JP2004043636A - 水性エマルジョン型接着剤及びこれを用いた積層体 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた接着強度および初期強度、煮沸繰り返し強度を有し、しかも経時的な粘度変化の小さい作業性良好な接着剤を与える水性エマルジョンを提供することを目的とする。
【解決手段】ビニル芳香族単量体、及び(メタ)アクリル酸を含む(メタ)アクリル系単量体を含有する単量体群を重合して得られる、ガラス転移点が−30〜50℃の共重合体と、部分ケン化ポリ酢酸ビニルとを含有する。
【選択図】 なし
【解決手段】ビニル芳香族単量体、及び(メタ)アクリル酸を含む(メタ)アクリル系単量体を含有する単量体群を重合して得られる、ガラス転移点が−30〜50℃の共重合体と、部分ケン化ポリ酢酸ビニルとを含有する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ビニル芳香族単量体及び(メタ)アクリル系単量体を含有する単量体群を重合して得られる水性エマルジョン型接着剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
水溶性高分子を含有する水性エマルジョン、及びイソシアネート系化合物を主成分とする接着剤は、特開昭48−94739号公報や同50−69139号公報に示されているように、従来のアミノプラスト系接着剤とは異なりホルマリンの発生がなく、常温で比較的短時間圧締するだけで、極めて高い接着強度と耐水性が得られる事から、木材用接着剤として賞用されている。また、ポリビニルアルコールを保護コロイド(分散剤)としたポリ酢酸ビニルエマルジョン及び多価イソシアネート化合物よりなる耐水性接着剤組成物が、特開平3−33178号公報に開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、最近、接着する対象の拡大とともに、接着性能レベルをさらに向上する必要も生じてきている。具体的には、構造用接着剤としては、更に高度な耐久性が要求されること、また、個々の用途でも初期接着性の一層の向上を要求される場合がある。
【0004】
後者の場合、ポリビニルアルコールを分散剤とする酢酸ビニル系樹脂の水性エマルジョンを多用すると、初期接着性は向上するものの、煮沸繰り返し強度が十分でないという問題があった。逆に、煮沸繰り返し強度が良好なSBRラテックス系接着剤は、初期接着性が不十分で、また多価イソシアネート化合物を配合した二液配合物は可使時間が短く増粘ゲル化現象の発生等、作業性に問題がある。
【0005】
そこで、この発明は、上記従来の技術における問題点を解消し、優れた接着強度および初期強度、煮沸繰り返し強度を有し、しかも経時的な粘度変化の小さい作業性良好な接着剤を与える水性エマルジョンを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明は、ビニル芳香族単量体、及び(メタ)アクリル酸を含む(メタ)アクリル系単量体を含有する単量体群を重合して得られる、ガラス転移点が−30〜50℃の共重合体と、部分ケン化ポリ酢酸ビニルとを含有する水性エマルジョン型接着剤を用いることにより、上記の課題を解決したものである。
【0007】
ビニル芳香族単量体、及び(メタ)アクリル酸を含む(メタ)アクリル系単量体を含有する単量体群を重合して得られる所定のガラス転移点を有する共重合体と、部分ケン化ポリ酢酸ビニルとを含有する水性エマルジョン型接着剤を用いるので、経時的な粘度変化が小さく、良好な作業性を有し、しかも優れた接着強度、初期強度、煮沸繰り返し強度を示して、すべての点で満足する接着剤が得られる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を説明する。
この発明にかかる水性エマルジョン型接着剤は、ビニル芳香族単量体、及び(メタ)アクリル酸を含む(メタ)アクリル系単量体を含有する単量体群を重合して得られる共重合体と、部分ケン化ポリ酢酸ビニルとを含有するものである。
【0009】
上記ビニル芳香族単量体とは、芳香族を含むビニル系単量体をいい、例として、スチレン、α−メチルスチレン等があげられる。
【0010】
上記(メタ)アクリル系単量体とは、(メタ)アクリル基を含有する単量体をいい、(メタ)アクリル酸を必須成分として含む。この(メタ)アクリル酸としては、アクリル酸及び/又はメタクリル酸があげられ、この中でもアクリル酸が好ましい。
【0011】
上記(メタ)アクリル酸以外の(メタ)アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル等があげられる。この(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等があげられる。この中でもメタクリル酸メチル、アクリル酸ブチルがより好ましい。なお、上記の(メタ)アクリル系とは、アクリル系又はメタクリル系を意味する。
【0012】
上記単量体群中のビニル芳香族単量体の含有量は、20〜80重量%がよく、40〜70重量%が好ましい。20重量%未満だと、煮沸繰り返し強度等、耐水性が不足する場合がある。一方、80重量%を超えると、成膜性不良により、充分な接着性が得られない場合がある。
【0013】
上記単量体群中の(メタ)アクリル酸の含有量は、0.1〜5重量%が好ましく、0.3〜3重量%が好ましい。0.1重量%より少ないと、重合安定性及び反応性が不足し、得られる水性エマルジョン型接着剤の乳化状態が不安定となったり、反応転化率が不十分となる場合がある。一方、5重量%より多いと、耐水接着性や煮沸繰り返し強度が低下する場合がある。
【0014】
上記単量体群中の(メタ)アクリル酸以外の(メタ)アクリル系単量体の含有量は、19〜79.9重量%がよく、30〜70重量%が好ましい。19重量%より少ないと、成膜性が不足して、十分な接着性が得られないことがある。一方、79.9重量%より多いと、煮沸繰返し強度等、耐水性が不足する傾向となる。
【0015】
上記単量体群には、上記の各単量体に加えて、共重合可能な他の単量体を、必要に応じて含有させていてもよい。この例としては、具体的にはα−メチルスチレン、クロロスチレン等の芳香族ビニル単量体、マレイン酸、無水マレイン酸、コハク酸、イタコン酸等のα、β―不飽和ジカルボン酸類、(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド等のアクリルアミド類、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類、スルホン酸アリル、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル化合物等があげられる。
【0016】
上記部分ケン化ポリ酢酸ビニルは、上記単量体群を共重合、特に乳化重合する際に、保護コロイドとして用いられる。この部分ケン化ポリ酢酸ビニルの平均重合度は、100〜3000が好ましく、300〜1500がより好ましい。100より小さいと、煮沸繰返し強度等の耐水性が悪化する傾向となる。一方、3000より大きいと、十分な重合安定化効果が得られないことがある。
【0017】
また、上記部分ケン化ポリ酢酸ビニルの平均ケン化度は、80〜98モル%がよく、85〜93モル%が好ましい。80モル%より小さかったり、98モル%より大きかったりすると、十分な乳化重合安定性が得られないことがある。
【0018】
上記部分ケン化ポリ酢酸ビニルの中でも、その末端をチオール基で変性させた末端チオール基変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルが、そのチオール基の反応性により、単量体との反応が進んで、安定な水性エマルジョンが得られる点でより好ましい。この部分ケン化ポリ酢酸ビニルは、例えばチオ酢酸のようなチオール酸の存在下で酢酸ビニルを重合して得られたチオール基含有ポリ酢酸ビニルを常法により部分ケン化することによって製造することができる。
【0019】
上記部分ケン化ポリ酢酸ビニルの使用量としては、上記単量体群100重量部あたり、固形分で0.5〜10重量部がよく、1〜8重量部が好ましい。0.5重量部未満では、充分な乳化重合安定性が得られず、一方、10重量部以上では、煮沸繰り返し強度などの耐水性が低下する傾向になる。
【0020】
上記の乳化重合において使用させる保護コロイドとして、上記部分ケン化ポリ酢酸ビニルに加えて、アルギン酸ソーダ、カルボキシメチルセルローズ、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、スチレン・マレイン酸共重合樹脂等を、必要に応じて加えることができる。
【0021】
上記単量体群の重合方法としては、一般的な乳化重合法を用いることができ、具体的には、下記の方法で製造することができる。すなわち、攪拌翼と還流冷却器の付いた反応釜にイオン交換水を仕込み、部分ケン化ポリ酢酸ビニルを含む保護コロイドを添加し、加温・溶解させる。次に、反応釜内を窒素雰囲気とした後、40〜80℃程度に調整し、重合触媒として過硫酸塩、過酸化水素水などの酸化剤、次亜硫酸ナトリウム等の還元剤を添加し、上記単量体群を連続的に滴下して乳化重合することにより、共重合体を含む水性エマルジョン型接着剤が製造される。
【0022】
上記の乳化重合に際しては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系などの界面活性剤を、この発明の目的及び効果を阻害しない範囲で使用することができる。上記アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキル(アリール)エーテルのスルホン酸アンモニウム又はナトリウム塩、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム塩等が挙げられる。また、上記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。
【0023】
上記界面活性剤の使用量は、使用される単量体100重量部あたり、1重量部以下がよく、0.5重量部以下が好ましい。1重量部より多いと、この発明で得られる接着剤の可使時間が短くなり、充分な作業性改善効果が得られない場合がある。
【0024】
上記の乳化重合方法で製造される共重合体のガラス転移点は、−30〜50℃がよく、−20〜30℃が好ましい。−30℃より低いと、耐熱性が低下し、一方、50℃より高いと、接着性が低下する傾向があるので好ましくない。なお、上記単量体を組み合わせて用いる場合のガラス転移温度は、各単量体の単独重合体のガラス転移温度から、FOXの式により求めることができる。
【0025】
上記の水性エマルジョン型接着剤には、上記の共重合体及び部分ケン化ポリ酢酸ビニルに加えて、多価イソシアネート化合物等を含有させることができる。この多価イソシアネート化合物等を含有させることにより、接着強度、煮沸繰返し強度を一層向上させることができる。
【0026】
上記多価イソシアネート化合物とは、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物をいい、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、水素化トリメチロールプロパン・TDIアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(ジフェニルイソシアネート)(MDI)、水素化MDI、重合MDI、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等があげられる。
【0027】
さらに、上記多価イソシアネート化合物として、ポリオールに過剰のポリイソシアネートで予めポリマー化した末端基がイソシアネート基をもつプレポリマーを用いてもよく、さらに、2種以上の多価イソシアネート化合物を用いてもよい。
【0028】
上記水性エマルジョン型接着剤における上記共重合体と多価イソシアネート化合物の混合比は、上記共重合体100重量部に対し、上記多価イソシアネート化合物は、固形分で5〜150重量部がよく、20〜100重量部が好ましい。5重量部より少ないと、十分な接着強度、煮沸繰返し強度が得られないことがある。一方、150重量部より多くてもよいが、添加量を増加したことに見合う効果の増大が得られず、経済的ではない。
【0029】
上記水性エマルジョン型接着剤には、部分ケン化ポリ酢酸ビニルをさらに配合するのが好ましい。また、必要に応じて、他のポリマーの水性エマルジョンを接着剤としての性能を低下せしめない範囲で含有させてもよい。このような水性エマルジョンとしては、ポリブタジエンエマルジョン、スチレン・ブタンジエン共重合体エマルジョン、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体エマルジョン、ポリ(メタ)アクリル酸エステルエマルジョン、ポリ塩化ビニルエマルジョン、ポリクロロプレンエマルジョン、ポリ塩化ビニリデンエマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、エチレン−酢酸ビニルー塩化ビニル三元共重合体エマルジョン等の水性エマルジョンがあげられる。
【0030】
この中でも、部分ケン化ポリ酢酸ビニルやポリ(メタ)アクリル酸エステルエマルジョン等のイソシアネート基と反応する官能基、例えば、水酸基やカルボキシル基等を含有する高分子化合物の水性エマルジョンが好ましい。
【0031】
上記水性エマルジョン型接着剤には、さらに、例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、クレー、カオリン、タルク、炭酸カルシウム等の充填剤、防腐剤、防錆剤、消泡剤、発泡剤、増粘剤、粘度調整剤、難燃剤、酸化チタン等の顔料等の配合剤を含有せしめてもよい。
【0032】
上記水性エマルジョン型接着剤を多孔質素材に塗工することにより、上記水性エマルジョン型接着剤からなる接着剤層、及び多孔質素材からなる層を有する積層体が得られる。上記多孔質素材としては、例えば、綿、麻、絹等の天然繊維、ビスコースレーヨン、酢酸セルロース等の化学繊維、紙、布、木材等があげられる。
【0033】
上記積層体を構成する接着剤層の外側には、もう1つの層を設けてもよい。この層としては、上記と同様の多孔質素材であってもよく、また、例えば、鉄、鋼鉄、金、銀、銅、アルミニウム等の金属、ガラス、石膏、陶磁器、セラミックス等の無機物、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミド、エポキシ、ポリウレタン、ABS、ゴム等のプラスチックス、あるいは合成繊維、繊維強化複合材料、無機充填材等を含有するプラスチックス等の複合材料等の非多孔質素材層であってもよい。
【0034】
上記積層体を製造する際における水性エマルジョン型接着剤の塗工方法としては、例えば、はけ塗り、タンポ塗り、吹き付け塗り、スプレー塗り、静電塗り、ローラ塗り、カーテンフロー塗り、流し塗り、浸し塗り、電着塗り、粉体塗装、ロールコータ塗り、ブレードコータ塗り、スクリーン塗り、スピンコーターを用いる方法等があげられる。
【0035】
上記積層体における接着剤層の塗布量は、100〜500g/m2がよく、200〜400g/m2が好ましい。厚みが上記範囲を満たすと、接着性が向上する傾向にあるので好ましい。
【0036】
上記積層体は、例えば、集成化粧単板、構造用集成材、造作用集成材等の木質積層体、複合フロア等の床材、断熱パネル等の木質複合材、紙、繊維、木材、金属類、無機質材、各種プラスチックス等の複合材等に使用することができる。中でも、木材同士を接着した集成材等の木質積層体に好適に使用される。
【0037】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明する。まず、実施例及び比較例で行った試験及び評価方法、並びに使用試薬について説明する。
【0038】
[評価方法]
<常態接着強度>
実施例及び比較例で得られた積層体を、20℃×60%RHで7日間養生した後、そのままの状態でJIS K 6852に準拠して圧縮剪断接着強度を測定した。
【0039】
<初期接着強度>
実施例及び比較例で得られた積層体を、ただちにJIS K 6853に準拠して、圧縮時間20分の圧縮剪断接着強度を測定した。
【0040】
<煮沸繰返し強度>
実施例及び比較例で得られた積層体を、20℃×60%RHで7日間養生した後、沸騰水中に4時間浸漬し、60℃オーブン中で20時間乾燥し、さらに、沸騰水中に4時間浸漬した後、常温水に15分間以上浸漬し、試験片を常温まで冷却し、試験片が濡れたままの状態でJIS K 6852に準拠して圧縮剪断接着強度を測定した。
【0041】
<作業性>
接着剤調整直後の接着剤の25℃における粘度に対し、90分経過後の接着剤の増粘倍率を測定し、下記の基準で評価した。
○:90分経過後の接着剤の増粘倍率が2倍以下
△:90分経過後の接着剤の増粘倍率が2〜3倍
×:90分経過後の接着剤の増粘倍率が3倍以上
【0042】
<材破率>
上記の常態接着強度試験及び煮沸繰返し強度試験を行った際の積層体の剥離面を観察し、剥離面積の全てが樺材柾目板の破壊面であれば100%、全てが接着剤と樺材柾目板との界面であれば0%とし、剥離面の樺材柾目板の破壊面が占める割合を算出し、材破率を算出した。
【0043】
<ガラス転移温度(以下、「Tg」と略する)>
共重合物のガラス転移温度は、単量体の単独重合体のガラス転移温度から、FOXの式により求めた。
【0044】
[使用試薬]
・スチレン…和光純薬(株)製:試薬特級(単独重合体のTg:100℃、以下、「St」と略する。)
・アクリル酸n−ブチル…和光純薬(株)製:試薬特級(単独重合体のTg:−52℃、以下、「BA」と略する。)
・メタクリル酸メチル…和光純薬(株)製:試薬特級(単独重合体のTg:105℃、以下、「MMA」と略する。)
・アクリル酸…和光純薬(株)製:試薬特級(単独重合体のTg:106℃、以下、「AA」と略する。)
・メタクリル酸ヒドロキシエチル…和光純薬(株)製:試薬特級(単独重合体のTg:85℃、以下、「HEMA」と略する。)
【0045】
・チオール変性部分ケン化ポリ酢酸ビニル…クラレ(株)製:M−205(重合度500、ケン化度約88モル%、以下、「M−205」と略する。)
・チオール変性部分ケン化ポリ酢酸ビニル…クラレ(株)製:M−215(重合度1500、ケン化度約88モル%、以下、「M−215」と略する。)
・アニオン系界面活性剤…ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルスルホン酸アンモニウム塩(三洋化成(株)製:エレミノールES−70、80%有効成分、以下、「アニオン系」と略する。)
・ノニオン系界面活性剤…ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル(三洋化成(株)製:ノニポール200、100%有効成分、以下、「ノニオン系」と略する。)
なお、上記において、ガラス転移点(Tg)は、エマルジョン工業会の指定値を用いた。
・ポリメチレンポリイソシアネート…住友バイエルウレタン(株)製:スミジュール44V−20(以下、「44V−20」と略する。)
【0046】
(実施例1)
[水性エマルジョンの製造]
攪拌翼と還流冷却器のついた反応釜に水110重量部と、保護ポリマーとしてM−205を2.5重量部、及びM−215を2.5重量部仕込んで昇温溶解後、反応釜内を窒素ガスで置換し、75℃まで調整した。次に、過硫酸カリウム0.37重量部を溶解した水溶液と次亜硫酸ナトリウム0.2重量部を溶解した水溶液を添加した直後に、単量体としてSt55重量部、BA44.5重量部、及びAA0.5重量部からなる単量体群溶液を連続滴下し、重合を開始させ、反応釜の液温を75℃に維持しながら、ほぼ4時間かけて単量体群溶液を滴下し重合を行った。更に80℃で3時間熟成した後、冷却し生成した水性エマルジョンを取り出した。得られた水性エマルジョンの固形分は48.7%、粘度7450mPa.S、pH2.5の性状であった。
【0047】
[接着剤及び積層体の製造]
得られた水性エマルジョンと部分ケン化酢酸ビニル((株)クラレ製;ポバール217)15重量%水溶液、及び炭酸カルシウム(日東粉化(株)製:NS100)を見かけ(有姿)の重量比で、44/30/30の割合で配合したものを主剤とした。この主剤100重量部に対し、多価イソシアネートとして44V−20を15重量部を添加・混合して水性エマルジョン型接着剤を得た。
次に、2片の樺材柾目板(10mm×25mm×30mm、含水量8%)の各片面に、それぞれ120g/m2ずつ得られた水性エマルジョン型接着剤を塗布し、塗布面同士を貼り合せ、所定の条件で圧締して積層体を得た。常態接着強度及び煮沸繰返し強度測定用の積層体の圧締条件は、0.8MPa×24時間であり、初期接着性測定の積層体の圧締条件は、0.8MPa×20分間である。
得られた水性エマルジョン型接着剤の作業性、及び積層体の接着強度を、上記の評価方法にしたがって評価した。その結果を表1に示す。
【0048】
(実施例2〜3、比較例1〜2)
表1に記載の配合割合とした以外は、実施例1と同様にして水性エマルジョン型接着剤を作製した。得られた水性エマルジョン型接着剤を用いて、上記の評価方法にしたがって評価した。その結果を表1に示す。
【0049】
(比較例3)
攪拌翼と還流冷却器のついた反応釜に水60重量部を仕込んだ。別途容器に水40重量部に上記のアニオン系界面活性剤1重量部とノニオン系界面活性剤0.2重量部を溶解した水溶液に、単量体のSt52重量部、BA44.5重量部、HEMA3重量部、及びAA0.5重量部を添加して、ホモミキサーを使用して攪拌混合し乳化液を作製した。次に、反応釜内を窒素ガスで置換し、75℃まで昇温した後、過硫酸カリウム0.37重量部を溶解した水溶液と次亜硫酸ナトリウム0.2重量部を溶解した水溶液を添加した直後に、前記の別途作製した乳化液を反応釜に連続的に滴下して、重合を開始させ、反応釜の液温を75℃に維持しながら、ほぼ4時間かけて乳化液を滴下し重合を続けた。更に80℃で3時間熟成した後、冷却し生成した水性エマルジョンを取り出した。得られた水性エマルジョンの固形分は50.1%、粘度17mPa.s、pH2.2の性状であった。
得られた水性エマルジョンを用いて、実施例1と同様にして、水性エマルジョン型接着剤を得た。得られた水性エマルジョン型接着剤を用いて、上記の評価方法にしたがって評価した。その結果を表1に示す。
【0050】
(比較例4,5)
表1に記載の配合割合とした以外は、比較例3と同様にして水性エマルジョン型接着剤を作製した。得られた水性エマルジョン型接着剤を用いて、上記の評価方法にしたがって評価した。その結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
【発明の効果】
この発明にかかる水性エマルジョン型接着剤は、ビニル芳香族単量体、及び(メタ)アクリル酸を含む(メタ)アクリル系単量体を含有する単量体群を重合して得られる所定のガラス転移点を有する共重合体と、部分ケン化ポリ酢酸ビニルとを含有する水性エマルジョン型接着剤を用いるので、経時的な粘度変化が小さく、良好な作業性を有し、しかも優れた接着強度、初期強度、煮沸繰り返し強度を有する。
【0053】
また、この水性エマルジョン型接着剤と多孔質材料からなる積層体は、集成化粧単板、構造用集成材、造作用集成材等の木質積層体、複合フロアなどの床材、断熱パネルなどの木質複合材などに使用し得る。
【発明の属する技術分野】
この発明は、ビニル芳香族単量体及び(メタ)アクリル系単量体を含有する単量体群を重合して得られる水性エマルジョン型接着剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
水溶性高分子を含有する水性エマルジョン、及びイソシアネート系化合物を主成分とする接着剤は、特開昭48−94739号公報や同50−69139号公報に示されているように、従来のアミノプラスト系接着剤とは異なりホルマリンの発生がなく、常温で比較的短時間圧締するだけで、極めて高い接着強度と耐水性が得られる事から、木材用接着剤として賞用されている。また、ポリビニルアルコールを保護コロイド(分散剤)としたポリ酢酸ビニルエマルジョン及び多価イソシアネート化合物よりなる耐水性接着剤組成物が、特開平3−33178号公報に開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、最近、接着する対象の拡大とともに、接着性能レベルをさらに向上する必要も生じてきている。具体的には、構造用接着剤としては、更に高度な耐久性が要求されること、また、個々の用途でも初期接着性の一層の向上を要求される場合がある。
【0004】
後者の場合、ポリビニルアルコールを分散剤とする酢酸ビニル系樹脂の水性エマルジョンを多用すると、初期接着性は向上するものの、煮沸繰り返し強度が十分でないという問題があった。逆に、煮沸繰り返し強度が良好なSBRラテックス系接着剤は、初期接着性が不十分で、また多価イソシアネート化合物を配合した二液配合物は可使時間が短く増粘ゲル化現象の発生等、作業性に問題がある。
【0005】
そこで、この発明は、上記従来の技術における問題点を解消し、優れた接着強度および初期強度、煮沸繰り返し強度を有し、しかも経時的な粘度変化の小さい作業性良好な接着剤を与える水性エマルジョンを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明は、ビニル芳香族単量体、及び(メタ)アクリル酸を含む(メタ)アクリル系単量体を含有する単量体群を重合して得られる、ガラス転移点が−30〜50℃の共重合体と、部分ケン化ポリ酢酸ビニルとを含有する水性エマルジョン型接着剤を用いることにより、上記の課題を解決したものである。
【0007】
ビニル芳香族単量体、及び(メタ)アクリル酸を含む(メタ)アクリル系単量体を含有する単量体群を重合して得られる所定のガラス転移点を有する共重合体と、部分ケン化ポリ酢酸ビニルとを含有する水性エマルジョン型接着剤を用いるので、経時的な粘度変化が小さく、良好な作業性を有し、しかも優れた接着強度、初期強度、煮沸繰り返し強度を示して、すべての点で満足する接着剤が得られる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を説明する。
この発明にかかる水性エマルジョン型接着剤は、ビニル芳香族単量体、及び(メタ)アクリル酸を含む(メタ)アクリル系単量体を含有する単量体群を重合して得られる共重合体と、部分ケン化ポリ酢酸ビニルとを含有するものである。
【0009】
上記ビニル芳香族単量体とは、芳香族を含むビニル系単量体をいい、例として、スチレン、α−メチルスチレン等があげられる。
【0010】
上記(メタ)アクリル系単量体とは、(メタ)アクリル基を含有する単量体をいい、(メタ)アクリル酸を必須成分として含む。この(メタ)アクリル酸としては、アクリル酸及び/又はメタクリル酸があげられ、この中でもアクリル酸が好ましい。
【0011】
上記(メタ)アクリル酸以外の(メタ)アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル等があげられる。この(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等があげられる。この中でもメタクリル酸メチル、アクリル酸ブチルがより好ましい。なお、上記の(メタ)アクリル系とは、アクリル系又はメタクリル系を意味する。
【0012】
上記単量体群中のビニル芳香族単量体の含有量は、20〜80重量%がよく、40〜70重量%が好ましい。20重量%未満だと、煮沸繰り返し強度等、耐水性が不足する場合がある。一方、80重量%を超えると、成膜性不良により、充分な接着性が得られない場合がある。
【0013】
上記単量体群中の(メタ)アクリル酸の含有量は、0.1〜5重量%が好ましく、0.3〜3重量%が好ましい。0.1重量%より少ないと、重合安定性及び反応性が不足し、得られる水性エマルジョン型接着剤の乳化状態が不安定となったり、反応転化率が不十分となる場合がある。一方、5重量%より多いと、耐水接着性や煮沸繰り返し強度が低下する場合がある。
【0014】
上記単量体群中の(メタ)アクリル酸以外の(メタ)アクリル系単量体の含有量は、19〜79.9重量%がよく、30〜70重量%が好ましい。19重量%より少ないと、成膜性が不足して、十分な接着性が得られないことがある。一方、79.9重量%より多いと、煮沸繰返し強度等、耐水性が不足する傾向となる。
【0015】
上記単量体群には、上記の各単量体に加えて、共重合可能な他の単量体を、必要に応じて含有させていてもよい。この例としては、具体的にはα−メチルスチレン、クロロスチレン等の芳香族ビニル単量体、マレイン酸、無水マレイン酸、コハク酸、イタコン酸等のα、β―不飽和ジカルボン酸類、(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド等のアクリルアミド類、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類、スルホン酸アリル、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル化合物等があげられる。
【0016】
上記部分ケン化ポリ酢酸ビニルは、上記単量体群を共重合、特に乳化重合する際に、保護コロイドとして用いられる。この部分ケン化ポリ酢酸ビニルの平均重合度は、100〜3000が好ましく、300〜1500がより好ましい。100より小さいと、煮沸繰返し強度等の耐水性が悪化する傾向となる。一方、3000より大きいと、十分な重合安定化効果が得られないことがある。
【0017】
また、上記部分ケン化ポリ酢酸ビニルの平均ケン化度は、80〜98モル%がよく、85〜93モル%が好ましい。80モル%より小さかったり、98モル%より大きかったりすると、十分な乳化重合安定性が得られないことがある。
【0018】
上記部分ケン化ポリ酢酸ビニルの中でも、その末端をチオール基で変性させた末端チオール基変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルが、そのチオール基の反応性により、単量体との反応が進んで、安定な水性エマルジョンが得られる点でより好ましい。この部分ケン化ポリ酢酸ビニルは、例えばチオ酢酸のようなチオール酸の存在下で酢酸ビニルを重合して得られたチオール基含有ポリ酢酸ビニルを常法により部分ケン化することによって製造することができる。
【0019】
上記部分ケン化ポリ酢酸ビニルの使用量としては、上記単量体群100重量部あたり、固形分で0.5〜10重量部がよく、1〜8重量部が好ましい。0.5重量部未満では、充分な乳化重合安定性が得られず、一方、10重量部以上では、煮沸繰り返し強度などの耐水性が低下する傾向になる。
【0020】
上記の乳化重合において使用させる保護コロイドとして、上記部分ケン化ポリ酢酸ビニルに加えて、アルギン酸ソーダ、カルボキシメチルセルローズ、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、スチレン・マレイン酸共重合樹脂等を、必要に応じて加えることができる。
【0021】
上記単量体群の重合方法としては、一般的な乳化重合法を用いることができ、具体的には、下記の方法で製造することができる。すなわち、攪拌翼と還流冷却器の付いた反応釜にイオン交換水を仕込み、部分ケン化ポリ酢酸ビニルを含む保護コロイドを添加し、加温・溶解させる。次に、反応釜内を窒素雰囲気とした後、40〜80℃程度に調整し、重合触媒として過硫酸塩、過酸化水素水などの酸化剤、次亜硫酸ナトリウム等の還元剤を添加し、上記単量体群を連続的に滴下して乳化重合することにより、共重合体を含む水性エマルジョン型接着剤が製造される。
【0022】
上記の乳化重合に際しては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系などの界面活性剤を、この発明の目的及び効果を阻害しない範囲で使用することができる。上記アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキル(アリール)エーテルのスルホン酸アンモニウム又はナトリウム塩、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム塩等が挙げられる。また、上記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。
【0023】
上記界面活性剤の使用量は、使用される単量体100重量部あたり、1重量部以下がよく、0.5重量部以下が好ましい。1重量部より多いと、この発明で得られる接着剤の可使時間が短くなり、充分な作業性改善効果が得られない場合がある。
【0024】
上記の乳化重合方法で製造される共重合体のガラス転移点は、−30〜50℃がよく、−20〜30℃が好ましい。−30℃より低いと、耐熱性が低下し、一方、50℃より高いと、接着性が低下する傾向があるので好ましくない。なお、上記単量体を組み合わせて用いる場合のガラス転移温度は、各単量体の単独重合体のガラス転移温度から、FOXの式により求めることができる。
【0025】
上記の水性エマルジョン型接着剤には、上記の共重合体及び部分ケン化ポリ酢酸ビニルに加えて、多価イソシアネート化合物等を含有させることができる。この多価イソシアネート化合物等を含有させることにより、接着強度、煮沸繰返し強度を一層向上させることができる。
【0026】
上記多価イソシアネート化合物とは、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物をいい、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、水素化トリメチロールプロパン・TDIアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(ジフェニルイソシアネート)(MDI)、水素化MDI、重合MDI、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等があげられる。
【0027】
さらに、上記多価イソシアネート化合物として、ポリオールに過剰のポリイソシアネートで予めポリマー化した末端基がイソシアネート基をもつプレポリマーを用いてもよく、さらに、2種以上の多価イソシアネート化合物を用いてもよい。
【0028】
上記水性エマルジョン型接着剤における上記共重合体と多価イソシアネート化合物の混合比は、上記共重合体100重量部に対し、上記多価イソシアネート化合物は、固形分で5〜150重量部がよく、20〜100重量部が好ましい。5重量部より少ないと、十分な接着強度、煮沸繰返し強度が得られないことがある。一方、150重量部より多くてもよいが、添加量を増加したことに見合う効果の増大が得られず、経済的ではない。
【0029】
上記水性エマルジョン型接着剤には、部分ケン化ポリ酢酸ビニルをさらに配合するのが好ましい。また、必要に応じて、他のポリマーの水性エマルジョンを接着剤としての性能を低下せしめない範囲で含有させてもよい。このような水性エマルジョンとしては、ポリブタジエンエマルジョン、スチレン・ブタンジエン共重合体エマルジョン、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体エマルジョン、ポリ(メタ)アクリル酸エステルエマルジョン、ポリ塩化ビニルエマルジョン、ポリクロロプレンエマルジョン、ポリ塩化ビニリデンエマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、エチレン−酢酸ビニルー塩化ビニル三元共重合体エマルジョン等の水性エマルジョンがあげられる。
【0030】
この中でも、部分ケン化ポリ酢酸ビニルやポリ(メタ)アクリル酸エステルエマルジョン等のイソシアネート基と反応する官能基、例えば、水酸基やカルボキシル基等を含有する高分子化合物の水性エマルジョンが好ましい。
【0031】
上記水性エマルジョン型接着剤には、さらに、例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、クレー、カオリン、タルク、炭酸カルシウム等の充填剤、防腐剤、防錆剤、消泡剤、発泡剤、増粘剤、粘度調整剤、難燃剤、酸化チタン等の顔料等の配合剤を含有せしめてもよい。
【0032】
上記水性エマルジョン型接着剤を多孔質素材に塗工することにより、上記水性エマルジョン型接着剤からなる接着剤層、及び多孔質素材からなる層を有する積層体が得られる。上記多孔質素材としては、例えば、綿、麻、絹等の天然繊維、ビスコースレーヨン、酢酸セルロース等の化学繊維、紙、布、木材等があげられる。
【0033】
上記積層体を構成する接着剤層の外側には、もう1つの層を設けてもよい。この層としては、上記と同様の多孔質素材であってもよく、また、例えば、鉄、鋼鉄、金、銀、銅、アルミニウム等の金属、ガラス、石膏、陶磁器、セラミックス等の無機物、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミド、エポキシ、ポリウレタン、ABS、ゴム等のプラスチックス、あるいは合成繊維、繊維強化複合材料、無機充填材等を含有するプラスチックス等の複合材料等の非多孔質素材層であってもよい。
【0034】
上記積層体を製造する際における水性エマルジョン型接着剤の塗工方法としては、例えば、はけ塗り、タンポ塗り、吹き付け塗り、スプレー塗り、静電塗り、ローラ塗り、カーテンフロー塗り、流し塗り、浸し塗り、電着塗り、粉体塗装、ロールコータ塗り、ブレードコータ塗り、スクリーン塗り、スピンコーターを用いる方法等があげられる。
【0035】
上記積層体における接着剤層の塗布量は、100〜500g/m2がよく、200〜400g/m2が好ましい。厚みが上記範囲を満たすと、接着性が向上する傾向にあるので好ましい。
【0036】
上記積層体は、例えば、集成化粧単板、構造用集成材、造作用集成材等の木質積層体、複合フロア等の床材、断熱パネル等の木質複合材、紙、繊維、木材、金属類、無機質材、各種プラスチックス等の複合材等に使用することができる。中でも、木材同士を接着した集成材等の木質積層体に好適に使用される。
【0037】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明する。まず、実施例及び比較例で行った試験及び評価方法、並びに使用試薬について説明する。
【0038】
[評価方法]
<常態接着強度>
実施例及び比較例で得られた積層体を、20℃×60%RHで7日間養生した後、そのままの状態でJIS K 6852に準拠して圧縮剪断接着強度を測定した。
【0039】
<初期接着強度>
実施例及び比較例で得られた積層体を、ただちにJIS K 6853に準拠して、圧縮時間20分の圧縮剪断接着強度を測定した。
【0040】
<煮沸繰返し強度>
実施例及び比較例で得られた積層体を、20℃×60%RHで7日間養生した後、沸騰水中に4時間浸漬し、60℃オーブン中で20時間乾燥し、さらに、沸騰水中に4時間浸漬した後、常温水に15分間以上浸漬し、試験片を常温まで冷却し、試験片が濡れたままの状態でJIS K 6852に準拠して圧縮剪断接着強度を測定した。
【0041】
<作業性>
接着剤調整直後の接着剤の25℃における粘度に対し、90分経過後の接着剤の増粘倍率を測定し、下記の基準で評価した。
○:90分経過後の接着剤の増粘倍率が2倍以下
△:90分経過後の接着剤の増粘倍率が2〜3倍
×:90分経過後の接着剤の増粘倍率が3倍以上
【0042】
<材破率>
上記の常態接着強度試験及び煮沸繰返し強度試験を行った際の積層体の剥離面を観察し、剥離面積の全てが樺材柾目板の破壊面であれば100%、全てが接着剤と樺材柾目板との界面であれば0%とし、剥離面の樺材柾目板の破壊面が占める割合を算出し、材破率を算出した。
【0043】
<ガラス転移温度(以下、「Tg」と略する)>
共重合物のガラス転移温度は、単量体の単独重合体のガラス転移温度から、FOXの式により求めた。
【0044】
[使用試薬]
・スチレン…和光純薬(株)製:試薬特級(単独重合体のTg:100℃、以下、「St」と略する。)
・アクリル酸n−ブチル…和光純薬(株)製:試薬特級(単独重合体のTg:−52℃、以下、「BA」と略する。)
・メタクリル酸メチル…和光純薬(株)製:試薬特級(単独重合体のTg:105℃、以下、「MMA」と略する。)
・アクリル酸…和光純薬(株)製:試薬特級(単独重合体のTg:106℃、以下、「AA」と略する。)
・メタクリル酸ヒドロキシエチル…和光純薬(株)製:試薬特級(単独重合体のTg:85℃、以下、「HEMA」と略する。)
【0045】
・チオール変性部分ケン化ポリ酢酸ビニル…クラレ(株)製:M−205(重合度500、ケン化度約88モル%、以下、「M−205」と略する。)
・チオール変性部分ケン化ポリ酢酸ビニル…クラレ(株)製:M−215(重合度1500、ケン化度約88モル%、以下、「M−215」と略する。)
・アニオン系界面活性剤…ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルスルホン酸アンモニウム塩(三洋化成(株)製:エレミノールES−70、80%有効成分、以下、「アニオン系」と略する。)
・ノニオン系界面活性剤…ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル(三洋化成(株)製:ノニポール200、100%有効成分、以下、「ノニオン系」と略する。)
なお、上記において、ガラス転移点(Tg)は、エマルジョン工業会の指定値を用いた。
・ポリメチレンポリイソシアネート…住友バイエルウレタン(株)製:スミジュール44V−20(以下、「44V−20」と略する。)
【0046】
(実施例1)
[水性エマルジョンの製造]
攪拌翼と還流冷却器のついた反応釜に水110重量部と、保護ポリマーとしてM−205を2.5重量部、及びM−215を2.5重量部仕込んで昇温溶解後、反応釜内を窒素ガスで置換し、75℃まで調整した。次に、過硫酸カリウム0.37重量部を溶解した水溶液と次亜硫酸ナトリウム0.2重量部を溶解した水溶液を添加した直後に、単量体としてSt55重量部、BA44.5重量部、及びAA0.5重量部からなる単量体群溶液を連続滴下し、重合を開始させ、反応釜の液温を75℃に維持しながら、ほぼ4時間かけて単量体群溶液を滴下し重合を行った。更に80℃で3時間熟成した後、冷却し生成した水性エマルジョンを取り出した。得られた水性エマルジョンの固形分は48.7%、粘度7450mPa.S、pH2.5の性状であった。
【0047】
[接着剤及び積層体の製造]
得られた水性エマルジョンと部分ケン化酢酸ビニル((株)クラレ製;ポバール217)15重量%水溶液、及び炭酸カルシウム(日東粉化(株)製:NS100)を見かけ(有姿)の重量比で、44/30/30の割合で配合したものを主剤とした。この主剤100重量部に対し、多価イソシアネートとして44V−20を15重量部を添加・混合して水性エマルジョン型接着剤を得た。
次に、2片の樺材柾目板(10mm×25mm×30mm、含水量8%)の各片面に、それぞれ120g/m2ずつ得られた水性エマルジョン型接着剤を塗布し、塗布面同士を貼り合せ、所定の条件で圧締して積層体を得た。常態接着強度及び煮沸繰返し強度測定用の積層体の圧締条件は、0.8MPa×24時間であり、初期接着性測定の積層体の圧締条件は、0.8MPa×20分間である。
得られた水性エマルジョン型接着剤の作業性、及び積層体の接着強度を、上記の評価方法にしたがって評価した。その結果を表1に示す。
【0048】
(実施例2〜3、比較例1〜2)
表1に記載の配合割合とした以外は、実施例1と同様にして水性エマルジョン型接着剤を作製した。得られた水性エマルジョン型接着剤を用いて、上記の評価方法にしたがって評価した。その結果を表1に示す。
【0049】
(比較例3)
攪拌翼と還流冷却器のついた反応釜に水60重量部を仕込んだ。別途容器に水40重量部に上記のアニオン系界面活性剤1重量部とノニオン系界面活性剤0.2重量部を溶解した水溶液に、単量体のSt52重量部、BA44.5重量部、HEMA3重量部、及びAA0.5重量部を添加して、ホモミキサーを使用して攪拌混合し乳化液を作製した。次に、反応釜内を窒素ガスで置換し、75℃まで昇温した後、過硫酸カリウム0.37重量部を溶解した水溶液と次亜硫酸ナトリウム0.2重量部を溶解した水溶液を添加した直後に、前記の別途作製した乳化液を反応釜に連続的に滴下して、重合を開始させ、反応釜の液温を75℃に維持しながら、ほぼ4時間かけて乳化液を滴下し重合を続けた。更に80℃で3時間熟成した後、冷却し生成した水性エマルジョンを取り出した。得られた水性エマルジョンの固形分は50.1%、粘度17mPa.s、pH2.2の性状であった。
得られた水性エマルジョンを用いて、実施例1と同様にして、水性エマルジョン型接着剤を得た。得られた水性エマルジョン型接着剤を用いて、上記の評価方法にしたがって評価した。その結果を表1に示す。
【0050】
(比較例4,5)
表1に記載の配合割合とした以外は、比較例3と同様にして水性エマルジョン型接着剤を作製した。得られた水性エマルジョン型接着剤を用いて、上記の評価方法にしたがって評価した。その結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
【発明の効果】
この発明にかかる水性エマルジョン型接着剤は、ビニル芳香族単量体、及び(メタ)アクリル酸を含む(メタ)アクリル系単量体を含有する単量体群を重合して得られる所定のガラス転移点を有する共重合体と、部分ケン化ポリ酢酸ビニルとを含有する水性エマルジョン型接着剤を用いるので、経時的な粘度変化が小さく、良好な作業性を有し、しかも優れた接着強度、初期強度、煮沸繰り返し強度を有する。
【0053】
また、この水性エマルジョン型接着剤と多孔質材料からなる積層体は、集成化粧単板、構造用集成材、造作用集成材等の木質積層体、複合フロアなどの床材、断熱パネルなどの木質複合材などに使用し得る。
Claims (7)
- ビニル芳香族単量体、及び(メタ)アクリル酸を含む(メタ)アクリル系単量体を含有する単量体群を重合して得られる、ガラス転移点が−30〜50℃の共重合体と、部分ケン化ポリ酢酸ビニルとを含有する水性エマルジョン型接着剤。
- 上記単量体群中のビニル芳香族単量体含有量が20〜80重量%である請求項1に記載の水性エマルジョン型接着剤。
- 上記単量体群中の(メタ)アクリル酸含有量が0.1〜5重量%である請求項1又は2に記載の水性エマルジョン型接着剤。
- 上記部分ケン化ポリ酢酸ビニルが、チオール基変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルである請求項1乃至3のいずれかに記載の水性エマルジョン型接着剤。
- 上記の共重合体及び部分ケン化ポリ酢酸ビニルに加えて、多価イソシアネート化合物を含有する請求項1乃至4のいずれかに記載の水性エマルジョン型接着剤。
- 上記共重合体100重量部あたり、上記多価イソシアネート化合物を固形分で5〜150重量部含有する請求項5に記載の水性エマルジョン型接着剤。
- 請求項1乃至6のいずれかに記載の水性エマルジョン型接着剤からなる接着剤層、及び多孔質素材からなる層を有する積層体。
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