JP2006299216A - ポリアミド樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

ポリアミド樹脂組成物およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリアミド樹脂が本来有する優れた熱的性質を保持しながら、耐薬品性が改善されたポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
【解決手段】ポリアミド樹脂(a)50〜99重量%、ポリオレフィン樹脂(b)1〜50重量%から構成される樹脂組成物であって、該樹脂組成物中に電子顕微鏡で観察される樹脂相分離構造において、ポリアミド樹脂(a)が連続相、ポリオレフィン樹脂(b)が分散相を形成し、ポリオレフィン樹脂(b)が1〜100nmの分散粒径で分散する樹脂相分離構造を有することを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂からなる樹脂組成物において、ポリオレフィン樹脂がナノメートルオーダーで分散したポリアミド樹脂組成物とその製造方法に関するものである。更に詳しくは、ポリアミド樹脂が本来有する優れた熱的性質を保持しながら、耐薬品性が大幅に改善されるポリアミド樹脂組成物およびその製造方法に関するものである。
ポリアミド樹脂は、機械的特性、靭性、熱的性質に優れるなど、エンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有していることから、射出成形用を中心として各種電気・電子部品、機械部品および自動車部品などの用途に広く使用されている。しかしポリアミド樹脂は、吸湿して寸法変化および剛性低下を引き起こす、高温水蒸気に長時間接触すると加水分解する、薬液に対する耐性、例えば凍結防止剤(塩化カルシウム)、不凍液に対する耐性が低い等の問題点を有している。
このようなポリアミド樹脂の欠点を補うために、ポリオレフィン樹脂をポリアミド樹脂に複合した樹脂組成物が数多く提案されている。例えば、特許文献1にはポリアミド樹脂と不飽和カルボン酸又はその無水物による変性ポリオレフィン、あるいはポリオレフィンと前記変性ポリオレフィンとからなるポリオレフィン樹脂混合物からなる組成物において分散相平均径を0.5 〜5μmとすることで耐薬品性の改良は見られることが開示されているが、更なる耐薬品性も求められている。また、特許文献2および特許文献3ではポリアミドとポリオレフィン系樹脂において、混練条件、相溶性等を改善することでポリオレフィン系樹脂がさらに微分散化した樹脂組成物が開示されているが、本発明のような100nm以下の分散を達成することは困難である。
特許文献4には、ポリアミド樹脂と他樹脂のアロイについて構造周期0.01〜1μmの両相連続構造または粒子間距離0.01〜1μmの分散構造を有するポリアミド樹脂組成物が掲示されており、構造を微細に制御することで靭性が保持されかつ機械的特性、耐水性の優れたポリアミド樹脂組成物が得られることが示されている。しかしながら、これは相溶状態からスピノーダル分解によって相分離させて微細構造を構築する技術であり、本発明に用いられるポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂の組合せに適用することは困難である。
特開平6−234897号公報(特許請求の範囲) 特開平9−31325号公報(特許請求の範囲) 特開平11−140237号公報(特許請求の範囲) 特開2003−113304号公報(特許請求の範囲)
本発明はポリアミド樹脂中にポリオレフィン樹脂を特定の分散状態(ナノメートルオーダー)で分散させることにより、ポリアミド樹脂が本来有する優れた熱的性質を保持しながら、耐薬品性が大幅に改善されるポリアミド樹脂組成物を提供することを課題とする。
すなわち、本発明は、
(1)ポリアミド樹脂(a)50〜99重量%、ポリオレフィン樹脂(b)1〜50重量%から構成される樹脂組成物であって、該樹脂組成物中に電子顕微鏡で観察される樹脂相分離構造において、ポリアミド樹脂(a)が連続相、ポリオレフィン樹脂(b)が分散相を形成し、ポリオレフィン樹脂(b)が1〜100nmの分散粒径で分散する樹脂相分離構造を有することを特徴とするポリアミド樹脂組成物、
(2)ポリアミド樹脂(a)50〜99重量%、ポリオレフィン樹脂(b)0.5〜40重量%、およびポリフェニレンスルフィド樹脂(c)0.5〜30重量%から構成される樹脂組成物であって、該樹脂組成物中に電子顕微鏡で観察される樹脂相分離構造において、ポリアミド樹脂(a)が連続相、ポリオレフィン樹脂(b)およびポリフェニレンスルフィド樹脂(c)が分散相を形成し、ポリオレフィン樹脂(b)およびポリフェニレンスルフィド樹脂(c)がそれぞれ1〜100nmの分散粒径で分散する樹脂相分離構造を有することを特徴とするポリアミド樹脂組成物、
(3)前記ポリアミド樹脂組成物を構成する樹脂のうち、最も高い融点をもつ樹脂の融点をTp(℃)とした時、Tp+20℃の温度で30分間溶融滞留させ、水浴にて冷却した樹脂組成物中に電子顕微鏡で観察される樹脂相分離構造において、下式(1)で定義される分散粒径変化率が20%以下であることを特徴とする(1)または(2)のポリアミド樹脂組成物、
Figure 2006299216
(4)前記分散相を形成するポリオレフィン樹脂(b)およびポリフェニレンスルフィド樹脂(c)の界面相の厚みが30〜70nmであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかのポリアミド樹脂組成物、
(5)ポリオレフィン樹脂(b)がポリエチレン、ポリプロピレン、およびエチレン/α−オレフィン共重合体から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかのポリアミド樹脂組成物、
(6)ポリオレフィン樹脂(b)の一部もしくは全部が不飽和カルボン酸またはその誘導体から選ばれる少なくとも1種類の化合物で変性されたポリオレフィン樹脂であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかのポリアミド樹脂組成物、
(7)前記ポリアミド樹脂組成物100重量部に対して、充填材(d)5〜100重量部を含有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかのポリアミド樹脂組成物、
(8)前記ポリアミド樹脂組成物を構成する樹脂の溶融混合物に、樹脂温度を250℃〜320℃に制御しつつ0.3kWh/kg以上の混練エネルギーを付与することにより製造せしめることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかのポリアミド樹脂組成物の製造方法、
を提供するものである。
本発明によれば、ポリアミド樹脂が本来有する優れた熱的性質を保持しながら、耐薬品性が大幅に改善されるポリアミド樹脂組成物を得ることができる。ここで得られたポリアミド樹脂組成物は、耐熱性と耐薬品性が必要とされる機械部品、電気・電子部品、医療、食品、家庭・事務用品、建材関係部品、家具用部品などへの使用に特に適している。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「重量」とは「質量」を意味する。
本発明で用いられるポリアミド樹脂(a)とは、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる構成成分とするポリアミドである。その主要構成成分の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン、およびアジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸が挙げられ、本発明においては、これらの原料から誘導されるナイロンホモポリマーまたはコポリマーを各々単独または混合物の形で用いることができる。
本発明において、特に有用なポリアミド樹脂は、150℃以上の融点を有する耐熱性や強度に優れたポリアミド樹脂であり、具体的な例としてはポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)およびこれらの混合物などが挙げられる。
中でも好ましいポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン6/66コポリマー、またナイロン6T/66コポリマー、ナイロン6T/6Iコポリマー、ナイロン6T/12、およびナイロン6T/6コポリマーなどのヘキサメチレテレフタルアミド単位を有する共重合体を挙げることができ、特に好ましくはナイロン66を挙げることができる。更にこれらのポリアミド樹脂を耐衝撃性、成形加工性などの必要特性に応じて混合物として用いることも実用上好適である。
これらポリアミド樹脂の重合度には特に制限がないが、サンプル濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度として、1.5〜7.0の範囲のものが好ましく、特に2.0〜6.0の範囲のポリアミド樹脂が好ましい。
また、本発明のポリアミド樹脂には、長期耐熱性を向上させるために銅化合物が好ましく用いられる。銅化合物の具体的な例としては、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、ヨウ化第一銅、ヨウ化第二銅、硫酸第二銅、硝酸第二銅、リン酸銅、酢酸第一銅、酢酸第二銅、サリチル酸第二銅、ステアリン酸第二銅、安息香酸第二銅および前記無機ハロゲン化銅とキシリレンジアミン、2ーメルカプトベンズイミダゾール、ベンズイミダゾールなどの錯化合物などが挙げられる。なかでも1価の銅化合物とりわけ1価のハロゲン化銅化合物が好ましく、酢酸第1銅、ヨウ化第1銅などを特に好適な銅化合物として例示できる。銅化合物の添加量は、通常ポリアミド樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部であることが好ましく、さらに0.015〜1重量部の範囲であることが好ましい。添加量が多すぎると溶融成形時に金属銅の遊離が起こり、着色により製品の価値を減ずることになる。本発明では銅化合物と併用する形でハロゲン化アルカリを添加することも可能である。このハロゲン化アルカリ化合物の例としては、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、臭化ナトリウムおよびヨウ化ナトリウムを挙げることができ、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムが特に好ましい。
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂(b)とは、エチレン、プロピレン、ブテン、イソプレン、ペンテンなどのオレフィン類を重合または共重合して得られる熱可塑性樹脂である。具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ1−ブテン、ポリ1−ペンテン、ポリメチルペンテンなどの単独重合体および共重合体、エチレン/α−オレフィン共重合体、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素とのブロック共重合体、及び、そのブロック共重合体の水素化物などが用いられる。ここでいうエチレン/α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンの少なくとも1種以上との共重合体であり、上記の炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的にはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。これらα−オレフィンの中でも、炭素数3〜12のα−オレフィンを用いた共重合体が機械強度の向上の点から好ましい。このエチレン/α−オレフィン系共重合体は、α−オレフィン含量が好ましくは1〜30モル%、より好ましくは2〜25モル%、さらに好ましくは3〜20モル%である。
更に1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、2,5−ノルボルナジエン、5−エチリデンノルボルネン、5−エチル−2,5−ノルボルナジエン、5−(1′−プロペニル)−2−ノルボルネンなどの非共役ジエンの少なくとも1種が共重合されていてもよい。
これらポリオレフィン樹脂の中でも、低、中および高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンを主成分とする共重合ポリプロピレン、エチレン/α−オレフィン共重合体およびそれらの混合物が好ましい。より好ましくは、ポリプロピレン、ポリプロピレンを主成分とする共重合ポリプロピレンおよびそれらの混合物である。
本発明で用いられるポリプロピレンは、アイソタクティック、アタクティック、シンジオタクティックなどいずれも使用することができ、更にプロピレン単独重合体としての特性を損なわない範囲(例えば0.5wt%未満)の少量の他モノマー成分が含まれるポリプロピレンも使用できる。
また、本発明で用いられる共重合ポリプロピレンは、プロピレンとα−オレフィンのランダムまたはブロック共重合体であり、α−オレフィンとしては炭素数2〜8(但し炭素数3を除く)のα−オレフィンが好ましい。中でも特にプロピレン/エチレンブロック共重合体が好ましく、プロピレン/エチレンブロック共重合体は、エチレン含量が0.5〜15重量%のものが曲げ弾性率と衝撃強度のバランスに優れ好ましく用いられる。
本発明のポリオレフィン樹脂(b)のメルトフローレート(以下MFRと略す。:ASTM D 1238)は0.01〜70g/10分であることが好ましく、さらに好ましくは0.03〜60g/10分である。MFRが0.01g/10分未満の場合は流動性が悪く、70g/10分を超える場合は成形品の形状によっては衝撃強度が低くなることもあるため好ましくない。これらのMFRは、重合された重合体を有機過酸化物とともに加熱分解し調製したものであっても差し支えない。
本発明に用いるポリオレフィン樹脂(b)の製造方法については特に制限はなく、ラジカル重合、チーグラー・ナッタ触媒を用いた配位重合、アニオン重合、メタロセン触媒を用いた配位重合などいずれの方法でも用いることができる。
また、本発明において、ポリオレフィン樹脂(b)の一部もしくは全部を不飽和カルボン酸またはその誘導体から選ばれる少なくとも1種類の化合物で変性して用いることが好ましい。変性したポリオレフィン樹脂を用いると、相溶性が向上し、得られる樹脂組成物の相分離構造の制御性が向上し、好ましい態様の一つである。
変性剤として使用される不飽和カルボン酸またはその誘導体の例を挙げると、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メチルマレイン酸、メチルフマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸およびこれらカルボン酸の金属塩、マレイン酸水素メチル、イタコン酸水素メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸、エンドビシクロ−(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物、マレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル、および5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸などである。これらの中では、不飽和ジカルボン酸およびその酸無水物が好適であり、特にマレイン酸や無水マレイン酸が好適である。なかでも無水マレイン酸はポリアミド樹脂組成物中に分散するポリオレフィン樹脂の界面相を厚くすることができるため特に好ましく使用される。
これらの不飽和カルボン酸またはその誘導体成分をポリオレフィン樹脂に導入する方法は特に制限なく、予め主成分であるオレフィン化合物と不飽和カルボン酸またはその誘導体化合物を共重合せしめたり、未変性ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸またはその誘導体化合物をラジカル開始剤を用いてグラフト化処理を行って導入するなどの方法を用いることができる。不飽和カルボン酸またはその誘導体成分の導入量は変性ポリオレフィン中のオレフィンモノマ全体に対して好ましくは0.001〜40モル%、より好ましくは0.01〜35モル%の範囲内であることが適当である。
本発明のポリアミド樹脂(a)とポリオレフィン樹脂(b)の配合割合は、ポリアミド樹脂(a)とポリオレフィン樹脂(b)の合計100重量%として、ポリアミド樹脂(a)50〜99重量%、ポリオレフィン樹脂(b)1〜50重量%であり、好ましくは、ポリアミド樹脂65〜95重量%、ポリオレフィン樹脂5〜35重量%である。ポリオレフィン樹脂(b)が5〜35重量%である場合には、該組成物は機械的特性と耐薬品性のバランスが特に優れるため好ましい。ポリオレフィン樹脂(b)が1重量%未満では本発明の耐薬品性の改良効果が得にくく、また50重量%を越えるとポリアミド樹脂(a)が本来持つ機械的特性が著しく低下するため好ましくない。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(a)が連続相、ポリオレフィン樹脂(b)が分散相を形成し、ポリオレフィン樹脂(b)が1〜100nmの範囲の分散粒径で分散する樹脂相分離構造を有することを特徴とする。ここで言う分散粒径とは、該樹脂組成物を射出成形(住友重機社製SG75H−MIV、シリンダー温度300℃、金型温度80℃)により調製したASTM1号ダンベルの成型表面から500μm内部から厚み80nmの薄片をダンベル片の断面積方向に切削し、透過型電子顕微鏡(倍率:1000倍)で観察した電子顕微鏡写真を画像解析ソフト「Scion Image」(Scion Corporation製)を用いて処理することで算出した平均粒径である。特に好ましい分散粒径の範囲は1〜90nmである。ポリオレフィン樹脂(b)の分散粒径が1〜100nmの範囲以外の場合には、本発明の課題である機械的特性に優れ、かつ耐薬品性が改良されたポリアミド樹脂組成物を得ることができない。
前記ポリアミド樹脂組成物に、ポリフェニルスルフィド樹脂(以下、PPS樹脂とも言う)(c)を加えることでさらに機械的特性に優れ、かつ耐薬品性が改良されたポリアミド樹脂組成物を得ることができる。本発明に用いるPPS樹脂(c)としては、下記構造式で示される繰り返し単位を有する重合体を用いることができる。
Figure 2006299216
耐熱性の観点からは前記構造式で示される繰り返し単位を70モル%以上、さらには90モル%以上含む重合体が好ましい。またPPS樹脂はその繰り返し単位の30モル%未満程度が、下記のいずれかの構造を有する繰り返し単位等で構成されていてもよい。なかでもp−フェニレンスルフィド/m−フェニレンスルフィド共重合体(m−フェニレンスルフィド単位20%以下)などは、成形加工性とバリア性を兼備する点で好ましく用いられ得る。
Figure 2006299216
かかるPPS樹脂は、ポリハロゲン芳香族化合物とスルフィド化剤とを極性有機溶媒中で反応させて得られるPPS樹脂を回収および後処理することで、高収率で製造することができる。具体的には特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法、あるいは特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きな重合体を得る方法などによっても製造できる。前記のように得られたPPS樹脂を空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水、酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化など種々の処理を施した上で使用することもできる。
PPS樹脂を加熱により架橋/高分子量化する場合の具体的方法としては、空気、酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素、アルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度において、希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法が例示できる。加熱処理温度は通常、170〜280℃が選択され、好ましくは200〜270℃である。また、加熱処理時間は通常0.5〜100時間が選択され、好ましくは2〜50時間である。この両者をコントロールすることにより目標とする粘度レベルを得ることができる。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でも、また回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理するためには、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いることが好ましい。
PPS樹脂を窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法としては、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で、加熱処理温度150〜280℃、好ましくは200〜270℃、加熱時間は0.5〜100時間、好ましくは2〜50時間加熱処理する方法が例示できる。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でも、また回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理するためには、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
本発明で用いられるPPS樹脂(c)は、洗浄処理を施されたPPS樹脂であることが好ましい。かかる洗浄処理の具体的方法としては、酸水溶液洗浄処理、熱水洗浄処理および有機溶媒洗浄処理などが例示できる。これらの処理は2種以上の方法を組み合わせて用いても良い。
PPS樹脂を有機溶媒で洗浄する場合の具体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち、洗浄に用いる有機溶媒としては、PPS樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はないが、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド、スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール、フェノール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などがあげられる。これらの有機溶媒のなかでN−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミド、クロロホルムなどの使用が好ましい。これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上を混合して使用される。有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなるほど洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。また有機溶媒洗浄を施されたPPS樹脂は、残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。
PPS樹脂を熱水で洗浄処理する場合の具体的方法としては、以下の方法が例示できる。すなわち、熱水洗浄によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、常圧であるいは圧力容器内で加熱、撹拌することにより行われる。PPS樹脂と水との割合は、水の多いほうが好ましいが、通常、水1リットルに対し、PPS樹脂200g以下の浴比が選択される。
また、熱水で洗浄処理する場合、周期表の第II族の金属元素を含有する水溶液で処理することが好ましく用いられる。周期表の第II族の金属元素を含む水溶液とは、上記水に、周期表の第II族の金属元素を有する水溶性塩を添加したものである。水に対する周期表の第II族の金属元素を有する水溶性塩の濃度は、0.001〜5重量%程度の範囲が好ましい。
ここで使用する周期表の第II族の金属元素の中でも好ましい金属元素としては、Ca、Mg、BaおよびZnなどが例示でき、その対アニオンとしては、酢酸イオン、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオンおよび炭酸イオンなどが挙げられる。より具体的で好適な化合物としては、酢酸Ca、酢酸Mg、酢酸Zn、CaCl、CaBr、ZnCl、CaCO、Ca(OH)およびCaOなどが例示でき、特に好ましくは、酢酸Caである。
周期表の第II族の金属元素を含有する水溶液の温度は130℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。洗浄温度の上限については特に制限はないが、通常のオートクレーブを用いる場合には250℃程度が限界である。
かかる周期表の第II族の金属元素を含む水溶液の浴比は、重量比で乾燥ポリマー1に対し、2〜100の範囲が好ましく選択され、4〜50の範囲がより好ましく、5〜15の範囲であることがさらに好ましい。
PPS樹脂を酸水溶液で洗浄処理する場合の具体的方法としては、以下の方法が例示できる。すなわち、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。用いられる酸はPPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸などのハロ置換脂肪族飽和カルボン酸、アクリル酸、クロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、安息香酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などのジカルボン酸、硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物などがあげられる。中でも酢酸、塩酸がより好ましく用いられる。酸処理を施されたPPS樹脂は、残留している酸や塩などを除去するために、水または温水で数回洗浄することが好ましい。また洗浄に用いる水は、酸処理によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。
本発明で用いられるPPS樹脂(c)の灰分量は、加工時の流動性や成形サイクルなどの特性を付与する点から0.1〜2重量%と比較的多い範囲が好ましく、0.2〜1重量%の範囲がより好ましく、0.3〜0.8重量%の範囲であることがさらに好ましい。
ここで、灰分量とは以下の方法により求めたPPS樹脂中の無機成分量を指す。
(1)583℃で焼成、冷却した白金皿にPPS樹脂5〜6gを秤量する。
(2)白金皿とともにPPS樹脂を450〜500℃で予備焼成する。
(3)583℃にセットしたマッフル炉に白金皿とともに予備焼成したPPS樹脂試料を入れ、完全に灰化するまで約6時間焼成する。
(4)デシケーター内で冷却後、秤量する。
(5)式:灰分量(重量%)=(灰分の重量(g)/試料重量(g))×100により灰分量を算出する。
本発明で用いられるPPS樹脂(c)の溶融粘度は、耐薬品性の改良および加工時の流動性などの特性を付与する点から、MFR=50〜5000g/10分(315.5℃、5kg荷重)の範囲が好ましく選択され、70〜3000g/10分の範囲がより好ましく、100〜1000g/10分の範囲であることがさらに好ましい。
本発明で用いられるPPS樹脂(c)の有機系低重合成分(オリゴマー)量の指標となるクロロホルム抽出量(ポリマー10g/クロロホルム200mL、ソックスレー抽出5時間処理時の残差量から算出)は、耐薬品性の改良および加工時の流動性などの特性を付与する点から1〜5重量%と比較的多い範囲が好ましく、1.5〜4重量%の範囲がより好ましく、2〜4重量%の範囲であることがさらに好ましい。
本発明のポリアミド樹脂(a)、ポリオレフィン樹脂(b)およびPPS樹脂(c)の配合割合は、ポリアミド樹脂(a)、ポリオレフィン樹脂(b)およびPPS樹脂(c)の合計100重量%として、ポリアミド樹脂(a)50〜99重量%、ポリオレフィン樹脂(b)0.5〜40重量%、およびPPS樹脂(c)0.5〜30重量%であり、好ましくは、ポリアミド樹脂65〜95重量%、ポリオレフィン樹脂1〜20重量%およびPPS樹脂1〜20重量%である。ポリアミド樹脂(a)が50重量%未満では本来持つ機械的特性が著しく低下し、また50重量%を越えると本発明の耐薬品性の改良効果が得にくく、また99重量%を越えると本発明の耐薬品性の改良効果が得にくくなるため好ましくない。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(a)が連続相、ポリオレフィン樹脂(b)およびPPS樹脂(c)が分散相を形成し、ポリオレフィン樹脂(b)およびPPS樹脂(c)が共に1〜100nmの範囲の分散粒径で分散して樹脂相分離構造を有していることが好ましい。ここで言う分散粒径とは、前記したポリアミド樹脂(a)とポリオレフィン樹脂(b)の2成分の場合と同様に該樹脂組成物を射出成形(住友重機社製SG75H−MIV、シリンダー温度300℃、金型温度80℃)により調製したASTM1号ダンベルの成型表面から500μm内部より、厚み80nmの薄片をダンベル片の断面積方向に切削し、透過型電子顕微鏡(倍率:1000倍)で観察した電子顕微鏡写真を画像解析ソフト「Scion Image」(Scion Corporation製)を用いて処理することで算出した平均粒径である。この時、ポリアミド樹脂(a)、ポリオレフィン樹脂(b)およびPPS樹脂(c)の3成分の場合でも、透過型電子顕微鏡観察時の染色方法および画像解析ソフト「Scion Image」による画像処理を用いることで、ポリオレフィン樹脂(b)とPPS樹脂(c)の分散粒径を個別に算出することが可能である。特に好ましい分散粒径の範囲は1〜90nmである。ポリオレフィン樹脂(b)およびPPS樹脂(c)の分散粒径が1〜100nmの範囲以外の場合には、本発明の課題である機械的特性に優れ、かつ耐薬品性が改良されたポリアミド樹脂組成物を得ることができない。
本発明のポリアミド樹脂組成物における分散構造は安定であり、溶融滞留させた場合にも分散相の分散粒径に大きな変化がないことが好ましい。すなわち、本発明のポリアミド樹脂組成物をメルトインデクサーに仕込み、本発明のポリアミド樹脂組成物を構成する樹脂のうち、最も高い融点をもつ樹脂の融点(Tp(℃))+20℃の温度で30分間溶融滞留させた後、溶融組成物を吐出し、水浴にて冷却したサンプルを観察した時に下式(1)で定義される分散粒径変化率が20%以下であることが好ましい。
Figure 2006299216
このように本発明のポリアミド樹脂組成物は、溶融滞留後においても分散粒径に大きな変化がないため、長時間溶融滞留させた後に得た成形品においても溶融滞留させずに得た成形品と比較して機械特性が大幅に低下することはない。溶融滞留後の分散粒径変化率が20%より大きい場合には、溶融滞留条件によっては本発明の課題である機械特性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることができなくなるため好ましくない。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂が連続相を、それ以外の樹脂が分散相を形成し、分散相が1〜100nmの範囲の分散粒径で分散した際に、両樹脂の境界において両成分が共存する界面相の厚みが30〜70nmであるとき耐薬品性が著しく向上するため好ましく、より好ましくは35〜60nmである。本発明のポリアミド樹脂組成物に分散するポリオレフィン樹脂の界面相厚みは射出成形片の中心部から厚み80nmの薄片をダンベル片の断面積方向に切削し、ポリオレフィン樹脂を染色剤(四酸化ルテニウム等)で染色して透過型電子顕微鏡観察した際の写真より染色性の差を利用して任意の10ヶの分散粒子をついて直接厚さを測定して得られた値の平均値として求めた。また本発明のポリアミド樹脂組成物に分散するPPS樹脂の界面相厚みは射出成形片の中心部から厚み80nmの薄片をダンベル片の断面積方向に切削し、電界放出型電子顕微鏡で任意の10ヶの分散粒子について、図1に示すようにその粒子を横切る線上のEDX線分析(エネルギー分散型X線分光線分析)し、ポリアミド樹脂の酸素原子濃度とPPS樹脂の硫黄原子濃度が連続的変化する領域部分の長さを測定して得られた値の平均値として求めた。界面相の厚みが30nm未満になると耐薬品性が悪くなり好ましくない。一方、界面相の厚みが70nmを超えると流動性が低下し、加工性が悪くなるため好ましくない。また、界面相の厚みを上述の如くコントロールするためには、ポリオレフィン樹脂の変性剤量を適宜選択することが重要である。
本発明に用いられる充填材(d)として、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、炭酸カルシウムウィスカ、ワラステナイトウィスカ、硼酸アルミウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填材、あるいはタルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、モンモリロナイト、合成雲母などの膨潤性の層状珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ガラス・ビーズ、セラミックビ−ズ、窒化ホウ素、炭化珪素、燐酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスフレーク、ガラス粉、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛などの非繊維状充填材が用いられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。好ましくはガラス繊維、炭素繊維、モンモリロナイト、合成雲母などの膨潤性の層状珪酸塩であり、特に好ましくはガラス繊維である。また、これらの充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、ウレタン化合物、およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用してもよく、なかでもウレタン化合物、エポキシ化合物、有機シラン化合物で予備処理されたガラス繊維が好ましく用いられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物に含有される充填材(d)の含有量としては、ポリアミド樹脂組成物100重量部に対して、1〜150重量部が好ましく、より好ましくは5〜100重量部であり、特に好ましくは10〜50重量部である。充填材(d)の含有量が5重量部未満の場合は物性改良の効果が小さいため好ましくなく、100重量部を越える場合には溶融粘度が著しく増加し流動性が低下するため好ましくない。
本発明のポリアミド樹脂組成物には相溶性を向上させる目的で相溶化剤を添加することができる。相溶化剤の具体的な例としては、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシランなどの有機シラン化合物および多官能エポキシ化合物などが挙げられ、これらは2種以上同時に使用することもできる。ここで多官能エポキシ化合物は、エポキシ基を分子中に2個以上含むものであり、液体または固体状のものを使用することができる。例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどのα−オレフィンとアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジルなどのα,β−不飽和酸グリシジルエステルとの共重合体、ビスフェノールA、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロカテコール、ビスフェノールF、サリゲニン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、ビスフェノールS、トリヒドロキシ−ジフェニルジメチルメタン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,5−ジヒドロキシナフタレン、カシューフェノール、2,2,5,5−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン等のビスフェノール−グリシジルエーテル系エポキシ化合物、フタル酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル系エポキシ化合物、N−グリシジルアニリン等のグリシジルアミン系エポキシ化合物、ノボラック型フェノール樹脂にエピクロルヒドリンを反応させたノボラック型エポキシ樹脂等が例示される。好ましくはビスフェノール−グリシジルエーテル系エポキシ化合物、エポキシ基を有する有機シラン化合物またはイソシアネート基を有する有機シラン化合物が用いられる。なかでもイソシアネート基を有する有機シラン化合物を用いた場合には界面相厚みを厚くすることができるため特に好ましい。 相溶化剤の配合割合は本発明のポリアミド樹脂組成物100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、更に好ましくは0.1〜5重量部である。0.01重量部以下の添加量においては十分な相溶性向上効果が得られず、10重量部を超える場合はポリアミド樹脂組成物の溶融粘度が著しく増加し流動性が低下するため好ましくない。
更に本発明においては、熱安定性を保持するために、フェノール系、リン系化合物の中から選ばれた1種以上の酸化防止剤を含有せしめることができる。かかる酸化防止剤の配合量は、耐熱改良効果の点から本発明のポリアミド樹脂組成物100重量部に対して、0.01重量部以上、特に0.02重量部以上であることが好ましく、成形時に発生するガス成分の観点からは、5重量部以下、特に1重量部以下であることが好ましい。また、フェノール系及びリン系酸化防止剤を併用して使用することは、特に耐熱性、熱安定性、流動性保持効果が大きく好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物が好ましく用いられ、具体例としては、トリエチレングリコール−ビス[3−t−ブチル−(5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N、N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート、3,9−ビス[2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどが挙げられる。
中でも、N、N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが好ましく用いられる。
次にリン系酸化防止剤としては、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリト−ル−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリト−ル−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−クミルフェニル)ペンタエリスリト−ル−ジ−ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビスフェニレンホスファイト、ジ−ステアリルペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、トリフェニルホスファイト、3,5−ジーブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォネートジエチルエステルなどが挙げられる。中でも、ポリアミド樹脂のコンパウンド中に酸化防止剤の揮発や分解を少なくするために、酸化防止剤の融点が高いものが好ましく用いられる。
さらに、本発明のポリアミド樹脂組成物には本発明の効果を損なわない範囲において、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、PPS樹脂以外の樹脂を添加することが可能である。但し、本発明のポリアミド樹脂組成物全体100重量部に対して30重量部を超えるとポリアミド樹脂本来の特徴が損なわれるため好ましくなく、特に20重量部以下の添加が好ましく使用される。
樹脂の具体例としては、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、ポリアレキレンオキサイド樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂などが挙げられる。また、改質を目的として、以下のような化合物の添加が可能である。有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物などのカップリング剤、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン系化合物などの可塑剤、タルク、カオリン、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重宿合物、シリコーン系化合物などの離型剤、次亜リン酸塩などの着色防止剤、その他、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤、発泡剤などの通常の添加剤を配合することができる。上記化合物は何れも本発明のポリアミド樹脂組成物全体100重量部に対して20重量部を越えるとポリアミド樹脂本来の特性が損なわれるため好ましくなく、10重量部以下、更に好ましくは1重量部以下の添加が良い。
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造に用いる混練機は、単軸、2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、及びミキシングロールなど通常公知の溶融混練機に供給してポリアミド樹脂の融点以上の加工温度で混練する方法などを代表例として挙げることができるが、本発明のモルホロジーおよび分散相の粒径を上述の如くコントロールするためには、押出時の混練エネルギー(吐出量あたりの押出機仕事量(kW/(kg/h)))を大きくすることが必要である。これによって分散相の微分散化を行うことができる。好ましい混練エネルギーは、0.3以上であり、特に好ましくは0.5以上である。しかしながら、通常混練エネルギーを大きくするとせん断による発熱で樹脂温度が上昇し、ポリアミド樹脂の熱分解を引き起こし、目的の相分離構造を形成することが困難となる。そのため押出時の樹脂温度は250℃〜320℃にすることが好ましく、280℃〜310℃にすることが更に好ましい。このように混練エネルギーと樹脂温度を制御することにより、目的の樹脂相分離構造を形成することが可能となる。具体的には、2軸押出機を用いた溶融混練において、シリンダー温度を低温とし、スクリュー回転数を高回転とする方法は高せん断を得ることができ、0.3kW/(kg/h)以上の混練エネルギーを達成することができるため好ましく用いられる。しかしながら、混練部のスクリューエレメントに従来のニーディングディスクを用いた場合には、せん断による発熱量が大きく、押出時の樹脂温度は250℃〜320℃を達成することが困難である。これに対して、混練部のスクリューエレメントに低発熱混練エレメントを用いるとせん断による発熱を抑えることができ、押出時の樹脂温度250℃〜320℃が達成できるため好ましい。また混練部に超臨界二酸化炭素、超臨界窒素を導入する方法もせん断による発熱を抑えることができるため好ましい。2軸押出機のシリンダー温度は、2軸押出機に投入された樹脂を可塑化する可塑化部と可塑化された溶融樹脂を溶融混練する混練部に分けた場合、可塑化部をポリアミド樹脂(a)、ポリオレフィン樹脂(b)およびポリフェニレンスルフィド樹脂(c)のうち最も融点の高い樹脂の融点〜融点+20℃の温度とし、混練部のシリンダー温度を100〜250℃の範囲とすることが好ましい。この際、原料の混合順序には特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し、更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。また、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練し、ペレット化した後、成形前に添加して成形に供することも勿論可能である。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、機械的特性、耐熱性および耐薬品性のバランスして優れることから射出成形体用途に特に有用である。またその特徴を活かして、耐熱性と耐薬品性が必要とされる機械部品、電気・電子部品、医療、食品、家庭・事務用品、建材関係部品、家具用部品などへの使用に特に適している。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。材料特性評価については下記の方法に従って行った。
[樹脂温度]2軸押出機において溶融混練する際に押出機ダイより吐出される溶融樹脂を温度計により測定した。
[分散粒径]分散相の分散粒径は以下の要領で測定した。住友重機社製SG75H−MIVを使用し、シリンダー温度300℃、金型温度80℃により成形したASTM1号ダンベル片の成形表面より500nm内部から厚み80nmの薄片を切削し、透過型電子顕微鏡で倍率1000倍にて観察して得られた写真を画像処理ソフト「Scion Image」を用いてフーリエ変換し、得られる逆空間像を円平均して得たプロファイルよりDebyeプロットを行うことで直線を得ることができる。この直線を高分子濃厚溶液の濃度ゆらぎに関するOrnstein-Zernik型の式(2)とみることで、このプロットの傾きとy切片から密度ゆらぎの相関長ξを求め、その相関長ξと分散相の体積分率φより式(3)に従い比表面積を算出して、更に式(4)を用いて平均粒径として算出した。
Figure 2006299216
Figure 2006299216
Figure 2006299216
[溶融滞留後の分散粒径、分散粒径変化率]溶融滞留後の分散相の分散粒径の測定は、80℃で12時間真空乾燥を行ったポリアミド樹脂組成物を東洋精機製メルトインデクサーに仕込み、実施例1〜6、実施例14〜17、比較例2〜3、比較例5、比較例7、比較例9は285℃、実施例8〜13、実施例18〜20、比較例4、比較例8は300℃、実施例7は245℃で30分間溶融滞留した後、溶融樹脂を吐出、水浴にて冷却したサンプルについて前記分散粒径と同様に測定した。また分散粒径変化率は前記分散粒径と溶融滞留後の分散粒径を用いて下式(1)にしたがって算出した。
Figure 2006299216
[成形下限圧]射出成形(住友重機社製SG75H−MIV、シリンダー温度280℃、金型温度130℃)によりATSM1号ダンベルを成形する際に、ATSM1号ダンベルが充填不良を起こすことなく成形することができる最低充填圧力を成形下限圧とした。成形下限圧が低いほど流動性が優れていることになる。
[引張試験]射出成形(住友重機社製SG75H−MIV、シリンダー温度300℃、金型温度80℃)により調製したASTM1号ダンベルを用い、ASTM−D638に従って23℃にて引張試験を行い、強度、破断伸度を測定した。
[高温引張強度]温度雰囲気を80℃とする以外は、前記引張試験と同様に測定を行い、強度を測定した。
[耐塩化カルシウム性]実施例1〜13および比較例1〜5は評価方法1に従い、また実施例14〜20および比較例6〜9は評価方法2に従って評価を行った。
(評価方法1)
前記方法にて作成したASTM1号ダンベル片を95℃熱水に浸漬して飽和吸水させた後、50wt%塩化カルシウム水溶液をダンベル片に塗布し80℃で3時間熱風乾燥した。その後、ASTM−D638に従って引張試験を行い、破断伸度を測定して未処理時引張破断伸度からの保持率により評価した。
◎:保持率(処理後引張破断伸度/未処理時引張破断伸度)=80〜100%
○:保持率=60〜80%
△:保持率=30〜60%
×:保持率=0〜30%。
(評価方法2)
前記方法にて作成したASTM1号ダンベル片を95℃熱水に22h浸漬して吸水させた後、50wt%塩化カルシウム水溶液をダンベル片に0.5cc滴下して、100℃の熱風オーブン中に2時間放置する。該処理(調湿→塩化カルシウム水溶液滴下→オーブン中放置)を1サイクルとして、最大10サイクル繰り返した後、成形品表面の割れ有無を光学顕微鏡にて確認した。
◎:10サイクル繰り返しても割れが発生しない。
△:5〜9サイクルで割れが発生した。
×:5サイクル以下で割れが発生した。
[界面相厚み]分散相の樹脂の界面相厚みは以下の要領で測定した。前記方法にて作成したASTM1号ダンベル片中心部から厚み80nmの薄片をダンベル片の断面積方向に切削し、ポリオレフィン樹脂の界面相厚みは、四酸化ルテニウムで染色して得た観察サンプルを透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察を行い、得られた顕微鏡写真中の界面部の厚みを実測した。またPPS樹脂については、電界放出型電子顕微鏡で任意の10ヶの分散粒子について、図1に示すとおりその粒子を横切る線上の原子濃度をEDX線分析(エネルギー分散型X線分光線分析)し、PPS樹脂の硫黄原子濃度が連続的変化する領域部分の長さを測定して平均値を求めた。
[溶解性]ASTM1号ダンベル片をPEA(フェノール/エタノール=85/15%混合溶媒)に室温で2時間浸漬し、乾燥後のダンベル片の重量減少率を測定した。
[実施例1〜13]、[比較例1〜5]
下に示す各成分を表1に記載の各割合でドライブレンドした後、日本製鋼所社製TEX30型2軸押出機で、シリンダー温度、スクリュー回転数を表1に示した条件に設定して、実施例1〜13、比較例5はスクリュー混練部に低発熱混練エレメントを導入したスクリューを用い、比較例2〜4はスクリュー混練部に従来のニーディングディスクを導入したスクリューを用いて溶融混練を行い、ダイから吐出されるガットは即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。その後80℃で12時間真空乾燥したペレットを用い、射出成形(住友重機社製SG75H−MIV、シリンダー温度300℃、金型温度80℃)により試験片を調製した。各サンプルの機械的特性、耐薬品性を評価した結果は表1に示すとおりである。比較例2は従来シリンダー温度条件にて溶融混練を行ったものであるが目的の樹脂相分離構造を達成することができず、高温引張強度、耐塩化カルシウム性に劣るものであった。比較例3、4は混練部のシリンダー温度を低温として高スクリュー回転にて溶融混練を行ったがスクリュー混練部に従来のニーディングディスクを導入したスクリューを用いているため発熱が大きく、樹脂温度が上昇したため、目的の樹脂相分離構造を達成することができず、破断伸度が低く、耐塩化カルシウム性に劣るものであった。比較例5はポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂が共連続相となったため高温引張強度が大きく劣るものであった。本実施例では比較例1〜5と比較して、機械特性、特に高温の物性と耐薬品性にバランスして優れるものであった。
[実施例14〜20]、[比較例6〜9]
前記した方法により調整したペレットを80℃で12時間真空乾燥したのち、表2に記載の割合で充填材を配合し、田辺プラスチック機械製VS40−32型単軸押出機で、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数80rpmに設定して溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。その後、得られたペレットは80℃で12時間真空乾燥を行い、射出成形(住友重機社製SG75H−MIV、シリンダー温度300℃、金型温度80℃)により試験片を調製した。各サンプルの機械的特性、耐薬品性を評価した結果は表2に示すとおりである。比較例7、8は目的の樹脂相分離構造を達成することができておらず、耐塩化カルシウム性に劣るものであった。比較例9はポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂が共連続相となったため高温引張強度が大きく劣るものであった。本実施例14〜20は比較例6〜9と比較して、機械特性、特に高温の物性と耐薬品性にバランスして優れるものであった。
[実施例21〜25]、[比較例10〜12]
下に示す各成分を表3に記載の各割合でドライブレンドした後、日本製鋼所社製TEX30型2軸押出機で、シリンダー温度、スクリュー回転数を表3に示した条件に設定して、実施例21〜25はスクリュー混練部に低発熱混練エレメントを導入したスクリューを用い、比較例11〜12はスクリュー混練部に従来のニーディングディスクを導入したスクリューを用いて溶融混練を行い、ダイから吐出されるガットは即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。その後80℃で12時間真空乾燥したペレットを用い、射出成形(住友重機社製SG75H−MIV、シリンダー温度300℃、金型温度80℃)により試験片を調製した。各サンプルの機械的特性、耐薬品性を評価した結果は表3に示すとおりである。本実施例では比較例と比較して、機械特性、特に高温の物性と耐薬品性、溶解性に優れるものであった。
本実施例および比較例に用いたポリアミド樹脂(a)は以下の通りである。
(A−1):融点265℃、98%硫酸1g/dlでの相対粘度2.90のナイロン66樹脂。
(A−2):融点265℃、98%硫酸1g/dlでの相対粘度3.30のナイロン66樹脂。
(A−3):融点225℃、98%硫酸1g/dlでの相対粘度2.80のナイロン6樹脂。
同様に、ポリオレフィン(b)は以下の通りである。
(B−1):融点160℃、MFR=0.5g/10分(230℃、2.16kg荷重)、密度0.910g/cmのポリプロピレン樹脂100重量部と無水マレイン酸1重量部とラジカル発生剤(パーヘキサ25B:日本油脂製)0.1重量部をドライブレンドし、シリンダー温度230℃にて溶融混練して得られた樹脂。
(B−2):融点160℃、MFR=0.5g/10分(230℃、2.16kg荷重)、密度0.910g/cmのポリプロピレン樹脂100重量部と無水マレイン酸0.5重量部とラジカル発生剤(パーヘキサ25B:日本油脂製)0.05重量部をドライブレンドし、シリンダー温度230℃にて溶融混練して得られた樹脂。
(B−3):融点110℃、MFR=4.0g/10分(190℃、2.16kg荷重)、密度0.905g/cmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂100重量部と無水マレイン酸1重量部とラジカル発生剤(パーヘキサ25B:日本油脂製)0.1重量部をドライブレンドし、シリンダー温度230℃にて溶融混練して得られた樹脂。
(B−4):融点160℃、MFR=0.5g/10分(230℃、2.16kg荷重)、密度0.910g/cmのポリプロピレン樹脂100重量部と無水マレイン酸1重量部とラジカル発生剤(パーヘキサ25B:日本油脂製)0.2重量部をドライブレンドし、シリンダー温度230℃にて溶融混練して得られた樹脂。
同様に、PPS樹脂(c)は以下の通りである。
(C−1):融点280℃、MFR=200g/10分(315.5℃、5kg荷重)のPPS樹脂。
(C−2):融点280℃、MFR=100g/10分(315.5℃、5kg荷重)のPPS樹脂。
同様に、充填材(d)は以下の通りである。
(D−1):ガラス繊維、(日本電気硝子(株)製T―747GH)
同様に、相溶化剤は以下の通りである。
(相溶化剤):3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越シリコーン製KBE−9007)
Figure 2006299216
Figure 2006299216
Figure 2006299216
ポリアミド樹脂連続相に分散したPPS樹脂の界面相厚みを測定したときの電界放出型電子顕微鏡−EDX線分析の一例を示すモデル図である。

Claims (8)

  1. ポリアミド樹脂(a)50〜99重量%、ポリオレフィン樹脂(b)1〜50重量%から構成される樹脂組成物であって、該樹脂組成物中に電子顕微鏡で観察される樹脂相分離構造において、ポリアミド樹脂(a)が連続相、ポリオレフィン樹脂(b)が分散相を形成し、ポリオレフィン樹脂(b)が1〜100nmの分散粒径で分散する樹脂相分離構造を有することを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
  2. ポリアミド樹脂(a)50〜99重量%、ポリオレフィン樹脂(b)0.5〜40重量%、およびポリフェニレンスルフィド樹脂(c)0.5〜30重量%から構成される樹脂組成物であって、該樹脂組成物中に電子顕微鏡で観察される樹脂相分離構造において、ポリアミド樹脂(a)が連続相、ポリオレフィン樹脂(b)およびポリフェニレンスルフィド樹脂(c)が分散相を形成し、ポリオレフィン樹脂(b)およびポリフェニレンスルフィド樹脂(c)がそれぞれ1〜100nmの分散粒径で分散する樹脂相分離構造を有することを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
  3. 前記ポリアミド樹脂組成物を構成する樹脂のうち、最も高い融点をもつ樹脂の融点をTp(℃)とした時、Tp+20℃の温度で30分間溶融滞留させ、水浴にて冷却した樹脂組成物中に電子顕微鏡で観察される樹脂相分離構造において、下式(1)で定義される分散粒径変化率が20%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
    Figure 2006299216
  4. 前記分散相を形成するポリオレフィン樹脂(b)およびポリフェニレンスルフィド樹脂(c)の界面相の厚みが30〜70nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  5. ポリオレフィン樹脂(b)がポリエチレン、ポリプロピレン、およびエチレン/α−オレフィン共重合体から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  6. ポリオレフィン樹脂(b)の一部もしくは全部が不飽和カルボン酸またはその誘導体から選ばれる少なくとも1種類の化合物で変性されたポリオレフィン樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  7. 前記ポリアミド樹脂組成物100重量部に対して、充填材(d)5〜100重量部を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  8. 前記ポリアミド樹脂組成物を構成する樹脂の溶融混合物に、樹脂温度を250℃〜320℃に制御しつつ0.3kWh/kg以上の混練エネルギーを付与することにより製造せしめることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
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