JP2004035359A - 光学素子成形型保護膜の再生方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】繰り返しの再生によっても耐久性に優れた保護膜を形成することが可能な光学素子成形型保護膜の再生方法を提供する。
【解決手段】基材上に炭化物膜及び/又は窒化物膜を有する中間層と、ダイヤモンドライクカーボンからなる保護膜とが形成された光学素子成形型の保護膜の再生方法は、(a) 保護膜をプラズマエッチングにより剥離する工程と、(b) 中間層(炭化物膜及び/又は窒化物膜)を過酸化水素を含有する剥離液を用いたエッチングにより剥離する工程と、(c) 基材上に中間層及び保護膜を新たに形成する工程により行う。
【選択図】 なし
【解決手段】基材上に炭化物膜及び/又は窒化物膜を有する中間層と、ダイヤモンドライクカーボンからなる保護膜とが形成された光学素子成形型の保護膜の再生方法は、(a) 保護膜をプラズマエッチングにより剥離する工程と、(b) 中間層(炭化物膜及び/又は窒化物膜)を過酸化水素を含有する剥離液を用いたエッチングにより剥離する工程と、(c) 基材上に中間層及び保護膜を新たに形成する工程により行う。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光学素子成形型に形成された保護膜の再生方法に関し、特に繰り返しの再生によっても耐久性に優れた保護膜を形成することが可能な再生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラスモールド法に使用する成形型は、基材である超硬合金、セラミックス、各種耐熱金属材料等を研削・研磨することにより所望の形状に加工し、その上に耐熱、耐摩耗、及び耐ガラス濡れ性を目的に保護膜を形成して製造する。ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜を保護膜として用いる場合、SiC基材がDLCとの密着性に優れるが、WC系基材に比べて硬く加工時間がかかり砥石摩耗が大きいため、所望の形状を創生するのが困難である。このためWC系材料を基材として用い、その上に中間層としてDLCとの密着性に優れるSiC膜等の炭化膜又はTiN膜等の窒化膜を形成し、さらにその上に保護膜としてDLC膜を成膜する方法が広く採用されている。
【0003】
光学素子成形型は、使用回数を重ねることにより保護膜の剥離を生じ、成形型として使用できなくなる。このため劣化した保護膜の再生が必要になる。DLC膜を再生する場合、DLCを酸素を用いたプラズマエッチングで剥離する方法が知られているが、このときDLCの剥離に止まらず中間層(SiC膜、TiN膜等)まで酸化し、表層がSiO2等の酸化物層に変化する。このDLC膜の再生を何度も繰り返すと中間層の酸化物量が増加して表面が荒れ、DLCとの密着が十分に得られず、レンズ成形によるDLC膜の劣化が徐々に早くなる。このため、保護膜再生においてDLC膜を剥離後中間層に生じた酸化物層を除去する方法が試みられているが、酸化物層を剥離するために研削、研磨等の工程が必要になり、保護膜再生に膨大な時間を要する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、繰り返しの再生によっても耐久性に優れた保護膜を形成することが可能な光学素子成形型保護膜の再生方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、基材上に炭化物膜及び/又は窒化物膜を有する中間層と、ダイヤモンドライクカーボンからなる保護膜が形成された光学素子成形型において、保護膜とともに中間層を剥離し、新たに中間層及び保護膜を形成することにより中間層が再生によって劣化するのを防止し、繰り返しの再生によっても耐久性に優れた保護膜が得られることを発見し、本発明に想到した。
【0006】
すなわち、本発明の再生方法は、基材上に炭化物膜及び/又は窒化物膜を有する中間層と、ダイヤモンドライクカーボンからなる保護膜とが形成された光学素子成形型の保護膜の再生方法であって、(a) 前記保護膜をプラズマエッチングにより剥離する工程と、(b) 前記炭化物膜及び/又は窒化物膜を過酸化水素を含有する剥離液を用いたエッチングにより剥離する工程と、(c) 前記基材上に前記中間層及び前記保護膜を新たに形成する工程とを有することを特徴とする。
【0007】
ダイヤモンドライクカーボン膜のプラズマエッチングは酸素を含有する雰囲気中で行うのが好ましく、炭化物膜及び/又は窒化物膜のエッチングに用いる剥離液は過酸化水素を含有するアルカリ性水溶液であるか、過酸化水素及び水溶性芳香族ニトロ化合物を含有する水溶液であるのが好ましい。
【0008】
中間層はSiC、TiC、Si3N4、AlN及びTiNからなる群から選ばれた少なくとも1種の膜を含有するのが好ましく、基材はタングステンカーバイド系材料からなるのが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
[1] 保護膜の再生方法
(A) 光学素子成形型
図1は本発明の再生方法に用いる光学素子成形型の一例を示す。成形型1はタングステンカーバイド系材料からなる基材2と、窒化物(Si3N4)膜からなる中間層3、DLCからなる保護膜4とからなる。基材2又は中間層3に仕上げ成形面形状となるように加工面が形成され、中間層3の上に保護膜4が形成されている。本発明の再生方法は基材2上に形成された中間層3と保護膜4の両方を剥離した後、中間層3と保護膜4を基材2上に新たに形成する。
【0010】
光学素子成形型の基材は、高温環境下で長期にわたって使用されるため、高温環境下でも必要な強度及び形状を維持し得るように超硬合金(タングステンカーバイド(WC)系等)、セラミックス(炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si3N4)、アルミナ(Al2O3)等)、耐熱金属材料(Fe基ステンレス系耐熱鋼、Ni基又はCo基の超耐熱合金等)等の高強度材料により形成される。なかでも加工の容易性の観点からWC系材料により形成されるのが好ましい。基材2上に形成される中間層3は、DLCとの密着性の観点から炭化物膜及び/又は窒化物膜を有する膜により形成される。保護膜4は摩擦係数が低く、光学素子成形時のガラスの滑りがよく、さらにモールド成形が容易なDLC膜により形成される。
【0011】
(B) プラズマエッチング
光学素子成形型に形成されたDLC膜はプラズマエッチングにより剥離することができる。図2はプラズマエッチングに使用する装置の一例を示す。プラズマエッチング装置はチャンバ10と、酸素ガス供給部12と、高周波電力を供給する高周波電源20と、チャンバ10内を減圧するためのポンプ15とを有する。チャンバ内10の天井部には上部電極11が設けられており、底部には下部電極16が設けられている。下部電極16には凹部16aが形成されており成形型1が設置されるようになっている。また下部電極16は高周波電源20に接続している。酸素ガス供給部12から出た配管21はチャンバ10に連結しており、配管21にはガスの流量を制御する流量制御弁23が設けられている。チャンバ10の下部から出た吸引用配管22はポンプ15に連結しており、吸引用配管22には流量制御弁24が設けられている。またチャンバ10にはチャンバ10内の圧力を測定する圧力計18が設置されている。
【0012】
このプラズマエッチング装置を用いて成形型1のDLC膜を剥離するには、まず成形型1を下部電極16の凹部16aに設置し、次いでポンプ15によりチャンバ10内を減圧する。圧力計18によりチャンバ10内が所定の圧力になったことを確認し、酸素ガス供給部12から酸素ガスを供給する。これとともに高周波電源20から高周波電力を供給して上部電極11と下部電極16との間にプラズマを発生させる。その際下部電極16にヒータを設け、酸素供給とともに成形型を加熱し、高周波電力を供給してプラズマを発生させてもよい。チャンバ10内で発生したプラズマを成形型1に照射することによりDLC膜を剥離する。
【0013】
プラズマエッチングに使用するガスは酸素ガスに限られず、例えばHe、Ne、Ar、Xe等の不活性ガス、酸素ガスと不活性ガスとの混合ガス等を用いてもよい。エッチングガスとして酸素を含有するガスを用いた場合、DLC膜のエッチング速度が大きくなり、酸素と結合して安定な酸化物を形成する材料に対してはエッチング速度が小さくなるという利点を有する。すなわち、エッチング選択比が大きくなり、DLC膜を選択的にエッチングできる。従って、プラズマエッチングは酸素を含有する雰囲気中で行うのが好ましい。
【0014】
(C) 剥離液によるエッチング
中間層3の炭化物膜及び/又は窒化物膜を過酸化水素を含有する剥離液により剥離する。酸素を用いたプラズマエッチングはDLC膜を剥離する他に、中間層3の炭化物、窒化物等と反応して酸化物を形成する。この中間層3を残したまま保護膜4のみを再生すると、繰り返しの再生により中間層3表面の酸化物が蓄積されDLC膜との密着性が損なわれる。このため本発明の再生方法は保護膜4とともに中間層3も剥離する。
【0015】
中間層3は通常数μm程度の厚さに形成されるが、中間層3に所望の仕上げ形成面形状を研削する場合、炭化物膜及び/又は窒化物膜は50μm以上の厚さに形成される。炭化物膜としては、SiC、TiC等の膜が好ましく、窒化物膜としては、Si3N4、AlN、TiN等の膜が好ましい。これらの炭化物膜及び窒化物膜を除去するために過酸化水素を含有する剥離液を用いる。剥離液を中間層3に接触させると過酸化水素が炭化物及び窒化物に対して酸化剤又は還元剤として作用し、中間層3の剥離が容易になる。過酸化水素を含有する剥離液を用いることにより基材2の侵食を抑えて中間層3を選択的に剥離することができる。過酸化水素を含有する剥離液は公知のものを用いてよく、例えば特開平9−76699号、特開平5−112885号、特開平5−503320号、特開昭62−17190等に記載の剥離液を好ましく用いることができる。
【0016】
(1) 過酸化水素含有アルカリ性水溶液
剥離液に添加する過酸化水素は0.2〜5モル/リットルが好ましい。過酸化水素の含有量が多いと中間層3の剥離速度が増すが、多過ぎると下地の基材2を侵食する危険性がある。また剥離液のpHは好ましくは8以上であり、より好ましくは9〜13である。pHをアルカリ側にすることにより中間層3の剥離速度を増すことができる。アルカリ源は特に限定されず、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、アミン、アミン塩等を用いることができる。またこれらのアルカリ源に有機酸又は無機酸を加えてpHを適宜調整してもよい。上記成分以外に、剥離液としての効果を損なわない範囲で反応促進剤(エチレンジアミン四酢酸塩、チオグリコール酸アルカリ塩、ヒドロキシカーボネート系有機アルカリ塩等)等の他の成分を含有してもよい。
【0017】
(2) 過酸化水素及び水溶性芳香族ニトロ化合物含有水溶液
剥離液は過酸化水素及び水溶性芳香族ニトロ化合物を含有する水溶液であってもよい。過酸化水素の含有量は好ましくは0.2〜8.5モル/リットルであり、より好ましくは1〜5モル/リットルである。水溶性芳香族ニトロ化合物は中間層3の剥離を促進させるための酸化剤として作用する。また水溶性芳香族ニトロ化合物を含有する場合、置換基の種類に応じて剥離液のpHが広い範囲で変化するため、pH1〜13の広い範囲で使用することができる。
【0018】
水溶性芳香族ニトロ化合物の好ましい例は一般式(I):
【化1】
(一般式(I)中、Rは−SO3H、−SO3M、−COOH、−COOM、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基及びアミノ基からなる群から選ばれた少なくとも1種を表し、Mはアルカリ金属を表し、xは0〜3の整数を表す。)で表されるニトロベンゼン化合物である。また、上記と同様の置換基を有するニトロナフタリン化合物も同様に使用することができる。
【0019】
水溶性芳香族ニトロ化合物の好ましい例としては、ニトロ安息香酸、4−クロル−3−ニトロ安息香酸、ニトロフタル酸、イソニトロフタル酸、ニトロテレフタル酸、3−ニトロサリチル酸、3,5−ジニトロサリチル酸、ピクリン酸、アミノニトロ安息香酸、ニトロ−1−ナフトエ酸、これらのカルボン酸のアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム等)塩、ニトロベンゼンスルホン酸、ニトロフェノールスルホン酸、1−ニトロナフタリン−2−スルホン酸、これらのスルホン酸のアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム等)塩等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。水溶性芳香族ニトロ化合物は、剥離液中に1〜300 g/L、好ましくは10〜200 g/L添加されている。
【0020】
剥離液は、広い範囲のpH1〜13を有することができるが、基材の種類等に応じて任意の好適な範囲に調整することができるようにpH調整剤が添加されていてもよい。このようなpH調整剤としては、有機酸(酢酸、酒石酸、クエン酸等)、有機酸塩(酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酒石酸ソーダ等)、無機酸(硝酸、硫酸等)、無機酸塩(硫酸水素カリウム、リン酸一水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、硫酸アンモニウム等)、水酸化アルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アンモニア(アンモニア水)、アミン(モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリエタノールアミン等)、アミン塩(EDTA 4Na、EDTA 2Na、ジエチレントリアミン五酢酸5Na、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸3Na等)、ポリアミン(ポリエチレンイミン、ポリアミンスルホン、ポリアリルアミン塩酸塩等)が挙げられる。剥離液は上記成分以外に剥離液としての効果を損なわない範囲で、反応促進剤等の他の成分を含有してもよい。
【0021】
過酸化水素を含有する剥離液はチタン化合物に限らず、SiC等の炭化物、Si3N4、AlN等の窒化物に対してもエッチング効果が高い。剥離液を用いて中間層をエッチングする方法は特に限定されず、例えば剥離液を中間層に塗布してもよいし、成形型を剥離液に浸漬してもよい。エッチングは室温で行うことができるが、必要に応じて剥離液を加熱して行ってもよい。エッチングの速度は剥離液中の過酸化水素濃度、pH、温度等により変化し、エッチングに要する時間は形成された中間層の材料、膜厚等によって変化する。タングステンカーバイド(WC)系材料は剥離液に侵されにくいため、WC系材料を基材2に用いると基材2を傷めずに中間層3のみを剥離することができ、これによりWC基材の研磨を不要にできる。ただし、過度にエッチングを行うと中間層ばかりでなく基材2も侵食されてくる。このため中間層を効率よく剥離し、かつ基材を侵食しない条件(温度、時間等)を選択して行うことが望ましい。
【0022】
本発明の再生方法に用いる中間層3は単層に限られず、種類の異なる複数の層が積層された多層構造であってもよい。例えば、炭化物膜及び窒化物膜が複数積層された多層構造であってもよい。また炭化物膜及び窒化物膜以外の層を含んでいてもよい。その場合、剥離液で除去することができない炭化物膜及び窒化物膜以外の層はイオンビームエッチング、電子ビームエッチング等の他の手段を併用して剥離してよい。
【0023】
(D) 中間層の形成
保護膜4及び中間層3を剥離した成形型にまず新たに中間層3を形成する。炭化物膜及び窒化物膜を形成する方法は公知の方法を用いることができる。例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等のPVD法、熱CVD、プラズマやレーザによるプラズマCVD、光(レーザ)CVD等のCVD法等を用いることができる。
【0024】
(E) 成形面加工
基材の成形面、又は基材上に形成された中間層(炭化物膜及び/又は窒化物膜)の成形面に適宜切削加工及び/又は研磨加工を施してもよい。これにより精密な形状を有する最終所望の成形面を得ることができる。
【0025】
(F) 保護膜形成
得られた成形面に保護膜を形成する方法は公知の方法を用いてよい。DLC膜はメタン(CH4)、ブタン(C4H10)等の炭化水素を炭素源として主に気相化学蒸着法により形成するのが好ましく、なかでもプラズマCVD法により形成するのが好ましい。DLC膜の厚さは、良好な耐熱性、耐摩耗性及び耐ガラス濡れ性を得るため、通常0.03〜1μm程度である。
【0026】
【実施例】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0027】
実施例1
(1) 成形型の作製
タングステンカーバイド(WC)を材料として基材2を成形し、その上にスパッタリングにより出力300W、成膜時間2分で厚さ0.1μmの窒化ケイ素(Si3N4)膜を形成した。次に成形面の窒化ケイ素(Si3N4)膜上に仕上げ成形面形状の非球面形状を研削加工し、さらにダイヤモンド研磨剤を用いて非球面に研磨処理を施した。得られた成形面上に保護膜材料としてメタン(CH4)を用い、プラズマCVDにより出力200W、成膜時間1分で厚さ0.1μmのDLC膜を形成し、図1に示す成形型を得た。
【0028】
(2) 光学素子成形
得られた成形型と、VC78ガラス[Tg:500℃、At:562℃、(株)住田光学ガラス製]を用い、非酸化雰囲気中でガラスモールド法により光学素子(レンズ)を成形した。レンズの成形工程は、成形型上にVC78ガラスを設置し、その後加熱し580℃になった時点でレンズを成形し、得られたレンズを200℃で成形型から取り出すものであった。この成形サイクルを約500回繰り返したところ、DLC膜に劣化が認められた。
【0029】
(3) 再生
図2に示す装置を用い成形型1の保護膜4を剥離した。まずチャンバ10内に設けられた下部電極16の凹部16aに成形型1を設置した。次にポンプ15を作動させてチャンバ10内を0.02 Paに減圧した後、酸素ガス供給部12から濃度100%の酸素を供給するとともに、室温で高周波電源20から50Wの高周波電力を供給して上部電極11と下部電極16との間にO2プラズマを発生させ、これを成形型1に1分間照射してDLC膜を剥離した。
【0030】
保護膜を剥離した成形型1を剥離液に35℃で2時間浸漬して中間層(Si3N4層)を剥離した。剥離液は過酸化水素と水溶性芳香族ニトロ化合物を含有するジャスコ・チタニック94(日本表面化学(株)製)を使用した。
【0031】
成形型を水で洗浄して剥離液を除去した後、基材2上に新たに中間層3及び保護膜4を形成した。中間層3及び保護膜4の形成は(1)と同様にして行った。この再生工程を10回繰り返した後、(2)と同様にしてレンズの成形を行った。その結果、成形回数約500回までDLC膜の劣化は見られなかった。
【0032】
【発明の効果】
上記の通り、本発明の光学素子成形型保護膜の再生方法は、保護膜の剥離にプラズマエッチングを用い、中間層の剥離に過酸化水素を含有する剥離液を用い、保護膜と中間層をともに剥離して再生するので、保護膜の密着性に優れた再生成形型が得られる。かかる保護膜を有する本発明の光学素子成形型は、保護膜の耐剥離性に優れており、もって良好な耐久性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の再生方法に用いる光学素子成形型の一例を示す縦断面図である。
【図2】保護膜の剥離に用いるプラズマエッチング装置の一例を示す構成説明図である。
【符号の説明】
1・・・光学素子成形型
2・・・基材
3・・・中間層
4・・・保護膜
10・・・チャンバ
11・・・上部電極
12・・・酸素ガス供給部
15・・・ポンプ
16・・・下部電極
20・・・高周波電源
【発明の属する技術分野】
本発明は光学素子成形型に形成された保護膜の再生方法に関し、特に繰り返しの再生によっても耐久性に優れた保護膜を形成することが可能な再生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラスモールド法に使用する成形型は、基材である超硬合金、セラミックス、各種耐熱金属材料等を研削・研磨することにより所望の形状に加工し、その上に耐熱、耐摩耗、及び耐ガラス濡れ性を目的に保護膜を形成して製造する。ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜を保護膜として用いる場合、SiC基材がDLCとの密着性に優れるが、WC系基材に比べて硬く加工時間がかかり砥石摩耗が大きいため、所望の形状を創生するのが困難である。このためWC系材料を基材として用い、その上に中間層としてDLCとの密着性に優れるSiC膜等の炭化膜又はTiN膜等の窒化膜を形成し、さらにその上に保護膜としてDLC膜を成膜する方法が広く採用されている。
【0003】
光学素子成形型は、使用回数を重ねることにより保護膜の剥離を生じ、成形型として使用できなくなる。このため劣化した保護膜の再生が必要になる。DLC膜を再生する場合、DLCを酸素を用いたプラズマエッチングで剥離する方法が知られているが、このときDLCの剥離に止まらず中間層(SiC膜、TiN膜等)まで酸化し、表層がSiO2等の酸化物層に変化する。このDLC膜の再生を何度も繰り返すと中間層の酸化物量が増加して表面が荒れ、DLCとの密着が十分に得られず、レンズ成形によるDLC膜の劣化が徐々に早くなる。このため、保護膜再生においてDLC膜を剥離後中間層に生じた酸化物層を除去する方法が試みられているが、酸化物層を剥離するために研削、研磨等の工程が必要になり、保護膜再生に膨大な時間を要する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、繰り返しの再生によっても耐久性に優れた保護膜を形成することが可能な光学素子成形型保護膜の再生方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、基材上に炭化物膜及び/又は窒化物膜を有する中間層と、ダイヤモンドライクカーボンからなる保護膜が形成された光学素子成形型において、保護膜とともに中間層を剥離し、新たに中間層及び保護膜を形成することにより中間層が再生によって劣化するのを防止し、繰り返しの再生によっても耐久性に優れた保護膜が得られることを発見し、本発明に想到した。
【0006】
すなわち、本発明の再生方法は、基材上に炭化物膜及び/又は窒化物膜を有する中間層と、ダイヤモンドライクカーボンからなる保護膜とが形成された光学素子成形型の保護膜の再生方法であって、(a) 前記保護膜をプラズマエッチングにより剥離する工程と、(b) 前記炭化物膜及び/又は窒化物膜を過酸化水素を含有する剥離液を用いたエッチングにより剥離する工程と、(c) 前記基材上に前記中間層及び前記保護膜を新たに形成する工程とを有することを特徴とする。
【0007】
ダイヤモンドライクカーボン膜のプラズマエッチングは酸素を含有する雰囲気中で行うのが好ましく、炭化物膜及び/又は窒化物膜のエッチングに用いる剥離液は過酸化水素を含有するアルカリ性水溶液であるか、過酸化水素及び水溶性芳香族ニトロ化合物を含有する水溶液であるのが好ましい。
【0008】
中間層はSiC、TiC、Si3N4、AlN及びTiNからなる群から選ばれた少なくとも1種の膜を含有するのが好ましく、基材はタングステンカーバイド系材料からなるのが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
[1] 保護膜の再生方法
(A) 光学素子成形型
図1は本発明の再生方法に用いる光学素子成形型の一例を示す。成形型1はタングステンカーバイド系材料からなる基材2と、窒化物(Si3N4)膜からなる中間層3、DLCからなる保護膜4とからなる。基材2又は中間層3に仕上げ成形面形状となるように加工面が形成され、中間層3の上に保護膜4が形成されている。本発明の再生方法は基材2上に形成された中間層3と保護膜4の両方を剥離した後、中間層3と保護膜4を基材2上に新たに形成する。
【0010】
光学素子成形型の基材は、高温環境下で長期にわたって使用されるため、高温環境下でも必要な強度及び形状を維持し得るように超硬合金(タングステンカーバイド(WC)系等)、セラミックス(炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si3N4)、アルミナ(Al2O3)等)、耐熱金属材料(Fe基ステンレス系耐熱鋼、Ni基又はCo基の超耐熱合金等)等の高強度材料により形成される。なかでも加工の容易性の観点からWC系材料により形成されるのが好ましい。基材2上に形成される中間層3は、DLCとの密着性の観点から炭化物膜及び/又は窒化物膜を有する膜により形成される。保護膜4は摩擦係数が低く、光学素子成形時のガラスの滑りがよく、さらにモールド成形が容易なDLC膜により形成される。
【0011】
(B) プラズマエッチング
光学素子成形型に形成されたDLC膜はプラズマエッチングにより剥離することができる。図2はプラズマエッチングに使用する装置の一例を示す。プラズマエッチング装置はチャンバ10と、酸素ガス供給部12と、高周波電力を供給する高周波電源20と、チャンバ10内を減圧するためのポンプ15とを有する。チャンバ内10の天井部には上部電極11が設けられており、底部には下部電極16が設けられている。下部電極16には凹部16aが形成されており成形型1が設置されるようになっている。また下部電極16は高周波電源20に接続している。酸素ガス供給部12から出た配管21はチャンバ10に連結しており、配管21にはガスの流量を制御する流量制御弁23が設けられている。チャンバ10の下部から出た吸引用配管22はポンプ15に連結しており、吸引用配管22には流量制御弁24が設けられている。またチャンバ10にはチャンバ10内の圧力を測定する圧力計18が設置されている。
【0012】
このプラズマエッチング装置を用いて成形型1のDLC膜を剥離するには、まず成形型1を下部電極16の凹部16aに設置し、次いでポンプ15によりチャンバ10内を減圧する。圧力計18によりチャンバ10内が所定の圧力になったことを確認し、酸素ガス供給部12から酸素ガスを供給する。これとともに高周波電源20から高周波電力を供給して上部電極11と下部電極16との間にプラズマを発生させる。その際下部電極16にヒータを設け、酸素供給とともに成形型を加熱し、高周波電力を供給してプラズマを発生させてもよい。チャンバ10内で発生したプラズマを成形型1に照射することによりDLC膜を剥離する。
【0013】
プラズマエッチングに使用するガスは酸素ガスに限られず、例えばHe、Ne、Ar、Xe等の不活性ガス、酸素ガスと不活性ガスとの混合ガス等を用いてもよい。エッチングガスとして酸素を含有するガスを用いた場合、DLC膜のエッチング速度が大きくなり、酸素と結合して安定な酸化物を形成する材料に対してはエッチング速度が小さくなるという利点を有する。すなわち、エッチング選択比が大きくなり、DLC膜を選択的にエッチングできる。従って、プラズマエッチングは酸素を含有する雰囲気中で行うのが好ましい。
【0014】
(C) 剥離液によるエッチング
中間層3の炭化物膜及び/又は窒化物膜を過酸化水素を含有する剥離液により剥離する。酸素を用いたプラズマエッチングはDLC膜を剥離する他に、中間層3の炭化物、窒化物等と反応して酸化物を形成する。この中間層3を残したまま保護膜4のみを再生すると、繰り返しの再生により中間層3表面の酸化物が蓄積されDLC膜との密着性が損なわれる。このため本発明の再生方法は保護膜4とともに中間層3も剥離する。
【0015】
中間層3は通常数μm程度の厚さに形成されるが、中間層3に所望の仕上げ形成面形状を研削する場合、炭化物膜及び/又は窒化物膜は50μm以上の厚さに形成される。炭化物膜としては、SiC、TiC等の膜が好ましく、窒化物膜としては、Si3N4、AlN、TiN等の膜が好ましい。これらの炭化物膜及び窒化物膜を除去するために過酸化水素を含有する剥離液を用いる。剥離液を中間層3に接触させると過酸化水素が炭化物及び窒化物に対して酸化剤又は還元剤として作用し、中間層3の剥離が容易になる。過酸化水素を含有する剥離液を用いることにより基材2の侵食を抑えて中間層3を選択的に剥離することができる。過酸化水素を含有する剥離液は公知のものを用いてよく、例えば特開平9−76699号、特開平5−112885号、特開平5−503320号、特開昭62−17190等に記載の剥離液を好ましく用いることができる。
【0016】
(1) 過酸化水素含有アルカリ性水溶液
剥離液に添加する過酸化水素は0.2〜5モル/リットルが好ましい。過酸化水素の含有量が多いと中間層3の剥離速度が増すが、多過ぎると下地の基材2を侵食する危険性がある。また剥離液のpHは好ましくは8以上であり、より好ましくは9〜13である。pHをアルカリ側にすることにより中間層3の剥離速度を増すことができる。アルカリ源は特に限定されず、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、アミン、アミン塩等を用いることができる。またこれらのアルカリ源に有機酸又は無機酸を加えてpHを適宜調整してもよい。上記成分以外に、剥離液としての効果を損なわない範囲で反応促進剤(エチレンジアミン四酢酸塩、チオグリコール酸アルカリ塩、ヒドロキシカーボネート系有機アルカリ塩等)等の他の成分を含有してもよい。
【0017】
(2) 過酸化水素及び水溶性芳香族ニトロ化合物含有水溶液
剥離液は過酸化水素及び水溶性芳香族ニトロ化合物を含有する水溶液であってもよい。過酸化水素の含有量は好ましくは0.2〜8.5モル/リットルであり、より好ましくは1〜5モル/リットルである。水溶性芳香族ニトロ化合物は中間層3の剥離を促進させるための酸化剤として作用する。また水溶性芳香族ニトロ化合物を含有する場合、置換基の種類に応じて剥離液のpHが広い範囲で変化するため、pH1〜13の広い範囲で使用することができる。
【0018】
水溶性芳香族ニトロ化合物の好ましい例は一般式(I):
【化1】
(一般式(I)中、Rは−SO3H、−SO3M、−COOH、−COOM、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基及びアミノ基からなる群から選ばれた少なくとも1種を表し、Mはアルカリ金属を表し、xは0〜3の整数を表す。)で表されるニトロベンゼン化合物である。また、上記と同様の置換基を有するニトロナフタリン化合物も同様に使用することができる。
【0019】
水溶性芳香族ニトロ化合物の好ましい例としては、ニトロ安息香酸、4−クロル−3−ニトロ安息香酸、ニトロフタル酸、イソニトロフタル酸、ニトロテレフタル酸、3−ニトロサリチル酸、3,5−ジニトロサリチル酸、ピクリン酸、アミノニトロ安息香酸、ニトロ−1−ナフトエ酸、これらのカルボン酸のアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム等)塩、ニトロベンゼンスルホン酸、ニトロフェノールスルホン酸、1−ニトロナフタリン−2−スルホン酸、これらのスルホン酸のアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム等)塩等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。水溶性芳香族ニトロ化合物は、剥離液中に1〜300 g/L、好ましくは10〜200 g/L添加されている。
【0020】
剥離液は、広い範囲のpH1〜13を有することができるが、基材の種類等に応じて任意の好適な範囲に調整することができるようにpH調整剤が添加されていてもよい。このようなpH調整剤としては、有機酸(酢酸、酒石酸、クエン酸等)、有機酸塩(酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酒石酸ソーダ等)、無機酸(硝酸、硫酸等)、無機酸塩(硫酸水素カリウム、リン酸一水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、硫酸アンモニウム等)、水酸化アルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アンモニア(アンモニア水)、アミン(モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリエタノールアミン等)、アミン塩(EDTA 4Na、EDTA 2Na、ジエチレントリアミン五酢酸5Na、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸3Na等)、ポリアミン(ポリエチレンイミン、ポリアミンスルホン、ポリアリルアミン塩酸塩等)が挙げられる。剥離液は上記成分以外に剥離液としての効果を損なわない範囲で、反応促進剤等の他の成分を含有してもよい。
【0021】
過酸化水素を含有する剥離液はチタン化合物に限らず、SiC等の炭化物、Si3N4、AlN等の窒化物に対してもエッチング効果が高い。剥離液を用いて中間層をエッチングする方法は特に限定されず、例えば剥離液を中間層に塗布してもよいし、成形型を剥離液に浸漬してもよい。エッチングは室温で行うことができるが、必要に応じて剥離液を加熱して行ってもよい。エッチングの速度は剥離液中の過酸化水素濃度、pH、温度等により変化し、エッチングに要する時間は形成された中間層の材料、膜厚等によって変化する。タングステンカーバイド(WC)系材料は剥離液に侵されにくいため、WC系材料を基材2に用いると基材2を傷めずに中間層3のみを剥離することができ、これによりWC基材の研磨を不要にできる。ただし、過度にエッチングを行うと中間層ばかりでなく基材2も侵食されてくる。このため中間層を効率よく剥離し、かつ基材を侵食しない条件(温度、時間等)を選択して行うことが望ましい。
【0022】
本発明の再生方法に用いる中間層3は単層に限られず、種類の異なる複数の層が積層された多層構造であってもよい。例えば、炭化物膜及び窒化物膜が複数積層された多層構造であってもよい。また炭化物膜及び窒化物膜以外の層を含んでいてもよい。その場合、剥離液で除去することができない炭化物膜及び窒化物膜以外の層はイオンビームエッチング、電子ビームエッチング等の他の手段を併用して剥離してよい。
【0023】
(D) 中間層の形成
保護膜4及び中間層3を剥離した成形型にまず新たに中間層3を形成する。炭化物膜及び窒化物膜を形成する方法は公知の方法を用いることができる。例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等のPVD法、熱CVD、プラズマやレーザによるプラズマCVD、光(レーザ)CVD等のCVD法等を用いることができる。
【0024】
(E) 成形面加工
基材の成形面、又は基材上に形成された中間層(炭化物膜及び/又は窒化物膜)の成形面に適宜切削加工及び/又は研磨加工を施してもよい。これにより精密な形状を有する最終所望の成形面を得ることができる。
【0025】
(F) 保護膜形成
得られた成形面に保護膜を形成する方法は公知の方法を用いてよい。DLC膜はメタン(CH4)、ブタン(C4H10)等の炭化水素を炭素源として主に気相化学蒸着法により形成するのが好ましく、なかでもプラズマCVD法により形成するのが好ましい。DLC膜の厚さは、良好な耐熱性、耐摩耗性及び耐ガラス濡れ性を得るため、通常0.03〜1μm程度である。
【0026】
【実施例】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0027】
実施例1
(1) 成形型の作製
タングステンカーバイド(WC)を材料として基材2を成形し、その上にスパッタリングにより出力300W、成膜時間2分で厚さ0.1μmの窒化ケイ素(Si3N4)膜を形成した。次に成形面の窒化ケイ素(Si3N4)膜上に仕上げ成形面形状の非球面形状を研削加工し、さらにダイヤモンド研磨剤を用いて非球面に研磨処理を施した。得られた成形面上に保護膜材料としてメタン(CH4)を用い、プラズマCVDにより出力200W、成膜時間1分で厚さ0.1μmのDLC膜を形成し、図1に示す成形型を得た。
【0028】
(2) 光学素子成形
得られた成形型と、VC78ガラス[Tg:500℃、At:562℃、(株)住田光学ガラス製]を用い、非酸化雰囲気中でガラスモールド法により光学素子(レンズ)を成形した。レンズの成形工程は、成形型上にVC78ガラスを設置し、その後加熱し580℃になった時点でレンズを成形し、得られたレンズを200℃で成形型から取り出すものであった。この成形サイクルを約500回繰り返したところ、DLC膜に劣化が認められた。
【0029】
(3) 再生
図2に示す装置を用い成形型1の保護膜4を剥離した。まずチャンバ10内に設けられた下部電極16の凹部16aに成形型1を設置した。次にポンプ15を作動させてチャンバ10内を0.02 Paに減圧した後、酸素ガス供給部12から濃度100%の酸素を供給するとともに、室温で高周波電源20から50Wの高周波電力を供給して上部電極11と下部電極16との間にO2プラズマを発生させ、これを成形型1に1分間照射してDLC膜を剥離した。
【0030】
保護膜を剥離した成形型1を剥離液に35℃で2時間浸漬して中間層(Si3N4層)を剥離した。剥離液は過酸化水素と水溶性芳香族ニトロ化合物を含有するジャスコ・チタニック94(日本表面化学(株)製)を使用した。
【0031】
成形型を水で洗浄して剥離液を除去した後、基材2上に新たに中間層3及び保護膜4を形成した。中間層3及び保護膜4の形成は(1)と同様にして行った。この再生工程を10回繰り返した後、(2)と同様にしてレンズの成形を行った。その結果、成形回数約500回までDLC膜の劣化は見られなかった。
【0032】
【発明の効果】
上記の通り、本発明の光学素子成形型保護膜の再生方法は、保護膜の剥離にプラズマエッチングを用い、中間層の剥離に過酸化水素を含有する剥離液を用い、保護膜と中間層をともに剥離して再生するので、保護膜の密着性に優れた再生成形型が得られる。かかる保護膜を有する本発明の光学素子成形型は、保護膜の耐剥離性に優れており、もって良好な耐久性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の再生方法に用いる光学素子成形型の一例を示す縦断面図である。
【図2】保護膜の剥離に用いるプラズマエッチング装置の一例を示す構成説明図である。
【符号の説明】
1・・・光学素子成形型
2・・・基材
3・・・中間層
4・・・保護膜
10・・・チャンバ
11・・・上部電極
12・・・酸素ガス供給部
15・・・ポンプ
16・・・下部電極
20・・・高周波電源
Claims (6)
- 基材上に炭化物膜及び/又は窒化物膜を有する中間層と、ダイヤモンドライクカーボンからなる保護膜とが形成された光学素子成形型の保護膜の再生方法であって、(a) 前記保護膜をプラズマエッチングにより剥離する工程と、(b) 前記炭化物膜及び/又は窒化物膜を過酸化水素を含有する剥離液を用いたエッチングにより剥離する工程と、(c) 前記基材上に前記中間層及び前記保護膜を新たに形成する工程とを有することを特徴とする光学素子成形型保護膜の再生方法。
- 請求項1に記載の光学素子成形型保護膜の再生方法において、前記プラズマエッチングを酸素を含有する雰囲気中で行うことを特徴とする光学素子成形型保護膜の再生方法。
- 請求項1又は2に記載の光学素子成形型保護膜の再生方法において、前記剥離液は過酸化水素を含有するアルカリ性水溶液であることを特徴とする光学素子成形型保護膜の再生方法。
- 請求項1又は2に記載の光学素子成形型保護膜の再生方法において、前記剥離液は過酸化水素及び水溶性芳香族ニトロ化合物を含有する水溶液であることを特徴とする光学素子成形型保護膜の再生方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の光学素子成形型保護膜の再生方法において、前記中間層はSiC、TiC、Si3N4、AlN及びTiNからなる群から選ばれた少なくとも1種の膜を含有することを特徴とする光学素子成形型保護膜の再生方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の光学素子成形型保護膜の再生方法において、前記基材はタングステンカーバイド系材料からなることを特徴とする光学素子成形型保護膜の再生方法。
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JP2002197541A JP2004035359A (ja) | 2002-07-05 | 2002-07-05 | 光学素子成形型保護膜の再生方法 |
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CN100422101C (zh) * | 2005-03-18 | 2008-10-01 | 亚洲光学股份有限公司 | 玻璃模造用模仁 |
JP2013527317A (ja) * | 2010-04-15 | 2013-06-27 | コーニング インコーポレイテッド | 窒化物被覆を剥離する方法 |
-
2002
- 2002-07-05 JP JP2002197541A patent/JP2004035359A/ja active Pending
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