JP2004027139A - インクジェット用インク組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】吐出安定性を保ちながら、普通紙を含むあらゆる材質の記録紙に対して、印字滲みがなく、鮮明な画像を形成できるインクジェット用インクを開発する。
【解決手段】色材及び有機溶媒を含有するインク組成物において、有機溶媒として一般式:CmH2m+1−O−(CH2−CH2−O)n−H・・(1)[但し、式中、m及びnは、4≦m+n≧8、2≦m≧4及び1≦n≧4の要件を満たす数である。]で表されるエチレングリコール系化合物を含有する優れたインク特性を有するインクジェット用インク組成物。さらに、親水基を有する顔料あるいは界面活性剤等を添加することにより特性が向上する。
【選択図】 なし
【解決手段】色材及び有機溶媒を含有するインク組成物において、有機溶媒として一般式:CmH2m+1−O−(CH2−CH2−O)n−H・・(1)[但し、式中、m及びnは、4≦m+n≧8、2≦m≧4及び1≦n≧4の要件を満たす数である。]で表されるエチレングリコール系化合物を含有する優れたインク特性を有するインクジェット用インク組成物。さらに、親水基を有する顔料あるいは界面活性剤等を添加することにより特性が向上する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクを力学的及び熱エネルギーを用いて吐出、飛翔させ被記録材に対して記録を行うインクジェット記録に使用する水性インクに関するものであって、詳細にはインクの吐出安定性を向上させつつ、印字滲みを減少させ、高品位な画像を提供するインクジェット用インク組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録は、力学的及び熱的作用を用いてインク滴を形成し、これを紙などの被記録材に画像を形成させる方法である。このインクジェット記録法は、デジタル信号に応答して媒体上にインク滴を飛翔し記録するノンインパクト記録法の代表的なものであり、電子写真等の記録法に見られるような現像や定着といったプロセスを含まないことから装置の小型化が容易であると同時に高速、かつ、低騒音での記録が可能な方法である。
【0003】
また、このようなオンデマンド型と呼ばれる記録法は記録装置が比較的安価でカラー化が容易であることから、近年では事務用および家庭用パーソナルコンピューターの出力機器として広く用いられるようになってきた。この記録法に最も望まれている特性は電子写真なみの高画質で、高速、かつ、安定的に印刷を行うことである。
【0004】
従来のインクジェット記録用のインクとしては、色材となる各種水溶性染料あるいは顔料を水もしくは水と有機溶剤との混合液に溶解させた染料系インク、あるいは顔料系インクが使用されている。しかしながら、従来のインクには、染料系インク、顔料系インクともに吐出安定性、長期貯蔵安定性および微細なノズル先端で固化しない性質を保ちつつ、印字滲みがないことなど、さらに高品位の画像品質を保つことが課題となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、吐出安定性を保ちながら、普通紙を含むあらゆる材質の記録紙に対して、印字滲みがなく、鮮明な高品位画像を形成できるインクジェット用インクを開発することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定のエチレングリコール系有機溶媒を用いることにより、耐目詰まり性に優れ、連続印刷を行っても安定した吐出、すなわちインクの追従性が良好で、長期の保存安定性にも優れ、かつ、色材の種類に影響されないインク組成物が得られることを見出した。本発明はかかる知見に基づくものである。
【0007】
すなわち、本発明は、色材及び有機溶媒を含有するインク組成物であって、該有機溶媒として一般式:CmH2m+1−O−(CH2−CH2−O)n−H・・(1)[但し、式中、m及びnは、4≦m+n≧8、2≦m≧4及び1≦n≧4の要件を満たす数である。]で表されるエチレングリコール系化合物を含有することを特徴とする新規なインクジェット用インク組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記インクジェット用インク組成物を含有するインクを組み合わせたインクセットを提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の上記一般式(1)で表されるエチレングリコール系有機溶媒において、その理由は明らかでないが、式中のmとnとが4≦m+n≧8、2≦m≧4及び1≦n≧4の条件を満たすことが、吐出安定性及び高品位な画像を形成するうえで極めて重要である。mの数が小さいと、印字滲みが生じ易く、他方、mの数が4を超えると色材の溶解性や分散性が低下し、吐出安定性が悪くなる。また、nの数が4を超えるとインクが気泡性となり、インクの不吐出が発生するようになり好ましくない。すなわち、本発明は、上記mとnの関係を満たす一般式(1)で表されるエチレングリコール系化合物をインク溶媒として用いることによって、耐目詰まり性に優れ、連続印刷を行っても安定した吐出、すなわちインクの追従性が良好で、印字滲みがなく、かつ、色材の種類に影響されない新規なインクジェット用インク組成物(なお、以下において単にインク組成物と記す場合がある)の開発に成功したものである。
【0009】
本発明のインク組成物に配合する色材としては、表面に親水基を有する顔料の配合によりインクの吐出安定性が一層向上し、印字濃度が高く、滲みのない高品位な画像を得ることができる。特に、親水基として、カルボキシル基、またはスルホン酸基を有する顔料は、インクの吐出安定性が一層向上し、印字濃度が高く、滲みのない鮮明な画像が得られる。この顔料として、具体的には、表面にスルホン酸基(CAB−O−JET200)、あるいはカルボキシル基(CAB−O−JET300)が結合されているカーボンブラック(いずれも、キャボット社製)を挙げることができる。特に、インクの吐出安定性が向上した理由としては、顔料の表面に親水基を有することにより、水に対する顔料の分散状態がよくなり、凝集によるヘッドノズルの詰まりが防止されて、インクの安定吐出が可能となった為と考えられる。
【0010】
また、本発明のインク組成物は、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤を臨界ミセル濃度以上含有せしめることによっても顔料の分散状態が向上し、インクの安定した吐出が得られる。
アニオン系界面活性剤としては、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、アルキルアリルおよびアルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩およびアルキルアリールエーテルリン酸塩などがある。
カチオン系界面活性剤としては、アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、テトラアルキルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジニウム塩およびイミダゾリニウム塩などが挙げられる。
【0011】
また、ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ショ糖エステル、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシドあるいはポリオキシエチレンアルキルアミンなどを使用することができる。
【0012】
本発明のインク組成物に色材として好適に使用し得る他の染料、顔料としては、以下に示す色材が例示される。
染料は、水溶性染料であれば基本的に使用することが可能であり、酸性染料、直接染料、反応性染料などが上げられるが、これらの中でも、耐水性、耐光性に優れる染料が適している。
染料をカラーインデックスナンバー(CI)で示すと以下の如きCIを有する染料が例示される。
【0013】
ブラックインク染料としては、フードブラック2、ダイレクトブラック19,22,32,38,51,56,71,74,75,77,154,168,171リアクティブブラック3,4,7,11,12,17などである。
シアンインク染料としては、アシッドブルー7,9,29,45,92,249、ダイレクトブルー1,2,6,15,22,25,71,76,79,86,90,98,163,165,199,202リアクティブブルー1,2,7,14,15,23,32,38,41,63,80,95などが挙げられる。
【0014】
また、マゼンタインク染料としては、アシッドレッド1,8,13,14,18,26,27,35,37,42,52,82,87,89,92,97,106,111,114,115,134,186,249,254,289、ダイレクトレッド1,4,9,13,17,20,28,31,39,80,81,83,89,225,227、ダイレクトオレンジ26,29,62,102リアクティブレッド1,14,17,25,26,32,37,44,46,55,60,66,74,79,96,97,141,147,181 63などを挙げることができる。
【0015】
さらに、イエローインク染料としては、アシッドイエロー1,7,17,23,42,44,79,142、ダイレクトイエロー1,12,24,26,33,44,50,86,120,132,142,144,リアクティブイエロー1,5,11,13,14,20,21,22,25,40,47,51,55,65,67などを挙げることができる。
上記染料の含有量については、その種類と、希望する色調などに合わせて適宜調製されるが、通常0.05%〜20%の範囲内であり、好ましくは0.1〜15%の範囲である。
【0016】
本発明のインクジェット用インクに使用する他の顔料としては、特に制限はないが、以下に示す顔料が好適に使用される。
ブラックインク用の顔料としては、インクジェット用インク組成物に従来から使用されているカーボンブラックを使用することができ、具体的には、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラックおよびチャンネルブラックなどである。
シアンインク用の顔料としては、C.I.Pigment Blue 1、2、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17:1、56、60および63などを挙げることができる。
【0017】
また、マゼンタインク用の顔料としては、C.I.Pigment Red 1、2、3、5、7、17、22、23、31、38、48:2(Ba)、48:2(Ca)、48:3(Sr)、48:4(Mn)、49:1、52:2、53:1、57:1、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101、104、105、106、108、112、114、122、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209および219などを挙げることができる。
【0018】
イエローインク用の顔料としては、C.I.Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42、53、55、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、128、138および153などが挙げられる。
【0019】
さらに、本発明のインク組成物には、上記顔料のほかに、例えば、アニリンブラック(C.I.Pigment Black 1)などの黒色有機顔料、C.I.Pigment Orange 1、2、5、7、13、14、15、16、34、36、38、C.I.Pigment Violet 1、2、19、32、C.I.Pigment Green 1、4、36あるいはC.I.Pigment Brown 3、5、25、26などを用いることもできる。
なお、各顔料には、ぬれ性を向上させるために、表面処理などを施してもよい。
【0020】
顔料の含有量は、印字物に要求される色目、濃度、あるいは好ましいインク物性を満たすために決定されるものであって、顔料の比重や嵩密度によっても異なり、特に限定されるものではないが、インク組成物全重量に対して、1〜20重量%が好ましく、1〜15重量%の範囲で使用することがより好ましい。顔料含有量が1重量%未満になると印字濃度を確保することができなくなることがあり、他方20重量%を超えるとインク組成物の粘度特性に構造粘性が生じ、吐出安定性を確保することができなくなることがある。
【0021】
本発明のインクジェット用インクには、顔料分散の補助剤として分散剤を添加してもよい。この分散剤としては、アルカリ可溶型の水溶性樹脂であって、重量平均分子量が1,000〜30,000の水溶性樹脂が好ましく、より好ましくは3,000〜15,000の範囲の水溶性樹脂である。具体的には、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステルなどの疎水性単量体、またはアクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体からなる群から選ばれる2つ以上の単量体からなるブロック共重合体、グラフト共重合体、あるいはランダム共重合体、又はこれらの塩などが挙げられる。これらの樹脂は、塩基を溶解させた水溶液に可溶のアルカリ可溶型樹脂である。さらに、親水性単量体から成るホモポリマー及びそれらの塩でもよい。また、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物などの水溶性樹脂も使用することができる。しかし、樹脂としては、アルカリ可溶型の樹脂を用いた場合の方が、分散液の低粘度化が可能であり、分散も容易である。
【0022】
上記分散剤の使用量は、インクジェット用インク全量に対して、0.1〜10重量%の範囲で使用することが好ましい。分散剤の含有量が0.1重量%未満になるとインク組成物を放置した場合の経時的な顔料の分散安定性が悪化することがあり、他方10重量%を超えるとインク組成物が乾燥した場合に必要となる再分散性を得ることができないことがある。
【0023】
分散剤の溶解性を向上させ、長期保存安定性を得るためには、分散剤中の塩がイオン解離し易いように、インク全体を中性又はアルカリ性に調整することが好ましく、pHが7〜10の範囲で使用することが好ましい。このpH調整剤としては、例えばジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの各種有機アミンあるいは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属の水酸化物等の無機塩基が挙げられる。
最適な塩基種は、選択した顔料および分散剤の種類によって異なるが、不揮発性で安定であって、かつ保水性の高いものが好ましい。塩基の使用量は、分散剤の酸価から計算される量から、それを中和するに必要な塩基量を基本とするが、顔料の分散性の向上、インクのpH調整、記録性能の調整および保湿性の向上などの目的で、酸の当量を上回る量の塩基を用いてもよい。
【0024】
本発明のインクジェット用インク組成物には、上記一般式(1)で表される有機溶剤以外に他の水溶性有機溶媒を添加して用いてもよい。この水溶性有機溶媒としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類、アセトン、ジアセトンアルコールなどのケトンまたはケトンアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類、グリセリン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドンおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが挙げられる。
【0025】
インクジェット用インク中の水溶性有機溶媒の含有量は、インク全重量の5〜60重量%の範囲であり、好ましくは10〜50重量%の範囲である。含有量をこの範囲にすることにより、顔料インクの吐出安定性を確保することができる。水溶性有機溶媒の含有量が多すぎると乾燥不良になることがある。
また、本発明のインクジェット用インクには、前記の成分のほかに必要に応じて所望の物性値を持つ記録液とするために、消泡剤および防腐剤などを添加してもよい。さらにノズルの乾燥防止剤として尿素、チオ尿素、エチレン尿素またはそれらの誘導体を添加してもよい。
消泡剤の具体例としては、エチルアルコールおよびイソプロピルアルコールなどが挙げられる。
【0026】
また、防カビ、防腐、防錆剤の具体例としては、安息香酸、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、ソルビン酸、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ベンジゾチアゾリン−3−オンおよび3,4−イソチアゾリン−3−オンなどが挙げられる。そして、本発明のインクジェット用インクの粘度は、各組成成分の使用量を変えることにより、適宜制御することができるが、本発明の好ましい態様によれば、25mPa・秒以下、好ましくは10mPa・秒以下(25℃)である。粘度がこの範囲内にあると、インクジェット用インクを吐出ヘッドから安定して吐出させることができる。またインク組成物の表面張力についても適宜制御することができるが、20〜50mN/m(25℃)の範囲であることが好ましい。
【0027】
本発明のインクジェット用インク組成物の調製方法は、一般式(1)に示す有機溶媒または水性媒体中に色材と必要に応じて分散剤とを同時に添加し、分散処理を行うことによって製造するとこができる。分散処理としては、特に限定されるものではないが、例えば最初に分散剤とアルカリ中和剤(pH調整剤)および溶解助剤を有機溶媒または水性媒体で均一な溶液にし、次にこの溶液に色材を添加して分散剤成分の浸透を図るプレミキシングを行なった後、さらに分散機により分散を行い、必要に応じて遠心分離処理を行って所望の分散液を得る。最後に、この分散液に前記の各成分を加え、撹拌してインクとする。この分散処理には、一般に使用されるボールミル、ロールミルあるいはサンドミルなどの分散機を用いることができる。
【0028】
【実施例】
次に、本発明を実施例及び比較例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0029】
実施例1〜実施例12、比較例1〜実施例8:
各実施例及び比較例のインク組成物の成分物質及び量割合は表1に示す。なお、表1中の数値は重量%である。
イ)実施例1のインク組成物の調製
一般式(1)のm及びnが1で表される有機溶媒にブラック染料を添加し、室温で完全に溶解させた後、各添加剤の所定量を加え、最後に界面活性剤を添加し、室温で1時間攪拌した後、2.0μmのフィルターで濾過してインク組成物を調製した。
ロ)実施例2〜12のインク組成物の調製
水にブラック顔料を添加して分散させて後、有機溶媒を添加し、各添加剤をの所定量を加え、最後に界面活性剤を添加して、室温で1時間攪拌した後、2.0μmのフィルターで濾過してインク組成物を調製した。
なお、各比較例のインク組成物は本調製法に準じて調製した。
【0030】
【表1】
【0031】
<評価試験>
各実施例及び比較例記載のインクジェット用インクを用いて、PPC用紙に記録を行った。この記録画像の評価試験を以下の方法で行なった。
各実施例の試験結果は表2に、各比較例の試験結果は表3にそれぞれ示す。
【0032】
イ)吐出安定性
シャープ製AJ2000改造機を用いて、各インクの連続印刷時の吐出安定性を評価した。印刷濃度5%として7PPMで連続的に印刷を行ったときの印字可能枚数を検討した。インクタンクにインクを充填して空になるまでの印刷可能枚数は約200枚である。実験では空になった時点で、インクを再充填し、この作業を印刷できなくなるまで繰り返し、そのときまでに印刷できた枚数を印刷可能枚数とした。
印刷枚数が200枚を超える場合を○として、150〜200枚であった場合は△、150枚以下は×とした。
【0033】
ロ)滲み性
PPC用紙(シャープ製SF4AM3)に特定のパターンを印刷し1日放置後、滲みがないと仮定した場合のライン幅の値を100としたときに、これに対する相対値で評価を行った。
150以下の場合○、150以上250以下の場合は△とし、250以上の場合は×と評価した。
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
表2及び表3から明らかなように、実施例1〜12のインク組成物は、比較例1〜8と比べるとインク中に一般式(1)で示すエチレングリコール系有機溶媒を含み、当該一般式(1)中のmとnが前記の条件を満たす時、連続的な高速印刷時でも安定して吐出し、滲み性に優れている。また、色材が表面に親水基を有する顔料を用いた場合、更に連続的な高速印刷時でも安定に吐出し、滲み性が改良される。さらに、インク組成物中にアニオン系、カチオン系、ノニオン系界面活性剤を臨界ミセル濃度以上含有せしめることにより連続的な高速印刷時でも安定に吐出し、滲み性が向上することが明らかにされた。
【0037】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明により、力学的及び熱エネルギーを用いて吐出、飛翔させ被記録材に対して記録を行うインクジェット記録に使用される吐出安定性に優れ、かつ、印字滲みがなく、普通紙を含むあらゆる材質の記録紙に高品位な画像を形成することができるインクジェット用インク組成物が提供された。
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクを力学的及び熱エネルギーを用いて吐出、飛翔させ被記録材に対して記録を行うインクジェット記録に使用する水性インクに関するものであって、詳細にはインクの吐出安定性を向上させつつ、印字滲みを減少させ、高品位な画像を提供するインクジェット用インク組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録は、力学的及び熱的作用を用いてインク滴を形成し、これを紙などの被記録材に画像を形成させる方法である。このインクジェット記録法は、デジタル信号に応答して媒体上にインク滴を飛翔し記録するノンインパクト記録法の代表的なものであり、電子写真等の記録法に見られるような現像や定着といったプロセスを含まないことから装置の小型化が容易であると同時に高速、かつ、低騒音での記録が可能な方法である。
【0003】
また、このようなオンデマンド型と呼ばれる記録法は記録装置が比較的安価でカラー化が容易であることから、近年では事務用および家庭用パーソナルコンピューターの出力機器として広く用いられるようになってきた。この記録法に最も望まれている特性は電子写真なみの高画質で、高速、かつ、安定的に印刷を行うことである。
【0004】
従来のインクジェット記録用のインクとしては、色材となる各種水溶性染料あるいは顔料を水もしくは水と有機溶剤との混合液に溶解させた染料系インク、あるいは顔料系インクが使用されている。しかしながら、従来のインクには、染料系インク、顔料系インクともに吐出安定性、長期貯蔵安定性および微細なノズル先端で固化しない性質を保ちつつ、印字滲みがないことなど、さらに高品位の画像品質を保つことが課題となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、吐出安定性を保ちながら、普通紙を含むあらゆる材質の記録紙に対して、印字滲みがなく、鮮明な高品位画像を形成できるインクジェット用インクを開発することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定のエチレングリコール系有機溶媒を用いることにより、耐目詰まり性に優れ、連続印刷を行っても安定した吐出、すなわちインクの追従性が良好で、長期の保存安定性にも優れ、かつ、色材の種類に影響されないインク組成物が得られることを見出した。本発明はかかる知見に基づくものである。
【0007】
すなわち、本発明は、色材及び有機溶媒を含有するインク組成物であって、該有機溶媒として一般式:CmH2m+1−O−(CH2−CH2−O)n−H・・(1)[但し、式中、m及びnは、4≦m+n≧8、2≦m≧4及び1≦n≧4の要件を満たす数である。]で表されるエチレングリコール系化合物を含有することを特徴とする新規なインクジェット用インク組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記インクジェット用インク組成物を含有するインクを組み合わせたインクセットを提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の上記一般式(1)で表されるエチレングリコール系有機溶媒において、その理由は明らかでないが、式中のmとnとが4≦m+n≧8、2≦m≧4及び1≦n≧4の条件を満たすことが、吐出安定性及び高品位な画像を形成するうえで極めて重要である。mの数が小さいと、印字滲みが生じ易く、他方、mの数が4を超えると色材の溶解性や分散性が低下し、吐出安定性が悪くなる。また、nの数が4を超えるとインクが気泡性となり、インクの不吐出が発生するようになり好ましくない。すなわち、本発明は、上記mとnの関係を満たす一般式(1)で表されるエチレングリコール系化合物をインク溶媒として用いることによって、耐目詰まり性に優れ、連続印刷を行っても安定した吐出、すなわちインクの追従性が良好で、印字滲みがなく、かつ、色材の種類に影響されない新規なインクジェット用インク組成物(なお、以下において単にインク組成物と記す場合がある)の開発に成功したものである。
【0009】
本発明のインク組成物に配合する色材としては、表面に親水基を有する顔料の配合によりインクの吐出安定性が一層向上し、印字濃度が高く、滲みのない高品位な画像を得ることができる。特に、親水基として、カルボキシル基、またはスルホン酸基を有する顔料は、インクの吐出安定性が一層向上し、印字濃度が高く、滲みのない鮮明な画像が得られる。この顔料として、具体的には、表面にスルホン酸基(CAB−O−JET200)、あるいはカルボキシル基(CAB−O−JET300)が結合されているカーボンブラック(いずれも、キャボット社製)を挙げることができる。特に、インクの吐出安定性が向上した理由としては、顔料の表面に親水基を有することにより、水に対する顔料の分散状態がよくなり、凝集によるヘッドノズルの詰まりが防止されて、インクの安定吐出が可能となった為と考えられる。
【0010】
また、本発明のインク組成物は、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤を臨界ミセル濃度以上含有せしめることによっても顔料の分散状態が向上し、インクの安定した吐出が得られる。
アニオン系界面活性剤としては、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、アルキルアリルおよびアルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩およびアルキルアリールエーテルリン酸塩などがある。
カチオン系界面活性剤としては、アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、テトラアルキルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジニウム塩およびイミダゾリニウム塩などが挙げられる。
【0011】
また、ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ショ糖エステル、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシドあるいはポリオキシエチレンアルキルアミンなどを使用することができる。
【0012】
本発明のインク組成物に色材として好適に使用し得る他の染料、顔料としては、以下に示す色材が例示される。
染料は、水溶性染料であれば基本的に使用することが可能であり、酸性染料、直接染料、反応性染料などが上げられるが、これらの中でも、耐水性、耐光性に優れる染料が適している。
染料をカラーインデックスナンバー(CI)で示すと以下の如きCIを有する染料が例示される。
【0013】
ブラックインク染料としては、フードブラック2、ダイレクトブラック19,22,32,38,51,56,71,74,75,77,154,168,171リアクティブブラック3,4,7,11,12,17などである。
シアンインク染料としては、アシッドブルー7,9,29,45,92,249、ダイレクトブルー1,2,6,15,22,25,71,76,79,86,90,98,163,165,199,202リアクティブブルー1,2,7,14,15,23,32,38,41,63,80,95などが挙げられる。
【0014】
また、マゼンタインク染料としては、アシッドレッド1,8,13,14,18,26,27,35,37,42,52,82,87,89,92,97,106,111,114,115,134,186,249,254,289、ダイレクトレッド1,4,9,13,17,20,28,31,39,80,81,83,89,225,227、ダイレクトオレンジ26,29,62,102リアクティブレッド1,14,17,25,26,32,37,44,46,55,60,66,74,79,96,97,141,147,181 63などを挙げることができる。
【0015】
さらに、イエローインク染料としては、アシッドイエロー1,7,17,23,42,44,79,142、ダイレクトイエロー1,12,24,26,33,44,50,86,120,132,142,144,リアクティブイエロー1,5,11,13,14,20,21,22,25,40,47,51,55,65,67などを挙げることができる。
上記染料の含有量については、その種類と、希望する色調などに合わせて適宜調製されるが、通常0.05%〜20%の範囲内であり、好ましくは0.1〜15%の範囲である。
【0016】
本発明のインクジェット用インクに使用する他の顔料としては、特に制限はないが、以下に示す顔料が好適に使用される。
ブラックインク用の顔料としては、インクジェット用インク組成物に従来から使用されているカーボンブラックを使用することができ、具体的には、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラックおよびチャンネルブラックなどである。
シアンインク用の顔料としては、C.I.Pigment Blue 1、2、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17:1、56、60および63などを挙げることができる。
【0017】
また、マゼンタインク用の顔料としては、C.I.Pigment Red 1、2、3、5、7、17、22、23、31、38、48:2(Ba)、48:2(Ca)、48:3(Sr)、48:4(Mn)、49:1、52:2、53:1、57:1、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101、104、105、106、108、112、114、122、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209および219などを挙げることができる。
【0018】
イエローインク用の顔料としては、C.I.Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42、53、55、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、128、138および153などが挙げられる。
【0019】
さらに、本発明のインク組成物には、上記顔料のほかに、例えば、アニリンブラック(C.I.Pigment Black 1)などの黒色有機顔料、C.I.Pigment Orange 1、2、5、7、13、14、15、16、34、36、38、C.I.Pigment Violet 1、2、19、32、C.I.Pigment Green 1、4、36あるいはC.I.Pigment Brown 3、5、25、26などを用いることもできる。
なお、各顔料には、ぬれ性を向上させるために、表面処理などを施してもよい。
【0020】
顔料の含有量は、印字物に要求される色目、濃度、あるいは好ましいインク物性を満たすために決定されるものであって、顔料の比重や嵩密度によっても異なり、特に限定されるものではないが、インク組成物全重量に対して、1〜20重量%が好ましく、1〜15重量%の範囲で使用することがより好ましい。顔料含有量が1重量%未満になると印字濃度を確保することができなくなることがあり、他方20重量%を超えるとインク組成物の粘度特性に構造粘性が生じ、吐出安定性を確保することができなくなることがある。
【0021】
本発明のインクジェット用インクには、顔料分散の補助剤として分散剤を添加してもよい。この分散剤としては、アルカリ可溶型の水溶性樹脂であって、重量平均分子量が1,000〜30,000の水溶性樹脂が好ましく、より好ましくは3,000〜15,000の範囲の水溶性樹脂である。具体的には、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステルなどの疎水性単量体、またはアクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体からなる群から選ばれる2つ以上の単量体からなるブロック共重合体、グラフト共重合体、あるいはランダム共重合体、又はこれらの塩などが挙げられる。これらの樹脂は、塩基を溶解させた水溶液に可溶のアルカリ可溶型樹脂である。さらに、親水性単量体から成るホモポリマー及びそれらの塩でもよい。また、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物などの水溶性樹脂も使用することができる。しかし、樹脂としては、アルカリ可溶型の樹脂を用いた場合の方が、分散液の低粘度化が可能であり、分散も容易である。
【0022】
上記分散剤の使用量は、インクジェット用インク全量に対して、0.1〜10重量%の範囲で使用することが好ましい。分散剤の含有量が0.1重量%未満になるとインク組成物を放置した場合の経時的な顔料の分散安定性が悪化することがあり、他方10重量%を超えるとインク組成物が乾燥した場合に必要となる再分散性を得ることができないことがある。
【0023】
分散剤の溶解性を向上させ、長期保存安定性を得るためには、分散剤中の塩がイオン解離し易いように、インク全体を中性又はアルカリ性に調整することが好ましく、pHが7〜10の範囲で使用することが好ましい。このpH調整剤としては、例えばジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの各種有機アミンあるいは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属の水酸化物等の無機塩基が挙げられる。
最適な塩基種は、選択した顔料および分散剤の種類によって異なるが、不揮発性で安定であって、かつ保水性の高いものが好ましい。塩基の使用量は、分散剤の酸価から計算される量から、それを中和するに必要な塩基量を基本とするが、顔料の分散性の向上、インクのpH調整、記録性能の調整および保湿性の向上などの目的で、酸の当量を上回る量の塩基を用いてもよい。
【0024】
本発明のインクジェット用インク組成物には、上記一般式(1)で表される有機溶剤以外に他の水溶性有機溶媒を添加して用いてもよい。この水溶性有機溶媒としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類、アセトン、ジアセトンアルコールなどのケトンまたはケトンアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類、グリセリン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドンおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが挙げられる。
【0025】
インクジェット用インク中の水溶性有機溶媒の含有量は、インク全重量の5〜60重量%の範囲であり、好ましくは10〜50重量%の範囲である。含有量をこの範囲にすることにより、顔料インクの吐出安定性を確保することができる。水溶性有機溶媒の含有量が多すぎると乾燥不良になることがある。
また、本発明のインクジェット用インクには、前記の成分のほかに必要に応じて所望の物性値を持つ記録液とするために、消泡剤および防腐剤などを添加してもよい。さらにノズルの乾燥防止剤として尿素、チオ尿素、エチレン尿素またはそれらの誘導体を添加してもよい。
消泡剤の具体例としては、エチルアルコールおよびイソプロピルアルコールなどが挙げられる。
【0026】
また、防カビ、防腐、防錆剤の具体例としては、安息香酸、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、ソルビン酸、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ベンジゾチアゾリン−3−オンおよび3,4−イソチアゾリン−3−オンなどが挙げられる。そして、本発明のインクジェット用インクの粘度は、各組成成分の使用量を変えることにより、適宜制御することができるが、本発明の好ましい態様によれば、25mPa・秒以下、好ましくは10mPa・秒以下(25℃)である。粘度がこの範囲内にあると、インクジェット用インクを吐出ヘッドから安定して吐出させることができる。またインク組成物の表面張力についても適宜制御することができるが、20〜50mN/m(25℃)の範囲であることが好ましい。
【0027】
本発明のインクジェット用インク組成物の調製方法は、一般式(1)に示す有機溶媒または水性媒体中に色材と必要に応じて分散剤とを同時に添加し、分散処理を行うことによって製造するとこができる。分散処理としては、特に限定されるものではないが、例えば最初に分散剤とアルカリ中和剤(pH調整剤)および溶解助剤を有機溶媒または水性媒体で均一な溶液にし、次にこの溶液に色材を添加して分散剤成分の浸透を図るプレミキシングを行なった後、さらに分散機により分散を行い、必要に応じて遠心分離処理を行って所望の分散液を得る。最後に、この分散液に前記の各成分を加え、撹拌してインクとする。この分散処理には、一般に使用されるボールミル、ロールミルあるいはサンドミルなどの分散機を用いることができる。
【0028】
【実施例】
次に、本発明を実施例及び比較例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0029】
実施例1〜実施例12、比較例1〜実施例8:
各実施例及び比較例のインク組成物の成分物質及び量割合は表1に示す。なお、表1中の数値は重量%である。
イ)実施例1のインク組成物の調製
一般式(1)のm及びnが1で表される有機溶媒にブラック染料を添加し、室温で完全に溶解させた後、各添加剤の所定量を加え、最後に界面活性剤を添加し、室温で1時間攪拌した後、2.0μmのフィルターで濾過してインク組成物を調製した。
ロ)実施例2〜12のインク組成物の調製
水にブラック顔料を添加して分散させて後、有機溶媒を添加し、各添加剤をの所定量を加え、最後に界面活性剤を添加して、室温で1時間攪拌した後、2.0μmのフィルターで濾過してインク組成物を調製した。
なお、各比較例のインク組成物は本調製法に準じて調製した。
【0030】
【表1】
【0031】
<評価試験>
各実施例及び比較例記載のインクジェット用インクを用いて、PPC用紙に記録を行った。この記録画像の評価試験を以下の方法で行なった。
各実施例の試験結果は表2に、各比較例の試験結果は表3にそれぞれ示す。
【0032】
イ)吐出安定性
シャープ製AJ2000改造機を用いて、各インクの連続印刷時の吐出安定性を評価した。印刷濃度5%として7PPMで連続的に印刷を行ったときの印字可能枚数を検討した。インクタンクにインクを充填して空になるまでの印刷可能枚数は約200枚である。実験では空になった時点で、インクを再充填し、この作業を印刷できなくなるまで繰り返し、そのときまでに印刷できた枚数を印刷可能枚数とした。
印刷枚数が200枚を超える場合を○として、150〜200枚であった場合は△、150枚以下は×とした。
【0033】
ロ)滲み性
PPC用紙(シャープ製SF4AM3)に特定のパターンを印刷し1日放置後、滲みがないと仮定した場合のライン幅の値を100としたときに、これに対する相対値で評価を行った。
150以下の場合○、150以上250以下の場合は△とし、250以上の場合は×と評価した。
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
表2及び表3から明らかなように、実施例1〜12のインク組成物は、比較例1〜8と比べるとインク中に一般式(1)で示すエチレングリコール系有機溶媒を含み、当該一般式(1)中のmとnが前記の条件を満たす時、連続的な高速印刷時でも安定して吐出し、滲み性に優れている。また、色材が表面に親水基を有する顔料を用いた場合、更に連続的な高速印刷時でも安定に吐出し、滲み性が改良される。さらに、インク組成物中にアニオン系、カチオン系、ノニオン系界面活性剤を臨界ミセル濃度以上含有せしめることにより連続的な高速印刷時でも安定に吐出し、滲み性が向上することが明らかにされた。
【0037】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明により、力学的及び熱エネルギーを用いて吐出、飛翔させ被記録材に対して記録を行うインクジェット記録に使用される吐出安定性に優れ、かつ、印字滲みがなく、普通紙を含むあらゆる材質の記録紙に高品位な画像を形成することができるインクジェット用インク組成物が提供された。
Claims (7)
- 色材及び有機溶媒を含有するインク組成物であって、有機溶媒として一般式:CmH2m+1−O−(CH2−CH2−O)n−H・・(1)[但し、式中、m及びnは、4≦m+n≧8、2≦m≧4及び1≦n≧4の要件を満たす数である。]で表されるエチレングリコール系化合物を含有することを特徴とするインクジェット用インク組成物。
- 色材、水及び有機溶媒を含有するインク組成物であって、有機溶媒として一般式CmH2m+1−O−(CH2−CH2−O)n−H(1)[但し、式中、m及びnは、4≦m+n≧8、2≦m≧4及び1≦n≧4の要件を満たす数である。]で表されるエチレングリコール系化合物を含有することを特徴とするインクジェット用インク組成物。
- 有機溶媒がインク組成物中に2〜15重量%の割合で含有する請求項1又は2記載のインクジェット用インク組成物。
- 色材が表面に親水基を有する顔料である請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット用インク組成物。
- 顔料の親水基がカルボキシル基又はスルホン酸基である請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット用インク組成物
- インク組成物中にアニオン系、カチオン系、ノニオン系界面活性剤を臨界ミセル濃度以上含有する請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット用インク組成物。
- 色材として、シアン染料又は顔料、マゼンタ染料又は顔料、イエロー染料又は顔料あるいはブラック染料又は顔料から選択された少なくとも一種を含有する請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェット用インク組成物の組み合わせからなることを特徴とするインクセット。
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