JP3740104B2 - 摩擦圧接方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は摩擦圧接方法およびこの摩擦圧接により接合された継手に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属からなる構造物における継手として、プラグ部を有する第1の部材のプラグ部を孔部を有する第2の部材の孔部に挿入して摩擦圧接法(摩擦溶接法)により接合したものがある。すなわち、この継手は、第1の部材のプラグ部を第2の部材の孔部に挿入して突き当て、第1の部材と第2の部材を加圧しつつ突き当て面を相対回転運動させて、突き当てで発生する摩擦熱により第1の部材と第2の部材とを溶接する方法により製作している。
【0003】
従来、この摩擦圧接法により前記の継手を製作する場合には、第1の部材のプラグ部をストレート形またはテーパ形にする構成が採用されている。図24はプラグ部にストレート形を採用した代表的な形態を模式的に示す図で、図中1は丸棒からなる第1の部材1、2は板材あるいはブロック材からなるリング形の第2の部材である。第1の部材1は先端部がストレートな丸棒からなるプラグ部1aとされ、第2の部材2はストレート形をなす円形の孔部2aが両側面を貫通して形成されている。
【0004】
そして、図25に示すように第1の部材1のプラグ部1aを第2の部材2の孔部2aに挿入し、初めにプラグ部1aの先端角縁と孔部2aの入口角縁(初期当り位置)とを突き当て、さらに両部材1,2に対して互いに突き当てる向きに力を加えるとともに第1の部材1を回転させ、プラグ部1aの外周面と孔部2aの内周面とを摩擦させる。これにより図26に示すように突き当て面で発生する摩擦熱によりプラグ部1aの外周面と孔部2aの内周面の表面が軟化し、この軟化した金属によりプラグ部1aの外周面と孔部2a両方の面を接合する。なお、軟化金属Wの一部はプラグ部1aによって孔部2aの入口および出口から余肉部Waとして外部へ掻き出される。
【0005】
図27はプラグ部にテーパ形を採用した代表的な形態を模式的に示す図で、図中3は丸棒からなる第1の部材、4は板材あるいはブロック材からなる第2の部材である。第1の部材3は先端部がテーパ形をなすプラグ部1aとされ、第2の部材2はテーパ形をなす円形の孔部4aが両側面を貫通して形成されている。
【0006】
そして、図28に示すように第1の部材3のプラグ部3aを第2の部材4の孔部4aに挿入して、プラグ部3aの外周面全体を孔部4aの内周面全体に突き当てて接触させる。さらに両部材3、4に互いに突き当てる向きに力を加えるとともに第1の部材3を回転させ、プラグ部3aの外周面と孔部4aの内周面とを摩擦させる。これにより図29に示すように摩擦熱によりプラグ部1aの外周面と孔部2aの内周面を軟化させて密着化させて接合する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ストレート形のプラグ部を採用した摩擦圧接法には次に述べる問題がある。すなわち、この方法では第1の部材1のプラグ部1aを第2の部材2の孔部2aに挿入する時に、両者の初期当り位置が孔部2aの入口角縁となる。摩擦圧接法ではプラグ部の外周面と孔部の内周面は初期当り位置となる部分が最も多く発熱し、孔部2aの入口部が他の部分に比較して素材が軟化する割合が多くなる。このため、金属の軟化により孔部2aの入口の内径が拡大する度合いが孔部2aの出口に比較して大きくなり、また軟化金属Wが孔部2aの入口から外部へ掻き出される量は出口から外部へ掻き出される量より多くなる。これによりプラグ部1aと孔部2aの入口との間が接合できなくなり、この非接合部の孔部軸方向の長さが孔部軸方向の全長の中で占める割合が大きい。これに伴い孔部軸方向の全長においてプラグ部1aと孔部2aとが接合する接合部の長さが占める割合(接合率)が低下する。特に孔部2aの長さ方向中央部における接合部長さが縮小して接合の信頼性の面で不安が生じる。
【0008】
孔部2aの入口から軟化金属Wが外部へ掻き出されて生じた余肉部Waはその量が多いことから図26に示すように断面が塊としてまとまらず分岐し切り込まれた形状となる。このため、この余肉部Waの分岐部した部分に応力が集中し易く、この応力集中により余肉部Waからプラグ部1aと孔部2aとの間の接合部金属Wに到る亀裂が生じてプラグ部1aと孔部2aとの接合が不確実になることがある。
【0009】
この対策として余肉部Waを後加工で切除する方法があるが、この場合には加工が困難で経費もかかり、仮に余肉部Waを切除しても応力集中を確実に防止できる訳ではない。
【0010】
このように摩擦圧接を行なう場合に、プラグ部1aと孔部2aとの初期当り位置が孔部軸方向の中央部に対して片寄った位置にあることから,プラグ部1aと孔部2aとの接合の信頼性が低下する問題があった。
【0011】
テーパ形のプラグ部を採用した摩擦圧接法には次に述べる問題がある。すなわち、この方法では図28に示すように第1の部材3のプラグ部3aのテーパをなす外周面全体を、第2の部材4の孔部4aのテーパをなす内周面全体に突き当てるために両面が接触する面積が大きい。このため、プラグ部1aを回転する時にプラグ部1aの外周面と孔部2の内周面との間の摩擦抵抗が大きいので、両者の摩擦圧接の進行が遅く図29に示すように孔部軸方向の中央部では未接合部分が発生することがある。すなわち、プラグ部1aの外周面と孔部2の内周面との間の接合金属Wが少量で空白部が生じる。これによりプラグ部3aと孔部4aとの接合の信頼性が低下する問題があった。
【0012】
本発明は第1の部材のプラグ部と第2の部材の孔部とを高い信頼性で接合できる摩擦圧接方法を提供することを目的とする。
【0013】
本発明は第1の部材のプラグ部と第2の部材の孔部との接合の信頼性を高めた継手を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の摩擦圧接方法は、第1の部材に設けられて先端面に向かうにしたがって直径が順次縮小してゆくテーパをなす外周面を有するプラグ部を、第2の部材に設けられてプラグ部が挿入される入口から出口にかけて直径が順次縮小してゆくテーパをなすとともに出口の内周縁に周方向全体に亘りフランジ形をなす堰部が形成された内周面を有する孔部に挿入し、プラグ部の外周面と孔部の内周面との初期当り位置として孔部の軸方向中央部で突き当て、第1の部材と第2の部材を加圧しつつ突き当て面で相対運動させて、突き当て面で発生する摩擦熱により第1の部材と第2の部材とを接合する。
【0015】
本発明の継手は、先端面に向かうにしたがって外周面の直径が順次縮小してゆくテーパをなすプラグ部を有する第1の部材と、プラグ部が挿入される入口から出口にかけて内周面の直径が順次縮小してゆくテーパをなすとともに出口の内周縁に周方向全体に亘りフランジ形をなす堰部が形成された孔部を有する第2の部材とを具備し、プラグ部が孔部に挿入されて、プラグ部または孔部の一方に周方向に沿って形成される突部を初期突き当り位置として、プラグ部の外周面と孔部の内周面とが、孔部の軸方向中央部で突き当たる状態から摩擦圧接される
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
本発明の摩擦圧接方法にかかわる第1の実施の形態について図1ないし図3を参照して説明する。図1は第1の部材のプラグ部と第2の部材の孔部の組合せる前の状態を模式的に示す断面図、図2はプラグ部を孔部に挿入した状態を模式的に示す断面図、図3はプラグ部と孔部とを摩擦圧接した状態を示す模式的に示す断面図である。
【0018】
先ず、図1に示すように金属からなる第1の部材11と、第1の部材11の金属と同じ金属または異なる金属からなる第2の部材12を用意する。第1の部材11は丸棒からなるもので、その一端部はプラグ部11aとなっている。このプラグ部11aは外周面が先端面に向かうに従って直径が順次縮小してゆくテーパをなしている。このプラグ部1は基端が第1の部材11と同じ直径を有し、先端面が基端より小さい直径を有する円板をなしており、基端と先端面との間における先端面に近い位置には円周方向に沿う突部11bが形成されている。この突部11bは基端の直径より小さく、先端面の直径より大きい円環形をなすもので、基端から突部11bに到るまでのテーパ面と突部11bから先端面に到るテーパ面との中央軸線に対する角度が異なり、両方のテーパ面が交叉することにより突部となっている。すなわち、突部11aは断面山形をなすものである。
【0019】
第2の部材12は板材あるいはブロック材からなるもので、中央部には両方の側面に貫通する孔部12aが形成された例えばリング形をなしている。この孔部12aの内周面は一端開口(入口)から他端開口(出口)にかけて直径が順次縮小してゆくテーパをなしている。また、孔部12aの小径端開口である出口の内周縁には円周方向全体に亘りフランジ形をなす堰部12bが形成されている。
【0020】
第1の部材11のプラグ部11aと第2の部材12の孔部12aとは、プラグ部11aの先端から入口を通して孔部12aに挿入し、この挿入時にプラグ部11aの突部11bが初めに孔部12aの内周面における軸方向中央部に突き当るように寸法が設定されている。孔部12aの内周面における軸方向中央部Lは、孔部軸方向の中心点Oを中心として軸方向両側に夫々孔部軸方向長さの1/6の長さの部分を含む範囲である。すなわち、軸方向中央部Lの長さは孔部軸方向全長の1/3の長さである。
【0021】
例えば、孔部12aの入口の直径はプラグ部11aの先端面直径より大きく基端直径より小さい。孔部12aの出口に形成した堰部12bの外周直径は第1の部材11の先端面直径と同じであり、内周直径は先端面直径より小さい。孔部12aのテーパ角度θ2はプラグ部11aのテーパ部のテーパ角度θ1より大きい。孔部12aの軸方向長さはプラグ部11aの軸方向長さより小さい。孔部12aの入口から堰部12bまでの距離はプラグ部11aの基端から突部11bまでの距離より小さい。
【0022】
次いで、図2に示すように第1の部材11と第2の部材12とをプラグ部11aと孔部12aとを向合わせて同一軸線上に配置し、第1の部材11を第2の部材12に接近する向きに移動させてプラグ部11aを孔部12aの内部に挿入する。プラグ部11aを孔部12aの内部に挿入すると、プラグ部11aの突部11bの周方向全体が孔部12aの内周面における軸方向中央部Lの範囲の周方向全体に突き当る(初期当り位置P)。ここで、孔部12aの内周面における軸方向中央部Lとは、孔部軸方向の中心点Oを中心として軸方向両側に夫々孔部軸方向長さの1/6の長さの部分を含む範囲である。図2では突部11bが孔部軸方向の中心点Oに突き当った場合を示している。
【0023】
さらに、図2に示すように第1の部材11に対して第2の部材12と突き当てる向きに力を加えるとともに、第1の部材11をその軸線を中心として回転させる。第2の部材12は固定している。プラグ部11aの突部11bが孔部12aの内周面に接触しながら回転して両者間に摩擦による熱が発生する。この摩擦熱によりプラグ部11aの突部11bが軟化して孔部軸方向に沿って広がり平面の状態で孔部12aの内周面に接触する。
【0024】
そして、図3に示すように摩擦によりプラグ部11aの外周面と孔部12aの内周面が温度上昇して軟化し、この軟化金属Wにより両方の表面が接合する。軟化金属Wの一部はプラグ部11aによって孔部12aの入口および出口から余肉部Waとして外部へ掻き出される。13は接合部である。
【0025】
孔部12aの出口に形成した堰部12bは、プラグ部11aにより掻き出される孔部12aの出口から外部へ掻き出される軟化金属Wを抑えて掻き出される量を抑制するものである。すなわち、プラグ部11aを孔部12aに挿入すると、その圧力を受けて軟化金属Wは孔部12aの入口側より出口側から掻き出される量が多くなる。そこで、堰部12bを孔部12aに設けて軟化金属Wの掻き出し量を抑えて、孔部12aの入口と出口から掻き出す軟化金属の量をほぼ均一にすることに役立つようにしている。
【0026】
このように摩擦圧接方法により継手を製作する。この摩擦圧接方法では、プラグ部11aの外周面と孔部12aの内周面とは孔部軸方向の中心点Oを中心として軸方向両側、すなわち孔部12aの入口側と出口側とにほぼ均等に振り分けた長さの範囲で接合する。すなわち、プラグ部11aの外周面と孔部12aの内周面は孔部軸方向の中央部で接合する。そして、この接合部13は孔部12aの入口側と出口側に夫々充分に伸びて大きな長さとなる。
【0027】
この接合部13の長さは、プラグ部11aが孔部12aに初めに突き当る初期当り位置Pが位置する孔部軸方向中央部Lの範囲である中心点Oを中心として軸方向両側に夫々孔部軸方向長さの1/6の長さの部分を含む範囲の長さに制約されない。また、この接合部13の長さは従来の軸方向に片寄った位置に形成される接合部の長さより大きい。このため、孔部軸方向の全長においてプラグ部11aと孔部12aとが接合する接合部の長さが占める割合(接合率)が従来の場合に比較して高い値を得ることができる。
【0028】
さらに、プラグ部11aと孔部12aとを突き当てる際に、プラグ部11aの外周面と孔部12aの内周面とを部分的に接触させるので、従来のテーパ形のプラグ部を採用した場合に比較して摩擦抵抗が小さく摩擦圧接の進行が順調に進行して未接合部分が発生しない。
【0029】
また、プラグ部11aの外周面と孔部12aの内周面とが孔部軸方向の中央部で接合されることから、軟化金属Wがプラグ部11aによって孔部12aの入口および出口から夫々ほぼ均一な量で余肉部Waとしての外部へ掻き出される。そして、孔部12aの入口および出口から掻き出される軟化金属Wの量は、従来孔部2aの入口から片寄って多量に掻き出される軟化金属Wの量より少ない。このため、孔部12aの入口および出口から軟化金属Wが外部へ掻き出されて生じた余肉部Waはその量が少ないことから断面が塊としてまとまる。余肉部Waが塊としてまとまると、応力集中が発生し易い分岐して切り込まれた形状にならない。従って、この余肉部Waで応力集中が発生せず亀裂が発生することがない。
【0030】
そして、プラグ部11aの突部11bが孔部12aの内周面に突き当る位置Pの範囲である孔部12aの軸方向中央部Lを、孔部軸方向の中心点Oを中心として軸方向両側に夫々孔部軸方向長さの1/6の長さの部分を含む範囲Lに設定することにより、プラグ部11aと孔部12aとを孔部軸方向中央部で長い接合部をもって接合するとともに軟化金属Wの掻き出しの片寄りを抑えることを確実に実現できる。
第1の部材11のプラグ部11aの外周面に周方向に沿う突部11bを形成することにより、第1の部材11のプラグ部11aを第2の部材12の孔部12aに挿入する時に、プラグ部11aの外周面と孔部12aの内周面との初期当り位置Pを孔部軸方向の中央部とすることを確実に実現できる。また、プラグ部に突部11bを形成することは加工が容易である。
【0031】
このように摩擦圧接を行なう場合、プラグ部11aと孔部12aとの初期当り位置を孔部軸方向の中央部の範囲Lにすることにより、プラグ部11aと孔部12aとを高い信頼性を持って接合することができる。
【0032】
そして、このように摩擦圧接方法により製作された継手は、第1の部材11のプラグ部11aの外周面と第2の部材12の孔部12aの内周面とが接合される接合部13の孔部軸方向長さが、この接合部13に対して孔部軸方向の両端側に位置する非接合部の孔部軸方向より大きいので、第1の部材11のプラグ部11aと第2の部材12の孔部12aとの接合の信頼性を高めることができる。この継手は第1の部材11を棒材とすることにより、棒材に適宜な部品を接合した構造物製品を製作する上で大変用途が広い。
【0033】
図4ないし図6は本発明の摩擦圧接方法にかかわる第2の実施の形態を示している。図4は第1の部材のプラグ部と第2の部材の孔部の組合せる前の状態を模式的に示す断面図、図5はプラグ部を孔部に挿入した状態を模式的に示す断面図、図6はプラグ部と孔部とを摩擦圧接した状態を模式的に示す断面図である。
【0034】
この実施の形態は、図4に示すようにテーパ形をなすプラグ部21aを有する第1の部材21と、テーパ形の孔部22aを有する第2の部材22を組合せて摩擦圧接して継手を製作するものである。第1の部材21のプラグ部21aの外周面にはプラグ部21aの直径より大きい直径を有する突部21bが形成されている。この突部21bはプラグ部21aの軸方向に沿う幅を有するもので、この幅はプラグ部21aの突部21bが孔部22aの内周面に突き当る位置Pの範囲である孔部22aの軸方向中央部Lの幅に収まる大きさに設定されている。ここでは例えば突部21bの幅は孔部軸方向中央部Lの幅と同じ大きさに設定されている。
【0035】
そして、プラグ部21aを孔部22aに挿入すると、図5に示すようにプラグ部21aの突部21bが、孔部22aの内周面に軸方向中央部の範囲で突き当る。ここが初期突き当り位置Pである。すなわち、初期突き当り位置Pがそのまま孔部22aの軸方向中央部Lと重なる。さらに、摩擦圧接を行ないプラグ部21aと孔部22aとを接合する。この実施の形態でも、図6に示すようにプラグ部21aの外周面と孔部22aの内周面とが孔部軸方向中央部で接合する。23はこの接合部である。
【0036】
第1および第2の実施では、第1の部材のプラグ部を第2の部材の孔部に突き当てるためにプラグ部に突部を形成している。しかし、孔部に突部を形成してプラグ部を突き当てるようにしても良い。
【0037】
図7および図8はこの内容に基づいたの第3の実施の形態を示すものである。図7は第1の部材のプラグ部と第2の部材の孔部の組合せる前の状態を模式的に示す断面図、図8はプラグ部を孔部に挿入した状態を模式的に示す断面図である。図中31はテーパ形のプラグ部31aを有する第1の部材、32はテーパ形の孔部32aを有する第2の部材である。第2の部材32の孔部32aの内周面には周方向に沿う断面山形をなす突部32bが形成されている。この突部32bは孔部32aの直径より小さい直径を有して孔部32aの内周面から突出している。32cは第2の部材32の出口内周部に形成された堰部である。
【0038】
そして、プラグ部31aを孔部32aに挿入すると、図8に示すように孔部32aの突部32bがプラグ部31aの外周面における軸方向中央部Lの範囲、例えば中心点Oで突き当る。ここが初期突き当り位置Pである。
【0039】
図9および図10はこの内容の第4の実施の形態を示すものである。図9は第1の部材のプラグ部と第2の部材の孔部の組合せる前の状態を模式的に示す断面図、図10はプラグ部を孔部に挿入した状態を模式的に示す断面図である。図中41はテーパ形のプラグ部41aを有する第1の部材、42はテーパ形の孔部42aを有する第2の部材である。第2の部材42の孔部42aの内周面に周方向に沿う帯形をなす突部42bが形成されている。この突部42bはプラグ部41aの軸方向に沿う幅を有するもので、この幅は突部42bがプラグ部41aの外周面に突き当る範囲である孔部軸方向中央部Lの幅に収まる大きさに設定されている。ここでは例えば突部41aの幅は孔部軸方向中央部Lの幅と同じ大きさに設定されている。
【0040】
そして、プラグ部41aを孔部42aに挿入すると、図10に示すように孔部42aの突部42bがプラグ部41aの外面面に軸方向中央部の範囲で突き当る。ここが初期突き当り位置Pである。
【0041】
このように第2の部材の孔部の内周面に周方向に沿う突部を形成することにより、第1の部材のプラグ部を第2の部材の孔部に挿入する時に、プラグ部の外周面と孔部の内周面との初期当り位置を孔部軸方向の中央部とすることを確実に実現できる。
【0042】
図11は第5の実施の形態を示すもので、第1の部材のプラグ部と第2の部材の孔部の組合せる前の状態を模式的に示す断面図である。この実施の形態は、第2の部材にその両側面間を貫通する孔部を形成するのではなく、両側面間を貫通しない所謂、盲孔である孔部を形成したものである。第1の部材としては例えば第1の部材11と同じ形態の第1の部材51を用いている。第2の部材52にはテーパ形をなす盲孔からなる孔部52aを形成している。孔部52aの出口には、この出口から掻き出される軟化金属を逃す逃し部52bを形成している。この逃し部52bの存在により摩擦圧接を行なう場合に、孔部52aの出口から掻き出される軟化金属を逃すことができる。
【0043】
次に実施例について説明する。
【0044】
図12ないし図18に示すように本発明の各実施の形態にかかわる第1の部材と第2の部材との組合せと、従来の各形態にかかわる第1の部材と第2の部材との組合せを用意した。これら各組合せにおける各部材の各部の寸法は図に示す通りである。
【0045】
図12、図13および図14は夫々従来の摩擦圧接方法における第1の部材と第2の部材との組合せを示すもので、第1の部材のプラグ部はストレート形をなしている。ここでは図12のものをストレート形Aタイプ,図13のものをストレート形Bタイプおよび図14をストレート形Cタイプと称する。図17は従来の摩擦圧接方法における第1の部材と第2の部材との組合せを示すもので、第1の部材のプラグ部はテーパ形(全面当り)をなしている。ここでは図17のものをテーパ形Fタイプと称する。
【0046】
図15、図16は夫々本発明の摩擦圧接方法における第1の部材と第2の部材との組合せを示すもので、第1の部材のプラグ部はテーパ形(中央当り)をなしている。ここでは図15のものをテーパ形Dタイプ、図16のものをテーパ形Eタイプと称する。図18は本発明の摩擦圧接方法における第1の部材と第2の部材との組合せを示すもので、第1の部材のプラグ部はテーパ形(中央当り)をなしている。ここでは図18のものをテーパ形Gタイプと称する。
【0047】
そして、図19で示すように図12ないし図14で示す従来対象のストレート形AないしCタイプの組合せを試験片1ないし8に採用し、図17で示す従来対象のテーパ形Fタイプを試験片13に採用し、図15、図16および図18で示す本発明対象のテーパ形D、EおよびGタイプを試験片9ないし12,14に採用している。
【0048】
これら各試験片の組合せに対して図19に示すように摩擦圧接条件を種々変更して摩擦圧接を行なった。摩擦圧接条件は、接合面の角度、摩擦圧力、アップセット圧力、圧接時間、寄り代である。寄り代は、第1の部材を第2の部材に向けて移動させる距離で、摩擦圧力を加える時の摩擦寄り代、アップセットの時の寄り代およびこれらの合計である全寄り代を挙げている。
【0049】
摩擦圧接は図20でサイクルで行なった。すなわち、第1の部材を第2の部材に対して突合せて摩擦寄り代で接近移動させつつ第1の部材を回転させて摩擦圧力を加える。これが摩擦発熱工程である。次いで、第1の部材の回転を停止し、第1の部材を第2の部材に対してアップセット寄り代で接近移動させつつ摩擦圧力より高いアップセット圧力を加える。これがアップセット加圧工程である。
【0050】
このようにして各試験片に対して摩擦圧接を行ない継手を製作し、製作した各継手における接合部の長さ、接合率および角度、接合不良の長さ(前方、後方)およびリング(第2の部材)の変形量について測定した。この測定結果を図21に示す。図22は試験片1から8までの継手における測定部分を示し、図23は試験片9から14までの継手における測定部分を示している。
【0051】
なお、接合部の接合率は孔部軸方向の全長においてプラグ部と孔部とが接合する接合部の長さが占める割合で表す。
【0052】
この測定結果によると、本発明の摩擦圧接方法により製作した継手は、第1の部材のプラグ部と第2の部材の孔部との接合率が大変高く、接合不良は大変小さいことが判る。
【0053】
なお、本発明は前述した実施の形態に限定されず、種々変形して実施することができる。
【0054】
【発明の効果】
本発明の摩擦圧接方法によれば、第1の部材のプラグ部を第2の部材の孔部に挿入する時に、プラグ部の外周面と孔部の内周面との初期当り位置を孔部軸方向の中央部とすることにより、プラグ部と孔部とを孔部軸方向中央部で長い接合部をもって接合するとともに軟化金属の掻き出しの片寄りを抑えて第1の部材のプラグ部と第2の部材の孔部とを高い信頼性で接合できる。
【0055】
本発明の摩擦圧接方法によれば、プラグ部の外周面と孔部の内周面との初期当り位置がある孔部の軸方向中央部を、孔部軸方向の中心点を中心として軸方向両側に夫々孔部軸方向長さの1/6の長さの部分を含む範囲に設定することにより、プラグ部と孔部とを孔部軸方向中央部で長い接合部をもって接合するとともに軟化金属の掻き出しの片寄りを抑えることを確実に実現できる。
本発明の摩擦圧接方法によれば、第1の部材のプラグ部の外周面、または第2の部材の孔部の内周面に周方向に沿う突部を形成することにより、第1の部材のプラグ部を第2の部材の孔部に挿入する時に、プラグ部の外周面と孔部の内周面との初期当り位置を孔部軸方向の中央部とすることを確実に実現できる。
【0056】
本発明の摩擦圧接方法によれば、第2の部材の孔部において第1の部材のプラグ部を挿入する端部とは反対側の端部に堰部部を設けることにより、孔部の出口から軟化金属が外部へ出ることを抑えて孔部の入口と出口における軟化金属の掻き出しを均一にすることに寄与することができる。
【0057】
本発明の継手によれば、第1の部材のプラグ部の外周面と前記第2の部材の孔部の内周面とが接合される接合部の孔部軸方向長さが、この接合部に対して孔部軸方向の両端側に位置する非接合部の孔部軸方向より大きいので、第1の部材のプラグ部と第2の部材の孔部との接合の信頼性を高めることができる。
【0058】
本発明の継手によれば、第1の部材を棒材とすることにより、請求項7の継手を活かした構造物製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態にかかわる摩擦圧接方法に用いる部材を示す断面図。
【図2】同実施の形態の摩擦圧接方法における部材の組合せを示す断面図。
【図3】同実施の形態の摩擦圧接方法で接合した部材を示す断面図。
【図4】第2の実施の形態にかかわる摩擦圧接方法に用いる部材を示す断面図。
【図5】同実施の形態の摩擦圧接方法における部材の組合せを示す断面図。
【図6】同実施の形態の摩擦圧接方法で接合した部材を示す断面図。
【図7】第3の実施の形態にかかわる摩擦圧接方法に用いる部材を示す断面図。
【図8】同実施の形態の摩擦圧接方法における部材の組合せを示す断面図。
【図9】第4の実施の形態にかかわる摩擦圧接方法に用いる部材を示す断面図。
【図10】同実施の形態の摩擦圧接方法における部材の組合せを示す断面図。
【図11】第5の実施の形態にかかわる摩擦圧接方法に用いる部材を示す断面図。
【図12】本発明の実施例に試験片として用いる部材を示す断面図。
【図13】同実施例に試験片として用いる部材を示す断面図。
【図14】同実施例に試験片として用いる部材を示す断面図。
【図15】同実施例に試験片として用いる部材を示す断面図。
【図16】同実施例に試験片として用いる部材を示す断面図。
【図17】同実施例に試験片として用いる部材を示す断面図。
【図18】同実施例に試験片として用いる部材を示す断面図。
【図19】同実施例における摩擦圧接方法を示す図。
【図20】同実施例における摩擦圧接方法の工程を示す図。
【図21】同実施例における摩擦圧接した試験片の状態を示す図。
【図22】同実施例における摩擦圧接した試験片の状態を示す図。
【図23】同実施例における摩擦圧接した試験片の状態を示す図。
【図24】従来の摩擦圧接方法に用いる部材を示す図。
【図25】従来の摩擦圧接方法において部材を組合せた状態を示す図。
【図26】従来の摩擦圧接方法により部材を接合した状態を示す図。
【図27】従来の摩擦圧接方法に用いる部材を示す図。
【図28】従来の摩擦圧接方法において部材を組合せた状態を示す図。
【図29】従来の摩擦圧接方法により部材を接合した状態を示す図。
【符号の説明】
11…第1の部材11a…プラグ部、11b…突部12…第の部材12a…孔部、12b…堰部、13…接合部21…第1の部材21a…プラグ部、21b…突部22…第の部材22a…孔部23…接合部31…第1の部材31a…プラグ部32…第の部材32a…孔部32b…突部、32c…堰部、41…第1の部材41a…プラグ部42…第の部材42a…孔部42b…突部51…第1の部材51a…プラグ部52…第の部材52a…孔部52b…逃げ部。

Claims (5)

  1. 第1の部材に設けられて先端面に向かうにしたがって直径が順次縮小してゆくテーパをなす外周面を有するプラグ部を、第2の部材に設けられて前記プラグ部が挿入される入口から出口に掛けて直径が順次縮小してゆくテーパをなすとともに前記出口の内周縁に周方向全体に亘りフランジ形をなす堰部が形成された内周面を有する孔部に挿入し、
    前記プラグ部の前記外周面と前記孔部の前記内周面との初期当り位置として前記孔部の軸方向中央部で突き当て、
    前記第1の部材と前記第2の部材を加圧しつつ突き当て面で相対運動させて、突き当て面で発生する摩擦熱により前記第1の部材と前記第2の部材とを接合することを特徴とする摩擦圧接方法。
  2. 前記孔部の軸方向中央部は、この孔部の軸方向の中心点を中心として前記軸方向へ両側に夫々前記孔部の前記軸方向の長さの1/6の長さの部分を含む範囲であることを特徴とする請求項1に記載の摩擦圧接方法。
  3. 前記初期当り位置は、前記プラグ部の前記外周面に周方向に沿って設けられる突部であることを特徴とする請求項1に記載の摩擦圧接方法。
  4. 前記初期当り位置は、前記孔部の前記内周面に周方向に沿って設けられる突部であることを特徴とする請求項1に記載の摩擦圧接方法。
  5. 前記堰部は、前記プラグ部により前記孔部の前記出口から外部へ軟化金属が掻き出される量を抑制し、施工完了時には接合部よりも外部へ押し出されていることを特徴とする請求項1に記載の摩擦圧接方法。
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