JP2004039047A - 磁気ヘッドドライブ回路と磁気ヘッド駆動方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】広範囲の記録転送レートの磁界変調記録に対応することができる磁気ヘッドドライブ回路を提供する。
【解決手段】磁気ヘッドに流れる電流の方向を、記録信号に応答して切り替えて主電流として該磁気ヘッドに供給する電流切り替え回路と、電流切り替え回路が磁気ヘッドに流れる主電流を第1の方向に切り替えたときには、該磁気ヘッドに第1の方向の電流を供給する第1の補助電流供給回路と、電流切り替え回路が磁気ヘッドに流れる主電流を第2の方向に切り替えたときには、磁気ヘッドに第2の方向の電流を供給する第2の補助電流供給回路と、電流切り替え回路に任意の強さの電流を供給する第1の電源供給回路と、第1および第2の補助電流供給回路に任意の強さの電流を供給する第2の電源供給回路とを備えている。記録転送レートに応じて、電流切り替え回路と、第1、第2の補助電流供給回路に供給される電流の設定値が変更される。
【選択図】 図2
【解決手段】磁気ヘッドに流れる電流の方向を、記録信号に応答して切り替えて主電流として該磁気ヘッドに供給する電流切り替え回路と、電流切り替え回路が磁気ヘッドに流れる主電流を第1の方向に切り替えたときには、該磁気ヘッドに第1の方向の電流を供給する第1の補助電流供給回路と、電流切り替え回路が磁気ヘッドに流れる主電流を第2の方向に切り替えたときには、磁気ヘッドに第2の方向の電流を供給する第2の補助電流供給回路と、電流切り替え回路に任意の強さの電流を供給する第1の電源供給回路と、第1および第2の補助電流供給回路に任意の強さの電流を供給する第2の電源供給回路とを備えている。記録転送レートに応じて、電流切り替え回路と、第1、第2の補助電流供給回路に供給される電流の設定値が変更される。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光磁気ディスクを用いる光磁気ディスク装置に関し、特に、光磁気ディスクへの情報記録に用いる磁気ヘッドを、光磁気ディスクへの情報記録速度に応じて、最適動作に切り替える磁気ヘッドドライブ回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報の高密度記録媒体として光磁気ディスクが注目されている。
光磁気ディスクは、情報の記録再生が行われる記録再生トラックを複数の磁性膜で構成し、その記録再生トラックを同心円状または螺旋状に設けたものである。光磁気ディスクを用いる装置として、ミニディスク(以下、MDと記す)が音楽の記録再生用として広く普及している。
【0003】
MDにおける再生方法は、概略次のように実施される。
半導体レーザ等の光源を用いて光磁気ディスクへ光ビームを照射する。光磁気ディスクに照射された光ビームは、該光磁気ディスクを構成する磁性膜の磁区の磁化方向に依存する磁気光学効果を受けて偏りの向きを変えて反射される。以下、この反射を偏向反射と記す。偏向反射された光ビームは、検光素子と光電変換素子によって光ビームの偏より方向に応じた電気的再生信号として検出される。このようにして、該光磁気ディスクからの情報再生が行われる。
【0004】
また、MDにおける記録方法の概略動作は次のように行われる。光磁気ディスクに半導体レーザ等の光源を用いて光ビームを照射する。この時、照射される光ビームは、再生時における光ビーム強度よりも強い強度であり、該光ビームの照射される光磁気ディスクを局所的に加熱する。光ビームで加熱された磁性層の部分(磁区)は、光磁気ディスクを構成する磁性膜のキュリー温度を超える温度になると、磁性膜の保磁力が低下し、それまで記録されていた磁化状態を消失する。
この時、該光ビームで加熱されて保持力の低下した磁性層部分に、外部から磁界を印加すると、その外部磁界と同じ向きに磁化の状態を切り替えることができる。したがって、該外部磁界を記録情報に応じて変調することにより、該光磁気ディスクに新しい情報の記録が行われる(磁界変調記録)。
【0005】
図6は、MDで広く用いられている磁気ヘッドドライブ回路である。
磁気ヘッド61は、約500μm四方の小さなコアとコイルで構成され、光磁気ディスクを構成する磁性膜に近接して配置され、該磁性膜に磁界を印可する。スイッチ62A、62B、62C、62Dは、FET等で構成され、磁気ヘッド61に流れる電流の向きを切り替える。これら2対のスイッチ62A、62B、62C、62Dはブリッジ回路を構成する。制御信号64A、64B、64C、64Dは、スイッチ62A、62B、62C、62Dの制御信号である。制御信号64A、64Dが論理1、制御信号64C、64Bが論理0になると、スイッチ62A、62DがON状態、スイッチ62C、62BがOFF状態になり、磁気ヘッド61には、図6中のAの方向に電流が流れる。制御信号64C、64Bが論理1、制御信号64A、64Dが論理0になると、スイッチ62A、62DがOFF状態、スイッチ62C、62BがON状態になり、磁気ヘッド61には、図6中のBの方向に電流が流れる。
【0006】
上記のようにして、制御信号64A、64B、64C、64Dとして記録信号を用いることによって、磁気ヘッド61の発生磁界は記録信号に応じて変調される。
【0007】
抵抗66A、66Bは、磁気ヘッド61に流れる電流を制限する電流制限抵抗である。磁気ヘッド61に流れる電流は、電源電圧VCCと該電流制限抵抗66A、66Bによってほぼ決定され、その電流によって光磁気ディスクに印加される磁界強度も決定される。
【0008】
また、近年の光磁気ディスクの分野においては、前記のMDに比べて数倍の高記録密度の記録を達成すると共に、その記録再生速度も数倍に速くするための技術開発が盛んに行われており、例えば、磁気超解像技術や磁壁移動技術等が広く知られている。
【0009】
磁気超解像技術による記録再生方法は、基本的に前記MDと同様である。
【0010】
磁気超解像技術の特徴は、光磁気ディスクから記録信号を再生する時、光ビームで光磁気ディスクを僅かに加熱する。該光ビームによる加熱により、該光ビームのスポットサイズよりも微小サイズの磁区に記録された情報が再生可能になる。
【0011】
また、前記磁壁移動技術の記録再生方法も、基本的には前記MDと同様である。
磁壁移動技術の特徴は、光磁気ディスクから記録信号を再生する時、光ビームで光磁気ディスクを僅かに加熱する。該光ビームによる加熱により、当該記録磁区を読み出す短い時間だけ、光磁気ディスク上の磁化状態の境界(以下、磁壁と記す)を移動させることにより、該光ビームのスポットサイズよりも微小サイズの磁区に記録されている情報を再生することを可能としている。
【0012】
上記の超解像技術や磁壁移動技術を採用する場合においても、信号の記録は、MDと同様に、外部磁界を記録情報に応じて変調することによって、光磁気ディスクに新しい情報を記録する磁界変調記録が広く用いられる。
【0013】
図7は、特開昭63−94406号公報に開示されているような高密度記録並びに高速記録を達成するために広く用いられている磁気ヘッドドライブ回路の構成を示す回路図である。
【0014】
磁気ヘッド(LH)71は、光磁気ディスクを構成する磁性膜に近接して配置され、該磁性膜に磁界を印可する。磁気ヘッド71は、MDに比べて数倍の高密度記録および高速記録を達成するために、約150μm四方の小さなコアとコイルで構成されている。スイッチ72A、72Bは、FET等で構成され、磁気ヘッド71に流れる電流の方向を切り替えるスイッチである。制御信号74Aおよび74Bは、それぞれスイッチ72Aおよび72Bを制御する。該制御信号74Bを論理1の状態とし、制御信号74Aを論理0の状態にすると、スイッチ72BがON状態になり、スイッチ72AがOFF状態になる。その結果、磁気ヘッド71には図7中のAの方向に電流が流れる。逆に、制御信号74Aを論理1の状態とし、制御信号74Bを論理0の状態にすると、スイッチ72AがON状態となり、スイッチ72BがOFF状態になる。その結果、磁気ヘッド71には図7中のBの方向に電流が流れる。したがって、制御信号74Aおよび74Bとして記録信号を用いてスイッチ72A、72Bを駆動することによって、磁気ヘッド71の発生磁界を記録信号に応じて変調することができる。
【0015】
参照番号73Aおよび73Bで指定されている部品は、磁気ヘッド71に流れる電流を高速に反転させるための補助手段で、磁気ヘッド71よりも十分に大きなインダクタンスを持つコイルで構成されている。
【0016】
抵抗75Aおよび75Bは、磁気ヘッド71に流れる電流を制限する電流制限抵抗である。磁気ヘッド71に流れる電流は、電源電圧VCCと電流制限抵抗75A、75Bによってほぼ決定され、その電流値によって光磁気ディスクに印加される磁界強度が決定される。
【0017】
図8は、特開平5−128402号公報に開示されている磁気ヘッドドライブ回路の構成を示す回路図である。
【0018】
磁気ヘッド(LH)81は、光磁気ディスクを構成する磁性膜に近接して配置され、光磁気ディスクの磁性膜に磁界を印可する。磁気ヘッド81は、MDに比べて数倍の高密度記録および高速記録を達成するために、約150μm四方の小さなコアとコイルで構成される。
【0019】
スイッチ82A、82B、82C、82DはFET等で構成され、磁気ヘッド81に流れる電流の方向を切り替える。2対のスイッチ82A、82B、82C、82Dはブリッジ回路を構成する。制御信号84A、84B、84C、84Dは、それぞれ、スイッチ82A、82B、82C、82Dをオン・オフ制御する。制御信号84Aおよび84Dを論理1の状態にし、制御信号84Bおよび84Cを論理0の状態することによって、スイッチ82Aおよび82DがON状態になり、スイッチ82Bおよび82CがOFF状態になる。その結果、磁気ヘッド81に図8中のAの方向に電流が流れる。逆に、制御信号84Aおよび84Dを論理0の状態にし、制御信号84Bおよび84Cを論理1の状態することによって、スイッチ82Aおよび82DがOFF状態になり、スイッチ82Bおよび82CがON状態になる。その結果、磁気ヘッド81に図8中のBの方向に電流が流れる。
【0020】
したがって、制御信号84A、84B、84C、84Dとして記録信号を用いてそれぞれのスイッチ82A、82B、82C、82Dを駆動することによって、磁気ヘッド81の発生磁界が記録信号に応じて変調される。
【0021】
図中、参照番号83Aおよび83Bで指定されている部品は、磁気ヘッド81に流れる電流を高速に反転させるための補助手段であって、磁気ヘッド81よりも十分に大きなインダクタンスを持つコイルで構成される。
【0022】
抵抗85Aは、電源電圧VDDからコイル83Aを通って磁気ヘッド1に流れる補助電流を制限する電流制限抵抗であり、抵抗85Bは、電源電圧VDDから補助手段83Bを通って磁気ヘッド81に流れる補助電流を制限する電流制限抵抗である。磁気ヘッド81に流れる補助電流は、電源電圧VDDと該電流制限抵抗85A、85Bによってほぼ決定される。
【0023】
抵抗86Aおよび86Bは、電源電圧VCCからスイッチ82A、82Dおよび82B、82Cを通って磁気ヘッド81に流れる主電流を制限する電流制限抵抗である。磁気ヘッド81に流れる主電流は、電源電圧VCCと該電流制限抵抗86A、86Bによってほぼ決定される。光磁気ディスクに印加される磁界強度は、主電流及び前記補助電流によって決定される。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
従来、光磁気ディスクの記録に用いられる磁気ヘッド81の駆動方法としては、前記の図6、図7、図8に記載されているような磁気ヘッドドライブ回路が広く用いられている。
【0025】
しかし、図6に示されているドライブ回路は、スイッチ62Aおよび62D、62Bおよび62Cのスイッチング動作で磁気ヘッド61の電流方向を切り替えるので、磁気ヘッド61による磁界の高速変調が困難であり、磁気ヘッド61のインダクタンス及び駆動電流にもよるが、おおよそ1MHz以下の変調速度であり高速駆動が困難であるという問題点がある。
【0026】
図7に示されているドライブ回路は、磁気ヘッド71の両端に設けられた補助手段73Aおよび73Bに用いられている高インダクタンスコイルに蓄積されている誘導エネルギーを利用して磁気ヘッド71に流れる電流を高速に切り替える。この回路では、基本的に、電流の切り替えによって逆向きの電流が磁気ヘッド71に蓄積すべき誘導エネルギーを、磁気ヘッド71と、2つの高インダクタンスコイルのそれぞれとの間のエネルギー授受によって生成される(回路の電流パスの切り替えによって2つの高インダクタンスコイルに生じる誘導起電力によって磁気ヘッド71を流れる電流の切り替えが行われる。)。
【0027】
上記のように、図7に示した回路では、電源から供給される電流の切り替え時に発生する誘導起電力によって切り替え前の電流の立ち下げと切り替え後の電流の立ち上げが行われるので、磁気ヘッド71のインダクタンス及び駆動電流にもよるが、10MHz程度までの高い変調速度を達成することができるものとなっている。
【0028】
しかしながら、図7に示す磁気ヘッドドライブ回路においては、補助手段73Aまたは73Bを通して磁気ヘッド71に流れる電流以外に、補助手段73Bまたは73Aから直接にグラウンドに電流が流れ、したがって、磁気ヘッド71を通らない無駄な電流が存在するので、必要以上にドライブ回路の消費電力が大きくなるとい問題点がある。
【0029】
さらに、このドライブ回路においては、磁気ヘッド71の変調速度を低くすると、補助手段73A、73Bに用いられるコイルの動作インピーダンスが低下する。補助手段73A、73Bの動作インピーダンスの低下は、同時にドライブ回路の動作インピーダンスの低下となる。そのため、磁気ヘッド71の変調速度を低下させると、該ドライブ回路には過大な電流が流れる。ドライブ回路の電流増加は、消費電力も増大するばかりでなく、磁気ヘッド71に流れる電流も増加する。その結果、該磁気ヘッド71に用いられるコア及びコイルの温度上昇や、その温度上昇によってコイルが断線する等の問題が起きる。
【0030】
これらの理由によって、図7に示されている該ドライブ回路は、磁気ヘッド71の高速に変調することには適しているが、該磁気ヘッド71を低速に変調するには不向きである。
【0031】
図8に示されているドライブ回路は、磁気ヘッド81の両端に設けられた補助手段83Aおよび83Bに用いられている高インダクタンスコイルに蓄積されている誘導エネルギーを利用して磁気ヘッド81に流れる電流を高速に切り替える。また2対のスイッチ82A、82B、82C、82Dで構成されるブリッジ回路を併設してこのブリッジ回路の出力端子を磁気ヘッド81に接続することによって、補助電流供給回路83A、83Bの電流を効率よく利用することができる。磁気ヘッド81のインダクタンス及び駆動電流にもよるが、この回路は15MHz程度までの変調速度を達成することができる。
【0032】
図8に示されている該ドライブ回路においても、補助手段83Aまたは83Bを通して磁気ヘッド81に流れる電流の他に、該補助手段83Bまたは83Aからグラウンドに流れ、その結果、磁気ヘッド81に流れない無駄な電流が、図7に示したドライブ回路よりは小さいものの存在する。したがって、必要以上に消費電力が大きくなるという問題点がある。
【0033】
さらに、図8に示したドライブ回路においては、磁気ヘッド81によって生成される記録磁界の変調速度を低くすると、図7に示されているドライブ回路と同様に、補助手段83A、83Bに用いられるコイルの動作インピーダンスが低下する。補助手段83A、83Bの動作インピーダンスの低下は、同時にドライブ回路の動作インピーダンスの低下となる。その結果、記録磁界の変調速度の低下によって、図7に示されているドライブ回路と同様に、ドライブ回路には過大な電流が流れる。ドライブ回路の電流が増加すると、消費電力が増大するばかりでなく、磁気ヘッド81に流れる電流も増加する。その結果、該磁気ヘッド81に用いられるコア及びコイルの温度上昇や、該温度上昇によりコイルが断線する等の問題を起こす。
【0034】
これらの理由から、図8に示されているドライブ回路は、図7に示されているドライブ回路と同様に、磁気ヘッド81の高速な変調には適しているものの、磁気ヘッド81を低速変調するには不向きである。
【0035】
以上のように、図6、図7、図8に示されている従来のドライブ回路は、低速変調用として図6のドライブ回路、高速変調用として図7または図8のドライブ回路が使用される。
【0036】
その結果、MDのような低速な記録再生速度と、超解像技術や磁壁移動技術を用いる高速な記録再生速度を、同じ光磁気ディスク装置として実現することは困難である。
【0037】
このため、複数の磁気ヘッドと複数のドライブ回路を同一装置内に設けることによって、MDのような低速な記録再生速度と、超解像技術や磁壁移動技術を用いる高速な記録再生速度とに応じてドライブ回路を使い分ける方法が考えられる。しかし、この方法は、これら部品・実装スペースの増加や、コストの増加を招くばかりばかりでなく、装置の小型化を困難にする。
【0038】
さらに、高速変調用として図7または図8の高速記録用のドライブ回路を唯一つ用いる装置において、MDの記録再生速度のように低速な記録再生速度を実現しようとすると、過大な電流・消費電力の増加が生じる。
【0039】
さらには、光磁気ディスクの記録位置(半径)によって、複数の記録速度に切り替えを行うZCAV方式において、高速記録用の図7または図8のドライブ回路を、唯一つ用いると、低速な記録再生速度に切り替えたとき、過大な電流・消費電力の増加が発生する。
【0040】
本発明は上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、高速記録と低速記録との両方に使用することができる磁気ヘッドドライブ回路を提供することを目的とする。
【0041】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の形態による磁気ヘッドドライブ回路は、磁界を発生する磁気ヘッドを、2つの異なる記録転送レートで駆動して磁界変調記録を行う磁気ヘッドドライブ回路において、
前記磁気ヘッドに流れる電流の方向を、記録信号に応答して第1の方向または第2の方向に切り替えて主電流として前記磁気ヘッドに供給する電流切り替え手段と、
前記磁気ヘッドに流れる第1の方向の主電流を補助する第1の補助電流供給手段と、
前記磁気ヘッドに流れる第2の方向の主電流を補助する第2の補助電流供給手段と、
前記第1の補助電流供給手段および前記第2の補助電流供給手段への電源電圧供給を記録転送レートに応じてON/OFFする電源供給手段とを有し、
前記電源供給手段は、前記記録転送レートが高い第1の転送レートの時にONとなり、前記第1の補助電流供給手段および、前記第2の補助電流供給手段へ電源電圧を供給し、該記録転送レートが低い第2の転送レートの時にOFFとなり、前記第1の補助電流供給手段および、前記第2の補助電流供給手段への電源電圧供給を遮断することを特徴とする。
【0042】
本発明の第1の形態による磁気ヘッド駆動方法は、磁界を発生する磁気ヘッドを、2つの異なる記録転送レートで駆動して磁界変調記録を行う磁気ヘッド駆動方法において、
前記磁気ヘッドに流れる電流の方向を、記録信号に応答して第1の方向または第2の方向に切り替えて主電流として前記磁気ヘッドに供給する電流切り替え手段と、
前記磁気ヘッドに流れる第1の方向の主電流を補助する第1の補助電流供給手段と、
前記磁気ヘッドに流れる第2の方向の主電流を補助する第2の補助電流供給手段と、
前記第1の補助電流供給手段および前記第2の補助電流供給手段への電源電圧供給を記録転送レートに応じてON/OFFする電源供給手段とを設け、
前記記録転送レートが高い第1の転送レートの時、前記電源供給手段をONにして、前記第1の補助電流供給手段および、前記第2の補助電流供給手段へ電源電圧を供給し、該記録転送レートが低い第2の転送レートの時、該電源供給手段をOFFにして、前記第1の補助電流供給手段および、前記第2の補助電流供給手段への電源電圧供給を遮断することを特徴とする。
【0043】
上記のようにして、高速記録(記録転送レートが高い)の場合には、第1および第2の補助電流供給回路から供給される補助電流によって切り替え前の電流を立ち下げ、切り替え後の電流を立ち上げる。また、低速記録(記録転送レートが低い)の場合には、第1および第2の補助電流供給回路からの補助電流の供給を遮断し、電流切り替え回路から供給される主電流の切り替えによって磁気ヘッド電流を切り替える。
【0044】
したがって、高速記録時には、第1および第2の補助電流供給回路によって電流の急速な立ち下げと立ち上げを達成し、低速記録時には第1および第2の補助電流供給回路の動作インピーダンスが低下することによって過大な電流が流れることを防止することができる。
【0045】
本発明の第2の形態による磁気ヘッドドライブ回路は、磁界を発生する磁気ヘッドを、2つの異なる記録転送レートで駆動して磁界変調記録を行う磁気ヘッドドライブ回路において、
前記磁気ヘッドに流れる電流の方向を、記録信号に応答して第1の方向または第2の方向に切り替えて主電流として前記磁気ヘッドに供給する電流切り替え手段と、
前記磁気ヘッドに流れる第1の方向の主電流を補助する第1の補助電流供給手段と、
前記磁気ヘッドに流れる第2の方向の主電流を補助する第2の補助電流供給手段と、
前記電流切り替え手段に任意の強さの電流を供給する第1の電源供給手段と、前記第1の補助電流供給手段および前記第2の補助電流供給手段に任意の強さの電流を供給する第2の電源供給手段と、
を有し、
前記記録転送レートが高い転送レートのときには、前記第1の電源供給手段は前記電流切り替え手段に供給される電流を相対的に小さく設定し、前記第2の電源供給手段は前記第1の補助電流供給手段および前記第2の補助電流供給手段に供給する電流を相対的に大きく設定することを特徴とする。
【0046】
本発明の第2の形態による磁気ヘッド駆動方法は、磁界を発生する磁気ヘッドを、2つの異なる記録転送レートで駆動して磁界変調記録を行う磁気ヘッド駆動方法において、
前記磁気ヘッドに流れる電流の方向を、記録信号に応答して第1の方向または第2の方向に切り替えて主電流として前記磁気ヘッドに供給する電流切り替え手段と、
前記磁気ヘッドに流れる第1の方向の主電流を補助する第1の補助電流供給手段と、
前記磁気ヘッドに流れる第2の方向の主電流を補助する第2の補助電流供給手段と、
前記電流切り替え手段に任意の強さの電流を供給する第1の電源供給手段と、前記第1の補助電流供給手段および前記第2の補助電流供給手段に任意の強さの電流を供給する第2の電源供給手段と、
を設け、
前記記録転送レートが高い転送レートのときには、前記第1の電源供給手段により前記電流切り替え手段に供給される電流を相対的に小さく設定し、前記第2の電源供給手段により前記第1の補助電流供給手段および前記第2の補助電流供給手段に供給される電流を相対的に大きく設定することを特徴とする。
【0047】
上記のように、高速記録のときには、第1の補助電流供給回路および第2の補助電流供給回路に供給される電流を大きく設定して電流切り替え回路に供給される電流を小さく設定し、低速記録のときには、その逆に電流設定をすることによって、全体としての電力をほぼ一定に保ったまま、電流切り替え速度、したがって、記録転送レートを所望の値に設定することができる。
【0048】
電源供給回路は、スイッチまたは可変定電流装置もしくは可変定電圧装置であることが望ましい。
【0049】
第1の電源供給回路及び第2の電源供給回路は、可変定電流装置または可変定電圧装置であることが望ましい。
【0050】
第1の補助電流供給回路及び第2の補助電流供給回路は、前記磁気ヘッドのインダクタンスよりも大きなインダクタンスを有するコイルであることが望ましい。
【0051】
第1の補助電流供給回路及び第2の補助電流供給回路として、整流素子を用いることができる。
【0052】
本発明による光磁気ディスク装置は、上記のいずれかに記載の磁気ヘッドドライブ回路を有することを特徴とする。
【0053】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0054】
図1は本発明の磁気ヘッドドライブ回路の第1の実施形態を示す回路図である。
【0055】
図1において、磁気ヘッド(LH)1は、記録情報に応じて変調される外部磁界を光磁気ディスクに印加する。スイッチ2A、2B、2C、2Dは、それぞれトランジスタやFETで構成され、磁気ヘッド1に流れる電流方向を切り替える。これら2対のスイッチ2A、2B、2C、2Dは、VCCを駆動電源とするブリッジ回路を構成し、その出力端子は磁気ヘッド1に接続されている。
【0056】
補助電流供給回路3A、3Bは、磁気ヘッド1のインダクタンスよりも十分に大きなインダクタンスを有する誘導性素子で、例えば、高インダクタンスのコイルで構成される。補助電流供給回路3A、3Bは磁気ヘッド1の電流の切り替え時にスイッチが切り替わったとき、誘導電圧を発生して、スイッチ切り替え前に磁気ヘッド1に流れていた電流を立ち下げ、新たな方向(逆方向)に磁気ヘッド電流を立ち上げる。
【0057】
制御信号4A、4B、4C、4Dは、2対のスイッチ2A、2B、2C、2Dを記録信号に同期してON/OFF制御する。制御信号4A、4Dが論理1、制御信号4B、4Cが論理0のときには、磁気ヘッド1には図1中のAで示されている方向に電流が流れる。また、制御信号4A、4Dが論理0、制御信号4B、4Cが論理1のとき、磁気ヘッド1には図1中のBで示されている方向の電流が流れる。
【0058】
抵抗器5Aおよび5Bは、電源VDDから、磁気ヘッド1に供給される電流値を決定する電流制限抵抗である。該電流制限抵抗5A、5Bの代替手段として、該補助電流供給回路3A、3Bが接続される電源VDDの電圧を予め調整することによって、電源VDDから、磁気ヘッド1に供給する定常電流値を決定しておくこともできる。
【0059】
抵抗器6Aおよび6Bは、2対のスイッチ2A、2B、2C、2Dで構成されるブリッジ回路によって磁気ヘッド1に供給される電流値を決定する電流制限抵抗である。抵抗器6A、6Bの代替手段として、該ブリッジ回路に接続される電源電圧VCCを予め調整して、該2対のスイッチ2A、2B、2C、2Dで構成されるブリッジ回路によって、磁気ヘッド1に供給される電流値を決定しておくこともできる。
【0060】
電源供給スイッチ7は、補助電流供給回路3A、3Bに供給される電源電圧VDDをON/OFFする。電源供給スイッチ7はトランジスタやFET、さらにはリレー等で構成される。
【0061】
以下、本実施形態の動作について詳細に説明する。
【0062】
本実施形態の特徴とするところは、光磁気ディスクの記録速度に応じた動作を行なうことである。
【0063】
1)高速記録動作の場合
先ず、超解像技術や磁壁移動技術が用いられる光磁気ディスク装置のように、記録速度が極めて高速な場合について説明する。
【0064】
図示しないCPU等により、光磁気ディスクへ記録する速度に関して高速記録モードが選択されると、電源供給スイッチ7がONにされて、補助電流供給回路3Aおよび3Bに電源電圧VDDが供給される。
【0065】
次に、2対のスイッチ2A、2B、2C、2Dが、制御信号4A、4B、4C、4DによってON/OFF制御される。
【0066】
制御信号4Aおよび4Dが論理1、4Bおよび4Cが論理0になっているとすると、これらの制御信号に対応してスイッチ2Aおよび2DがON、2Bおよび2CがOFFになる。この時、ブリッジ回路の接続される電源電圧VCCから、抵抗器6A、スイッチ2A、磁気ヘッド1、スイッチ2Dの順に、図中Aの方向に磁気ヘッド電流(主電流)が流れる。また、電源電圧VDD、電源供給スイッチ7、抵抗器5A並びに補助電流供給回路3Aからも、図中Aの方向に磁気ヘッド電流(補助電流)が供給される。一方、電源電圧VDD、電源供給スイッチ7、抵抗器5Bおよび補助電流供給回路3Bを流れる電流は、磁気ヘッド1に流れ込むことなく、スイッチ2Dへと流れる。
【0067】
次に、制御信号4Aおよび4Dが論理0、制御信号4Bおよび4Cが論理1に切り替わると、これら制御信号に対応してスイッチ2Aおよび2DがOFF、スイッチ2Bおよび2CがONになる。このスイッチ切り替え時、磁気ヘッド1はインダクタンスを持っているので、それまでに流れていた電流方向、この場合は図1のAの方向に電流を流し続けようとする誘導起電力(以下、第1の誘導起電力と記す)を発生する。また同時に、磁気ヘッド1の一端10Bに設けられた補助電流供給回路3Bもインダクタンスを持っているので、それまでに流れていた電流(補助電流供給回路3Bからスイッチ2Dを通ってグラウンドに流れる電流)を流し続けようと動作する。しかし、スイッチ2DがON状態からOFF状態となるので、補助電流供給回路3Bは誘導起電力(以下、第2の誘導電圧と記す)を発生する。
【0068】
スイッチ2DがON状態にある場合には、磁気ヘッド1の一端10Bと補助電流供給回路3Bのスイッチ2D側の端子とは、いずれもスイッチ2Dを通って接地されているので、該磁気ヘッド1をA方向に流れる電流と、補助電流供給回路3Bからスイッチ2Dを通って接地される電流とは、スイッチ2Dの許容電流値の範囲内では相互に干渉することなく流れる。
【0069】
しかし、スイッチ2DがOFF状態になると、磁気ヘッド1に発生した第1の誘導起電力と補助電流供給回路3Bに発生した第2の誘導起電力とは、相互に逆向きの起電力として、スイッチ2Dと磁気ヘッド1と補助電流供給回路3Bとの接続点10Bに働く。補助電流供給回路3Bのインダクタンスは磁気ヘッド1のインダクタンスより大きいので、第2の誘導起電力は、第1の誘導起電力よりも大きい。
【0070】
その結果、磁気ヘッド1をA方向に流れていた電流は急激に立ち下がり、磁気ヘッド1をB方向に流れる電流は急激に立ち上がる。
【0071】
一方、スイッチ2Cの切り替えで補助電流供給回路3Aをグラウンドに接続する電流パスができると、補助電流供給回路3Aにはこの電流パスに電流を流さない方向の誘導起電力(以下、第3の誘導起電力と記す)が発生する。この起電力は、磁気ヘッド1に生じる第1の誘導起電力と逆方向を向いていて第1の誘導起電力を打ち消すように働く。したがって、磁気ヘッド1をA方向に流れていた電流は、急激に立ち下がる。
【0072】
このようにして、スイッチ切り替えによって補助電流供給回路3Aと補助電流供給回路3Bに発生する誘導起電力によって、磁気ヘッド1を流れる電流をA方向からB方向に急速に反転することができる。
【0073】
このように、本実施形態においては、スイッチ切り替えの過渡状態において、電流の切り替えを、補助電流供給回路3Aと補助電流供給回路3Bに発生する誘導起電力によって促進する。
【0074】
磁気ヘッド1の電流切り替えを電源からの出力電流の切り替えのみで行う場合には、磁気ヘッドに生じる誘導起電力のために、電流の急速反転ができない。その結果、図6に示した従来例のように、電流切り替えの周期は1MHZ以下であるのが一般である。本実施形態においては、補助電流供給回路に生じる誘導起電力によって磁気ヘッド1の電流切り替えを行うので、高速の電流切り替えを達成することができる。
【0075】
磁気ヘッド1の電流が反転すると、それに引き続いて、ブリッジ回路に接続されている電源電圧VCCから、抵抗器6B、スイッチ2B、磁気ヘッド1、スイッチ2Cの順に、図中Bの方向に磁気ヘッド電流が流れる。また、電源電圧VDDから、電源供給スイッチ7、抵抗器5B並びに補助電流供給回路3Bを経由して、図1のBの方向に磁気ヘッド電流が引き続き供給される。さらには、電源電圧VDDから、電源供給スイッチ7、抵抗器5Aおよび補助電流供給回路3Aを流れる電流は、磁気ヘッド1に流れ込むことなく、スイッチ2Cへと流れる。
【0076】
このように、本実施形態においては、電源供給スイッチ7をON状態にすることによって、電源電圧VDDを補助電流供給回路3Aおよび3Bに接続し、該電源電圧VDDから、定常的に磁気ヘッド1や補助電流供給回路3Aおよび3Bに流れ込む電流を供給すると共に、補助電流供給回路3Aおよび3Bにコイルを用い、磁気ヘッド1よりも十分に大きなインダクタンスに設定することによって、磁気ヘッド1の電流反転時には電流を高速に切り替えることができるものとなっている。
【0077】
2)低速記録動作の場合
次に、広く普及しているMD装置のように、記録速度が極めて低速な場合について説明する。
【0078】
図示しないCPU等により、光磁気ディスクへの記録速度が低速な低速記録モードが選択されると、電源供給スイッチ7がOFF状態とされて、補助電流供給回路3Aおよび3Bと電源電圧VDDとが遮断される。
【0079】
次に、2対のスイッチ2A、2B、2C、2Dが、それぞれ、制御信号4A、4B、4C、4Dにより、ON/OFF制御される。ここで、制御信号4Aおよび4Dが論理1、制御信号4Bおよび4Cが論理0になっているとすると、これら制御信号に対応するスイッチ2Aおよび2DがON、スイッチ2Bおよび2CがOFFになる。この時、ブリッジ回路に接続されている電源電圧VCCから、抵抗器6A、スイッチ2A、磁気ヘッド1、スイッチ2Dの順に、図中Aの方向に磁気ヘッド電流が流れる。また、電源電圧VDDは、電源供給スイッチ7によって遮断されるので、電流制限抵抗5Aおよび補助電流供給回路3Aからも、抵抗器5Bおよび補助電流供給回路3Bからも、磁気ヘッド1およびスイッチ2C、2Dに流れ込むことはない。
【0080】
次に、制御信号4Aおよび4Dが論理0、制御信号4Bおよび4Cが論理1に切り替わると、これら制御信号に対応するスイッチ2Aおよび2DがOFF、2Bおよび2CがONになる。磁気ヘッド1はインダクタンスであるので、このスイッチ切り替え時には、それまでに流れていた電流方向、この場合は図中Aの方向に電流を流し続けようとする誘導起電力(第1の誘導起電力)が発生する。スイッチ2DがON状態からOFF状態になり、スイッチ2BがOFF状態からON状態になったとき、接続点10Bには第1の誘導起電力と、電流制限抵抗6Bを介して電源電圧VCCとが加わる。この第1の誘導起電力のために、電源VCCから磁気ヘッド1に供給される電流の立ち上げは遅くなる。しかし、第1の誘導起電力の緩和時間が経過すると、電源VCCから電流制限抵抗6B、スイッチ2B、接続点10B、磁気ヘッド1を通って、ON状態に切り替えられたスイッチ2Cを介して接地された接続点10Aに向かって電流が流れ始める。
このようにして、磁気ヘッド1の電流方向が、図中Aの方向からBの方向に反転される。
【0081】
磁気ヘッド1の電流が反転されると、ブリッジ回路の電源電圧VCCから、電流制限抵抗6B、スイッチ2B、磁気ヘッド1、スイッチ2Cの順に、図中Bの方向に磁気ヘッド電流が定常的に流れる。また、電源電圧VDDは、電源供給スイッチ7により遮断されているので、電流制限抵抗5Bおよび補助電流供給回路3Bから、磁気ヘッド1およびスイッチ2Cに電流が流れ込むことはない。
【0082】
このように、本実施形態においては、電源供給スイッチ7をOFFとすることにより、補助電流供給回路3Aおよび3Bを電源VDDから遮断して該電源電圧VDDから磁気ヘッド1や補助電流供給回路3Aおよび3B、およびスイッチ2C、2Dに流れ込む電流を遮断すると共に、スイッチ2A、2B、2Cおよび2Dによって、該磁気ヘッド1の電流方向を切り替えるので、不要な電流消費・電力消費(電源VDDから供給される電力の消費)を低減することができる。
3)高速動作の変形例
前掲の高速動作の場合においては、補助電流供給回路3A、3Bとして、磁気ヘッド1のインダクタンスよりも大きいインダクタンスを有するコイルを使用したが、該コイルの代替え手段としてダイオードを用いることも可能である。
【0083】
図4は、図1の補助電流供給回路3A、3Bとしてダイオード3a、3bを用いた場合の構成図である。
【0084】
補助電流供給回路3A、3Bをコイルからダイオードに置き換える場合には、第1のダイオード3aは、電流制限抵抗5Aと接続点10Aとの間に接続され、このとき、第1のダイオード3aのアノードが電流制限抵抗5Aに接続される。また、第2のダイオード3bは抵抗器5Bと接続点10Bとの間に接続され、このとき、第2のダイオード3bのアノードが抵抗器5Bに接続される。したがって、電源VDDから供給される電流は、抵抗器5A、第1のダイオード3aを通って磁気ヘッド1に流れ、または、抵抗器5B、第2のダイオード3bを通って磁気ヘッド1に流れる。
【0085】
上記のように変更した場合の動作は以下の様になる。図示しないCPU等により、光磁気ディスクへの記録が高速記録モードに選択されると、電源供給スイッチ7がON状態にされて、補助電流供給回路3Aおよび3Bに電源電圧VDDが供給される。
【0086】
次に、2対のスイッチ2A、2B、2Cおよび2Dが、制御信号4A、4B、4Cおよび4Dによって、それぞれスイッチONまたはスイッチOFFされる。ここで、制御信号4Aおよび4Dが論理1、制御信号4Bおよび4Cが論理0になっているとすると、これら制御信号に対応するスイッチ2Aおよび2DがON、2スイッチBおよび2CがOFFとなる。この時、ブリッジ回路に接続されている電源電圧VCCから、抵抗器6A、スイッチ2A、磁気ヘッド1、スイッチ2Dの順に、図中Aの方向に磁気ヘッド電流が流れる。また、電源VDDから電源供給スイッチ7、抵抗器5Aおよびダイオード3aを通って、図中Aの方向に磁気ヘッド電流が供給される。さらに、電源VDDから、電源供給スイッチ7、抵抗器5Bおよび第2のダイオード3bを通って、スイッチ2Dへ電流が流れる。しかし、この電流は、磁気ヘッド1に流れ込むことなく、接地端子に流れる。
【0087】
次に、制御信号4Aおよび4Dが論理0、制御信号4Bおよび4Cが論理1に切り替わると、これら制御信号に対応するスイッチ2Aおよび2DがOFF、スイッチ2Bおよび2CがONになる。このスイッチ切り替え時、磁気ヘッド1はインダクタンスであるので、磁気ヘッド1にはそれまでに流れていた電流方向、この場合は図中Aの方向に電流を流し続けようする第1の誘導起電力が発生する。
【0088】
抵抗器5B、第2のダイオード3b、磁気ヘッド1およびスイッチ2Cによって構成される電流パス(以下、第2の補助電流パスと記す)において、磁気ヘッド1に発生した第1の誘導起電力によって第2のダイオード3bは逆バイアスされるので、第2の補助電流パスは遮断状態になる。さらに、抵抗器6B、スイッチ2Bを経由する電流パス(以下、第2の電流パスと記す)と磁気ヘッド1およびスイッチ2Cとによって構成される電流回路においても、磁気ヘッド1に発生した第1の誘導起電力によって、スイッチはFETで構成されているものとするとスイッチ2Bのゲート・ソース間電圧が低下するので、スイッチの切り替え直後の、第1の誘導起電力が充分大きい期間には、第2の電流パスも遮断状態になる。
【0089】
上記のような状態で、第1の誘導起電力の緩和時間が経過して第1の誘導起電力が低下すると、第2のダイオードが順バイアスされ、スイッチ2BもON状態を回復する。その結果、磁気ヘッド1には、第2の電流パスと第2の補助電流パスとの両者から電流が供給される。このようにして、磁気ヘッド1の電流方向が、図中Aの方向からBの方向に反転する。磁気ヘッド1の電流が反転されると、ブリッジ回路に接続されている電源電圧VCCから、第2の電流パスを経由して、図中Bの方向に磁気ヘッド電流が定常的に流れる。また、第2の補助電流パスからも、図中Bの方向に磁気ヘッド電流として定常電流が供給される。さらには、電源VDDから、電源供給スイッチ7、抵抗器5Aおよび第1のダイオード3aを経由する電流パス(以下、第1の補助電流パスと記す)を流れる電流は、磁気ヘッド1に流れ込むことなく、スイッチ2Cへと流れる。このとき、電源VCCから抵抗器6Aおよびスイッチ2Aを経由する電流パス(第1の電流パスと記す)は遮断される。
【0090】
なお、該補助電流供給回路としてダイオードを用いる場合において、光磁気ディスクへの記録速度として低速なモードが選択されて電源供給スイッチ7をOFFとした時の動作は、該補助電流供給回路にコイルを用いる場合と同等であるので、説明は省略する。
【0091】
上記本発明の説明においては、ただ一つの磁気ヘッドドライブ回路で、記録速度が異なる光磁気ディスクに対応可能であることを示したが、以下の様な応用も十分に可能である。
【0092】
その一例としては、光磁気ディスクの記録モードとして、通常モードと省エネモードを設け、通常モードの動作状態においては、上記高速動作で磁気ヘッドドライブ回路を駆動するものであり、また省エネモード、例えばバッテリー動作状態においては、装置システム全体の動作速度を遅くすると共に上記低速動作で磁気ヘッドドライブ回路を駆動することによって、バッテリーの負荷を軽減することも可能である。
【0093】
さらに別の例としては、光磁気ディスクの記録モードとして、通常モードと低品質モードを設け、通常モードの動作状態においては、上記高速動作で磁気ヘッドドライブ回路を駆動し、また低品質モード、例えば音楽の記録時において記録するデータを間引くと共に上記低速動作で磁気ヘッドドライブ回路を駆動することによって、装置システムの消費電力を軽減することも可能である。
【0094】
次に、本発明による磁気ヘッドドライブ回路の第2の実施形態について説明する。
【0095】
図2は、本実施形態の磁気ヘッドドライブ回路の回路図である。
【0096】
図2において第1の実施形態と同一の部品には同一番号で記し、説明は省略する。
【0097】
定電流源8Aは、補助電流供給回路3Aおよび3Bに定電流を供給する。図示されていない情報処理装置から出力される電流値制御信号9Aにより、その電流値が設定される。
【0098】
定電流源8Bは、スイッチ2A、2B、2Cおよび2Dで構成されるブリッジ回路に定電流を供給する。図示されていない情報処理装置から出力される電流値制御信号9Bにより、その電流値が設定される。
【0099】
また、定電流源8Aの代替手段として、補助電流供給回路3Aおよび3Bに接続される電源VDDを、図示されていない情報処理装置から出力される信号によって制御する可変電圧源で構成することも可能である。この可変電圧源としては、例えばDC−DCコンバータや、PWMドライバを使用することができる。
【0100】
定電流源8Aの代替として可変電圧源を使用する場合には、補助電流供給回路3Aおよび3Bに供給される電流は、可変電圧源8Aが供給する電圧と、補助電流供給回路3Aまたは3Bを含むドライブ回路の動作時インピーダンスで概ね決定される。定電流源8Bの代替え手段も同様であり、定電流源8Bを該可変電圧源で代替えする場合には、該スイッチ2A、2B、2C、2Dのそれぞれに供給される電流は、可変電圧源8Bが供給する電圧と、スイッチ2A、2B、2Cおよび2Dで構成されるブリッジ回路を含む回路の動作時インピーダンスで概ね決定される。
【0101】
以下、本実施形態の動作について詳細に説明する。
【0102】
本実施形態の回路の特徴とするところは、光磁気ディスクの記録速度に応じて、該光磁気ディスクに外部磁界を印可する磁気ヘッドおよび磁気ヘッドドライブ回路に最適な動作を提供することである。
【0103】
1)高速記録動作の場合
先ず、超解像技術や磁壁移動技術が用いられる光磁気ディスク装置のように、記録速度が極めて高速な場合について説明する。
【0104】
図示されていない情報処理装置により、光磁気ディスクへの記録速度が高速なモードが選択されると、電流値制御信号9Aにより、定電流源8Aが補助電流供給回路3Aおよび3Bに供給する電流値が決定される。このとき、定電流源8Aが、補助電流供給回路3Aおよび3Bに供給する電流値に概ね比例して、磁気ヘッド1の電流反転時間が決定される。このため、定電流源8Aの電流値は、光磁気ディスクへの記録速度に応じて制御され、記録速度が高速なモードにおいては、十分大きな電流値に設定される。
【0105】
また、同時に、電流値制御信号9Bにより、定電流源8Bがスイッチ2A、2B、2Cおよび2Dで構成されるブリッジ回路に供給する電流値が決定される。このとき、定電流源8Bが、スイッチ2A、2B、2Cおよび2Dで構成されるブリッジ回路に供給する電流値に概ね比例して、磁気ヘッド1の電流振幅が決定される。したがって、定電流源8Aの場合と異なり、必ずしも光磁気ディスクへの記録速度に応じて、定電流源8Bの電流値が制御されるのではない。また、定電流源8Bの電流値が、磁気ヘッド1の電流振幅を概ね決定するので、磁気ヘッド1で記録を行う光磁気ディスクの記録磁界感度に合わせて定電流源8Bの電流値を制御することができる。
【0106】
次に、2対のスイッチ2A、2B、2Cおよび2Dが、それぞれ制御信号4A、4B、4Cおよび4DによってON/OFF制御される。ここで、制御信号4Aおよび4Dが論理1、制御信号4Bおよび4Cが論理0になっているとすると、これら制御信号に対応するスイッチ2Aおよび2DがON、スイッチ2Bおよび2CがOFFになる。このとき、ブリッジ回路が接続される電源VCCから、定電流源8B、スイッチ2A、磁気ヘッド1、スイッチ2Dの順に、図中Aの方向に磁気ヘッド電流が流れる。また、電源VDD、定電流源8A、および補助電流供給回路3Aからも、図中Aの方向に磁気ヘッド電流が供給される。さらには、電源電圧VDD、定電流源8A、および補助電流供給回路3Bを流れる電流は、磁気ヘッド1に流れ込むことなく、スイッチ2Dへと流れる。
【0107】
次に、制御信号4Aおよび4Dが論理0、制御信号4Bおよび4Cが論理1に切り替わると、これら制御信号に対応するスイッチ2Aおよび2DがOFF、スイッチ2Bおよび2CがONになる。磁気ヘッド1はインダクタンスであるので、このスイッチ切り替え時に、それまでに流れていた電流方向、この場合は図中Aの方向に電流を流し続けようとする誘導起電力(第1の誘導起電力)が磁気ヘッド1に発生する。
【0108】
また、同時に、該磁気ヘッド1の一端10Bに設けられた補助電流供給回路3Bもインダクタンスであるので、補助電流供給回路3Bには、それまでに流れていた電流を流し続けようとする誘導起電力(第2の誘導起電力)が発生する。しかし、スイッチ2DがON状態からOFF状態となるので、第1、第2の誘導起電力は、相互に逆向きに働く。上述した第1の実施形態と同様に、補助電流供給回路3Bのインダクタンスは、磁気ヘッド1のインダクタンスよりも大きく設定されているので、第2の誘導起電力は、第1の誘導起電力よりも大きくなる。その結果、磁気ヘッド1のA方向の電流は急激に立ち下がり、B方向の電流が急激に立ち上がる。
【0109】
一方、スイッチ切り替え前には補助電流供給回路3Aを通り、磁気ヘッド1をA方向に流れて、磁気ヘッド1に磁化エネルギーを与えていた電流は、スイッチ切り替え後には、スイッチ2Cを介して接地端子に接続される。その結果、補助電流供給回路3Aには電流を流さないように作用する誘導起電力(第3の誘導起電力)が発生する。この第3の誘導起電力によって、スイッチ切り替え前には、補助電流供給回路3Aを通り、磁気ヘッド1をA方向に流れていた電流は、急激に減衰する。
【0110】
磁気ヘッド1の電流が反転されると、ブリッジ回路に接続されている電源VCCから、定電流源8B、スイッチ2B、磁気ヘッド1、スイッチ2Cの順に、図中Bの方向に磁気ヘッド電流が引き続いて定常的に流れる。また、電源電圧VDD、定電流源8A、並びに補助電流供給回路3Bからも、図中Bの方向に磁気ヘッド電流として引き続き定常的に供給さる。さらには、電源電圧VDD、定電流源8B、および補助電流供給回路3Aを流れる電流は、磁気ヘッド1に流れ込むことなく、スイッチ2Cへと流れる。
【0111】
上記のように、本実施形態においては、定電流源8Aから補助電流供給回路3Aおよび3Bに記録速度に応じた定電流を供給すると共に、補助電流供給回路3Aおよび3Bにコイルを用い、磁気ヘッド1よりも十分に大きなインダクタンスに設定することによって、磁気ヘッド1に流れる電流を高速に切り替えることができる。
【0112】
2)低速記録動作の場合
次に、広く普及しているMD装置のように、記録速度が極めて低速な場合について説明する。
【0113】
図示されていない情報処理装置によって、光磁気ディスクへの記録速度が低速なモードが選択されると、電流値制御信号9Aにより、定電流源8Aが補助電流供給回路3Aおよび3Bに供給する電流値が決定される。また、定電流源8Aが、補助電流供給回路3Aおよび3Bに供給する電流値に概ね比例して、磁気ヘッド1の電流反転時間が決定され、光磁気ディスクへの記録速度に応じて定電流源8Aの電流値が制御される。このとき、定電流源8Aの電流値は、上述した高速動作の場合に比べて明らかに小さくなる。また、光磁気ディスクへの記録速度にもよるが、記録速度が十分に低速である場合には、定電流源8Aの電流値がゼロであってもよい。
【0114】
同時に、電流値制御信号9Bにより、定電流源8Bからスイッチ2A、2B、2Cおよび2Dで構成されるブリッジ回路に供給される電流値が決定される。また、定電流源8Bが、スイッチ2A、2B、2Cおよび2Dで構成されるブリッジ回路に供給する電流値に概ね比例して、磁気ヘッド1の電流振幅が決定される。したがって、定電流源8Aの場合と異なり、必ずしも光磁気ディスクへの記録速度に応じて、定電流源8Bの電流値が制御されるものではない。また、高速動作の場合と同様に定電流源8Bの電流値が、磁気ヘッド1の電流振幅を概ね決定するので、磁気ヘッド1で記録を行う光磁気ディスクの記録磁界感度に合わせて定電流源8Bの電流値を制御することができる。
【0115】
次に、2対のスイッチ2A、2B、2Cおよび2Dが、それぞれ制御信号4A、4B、4Cおよび4DによってON/OFF制御される。ここで、制御信号4Aおよび4Dが論理1、制御信号4Bおよび4Cが論理0になっているとすると、これら制御信号に対応するスイッチ2Aおよび2DがON、スイッチ2Bおよび2CがOFFになる。この時、ブリッジ回路に接続される電源電圧VCCから、定電流源8B、スイッチ2A、磁気ヘッド1、スイッチ2Dの順に、図中Aの方向に磁気ヘッド電流が流れる。また、該光磁気ディスクの記録速度にもよっては、電源VDDから、定電流源8A、および補助電流供給回路3Aを経由して、図中Aの方向に磁気ヘッド電流が供給される。
【0116】
一方、電源VDDから、定電流源8A、および補助電流供給回路3B経由で電流を流す場合には、磁気ヘッド1に流れ込むことなく、スイッチ2Dへと流れる。このとき、補助電流供給回路3Aまたは3Bから供給される電流値は、上述した高速動作時に比べて小さく設定される。
【0117】
次に、制御信号4Aおよび4Dが論理0、制御信号4Bおよび4Cが論理1に切り替わると、これら制御信号に対応するスイッチ2Aおよび2DがOFF、スイッチ2Bおよび2CがONになる。磁気ヘッド1はインダクタンスであるので、このスイッチ切り替え時には、それまでに流れていた電流方向、この場合は図中Aの方向に電流を流し続けようとする第1の誘導起電力が発生する。また同時に、該磁気ヘッド1の一端に設けられた補助電流供給回路3Bもインダクタンスであるので、補助電流供給回路3Bは、それまでに定電流源8Aから流れていた電流を流し続けようとする第2の誘導起電力を発生する。しかし、スイッチ2DがON状態からOFF状態となっているので、第1の誘導起電力と第2の誘導起電力とは相互に逆向きになる。
【0118】
しかし、低速記録動作の場合には、補助電流供給回路3Bを流れる電流が小さく設定されているので、第2の誘導起電力は、高速動作の場合に比較して小さい。したがって、第2の誘導起電力は、磁気ヘッド1中をA方向に流れる電流の立ち下げとB方向に流れる電流の立ち上げに対しては、大きな寄与を与えない。
【0119】
この場合には、極端な場合として次の2つの場合がある。
【0120】
a)第2の誘導起電力が第1の誘導起電力よりも大きい場合、
b)第2の誘導起電力が第1の誘導起電力よりも非常に小さい場合
a)の場合には、上述した高速動作の場合と同様な過程で磁気ヘッド1中をA方向に流れる電流は減衰し、B方向に流れる電流は立ち上がる。しかし、この場合には、第2の誘導起電力は、第1の誘導起電力に比較して高速動作時ほど大きくないので、結果的に、該磁気ヘッド1の電流反転時間が低速になる。
【0121】
b)の場合には、第2の誘導起電力は、磁気ヘッド1中をA方向に流れる電流の立ち下げと、B方向に流れる電流は立ち上げには関係しない。この場合には、第1の誘導起電力の緩和時間が経過して、第1の誘導起電力が電源VCCの電圧よりも小さくなったとき、電源VCCからスイッチ2Bを経由してB方向の磁気ヘッド電流が立ち上がる。
【0122】
上記のa)の場合とb)の場合の中間の場合には、両方の過程が現れる。
【0123】
上記のようにして、磁気ヘッド1の電流が反転なされると、ブリッジ回路に接続されている電源VCCから、定電流源8B、スイッチ2B、磁気ヘッド1、スイッチ2Cの順に、図中Bの方向に磁気ヘッド電流が、電流切り替え時の過渡状態に引き続いて定常的に流れる。また、電源電圧VDDから、定電流源8A、並びに補助電流供給回路3B経由で図中Bの方向に磁気ヘッド電流が引き続いて定常的に供給される。さらには、電源VDDから、定電流源8B、および補助電流供給回路3Aを流れる電流は、磁気ヘッド1に流れ込むことなく、スイッチ2Cを通って接地端子へ流れる。
【0124】
図3は図1に示した実施形態の動作を説明するタイミングチャートである。
【0125】
図3において、電源供給スイッチ7がONのときは、磁気ヘッドの高速動作時(図面左側)で、電源供給スイッチ7がOFFのときは、磁気ヘッドの低速動作時(図面右側)である。前記したように、低速動作時には2対のスイッチによって構成されるブリッジ回路のON/OFF制御のみによって磁気ヘッドの電流切り替えが行われる。
【0126】
制御信号4A、4B、4Cおよび4Dのハイレベル(論理1)は、それぞれ対応するスイッチ2A、2B、2Cおよび2DのONに対応し、ロウレベル(論理0)は、それぞれ対応するスイッチ2A、2B、2Cおよび2DのOFFに対応する。したがって、制御信号4Aおよび4Dがハイレベル、制御信号4Bおよび4Cがロウレベルのとき、磁気ヘッド1にはA方向の電流が流れる。逆に、制御信号4Aおよび4Dがロウレベル、制御信号4Bおよび4Cがハイレベルのとき、磁気ヘッド1にはB方向の電流が流れる。
【0127】
したがって、制御信号4Aおよび4Dが立ち上がり、制御信号4Bおよび4Cが立ち下がるタイミングで、磁気ヘッド電流はB方向からA方向に切り替わる。このとき、スイッチ2Cは、ONからOFFに切り替わるので、補助電流供給回路3Aには、その切り替え前の電流を維持しようとする誘導起電力(第2の誘導起電力)が発生する。この誘導起電力によって、接続点10Aの電位は鋭く立ち上がる(図3、接続点10Aの電位曲線参照)。この電位の立ち上がりによってA方向の磁気ヘッド電流は鋭く立ち上がる(図3、磁気ヘッド電流曲線参照)。
【0128】
この第2の誘導起電力の緩和後、それに引き続いて電源VCC、および電源VDDから供給される定常電流が磁気ヘッドを流れる。この定常電流は、図3の接続点10Aの電位曲線において、誘導起電力によって生じた過渡的電位の緩和後、それに引き続く平坦(横軸に平行)な曲線として表されている。なお、この曲線において、さらにこの平坦な曲線に続く低レベルの平坦部分は、VDDから補助電流供給回路3A経由でスイッチ2Cに流れ込む電流とB方向の電流とがスイッチ2Cのオン抵抗によって生成する電圧である。
【0129】
接続点10Bの電位曲線も、接続点10Aの電位曲線と同様の理由によって同様に変化するので、説明を省略する。
【0130】
図3の右側に描かれている低速記録動作についても、制御信号4A、4B、4Cおよび4Dの論理レベルとスイッチ2A、2B、2Cおよび2DのON/OFFとの関係は、高速動作の場合と同様である。
【0131】
しかし、この場合には、電源供給スイッチ7がOFFであるので、補助電流供給回路3A、3Bは記録動作に寄与しない。したがって、高速動作時に接続点10A、10Bにおける電位曲線に見られるような高く急峻な電圧は現れない。
【0132】
低速記録動作時における磁気ヘッドドライブ回路の動作を、磁気ヘッド電流がB方向からA方向に切り替わる場合について説明する。
【0133】
スイッチ2B、2CがONからOFFに切り替わり、スイッチ2A、2DがOFFからONに切り替わる。磁気ヘッド電流がB方向からA方向に切り替わるとき、すなわち、制御信号4A、4Dの立ち上げ時には、磁気ヘッド電流をB方向流し続けようとする誘導起電力(第1の誘導起電力)が発生する。
【0134】
上記の誘導起電力によって、接続点10Aの電位は鋭く立ち上がる。しかし、磁気ヘッドのインダクタンスは小さいので、その電位曲線のピーク値は、高速動作の場合に比較して低い。
【0135】
立ち上がった電位は、電流をB方向に流すように働く誘導起電力によって生成された電位であるから、A方向の電流を阻止するように働く。その結果、スイッチの切り替え時には、A方向の磁気ヘッド電流は、この立ち上がった電位に阻止されて緩やかに立ち上がる。図3の、低速記録動作時における磁気ヘッド電流曲線は電流値の緩やかな立ち上がりを示している。同様なことが、磁気ヘッド電流がA方向からB方向に切り替わるときにも生じる。
【0136】
上記のように、補助電流供給回路3Aおよび3Bにコイルを用い、そのインダクタンスを磁気ヘッド1よりも十分に大きく設定すると共に、定電流源8Aから補助電流供給回路3Aおよび3Bに、記録速度に応じて高速動作時に比べて小さい定電流を供給することによって、磁気ヘッド1に流れる電流を低速記録動作に適応するように切り替えることができる。このように、定電流源8Aから補助電流供給回路3Aおよび3Bに高速動作時に比べて小さい、記録速度に応じた定電流を供給することによって、不要な電流消費・電力消費を低減することができる。
【0137】
なお、本発明の第2の実施形態の説明において、補助電流供給回路として、磁気ヘッド1のインダクタンスよりも大きなインダクタンスを有するコイルを用いたが、第1の実施形態において説明したのと同様に、該コイルの代替え手段としてはダイオードを用いることも可能である。
【0138】
図5は、補助電流供給回路3Aおよび3Bとしてダイオード3a’、3b’を用いた場合の構成図である。
【0139】
図5に示すドライブ回路におけるダイオード3a’、3b’の動作は、図4に示したダイオード3a、3bと同様であるので説明を省略する。
【0140】
図2に示した本発明の第2実施形態の説明においては、ただ一つの磁気ヘッドドライブ回路で、記録速度が異なる光磁気ディスクに対応可能であることを示したが、以下の様な応用も十分に可能である。
【0141】
その一例としては、光磁気ディスクの記録モードとして、通常モードと省エネモードを設け、通常モードの動作状態においては、上記高速動作で磁気ヘッドドライブ回路を駆動し、また省エネモード、例えばバッテリー動作状態においては、装置システム全体の動作速度を遅くすると共に上記低速動作で磁気ヘッドドライブ回路を駆動することによって、バッテリーの負荷を軽減することが可能である。
【0142】
さらに別の例としては、光磁気ディスクの記録モードとして、通常モードと低品質モードを設け、通常モードの動作状態においては、前掲の高速動作で磁気ヘッドドライブ回路を駆動し、また低品質モードの動作状態においては、例えば音楽の記録時において記録するデータを間引くと共に前掲の低速動作で磁気ヘッドドライブ回路を駆動することによって、装置システムの消費電力を軽減することも可能である。
【0143】
またさらに他の応用例としては、ZCAV(ゾーン定角速度)方式が適用される光磁気ディスクにおいて該磁気ヘッドドライブ回路を最適に駆動する例がある。ZCAV方式においては、光磁気ディスクを一定角速度で回転するので、半径毎に複数のゾーンに区切り、該ゾーン毎に最大記録密度を実現するように、記録再生速度を切り替える。換言すれば、ZCAV方式においては、一般的にディスク半径に比例して記録再生速度が高速になり、その速度格差は2倍から4倍程度になる。このような光磁気ディスク装置においては、本発明の第2実施形態に示されている磁気ヘッドドライブ回路を用いることができる。例えば10ゾーンに分けられた光磁気ディスクの、10個の異なる記録速度に最適になるように、定電流源8Aおよび8Bを制御することによって、補助電流供給回路3Aおよび3Bに記録速度に応じた定電流を供給する。それによって、不要な電流消費および電力消費を低減することが可能である。
【0144】
上記の説明においては、光磁気ディスクへの記録速度に応じて、本発明の磁気ヘッドドライブ回路を最適に駆動することに関して説明したが、本発明の第2の実施形態によれば以下のようなことも容易に実現可能である。
【0145】
記録磁界感度の補償
例えば、光磁気ディスク及び光磁気ディスク装置を長期間使用すると、光磁気ディスクの磁性膜の劣化や、塵等の付着により記録磁界感度が低下することがある。また、光磁気ディスクの製造工程によっては記録磁界感度のあまり良くないものが製造されることがある。
【0146】
上記のような場合には、磁気ヘッド電流を大きくして光磁気ディスクの記録磁区の磁化を強くする。そのために、スイッチ2A、2B、2Cおよび2Dで構成されるブリッジ回路を通って定電流源8Bから磁気ヘッド1に供給される電流値を増加させて磁気ヘッド電流の振幅を大きくする。
【0147】
そのとき、定電流源8Aから補助電流供給回路を通って磁気ヘッド1に供給する電流値を減少させ、その減少分だけ、ブリッジ回路を通って定電流源8Bから磁気ヘッド1に供給される電流値を増加させる。
【0148】
このようにすることによって、磁気ヘッド1の記録動作速度は遅くなるけれど、全体の消費電力を増加させないで済むという利点がある。
【0149】
このようにして、記録磁界感度のあまり良くない光磁気ディスクに対しても、全体の消費電力を増加させることなく、磁気ヘッドの記録動作速度を遅くすることによって記録磁界感度を補償することができる。
【0150】
磁気ヘッドの補償
本実施形態の他の応用例として、複数種類の磁気ヘッドの、インダクタンスが異なる場合において、それぞれの磁気ヘッドのインダクタンスに応じて、定電流源8Aを多段階に制御することによって、複数種類の磁気ヘッド1について同じ電流反転時間と動作速度を実現する。このようにして、複数種類の磁気ヘッドの、インダクタンスの相違に基づく電流反転時間と動作速度の相違を補償することができる。
【0151】
以上説明した本発明の実施形態は、光磁気ディスク装置に組み込まれて効果を奏するものであり、本発明は、各実施形態が組み込まれた光磁気ディスク装置を含むものである。
【0152】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の第1の磁気ヘッドドライブ回路によれば、記録速度が高速である場合には、電源供給スイッチをON状態にして補助電流供給回路に電源を供給することによって、該補助電流供給回路を用いて、磁気ヘッドに流れる電流の高速の反転を実現することができる。
【0153】
また、記録速度が低速である場合には、電源供給スイッチをOFF状態にして補助電流供給回路を電源電圧から遮断することによって、磁気ヘッドに流れる電流の低速の反転を実現することができる。
さらに、補助電流供給回路の動作インピーダンスが低くなる、低い記録速度で記録するときに電源供給スイッチをターンオフすることによって、補助電流供給回路の低い動作インピーダンス特性に起因するド磁気ヘッドライブ回路の動作インピーダンスの低下を防止することができる。
【0154】
このようなドライブ回路の動作インピーダンスの低下防止によって、該補助電流供給回路、電流制限抵抗並びに磁気ヘッドに流れる無駄な電流消費・電力消費を低減することができる。また同時に、磁気ヘッドに過大な電流が流れることが防止されるので、該磁気ヘッドに用いられるコア及びコイルの温度上昇や、温度上昇によりコイルに断線等が発生することを防止することができる。
【0155】
なお、上記の実施形態に、補助電流供給回路にコイルを用いる方法と、ダイオードを用いる方法を示したが、発明者の検討によれば、補助電流供給回路にコイルを用いる方法の方が、磁気ヘッドの電流を高速に反転することができる。また、該補助電流供給回路にダイオードを用いる方法は、磁気ヘッドドライブ回路および磁気ヘッドの無駄な電流消費および電力消費を低減する効果を有する。
【0156】
以上説明したように、本発明による磁気ヘッドドライブ回路は、光磁気ディスクの記録速度に応じて、最適な磁気ヘッドドライブ回路を実現することができる。
さらには、光磁気ディスクの記録速度に応じて、例えば高速モード・低速モードを切り替える装置においては、該補助電流供給回路に磁気ヘッドのインダクタンスよりも十分に大きなコイルを用い、また別の場合として、中速モードと低速モードとを切り替える装置においては、該補助電流供給回路にダイオードを用いることが有効である。
【0157】
また、本発明の第2の磁気ヘッドドライブ回路によれば、記録速度が高速である場合には、定電流源から補助電流供給回路に記録速度に応じた定電流を供給し、該補助電流供給回路を用いて、磁気ヘッドに流れる電流の高速な反転を実現することができる。
【0158】
また、記録速度が低速である場合には、定電流源から補助電流供給回路に、記録速度が高速である場合より小さい定電流を供給し、磁気ヘッドに流れる電流の低速の反転を実現することができる。
【0159】
さらに、低い記録速度の場合には、定電流源から補助電流供給回路に、記録速度が高速である場合より小さい定電流を供給し、または定電流源から補助電流供給回路への電流の供給を停止する。これにより、補助電流供給回路の低い動作インピーダンス特性に起因する磁気ヘッドドライブ回路の動作インピーダンスの低下を防止すると共に、該補助電流供給回路、および磁気ヘッドに生じる無駄な電流消費・電力消費を最低限に抑制することができる。また同時に、磁気ヘッドに過大な電流が流れることを防ぐので、該磁気ヘッドに用いられるコア及びコイルの温度上昇や、該温度上昇によりコイルが断線等の発生を防止することができる。
【0160】
また、本発明の磁気ヘッドドライブ回路の第1及び第2の実施形態において説明した該高速動作を通常動作モードとし、低速動作を省エネモードまたは低品質モードとして動作させることによって、該回路を含むシステムの省電力化を達成することも可能である。
【0161】
また、第2の実施形態において説明したように、定電流源を多段階に制御することによって、ZCAV方式が適用される光磁気ディスクにおいて、ゾーン毎に異なる記録速度に対応する最適な駆動を容易に実現することが可能である。また、定電流源から補助電流供給回路を通って磁気ヘッドに供給する電流値を減少させ、その減少分を補償するように、定電流源からスイッチ素子で構成されるブリッジ回路を通って磁気ヘッドに供給される電流を増加させることによって、全体の消費電力を増加させることなく該磁気ヘッドの動作速度を遅くすることによって、記録磁界感度が劣化した光磁気ディスクに適応した記録処理をすることも可能である。
【0162】
また、本発明の第2の磁気ヘッドドライブ回路は、磁気ヘッドのインダクタンスが異なる場合においては、該磁気ヘッドのインダクタンスに応じて、定電流源を多段階に制御することによって、複数種類の磁気ヘッドに対して同様の電流反転時間と動作速度で対応することができる。
【0163】
以上説明したように、本発明による磁気ヘッドドライブ回路は、光磁気ディスクの記録速度に応じて、最適な磁気ヘッドドライブ回路を実現することができる。
さらには、光磁気ディスクの記録速度に応じて、例えば高速モードと低速モードとを切り替える装置においては、該補助電流供給回路に磁気ヘッドのインダクタンスよりも十分に大きなコイルを用い、また別の場合として、中速モードと低速モードとを切り替える装置においては、該補助電流供給回路にダイオードを用いることが有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気ヘッドドライブ回路の、第1の実施形態の構成図である。
【図2】本発明の磁気ヘッドドライブ回路の、第2の実施形態の構成図である。
【図3】第1、第2の実施形態のタイミングチャートである。
【図4】図1の実施形態において補助電流供給回路にダイオードを用いた場合の構成図である。
【図5】図2の実施形態において補助電流供給回路にダイオードを用いた場合の構成図である。
【図6】従来の磁気ヘッドドライブ回路の構成図である。
【図7】従来の磁気ヘッドドライブ回路の構成図である。
【図8】従来の磁気ヘッドドライブ回路の構成図である。
【符号の説明】
1 磁気ヘッド
2A、2B、2C、2D トランジスタまたはFET等によるスイッチ
3A、3B コイルまたはダイオード等による補助電流供給回路
4A、4B、4C、4D ON/OFF制御信号
5A、5B 電流制限抵抗
6A、6B 電流制限抵抗
7 電源供給スイッチ
8A、8B 定電流源または可変電圧源
9A、9B 電流値制御信号
【発明の属する技術分野】
本発明は、光磁気ディスクを用いる光磁気ディスク装置に関し、特に、光磁気ディスクへの情報記録に用いる磁気ヘッドを、光磁気ディスクへの情報記録速度に応じて、最適動作に切り替える磁気ヘッドドライブ回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報の高密度記録媒体として光磁気ディスクが注目されている。
光磁気ディスクは、情報の記録再生が行われる記録再生トラックを複数の磁性膜で構成し、その記録再生トラックを同心円状または螺旋状に設けたものである。光磁気ディスクを用いる装置として、ミニディスク(以下、MDと記す)が音楽の記録再生用として広く普及している。
【0003】
MDにおける再生方法は、概略次のように実施される。
半導体レーザ等の光源を用いて光磁気ディスクへ光ビームを照射する。光磁気ディスクに照射された光ビームは、該光磁気ディスクを構成する磁性膜の磁区の磁化方向に依存する磁気光学効果を受けて偏りの向きを変えて反射される。以下、この反射を偏向反射と記す。偏向反射された光ビームは、検光素子と光電変換素子によって光ビームの偏より方向に応じた電気的再生信号として検出される。このようにして、該光磁気ディスクからの情報再生が行われる。
【0004】
また、MDにおける記録方法の概略動作は次のように行われる。光磁気ディスクに半導体レーザ等の光源を用いて光ビームを照射する。この時、照射される光ビームは、再生時における光ビーム強度よりも強い強度であり、該光ビームの照射される光磁気ディスクを局所的に加熱する。光ビームで加熱された磁性層の部分(磁区)は、光磁気ディスクを構成する磁性膜のキュリー温度を超える温度になると、磁性膜の保磁力が低下し、それまで記録されていた磁化状態を消失する。
この時、該光ビームで加熱されて保持力の低下した磁性層部分に、外部から磁界を印加すると、その外部磁界と同じ向きに磁化の状態を切り替えることができる。したがって、該外部磁界を記録情報に応じて変調することにより、該光磁気ディスクに新しい情報の記録が行われる(磁界変調記録)。
【0005】
図6は、MDで広く用いられている磁気ヘッドドライブ回路である。
磁気ヘッド61は、約500μm四方の小さなコアとコイルで構成され、光磁気ディスクを構成する磁性膜に近接して配置され、該磁性膜に磁界を印可する。スイッチ62A、62B、62C、62Dは、FET等で構成され、磁気ヘッド61に流れる電流の向きを切り替える。これら2対のスイッチ62A、62B、62C、62Dはブリッジ回路を構成する。制御信号64A、64B、64C、64Dは、スイッチ62A、62B、62C、62Dの制御信号である。制御信号64A、64Dが論理1、制御信号64C、64Bが論理0になると、スイッチ62A、62DがON状態、スイッチ62C、62BがOFF状態になり、磁気ヘッド61には、図6中のAの方向に電流が流れる。制御信号64C、64Bが論理1、制御信号64A、64Dが論理0になると、スイッチ62A、62DがOFF状態、スイッチ62C、62BがON状態になり、磁気ヘッド61には、図6中のBの方向に電流が流れる。
【0006】
上記のようにして、制御信号64A、64B、64C、64Dとして記録信号を用いることによって、磁気ヘッド61の発生磁界は記録信号に応じて変調される。
【0007】
抵抗66A、66Bは、磁気ヘッド61に流れる電流を制限する電流制限抵抗である。磁気ヘッド61に流れる電流は、電源電圧VCCと該電流制限抵抗66A、66Bによってほぼ決定され、その電流によって光磁気ディスクに印加される磁界強度も決定される。
【0008】
また、近年の光磁気ディスクの分野においては、前記のMDに比べて数倍の高記録密度の記録を達成すると共に、その記録再生速度も数倍に速くするための技術開発が盛んに行われており、例えば、磁気超解像技術や磁壁移動技術等が広く知られている。
【0009】
磁気超解像技術による記録再生方法は、基本的に前記MDと同様である。
【0010】
磁気超解像技術の特徴は、光磁気ディスクから記録信号を再生する時、光ビームで光磁気ディスクを僅かに加熱する。該光ビームによる加熱により、該光ビームのスポットサイズよりも微小サイズの磁区に記録された情報が再生可能になる。
【0011】
また、前記磁壁移動技術の記録再生方法も、基本的には前記MDと同様である。
磁壁移動技術の特徴は、光磁気ディスクから記録信号を再生する時、光ビームで光磁気ディスクを僅かに加熱する。該光ビームによる加熱により、当該記録磁区を読み出す短い時間だけ、光磁気ディスク上の磁化状態の境界(以下、磁壁と記す)を移動させることにより、該光ビームのスポットサイズよりも微小サイズの磁区に記録されている情報を再生することを可能としている。
【0012】
上記の超解像技術や磁壁移動技術を採用する場合においても、信号の記録は、MDと同様に、外部磁界を記録情報に応じて変調することによって、光磁気ディスクに新しい情報を記録する磁界変調記録が広く用いられる。
【0013】
図7は、特開昭63−94406号公報に開示されているような高密度記録並びに高速記録を達成するために広く用いられている磁気ヘッドドライブ回路の構成を示す回路図である。
【0014】
磁気ヘッド(LH)71は、光磁気ディスクを構成する磁性膜に近接して配置され、該磁性膜に磁界を印可する。磁気ヘッド71は、MDに比べて数倍の高密度記録および高速記録を達成するために、約150μm四方の小さなコアとコイルで構成されている。スイッチ72A、72Bは、FET等で構成され、磁気ヘッド71に流れる電流の方向を切り替えるスイッチである。制御信号74Aおよび74Bは、それぞれスイッチ72Aおよび72Bを制御する。該制御信号74Bを論理1の状態とし、制御信号74Aを論理0の状態にすると、スイッチ72BがON状態になり、スイッチ72AがOFF状態になる。その結果、磁気ヘッド71には図7中のAの方向に電流が流れる。逆に、制御信号74Aを論理1の状態とし、制御信号74Bを論理0の状態にすると、スイッチ72AがON状態となり、スイッチ72BがOFF状態になる。その結果、磁気ヘッド71には図7中のBの方向に電流が流れる。したがって、制御信号74Aおよび74Bとして記録信号を用いてスイッチ72A、72Bを駆動することによって、磁気ヘッド71の発生磁界を記録信号に応じて変調することができる。
【0015】
参照番号73Aおよび73Bで指定されている部品は、磁気ヘッド71に流れる電流を高速に反転させるための補助手段で、磁気ヘッド71よりも十分に大きなインダクタンスを持つコイルで構成されている。
【0016】
抵抗75Aおよび75Bは、磁気ヘッド71に流れる電流を制限する電流制限抵抗である。磁気ヘッド71に流れる電流は、電源電圧VCCと電流制限抵抗75A、75Bによってほぼ決定され、その電流値によって光磁気ディスクに印加される磁界強度が決定される。
【0017】
図8は、特開平5−128402号公報に開示されている磁気ヘッドドライブ回路の構成を示す回路図である。
【0018】
磁気ヘッド(LH)81は、光磁気ディスクを構成する磁性膜に近接して配置され、光磁気ディスクの磁性膜に磁界を印可する。磁気ヘッド81は、MDに比べて数倍の高密度記録および高速記録を達成するために、約150μm四方の小さなコアとコイルで構成される。
【0019】
スイッチ82A、82B、82C、82DはFET等で構成され、磁気ヘッド81に流れる電流の方向を切り替える。2対のスイッチ82A、82B、82C、82Dはブリッジ回路を構成する。制御信号84A、84B、84C、84Dは、それぞれ、スイッチ82A、82B、82C、82Dをオン・オフ制御する。制御信号84Aおよび84Dを論理1の状態にし、制御信号84Bおよび84Cを論理0の状態することによって、スイッチ82Aおよび82DがON状態になり、スイッチ82Bおよび82CがOFF状態になる。その結果、磁気ヘッド81に図8中のAの方向に電流が流れる。逆に、制御信号84Aおよび84Dを論理0の状態にし、制御信号84Bおよび84Cを論理1の状態することによって、スイッチ82Aおよび82DがOFF状態になり、スイッチ82Bおよび82CがON状態になる。その結果、磁気ヘッド81に図8中のBの方向に電流が流れる。
【0020】
したがって、制御信号84A、84B、84C、84Dとして記録信号を用いてそれぞれのスイッチ82A、82B、82C、82Dを駆動することによって、磁気ヘッド81の発生磁界が記録信号に応じて変調される。
【0021】
図中、参照番号83Aおよび83Bで指定されている部品は、磁気ヘッド81に流れる電流を高速に反転させるための補助手段であって、磁気ヘッド81よりも十分に大きなインダクタンスを持つコイルで構成される。
【0022】
抵抗85Aは、電源電圧VDDからコイル83Aを通って磁気ヘッド1に流れる補助電流を制限する電流制限抵抗であり、抵抗85Bは、電源電圧VDDから補助手段83Bを通って磁気ヘッド81に流れる補助電流を制限する電流制限抵抗である。磁気ヘッド81に流れる補助電流は、電源電圧VDDと該電流制限抵抗85A、85Bによってほぼ決定される。
【0023】
抵抗86Aおよび86Bは、電源電圧VCCからスイッチ82A、82Dおよび82B、82Cを通って磁気ヘッド81に流れる主電流を制限する電流制限抵抗である。磁気ヘッド81に流れる主電流は、電源電圧VCCと該電流制限抵抗86A、86Bによってほぼ決定される。光磁気ディスクに印加される磁界強度は、主電流及び前記補助電流によって決定される。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
従来、光磁気ディスクの記録に用いられる磁気ヘッド81の駆動方法としては、前記の図6、図7、図8に記載されているような磁気ヘッドドライブ回路が広く用いられている。
【0025】
しかし、図6に示されているドライブ回路は、スイッチ62Aおよび62D、62Bおよび62Cのスイッチング動作で磁気ヘッド61の電流方向を切り替えるので、磁気ヘッド61による磁界の高速変調が困難であり、磁気ヘッド61のインダクタンス及び駆動電流にもよるが、おおよそ1MHz以下の変調速度であり高速駆動が困難であるという問題点がある。
【0026】
図7に示されているドライブ回路は、磁気ヘッド71の両端に設けられた補助手段73Aおよび73Bに用いられている高インダクタンスコイルに蓄積されている誘導エネルギーを利用して磁気ヘッド71に流れる電流を高速に切り替える。この回路では、基本的に、電流の切り替えによって逆向きの電流が磁気ヘッド71に蓄積すべき誘導エネルギーを、磁気ヘッド71と、2つの高インダクタンスコイルのそれぞれとの間のエネルギー授受によって生成される(回路の電流パスの切り替えによって2つの高インダクタンスコイルに生じる誘導起電力によって磁気ヘッド71を流れる電流の切り替えが行われる。)。
【0027】
上記のように、図7に示した回路では、電源から供給される電流の切り替え時に発生する誘導起電力によって切り替え前の電流の立ち下げと切り替え後の電流の立ち上げが行われるので、磁気ヘッド71のインダクタンス及び駆動電流にもよるが、10MHz程度までの高い変調速度を達成することができるものとなっている。
【0028】
しかしながら、図7に示す磁気ヘッドドライブ回路においては、補助手段73Aまたは73Bを通して磁気ヘッド71に流れる電流以外に、補助手段73Bまたは73Aから直接にグラウンドに電流が流れ、したがって、磁気ヘッド71を通らない無駄な電流が存在するので、必要以上にドライブ回路の消費電力が大きくなるとい問題点がある。
【0029】
さらに、このドライブ回路においては、磁気ヘッド71の変調速度を低くすると、補助手段73A、73Bに用いられるコイルの動作インピーダンスが低下する。補助手段73A、73Bの動作インピーダンスの低下は、同時にドライブ回路の動作インピーダンスの低下となる。そのため、磁気ヘッド71の変調速度を低下させると、該ドライブ回路には過大な電流が流れる。ドライブ回路の電流増加は、消費電力も増大するばかりでなく、磁気ヘッド71に流れる電流も増加する。その結果、該磁気ヘッド71に用いられるコア及びコイルの温度上昇や、その温度上昇によってコイルが断線する等の問題が起きる。
【0030】
これらの理由によって、図7に示されている該ドライブ回路は、磁気ヘッド71の高速に変調することには適しているが、該磁気ヘッド71を低速に変調するには不向きである。
【0031】
図8に示されているドライブ回路は、磁気ヘッド81の両端に設けられた補助手段83Aおよび83Bに用いられている高インダクタンスコイルに蓄積されている誘導エネルギーを利用して磁気ヘッド81に流れる電流を高速に切り替える。また2対のスイッチ82A、82B、82C、82Dで構成されるブリッジ回路を併設してこのブリッジ回路の出力端子を磁気ヘッド81に接続することによって、補助電流供給回路83A、83Bの電流を効率よく利用することができる。磁気ヘッド81のインダクタンス及び駆動電流にもよるが、この回路は15MHz程度までの変調速度を達成することができる。
【0032】
図8に示されている該ドライブ回路においても、補助手段83Aまたは83Bを通して磁気ヘッド81に流れる電流の他に、該補助手段83Bまたは83Aからグラウンドに流れ、その結果、磁気ヘッド81に流れない無駄な電流が、図7に示したドライブ回路よりは小さいものの存在する。したがって、必要以上に消費電力が大きくなるという問題点がある。
【0033】
さらに、図8に示したドライブ回路においては、磁気ヘッド81によって生成される記録磁界の変調速度を低くすると、図7に示されているドライブ回路と同様に、補助手段83A、83Bに用いられるコイルの動作インピーダンスが低下する。補助手段83A、83Bの動作インピーダンスの低下は、同時にドライブ回路の動作インピーダンスの低下となる。その結果、記録磁界の変調速度の低下によって、図7に示されているドライブ回路と同様に、ドライブ回路には過大な電流が流れる。ドライブ回路の電流が増加すると、消費電力が増大するばかりでなく、磁気ヘッド81に流れる電流も増加する。その結果、該磁気ヘッド81に用いられるコア及びコイルの温度上昇や、該温度上昇によりコイルが断線する等の問題を起こす。
【0034】
これらの理由から、図8に示されているドライブ回路は、図7に示されているドライブ回路と同様に、磁気ヘッド81の高速な変調には適しているものの、磁気ヘッド81を低速変調するには不向きである。
【0035】
以上のように、図6、図7、図8に示されている従来のドライブ回路は、低速変調用として図6のドライブ回路、高速変調用として図7または図8のドライブ回路が使用される。
【0036】
その結果、MDのような低速な記録再生速度と、超解像技術や磁壁移動技術を用いる高速な記録再生速度を、同じ光磁気ディスク装置として実現することは困難である。
【0037】
このため、複数の磁気ヘッドと複数のドライブ回路を同一装置内に設けることによって、MDのような低速な記録再生速度と、超解像技術や磁壁移動技術を用いる高速な記録再生速度とに応じてドライブ回路を使い分ける方法が考えられる。しかし、この方法は、これら部品・実装スペースの増加や、コストの増加を招くばかりばかりでなく、装置の小型化を困難にする。
【0038】
さらに、高速変調用として図7または図8の高速記録用のドライブ回路を唯一つ用いる装置において、MDの記録再生速度のように低速な記録再生速度を実現しようとすると、過大な電流・消費電力の増加が生じる。
【0039】
さらには、光磁気ディスクの記録位置(半径)によって、複数の記録速度に切り替えを行うZCAV方式において、高速記録用の図7または図8のドライブ回路を、唯一つ用いると、低速な記録再生速度に切り替えたとき、過大な電流・消費電力の増加が発生する。
【0040】
本発明は上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、高速記録と低速記録との両方に使用することができる磁気ヘッドドライブ回路を提供することを目的とする。
【0041】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の形態による磁気ヘッドドライブ回路は、磁界を発生する磁気ヘッドを、2つの異なる記録転送レートで駆動して磁界変調記録を行う磁気ヘッドドライブ回路において、
前記磁気ヘッドに流れる電流の方向を、記録信号に応答して第1の方向または第2の方向に切り替えて主電流として前記磁気ヘッドに供給する電流切り替え手段と、
前記磁気ヘッドに流れる第1の方向の主電流を補助する第1の補助電流供給手段と、
前記磁気ヘッドに流れる第2の方向の主電流を補助する第2の補助電流供給手段と、
前記第1の補助電流供給手段および前記第2の補助電流供給手段への電源電圧供給を記録転送レートに応じてON/OFFする電源供給手段とを有し、
前記電源供給手段は、前記記録転送レートが高い第1の転送レートの時にONとなり、前記第1の補助電流供給手段および、前記第2の補助電流供給手段へ電源電圧を供給し、該記録転送レートが低い第2の転送レートの時にOFFとなり、前記第1の補助電流供給手段および、前記第2の補助電流供給手段への電源電圧供給を遮断することを特徴とする。
【0042】
本発明の第1の形態による磁気ヘッド駆動方法は、磁界を発生する磁気ヘッドを、2つの異なる記録転送レートで駆動して磁界変調記録を行う磁気ヘッド駆動方法において、
前記磁気ヘッドに流れる電流の方向を、記録信号に応答して第1の方向または第2の方向に切り替えて主電流として前記磁気ヘッドに供給する電流切り替え手段と、
前記磁気ヘッドに流れる第1の方向の主電流を補助する第1の補助電流供給手段と、
前記磁気ヘッドに流れる第2の方向の主電流を補助する第2の補助電流供給手段と、
前記第1の補助電流供給手段および前記第2の補助電流供給手段への電源電圧供給を記録転送レートに応じてON/OFFする電源供給手段とを設け、
前記記録転送レートが高い第1の転送レートの時、前記電源供給手段をONにして、前記第1の補助電流供給手段および、前記第2の補助電流供給手段へ電源電圧を供給し、該記録転送レートが低い第2の転送レートの時、該電源供給手段をOFFにして、前記第1の補助電流供給手段および、前記第2の補助電流供給手段への電源電圧供給を遮断することを特徴とする。
【0043】
上記のようにして、高速記録(記録転送レートが高い)の場合には、第1および第2の補助電流供給回路から供給される補助電流によって切り替え前の電流を立ち下げ、切り替え後の電流を立ち上げる。また、低速記録(記録転送レートが低い)の場合には、第1および第2の補助電流供給回路からの補助電流の供給を遮断し、電流切り替え回路から供給される主電流の切り替えによって磁気ヘッド電流を切り替える。
【0044】
したがって、高速記録時には、第1および第2の補助電流供給回路によって電流の急速な立ち下げと立ち上げを達成し、低速記録時には第1および第2の補助電流供給回路の動作インピーダンスが低下することによって過大な電流が流れることを防止することができる。
【0045】
本発明の第2の形態による磁気ヘッドドライブ回路は、磁界を発生する磁気ヘッドを、2つの異なる記録転送レートで駆動して磁界変調記録を行う磁気ヘッドドライブ回路において、
前記磁気ヘッドに流れる電流の方向を、記録信号に応答して第1の方向または第2の方向に切り替えて主電流として前記磁気ヘッドに供給する電流切り替え手段と、
前記磁気ヘッドに流れる第1の方向の主電流を補助する第1の補助電流供給手段と、
前記磁気ヘッドに流れる第2の方向の主電流を補助する第2の補助電流供給手段と、
前記電流切り替え手段に任意の強さの電流を供給する第1の電源供給手段と、前記第1の補助電流供給手段および前記第2の補助電流供給手段に任意の強さの電流を供給する第2の電源供給手段と、
を有し、
前記記録転送レートが高い転送レートのときには、前記第1の電源供給手段は前記電流切り替え手段に供給される電流を相対的に小さく設定し、前記第2の電源供給手段は前記第1の補助電流供給手段および前記第2の補助電流供給手段に供給する電流を相対的に大きく設定することを特徴とする。
【0046】
本発明の第2の形態による磁気ヘッド駆動方法は、磁界を発生する磁気ヘッドを、2つの異なる記録転送レートで駆動して磁界変調記録を行う磁気ヘッド駆動方法において、
前記磁気ヘッドに流れる電流の方向を、記録信号に応答して第1の方向または第2の方向に切り替えて主電流として前記磁気ヘッドに供給する電流切り替え手段と、
前記磁気ヘッドに流れる第1の方向の主電流を補助する第1の補助電流供給手段と、
前記磁気ヘッドに流れる第2の方向の主電流を補助する第2の補助電流供給手段と、
前記電流切り替え手段に任意の強さの電流を供給する第1の電源供給手段と、前記第1の補助電流供給手段および前記第2の補助電流供給手段に任意の強さの電流を供給する第2の電源供給手段と、
を設け、
前記記録転送レートが高い転送レートのときには、前記第1の電源供給手段により前記電流切り替え手段に供給される電流を相対的に小さく設定し、前記第2の電源供給手段により前記第1の補助電流供給手段および前記第2の補助電流供給手段に供給される電流を相対的に大きく設定することを特徴とする。
【0047】
上記のように、高速記録のときには、第1の補助電流供給回路および第2の補助電流供給回路に供給される電流を大きく設定して電流切り替え回路に供給される電流を小さく設定し、低速記録のときには、その逆に電流設定をすることによって、全体としての電力をほぼ一定に保ったまま、電流切り替え速度、したがって、記録転送レートを所望の値に設定することができる。
【0048】
電源供給回路は、スイッチまたは可変定電流装置もしくは可変定電圧装置であることが望ましい。
【0049】
第1の電源供給回路及び第2の電源供給回路は、可変定電流装置または可変定電圧装置であることが望ましい。
【0050】
第1の補助電流供給回路及び第2の補助電流供給回路は、前記磁気ヘッドのインダクタンスよりも大きなインダクタンスを有するコイルであることが望ましい。
【0051】
第1の補助電流供給回路及び第2の補助電流供給回路として、整流素子を用いることができる。
【0052】
本発明による光磁気ディスク装置は、上記のいずれかに記載の磁気ヘッドドライブ回路を有することを特徴とする。
【0053】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0054】
図1は本発明の磁気ヘッドドライブ回路の第1の実施形態を示す回路図である。
【0055】
図1において、磁気ヘッド(LH)1は、記録情報に応じて変調される外部磁界を光磁気ディスクに印加する。スイッチ2A、2B、2C、2Dは、それぞれトランジスタやFETで構成され、磁気ヘッド1に流れる電流方向を切り替える。これら2対のスイッチ2A、2B、2C、2Dは、VCCを駆動電源とするブリッジ回路を構成し、その出力端子は磁気ヘッド1に接続されている。
【0056】
補助電流供給回路3A、3Bは、磁気ヘッド1のインダクタンスよりも十分に大きなインダクタンスを有する誘導性素子で、例えば、高インダクタンスのコイルで構成される。補助電流供給回路3A、3Bは磁気ヘッド1の電流の切り替え時にスイッチが切り替わったとき、誘導電圧を発生して、スイッチ切り替え前に磁気ヘッド1に流れていた電流を立ち下げ、新たな方向(逆方向)に磁気ヘッド電流を立ち上げる。
【0057】
制御信号4A、4B、4C、4Dは、2対のスイッチ2A、2B、2C、2Dを記録信号に同期してON/OFF制御する。制御信号4A、4Dが論理1、制御信号4B、4Cが論理0のときには、磁気ヘッド1には図1中のAで示されている方向に電流が流れる。また、制御信号4A、4Dが論理0、制御信号4B、4Cが論理1のとき、磁気ヘッド1には図1中のBで示されている方向の電流が流れる。
【0058】
抵抗器5Aおよび5Bは、電源VDDから、磁気ヘッド1に供給される電流値を決定する電流制限抵抗である。該電流制限抵抗5A、5Bの代替手段として、該補助電流供給回路3A、3Bが接続される電源VDDの電圧を予め調整することによって、電源VDDから、磁気ヘッド1に供給する定常電流値を決定しておくこともできる。
【0059】
抵抗器6Aおよび6Bは、2対のスイッチ2A、2B、2C、2Dで構成されるブリッジ回路によって磁気ヘッド1に供給される電流値を決定する電流制限抵抗である。抵抗器6A、6Bの代替手段として、該ブリッジ回路に接続される電源電圧VCCを予め調整して、該2対のスイッチ2A、2B、2C、2Dで構成されるブリッジ回路によって、磁気ヘッド1に供給される電流値を決定しておくこともできる。
【0060】
電源供給スイッチ7は、補助電流供給回路3A、3Bに供給される電源電圧VDDをON/OFFする。電源供給スイッチ7はトランジスタやFET、さらにはリレー等で構成される。
【0061】
以下、本実施形態の動作について詳細に説明する。
【0062】
本実施形態の特徴とするところは、光磁気ディスクの記録速度に応じた動作を行なうことである。
【0063】
1)高速記録動作の場合
先ず、超解像技術や磁壁移動技術が用いられる光磁気ディスク装置のように、記録速度が極めて高速な場合について説明する。
【0064】
図示しないCPU等により、光磁気ディスクへ記録する速度に関して高速記録モードが選択されると、電源供給スイッチ7がONにされて、補助電流供給回路3Aおよび3Bに電源電圧VDDが供給される。
【0065】
次に、2対のスイッチ2A、2B、2C、2Dが、制御信号4A、4B、4C、4DによってON/OFF制御される。
【0066】
制御信号4Aおよび4Dが論理1、4Bおよび4Cが論理0になっているとすると、これらの制御信号に対応してスイッチ2Aおよび2DがON、2Bおよび2CがOFFになる。この時、ブリッジ回路の接続される電源電圧VCCから、抵抗器6A、スイッチ2A、磁気ヘッド1、スイッチ2Dの順に、図中Aの方向に磁気ヘッド電流(主電流)が流れる。また、電源電圧VDD、電源供給スイッチ7、抵抗器5A並びに補助電流供給回路3Aからも、図中Aの方向に磁気ヘッド電流(補助電流)が供給される。一方、電源電圧VDD、電源供給スイッチ7、抵抗器5Bおよび補助電流供給回路3Bを流れる電流は、磁気ヘッド1に流れ込むことなく、スイッチ2Dへと流れる。
【0067】
次に、制御信号4Aおよび4Dが論理0、制御信号4Bおよび4Cが論理1に切り替わると、これら制御信号に対応してスイッチ2Aおよび2DがOFF、スイッチ2Bおよび2CがONになる。このスイッチ切り替え時、磁気ヘッド1はインダクタンスを持っているので、それまでに流れていた電流方向、この場合は図1のAの方向に電流を流し続けようとする誘導起電力(以下、第1の誘導起電力と記す)を発生する。また同時に、磁気ヘッド1の一端10Bに設けられた補助電流供給回路3Bもインダクタンスを持っているので、それまでに流れていた電流(補助電流供給回路3Bからスイッチ2Dを通ってグラウンドに流れる電流)を流し続けようと動作する。しかし、スイッチ2DがON状態からOFF状態となるので、補助電流供給回路3Bは誘導起電力(以下、第2の誘導電圧と記す)を発生する。
【0068】
スイッチ2DがON状態にある場合には、磁気ヘッド1の一端10Bと補助電流供給回路3Bのスイッチ2D側の端子とは、いずれもスイッチ2Dを通って接地されているので、該磁気ヘッド1をA方向に流れる電流と、補助電流供給回路3Bからスイッチ2Dを通って接地される電流とは、スイッチ2Dの許容電流値の範囲内では相互に干渉することなく流れる。
【0069】
しかし、スイッチ2DがOFF状態になると、磁気ヘッド1に発生した第1の誘導起電力と補助電流供給回路3Bに発生した第2の誘導起電力とは、相互に逆向きの起電力として、スイッチ2Dと磁気ヘッド1と補助電流供給回路3Bとの接続点10Bに働く。補助電流供給回路3Bのインダクタンスは磁気ヘッド1のインダクタンスより大きいので、第2の誘導起電力は、第1の誘導起電力よりも大きい。
【0070】
その結果、磁気ヘッド1をA方向に流れていた電流は急激に立ち下がり、磁気ヘッド1をB方向に流れる電流は急激に立ち上がる。
【0071】
一方、スイッチ2Cの切り替えで補助電流供給回路3Aをグラウンドに接続する電流パスができると、補助電流供給回路3Aにはこの電流パスに電流を流さない方向の誘導起電力(以下、第3の誘導起電力と記す)が発生する。この起電力は、磁気ヘッド1に生じる第1の誘導起電力と逆方向を向いていて第1の誘導起電力を打ち消すように働く。したがって、磁気ヘッド1をA方向に流れていた電流は、急激に立ち下がる。
【0072】
このようにして、スイッチ切り替えによって補助電流供給回路3Aと補助電流供給回路3Bに発生する誘導起電力によって、磁気ヘッド1を流れる電流をA方向からB方向に急速に反転することができる。
【0073】
このように、本実施形態においては、スイッチ切り替えの過渡状態において、電流の切り替えを、補助電流供給回路3Aと補助電流供給回路3Bに発生する誘導起電力によって促進する。
【0074】
磁気ヘッド1の電流切り替えを電源からの出力電流の切り替えのみで行う場合には、磁気ヘッドに生じる誘導起電力のために、電流の急速反転ができない。その結果、図6に示した従来例のように、電流切り替えの周期は1MHZ以下であるのが一般である。本実施形態においては、補助電流供給回路に生じる誘導起電力によって磁気ヘッド1の電流切り替えを行うので、高速の電流切り替えを達成することができる。
【0075】
磁気ヘッド1の電流が反転すると、それに引き続いて、ブリッジ回路に接続されている電源電圧VCCから、抵抗器6B、スイッチ2B、磁気ヘッド1、スイッチ2Cの順に、図中Bの方向に磁気ヘッド電流が流れる。また、電源電圧VDDから、電源供給スイッチ7、抵抗器5B並びに補助電流供給回路3Bを経由して、図1のBの方向に磁気ヘッド電流が引き続き供給される。さらには、電源電圧VDDから、電源供給スイッチ7、抵抗器5Aおよび補助電流供給回路3Aを流れる電流は、磁気ヘッド1に流れ込むことなく、スイッチ2Cへと流れる。
【0076】
このように、本実施形態においては、電源供給スイッチ7をON状態にすることによって、電源電圧VDDを補助電流供給回路3Aおよび3Bに接続し、該電源電圧VDDから、定常的に磁気ヘッド1や補助電流供給回路3Aおよび3Bに流れ込む電流を供給すると共に、補助電流供給回路3Aおよび3Bにコイルを用い、磁気ヘッド1よりも十分に大きなインダクタンスに設定することによって、磁気ヘッド1の電流反転時には電流を高速に切り替えることができるものとなっている。
【0077】
2)低速記録動作の場合
次に、広く普及しているMD装置のように、記録速度が極めて低速な場合について説明する。
【0078】
図示しないCPU等により、光磁気ディスクへの記録速度が低速な低速記録モードが選択されると、電源供給スイッチ7がOFF状態とされて、補助電流供給回路3Aおよび3Bと電源電圧VDDとが遮断される。
【0079】
次に、2対のスイッチ2A、2B、2C、2Dが、それぞれ、制御信号4A、4B、4C、4Dにより、ON/OFF制御される。ここで、制御信号4Aおよび4Dが論理1、制御信号4Bおよび4Cが論理0になっているとすると、これら制御信号に対応するスイッチ2Aおよび2DがON、スイッチ2Bおよび2CがOFFになる。この時、ブリッジ回路に接続されている電源電圧VCCから、抵抗器6A、スイッチ2A、磁気ヘッド1、スイッチ2Dの順に、図中Aの方向に磁気ヘッド電流が流れる。また、電源電圧VDDは、電源供給スイッチ7によって遮断されるので、電流制限抵抗5Aおよび補助電流供給回路3Aからも、抵抗器5Bおよび補助電流供給回路3Bからも、磁気ヘッド1およびスイッチ2C、2Dに流れ込むことはない。
【0080】
次に、制御信号4Aおよび4Dが論理0、制御信号4Bおよび4Cが論理1に切り替わると、これら制御信号に対応するスイッチ2Aおよび2DがOFF、2Bおよび2CがONになる。磁気ヘッド1はインダクタンスであるので、このスイッチ切り替え時には、それまでに流れていた電流方向、この場合は図中Aの方向に電流を流し続けようとする誘導起電力(第1の誘導起電力)が発生する。スイッチ2DがON状態からOFF状態になり、スイッチ2BがOFF状態からON状態になったとき、接続点10Bには第1の誘導起電力と、電流制限抵抗6Bを介して電源電圧VCCとが加わる。この第1の誘導起電力のために、電源VCCから磁気ヘッド1に供給される電流の立ち上げは遅くなる。しかし、第1の誘導起電力の緩和時間が経過すると、電源VCCから電流制限抵抗6B、スイッチ2B、接続点10B、磁気ヘッド1を通って、ON状態に切り替えられたスイッチ2Cを介して接地された接続点10Aに向かって電流が流れ始める。
このようにして、磁気ヘッド1の電流方向が、図中Aの方向からBの方向に反転される。
【0081】
磁気ヘッド1の電流が反転されると、ブリッジ回路の電源電圧VCCから、電流制限抵抗6B、スイッチ2B、磁気ヘッド1、スイッチ2Cの順に、図中Bの方向に磁気ヘッド電流が定常的に流れる。また、電源電圧VDDは、電源供給スイッチ7により遮断されているので、電流制限抵抗5Bおよび補助電流供給回路3Bから、磁気ヘッド1およびスイッチ2Cに電流が流れ込むことはない。
【0082】
このように、本実施形態においては、電源供給スイッチ7をOFFとすることにより、補助電流供給回路3Aおよび3Bを電源VDDから遮断して該電源電圧VDDから磁気ヘッド1や補助電流供給回路3Aおよび3B、およびスイッチ2C、2Dに流れ込む電流を遮断すると共に、スイッチ2A、2B、2Cおよび2Dによって、該磁気ヘッド1の電流方向を切り替えるので、不要な電流消費・電力消費(電源VDDから供給される電力の消費)を低減することができる。
3)高速動作の変形例
前掲の高速動作の場合においては、補助電流供給回路3A、3Bとして、磁気ヘッド1のインダクタンスよりも大きいインダクタンスを有するコイルを使用したが、該コイルの代替え手段としてダイオードを用いることも可能である。
【0083】
図4は、図1の補助電流供給回路3A、3Bとしてダイオード3a、3bを用いた場合の構成図である。
【0084】
補助電流供給回路3A、3Bをコイルからダイオードに置き換える場合には、第1のダイオード3aは、電流制限抵抗5Aと接続点10Aとの間に接続され、このとき、第1のダイオード3aのアノードが電流制限抵抗5Aに接続される。また、第2のダイオード3bは抵抗器5Bと接続点10Bとの間に接続され、このとき、第2のダイオード3bのアノードが抵抗器5Bに接続される。したがって、電源VDDから供給される電流は、抵抗器5A、第1のダイオード3aを通って磁気ヘッド1に流れ、または、抵抗器5B、第2のダイオード3bを通って磁気ヘッド1に流れる。
【0085】
上記のように変更した場合の動作は以下の様になる。図示しないCPU等により、光磁気ディスクへの記録が高速記録モードに選択されると、電源供給スイッチ7がON状態にされて、補助電流供給回路3Aおよび3Bに電源電圧VDDが供給される。
【0086】
次に、2対のスイッチ2A、2B、2Cおよび2Dが、制御信号4A、4B、4Cおよび4Dによって、それぞれスイッチONまたはスイッチOFFされる。ここで、制御信号4Aおよび4Dが論理1、制御信号4Bおよび4Cが論理0になっているとすると、これら制御信号に対応するスイッチ2Aおよび2DがON、2スイッチBおよび2CがOFFとなる。この時、ブリッジ回路に接続されている電源電圧VCCから、抵抗器6A、スイッチ2A、磁気ヘッド1、スイッチ2Dの順に、図中Aの方向に磁気ヘッド電流が流れる。また、電源VDDから電源供給スイッチ7、抵抗器5Aおよびダイオード3aを通って、図中Aの方向に磁気ヘッド電流が供給される。さらに、電源VDDから、電源供給スイッチ7、抵抗器5Bおよび第2のダイオード3bを通って、スイッチ2Dへ電流が流れる。しかし、この電流は、磁気ヘッド1に流れ込むことなく、接地端子に流れる。
【0087】
次に、制御信号4Aおよび4Dが論理0、制御信号4Bおよび4Cが論理1に切り替わると、これら制御信号に対応するスイッチ2Aおよび2DがOFF、スイッチ2Bおよび2CがONになる。このスイッチ切り替え時、磁気ヘッド1はインダクタンスであるので、磁気ヘッド1にはそれまでに流れていた電流方向、この場合は図中Aの方向に電流を流し続けようする第1の誘導起電力が発生する。
【0088】
抵抗器5B、第2のダイオード3b、磁気ヘッド1およびスイッチ2Cによって構成される電流パス(以下、第2の補助電流パスと記す)において、磁気ヘッド1に発生した第1の誘導起電力によって第2のダイオード3bは逆バイアスされるので、第2の補助電流パスは遮断状態になる。さらに、抵抗器6B、スイッチ2Bを経由する電流パス(以下、第2の電流パスと記す)と磁気ヘッド1およびスイッチ2Cとによって構成される電流回路においても、磁気ヘッド1に発生した第1の誘導起電力によって、スイッチはFETで構成されているものとするとスイッチ2Bのゲート・ソース間電圧が低下するので、スイッチの切り替え直後の、第1の誘導起電力が充分大きい期間には、第2の電流パスも遮断状態になる。
【0089】
上記のような状態で、第1の誘導起電力の緩和時間が経過して第1の誘導起電力が低下すると、第2のダイオードが順バイアスされ、スイッチ2BもON状態を回復する。その結果、磁気ヘッド1には、第2の電流パスと第2の補助電流パスとの両者から電流が供給される。このようにして、磁気ヘッド1の電流方向が、図中Aの方向からBの方向に反転する。磁気ヘッド1の電流が反転されると、ブリッジ回路に接続されている電源電圧VCCから、第2の電流パスを経由して、図中Bの方向に磁気ヘッド電流が定常的に流れる。また、第2の補助電流パスからも、図中Bの方向に磁気ヘッド電流として定常電流が供給される。さらには、電源VDDから、電源供給スイッチ7、抵抗器5Aおよび第1のダイオード3aを経由する電流パス(以下、第1の補助電流パスと記す)を流れる電流は、磁気ヘッド1に流れ込むことなく、スイッチ2Cへと流れる。このとき、電源VCCから抵抗器6Aおよびスイッチ2Aを経由する電流パス(第1の電流パスと記す)は遮断される。
【0090】
なお、該補助電流供給回路としてダイオードを用いる場合において、光磁気ディスクへの記録速度として低速なモードが選択されて電源供給スイッチ7をOFFとした時の動作は、該補助電流供給回路にコイルを用いる場合と同等であるので、説明は省略する。
【0091】
上記本発明の説明においては、ただ一つの磁気ヘッドドライブ回路で、記録速度が異なる光磁気ディスクに対応可能であることを示したが、以下の様な応用も十分に可能である。
【0092】
その一例としては、光磁気ディスクの記録モードとして、通常モードと省エネモードを設け、通常モードの動作状態においては、上記高速動作で磁気ヘッドドライブ回路を駆動するものであり、また省エネモード、例えばバッテリー動作状態においては、装置システム全体の動作速度を遅くすると共に上記低速動作で磁気ヘッドドライブ回路を駆動することによって、バッテリーの負荷を軽減することも可能である。
【0093】
さらに別の例としては、光磁気ディスクの記録モードとして、通常モードと低品質モードを設け、通常モードの動作状態においては、上記高速動作で磁気ヘッドドライブ回路を駆動し、また低品質モード、例えば音楽の記録時において記録するデータを間引くと共に上記低速動作で磁気ヘッドドライブ回路を駆動することによって、装置システムの消費電力を軽減することも可能である。
【0094】
次に、本発明による磁気ヘッドドライブ回路の第2の実施形態について説明する。
【0095】
図2は、本実施形態の磁気ヘッドドライブ回路の回路図である。
【0096】
図2において第1の実施形態と同一の部品には同一番号で記し、説明は省略する。
【0097】
定電流源8Aは、補助電流供給回路3Aおよび3Bに定電流を供給する。図示されていない情報処理装置から出力される電流値制御信号9Aにより、その電流値が設定される。
【0098】
定電流源8Bは、スイッチ2A、2B、2Cおよび2Dで構成されるブリッジ回路に定電流を供給する。図示されていない情報処理装置から出力される電流値制御信号9Bにより、その電流値が設定される。
【0099】
また、定電流源8Aの代替手段として、補助電流供給回路3Aおよび3Bに接続される電源VDDを、図示されていない情報処理装置から出力される信号によって制御する可変電圧源で構成することも可能である。この可変電圧源としては、例えばDC−DCコンバータや、PWMドライバを使用することができる。
【0100】
定電流源8Aの代替として可変電圧源を使用する場合には、補助電流供給回路3Aおよび3Bに供給される電流は、可変電圧源8Aが供給する電圧と、補助電流供給回路3Aまたは3Bを含むドライブ回路の動作時インピーダンスで概ね決定される。定電流源8Bの代替え手段も同様であり、定電流源8Bを該可変電圧源で代替えする場合には、該スイッチ2A、2B、2C、2Dのそれぞれに供給される電流は、可変電圧源8Bが供給する電圧と、スイッチ2A、2B、2Cおよび2Dで構成されるブリッジ回路を含む回路の動作時インピーダンスで概ね決定される。
【0101】
以下、本実施形態の動作について詳細に説明する。
【0102】
本実施形態の回路の特徴とするところは、光磁気ディスクの記録速度に応じて、該光磁気ディスクに外部磁界を印可する磁気ヘッドおよび磁気ヘッドドライブ回路に最適な動作を提供することである。
【0103】
1)高速記録動作の場合
先ず、超解像技術や磁壁移動技術が用いられる光磁気ディスク装置のように、記録速度が極めて高速な場合について説明する。
【0104】
図示されていない情報処理装置により、光磁気ディスクへの記録速度が高速なモードが選択されると、電流値制御信号9Aにより、定電流源8Aが補助電流供給回路3Aおよび3Bに供給する電流値が決定される。このとき、定電流源8Aが、補助電流供給回路3Aおよび3Bに供給する電流値に概ね比例して、磁気ヘッド1の電流反転時間が決定される。このため、定電流源8Aの電流値は、光磁気ディスクへの記録速度に応じて制御され、記録速度が高速なモードにおいては、十分大きな電流値に設定される。
【0105】
また、同時に、電流値制御信号9Bにより、定電流源8Bがスイッチ2A、2B、2Cおよび2Dで構成されるブリッジ回路に供給する電流値が決定される。このとき、定電流源8Bが、スイッチ2A、2B、2Cおよび2Dで構成されるブリッジ回路に供給する電流値に概ね比例して、磁気ヘッド1の電流振幅が決定される。したがって、定電流源8Aの場合と異なり、必ずしも光磁気ディスクへの記録速度に応じて、定電流源8Bの電流値が制御されるのではない。また、定電流源8Bの電流値が、磁気ヘッド1の電流振幅を概ね決定するので、磁気ヘッド1で記録を行う光磁気ディスクの記録磁界感度に合わせて定電流源8Bの電流値を制御することができる。
【0106】
次に、2対のスイッチ2A、2B、2Cおよび2Dが、それぞれ制御信号4A、4B、4Cおよび4DによってON/OFF制御される。ここで、制御信号4Aおよび4Dが論理1、制御信号4Bおよび4Cが論理0になっているとすると、これら制御信号に対応するスイッチ2Aおよび2DがON、スイッチ2Bおよび2CがOFFになる。このとき、ブリッジ回路が接続される電源VCCから、定電流源8B、スイッチ2A、磁気ヘッド1、スイッチ2Dの順に、図中Aの方向に磁気ヘッド電流が流れる。また、電源VDD、定電流源8A、および補助電流供給回路3Aからも、図中Aの方向に磁気ヘッド電流が供給される。さらには、電源電圧VDD、定電流源8A、および補助電流供給回路3Bを流れる電流は、磁気ヘッド1に流れ込むことなく、スイッチ2Dへと流れる。
【0107】
次に、制御信号4Aおよび4Dが論理0、制御信号4Bおよび4Cが論理1に切り替わると、これら制御信号に対応するスイッチ2Aおよび2DがOFF、スイッチ2Bおよび2CがONになる。磁気ヘッド1はインダクタンスであるので、このスイッチ切り替え時に、それまでに流れていた電流方向、この場合は図中Aの方向に電流を流し続けようとする誘導起電力(第1の誘導起電力)が磁気ヘッド1に発生する。
【0108】
また、同時に、該磁気ヘッド1の一端10Bに設けられた補助電流供給回路3Bもインダクタンスであるので、補助電流供給回路3Bには、それまでに流れていた電流を流し続けようとする誘導起電力(第2の誘導起電力)が発生する。しかし、スイッチ2DがON状態からOFF状態となるので、第1、第2の誘導起電力は、相互に逆向きに働く。上述した第1の実施形態と同様に、補助電流供給回路3Bのインダクタンスは、磁気ヘッド1のインダクタンスよりも大きく設定されているので、第2の誘導起電力は、第1の誘導起電力よりも大きくなる。その結果、磁気ヘッド1のA方向の電流は急激に立ち下がり、B方向の電流が急激に立ち上がる。
【0109】
一方、スイッチ切り替え前には補助電流供給回路3Aを通り、磁気ヘッド1をA方向に流れて、磁気ヘッド1に磁化エネルギーを与えていた電流は、スイッチ切り替え後には、スイッチ2Cを介して接地端子に接続される。その結果、補助電流供給回路3Aには電流を流さないように作用する誘導起電力(第3の誘導起電力)が発生する。この第3の誘導起電力によって、スイッチ切り替え前には、補助電流供給回路3Aを通り、磁気ヘッド1をA方向に流れていた電流は、急激に減衰する。
【0110】
磁気ヘッド1の電流が反転されると、ブリッジ回路に接続されている電源VCCから、定電流源8B、スイッチ2B、磁気ヘッド1、スイッチ2Cの順に、図中Bの方向に磁気ヘッド電流が引き続いて定常的に流れる。また、電源電圧VDD、定電流源8A、並びに補助電流供給回路3Bからも、図中Bの方向に磁気ヘッド電流として引き続き定常的に供給さる。さらには、電源電圧VDD、定電流源8B、および補助電流供給回路3Aを流れる電流は、磁気ヘッド1に流れ込むことなく、スイッチ2Cへと流れる。
【0111】
上記のように、本実施形態においては、定電流源8Aから補助電流供給回路3Aおよび3Bに記録速度に応じた定電流を供給すると共に、補助電流供給回路3Aおよび3Bにコイルを用い、磁気ヘッド1よりも十分に大きなインダクタンスに設定することによって、磁気ヘッド1に流れる電流を高速に切り替えることができる。
【0112】
2)低速記録動作の場合
次に、広く普及しているMD装置のように、記録速度が極めて低速な場合について説明する。
【0113】
図示されていない情報処理装置によって、光磁気ディスクへの記録速度が低速なモードが選択されると、電流値制御信号9Aにより、定電流源8Aが補助電流供給回路3Aおよび3Bに供給する電流値が決定される。また、定電流源8Aが、補助電流供給回路3Aおよび3Bに供給する電流値に概ね比例して、磁気ヘッド1の電流反転時間が決定され、光磁気ディスクへの記録速度に応じて定電流源8Aの電流値が制御される。このとき、定電流源8Aの電流値は、上述した高速動作の場合に比べて明らかに小さくなる。また、光磁気ディスクへの記録速度にもよるが、記録速度が十分に低速である場合には、定電流源8Aの電流値がゼロであってもよい。
【0114】
同時に、電流値制御信号9Bにより、定電流源8Bからスイッチ2A、2B、2Cおよび2Dで構成されるブリッジ回路に供給される電流値が決定される。また、定電流源8Bが、スイッチ2A、2B、2Cおよび2Dで構成されるブリッジ回路に供給する電流値に概ね比例して、磁気ヘッド1の電流振幅が決定される。したがって、定電流源8Aの場合と異なり、必ずしも光磁気ディスクへの記録速度に応じて、定電流源8Bの電流値が制御されるものではない。また、高速動作の場合と同様に定電流源8Bの電流値が、磁気ヘッド1の電流振幅を概ね決定するので、磁気ヘッド1で記録を行う光磁気ディスクの記録磁界感度に合わせて定電流源8Bの電流値を制御することができる。
【0115】
次に、2対のスイッチ2A、2B、2Cおよび2Dが、それぞれ制御信号4A、4B、4Cおよび4DによってON/OFF制御される。ここで、制御信号4Aおよび4Dが論理1、制御信号4Bおよび4Cが論理0になっているとすると、これら制御信号に対応するスイッチ2Aおよび2DがON、スイッチ2Bおよび2CがOFFになる。この時、ブリッジ回路に接続される電源電圧VCCから、定電流源8B、スイッチ2A、磁気ヘッド1、スイッチ2Dの順に、図中Aの方向に磁気ヘッド電流が流れる。また、該光磁気ディスクの記録速度にもよっては、電源VDDから、定電流源8A、および補助電流供給回路3Aを経由して、図中Aの方向に磁気ヘッド電流が供給される。
【0116】
一方、電源VDDから、定電流源8A、および補助電流供給回路3B経由で電流を流す場合には、磁気ヘッド1に流れ込むことなく、スイッチ2Dへと流れる。このとき、補助電流供給回路3Aまたは3Bから供給される電流値は、上述した高速動作時に比べて小さく設定される。
【0117】
次に、制御信号4Aおよび4Dが論理0、制御信号4Bおよび4Cが論理1に切り替わると、これら制御信号に対応するスイッチ2Aおよび2DがOFF、スイッチ2Bおよび2CがONになる。磁気ヘッド1はインダクタンスであるので、このスイッチ切り替え時には、それまでに流れていた電流方向、この場合は図中Aの方向に電流を流し続けようとする第1の誘導起電力が発生する。また同時に、該磁気ヘッド1の一端に設けられた補助電流供給回路3Bもインダクタンスであるので、補助電流供給回路3Bは、それまでに定電流源8Aから流れていた電流を流し続けようとする第2の誘導起電力を発生する。しかし、スイッチ2DがON状態からOFF状態となっているので、第1の誘導起電力と第2の誘導起電力とは相互に逆向きになる。
【0118】
しかし、低速記録動作の場合には、補助電流供給回路3Bを流れる電流が小さく設定されているので、第2の誘導起電力は、高速動作の場合に比較して小さい。したがって、第2の誘導起電力は、磁気ヘッド1中をA方向に流れる電流の立ち下げとB方向に流れる電流の立ち上げに対しては、大きな寄与を与えない。
【0119】
この場合には、極端な場合として次の2つの場合がある。
【0120】
a)第2の誘導起電力が第1の誘導起電力よりも大きい場合、
b)第2の誘導起電力が第1の誘導起電力よりも非常に小さい場合
a)の場合には、上述した高速動作の場合と同様な過程で磁気ヘッド1中をA方向に流れる電流は減衰し、B方向に流れる電流は立ち上がる。しかし、この場合には、第2の誘導起電力は、第1の誘導起電力に比較して高速動作時ほど大きくないので、結果的に、該磁気ヘッド1の電流反転時間が低速になる。
【0121】
b)の場合には、第2の誘導起電力は、磁気ヘッド1中をA方向に流れる電流の立ち下げと、B方向に流れる電流は立ち上げには関係しない。この場合には、第1の誘導起電力の緩和時間が経過して、第1の誘導起電力が電源VCCの電圧よりも小さくなったとき、電源VCCからスイッチ2Bを経由してB方向の磁気ヘッド電流が立ち上がる。
【0122】
上記のa)の場合とb)の場合の中間の場合には、両方の過程が現れる。
【0123】
上記のようにして、磁気ヘッド1の電流が反転なされると、ブリッジ回路に接続されている電源VCCから、定電流源8B、スイッチ2B、磁気ヘッド1、スイッチ2Cの順に、図中Bの方向に磁気ヘッド電流が、電流切り替え時の過渡状態に引き続いて定常的に流れる。また、電源電圧VDDから、定電流源8A、並びに補助電流供給回路3B経由で図中Bの方向に磁気ヘッド電流が引き続いて定常的に供給される。さらには、電源VDDから、定電流源8B、および補助電流供給回路3Aを流れる電流は、磁気ヘッド1に流れ込むことなく、スイッチ2Cを通って接地端子へ流れる。
【0124】
図3は図1に示した実施形態の動作を説明するタイミングチャートである。
【0125】
図3において、電源供給スイッチ7がONのときは、磁気ヘッドの高速動作時(図面左側)で、電源供給スイッチ7がOFFのときは、磁気ヘッドの低速動作時(図面右側)である。前記したように、低速動作時には2対のスイッチによって構成されるブリッジ回路のON/OFF制御のみによって磁気ヘッドの電流切り替えが行われる。
【0126】
制御信号4A、4B、4Cおよび4Dのハイレベル(論理1)は、それぞれ対応するスイッチ2A、2B、2Cおよび2DのONに対応し、ロウレベル(論理0)は、それぞれ対応するスイッチ2A、2B、2Cおよび2DのOFFに対応する。したがって、制御信号4Aおよび4Dがハイレベル、制御信号4Bおよび4Cがロウレベルのとき、磁気ヘッド1にはA方向の電流が流れる。逆に、制御信号4Aおよび4Dがロウレベル、制御信号4Bおよび4Cがハイレベルのとき、磁気ヘッド1にはB方向の電流が流れる。
【0127】
したがって、制御信号4Aおよび4Dが立ち上がり、制御信号4Bおよび4Cが立ち下がるタイミングで、磁気ヘッド電流はB方向からA方向に切り替わる。このとき、スイッチ2Cは、ONからOFFに切り替わるので、補助電流供給回路3Aには、その切り替え前の電流を維持しようとする誘導起電力(第2の誘導起電力)が発生する。この誘導起電力によって、接続点10Aの電位は鋭く立ち上がる(図3、接続点10Aの電位曲線参照)。この電位の立ち上がりによってA方向の磁気ヘッド電流は鋭く立ち上がる(図3、磁気ヘッド電流曲線参照)。
【0128】
この第2の誘導起電力の緩和後、それに引き続いて電源VCC、および電源VDDから供給される定常電流が磁気ヘッドを流れる。この定常電流は、図3の接続点10Aの電位曲線において、誘導起電力によって生じた過渡的電位の緩和後、それに引き続く平坦(横軸に平行)な曲線として表されている。なお、この曲線において、さらにこの平坦な曲線に続く低レベルの平坦部分は、VDDから補助電流供給回路3A経由でスイッチ2Cに流れ込む電流とB方向の電流とがスイッチ2Cのオン抵抗によって生成する電圧である。
【0129】
接続点10Bの電位曲線も、接続点10Aの電位曲線と同様の理由によって同様に変化するので、説明を省略する。
【0130】
図3の右側に描かれている低速記録動作についても、制御信号4A、4B、4Cおよび4Dの論理レベルとスイッチ2A、2B、2Cおよび2DのON/OFFとの関係は、高速動作の場合と同様である。
【0131】
しかし、この場合には、電源供給スイッチ7がOFFであるので、補助電流供給回路3A、3Bは記録動作に寄与しない。したがって、高速動作時に接続点10A、10Bにおける電位曲線に見られるような高く急峻な電圧は現れない。
【0132】
低速記録動作時における磁気ヘッドドライブ回路の動作を、磁気ヘッド電流がB方向からA方向に切り替わる場合について説明する。
【0133】
スイッチ2B、2CがONからOFFに切り替わり、スイッチ2A、2DがOFFからONに切り替わる。磁気ヘッド電流がB方向からA方向に切り替わるとき、すなわち、制御信号4A、4Dの立ち上げ時には、磁気ヘッド電流をB方向流し続けようとする誘導起電力(第1の誘導起電力)が発生する。
【0134】
上記の誘導起電力によって、接続点10Aの電位は鋭く立ち上がる。しかし、磁気ヘッドのインダクタンスは小さいので、その電位曲線のピーク値は、高速動作の場合に比較して低い。
【0135】
立ち上がった電位は、電流をB方向に流すように働く誘導起電力によって生成された電位であるから、A方向の電流を阻止するように働く。その結果、スイッチの切り替え時には、A方向の磁気ヘッド電流は、この立ち上がった電位に阻止されて緩やかに立ち上がる。図3の、低速記録動作時における磁気ヘッド電流曲線は電流値の緩やかな立ち上がりを示している。同様なことが、磁気ヘッド電流がA方向からB方向に切り替わるときにも生じる。
【0136】
上記のように、補助電流供給回路3Aおよび3Bにコイルを用い、そのインダクタンスを磁気ヘッド1よりも十分に大きく設定すると共に、定電流源8Aから補助電流供給回路3Aおよび3Bに、記録速度に応じて高速動作時に比べて小さい定電流を供給することによって、磁気ヘッド1に流れる電流を低速記録動作に適応するように切り替えることができる。このように、定電流源8Aから補助電流供給回路3Aおよび3Bに高速動作時に比べて小さい、記録速度に応じた定電流を供給することによって、不要な電流消費・電力消費を低減することができる。
【0137】
なお、本発明の第2の実施形態の説明において、補助電流供給回路として、磁気ヘッド1のインダクタンスよりも大きなインダクタンスを有するコイルを用いたが、第1の実施形態において説明したのと同様に、該コイルの代替え手段としてはダイオードを用いることも可能である。
【0138】
図5は、補助電流供給回路3Aおよび3Bとしてダイオード3a’、3b’を用いた場合の構成図である。
【0139】
図5に示すドライブ回路におけるダイオード3a’、3b’の動作は、図4に示したダイオード3a、3bと同様であるので説明を省略する。
【0140】
図2に示した本発明の第2実施形態の説明においては、ただ一つの磁気ヘッドドライブ回路で、記録速度が異なる光磁気ディスクに対応可能であることを示したが、以下の様な応用も十分に可能である。
【0141】
その一例としては、光磁気ディスクの記録モードとして、通常モードと省エネモードを設け、通常モードの動作状態においては、上記高速動作で磁気ヘッドドライブ回路を駆動し、また省エネモード、例えばバッテリー動作状態においては、装置システム全体の動作速度を遅くすると共に上記低速動作で磁気ヘッドドライブ回路を駆動することによって、バッテリーの負荷を軽減することが可能である。
【0142】
さらに別の例としては、光磁気ディスクの記録モードとして、通常モードと低品質モードを設け、通常モードの動作状態においては、前掲の高速動作で磁気ヘッドドライブ回路を駆動し、また低品質モードの動作状態においては、例えば音楽の記録時において記録するデータを間引くと共に前掲の低速動作で磁気ヘッドドライブ回路を駆動することによって、装置システムの消費電力を軽減することも可能である。
【0143】
またさらに他の応用例としては、ZCAV(ゾーン定角速度)方式が適用される光磁気ディスクにおいて該磁気ヘッドドライブ回路を最適に駆動する例がある。ZCAV方式においては、光磁気ディスクを一定角速度で回転するので、半径毎に複数のゾーンに区切り、該ゾーン毎に最大記録密度を実現するように、記録再生速度を切り替える。換言すれば、ZCAV方式においては、一般的にディスク半径に比例して記録再生速度が高速になり、その速度格差は2倍から4倍程度になる。このような光磁気ディスク装置においては、本発明の第2実施形態に示されている磁気ヘッドドライブ回路を用いることができる。例えば10ゾーンに分けられた光磁気ディスクの、10個の異なる記録速度に最適になるように、定電流源8Aおよび8Bを制御することによって、補助電流供給回路3Aおよび3Bに記録速度に応じた定電流を供給する。それによって、不要な電流消費および電力消費を低減することが可能である。
【0144】
上記の説明においては、光磁気ディスクへの記録速度に応じて、本発明の磁気ヘッドドライブ回路を最適に駆動することに関して説明したが、本発明の第2の実施形態によれば以下のようなことも容易に実現可能である。
【0145】
記録磁界感度の補償
例えば、光磁気ディスク及び光磁気ディスク装置を長期間使用すると、光磁気ディスクの磁性膜の劣化や、塵等の付着により記録磁界感度が低下することがある。また、光磁気ディスクの製造工程によっては記録磁界感度のあまり良くないものが製造されることがある。
【0146】
上記のような場合には、磁気ヘッド電流を大きくして光磁気ディスクの記録磁区の磁化を強くする。そのために、スイッチ2A、2B、2Cおよび2Dで構成されるブリッジ回路を通って定電流源8Bから磁気ヘッド1に供給される電流値を増加させて磁気ヘッド電流の振幅を大きくする。
【0147】
そのとき、定電流源8Aから補助電流供給回路を通って磁気ヘッド1に供給する電流値を減少させ、その減少分だけ、ブリッジ回路を通って定電流源8Bから磁気ヘッド1に供給される電流値を増加させる。
【0148】
このようにすることによって、磁気ヘッド1の記録動作速度は遅くなるけれど、全体の消費電力を増加させないで済むという利点がある。
【0149】
このようにして、記録磁界感度のあまり良くない光磁気ディスクに対しても、全体の消費電力を増加させることなく、磁気ヘッドの記録動作速度を遅くすることによって記録磁界感度を補償することができる。
【0150】
磁気ヘッドの補償
本実施形態の他の応用例として、複数種類の磁気ヘッドの、インダクタンスが異なる場合において、それぞれの磁気ヘッドのインダクタンスに応じて、定電流源8Aを多段階に制御することによって、複数種類の磁気ヘッド1について同じ電流反転時間と動作速度を実現する。このようにして、複数種類の磁気ヘッドの、インダクタンスの相違に基づく電流反転時間と動作速度の相違を補償することができる。
【0151】
以上説明した本発明の実施形態は、光磁気ディスク装置に組み込まれて効果を奏するものであり、本発明は、各実施形態が組み込まれた光磁気ディスク装置を含むものである。
【0152】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の第1の磁気ヘッドドライブ回路によれば、記録速度が高速である場合には、電源供給スイッチをON状態にして補助電流供給回路に電源を供給することによって、該補助電流供給回路を用いて、磁気ヘッドに流れる電流の高速の反転を実現することができる。
【0153】
また、記録速度が低速である場合には、電源供給スイッチをOFF状態にして補助電流供給回路を電源電圧から遮断することによって、磁気ヘッドに流れる電流の低速の反転を実現することができる。
さらに、補助電流供給回路の動作インピーダンスが低くなる、低い記録速度で記録するときに電源供給スイッチをターンオフすることによって、補助電流供給回路の低い動作インピーダンス特性に起因するド磁気ヘッドライブ回路の動作インピーダンスの低下を防止することができる。
【0154】
このようなドライブ回路の動作インピーダンスの低下防止によって、該補助電流供給回路、電流制限抵抗並びに磁気ヘッドに流れる無駄な電流消費・電力消費を低減することができる。また同時に、磁気ヘッドに過大な電流が流れることが防止されるので、該磁気ヘッドに用いられるコア及びコイルの温度上昇や、温度上昇によりコイルに断線等が発生することを防止することができる。
【0155】
なお、上記の実施形態に、補助電流供給回路にコイルを用いる方法と、ダイオードを用いる方法を示したが、発明者の検討によれば、補助電流供給回路にコイルを用いる方法の方が、磁気ヘッドの電流を高速に反転することができる。また、該補助電流供給回路にダイオードを用いる方法は、磁気ヘッドドライブ回路および磁気ヘッドの無駄な電流消費および電力消費を低減する効果を有する。
【0156】
以上説明したように、本発明による磁気ヘッドドライブ回路は、光磁気ディスクの記録速度に応じて、最適な磁気ヘッドドライブ回路を実現することができる。
さらには、光磁気ディスクの記録速度に応じて、例えば高速モード・低速モードを切り替える装置においては、該補助電流供給回路に磁気ヘッドのインダクタンスよりも十分に大きなコイルを用い、また別の場合として、中速モードと低速モードとを切り替える装置においては、該補助電流供給回路にダイオードを用いることが有効である。
【0157】
また、本発明の第2の磁気ヘッドドライブ回路によれば、記録速度が高速である場合には、定電流源から補助電流供給回路に記録速度に応じた定電流を供給し、該補助電流供給回路を用いて、磁気ヘッドに流れる電流の高速な反転を実現することができる。
【0158】
また、記録速度が低速である場合には、定電流源から補助電流供給回路に、記録速度が高速である場合より小さい定電流を供給し、磁気ヘッドに流れる電流の低速の反転を実現することができる。
【0159】
さらに、低い記録速度の場合には、定電流源から補助電流供給回路に、記録速度が高速である場合より小さい定電流を供給し、または定電流源から補助電流供給回路への電流の供給を停止する。これにより、補助電流供給回路の低い動作インピーダンス特性に起因する磁気ヘッドドライブ回路の動作インピーダンスの低下を防止すると共に、該補助電流供給回路、および磁気ヘッドに生じる無駄な電流消費・電力消費を最低限に抑制することができる。また同時に、磁気ヘッドに過大な電流が流れることを防ぐので、該磁気ヘッドに用いられるコア及びコイルの温度上昇や、該温度上昇によりコイルが断線等の発生を防止することができる。
【0160】
また、本発明の磁気ヘッドドライブ回路の第1及び第2の実施形態において説明した該高速動作を通常動作モードとし、低速動作を省エネモードまたは低品質モードとして動作させることによって、該回路を含むシステムの省電力化を達成することも可能である。
【0161】
また、第2の実施形態において説明したように、定電流源を多段階に制御することによって、ZCAV方式が適用される光磁気ディスクにおいて、ゾーン毎に異なる記録速度に対応する最適な駆動を容易に実現することが可能である。また、定電流源から補助電流供給回路を通って磁気ヘッドに供給する電流値を減少させ、その減少分を補償するように、定電流源からスイッチ素子で構成されるブリッジ回路を通って磁気ヘッドに供給される電流を増加させることによって、全体の消費電力を増加させることなく該磁気ヘッドの動作速度を遅くすることによって、記録磁界感度が劣化した光磁気ディスクに適応した記録処理をすることも可能である。
【0162】
また、本発明の第2の磁気ヘッドドライブ回路は、磁気ヘッドのインダクタンスが異なる場合においては、該磁気ヘッドのインダクタンスに応じて、定電流源を多段階に制御することによって、複数種類の磁気ヘッドに対して同様の電流反転時間と動作速度で対応することができる。
【0163】
以上説明したように、本発明による磁気ヘッドドライブ回路は、光磁気ディスクの記録速度に応じて、最適な磁気ヘッドドライブ回路を実現することができる。
さらには、光磁気ディスクの記録速度に応じて、例えば高速モードと低速モードとを切り替える装置においては、該補助電流供給回路に磁気ヘッドのインダクタンスよりも十分に大きなコイルを用い、また別の場合として、中速モードと低速モードとを切り替える装置においては、該補助電流供給回路にダイオードを用いることが有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気ヘッドドライブ回路の、第1の実施形態の構成図である。
【図2】本発明の磁気ヘッドドライブ回路の、第2の実施形態の構成図である。
【図3】第1、第2の実施形態のタイミングチャートである。
【図4】図1の実施形態において補助電流供給回路にダイオードを用いた場合の構成図である。
【図5】図2の実施形態において補助電流供給回路にダイオードを用いた場合の構成図である。
【図6】従来の磁気ヘッドドライブ回路の構成図である。
【図7】従来の磁気ヘッドドライブ回路の構成図である。
【図8】従来の磁気ヘッドドライブ回路の構成図である。
【符号の説明】
1 磁気ヘッド
2A、2B、2C、2D トランジスタまたはFET等によるスイッチ
3A、3B コイルまたはダイオード等による補助電流供給回路
4A、4B、4C、4D ON/OFF制御信号
5A、5B 電流制限抵抗
6A、6B 電流制限抵抗
7 電源供給スイッチ
8A、8B 定電流源または可変電圧源
9A、9B 電流値制御信号
Claims (9)
- 磁界を発生する磁気ヘッドを、2つの異なる記録転送レートで駆動して磁界変調記録を行う磁気ヘッドドライブ回路において、
前記磁気ヘッドに流れる電流の方向を、記録信号に応答して第1の方向または第2の方向に切り替えて主電流として前記磁気ヘッドに供給する電流切り替え手段と、
前記磁気ヘッドに流れる第1の方向の主電流を補助する第1の補助電流供給手段と、
前記磁気ヘッドに流れる第2の方向の主電流を補助する第2の補助電流供給手段と、
前記第1の補助電流供給手段および前記第2の補助電流供給手段への電源電圧供給を記録転送レートに応じてON/OFFする電源供給手段とを有し、
前記電源供給手段は、前記記録転送レートが高い第1の転送レートの時にONとなり、前記第1の補助電流供給手段および、前記第2の補助電流供給手段へ電源電圧を供給し、該記録転送レートが低い第2の転送レートの時にOFFとなり、前記第1の補助電流供給手段および、前記第2の補助電流供給手段への電源電圧供給を遮断することを特徴とする磁気ヘッドドライブ回路。 - 磁界を発生する磁気ヘッドを、2つの異なる記録転送レートで駆動して磁界変調記録を行う磁気ヘッドドライブ回路において、
前記磁気ヘッドに流れる電流の方向を、記録信号に応答して第1の方向または第2の方向に切り替えて主電流として前記磁気ヘッドに供給する電流切り替え手段と、
前記磁気ヘッドに流れる第1の方向の主電流を補助する第1の補助電流供給手段と、
前記磁気ヘッドに流れる第2の方向の主電流を補助する第2の補助電流供給手段と、
前記電流切り替え手段に任意の強さの電流を供給する第1の電源供給手段と、
前記第1の補助電流供給手段および前記第2の補助電流供給手段に任意の強さの電流を供給する第2の電源供給手段と、
を有し、
前記記録転送レートが高い転送レートのときには、前記第1の電源供給手段は前記電流切り替え手段に供給される電流を相対的に小さく設定し、前記第2の電源供給手段は前記第1の補助電流供給手段および前記第2の補助電流供給手段に供給する電流を相対的に大きく設定することを特徴とする、磁気ヘッドドライブ回路。 - 前記電源供給手段は、スイッチまたは可変定電流装置もしくは可変定電圧装置であることを特徴とする、請求項1に記載の磁気ヘッドドライブ回路。
- 前記第1の電源供給手段及び第2の電源供給手段は、可変定電流装置または可変定電圧装置であることを特徴とする、請求項2に記載の磁気ヘッドドライブ回路。
- 前記第1の補助電流供給手段及び第2の補助電流供給手段は、前記磁気ヘッドのインダクタンスよりも大きなインダクタンスを有するコイルであることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の磁気ヘッドドライブ回路。
- 前記第1の補助電流供給手段及び第2の補助電流供給手段は、整流素子であることを特徴とする、請求項1または請求項2記載の磁気ヘッドドライブ回路。
- 請求項1または請求項2記載の磁気ヘッドドライブ回路を有することを特徴とする、光磁気ディスク装置。
- 磁界を発生する磁気ヘッドを、2つの異なる記録転送レートで駆動して磁界変調記録を行う磁気ヘッド駆動方法において、
前記磁気ヘッドに流れる電流の方向を、記録信号に応答して第1の方向または第2の方向に切り替えて主電流として前記磁気ヘッドに供給する電流切り替え手段と、
前記磁気ヘッドに流れる第1の方向の主電流を補助する第1の補助電流供給手段と、
前記磁気ヘッドに流れる第2の方向の主電流を補助する第2の補助電流供給手段と、
前記第1の補助電流供給手段および前記第2の補助電流供給手段への電源電圧供給を記録転送レートに応じてON/OFFする電源供給手段とを設け、
前記記録転送レートが高い第1の転送レートの時、前記電源供給手段をONにして、前記第1の補助電流供給手段および、前記第2の補助電流供給手段へ電源電圧を供給し、該記録転送レートが低い第2の転送レートの時、該電源供給手段をOFFにして、前記第1の補助電流供給手段および、前記第2の補助電流供給手段への電源電圧供給を遮断することを特徴とする磁気ヘッド駆動方法。 - 磁界を発生する磁気ヘッドを、2つの異なる記録転送レートで駆動して磁界変調記録を行う磁気ヘッド駆動方法において、
前記磁気ヘッドに流れる電流の方向を、記録信号に応答して第1の方向または第2の方向に切り替えて主電流として前記磁気ヘッドに供給する電流切り替え手段と、
前記磁気ヘッドに流れる第1の方向の主電流を補助する第1の補助電流供給手段と、
前記磁気ヘッドに流れる第2の方向の主電流を補助する第2の補助電流供給手段と、
前記電流切り替え手段に任意の強さの電流を供給する第1の電源供給手段と、
前記第1の補助電流供給手段および前記第2の補助電流供給手段に任意の強さの電流を供給する第2の電源供給手段と、
を設け、
前記記録転送レートが高い転送レートのときには、前記第1の電源供給手段により前記電流切り替え手段に供給される電流を相対的に小さく設定し、前記第2の電源供給手段により前記第1の補助電流供給手段および前記第2の補助電流供給手段に供給される電流を相対的に大きく設定することを特徴とする、磁気ヘッド駆動方法。
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