JP2004050563A - サーマルプリンタ及びサーマルヘッドの蓄熱補正方法 - Google Patents

サーマルプリンタ及びサーマルヘッドの蓄熱補正方法 Download PDF

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Abstract

【課題】短期蓄熱の補正と中期蓄熱の補正を同時に行う。
【解決手段】色変換回路17は画像メモリから読み込んだ画像データDr(i,n),Dg(i,n),Db(i,n)を印刷データDc(i,n),Dm(i,n),Dy(i,n)に変換すると同時に、これら印刷データDc(i,n),Dm(i,n),Dy(i,n)を現メモリバッファ19に格納する。前メモリバッファ20に前ラインの印刷データDc(i−1,n),Dm(i−1,n),Dy(i−1,n)が格納され、累積メモリバッファ21には前ラインまでの累積データΔTs(i−1,n)が格納されている。補正データ生成回路18は、現ラインでの印刷データD(i,n)と、前ラインでの印刷データD(i−1,n)と、前ラインまでの累積データΔTs(i−1,n)とから、現ラインの印刷データ(i,n)を補正するための補正データΔTs(i,n)を算出する。印刷データ補正回路22は、現ラインの補正データΔTs(i,n)を現ラインの印刷データD(i,n)に加算して補正印刷データD’(i,n)を算出する。
【選択図】   図5

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、昇華型熱転写プリンタにおいて、サーマルヘッドの蓄熱による画像のシャープ性などを改善するサーマルプリンタ及びサーマルヘッドの蓄熱補正方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、サーマルヘッドの蓄熱による濃度ムラを補正するために、発熱素子の発熱とセラミック基板からグレーズ層に伝わる熱量とグレーズ層に残る熱量とから、新たなグレーズ層の蓄熱状態を示す蓄熱データを作成し、この蓄熱データから求めた補正値を次ラインの印刷データから減算して補正する方法(特開平10−146998号公報)や、外部コンピュータに蓄熱係数、階調データ係数、印画開始温度、温度係数などの補正パラメータを格納し、プリント用紙やインク、プリント速度などに応じて最適な条件を選択する方法(特開平11−348335号公報))などが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
サーマルヘッドの蓄熱には、ヘッドを構成する部材の放熱特性に起因して発熱体近傍(グレーズ層)の短期蓄熱とセラミック基板などの中長期蓄熱といういくつかの要因がある。そして、短期蓄熱はフルカラープリンタにおいて画像のシャープ(輪郭強調)性を低下させる。また、中期蓄熱は濃度の高い印刷後に発生する尾引きなどに影響する。更に、長期蓄熱は同一の画像を複数印刷した場合に最初と最後の濃度が相違するという問題を持っている。
【0004】
上記長期蓄熱はセラミック基板の温度をサーミスタなどで検知して補正することによって改善できる。しかしながら、短期蓄熱と中期蓄熱の両方を同時に補正することは困難である。
【0005】
また、画像のシャープ性を改善するためには、注目画素近傍の発熱体の影響を考慮した補正しかできず、特に高速印刷(例えば、1ラインを1msec程度)を行う場合、ヘッドの熱時定数を200msecとすると約200ライン前までの蓄熱の累積を考慮した補正を行う必要があるが、このような非常に前までの蓄熱を考慮した演算は困難であり、時間も要する。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、短期蓄熱の補正と中期蓄熱の補正を同時に行うことができ、画像のシャープ性を向上させ、尾引きの影響を低減できるサーマルプリンタ及びサーマルヘッドの蓄熱補正方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明のサーマルプリンタは、サーマルヘッドにラインごとの印刷データを出力して記録を行うサーマルプリンタにおいて、前ラインまでのサーマルヘッドの蓄熱による累積データを算出する算出手段と、前記累積データを用いて現ラインの印刷データを補正する補正手段と、前記補正された印刷データを前記サーマルヘッドに出力する出力手段とを具備する。
【0008】
また、好ましくは、前記算出手段は、現ラインの印刷データと前ラインの印刷データと前ラインまでの累積データとを用いて前記現ラインまでの累積データを算出し、前記補正手段は、現ラインの印刷データに現ラインまでの累積データを加算して当該現ラインの印刷データを補正する。
【0009】
また、好ましくは、前記累積データには、前記サーマルヘッドの蓄熱状態に応じた熱時定数が設定される。
【0010】
また、好ましくは、前記熱時定数(K3)は、印刷データの通電時における濃度の立ち上がりの遅れ時間に応じて、第1期間(短期)の蓄熱を補正するための値と当該第1期間より長い第2期間(中長期)の蓄熱を補正するための値が夫々設定される。
【0011】
また、好ましくは、前記現ラインまでの累積データは、前記第1期間の蓄熱を補正するための値を用いて算出されたデータと前記第2期間の蓄熱を補正するための値を用いて算出されたデータとを合成することにより算出される。
【0012】
本発明のサーマルヘッドの蓄熱補正方法は、ラインごとの印刷データを出力して記録を行うサーマルヘッドの蓄熱補正方法において、前ラインまでのサーマルヘッドの蓄熱による累積データを算出する算出工程と、前記累積データを用いて現ラインの印刷データを補正する補正工程と、前記補正された印刷データを前記サーマルヘッドに出力する出力工程とを具備する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好適な一実施形態につき、添付の図面を参照して説明する。
【0014】
尚、以下に説明する実施の形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で下記実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。
【0015】
図1(a)は、本実施形態の昇華型熱転写プリンタの概略構成を示し,(b)は本プリンタにより形成されるドット列と記録紙搬送方向との関係を示しており、記録媒体(記録紙)Pは、回転駆動されるグリップローラ2と、このグリップローラ2に当接する回転自在のピンチローラ3とにより挟持されつつ、グリップローラ2の回転によりライン方向S1に搬送される。
【0016】
また、上記記録紙Pをグリップローラ2及びピンチローラ3により搬送方向S1に搬送させつつ、その搬送方向上流側において記録紙Pと記録ヘッド(サーマルヘッド)5の間にインクリボンRを介在させて、プラテンローラ6と記録ヘッド5とでインクリボンRと記録紙Pとを押圧してインクリボンRのインクを記録紙Pに熱転写することでライン方向S1に対して略直交するドット列方向S2に所定ドットピッチLでドット列Dが形成される。
【0017】
インクリボンRは、供給リールR1から記録紙Pの記録面に供給され、巻取リールR2により巻き取られる。
【0018】
図2は、本実施形態の昇華型熱転写プリンタに搭載されるサーマルヘッドの断面構成を示す図であり、サーマルヘッド5の発熱素子7は、セラミック(アルミナ)基板11上に、発熱体14に通電することにより発生する熱エネルギを基板11側に逃さないための断熱性の高いガラスのグレーズ層12が形成され、このグレーズ層12上に電極13及び発熱体(抵抗体)14が形成されている。また、この電極13及び発熱体14上には表面を保護するための保護膜15が形成されている。
【0019】
サーマルヘッド5は、上記のように構成された発熱素子7が1次元的に複数(例えば、760〜3000素子)配列され、これら発熱素子7の配列方向(ドット列方向S2)に対してライン方向S1に相対的に記録紙Pを搬送しながら、各発熱素子7への通電と搬送とを同期させることによりカラーやモノクロの2次元画像を印刷することができる。
【0020】
グレーズ層12は断熱のために熱伝導率が低く、その内部でも熱が拡散して均一化し難い特性を持つ。
【0021】
図3は、サーマルヘッドの発熱と各構成要素の熱伝導性との関係を説明する図であり、発熱体が発熱すると、その熱はセラミック基板11より熱伝導率の低いグレーズ層12を通り、その後セラミック基板11に伝導して拡散する。ここで、セラミック基板11はグレーズ層12より熱伝導率が高く、発熱体14から離れているために中長期的な蓄熱状態を発生させ、グレーズ層12は熱伝導率が低く、発熱体に近いために短期的な蓄熱状態を発生させる。
【0022】
上記短期的とは蓄熱の影響が短時間であり、図4(a)に示すように、印刷データの通電時における濃度の立ち上がりの遅れが短時間であることを意味している。また、上記中長期的とは蓄熱の影響が中又は長時間であり、図4(b)に示すように、印刷データの通電時における濃度の立ち上がりの遅れが中又は長時間であることを意味している。
【0023】
そして、短期蓄熱はフルカラープリンタにおいて画像のシャープ(輪郭強調)性を低下させる。また、中期蓄熱は濃度の高い印刷後に発生する尾引きなどに影響する。更に、長期蓄熱は同一の画像を複数印刷した場合に最初と最後の濃度が相違するという問題を持っている。
【0024】
本実施形態では、これら短期蓄熱及び中長期蓄熱による濃度の立ち上がりの遅れを補正するために、あるライン数iでの発熱素子の(ドット)位置nにおける印刷データD(i,n)と前ラインi−1の印刷データD(i−1,n)及び現ラインiまでに累積した発熱素子の蓄熱分の変化量を表す累積データΔTs(i−1,n)と、これら各データに対応した補正係数K1、K2、K3とから現ラインiの印刷データ(i,n)を補正するための補正データΔTs(i,n)を下記式1より算出し、この補正データΔTs(i,n)を現ラインiの印刷データD(i,n)に加算することにより印刷データD(i,n)を補正して補正印刷データD’(i,n)を算出する(下記式2)。
【0025】
ΔTs(i,n)=K1・D(i,n)−K2・D(i−1,n)+K3・ΔTs(i−1,n)・・・(1)
D’(i,n)=D(i,n)+ΔTs(i,n)・・・(2)
ここで、K3は熱時定数に応じた係数であり、K3を累積データΔTs(i−1,n)に掛け合わせることで各ドット位置nでの累積的な蓄熱分の変化量に応じて印刷データを補正することができる。
【0026】
図5は本実施形態の蓄熱補正処理を実施するためのサーマルヘッドを駆動する回路ブロック図、図6は図5の回路ブロックによる蓄熱補正処理の流れを示す図であり、画像メモリ16は外部のコンピュータなどからR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の各色ごとの画像データDr(i,n)(iはライン数、nは発熱素子の(ドット)位置),Dg(i,n),Db(i,n)を受け取り、色変換回路17は各色ごとの画像データDr(i,n),Dg(i,n),Db(i,n)をC(シアン)、M(マゼンダ)、Y(イエロー)の各色ごとの印刷データDc(i,n),Dm(i,n),Dy(i,n)に変換すると同時に、これら印刷データDc(i,n),Dm(i,n),Dy(i,n)を現メモリバッファ19に格納する。尚、この時点では前メモリバッファ20に前ラインの印刷データDc(i−1,n),Dm(i−1,n),Dy(i−1,n)が格納され、累積メモリバッファ21には前ラインまでの累積データΔTs(i−1,n)が格納されている。
【0027】
補正データ生成回路18は、現ラインiでの印刷データD(i,n)を現メモリバッファ19から、前ラインi−1の印刷データD(i−1,n)を前メモリバッファ20から、前ラインi−1までの累積データΔTs(i−1,n)を累積メモリバッファ21から夫々読み出し、現ラインiの印刷データ(i,n)を補正するための補正データΔTs(i,n)を上記式1から算出する。
【0028】
印刷データ補正回路22は、上記補正データ生成回路18により算出された現ラインiの補正データΔTs(i,n)を現ラインiの印刷データD(i,n)に加算することにより上記式2から補正印刷データD’(i,n)を算出する。
【0029】
ヘッド制御回路23は、印刷データ補正回路22から1ラインごとの補正印刷データD’(l,n)を読み出し、この補正印刷データD’(l,n)に基づいてサーマルヘッドの各発熱素子に通電して所定の熱エネルギを発生させることにより、記録紙に所定濃度の画像を1ラインごとに形成させる。
【0030】
尚、上記回路ブロックにおいては、色変換後の印刷データDc(i,n),Dm(i,n),Dy(i,n)を用いて補正データΔTs(i,n)を算出しているが、色変換前の画像データDr(i,n),Dg(i,n),Db(i,n)を用いて補正データΔTs(i,n)を算出し、その後に色変換により印刷データDc(i,n),Dm(i,n),Dy(i,n)を生成してもよい。
【0031】
この場合には、補正データ生成回路18は画像メモリ16の後段に設けられる。
【0032】
また、本実施形態では処理スピードを高速にできることから補正データΔTs(i,n)の算出を演算処理回路を用いてハード的に行っているが、上記算出処理をソフトウェアで実現することも可能である。また、外部コンピュータにインストールされるドライバソフトウェアに上記算出処理機能を組み込むことによりプリンタ側に演算処理回路を付加しなくてもよい構成となる。
【0033】
上記実施形態によれば、短期蓄熱の補正と中期蓄熱の補正とを1つの演算式と3つのバッファメモリで実現できる。
[補正データの定義]
次に、上記補正データの定義について説明する。
【0034】
一定の通電を行う場合のサーマルヘッドの蓄熱状態Tsは
Ts∝1−exp(−N/τ)
で表せる。ここで、Nはライン数、τは熱時定数である。
【0035】
従って、この場合の蓄熱補正は、
ΔTs∝exp(−N/τ)
を目安として行えばよい。つまり、このΔTsは飽和蓄熱に対していくら足りないかを補正する相対値である。これは一定の通電を行った場合であり、フルカラー画像の印刷においては各ドットはラインごとに異なる印刷データが印加される、つまり、異なる熱エネルギを発生させることになる。
【0036】
この時のサーマルヘッドの各ドットの蓄熱の変化は前の通電量とこれから通電しようとする通電量の差に対応させればよく、
通電エネルギ(Ep)∝印刷データ(Dp)
として、α{D(i,n)−D(i−1,n)}で蓄熱が進んでいくと考えられる。ここで、D(i,n)はこれから通電しようとするiライン目のnドットでの印刷データ、D(i−1,n)は前に通電したi−1ライン目のnドットでの印刷データ、αは定数である。
【0037】
ここで、印刷データ量に比例して蓄熱が進むと仮定すると、蓄熱分は、
Ts(i,n)=α{D(i,n)−D(i−1,n)}+βTs(i−1,n)
で表せる。ここで、Ts(i−1,n)はi−1ラインまでの蓄熱の累積値であり、βは時間変化率に相当する。
【0038】
上記式を
ΔTs(i,n)=K1・D(i,n)−K2・D(i−1,n)+K3・ΔTs(i−1,n)
とし、補正印刷データD’(i,n)を
D’(i,n)=D(i,n)+ΔTs(i,n)
とする。
【0039】
上記式において、i=1のとき、
ΔTs(1,n)=K1・D(1,n)
となり、i=2以降は、順次
Figure 2004050563
となる。
【0040】
各色ごとの連続した印刷時において、ある1つのドットnでの蓄熱に着目する。ここで、K1=K2とし、同じ印刷データで印刷する場合でD(i,n)=D(i−1,n)とすると、
ΔTs(1,n)=K1・D(1,n)
ΔTs(2,n)=K3・K1・D(1,n)
ΔTs(3,n)=K3・K3・K1・D(1,n)
ΔTs(i,n)=K3(i−1)・K1・D(1,n)
となる。
【0041】
また、指数関数は、
exp(−N/τ)≒X,X=1−1/τ
で表せる。ここでτは熱時定数であり、Nは時間あるいはライン番号である。
【0042】
従って、X=K3とすると、
Figure 2004050563
となる。
【0043】
従って、ΔTs(i,n)はK3をある熱時定数として変化する蓄熱分を表していることになる。
[シミュレーションによる検証結果]
<補正データのシミュレーション結果>
図7及び図8は補正データのシミュレーション結果を夫々示し、印刷データをD(i,n)=255(1≦i≦200)、D(i,n)=127(201≦i≦400)と変化させ、K1=K2=0.156863,K3=0.98とした場合の補正データΔTs(i,n)は図7のようになり、印刷データ(濃度)が変化するラインi=200〜201において中長期的に変化する補正データとなり、図4(b)にも示したように印刷データの通電時における濃度の立ち上がりの遅れが中又は長時間であるときに発生する尾引きなどの影響を低減するのに適した補正データとなる。
【0044】
また、K3=0.8として熱時定数を更に短くした場合には、図8のように印刷データが変化する近傍でのみ変化する短期的な補正データとなり、図4(a)に示したように印刷データの通電時における濃度の立ち上がりの遅れが短時間である輪郭強調処理に適した補正データとなる。
【0045】
上記のように、熱時定数K3を短期蓄熱や中長期蓄熱に応じて適宜設定することにより、短期蓄熱による画像のシャープ(輪郭強調)性の低下を防止でき、中期蓄熱による尾引きなどの影響を低減でき、長期蓄熱による同一の画像を複数印刷した場合に最初と最後の濃度が相違するという問題をも解決できる。
【0046】
次に、短期蓄熱の補正データと中期蓄熱の補正データとを合成した場合について検討する。
【0047】
図9は短期蓄熱の補正データと中期蓄熱の補正データとを合成した値のシミュレーション結果を示しており、中期蓄熱に対する補正データを、
ΔTs1(i,n)=K1・D(i,n)−K2・D(i−1,n)+K3・ΔTs1(i−1,n)
とし、
短期蓄熱に対する補正データを、
ΔTs2(i,n)=K4・D(i,n)−K5・D(i−1,n)+K6・ΔTs(i−1,n)
とすると、補正印刷データD’(i,n)は、
D’(i,n)=D(i,n)+ΔTs1(i,n)+ΔTs2(i,n)
となる。
【0048】
上記のように、短期蓄熱の補正データと中期蓄熱の補正データとを合成することにより、短期蓄熱による画像のシャープ(輪郭強調)性の低下を防止できると同時に、中期蓄熱による尾引きなどの影響を低減できる。
<印刷データのシミュレーション結果>
図11乃至図14は、図10のように印刷データをD(i,n)=250(1≦i≦200)、D(i,n)=100(201≦i≦400)と変化させた場合の上記蓄熱補正処理による印刷データのシミュレーション結果を夫々示し、K1=K2=0,K3=0.98とした場合の補正データΔTs(i,n)は図11のようになる。
【0049】
また、K1=K2=0,K3=1とした場合の印刷データD’(i,n)は図12のようになり、この図12の状態から、K1=0.1,K2=0,K3=0.98として熱時定数を更に短くすると印刷データD’(i,n)は図13のようになり、印刷データ(濃度)がラインi=200〜201において中長期的に変化し、図4(b)にも示したように印刷データの通電時における濃度の立ち上がりの遅れが中又は長時間であるときに発生する尾引きなどの影響を低減することができる。
【0050】
また、図13の状態からK1=0.1,K2=0,K3=0.90として熱時定数を更に短くした場合には、図14のように印刷データが変化する近傍でのみ変化し、図4(a)に示したように印刷データの通電時における濃度の立ち上がりの遅れが短時間である輪郭強調性を改善することができる。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、短期蓄熱の補正と中期蓄熱の補正を同時に行うことができ、画像のシャープ性を向上させ、尾引きの影響を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本実施形態の昇華型熱転写プリンタの概略構成、(b)は本プリンタにより形成されるドット列と記録紙搬送方向との関係を夫々示す図である。
【図2】本実施形態の昇華型熱転写プリンタに搭載されるサーマルヘッドの断面構成を示す図である。
【図3】サーマルヘッドの発熱と各構成要素の熱伝導性との関係を説明する図である。
【図4】(a)は短期蓄熱による濃度の立ち上がりの遅れ状態、(b)は中長期蓄熱による濃度の立ち上がりの遅れ状態を夫々示す図である。
【図5】本実施形態の蓄熱補正処理を実施するためのサーマルヘッドを駆動する回路ブロック図である。
【図6】図5の回路ブロックによる蓄熱補正処理の流れを示す図である。
【図7】本実施形態の蓄熱補正処理により算出される補正データのシミュレーション結果を示す図である。
【図8】本実施形態の蓄熱補正処理により算出される補正データのシミュレーション結果を示す図である。
【図9】本実施形態の蓄熱補正処理により算出される短期蓄熱の補正データと中期蓄熱の補正データとを合成した値のシミュレーション結果を示す図である。
【図10】図11の補正データのシミュレーションと図12〜図14の印刷データのシミュレーションに用いる印刷データを示す図である。
【図11】図10のように印刷データを変化させた場合の蓄熱補正処理により算出される補正データのシミュレーション結果を示す図である。
【図12】図10のように印刷データを変化させた場合の蓄熱補正処理により算出される印刷データのシミュレーション結果を示す図である。
【図13】図10のように印刷データを変化させた場合の蓄熱補正処理により算出される印刷データのシミュレーション結果を示す図である。
【図14】図10のように印刷データを変化させた場合の蓄熱補正処理により算出される印刷データのシミュレーション結果を示す図である。
【符号の説明】
2 グリップローラ
3 ピンチローラ
5 記録ヘッド(サーマルヘッド)
6 プラテンローラ
7 発熱素子
11 セラミック(アルミナ)基板
12 グレーズ層
13 電極
14 発熱体(抵抗体)
15 保護膜
16 画像メモリ
17 色変換回路
18 補正データ生成回路
19 現メモリバッファ
20 前メモリバッファ
21 累積メモリバッファ
22 印刷データ補正回路
23 ヘッド制御回路

Claims (6)

  1. サーマルヘッドにラインごとの印刷データを出力して記録を行うサーマルプリンタにおいて、
    前ラインまでのサーマルヘッドの蓄熱による累積データを算出する算出手段と、
    前記累積データを用いて現ラインの印刷データを補正する補正手段と、
    前記補正された印刷データを前記サーマルヘッドに出力する出力手段とを具備することを特徴とするサーマルプリンタ。
  2. 前記算出手段は、現ラインの印刷データと前ラインの印刷データと前ラインまでの累積データとを用いて前記現ラインまでの累積データを算出し、前記補正手段は、現ラインの印刷データに現ラインまでの累積データを加算して当該現ラインの印刷データを補正することを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリンタ。
  3. 前記累積データには、前記サーマルヘッドの蓄熱状態に応じた熱時定数が設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載のサーマルプリンタ。
  4. 前記熱時定数は、印刷データの通電時における濃度の立ち上がりの遅れ時間に応じて、第1期間の蓄熱を補正するための値と当該第1期間より長い第2期間の蓄熱を補正するための値が夫々設定されることを特徴とする請求項3に記載のサーマルプリンタ。
  5. 前記現ラインまでの累積データは、前記第1期間の蓄熱を補正するための値を用いて算出されたデータと前記第2期間の蓄熱を補正するための値を用いて算出されたデータとを合成することにより算出されることを特徴とする請求項4に記載のサーマルプリンタ。
  6. ラインごとの印刷データを出力して記録を行うサーマルヘッドの蓄熱補正方法において、
    前ラインまでのサーマルヘッドの蓄熱による累積データを算出する算出工程と、
    前記累積データを用いて現ラインの印刷データを補正する補正工程と、
    前記補正された印刷データを前記サーマルヘッドに出力する出力工程とを具備することを特徴とするサーマルヘッドの蓄熱補正方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7600846B2 (en) 2006-02-07 2009-10-13 Mitsubishi Electric Corporation Accumulated-heat correction apparatus and accumulated-heat correction method for thermal head
CN104070830A (zh) * 2013-03-25 2014-10-01 立志凯株式会社 印刷装置

Cited By (2)

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