JP3738315B2 - 触媒組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合用の触媒組成物及び該触媒組成物に含まれる助触媒に関するものである。また、本発明は、該触媒組成物を用いて共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合体を製造する方法及び該製造方法により得られる新規な共重合体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
共役ジエン類と芳香族ビニル化合物を共重合するための触媒については、従来より数多くの提案がなされており、工業的に極めて重要な役割を担っている。特に、熱的・機械的特性において高性能化された共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合体を得る目的で、高いシス1,4結合含有率に制御されるような共重合触媒が研究・開発されてきた。
【0003】
例えば、ニッケル、コバルト、チタン等の遷移金属化合物を主成分とする複合触媒系や(工業化学雑誌, 72, 2081, 1969; Plast. Kautsch., 40, 356, 1993; Makromol. Chem. Phys., 195, 2623, 199などを参照)、ネオジウム、ガドリニウム等の希土類金属化合物を主成分とする複合触媒系(Macromol. Rapid Commun. 16, 563, 1992; J. Polym. Sci., Par A; Polym. Chem., 32, 1195, 1994; Polymer, 37, 349, 1996)などが知られている。これらの触媒系では、ある程度高いシス1,4制御性を示すものの、高分子量で狭い分子量分布を有し、かつ共重合体中のモノマー組成がランダム性を示す重合体を製造することはできなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合用触媒を提供することにある。より具体的には、ミクロ構造におけるシス1,4-構造の含有量が高く、かつ高分子量と狭い分子量分布を有する共重合体、好ましくは上記特徴を有するランダム共重合体を製造するための重合用触媒を提供することにある。また、本発明の別の課題は、上記の特徴を有する共重合体及びその製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、希土類金属メタロセン型の重合触媒と、非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物及び/又はアルミノキサンを含む助触媒とを組み合わせた触媒組成物を用いることによって、共役ジエン類と芳香族ビニル化合物とを効率よく共重合することができること、及び上記の共重合用触媒組成物を用いることにより、共役ジエン類と芳香族ビニル化合物とを共重合させて、ミクロ構造におけるシス1,4-構造の含有量が極めて高く、しかも高分子量で分子量分布が狭い共重合体、好ましくは共重合体のモノマー組成がランダム性を示すランダム共重合体を製造できることを見出した。本発明はこれらの知見を基にして完成されたものである。
【0006】
すなわち本発明は、共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合のための触媒組成物であって、下記の成分:(A)希土類金属化合物のメタロセン型錯体、及び(B)非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物及び/又はアルミノキサン、を含む組成物を提供するものである。この発明の好ましい態様によれば、メタロセン型錯体がサマリウム錯体である上記触媒組成物;イオン性化合物がトリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1'-ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである上記触媒組成物;及び、さらに周期律表第I〜III族元素の有機金属化合物を含む上記触媒組成物が提供される。
【0007】
また、別の観点からは、希土類金属化合物のメタロセン型錯体を含む共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合用触媒と共にもちいるための助触媒であって、非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物及び/又はアルミノキサンを含む助触媒が本発明により提供される。さらに別の観点からは、上記の重合用触媒組成物の存在下で共役ジエンと芳香族ビニル化合物とを共重合する方法;及び、上記重合用触媒組成物の存在下で共役ジエンと芳香族ビニル化合物とを共重合することにより得ることができる共重合体が提供される。これらの発明に加えて、ミクロ構造におけるシス1,4構造の含有量が80 mol%以上、好ましくは90 mol% 以上、特に好ましくは95 mol%以上であり、分子量Mnが10,000以上、好ましくは20,000以上、より好ましくは50,000以上、特に好ましくは100,000以上であり、分子量分布 Mw/Mnが2.50以下、好ましくは 2.00以下、より好ましくは 1.80以下、特に好ましくは 1.50以下である共重合体が提供される。この共重合体は、上記の共重合用触媒組成物の存在下で共役ジエンと芳香族ビニル化合物とを共重合することによって製造することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
希土類金属化合物のメタロセン型錯体としては、例えば、一般式(I):RaMXb・Lc又は一般式(II):RaMXbQXb(式中、Mは希土類金属を示し;Rはシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基、フルオレニル基、又は置換フルオレニル基を示し;Xは水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、又は炭素数1から20の炭化水素基を示し;Lはルイス塩基性化合物を示し;Qは周期律表第III族元素を示し;aは1、2、又は3の整数を示し;bは0、1、又は2の整数を示し;cは0、1、又は2の整数を示す)で示される2価又は3価の希土類金属化合物が挙げられる。
【0009】
上記一般式(I)において、Mが示す希土類金属としては、周期律表中の原子番号57から71の元素を用いることができる。希土類金属の具体例としては、例えば、ランタニウム、セリウム、プラセオジム、ネオジウム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミニウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムを挙げることができ、これらのうちサマリウムが好ましい。aが2である場合、2個のRは同一でも異なっていてもよい。同様に、b又はcが2である場合には、2個のX又はLはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0010】
置換シクロペンタジエニル基、置換インデニル基、又は置換フルオレニル基における置換基の種類、個数、及び置換位置は特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、フェニル基、ベンジル基などのほか、トリメチルシリル基などの珪素原子を含有する炭化水素基などを挙げることができる。RはXの一部と互いにジメチルシリル基、ジメチルメチレン基、メチルフェニルメチレン基、ジフェニルメチレン基、エチレン基、置換エチレン基等の架橋基で結合されていてもよく、また、Rどうしが互いにジメチルシリル基、ジメチルメチレン基、メチルフェニルメチレン基、ジフェニルメチレン基、エチレン基、置換エチレン基等の架橋基で結合されていてもよい。
【0011】
置換シクロペンタジエニル基の具体例としては、例えば、メチルシクロペンタジエニル基、ベンジルシクロペンタジエニル基、ビニルシクロペンタジエニル基、2-メトキシエチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシリルシクロペンタジエニル基、tert-ブチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、フェニルシクロペンタジエニル基、1,2-ジメチルシクロペンタジエニル基、1,3-ジメチルシクロペンタジエニル基、1,3-ジ(tert-ブチル)シクロペンタジエニル基、1,2,3-トリメチルシクロペンタジエニル基、1,2,3,4-テトラメチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基、1-エチル-2,3,4,5-テトラメチルシクロペンタジエニル基、1-ベンジル-2,3,4,5-テトラメチルシクロペンタジエニル基、1-フェニル-2,3,4,5-テトラメチルシクロペンタジエニル基、1-トリメチルシリル-2,3,4,5-テトラメチルシクロペンタジエニル基、1-トリフルオロメチル-2,3,4,5-テトラメチルシクロペンタジエニル基などが挙げられる。置換インデニル基の具体例としては、例えば、1,2,3-トリメチルインデニル基、ヘプタメチルインデニル基、1,2,4,5,6,7-ヘキサメチルインデニル基などが挙げられる。Rとしてはペンタメチルシクロペンタジエニル基が好ましい。
【0012】
Xが表わすアルコキシド基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基などの脂肪族アルコキシ基、フェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ基、2,6-ジイソプロピルフェノキシ基、2,6-ジネオペンチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-イソプロピルフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-ネオペンチルフェノキシ基、2-イソプロピル-6-ネオペンチルフェノキシ基などのアリールオキシド基のいずれでもよいが、2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ基が好ましい。
【0013】
Xが表わすチオラート基としては、チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオプロポキシ基、チオn-ブトキシ基、チオイソブトキシ基、チオsec-ブトキシ基、チオtert-ブトキシ基などの脂肪族チオラート基、チオフェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチルチオフェノキシ基、2,6-ジイソプロピルチオフェノキシ基、2,6-ジネオペンチルチオフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-イソプロピルチオフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-チオネオペンチルフェノキシ基、2-イソプロピル-6-チオネオペンチルフェノキシ基、2,4,6-トリイソプロピルチオフェノキシ基などのアリールチオラート基のいずれでもよいが、2,4,6-トリイソプロピルチオフェノキシ基が好ましい。
【0014】
アミド基としては、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジイソプロピルアミド基などの脂肪族アミド基、フェニルアミド基、2,6-ジ-tert-ブチルフェニルアミド基、2,6-ジイソプロピルフェニルアミド基、2,6-ジネオペンチルフェニルアミド基、2-tert-ブチル-6-イソプロピルフェニルアミド基、2-tert-ブチル-6-ネオペンチルフェニルアミド基、2-イソプロピル-6-ネオペンチルフェニルアミド基、2,4,6-tert-ブチルフェニルアミド基などのアリールアミド基のいずれでもよいが、2,4,6-tert-ブチルフェニルアミド基が好ましい。
【0015】
Xが表わすハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子のいずれでもよいが、塩素原子やヨウ素原子が好ましい。炭素数1から20の炭化水素基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチルなどの直鎖又は分枝鎖の脂肪族炭化水素基、フェニル基、トリル基、ナフチル基など芳香族炭化水素基、ベンジル基などのアラルキル基などのほか、トリメチルシリルメチル基、ビストリメチルシリルメチル基などのケイ素原子を含有する炭化水素基であってもよい。これらのうち、メチル基、エチル基、イソブチル基、トリメチルシリルメチル基などが好ましい。Xとしては、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1から20の炭化水素基が好ましい。
【0016】
Lが示すルイス塩基性化合物としては、対電子をもって金属に配位できるルイス塩基性の化合物であれば特に限定されず、無機化合物又は有機化合物のいずれであってもよい。ルイス塩基性化合物として、例えば、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物、アミン化合物、ホスフィン化合物、シリルオキシ化合物などを用いることができるが、これらに限定されることはない。一般式(II)においてQは周期律表第III族元素を示すが、該元素の具体例としては、ホウ素、アルミニウム、ガリウムなどを挙げることができ、アルミニウムが好ましい。
【0017】
式(I)で表される希土類金属化合物のメタロセン型錯体の具体例としては、例えば、ビスペンタメチルシクロペンタジエニルビステトラヒドロフランサマリウム、メチルビスペンタメチルシクロペンタジエニルテトラヒドロフランサマリウム、クロロビスペンタメチルシクロペンタジエニルテトラヒドロフランサマリウム、又はヨードビスペンタメチルシクロペンタジエニルテトラヒドロフランサマリウムなどが挙げられ、式(II)で表わされる希土類金属化合物のメタロセン型錯体の具体例としては、例えば、ジメチルアルミニウム(μ-ジメチル)ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)サマリウムなどが挙げられる。
【0018】
助触媒として用いられるイオン性化合物は、非配位性アニオンとカチオンとからなるものであれば特に限定されないが、例えば、上記希土類金属化合物と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるイオン性化合物などを挙げることができる。非配位性アニオンとしては、例えば、テトラ(フェニル)ボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル,ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル),フェニル]ボレート、トリデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレートなどが挙げられる。
【0019】
カチオンとしては、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどを挙げることができる。カルボニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ置換フェニルカルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンを挙げることができる。トリ置換フェニルカルボニウムカチオンの具体例としては、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンを挙げることができる。アンモニウムカチオンの具体例としては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n-ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン、ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンを挙げることができる。ホスホニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンを挙げることができる。
【0020】
該イオン性化合物は、非配位性アニオン及びカチオンの中から、それぞれ任意に選択して組み合わせたものを好ましく用いることができる。例えば、イオン性化合物としては、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1'-ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが好ましい。イオン性化合物を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。遷移金属化合物と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるルイス酸として、B(C6F5)3、Al(C6F5)3などを用いることができ、これらを前記のイオン性化合物と組み合わせて用いてもよい。
【0021】
助触媒として用いられるアルミノキサンとしては、例えば、有機アルミニウム化合物と縮合剤とを接触させることによって得られるものを用いることができ、より具体的には、一般式(-Al(R')O-)n で示される鎖状アルミノキサン又は環状アルミノキサンを用いることができる。上記式において、R'は炭素数1〜10の炭化水素基であり、該炭化水素基はハロゲン原子及び/又はアルコキシ基で置換されていてもよい。nは重合度を示し、好ましくは5以上、より好ましくは10以上である。R'としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基などが挙げられるが、メチル基が好ましい。アルミノキサンの原料として用いられる有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム及びその混合物などが挙げられ、特に好ましいのはトリメチルアルミニウムである。トリメチルアルミニウムとトリブチルアルミニウムとの混合物を原料として用いたアルミノキサンも好適に用いることができる。アルミノキサンをイオン性化合物と組み合わせて用いてもよい。
【0022】
本発明の触媒組成物は、上記の成分(A)及び(B)を含み、さらに成分(C)として周期律表第I〜III族元素の有機金属化合物を含んでいてもよい。有機金属化合物として、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、有機ホウ素化合物などが挙げられる。より具体的には、メチルリチウム、ブチルリチウム、フェニルリチウム、ベンジルリチウム、ネオペンチルリチウム、トリメチルシリルメチルリチウム、ビストリメチルシリルメチルリチウム、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジエチル亜鉛、ジメチル亜鉛、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどを用いることができる。さらに、エチルマグネシウムクロライド、ブチルマグネシウムクロライド、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、セスキエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどのような有機金属ハロゲン化合物、ジエチルアルミニウムハイドライド、セスキエチルアルミニウムハイドライドのような水素化有機金属化合物を用いてもよい。これらの有機金属化合物を2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0023】
本発明媒組成物における上記成分(A)及び(B)の配合割合は、重合すべきモノマーの種類は反応の種類や条件に応じて適宜選択することが可能である。一般的には、希土類金属化合物とアルミノキサンとを含む組成物では、成分(A):成分(B)(モル比)を1:1〜1:10000、好ましくは 1:10〜1:1000、さらに好ましくは 1:50〜1:500程度にすることができる。希土類金属化合物とイオン性化合物とを含む組成物では、成分(A):成分(B)(モル比)を1:0.1 〜1:10、好ましくは1:0.2〜1:5、さらに好ましくは1:0.5〜1:2程度にすればよい。また、成分(C)を含む触媒組成物では、希土類金属化合物と成分(C)との配合割合(モル比)は、例えば、1:0.1〜1:1000、好ましくは1:0.2〜1:500、さらに好ましくは1:0.5〜1:50程度である。
【0024】
本発明の重合方法で共重合可能な共役ジエン化合物モノマーの種類は特に限定されないが、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2-エチル-1,3- ブタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、2-メチルペンタジエン、4-メチルペンタジエン、又は2,4-ヘキサジエンなどを挙げることができ、これらのうち1,3-ブタジエンが好ましい。これらのモノマー成分を単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本発明の重合方法で共重合可能な芳香族ビニル化合物モノマーの種類も特に限定されない。例えば、スチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、クロロメチルスチレン、p-tert-ブトキシスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン、ジメチルアミノエチルスチレン、ビニルトルエンなどが用いられる、これらのうちスチレンが好ましい。これらのモノマー成分を単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
本発明の重合方法は、溶媒の存在下又は非存在下のいずれで行なってもよい。溶媒を用いる場合には、溶媒が重合反応において実質的に不活性であり、モノマー及び触媒組成物に対して十分な溶解性を有していれば、その種類は特に限定されない。例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン等の飽和脂環式炭化水素;1-ブテン、2-ブテン等のモノオレフィン類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロルエチレン、パークロルエチレン、1,2-ジクロロエタン、クロルベンゼン、ブロムベンゼン、クロルトルエン等のハロゲン化炭化水素が挙げられるが、これらのうち、トルエンが好ましい。また、溶媒を2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本発明の重合方法における重合温度は、例えば-100〜100℃の範囲、好ましくは -50〜80℃の範囲である。重合時間は、例えば1分〜50時間程度であり、好ましくは5分〜5時間程度である。もっとも、これらの反応条件は、モノマーの種類や触媒組成物の種類に応じて、適宜選択することが可能であり、上記に例示した範囲に限定されることはない。重合反応が所定の重合率に達した後、公知の重合停止剤を重合系に加えて停止させ、次いで通常の方法に従い生成した共重合体を反応系から分離することができる。
【0028】
本発明の共重合体のミクロ構造におけるシス構造の含有量は、通常は80 mol%以上、好ましくは90 mol% 以上、特に好ましくは95 mol%以上であり、分子量Mnは10,000以上、好ましくは20,000以上、より好ましくは50,000以上、特に好ましくは100,000以上であり、分子量分布 Mw/Mnは2.50以下、好ましくは 2.00以下、より好ましくは 1.80以下、特に好ましくは 1.50以下である。また、本発明の共重合体は、モノマー組成が実質的にランダム性を示すランダム共重合体である。本発明の共重合体は、高い熱的特性(熱安定性等)と機械的特性(引張り弾性率、曲げ弾性率等)を有することが期待されるので、高分子材料として多様な用途に利用することが可能である。
【0029】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例中のポリブタジエンのミクロ構造は、1H NMRおよび13C NMRにより得られたピーク[1H NMR: δ 4.8-5.0 (1,2-ビニルユニットの=CH2)、5.2-5.8 (1,4-ユニットの-CH=と1,2-ビニルユニットの-CH=)、13C NMR: δ 27.4 (1,4-シスユニット)、32.7 (1,4-トランスユニット)、127.7-131.8 (1,4-ユニット)、113.8-114.8と143.3-144.7 (1,2-ビニルユニット)]の積分比から算出し、スチレンの含有率は1H NMRにより得られたピーク[δ 4.8-5.0(ブタジエンの1,2-ビニルユニットの=CH2)、δ 5.2-5.8(ブタジエンの1,4-ビニルユニットと1,2-ビニルユニットの-CH=)、及びδ 6.3-7.3 (スチレンユニットの芳香環)]の積分比から算出した。また、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)は、GPCによりポリスチレンを標準物質として用い求めた。
【0030】
例1
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、十分に乾燥した30 ml耐圧ガラスボトルに、ジメチルアルミニウム(μ-ジメチル)ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)サマリウム[(Cp*)2Sm(μ-Me)2AlMe2](Cp*:ペンタメチルシクロペンタジエニル配位子)を0.03 mmol仕込み、トルエン1 mlに溶解した。ついで、トリイソブチルアルミニウム0.09 mmol、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Ph3CB(C6F5)4)0.03 mmolを添加してボトルを打栓した。その後、グローブボックスからボトルを取り出し、1,3-ブタジエンを0.97 g、スチレンを1.4 ml仕込み、50℃で30分間重合を行った。重合後、10 wt%のBHT〔2,6-ビス(tert-ブチル)-4-メチルフェノール〕を含むメタノール10 mlを加えて反応を停止し、さらに大量のメタノール/塩酸混合溶媒で重合体を分離して60℃で真空乾燥した。得られた重合体の収率は21 wt%であった。また、重合体中のスチレン含有率は4.6 mol%であり、ブタジエンユニットのミクロ構造はシス含量が94.6 mol%であり、数平均分子量は101,000、Mw/Mnは1.41であった。
【0031】
例2
1,3-ブタジエンを0.81 g、スチレンを1.7 ml仕込み、50℃で1時間重合を行う以外は、例1と同様の方法で重合体を得た。得られた重合体の収率は22 wt%であった。また、重合体中のスチレン含有率は7.2 mol%であり、ブタジエンユニットのミクロ構造はシス含量が95.1 mol%であり、数平均分子量は78,600、Mw/Mnは1.59であった。
【0032】
例3
1,3-ブタジエンを0.65 g、スチレンを2.0 ml仕込み、50℃で6時間重合を行う以外は、例1と同様の方法で重合体を得た。得られた重合体の収率は20 wt%であった。また、重合体中のスチレン含有率は11.4 mol%であり、ブタジエンユニットのミクロ構造はシス含量が91.7 mol%であり、数平均分子量は73,900、Mw/Mnは1.69であった。
【0033】
例4
1,3-ブタジエンを0.49 g、スチレンを2.4 ml仕込み、50℃で12時間重合を行う以外は、例1と同様の方法で重合体を得た。得られた重合体の収率は23 wt%であった。また、重合体中のスチレン含有率は19.1 mol%であり、ブタジエンユニットのミクロ構造はシス含量が87.4 mol%であり、数平均分子量は38,700、Mw/Mnは1.75であった。
【0034】
例5
1,3-ブタジエンを0.32 g、スチレンを2.8 ml仕込み、50℃で50時間重合を行う以外は、例1と同様の方法で重合体を得た。得られた重合体の収率は21 wt%であった。また、重合体中のスチレン含有率は33.2 mol%であり、ブタジエンユニットのミクロ構造はシス含量が80.3 mol%であり、数平均分子量は23,400、Mw/Mnは2.23であった。
【0035】
【表1】
【0036】
【発明の効果】
本発明の触媒組成物を用いると、共役ジエンと芳香族ビニル化合物とから、ミクロ構造におけるシス1,4-構造の含量が極めて高く、かつ高分子量で狭い分子量分布を有するランダム共重合体を製造することができる。
Claims (7)
- 共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合により、ミクロ構造におけるシス1,4-構造の含有量が80 mol%以上であり、分子量分布Mw/Mnが2.00以下である共重合体を得るための触媒組成物であって、下記の成分:(A)希土類金属化合物のメタロセン型錯体、及び(B) 非配位性アニオンとカルボニウムカチオンとからなるイオン性化合物を含む組成物。
- メタロセン型錯体がサマリウム錯体である請求項1に記載の触媒組成物。
- イオン性化合物がトリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート又はトリフェニルカルボニウムテトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレートである請求項1又は2に記載の触媒組成物。
- さらに周期律表第I〜III族元素の有機金属化合物を含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載の触媒組成物。
- 希土類金属化合物のメタロセン型錯体を含む共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合用触媒と共にもちいるための助触媒であって、非配位性アニオンとカルボニウムカチオンとからなるイオン性化合物を含む助触媒。
- 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の触媒組成物の存在下で共役ジエンと芳香族ビニル化合物とを共重合する方法。
- 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の触媒組成物の存在下で共役ジエンと芳香族ビニル化合物とを共重合することにより得ることができる共重合体。
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