JP2004035495A - 有機リン化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】式(1)で表される有機リン化合物と、
(式中、R1、R2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6の炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基を表し、m、nは、0〜4の整数を表す。)不飽和ジカルボン酸又はこれらの酸無水物とを、極性溶媒を主体とする溶媒中で90〜200℃で加熱付加反応させて、式(2)で示されるジカルボン酸成分を有する有機リン化合物を生成させ、
当該リン化合物を当該溶媒から高純度の結晶状態で析出させて取得することを特徴とする前記式(2)で表される有機リン化合物の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、官能基としてジカルボキシル基を含有する有機リン化合物の製造方法に関し、特にポリエステル製造時の共重合原料成分として使用可能であり、当該ポリエステルに難燃性を付与しうる有機リン化合物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、居住環境、職場環境において、OA機器、壁材、カーテン、絨毯、パーティション等いたる所に使用されているそれ自体可燃性のポリエステル等の樹脂の火炎に対する安全性の懸念から、これらに関する法的規制がますます厳しくなり、当該規制に対応しうる高性能の難燃剤が強く要求されている。
【0003】
本出願人は、かかる状況に鑑み、樹脂に対する難燃剤として、ハロゲン系難燃剤の問題である燃焼時の腐食性のハロゲンガスや毒性のあるダイオキシン等の発生の恐れがない、リン系の難燃剤に着目し、先に、以下の式(1)で表される有機リン化合物と、
【0004】
【化6】
【0005】
(式中、R1、R2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6の炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基を表し、m、nは、0〜4の整数を表す。)
不飽和ジカルボン酸等を反応させて得られる、
【0006】
次の式(2)で表示される、官能基としてジカルボキシル基を含有する有機リン化合物を提案した(例えば、特公昭50−17979,特公昭58−2240等を参照。)。
【0007】
【化7】
【0008】
この式(2)のジカルボキシル基含有機リン化合物は、これをそのまま、又はさらにジエステル基含有化合物等に変えて、芳香族ジカルボン酸類及びグリコール類等からなるポリエステル樹脂の共重合成分として、これらと共重合させ、樹脂内に導入することにより、当該樹脂の基本的な特性である高強度、耐久性などの諸性質を損なわず、これに、高い難燃性を付与することが可能となる。
【0009】
また、この化合物の共重合によるポリエステル樹脂の難燃化技術は、当該ポリエステル樹脂をベースにしたポリエステルウレタン樹脂、ウレタン−アクリレート変性ポリエステル樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂などにも応用可能な優れたものである(例えば、特開平2002−105340等を参照。)。またそれ以外に、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂にも好適に使用される。
【0010】
ここで、上記式(2)のジカルボキシル基含有機リン化合物は、具体的に、上記式(1)で表される有機リン化合物と、
【0011】
次の式(a)〜(d)のいずれかで表される不飽和ジカルボン酸又はその酸無水物、例えばイタコン酸(又は無水イタコン酸)とを、
【0012】
【化8】
【0013】
窒素雰囲気下、例えば150℃程度で溶融させ反応させることにより合成することができる(例えば、特公昭50−17979,特公昭58−2240等を参照。)。
【0014】
しかしながら、この場合、生成物は粘調の液体として得られ、当該生成物は、純度が充分高くないため、当該粘調液体中には、おそらく副生物や未反応物がかなり含有されており、当該粘調液体を冷却することにより、軟化点が70〜80℃(無水イタコン酸の場合は軟化点84〜88℃)の無色透明なガラス状の固体となってしまう。これをさらにジオキサン溶媒やテトラヒドロフラン−ジオキサン混合溶媒に加熱溶解せしめ、冷却して再結晶することにより、はじめて上記式(2)で示される化合物が得られるとされているのである(特公昭58−2240公報、3〜4頁、実施例2〜実施例3)。
【0015】
しかしながら、このような方法を工業的規模で実施して、式(2)の化合物を製造することは実際的ではない。すなわち、反応のスケールを、例えば実験室のビーカースケールから数十リットル〜数百リットルの実プラントのスケールに上げた場合、このガラス状の固体は、例えば数十キロあるいはそれ以上という大きな硬い塊となってしまうので、次の工程に移るためには、これをまず、粉砕しなければならないが、当該粉砕は、かなり大変な作業であって、そのための特別の粉砕装置が必要である。
【0016】
さらに、かくして細かく粉砕したガラス状固体を、有機溶媒に加熱溶解し、再び冷却して再結晶する工程を実施するためには、余分な加熱及び冷却エネルギーを要し、エネルギー経済的には大きな無駄である。
【0017】
本発明者らは、かかる観点から鋭意検討した結果、上記反応を、特定の溶媒中で特定の温度で実施することにより、意外なことに、当該反応は実質的に阻害されずに充分実用的な速度で均一系の反応として進行するとともに、生成した上記式(2)のジカルボキシル基含有機リン化合物は、当該溶媒中で分散性の良好な、しかも、高純度の微細結晶として溶媒相から容易に分離しうることを見出した。
【0018】
このように、特定の溶媒を使用することにより、生成反応工程と生成物の分離及び精製工程が同時に(または並列的に)同一の反応系中で進行するため、従来のごとく、ガラス状の固形物の生成、その厄介な粉砕処理、及び、さらに再度の加熱溶解・冷却再結晶処理はもはや不要となるのである。本発明はかかる知見に基づいてなされるに至ったものである。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、以上のごとく、式(2)のジカルボキシル基含有有機リン化合物を、高純度・高収率で、かつ、工業的に容易に実施できる製造方法を提供することである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明に従えば、以下の発明が提供される。
【0021】
〔請求項1〕の方法は、式(1)で表される有機リン化合物と、
【0022】
【化9】
【0023】
(式中、R1、R2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6の炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基を表し、m、nは、0〜4の整数を表す。)
【0024】
式(a)〜(d)のいずれかで表される不飽和ジカルボン酸又はこれらの酸無水物とを、
【0025】
【化10】
【0026】
(式中、点線は、二つのカルボキシル基が酸無水物を形成していてもよいことを示す。以下、同じ。)
極性溶媒を主体とする溶媒中で90〜200℃で加熱付加反応させて、
【0027】
式(2)で示されるジカルボン酸成分を有する有機リン化合物を生成させ、
【0028】
【化11】
【0029】
当該リン化合物を当該溶媒から高純度の結晶状態で析出させて取得することを特徴とする前記式(2)で表される有機リン化合物の製造方法、に関するものである。
【0030】
〔請求項2〕の方法は、前記不飽和ジカルボン酸がイタコン酸又はその酸無水物であり、得られるジカルボン酸成分を有する有機リン化合物が、式(3)で表される有機リン化合物である請求項1に記載の方法、に関するものである。
【0031】
【化12】
【0032】
(式中、R1、R2、m、nは、それぞれ式(1)で定義した意味を表す。)
【0033】
〔請求項3〕の方法は、極性溶媒を主体とする溶媒として沸点が90℃以上の極性溶媒又は極性溶媒と非極性溶媒の混合溶媒を使用する請求項1又は2に記載の方法、に関するものである。
【0034】
〔請求項4〕の方法は、極性溶媒中で付加反応を行い、反応終了後に、非極性溶媒を添加して生成有機リン化合物の析出を行わせる請求項1〜3のいずれかに記載の方法、に関するものである。
【0035】
〔請求項5〕の方法は、得られる有機リン化合物が式(4)で表される10−(2,3−ジカルボキシプロピル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキシドである請求項1〜4のいずれかに記載の方法、に関するものである。
【0036】
【化13】
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0038】
本発明において、上記式(1)で表される有機リン化合物(すなわち、リン酸ビフェニル化合物)は、特公昭49−45397に記載されているように、オルソフェニルフェノール、例えばオルソフェニルフェノール(2−ヒドロキシビフェニル)、2−ヒドロキシ−3,5,4’−トリクロロビフェニル、2−ヒドロキシ−3,5,4’−トリブロモビフェニル、2−ヒドロキシ−3,5−ジクロロ−4’−ニトロビフェニル、2−ヒドロキシ−5−オクチルビフェニル、2−ヒドロキシ−3−アセチルビフェニル、4−ヒドロキシフェナンスレン、2−ヒドロキシ−5,4’−ジメチルビフェニル等のオルソフェニルフェノール(又はその核置換体)と、三塩化リン、三臭化リン等とを、塩化アルミニウムや塩化亜鉛のごときフリーデルクラフト型触媒の存在下に加熱縮合せしめることにより容易に得られる。なお、式(1)において、R1、R2の具体例としては、塩素原子、臭素原子、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、クロロメチル、ブロモメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル等が挙げられる。
【0039】
また、不飽和ジカルボン酸としては、(a)マレイン酸、(b)イタコン酸、(c)シトラコン酸、(d)グルタコン酸、及びそれらの無水物から選択される少なくともひとつが使用される。これらは一種類のみを使用してもよいし、混合して使用してもよい。
【0040】
本発明においては、上記式(1)で表される有機リン化合物(リン酸ビフェニル化合物)と、式(a)〜(d)のいずれかで表される不飽和ジカルボン酸(又はその無水物)とを、極性溶媒を主体とする溶媒中で90〜200℃、好ましくは100〜200℃、さらに好ましくは110〜180℃で加熱付加反応せしめる。
【0041】
反応温度がこれよりもあまり低いと、式(1)の有機リン化合物と不飽和ジカルボン酸等との反応速度が遅すぎて望ましくなく、また、反応温度が200℃をあまり越えた場合は、脱炭酸反応等が起こるため好ましくない。
【0042】
極性溶媒としては、前記有機リン化合物及び不飽和ジカルボン酸と実質的に反応しない極性溶媒であれば特に限定するものではないが、反応が基本的に90〜200℃で実施されるものであるから、その沸点が90℃以上のものが好ましい。
【0043】
好ましい極性溶媒としては、例えば、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、エチル−n−ブチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、メチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールジエチルエーテル、
【0044】
ギ酸アミル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸第二ブチル、酢酸n−アミル、酢酸イソアミル、酢酸第二ヘキシル、酪酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、水、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ニトロメトタン、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、テトラメチル尿素などが挙げられる。
【0045】
ここで、上記した極性溶媒の中で、メチルイソブチルケトン等のケトン類は、加熱によって式(1)の有機リン化合物(リン酸ビフェニル化合物)と付加化合物を形成しうるため、反応溶媒としては一見不適切なように思われるかもしれない。しかしながら、意外なことに、本発明者らの検討によれば、当該ケトン類は、なんら問題なく好適に使用することができる。これは、当該ケトン類と式(1)の有機リン化合物との付加化合物は、おそらく結合力がごく弱いものであり、ケトン類の沸点近くで、当該付加化合物は可逆的に容易に解離し、イタコン酸等と反応して式(2)の化合物になるためと推定される。
【0046】
なお、特公昭58−2240には、リン酸ビフェニル化合物とイタコン酸ジメチルを原料とする場合、副反応を抑制するため、反応系にメタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノールなどのアルコールを存在させてよいことが記載されているが、このようなアルコール溶媒を使用すると、式(2)で表される本発明の目的物質のカルボキシル基がエステル化されてしまうという問題がある。本発明者らの検討によると、エステル化された式(2)の化合物は、液状となり、当該エステル化物は、もはや溶媒から晶析しないので、本発明の目的には使用できないのである。
【0047】
本発明における溶媒は、上記した極性溶媒を主体とする溶媒である。極性溶媒を主体とする溶媒とは、極性溶媒単独または当該極性溶媒に少量の非極性溶媒、例えば80質量%以下、好ましくは50質量%以下の非極性溶媒が混合した混合溶媒であってもよいことを意味する(当該質量%は、溶媒全質量を基準とした値である。)。
【0048】
非極性溶媒の濃度がこれより高くなると、または、非極性溶媒を単独で用いた場合は、反応が進行して式(2)の有機リン化合物が生成し、その生成物濃度がある値以上になると、急速に反応系全体がガラス状の固体として固化してしまい、結晶として取り出すことが困難になる。なお一般的には、極性溶媒と非極性溶媒の混合溶媒において、非極性溶媒の量が多いほど結晶として取得される当該有機リン化合物の収率は高くなるが結晶の性状が悪くなり、一方、極性溶媒の量が多いほど結晶の性状や純度は高くなるが、結晶として得られる有機リン化合物の収率が低くなる傾向がある。したがって、混合溶媒を採用する場合は、これらを勘案して、好ましい溶媒の混合割合とすることができる。なお、このように極性溶媒又は極性溶媒と非極性溶媒の混合溶媒を使用する場合も上記と同様に、混合溶媒の沸点は90℃以上であることが好ましい。
【0049】
かかる非極性溶媒の具体例としては、n−オクタン、ケロシン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼンなどが挙げられる。
【0050】
本発明の加熱付加反応を実施するための反応装置としては、特に限定するものではないが、原料である式(1)の有機リン化合物(リン酸ビフェニル化合物)、式(a)〜(d)の不飽和ジカルボン酸、及び極性溶媒を主体とする溶媒を収容し、均一に加熱して付加反応せしめうると共に、反応の経過とともに生成した式(2)の有機リン化合物が析出してくるので、これを沈殿させることなく浮遊分散せしめうる装置であることが好ましい。通常、撹拌手段、加熱/冷却手段、原料供給手段、還流手段、及び生成結晶の抜き出し手段等を備えた槽型の反応装置又は反応容器が好適に使用される。
【0051】
かかる撹拌槽型反応容器に、原料である有機リン化合物(リン酸ビフェニル化合物)、不飽和ジカルボン酸、極性溶媒を主体とする溶媒を仕込み、撹拌下上記温度に加熱して反応を進行させる。また、温度制御の点から、反応は使用する極性溶媒の沸点近傍で実施し、極性溶媒を還流させながら行うことが好ましい。
【0052】
反応時間は、反応温度により変わりうるが、通常1〜20時間、好ましくは2〜15時間、より好ましくは3〜10時間である。また、反応速度を大きくするために、反応系に触媒として、少量のナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどの金属アルコキシドや炭酸ソーダなどの無機化合物、及びトリエチルアミンなどのアミノ化合物を添加して用いても差し支えない。なお、溶媒の使用量は、式(1)のリン酸ビフェニル化合物と不飽和ジカルボン酸濃度の合計濃度が、溶媒を含む反応系全質量基準で10〜80質量%、好ましくは20〜70質量%、さらに好ましくは30〜60質量%程度とすることが、反応の円滑な進行、反応温度の制御、良好な結晶性状の確保等の観点から望ましい。
【0053】
かくして、式(2)のジカルボン酸成分を有する有機リン化合物が生成するが、当該生成した有機リン化合物は、反応の進行につれて、徐々に粒状の微細結晶として析出する。また当該微細結晶は、種晶としても働き、反応の進行に伴うゆるやかな結晶成長が促進される。すなわち、当該反応系においては、当該晶析操作は、基本的によく制御された状態で進行するので、未反応原料や副生物等を不純物として実質的に当該結晶中に巻き込むこともなく、本発明の目的物質である有機リン化合物が、それ自体で高純度・高品質の結晶として、高収率で得られると考えられるのである。
【0054】
最後に反応液を冷却し、生成結晶の析出を充分行ってから、これを反応容器底部の結晶取り出し口等から抜き出し、濾過、遠心分離等の固液分離手段により目的の有機リン化合物結晶が得られる。かくして本発明の方法により得られる当該式(2)の有機リン化合物の結晶は、充分高純度であるため、通常再結晶等を行うことなく、そのまま、ポリエステル樹脂の共重合成分等として好適に使用可能である。なお、所望により、さらに再結晶することを妨げるものではない。
【0055】
なお、極性溶媒と非極性溶媒の混合溶媒を使用する場合は、まず極性溶媒存在下に付加反応を行い、反応終了後に、非極性溶媒を添加して、生成有機リン化合物の析出を充分行わせることも可能である。この場合は、非極性溶媒の添加により、析出する結晶の収量を高めることができる。なお、添加する非極性溶媒の種類、添加量、添加速度等により、析出する結晶粒子径等をコントロールすることができる。
【0056】
なお、本発明の方法によって得られる有機リン化合物において、代表的なものは、式(3)で表される有機リン化合物である。
【0057】
【化14】
【0058】
(式中、R1、R2、m、nは、それぞれ式(1)で定義した意味を表す。)
【0059】
また、さらに代表的な有機リン化合物の一例は、式(4)で表される10−(2,3−ジカルボキシプロピル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキシドである。
【0060】
【化15】
【0061】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0062】
〔実施例1〕
(1)撹拌機、温度計、窒素吹き込み口、及び冷却管を備えた内容積1,000mLの四つ口フラスコに、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキシド216g(1モル)(三光社製 商品名:HCA、以下HCAと記載する。)、イタコン酸130g(1モル)及び溶媒としてメチルイソブチルケトン(以下MIBKと表記する。)250gを仕込み、窒素ガスをゆるやかに吹き込みながら加熱して115℃に昇温し、その温度で反応させた。反応は、発熱反応であり、その反応熱で多少内温が設定温度以上に上昇しやすいが、MIBKの沸点(115.9℃)近くなので、設定温度に制御することは容易であった。
【0063】
およそ3時間経過後、結晶が析出し始めるが、そのまま反応を続けた。8時間後に、反応液をサンプリングして液相クロマトグラフィーにより分析し、未反応のHCA及びイタコン酸が存在していないことを確認してから、反応を終了させ、室温まで冷却した。
【0064】
(2)結晶生成物をヌッチェで濾過し、MIBKでよく洗浄した。ステンレス製の平底容器に当該結晶生成物を取り出し、120℃に保った熱風乾燥機中で、3時間乾燥した。乾燥した生成物の質量は294gであった。
【0065】
(3)この生成化合物の融点は、197.4℃であつた。液体クロマトグラフィー測定における面積比による純度は99.7%であった。また、赤外吸収スペクトルは、1712cm−1にカルボン酸のνC=Oに基づく極大吸収を有し、核磁気共鳴吸収スペクトル(以下NMRと表記する。)のτ値は、7.0〜7.3に、−P−CH2−のHに基づく吸収があった。GC−MSにより、当該化合物の分子量は346であり、10−(2,3−ジカルボキシプロピル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキシドと確認された。
【0066】
〔実施例2〕
(1)撹拌機、温度計、窒素吹き込み口、及び冷却管を備えた2,000mLの四つ口フラスコに、HCA432g(2モル)、イタコン酸260g(2モル)、溶媒としてシクロヘキサノン400g、及びキシレン400gを仕込み、窒素ガスをゆるやかに吹き込みながら加熱して135℃に昇温して、同温度で5時間反応させた。液相クロマトグラフィーにより、反応液中に未反応のHCA及びイタコン酸が存在していないことを確認した後、反応を終了させ、室温まで冷却した。
【0067】
(2)結晶生成物をヌッチェで濾過し、当該生成物をキシレン100gで充分洗浄した。ステンレス製の平底容器に当該結晶生成物を取り出し、120℃に保持した熱風乾燥機中で3時間乾燥した。乾燥した生成物の質量は609gであった。
【0068】
(3)この生成化合物の融点は、197.3℃であつた。また、赤外吸収スペクトルは、1712cm−1にカルボン酸のνC=Oに基づく極大吸収を有し、NMRでのτ値は、7.0〜7.3に−P−CH2−のHに基づく吸収があった。GC−MSにより、当該化合物の分子量は346であり、10−(2,3−ジカルボキシプロピル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキシドと確認された。
【0069】
〔実施例3〕
(1)撹拌機、温度計、窒素吹き込み口、及び冷却管を備えた1,000mLの四つ口フラスコに、HCA216g(1 モル)、イタコン酸130g(1 モル)、溶媒としてγ−ブチロラクトン200g及びキシレン200gを仕込み、窒素ガスをゆるやかに吹き込みながら加熱して135℃に昇温して、同温度で5時間反応熱させた。液相クロマトグラフィーにより、反応液中に未反応のHCA及びイタコン酸が存在していないことを確認した後、反応を終了させ、室温まで冷却した。
【0070】
(2)結晶生成物をヌッチェで濾過し、生成結晶をキシレン50gで洗浄した。ステンレス製の平底容器に当該結晶生成物を取り出し、120℃に保持した熱風乾燥機により3時間乾燥した。乾燥した生成物の質量は304gであった。
【0071】
(3)この生成化合物の融点は197.4℃であつた。また、赤外吸収スペクトルは、1712cm−1にカルボン酸のνC=Oに基づく極大吸収を有し、NMRでのτ値は、7.0〜7.3に−P−CH2−のHに基づく吸収があった。GC−MSにより、当該化合物の分子量は346であり、10−(2,3−ジカルボキシプロピル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキシドと確認された。
【0072】
〔実施例4〕
(1)撹拌、温度計、窒素吹き込み口、及び冷却管を備えた1,000mLの四つ口フラスコに、HCA216g(1モル)、イタコン酸130g(1モル)及び溶媒としてMIBK200gを仕込み、窒素ガスをゆるやかに吹き込みながら加熱して115℃に昇温した。同温度で8時間反応させた後、110℃まで冷却してトルエン250gを加え、さらに110℃で2時間加温反応させた。液相クロマトグラフィーにより反応液中には、未反応のHCA及びイタコン酸が存在していないことを確認した後、反応を終了させ、室温まで冷却した。
【0073】
(2)結晶生成物をヌッチェでろ過し、生成物を少量のトルエンでよく洗浄した。ステンレス製の平底容器に結晶生成物を取り出し、120℃に保持した熱風乾燥機で3時間乾燥した。乾燥した生成物の質量は311gであった。
【0074】
(3)この生成化合物の融点は197.4℃であつた。また、赤外吸収スペクトルは、1712cm−1にカルボン酸のνC=Oに基づく極大吸収を有し、NMRでのτ値は、7.0〜7.3に−P−CH2−のHに基づく吸収があった。GC−MSにより、当該化合物の分子量は346であり、10−(2,3−ジカルボキシプロピル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキシドと確認された。
【0075】
〔比較例1〕
実施例と同様にして、撹拌機、温度計、窒素吹き込み口、及び冷却管を備えた1,000mLの四つ口フラスコにHCA216g(1モル)、イタコン酸130g(1モル)及び溶媒としてキシレン200gを仕込み、窒素ガスをゆるやかに吹き込みながら加熱して135℃に昇温した。同温度で約3時間経過した時点で、フラスコ内の内容物(反応物)が急速に固化し、それ以上の撹拌が不可能となったので、反応を中止せざるを得なかった。
【0076】
この反応生成物は全体がガラス状で強固に固結した塊状物であり、実験室規模のフラスコによる反応であってもその処置はかなり厄介なものであった。この結果から、キシレンの如き非極性溶媒を単独で使用した場合は、本反応をスケールアップして工業的規模で実施することはきわめて困難であることがわかった。なお、ガラス状に固まった固体を粉砕し、MIBKに溶解後、再結晶させたものの液体クロマトグラフィーによる純度は99.2%であった。
【0077】
〔比較例2〕
実施例と同様にして、撹拌機、温度計、窒素吹き込み口、及び冷却管を備えた1,000mLの四つ口フラスコにHCA216g(1モル)、イタコン酸130g(1モル)及びメチルエチルケトン(以下MEKと略記する。)200gを仕込み、窒素ガスをゆるやかに吹き込みながら加熱した。
【0078】
内温が80℃になるとMEKが環流し始めるので、内温はこれ以上あがらない。このMEKが環流する温度(80℃)で10時間撹拌しながら保持したが、反応液中には、結晶の生成は、実質的に認められなかった。また、この状態で当該反応液(内容物)をサンプリングして液相クロマトグラフィーにより分析を行ったが、HCAとイタコン酸がほとんど未反応状態で残っていることがわかった。このように、80℃では、反応速度は、きわめて小さく、この温度でこれ以上反応を続けても実質的に無駄と判断して、反応操作を中断した。
【0079】
以上のごとく、本発明を実施するためには、溶媒の沸点は、80℃より充分高いものでなければならず、少なくとも90℃以上、好ましくは100℃以上、さらに好ましくは110℃以上のものが必要であると判断される。
【0080】
【発明の効果】
本発明に従えば、官能基としてジカルボキシル基を含有する式(2)で表される有機リン化合物を、式(1)のリン酸ビフェニル化合物と不飽和ジカルボン酸とを極性溶媒を主体とする溶媒中で加熱付加反応させることにより、当該溶媒から高純度の微細結晶として直接取得することができる。当該有機リン化合物結晶は、純度が高いため、再結晶することなく、ポリエステルに難燃性を付与しうる共重合原料成分等として好適に使用可能である。
Claims (5)
- 式(1)で表される有機リン化合物と、
式(a)〜(d)のいずれかで表される不飽和ジカルボン酸又はこれらの酸無水物とを、
極性溶媒を主体とする溶媒中で90〜200℃で加熱付加反応させて、
式(2)で示されるジカルボン酸成分を有する有機リン化合物を生成させ、
- 極性溶媒を主体とする溶媒として沸点が90℃以上の極性溶媒又は極性溶媒と非極性溶媒の混合溶媒を使用する請求項1又は2に記載の方法。
- 極性溶媒中で付加反応を行い、反応終了後に、非極性溶媒を添加して生成有機リン化合物の析出を行わせる請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
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