JP2004034883A - 電動パワーステアリング付きステアリング装置 - Google Patents

電動パワーステアリング付きステアリング装置 Download PDF

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Abstract

【課題】チルト又はテレスコピック締付部の剛性を高め、かつ強固に車体に取り付けることができる良好な電動パワーステアリング付きステアリング装置を提供する。
【解決手段】ステアリングコラム13は、ステアリングシャフト11を回転自在に支持して両側にテレスコ用摩擦板40を備えたインナーコラム15と、チルト用摩擦板41を備えた一対の車体側ブラケット20,20と、パワーステアリング機構50が取付けられると共にインナーコラム15を移動自在に収容保持したアウターコラム17と、互い違いに重ねられたテレスコ用摩擦板40及びチルト用摩擦板41を介して一対の車体側ブラケット20,20をアウターコラム挟持方向へ付勢し、アウターコラム17及びインナーコラム15をチルト・テレスコ締付するための締付手段30とを備えており、テレスコ用摩擦板40の固定摩擦力がチルト用摩擦板41よりも小さくされている。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動パワーステアリング機構とチルト又はテレスコピック機構とを併設した車両用ステアリング装置に関し、詳しくは、チルト又はテレスコピック締付部の剛性を高め、かつ強固に車体に取り付けることができる電動パワーステアリング付きステアリング装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、外部動力源を用いて操舵アシストを行わせるパワーステアリング装置が広く採用されているが、近年では、電動モータを動力源とする電動パワーステアリング付きステアリング装置(以下、EPSと云う)が注目されている。
EPSでは、電動モータの電源に車載バッテリを用いるために直接的なエンジンの駆動損失が無く、電動モータが操舵アシスト時にのみ起動されるために走行燃費の低下(オルタネータに係るエンジンの駆動損失)も抑えられる他、電子制御が極めて容易に行える等の特徴を有している。
【0003】
一方、車両用ステアリング装置には、運転者の運転姿勢に応じてステアリングホイールの傾斜角度又はその軸線方向位置を調整できるチルト又はテレスコピック機構を設けたものがある。
従来のチルト・テレスコピック式ステアリング装置では、例えば図14に示すように、ステアリングコラム1を包囲するように、車体側ブラケット2が設けてあり、この車体側ブラケット2の内側に、ステアリングコラム1に固定したコラム側ブラケット3が上下動自在に設けてある。
【0004】
また、車体側ブラケット2には、チルト溝4が形成してあると共に、コラム側ブラケット3には、テレスコ溝5が形成してあり、これらチルト溝4及びテレスコ溝5に、締付ボルト6が挿通してある。この締付ボルト6の一端に、調節ナット7が螺合してあり、この調節ナット7に、操作レバー8が設けてある。
【0005】
これにより、操作レバー8を締付方向に回動すると、車体側ブラケット2がコラム側ブラケット3に摺接し、チルト締付及びテレスコピック締付できる。又、締付レバー8を解除方向に回動すると、車体側ブラケット2とコラム側ブラケット3との摺接を解除し、ステアリングコラム1をチルト溝4に沿って上下方向に移動することができると共に、ステアリングコラム1をテレスコピック溝5に沿って軸線方向に移動することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述の如きチルト又はテレスコピック機構を設けた車両用ステアリング装置に電動パワーステアリング機構を装着した場合には、運転者に不快なハンドル振動を伝えてしまうという問題があった。
即ち、前記電動パワーステアリング機構は、大きく重く、尚且つ搭載バランスの悪い電動モータや減速機構等がステアリングコラム1に取付けられるので、チルト又はテレスコピック締付部に剛性不足が生じ、車両振動や路面振動がステアリングコラム1に伝わると振動を抑えることができず、そのままハンドル振動となってしまう。
【0007】
従って、本発明の目的は上記課題を解消することに係り、チルト又はテレスコピック締付部の剛性を高め、かつ強固に車体に取り付けることができる良好な電動パワーステアリング付きステアリング装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、ステアリングホイールを取り付けるステアリングシャフトを傾動自在又は軸線方向変位自在に支持するステアリングコラムを備えた電動パワーステアリング付きステアリング装置であって、前記ステアリングコラムが、車体に取り付けられた一対の車体側ブラケットを複数の摩擦板を介して前記ステアリングコラム挟持方向へ付勢することにより、該ステアリングコラムを前記車体側ブラケットに対して変位不能に締付固定する締付手段を備えていることを特徴とする電動パワーステアリング付きステアリング装置により達成される。
【0009】
上記構成によれば、締付手段が、複数の摩擦板を介して一対の車体側ブラケットをステアリングコラム挟持方向へ付勢することにより、該ステアリングコラムは前記車体側ブラケットに対して固定される。
そこで、締付時には、これら摩擦板との間には強大な摩擦力が作用し、前記車体側ブラケットに対するステアリングコラムの保持力が高まり、チルト又はテレスコピック締付部の剛性を向上させることができる。
【0010】
尚、好ましくは少なくとも1枚以上の前記摩擦板が、塑性変形して衝撃エネルギーを吸収可能な脆弱部を備えている。
この場合、二次衝突時にステアリングコラムに車両前方に向けて所定以上の衝撃荷重が作用した際、ステアリングコラムが車両前方に移動して前記摩擦板の脆弱部を塑性変形させることにより、衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0011】
又、本発明の上記目的は、ステアリングホイールを取り付けるステアリングシャフトを傾動自在又は軸線方向変位自在に支持するステアリングコラムを備えた電動パワーステアリング付きステアリング装置であって、前記ステアリングコラムが、車体に取り付けられた一対の車体側ブラケットを所定の変位毎に互いに噛合し合う一対の噛み合い部材を介して前記ステアリングコラム挟持方向へ付勢することにより、該ステアリングコラムを前記車体側ブラケットに対して変位不能に締付固定する締付手段を備えていることを特徴とする電動パワーステアリング付きステアリング装置により達成される。
【0012】
上記構成によれば、締付手段が、所定の変位毎に互いに噛合し合う一対の噛み合い部材を介して一対の車体側ブラケットをステアリングコラム挟持方向へ付勢することにより、該ステアリングコラムは前記車体側ブラケットに対して固定される。
そこで、締付時には、これら噛み合い部材の間には強大な噛合力が作用し、前記車体側ブラケットに対するステアリングコラムの保持力が高まり、チルト又はテレスコピック締付部の剛性を向上させることができる。
【0013】
更に、本発明の上記目的は、ステアリングホイールを取り付けるステアリングシャフトを傾動自在又は軸線方向変位自在に支持するステアリングコラムを備えた電動パワーステアリング付きステアリング装置であって、前記ステアリングコラムが、前記ステアリングシャフトを回転自在に支持すると共に、テレスコ溝を有する少なくとも1枚のテレスコ用摩擦板を両側に備えたインナーコラムと、前記テレスコ溝に対応するようにしてそれぞれチルト溝が形成された複数のチルト用摩擦板を備え、車体に取り付けられた一対の車体側ブラケットと、パワーステアリング機構が取付けられると共に前記インナーコラムを軸線方向に沿って移動自在に収容保持したアウターコラムと、互い違いに重ねられた前記テレスコ用摩擦板及びチルト用摩擦板を介して一対の前記車体側ブラケットをアウターコラム挟持方向へ付勢することにより、前記アウターコラム及び前記インナーコラムを前記車体側ブラケットに対してチルト締付及びテレスコ締付するための締付手段と、を具備しており、前記テレスコ用摩擦板の固定摩擦力が、前記チルト用摩擦板の固定摩擦力よりも小さくされていることを特徴とする電動パワーステアリング付きステアリング装置により達成される。
【0014】
上記構成によれば、締付手段が、互い違いに重ねられたテレスコ用摩擦板及びチルト用摩擦板を介して一対の車体側ブラケットをアウターコラム挟持方向へ付勢することにより、アウターコラム及びインナーコラムは前記車体側ブラケットに対して固定される。
そこで、締付時には、これらテレスコ用摩擦板とチルト用摩擦板との間には強大な摩擦力が作用し、前記車体側ブラケットに対するアウターコラム及びインナーコラムの保持力が高まり、チルト・テレスコピック締付部の剛性を向上させることができる。
【0015】
又、二次衝突時、ステアリングコラムに車両前方に向けて所定以上の衝撃荷重が作用した際には、衝撃荷重の上方向成分によりインナーコラムが上方に移動しようとするが、テレスコ用摩擦板の固定摩擦力がチルト用摩擦板の固定摩擦力よりも小さくされているので、該テレスコ用摩擦板を介して車体側ブラケットに保持されているインナーコラムだけが車両前方に移動し、チルト用摩擦板を介して車体側ブラケットに保持されているアウターコラムは上方に移動することがない。
そこで、乗員保護用の衝撃エネルギーの吸収やコラプス・ストロークの妨げとなるチルト・テレスコピック締付部の上方へのズレを防止できる。
【0016】
尚、好ましくは前記テレスコ用摩擦板及びワッシャー部材が、前記チルト用摩擦板と互い違いに重ねられると共に、前記テレスコ用摩擦板の枚数が、前記チルト用摩擦板の枚数より少なく構成される。
この場合、これらテレスコ用摩擦板、ワッシャー部材及びチルト用摩擦板の枚数を適宜変更することにより、テレスコ用摩擦板及びチルト用摩擦板の固定摩擦力をそれぞれ容易に設定することができる。
【0017】
又、好ましくは少なくとも1枚以上の前記テレスコ用摩擦板が、塑性変形して衝撃エネルギーを吸収可能な脆弱部を備えている。
この場合、二次衝突時にステアリングコラムに車両前方に向けて所定以上の衝撃荷重が作用した際、インナーコラムが車両前方に移動して前記テレスコ用摩擦板の脆弱部を塑性変形させることにより、衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づいて本発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング付きステアリング装置を詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る電動パワーステアリング付きステアリング装置の側面図、図2は図1におけるII−II 断面矢視図、図3は図1に示した電動パワーステアリング付きステアリング装置の要部拡大底面図、図4は図1におけるIV−IV 断面矢視図である。
【0019】
本第1実施形態に係る電動パワーステアリング付きステアリング装置(以下、ステアリング装置という)10は、図1乃至図3に示したように、図示しないステアリングホイールを取り付けるステアリングシャフト11を傾動自在及び軸線方向変位自在に支持するステアリングコラム13を備えた電動パワーステアリング付きチルト・テレスコピック式ステアリングである。
【0020】
前記ステアリングコラム13は、軸受12を介して挿通された前記ステアリングシャフト11を回転自在に支承する円筒状のインナーコラム15と、図示しない車体に取付けられた一対の断面L字状の車体側ブラケット20,20と、一端側のハウジング部17bにパワーステアリング機構50が取付けられると共に他端側の円筒部17a内に前記インナーコラム15を収容保持したアウターコラム17と、前記アウターコラム17及び前記インナーコラム15を前記車体側ブラケット20に対してチルト締付及びテレスコ締付するための締付手段30とを具備している。
【0021】
前記アウターコラム17は、前記円筒部17aの端部開口内に前記インナーコラム15を軸線方向に沿って移動自在に収容保持すると共に、前記ハウジン部17bの両側に設けられた一対の固定ブラケット51を介して、図示しない車体に対してピボットピン52周りに枢動自在に支持されている。
【0022】
前記円筒部17aの開口端部の両側には、図2に示すように、一対の車体側ブラケット20,20が配置されている。
又、該円筒部17aの開口端部の下方には、前記車体側ブラケット20,20に挟持されるインナーコラム保持部21が設けられており、該インナーコラム保持部21には、開口端から軸線方向に延びる締付用スリット21aが形成されている。
【0023】
そして、前記インナーコラム保持部21には、アウターコラム17の軸線に対して交差する貫通穴21bが穿設されると共に、前記車体側ブラケット20,20には、それぞれ長穴20aが形成されており、これら貫通穴21bと長穴20aとにロックボルト31が嵌挿されている。
【0024】
更に、前記各車体側ブラケット20の外側には、前記ロックボルト31に貫通されるチルト溝41aを形成された複数(本実施形態では、3枚)のチルト用摩擦板(摩擦板)41が、チルト方向(図1中、上下方向)に延在して配置されている。
【0025】
図2に示したように、各チルト用摩擦板41は、上方のバーリング付穴が加締めピン45により、それぞれ各車体側ブラケット20に対して加締め固定されているが、下方の穴は各車体側ブラケット20に圧入固定されたガイドピン46によって遊嵌されており、チルト締付時の締付ズレを許容するように構成されている。
【0026】
又、同様に各車体側ブラケット20の外側には、前記ロックボルト31に貫通されるテレスコ溝40aを形成された複数(本実施形態では、2枚)のテレスコ用摩擦板(摩擦板)40が、前記各チルト用摩擦板41と互い違いになるように、テレスコ方向(図1中、左右方向)に延在して配置されている。尚、前記チルト用摩擦板41の枚数より少ない分(本実施形態では、1枚)だけ、ワッシャー部材(摩擦板)43を介装している。
【0027】
図3及び図4に示したように、各テレスコ用摩擦板40は、インナーコラム15の下方に溶接固定されたコマ部16の貫通穴16aに嵌挿されたボルト47とナット48とにより、一端のバーリング付穴が締付固定され、インナーコラム15の両側に取付けられている。
【0028】
そして、前記チルト溝41aの幅よりも大きな円盤状の頭部31aを有する前記ロックボルト31の先端には、ボルト34により操作レバー32と一体化された調節ナット33が螺合されており、互い違いに重ねられた前記テレスコ用摩擦板40及び前記チルト用摩擦板41を介して一対の前記車体側ブラケット20,20をアウターコラム挟持方向へ付勢する締付手段30を構成している。
【0029】
次に、本第1実施形態のステアリング装置10の調整動作について説明する。
先ず、操作者が操作レバー32を締付方向に回動すると、調節ナット33がロックボルト31の頭部31aと協働し、それぞれ各車体側ブラケット20の外側において互い違いに重ねられたテレスコ用摩擦板40及びチルト用摩擦板41を介して、一対の前記車体側ブラケット20,20をアウターコラム挟持方向へ付勢する。
【0030】
すると、一対の前記車体側ブラケット20,20は、アウターコラム17におけるインナーコラム保持部21の両側部に、各車体側ブラケット20の長穴20aの両側を押し当て、適切な押圧力を付与するため、車体側ブラケット20に対してアウターコラム17は固定され、それにより前記インナーコラム15のチルト方向の変位も阻止されることとなり、該インナーコラム15は車体側ブラケット20に対してチルト締付される。
【0031】
又、アウターコラム挟持方向へ付勢された一対の前記車体側ブラケット20,20は、アウターコラム17のインナーコラム保持部21を挟持して円筒部17aを縮径させ、インナーコラム15の外周面に密着させる。
そこで、前記インナーコラム15は、アウターコラム17における円筒部17aの内周面によって締付固定されると共に、前記テレスコ用摩擦板40が前記車体側ブラケット20に摩擦固定されることによって、テレスコ方向の変位が阻止されることとなり、テレスコ締付される。
尚、本実施形態では、前記インナーコラム保持部21に締付用スリット21aが形成されているために、剛性が低くなり、円筒部17aの縮径方向の変位がし易くなるように構成されている。
【0032】
即ち、本第1実施形態のステアリング装置10によれば、上記締付手段30の締付時には、これらテレスコ用摩擦板40及びワッシャー部材43とチルト用摩擦板41との間には強大な摩擦力が作用し、前記車体側ブラケット20に対するアウターコラム17及びインナーコラム15の保持力が高まり、チルト・テレスコピック締付部の剛性を向上させることができる。
【0033】
従って、大きく重く、尚且つ搭載バランスの悪い電動パワーステアリング機構50が前記ステアリングコラム13に取付けられているにも関わらず、車両振動や路面振動がステアリングコラム13に伝わっても振動を抑えることができ、運転者に不快なハンドル振動を伝えることを防止できる。
【0034】
次に、操作者が操作レバー32を締付解除方向に回動すると、フリーな状態における間隔が前記インナーコラム保持部21の幅より広く設定された一対の前記車体側ブラケット20,20は、アウターコラム挟持方向と反対の方向へそれぞれ弾性復帰するので、各車体側ブラケット20が対向するインナーコラム保持部21の側部と離間する共に、テレスコ用摩擦板40及びワッシャー部材43とチルト用摩擦板41との間の摩擦力も解除される。
【0035】
そこで、前記インナーコラム15及び前記アウターコラム17は、一対の前記車体側ブラケット20,20に対してフリーな状態となるため、前記ロックボルト31をチルト用摩擦板41のチルト溝41aに案内させつつアウターコラム17をチルト方向に変位させたり、前記ロックボルト31をテレスコ用摩擦板40のテレスコ溝40aに案内させると共に外周面を前記円筒部17aの内周面に摺接させつつインナーコラム15をテレスコ方向に変位させることで、前記ステアリングコラム13のチルト方向及びテレスコ方向の調整を任意に行うことができる。
【0036】
更に、上述した如き本第1実施形態の締付手段30によれば、図2及び図3に示したように、2枚のテレスコ用摩擦板40及び1枚のワッシャー部材43が、3枚のチルト用摩擦板41と互い違いに重ねられ、前記テレスコ用摩擦板40の枚数が、前記チルト用摩擦板41の枚数より少なく構成されている。
即ち、前記締付手段30の締付時に前記テレスコ用摩擦板40に作用する固定摩擦力(テレスコ締付部の接触面積)が、前記チルト用摩擦板41の固定摩擦力(チルト締付部の接触面積)よりも小さくされている。
【0037】
そこで、二次衝突時、ステアリングコラム13のインナーコラム15に車両前方(図1中、左方)に向けて所定以上の衝撃荷重が作用した際には、衝撃荷重の上方向成分により該インナーコラム15が上方に移動しようとする。
しかしながら、上述した様に前記テレスコ用摩擦板40の固定摩擦力が前記チルト用摩擦板41の固定摩擦力よりも小さくされており、チルト締付部が上方にズレるより先に、テレスコ締付部が前方にズレる。
【0038】
そこで、前記テレスコ用摩擦板40を介して車体側ブラケット20に保持されているインナーコラム15だけが車両前方に移動し、前記チルト用摩擦板41を介して車体側ブラケット20に保持されているアウターコラム17は上方に移動することがない。
従って、乗員保護用の衝撃エネルギーの吸収やコラプス・ストロークの妨げとなるチルト・テレスコピック締付部の上方へのズレを防止でき、図示しないステアリングホイールに設けたエアバッグの位置が定まらないといったこともない。
【0039】
また、チルト締付部における所望の固定保持力に応じて前記チルト用摩擦板41の枚数を設定した後、前記テレスコ用摩擦板40の枚数を調整することで、所望のコラプス荷重(テレスコ方向におけるストローク荷重)をも調整することができる。尚、減らしたテレスコ用摩擦板40の枚数に応じて、ワッシャー部材43を挿入することで、チルト用摩擦板41における固定保持力の変化を防止することができる。
【0040】
図5は、本発明の第2実施形態に係る電動パワーステアリング付きステアリング装置の要部拡大底面図である。尚、上記第1実施形態における締付手段30に代えて、本第2実施形態に係る締付手段60を用いた他は同様の構成であるので、同符号を付して詳細な説明を省略する。
本第2実施形態の締付手段60では、図5(a)に示したように、前記各車体側ブラケット20の外側にテレスコ方向(図5中、左右方向)に延在して配置されるテレスコ用摩擦板(摩擦板)61が、塑性変形して衝撃エネルギーを吸収可能な脆弱部である湾曲部63を備えている。
【0041】
そこで、本第2実施形態の締付手段60によれば、二次衝突時、ステアリングコラム13のインナーコラム15に車両前方(図5中、左方)に向けて所定以上の衝撃荷重が作用した際には、上記第1実施形態の締付手段30と同様に、テレスコ締付部が前方にズレるので、前記テレスコ用摩擦板61を介して車体側ブラケット20に保持されているインナーコラム15だけが車両前方に移動する。
【0042】
そして、前記テレスコ締付部の前方へのズレと同時、或いはテレスコ締付部のズレが阻止された後に、前記テレスコ用摩擦板61の長手方向に沿って所定以上の圧縮荷重が作用すると、図5(b)に示したように、湾曲部63が塑性変形することによって衝撃エネルギーを吸収できる。
即ち、予め変形する方向が定まるように、前記湾曲部63をテレスコ用摩擦板61に設けることで、該湾曲部63が塑性変形することによって吸収する衝撃エネルギー荷重の制御が容易となる。
【0043】
尚、本発明の電動パワーステアリング付きステアリング装置におけるステアリングコラムの構成は、上記実施形態におけるステアリング装置10の構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の形態を採りうることは云うまでもない。
【0044】
図6は本発明の第3実施形態に係る電動パワーステアリング付きステアリング装置の側面図であり、図7は図6におけるVII−VII 断面矢視図である。
尚、図1に示した第1実施形態のステアリング装置10に対して、本第3実施形態のステアリング装置70は、ステアリングコラムの取付け構造と締付手段の構成のみが異なるので、それ以外の共通の構成は、同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0045】
本第3実施形態におけるステアリングコラム73は、インナーコラム15と、図示しない車体に取付けられた一対の断面L字状の車体側ブラケット80,80と、パワーステアリング機構50が取付けられたハウジング78のコラム嵌合部78a内に基端側が嵌挿されると共に先端側の開口内に前記インナーコラム15を収容保持した円筒状のアウターコラム77と、前記アウターコラム77及び前記インナーコラム15を前記車体側ブラケット80に対してチルト締付及びテレスコ締付するための締付手段90とを具備している。
【0046】
そして、前記アウターコラム77は、先端側の開口内に前記インナーコラム15を軸線方向に沿って移動自在に収容保持すると共に、基端側が前記コラム嵌合部78a内に嵌合保持されており、前記ハウジング78の両側に設けられた一対の固定ブラケット51を介して、図示しない車体に対してピボットピン52周りに枢動自在に支持されている。
【0047】
前記アウターコラム77の開口端部の両側には、図7に示すように、一対の車体側ブラケット80,80が配置されており、これら一対の車体側ブラケット80,80は、それぞれ離脱用カプセル81を介して図示しない車体に取付けられている。
【0048】
この離脱用カプセル81は、二次衝突時、ステアリングコラム73に車両前方に向けて衝撃荷重が作用した際に破損し、該ステアリングコラム73を車体側ブラケット80などと伴に車体から離脱して車両前方に変位できるように機能するものである。
そして、前記車体側ブラケット80が車体から離脱するのに同期して、前記アウターコラム77の基端側が前記コラム嵌合部78a内に没入し、該アウターコラム77はインナーコラム15と伴にコラプス・ストロークすることができる。
【0049】
前記締付手段90は、各車体側ブラケット80の外側に配置されるテレスコ用摩擦板40、チルト用摩擦板41及びワッシャー部材43の枚数がそれぞれ異なる以外は、上記第1実施形態の締付手段30と略同様の構成であり、同様の作用効果を有する。
従って、本第3実施形態のステアリング装置70においても、図1に示した第1実施形態のステアリング装置10と同様の作用効果を得ることができる。
【0050】
図8は本発明の第4実施形態に係る電動パワーステアリング付きステアリング装置の側面図であり、図9は図8におけるIX−IX 断面矢視図である。
尚、図6に示した第3実施形態のステアリング装置70に対して、本第4実施形態のステアリング装置90は、ステアリングコラム及び締付手段の構成のみが異なるので、それ以外の共通の構成は、同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0051】
図8及び図9に示したように、一対の離脱用カプセル81を介して、それぞれ板材をL字状に折り曲げてなる一対の車体側ブラケット92,92が、図示しない車体に取付けられている。
これら車体側ブラケット92,92の間には、テンション部材10が配置されている。テンション部材101は、組み付け状態では略環状の部材であり、その中央で左半割部101aと右半割部101bとに二分割できるようになっている。
【0052】
前記左半割部101aと前記右半割部101bとは、左半割部101aに形成されたネジ孔101cと、右半割部101bに形成されたネジ孔101dとに挿通させた2本のボルト14を用いて締結することで、一体とされている。
前記テンション部材101の内側には、円筒状のインナーコラム95が配置されており、該インナーコラム95の中にはステアリングシャフト11が挿通され、軸受12を介してインナーコラム95に対して回転自在に支承されている。
【0053】
前記インナーコラム95の両側には、図9に示すように、ステアリングシャフト11の軸線と平行にテレスコ溝95aが形成されている。
一方、車体側ブラケット92には、ピボットピン52を中心とした円弧の一部となるチルト溝92aが形成されている。
そして、これらを組み付けた状態では、図8に示す方向で見て、テレスコ溝95aとチルト溝92aとは一部が重合しており、各チルト溝92aを貫通するようにして、図9の右側からは固定部材106が挿通され、図9の左側からは固定部材107が挿通されている。
【0054】
更に、前記各車体側ブラケット92の外側には、前記固定部材106,107にそれぞれ貫通されるチルト溝111aを形成された2枚のチルト用摩擦板(摩擦板)111が、チルト方向(図8中、上下方向)に延在して配置されている。
図9に示したように、各チルト用摩擦板111は、上方のバーリング付穴が加締めピン45により、それぞれ各車体側ブラケット92に対して加締め固定されているが、下方の穴は各車体側ブラケット92に圧入固定されたガイドピン46によって遊嵌されており、チルト締付時の締付ズレを許容するように構成されている。
【0055】
又、同様に各車体側ブラケット92の外側には、前記固定部材106,107にそれぞれ貫通されるテレスコ溝110aを形成された1枚のテレスコ用摩擦板(摩擦板)110が、前記各チルト用摩擦板111と互い違いになるように、テレスコ方向(図8中、左右方向)に延在して配置されている。尚、前記チルト用摩擦板111の枚数より少ない分(本実施形態では、1枚)だけ、ワッシャー部材112を介装している。
図8に示したように、各テレスコ用摩擦板110は、インナーコラム95の両側面に溶接固定されたコマ部96に螺合したボルト98により、一端側が締付固定され、インナーコラム95の両側に取付けられている。
【0056】
そして、前記固定部材106は、チルト用摩擦板111のチルト溝111aの幅よりも大きな円盤状の頭部106aと、チルト溝92a及びチルト溝111aに係合して案内される角柱状のチルト案内部106bと、テンション部材101の右半割部101bに形成された貫通ネジ孔101fに螺合する雄ネジ部106cと、図9中側のテレスコ溝95aに係合して案内される角柱状のテレスコ案内部106dとを有している。
【0057】
これに対し、前記固定部材107は、頭部107aと、チルト溝92a及びチルト溝111aの幅に対してわずかに小さい径寸法を有する細長い円筒状のチルト案内部107bと、テンション部材101の左半割部101aに形成された貫通ネジ孔101eに螺合する雄ネジ部107cと、図9中左側のテレスコ溝95aに係合して案内される角柱状のテレスコ案内部107dとを有している。
【0058】
前記固定部材107の案内部107bの周囲には、一部がチルト用摩擦板111のチルト溝111aに係合しているため回転不動となっている第1カム部材120と、該第1カム部材120に隣接して操作レバー32の端部に取り付けられ一体的に回動するようになっている第2カム部材121と、頭部107aと操作レバー32の端部との間で挟持された軸受125とが設けられており、互い違いに重ねられた前記テレスコ用摩擦板110及び前記チルト用摩擦板111を介して一対の前記車体側ブラケット92,92をアウターコラム挟持方向へ付勢する締付手段100を構成している。
【0059】
ハウジング78のコラム嵌合部78a内に基端側が嵌挿されると共に先端側の開口内に前記インナーコラム95を収容保持した円筒状のアウターコラム97は、開口端外周において、軸線方向に隔置配置された一対のフランジ部97a,97bを有している。押圧部としてのこれらフランジ部97a,97bの間には、前記テンション部材101が配置される。尚、アウターコラム97の固定部材106,107から90度離れた位置には、開口端から軸線方向に延びてフランジ部97a,97bを分断するようにして、一対の締付用スリット97c,97c(実際より誇張されている)が形成されている。
【0060】
次に、本第4実施形態のステアリング装置90の調整動作について説明する。先ず、操作者が操作レバー32を締付方向に回勤すると、固定部材107における第1カム部材120と第2カム部材121の凸部同士が係合しあい、互いに離間する方向に力を発生する。
この時、第1カム部材120により押圧された図9中左側の車体側ブラケット92は右方へ変位する。一方、第2カム部材121により左方に押圧された固定部材107は、テンション部材101を左方へと変位させる。
【0061】
それにより、テンション部材101は、アウターコラム97のフランジ部97a,97bを、前記テレスコ用摩擦板110及び前記チルト用摩擦板111を介して車体側ブラケット92のチルト溝92aの周囲に押し当て、適切な押圧力を付与する。そこで、これらテレスコ用摩擦板110及びチルト用摩擦板111の強大な固定摩擦力を用いて車体側ブラケット92に対してアウターコラム97は固定され、それによりインナーコラム95のチルト方向の変位も阻止されることとなる。
【0062】
一方、前記操作レバー32の締め付け方向への回動に基づき、第1カム部材120により押圧された図9中左側の車体側ブラケット92が右方へ変位すると、テレスコ用摩擦板110及びチルト用摩擦板111を介してフランジ部97a,97bの左半部に当接して、これらを同様に右方に変位させ、インナーコラム95の外周面に押圧力を付与する。
【0063】
更に、テンション部材101に付与された力は、反対側の固定部材106に伝達され、それにより押圧された図9中右側の車体側ブラケット92は左方へ変位する。右側の車体側ブラケット92が左方へ変位すると、フランジ部97a,97bの右半部に当接して、これらを同様に左方に変位させ、インナーコラム95の外周面に押圧力を付与するため、テレスコ用摩擦板110及びチルト用摩擦板111に強大な固定摩擦力が発生する。
【0064】
すなわち、前記操作レバー32の締め付け操作によって、一対の車体側ブラケット92,92が互いに近接する方向に力を受けるため、インナーコラム95は、フランジ部97a,97bにより、図9中左右両側から押圧力を受けて車体側ブラケット92に対して固定され、それによりテレスコ方向の変位が阻止されることとなる。
【0065】
更に、かかる構成によれば、一対の車体側ブラケット92,92間距離を二分する位置が略一定に維持されるため、ステアリングシャフト11の心ズレを抑制できることとなる。尚、本実施形態では、一対の締付用スリット97c,97cが形成されているので、アウターコラム97の剛性が低くなり、フランジ部97a,97bのインナーコラム95に向かう方向の変位がし易くなるよう構成されている。
【0066】
即ち、本第4実施形態に係るステアリング装置90の締付手段100においても、図9に示したように、1枚のテレスコ用摩擦板110及び1枚のワッシャー部材112が、2枚のチルト用摩擦板111と互い違いに重ねられ、前記テレスコ用摩擦板110の枚数が、前記チルト用摩擦板111の枚数より少なく構成されている。
即ち、前記締付手段100の締付時に前記テレスコ用摩擦板110に作用する固定摩擦力(テレスコ締付部の接触面積)が、前記チルト用摩擦板111の固定摩擦力(チルト締付部の接触面積)よりも小さくされている。
【0067】
そこで、二次衝突時、ステアリングコラム93のインナーコラム95に車両前方(図8中、左方)に向けて所定以上の衝撃荷重が作用した際には、衝撃荷重の上方向成分により該インナーコラム95が上方に移動しようとする。
しかしながら、上述した様に前記テレスコ用摩擦板110の固定摩擦力が前記チルト用摩擦板111の固定摩擦力よりも小さくされており、チルト締付部が上方にズレるより先に、テレスコ締付部が前方にズレるので、乗員保護用の衝撃エネルギーの吸収やコラプス・ストロークの妨げとなるチルト・テレスコピック締付部の上方へのズレを防止できる。
従って、本第4実施形態のステアリング装置90においても、上記各実施形態のステアリング装置と同様の作用効果を得ることができ、
【0068】
図10は本発明の第5実施形態に係る電動パワーステアリング付きステアリング装置の側面図、図11は図10におけるXI−XI 断面矢視図である。
本第5実施形態に係る電動パワーステアリング付きステアリング装置(以下、ステアリング装置という)122は、図10及び図11に示したように、ステアリングシャフト11を傾動自在に支持するステアリングコラム73を備えた電動パワーステアリング付きチルト式ステアリングである。
【0069】
前記ステアリングコラム73は、図10に示すように、軸受12を介して挿通された前記ステアリングシャフト11を回転自在に支承する円筒状のインナーコラム123と、図示しない車体に取付けられた一対の断面L字状の車体側ブラケット124,124と、パワーステアリング機構50が取付けられると共にコラム嵌合部78a内に前記インナーコラム123を収容保持したハウジング78と、前記インナーコラム123を前記車体側ブラケット124に対してチルト締付するための締付手段130とを具備している。
【0070】
前記ハウジング78は、前記コラム嵌合部78a内に前記インナーコラム123を軸線方向に沿って移動自在に収容保持すると共に、両側に設けられた一対の固定ブラケット51を介して、図示しない車体に対してピボットピン52周りに枢動自在に支持されている。
【0071】
前記インナーコラム123の中間部の両側には、図11に示すように、一対の車体側ブラケット124,124が配置されており、これら一対の車体側ブラケット124,124は、それぞれ離脱用カプセル81を介して図示しない車体に取付けられている。
【0072】
この離脱用カプセル81は、二次衝突時、ステアリングコラム73に車両前方に向けて衝撃荷重が作用した際に破損し、該ステアリングコラム73を車体側ブラケット124などと伴に車体から離脱して車両前方に変位できるように機能するものである。
そして、前記車体側ブラケット124が車体から離脱するのに同期して、前記インナーコラム123の基端側が前記コラム嵌合部78a内に没入し、該インナーコラム123はコラプス・ストロークすることができる。
【0073】
又、前記インナーコラム123の中間部の下方には、前記車体側ブラケット124,124に挟持されるインナーコラム保持部127が設けられている。
前記インナーコラム保持部127には、インナーコラム123のの軸線に対して交差する貫通穴127aが穿設されると共に、前記車体側ブラケット124,124には、それぞれ前記ピボットピン52の中心軸を円弧中心とする円弧状の長穴124aが形成されており、これら貫通穴127aと長穴124aとにロックボルト31が嵌挿されている。
【0074】
更に、前記各車体側ブラケット124の外側には、前記ロックボルト31に貫通されるチルト溝131aを形成された複数(本実施形態では、2枚)のチルト用摩擦板(摩擦板)131が、ワッシャー部材43を交互に介装してチルト方向(図10、上下方向)に延在して配置されている。前記チルト溝131aは、前記車体側ブラケット124の長穴124aと同様に、ピボットピン52の中心軸を円弧中心とする円弧状の長穴である。
【0075】
図11に示したように、各チルト用摩擦板131は、上方のバーリング付穴が加締めピン45により、それぞれ各車体側ブラケット124に対して加締め固定されているが、下方の穴は各車体側ブラケット124に圧入固定されたガイドピン46によって遊嵌されており、チルト締付時の締付ズレを許容するように構成されている。
【0076】
そして、前記チルト溝131aの幅よりも大きな円盤状の頭部31aを有する前記ロックボルト31の先端には、ボルト34により操作レバー32と一体化された調節ナット33が螺合されており、互い違いに重ねられた前記チルト用摩擦板131及びワッシャー部材43を介して一対の前記車体側ブラケット124,124をインナーコラム挟持方向へ付勢する締付手段130を構成している。
【0077】
次に、本第5実施形態のステアリング装置122の調整動作について説明する。
先ず、操作者が操作レバー32を締付方向に回動すると、調節ナット33がロックボルト31の頭部31aと協働し、それぞれ各車体側ブラケット124の外側において互い違いに重ねられたチルト用摩擦板131及びワッシャー部材43を介して、一対の前記車体側ブラケット124,124をインナーコラム挟持方向へ付勢する。
【0078】
すると、一対の前記車体側ブラケット124,124は、インナーコラム123におけるインナーコラム保持部127の両側部に、各車体側ブラケット124の長穴124aの両側を押し当て、適切な押圧力を付与するため、車体側ブラケット124に対してインナーコラム123は固定され、それによりチルト方向の変位が阻止されることとなり、該インナーコラム123は車体側ブラケット124に対してチルト締付される。
【0079】
更に、本第5実施形態のステアリング装置122によれば、上記締付手段130の締付時には、これらチルト用摩擦板131とワッシャー部材43との間には強大な摩擦力が作用し、前記車体側ブラケット124に対するインナーコラム123の保持力が高まり、チルト締付部の剛性を向上させることができる。
【0080】
従って、大きく重く、尚且つ搭載バランスの悪い電動パワーステアリング機構50が前記ステアリングコラム73に取付けられているにも関わらず、車両振動や路面振動がステアリングコラム73に伝わっても振動を抑えることができ、運転者に不快なハンドル振動を伝えることを防止できる。
【0081】
次に、操作者が操作レバー32を締付解除方向に回動すると、フリーな状態における間隔が前記インナーコラム保持部127の幅より広く設定された一対の前記車体側ブラケット124,124は、インナーコラム挟持方向と反対の方向へそれぞれ弾性復帰するので、各車体側ブラケット124が対向するインナーコラム保持部127の側部と離間する共に、チルト用摩擦板131とワッシャー部材43との間の摩擦力も解除される。
【0082】
そこで、前記インナーコラム123は、一対の前記車体側ブラケット124,124に対してフリーな状態となるため、前記ロックボルト31をチルト用摩擦板131のチルト溝131a及び車体側ブラケット124の長穴124aに案内させつつインナーコラム123をチルト方向に変位させることで、前記ステアリングコラム73のチルト方向の調整を任意に行うことができる。
【0083】
図12は本発明の第6実施形態に係る電動パワーステアリング付きステアリング装置の要部側面図、図13は図12におけるXIII−XIII 断面矢視図である。尚、上記第5実施形態における締付手段130に代えて、本第6実施形態に係る締付手段150を用いた他は同様の構成であるので、同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0084】
本第6実施形態の締付手段150では、一方の前記車体側ブラケット124の外側に、ロックボルト31に貫通されるチルト溝151aが形成されてチルト方向に延在して固定された固定ギヤ部材151と、該固定ギヤ部材151の歯151bに噛合する歯153bを有する可動ギヤ部材153とから成る一対の噛み合い部材が配置されている。
【0085】
前記チルト溝151aは、図示しないピボットピン52の中心軸を円弧中心とする円弧状の長穴であり、前記歯151b及び前記歯153bは、前記ピボットピン52の中心軸を中心とする放射状の歯スジを有する。
図13に示したように、前記チルト溝124aの幅よりも大きな円盤状の頭部31aを有する前記ロックボルト31の先端には、前記可動ギヤ部材153の貫通穴153a及び圧縮コイルバネ155を挿通した後、ボルト34により操作レバー32と一体化された調節ナット154が螺合されており、互いに噛合し合う固定ギヤ部材151及び可動ギヤ部材153を介して一対の前記車体側ブラケット124,124をインナーコラム挟持方向へ付勢する締付手段150を構成している。
【0086】
次に、本第6実施形態のステアリング装置140の調整動作について説明する。
先ず、操作者が操作レバー32を締付方向に回動すると、調節ナット154がロックボルト31の頭部31aと協働し、一方の車体側ブラケット124の外側において互いに噛合し合う固定ギヤ部材151及び可動ギヤ部材153を介して、一対の前記車体側ブラケット124,124をインナーコラム挟持方向へ付勢する。
【0087】
すると、一対の前記車体側ブラケット124,124は、インナーコラム123におけるインナーコラム保持部127の両側部に、各車体側ブラケット124の長穴124aの両側を押し当て、適切な押圧力を付与するため、車体側ブラケット124に対してインナーコラム123は固定され、それによりチルト方向の変位が阻止されることとなり、該インナーコラム123は車体側ブラケット124に対してチルト締付される。
【0088】
更に、本第6実施形態のステアリング装置140によれば、上記締付手段150の締付時には、固定ギヤ部材151と可動ギヤ部材153との間には強大な噛合力が作用し、前記車体側ブラケット124に対するインナーコラム123の保持力が高まり、チルト締付部の剛性を向上させることができる。
従って、本第6実施形態のステアリング装置140においても、上記第5実施形態のステアリング装置122と同様の作用効果を得ることができる。
【0089】
次に、操作者が操作レバー32を締付解除方向に回動すると、フリーな状態における間隔が前記インナーコラム保持部127の幅より広く設定された一対の前記車体側ブラケット124,124は、インナーコラム挟持方向と反対の方向へそれぞれ弾性復帰するので、各車体側ブラケット124が対向するインナーコラム保持部127の側部と離間する共に、可動ギヤ部材153が圧縮コイルバネ155により噛合方向へ弾性付勢された状態となり、前記歯153bは圧縮コイルバネ155の付勢力に抗して前記歯151bに対する噛み合い位置が変位可能となる。
【0090】
そこで、前記インナーコラム123は、一対の前記車体側ブラケット124,124に対して略フリーな状態となるため、前記ロックボルト31を固定ギヤ部材151のチルト溝151a及び車体側ブラケット124の長穴124aに案内させつつインナーコラム123をチルト方向に変位させることで、所定の角度変位毎に互いに噛合し合う固定ギヤ部材151と可動ギヤ部材153を介して、前記ステアリングコラム73のチルト方向の調整を任意に行うことができる。
【0091】
【発明の効果】
上述したように、本発明の電動パワーステアリング付きステアリング装置によれば、締付手段が、複数の摩擦板、或いは所定の変位毎に互いに噛合し合う一対の噛み合い部材を介して、一対の車体側ブラケットをステアリングコラム挟持方向へ付勢することにより、該ステアリングコラムは前記車体側ブラケットに対して固定される。
【0092】
そこで、締付時には、これら摩擦板との間の強大な摩擦力、或いは噛み合い部材間の噛合力が作用し、前記車体側ブラケットに対するステアリングコラムの保持力が高まり、チルト又はテレスコピック締付部の剛性を高め、かつ強固に車体に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電動パワーステアリング付きステアリング装置の側面図である。
【図2】図1におけるII−II 断面矢視図である。
【図3】図1に示した電動パワーステアリング付きステアリング装置の要部拡大底面図である。
【図4】図1におけるIV−IVI断面矢視図である。である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る電動パワーステアリング付きステアリング装置の要部拡大底面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る電動パワーステアリング付きステアリング装置の側面図である。
【図7】図6におけるVII−VII 断面矢視図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る電動パワーステアリング付きステアリング装置の側面図である。
【図9】図8におけるIX−IX 断面矢視図である。
【図10】本発明の第5実施形態に係る電動パワーステアリング付きステアリング装置の側面図である。
【図11】図10におけるXI−XI 断面矢視図である。
【図12】本発明の第6実施形態に係る電動パワーステアリング付きステアリング装置の要部側面図である。
【図13】図12におけるXIII−XIII 断面矢視図である。
【図14】(a)は従来のチルト・テレスコピック式ステアリング装置の要部拡大側面図であり、(b)は(a)に示したステアリング装置の横断面図である。
【符号の説明】
10  電動パワーステアリング付きステアリング装置
11  ステアリングシャフト
13  ステアリングコラム
15  インナーコラム
17  アウターコラム
20  車体側ブラケット
30  締付手段
32  操作レバー
40  テレスコ用摩擦板(摩擦板)
40a テレスコ溝
41  チルト用摩擦板(摩擦板)
41a チルト溝
43  ワッシャー部材(摩擦板)
50  パワーステアリング機構

Claims (3)

  1. ステアリングホイールを取り付けるステアリングシャフトを傾動自在又は軸線方向変位自在に支持するステアリングコラムを備えた電動パワーステアリング付きステアリング装置であって、
    前記ステアリングコラムが、車体に取り付けられた一対の車体側ブラケットを複数の摩擦板を介して前記ステアリングコラム挟持方向へ付勢することにより、該ステアリングコラムを前記車体側ブラケットに対して変位不能に締付固定する締付手段を備えていることを特徴とする電動パワーステアリング付きステアリング装置。
  2. 少なくとも1枚以上の前記摩擦板が、塑性変形して衝撃エネルギーを吸収可能な脆弱部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング付きステアリング装置。
  3. ステアリングホイールを取り付けるステアリングシャフトを傾動自在又は軸線方向変位自在に支持するステアリングコラムを備えた電動パワーステアリング付きステアリング装置であって、
    前記ステアリングコラムが、車体に取り付けられた一対の車体側ブラケットを所定の変位毎に互いに噛合し合う一対の噛み合い部材を介して前記ステアリングコラム挟持方向へ付勢することにより、該ステアリングコラムを前記車体側ブラケットに対して変位不能に締付固定する締付手段を備えていることを特徴とする電動パワーステアリング付きステアリング装置。
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