることは、勿論である。
【0061】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【0062】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明に従う2ピースホイールの製造方法によれば、リムの意匠面の意匠性を何等損なうことなく、リムとディスクとを、より簡単な摩擦撹拌接合操作にて、更に一層信頼性の高い接合強度をもって容易に接合することが出来、以て優れた品質と充分な強度とを有する高品質のピースホイールを極めて有利に製造することが可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明手法に従って、2ピースホイールを製造する際に用いられるリムの一例を示す半截説明図である。
【図2】本発明手法に従って、2ピースホイールを製造する際に用いられるディスクの一例を示す縦断面説明図である。
【図3】本発明手法に従って、2ピースホイールを製造する工程の一例を示す説明図であって、リムの円筒状接合部とディスクの円筒状フランジ部との重ね合わせ部分における、リムの意匠面側の部位とそれとは反対側の部位に対して、摩擦撹拌接合操作による重ね合わせ接合をそれぞれ行なっている状態を示している。
【図4】本発明手法に従って、2ピースホイールを製造する工程の別の例を示す説明図であって、リムの円筒状接合部とディスクの円筒状フランジ部との重ね合わせ部分における、リムの意匠面側の部位に対して、摩擦撹拌接合操作による重ね合わせ接合を行なう一方、それとは反対側の部位に対して、摩擦撹拌接合操作による突き合わせ接合を行なっている状態を示している。
【図5】本発明手法に従って、2ピースホイールを製造する工程の更に別の例を示す説明図であって、外周面に突起が設けられた円筒状フランジ部を有するディスクと、重合面に係合凹部が設けられた円筒状接合部を有するリムとを用いて、それら円筒状接合部と円筒状フランジ部との重ね合わせ部分における、リムの意匠面側の部位に対して、摩擦撹拌接合操作による重ね合わせ接合を行なう一方、それとは反対側の部位に対して、摩擦撹拌接合操作による突き合わせ接合を行なっている状態を示している。
【図6】本発明手法に従って、2ピースホイールを製造する工程の他の例を示す説明図であって、円筒状フランジ部の先端部にテーパ状内周面が形成されたディスクを用いて、リムの円筒状接合部とディスクの円筒状フランジ部との重ね合わせ部分における、リムの意匠面側の部位とそれとは反対側の部位に対して、摩擦撹拌接合操作による重ね合わせ接合をそれぞれ行なっている状態を示している。
【符号の説明】
10 リム             12 ディスク
14 円筒状接合部         16 重合面
18 意匠面            20 円筒状フランジ部
22 重ね合わせ部分        24 回転治具
26 ピン             28 突起
30 係合凹部           32,34 係合面
36 テーパ状内周面

Claims (7)

  1. アルミニウム合金材料からなるリムに対して、一方の面が意匠面とされたアルミニウム合金製のディスクを嵌め合わせ、一体的に接合せしめてなる2ピースホイールを製造するに際して、
    前記ディスクとして、外周縁部に、前記意匠面とは反対側において該意匠面から離れる方向に向かって延びる円筒状フランジ部が設けられてなるものを用いる一方、前記リムとして、内周面が、該ディスクの円筒状フランジ部の外周面に対して重ね合わされる重合面とされた円筒状接合部を有するものを用い、それら円筒状フランジ部の外周面と円筒状接合部の重合面とが互いに重ね合わされるように、該ディスクを該リムに嵌め合わせた後、該ディスクの円筒状フランジ部と該リムの円筒状接合部との重ね合わせ部分における、該ディスクの前記意匠面側の部位に対して、ロッド状の回転治具の先端に同心的に設けたピンを、該回転治具と共に一体回転させつつ、該リムの円筒状接合部の外周面側から、該ディスクの円筒状フランジ部に達するように差し込み、周方向に相対的に移動させることにより、かかる重ね合わせ部分の前記ディスクの意匠面側の部位を摩擦撹拌接合するようにしたことを特徴とする2ピースホイールの製造方法。
  2. 前記ディスクの円筒状フランジ部と前記リムの円筒状接合部との重ね合わせ部分における、前記ディスクの意匠面側の部位とは軸方向において反対側となる部位に対して、所定の接合操作を実施し、前記リムと該ディスクとを、かかる重ね合わせ部分の軸方向両端部側部位において、それぞれ、一体的に接合せしめた請求項1に記載の2ピースホイールの製造方法。
  3. 前記ディスクの円筒状フランジ部と前記リムの円筒状接合部との重ね合わせ部分における、前記ディスクの意匠面側の部位とは軸方向において反対側となる部位に対して、ロッド状の回転治具の先端に同心的に設けたピンを、該回転治具と共に一体回転させつつ、該リムの円筒状接合部の外周面側から、該ディスクの円筒状フランジ部に達するように差し込み、周方向に相対的に移動させることにより、かかる重ね合わせ部分の前記意匠面側とは反対側の部位を摩擦撹拌接合するようにした請求項2に記載の2ピースホイールの製造方法。
  4. 前記ディスクの円筒状フランジ部と前記リムの円筒状接合部との重ね合わせ部分における、前記ディスクの意匠面側の部位とは軸方向において反対側となる部位の重ね合わせ面間に、ロッド状の回転治具の先端に同心的に設けたピンを、該回転治具と共に一体回転させつつ、該ディスクの前記意匠面側とは反対側から差し込み、周方向に相対的に移動させることにより、かかる重ね合わせ部分の前記意匠面側とは反対側の部位を摩擦撹拌接合するようにした請求項2に記載の2ピースホイールの製造方法。
  5. 前記ディスクにおける円筒状フランジ部の外周面と、前記リムにおける円筒状接合部の重合面のうちの少なくとも何れか一方に、径方向に突出する突起が設けられる一方、それらのうちの少なくとも何れか他方に、該突起に対して係合することにより、該リムの意匠面側への該ディスクの該リムに対する相対移動を阻止せしめる係合凹部が設けられている請求項4に記載の2ピースホイールの製造方法。
  6. 前記ディスクの円筒状フランジ部の先端部に、先端に向かうに従って次第に大径化するテーパ状内周面が形成されており、かかるディスクの円筒状フランジ部と前記リムの円筒状接合部とを重ね合わせた状態において、該円筒状フランジ部の前記テーパ状内周面に対して、ロッド状回転治具の先端に同心的に設けたピンを、該回転治具と共に一体回転させつつ、該テーパ状内周面から前記円筒状接合部に達するように、斜めに差し込み、周方向に相対的に移動させることにより、該ディスクの円筒状フランジ部と該リムの円筒状接合部との重ね合わせ部分における、前記ディスクの意匠面側の部位とは軸方向において反対側となる部位を摩擦撹拌接合するようにした請求項2に記載の2ピースホイールの製造方法。
  7. 前記円筒状フランジ部の先端部におけるテーパ状内周面が、60〜120°の範囲内のテーパ角度を有している請求項6に記載の2ピースホイールの製造方法。
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