JP2004035888A - 熱可塑性ポリアミド樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents

熱可塑性ポリアミド樹脂組成物及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、良好な耐熱性、高い耐塩化物性、高い耐エチレングリコール性及び良好な機械的特性を有するポリアミド樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】熱可塑性ポリアミド樹脂組成物及び該樹脂の製造方法が開示される。特に、本発明は、高い耐熱性、耐化学薬品性、低い変形、低い収縮及び良好な成形性を有し、自動車のラジエータタンクキャップ、エンジンカバー及びタイミングベルトキャップ、ボイラーの部品等のような耐熱性及び剛性を必要とする装置の内部及び外部部品として使用することができる熱可塑性ポリアミド樹脂組成物に関する。
【選択図】 なし

Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリアミド樹脂組成物及びその製造方法に関する。
【0002】
特定的には、本発明は、高い耐熱性、高い耐化学薬品性、低い変形、低い収縮及び良好な成形性を有する熱可塑性ポリアミド樹脂組成物に関する。本発明の樹脂は、冷却水循環装置用のラジエータタンクキャップのような冷却装置、並びにエンジンカバー、タイミングベルトキャップ及びその他のエンジン部品のような自動車部品について用いることができる。本発明はまた、本発明の樹脂の製造方法をも含む。
【背景技術】
【0003】
一般的に、ポリアミド樹脂組成物は良好な機械的特性、耐熱性及び耐化学薬品性を有しているべきである。樹脂組成物はガラス繊維、炭素繊維、タルク、カオリン、ケイ灰石、炭酸カルシウム及び硫酸バリウムのような様々な無機材料を容易に強化して、高い強度、耐熱性及び弾性を得ることができる。さらに、該組成物に様々なタイプの添加剤を添加することによって、各種化学物質に対する耐性を改善することができる。これらの理由並びに金属より加工が容易であり且つ作られる材料の重量も軽いという理由のために、ポリアミド樹脂組成物は、自動車産業を含めた多くの産業分野において利用することができる。
【0004】
慣用のポリアミド樹脂組成物に付随する問題点には、冬期の着氷防止剤として広く用いられる塩化物(塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛等)及び自動車エンジン冷却システムに用いられる不凍液の成分である水性エチレングリコール溶液に対する耐性が低いというものがある。
【0005】
従って、自動車エンジンの部品として用いるためにはポリアミド樹脂組成物には特性の点で多くの厳格な規制がある。その代表的な特性は、耐熱性並びにエチレングリコール及び塩化物に対する耐性である。特に、冷却システムは高温(例えば120℃以上)において性能を示さなければならないので、樹脂組成物は、冷却システムにこの組成物を適用するためには良好な耐熱性を示すことが必要であり、エンジン冷却剤として用いられるエチレングリコールの侵食にも耐性がなければならない。さらに、樹脂組成物は、冬期にしばしば用いられる塩化物によるポリマー鎖の損傷を最小限にすることができるべきである。
【0006】
米国特許第4386197号明細書には、カプロラクタム又はω−アミノカルボン酸とシクロ脂肪族カルボン酸アミドとのポリマー状反応生成物から成る二元コポリアミドを用いることによってエンジン燃料の耐性を高める試みが示されている。しかしながら、このコポリアミドを製造するための経費は高くつくものであり、そしてこのコポリアミドは高められた耐熱性を有する傾向はあるものの特別改善された耐化学薬品性は持たない。
【0007】
米国特許第4582763号明細書には、ポリアミド樹脂によって作られたキャップの亀裂の深さ及び数を測定する方法が開示されている。特定的には、この方法によれば、ラジエータタンクがキャップで蓋をされ、次いで不凍液の成分を充填され、これに塩化カルシウムの水溶液がある温度及び内部圧下において塗布される。その後、特定条件下における数回のサイクルの後に、キャップの亀裂の深さ及び数が測定される。開示された方法は、亀裂の特性を測定するために市販の実際の製品を試験しているが、試験データは被験製品のデザインによって影響を受けることがあり、この測定方法は主観的な態様で行なわれているということになる。
【0008】
JournalofMaterialsScience22(1987)1715―1723には、ポリアミド樹脂に対するハロゲン塩(LiCl、ZnCl、CaCl)及びNaClの影響が開示されている。この場合には、その影響は、物理的特性によるのではなくて主として熱的特性又は化学的分析によって測定されている。従って、ポリアミド樹脂の物理的特性にハロゲン塩がどのように影響を及ぼすかについては、何も測定されていない。
【0009】
米国特許第4482695号明細書には、気体遮断特性を有するポリアミド樹脂が開示されており、これは化学薬品との直接接触を防止することによって高められた耐化学薬品性を示す。化学薬品に対する樹脂の耐性は、ポリアミドの重合の際に芳香族成分を用いてポリアミドにバルク特性加えることによって高められる。しかしながら、この樹脂は気体の浸透を敷設貯めに用いられており、その耐化学薬品性はアルカリ性電解質の水溶液中では測定されていない。
【文献1】
米国特許第4386197号明細書
【文献1】
米国特許第4582763号明細書
【文献1】
米国特許第4482695号明細書
【文献1】
JournalofMaterialsScience22(1987)1715―1723
【考案の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、良好な耐熱性、高い耐塩化物性、高い耐エチレングリコール性及び良好な機械的特性を有するポリアミド樹脂組成物を提供することにある。
【0011】
特定的には、本発明に従うポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド約30〜80重量%、補強剤約10〜50重量%及びナトリウムアルミナシリケート約0.1〜20重量%を含む。
【0012】
本発明は、上記の目的を達成するための研究に基づくものであり、特定のポリアミド樹脂を補強剤及びナトリウムアルミナシリケートと混合することによって、良好な物理的特性、高い耐熱性、低い収縮、低い変形、高い耐塩化物性及び高い耐不凍液性を有するポリアミド樹脂組成物を得ることができるという発見を包含する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かくして、本発明は、ポリアミド約30〜80重量%、補強剤約10〜50重量%及びナトリウムアルミナシリケート約0.1〜20重量%を含み、良好な物理的特性、高い耐熱性、低い収縮、低い変形、高い耐塩化物性及び高い耐不凍液性を有するポリアミド樹脂組成物を提供する。
【0014】
本発明に従うポリアミド樹脂組成物中には、当技術分野において周知の任意のポリアミド樹脂を用いることができる。
【0015】
本発明のポリアミド樹脂組成物中に含まれる補強剤には、ガラス繊維、無機充填剤及びそれらの組合せが包含され得る。可能な補強剤には、例えばカオリン、ケイ灰石、炭酸カルシウム及び硫酸バリウムが包含されるが、当技術分野において周知のその他の次亜量を用いることもできる。
【0016】
本発明のポリアミド樹脂組成物にはさらに、樹脂100部当たりの部数(p時間)として約1〜30部のポリオレフィン及び/又はポリフェニレンスルフィドを含ませることができる。また、この組成物にはさらに、無水マレイン酸で変性されたポリオレフィンを約1〜10重量%含ませることもできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、特に優れた耐熱性、耐不凍液性及び耐塩化物性を有し、射出成形後に低い変形を示し、かくして自動車エンジン及び冷却装置の部品並びに長期の耐熱性を必要とする部品として、広く用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の樹脂組成物中に含まれる各成分を、以下に詳細に説明する。
【0019】
本発明に従って用いることができるポリアミド樹脂は、関連技術分野においてよく知られているものである。このポリアミド樹脂の代表的な例には、ε−カプロラクタム、ω−ドデカラクタム等のようなラクタムを開環重合することによって得られるポリアミド6、アミノカプロ酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のようなアミノ酸の重合によって得ることができるポリアミド、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナヘキサメチレンジアミン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノ−メチル−3,5,5−トリメチル シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)−ピペラジン、アミノエチルピペラジン等のような脂肪族、脂環式又は芳香族ジアミンとアジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロルテレフタル酸、2−メチル−テレフタル酸、5−メチルイソフタル酸等のような脂肪族,脂環式又は芳香族ジカルボン酸との重合によって得られるポリアミド並びにそれらの混合物が包含される。
【0020】
好ましいポリアミド樹脂の例には、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6,12、ポリアミド6,36、ポリアミドコポリマー、脂肪族ポリアミド、ポリアミド(テレフタル酸若しくはイソフタル酸から生成されるもの)、芳香族ポリアミド又はそれらの混合物が包含される。
【0021】
耐塩化物性を改善するためには、これらのポリアミドの中でも、単独のポリアミド6,6又は主要成分としてのポリアミド6,6とその他のポリアミドとの混合物若しくはコポリマーを用いるのが好ましい。特に好ましくは、ポリアミド6,6とポリアミド6,10、ポリアミド6,12又はポリアミド6,36との特定混合比の混合物を用いることができる。
【0022】
ポリアミド6,6を単独で用いた場合、このポリアミド樹脂組成物は、暴露後の水分吸収によるポリアミド鎖中への塩化物の浸透のせいで、深刻な物理的特性の劣化を示す。しかしながら、この組成物は、これにイオン交換能力を有する添加剤、ポリアミド成分及び随意としてのポリフェニレンスルフィドを所定量で添加することによって、比較的長い脂肪族鎖を有する低吸収性ポリアミドが提供するのとほとんど同等のレベルの耐塩化物性を示すことができる。
【0023】
前記ポリアミド樹脂の相対粘度(96%硫酸100ミリリットル中にポリマー1gの溶液として23℃において測定)は、約1.0〜4.0の範囲であるのが好適であり、2.0〜3.7%の範囲であるのが好ましく、2.0〜3.0%の範囲であるのがより一層好ましく、本発明において用いるのに有用な平均分子量は、約5000〜70000の範囲である。当技術分野においてよく知られている代表的なポリアミドは、下記の一般式によって表わすことができる。
ポリアミド6,6:
―[―HN―(CH―NHCO―(CH―CO―]―
ポリアミド6,6/6(コポリマー):
―[―HN―(CH―NHCO―(CH―CONH―(CH―CO―]―
ポリアミド6,10:
―[―HN―(CH―NHCO―(CH―CO―]―
ポリアミド6,12:
―[―HN―(CH―NHCO―(CH10―CO―]―
ポリアミド6,36:
―[―HN―(CH―NHCO―(CH34―CO―]―
ポリアミド12:
―[―NHC―(CH10―CO―]―
【0024】
補強剤は、約10〜50重量%の量で用いることによって、剛性を顕著に改善し、ポリアミド樹脂組成物の低い収縮及び低い変形を確保することができる。補強剤の例には、ガラス繊維、無機充填剤及びそれらの組合せが包含される。無機充填剤の例には、カオリン、ケイ灰石、硫酸バリウム及び炭酸カルシウム等が包含される。
【0025】
ガラス繊維は、3〜3.2μmの平均粒子長さ及び約10μmの直径を有し、その表面はポリアミド樹脂と相溶性にするためにシランタイプのシランカップリング剤で処理される。特に効果的に剛性及び耐熱性を提供するためには、このガラス繊維は、10〜50重量%の量で用いるのが好適である。無機充填剤の長さは0.1〜5μmであり、その粒子寸法は2.5μm以下である。
【0026】
本発明に従う組成物にナトリウムアルミナシリケート添加剤を約0.1〜20重量%の量で添加した場合には、イオン交換によって金属イオンを補足することによって、耐熱性が劣化することなく、組成物の耐塩化物性を特異的に高めることができる。従って、耐熱性、剛性及び耐不凍液性のようなガラス繊維で補強されたポリアミド樹脂の初期の基本的特性が劣化することなく耐塩化物性を特異的に且つ顕著に改善することができる。
【0027】
分離した金属イオンは水分が存在する条件下において水と共にポリアミド鎖中に浸透して行き、高温下で連続的に付着し、それによって最終的にポリアミド樹脂中に亀裂を形成させる。これがポリアミド鎖の間の水素結合の形成を侵食する。しかしながら、添加剤によって金属イオンを選択的に捕捉することによって、塩化物への連続的暴露によって引き起こされるポリアミド樹脂の崩壊を遅らせることができる。
【0028】
本発明に従うポリアミド樹脂組成物は、随意にポリオレフィン及び/又は無水マレイン酸で変性された変性ポリオレフィンを含ませて、ポリアミド樹脂組成物が水分及び塩化物に対する改善された耐性並びに一般的なポリオレフィンに対するポリアミドの相溶性を有するようにすることができ、これらは製品の外観を改善するため及び低い収縮のために添加されるものであり、広範な加工の領域において一定レベルの物理的特性を維持するために改善することができる。変性ポリオレフィンは、コポリマータイプのものであってもグラフトポリマータイプのものであってもよい。ポリオレフィン及び/又は変性ポリオレフィンを1〜10重量%の量で用いると、優れた耐塩化物性を得ることができ、また、耐不凍液性も顕著に高めることができる。ポリオレフィンの使用量が10重量%を越えると剛性のようなポリアミド自体の優れた特性が損なわれることがある。
【0029】
追加的にポリフェニレンスルフィドを約1〜10重量%の少量で用いると、樹脂組成物の機械的及び物理的特性を高めることができ、また、不凍液及び塩化カルシウムに対する耐性に対する顕著に改善された効果を達成することができる。ポリフェニレンスルフィドは、下に示す一般構造を有する。
【化学式1】
【0030】
本明細書において用語「ポリオレフィン」とは、一般的にはポリプロピレン及びポリエチレンを意味し、これは1〜30重量%の量で用いることができる。
【0031】
上記の成分に加えて、本発明の目的に範囲内にある限り、各種の追加の効果をもたらすために、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、加工分散剤、顔料、染料、界面活性剤、離型剤、滑剤、可塑剤、静電防止剤、分散剤、カーボンブラック等のような各種の添加剤をポリアミド樹脂組成物に添加することができる。
【0032】
ポリアミドの一般的な特徴から見て、脂肪族鎖の長さが増加すると、ポリアミドの初期の物理特性である水分吸収性が低下し、ポリアミドの単位重量当たりのアミド官能基の数が減少する。その結果、カップリング剤で処理されたガラス繊維との反応性が低下して、不凍液の浸透によってかなり損なわれるようになる。このポリアミド樹脂組成物は、耐熱性、優れた機械的及び物理的特性、並びに不凍液及び塩化物に対する耐性を有するように設計されている。
【産業上の利用可能性】
【0033】
上記の組成を有する本発明に従う樹脂組成物は、ポリアミド6,10やポリアミド6,12、ポリアミド6,36から成る慣用の組成物より良好な機械的及び物理的特性並びに耐不凍液性を有し、塩化物に対する機能的耐性をも提供する。
【0034】
かくして、本発明に従う熱安定性且つ耐化学薬品性の樹脂組成物は、耐熱性及び剛性を必要とする内部及び外部部品、例えば一般的にボイラー、自動車のラジエータタンクキャップ、エンジンカバー及びタイミングベルトキャップ等に用いることができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を参照して本発明を詳細に説明するが、これら実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0036】
以下の例1〜13に、本発明に従うポリアミド樹脂組成物の調製を記載し、本発明に従う組成物の有益な効果を示すために、各組成物の各種特性、例えば機械的及び物理的特性(例えば引張強さ、曲げ強さ、曲げ弾性率、アイゾッド衝撃強さ、熱変形温度)並びに収縮特性を互いに比較する。しかしながら、以下の実施例は単に例示の目的で含まれているだけであり、本発明の範囲を限定するものではないということを理解されたい。
【0037】
最初に、実施例及び比較例において用いた各成文を以下に説明する。
【0038】
(1)結晶性ポリアミド樹脂
A−1:ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸とを等モル比で縮合重合させることによって調製された、2.6の相対粘度(96%硫酸100ミリリットル中にポリマー1gの溶液として23℃において測定)及び260℃の融点を有する、商品として入手できる結晶性ポリアミド6,6。
【0039】
A−2:ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸とを等モル比で縮合重合させることによって調製された、少なくとも2.0の相対粘度(96%硫酸100ミリリットル中にポリマー1gの溶液として23℃において測定)及び210℃の融点を有する、商品として入手できる結晶性ポリアミド6,10。
【0040】
A−3:ヘキサメチレンジアミンとオレイン酸とを等モル比で縮合重合させることによって調製された、少なくとも1.5の相対粘度(96%硫酸100ミリリットル中にポリマー1gの溶液として23℃において測定)及び200℃の融点を有する、商品として入手できる結晶性ポリアミド6,36。
【0041】
A−4:ヘキサメチレンジアミンとドデカン酸とを等モル比で縮合重合させることによって調製された、少なくとも1.8の相対粘度(96%硫酸100ミリリットル中にポリマー1gの溶液として23℃において測定)及び185℃の融点を有する、商品として入手できる結晶性ポリアミド6,12。
【0042】
A−5:ω−アミノデカン酸を縮合重合させることによって調製された、少なくとも2の相対粘度(96%硫酸100ミリリットル中にポリマー1gの溶液として23℃において測定)及び180℃の融点を有する、商品として入手できる結晶性ポリアミド12。
【0043】
(2)無水マレイン酸変性ポリオレフィン
B:この変性ポリオレフィンは、ポリオレフィン10〜99重量%及び無水マレイン酸モノマー1〜20重量%を含むコポリマー又はグラフトコポリマーである。
【0044】
(3)添加剤
C:ナトリウムアルミナシリケート
【0045】
(4)ガラス繊維
D:約10μmの直径及び3〜3.2μmの平均粒子長さを有し、ポリアミド樹脂と相溶性にするためにシランタイプのシランカップリング剤で処理されたガラス繊維。
【0046】
(5)ポリフェニレンスルフィド
E:原料としてp−ジクロルベンゼン及びNaSを用いて調製された、278℃の融点を有する樹脂。
【0047】
(6)ポリオレフィン
F:一般的なポリエチレン及びポリプロピレン。
【0048】
Superミキサー中で上記の成分を表1及び2に示したような実施例及び比較例の混合比で均質に混合した。一軸スクリュー押出機及び二軸スクリュー押出機の両方を用いることができるが、これらの例において用いた押出機は二軸スクリュー押出機(内径30mm、L/D=30)であり、そのシリンダー温度は260〜280℃とし、スクリューの回転速度は250〜300rpmとし、真空ポンプ(スクリュー中の気体を排出するためのもの)の圧力は50〜70mmHgとし、この排出は25〜30kg/時間に設定した。次いで各例の組成物を充分に溶融させ、押出機のシリンダー中で混合してレースを形成させた。形成されたレースを水浴中で冷却し、次いでペレット製造器で所定寸法のペレットに成形した。
【0049】
製造されたペレットをオーブン中で窒素雰囲気下で85〜90℃において乾燥させて、ペレット中に含有される水分を除去した。0.1%以下の水分含有率を有するペレットを、80トン、6.4オンスの容量を有する押出機(ANGEL、DE)中で、290又は280℃の型成形温度、80℃の型温度50〜80バールの射出圧力、40〜60mm/秒の射出速度、3秒の射出時間及び15秒の冷却温度のような成形条件下で加工して、各種特性を測定するためのサンプルを調製した。
【0050】
調製されたASTMサンプルに対して、下記の分析方法に従って各種特性の測定を行なった。実施例及び比較例の樹脂組成物中に用いた成分の含有率、並びにサンプルの各種特性についての測定を、それぞれ表1及び2に示す。
【0051】
サンプル評価のためのパラメーター及び分析方法は、次の通りである。
【0052】
(a)引張強さ:ASTM法D−638に従い、インストロン装置を用いて測定した。これはkgf/cmで表わされる。
【0053】
(b)曲げ強さ及び曲げ弾性率:これらはASTM法D−790に従い、インストロン装置を用いて測定した。これらはkgf/cmで表わされる。
【0054】
(c)アイゾッド衝撃強さ:ASTM法D−256に従い、アイゾッド衝撃試験器を用いて測定した。これはkgf・cm/cmで表わされる。
【0055】
(d):熱変形温度:ASTM法D−648に従い、4.6kgf/cmの荷重下で測定した。
【0056】
(e)収縮:各サンプルの収縮は、ASTM法D−955に従って計算した。%で表わされる。
【0057】
(f)耐不凍液性:引張強さを測定するためのASTMサンプルを、水及びエチレングリコール(50:50)から成る水溶液中に146℃において144時間浸漬し、次いで一定温度/湿度のチャンバー(25℃、相対湿度50%)中に24時間入れた。次いでASTM法D−638に従って引張試験を実施した。
【0058】
(g)耐塩化カルシウム性:サンプルを、10重量%無水塩化カルシウム水溶液中に150℃において300時間浸漬し、次いで一定温度/湿度のチャンバー(25℃、相対湿度50%)中に24時間入れた。次いでASTM法D−638に従って引張試験を実施した。
【0059】
【表1】
【0060】
比較例1のポリアミド樹脂組成物は、慣用のポリアミド6,6を30重量%ガラス繊維及び耐熱性材料と一緒にすることによって調製された。ポリアミドの末端に存在するアミド官能基と表面がシランカップリング剤で処理されたガラス繊維との間の共有結合が存在していた。
【0061】
実施例1のポリアミド樹脂組成物は、比較例1の組成物にナトリウムアルミナシリケートを添加することによって調製され、従って鎖中に浸透したカチオン性イオンを捕捉する機能を有し、耐不凍液性及び初期物理的特性が劣化することなく選択的に耐塩化物性のみが改善できるようにしたものである。
【0062】
実施例2のポリアミド樹脂組成物は、実施例1の組成物に変性ポリオレフィンを添加することによって調製されたものであり、実施例1の組成物のものより僅かに低い初期物理的特性及び耐不凍液性を有するが、しかしより一層優れた耐塩化物性を示した。
【0063】
図1は、本発明の実施例2に従うポリアミド樹脂組成物のFT−IRチャートであり、イオン交換が可能なシリケートの固有構造による特徴的ピークを1750cm―1及び630cm―1付近に、そして典型的なSi−Oピークを1000cm―1付近に示す。
【0064】
実施例3のポリアミド樹脂組成物は、実施例2の組成物にポリフェニレンスルフィドを添加することによって調製され、最良の初期物理的特性、耐不凍液性及び耐塩化物性を示した。
【0065】
図2は、本発明の実施例3に従って調製されたポリアミド樹脂組成物のFT−IRチャートであり、実施例2のものとは対照的に580cm―1及び460cm―1付近にポリオレフィンの固有ピークを示した。
【0066】
実施例4のポリアミド樹脂組成物は、実施例2の組成物にポリアミド6,10を添加することによって調製され、実施例2の組成物のものより相対的に低い初期物理的特性及び耐不凍液性を有するが、しかしより良好な耐塩化物性を示した。
【0067】
図3は、本発明の実施例4に従うポリアミド樹脂組成物のFT−IRチャートであり、
810cm―1及び1200cm―1付近にポリフェニレンスルフィドのピークを示した。
【0068】
実施例5のポリアミド樹脂組成物は、実施例2の組成物にポリオレフィンを添加することによって調製された。このサンプルはそれほど高い耐不凍液性を示さなかったが、しかし実施例2のものと比較して顕著に高い耐塩化物性を示した。
【0069】
実施例6のポリアミド樹脂組成物は、実施例2の組成物にポリアミド6,36を添加することによって調製され、実施例2の組成物のものより相対的に低い耐不凍液性を有するが、しかしより良好な耐塩化物性を示した。
【0070】
【表2】
【0071】
実施例7のポリアミド樹脂組成物は、実施例2の組成物にポリアミド6,12を10重量%添加することによって調製され、実施例2の組成物のものより僅かに低い初期物理的特性及び耐不凍液性を有するが、しかしより良好な耐塩化物性を示した。
【0072】
実施例8のポリアミド樹脂組成物は、実施例7の組成物にポリアミド6,12を10重量%添加することによって調製され、実施例7の組成物より僅かに低い初期物理的特性及び耐不凍液性を有するが、しかしより良好な耐塩化物性を示した。
【0073】
実施例9のポリアミド樹脂組成物は、実施例6の組成物にポリアミド6,36を10重量%添加することによって調製され、実施例6の組成物より相対的に低い耐不凍液性を有するが、しかしより良好な耐塩化物性を示した。
【0074】
実施例10のポリアミド樹脂組成物は、実施例4の組成物にポリアミド6,10を10重量%添加することによって調製され、実施例4の組成物より僅かに低い初期物理的特性及び耐不凍液性を有するが、しかしより良好な耐塩化物性を示した。
【0075】
実施例11のポリアミド樹脂組成物は、比較例1の組成物にナトリウムアルミナシリケートを10重量%添加することによって調製され、従って、鎖中に浸透したカチオン性イオンを捕捉する機能を有し、耐不凍液性及び初期物理的特性の改善を含めて、選択的に耐塩化物性のみが改善できるようにしたものである。
【0076】
実施例12のポリアミド樹脂組成物は、実施例3の組成物にポリフェニレンスルフィドを10重量%添加することによって調製され、実施例3の組成物より優れた初期物理的特性、耐不凍液性及び耐塩化物性を示した。
【0077】
以上説明したように、本発明に従うポリアミド樹脂組成物は慣用のポリアミド樹脂組成物のものを上回るより一層良好な機械的及び物理的特性及び耐不凍液性を有し、慣用のポリアミド樹脂組成物とほとんど同等の耐塩化物性を有する。従って、本発明に従う組成物は、一般的に耐熱性及び剛性を必要とするボイラー及び自動車のラジエータタンクキャップのような各種の内部及び外部部品に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施例2に従うポリアミド樹脂組成物のFT−IRチャートである。
【図2】本発明の実施例3に従うポリアミド樹脂組成物のFT−IRチャートである。
【図3】本発明の実施例4に従うポリアミド樹脂組成物のFT−IRチャートである。

Claims (7)

  1. ポリアミド約30〜80重量%、補強剤約10〜50重量%及びナトリウムアルミナシリケート約0.1〜20重量%を含み、良好な耐熱性及び高い耐化学薬品性を有するポリアミド樹脂組成物。
  2. 前記ポリアミドがポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6,12、ポリアミド6,36、ポリアミドコポリマー、脂肪族ポリアミド、テレフタル酸又はイソフタル酸から生成されるポリアミド、芳香族ポリアミド及びそれらの組合せより成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記補強剤がガラス繊維、無機充填剤及びそれらの組合せより成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
  4. さらにポリオレフィンを樹脂100部当たりに1〜30部(phr)含む、請求項1又は2に記載の組成物。
  5. さらにポリフェニレンスルフィドを樹脂100部当たりに1〜30部(phr)含む、請求項1又は2に記載の組成物。
  6. さらに無水マレイン酸で変性されたポリオレフィンを約1〜10重量%含む、請求項1又は2に記載の組成物。
  7. ラジエータタンクキャップのような冷却水循環のための冷却装置の部品、並びにエンジンカバー、タイミングベルトキャップ及びエンジン部品のような自動車の部品の製造に用いられる、請求項1又は2に記載の組成物。
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