JP2004027103A - 触媒組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】共役ジエンの重合のための触媒組成物であって、下記の成分:(A)希土類金属化合物のメタロセン型錯体、 (B) アルミノキサン、及び(C)周期律表第I〜III族元素の有機金属化合物の2種以上の組合わせ、を含む触媒組成物。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は共役ジエン重合用の触媒組成物に関するものである。また、本発明は、該触媒組成物を用いた共役ジエン重合体の製造方法及び該製造方法により得られる新規な共役ジエン重合体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
共役ジエン類の重合触媒については、従来より数多くの提案がなされており、工業的に極めて重要な役割を担っている。特に、熱的・機械的特性において高性能化された共役ジエン重合体を得る目的で、高いシス1,4−結合含有率を与える数多くの重合触媒が研究・開発されてきた。例えば、ニッケル、コバルト、チタン等の遷移金属化合物を主成分とする複合触媒系は公知であり、それらのうちのいくつかは、すでにブタジエン、イソプレン等の重合触媒として工業的に広く用いられている(End. Ing. Chem., 48, 784, 1956; 特公昭37−8198号公報参照)。
【0003】
一方、更に高いシス1,4−結合含有率および優れた重合活性を達成すべく、希土類金属化合物と第I〜III族の有機金属化合物からなる複合触媒系が研究・開発され、高立体特異性重合の研究が盛んに行われるようになった(Makromol. Chem. Suppl, 4, 61, 1981; J. Polym.Sci., Polym. Chem. Ed., 18, 3345, 1980; 独国特許出願2,848,964号; Sci. Sinica., 2/3, 734, 1980; Rubber Chem. Technol., 58, 117, 1985などを参照)。これらの触媒系の中で、ネオジウム化合物と有機アルミニウム化合物を主成分とする複合触媒が高いシス1,4−結合含有率と優れた重合活性を有することが確認され、ブタジエン等の重合触媒としてすでに工業化されている (Macromolecules, 15, 230, 1982; Makromol. Chem., 94, 119,
1981を参照)。
【0004】
近年の工業技術の進歩に伴い、高分子材料に対する市場要求はますます高度なものとなっており、更に高い熱的特性(熱安定性等)・機械的特性(引張り弾性率、曲げ弾性率等)を有する高分子材料の開発が強く望まれるようになってきた。この課題を解決するための有力な手段の一つとして、共役ジエン類に対し高い重合活性を有する触媒を用いて、ミクロ構造におけるシス1,4−構造の含有量が高く、かつ狭い分子量分布を有する重合体を製造する試みがなされている。
【0005】
本発明者らは、先に、希土類金属メタロセン型の重合触媒と、非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物及び/又はアルミノキサンを含む助触媒とを組み合わせた触媒組成物を用いることによって、共役ジエン類を効率よく重合することができること、及び上記の重合用触媒組成物を用いることにより、ミクロ構造におけるシス1,4−構造の含有量が極めて高く、しかも分子量分布が狭い共役ジエン重合体を製造できることを見出した(特開2000−313710号を参照)。さらに、本発明者らは、上記重合用触媒組成物のうち、特に優れた重合活性を有する重合用触媒組成物を見出した(特願2002−094681号を参照)。
【0006】
また、本発明者らは、希土類金属メタロセン型の重合触媒、周期律表第1〜3族元素および第11〜13族元素から選ばれる少なくとも1種の元素の有機金属化合物と、アルミノキサンおよび/または有機アルミニウム化合物と水との反応生成物とを混合してなる重合触媒によって、ミクロ構造におけるシス1,4−構造の含有量が極めて高く、また加工しやすい適度な分子量を有する共役ジエン重合体を製造できることを見出した(特願2000−384771号を参照)。
【0007】
しかしながら、共役ジエン重合体のミクロ構造におけるシス1,4−構造の含有量がさらに高く、加工しやすい適度な分子量を有し、かつ分子量分布が狭い共役ジエン重合体を製造する方法の開発が望まれている。
また、製造におけるコスト等の問題から、より少量の触媒で重合を行うことができる方法の開発が望まれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、共役ジエンの重合用触媒を提供することにある。より具体的には、ミクロ構造におけるシス1,4−構造の含有量が高く、加工しやすい適度な分子量を有し、かつ狭い分子量分布を有する重合体を製造するための重合用触媒組成物を提供することにある。また、本発明の課題は、上記の特徴を有する重合体を製造するための重合効率のよい重合用触媒組成物を提供することにある。本発明のさらに別の課題は、上記の特徴を有する重合体及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、希土類金属メタロセン型の重合触媒、並びに、アルミノキサン及び周期律表第I〜III族元素の有機金属化合物の2種以上の組み合わせを含む助触媒とを組み合わせた触媒組成物を用いることによって、共役ジエン類を効率よく重合することができること、上記の重合用触媒組成物を用いることにより、ミクロ構造におけるシス1,4−構造の含有量が極めて高く、加工しやすい適度な分子量を有し、しかも分子量分布が狭い共役ジエン重合体を製造できることを見出した。本発明はこれらの知見を基にして完成されたものである。
【0010】
すなわち本発明は、共役ジエンの重合のための触媒組成物であって、下記の成分:(A)希土類金属化合物のメタロセン型錯体、 (B) アルミノキサン、及び(C)周期律表第I〜III族元素の有機金属化合物の2種以上の組合わせ、を含む触媒組成物を提供するものである。この発明の好ましい態様によれば、メタロセン型錯体がサマリウム錯体である上記触媒組成物;周期律表第I〜III族元素の有機金属化合物が、有機アルミニウム化合物である上記触媒組成物;周期律表第I〜III族元素の有機金属化合物の2種以上の組み合わせが、1種又は2種以上のアルキル金属化合物と1種又は2種以上の水素化アルキル金属化合物の組み合わせである上記触媒組成物;周期律表第I〜III族元素の有機金属化合物の2種以上の組合わせが、トリイソブチルアルミニウムとジイソブチルアルミニウムハイドライドの組み合わせである上記触媒組成物;さらに非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物を含む上記触媒組成物;及び、希土類金属化合物のメタロセン型錯体を含む共役ジエンの重合用触媒と共にもちいるための助触媒であって、アルミノキサン及び周期律表第I〜III族元素の有機金属化合物の2種以上の組み合わせ、を含む助触媒が提供される。
【0011】
また、別の観点からは、上記触媒組成物の存在下で共役ジエンを重合することを特徴とする共役ジエンの製造方法;及び、上記触媒組成物の存在下で共役ジエンを重合することにより得ることができる重合体が提供される。これらの発明に加えて、重合体のミクロ構造におけるシス1,4−構造の含有量が80.0mol%以上、好ましくは90.0mol%以上、さらに好ましくは95.0mol%以上、特に好ましくは98.5mol%以上であり、数平均分子量が10万〜50万、好ましくは15万〜45万、さらに好ましくは20万〜40万、特に好ましくは25万〜35万であり、かつMw/Mnが2.50以下、より好ましくは2.20以下、さらに好ましくは2.00 以下である重合体が提供される。この重合体は、上記の重合用触媒組成物の存在下で共役ジエンを重合することによって製造することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
希土類金属化合物のメタロセン型錯体としては、例えば、一般式(I):RaMXb・Lc又は一般式(II):RaMXbQXb(式中、Mは希土類金属を示し;Rはシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基、フルオレニル基、又は置換フルオレニル基を示し;Xは水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、又は炭素数1から20の炭化水素基を示し;Lはルイス塩基性化合物を示し;Qは周期律表第III族元素を示し;aは1、2、又は3の整数を示し;bは0、1、又は2の整数を示し;cは0、1、又は2の整数を示す)で示される2価又は3価の希土類金属化合物が挙げられる。
【0013】
上記一般式(I)において、aが2又は3である場合、2又は3個のRは同一でも異なっていてもよい。同様に、b又はcが2である場合には、2個のX又はLはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0014】
上記一般式(I)において、Mが示す希土類金属としては、周期律表中の原子番号57から71の元素を用いることができる。希土類金属の具体例としては、例えば、ランタニウム、セリウム、プラセオジム、ネオジウム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミニウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムを挙げることができ、これらのうちサマリウムが好ましい。
【0015】
Rが表わす置換シクロペンタジエニル基、置換インデニル基、又は置換フルオレニル基における置換基の種類、個数、及び置換位置は特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、フェニル基、ベンジル基などのほか、トリメチルシリル基などの珪素原子を含有する炭化水素基などを挙げることができる。RはXの一部と互いにジメチルシリル基、ジメチルメチレン基、メチルフェニルメチレン基、ジフェニルメチレン基、エチレン基、置換エチレン基等の架橋基で結合されていてもよく、また、Rどうしが互いにジメチルシリル基、ジメチルメチレン基、メチルフェニルメチレン基、ジフェニルメチレン基、エチレン基、置換エチレン基等の架橋基で結合されていてもよい。
【0016】
置換シクロペンタジエニル基の具体例としては、例えば、メチルシクロペンタジエニル基、ベンジルシクロペンタジエニル基、ビニルシクロペンタジエニル基、2−メトキシエチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシリルシクロペンタジエニル基、tert−ブチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、フェニルシクロペンタジエニル基、1,2−ジメチルシクロペンタジエニル基、1,3−ジメチルシクロペンタジエニル基、1,3−ジ(tert−ブチル)シクロペンタジエニル基、1,2,3−トリメチルシクロペンタジエニル基、1,2,3,4−テトラメチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基、1−エチル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル基、1−イソプロピル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル基、1−ノルマルブチル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル基、1−トリメチルシリル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル基、1−ベンジル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル基、1−フェニル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル基、1−トリフルオロメチル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル基、1−イソブチル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル基、1−トリエチルシリル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル基、1−トリイソプロピルシリル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル基などが挙げられる。置換インデニル基の具体例としては、例えば、1,2,3−トリメチルインデニル基、ヘプタメチルインデニル基、1,2,4,5,6,7−ヘキサメチルインデニル基などが挙げられる。Rとしては置換シクロペンタジエニル基が好ましく、具体的には、1−エチル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル基、1−イソプロピル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル基、1−ノルマルブチル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル基、1−トリメチルシリル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル基が好ましく挙げられる。
【0017】
Xが表わすアルコキシド基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基などの脂肪族アルコキシ基、フェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ基、2,6−ジイソプロピルフェノキシ基、2,6−ジネオペンチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−ネオペンチルフェノキシ基、2−イソプロピル−6−ネオペンチルフェノキシ基などのアリールオキシド基のいずれでもよいが、2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ基が好ましい。
【0018】
Xが表わすチオラート基としては、チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオプロポキシ基、チオn−ブトキシ基、チオイソブトキシ基、チオsec−ブトキシ基、チオtert−ブトキシ基などの脂肪族チオラート基、チオフェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチルチオフェノキシ基、2,6−ジイソプロピルチオフェノキシ基、2,6−ジネオペンチルチオフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルチオフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−チオネオペンチルフェノキシ基、2−イソプロピル−6−チオネオペンチルフェノキシ基、2,4,6−トリイソプロピルチオフェノキシ基などのアリールチオラート基のいずれでもよいが、2,4,6−トリイソプロピルチオフェノキシ基が好ましい。
【0019】
Xが表わすアミド基としては、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジイソプロピルアミド基などの脂肪族アミド基、フェニルアミド基、2,6−ジ−tert−ブチルフェニルアミド基、2,6−ジイソプロピルフェニルアミド基、2,6−ジネオペンチルフェニルアミド基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルフェニルアミド基、2−tert−ブチル−6−ネオペンチルフェニルアミド基、2−イソプロピル−6−ネオペンチルフェニルアミド基、2,4,6−tert−ブチルフェニルアミド基などのアリールアミド基のいずれでもよいが、2,4,6−tert−ブチルフェニルアミド基が好ましい。
【0020】
Xが表わすハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子のいずれでもよいが、塩素原子やヨウ素原子が好ましい。
【0021】
Xが表わす炭素数1から20の炭化水素基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチルなどの直鎖又は分枝鎖の脂肪族炭化水素基、フェニル基、トリル基、ナフチル基など芳香族炭化水素基、ベンジル基などのアラルキル基、トリメチルシリルメチル基、ビストリメチルシリルメチル基などのケイ素原子を含有する炭化水素基などのほか、フリル基、テトラヒドロフリル基などの酸素原子を含有する炭化水素基であってもよい。これらのうち、メチル基、エチル基、イソブチル基、トリメチルシリルメチル基、テトラヒドロフリル基などが好ましい。
【0022】
Xとしては、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1から20の炭化水素基が好ましい。
【0023】
Lが示すルイス塩基性化合物としては、対電子をもって金属に配位できるルイス塩基性の化合物であれば特に限定されず、無機化合物又は有機化合物のいずれであってもよい。ルイス塩基性化合物として、例えば、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物、アミン化合物、ホスフィン化合物、シリルオキシ化合物などを用いることができるが、これらに限定されることはない。
【0024】
一般式(II)においてQは周期律表第III族元素を示すが、該元素の具体例としては、ホウ素、アルミニウム、ガリウムなどを挙げることができ、アルミニウムが好ましい。
【0025】
式(I)で表される希土類金属化合物のメタロセン型錯体の具体例としては、例えば、ビスペンタメチルシクロペンタジエニルビステトラヒドロフランサマリウム、メチルビスペンタメチルシクロペンタジエニルテトラヒドロフランサマリウム、クロロビスペンタメチルシクロペンタジエニルテトラヒドロフランサマリウム、ヨードビスペンタメチルシクロペンタジエニルテトラヒドロフランサマリウム、ビステトラメチルエチルシクロペンタジエニルビステトラヒドロフランサマリウム、ビステトラメチルイソプロピルシクロペンタジエニルテトラヒドロフランサマリウム、ビステトラメチルノルマルブチルシクロペンタジエニルビステトラヒドロフランサマリウム、又はビステトラメチルトリメチルシリルシクロペンタジエニルテトラヒドロフランサマリウムなどが挙げられ、式(II)で表わされる希土類金属化合物のメタロセン型錯体の具体例としては、例えば、ジメチルアルミニウム(μ−ジメチル)ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)サマリウムなどが挙げられる。
【0026】
助触媒として用いられるアルミノキサンとしては、例えば、有機アルミニウム化合物と縮合剤とを接触させることによって得られるものを用いることができ、より具体的には、一般式(−Al(R’)O−)n で示される鎖状アルミノキサン又は環状アルミノキサンを用いることができる。上記式において、R’は炭素数1〜10の炭化水素基であり、該炭化水素基はハロゲン原子及び/又はアルコキシ基で置換されていてもよい。nは重合度を示し、好ましくは5以上、より好ましくは10以上である。R’としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基などが挙げられるが、メチル基が好ましい。アルミノキサンの原料として用いられる有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム及びその混合物などが挙げられる。特に好ましいのはトリメチルアルミニウムを原料として用いたメチルアルミノキサンである。トリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムとの混合物を原料として用いたモディファイドメチルアルミノキサンも好適に用いることができる。このようなアルミノキサンは、市販されているものを用いてもよく、例えば、東ソー・ファインケム社から販売されているMMAO等を用いることができる。アルミノキサンは1種を用いてもよく、2種以上を組合わせてもよい。また、助触媒として用いる場合、アルミノキサンを単独で用いてもよく、イオン性化合物と組み合わせて用いてもよい。
【0027】
助触媒としてアルミノキサンと共にイオン性化合物を用いてもよい。イオン性化合物は、非配位性アニオンとカチオンとからなるものであれば特に限定されないが、例えば、上記希土類金属化合物と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるイオン性化合物などを挙げることができる。非配位性アニオンとしては、例えば、テトラ(フェニル)ボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル,ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル),フェニル]ボレート、トリデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレートなどが挙げられる。
【0028】
カチオンとしては、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどを挙げることができる。カルボニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ置換フェニルカルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンを挙げることができる。トリ置換フェニルカルボニウムカチオンの具体例としては、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンを挙げることができる。アンモニウムカチオンの具体例としては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン、ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンを挙げることができる。ホスホニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンを挙げることができる。
【0029】
該イオン性化合物は、非配位性アニオン及びカチオンの中から、それぞれ任意に選択して組み合わせたものを好ましく用いることができる。例えば、イオン性化合物としては、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1’−ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが好ましい。イオン性化合物を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。遷移金属化合物と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるルイス酸として、B(C6F5)3、Al(C6F5)3などを用いることができ、これらを前記のイオン性化合物と組み合わせて用いてもよい。
【0030】
本発明の触媒組成物は、助触媒として、周期律表第I〜III族元素の有機金属化合物の2種以上の組み合わせを含む。周期律表第I〜III族元素の有機金属化合物として、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、有機ホウ素化合物などが挙げられる。このような有機金属化合物として、アルキル金属化合物を好ましく用いることができる。より具体的には、メチルリチウム、ブチルリチウム、フェニルリチウム、ベンジルリチウム、ネオペンチルリチウム、トリメチルシリルメチルリチウム、ビストリメチルシリルメチルリチウム、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジエチル亜鉛、ジメチル亜鉛、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどを用いることができる。また、アルキル金属化合物のアルキル基の一部がハロゲンで置換されたアルキル金属ハロゲン化合物も好ましく用いることができる。具体的には、エチルマグネシウムクロライド、ブチルマグネシウムクロライド、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、セスキエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどを挙げることができる。また、アルキル金属化合物のアルキル基の一部が水素で置換された水素化アルキル金属化合物も好ましく用いることができる。具体的には、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、セスキエチルアルミニウムハイドライドなどを挙げることができる。これらのうち、本発明の助触媒としては、アルミニウム化合物が好ましい。
本発明の助触媒では、これらの有機金属化合物を2種以上組み合わせて用いる。これらの有機金属化合物の組み合わせとして、1種又は2種以上のアルキル金属化合物と1種又は2種以上の水素化アルキル金属化合物の組み合わせが好ましく、具体的には、トリイソブチルアルミニウムとジイソブチルアルミニウムハイドライドなどの組み合わせが好ましく挙げられる。
【0031】
本発明の触媒組成物における成分(A) 希土類金属化合物のメタロセン型錯体、(B) アルミノキサン、及び(C) 周期律表第I〜III族元素の有機金属化合物の2種以上の組み合わせの配合割合は、重合すべきモノマーの種類、及び反応の種類や条件に応じて適宜選択することが可能である。一般的には、成分(A):成分(B)(モル比;メタロセン型錯体に含まれる希土類金属モル量:アルミノキサンに含まれるアルミニウム金属モル量)を1:1〜1:10000、好ましくは1:10〜1:1000、さらに好ましくは 1:50〜1:500程度にすることができる。また、成分(A)と成分(C)との配合割合(モル比)は、例えば、1:1〜1:10000、好ましくは1:10〜1:1000、さらに好ましくは1:50〜1:500程度である。
成分(C)の有機金属化合物は、2種以上を組み合わせて用いる。成分(C)の有機金属化合物としては、1種又は2種以上のアルキル金属化合物を第一成分とし、その他の成分として1種又は2種以上の水素化アルキル金属化合物、アルキル金属ハロゲン化合物等の化合物を組み合わせることが好ましく、このうち1種又は2種以上のアルキル金属化合物を第一成分とし、その他の成分として1種又は2種以上の水素化アルキル金属化合物を組み合わせることがさらに好ましい。第一成分とその他の成分との配合割合(モル比)は、例えば、1:0.001〜1:1000、好ましくは1:0.02〜1:500、さらに好ましくは1:0.05〜1:200程度である。
【0032】
本発明の重合方法で重合可能な共役ジエン化合物モノマーの種類は特に限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3− ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−メチルペンタジエン、4−メチルペンタジエン、又は2,4−ヘキサジエンなどを挙げることができ、これらのうち1,3−ブタジエンが好ましい。これらのモノマー成分を単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本発明の重合触媒とモノマーの混合割合は、例えば、モノマー重量(g)/重合触媒モル量(mmol)が100以上、好ましくは3000以上、さらに好ましくは5000以上である。
【0034】
本発明の重合方法は、溶媒の存在下又は非存在下のいずれで行なってもよい。溶媒を用いる場合には、溶媒が重合反応において実質的に不活性であり、モノマー及び触媒組成物に対して十分な溶解性を有していれば、その種類は特に限定されない。例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン等の飽和脂環式炭化水素;1−ブテン、2−ブテン等のモノオレフィン類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロルエチレン、パークロルエチレン、1,2−ジクロロエタン、クロルベンゼン、ブロムベンゼン、クロルトルエン等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。本発明に用いる溶媒としては、これらのうち、トルエンが好ましい。また、生体に対する毒性を有さないものとして、シクロヘキサンも好ましく挙げられる。また、溶媒は1種を用いてもよいが、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0035】
本発明の重合方法における重合温度は、例えば−100〜100℃の範囲、好ましくは−50〜80℃の範囲である。重合時間は、例えば1分〜12時間程度であり、好ましくは5分〜5時間程度である。もっとも、これらの反応条件は、モノマーの種類や触媒組成物の種類に応じて、適宜選択することが可能であり、上記に例示した範囲に限定されることはない。重合反応が所定の重合率に達した後、公知の重合停止剤を重合系に加えて停止させ、次いで通常の方法に従い生成した重合体を反応系から分離することができる。本発明の重合体のミクロ構造におけるシス構造の含有量は、通常は80.0mol% 以上であり、好ましくは90.0mol% 以上、より好ましくは95.0mol%以上、特に好ましくは98.5mol%以上である。数平均分子量は、10万〜50万、好ましくは15万〜45万、さらに好ましくは20万〜40万、特に好ましくは25万〜35万である。また、分子量分布に関しては、Mw/Mnが2.50以下、より好ましくは2.20以下、さらに好ましくは2.00以下である。本発明の重合体は、高い熱的特性(熱安定性等)と機械的特性(引張り弾性率、曲げ弾性率等)を有することが期待されるので、高分子材料として多様な用途に利用することが可能である。
【0036】
本発明の重合体は、ミクロ構造においてシス構造の含有量が高く、熱的・機械的特性において高性能である。シス構造の含有量を数%でも向上させることは、工業的に高分子を製造する場合において、大変有意義である。
【0037】
本発明の重合体のミクロ構造におけるシス構造の含有量は、重合体を1H NMR及び13C NMRにより分析し、得られたピークの積分比から算出することができる。
【0038】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例中のポリブタジエンのミクロ構造は、1H NMRおよび13C NMRにより得られたピーク[1H NMR: δ 4.8−5.0 (1,2−ビニルユニットの=CH2)、5.2−5.8 (1,4−ユニットの−CH=と1,2−ビニルユニットの−CH=)、13C NMR: δ 27.4 (1,4−シスユニット)、32.7 (1,4−トランスユニット)、127.7−131.8 (1,4−ユニット)、113.8−114.8と143.3−144.7 (1,2−ビニルユニット)]の積分比から算出した。また、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)は、GPCによりポリスチレンを標準物質として用い求めた。
【0039】
【実施例1】
乾燥、脱気したガラスアンプルにビステトラメチルイソプロピルシクロペンタジエニルテトラヒドロフランサマリウム[(C5Me4iPr)2Sm(THF)](iPr:イソプロピル基;THF:テトラヒドロフラン配位子)を0.01mmol仕込みトルエン5mlで溶解させた。ついでトリイソブチルアルミニウム(Tibal)を1mmol、ジイソブチルアルミニウムハイドライド(Dibal−H)を0.05mmol、さらにMMAO(東ソー・ファインケム社より販売されるトルエン可溶性アルミノキサン)をAl/Sm=100元素比となるように仕込み、重合触媒溶液を調整した。
別の乾燥、脱気した耐圧ガラスアンプルに脱水乾燥したシクロヘキサン120gと1,3−ブタジエン(1,3−BD)30gを仕込み、さらに上記の重合触媒溶液を仕込んだ後、50℃で1時間重合させた。重合後、BHT〔2,6−ビス(t−ブチル)−4−メチルフェノール〕の10wt%のメタノール溶液10mlを加えて反応を停止させ、さらに大量のメタノール/塩酸混合溶媒で重合体を分離させ、60℃で真空乾燥した。触媒組成物の組成、重合体収率、数平均分子量、分子量分布(Mw/Mn)およびシス1,4−結合量(モル%)を表1に示す。
【0040】
【実施例2】
触媒組成物の組成を表1に示すモル比に変更し、シクロヘキサン200gと1,3−ブタジエン50gを用いる以外は、実施例1と同様の方法で重合を行った。結果を表1に示す。
【実施例3】
触媒組成物の組成を表1に示すモル比に変更し、シクロヘキサン216gと1,3−ブタジエン54gを用いる以外は、実施例1と同様の方法で重合を行った。結果を表1に示す。
【0041】
【実施例4】
触媒組成物の組成を表1に示すモル比に変更し、シクロヘキサン320gと1,3−ブタジエン80gを用いる以外は、実施例1と同様の方法で重合を行った。結果を表1に示す。
【実施例5】
触媒をビステトラメチルトリメチルシリルシクロペンタジエニルテトラヒドロフランサマリウム[(C5Me4TMS)2Sm(THF)](TMS:トリメチルシリル基)を使用し、触媒組成物の組成を表1に示すモル比に変更、シクロヘキサン360gと1,3−ブタジエン90gを用いる以外は、実施例1と同様の方法で重合を行った。結果を表1に示す。
【0042】
【比較例1】
触媒組成物の組成を表1に示すモル比に変更し、シクロヘキサン4gと1,3−ブタジエン1gを用いる以外は、実施例1と同様の方法で重合を行った。結果を表1に示す。
【比較例2】
触媒組成物の組成を表1に示すモル比に変更し、シクロヘキサン4gと1,3−ブタジエン1gを用いる以外は、実施例5と同様の方法で重合を行った。結果を表1に示す。
【0043】
【比較例3】
触媒組成物の組成を表1に示すモル比に変更し、シクロヘキサン40gと1,3−ブタジエン10gを用いる以外は、実施例1と同様の方法で重合を行った。結果を表1に示す。
【比較例4】
触媒組成物の組成を表1に示すモル比に変更し、シクロヘキサン120gと1,3−ブタジエン30gを用いる以外は、実施例1と同様の方法で重合を行った。結果を表1に示す。
【0044】
【比較例5】
触媒組成物の組成を表1に示すモル比に変更し、シクロヘキサン160gと1,3−ブタジエン40gを用いる以外は、実施例1と同様の方法で重合を行った。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【発明の効果】
本発明の触媒組成物を用いると、ミクロ構造におけるシス1,4−構造の含量が極めて高く、加工しやすい適度な分子量を有し、かつ狭い分子量分布を有する重合体を少量の触媒で効率よく製造することができる。
Claims (11)
- 共役ジエンの重合のための触媒組成物であって、下記の成分:(A)希土類金属化合物のメタロセン型錯体、 (B) アルミノキサン、及び(C)周期律表第I〜III族元素の有機金属化合物の2種以上の組み合わせ、を含む触媒組成物。
- メタロセン型錯体がサマリウム錯体である請求項1に記載の触媒組成物。
- 周期律表第I〜III族元素の有機金属化合物が、有機アルミニウム化合物である請求項1に記載の触媒組成物。
- 周期律表第I〜III族元素の有機金属化合物の2種以上の組み合わせが、1種又は2種以上のアルキル金属化合物と1種又は2種以上の水素化アルキル金属化合物の組み合わせである請求項1に記載の触媒組成物。
- 周期律表第I〜III族元素の有機金属化合物の2種以上の組み合わせが、トリイソブチルアルミニウムとジイソブチルアルミニウムハイドライドの組み合わせである請求項1に記載の触媒組成物。
- さらに非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の触媒組成物。
- 希土類金属化合物のメタロセン型錯体を含む共役ジエンの重合用触媒と共にもちいるための助触媒であって、アルミノキサン及び周期律表第I〜III族元素の有機金属化合物の2種以上の組み合わせ、を含む助触媒。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の触媒組成物の存在下で共役ジエンを重合することを特徴とする共役ジエンの製造方法。
- 請求項8に記載の方法で共役ジエンを重合することにより得ることができる重合体。
- 重合体のミクロ構造におけるシス1,4−構造の含有量が98.5mol%以上であり、数平均分子量が25万〜35万であり、かつMw/Mnが2.00以下である請求項9に記載の重合体。
- 共役ジエン重合体であって、そのミクロ構造におけるシス1,4−構造の含有量が98.5mol%以上であり、数平均分子量が25万〜35万であり、かつMw/Mnが2.00以下である共役ジエン重合体。
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