JP2004047343A - 導電性粒子およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】球状母体粒子の表面に導電性被覆層を有し、異方性導電部材や上下導通材などとして、特に金属電極に対して好適な導電性粒子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】母体粒子と、その表面に形成された導電性被覆層とを有する導電性粒子であって、前記母体粒子の圧縮弾性率が、粒子中心部から表面方向に向かって、段階的または連続的に変化している導電性粒子、および2種以上のポリオルガノシロキサンを有し、粒子中心部から表面方向に向かって、組成が段階的または連続的に変化し、実質上界面を有しない球状傾斜複合粒子を形成後、焼成処理し、次いでこの焼成粒子の表面に導電性被覆層を形成させる前記導電性粒子の製造方法である。
【選択図】    なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性粒子およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、粒径精度に優れ、かつ粒子中心部から表面方向に向かって、硬さが段階的または連続的に変化する球状母体粒子の表面に導電性被覆層を有し、特に液晶表示装置などの金属電極に適した異方性導電部材や上下導通材、あるいは導体形成用ペースト、導電性接着剤などの用途に好適な導電性粒子、及びこのものを効率よく製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の小型化が進み、内部の電子部品が小型化されるようになり、積層型の電子部品が主流となりつつある。このような電子部品に用いられる積層型コンデンサーやインダクターは、導電体層に磁性体層を積層し、一体焼結することにより作製される。そして、前記導電体層の形成には、一般に導電性粉末を含む導体形成用ペーストが用いられている。このような導電体層の形成に用いられる導体形成用ペーストの性能は、得られる積層電子部品の性能に大きな影響を与えるため、該ペーストに含まれる導電性粉末も性能に優れるものが要求される。
一方、液晶表示装置などの電極部には、圧着によって導電性粒子を変形させ、特定の電極間あるいは方向で通電させる異方性導電部材が用いられ、その需要が増加しており、また、上下導通材としての導電性粒子の需要も増えてきている。
【0003】
ところで、液晶表示装置などにおいては、低コスト化および低抵抗化を実現するために、従来用いられてきたITO(錫ドープ酸化インジウム)電極から、金属電極への転換が検討されてきている。しかしながら、金属電極の場合、一般にその表面に不導体層が存在するため、不導体層を突き破って導電性を確保することが必要である。
【0004】
このような状況下で、従来用いられてきた単純な構成の導電性粒子では、電極系の高性能化を実現することが困難になってきた。従来のITOは、金属酸化物特有の特性である硬くて脆いため、柔らかく高変形可能な導電性粒子によって、該ITO電極を傷付けないで、変形によって接地面積を大きくする必要があったが、このような導電性粒子では、金属電極の場合、表面に存在する不導体層の影響で導電性を確保することが困難になってきた。
【0005】
一方、単純に硬い粒子については、金属電極の不導体層を突き破ることができるので、導電性を確保することは可能である。しかしながら、このような硬い粒子はほとんど変形しないため、該粒子を用いた導電性部材、例えば導電性フィルムなどにおいて、そのフィルムの樹脂マトリックスが熱などで膨張した場合、それに追従できず、導通不良を起こすことが懸念される。
【0006】
また、硬い粒子に柔らかい成分を被覆した複合母体粒子に導電層を設けた導電性粒子が提案されている(特許第2921740号)。そして、この導電性粒子においては、母体粒子として、例えばポリスチレン、ポリジビニルベンゼン、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、アクリル−スチレン樹脂、ウレタン樹脂などの合成樹脂の中から、硬い材料と柔らかい材料を適宜選択し、硬い樹脂粒子の表面に、柔らかい樹脂をハイブリダイゼーションの物理的方法により被覆してなる複合粒子が用いられている。しかしながら、このような複合粒子においては、コア樹脂粒子と樹脂被覆層との間に界面が存在し、その界面における密着性及び圧縮変形後の回復性などが不十分であり、かつ製造コストが高くつくなどの問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとで、異方性導電部材や上下導通材などとして特に金属電極に対して好適な、球状母体粒子の表面に導電性被覆層を有する導電性粒子であって、金属電極間にはさまれた場合、変形しつつも金属電極にめり込ませることができ、導通性及び信頼性の高い金属電極系を与えることができる上、圧縮変形後の回復率が高く、かつ母体粒子において、実質上異成分界面が存在せず、しかも低コストで製造し得る導電性粒子を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、圧縮弾性率が粒子中心部から表面方向に向かって段階的または連続的に変化する母体粒子の表面に、導電性被覆層を設けてなる導電性粒子が、その目的に適合し得ること、そしてこの導電性粒子は、特定の構造の有機ケイ素化合物の中から2種以上選び、加水分解、縮合させることにより、2種以上のポリオルガノシロキサンを有し、粒子中心部から表面方向に向って組成が段階的または連続的に変化し、実質上界面を有しない球状傾斜複合粒子を形成させたのち、焼成処理後、その粒子表面に導電性被覆層を形成させることにより、容易に得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)母体粒子と、その表面に形成された導電性被覆層とを有する導電性粒子であって、前記母体粒子の圧縮弾性率が、粒子中心部から表面方向に向かって、段階的または連続的に変化していることを特徴とする導電性粒子、
(2)母体粒子が、異なる有機基を有する2種以上のポリオルガノシロキサンを有し、粒子中心部から表面方向に向かって、組成が段階的または連続的に変化し、実質上界面を有しない球状傾斜複合粒子を焼成してなるものである上記(1)項に記載の導電性粒子、
【0010】
(3)異なる有機基を有する2種以上のポリオルガノシロキサンが、有機成分の熱分解温度が異なる2種からなり、かつその熱分解温度差が50℃以上である上記(2)項に記載の導電性粒子、
(4)有機成分の熱分解温度の低いポリオルガノシロキサンがビニルトリメトキシシランの加水分解縮合物であり、かつ有機成分の熱分解温度の高いポリオルガノシロキサンがメチルトリメトキシシランの加水分解縮合物である上記(3)項に記載の導電性粒子、
【0011】
(5)母体粒子が、10%圧縮弾性率1〜20kN/mm、圧縮変形後の回復率75%以上である上記(2)、(3)または(4)項に記載の導電性粒子、
(6)母体粒子が、平均粒径0.5〜30μmで、かつ粒度分布の変動係数(CV値)が3.0%以下である上記(1)ないし(5)項のいずれか1項に記載の導電性粒子、
(7)導電性被覆層が、2種以上の異種金属層からなる多層構造を有する上記(1)ないし(6)項のいずれか1項に記載の導電性粒子、
【0012】
(8)ケイ素原子に結合した1〜3個の非加水分解性基と3〜1個のアルコキシル基を有する有機ケイ素化合物の中から2種以上を選び、加水分解、縮合させることにより、2種以上のポリオルガノシロキサンを有し、粒子中心部から表面方向に向って組成が段階的または連続的に変化し、実質上界面を有しない球状傾斜複合粒子を形成させたのち乾燥、焼成処理し、次いで、この焼成粒子の表面に導電性被覆層を形成させることを特徴とする上記(1)項に記載の導電性粒子の製造方法、および
(9)上記(1)ないし(7)項のいずれか1項に記載の導電性粒子の外周に、絶縁性被覆層を設けたことを特徴とする粒子、
を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の導電性粒子においては、母体粒子として、圧縮弾性率(硬さ)が粒子中心部から表面方向に向かって、段階的または連続的に変化している粒子が用いられる。このような母体粒子としては、異なる有機基を有する2種以上のポリオルガノシロキサンを有し、粒子中心部から表面方向に向かって、組成が段階的または連続的に変化し、実質上界面を有しない球状傾斜複合粒子を焼成してなるものを、好ましく用いることができる。
【0014】
この母体粒子は、異なる有機基を有する2種以上のポリオルガノシロキサンを有する粒子を焼成することにより得られるが、上記ポリオルガノシロキサンが有機成分の熱分解温度が異なる2種からなり、かつその熱分解温度差が50℃以上であるものが好ましい。そして、(1)有機成分の熱分解温度の低いポリオルガノシロキサンが中心部に向って多くなるように存在し、かつ有機成分の熱分解温度の高いポリオルガノシロキサンが表面側に向って多くなるように存在する球状傾斜複合粒子、あるいは(2)上記とは逆のもの、すなわち、有機成分の熱分解温度の高いポリオルガノシロキサンが中心部に向かって多くなるように存在し、かつ有機成分の熱分解温度の低いポリオルガノシロキサンが表面側に向かって多くなるように存在する球状傾斜複合粒子を焼成してなるもの、いずれであってもよい。
【0015】
上記(1)の球状傾斜複合粒子を焼成したものは、圧縮弾性率が、粒子中心部から表面方向に向かって、段階的または連続的に小さくなっていく粒子となり、一方(2)の球状傾斜複合粒子を焼成したものは、圧縮弾性率が、粒子中心部から表面方向に向かって、段階的または連続的に大きくなっていく粒子となる。本発明においては、導電性粒子の用途に応じて適宜選択されるが、一般的には、(1)の球状傾斜複合粒子を焼成したものが好適である。
【0016】
球状傾斜複合粒子の焼成は、一般には200〜700℃の範囲の温度で行われるが、上記のように、ポリオルガノシロキサンを2種のみ有する場合には、有機成分の熱分解温度の低いポリオルガノシロキサンの熱分解温度より高く、かつ有機成分の熱分解温度の高いポリオルガノシロキサンの熱分解温度より低い温度で行うことが好ましい。
【0017】
また、本発明における母体粒子においては、特に、前記の有機成分の熱分解温度の低いポリオルガノシロキサンがビニルトリメトキシシランの加水分解縮合物であり、かつ有機成分の熱分解温度の高いポリオルガノシロキサンがメチルトリメトキシシランの加水分解縮合物であるものが好ましい。上記ビニルトリメトキシシランの加水分解縮合物であるポリビニルシルセスキシロキサン(PVSO)からなる単独粒子と、メチルトリメトキシシランの加水分解縮合物であるポリメチルシルセスキシロキサン(PMSO)からなる単独粒子を同条件で焼成した場合において、PMSOのメチル基が分解しない条件以下で、かつPVSOのビニル基が一定量以上分解する条件(窒素雰囲気下では、焼成温度が約270℃以上640℃以下の間である。)では、PMSO粒子は低圧縮弾性率を有するが、一方のPVSO粒子は高圧縮弾性率を有し、しかもその温度条件差は、窒素雰囲気下で200℃以上と大きい。したがって、これらのPMSOとPVSOを粒子内部において傾斜的に複合させた粒子を、上記範囲の温度で焼成することにより、所望の物性を有する焼成傾斜複合粒子からなる母体粒子を容易に得ることができる。また、所望の物性を有する粒子を得るための焼成温度幅が大きいため、その温度条件範囲内において、任意の10%圧縮弾性率の粒子を得ることが可能となる。
【0018】
本発明における母体粒子は、10%圧縮弾性率が、一般に1〜20kN/mmの範囲であり、また、圧縮変形後の回復率は、高ければ高い方がよく、通常75%以上、特に80%以上が好ましい。
なお、上記10%圧縮弾性率および回復率は、微小圧縮試験機(島津製作所製MCTE−200)を用い、以下に示す方法で測定した値である。
【0019】
(1)10%圧縮弾性率(n=10)
微小圧縮試験機(島津製作所製MCTE−200)により、試料台上に粒子を散布し、その中の試料粒子1個について、粒子の中心方向に一定の負荷速度で荷重をかけ、荷重−圧縮変位を測定し、粒子径の10%変位時の荷重を求めた。この荷重と粒子の圧縮変位及び粒子径を次式に代入し、10%圧縮弾性率を算出した。なお、負荷速度は、0.284mN/秒(0.029gf/秒)にて行った。
【0020】
E=[3×P10×(1−K)]/[20.5×S1.5×R1.5
[ただし、Eは圧縮弾性率(MPa)、P10は圧縮荷重(N)、Kは粒子のポアソン比(定数0.38)、Sは圧縮変位(mm)、Rは粒子の半径(mm)である。]
【0021】
(2)回復率(n=10)
上記測定機を用いて、同様に試料台上に散布した粒子1個について、粒子中心方向に、反転荷重値(1.96mN=0.2gf)まで負荷を与え、その後原点用荷重値(0.098mN=0.01gf)まで徐荷を行った。この間の荷重−圧縮変位を測定し、原点用荷重値から反転荷重値までの変位をLとし、原点用荷重値から、反転荷重徐荷後の原点用荷重値までの変位をLとし、下記式に代入し、回復率を求めた。なお、この際の負荷速度は0.142mN/秒(0.0145gf/秒)とした。
【0022】
回復率(%)=[(L−L)/L]×100
本発明における母体粒子は、平均粒径が、通常0.5〜30μm、好ましくは2〜10μmであり、また、粒度分布の変動係数(CV値)が、通常3%以下であって、真球状の単分散粒子である。
【0023】
なお、変動係数(CV値)は下式により求められる。
CV値(%)=(粒径の標準偏差/平均粒径)×100
本発明の導電性粒子において、母体粒子として用いられる前記焼成傾斜複合粒子の製造方法としては前記性状を有する焼成傾斜複合粒子が得られる方法であればよく、特に制限はないが、以下に示す本発明の方法に従えば、効率よく所望の焼成傾斜複合粒子を製造することができる。
【0024】
本発明の方法においては、原料として、ケイ素原子に結合した1〜3個の非加水分解性基と3〜1個のアルコキシル基を有する有機ケイ素化合物の中から2種以上を選択して用いる。
上記有機ケイ素化合物としては、一般式(I)
nSi(OR4−n        …(I)
で表される化合物(nは1〜3の整数である)を用いることができる。
【0025】
上記一般式(I)において、Rは炭素数1〜20のアルキル基、(メタ)アクリロイルオキシ基若しくはエポキシ基を有する炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数7〜20のアラルキル基を示す。ここで、炭素数1〜20のアルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、またこのアルキル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。(メタ)アクリロイルオキシ基若しくはエポキシ基を有する炭素数1〜20のアルキル基としては、上記置換基を有する炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、またこのアルキル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。この置換基を有するアルキル基の例としては、γ−アクリロイルオキシプロピル基、γ−メタクリロイルオキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシル基などが挙げられる。炭素数2〜20のアルケニル基としては、炭素数2〜10のアルケニル基が好ましく、また、このアルケニル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このアルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基などが挙げられる。炭素数6〜20のアリール基としては、炭素数6〜10のものが好ましく、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などが挙げられる。炭素数7〜20のアラルキル基としては、炭素数7〜10のものが好ましく、例えばベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。
【0026】
一方、Rは炭素数1〜6のアルキル基であって、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、その例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。nは1〜3の整数であり、Rが複数ある場合、各Rはたがいに同一であってもよいし、異なっていてもよく、またORが複数ある場合、各ORはたがいに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0027】
前記一般式(I)で表されるケイ素化合物の例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0028】
本発明の方法においては、まずこれらの有機ケイ素化合物の中から2種以上選び、加水分解、縮合させることにより、2種以上のポリオルガノシロキサンを有し、粒子中心部から表面方向に向って組成が段階的または連続的に変化し、実質上界面を有しない球状傾斜複合粒子を形成させる。この際、2種以上の有機ケイ素化合物としては、その加水分解縮合物であるポリオルガノシロキサンの熱分解温度が50℃以上異なる2種の有機ケイ素化合物を選択し、用いるのが好ましく、特に前述の理由から、ビニルトリメトキシシランとメチルトリメトキシシランを用いるのが好適である。
【0029】
前記球状傾斜複合粒子は、例えば(1)ケイ素原子に結合した1〜3個の非加水分解性基と3〜1個のアルコキシル基を有する有機ケイ素化合物の中から選ばれた単独または2種以上を含み、かつそれぞれ組成が異なる複数組の有機ケイ素化合物を、二段階以上で加水分解、縮合反応させる方法、あるいは(2)ケイ素原子に結合した1〜3個の非加水分解性基と3〜1個のアルコキシル基を有する有機ケイ素化合物の中から選ばれた2種以上の有機ケイ素化合物を用い、該有機ケイ素化合物を含む水溶液を、その組成を連続的に変化させながら一段階で加水分解、縮合反応させる方法、により製造することができる。上記(1)の方法によれば、2種以上のポリオルガノシロキサンを有し、粒子中心部から表面方向に向って組成が実質上段階的に変化している球状傾斜複合粒子が得られる。一方、(2)の方法によれば、2種以上のポリオルガノシロキサンを有し、粒子中心部から表面方向に向って組成が実質上連続的に変化している球状傾斜複合粒子が得られる。
【0030】
まず、前記(1)の方法における加水分解、縮合反応について説明すると、前記有機ケイ素化合物単独または2種以上の混合物と、アンモニアおよび/またはアミンを含有する水溶液または水と有機溶剤との混合溶剤溶液(以後、この水溶液、混合溶剤溶液を水性溶液と称すことがある。)とを、均一系反応または2層反応、好ましくは実質上混合することなく、2層状態を保持しながら、界面で反応させる。
【0031】
上記アンモニアやアミンは、有機ケイ素化合物の加水分解、縮合反応の触媒である。ここで、アミンとしては、例えばモノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミンなどを好ましく挙げることができる。このアンモニアやアミンは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、毒性が少なく、除去が容易で、かつ安価なことから、アンモニアが好適である。
【0032】
このアンモニアやアミンは、水溶液または水と有機溶剤との混合溶剤溶液として用いられる。ここで、有機溶剤としては、水混和性のものが好ましく、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの低級アルコール類、アセトン、ジメチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテルなどのエーテル類などが挙げられる。
【0033】
アンモニアやアミンの使用量としては特に制限はないが、反応開始前の水層のpHが、7.5〜11.0の範囲になるように選定するのが好ましい。また、反応温度は、原料の有機ケイ素化合物の種類などに左右されるが、一般的には0〜60℃の範囲で選ばれる。
【0034】
次に、上層が実質上消失したのち、上記とは異なる組成の有機ケイ素化合物単独または2種以上の混合物を用い、上記と同様にして2段目の加水分解、縮合反応を行い、さらに、必要に応じ、組成の異なる有機ケイ素化合物単独又は2種以上の混合物を用い、上記と同様の操作を所望回数繰り返す。
最後の加水分解、縮合反応において、上層が消失したのち、反応系にアンモニアおよび/またはアミンを添加し、熟成させる。この熟成は反応の際と同じ温度で行ってもよいし、若干昇温して行ってもよい。
【0035】
熟成終了後は、常法に従い生成した粒子を充分に洗浄したのち、必要ならば分級処理を行い、極大粒子または極小粒子を取り除き、乾燥処理を行う。分級処理方法としては特に制限はないが、粒径により沈降速度が異なるのを利用して分級を行う湿式分級法が好ましい。乾燥処理は、通常常温〜150℃の範囲の温度で行われる。
【0036】
次に、前記(2)の方法における加水分解、縮合反応についてその1例を説明すると、まず、前記有機ケイ素化合物単独または2種以上を含み、かつそれぞれ組成の異なる水溶液2種以上を調製する。次いで、これらの水溶液を、連続的に同一速度で次から次に他の水溶液に加えながら、最後の水溶液を前述のアンモニアおよび/またはアミンを含有する水性溶液中に連続的に、上記と同一速度で滴下する。具体的には、例えば(A)、(B)、(C)及び(D)のそれぞれ組成の異なる有機ケイ素化合物含有水溶液を調製したとする。この場合、連続的に同一速度で(D)を(C)に加え、その(C)を(B)に加え、さらにその(B)を(A)に加えながら、該(A)をアンモニアおよび/またはアミンを含有する水性溶液中に連続的に、上記と同一速度で滴下する。滴下終了後、1〜4時間程度熟成して、加水分解、縮合反応させる。反応温度は、通常0〜60℃の範囲で選ばれる。次に、反応系にアンモニアおよび/またはアミンを添加し、十分に熟成させる。この熟成は反応の際と同じ温度で行ってもよいし、若干昇温して行ってもよい。
【0037】
その後は、前記(1)の場合と同様な操作を行うことにより、所望の球状傾斜複合粒子が得られる。
この方法によれば、反応場に滴下される有機ケイ素化合物含有水溶液の組成が連続的に変化していくので、前記(1)の方法で得られたものが、実質上段階的な傾斜構造を有するのに対し、実質上連続的な傾斜構造を有する粒子が得られる。また、各有機ケイ素化合物をそれぞれ水に溶かし、水溶液として用いるので、反応場における溶媒に対する溶解速度差による影響を、粒子形成において受けなくなるため、傾斜複合構造を前記(1)の2層系の反応よりも作りやすい。
【0038】
このようにして、単分散性の球状傾斜複合粒子を得たのち、焼成処理することにより、焼成傾斜複合粒子からなる母体粒子が得られる。この焼成処理温度は、通常200〜700℃の範囲で選ばれるが、該球状傾斜複合粒子中のポリオルガノシロキサンが2種類のみである場合には、有機成分の熱分解温度の低いポリオルガノシロキサンの熱分解温度より高く、かつ有機成分の熱分解温度の高いポリオルガノシロキサンの熱分解温度より低い範囲の温度で選定するのがよい。また、この焼成処理は、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うことができる。焼成時間は、球状傾斜複合粒子の種類および焼成温度などにより左右され、一概に定めることはできないが、一般的には0.5〜10時間程度である。
このようにして焼成処理終了後、必要ならば分級処理を行い、焼成で合一した粒子を取り除いてもよい。
【0039】
このようにして、10%圧縮弾性率および回復率が所望の範囲にある単分散性の実質上真球状の焼成傾斜複合粒子からなる母体粒子が得られる。
本発明の導電性粒子においては、このようにして得られた母体粒子表面に、通常無電解メッキ法または乾式法により、導電性被覆層を形成させる。この場合、2層以上の異種金属層からなる多層構造を有する導電性被覆層を形成させるのが好ましい。
【0040】
まず、無電解メッキ法による導電性被覆層の形成について説明する。
当該母体粒子の無電解メッキは、通常表面処理工程、触媒担持工程および無電解メッキ処理工程を施すことにより、行われる。前記表面処理工程においては、当該母体粒子に、表面処理剤、例えばアミノシラン系カップリング剤などを用い、常法に従い表面処理が施される。該アミノシラン系カップリング剤の例としては、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらのアミノシラン系カップリング剤は単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0041】
触媒担持工程においては、一般に、触媒粒子として負電荷をもつ塩化第一スズと塩化パラジウムのコロイドを用い、まずキャタリスティングにより、表面処理された母体粒子表面にスズとパラジウムのコロイド物質を析出させ、次いでアクセレーションにより、スズを離脱させ、パラジウムのみを残すことによって、無電解メッキ用触媒(金属触媒)を担持する方法、あるいはセンシタイジング(感応性付与処理)、例えば塩化第一スズ溶液に、表面処理された母体粒子を浸漬させて、該粒子表面に還元力のあるイオン性スズを吸着させる処理を行ったのち、アクチベーション、例えば塩化パラジウム溶液にこの粒子を浸漬して、上記スズの作用でパラジウムを析出させる処理により、無電解メッキ用触媒(金属触媒)を担持する方法を用いることができる。
【0042】
次に、無電解メッキ処理工程は、前記の触媒担持工程を経た母体粒子の表面において、所望の各種金属イオンを還元析出させ、金属皮膜を形成させる工程である。この無電解メッキ方法については特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば10〜60℃程度の所望の金属塩を含む無電解メッキ浴中に、前記の触媒担持工程で得られた母体粒子を2〜30分間程度浸漬することにより、その表面に金属皮膜を形成することができる。
【0043】
前記無電解メッキ浴の組成としては、各種金属塩と共に、還元剤、錯化剤、pH調整剤などを含む組成が挙げられる。この無電解メッキが適用できる金属種としては、ニッケル、銅、コバルト、鉄、銀、金、パラジウムなどが挙げられ、したがって、それらの金属塩としては、例えば硫酸ニッケル、塩化ニッケルなどのニッケル塩、硫酸銅、硝酸銅などの銅塩、硫酸コバルトなどのコバルト塩、塩化鉄、硫酸鉄などの鉄塩、硝酸銀、シアン化銀などの銀塩、シアン化金、塩化金酸などの金塩、塩化パラジウムなどのパラジウム塩等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの金属塩と共に、必要に応じ亜鉛やマンガンなどの可溶性塩も合金成分として用いることができる。
【0044】
還元剤としては、例えば次亜リン酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、ジメチルアミノボラン、ヒドラジン、ホルマリンなどが挙げられ、使用する金属塩の種類によって、適宜選択することができる。具体的には、ニッケル塩と次亜リン酸ナトリウム、ニッケル塩と水素化ホウ素アルカリ、ニッケル塩とヒドラジン、銅塩とホルマリン、金塩と水素化ホウ素アルカリ、銀塩と水素化ホウ素アルカリ、などの組合わせを挙げることができる。
【0045】
また、錯化剤は、金属イオンに対して錯化作用を有する化合物であり、例えばクエン酸、ヒドロキシ酢酸、リンゴ酸、乳酸、グリコン酸またはこれらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩、あるいはグリシンなどのアミノ酸、エチレンジアミン、アルキルアミンなどのアミン類、その他アンモニウム、EDTA、ピロリン酸やその塩などが挙げられる。
【0046】
この無電解メッキ処理においては、異種金属を含む無電解メッキ浴を2種以上用い、2層以上の異種金属皮膜からなる多層金属メッキ層を形成してもよい。例えば、母体粒子表面に、まずニッケルメッキ皮膜を形成したのち、その上に金メッキ皮膜や銀メッキ皮膜を形成することができる。各メッキ皮膜の厚さは、通常5〜200nmの範囲である。このメッキ皮膜の厚さが5nm未満では均一なメッキ皮膜が形成されず、導電性が不十分となるおそれがあるし、200nmを超えると厚さの割には導電性の向上はみられず、むしろコストが高くつき、経済的に不利となる。
【0047】
次に、乾式法による導電性被覆層の形成について説明する。
前記無電解メッキ法の場合は、メッキ廃液などにより、環境に負荷を与えるおそれがあるが、この乾式法においては、このような問題がなく、環境面では好ましい方法である。
【0048】
導電性粒子の場合、導電性被覆層の最外層は金被覆層および/または銀被覆層が好ましいが、母体粒子に対しては、スパッタリングなどの乾式法により、直接金や銀を被覆すると、均一な被覆が行えず、良好な導電性が得られなかったり、あるいは被覆層の母体粒子に対する密着性が不十分で、例えばエポキシ系接着剤などに被覆粒子を分散させた際に、被覆層が容易に剥がれてしまうなどの問題が生じる。
したがって、本発明においては、母体粒子表面に、まず3原子以上の金属合金からなる層を乾式法で形成させるのがよい。
【0049】
本発明においては、前記3原子以上の金属合金として、該合金を実質的に形成する各単体金属の融点が500℃以上の耐熱合金が好ましく用いられる。なお、ここで、合金を実質的に形成する各単体金属とは、合金中に1重量%以上含む金属を指し、それぞれの元素の含有量が1重量%未満では、炭素や、Zn(mp420℃)、Sn(mp232℃)、Pb(mp328℃)などの低融点金属が含まれていてもかまわないことを意味する。また、耐熱合金とは、(1)高温(本発明では200℃前後)で化学的に安定であって、空気中で酸化されにくいこと、(2)高温にて機械的性質がよいこと、(3)使用温度で組織変化が起こらないこと、などの性質を有するものを指す。
【0050】
このような三元系以上の合金としては、Fe基合金としてFe(mp1535℃)−Cr(mp1900℃)−Ni(mp1455℃)系合金(オーステナイト系ステンレス鋼)などを、Ni基合金としてNi−Mo(mp2620℃)−Fe系合金(ハステロイA、ハステロイB)、Ni−Cr−Mo系合金(MAT21、MA45C、MA53C、MA55C)、Ni−Cr−Mo−Fe系合金(ハステロイC、ハステロイN、ハステロイW、クロリメット3)、Ni−Cr−Fe系合金(インコネル)、Ni−Cr−Mo−Cu(mp1083℃)系合金(イリウムB、イリウムR)、Ni−Cr−Fe−Mo系合金(ハステロイF、ハステロイX)、Ni−Si(mp1410℃)−Cu系合金(ハステロイD)などを、Co基合金としてCo(mp1490℃)−Cr−W(mp3407℃)系合金(ステライト)、Co−Cr−Mo系合金(ビタリウム)などを挙げることができる。
【0051】
これらの3原子以上の金属合金の中で、耐酸化性や母体粒子との密着性などの面から、Ni、CrおよびMoの3金属原子を少なくとも含む合金が好ましく、特に5金属原子以上の合金が好適である。
【0052】
単金属や二元系合金は、結晶構造をとりやすく、このような単金属や合金を下地層に用いると、均質な下地層が形成されにくく、下地層は平滑性に劣るものとなる。特に母体粒子が4μm未満である小粒径粒子であると、該粒子の表面平滑性が損なわれたり、凝集が生じやすく、目的である導電性粒子の粒径分布の単分散性が低下することや歩留まりが低下することの原因となる。また、Cu−Zn(mp420℃)合金などの低融点金属を含む合金などを用い、乾式法で下地層を設ける場合、得られる導電性粒子は耐熱性に劣り、高温加工において導電性が低下しやすくなる。
【0053】
前記合金は、乾式法により、母体粒子表面に下地層として被覆されるが、この乾式法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法およびイオンプレーティング法や金属溶射法などを採用することができるが、これらの中でスパッタリング法およびイオンプレーティング法が好ましい。
【0054】
スパッタリング法においては、アルゴンなどの不活性ガスが存在する、10〜1Pa程度の真空中で、一対の電極に直流又は交流電圧を印加し、グロー放電を起こさせ、陰極からイオンの衝撃で各金属原子を飛び出させて、母体粒子表面に付着させ、合金層を形成する。一方、イオンプレーティング法は、上記の真空蒸着法とスパッタリング法とを組み合わせたような蒸着法である。この方法においては、加熱によって放出された蒸発原子を、電界中でイオン化と加速を行い、高エネルギー状態で母体粒子表面に付着させ、合金層を形成する。本発明の製造方法においては、これらの方法の中で、合金層と母体粒子との密着性や合金層の均一性やち密性などの点から、スパッタリング法が用いられる。
【0055】
該合金層の厚さとしては、20〜3000nmの範囲が好ましい。この厚さが20nm未満では母体粒子の表面を均一に被覆することが困難であって、その上に設けられる金および/または銀被覆層が剥離しやすくなるし、3000nmを超えると合金層の形成に時間がかかり、コストが高くつく上、該合金層と粒子表面との密着性が低下する場合がある。この合金層のより好ましい厚さは40〜1500nmであり、特に好ましくは50〜500nmの範囲である。
【0056】
次に、このようにして形成された合金層に、金および/または銀被覆層を形成させる。この金および/または銀被覆層の形成方法としては特に制限されず、前記合金層の形成の場合と同様に乾式法が好ましく、乾式法の中でもPVD法が好適であるが、本発明の製造方法においては、合金層と金および/または銀被覆層との密着性、金および/または銀被覆層の均一性やち密性などの点から、スパッタリング法が用いられる。
【0057】
この金および/または銀被覆層の厚さとしては、5〜100nmの範囲が好ましい。この厚さが5nm未満では均一な被覆層が形成されにくい上、導電性が不十分となるおそれがあるし、100nmを超えると厚さの割には導電性の向上はみられず、むしろ金および/または銀被覆層の形成に時間を要し、コストが高くつき、また金および/または銀被覆層と合金層との密着性が低下する場合がある。この金および/または銀被覆層のより好ましい厚さは10〜80nmであり、特に15〜60nmの範囲が好ましい。また、金および/または銀被覆層の金または銀あるいは金と銀との合計純度としては、導電性などの点から、95%以上が好ましい。
【0058】
また、このようにして、金および/または銀被覆層が形成された粒子からなる粉体に、加熱処理を行うことが好ましい。この処理によって、導電被覆層の被覆時に生じてしまった微細な金属結晶欠陥などを直すことができるためか、粒子の抵抗値が加熱前よりも小さくなることがある。その加熱温度は、50〜300℃程度の範囲内で、適宜、最適な温度、時間を選択して行うのがよいが、実質、50〜200℃、1〜2時間の処理が好ましい。
【0059】
次に、このようにして、金および/または銀被覆層が形成された粒子からなる粉体に、凝集粒子の除去処理を施し、CV値が小さな単分散粒子を得る。前記凝集粒子の除去処理としては特に制限はなく、従来公知の方法、例えば、乾式法の場合は、重力分級、慣性分級、遠心分級などが用いることができる。一方、湿式法の場合は、重力分級、遠心分級などが用いることができる。このような精密分級においては、湿式分級が好ましい。
【0060】
このようにして得られた本発明の導電性粒子は、例えば異方性導電部材、上下導通材、導体形成ペースト用などとして、電子部品分野などに好適に用いられるが、特に金属電極用の異方性導電部材や上下導通材などとして好適である。
本発明はまた、前記導電性粒子の外周に、絶縁性被覆層を設けた粒子をも提供する。
【0061】
前記絶縁性被覆層を構成する材料としては特に制限はなく、金および/または銀被覆層上に絶縁性被覆層を形成し得るものであれば、いかなる材料も用いることができるが、被覆層の絶縁性や形成性などの点から、絶縁性の樹脂が好適である。絶縁性樹脂被覆層の形成方法としては特に制限はなく、メカノケミカル法による物理的に絶縁性樹脂成分を導電性粒子表面に被覆してもよいし、樹脂被覆層形成用塗液を用いて、導電性粒子の外周に絶縁性樹脂被覆層を形成してもよいし、あるいは、導電性粒子の存在下に、単量体を重合させて、該粒子の外周に絶縁性樹脂被覆層を形成してもよい。樹脂被覆層を形成させる場合、該金および/または銀被覆層に、予めカップリング剤などを用いて表面処理を施すことができる。
本発明においては、導電性粒子の外周に設けられる絶縁性被覆層の厚さは、通常0.01〜0.5μm、好ましくは0.05〜0.3μmの範囲で選定される。
【0062】
【実施例】
次に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
参考例1 PMSO単一粒子(非成分傾斜粒子)
300ml容のプラスチック容器に、イオン交換水250mlを入れ、これを磁気攪拌装置によって、約200rpmで攪拌しながら、メチルトリメトキシシラン(MTMS)を25g添加し、混合溶液が透明になるまで攪拌を続けた。次いで1モル/リットル濃度のアンモニア水を1.0ml添加してから約30秒攪拌した後、回転数約60rpmまで下げ、緩やかな攪拌を行った。その後、溶液が白濁し、光学顕微鏡にて観察した結果、ポリメチルシルセスキオキサン(PMSO)粒子が合成されていることが確認された。粒子の成長がほぼ終了したところで、25重量%アンモニア水2ml添加し、その後一夜攪拌を継続し、熟成を行った。その後、遠心分離機によって得られた粒子を分離し、メタノールを投入し、デカンテーションを行った。その後、同様にメタノール投入によるデカンテーションを繰り返し、沈降速度差を利用して、微小粒子及び合一粒子を分級、除去した。そして、得られた粒子を40℃で真空乾燥してPMSO乾燥粉末を得た。
【0063】
得られた粉末をコールターカウンターを用いて粒径分布及び平均粒径を測定した結果、大きな鋭い粒径ピークが一つだけ観察され、そのピークの平均粒径が3.18μm、CV値が1.6%であった。
【0064】
次に、このようにして得られた粒子を小型環状炉にて、窒素雰囲気下で、400〜650℃の各温度で数時間焼成し、表1に示したような性状を有する焼成粒子1−1〜1−4を得た。500℃までの焼成では、ほとんど圧縮弾性率に変化が無いことが確認された。
【0065】
【表1】
Figure 2004047343
【0066】
参考例2 PVSO単一粒子(非成分傾斜粒子)
参考例1において、MTMSをビニルトリメトキシシラン(VTMS)に、1モル/リットル濃度のアンモニア水を0.1mlに変えた以外は、参考例1と同様の操作を行い、PVSO乾燥粉末を得た。
【0067】
得られた粉末を、参考例1と同様に粒径分布及び平均粒径を測定した結果、大きな鋭い粒径ピークが一つだけ観察され、そのピークの平均粒径が3.78μm、CV値が1.9%であった。
次に、このようにして得られた粒子を参考例1と同様に、270〜400℃の各温度で約2時間焼成し、表2に示したような性状を有する焼成粒子2−1〜2−3を得た。270℃付近以上からの焼成によって、圧縮弾性率が変化していくことが確認された。
【0068】
【表2】
Figure 2004047343
【0069】
実施例1
(1)コアが硬く、シェルが柔らかい傾斜複合粒子の合成工程
500ml容量のプラスチック容器に、イオン交換水225mlを入れ、これを磁気攪拌装置によって、約200rpmで攪拌しながら、1モル/リットル濃度のアンモニア水を0.2ml添加してから約30秒攪拌した後、回転数約60rpmまで下げ、緩やかな攪拌を行い、溶液aを作製した。
【0070】
一方、100ml容量のプラスチック容器に、イオン交換水50mlを入れ、これを磁気攪拌装置によって、約200rpmで攪拌しながら、ビニルトリメトキシシラン(VTMS)を7.5g添加し、混合溶液が透明になるまで攪拌を続け、溶液bを作製した。
【0071】
さらに、500ml容量のプラスチック容器に、イオン交換水400mlを入れ、これを磁気攪拌装置によって、約200rpmで攪拌しながら、メチルトリメトキシシラン(MTMS)を60g添加し、混合溶液が透明になるまで攪拌を続け、溶液cを作製した。
【0072】
次いで、溶液cを溶液bに、また溶液bを溶液aに、それぞれチューブポンプにて、約6ml/minの速度で滴下した。溶液aにおいて、溶液が徐々に白濁し、粒子の成長がほぼ終了したところで、25重量%アンモニア水を3ml添加し、その後一夜攪拌を継続し、熟成を行った。その後、遠心分離機によって得られた粒子を分離し、メタノールを投入し、デカンテーションを行った。その後、同様にメタノール投入によるデカンテーションを繰り返し、沈降速度差を利用して、微小粒子及び合一粒子を分級、除去した。そして、得られた粒子を40℃で真空乾燥して乾燥粉末を得た。
得られた粉末を、参考例1と同様に粒径分布及び平均粒径を測定した結果、大きな鋭い粒径ピークが一つだけ観察され、そのピークの平均粒径が3.91μm、CV値が1.8%であった。
【0073】
次に、このようにして得られた粒子を参考例1と同様に、400℃の各温度で2時間焼成して焼成粒子3−1を得た。得られた焼成粒子3−1の平均粒径は、3.89μm、CV値1.8%であった。また、10%圧縮弾性率は6.2kN/mm、回復率は93%であった。
【0074】
(2)導電層被覆工程
上記(1)で得た焼成粒子3−1をスパッタリング法によってハステロイC−22合金を60nmの厚さになるように被覆した後、さらに同法にてAuを40nmの厚さになるように被覆し、導電性粒子を得た。得られた粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)写真観察による粒径測定の結果、平均粒径4.09μm、CV値2.0%であった。
【0075】
透過型の光学顕微鏡で観察したところ、全ての粒子が導電層の被覆によって透過光を遮断したことによって黒色に見える様子であった。次いで、SEMにより5万倍に拡大して観察したところ、ハステロイC−22合金及びAuで構成された被覆物が均一に被覆して表面が平滑である様子が確認できた。さらに粒子1個当たりの導電性を、島津製作所の微小導電性測定装置を用いて測定したところ、10回の測定における抵抗値が5〜15Ω(ブランク約2Ω)と安定していた。なお、ブランクの抵抗値は、測定台と圧子を短絡させた際の抵抗値である。
【0076】
実施例2
実施例1(2)で得た導電性粒子20gと平均粒径0.4μmのポリメチルメタクリレート(PMMA)粉末10gとを混合して、予備的に導電性粒子表面にPMMA粒子を吸着させた。その後、ハイブリダイゼーションシステムNHS−O型(奈良機械製作所社製)を用いて、10000rpm、10分間の条件で処理を行い、表面被覆を行った。
得られた粒子の平均粒径は、4.30μm、CV値2.2%であった。
【0077】
実施例3
(1)コアが柔らかく、シェルが硬い傾斜複合粒子の合成工程
500ml容量のプラスチック容器に、イオン交換水225mlを入れ、これを磁気攪拌装置によって、約200rpmで攪拌しながら、1モル/リットル濃度のアンモニア水を0.4ml添加してから約30秒攪拌した後、回転数約60rpmまで下げ、緩やかな攪拌を行い、溶液aを作製した。
【0078】
一方、100ml容量のプラスチック容器に、イオン交換水50mlを入れ、これを磁気攪拌装置によって、約200rpmで攪拌しながら、MTMSを7.5g添加し、混合溶液が透明になるまで攪拌を続け、溶液bを作製した。
さらに、500ml容量のプラスチック容器に、イオン交換水400mlを入れ、これを磁気攪拌装置によって、約200rpmで攪拌しながら、VTMSを60g添加し、混合溶液が透明になるまで攪拌を続け、溶液cを作製した。
【0079】
次いで、溶液bを溶液aに一気に添加後、15分後に溶液cをそこに、チューブポンプにて、約6ml/minの速度で滴下した。溶液aにおいて、溶液が徐々に白濁し、粒子の成長がほぼ終了したところで、25重量%アンモニア水を3ml添加し、その後一夜攪拌を継続し、熟成を行った。その後、遠心分離機によって得られた粒子を分離し、メタノールを投入し、デカンテーションを行った。その後、同様にメタノール投入によるデカンテーションを繰り返し、沈降速度差を利用して、微小粒子及び合一粒子を分級、除去した。そして、得られた粒子を40℃で真空乾燥して乾燥粉末を得た。
【0080】
得られた粉末を、参考例1と同様に粒径分布及び平均粒径を測定した結果、大きな鋭い粒径ピークが一つだけ観察され、そのピークの平均粒径が4.82μm、CV値が1.5%であった。
【0081】
次に、このようにして得られた粒子を参考例1と同様に、400℃の各温度で2時間焼成して焼成粒子3−3を得た。得られた焼成粒子3−3の平均粒径は、4.81μm、CV値1.5%であった。また、10%圧縮弾性率は8.2kN/mm、回復率は90%であった。
【0082】
(2)導電層被覆工程
上記(1)で得た焼成粒子3−3をスパッタリング法によってハステロイC−22合金を60nmの厚さになるように被覆した後、さらに同法にてAuを40nmの厚さになるように被覆し、導電性粒子を得た。得られた粒子をSEM写真観察による粒径測定の結果、平均粒径5.00μm、CV値1.8%であった。
【0083】
透過型の光学顕微鏡で観察したところ、全ての粒子が導電層の被覆によって透過光を遮断したことによって黒色に見える様子であった。次いで、SEMにより5万倍に拡大して観察したところ、ハステロイC−22合金及びAuで構成された被覆物が均一に被覆して表面が平滑である様子が確認できた。さらに粒子1個当たりの導電性を、島津製作所の微小導電性測定装置を用いて測定したところ、10回の測定における抵抗値が4〜15Ω(ブランク約2Ω)と安定していた。
【0084】
【発明の効果】
本発明の導電性粒子は、圧縮弾性率が、粒子中心部から表面方向に向かって、段階的または連続的に変化している母体粒子の表面に導電性被覆層を設けたものであって、特に、金属電極用の異方性導電部材や上下導通材などとして好適である。
【0085】
例えば、粒子中心部が硬く、表面が柔らかいタイプの粒子は、表面近傍は容易に変形し、かつ一定以上変形させると、中心部が硬いことから金属電極に対してめり込んで不導体層を突破するため、導電性およびその高い信頼性を得ることが見込める。また一方、表面が硬く、中心部が柔らかいタイプの粒子は、変形するものの、表面が硬いために、まず粒子が金属電極にめり込んで、不導体層を突き破りつつ、粒子母体が変形回復性に富む構成であるので、加工中に生じる電極のズレやギャップの広化に対して柔軟に対応できることから、導電性および高い信頼性を見込むことができる。
【0086】
また、中心部から表面にかけて、組成が連続的に変化する成分傾斜構造を有し、実質上異成分間の界面をもたないことから、公知のコアシェル構造をもつ被覆タイプの粒子と比較して、粒子の強度や回復性に優れている。
【0087】
本発明の導電性粒子は、上記のように2つのタイプがあり、電極の種類やその他の状況に応じて適宜選択することができる。
また、本発明の導電性粒子における傾斜複合粒子からなる母体粒子は、公知のコアシェル構造をもつ被覆タイプの母体粒子よりも、簡便で、かつ安価に製造することができる。

Claims (9)

  1. 母体粒子と、その表面に形成された導電性被覆層とを有する導電性粒子であって、前記母体粒子の圧縮弾性率が、粒子中心部から表面方向に向かって、段階的または連続的に変化していることを特徴とする導電性粒子。
  2. 母体粒子が、異なる有機基を有する2種以上のポリオルガノシロキサンを有し、粒子中心部から表面方向に向かって、組成が段階的または連続的に変化し、実質上界面を有しない球状傾斜複合粒子を焼成してなるものである請求項1に記載の導電性粒子。
  3. 異なる有機基を有する2種以上のポリオルガノシロキサンが、有機成分の熱分解温度が異なる2種からなり、かつその熱分解温度差が50℃以上である請求項2に記載の導電性粒子。
  4. 有機成分の熱分解温度の低いポリオルガノシロキサンがビニルトリメトキシシランの加水分解縮合物であり、かつ有機成分の熱分解温度の高いポリオルガノシロキサンがメチルトリメトキシシランの加水分解縮合物である請求項3に記載の導電性粒子。
  5. 母体粒子が、10%圧縮弾性率1〜20kN/mm、圧縮変形後の回復率75%以上である請求項2、3または4に記載の導電性粒子。
  6. 母体粒子が、平均粒径0.5〜30μmで、かつ粒度分布の変動係数(CV値)が3.0%以下である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の導電性粒子。
  7. 導電性被覆層が、2種以上の異種金属層からなる多層構造を有する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の導電性粒子。
  8. ケイ素原子に結合した1〜3個の非加水分解性基と3〜1個のアルコキシル基を有する有機ケイ素化合物の中から2種以上を選び、加水分解、縮合させることにより、2種以上のポリオルガノシロキサンを有し、粒子中心部から表面方向に向って組成が段階的または連続的に変化し、実質上界面を有しない球状傾斜複合粒子を形成させたのち乾燥、焼成処理し、次いで、この焼成粒子の表面に導電性被覆層を形成させることを特徴とする請求項1に記載の導電性粒子の製造方法。
  9. 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の導電性粒子の外周に、絶縁性被覆層を設けたことを特徴とする粒子。
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