JP2004033106A - 退色抑制剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】飲食物が熱、酸素又は光に晒されることにより生じる色素の退色現象、特に太陽光及び人工光に照射されることによって生じる退色現象に対して優れた抑制作用を有する退色抑制剤及び退色抑制方法を提供する。
【解決手段】緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆よりなる群から選択される豆の抽出物、特に水、極性有機溶媒またはこれらの混合液による上記豆の抽出物を退色抑制剤として用いる。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は退色抑制剤及び退色抑制方法に関する。より詳細には本発明は天然色素を含む製品、特に色素製剤及び飲食物の、光や熱による退色を防止するのに有用な退色抑制剤及び退色抑制方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、飲食物の着色には広く合成色素並びに天然色素が用いられており、特に近年ではその安全で健康なイメージからことさら天然色素が多く用いられるようになっている。
【0003】
しかしながら、天然色素は、一般に合成色素に比較すると不安定であり、例えば光、酸素または熱などの影響を受けて比較的容易に退色又は変色する傾向がある。このためこれらの天然色素を含む飲食物、化粧品、医薬部外品並びに医薬品等の各種製品は、製造、流通及び保存などの各段階で熱や光の影響を受けて徐々に退色又は変色し、商品価値が著しく低下するという問題を含んでいる。特に近年のペットボトルなどの透明容器入り飲料の普及並びに商品の低着色化指向に伴って、商品陳列における蛍光灯照射や野外における太陽光照射、または熱によっても退色しにくい色素(耐光性色素、耐熱性色素)が求められている。
【0004】
このため、従来から、不安定な色素の変色や退色を防止する方法に関して多くの提案がなされている。例えば、ルチン(特開平3−77880号公報)、ローズマリーやセージの抽出物(特開昭57−102955号公報)、モリン(特開昭54−52740号公報)、カフェー酸やクロロゲン酸(特開昭58−065761号公報)などが色素の退色抑制剤として提案されている。
【0005】
しかしながら、上記のような従来提案されている退色抑制剤には種々の問題も指摘されている。例えばルチン等のフラボノール類は水に対する溶解性が低いため使いづらく、またそれを改善するためには煩雑な配糖体調整操作が必要である。また、その他の退色抑制剤についても、原料に起因して特有の色または香りを有するために、添加量や用途などに制約が生じるなど、従来の退色防止技術はそれなりの成果を挙げてはいるものの、必ずしも満足できるものではなかった。
【0006】
一方、マメ科植物の緑豆(種子)に関して、その皮(Food and Chemical Toxicology 1999, 37, 1055−1061)や香気成分(J.Agric.Food.Chem. 2000, 48, 4290−4293;J.Agric.Food.Chem. 2000, 48, 4817−4820)、並びに緑豆のエタノール抽出物中のフラボノイドに抗酸化活性があること(Cosmet.Toiletries 1998, 113, 71−74)が報告されている。しかしながら、それらの成分の極性は低く、また抗酸化活性も弱い。またマメ科植物の金時豆、黒豆、おたふく豆(いずれも種子)(以上特開昭56−113284号公報)、インゲン豆(本金時種子:Phaseolus vulgaris L.)(日本食品工業学会誌第1巻第7号、475−480頁、1994年;JAOCS, Vol.74, No.8 (1997);J.Agric.Food.Chem. 2000, 48, 4817−4820)、小豆(種子)(Agric.Biol.Chem., 54(10) 2499−2540, 1990;J.Agric.Food.Chem. 2000, 48, 4817−4820;特開昭56−113284号公報)、レンズ豆(種子)(米国特許第5762936号公報)にも抗酸化作用があることが知られている。
【0007】
しかしながら、上記の文献は単に抗酸化作用について言及するのみで、各種の豆類の抽出物に退色抑制作用があることについては全く記載されていない。また、現在食品業界において、酸化防止作用と退色抑制作用とが一義的に関連する性質ではないことも周知となっている。例えば、酸化防止剤として周知なビタミンCが、逆にアントシアニン系の天然色素の退色を促進することはよく知られている事実である(特開昭58−065761号公報、特開昭62−003775号公報、「天然着色料ハンドブック」(株)光琳 (1979)pp.277,288−289,299)。また、ハマメリタンニンは、全く酸化防止作用がないにも関わらず退色防止作用を有することが知られている(特開平06−207172号公報)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、色素、特に天然色素の退色を有意に抑制することのできる退色抑制剤を提供することである。具体的には、本発明は第1に、安全性が高く水溶性で食品等に好適に使用できる退色抑制剤を提供することを目的とする。第2に、食品等の本来の香味や色に対する影響の少ない退色抑制剤を提供することを目的とする。第3に、特に光や熱の影響を受けて生じる退色現象に対して有効な退色抑制剤を提供することを目的とする。
【0009】
また本発明は、色素、特に天然色素の退色が有意に抑制された着色製品、特に色素製剤及び飲食物を提供することを目的とする。さらに本発明は色素、特に天然色素の退色を有意に抑制することのできる退色抑制方法を提供する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねていたところ、緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆といった特定の豆類の抽出物が、アントシアニン系色素やカロチノイド系色素などの天然色素の退色を有意に抑制できることを見いだし、天然色素の退色抑制剤として有効に利用できることを確認した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
【0011】
すなわち、本発明は、下記(1)〜(4)に掲げる、豆類の抽出物を有効成分として含有することを特徴とする退色抑制剤である。
(1)緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆よりなる群から選ばれる少なくとも1種の豆の抽出物を有効成分として含有することを特徴とする色素の退色抑制剤。
(2)緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆よりなる群から選ばれる少なくとも1種の豆を水、極性有機溶媒またはこれらの混合液で抽出して得られる抽出物を有効成分として含有することを特徴とする(1)記載の色素の退色抑制剤。
(3)退色抑制の対象とする色素が天然色素である(1)または(2)記載の色素の退色抑制剤。
(4)退色抑制の対象とする色素がアントシアニン系色素またはカロチノイド系色素である(1)乃至(3)のいずれかに記載の色素の退色抑制剤。
【0012】
さらに本発明は、下記に掲げる、上記(1)または(2)に記載する退色抑制剤を含有する着色製品である。
(5)上記(1)または(2)に記載する退色抑制剤を含有する、退色が抑制された色素製剤。
(6)天然色素の製剤である上記(5)に記載する退色が抑制された色素製剤。
(7)アントシアニン系色素またはカロチノイド系色素の色素製剤である上記(6)に記載する退色が抑制された色素製剤。
(8)上記(1)または(2)に記載する退色抑制剤を含有する、退色が抑制された着色飲食物。
(9)天然色素で着色されてなる上記(8)に記載する退色が抑制された着色飲食物。
(10)アントシアニン系色素またはカロチノイド系色素で着色されてなる上記(9)に記載する退色が抑制された着色飲食物。
【0013】
さらにまた本発明は、下記に掲げる退色抑制方法である。
(11)色素または色素を含む組成物を緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆よりなる群から選ばれる少なくとも1種の豆の抽出物と共存させることを特徴とする、当該色素または色素を含む組成物の退色抑制方法。
(12)豆の抽出物が緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆よりなる群から選ばれる少なくとも1種の豆を水、極性有機溶媒またはこれらの混合液で抽出して得られるものである、(11)記載の退色抑制方法。
(13)退色抑制の対象とする色素が天然色素である(11)または(12)に記載の退色抑制方法。
(14)退色抑制の対象とする色素がアントシアニン系色素またはカロチノイド系色素である(11)または(12)に記載の退色抑制方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
(1)退色抑制剤
本発明の退色抑制剤は、有効成分として豆類の抽出物を含有することを特徴とする。
【0015】
ここで本発明が対象とする豆類としては、具体的には緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆を挙げることができる。好ましくは緑豆、小豆、黒豆、うずら豆、及び金時豆である。
【0016】
抽出に用いるこれらの豆類は、生豆であっても、また乾燥処理或いは焙煎処理した豆であってもよい。またその形態も特に限定されず、そのままの形態(全実)、表皮を剥離したもの(内実)、またはそのまま(全実)若しくは表皮を剥離した内実を挽割りした物または粉砕した物であってもよい。特に、緑豆の場合は、表皮を剥離した内実を用いることが好ましい。なお、緑豆の表皮を剥離した内実を挽割りにしたものは、当業界においてムングダールと称され、商業的に入手することができる。
【0017】
これらの豆類の抽出に使用される溶媒は、特に制限されず、水、極性有機溶媒または非極性有機溶媒のいずれであってもよいが、好ましくは水、極性有機溶媒またはこれらの混合物(含水極性有機溶媒)である。ここで極性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の炭素数1〜6、好ましくは炭素数2〜4の低級アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール;またはアセトン、酢酸エチル、酢酸メチルなどを例示することができる。抽出溶媒として、好ましくは水、低級アルコール及びこれらの混合物(含水アルコール)であり、より好ましくは水、エタノール及びこれらの混合物(含水エタノール)である。なお、含水アルコール、特に含水エタノールを使用する場合の、当該溶液中のアルコール(エタノール)の含有割合としては、制限されないが、好ましくは10〜90容量%、好ましくは40〜70容量%の範囲を例示することができる。
【0018】
抽出方法としては、一般に用いられる方法を広く採用することができる。制限はされないが、例えば上記の豆類を抽出溶媒の中に浸漬する方法(浸漬法)又は抽出溶媒に豆類を入れて加温しながら還流する方法(加熱還流法)等を挙げることができる。なお、浸漬法による場合は加熱(加温、高温)、室温又は冷却(低温)条件下のいずれであってもよく、また静置した状態の浸漬または攪拌しながらの浸漬のいずれであってもよい。
【0019】
かかる抽出操作により得られた抽出物は、各種の固液分離手段に供され、溶媒に不溶な残渣(不溶性固形分)が除去される。ここで固液分離手段としてはデカンテーション、濾過、遠心分離または圧搾などの各種の固液分離手段を用いることができる。かくして得られる抽出液(濾液、上清、圧搾液)はそのままの状態で、またはさらに水、エタノール等の極性有機溶媒またはこれらの混合液で希釈して使用することができる。また、抽出溶媒を留去して一部濃縮または乾燥(減圧乾燥、凍結乾燥、スプレードライなどを含む)して、ペースト状(またはエキス粘稠物)または粉末状態(またはエキス乾燥物)の状態で用いることもできる。また抽出液を濃縮若しくは乾燥した後、該濃縮物若しくは乾燥物をさらに非溶解性溶媒で洗浄して精製して用いても、またこれを更に適当な溶媒(好ましくは、水やエタノール等の極性有機溶媒またはこれらの混合液)に溶解もしくは懸濁して用いてもよい。
【0020】
また、抽出液は、必要に応じて濃縮若しくは乾燥した後に、脱臭または脱色等を目的として精製処理を行ってもよい。かかる精製方法は、特に制限されず、慣用されている精製法を任意に組み合わせて実施することができ、具体的には各種の樹脂処理法(吸着法、イオン交換法など)、超臨界抽出法、膜処理法(限外濾過膜処理法、逆浸透膜処理法、イオン交換膜処理法など)、溶媒分画法および活性炭処理法等を例示することができる。
【0021】
本発明の退色抑制剤は、前述した豆類の抽出物、好ましくは緑豆、小豆、黒豆、黒ひよこ豆、ひよこ豆、うずら豆または金時豆の抽出物(抽出液そのもの、その濃縮物、乾固物または精製物の別を問わない)更に好ましくは、緑豆、小豆、黒豆及び黒ひよこ豆を含有するものであればよく、これらの抽出物だけからなるものであってよいが、当該抽出物以外の成分として、希釈剤、担体またはその他の添加剤を含有していてもよい。なお、本発明で用いる抽出物は、1種類の豆類の抽出物であってもよいし、また2種類以上の豆類の抽出物(混合物)であってもよい。
【0022】
希釈剤または担体としては、本発明の効果を妨げないものであれば特に制限されず、例えばシュクロース、グルコース、デキストリン、水飴、液糖などの糖類;エタノール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール類;ソルビトール、マンニトール等の糖アルコール;アラビアガム等の多糖類;または水を挙げることができる。また添加剤としては、抗酸化剤、キレート剤等の助剤、香料、香辛料抽出物、防腐剤などを挙げることができる。
【0023】
使用上の利便等から、これらの希釈剤、担体または添加剤を用いて退色抑制剤を調製する場合は、豆類の抽出物(乾固物として換算)が、退色抑制剤100重量%中に固形換算で0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%の割合で含まれるように調製することが望ましい。
【0024】
なおここで添加剤として用いられる抗酸化剤としては、食品添加物として用いられるものを広く例示することができる。例えば、制限はされないが、L−アスコルビン酸及びその塩等のアスコルビン酸類;アスコルビン酸ステアリン酸エステルまたはアスコルビン酸パルミチン酸エステルなどのアスコルビン酸エステル類;エリソルビン酸及びその塩(例えばエリソルビン酸ナトリウム)等のエリソルビン酸類;亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムまたはピロ亜硫酸カリウムなどの亜硫酸塩類;α−トコフェロールやミックストコフェロール等のトコフェロール類;ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)やブチルヒドロキシアニソール(BHA)等;エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウムやエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム等のエチレンジアミン四酢酸類;没食子酸や没食子酸プロピル等の没食子酸類;アオイ花抽出物、アスペルギルステレウス抽出物、カンゾウ油性抽出物、食用カンナ抽出物、グローブ抽出物、精油除去ウイキョウ抽出物、セイヨウワサビ抽出物、セージ抽出物、セリ抽出物、チャ抽出物、テンペ抽出物、ドクダミ抽出物、生コーヒー豆抽出物、ヒマワリ種子抽出物、ピメンタ抽出物、ブドウ種子抽出物、ブルーベリー葉抽出物、プロポリス抽出物、ヘゴ・イチョウ抽出物、ペパー抽出物、ホウセンカ抽出物、ヤマモモ抽出物、ユーカリ葉抽出物、リンドウ根抽出物、ルチン(抽出物) (小豆全草,エンジュ,ソバ全草抽出物)、ローズマリー抽出物、チョウジ抽出物、リンゴ抽出物等の各種植物の抽出物;その他、酵素処理ルチン、クエルセチン、ルチン酵素分解物(イソクエルシトリン)、酵素処理イソクエルシトリン、酵素分解リンゴ抽出物、ごま油抽出物、菜種油抽出物、コメヌカ油抽出物、コメヌカ酵素分解物、没食子酸及びそのエステル類等を挙げることができる。好ましくは、ヤマモモ抽出物、ルチン(抽出物) 、生コーヒー豆抽出物、ローズマリー抽出物等の植物抽出物;酵素処理ルチン、ルチン酵素分解物(イソクエルシトリン)、酵素処理イソクエルシトリン等を挙げることができる。なお、退色抑制する対象の色素がアントシアニン系色素の場合は、上記抗酸化剤のうち、アスコルビン酸類以外のものを用いることが好ましい。
【0025】
抗酸化剤を用いる場合、退色抑制剤100重量%中に配合される当該抗酸化剤の割合としては、制限されないが、例えば、酵素処理イソクエルシトリンの場合、0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%を挙げることができる。他の抗酸化剤もこれに準じて用いることができる。
【0026】
本発明の退色抑制剤はその形態を特に制限するものではなく、例えば粉末状、顆粒状、錠剤状などの固体状;液状、乳液状等の溶液状;またはペースト状等の半固体状などの、任意の形態に調製することができる。
【0027】
本発明の退色抑制剤が対象とする色素には、合成色素及び天然色素の別を問わず、広範囲の色素が含まれる。
【0028】
合成色素には、赤色2号、赤色3号、赤色40号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、青色1号、青色2号、緑色3号等のタール色素;三二酸化鉄や二酸化チタンなどの無機顔料;ノルビキシNa・K、銅クロロフィル、銅クロロフィリンNa及び鉄クロロフィリンNa等の天然色素誘導体;並びにβ−カロチン、リボフラビン、リボフラビン酪酸エステル、リボフラビン5’−リン酸エステルNa、及びオレンジB、シトラスレッドNo.2、キノリンイエロー、レッド2G、パテントブルーV、グリーンS、ブリリアントブラックBN、ブラックPN、ブラウンFK、ブラウンHT、リソールルビンBK、リボフラビン5’−リン酸エステル、銅クロロフィリン等の合成天然色素などの合成着色料が含まれる。
【0029】
天然色素には、アナトー色素、クチナシ黄色素、デュナリエラカロチン、ニンジンカロチン、パーム油カロチン、トマト色素及びパプリカ色素等のカロチノイド系色素;アカネ色素、コチニール色素、シコン色素及びラック色素等のキノン系色素;赤キャベツ色素、シソ色素、ハイビスカス色素、ブドウ果汁色素、ブドウ果皮色素、紫イモ色素、紫コーン色素、エルダーベリー色素及びボイセンベリー色素等のアントシアニン系色素;カカオ色素、コウリャン色素、シタン色素、タマネギ色素、タマリンド色素、カキ色素、カロブ色素、カンゾウ色素、スオウ色素、ベニバナ赤色素及びベニバナ黄色素等のフラボノイド系色素;クロロフィリン、クロロフィル及びスピルリナ色素等のポルフィリン系色素;ウコン色素等のジケトン系色素;赤ビート色素等のベタシアニン系色素;紅麹色素等のアザフィロン系色素;その他、リボフラビン、紅麹黄色素、カラメル、クチナシ青色素、クチナシ赤色素、金、銀、アルミニウム系色素が含まれる。好ましくはアントシアニン系色素、フラボノイド系色素、カロチノイド系色素及びキノン系色素であり、より好ましくは赤キャベツ色素、紫イモ色素及び紫コーン色素等のアントシアニン系色素;ベニバナ色素、タマネギ色素、カカオ色素、タマリンド色素等のフラボノイド系色素;パプリカ色素、アナトー色素、ニンジンカロチン色素等のカロチノイド系色素、及びアカネ色素、コチニール色素、シコン色素及びラック色素等のキノン系色素である。
【0030】
本発明の退色抑制剤は、各種の色素、好ましくは上に掲げる各種の色素、特に天然色素を含有するものに広く適用することができ、これらの色素の退色を抑制若しくは防止するのに有用である。
【0031】
天然色素の中でも、アントシアニン系色素、カロチノイド系色素、フラボノイド系、ベタシアニン系、キノン系及びアザフィロン系に属する各種の色素並びにクチナシ青色素及びクチナシ赤色素を好適に挙げることができる。好ましくはアントシアニン系色素、カロチノイド系色素、フラボノイド系色素、アザフィロン系色素、キノン系色素、クチナシ青色素及びクチナシ赤色素であり、より好ましくはアントシアニン系色素、カロチノイド系色素、フラボノイド系色素及びクチナシ青色素である。特に実験例に示すように、本発明の退色抑制剤は、有効成分として使用する豆抽出物の種類にかかわらず、いずれもアントシアニン系色素またはカロチノイド系色素の光照射による退色現象を抑制する効果(耐光性)に優れており、とりわけ緑豆抽出物を有効成分とする本発明の退色抑制剤はアントシアニン系色素の加熱(高温)処理による退色現象を抑制する効果(耐熱性)にも優れている。よって、本発明の対象となる天然色素としては好適にはカロチノイド系色素及びアントシアニン系色素を挙げることができる。
【0032】
本発明の退色抑制剤が適用される具体的な製品(着色製品)としては、上記色素を含有するものであれば特に制限されないが、例えば色素製剤、飲食物(食品)、化粧品、医薬品、医薬部外品、飼料等を挙げることができる。好ましくは色素製剤及び飲食物(食品)である。これらの製品(着色製品)に対する発明の退色抑制剤の用法については、下記(2)において詳述する。
【0033】
(2)退色抑制剤を含む着色製品
本発明は、前述した豆類(緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆よりなる群から選ばれる少なくとも1種の豆)の抽出物を退色抑制剤として利用した着色製品を提供する。当該着色製品は、豆類の抽出物を含有することによって中に含まれる色素の退色現象、特に光や熱に晒されることにより生じる退色現象、より好ましくは光照射による退色現象が有意に抑制されるという効果を得ることができる。
【0034】
なお、ここで「着色」とは、製品に人為的に色素を添加して着色した意味のみならず、例えば果汁や野菜汁等のように飲食物等の製品材料に本来含まれる色素に由来して着色しているものまでも広く包含する趣旨で用いられる。また、ここでいう「着色製品」には色素、特に前述した天然色素により着色している各種の製品、具体的には色素製剤、色素を含む着色飲食物、色素を含む着色化粧品、色素を含む着色医薬品、色素を含む着色医薬部外品及び色素を含む着色飼料が包含される。
【0035】
本発明が対象とする色素製剤としては、前述した合成色素または天然色素を1種又は2種以上を含むものを挙げることができる。好ましくは、上記に掲げた天然色素を1種又は2種以上含む色素製剤である。好ましくはアントシアニン系色素、カロチノイド系色素、フラボノイド系、ベタシアニン系、キノン系及びアザフィロン系に属する各種の色素並びにクチナシ青色素及びクチナシ赤色素よりなる群から選択される少なくとも1種の天然色素を含む色素製剤であり、より好ましくはアントシアニン系色素、カロチノイド系色素、フラボノイド系色素、アザフィロン系色素、キノン系色素、クチナシ青色素及びクチナシ赤色素よりなる群から選択される少なくとも1種の天然色素を含む色素製剤である。さらに好ましくはアントシアニン系色素、カロチノイド系色素、フラボノイド系色素、及びクチナシ青色素よりなる群から選択される少なくとも1種の天然色素、より好ましくはアントシアニン系色素及びカロチノイド系色素よりなる群から選択される少なくとも1種の天然色素を含む色素製剤である。
【0036】
当該色素製剤に配合される退色抑制剤の割合は、本発明の効果を奏する限り特に制限されないが、色素製剤を、退色抑制対象とする色素の極大吸収波長における吸光度が0.05〜1(色価(E10% 1cm)=0.005〜0.1)となるように調整した場合に、該色素製剤に豆類の抽出物(乾固物)が少なくとも1ppm(0.0001重量%)、好ましくは1〜1000ppm(0.0001〜0.1重量%)程度、より好ましくは1〜500ppm(0.0001〜0.05重量%)程度の割合で含まれるような割合を挙げることができる。好ましくは上記色価となるように調整した場合の色素製剤に、豆類の抽出物(乾固物)が、少なくとも10ppm(0.001重量%)、好ましくは10〜500ppm(0.001〜0.05重量%)程度の割合で含まれるような割合を挙げることができる。
【0037】
なお、色価とは着色物(着色料溶液)中の色素濃度を意味し、通例、該着色物(着色料溶液)の可視部での極大吸収波長における吸光度を測定し、10w/v%溶液の吸光度に換算した数値(E10% 1cm)で表される。具体的には、当該色価(E10% 1cm)は、まず測定対象とする着色物(着色料溶液)の濃度を吸光度が0.3〜0.7の範囲に入るように調整し、次いでそれを層長1cmのセルを用いて極大吸収波長で吸光度を測定し、得られた吸光度を、着色物(着色料溶液)の濃度が10w/v%のときの吸光度に換算することにより得ることができる(食品添加物公定書:「17.色価測定法」参照)。
【0038】
本発明の色素製剤には、少なくとも色素及び前述した豆類の抽出物または本発明の退色抑制剤が含まれていればよいが、必要に応じてさらに抗酸化剤、キレート剤、香料又は香辛料抽出物を含んでいても良い。抗酸化剤としては、前述したものを同様に例示することができる。
【0039】
本発明の色素製剤は、製造の任意の工程で退色抑制作用を有する豆類の抽出物または本発明の退色抑制剤を配合することを除けば、各種色素製剤の慣用方法に従って製造することができる。退色抑制作用を有する豆類の抽出物または本発明の退色抑制剤の配合方法やその順番に特に制限はないが、色素が熱や光の影響を少なからず受けることを鑑みれば、色素製剤の製造工程の初期、好ましくは熱処理工程前または光に晒す前に各種の材料とともに配合することが望ましい。
【0040】
本発明が対象とする飲食物としては着色したもの、好ましくは前述した天然色素に基づいて色を有するものであれば特に制限されず、例えば乳飲料、乳酸菌飲料、果汁入り清涼飲料、清涼飲料、炭酸飲料、果汁飲料、野菜飲料、野菜・果実飲料、アルコール飲料、粉末飲料、コーヒー飲料、紅茶飲料などの飲料類;カスタードプリン、ミルクプリン、スフレプリン、果汁入りプリン等のプリン類、ゼリー、ババロア及びヨーグルト等のデザート類;アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、ミルクアイスクリーム、果汁入りアイスクリーム及びソフトクリーム、アイスキャンディー、シャーベット、氷菓等の冷菓類;チューインガムや風船ガム等のガム類(板ガム、糖衣状粒ガム);マーブルチョコレート等のコーティングチョコレートの他、イチゴチョコレート、ブルーベリーチョコレート及びメロンチョコレート等の風味を付加したチョコレート等のチョコレート類;ハードキャンディー(ボンボン、バターボール、マーブル等を含む)、ソフトキャンディー(キャラメル、ヌガー、グミキャンディー、マシュマロ等を含む)、ドロップ、タフィ等のキャラメル類;ハードビスケット、クッキー、おかき、煎餅等の焼き菓子類(以上、菓子類);コンソメスープ、ポタージュスープ等のスープ類;浅漬け、醤油漬け、塩漬け、味噌漬け、粕漬け、麹漬け、糠漬け、酢漬け、芥子漬、もろみ漬け、梅漬け、福神漬、しば漬、生姜漬、梅酢漬け等の漬物類;セパレートドレッシング、ノンオイルドレッシング、ケチャップ、たれ、ソースなどのソース類;ストロベリージャム、ブルーベリージャム、マーマレード、リンゴジャム、杏ジャム、プレザーブ等のジャム類;赤ワイン等の果実酒;シロップ漬のチェリー、アンズ、リンゴ、イチゴ、桃等の加工用果実;ハム、ソーセージ、焼き豚等の畜肉加工品;魚肉ハム、魚肉ソーセージ、魚肉すり身、蒲鉾、竹輪、はんぺん、薩摩揚げ、伊達巻き、鯨ベーコン等の水産練り製品;バター、マーガリン、チーズ、ホイップクリーム等の酪農・油脂製品類;うどん、冷麦、そうめん、ソバ、中華そば、スパゲッティ、マカロニ、ビーフン、はるさめ及びワンタン等の麺類;その他、各種総菜及び麩、田麩等の種々の加工食品を挙げることができる。好ましくは飲料及び菓子類である。
【0041】
本発明の飲食物は、製造の任意の工程で退色抑制作用を有する豆類の抽出物または本発明の退色抑制剤を配合することを除けば、各種飲食物の慣用の製造方法に従って製造することができる。退色抑制作用を有する豆類の抽出物または退色抑制剤の配合方法やその順番に特に制限はないが、色素が熱や光の影響を少なからず受けることを鑑みれば、これらの豆類の抽出物または退色抑制剤を製造工程の初期、好ましくは熱処理工程または光に晒される前に配合することが好ましい。
【0042】
例えば、冷菓類の場合は、まず主原料としての牛乳、クリーム、練乳、粉乳、糖類、果実または餡等に退色抑制作用を有する豆類の抽出物または本発明の退色抑制剤、酸類、乳化剤及び安定剤を加え、次いで香料を加えて冷菓ミックス液を調製し、このミックス液に色素を添加混合し、殺菌、冷却後フリージングして容器に充填し、冷却または凍結して最終製品を調製する方法を挙げることができる。
【0043】
また、ガム類の場合は、加熱し柔らかくしたガムベースに砂糖、ブドウ糖、退色抑制作用を有する豆類の抽出物または退色抑制剤、及びクエン酸等を加え、次いでその中に香料及び色素を加え練合し、次に圧延ローラーで適当な厚さにして、室温まで冷却後、切断して最終製品を調製する方法を挙げることができる。また、デザート類の場合は、主原料の砂糖、水飴、退色抑制作用を有する豆類の抽出物または退色抑制剤、クエン酸及び凝固剤(ペクチン、寒天、ゼラチン、カラギナンなど)を適当な割合で混合し、その中に香料並びに色素を加え、加熱溶解した後、容器に充填し、冷却して最終製品であるゼリーを調製する方法を挙げることができる。キャンディー類の場合は、例えば砂糖、水飴等の主原料に水を加え加熱し溶解した後放冷し、退色抑制作用を有する豆類の抽出物または退色抑制剤を添加し、次いで香料及び色素を加え、成型し、室温まで冷却して最終キャンディーを調製する方法を挙げることができる。
【0044】
また飲料の場合は、主原料としての糖類、果汁または酸類等に退色抑制作用を有する豆類の抽出物または本発明の退色抑制剤や安定剤等を加え、次いでこの飲料に香料及び必要に応じて色素を添加混合した後、殺菌、冷却して容器に充填する方法を挙げることができる。
【0045】
漬物類の場合は、漬物とする野菜、海藻、キノコまたは果物等の主原料に、食塩や糖類等の各種調味料、保存料、及び退色抑制作用を有する豆類の抽出物または退色抑制剤等の副原料を加えて漬物を調製し、この漬物に香料及び必要に応じて色素を添加混合した後、容器に充填し、殺菌、冷却し最終製品を調製する方法を挙げることができる。タレ類やドレッシング類の場合は、植物油、醤油、果汁、糖類、果汁、醸造酢または食塩等を主原料とし、これに退色抑制作用を有する豆類の抽出物または退色抑制剤及び安定剤または乳化剤等を加え、このドレッシング液に香料及び必要により色素を添加混合した後、殺菌、冷却後容器に充填して最終製品を調製する方法を挙げることができる。
【0046】
本発明が対象とする化粧品としては、色素、特に前述した天然色素を含むスキン化粧料(ローション、乳液、クリームなど)、口紅、日焼け止め化粧品、メークアップ化粧品等を;医薬品としては色素、特に前述した天然色素を含む各種錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ剤、うがい薬等を;医薬部外品としては色素、特に前述した天然色素を含む歯磨き剤、口中清涼剤、口臭予防剤等を;また飼料としては色素、特に前述した天然色素を含むキャットフードやドッグフード等の各種ペットフード、観賞魚若しくは養殖魚の餌等を一例として挙げることができるが、これらに制限されるものではない。
【0047】
これらの化粧品、医薬品、医薬部外品または飼料などの各種製品は、それら製造の任意の工程で退色抑制作用を有する豆類の抽出物または本発明の退色抑制剤を配合することを除けば、各種製品の慣用方法に従って製造することができる。化粧品、医薬品、医薬部外品または飼料に対する退色抑制作用を有する豆類の抽出物または退色抑制剤の配合時期は特に制限されないが、色素が熱や光の影響を少なからず受けることを鑑みれば、製造工程の初期、好ましくは熱処理工程前または光に晒す前に各種材料とともに配合することが望ましい。
【0048】
飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品または飼料等の各種着色製品に対する本発明の退色抑制剤の添加量は、それらに含まれる色素の退色現象が防止できる量であれば特に制限されない。本発明の退色抑制剤の有効成分として使用する豆類の種類を考慮し、また着色製品に含まれる色素の種類及びその含量、対象物の種類及びそれに含まれる成分などを考慮して適宜選択、決定することができる。例えば上記着色製品を、退色抑制対象とする色素の極大吸収波長における吸光度が0.05〜1(色価(E10% 1cm)=0.005〜0.1)となるように調整した場合に、該着色製品に少なくとも1ppmとなるように、例えば1〜1000ppmの範囲、好ましくは1〜500ppmの範囲で含まれるように、退色抑制剤(豆類の抽出物)を配合することができる。より好ましくは、上記色価(E10% 1cm)を有する着色製品に対する配合割合が、少なくとも10ppm、例えば10〜500ppmの範囲となるように、退色抑制剤を配合することが望ましい。
【0049】
なお、後述する実施例に示すように、退色抑制剤(豆類の抽出物)の添加配合量に依存して退色抑制効果が向上する。従って、前述した着色製品に対する退色抑制剤の配合割合の上限は退色抑制効果以外の他の観点(例えば味並びに粘度等の対象物の物性等)から一応の目安として設定されたものであり、本発明の効果からいえば退色抑制剤の対象物(着色製品、例えば色素製剤や飲食物等)への配合割合の上限は上記の記載に何ら制限されるものではない。
【0050】
(3)退色抑制方法
また本発明は、色素または色素を含む各種の組成物の退色抑制方法を提供する。
【0051】
本発明が対象とする色素は、前述した合成色素及び天然色素である。好ましくは前述した各種の天然色素であり、より好ましくはアントシアニン系色素、カロチノイド系色素、フラボノイド系、ベタシアニン系、キノン系及びアザフィロン系に属する各種の色素、並びにクチナシ青色素及びクチナシ赤色素であり、より好ましくはアントシアニン系色素、カロチノイド系色素、フラボノイド系色素、アザフィロン系色素、キノン系色素、クチナシ青色素及びクチナシ赤色素である。特に実験例に示すように、本発明の退色抑制方法は、使用する豆抽出物の種類にかかわらず、いずれもアントシアニン系色素またはカロチノイド系色素の光照射による退色現象を抑制する効果(耐光性)に優れており、とりわけ緑豆抽出物を用いた本発明の退色抑制方法はアントシアニン系色素の加熱(高温)処理による退色現象を抑制する効果に対する退色抑制効果(耐熱性)にも優れている。よって、本発明の対象となる天然色素としては好適にはカロチノイド系色素及びアントシアニン系色素を挙げることができる。
【0052】
また、ここでいう色素を含む各種の組成物(色素含有組成物)とは、上記色素、好ましくは天然色素を含む組成物を広く意味するものであり、具体的には、前述した色素製剤、飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品または飼料等の各種着色製品を挙げることができる。
【0053】
本発明は、これらの色素または該色素含有組成物を前述した豆類の抽出物、具体的には緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆よりなる群から選ばれる少なくとも1種の豆の抽出物、または本発明の退色抑制剤と共存させることにより実施することができる。ここで共存の態様としては、両者が接触した状態で存在する状態が形成されるものであれば特に制限されない。例えば、かかる共存状態は色素またはこれを含む組成物に退色抑制作用を有する豆類の抽出物または上記本発明の退色抑制剤を配合して両者を混合することによって形成することができる。例えば、色素を含む組成物が色素製剤または飲食物である場合は、退色抑制作用を有する豆類の抽出物または本発明の退色抑制剤を色素製剤または飲食品の製造時に材料成分の一つとして配合することによって上記共存状態を形成することができる。化粧品、医薬品、医薬部外品または飼料等の他の着色製品についても同様である。
【0054】
色素または色素含有組成物に対する豆類の抽出物または本発明の退色抑制剤の使用割合としては、本発明の効果を発揮する範囲であれば特に制限されず、対象とする色素の種類に応じて適宜調節することができる。また色素含有組成物に対する豆類の抽出物または本発明の退色抑制剤の使用割合は、特に制限されないが、該色素含有組成物を、退色抑制の対象色素の極大吸収波長における吸光度が0.05〜1(色価(E10% 1cm)=0.005〜0.1)となるように調整した場合に、その中に豆類の抽出物(乾固物)が少なくとも1ppm、好ましくは1〜1000ppm、より好ましくは1〜500ppmの割合で含まれるような割合、さらに好ましくは上記中に豆類の抽出物(乾固物)が少なくとも10ppm、好ましくは10〜500ppmの割合で含まれるような配合割合を挙げることができる。
【0055】
当該本発明の退色抑制方法によれば、色素又は色素含有組成物の退色を有意に抑制することができる。本発明の退色抑制方法は、特にアントシアニン系色素及びカロチノイド系色素又はこれらの色素を含有する組成物の光照射によって生じる退色を抑制する効果に優れており、当該色素又は色素含有組成物に光退色耐性(耐光性)を付与することができる。また、緑豆の抽出物またはそれを有効成分とする退色抑制剤を用いる本発明の方法は、特にアントシニン系色素に対して熱退色耐性を付与する効果に優れている。
【0056】
ここで熱退色耐性とは、熱の影響を受けても退色しにくい性質をいう。具体的には、色素または色素含有組成物が、製造工程または保存状態で受け得る温度(加熱)条件下におかれた場合に、退色抑制剤を配合しない色素または色素含有組成物に比して、退色が有意に抑制される性質をいう。
【0057】
例えば、上記熱を受ける条件としては、製造時における温度(20〜100℃で5分〜24時間)、殺菌時における温度(110〜140℃で1秒〜60分、60〜100℃で 数分〜5時間)、室温以上の温度での短期〜長期保存(20〜70℃、1日〜1年)するような条件を例示することができる。
【0058】
また、光退色耐性とは、太陽光または人工光(蛍光灯など)の影響を受けても退色しにくい性質をいう。具体的には、色素または色素含有組成物が、通常の保存状態で受け得る光(太陽光、蛍光灯など)条件下におかれた場合に、退色抑制剤を配合しない色素または色素含有組成物に比して、退色が有意の抑制される性質をいう。
【0059】
例えば、上記条件としては、色素または色素含有組成物が、太陽光に5分から数時間晒される、あるいは、蛍光灯照射を1日から6ヶ月晒されるような条件を例示することができる。
【0060】
【実施例】
以下、本発明の内容を実施例及び実験例を用いて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記に記載する処方の単位は特に言及しない限り、%は重量%を意味するものとする。また、各処方中*を付記した製品は三栄源エフ・エフ・アイ(株)製の製品を意味する。なお、下記の実施例において用いる「ムングダール」とは、緑豆の表皮を剥離し内実を挽割りにしたものである。本発明において色価(E10% 1cm)とは、着色した対象物について、その着色色素の可視部での極大吸収波長における吸光度を測定し(測定セル幅:1cm)、該吸光度を、該対象物を10w/v%溶液に調整した場合の吸光度に換算した数値である。着色液が濁っている場合は、濾過等によって濁度を極力抑え、波長660nmの吸光度を差し引いた値を利用して色価を算出することができる。また、固形含量については、赤外線水分計FD−600(株式会社ケツト科学研究所)を用いて110℃で60分間加熱乾燥することにより測定した。
【0061】
実施例1
ムングダール(表皮を剥離し内実を挽割りにした緑豆)100gを粉砕後、60容量%エタノール(含水エタノール)700mlを加えて50℃に維持しながら4時間攪拌した。4時間後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液を減圧濃縮して、ムングダールの抽出液を100g(固形含量10.5%)を得た。これを退色抑制剤1として後述する実験例で使用する。
【0062】
実施例2
ムングダール100gを粉砕後、60容量%エタノール700mlを加えて50℃に維持しながら4時間攪拌した。4時間後、この混合物を室温まで冷却した後、吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液に活性炭を液量の0.2%の割合で添加し、1時間撹拌した。その後、吸引濾過して不溶性固形分を除去し、ムングダールの抽出液640ml(固形含量1.7%)を得た。これを退色抑制剤2として後述する実験例で使用する。
【0063】
実施例3
黒豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.7%)を黒豆抽出液として取得した。
【0064】
実施例4
小豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール 100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.8%)を小豆抽出液として得た。
【0065】
実施例5
とら豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.2%)をとら豆抽出液として得た。
【0066】
実施例6
赤レンズ豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.3%)を赤レンズ豆抽出液として得た。
【0067】
実施例7
うずら豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.3%)をうずら豆抽出液として得た。
【0068】
実施例8
白花豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.6%)を白花豆抽出液として得た。
【0069】
実施例9
金時豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.3%)を金時豆抽出液として得た。
【0070】
実施例10
レンズ豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.3%)をレンズ豆抽出液として得た。
【0071】
実施例11
ムングダール10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過して不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.3%)をムングダール抽出液として取得した。
【0072】
実施例12
ひよこ豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過し不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.5%)をひよこ豆抽出液として取得した。
【0073】
実施例13
黒ひよこ豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過し不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.2%)を黒ひよこ豆抽出液として取得した。
【0074】
実施例14
チャナ ダル(黒ひよこ豆の表皮を剥離して内実を挽割りにしたもの)10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過し不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.4%)をチャナ ダル抽出液として取得した。
【0075】
実施例15
大福豆10gを粉砕した後、50容量%エタノール100mlを加えて60℃に維持しながら3時間攪拌した。3時間後、この混合物を室温まで冷却し、次いで吸引濾過し不溶性固形分を除去した。得られた濾液85ml(固形含量1.2%)を大福豆抽出液として取得した。
【0076】
実験例1   赤キャベツ色素の退色抑制効果(紫外線照射)
果糖ブドウ糖液糖                       10.3 (%)
クエン酸(無水)                           0.07
クエン酸3Na                           調整量(pH3.0)
退色抑制剤1(ムングダール抽出物、実施例1)   表 1
赤キャベツ色素( サンレット゛RCFU * 色価60)       0.04   
水にて全量を100%とする。
【0077】
上記の成分を混合して調製した組成液を50ml容の無色透明ガラスビンに入れ、赤キャベツ色素着色シロップを作成した。これを試験対象品として、室温で紫外線ロングライフフェードメーター(スガ試験機製FAL−3型)を用いて4時間照射して、光の影響による色素の退色現象(耐光性)を観察した。その結果を表1に示す。なお、耐光性は紫外線照射前後の、赤キャベツ色素の極大吸収波長(530nm付近)における吸光度を測定し、下式に従って、照射前の赤キャベツ色素着色シロップの吸光度(100%)に対する照射後の赤キャベツ色素着色シロップの吸光度の割合を色素残存率(%)として評価した。
【0078】
【数1】
Figure 2004033106
【0079】
【表1】
Figure 2004033106
【0080】
表1で示されるように退色抑制剤1(ムングダール抽出物、実施例1)はアントシアニン系色素である赤キャベツ色素の紫外線照射による退色を有意に抑制した。
【0081】
実験例     赤キャベツ色素の退色抑制効果(蛍光灯照射)
実験例1の方法に従って同様にして調製した無色透明ガラスビン入り赤キャベツ色素シロップを試験対象品として用い、10℃の下、2万ルクスの照度条件下で、白色蛍光灯による照射を144時間行った後、実験例1と同様にして色素残存率%を求めた。結果を表2に示す。
【0082】
【表2】
Figure 2004033106
【0083】
表2で示されるように退色抑制剤1(ムングタール抽出物、実施例1)はアントシアニン系色素である赤キャベツ色素の蛍光灯照射による退色を顕著に抑制した。
【0084】
実験例3  赤キャベツ色素の退色抑制効果(耐熱性)
果糖ブドウ糖液糖                20.0(%)
クエン酸(無水)                   0.2
クエン酸3Na                         調整量(pH3.0)
退色抑制剤1(ムングタール抽出物、実施例1)   表3
赤キャベツ色素( サンレット゛RCFU * 色価60)          0.05   
水にて全量を100%とする。
【0085】
上記の成分を混合して調製した組成液を50ml容無色透明ガラスビンにホットパック充填し、赤キャベツ色素着色シロップを作成した。これを試験対象品として、55℃で90時間加熱して、熱(高温)の影響による色素の退色現象(耐熱性)を観察した。その結果を表3に示す。なお、耐熱性は加熱処理前後の赤キャベツ色素の極大吸収波長(530nm付近)における吸光度を測定し、下式に従って高温処理前の赤キャベツ色素着色シロップの吸光度(100%)に対する高温処理後の赤キャベツ色素着色シロップの吸光度の割合を色素残存率(%)として評価した。
【0086】
【数2】
Figure 2004033106
【0087】
【表3】
Figure 2004033106
【0088】
表3の結果から、退色抑制剤1(ムングダール抽出液)は高温処理及び/または高温条件下での保存によるアントシアニン系色素(赤キャベツ色素)の退色を有意に抑制することがわかる。
【0089】
実験例4  β−カロチン色素の退色抑制効果(蛍光灯照射)
果糖ブドウ糖液糖                    10.3 (%)
クエン酸(無水)                       0.07
クエン酸3Na                                 調整量(pH3)
退色抑制剤1(実施例1)                  表4
β−カロチン乳化製剤( カロチンヘ゛ースNO.80−S   β −カロチン1.5% 含有)   0.04  
水にて全量を100%とする。
【0090】
上記の成分を混合して調製した組成液を50ml容無色透明ガラスビンに入れ、β−カロチン色素着色シロップを作成した。これを試験対象品として、10℃の下、2万ルクスの照度条件下で白色蛍光灯による照射を216時間行い、光(蛍光灯)の影響による色素の退色現象(耐光性)を観察した。その結果を表4に示す。なお、耐光性は蛍光灯照射前後のβ−カロチン色素の極大吸収波長(500nm付近)における吸光度を測定し、実験例1に記載する式に従って、蛍光灯照射前のβ−カロチン色素着色シロップの吸光度(100%)に対する蛍光灯照射後のβ−カロチン色素着色シロップの吸光度の割合を色素残存率(%)として評価した。
【0091】
【表4】
Figure 2004033106
【0092】
表4から、退色抑制剤1(ムングダール抽出液、実施例1)は蛍光灯照射によるカロチノイド系色素(カロチン色素)の退色を有意に抑制することがわかる。
【0093】
実験例     エルダーベリー色素の退色抑制効果(蛍光灯照射)
果糖ブドウ糖液糖                  10.3 (%)
クエン酸(無水)                            0.07
クエン酸3Na                         調整量(pH3.0)
退色抑制剤1(ムングダール抽出物、実施例1)     表5
エルダーベリー色素( サンレット゛ELF * 色価60)        0.04   
水にて全量を100%とする。
【0094】
上記の成分を混合して調製した組成液を50ml容無色透明ガラスビンに入れ、エルダーベリー色素着色シロップを作成した。これを試験対象品として、10℃の下、2万ルクスの照度条件下で白色蛍光灯による照射を166時間行い、光(蛍光灯)の影響による色素の退色現象(耐光性)を観察した。その結果を表5に示す。なお、耐光性は蛍光灯照射前後のエルダーベリー色素の極大吸収波長(518nm)における吸光度を測定し、実験例1に記載する式に従って、蛍光灯照射前のエルダーベリー色素着色シロップの吸光度(100%)に対する、蛍光灯照射後のエルダーベリー色素着色シロップの吸光度の割合を色素残存率(%)として評価した。
【0095】
【表5】
Figure 2004033106
【0096】
表5で示されるように退色抑制剤1(ムングダール抽出物)はアントシアニン系色素であるエルダーベリー色素の蛍光灯照射による退色を有意に抑制することがわかった。
【0097】
実験例6  赤キャベツ色素の退色抑制効果(紫外線照射)
果糖ブドウ糖液糖               13.0   (%)
クエン酸(無水)                         0.09
クエン酸3Na                     調整量(pH3.0)
退色抑制剤2(実施例2)            表6
赤キャベツ色素( サンレット゛RCFU * 色価60)    0 05   
水にて全量を100%とする。
【0098】
上記の成分を混合して調製した組成液を50ml容無色透明ガラスビンに入れ、赤キャベツ色素着色シロップを作成した。これを試験対象品として、室温で紫外線ロングライフフェードメーター(スガ試験機製FAL−3型)を用いて7時間照射して、光(紫外線)の影響による色素の退色現象(耐光性)を観察した。その結果を表6に示す。なお、耐光性は紫外線照射前後の赤キャベツ色素の極大吸収波長(530nm付近)における吸光度を測定し、紫外線照射前の赤キャベツ色素着色シロップの吸光度(100%)に対する紫外線照射後の、赤キャベツ色素着色シロップの吸光度の割合を色素残存率(%)として評価した。
【0099】
【表6】
Figure 2004033106
【0100】
表6で示されるように、退色抑制剤2(ムングダール抽出物、実施例2)は赤キャベツ色素の紫外線照射による退色を有意に抑制した。
【0101】
実験例     赤キャベツ色素の退色抑制効果(蛍光灯照射)
果糖ブドウ糖液糖                10.3 (%)
クエン酸(無水)                       0.07
クエン酸3Na                      調整量(pH3.0)
豆抽出液(実施例3〜12)            0.1
赤キャベツ色素( サンレット゛RCFU * 色価60)     0.025   
水にて全量を100%とする。
【0102】
上記の成分を混合して調製した組成液を50ml容無色透明ガラスビンに入れ、赤キャベツ色素着色シロップを作成した。これを試験対象品として、10℃の下、2万ルクスの照度条件下で白色蛍光灯による照射を73時間行い、蛍光灯の影響による色素の退色現象(耐光性)を観察した。その結果を表7に示す。なお、耐光性は蛍光灯照射前後の赤キャベツ色素の極大吸収波長(530nm付近)における吸光度を測定し、蛍光灯照射前の赤キャベツ色素着色シロップの吸光度(100%)に対する蛍光灯照射後の赤キャベツ色素着色シロップの吸光度の割合を色素残存率(%)として評価した。
【0103】
【表7】
Figure 2004033106
【0104】
表7に示されるように、実験例2に示したムングダール抽出物(緑豆)と同様に、黒豆抽出液、小豆抽出液、とら豆抽出液、赤レンズ豆抽出液、うずら豆抽出液、白花豆抽出液、金時豆抽出液、レンズ豆抽出液、及びひよこ豆抽出液にいずれも、アントシアニン系色素に対する退色抑制作用があること、特に光照射による退色に対する抑制作用(光退色抑制作用、耐光性付与作用)があることが認められた。
【0105】
実験例8  β−カロチン色素に対する退色抑制効果(蛍光灯照射)
果糖ブドウ糖液糖                              10.3(%)
クエン酸(無水)                      0.07
クエン酸3Na                                調整量(pH3)
豆抽出液(実施例3〜12)                0.1
β カロチン乳化製剤( カロチンヘ゛ースNO.80−S β −カロチン1.5% 含有)   0.03  
水にて全量を100%とする。
【0106】
上記の成分を混合して調製した組成液を50ml容無色透明ガラスビンに入れ、β−カロチン色素着色シロップを作成した。これを試験対象品として、10℃の下、2万ルクスの照度条件下で白色蛍光灯による照射を160時間行い、光(蛍光灯)の影響による色素の退色現象(耐光性)を観察した。その結果を表8に示す。なお、耐光性は蛍光灯照射前後のβ−カロチン色素の極大吸収波長(500nm付近)におけるβ−カロチン色素着色シロップの吸光度を測定し、蛍光灯照射前のβ−カロチン色素着色シロップの吸光度(100%)に対する蛍光灯照射後のβ−カロチン色素着色シロップの吸光度の割合を色素残存率(%)として評価した。
【0107】
【表8】
Figure 2004033106
【0108】
表8に示されるように、実験例4に示したムングダール抽出物(緑豆)と同様に、黒豆抽出液、小豆抽出液、とら豆抽出液、赤レンズ豆抽出液、うずら豆抽出液、白花豆抽出液、金時豆抽出液、レンズ豆抽出液、及びひよこ豆抽出液にいずれも、カロテノイド系色素に対する退色抑制作用があること、特に光照射による退色に対する抑制作用(光退色抑制作用、耐光性付与作用)があることが認められた。
【0109】
実験例9 赤キャベツ色素の退色抑制効果(紫外線照射)
果糖ブドウ糖液糖                10.0 (%)
クエン酸(無水)                       0.1
クエン酸3Na                      調整量(pH3.0)
豆抽出液(実施例3〜15)            0.1
赤キャベツ色素( サンレット゛RCFU * 色価60)     0.04   
水にて全量を100%とする。
【0110】
上記の成分を混合して調製した組成液を50ml容無色透明ガラスビンに入れ、赤キャベツ色素着色シロップを作成した。これを試験対象品として、室温で紫外線ロングライフフェードメーター(スガ試験機製FAL−3型)を用いて4時間照射して、光(紫外線)の影響による色素の退色現象(耐光性)を観察した。その結果を表9に示す。なお、耐光性は紫外線照射前後の赤キャベツ色素の極大吸収波長(530nm付近)における吸光度を測定し、紫外線照射前の赤キャベツ色素着色シロップの吸光度(100%)に対する紫外線照射後の、赤キャベツ色素着色シロップの吸光度の割合を色素残存率(%)として評価した。
【0111】
【表9】
Figure 2004033106
【0112】
表9に示されるように、黒豆抽出液、小豆抽出液、とら豆抽出液、赤レンズ豆抽出液、うずら豆抽出液、白花豆抽出液、金時豆抽出液、レンズ豆抽出液、ムングダール抽出物、ひよこ豆抽出液、黒ひよこ豆抽出液、チャナ ダル抽出液、及び大福豆抽出液のいずれも、アントシアニン系色素に対する退色抑制作用、特に光照射による退色に対する抑制作用(光退色抑制作用、耐光性付与作用)があることがあることが認められた。
【0113】
実験例10 β−カロチン色素に対する退色抑制効果(紫外線照射)
果糖ブドウ糖液糖                10.0 (%)
クエン酸(無水)                       0.1
クエン酸3Na                      調整量(pH3.0)
豆抽出液(実施例3〜15)            0.1
β−カロチン乳化製剤( カロチンヘ゛ースNO.80−S *色価60)   0.04   
水にて全量を100%とする。
【0114】
上記の成分を混合して調製した組成液を50ml容無色透明ガラスビンに入れ、β−カロチン色素着色シロップを作成した。これを試験対象品として、室温で紫外線ロングライフフェードメーター(スガ試験機製FAL−3型)を用いて4時間照射して、光(紫外線)の影響による色素の退色現象(耐光性)を観察した。その結果を表10に示す。なお、耐光性は紫外線照射前後のβ−カロチン色素の極大吸収波長(500nm付近)における吸光度を測定し、紫外線照射前のβ−カロチン色素着色シロップの吸光度(100%)に対する紫外線照射後の、β−カロチン色素着色シロップの吸光度の割合を色素残存率(%)として評価した。
【0115】
【表10】
Figure 2004033106
【0116】
表10に示されるように、黒豆抽出液、小豆抽出液、とら豆抽出液、赤レンズ豆抽出液、うずら豆抽出液、白花豆抽出液、金時豆抽出液、レンズ豆抽出液、ムングダール抽出物、ひよこ豆抽出液、黒ひよこ豆抽出液、チャナ ダル抽出液及び大福豆抽出液、のいずれも、カロテノイド系色素に対する退色抑制作用、特に光照射による退色に対する抑制作用(光退色抑制作用、耐光性付与作用)があることが認められた。
【0117】
実験例11  赤キャベツ色素に対するビタミンCの影響(蛍光灯照射)
果糖ブドウ糖液糖               10.0 (%)
クエン酸(無水)                  0.2
クエン酸3Na                      調整量(pH3.0)
ビタミンC                    表11
赤キャベツ色素( サンレット゛RCFU * 色価60)     0 05    
水にて全量を100%とする。
【0118】
50ml容無色透明ガラスビンに上記の成分を混合して調製した組成液を入れ、赤キャベツ色素着色シロップを作成した。これを試験対象品として、30℃、2万ルクスの照度条件下で白色蛍光灯による照射を16時間行い、ビタミンC添加による赤キャベツ色素の退色現象(耐光性)を観察した。その結果を表11に示す。なお、耐光性は蛍光灯照射前後の赤キャベツ色素の極大吸収波長における吸光度を測定し、蛍光灯照射前の赤キャベツ色素着色シロップの吸光度(100%)に対する蛍光灯照射後の赤キャベツ色素着色シロップの吸光度の残存率(%)で評価した。
【0119】
【表11】
Figure 2004033106
【0120】
表11で示されるように、配合するビタミンCの濃度の上昇に伴って退色する傾向が見られた。このことから、抗酸化剤として公知であるビタミンCはアントシアニン系色素である赤キャベツ色素の退色を促進することがわかる。
【0121】
【発明の効果】
本発明によれば、従来より食用されている緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆、及び大福豆等の各種の豆類の抽出物を有効成分とした安全性の高い退色抑制剤を提供することができる。当該退色抑制剤は水溶性であるため、着色製品の退色抑制に広く利用することができる。当該退色抑制剤は、色素製剤、着色飲食物、着色香粧品(化粧品)、着色医薬品、着色医薬部外品、着色飼料などの着色製品に配合することによって、該着色製品の製造工程中及び製造後(保存を含む)の色素の退色、特に天然色素(特にアントシアニン系色素、カロテノイド系色素)の光(蛍光灯、太陽光)や熱による退色現象を効果的に抑制することができる。
【0122】
また、本発明の退色抑制剤、特に、緑豆、とら豆、白花豆、ひよこ豆、及び大福豆の抽出物は色をほとんど有しておらず、また黒豆以外の豆の抽出物は香味をほとんど有していないので、色素製剤、飲食物または化粧品などといった、香味や色が商品価値に大きく影響する製品に対しても、広く利用することができる。

Claims (7)

  1. 緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆よりなる群から選ばれる少なくとも1種の豆の抽出物を有効成分として含有することを特徴とする色素の退色抑制剤。
  2. 緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆よりなる群から選ばれる少なくとも1種の豆を水、極性有機溶媒またはこれらの混合液で抽出して得られる抽出物を有効成分として含有することを特徴とする請求項1記載の色素の退色抑制剤。
  3. 退色抑制の対象色素が、天然色素である請求項1または2記載の色素の退色抑制剤。
  4. 退色抑制の対象色素が、アントシアニン系色素またはカロチノイド系色素である請求項1乃至3のいずれかに記載の色素の退色抑制剤。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の退色抑制剤を含有する色素製剤。
  6. 請求項1乃至4のいずれかに記載の退色抑制剤を含有する、退色が抑制された着色飲食物。
  7. 色素または色素を含む組成物を、緑豆、小豆、とら豆、うずら豆、白花豆、金時豆、黒豆、レンズ豆、赤レンズ豆、ひよこ豆、黒ひよこ豆及び大福豆よりなる群から選ばれる少なくとも1種の豆の抽出物と共存させることを特徴とする、当該色素または色素を含む組成物の退色抑制方法。
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