JP2004034720A - 印刷装置、印刷方法およびプリンタ - Google Patents
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Abstract
【課題】 多値プリンタにおいて、各画素ごとに表現可能な階調値を増すとともに、バンディングの発生を抑制する。
【解決手段】 インクジェットプリンタにおいて、主走査中に一各画素に対して連続的にインクを吐出可能とする。一画素へのインクの吐出回数は、各画素ごとに表現する階調値に応じて設定する。吐出されたインクは着弾位置が主走査方向にずれ、形成されるドットが主走査方向に長い扁平なドットとなる。かかる扁平ドットの副走査方向の幅よりも十分に小さい間隔で、副走査方向のドットピッチを設定する。主走査方向のドットピッチは扁平ドットの主走査方向の幅よりも十分小さい間隔で、しかも画像全体の画素数が印刷速度に応じて定まる所定値を超えないように設定する。かかる間隔でドットを形成すれば、バンディングを生じることなく、階調表現に優れた画像を高速で印刷することができる。
【選択図】 図6
【解決手段】 インクジェットプリンタにおいて、主走査中に一各画素に対して連続的にインクを吐出可能とする。一画素へのインクの吐出回数は、各画素ごとに表現する階調値に応じて設定する。吐出されたインクは着弾位置が主走査方向にずれ、形成されるドットが主走査方向に長い扁平なドットとなる。かかる扁平ドットの副走査方向の幅よりも十分に小さい間隔で、副走査方向のドットピッチを設定する。主走査方向のドットピッチは扁平ドットの主走査方向の幅よりも十分小さい間隔で、しかも画像全体の画素数が印刷速度に応じて定まる所定値を超えないように設定する。かかる間隔でドットを形成すれば、バンディングを生じることなく、階調表現に優れた画像を高速で印刷することができる。
【選択図】 図6
Description
本発明は、2次元的に配列された画素にドットを形成して印刷媒体上に画像を印刷可能な印刷装置に関し、詳しくは、前記配列を規定する2つの方向で該ドットの最大幅が有意に異なるドットを形成する印刷装置に関する。
従来より、コンピュータの出力装置として、ヘッドに備えられた複数のノズルから吐出される数色のインクによりドットを形成して画像を記録するインクジェットプリンタが提案されており、コンピュータ等が処理した画像を多色多階調で印刷するのに広く用いられている。かかるプリンタでは、通常、各画素ごとにはドットのオン・オフの2値しか採り得ない。従って、原画像データの有する階調をドットの分散性で表現して画像を印刷する。
各画素ごとに2値しか採り得ない2値プリンタにおいて、豊かな階調表現を実現し、高画質な印刷を実現するために、各ドットのインク重量を微少にする技術が提案されている。微少なインク重量でドットを形成すれば、単位面積当たりに形成可能なドット数を増やすことができるため、単位面積当たりに表現可能な階調数を増やすことができる。かかるプリンタは、豊かな階調表現を実現可能である一方、印刷速度の低下を招くことが課題であった。
近年では、豊かな階調表現を実現するとともに印刷速度の向上も図った技術として、各ドットごとにオン・オフの2値以上の階調表現を可能としたプリンタ、いわゆる多値プリンタが提案されている。例えば、インク量やインク濃度を変化させることにより各ドットごとに3種類以上の濃度を表現可能としたプリンタや各画素ごとに複数のドットを重ねて形成することにより多階調を表現可能としたプリンタである。
ドットを2次元的に配列して画像を印刷する場合、印刷された画像の粒状感をいずれの方向についても均一にすることができるという観点から、それぞれのドットの形状は円形が理想的である。ところが、略円形のドットを形成可能な状態で吐出し得るインク量はノズルに応じて決まっている。従って、略円形のドットの形成を指向した場合、吐出されるインク量を変えることで各画素ごとに表現可能な階調値には制限があった。同様に、単一種類のドットを用いる2値プリンタにおいても、印刷モードに応じて異なる面積のドットを形成する場合など、適用可能なドットの範囲には制限があった。
この発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、各画素ごとに幅広い範囲の濃度を表現可能として、階調表現に優れた高画質な印刷が可能な印刷装置を提供することを目的とする。また、各画素ごとに単一種類のドットを形成する場合に、印刷の目的に応じた幅広い範囲のドットを適用可能な印刷装置を提供することを目的とする。
上述の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明は、次の構成を採用した。
本発明の印刷装置は、
ドットを所定の解像度で2次元的に配列された画素ごとに形成して印刷媒体上に画像を印刷する印刷装置であって、
前記配列の一の方向の最大幅が他の方向の最大幅よりも有意に小さい扁平ドットを形成可能なヘッドと、
前記画像のデータを前記解像度で設定する設定手段と、
該設定されたデータに基づいて前記ヘッドを駆動して、前記解像度でドットを形成するドット形成手段とを備え、
前記解像度は、
前記一の方向においては、該方向のドットの間隔が、前記扁平ドットの該方向の最大幅を超えない範囲で設定され、
前記他の方向においては、該方向のドットの間隔が前記扁平ドットの該方向の最大幅を超えない範囲、かつ前記一の方向の解像度よりも低い範囲で設定された解像度であることを要旨とする。
本発明の印刷装置は、
ドットを所定の解像度で2次元的に配列された画素ごとに形成して印刷媒体上に画像を印刷する印刷装置であって、
前記配列の一の方向の最大幅が他の方向の最大幅よりも有意に小さい扁平ドットを形成可能なヘッドと、
前記画像のデータを前記解像度で設定する設定手段と、
該設定されたデータに基づいて前記ヘッドを駆動して、前記解像度でドットを形成するドット形成手段とを備え、
前記解像度は、
前記一の方向においては、該方向のドットの間隔が、前記扁平ドットの該方向の最大幅を超えない範囲で設定され、
前記他の方向においては、該方向のドットの間隔が前記扁平ドットの該方向の最大幅を超えない範囲、かつ前記一の方向の解像度よりも低い範囲で設定された解像度であることを要旨とする。
かかる印刷装置では、上述の扁平ドットを形成する。略円形とは明らかに異なる扁平ドットを意図的に用いることにより、本発明の印刷装置は、従来に比較して幅広い範囲の種類のドットを印刷に使用することができる。例えば、大きなドットを形成して印刷速度を向上する印刷モードにおいては、略円形のドットを形成可能な範囲を超えるインク量のドットを適用することができる。インク量が極端に多い場合には、吐出されたインク滴が2カ所に分離して着弾することもあるが、本発明の印刷装置はかかるドットの形成も許容する。また、各画素当たりに複数回に亘ってインクを吐出するヘッドにおいては、それぞれ吐出されたインク滴の着弾位置がずれることをも許容してドットを形成する。
このように本発明の印刷装置は、略円形とは明らかに異なる扁平ドットを用いることにより、印刷に適用可能なドットの種類を幅広く選択することができ、印刷の目的に応じた適切なドットの使い分けが可能となる。この結果、複数の印刷モードを有する印刷装置においては、幅広い印刷モードを用意することが可能となる。また、単一のヘッドを用途の異なる複数の印刷装置に適用可能となる利点もある。
なお、扁平ドットについては、一画素に対して吐出されたインク全てにより印刷媒体上に形成された形状全体の幅に基づいて判定する。例えば、図19に示すように吐出されたインクが2カ所に分離して着弾した場合、それぞれのインク滴は略円形の染色部を形成したとしても、該インクで形成された形状全体で見れば、一方向の幅WDSが他の方向の幅WDMと有意に異なるから、扁平ドットに含まれる。また、いわゆる面積階調と呼ばれる技術で、一つの画素を複数の領域に分けて、それぞれの領域に形成される略円形の染色部の数によって、該画素として複数の階調を表現する技術がある。図20にその一例を示す。かかる場合も2方向の最大幅が有意に異なるため、本明細書における扁平ドットに含まれる。
本明細書ではドットのオン・オフを決定する画像データに基づいて画素を定義する。図20に示した面積階調においては、図中の破線で示された各領域を画素として扱う場合もあるが、これらの領域におけるドットのオン・オフは画像データ中の一つのデータに基づいて設定される。本明細書では、このように画像データ中の一つのデータに基づいて判断される領域の集合体、つまり図20中に実線で示した部分を画素と呼ぶものとする。そして、複数回に分けてインクを吐出して形成されたとしても、一画素に対して吐出されたインク全体により形成された形状全体をまとめてドットと呼ぶものとする。
本発明の印刷装置は、このように定義された扁平ドットの形状に合わせて設定された解像度で印刷を行う。従って、以下に示す通り、本発明の印刷装置は、ドット間の隙間に起因するバンディングを生じることなく、扁平ドットを形成することができ、先に説明した階調表現と併せて高画質な印刷を実現することができる。
先に従来の印刷装置における解像度の設定方法について説明し、続いて本発明の解像度に基づく効果について説明する。図16は、従来の解像度の設定方法を示した説明図である。図中の円がドットを示し、破線の四角が画素を示している。図の右側には、ドットを4×4の配列で形成した場合の様子を示した。従来は、2次元的に配列した場合にいずれの方向に対しても均質な粒状感を与えることができる利点に鑑み、略円形のドットが指向されていた。従って、解像度も略円形のドットを前提として設定されていた。つまり、ドットの形成に使用されるインク量に基づいて略円形のドットの径DDを求め、画素の対角線の長さLCが径DDよりも十分に小さくなるように解像度が設定されていた。こうして設定された解像度でドットを形成すれば、隣接するドット間に隙間を生じることなくドットを形成することができる。なお、このように略円形のドットを基準として解像度の下限値を設定した上で、さらに高解像度での印刷を実現するために主走査方向の解像度を増やすこともあった。
扁平なドットを形成する本発明の印刷装置にかかる解像度の設定方法を適用した場合の様子を示したのが図17である。図示する通り、一方向の幅WDSと他の方向の幅WDMとが有意に異なる扁平ドットが形成されている。ドットの面積は図16に示した円形のドットとほぼ同一である。かかる場合にこのドットを形成するインク量に基づいて解像度を設定すれば、画素は図17に示す破線の通りになる。この画素の大きさは図16に示す画素とほぼ同一である。図17の右側にかかる解像度で4×4の配列でドットを形成した場合の様子を示す。ドットの形成位置が正常であればドット間に隙間を生じることなくドットを形成することができる。
ところが、一般に副走査方向にはドットの形成位置にずれが生じやすい。ドットの形成位置にずれが生じた場合の様子を図18に示す。図中の左側の数字を丸で囲んだものがヘッドHDに備えられたノズルを意味している。数字はノズルの番号である。図18の右側にはこのヘッドHDにより形成されるドットの様子を示した。このように副走査方向にノズルが配列されたヘッドでは、その機械的製造誤差等に基づきインクの吐出特性がバラツキやすい。図18では、2番ノズルと3番ノズルからのインクの吐出方向が斜めにずれた場合を例示した。吐出方向がこのようにずれると、それらのノズルによって形成されるラスタの位置がずれ、図18中の破線の四角BDGのようにドット間に隙間、いわゆるバンディングが生じる。図17から明らかな通り、インク量に基づいて解像度を設定すると扁平ドットに対しては、副走査方向において隣接するドット同士の重複部分が少なくなってしまう。この結果、インクの吐出方向がわずかにずれた場合でも図18に示したバンディングを生じやすくなる。
図18では、複数のノズルを備えた場合を例示したが、一つのノズルでドットを形成する場合でも、例えば図18の上下方向にノズルを送る際の誤差などによってバンディングを生じることがある。バンディングは、画質を大きく損ねる原因となる。扁平ドットの定義における幅WDSと幅WDMとが「有意に」異なるとは、このようにインク量にのみ基づいて解像度を設定した場合に、ドットの幅が短い方向のドットピッチがバンディングの発生を十分抑制できる程狭くならない程度の相違をいう。
本発明の印刷装置は、ドットピッチが扁平ドットの短い側の幅WDSよりも十分狭くなるように該方向の解像度を設定する。扁平ドットの幅が長い方向についても同様に、ドットピッチが扁平ドットの幅WDMよりも狭くなるように該方向の解像度を設定する。つまり、扁平ドットの形状に応じて2方向の解像度をそれぞれ設定するのである。このように設定された解像度でドットを形成することにより、本発明の印刷装置は、それぞれの方向に隣接する扁平ドット同士の間に隙間が生じることを抑制でき、バンディングの発生を抑制することができる。
ここで、本発明の印刷装置の解像度は扁平ドットの長い側の方が短い側よりも低い。解像度を扁平ドットの形状に合わせてこのように設定することにより、幅が長い側に隣接する扁平ドット同士が必要以上に重なることを抑制することができる。この結果、扁平ドット同士が重なる部分で生じるにじみや混色を抑制することができ、高画質な印刷を実現することができる。
また、扁平ドットの長い側で解像度を低くすることにより、該方向の画素数を減らすことができる。従って、画像全体の画素数の増加を抑制することができる。この結果、本発明のプリンタは、画像の印刷速度の低下を招くことなく、高画質な印刷を実現することができる。なお、図17および図18では、横方向に長い扁平ドットを形成する場合を例にとって説明したが、ドットを配列するいずれの方向に長い扁平ドットに対しても適用することができる。
本発明の印刷装置において、
前記ヘッドは、前記扁平ドットを面積が最大のドットとして、面積の異なる2種類以上のドットを形成可能なヘッドであるものとすることが望ましい。
前記ヘッドは、前記扁平ドットを面積が最大のドットとして、面積の異なる2種類以上のドットを形成可能なヘッドであるものとすることが望ましい。
かかる印刷装置は、面積の異なる2種類以上のドットを形成することにより、各画素ごとに3値以上の濃度を表現可能である。しかも、面積が最大のドットとして、上述の扁平ドットを形成する。略円形とは明らかに異なる扁平ドットを意図的に用いることにより、本発明の印刷装置は、従来に比較して各画素当たりに幅広い範囲の濃度表現が可能である。例えば、各画素当たりに吐出されるインク量を変更するヘッドにおいては、略円形のドットを形成可能な範囲を超えてインク量を変更することができる。このように本発明の印刷装置は、略円形とは明らかに異なる扁平ドットを用いることにより、各画素当たりに吐出可能な総インク量の変動範囲を大きく変更することができ、幅広い範囲の濃度表現が可能となる。この結果、階調表現に優れた高画質な印刷を実現することが可能となる。
本発明の印刷装置が、
前記ヘッドを一方向に往復動する主走査手段と、
該往復動とは交差する方向に前記印刷媒体を前記ヘッドに対して相対的に移動する副走査手段とを備える場合には、
前記往復動の方向は、前記他の方向であり、
前記相対的な移動の方向は、前記一の方向であるものとすることが望ましい。
前記ヘッドを一方向に往復動する主走査手段と、
該往復動とは交差する方向に前記印刷媒体を前記ヘッドに対して相対的に移動する副走査手段とを備える場合には、
前記往復動の方向は、前記他の方向であり、
前記相対的な移動の方向は、前記一の方向であるものとすることが望ましい。
かかる印刷装置は、前記往復動つまり主走査が行われる方向の幅が長く、前記相対的な移動つまり副走査が行われる方向の幅が短くなるように扁平ドットを形成する。かかる印刷装置では、主走査中のヘッドの移動速度に起因して、該方向の幅が長いドットを形成しやすい。従って、上述した方向で扁平ドットを形成するものとすれば、比較的容易に高画質な印刷を実現することができる。
また、いわゆるバンディングは、主走査方向に並ぶドット列、つまりラスタ間で生じることが多い。上記印刷装置では、副走査が行われる方向の幅が短くなるように扁平ドットを形成することにより、該方向の解像度を高くすることができるため、バンディングを効果的に抑制することができる。
一方、本発明の印刷装置において、
前記画素の前記他の方向における幅は、さらに全画素のドットのオン・オフを特定するデータ量が印刷速度に基づいて定められた所定値以下となる範囲で設定された幅とすることができる。
前記画素の前記他の方向における幅は、さらに全画素のドットのオン・オフを特定するデータ量が印刷速度に基づいて定められた所定値以下となる範囲で設定された幅とすることができる。
こうすれば、所望の印刷速度で画像を印刷することができる。印刷速度に影響を与える要素の一つとして、ドットのオン・オフを特定するデータ量が挙げられる。つまり、データ量が増大すれば、印刷に供するデータの準備に時間を要するため、印刷速度が低下する。ここで、データ量は、画像を形成する画素の数とドットのオン・オフを特定するために各画素当たりに必要となる情報量に基づいて定まる。画素数が増えるにつれてデータ量は増加する。また、各画素当たりに表現可能な濃度が増えるにつれてデータ量は増加する。
扁平ドットを形成する本発明の印刷装置では、ヘッドで形成可能なドットの種類に応じて各画素当たりに必要な情報量は定まる。また、バンディングを防止する観点から扁平ドットの幅が短い方向の画素数が設定される。これに対し、扁平ドットの幅が長い方向の画素数は比較的自由度が残されている。本発明の印刷装置は、データ量が印刷速度に基づいて定められた所定値以下となるように、扁平ドットの幅が長い方向の画素数を設定することにより、所望の印刷速度を実現することができる。この結果、上述の印刷装置によれば、高画質な印刷を高速で実現することができる。
なお、印刷速度に基づく所定値は、印刷用のデータを準備する速度、印刷装置内で該データを転送する速度、扁平ドットの幅が短い方向の解像度などに応じて、実験的または解析的に設定することができる。この所定値を設定する基準となる印刷速度には、絶対的な基準は存在しないが、例えば、従来から提案されている印刷装置の印刷速度に基づいて使用者が許容しうる値を用いることができる。
本発明の印刷装置における扁平ドットは、先に説明した通り種々の態様で形成可能であるが、前記扁平ドットは、前記画素に対して前記ヘッドを複数回駆動して形成されるドットとすることが望ましい。
こうすれば、ノズルから一度に吐出可能なインク量の最大値に関わらず、種々のインク量のドットを形成可能となる。従って、各画素ごとにより広い範囲の階調値を表現可能となり、高画質な印刷を実現することができる。各主走査ごとに、一画素に対して前記ヘッドを複数回駆動することによって前記扁平ドットを形成するものとすれば、さらに望ましい。こうすれば、主走査方向に長い幅を有する扁平ドットを容易に形成することができる。また、各画素にドットを形成するために要する主走査の回数を増やすことなく、扁平ドットを形成することができるため、印刷速度の低下を招かない。
本発明の印刷装置において、
前記設定手段は、前記一の方向および他の方向の双方に極端な偏りなく誤差を拡散して行われる誤差拡散法により、前記解像度で構成された各画素ごとにドットのオン・オフを、設定する手段であるものとすることができる。
前記設定手段は、前記一の方向および他の方向の双方に極端な偏りなく誤差を拡散して行われる誤差拡散法により、前記解像度で構成された各画素ごとにドットのオン・オフを、設定する手段であるものとすることができる。
誤差拡散法とは、各画素ごとのドットのオン・オフを判定するハーフトーン処理の方法として周知の方法であり、ドットのオン・オフの判定結果に基づいて各画素ごとに生じた階調誤差を周囲の未処理の画素に拡散することによって、全体として階調誤差を極小にすることができるハーフトーン処理技術をいう。本発明の印刷装置では、ディザ法など、いかなるハーフトーン処理を適用することも可能であるが、誤差拡散法を適用すれば高画質な印刷を実現することができる。
しかも、上記印刷装置で適用する誤差拡散法は、一の方向および他の方向に極端な偏りなく誤差を拡散して行われる。先に説明した通り、本発明の印刷装置は、これらの二方向で解像度が異なっている。このように解像度が異なる場合に、該二方向にほぼ等しい数の画素で定義される領域に誤差を拡散すれば、誤差が拡散される領域がいずれか一方向に偏ってしまう。本実施例では、かかる解像度の差異を考慮して、二方向にほぼ均等な距離で定義される領域に画素を拡散することにより、いずれの方向にも誤差の変動が少ない高画質な画像を印刷可能としている。
なお、ここでいう「極端な偏り」や「ほぼ均等な距離」とは、誤差の拡散の程度が画質に影響を与える程度に応じて判断される。つまり、誤差が拡散される領域が二方向で偏ることにより、印刷された画像の誤差変動が該二方向で異なったものとなり、画質が劣化する場合には、「極端な偏り」が生じているものと認められる。逆に、二方向に厳密に均等な距離に誤差が拡散されていなくても、その偏りが画質に影響をあたえない程度のものであれば、「ほぼ均等な距離」に誤差が拡散されているものと認められる。
二方向で解像度が等しい場合に、良好な画質を与えるために適した誤差拡散の領域は周知である。かかる誤差拡散の領域を基準として、本発明の印刷装置における誤差拡散領域を設定することも可能である。つまり、一方向と他の方向の解像度の比に応じて、基準となる誤差拡散の領域を二方向のいずれかに拡張するのである。こうすれば、二方向で解像度が異なる場合でも、良好な画質を与える誤差拡散領域を設定することができる。
本発明の印刷装置においては、
印刷媒体ごとに解像度を記憶する記憶手段と、
前記印刷媒体の種類を検出する検出手段とを備え、
前記設定手段における解像度は、前記記憶手段を参照して印刷媒体に応じて設定される解像度であるものとすることもできる。
印刷媒体ごとに解像度を記憶する記憶手段と、
前記印刷媒体の種類を検出する検出手段とを備え、
前記設定手段における解像度は、前記記憶手段を参照して印刷媒体に応じて設定される解像度であるものとすることもできる。
印刷媒体にインクを吐出して形成されるドットの形状は、印刷媒体のインクの吸収特性に応じて相違する。同一のインク量でドットを形成した場合、インクがにじみやすい印刷媒体ではそうでない印刷媒体よりも面積の大きいドットが形成される。かかる印刷媒体では、画素の幅を広げてもドット間の隙間が生じにくくバンディングが生じにくい。逆に、かかる印刷媒体において比較的狭い幅の画素でドットを形成すれば、隣接するドット間ににじみや混色が生じ、画質を損ねることもある。このように高画質な印刷を実現するために適した画素の幅は印刷媒体に応じて異なっている。上記印刷装置では、印刷媒体の種類を検出し、印刷媒体ごとに設定された画素の幅でドットを形成することができる。従って、印刷媒体の種類に応じて、それぞれ高画質な印刷を実現することができる。
なお、本発明の印刷装置と主要部を同一にする発明として、本発明は以下に示すプリンタの発明として構成することもできる。
つまり、ドットを形成して印刷媒体上に画像を印刷するプリンタであって、
配列の一の方向の最大幅が他の方向の最大幅よりも有意に小さい扁平ドットを面積の異なる2種類以上のドットを形成可能なヘッドと、
該ヘッドを駆動して、ドットを所定の解像度で2次元的に配列して形成可能な駆動手段とを有し、
前記所定の解像度は、
前記一の方向においては、該方向のドットの間隔が、前記扁平ドットの該方向の最大幅を超えない解像度であり、
前記他の方向においては、前記一の方向の解像度よりも低く、該方向のドットの間隔が前記扁平ドットの該方向の最大幅を超えない解像度であるプリンタである。
つまり、ドットを形成して印刷媒体上に画像を印刷するプリンタであって、
配列の一の方向の最大幅が他の方向の最大幅よりも有意に小さい扁平ドットを面積の異なる2種類以上のドットを形成可能なヘッドと、
該ヘッドを駆動して、ドットを所定の解像度で2次元的に配列して形成可能な駆動手段とを有し、
前記所定の解像度は、
前記一の方向においては、該方向のドットの間隔が、前記扁平ドットの該方向の最大幅を超えない解像度であり、
前記他の方向においては、前記一の方向の解像度よりも低く、該方向のドットの間隔が前記扁平ドットの該方向の最大幅を超えない解像度であるプリンタである。
かかるプリンタは、扁平ドットの形状に基づいて設定された解像度からなるデータの供給を受けて、該解像度で画像を印刷することができる。従って、先に印刷装置の発明として説明した種々の作用に基づき、高画質な印刷を実現することができる。
本発明は、次に示す印刷方法として構成することもできる。
つまり、前記配列の一の方向の最大幅が他の方向の最大幅よりも有意に小さい扁平ドットを面積が最大のドットとして面積の異なる2種類以上のドットを形成可能なヘッドにより、所定の解像度で2次元的に配列された画素ごとにドットを形成して印刷媒体上に画像を印刷する印刷方法であって、
(a)前記画像のデータを前記解像度で設定する工程と、
(b)該設定されたデータに基づいて前記ヘッドを駆動して、前記解像度でドットを形成する工程とを備え、
前記解像度は、
前記一の方向においては、該方向のドットの間隔が、前記扁平ドットの該方向の最大幅を超えない範囲で設定され、
前記他の方向においては、該方向のドットの間隔が前記扁平ドットの該方向の最大幅を超えない範囲、かつ前記一の方向の解像度よりも低い範囲で設定された解像度である印刷方法である。
つまり、前記配列の一の方向の最大幅が他の方向の最大幅よりも有意に小さい扁平ドットを面積が最大のドットとして面積の異なる2種類以上のドットを形成可能なヘッドにより、所定の解像度で2次元的に配列された画素ごとにドットを形成して印刷媒体上に画像を印刷する印刷方法であって、
(a)前記画像のデータを前記解像度で設定する工程と、
(b)該設定されたデータに基づいて前記ヘッドを駆動して、前記解像度でドットを形成する工程とを備え、
前記解像度は、
前記一の方向においては、該方向のドットの間隔が、前記扁平ドットの該方向の最大幅を超えない範囲で設定され、
前記他の方向においては、該方向のドットの間隔が前記扁平ドットの該方向の最大幅を超えない範囲、かつ前記一の方向の解像度よりも低い範囲で設定された解像度である印刷方法である。
かかる印刷方法で印刷を行えば、先に印刷装置として説明した原理に基づき、高画質な印刷を実現することができる。なお、印刷装置で説明した種々の構成を上記印刷方法に適用可能であることはいうまでもない。
本発明は、その他にも種々の態様で構成可能である。例えば、以下に示すプリンタの設計方法として構成することもできる。
つまり、面積の異なる2種類以上のドットを形成可能なヘッドにより、2次元的に配列された画素にドットを形成して印刷媒体上に画像を印刷可能な印刷装置の設計方法であって、
(a) 前記配列の一の方向の最大幅が他の方向の最大幅よりも有意に小さい扁平ドットを面積が最大のドットとして、前記2種類以上のドットを設定する工程と、
(b)前記一の方向においては、ドットの間隔が前記扁平ドットの該方向の最大幅を超えない範囲で前記解像度を設定する工程と、
(c)前記他の方向においては、ドットの間隔が前記扁平ドットの該方向の最大幅を超えない範囲、かつ前記一の方向の解像度よりも低い範囲で前記解像度を設定する工程と、
を備える印刷装置の設計方法である。
かかる製造方法によれば、先に説明した本発明の印刷装置を設計することができる。同様にプリンタを設計することも可能である。また、設計は製造の最上流工程であるという観点からすれば、上記設計を行う工程と、該工程による設定に基づいて前記印刷装置を構成する工程とからなる印刷装置の製造方法として本発明を構成することもできる。
つまり、面積の異なる2種類以上のドットを形成可能なヘッドにより、2次元的に配列された画素にドットを形成して印刷媒体上に画像を印刷可能な印刷装置の設計方法であって、
(a) 前記配列の一の方向の最大幅が他の方向の最大幅よりも有意に小さい扁平ドットを面積が最大のドットとして、前記2種類以上のドットを設定する工程と、
(b)前記一の方向においては、ドットの間隔が前記扁平ドットの該方向の最大幅を超えない範囲で前記解像度を設定する工程と、
(c)前記他の方向においては、ドットの間隔が前記扁平ドットの該方向の最大幅を超えない範囲、かつ前記一の方向の解像度よりも低い範囲で前記解像度を設定する工程と、
を備える印刷装置の設計方法である。
かかる製造方法によれば、先に説明した本発明の印刷装置を設計することができる。同様にプリンタを設計することも可能である。また、設計は製造の最上流工程であるという観点からすれば、上記設計を行う工程と、該工程による設定に基づいて前記印刷装置を構成する工程とからなる印刷装置の製造方法として本発明を構成することもできる。
もちろん、上述の印刷装置および印刷方法をコンピュータにより実現する場合には、そのためのプログラムをコンピュータ読みとり可能に記録した記録媒体としての態様を採ることもできる。この場合の記憶媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置等、コンピュータが読取り可能な種々の媒体を利用できる。また、コンピュータにこれらのプログラムを通信経路を介して供給するプログラム供給装置としての態様も含む。
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき説明する。
(1)装置の構成:
図1は、本発明の実施例としての印刷装置の構成を示すブロック図である。図示するように、コンピュータ90にスキャナ12とカラープリンタ22とが接続されている。このコンピュータ90に所定のプログラムがロードされ実行されることによりプリンタ22と併せて印刷装置として機能する。このコンピュータ90はバス80により相互に接続されたCPU81、ROM82、RAM83および次の各部を備える。入力インターフェイス84は、スキャナ12やキーボード14からの信号の入力を司り、出力インタフェース85はプリンタ22へのデータの出力を司る。CRTC86はカラー表示可能なCRT21への信号出力を制御し、ディスクコントローラ(DDC)87はハードディスク16やフレキシブルドライブ15あるいは図示しないCD−ROMドライブとの間のデータの授受を制御する。ハードディスク16にはRAM83にロードされて実行される各種プログラムやデバイスドライバの形式で提供される各種プログラムなどが記憶されている。
(1)装置の構成:
図1は、本発明の実施例としての印刷装置の構成を示すブロック図である。図示するように、コンピュータ90にスキャナ12とカラープリンタ22とが接続されている。このコンピュータ90に所定のプログラムがロードされ実行されることによりプリンタ22と併せて印刷装置として機能する。このコンピュータ90はバス80により相互に接続されたCPU81、ROM82、RAM83および次の各部を備える。入力インターフェイス84は、スキャナ12やキーボード14からの信号の入力を司り、出力インタフェース85はプリンタ22へのデータの出力を司る。CRTC86はカラー表示可能なCRT21への信号出力を制御し、ディスクコントローラ(DDC)87はハードディスク16やフレキシブルドライブ15あるいは図示しないCD−ROMドライブとの間のデータの授受を制御する。ハードディスク16にはRAM83にロードされて実行される各種プログラムやデバイスドライバの形式で提供される各種プログラムなどが記憶されている。
このほか、バス80にはシリアル入出力インタフェース(SIO)88が接続されている。このSIO88はモデム18に接続されており、モデム18を介して公衆電話回線PNTに接続されている。コンピュータ90は、このSIO88およびモデム18を介して、外部のネットワークに接続されており、特定のサーバーSVに接続することにより、画像処理に必要なプログラムをハードディスク16にダウンロードすることも可能である。また、必要なプログラムをフレキシブルディスクFDやCD−ROMよりロードし、コンピュータ90に実行させることも可能である。
図2は本印刷装置のソフトウェアの構成を示すブロック図である。コンピュータ90では、所定のオペレーティングシステムの下で、アプリケーションプログラム95が動作している。オペレーティングシステムには、ビデオドライバ91やプリンタドライバ96が組み込まれており、アプリケーションプログラム95からはこれらのドライバを介して、プリンタ22に転送するための印刷データFNLが出力される。画像のレタッチなどを行うアプリケーションプログラム95は、スキャナ12から画像を読み込みこれに対して所定の処理を行いつつビデオドライバ91を介してCRTディスプレイ21に画像を表示している。スキャナ12から供給されるデータORGは、カラー原稿から読みとられ、レッド(R),グリーン(G),ブルー(B)の3色の色成分ごとの階調値で構成される。
このアプリケーションプログラム95が、印刷命令を発すると、コンピュータ90のプリンタドライバ96が、画像データおよび印刷条件をアプリケーションプログラム95から受け取り、これをプリンタ22が処理可能な信号に変換している。ここで入力される印刷条件としては、例えば印刷媒体の種類などが挙げられる。図2に示した例では、プリンタドライバ96の内部には、解像度変換モジュール97および解像度テーブルRTと、色補正モジュール98および色補正テーブルLUTと、ハーフトーンモジュール99と、ラスタライザ100とが備えられている。
解像度変換モジュール97は、アプリケーションプログラム95が扱っているカラー画像データの解像度、即ち単位長さ当たりの画素数を印刷条件に応じた解像度に変換する役割を果たす。解像度テーブルRTには、印刷条件に応じた解像度が記憶されている。解像度変換モジュール97は、解像度テーブルRTを参照して、印刷条件に応じた解像度を設定し、該解像度への変換を行う。こうして解像度変換された画像データはまだRGBの3色からなる画像情報である。
色補正モジュール98は、色補正テーブルLUTを参照して、各画素ごとに画像データの色成分をRGBから、プリンタ22が使用するシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色に変換する。カラー印刷を実行しないという印刷条件が指定されている場合には、色補正処理は行われない。
色補正されたデータは例えば256階調等の広い幅で階調値を有している。ハーフトーンモジュール99は、ドットを分散して形成することによりプリンタ22でかかる階調値を表現するためのハーフトーン処理を実行する。本実施例のプリンタ22は、後述する通りインク量を変えて吐出することにより、面積の異なる数種類のドットを形成可能な多値プリンタである。ハーフトーンモジュール99は、画像データの階調値に基づいて、各画素ごとにそれぞれのドットのオン・オフを判定する。こうして処理された画像データは、ラスタライザ100によりプリンタ22に転送すべきデータ順に並べ替えられて、最終的な印刷データFNLとして出力される。本実施例では、プリンタ22は印刷データFNLに従ってドットを形成する役割を果たすのみであり画像処理は行っていないが、もちろんこれらの処理をプリンタ22側で行うものとしても差し支えない。
次に、図3によりプリンタ22の概略構成を説明する。図示するように、このプリンタ22は、紙送りモータ23によって用紙Pを搬送する機構と、キャリッジモータ24によってキャリッジ31をプラテン26の軸方向に往復動させる機構と、キャリッジ31に搭載された印字ヘッド28を駆動してインクの吐出およびドット形成を行う機構と、これらの紙送りモータ23,キャリッジモータ24,印字ヘッド28および操作パネル32との信号のやり取りを司る制御回路40とから構成されている。
キャリッジ31をプラテン26の軸方向に往復動させる機構は、プラテン26の軸と並行に架設されキャリッジ31を摺動可能に保持する摺動軸34と、キャリッジモータ24との間に無端の駆動ベルト36を張設するプーリ38と、キャリッジ31の原点位置を検出する位置検出センサ39等から構成されている。
なお、このキャリッジ31には、黒インク(Bk)用のカートリッジ71とシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)の3色のインクを収納したカラーインク用カートリッジ72が搭載可能である。キャリッジ31の下部の印字ヘッド28には計4個のインク吐出用ヘッド61ないし64が形成されている。キャリッジ31に黒(Bk)インク用のカートリッジ71およびカラーインク用カートリッジ72を上方から装着すると、各インクカートリッジから吐出用ヘッド61ないし64へのインクの供給が可能となる。
インクの吐出およびドット形成を行う機構について説明する。図4はインク吐出用ヘッド28の内部の概略構成を示す説明図である。図示の都合上イエロについての図示を省略した。各色のヘッド61ないし64には、各色毎に48個のノズルNzが設けられておりピエゾ素子PEが配置されている。図4(a)に示すように、ピエゾ素子PEは、ノズルNzまでインクを導くインク通路68に接する位置に設置されている。ピエゾ素子PEは、周知のように、電圧の印加により結晶構造が歪み、極めて高速に電気−機械エネルギの変換を行う素子である。本実施例では、ピエゾ素子PEの両端に設けられた電極間に所定時間幅の電圧を印加することにより、図4(b)に示すように、ピエゾ素子PEが電圧の印加時間だけ伸張し、インク通路68の一側壁を変形させる。この結果、インク通路68の体積はピエゾ素子PEの伸張に応じて収縮し、この収縮分に相当するインクが、粒子Ipとなって、ノズルNzの先端から高速に吐出される。このインク粒子Ipがプラテン26に装着された用紙Pに染み込むことにより印刷が行われる。
図5は、インク吐出用ヘッド61〜64におけるインクジェットノズルNzの配列を示す説明図である。これらのノズルの配置は、各色ごとにインクを吐出する4組のノズルアレイから成っており、48個のノズルNzが一定のノズルピッチkで千鳥状に配列されている。各ノズルアレイの副走査方向の位置は互いに一致している。このように配列することにより、製造上、ノズルピッチkを小さく設定することができる。もちろん、各ノズルアレイに含まれる48個のノズルNzを一直線上に配置してもよい。
本実施例のプリンタ22は、各画素あたりにインク重量を変えることによって面積の異なる3種類のドットを形成することができる。図6に本実施例におけるドットの種類を示す。本実施例のプリンタ22は、各画素あたりにW1、W2、W3の3つの駆動波形を用いてドットを形成する。図6に示す通り、各駆動波形は、基準電圧から一旦電圧を低くし、その後高い電圧を印加して基準電圧に戻る波形をなしている。駆動波形W1,W2,W3は同一の波形である。本実施例のプリンタ22は、キャリッジ31の移動とともに、各画素あたりに3つの駆動波形が入る周期で出力する。
プリンタ22の制御装置40は、各画素ごとに形成すべきドットの種類に応じて駆動波形W1,W2,W3を選択的にオン・オフする。例えば、印刷データFNLがドットのオフを意味する値0である場合は、駆動波形W1,W2,W3の全てをオフにする。このときは図6に示す通り、ドットも形成されない。なお、図6中の枠PCは画素の大きさを示している。図中の左右方向が主走査方向に対応し、上下方向が副走査方向に対応している。
印刷データFNLが最も面積の小さいドット(以下、小ドットという)の形成を意味する値1である場合は、駆動波形W1のみをオンにする。このときは図6に示す通り、ノズルから1回で吐出されるインクによって面積の小さいドットが形成される。図中のハッチングを施した円が形成されるドットを意味している。印刷データFNLが中間の面積のドット(以下、中ドットという)の形成を意味する値2である場合は、駆動波形W2およびW3をオンにする。このときは図6に示す通り、ノズルから2回で吐出されるインクによって中間の面積のドットが形成される。なお、2回連続して吐出されたインク同士は、乾燥する前に融合し、図中に破線で示すように扁平なドットを形成する。
印刷データFNLが最大の面積のドット(以下、大ドットという)の形成を意味する値3である場合は、全ての駆動波形をオンにする。このときは図6に示す通り、ノズルから3回で吐出されるインクによって最大の面積のドットが形成される。なお、3回連続して吐出されたインク同士は、乾燥する前に融合し、図中に破線で示すように扁平なドットを形成する。プリンタ22では、最大の面積のドットが画素PCを十分覆うことができる程度の大きさとなるように画素のサイズ、即ち解像度が設定されている。この設定については、後述するが、図6に示す通り、画素の幅は、ドットの形状に合わせて副走査方向が主走査方向よりも短くなっている。
なお、本実施例では、駆動波形W1,W2,W3を等しいインク量を吐出するものとしたが、それぞれ異なるインク量を吐出するものとしてもよい。例えば、駆動波形W1,W2,W3で小、中、大のドットを形成可能としておけば、これらの組み合わせによって非常に多くの階調値を表現することが可能となる。また、中に相当するインク量のドットのみを用いて高解像度で印刷するプリンタと比較した場合、小のドットを使用することによって、多少解像度が粗い印刷モードにおいても、粒状感に優れた画像を印刷することが可能となる。
プリンタ22は、図6に示した通り、一画素当たりに複数の駆動波形を用いて面積の異なるドットを形成しているが、駆動波形自体を変更することによって吐出されるインク量を変更することも可能である。この原理について説明する。図7は、インクが吐出される際のノズルNzの駆動波形と吐出されるインクIpとの関係を示した説明図である。図7において破線で示した駆動波形が通常のドットを吐出する際の波形である。区間d2において一旦、基準電圧よりも低い電圧をピエゾ素子PEに印加すると、先に図4で説明したのとは逆にインク通路68の断面積を増大する方向にピエゾ素子PEが変形する。ノズルへのインクの供給速度には限界があるため、インク通路68の拡大に対してインクの供給量が不足する。この結果、図7の状態Aに示した通り、インク界面MeはノズルNzの内側にへこんだ状態となる。図7の実線で示す駆動波形を用い、区間d2に示すように電圧を急激に低くすると、インクの供給量はさらに不足した状態となる。従って、状態aで示す通りインク界面は状態Aに比べて大きく内側にへこんだ状態となる。
次に、ピエゾ素子PEに高い電圧を印加すると(区間d3)、先に説明した原理に基づいてインクが吐出される。このとき、インク界面があまり内側にへこんでいない状態(状態A)からは状態Bおよび状態Cに示すごとく大きなインク滴が吐出され、インク界面が大きく内側にへこんだ状態(状態a)からは状態bおよび状態cに示すごとく小さなインク滴が吐出される。このように、駆動電圧を低くする際(区間d1,d2)の変化率に応じて、ドット径を変化させることができる。図6に示した駆動波形をこのように異なる駆動波形で構成することにより、更に多くの面積でドットを形成可能にしてもよい。もちろん、一画素に対応する駆動波形の数を3つ以上に増やしても構わない。
次にプリンタ22の制御回路40の内部構成を説明する。図8は制御回路40の内部構成を示す説明図である。図示する通り、この制御回路40の内部には、CPU81,PROM42,RAM43の他、コンピュータ90とのデータのやりとりを行うPCインタフェース44と、紙送りモータ23、キャリッジモータ24および操作パネル32などとの信号をやりとりする周辺入出力部(PIO)45と、計時を行うタイマ46と、ヘッド61〜64にドットのオン・オフの信号を出力する駆動用バッファ47などが設けられており、これらの素子および回路はバス48で相互に接続されている。また、制御回路40には、所定周波数で駆動波形(図6参照)を出力する発信器51、および発信器51からの出力をヘッド61〜64に所定のタイミングで分配する分配器55も設けられている。
制御回路40は、コンピュータ90で処理された印刷データFNLを受け取り、これを一時的にRAM43に蓄え、所定のタイミングで駆動用バッファ47に出力する。駆動用バッファ47は、印刷データFNLに従って各画素ごとに駆動波形W1,W2,W3のオン・オフを決定し、分配出力器55に出力する。この結果に応じて、駆動波形W1,W2,W3が各ノズルに出力され、図6に示した種々のドットが形成される。
図5に示す通り、ヘッド61〜64は、キャリッジ31の搬送方向に沿って配列されているから、それぞれのノズル列が用紙Pに対して同一の位置に至るタイミングはずれている。図示を省略したが、分配出力器55の出力側にはディレイ回路が設けられており、ヘッド61〜64の各ノズルの位置のずれおよびキャリッジ31の搬送速度に応じ、各ノズルにより形成されるドットの主走査方向の位置が合うタイミングで駆動波形が出力されている。CPU41は、このヘッド61〜64の各ノズルの位置のずれを勘案した上で、必要なタイミングで各ドットのオン・オフの信号を駆動用バッファ47を介して出力し、各色のドットを形成している。また、各ヘッド61〜64のノズルが2列に形成されている点も同様に考慮してオン・オフの信号の出力が制御されている。
以上説明したハードウェア構成を有するプリンタ22は、紙送りモータ23により用紙Pを搬送しつつ(以下、副走査という)、キャリッジ31をキャリッジモータ24により往復動させ(以下、主走査という)、同時に印字ヘッド28の各色ヘッド61〜64のピエゾ素子PEを駆動して、各色インクの吐出を行い、ドットを形成して用紙P上に多色の画像を形成する。
なお、本実施例では、上述の通りピエゾ素子PEを用いてインクを吐出するヘッドを備えたプリンタ22を用いているが、他の方法によりインクを吐出するプリンタを用いるものとしてもよい。例えば、インク通路に配置したヒータに通電し、インク通路内に発生する泡(バブル)によりインクを吐出するタイプのプリンタに適用するものとしてもよい。
(2)ドット形成制御:
次に本実施例におけるドット形成の制御処理について説明する。ドット形成制御処理ルーチンの流れを図9に示す。これは、コンピュータ90のCPU81が実行する処理である。
次に本実施例におけるドット形成の制御処理について説明する。ドット形成制御処理ルーチンの流れを図9に示す。これは、コンピュータ90のCPU81が実行する処理である。
この処理が開始されると、CPU81は、画像データおよび印刷条件を入力する(ステップS100)。この画像データは、図2に示したアプリケーションプログラム95から受け渡されるデータであり、画像を構成する各画素ごとにR,G,Bそれぞれの色について、値0〜255の256段階の階調値を有するデータである。この画像データの解像度は、原画像のデータORGの解像度等に応じて変化する。印刷条件としては、印刷用紙の種類、カラー印刷を実行するか否かの指定、オーバラップ方式による印刷を実行するか否かの指定などがある。
CPU81は、入力された画像データの解像度をプリンタ22が印刷するための解像度に変換する(ステップS105)。本実施例では、印刷時の解像度が種々用意されている。図10に解像度の例を示す。図10(a)は最も標準で用いられる解像度を示している。図中の四角が画素である。このように主走査方向に長い画素が2次元的に配列されて形成される。つまり、主走査方向と副走査方向とで解像度は異なっている。本実施例では、主走査方向に360DPI(ドット・パー・インチ)、副走査方向に720DPIの解像度とした。図10(b)は標準よりも高い解像度を示している。図示する通り、各画素の大きさは図10(a)に示した標準の解像度時よりも大きくなる。本実施例では、主走査方向、副走査方向ともに図10(a)の倍の解像度とした。印刷条件として比較的ドットがにじみにくい印刷用紙を設定した場合には、このように高い解像度が設定される。
図10(c)に示す通り、主走査方向と副走査方向で同じ解像度となる設定も用意されている。かかる解像度は、各画素ごとに単一の種類のドットのみを用いる印刷モードが指定された場合に適用される。本実施例では、主走査方向に360DPI、副走査方向に360DPIの解像度とした。このようにプリンタ22は、印刷条件に応じて種々の解像度で印刷を実行することが可能である。これらの解像度は、予め用意された解像度テーブルを参照して設定される。なお、これらの解像度の設定方法については後述する。
解像度変換は種々の方法により行うことができる。本実施例では次の方法により解像度変換処理を実行している。画像データが上述の印刷解像度よりも低い場合には、線形補間により隣接する原画像データの間に新たなデータを生成することで解像度変換を行う。逆に画像データが印刷解像度よりも高い場合には、一定の割合でデータを間引くことにより解像度変換を行う。なお、画像データが印刷解像度に一致している場合には、かかる処理を行わずに印刷を実行する。
次に、CPU81は、色補正処理を行う(ステップS110)。色補正処理とはR,G,Bの階調値からなる画像データをプリンタ22で使用するC,M,Y,Kの各色の階調値のデータに変換する処理である。この処理は、R,G,Bのそれぞれの組み合わせからなる色をプリンタ22で表現するためのC,M,Y,Kの組み合わせを予め記憶した色補正テーブルLUTを用いて行われる。色補正テーブルLUTを用いて色補正する処理自体については、公知の種々の技術が適用可能であり、例えば補間演算による処理が適用できる。この処理により画像データは、C,M,Y,Kの各色ごとに256階調を有するデータに変換される。
こうして色補正された画像データに対して、CPU81は多値化処理を行う(ステップS200)。多値化とは、原画像データの階調値(本実施例では256階調)をプリンタ22が各画素ごとに表現可能な階調値に変換することをいう。図6に示した通り、本実施例では「ドットの形成なし」「小ドットの形成」「中ドットの形成」「大ドットの形成」の4階調への多値化を行っている。もちろん、プリンタ22が形成可能なドットの種類に応じて更に多くの階調への多値化を行うものとしてもよい。本実施例における多値化処理の内容を図11を用いて説明する。
本実施例では、多値化処理としていわゆる誤差拡散法による処理を適用している。この処理が開始されると、CPU81は画像データCDを入力する(ステップS205)。ここで入力される画像データCDとは、色補正処理を施され、C,M,Y,Kの各色につき256階調を有するデータである。
この画像データに対し、CPU81は拡散誤差補正データCDXの生成を行う(ステップS210)。誤差拡散処理は処理済みの画素について生じた濃度誤差をその画素の周りの画素に所定の重みを付けて予め配分しておくので、ステップS210では該当する誤差分を読み出し、これを今から処理しようと着目している画素に反映させるのである。着目している画素PPに対して、周辺のどの画素にどの程度の重み付けで、この誤差を配分するかを、図12に例示した。着目している画素PPに対して、キャリッジ31の走査方向で数画素、および用紙Pの搬送方向後ろ側の隣接する数画素に対して、濃度誤差が所定の重みを付けて配分される。
本実施例では、先に説明した通り、種々の解像度で印刷を実行することができる。本実施例では、高画質な印刷を実現するため、解像度ごとに異なる配分で誤差を拡散している。図12(a)は、主走査方向と副走査方向が等しい解像度の場合の誤差拡散の領域を示している。図10(c)に示した解像度での印刷時に適用される。図12(b)は主走査の解像度が副走査方向の解像度よりも低い場合の誤差拡散の領域を示している。図10(a)に示した解像度での印刷時に適用される。
主走査方向の解像度が副走査方向の解像度よりも低い場合に、図12(a)に示した重みによって誤差を拡散した場合、誤差が拡散される領域は、主走査方向に広くなる。各画素が主走査方向に長い形状を有しているからである。逆にいえば、副走査方向には主走査方向に比べて狭い領域にしか誤差が拡散されなくなる。この結果、主走査方向に比べて副走査方向の濃度変動が大きくなり、画質が低下する。従って、本実施例では、主走査方向の解像度が副走査方向よりも低い場合には、図12(b)に示すように副走査方向への拡散領域を増大することによって、主走査方向と副走査方向で極端な偏りなく誤差を拡散している。図10にへ示さなかったが、主走査方向の解像度が副走査方向よりも高い場合には、逆に図12(c)に示すように主走査方向への拡散流域を拡張することが望ましい。
こうして生成された拡散誤差補正データCDXと第1の閾値TH0との大小を比較し(ステップS215)、データCDXが閾値TH0以上である場合には、多値化結果を表す値RDに大ドットの形成を意味する値3を代入する(ステップS220)。閾値TH0はこのように大ドットのオン・オフを判定する基準となる値である。この閾値TH0は、いずれの値に設定することもできるが、本実施例では大ドットの濃度評価値と中ドットの濃度評価値との平均値に設定されている。濃度評価値とは、各ドットで表現可能な濃度を画像データの階調値に対応させて表した値である。
補正データCDXが第1の閾値TH0よりも小さい場合には、次に補正データCDXと第2の閾値TH1との大小を比較する(ステップS225)。補正データCDXが第2の閾値TH1以上である場合には、多値化結果を表す値RDに中ドットの形成を意味する値2を代入する(ステップS230)。閾値TH1もいかなる値にも設定可能であるが、本実施例では中ドットの濃度評価値と小ドットの濃度評価値との平均値に設定されている。
補正データCDXが第2の閾値TH1よりも小さい場合には、次に補正データCDXと第3の閾値TH2との大小を比較する(ステップS235)。補正データCDXが第3の閾値TH2以上である場合には、多値化結果を表す値RDに小ドットの形成を意味する値1を代入する(ステップS240)。閾値TH2もいかなる値にも設定可能であるが、本実施例では小ドットの濃度評価値の半分の値に設定されている。
補正データCDXが第2の閾値TH2よりも小さい場合には、いずれのドットも形成すべきでないと判断して、多値化結果を表す値RDにドットのオフを意味する値0を代入する(ステップS245)。以上の処理により、各画素について「ドットのオフ」「小ドットの形成」「中ドットの形成」「大ドットの形成」のいずれかの状態が割り当てられ、4値化が行われたことになる。本実施例では以上の処理により4値化を行っているが、形成可能なドットの種類が増え、更に多くの多値化を行う必要がある場合には、上述の閾値を増やすことにより同様に処理可能である。
次に、CPU81は、多値化により生じた誤差Errを計算し、その誤差を周辺の画素に拡散する処理を実行する(ステップS250)。誤差Errとは多値化後の各ドットにより表現される濃度評価値から原画像データの階調値を引いた値をいう。例えば、原画像データにおける階調値255の画素を考え、大ドットの形成による濃度の評価値を階調値255相当、中ドットの形成による濃度の評価値を階調値128相当とする。ドットを形成しない場合の濃度評価値は階調値0相当である。この画素について、大ドットを形成するものと判定された場合は、原画像データの階調値と表現される濃度評価値は共に値255で一致しているため誤差Err=0である。中ドットを形成するものと判定された場合はErr=128−255=−127の誤差を生じる。また、ドットが形成されなければ、誤差Err=−255となる。
こうして演算された誤差Errは図12に示した割合で周辺の画素に拡散される。例えば、着目している画素PPにおいてErr=4の誤差が算出された場合、隣の画素P1には誤差の1/4である階調値1に相当する誤差が拡散される。その他の画素についても同様に図12で示した割合で誤差が拡散される。こうして拡散された誤差が、先に説明したステップS210で画像データCDに反映され、拡散誤差補正データCDXが生成されるのである。以上の繰り返しにより、全画素分の処理が終了すると(ステップS255)、CPU81は誤差拡散による多値化処理を終了し、ドット形成制御処理ルーチン(図10)に戻る。以上の処理により、各画素について結果値RDに値0〜3までのいずれかが割り当てられる。
以上の処理により、一つの画素についていずれのドットを形成すべきかの判定がなされた。CPU81は、全画素について処理が終了するまで(ステップS290)、ステップS220〜S280までの処理を繰り返す。全画素について処理が終了すると、多値化処理ルーチンを一旦終了してドット形成制御処理ルーチンに戻る。
なお、多値化処理は種々の方法が適用可能である。例えば、周知の技術であるディザ法による多値化を行うものとしても構わない。また、誤差拡散法を図11とは異なる態様で適用するものとしてもよい。さらに、小ドット、中ドット、大ドットの一部のドットをディザ法により判定し、残余のドットを誤差拡散法により判定するものとしてもよい。
次に、CPU81はラスタライズを行う(ステップS300)。これは、1ラスタ分のデータをプリンタ22のヘッドに転送する順序に並べ替えることをいう。プリンタ22がラスタを形成する記録方法には種々のモードがある。最も単純なのは、ヘッドの1回の往運動で各ラスタのドットを全て形成するモードである。この場合には1ラスタ分のデータを処理された順序でヘッドに出力すればよい。他のモードとしては、いわゆるオーバラップがある。例えば、1回目の主走査では各ラスタのドットを例えば1つおきに形成し、2回目の主走査で残りのドットを形成する記録方法である。この場合は各ラスタを2回の主走査で形成することになる。かかる記録方法を採用する場合には、各ラスタのドットを1つおきにピックアップしたデータをヘッドに転送する必要がある。このようにプリンタ22が行う記録方法に応じてヘッドに転送すべきデータを作成するのが上記ステップS300での処理である。ステップS100で入力した印刷条件により指定された内容に基づいて実行すべきラスタライズの内容が選択される。こうしてプリンタ22が印刷可能なデータが生成されると、CPU81は該データを出力し、プリンタ22に転送する(ステップS310)。プリンタ22は、このデータを受け取って各画素にそれぞれのドットを形成して画像を印刷する。
ここで、本実施例のプリンタ22の解像度の設定について説明する。図13は解像度を設定する工程を示すフローチャートである。解像度を設定する工程は、プリンタ22の設計工程またはプリンタ22の製造の上流工程とも言うこともできる工程である。この工程では、まず最大濃度のドットサイズを設定する(ステップS10)。最大濃度とは言い換えればインク量が最大、または面積が最大のドットである。プリンタ22で一画素にドットを形成するために使用される駆動波形の数を変更すれば、種々のサイズのドットを形成可能である。このように種々形成可能なドットから、いずれのドットを最大濃度のドットとするかを選択する。選択は様々な基準によって行うことができる。階調表現を豊かにするという観点からは、大きいサイズのドットを最大濃度ドットとすることが好ましい。一方、画像の粒状感という観点からはドットのサイズは小さい方が好ましい。このように画質への相反する影響の双方を考慮しつつ、最大濃度ドットを選択することができる。本実施例では、先に図6に示した大ドットを最大濃度ドットとして選択した。
こうして最大濃度ドットが選択されると、次に、該ドットのサイズに基づいて副走査方向の解像度を設定する(ステップS20)。図6に示す通り、ドットのサイズが大きくなるにつれて該ドットは主走査方向に長い扁平なドットとなる。このようなドットの形状を踏まえて、副走査方向に隣接するドット間に隙間が生じないように副走査方向の解像度を設定するのである。図14に解像度とドットの形状との関係について示した。
図中の実線の楕円が最大濃度ドットを意味し、破線の四角が画素を意味している。副走査方向に隣接するドット間に隙間ができないようにするためには、副走査方向のドットピッチPSが該方向のドットの幅WDSよりも狭い範囲で設定されることが必要となる。副走査方向の解像度を決めればドットピッチPSは一義的に定まるから、上述の条件が達成されるように副走査方向の解像度を設定する必要がある。なお、実際には副走査方向のドットの形成位置にずれが生じる可能性があるため、ドットピッチPSが幅WDSよりも十分小さくなるように設定することが望ましい。ステップS20では、かかる観点から副走査方向の解像度を設定する。
副走査方向の解像度が設定されると、次に主走査方向の解像度を設定する(ステップS30)。主走査方向の解像度は、最大濃度ドットのサイズよびデータの転送量に基づいて設定する。ドットのサイズを考慮するのは、副走査方向と同様の理由に基づくものである。かかる観点からは、主走査方向のドットピッチPMが該方向のドットの幅WDMよりも十分小さくなる範囲で主走査方向の解像度が設定される。解像度が低くなれば、ドットピッチPMが大きくなる。従って、ドットのサイズを考慮することによって主走査方向の解像度の下限値が定まる。
データの転送量は画像の印刷速度を確保する観点から、次の形で考慮する。まず目標となる印刷速度を設定する。本実施例では、主走査方向および副走査方向にそれぞれ720DPI(ドット・パー・インチ)の解像度で印刷する2値プリンタの印刷速度を目標値として選択した。かかるプリンタでは、印刷時に各画素当たりについてドットのオン・オフを示す2値データが供給される。1平方インチあたりの印刷に必要となるデータ量は518,400ビットとなる。図15にこれらのデータの関係を示した。
印刷速度に影響する要素の一つとして、プリンタへのデータの転送量が挙げられる。コンピュータ90からプリンタ22へのデータの転送速度は比較的制限されているため、データの転送量が増えると、その分印刷速度は低下する。従って、本実施例のプリンタにおいて印刷速度の目標値を実現するためには、データ量を518,400ビット程度に抑える必要がある。
プリンタ22は、各画素ごとに4値の濃度を表現可能である。つまり、ドットの形成状態を特定するためには、各画素ごとに2ビットが必要となる。従って、図15に示す通り、副走査方向の解像度が360DPIに設定されている場合には主走査方向の解像度を720DPI以下とし、副走査方向の解像度が720DPIに設定されている場合には主走査方向の解像度を360DPI以下にすれば、データ量を上述の値とすることができる。このように印刷速度を考慮することにより、副走方向の解像度に応じて主走査方向の解像度の上限値を設定することができる。
なお、印刷速度には各ラスタの形成に要する主走査の回数、即ちパス数も影響を与える。パス数が増えれば、その分印刷の効率が低下し、印刷速度が低下するからである。パス数の下限値は各ラスタ当たりに必要となるデータ量に基づいて設定される。図15に示す通り、主走査方向および副走査方向に720DPIの解像度で印刷する場合のパス数が1回である場合を考える。かかるパス数は1回の主走査が完了するまでに1ラスタ分のデータがプリンタに転送されることによって実現される。つまり、1回の主走査が完了するまでに、プリンタには各ノズルに1インチ当たり720ビットのデータが転送される。
各画素あたりに2ビットを要する本実施例のプリンタの場合、主走査方向の解像度を720DPIとすれば、プリンタには各ノズルに1インチ当たり1440ビットのデータの転送が必要となる。かかるデータの転送は1回の主走査を実行する間に完了することはできない。従って、主走査方向の解像度が720DPIの場合はパス数は2回となる。主走査方向の解像度が360DPIであれば、プリンタには各ノズルに1インチあたり720ビットのデータを転送すればよいため、パス数は1回となる。このようにパス数も考慮すれば、主走査方向の解像度の上限値はさらに小さくなる。もっとも、いわゆるオーバラップ記録を行う場合など、画質を向上する観点からパス数を増やす場合もあるため、主走査方向の解像度の設定において必ずしも考慮する必要はない。
なお、同じインク量でドットを形成した場合でも、そのサイズは印刷用紙のインクの吸収特性によって相違する。いわゆる普通紙のように比較的にじみやすい印刷用紙では、ドットのサイズは大きくなる。インクの吸収性に優れる印刷用紙では、ドットのサイズは比較的小さくなる。両者では当然、印刷された画像の画質も異なったものとなる。本実施例では、インクの吸収特性の相違を考慮して、図10に示した通り印刷用紙ごとに図13の工程に従って、解像度を設定している。この際、画質が異なれば印刷速度に対するユーザの要求も異なるため、本実施例では印刷用紙ごとに印刷速度の目標値を変えている。
本実施例では、以上で説明した通りドットの幅を重視して副走査方向の解像度を設定し、印刷速度を考慮して主走査方向の解像度を設定する。つまり、副走査方向と主走査方向とで異なる基準によって解像度を設定するのである。
以上で説明した本実施例の印刷装置は、扁平なドットを用いることにより、各画素ごとに幅広い範囲の濃度を表現することができる。従って、階調表現に優れた高画質な印刷を実現することができる。
また、本実施例の印刷装置は、このような扁平ドットの形状を考慮した解像度で印刷を実行する。具体的には、ドットの幅が小さい副走査側では高い解像度、ドット幅が大きい主走査側では低い解像度で印刷を行う。こうすることにより、第1に副走査方向に隣接するドット同士を十分に重ねて形成することができ、ドットの形成位置にずれがある場合でもバンディングの発生を抑制することができる。第2に主走査方向の解像度を副走査方向よりも低くすることによって、主走査方向に隣接する扁平なドット同士が必要以上に重なり合うことを回避でき、ドット同士の重なり部分におけるにじみや混色を回避することができる。第3に主走査方向の解像度を、ドットの形状のみならず印刷速度、即ち画像全体の画素数を考慮して設定することにより、プリンタ22に供給されるデータ量が増えることを回避でき、印刷速度の低下を回避することができる。これらの効果に基づき、本実施例の印刷装置は、高画質な印刷を高速に実行することができる。
以上の実施例では主走査方向に長い扁平なドットを形成するプリンタ22を例にとって説明したが、副走査方向に長い扁平ドットを形成するプリンタに適用するものとしてもよい。この場合には、図13の解像度設定工程は、ステップS20の方法で主走査方向の解像度を設定し、ステップS30の方法で副走査方向の解像度を設定することになる。
また、図19に示した2つに分離したドットや、図20に示した面積階調を実現するドットなどにおいても、これらのドットを扁平ドットとみなして本発明を適用することが可能である。
上述の実施例ではピエゾ素子を備えるインクジェットプリンタを例に説明したが、いわゆるノズルに備えたヒータに通電することによりインク内に生じるバブルでインクを吐出するタイプのプリンタを始め種々のプリンタその他の印刷装置に適用可能である。
以上、本発明の種々の実施例について説明してきたが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の形態による実施が可能である。例えば、上記実施例で説明した種々の制御処理は、その一部または全部をハードウェアにより実現してもよい。
12...スキャナ
14...キーボード
15...フレキシブルドライブ
16...ハードディスク
18...モデム
22...カラープリンタ
23...モータ
24...キャリッジモータ
26...プラテン
28...印字ヘッド
28...インク吐出用ヘッド
31...キャリッジ
32...操作パネル
34...摺動軸
36...駆動ベルト
38...プーリ
39...位置検出センサ
40...制御装置
45...周辺入出力部
46...タイマ
47...駆動用バッファ
48...バス
51...発信器
55...分配出力器
61〜64...インク吐出用ヘッド
68...インク通路
71...カートリッジ
72...カラーインク用カートリッジ
80...バス
84...入力インターフェイス
85...出力インタフェース
87...ディスクコントローラ
88...シリアル入出力インタフェース
90...コンピュータ
91...ビデオドライバ
95...アプリケーションプログラム
96...プリンタドライバ
97...解像度変換モジュール
98...色補正モジュール
99...ハーフトーンモジュール
100...ラスタライザ
14...キーボード
15...フレキシブルドライブ
16...ハードディスク
18...モデム
22...カラープリンタ
23...モータ
24...キャリッジモータ
26...プラテン
28...印字ヘッド
28...インク吐出用ヘッド
31...キャリッジ
32...操作パネル
34...摺動軸
36...駆動ベルト
38...プーリ
39...位置検出センサ
40...制御装置
45...周辺入出力部
46...タイマ
47...駆動用バッファ
48...バス
51...発信器
55...分配出力器
61〜64...インク吐出用ヘッド
68...インク通路
71...カートリッジ
72...カラーインク用カートリッジ
80...バス
84...入力インターフェイス
85...出力インタフェース
87...ディスクコントローラ
88...シリアル入出力インタフェース
90...コンピュータ
91...ビデオドライバ
95...アプリケーションプログラム
96...プリンタドライバ
97...解像度変換モジュール
98...色補正モジュール
99...ハーフトーンモジュール
100...ラスタライザ
Claims (9)
- ドットを所定の解像度で2次元的に配列された画素ごとに形成して印刷媒体上に画像を印刷する印刷装置であって、
前記配列の一の方向の最大幅が他の方向の最大幅よりも有意に小さい扁平ドットを形成可能なヘッドと、
前記画像のデータを前記解像度で設定する設定手段と、
該設定されたデータに基づいて前記ヘッドを駆動して、前記解像度でドットを形成するドット形成手段とを備え、
前記解像度は、
前記一の方向においては、該方向のドットの間隔が、前記扁平ドットの該方向の最大幅を超えない範囲で設定され、
前記他の方向においては、該方向のドットの間隔が前記扁平ドットの該方向の最大幅を超えない範囲、かつ前記一の方向の解像度よりも低い範囲で設定された解像度である印刷装置。 - 前記ヘッドは、前記扁平ドットを面積が最大のドットとして、面積の異なる2種類以上のドットを形成可能なヘッドである請求項1記載の印刷装置。
- 請求項1記載の印刷装置であって、
前記ヘッドを一方向に往復動する主走査手段と、
該往復動とは交差する方向に前記印刷媒体を前記ヘッドに対して相対的に移動する副走査手段とを備え、
前記往復動の方向は、前記他の方向であり、
前記相対的な移動の方向は、前記一の方向である印刷装置。 - 請求項1記載の印刷装置であって、
前記他の方向における解像度は、さらに、全画素のドットのオン・オフを特定するデータ量が印刷速度に基づいて定められた所定値以下となる範囲で設定された解像度である印刷装置。 - 前記扁平ドットは、一画素に対して前記ヘッドを複数回駆動して形成されるドットである請求項1記載の印刷装置。
- 前記設定手段は、前記一の方向および他の方向の双方に極端な偏りなく誤差を拡散して行われる誤差誤差拡散法により、前記解像度で構成された各画素ごとにドットのオン・オフを、設定する手段である請求項1記載の印刷装置。
- 請求項1記載の印刷装置であって、
印刷媒体ごとに解像度を記憶する記憶手段と、
前記印刷媒体の種類を検出する検出手段とを備え、
前記設定手段における解像度は、前記記憶手段を参照して印刷媒体に応じて設定される解像度である印刷装置。 - ドットを形成して印刷媒体上に画像を印刷するプリンタであって、
配列の一の方向の最大幅が他の方向の最大幅よりも有意に小さい扁平ドットを面積の異なる2種類以上のドットを形成可能なヘッドと、
該ヘッドを駆動して、ドットを所定の解像度で2次元的に配列して形成可能な駆動手段とを有し、
前記所定の解像度は、
前記一の方向においては、該方向のドットの間隔が、前記扁平ドットの該方向の最大幅を超えない解像度であり、
前記他の方向においては、前記一の方向の解像度よりも低く、該方向のドットの間隔が前記扁平ドットの該方向の最大幅を超えない解像度であるプリンタ。 - 前記配列の一の方向の最大幅が他の方向の最大幅よりも有意に小さい扁平ドットを面積が最大のドットとして面積の異なる2種類以上のドットを形成可能なヘッドにより、所定の解像度で2次元的に配列された画素ごとにドットを形成して印刷媒体上に画像を印刷する印刷方法であって、
(a)前記画像のデータを前記解像度で設定する工程と、
(b)該設定されたデータに基づいて前記ヘッドを駆動して、前記解像度でドットを形成する工程とを備え、
前記解像度は、
前記一の方向においては、該方向のドットの間隔が、前記扁平ドットの該方向の最大幅を超えない範囲で設定され、
前記他の方向においては、該方向のドットの間隔が前記扁平ドットの該方向の最大幅を超えない範囲、かつ前記一の方向の解像度よりも低い範囲で設定された解像度である印刷方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003361725A JP2004034720A (ja) | 2003-10-22 | 2003-10-22 | 印刷装置、印刷方法およびプリンタ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003361725A JP2004034720A (ja) | 2003-10-22 | 2003-10-22 | 印刷装置、印刷方法およびプリンタ |
Related Parent Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP02850099A Division JP3503511B2 (ja) | 1999-02-05 | 1999-02-05 | 印刷装置、印刷方法およびプリンタ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2004034720A true JP2004034720A (ja) | 2004-02-05 |
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Family Applications (1)
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JP2003361725A Pending JP2004034720A (ja) | 2003-10-22 | 2003-10-22 | 印刷装置、印刷方法およびプリンタ |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2004034720A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012054845A (ja) * | 2010-09-03 | 2012-03-15 | Dainippon Printing Co Ltd | 解像度を自動的に選択する機能を備えたrip装置 |
US8210645B2 (en) | 2007-10-01 | 2012-07-03 | Brother Kogyo Kabushiki Kaisha | Image forming apparatus |
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-
2003
- 2003-10-22 JP JP2003361725A patent/JP2004034720A/ja active Pending
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