JP2004031325A - 固体高分子型燃料電池およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高分子電解質膜を湿潤状態に保つことができ、触媒層にガスを効率よく連続的に供給することができることから、電池効率を高めることが可能となり、運転コストも抑制される固体高分子型燃料電池およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】高分子電解質膜12と、その両側に配置されたアノード電極13およびカソード電極14と、両電極にガスを供給するガス流路15,15’とを備え、アノード電極13およびカソード電極14は、高分子電解質膜12と接する触媒層131,141と、ガス流路から供給されたガスを触媒層に拡散するガス拡散層132,142とからなる固体高分子型燃料電池11において、カソード電極14に含まれるガス拡散層142が、炭素含有材料から構成され、炭素含有材料の表面が親水性に改質されている燃料電池およびその製造方法。
【選択図】 図1
【解決手段】高分子電解質膜12と、その両側に配置されたアノード電極13およびカソード電極14と、両電極にガスを供給するガス流路15,15’とを備え、アノード電極13およびカソード電極14は、高分子電解質膜12と接する触媒層131,141と、ガス流路から供給されたガスを触媒層に拡散するガス拡散層132,142とからなる固体高分子型燃料電池11において、カソード電極14に含まれるガス拡散層142が、炭素含有材料から構成され、炭素含有材料の表面が親水性に改質されている燃料電池およびその製造方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子型燃料電池およびその製造方法に関するものであり、詳しくは、高分子電解質膜を湿潤状態に保つことができ、かつ触媒層にガスを効率よく連続的に供給することができることから、電池効率を高めることが可能となり、なおかつ運転コストも抑制される固体高分子型燃料電池およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題に関する意識の高まりからクリーンな発電システムが要求されており、そのシステムの一つとして燃料電池が注目されている。この燃料電池には、使用される電解質の種類から、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型、固体高分子型などがあるが、中でも発電温度の低さや小型化の点で優位である固体高分子型については、研究開発が盛んに進められつつある。
【0003】
図2は、固体高分子型燃料電池の一例を説明するための断面図である。図2において、固体高分子型燃料電池21は、プロトン伝導性の高分子電解質膜22と、高分子電解質膜22の両側に配置されたアノード電極23およびカソード電極24と、両電極にガスを供給するガス流路25、25’とを備えている。アノード電極23は、高分子電解質膜22と接する触媒層231と、ガス流路5から供給されたガスを触媒層231に拡散するガス拡散層232とからなる。同様に、カソード電極24は、高分子電解質膜2と接する触媒層241と、ガス流路25’から供給されたガスを触媒層241に拡散するガス拡散層242とからなる。なお、ガス流路25、25’は、セパレータ板26、26’にそれぞれ凹部を複数箇所設けることにより形成されている。
【0004】
このような固体高分子型燃料電池21は、アノード電極23に燃料ガス(例えば水素ガス)を、カソード電極24に酸化剤(例えば空気または酸素ガス)をそれぞれ供給し、両電極を外部回路(図示せず)で接続することにより、燃料電池として作動することが可能となる。具体的には、まずセパレータ板26に形成されたガス流路25から、アノード電極23に例えば水素ガスが供給される。続いて、水素ガスはガス拡散層232を通過することにより触媒層231に向かって拡散していく。触媒層231に達した水素ガスは、触媒による酸化反応によりプロトンと電子を発生する。このプロトンは固体高分子電解質膜22を通過してカソード電極24に移動する。一方、電子は外部回路(図示せず)を通ってカソード電極24に到達する。カソード電極24では、固体高分子電解質膜22中を通過してきたプロトン、外部回路から送られてきた電子、およびセパレータ板26’に形成されたガス流路25’、ガス拡散層242を介して供給される例えば酸素ガスが、触媒層241により反応し、水に変換される。その際、電極間に起電力が発生するため、電気エネルギーとして取り出すことが可能となる。
【0005】
前記反応を効率よく継続的に行うには,イオン伝導抵抗を低下させることと、両電極の触媒層にガスを連続的に供給することが重要である。イオン伝導抵抗を低下するには高分子電解質を常に水で湿潤状態にしておけばよい。一方、カソード電極で生成した水が触媒層の表面に滞留したり、ガス拡散層中の空孔部が水で閉塞するとガスと触媒層との接触が妨げられるので、前記水は連続的に排出する必要がある。
ガス拡散層中の空孔部が水で閉塞することを回避するために、フッ素系樹脂などを用いて電極材料を撥水化することが広く行われている。とくにガス拡散層は、ガス流路から供給されたガスを触媒層に到達させる供給経路であり、一般的に撥水化されている。しかしながら、このような撥水化を行うとガス拡散層中に水が滞留することは回避できるが、触媒層表面の水がガス拡散層へ移動することを妨げるため、触媒層表面に水が滞留し触媒層にガスを連続的に供給することが困難になる。
【0006】
なお、固体高分子型燃料電池においては前記のように、高分子電解質膜が水分を多く含んでいるほどイオン伝導抵抗が低下して性能が向上する。そのためガスをあらかじめ外部加湿器で加湿して供給し、高分子電解質膜を湿潤状態に保持している。ガスを加湿するために液体の水を気化すると、蒸発潜熱をエネルギーとして消費する。従って燃料電池の性能を向上することを目的として、加湿の度合を高くすればするほど消費エネルギーが大きくなり、また、加湿器本体や加湿器から燃料電池までのガス配管での放熱による熱損失も増大してしまうという問題があった。
このような課題を抜本的に解決するには、より低いガス加湿量で燃料電池を運転する必要がある。しかし、通常の構成の固体高分子型燃料電池を低加湿領域で運転すると、電解質膜の含水量が低下して性能が大幅に低下する。低加湿領域で燃料電池を運転するには電解質膜を湿潤に保つ工夫が必要になる。その方法としては、以下のような技術が公知になっている。
【0007】
下記特許文献1には、ガス拡散層に吸水性樹脂または吸水性無機物を分散配合した電極が開示されている。しかしながら、この従来技術は、ガス拡散層の空孔部に吸水性物質を含浸分散させるため、空孔率が低下してガス拡散性を低下させるという欠点がある。とくに吸水性樹脂を用いた場合、樹脂が水で膨潤して空孔率を低下させる。また、有機系の吸水性物質は燃料電池内における高温多湿の過酷な条件下で長期間安定ではない。
また下記特許文献2には、シリカ、アルミナ等の親水性無機微粒子をカーボンとともにガス拡散層に塗布し、触媒層とガス拡散層との間に親水層を設けた固体高分子型燃料電池が開示されている。しかしながら、この従来技術は、高分子電解質膜の乾燥は抑制されるものの、親水性無機微粒子が触媒層近傍に配されているために、触媒層表面に水が滞留し触媒層にガスを連続的に供給することが困難になるという欠点がある。また親水性無機微粒子の使用量が増加するとガス拡散層の空孔率が減少し,ガス供給性が低下する恐れがある。さらにまた、親水層の厚みが薄いために、そこに蓄えられた水の蒸発による加湿効果は低い。また特許文献2では、触媒層と拡散層の間に薄い親水性物質の層を設けることが特徴になっている。しかし薄い親水層に水が蓄積されるとガスが通るための空間が閉塞し易く、いわゆるフラッディング現象が顕著になり、性能が低下する。
また、触媒層内部に親水材料を適用して電解質膜を湿潤に保つ技術としては、下記特許文献3が知られている。しかし、触媒層は拡散層よりもはるかに薄い層であるために水の蓄積量が小さく、また、触媒層自体が親水性である場合には触媒層表面に水が蓄積し、水による被覆で触媒がガスと接触し難くなる。この状態もいわゆるフラッディング現象であり、燃料電池の性能が大幅に低下する。
また、低加湿条件の運転では、固体高分子型燃料電池のカソード面内において、ガス上流側では低加湿ガスによって乾燥しやすく、下流側は反応生成水によって湿潤になりやすいために、その水分分布によって面内が均一に利用されなくなり性能が低下するという課題がある。
【0008】
【特許文献1】
特開平7−326361号公報
【特許文献2】
特開平11−45733号公報
【特許文献3】
特開平6−275282号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明の目的は、高分子電解質膜を湿潤状態に保つことができ、かつ触媒層にガスを効率よく連続的に供給することができることから、電池効率を高めることが可能となり、なおかつ運転コストも抑制される固体高分子型燃料電池およびその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、プロトン伝導性の高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜の両側に配置されたアノード電極およびカソード電極と、前記両電極にガスを供給するガス流路とを備え、前記アノード電極およびカソード電極は、前記高分子電解質膜と接する触媒層と、前記ガス流路から供給されたガスを前記触媒層に拡散するガス拡散層とからなる固体高分子型燃料電池において、
前記カソード電極に含まれる前記ガス拡散層が、炭素含有材料から構成されているとともに前記炭素含有材料の表面が親水性に改質されていることを特徴とする固体高分子型燃料電池である。
請求項2の発明は、前記炭素含有材料が炭素繊維である請求項1に記載の固体高分子型燃料電池である。
請求項3の発明は、前記炭素繊維の表面が、親水性材料で被覆されていることを特徴とする請求項2に記載の固体高分子型燃料電池である。
請求項4の発明は、前記親水性材料が、金属酸化物であることを特徴とする請求項3に記載の固体高分子型燃料電池である。
請求項5の発明は、前記炭素繊維の表面の親水性材料の被覆が、前記被覆部と前記触媒層および/またはガス流路を構成する材料との接触部において除去されていることを特徴とする請求項3または4に記載の固体高分子型燃料電池である。
請求項6の発明は、プロトン伝導性の高分子電解質膜の両側に、触媒層およびガス拡散層からなるアノード電極およびカソード電極をそれぞれ設け、前記両電極の外側にガス流路を設ける工程を有する請求項1に記載の固体高分子型燃料電池を製造する方法であって、
炭素含有材料の表面を親水性に改質し、これを前記カソード電極に含まれるガス拡散層として用いることを特徴とする固体高分子型燃料電池の製造方法である。
請求項7の発明は、炭素含有材料が炭素繊維であり、前記炭素繊維を金属フッ化物含有水溶液に浸漬することにより、前記炭素繊維の表面が、前記金属フッ化物含有水溶液から析出する金属酸化物で被覆されることを特徴とする請求項6に記載の固体高分子型燃料電池の製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
図1は、本発明の固体高分子型燃料電池の一例を説明するための断面図である。図1において、固体高分子型燃料電池11は、プロトン伝導性の高分子電解質膜12と、高分子電解質膜12の両側に配置されたアノード電極13およびカソード電極14と、両電極にガスを供給するガス流路15、15’とを備え、アノード電極13は、高分子電解質膜12と接する触媒層131と、ガス流路15から供給されたガスを触媒層131に拡散するガス拡散層132とからなる。同様に、カソード電極14は、高分子電解質膜12と接する触媒層141と、ガス流路15’から供給されたガスを触媒層141に拡散するガス拡散層142とからなる。なお、ガス流路15、15’は、ガス流路を構成する材料、すなわちセパレータ板16、16’にそれぞれ凹部を複数箇所設けることにより形成されている。上記の燃料電池自体の構造は従来技術と同様であるが、本発明ではカソード電極14に含まれるガス拡散層142が炭素含有材料から構成されているとともに、この炭素含有材料の表面が親水性に改質されていることを特徴としている。
【0012】
高分子電解質膜12としては燃料電池内の環境においても安定で、プロトン伝導性とガスバリア性が高く、電子導電性のないものを好適に用いることができる。一般にはパーフルオロ系主鎖にスルホン酸基がついた高分子電解質膜を用いることができる。
【0013】
アノード電極13に含まれる触媒層131としては、例えば白金と貴金属類(ルテニウム、ロジウム、イリジウムなど)との合金、白金と卑金属(バナジウム、クロム、コバルト、ニッケルなど)との合金等をカーボンブラック微粒子に担持させたもの等を使用することができる。
カソード電極14に含まれる触媒層141としては、例えば白金をカーボンブラック微粒子に担持させたものや白金黒等を使用することができる。
【0014】
前記のように本発明は、カソード電極14に含まれるガス拡散層142が炭素含有材料から構成されているとともに、この炭素含有材料の表面が親水性に改質されていることを特徴としている。触媒層141はガス拡散層142と接しているので、触媒層141表面の水は親水性が高いガス拡散層142の方向に速やかに移動する。その結果、触媒層表面に水が滞留し触媒層にガスを連続的に供給することが困難になるという従来の課題が解決される。炭素含有材料としては、炭素繊維を採用するのが好ましい。具体的には、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボン不織布等の炭素繊維で形成された多孔性材料が挙げられる。また炭素繊維の径は、例えば5〜20μmが好ましい。なお、本発明でいう親水性とは、固体表面に対して接触角が例えば0〜10度が例示される。
【0015】
炭素含有材料、とくに炭素繊維の表面は、厚さ50nm〜1μmの親水性材料で被覆されているのが好ましい。また炭素繊維の被覆量は、例えば直径10μmの炭素繊維で構成されている材料の場合、炭素含有材料の重量に対して2〜15%の重量であることが好ましい。なお、ここでいう「炭素繊維の表面」とは、炭素繊維で構成される多孔性材料の内部表面を含む全表面を意味する。
親水性材料で被覆された炭素繊維を用いた場合、ガス拡散層142に移動した水は、親水性に改質された連続した層を有する炭素繊維一本一本の表面を覆うように広がり、その結果ガス拡散層142内部の水表面積が非常に大きくなり、蒸発速度が高くなる。また水が過多の部位から乾燥している部位へ移動することが促進される。この水蒸気によって、ガス流路15’から供給されたガスは触媒層141に到達する過程で十分に加湿される。その結果、より低加湿状態のガスを燃料電池に供給しても従来と同等の性能を維持できる。そのため、外部加湿器が消費するエネルギーが従来より小さくなる。また外部加湿器から燃料電池にガスを供給する配管の温度を従来より低くすることが可能となり、放熱によるエネルギー損失が低減される。また、より低加湿状態で運転することにより電極内の水滞留による性能低下現象、いわゆるフラッディングが起こりにくくなる。
なお、ここで述べている低加湿運転条件とは、電池本体の温度が75〜80℃であるなら、供給ガスの露点が電池本体温度よりも概ね10℃以上低い領域、電池本体の温度が70〜75℃では供給ガスの露点が電池本体温度よりも概ね15℃以上低い領域、電池本体の温度が60〜70℃では供給ガスの露点が電池本体温度よりも概ね20℃以上低い領域を指す。
【0016】
本発明では、固体高分子型燃料電池内部で最も空間体積の大きい拡散層全体を利用するために、容易にガスが通るための空間が水で閉塞することがない。後述のように、高加湿領域で長時間運転した場合に限るとフラッディングすることがあるが、低加湿領域ではフラッディングすることはない。
また、ガス拡散層材料である炭素含有材料の表面全体が親水化されているために、拡散層内部の水は表面積が非常に大きい状態になる。従って蒸発速度が大きく、低加湿状態のガスが拡散層を通過する際に、ガスを効率的に加湿することができる。従って電解質膜の含水量の低下を抑制することが出来る。
さらにガス拡散層表面の親水層が拡散層面全体で連続しているために、面内で水が過多の部分から水が不足している部分に容易に水が移動する。従って水過多によるフラッディングや水不足によるイオン伝導度低下が解消され、面全体が有効に使用されるようになる。その結果燃料電池の出力が向上する。
【0017】
炭素含有材料の表面を親水性に改質する方法としては、とくに制限されず、公知の各種方法を採用することができる。
なお、炭素含有材料表面のプラズマ処理、コロナ処理、陽極酸化処理により物質表面に親水基を形成する方法が知られているが、該方法は炭素含有材料として多孔性材料を用いた場合、その内部まで十分に親水化することが困難なうえに、長期間にわたって親水性を維持することができないという欠点がある。
そこで本発明者らは鋭意検討した結果、多孔性材料を用いた場合でも内部まで十分に親水化することができ、長期間にわたって親水性を維持することができる材料および方法を見出した。
すなわち該材料としては、金属酸化物を挙げることができる。とくに酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化珪素(SiO2)が好ましい。
次に該方法としては、例えば、気相から薄膜を得るCVD法、金属アルコキシドを加水分解して金属酸化物を得るゾルゲル法、有機系金属錯体を熱分解する方法等が挙げられるが、とくに金属フッ化物水溶液から酸化物薄膜を析出させる、いわゆる液相析出法(LPD:Liduid Phase Deposition法)が好ましい。具体的には、炭素含有材料、例えば炭素繊維を金属フッ化物含有水溶液に浸漬し、炭素繊維の表面を金属フッ化物含有水溶液から析出する金属酸化物で被覆するという方法である。
【0018】
液相析出法は、大型のガス拡散層材料を大量に処理することができること、炭素繊維で構成される複雑な形状の多孔質材料であってもその内部まで均一な被覆が可能であること、処理コスト等の面でとくに優れている。また、常温に近い温度で被覆が可能であるため、処理エネルギーが少なくてすむという優位点がある。
【0019】
また、前記のゾルゲル法は、金属アルコキシドを含む溶液にガス拡散層材料を浸漬し、乾燥し、500℃前後の焼成を行う方法であり、この方法でも金属酸化物の被膜が達成される。ゾルゲル法は、SiO2、Al2O3、TiO2等の高純度の金属酸化物薄膜を得ることができる。
【0020】
なお、親水性材料の被覆の厚さは、ガス拡散層142の空孔部体積を減少させず、かつ剥離しにくいという観点から薄い方が望ましい。ただし薄すぎると被覆欠陥により親水性の改質効果が発現しにくい場合がある。
【0021】
また、被覆する親水性材料が金属酸化物である場合、この材料は非導電性材料であるので、抵抗増大の要因になる可能性がある。そのような場合、ガス拡散層142と触媒層141および/またはガス流路を構成する材料、すなわちセパレータ板との接触部を僅かに研磨して、その部分に導電部を形成させることが有効である。
【0022】
本発明の固体高分子型燃料電池11は、高分子電解質膜12の両側に、触媒層131,141およびガス拡散層132,142からなるアノード電極13およびカソード電極14をそれぞれ設け、前記両電極の外側にガス流路15,15’を設けることにより製造することができる。触媒層131,141は高分子電解質膜12上に形成する方法と、ガス拡散層132,142の片面上に形成する方法と、独立膜として形成する方法のいずれも採用可能である。
なお、セパレータ板16、16’は一般的にはカーボン板が用いられる。
【0023】
前記のようにして構成された燃料電池は、従来と同様に電池治具に組み込まれ、アノード電極に例えば加湿した水素を、カソード電極に加湿した空気を含む酸化剤ガスを供給することにより発電を行う。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明する。
実施例1
(炭素含有材料の表面の親水性改質処理)
六フッ化チタン酸アンモニウム0.1モル/l、ホウ酸0.2モル/lを含む水溶液中にカーボンペーパー(東レ社製 TGP−H−090)を浸漬し、脱泡した後に、30℃に保持して20時間処理し、ガス拡散層とした。処理後のカーボンペーパーは酸化チタン薄膜で被覆され、酸化チタン層による干渉色を呈していた。処理前後の重量差からカーボンペーパー1cm3当たり、1.5mgの酸化チタンが被覆されたことがわかった。酸化チタンの被覆体積は、その比重から換算すると約0.38×10−3cm3となり,カーボンペーパーの空孔体積をほとんど狭くしていないことがわかる。従って被覆処理が直接ガス拡散を妨げる原因にはならないといえる。
次に、処理前のカーボンペーパーと処理後のカーボンペーパーを10秒間純水に浸漬し重量法にて吸水量を比較した。処理後は処理前に比較して単位面積あたり約10倍の水を保持しており、被覆によってカーボンペーパーの親水性が著しく向上していることがわかった。この被覆されたカーボンペーパーを#2000番の耐水研磨紙で僅かに研磨してセパレータ板や触媒層と接する面の被覆層を除去した。
【0025】
(触媒層の形成)
触媒としては、カーボンブラック(アセチレンブラック)上に触媒金属を担持したものを用いた。カソード触媒としては白金を50重量%担持したもの、アノード触媒としては白金−ルテニウム系金属を50重量%担持したものを用いた。
触媒粒子1重量部にパーフルオロ系高分電子解質9重量%溶液(旭硝子社製FSS−1)5重量部、水1重量部を添加し、攪拌混合して均一な状態のペーストを得た。この触媒ペーストを厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にスクリーン印刷した後に乾燥を行った。この触媒層付きフィルムで高分子電解質膜(旭化成製aciplex膜,厚さ50μm)を挟み150℃で2分間ホットプレスし、PETフィルムを除去することで高分子電解質膜上に触媒層を形成した。触媒層は縦横50mmの正方形状に形成した。
【0026】
(電池の形成)
前述の触媒層付き高分子電解質膜をガス拡散層ではさみ,さらにガス流路溝を設けたカーボン板で挟み、図1に示したような固体高分子型燃料電池とした。ガス拡散層としては、カソード電極側は親水性改質処理したカーボンペーパー、アノード電極側は親水性改質処理をしていないカーボンペーパーを用いた。
【0027】
(電池の運転)
この燃料電池にアノード電極側には水素ガスを、カソード電極側には常圧の空気を供給した。水素ガスの利用率は70%に,空気側は酸素利用率が40%になるように流量を設定した。ガスは外部加湿器で加湿を行ってから電池に供給した。また電池の温度は80℃になるように温度調節した。供給ガスの湿度についてはアノード側は露点65℃に,カソード側は所定の露点になるように外部加湿器を調節した。この電池を電流密度300mA/cm2で運転し、始動から24時間経過時点の出力電圧を測定した。表1に加湿温度に対する電池電圧,電池抵抗変化を示した。
【0028】
比較例1
カソード電極側のガス拡散層に親水性改質処理を施していないカーボンペーパーを用いることのほかは実施例1と同様に電池の形成・運転を行った。表1に加湿温度に対する電池電圧、電池抵抗変化を示した。
【0029】
比較例2
親水性改質処理を以下の手順で行うこと以外は実施例1と同様に電池の形成・運転を行った。
(親水性改質処理)
平均粒径0.5μmの酸化チタン粉末1重量部にバインダーとしてパーフルオロ系高分電子解質9重量%溶液(旭硝子社製FSS−1)3重量部、水3重量部を添加し、攪拌混合して均一な状態のペーストを得た。このペーストをカーボンペーパーの片面にスクリーン印刷した後に乾燥した。次に、処理前のカーボンペーパーと処理後のカーボンペーパーを10秒間純水に浸漬し重量法にて吸水量を比較した。処理後は処理前に比較して単位面積あたり約3倍の水を保持しており、酸化チタン粒子の塗布によってカーボンペーパーの親水性が向上していることがわかった。形成された親水層は、触媒層と接するように配置された。
【0030】
実施例2
処理時間を5時間とすること以外は実施例と同様に電池の形成・運転を行った。処理前後の重量差からカーボンペーパー1cm3当たりの被覆量は0.2mgであることがわかった。
実施例1と同様の方法でカーボンペーパーの吸水量を比較したところ,処理後は処理前に比較して単位面積あたり約3倍の水を保持していた。
表1に加湿温度に対する電池電圧、電池抵抗変化を示した。
【0031】
実施例3
処理時間を40時間とすること以外は実施例と同様に電池の形成・運転を行った。処理前後の重量差からカーボンペーパー1cm3当たりの被覆量は 2.5mgであることがわかった。
実施例1と同様の方法でカーボンペーパーの吸水量を比較したところ、処理後は処理前に比較して単位面積あたり約10倍の水を保持していた。
表1に加湿温度に対する電池電圧、電池抵抗変化を示した。
【0032】
実施例4
親水性改質処理を以下の手順で行うこと以外は実施例1と同様に電池の形成・運転を行った。
表1に加湿温度に対する電池電圧変化を示した。また表1に加湿温度に対する電池抵抗を示した。
表1に加湿温度に対する電池電圧、電池抵抗変化を示した。
(親水性改質処理)
珪フッ化水素酸2モル/l溶液にシリカゲルを可能な限り溶解させ、この溶液に0.024モル/lの濃度となるようにホウ酸を溶解した水溶液中にカーボンペーパーを浸漬し、水溶液を30℃で20時間保持してカーボンペーパーをシリカ薄膜で被覆した。カーボンペーパー1cm3当たり、0.9mgのシリカが被覆されたことがわかった。処理前のカーボンペーパーと処理後のカーボンペーパー10秒間純水に浸漬し吸水量を比較したところ、処理後は処理前に比較して単位面積あたり約8倍の水を保持しており、被覆によってカーボンペーパーの親水性が著しく向上していた。この被覆されたカーボンペーパーを#2000番の耐水研磨紙で僅かに研磨してセパレータ板や触媒層と接する面の被覆層を除去した。
表1に加湿温度に対する電池電圧、電池抵抗変化を示した。
【0033】
実施例5
親水性改質処理を以下の手順で行うこと以外は実施例1と同様に電池の形成・運転を行った。
表1に加湿温度に対する電池電圧、電池抵抗変化を示した。
(親水性改質処理)
チタンテトライソプロポキシド1重量部にジエタノールアミン0.5重量部、イソプロパノール50重量部を添加した溶液にカーボンペーパーを浸漬して引き上げ、100℃で10分間乾燥後、さらに300℃で1時間加熱して有機成分を除去し、酸化チタン薄膜を被覆した。加熱処理時に酸化チタン膜の一部が剥離脱落した。カーボンペーパー1cm3当たり、3mgの酸化チタンが被覆されたことがわかった。処理前のカーボンペーパーと処理後のカーボンペーパー10秒間純水に浸漬し吸水量を比較したところ、処理後は処理前に比較して単位面積あたり約6倍の水を保持しており、被覆によってカーボンペーパーの親水性が著しく向上していた。この被覆されたカーボンペーパーを#2000番の耐水研磨紙で僅かに研磨してセパレータ板や触媒層と接する面の被覆層を除去した。
【0034】
実施例6
(炭素含有材料の表面の親水性改質処理)
実施例1と同様に親水性改質処理を行った。
(触媒層の形成)
触媒としては,カーボンブラック上に触媒金属を担持したものを用いた。カソード触媒としては白金を50重量%担持したもの、アノード触媒としては白金−ルテニウム系金属を50重量%担持したものを用いた。
カソード用触媒粒子1重量部にパーフルオロ系高分電子解質9重量%溶液(旭硝子社製FSS−1)5重量部、水1重量部を添加し、攪拌混合して均一な状態のカソード用ペーストを得た。
次にアノード用触媒粒子1重量部にパーフルオロ系高分電子解質9重量%溶液(旭硝子社製FSS−1)7重量部、水1重量部を添加し、攪拌混合して均一な性状のアノード用ペーストを得た。これらの触媒ペーストを25μmのPETフィルム上にスクリーン印刷した後に乾燥を行い、転写用の触媒層を得た。この触媒層付きフィルムで高分子電解質膜(旭化成社製aciplex膜,厚さ50μm)を挟み150℃で2分間ホットプレスすることで高分子電解質膜上に触媒層を転写した。触媒層は縦横50mmの正方形状に形成した。
(電池の形成)
実施例1と同様に電池の形成を行った。
(電池の運転)
この燃料電池にアノード側には水素ガスを、カソード側には常圧の空気を供給した。水素ガスの利用率は80%に,空気側は酸素利用率が50%になるように流量を設定した。ガスは外部加湿器で加湿を行ってからセルに供給した。またセルの温度は75℃になるように温度調節した。供給ガスの湿度についてはアノード側は露点65℃に,カソード側は所定の露点になるように外部加湿器を調節した。このセルを電流密度250mA/cm2で運転し、始動から24時間経過時点の出力電圧を測定した。表1に加湿温度に対するセル電圧,セル抵抗変化を示した。
また、図3に実施例1〜実施例6で得られた各燃料電池における、カソードガス露点に対する出力電圧を示した。
【0035】
【表1】
【0036】
表1より実施例1の燃料電池は比較例2よりも抵抗が低く、特に空気の露点が65℃以下の低加湿領域ではガス拡散層の表面が親水性に改質されているための効果で、抵抗が顕著に低下している。したがって、本発明によれば、ガス拡散層の加湿効果により、高分子電解質膜の抵抗が低下して燃料電池の性能が向上する。その効果は低加湿領域で顕著になる。また表1から、実施例1の燃料電池は、ガス拡散層を構成する材料の表面を親水性の高い金属酸化物で被覆することによって、比較例1または実施例2の燃料電池よりも電圧が高く良好な性能を示すことがわかる。特にカソード電極に供給するガスである空気の露点が65℃以下の低加湿領域では親水性改質効果が顕著に現れ、性能向上に寄与していることがわかる。
表1より、実施例2の燃料電池は、実施例1に比較して拡散層の親水性改質処理時間が短く、カーボンペーパー表面が十分に親水性皮膜で被覆されていない。そのために低加湿領域での性能向上効果が小さいものと考えられる。
表1より、実施例3の燃料電池は,実施例1に比較して親水化処理時間が長く、被覆量が多くなっているが、カーボンペーパーの吸水量は同じであり、燃料電池の性能も実施例1と同等であった。すなわち該被覆を実施例1以上に厚くしても、燃料電池の性能向上効果は変わらないといえる。
表1より、実施例4のように金属酸化物としてシリカを使用してもガス拡散層の親水性改質処理が可能であり、同様の効果が得られる。
表1より、実施例5のようにゾルゲル法を適用してもガス拡散層の親水性改質処理が可能であり、同様の効果が得られる。
表1より、実施例6の燃料電池は実施例1の触媒層の組成と運転条件の変更を行ったものであるが、低加湿運転条件下で実施例1の場合よりもさらに高い出力電圧が得られた。
【0037】
【発明の効果】
請求項1の発明は、プロトン伝導性の高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜の両側に配置されたアノード電極およびカソード電極と、前記両電極にガスを供給するガス流路とを備え、前記アノード電極およびカソード電極は、前記高分子電解質膜と接する触媒層と、前記ガス流路から供給されたガスを前記触媒層に拡散するガス拡散層とからなる固体高分子型燃料電池において、前記カソード電極に含まれる前記ガス拡散層が、炭素含有材料から構成されているとともに前記炭素含有材料の表面が親水性に改質されていることを特徴とする固体高分子型燃料電池であるので、高分子電解質膜を湿潤状態に保つことができ、かつ触媒層にガスを効率よく連続的に供給することができることから、電池効率を高めることが可能となり、なおかつ運転コストも抑制される固体高分子型燃料電池が提供される。
【0038】
請求項2の発明は、前記炭素含有材料が炭素繊維である請求項1に記載の固体高分子型燃料電池であるので、高分子電解質膜を湿潤状態に保つことができ、かつ触媒層にガスを効率よく連続的に供給することができることから、電池効率を高めることが可能となり、なおかつ運転コストも抑制される固体高分子型燃料電池が提供される。
【0039】
請求項3の発明は、前記炭素繊維の表面が、親水性材料で被覆されていることを特徴とする請求項2に記載の固体高分子型燃料電池であるので、ガス拡散層内部の空孔部を閉塞させることなく、高分子電解質膜を良好な湿潤状態に保つことができる。
【0040】
請求項4の発明は、前記親水性材料が、金属酸化物であることを特徴とする請求項3に記載の固体高分子型燃料電池であるので、ガス拡散層内部の空孔部を閉塞させることなく、高分子電解質膜を良好な湿潤状態に保つことができる。
【0041】
請求項5の発明は、前記炭素繊維の表面の親水性材料の被覆が、前記被覆部と前記触媒層および/またはガス流路を構成する材料との接触部において除去されていることを特徴とする請求項3または4に記載の固体高分子型燃料電池であるので、燃料電池の抵抗が減少し、電池性能を高めることができる。
【0042】
請求項6の発明は、プロトン伝導性の高分子電解質膜の両側に、触媒層およびガス拡散層からなるアノード電極およびカソード電極をそれぞれ設け、前記両電極の外側にガス流路を設ける工程を有する請求項1に記載の固体高分子型燃料電池を製造する方法であって、炭素含有材料の表面を親水性に改質し、これを前記カソード電極に含まれるガス拡散層として用いることを特徴とする固体高分子型燃料電池の製造方法であるので、高分子電解質膜を湿潤状態に保つことができ、かつ触媒層にガスを効率よく連続的に供給することができることから、電池効率を高めることが可能となり、なおかつ運転コストも抑制される固体高分子型燃料電池が得られる。
【0043】
請求項7の発明は、炭素含有材料が炭素繊維であり、前記炭素繊維を金属フッ化物含有水溶液に浸漬することにより、前記炭素繊維の表面が、前記金属フッ化物含有水溶液から析出する金属酸化物で被覆されることを特徴とする請求項6に記載の固体高分子型燃料電池の製造方法であるので、炭素繊維の表面を非常に良好に親水性に改質することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の固体高分子型燃料電池の一例を説明するための断面図である。
【図2】固体高分子型燃料電池の一例を説明するための断面図である。
【図3】実施例1〜実施例6で得られた各燃料電池における、カソードガス露点に対する出力電圧を示す図である。
【符号の説明】
11,21 固体高分子型燃料電池、12,22 高分子電解質膜、13,23 アノード電極、14,24 カソード電極、15,15’,26,26’ ガス流路、131,141,231,241 触媒層、132,142,232,242 ガス拡散層、16,16’,26,26’ セパレータ板。
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子型燃料電池およびその製造方法に関するものであり、詳しくは、高分子電解質膜を湿潤状態に保つことができ、かつ触媒層にガスを効率よく連続的に供給することができることから、電池効率を高めることが可能となり、なおかつ運転コストも抑制される固体高分子型燃料電池およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題に関する意識の高まりからクリーンな発電システムが要求されており、そのシステムの一つとして燃料電池が注目されている。この燃料電池には、使用される電解質の種類から、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型、固体高分子型などがあるが、中でも発電温度の低さや小型化の点で優位である固体高分子型については、研究開発が盛んに進められつつある。
【0003】
図2は、固体高分子型燃料電池の一例を説明するための断面図である。図2において、固体高分子型燃料電池21は、プロトン伝導性の高分子電解質膜22と、高分子電解質膜22の両側に配置されたアノード電極23およびカソード電極24と、両電極にガスを供給するガス流路25、25’とを備えている。アノード電極23は、高分子電解質膜22と接する触媒層231と、ガス流路5から供給されたガスを触媒層231に拡散するガス拡散層232とからなる。同様に、カソード電極24は、高分子電解質膜2と接する触媒層241と、ガス流路25’から供給されたガスを触媒層241に拡散するガス拡散層242とからなる。なお、ガス流路25、25’は、セパレータ板26、26’にそれぞれ凹部を複数箇所設けることにより形成されている。
【0004】
このような固体高分子型燃料電池21は、アノード電極23に燃料ガス(例えば水素ガス)を、カソード電極24に酸化剤(例えば空気または酸素ガス)をそれぞれ供給し、両電極を外部回路(図示せず)で接続することにより、燃料電池として作動することが可能となる。具体的には、まずセパレータ板26に形成されたガス流路25から、アノード電極23に例えば水素ガスが供給される。続いて、水素ガスはガス拡散層232を通過することにより触媒層231に向かって拡散していく。触媒層231に達した水素ガスは、触媒による酸化反応によりプロトンと電子を発生する。このプロトンは固体高分子電解質膜22を通過してカソード電極24に移動する。一方、電子は外部回路(図示せず)を通ってカソード電極24に到達する。カソード電極24では、固体高分子電解質膜22中を通過してきたプロトン、外部回路から送られてきた電子、およびセパレータ板26’に形成されたガス流路25’、ガス拡散層242を介して供給される例えば酸素ガスが、触媒層241により反応し、水に変換される。その際、電極間に起電力が発生するため、電気エネルギーとして取り出すことが可能となる。
【0005】
前記反応を効率よく継続的に行うには,イオン伝導抵抗を低下させることと、両電極の触媒層にガスを連続的に供給することが重要である。イオン伝導抵抗を低下するには高分子電解質を常に水で湿潤状態にしておけばよい。一方、カソード電極で生成した水が触媒層の表面に滞留したり、ガス拡散層中の空孔部が水で閉塞するとガスと触媒層との接触が妨げられるので、前記水は連続的に排出する必要がある。
ガス拡散層中の空孔部が水で閉塞することを回避するために、フッ素系樹脂などを用いて電極材料を撥水化することが広く行われている。とくにガス拡散層は、ガス流路から供給されたガスを触媒層に到達させる供給経路であり、一般的に撥水化されている。しかしながら、このような撥水化を行うとガス拡散層中に水が滞留することは回避できるが、触媒層表面の水がガス拡散層へ移動することを妨げるため、触媒層表面に水が滞留し触媒層にガスを連続的に供給することが困難になる。
【0006】
なお、固体高分子型燃料電池においては前記のように、高分子電解質膜が水分を多く含んでいるほどイオン伝導抵抗が低下して性能が向上する。そのためガスをあらかじめ外部加湿器で加湿して供給し、高分子電解質膜を湿潤状態に保持している。ガスを加湿するために液体の水を気化すると、蒸発潜熱をエネルギーとして消費する。従って燃料電池の性能を向上することを目的として、加湿の度合を高くすればするほど消費エネルギーが大きくなり、また、加湿器本体や加湿器から燃料電池までのガス配管での放熱による熱損失も増大してしまうという問題があった。
このような課題を抜本的に解決するには、より低いガス加湿量で燃料電池を運転する必要がある。しかし、通常の構成の固体高分子型燃料電池を低加湿領域で運転すると、電解質膜の含水量が低下して性能が大幅に低下する。低加湿領域で燃料電池を運転するには電解質膜を湿潤に保つ工夫が必要になる。その方法としては、以下のような技術が公知になっている。
【0007】
下記特許文献1には、ガス拡散層に吸水性樹脂または吸水性無機物を分散配合した電極が開示されている。しかしながら、この従来技術は、ガス拡散層の空孔部に吸水性物質を含浸分散させるため、空孔率が低下してガス拡散性を低下させるという欠点がある。とくに吸水性樹脂を用いた場合、樹脂が水で膨潤して空孔率を低下させる。また、有機系の吸水性物質は燃料電池内における高温多湿の過酷な条件下で長期間安定ではない。
また下記特許文献2には、シリカ、アルミナ等の親水性無機微粒子をカーボンとともにガス拡散層に塗布し、触媒層とガス拡散層との間に親水層を設けた固体高分子型燃料電池が開示されている。しかしながら、この従来技術は、高分子電解質膜の乾燥は抑制されるものの、親水性無機微粒子が触媒層近傍に配されているために、触媒層表面に水が滞留し触媒層にガスを連続的に供給することが困難になるという欠点がある。また親水性無機微粒子の使用量が増加するとガス拡散層の空孔率が減少し,ガス供給性が低下する恐れがある。さらにまた、親水層の厚みが薄いために、そこに蓄えられた水の蒸発による加湿効果は低い。また特許文献2では、触媒層と拡散層の間に薄い親水性物質の層を設けることが特徴になっている。しかし薄い親水層に水が蓄積されるとガスが通るための空間が閉塞し易く、いわゆるフラッディング現象が顕著になり、性能が低下する。
また、触媒層内部に親水材料を適用して電解質膜を湿潤に保つ技術としては、下記特許文献3が知られている。しかし、触媒層は拡散層よりもはるかに薄い層であるために水の蓄積量が小さく、また、触媒層自体が親水性である場合には触媒層表面に水が蓄積し、水による被覆で触媒がガスと接触し難くなる。この状態もいわゆるフラッディング現象であり、燃料電池の性能が大幅に低下する。
また、低加湿条件の運転では、固体高分子型燃料電池のカソード面内において、ガス上流側では低加湿ガスによって乾燥しやすく、下流側は反応生成水によって湿潤になりやすいために、その水分分布によって面内が均一に利用されなくなり性能が低下するという課題がある。
【0008】
【特許文献1】
特開平7−326361号公報
【特許文献2】
特開平11−45733号公報
【特許文献3】
特開平6−275282号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明の目的は、高分子電解質膜を湿潤状態に保つことができ、かつ触媒層にガスを効率よく連続的に供給することができることから、電池効率を高めることが可能となり、なおかつ運転コストも抑制される固体高分子型燃料電池およびその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、プロトン伝導性の高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜の両側に配置されたアノード電極およびカソード電極と、前記両電極にガスを供給するガス流路とを備え、前記アノード電極およびカソード電極は、前記高分子電解質膜と接する触媒層と、前記ガス流路から供給されたガスを前記触媒層に拡散するガス拡散層とからなる固体高分子型燃料電池において、
前記カソード電極に含まれる前記ガス拡散層が、炭素含有材料から構成されているとともに前記炭素含有材料の表面が親水性に改質されていることを特徴とする固体高分子型燃料電池である。
請求項2の発明は、前記炭素含有材料が炭素繊維である請求項1に記載の固体高分子型燃料電池である。
請求項3の発明は、前記炭素繊維の表面が、親水性材料で被覆されていることを特徴とする請求項2に記載の固体高分子型燃料電池である。
請求項4の発明は、前記親水性材料が、金属酸化物であることを特徴とする請求項3に記載の固体高分子型燃料電池である。
請求項5の発明は、前記炭素繊維の表面の親水性材料の被覆が、前記被覆部と前記触媒層および/またはガス流路を構成する材料との接触部において除去されていることを特徴とする請求項3または4に記載の固体高分子型燃料電池である。
請求項6の発明は、プロトン伝導性の高分子電解質膜の両側に、触媒層およびガス拡散層からなるアノード電極およびカソード電極をそれぞれ設け、前記両電極の外側にガス流路を設ける工程を有する請求項1に記載の固体高分子型燃料電池を製造する方法であって、
炭素含有材料の表面を親水性に改質し、これを前記カソード電極に含まれるガス拡散層として用いることを特徴とする固体高分子型燃料電池の製造方法である。
請求項7の発明は、炭素含有材料が炭素繊維であり、前記炭素繊維を金属フッ化物含有水溶液に浸漬することにより、前記炭素繊維の表面が、前記金属フッ化物含有水溶液から析出する金属酸化物で被覆されることを特徴とする請求項6に記載の固体高分子型燃料電池の製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
図1は、本発明の固体高分子型燃料電池の一例を説明するための断面図である。図1において、固体高分子型燃料電池11は、プロトン伝導性の高分子電解質膜12と、高分子電解質膜12の両側に配置されたアノード電極13およびカソード電極14と、両電極にガスを供給するガス流路15、15’とを備え、アノード電極13は、高分子電解質膜12と接する触媒層131と、ガス流路15から供給されたガスを触媒層131に拡散するガス拡散層132とからなる。同様に、カソード電極14は、高分子電解質膜12と接する触媒層141と、ガス流路15’から供給されたガスを触媒層141に拡散するガス拡散層142とからなる。なお、ガス流路15、15’は、ガス流路を構成する材料、すなわちセパレータ板16、16’にそれぞれ凹部を複数箇所設けることにより形成されている。上記の燃料電池自体の構造は従来技術と同様であるが、本発明ではカソード電極14に含まれるガス拡散層142が炭素含有材料から構成されているとともに、この炭素含有材料の表面が親水性に改質されていることを特徴としている。
【0012】
高分子電解質膜12としては燃料電池内の環境においても安定で、プロトン伝導性とガスバリア性が高く、電子導電性のないものを好適に用いることができる。一般にはパーフルオロ系主鎖にスルホン酸基がついた高分子電解質膜を用いることができる。
【0013】
アノード電極13に含まれる触媒層131としては、例えば白金と貴金属類(ルテニウム、ロジウム、イリジウムなど)との合金、白金と卑金属(バナジウム、クロム、コバルト、ニッケルなど)との合金等をカーボンブラック微粒子に担持させたもの等を使用することができる。
カソード電極14に含まれる触媒層141としては、例えば白金をカーボンブラック微粒子に担持させたものや白金黒等を使用することができる。
【0014】
前記のように本発明は、カソード電極14に含まれるガス拡散層142が炭素含有材料から構成されているとともに、この炭素含有材料の表面が親水性に改質されていることを特徴としている。触媒層141はガス拡散層142と接しているので、触媒層141表面の水は親水性が高いガス拡散層142の方向に速やかに移動する。その結果、触媒層表面に水が滞留し触媒層にガスを連続的に供給することが困難になるという従来の課題が解決される。炭素含有材料としては、炭素繊維を採用するのが好ましい。具体的には、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボン不織布等の炭素繊維で形成された多孔性材料が挙げられる。また炭素繊維の径は、例えば5〜20μmが好ましい。なお、本発明でいう親水性とは、固体表面に対して接触角が例えば0〜10度が例示される。
【0015】
炭素含有材料、とくに炭素繊維の表面は、厚さ50nm〜1μmの親水性材料で被覆されているのが好ましい。また炭素繊維の被覆量は、例えば直径10μmの炭素繊維で構成されている材料の場合、炭素含有材料の重量に対して2〜15%の重量であることが好ましい。なお、ここでいう「炭素繊維の表面」とは、炭素繊維で構成される多孔性材料の内部表面を含む全表面を意味する。
親水性材料で被覆された炭素繊維を用いた場合、ガス拡散層142に移動した水は、親水性に改質された連続した層を有する炭素繊維一本一本の表面を覆うように広がり、その結果ガス拡散層142内部の水表面積が非常に大きくなり、蒸発速度が高くなる。また水が過多の部位から乾燥している部位へ移動することが促進される。この水蒸気によって、ガス流路15’から供給されたガスは触媒層141に到達する過程で十分に加湿される。その結果、より低加湿状態のガスを燃料電池に供給しても従来と同等の性能を維持できる。そのため、外部加湿器が消費するエネルギーが従来より小さくなる。また外部加湿器から燃料電池にガスを供給する配管の温度を従来より低くすることが可能となり、放熱によるエネルギー損失が低減される。また、より低加湿状態で運転することにより電極内の水滞留による性能低下現象、いわゆるフラッディングが起こりにくくなる。
なお、ここで述べている低加湿運転条件とは、電池本体の温度が75〜80℃であるなら、供給ガスの露点が電池本体温度よりも概ね10℃以上低い領域、電池本体の温度が70〜75℃では供給ガスの露点が電池本体温度よりも概ね15℃以上低い領域、電池本体の温度が60〜70℃では供給ガスの露点が電池本体温度よりも概ね20℃以上低い領域を指す。
【0016】
本発明では、固体高分子型燃料電池内部で最も空間体積の大きい拡散層全体を利用するために、容易にガスが通るための空間が水で閉塞することがない。後述のように、高加湿領域で長時間運転した場合に限るとフラッディングすることがあるが、低加湿領域ではフラッディングすることはない。
また、ガス拡散層材料である炭素含有材料の表面全体が親水化されているために、拡散層内部の水は表面積が非常に大きい状態になる。従って蒸発速度が大きく、低加湿状態のガスが拡散層を通過する際に、ガスを効率的に加湿することができる。従って電解質膜の含水量の低下を抑制することが出来る。
さらにガス拡散層表面の親水層が拡散層面全体で連続しているために、面内で水が過多の部分から水が不足している部分に容易に水が移動する。従って水過多によるフラッディングや水不足によるイオン伝導度低下が解消され、面全体が有効に使用されるようになる。その結果燃料電池の出力が向上する。
【0017】
炭素含有材料の表面を親水性に改質する方法としては、とくに制限されず、公知の各種方法を採用することができる。
なお、炭素含有材料表面のプラズマ処理、コロナ処理、陽極酸化処理により物質表面に親水基を形成する方法が知られているが、該方法は炭素含有材料として多孔性材料を用いた場合、その内部まで十分に親水化することが困難なうえに、長期間にわたって親水性を維持することができないという欠点がある。
そこで本発明者らは鋭意検討した結果、多孔性材料を用いた場合でも内部まで十分に親水化することができ、長期間にわたって親水性を維持することができる材料および方法を見出した。
すなわち該材料としては、金属酸化物を挙げることができる。とくに酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化珪素(SiO2)が好ましい。
次に該方法としては、例えば、気相から薄膜を得るCVD法、金属アルコキシドを加水分解して金属酸化物を得るゾルゲル法、有機系金属錯体を熱分解する方法等が挙げられるが、とくに金属フッ化物水溶液から酸化物薄膜を析出させる、いわゆる液相析出法(LPD:Liduid Phase Deposition法)が好ましい。具体的には、炭素含有材料、例えば炭素繊維を金属フッ化物含有水溶液に浸漬し、炭素繊維の表面を金属フッ化物含有水溶液から析出する金属酸化物で被覆するという方法である。
【0018】
液相析出法は、大型のガス拡散層材料を大量に処理することができること、炭素繊維で構成される複雑な形状の多孔質材料であってもその内部まで均一な被覆が可能であること、処理コスト等の面でとくに優れている。また、常温に近い温度で被覆が可能であるため、処理エネルギーが少なくてすむという優位点がある。
【0019】
また、前記のゾルゲル法は、金属アルコキシドを含む溶液にガス拡散層材料を浸漬し、乾燥し、500℃前後の焼成を行う方法であり、この方法でも金属酸化物の被膜が達成される。ゾルゲル法は、SiO2、Al2O3、TiO2等の高純度の金属酸化物薄膜を得ることができる。
【0020】
なお、親水性材料の被覆の厚さは、ガス拡散層142の空孔部体積を減少させず、かつ剥離しにくいという観点から薄い方が望ましい。ただし薄すぎると被覆欠陥により親水性の改質効果が発現しにくい場合がある。
【0021】
また、被覆する親水性材料が金属酸化物である場合、この材料は非導電性材料であるので、抵抗増大の要因になる可能性がある。そのような場合、ガス拡散層142と触媒層141および/またはガス流路を構成する材料、すなわちセパレータ板との接触部を僅かに研磨して、その部分に導電部を形成させることが有効である。
【0022】
本発明の固体高分子型燃料電池11は、高分子電解質膜12の両側に、触媒層131,141およびガス拡散層132,142からなるアノード電極13およびカソード電極14をそれぞれ設け、前記両電極の外側にガス流路15,15’を設けることにより製造することができる。触媒層131,141は高分子電解質膜12上に形成する方法と、ガス拡散層132,142の片面上に形成する方法と、独立膜として形成する方法のいずれも採用可能である。
なお、セパレータ板16、16’は一般的にはカーボン板が用いられる。
【0023】
前記のようにして構成された燃料電池は、従来と同様に電池治具に組み込まれ、アノード電極に例えば加湿した水素を、カソード電極に加湿した空気を含む酸化剤ガスを供給することにより発電を行う。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明する。
実施例1
(炭素含有材料の表面の親水性改質処理)
六フッ化チタン酸アンモニウム0.1モル/l、ホウ酸0.2モル/lを含む水溶液中にカーボンペーパー(東レ社製 TGP−H−090)を浸漬し、脱泡した後に、30℃に保持して20時間処理し、ガス拡散層とした。処理後のカーボンペーパーは酸化チタン薄膜で被覆され、酸化チタン層による干渉色を呈していた。処理前後の重量差からカーボンペーパー1cm3当たり、1.5mgの酸化チタンが被覆されたことがわかった。酸化チタンの被覆体積は、その比重から換算すると約0.38×10−3cm3となり,カーボンペーパーの空孔体積をほとんど狭くしていないことがわかる。従って被覆処理が直接ガス拡散を妨げる原因にはならないといえる。
次に、処理前のカーボンペーパーと処理後のカーボンペーパーを10秒間純水に浸漬し重量法にて吸水量を比較した。処理後は処理前に比較して単位面積あたり約10倍の水を保持しており、被覆によってカーボンペーパーの親水性が著しく向上していることがわかった。この被覆されたカーボンペーパーを#2000番の耐水研磨紙で僅かに研磨してセパレータ板や触媒層と接する面の被覆層を除去した。
【0025】
(触媒層の形成)
触媒としては、カーボンブラック(アセチレンブラック)上に触媒金属を担持したものを用いた。カソード触媒としては白金を50重量%担持したもの、アノード触媒としては白金−ルテニウム系金属を50重量%担持したものを用いた。
触媒粒子1重量部にパーフルオロ系高分電子解質9重量%溶液(旭硝子社製FSS−1)5重量部、水1重量部を添加し、攪拌混合して均一な状態のペーストを得た。この触媒ペーストを厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にスクリーン印刷した後に乾燥を行った。この触媒層付きフィルムで高分子電解質膜(旭化成製aciplex膜,厚さ50μm)を挟み150℃で2分間ホットプレスし、PETフィルムを除去することで高分子電解質膜上に触媒層を形成した。触媒層は縦横50mmの正方形状に形成した。
【0026】
(電池の形成)
前述の触媒層付き高分子電解質膜をガス拡散層ではさみ,さらにガス流路溝を設けたカーボン板で挟み、図1に示したような固体高分子型燃料電池とした。ガス拡散層としては、カソード電極側は親水性改質処理したカーボンペーパー、アノード電極側は親水性改質処理をしていないカーボンペーパーを用いた。
【0027】
(電池の運転)
この燃料電池にアノード電極側には水素ガスを、カソード電極側には常圧の空気を供給した。水素ガスの利用率は70%に,空気側は酸素利用率が40%になるように流量を設定した。ガスは外部加湿器で加湿を行ってから電池に供給した。また電池の温度は80℃になるように温度調節した。供給ガスの湿度についてはアノード側は露点65℃に,カソード側は所定の露点になるように外部加湿器を調節した。この電池を電流密度300mA/cm2で運転し、始動から24時間経過時点の出力電圧を測定した。表1に加湿温度に対する電池電圧,電池抵抗変化を示した。
【0028】
比較例1
カソード電極側のガス拡散層に親水性改質処理を施していないカーボンペーパーを用いることのほかは実施例1と同様に電池の形成・運転を行った。表1に加湿温度に対する電池電圧、電池抵抗変化を示した。
【0029】
比較例2
親水性改質処理を以下の手順で行うこと以外は実施例1と同様に電池の形成・運転を行った。
(親水性改質処理)
平均粒径0.5μmの酸化チタン粉末1重量部にバインダーとしてパーフルオロ系高分電子解質9重量%溶液(旭硝子社製FSS−1)3重量部、水3重量部を添加し、攪拌混合して均一な状態のペーストを得た。このペーストをカーボンペーパーの片面にスクリーン印刷した後に乾燥した。次に、処理前のカーボンペーパーと処理後のカーボンペーパーを10秒間純水に浸漬し重量法にて吸水量を比較した。処理後は処理前に比較して単位面積あたり約3倍の水を保持しており、酸化チタン粒子の塗布によってカーボンペーパーの親水性が向上していることがわかった。形成された親水層は、触媒層と接するように配置された。
【0030】
実施例2
処理時間を5時間とすること以外は実施例と同様に電池の形成・運転を行った。処理前後の重量差からカーボンペーパー1cm3当たりの被覆量は0.2mgであることがわかった。
実施例1と同様の方法でカーボンペーパーの吸水量を比較したところ,処理後は処理前に比較して単位面積あたり約3倍の水を保持していた。
表1に加湿温度に対する電池電圧、電池抵抗変化を示した。
【0031】
実施例3
処理時間を40時間とすること以外は実施例と同様に電池の形成・運転を行った。処理前後の重量差からカーボンペーパー1cm3当たりの被覆量は 2.5mgであることがわかった。
実施例1と同様の方法でカーボンペーパーの吸水量を比較したところ、処理後は処理前に比較して単位面積あたり約10倍の水を保持していた。
表1に加湿温度に対する電池電圧、電池抵抗変化を示した。
【0032】
実施例4
親水性改質処理を以下の手順で行うこと以外は実施例1と同様に電池の形成・運転を行った。
表1に加湿温度に対する電池電圧変化を示した。また表1に加湿温度に対する電池抵抗を示した。
表1に加湿温度に対する電池電圧、電池抵抗変化を示した。
(親水性改質処理)
珪フッ化水素酸2モル/l溶液にシリカゲルを可能な限り溶解させ、この溶液に0.024モル/lの濃度となるようにホウ酸を溶解した水溶液中にカーボンペーパーを浸漬し、水溶液を30℃で20時間保持してカーボンペーパーをシリカ薄膜で被覆した。カーボンペーパー1cm3当たり、0.9mgのシリカが被覆されたことがわかった。処理前のカーボンペーパーと処理後のカーボンペーパー10秒間純水に浸漬し吸水量を比較したところ、処理後は処理前に比較して単位面積あたり約8倍の水を保持しており、被覆によってカーボンペーパーの親水性が著しく向上していた。この被覆されたカーボンペーパーを#2000番の耐水研磨紙で僅かに研磨してセパレータ板や触媒層と接する面の被覆層を除去した。
表1に加湿温度に対する電池電圧、電池抵抗変化を示した。
【0033】
実施例5
親水性改質処理を以下の手順で行うこと以外は実施例1と同様に電池の形成・運転を行った。
表1に加湿温度に対する電池電圧、電池抵抗変化を示した。
(親水性改質処理)
チタンテトライソプロポキシド1重量部にジエタノールアミン0.5重量部、イソプロパノール50重量部を添加した溶液にカーボンペーパーを浸漬して引き上げ、100℃で10分間乾燥後、さらに300℃で1時間加熱して有機成分を除去し、酸化チタン薄膜を被覆した。加熱処理時に酸化チタン膜の一部が剥離脱落した。カーボンペーパー1cm3当たり、3mgの酸化チタンが被覆されたことがわかった。処理前のカーボンペーパーと処理後のカーボンペーパー10秒間純水に浸漬し吸水量を比較したところ、処理後は処理前に比較して単位面積あたり約6倍の水を保持しており、被覆によってカーボンペーパーの親水性が著しく向上していた。この被覆されたカーボンペーパーを#2000番の耐水研磨紙で僅かに研磨してセパレータ板や触媒層と接する面の被覆層を除去した。
【0034】
実施例6
(炭素含有材料の表面の親水性改質処理)
実施例1と同様に親水性改質処理を行った。
(触媒層の形成)
触媒としては,カーボンブラック上に触媒金属を担持したものを用いた。カソード触媒としては白金を50重量%担持したもの、アノード触媒としては白金−ルテニウム系金属を50重量%担持したものを用いた。
カソード用触媒粒子1重量部にパーフルオロ系高分電子解質9重量%溶液(旭硝子社製FSS−1)5重量部、水1重量部を添加し、攪拌混合して均一な状態のカソード用ペーストを得た。
次にアノード用触媒粒子1重量部にパーフルオロ系高分電子解質9重量%溶液(旭硝子社製FSS−1)7重量部、水1重量部を添加し、攪拌混合して均一な性状のアノード用ペーストを得た。これらの触媒ペーストを25μmのPETフィルム上にスクリーン印刷した後に乾燥を行い、転写用の触媒層を得た。この触媒層付きフィルムで高分子電解質膜(旭化成社製aciplex膜,厚さ50μm)を挟み150℃で2分間ホットプレスすることで高分子電解質膜上に触媒層を転写した。触媒層は縦横50mmの正方形状に形成した。
(電池の形成)
実施例1と同様に電池の形成を行った。
(電池の運転)
この燃料電池にアノード側には水素ガスを、カソード側には常圧の空気を供給した。水素ガスの利用率は80%に,空気側は酸素利用率が50%になるように流量を設定した。ガスは外部加湿器で加湿を行ってからセルに供給した。またセルの温度は75℃になるように温度調節した。供給ガスの湿度についてはアノード側は露点65℃に,カソード側は所定の露点になるように外部加湿器を調節した。このセルを電流密度250mA/cm2で運転し、始動から24時間経過時点の出力電圧を測定した。表1に加湿温度に対するセル電圧,セル抵抗変化を示した。
また、図3に実施例1〜実施例6で得られた各燃料電池における、カソードガス露点に対する出力電圧を示した。
【0035】
【表1】
【0036】
表1より実施例1の燃料電池は比較例2よりも抵抗が低く、特に空気の露点が65℃以下の低加湿領域ではガス拡散層の表面が親水性に改質されているための効果で、抵抗が顕著に低下している。したがって、本発明によれば、ガス拡散層の加湿効果により、高分子電解質膜の抵抗が低下して燃料電池の性能が向上する。その効果は低加湿領域で顕著になる。また表1から、実施例1の燃料電池は、ガス拡散層を構成する材料の表面を親水性の高い金属酸化物で被覆することによって、比較例1または実施例2の燃料電池よりも電圧が高く良好な性能を示すことがわかる。特にカソード電極に供給するガスである空気の露点が65℃以下の低加湿領域では親水性改質効果が顕著に現れ、性能向上に寄与していることがわかる。
表1より、実施例2の燃料電池は、実施例1に比較して拡散層の親水性改質処理時間が短く、カーボンペーパー表面が十分に親水性皮膜で被覆されていない。そのために低加湿領域での性能向上効果が小さいものと考えられる。
表1より、実施例3の燃料電池は,実施例1に比較して親水化処理時間が長く、被覆量が多くなっているが、カーボンペーパーの吸水量は同じであり、燃料電池の性能も実施例1と同等であった。すなわち該被覆を実施例1以上に厚くしても、燃料電池の性能向上効果は変わらないといえる。
表1より、実施例4のように金属酸化物としてシリカを使用してもガス拡散層の親水性改質処理が可能であり、同様の効果が得られる。
表1より、実施例5のようにゾルゲル法を適用してもガス拡散層の親水性改質処理が可能であり、同様の効果が得られる。
表1より、実施例6の燃料電池は実施例1の触媒層の組成と運転条件の変更を行ったものであるが、低加湿運転条件下で実施例1の場合よりもさらに高い出力電圧が得られた。
【0037】
【発明の効果】
請求項1の発明は、プロトン伝導性の高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜の両側に配置されたアノード電極およびカソード電極と、前記両電極にガスを供給するガス流路とを備え、前記アノード電極およびカソード電極は、前記高分子電解質膜と接する触媒層と、前記ガス流路から供給されたガスを前記触媒層に拡散するガス拡散層とからなる固体高分子型燃料電池において、前記カソード電極に含まれる前記ガス拡散層が、炭素含有材料から構成されているとともに前記炭素含有材料の表面が親水性に改質されていることを特徴とする固体高分子型燃料電池であるので、高分子電解質膜を湿潤状態に保つことができ、かつ触媒層にガスを効率よく連続的に供給することができることから、電池効率を高めることが可能となり、なおかつ運転コストも抑制される固体高分子型燃料電池が提供される。
【0038】
請求項2の発明は、前記炭素含有材料が炭素繊維である請求項1に記載の固体高分子型燃料電池であるので、高分子電解質膜を湿潤状態に保つことができ、かつ触媒層にガスを効率よく連続的に供給することができることから、電池効率を高めることが可能となり、なおかつ運転コストも抑制される固体高分子型燃料電池が提供される。
【0039】
請求項3の発明は、前記炭素繊維の表面が、親水性材料で被覆されていることを特徴とする請求項2に記載の固体高分子型燃料電池であるので、ガス拡散層内部の空孔部を閉塞させることなく、高分子電解質膜を良好な湿潤状態に保つことができる。
【0040】
請求項4の発明は、前記親水性材料が、金属酸化物であることを特徴とする請求項3に記載の固体高分子型燃料電池であるので、ガス拡散層内部の空孔部を閉塞させることなく、高分子電解質膜を良好な湿潤状態に保つことができる。
【0041】
請求項5の発明は、前記炭素繊維の表面の親水性材料の被覆が、前記被覆部と前記触媒層および/またはガス流路を構成する材料との接触部において除去されていることを特徴とする請求項3または4に記載の固体高分子型燃料電池であるので、燃料電池の抵抗が減少し、電池性能を高めることができる。
【0042】
請求項6の発明は、プロトン伝導性の高分子電解質膜の両側に、触媒層およびガス拡散層からなるアノード電極およびカソード電極をそれぞれ設け、前記両電極の外側にガス流路を設ける工程を有する請求項1に記載の固体高分子型燃料電池を製造する方法であって、炭素含有材料の表面を親水性に改質し、これを前記カソード電極に含まれるガス拡散層として用いることを特徴とする固体高分子型燃料電池の製造方法であるので、高分子電解質膜を湿潤状態に保つことができ、かつ触媒層にガスを効率よく連続的に供給することができることから、電池効率を高めることが可能となり、なおかつ運転コストも抑制される固体高分子型燃料電池が得られる。
【0043】
請求項7の発明は、炭素含有材料が炭素繊維であり、前記炭素繊維を金属フッ化物含有水溶液に浸漬することにより、前記炭素繊維の表面が、前記金属フッ化物含有水溶液から析出する金属酸化物で被覆されることを特徴とする請求項6に記載の固体高分子型燃料電池の製造方法であるので、炭素繊維の表面を非常に良好に親水性に改質することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の固体高分子型燃料電池の一例を説明するための断面図である。
【図2】固体高分子型燃料電池の一例を説明するための断面図である。
【図3】実施例1〜実施例6で得られた各燃料電池における、カソードガス露点に対する出力電圧を示す図である。
【符号の説明】
11,21 固体高分子型燃料電池、12,22 高分子電解質膜、13,23 アノード電極、14,24 カソード電極、15,15’,26,26’ ガス流路、131,141,231,241 触媒層、132,142,232,242 ガス拡散層、16,16’,26,26’ セパレータ板。
Claims (7)
- プロトン伝導性の高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜の両側に配置されたアノード電極およびカソード電極と、前記両電極にガスを供給するガス流路とを備え、前記アノード電極およびカソード電極は、前記高分子電解質膜と接する触媒層と、前記ガス流路から供給されたガスを前記触媒層に拡散するガス拡散層とからなる固体高分子型燃料電池において、
前記カソード電極に含まれる前記ガス拡散層が、炭素含有材料から構成されているとともに前記炭素含有材料の表面が親水性に改質されていることを特徴とする固体高分子型燃料電池。 - 前記炭素含有材料が炭素繊維である請求項1に記載の固体高分子型燃料電池。
- 前記炭素繊維の表面が、親水性材料で被覆されていることを特徴とする請求項2に記載の固体高分子型燃料電池。
- 前記親水性材料が、金属酸化物であることを特徴とする請求項3に記載の固体高分子型燃料電池。
- 前記炭素繊維の表面の親水性材料の被覆が、前記被覆部と前記触媒層および/またはガス流路を構成する材料との接触部において除去されていることを特徴とする請求項3または4に記載の固体高分子型燃料電池。
- プロトン伝導性の高分子電解質膜の両側に、触媒層およびガス拡散層からなるアノード電極およびカソード電極をそれぞれ設け、前記両電極の外側にガス流路を設ける工程を有する請求項1に記載の固体高分子型燃料電池を製造する方法であって、
炭素含有材料の表面を親水性に改質し、これを前記カソード電極に含まれるガス拡散層として用いることを特徴とする固体高分子型燃料電池の製造方法。 - 炭素含有材料が炭素繊維であり、前記炭素繊維を金属フッ化物含有水溶液に浸漬することにより、前記炭素繊維の表面が、前記金属フッ化物含有水溶液から析出する金属酸化物で被覆されることを特徴とする請求項6に記載の固体高分子型燃料電池の製造方法。
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