JP2004039369A - キーシートとその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】キーシート5のシートを構成するフィルム、紙、布、皮革、又は金属箔等のシート部材1を金型にインサートし、キートップ3を形成するため熱可塑性樹脂2を射出成形する。成型後位置決め固定してこの熱可塑性樹脂2の表面又は前記シート部材1の表面に加飾塗装9と、表示印刷8とを行い、この印刷等の表面に耐摩耗性のUV硬化塗料10を塗装してキーシート5を製造する。UV硬化塗料10は、硬化後の塗膜の引っ張り破断伸びが15〜50%であり、組成中のUV硬化成分中に含まれる光重合モノマーが30〜70%である。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電機機器、電子機器、移動通信機械等の分野に関し、特に、制御パネル機構に適用されるキーシート技術に関する。更に詳しくは、複数の押しボタンを必要とする機器で軽薄短小が求められる、携帯電話、PDA、家庭用保安機器、また車載電子機器端末の使用に有用なキーシート技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
複数の押しボタンを有する制御パネルの一つとして代表的なものは、携帯電話機である。昨今市販されている携帯電話機で使われるダイヤルスイッチの機構の多くは、図1のようになっている。即ち、キートップ部の裏側に印刷表示がある透明な熱可塑性樹脂製のフィルム51と、そのキートップ部に相当する凹部に射出成型で充填されている熱可塑性樹脂部52、および、シリコーンゴム製のシート状物54が、キーシート55の構成要素である。
【0003】
フィルム部51が熱可塑性樹脂部52の射出で表側に凸状に盛り上がった部分は押しボタンに当たり、キートップ53と呼ばれている。またこれらの形状物とシリコーンゴム製のシート状物54は接着剤や粘着材を介して簡易接着されていることが多く、全体が1つの要素としてキーシート55を構成している。携帯電話機等においては、更にキーシート55の下に金属タクトスイッチ56、スイッチ基板57等が設けられている。
【0004】
この構成のキーシート55には製造上の欠点がある。図1で示すように、フィルム51の裏面に印刷表示層58、加飾塗装層59がある。これは、市販されている透明な熱可塑性樹脂製のフィルム51に予めこれらの印刷を行ない、次にこのフィルム51をプレス機等で絞り成形を行ない、キートップ形状にするための製造がなされている。しかし、この方法は、不良発生率が高い。何故なら印刷フィルムを強制的に変形させてしまうため、印刷文字が変形し易すくなり、文字位置がずれ易くなる。
【0005】
又、深く絞られる角部ではフィルムが過度に伸ばされて加飾層が薄くなり色調に不都合を生じる。更に、絞り成形後の印刷フィルムを金型にインサートして熱可塑性樹脂を射出しキートップ53を形成させるときに、高温の溶融樹脂が文字印刷層と加飾印刷層を溶かし変形させるおそれが生じ、しかも射出時にガスや焼けの生じ易い角部では高温で加飾印刷層が変色し易すくなるなど、この工程においても不良発生率が高い。
【0006】
また、インサート成形時に塵がフィルムと金型の間に挟まるとキズ不良となってしまうおそれもある。フィルムは静電気の帯電性が高く、空気中の塵を吸い寄せる傾向がある。フィルム表面側は成形後そのままの状態が完成品の表面となり、製造過程でキズが付くと修正はできない。これら不具合の解決の対策として無塵室での無人自動生産が望ましいが、薄いフィルムを扱うので、このインサート成形は材料供給の自動化が難しい。又、有人運転では、無塵化環境や優れた作業管理があったとしても、コストアップになり、人間が扱う上においては、キズ問題の完全解決は難しい。従ってこのような現状から、従来にとらわれない他の異なる方法の技術開発が求められている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
現在の携帯電話機でその多くは、ストロークの短い金属タクトスイッチを使用した機構が使われている。金属タクトスイッチを使用するスイッチ機構は、複数の表示された押しボタンを有するキーシートと、金属タクトスイッチ、ケース等からなる。本発明はこの構成の中のキーシートを改良したものである。
【0008】
従来の製造方法は、基本的には前述のように最初に加飾を行ない、その後に種々の加工を施す方法である。この方法は、見栄え上の不良品をもたらす根本原因となっている。携帯電話などでのキーボタンの見栄えは、製造過程における行程がそのまま商品価値に繋がることになるので、文字の変形や位置がずれる等の製造不良は修正がきかず、成型品が不良品になってしまうおそれがある。これは大量に製造する製品を対象にしているので、損失は大きくなり重大問題である。
【0009】
本発明は、このような技術的背景に基づきなされたもので、次の目的を達成するものである。本発明の目的は、見栄えを重視し、従来の製造工程を変えて所定位置に正確に加飾、印刷されるようにしたキーシートとその製造技術を提供することにある。本発明の他の目的は、大量生産の製造においても、不良率を低減し低コストで安定した製造ができるキーシートとその製造技術を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために本発明のキーシートとその製造方法は、次のような手段を採る。即ち、発明1のキーシートは、複数の押しボタンを有する制御パネルで使用されるキーシートであって、前記キーシートのシートを構成するシート部材と、このシート部材に射出成形されキートップを形成する熱可塑性樹脂と、成型後位置決め固定してこの熱可塑性樹脂の表面又は前記シート部材の表面に塗装された加飾塗装層と、この加飾塗装層の表面に形成される表示印刷層と、この表示印刷層と前記加飾塗装層の表面に塗装された耐摩耗性のUV硬化塗料とからなっている。
【0011】
発明2のキーシートは、発明1のキーシートにおいて、前記シート部材は、フィルム、紙、布、皮革、又は金属箔から選択される1種以上の部材で構成されたものであってもよい。発明3のキーシートは、発明1のキーシートにおいて、前記シート部材は、前記キートップ部分に穴が設けられた部材であってもよい。発明4のキーシートは、発明1のキーシートにおいて、前記UV硬化塗料は、硬化後の塗膜の引っ張り破断伸びが15〜50%であり、組成中のUV硬化成分中に含まれる光重合モノマーが30〜70%であってもよい。
【0012】
発明5のキーシートは、発明4のキーシートにおいて、前記光重合モノマーは、水酸基を保有又はアミン系化合物であって、重合能を有するエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有し重量比で0〜15%のモノマーを含んでいてもよい。発明6のキーシートの製造方法は、シート部材を金型に挿入する行程と、キートップを成形するため前記金型に熱可塑性樹脂を射出し前記シート部材と一体化させる行程と、成形後取り出された成形品を位置決め固定しこの成型品の前記熱可塑性樹脂又は前記シート部材の表面に加飾塗装を施す行程と、前記加飾塗装された前記成形品の前記キートップの表面に表示印刷を施す行程と、前記表示印刷を施されたキートップおよび前記加飾塗装された前記成形品の表面に耐摩耗性のUV硬化塗料を塗装する行程とからなっている。
発明7のキーシートの製造方法は、発明6のキーシートの製造方法において、前記シート部材はフィルム、紙、布、皮革、又は金属箔から選択される1種以上の部材で構成されたものであり、このシート部材を金型に挿入する行程の前に、前記シート部材のキートップ部分に穴をあける行程を含んでもよい。
発明8のキーシートの製造方法は、発明6のキーシートの製造方法において、前記UV硬化塗料の塗装工程は、硬化後に塗膜の引っ張り破断伸びが15〜50%であり、組成中のUV硬化成分中に含まれる光重合モノマーが30〜70%になるように且つ水酸基を保有又はアミン系化合物であって、重合能を有するエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有し重量比で0〜15%のモノマーを含み調合され塗装される行程であってもよい。
【0013】
このような手段によって本発明は構成されているが、一言で言えば、見栄えを重視するという点は基本的に変えず、主に行程を改良することで問題点を解決した。即ち、先にキーシート形状物を作り、その後に加飾等を施す方法である。
この考え方に従うキーシートは図2、及び図3である。図2では、加飾塗装層9と表示印刷層8は従来フィルムに予め印刷等の処理がなされていたが、本発明においては、フィルムに予め処理を行うのではなく、熱可塑性樹脂2のキートップ表面に印刷等がなされていて、これら印刷面等を磨耗から防ぐために耐磨耗層が更に印刷面等の表面に塗装される構造になっている。
【0014】
又、図2の場合、フィルム1はキートップの位置に相当する部分に穴1aがあいたものであって、その穴1aをキートップ3を構成する熱可塑性樹脂2が貫通し凸部2aが一体に形成されている。この段階では、加飾塗装層9、表示印刷層8等の処理はなされていない。加飾塗装層9、表示印刷層8、並びに耐磨耗層であるUV塗膜10は、キーシート構造が出来上がってからキーシート成形品の位置を定めて固定した後、形成される。
これら加飾や印刷の工程の後には、この位置をずらすおそれのある製造行程はない。従って従来のように不良率が多く発生するおそれはない。このようにして成形されたキーシート成形品は、最終的にシート状物4に接着されキーシート5となる。このキーシート5はパネルに組み込まれ従来同様に熱可塑性樹脂2の凸部2aを介してスイッチ基板7の金属タクトスイッチ6を押圧する構成となる。
【0015】
図3は、キートップ位置に穴を設けないフィルムを使用する場合であって、加飾塗装層19と表示印刷層18がフィルム11の表面に設けられている例である。フィルム11と熱可塑性樹脂12とで成形された後にキートップ13部分に加飾塗装層19と表示印刷層18が設けられる点において、図1の場合と異なる。キートップ部分に位置を定めてキーシート成形品を固定してから印刷等がなされ、その表面に耐摩耗層のUV塗膜20を形成する。
このように、従来とは、加飾塗装層等を保護する方法が異なる。本発明は、更にその保護を耐摩耗層のUV塗膜20で行っていることが特徴である。キーシート成形品が完成すると、図2の場合と同様にシート状物14に接着されキーシート15となる。このような方法を実現する上でUV塗膜20に関する技術発展の貢献が大きい。本発明のUV塗膜20は、後述するが硬化においても割れの生じないものとしている点に大きな特徴がある。
【0016】
図4に示すように、透明熱可塑性樹脂22であるポリカーボネート樹脂のキートップには直接加飾塗装等がなされ、キートップ23部分のみの表面に加飾塗装層29と表示印刷層28が設けられている。更にその上に従来のUV塗膜30を塗布したキートップ23が、シート状物24に接着されキーシート25として完成後、シート状物24の凸部24aを介してスイッチ基板7の金属タクトスイッチ6を押す構成は形状として理想的であり、実際にもよく使われている。
【0017】
ただし、この形状品を製造するには、キートップ集合体を成形して印刷、塗装等で加飾し、個々のキートップに切断分離した後で、シリコンゴムシート状物に位置決め接着することが必要となる。この切断で一旦バラバラになった個々のキートップを位置決めして接着する工程は、容易な工程とは言えず基本的にはトラブルの元となる危険工程を含有するプロセスと言える。
本発明の手段は、これらの問題点を検討して創案したものであり、前述のように特にUV塗膜技術の向上を利用したものである。次に本発明のキーシートとその製造方法について、図5以降の図面に沿って詳細に説明する。
【0018】
〔フィルム、紙、布、皮革、金属箔〕
図5は、図2に対応したシートの例として、穴を開けたキーシート2個取り分のフィルムを示す。このフィルムは製品仕様によっては色印刷がなされる。図5は色印刷をした透明樹脂のフィルム31を示していて、暗色に印刷された面33にキートップ部分33aが透明状態になっている。このキートップ部分33aの中央部は穴32が機械加工で明けられている。
暗色に印刷された面33は、透光性キーシート仕様の場合に必要になることが多く、キートップ周辺部からの光漏れ防止用に役立つ。図5で、シート部材はフィルムとして説明しているが、フィルム以外に紙、布、皮革、又は金属箔も使用できる。以下、これらシート部材をフィルム等と略称する。このフィルム等の厚さは20〜300μmである。フィルム等は、シート部材としてはキーボタンを軽く押すためにフィルム等は薄い方が良いが、薄いものは製造時に扱い難い。厚いものは製造時に扱い易いが、押し圧が高くなり過ぎる。
【0019】
フィルム等は、後工程である熱可塑性樹脂射出工程で、その熱可塑性樹脂と固着することが好ましく、接触する部分には射出する樹脂と類似した樹脂を溶剤に溶かして塗布や印刷をしておくなどの前処理をすることはなお好ましい。使用するフィルム等が、例えばポリカーボネート樹脂(以下PC)製フィルムであり、射出する樹脂がPCであれば、融着は容易なので何ら前処理は必要ない。
また、使用するフィルム等がポリエチレンテレフタレート樹脂(以下PET)製であり射出する樹脂がPCやABS樹脂のとき、アクリルウレタン系の2液硬化性インキをフィルムに印刷硬化しておけば射出で接着する。また、紙、皮革を使用する場合も、柔軟性あるアクリルウレタン系の2液硬化性インキが使用できる。更に、アルミ箔を使用する場合は、特殊な処理をして、PBT系樹脂を射出すれば強固に射出で接着することができる。
【0020】
フィルム等に穴を開けずにキーシート状物を製作することもできる。これは図3に対応する方法になるが、フィルム等が熱可塑性樹脂製である場合、フィルム等をインサートして金型を閉じた時に多少の絞りも兼ねさせ、その後に樹脂を射出すると射出の熱と圧力でフィルム等が広げられ、フィルム等が上面になったキートップ形状が出来上がる。具体的には、例えばフィルムとしてPC、PET、PCとPBTのアロイを原料として使用し、射出成形用樹脂としてABS樹脂、PC、アクリル等を使用すると、キートップ高さが比較的低い場合に好適である。
【0021】
〔熱可塑性樹脂の射出/キーシート生地の作成〕
図6にキーシートのインサート射出成形のための金型構成を示す。フィルム31を、金型を開いた後の所定位置にインサートする。可動側型板34にはエジェクターピン36、固定側型板35にはピンゲート37が設けられていて、金型を閉めた後、このピンゲート37から熱可塑性樹脂を射出する。
図7はキーシート成形品の原形断面図を示す。キートップ38は、射出された熱可塑性樹脂39からなっており、これはフィルム31と接着していて熱可塑性樹脂39は、穴32を介してフィルム31の表面と裏面に跨って融着されている。又、熱可塑性樹脂39には金属タクトスイッチを押圧するための凸部39aが設けられている。更にキーシート2個取り分の全体を囲む枠部40も同時に成形されている。この枠部40には、次行程の加飾塗装及び表示印刷のための位置決め手段である凸部40aが設けられている。
【0022】
〔下地塗装、加飾塗装/印刷〕
次に加飾塗装、表示印刷を行うことになるが、既に形状の出来上がったキーシート原形の生地に塗装することになる。注意すべきは生地を為す樹脂種と塗料の関係である。下地への接着力が強く耐磨耗性の強いUV硬化塗料は一般に溶解性が強く、塗布するだけで下地樹脂種によっては下地を侵食することがある。侵食しないようにしっかりとした下地塗装をしておくことが重要となる。即ち、下地塗装は、加飾の為と、溶解性の強いUV硬化塗料からの生地アタックを防ぐ為の目的がある。生地に金属蒸着して鍍金風加飾をする様な場合、即ち、加飾塗装が不要な場合でも、UV硬化塗料のレシピ−や生地の樹脂種によっては下地塗装が必要で、その場合は無色透明の下地塗装の工程が入る。
【0023】
図7に示した成形品は簡易的には、マニュアルで手吹き塗装も可能であるが、大量生産ではこれをスピンドル型塗装ラインで行う。図示はしていないが、スピンドル上には別途成形した受け治具が取り付けてあり、その受け治具に図7で示した成形品を固定する。即ち、枠部40の下部にあるピン型形状の凸部40aを受け治具上の穴に差し込み固定する。
スピンドルが回転しつつ塗装ガンのスプレー中を通過することによって成形品は塗装され、続いて熱風乾燥ライン内を通過し塗膜は乾燥される。塗料は、アクリルウレタン系の弾性の2液硬化型塗料が一般に使い易い。塗料は要求される色調に調色して使用する。また、前述したように、調色なしのクリア塗料の塗装の場合もある。乾燥後に、キーシート成形品はスピンドル上の受け治具から外される。
【0024】
印刷が必要な場合は、キーシート成形品は受け治具に移され、パッド印刷がなされる。形状によってはスクリーン印刷が可能であるが、一般にスクリーン印刷の方がパッド印刷よりも低価格である。受け治具上に、キーシート成形品は、外周枠のピン形状の凸部40aによって位置決めができるが、中間部が浮いている状態なので、キーシート成形品がしっかり固定できるように中間部も固定できるようにすることが好ましい。例えば、受け治具に多数の貫通孔を設け、この貫通孔を介して受け治具と成形品間をエアーで吸い込み減圧させて固定する方法もある。
位置決め固定した後、文字、数字、記号などをキートップ上に印刷する。使用するインキは、ウレタン硬化型2液性インキが好ましい。印刷後、熱風乾燥させて十分に硬化させる。この硬化条件は、塗料、インキのメーカーが指定した焼付け硬化条件以上の硬化条件で焼付けするのが好ましい。このような条件で硬化させた後は、1〜2日放置し、それからUV塗装を行うのがよい。
【0025】
〔UV硬化塗料〕
本発明に関わるUV硬化塗料は、硬化後の塗膜の引っ張り破断伸びが15〜50%となるものである。好ましくは20〜40%となるものを使用する。市販のUV硬化塗料は必ずしもこの条件になっているとは限らないので、使用できない場合が多い。伸び15%以下のUV硬化塗料を使用すると硬化塗膜は硬くなるが、フィルム等の基盤部分を曲げたときに割れ、繰り返すと下地塗膜も共に生地から剥がれてしまう。
一方、伸び50%以上のUV硬化塗料を使用すると、硬度不足となりキートップが磨耗し易く、表層が削れ、表示が消えるおそれがある。又、アルコール等を染み込ませた布で擦ると磨耗し易く、文字等が消えてしまう恐れがある。UV硬化塗料は、硬化成分、溶剤、顔料染料、レベリング剤よりなるが、本質的な成分は硬化成分である。
【0026】
この硬化成分は、光重合プレポリマー、光重合モノマー、及び光開始剤からなる。硬化後樹脂分の硬度や伸びを決めるのは、光重合プレポリマー、光重合モノマーの分子構造である。分子構造が柔軟なもの、立体的なものを使用するとUV硬化後樹脂の伸びは大きくなる傾向があるので、レシピ−によって硬化物の引っ張り破断伸びを調節することができる。
又、同等な伸びを示しつつも、硬度や耐磨耗性を確保するには生地との接着性が重要であり光重合モノマーでの選択が重要となる。本発明のUV硬化塗料には、30〜70%の光重合モノマーを含むことを特徴としている。耐磨耗性の優れた硬化樹脂を得るには光重合プレポリマーとしてウレタンアクリレートを使用するのが有利である。
【0027】
実際の使用時において塗膜に耐磨耗性を持たせるには生地との接着性の方がむしろ重要である。勿論、塗布する生地種によるが、光重合モノマーに、水酸機を有するモノマーやアミン系のモノマーを使用すれば、どのようなものに対しても接着性が向上することは実験によって確認された。ただ、このようなモノマーを多く含有させると塗料塗布時に生地を痛めることが多いので注意を要する。
UV硬化塗料を塗布後、すぐに簡易乾燥させ塗膜に含まれる溶剤の大部分を揮発させても沸点の高い光重合モノマーは揮発せず残っている。これらは、紫外線照射工程に移されてようやく重合し固化する。従って、水酸基やアミノ基を有するモノマーが含まれていると、これらは紫外線照射工程に進むまで生地と共にあり、化学品に弱いPCなどはクラックを生じ易くなることを意味している。このことから、光重合モノマーに占める水酸基を含むモノマーやアミン系のモノマーの比率は0〜15%であることがよく、1〜10%がより好ましい。
【0028】
〔UV硬化塗料の塗布硬化〕
下地塗装と同様にUV硬化塗料を塗布する。塗布方法は、前述したように手吹きやスピンドル塗装ラインによる。塗布後、70〜80℃で5〜10分乾燥して溶剤の大部分を揮発させた後、紫外線照射させUV硬化させる。通常、UV塗装用に設置した塗装ラインでは、熱風乾燥区間とUV照射区間が塗布区間に続いて設置されている。
【0029】
〔切断/キーシート〕
図8はUV硬化塗料の塗布硬化が終了したキーシート成形品を表面側から表示した図である。この状態のキーシート成形品をビク型またはプレス切断金型にかけ、外周線41、打ち抜き線42を切断し、最終的に求められるキーシート形状とする。切断後のキーシート形状物に、別途成形製作したシリコーンゴムのシート状物を貼り付けてキーシートは完成する。図8のA−A断面図は、図2に示すキーシート部分の断面図と一致する。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、発明の実施の形態を実施例で示す。
〔実施例1〕
両面に易接着コート処理をした厚さ50μmのPETフィルムを、最終製品2個取り分を想定して図5のように長方形にカットし、図5斜線部で示す暗色に印刷された面33のようにウレタン硬化型2液性インキ「SP4黒(セイコーアドバンス社製)」でスクリーン印刷し60℃で5分簡易乾燥し、反対面側を透明インキ「SP4メジューム(同社製)」で全面スクリーン印刷し80℃×30分硬化した。次いで、ビク型とエヤープレス機を使用して穴32をあけた。
図6で示すように、黒色印刷面を固定側型板の方に向けてフィルムをインサートし、金型を閉めて透明ABS樹脂を射出した。金型温度は55℃、射出温度は250℃、射出ABS樹脂は「クララスチックST100(日本エーアンドエル社製)」であった。このインサート射出工程により、図7の形の枠付きキーシート成形品を作成した。
【0031】
これを受け治具付きスピンドル塗装ラインに設置した。最初にシルバーメタリックに調色した弾性アクリルウレタン系2液硬化型塗料を塗布し、そのまま70℃×10分の乾燥硬化ラインを通過させてスピンドル上の受け治具から外した。続いて、パッド印刷用の受け治具に塗装品を載せ、減圧吸着法で固定してから塗装されたキートップ上に数字をパッド印刷した。使用したのはウレタン硬化型2液性インキ「SG740黒(セイコーアドバンス社製)」であった。印刷後、75℃で2時間加熱し、更に1日放置した。
放置後の形状物を再びスピンドルに載せ、回転しつつ下記UV硬化塗料を塗布し、75℃区間を7分間通過させた後、紫外線照射区間を3分間通過させ、硬化させた。得られたものを図8で示すように、プレス切断機を用いて外周線41及び打ち抜き線42を切断しキーシート形状物を分離した。なお、UV塗料は以下のように3段階で作成した。
【0032】
〔ウレタンアクリレートの合成〕
攪拌機を備えた反応容器に、ノリルフェノキシテトラエチレングリコールアクリレート「アローニクスM113(東亜合成社製)」を100g、2,4−トリレンジイソシアネートを70.2g、ジブチル錫ジラウレートを1g、および重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチル−メチルフェノールを0.3g仕込んだ。これに数平均分子量4000のエチレンオキサイドと1,2−ブチレンオキサイドの共重合ジオール(エチレンオキサイド:1,2−ブチレンオキサイド=重量比で3:7の物)「PBG2000(第一工業製薬社製)」4453gを温度40〜50℃に保ちながら添加し、2時間反応させた。次いでヒドロキシエチルアクリレート26.8gを添加し、50〜60℃で5時間攪拌を継続した後、反応を終了させ、数平均分子量が約10800のウレタンアクリレートを得た。
【0033】
〔UV硬化材料の作成〕
攪拌機を備えた反応容器に、前記ウレタンアクリレートを54部、アローニクス113を24部、イソボルニルアクリレートを13.5部、テトラエチレングリコールジアクリレート3部、N−ビニルピロリドンを2部、老化防止剤「Irganox1035(チバガイギー社製)」を0.3部、ジエチルアミンを0.1部、及びシランカップリング剤「SH6062(トーレシリコーン社製)」0.4部を50〜60℃で攪拌混合し、粘度が3000cpの透明液状組成物を得た。光重合モノマー全量中に占めるN−ビニルピロリドンの重量比は2/42.5=0.047=4.7%である。これに光開始剤のベンゾフェノン3部を加え、更に攪拌してUV硬化性透明液状組成物を得た。
このUV硬化性液状物を150μm厚のアプリケーターバーを用いてガラス板上に塗布し、30mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させた。次いでガラス板上から硬化フィルムを剥がし、1日放置して試験片とした。これを引っ張り試験機にかけたところ破断伸びは34%であった。
【0034】
〔UV硬化塗料の作成〕
攪拌機を備えた容器に、前記UV硬化性液状物を100部、塗装用混合溶剤「PG7394C溶剤(藤倉化成社製)」を100部、レベリング材「No3(長島特殊塗料社製)」0.5部を室温下で混合しUV硬化塗料とした。
前記のキーシートを評価試験にかけた。まず、キーシートを90℃湿度60%の環境下に15時間放置した(高温高湿保存試験)が、全く変化はなかった。また、このキーシートを85℃に1時間置き、即、−40℃に移して1時間置くサイクルを5サイクル経験させた(温度衝撃試験)が、全く変化はなかった。
【0035】
また、このキーシートを両面テープで平板に貼り付け、キートップ天面部を500gの荷重を載せたプラスチック消しゴム「MONO(トンボ社製)」で2000往復させたが目視でキズらしいものは観察出来なかった。又、別のキートップ天面部を500gの荷重を載せた木綿布にエチルアルコールを湿して500往復させたところ、目視で擦り傷が僅かに認められたのみであった。
また、このキーシートを折り曲げたがフィルム部で全くUV塗膜は剥離しなかった。また、図2のように、金属タクトスイッチを配置したスイッチ基板に、平面部0.2mm厚で押し棒部厚さ0.5mmのシリコーンゴムシートを敷き、その上に上記のキーシートを置き、上ケースをはめ込んだ形とした。
この状態で打鍵試験を行なった。100万回の打鍵を行なって分解し、キーシートを観察したがフィルム部分のUV塗膜の剥離は観察されなかった。加えて、打鍵試験機を冷凍室に持ち込み、前記と同様に組み込んで20万回の打鍵を−20℃下で行ない、分解してキーシートを観察したがやはり何ら異常は観察されなかった。
【0036】
〔実施例2〕
両面に易接着コート処理をした厚さ50μmのPETフィルムを、最終製品2個取り分を想定して長方形にカットし、図5の斜線部のようにウレタン硬化型2液性インキ「SP4黒(セイコーアドバンス社製)」でスクリーン印刷し60℃で5分簡易乾燥し、反対面側を透明インキ「SP4メジューム(同社製)」で全面スクリーン印刷し80℃×30分硬化させた。次いで、図5にあるように、ビク型とエヤープレス機を使用して穴32を開けた。
図6で示すように、黒色印刷面を固定側型板の方に向けてフィルムをインサートし、金型を閉めてPCを射出した。金型温度は80℃、射出温度は320℃、射出PC樹脂は「パンライトL−1225L(帝人化成社製)」であった。このインサート射出工程により、図7の形の枠付きキーシート成形品を作成した。これ以降は、UV硬化塗料が異なるが、その他は実施例1と全く同様の作業を行ない、図8、図3に示すキーシート成形品を得た。評価試験結果は実施例1と全く同様であった。
【0037】
実施例1で合成したウレタンアクリレートを使用し、UV硬化材料を作成した。即ち、攪拌機を備えた反応容器に、前記ウレタンアクリレートを54部、アローニクス113を24部、イソボルニルアクリレートを13.5部、テトラエチレングリコールジアクリレート5部、老化防止剤「Irganox1035(チバガイギー社製)」を0.3部、ジエチルアミンを0.1部、及びシランカップリング剤「SH6062(トーレシリコーン社製)」0.4部を50〜60℃で攪拌混合し、粘度が3000cpの透明液状組成物を得た。ここへ光開始剤のベンゾフェノン3部を加え、更に攪拌してUV硬化性透明液状組成物を得た。
【0038】
このUV硬化性液状物を150μm厚のアプリケーターバーを用いてガラス板上に塗布し、30mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させた。次いでガラス板上から硬化フィルムを剥がし、1日放置して試験片とした。これを引っ張り試験機にかけたところ破断伸びは35%であった。
次に、攪拌機を備えた容器に、前記UV硬化性液状物を100部、塗装用混合溶剤「PG7394C溶剤(藤倉化成社製)」を100部、レベリング材「No3(長島特殊塗料社製)」0.5部を室温下で混合しUV硬化塗料とした。実施例2におけるUV硬化塗料は、これを使用したものである。
【0039】
〔実施例3〕
50℃で2時間乾燥した厚さ103μmの高強度紙を、最終製品2個取り分を想定して長方形にカットし、図5の斜線部のようにウレタン硬化型2液性インキ「SP4黒(セイコーアドバンス社製)」でスクリーン印刷して60℃で5分簡易乾燥し、反対面側を透明インキ「SP4メジューム(同社製)」で全面スクリーン印刷し80℃×30分間硬化させた。次いで、図5に示すように、ビク型とエヤープレス機を使用して穴32を開けた。
【0040】
図6で示すように、黒色印刷面を固定側型板の方に向けて紙をインサートし、金型を閉めてPCを射出した。金型温度は80℃、射出温度は320℃、射出PC樹脂は「パンライトL−1225L(帝人化成社製)」であった。このインサート射出工程により、図7の形の枠付きキーシート成形品を作成した。
これ以降は、実施例2と全く同様に作業を行ない、図8、図3に示すキーシート成形品を得た。評価試験は実施例1と同様に行ったが、折り曲げ試験で、厳しい180度折り曲げを紙基盤部にしたとき折り目がつき、ルーペ観察で微細な塗膜剥がれが観察された。ただし、ケースに組み込んでの打鍵試験では、100万回打鍵後も紙上の塗膜剥がれは生じなかった。
【0041】
〔実施例4〕
厚さ50μmのアルミシートを、最終製品2個取り分を想定して長方形にカットし、次いで、図5に示すように、ビク型とエヤープレス機を使用して穴32を開けた。この穴あきアルミシートを、アセトン500ccを入れたバットに20秒浸漬し、水洗し、水和ヒドラジン5%含む水溶液500ccを入れた別のバットに5分間浸漬し、水洗し、風乾した。
これを実施例1と同じ金型にインサートし、金型を閉めてPBT系樹脂を射出した。金型温度は100℃、射出温度は260℃であった。射出PBT系樹脂は、PBT50%、PC12%、ガラスファイバー20%、および粘土18%をコンパウンドした樹脂である。このインサート射出工程により、図7に示す枠付きキーシート形状物を作成した。これ以降は、実施例1と全く同様に作業を行ない、図8、図3に示すキーシート成形品を得た。評価試験結果も実施例1と全く同様であった。
【0042】
〔実施例5〕
UV硬化材料作成において、N−ビニルピロリドンに代えて2−ヒドロキシエチルアクリレートを使用した。この使用対象が異なる以外は実施例1と同様に行い、その他も同様に行なってUV硬化塗料を得た。フィルム印刷、加工、インサート成形、塗料塗布硬化も実施例1と同様に行なって評価試験を行なった。評価結果も実施例1と同じであった。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、キートップに加飾塗装層と、表示印刷層を位置決めして設ける構成にし、その印刷等がなされた表面に耐磨耗性があって伸びのあるUV硬化塗装層を設ける構成にした。このため、加飾塗装層と、表示印刷層がキートップに対し正確な位置になり、見栄えの上で文字の位置がずれる等不良品になることが著しく軽減された。
又、高級キーシートとして使用される表面表示型のキーシートにおいては、その製造コストを大幅に低減することとなった。実質的な耐磨耗性を得つつ伸びのあるUV塗料の作成とその塗布が、柔軟な生地と硬い生地への同時塗装を可能にした。マスキング等の複雑な作業を省き、低コストの塗装が可能になり、低価格のキーシート製造となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、従来のキーシート構成を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の他のキーシート構成を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明のキーシート構成を示す断面図である。
【図4】図4は、他例のキーシート構成を示す断面図である。
【図5】図5は、本発明で使用するフィルムの形態の例を示す平面図である。
【図6】図6は、フィルムをインサートし本発明のキーシートを成形する金型構成を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明におけるキーシート成形品の形態を示す断面図である。
【図8】図8は、本発明におけるキーシート成形品の形態を示す平面図である。
【符号の説明】
1,11,31・・・フィルム
1a,32・・・穴
2,12,22,39・・・熱可塑性樹脂
3,13,23,38・・・キートップ
4,14,24・・・シート状物
5,15,25・・・キーシート
6・・・金属タクトスイッチ
7・・・スイッチ基板
8,18,28・・・表示印刷層
9,19,29・・・加飾塗装層
10,20,30・・・UV硬化塗膜
33・・・暗色に印刷された面
33a・・・キートップ部分
34・・・可動側型板
35・・・固定側型板
36・・・エジェクターピン
37・・・ピンゲート
39a・・・凸部
40・・・枠部
41・・・外周線
42・・・打ち抜き線
Claims (8)
- 複数の押しボタンを有する制御パネルで使用されるキーシートであって、
前記キーシートのシートを構成するシート部材と、
このシート部材に射出成形されキートップを形成する熱可塑性樹脂と、
成型後位置決め固定してこの熱可塑性樹脂の表面又は前記シート部材の表面に塗装された加飾塗装層と、
この加飾塗装層の表面に形成される表示印刷層と、
この表示印刷層と前記加飾塗装層の表面に塗装された耐摩耗性のUV硬化塗料と
からなるキーシート。 - 請求項1に記載のキーシートにおいて、
前記シート部材は、フィルム、紙、布、皮革、又は金属箔から選択される1種以上の部材であることを特徴とするキーシート。 - 請求項1記載のキーシートにおいて、
前記シート部材は、前記キートップ部分に穴が設けられた部材であることを特徴とするキーシート。 - 請求項1に記載のキーシートにおいて、
前記UV硬化塗料は、硬化後の塗膜の引っ張り破断伸びが15〜50%であり、組成中のUV硬化成分中に含まれる光重合モノマーが30〜70%であることを特徴とするキーシート。 - 請求項4記載のキーシートにおいて、
前記光重合モノマーは、水酸基を保有又はアミン系化合物であって、重合能を有するエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有し重量比で0〜15%のモノマーを含むことを特徴とするキーシート。 - シート部材を金型に挿入する行程と、
キートップを成形するため前記金型に熱可塑性樹脂を射出し前記シート部材と一体化させる行程と、
成形後取り出された成形品を位置決め固定しこの成型品の前記熱可塑性樹脂、又は前記シート部材の表面に加飾塗装を施す行程と、
前記加飾塗装された前記成形品の前記キートップの表面に表示印刷を施す行程と、
前記表示印刷を施されたキートップおよび前記加飾塗装された前記成形品の表面に耐摩耗性のUV硬化塗料を塗装する行程と
からなるキーシートの製造方法。 - 請求項6に記載のキーシートの製造方法において、
前記シート部材はフィルム、紙、布、皮革、又は金属箔から選択される1種以上の部材であり、このシート部材を金型に挿入する行程の前に、前記シート部材のキートップ部分に穴をあける行程を含むことを特徴とするキーシートの製造方法。 - 請求項6に記載のキーシートの製造方法において、
前記UV硬化塗料の塗装工程は、硬化後に塗膜の引っ張り破断伸びが15〜50%であり、組成中のUV硬化成分中に含まれ光重合モノマーが30〜70%になるように且つ水酸基を保有又はアミン系化合物であって、重合能を有するエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有し重量比で0〜15%のモノマーを含み調合され塗装される行程であることを特徴とするキーシートの製造方法。
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-
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- 2002-07-02 JP JP2002193146A patent/JP2004039369A/ja active Pending
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