JP2004323743A - ブロック共重合体の製造方法 - Google Patents
ブロック共重合体の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004323743A JP2004323743A JP2003122245A JP2003122245A JP2004323743A JP 2004323743 A JP2004323743 A JP 2004323743A JP 2003122245 A JP2003122245 A JP 2003122245A JP 2003122245 A JP2003122245 A JP 2003122245A JP 2004323743 A JP2004323743 A JP 2004323743A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- group
- conjugated diene
- block copolymer
- monomer
- borate
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Classifications
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C08—ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
- C08F—MACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED BY REACTIONS ONLY INVOLVING CARBON-TO-CARBON UNSATURATED BONDS
- C08F297/00—Macromolecular compounds obtained by successively polymerising different monomer systems using a catalyst of the ionic or coordination type without deactivating the intermediate polymer
- C08F297/06—Macromolecular compounds obtained by successively polymerising different monomer systems using a catalyst of the ionic or coordination type without deactivating the intermediate polymer using a catalyst of the coordination type
Landscapes
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- Inorganic Chemistry (AREA)
- Health & Medical Sciences (AREA)
- Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
- Medicinal Chemistry (AREA)
- Polymers & Plastics (AREA)
- Organic Chemistry (AREA)
- Graft Or Block Polymers (AREA)
Abstract
【課題】共役ジエンと極性モノマーとのブロック共重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】共役ジエンと極性モノマーとのブロック共重合体の製造方法であって、下記の成分:(A)希土類金属化合物のメタロセン型錯体、及び(B)非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物及び/又はアルミノキサンを含む触媒組成物の存在下に共役ジエンの単独重合を行った後、極性モノマーを添加し、共役ジエンと極性モノマーとのブロック共重合体を製造する方法。
【選択図】 図1
【解決手段】共役ジエンと極性モノマーとのブロック共重合体の製造方法であって、下記の成分:(A)希土類金属化合物のメタロセン型錯体、及び(B)非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物及び/又はアルミノキサンを含む触媒組成物の存在下に共役ジエンの単独重合を行った後、極性モノマーを添加し、共役ジエンと極性モノマーとのブロック共重合体を製造する方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は共役ジエンと極性モノマーとのブロック共重合体を製造する方法及び上記方法により製造された特定のブロック共重合体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【0003】
共役ジエン類と極性モノマーを共重合するための触媒については、従来より数多くの提案がなされており、工業的に極めて重要な役割を担っている。特に、熱的・機械的特性において高性能化された共役ジエンと極性モノマーとのブロック共重合体を得る目的で、アルキルリチウムを重合開始剤として用いるリビングアニオン重合が研究・開発されてきた。
【0004】
リビングアニオン重合では、重合開始剤の添加量、モノマーの使用量と添加時期など、各種の重合条件を適宜選択することによって化学構造が異なる種々の特性を有する共重合体を製造することができる。共役ジエンと極性モノマーとの共重合に関しては、アルキルリチウムによるリビングアニオン重合でブタジエンと極性モノマー(例えばアクリレート)を共重合させることが知られている(非特許文献1及び2を参照)。具体的には、ブタジエンの後にメチルアクリレートを重合させたジブロック共重合体、ブタジエンの両側にメチルメタクリレートを重合させたトリブロック共重合体などが開発されている。リビングアニオン重合は、ラジカル重合に比べて一般に重合途中で連鎖移動反応による反応活性末端の失活や新規生成を伴わない反応であり、得られた重合体の分子量分布はラジカル重合による重合体の分子量分布に比べて著しく狭くなることが特徴として知られている。しかしながら、アルキルリチウムを用いた重合系では、共重合体の共役ジエン部分の立体規則性をシス1,4結合に制御することは困難であった。例えば、上記文献において重合体のブタジエン部分のシス1,4含有量は50mol%程度である。
【0005】
一方、共役ジエン部分の立体規則性が、高いシス1,4結合に制御されるような重合触媒が研究・開発されてきた。例えば、ニッケル、コバルト、チタン等の遷移金属化合物を主成分とする複合触媒系や(非特許文献3〜5を参照)、ネオジウム、ガドリニウム等の希土類金属化合物を主成分とする複合触媒系(非特許文献6〜8を参照)などが知られている。しかしながら、これらの触媒系ではある程度高いシス1,4制御性を示すものの、ジエン類の重合反応がリビング的に進行しておらず、重合末端に極性モノマーを導入することは極めて困難であった。これに対し、希土類金属化合物を主成分とする複合触媒系において、ある程度高いシス1,4制御性を示し、重合末端に極性モノマー(例えばラクトン類)を導入する技術が開発されている(特許文献1を参照)。しかしながら、高いシス1,4制御性を示すさらなる重合触媒の開発が望まれていた。また、共役ジエンと(メタ)アクリル系モノマーやアクリロニトリル系モノマーなどの極性モノマーとの重合に適した重合触媒の開発が望まれていた。
【0006】
【非特許文献1】
H. L. Hsieh, R. P. Quirk, Marcel Dekker Inc., New York−Basel, 1996.
【非特許文献2】
Y. S. Yu, R. Jerome, R. Fayt, Ph. Teyssie Macromolecules, 1994, 27, 5957.
【非特許文献3】
工業化学雑誌, 72, 2081, 1969
【非特許文献4】
Plast. Kautsch., 40, 356, 1993
【非特許文献5】
Makromol. Chem. Phys., 195, 2623, 1994
【非特許文献6】
Macromol. Rapid Commun. 16, 563, 1992
【非特許文献7】
J. Polym. Sci., Par A; Polym. Chem., 32, 1195, 1994
【非特許文献8】
Polymer, 37, 349, 1996
【特許文献1】
特開2002−356557号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、共役ジエンと極性モノマーとのブロック共重合体の製造方法を提供することにある。より具体的には、ミクロ構造におけるシス1,4−構造の含有量が高いブロック共重合体の製造方法、及び共役ジエンと(メタ)アクリル系モノマー又はアクリロニトリル系モノマーなどを含む極性モノマーとのブロック共重合体の製造方法を提供することにある。本発明の別の課題は、上記の特徴を有するブロック共重合体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、希土類金属メタロセン型の重合触媒と、非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物及び/又はアルミノキサンを含む助触媒とを組み合わせた触媒組成物を用いることによって、共役ジエン類と(メタ)アクリル系モノマー又はアクリロニトリル系モノマーなどを含む極性モノマーとを効率よくブロック共重合することができること、及び上記の共重合用触媒組成物を用いることにより、共役ジエン類と極性モノマーとを共重合させて、ミクロ構造におけるシス1,4−構造の含有量が高いブロック共重合体を製造できることを見出した。本発明はこれらの知見を基にして完成されたものである。
【0009】
すなわち本発明は、共役ジエンと極性モノマーとのブロック共重合体の製造方法であって、下記の成分:(A)希土類金属化合物のメタロセン型錯体、及び(B)非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物及び/又はアルミノキサンを含む触媒組成物の存在下に共役ジエンの単独重合を行った後、極性モノマーを添加し、共役ジエンと極性モノマーとのブロック共重合体を製造する方法を提供するものである。
【0010】
この発明の好ましい態様によれば、メタロセン型錯体がサマリウム錯体である上記の方法;イオン性化合物がトリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1’−ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである上記の方法;さらに周期律表第I〜III族元素の有機金属化合物を含む上記の方法;及び、極性モノマーが(メタ)アクリル系モノマー又はアクリロニトリル系モノマーである上記の方法が提供される。
【0011】
また、別の観点からは、共役ジエンと(メタ)アクリル系モノマーとのブロック共重合体であって、ミクロ構造におけるシス1,4−構造の含有量が80mol%以上であるブロック共重合体;及び、共役ジエンとアクリロニトリル系モノマーとのブロック共重合体が提供される。これらの共重合体は、上記の方法に従って共役ジエンと(メタ)アクリル系モノマー又はアクリロニトリル系モノマーとをブロック共重合することによって製造することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
希土類金属化合物のメタロセン型錯体としては、例えば、一般式(I):RaMXb・Lc又は一般式(II):RaMXbQXb(式中、Mは希土類金属を示し;Rはシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基、フルオレニル基、又は置換フルオレニル基を示し;Xは水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、又は炭素数1から20の炭化水素基を示し;Lはルイス塩基性化合物を示し;Qは周期律表第III族元素を示し;aは1、2、又は3の整数を示し;bは0、1、又は2の整数を示し;cは0、1、又は2の整数を示す)で示される2価又は3価の希土類金属化合物が挙げられる。
【0013】
上記一般式(I)において、Mが示す希土類金属としては、周期律表中の原子番号57から71の元素を用いることができる。希土類金属の具体例としては、例えば、ランタニウム、セリウム、プラセオジム、ネオジウム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミニウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムを挙げることができ、これらのうちサマリウムが好ましい。
【0014】
aが2又は3である場合、2又は3個のRは同一でも異なっていてもよい。同様に、b又はcが2である場合には、2個のX又はLはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0015】
置換シクロペンタジエニル基、置換インデニル基、又は置換フルオレニル基における置換基の種類、個数、及び置換位置は特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、フェニル基、ベンジル基などのほか、トリメチルシリル基などの珪素原子を含有する炭化水素基などを挙げることができる。RはXの一部と互いにジメチルシリル基、ジメチルメチレン基、メチルフェニルメチレン基、ジフェニルメチレン基、エチレン基、置換エチレン基等の架橋基で結合されていてもよく、また、Rどうしが互いにジメチルシリル基、ジメチルメチレン基、メチルフェニルメチレン基、ジフェニルメチレン基、エチレン基、置換エチレン基等の架橋基で結合されていてもよい。
【0016】
置換シクロペンタジエニル基の具体例としては、例えば、メチルシクロペンタジエニル基、ベンジルシクロペンタジエニル基、ビニルシクロペンタジエニル基、2−メトキシエチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシリルシクロペンタジエニル基、tert−ブチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、フェニルシクロペンタジエニル基、1,2−ジメチルシクロペンタジエニル基、1,3−ジメチルシクロペンタジエニル基、1,3−ジ(tert−ブチル)シクロペンタジエニル基、1,2,3−トリメチルシクロペンタジエニル基、1,2,3,4−テトラメチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基、1−エチル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル基、1−イソプロピル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル基、1−ベンジル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル基、1−フェニル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル基、1−トリメチルシリル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル基、1−トリフルオロメチル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル基などが挙げられる。置換インデニル基の具体例としては、例えば、1,2,3−トリメチルインデニル基、ヘプタメチルインデニル基、1,2,4,5,6,7−ヘキサメチルインデニル基などが挙げられる。Rとしては1−イソプロピル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル基が好ましい。
【0017】
Xが表わすアルコキシド基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基などの脂肪族アルコキシ基、フェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ基、2,6−ジイソプロピルフェノキシ基、2,6−ジネオペンチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−ネオペンチルフェノキシ基、2−イソプロピル−6−ネオペンチルフェノキシ基などのアリールオキシド基のいずれでもよいが、2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ基が好ましい。
【0018】
Xが表わすチオラート基としては、チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオプロポキシ基、チオn−ブトキシ基、チオイソブトキシ基、チオsec−ブトキシ基、チオtert−ブトキシ基などの脂肪族チオラート基、チオフェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチルチオフェノキシ基、2,6−ジイソプロピルチオフェノキシ基、2,6−ジネオペンチルチオフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルチオフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−チオネオペンチルフェノキシ基、2−イソプロピル−6−チオネオペンチルフェノキシ基、2,4,6−トリイソプロピルチオフェノキシ基などのアリールチオラート基のいずれでもよいが、2,4,6−トリイソプロピルチオフェノキシ基が好ましい。
【0019】
Xが表わすアミド基としては、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジイソプロピルアミド基などの脂肪族アミド基、フェニルアミド基、2,6−ジ−tert−ブチルフェニルアミド基、2,6−ジイソプロピルフェニルアミド基、2,6−ジネオペンチルフェニルアミド基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルフェニルアミド基、2−tert−ブチル−6−ネオペンチルフェニルアミド基、2−イソプロピル−6−ネオペンチルフェニルアミド基、2,4,6−tert−ブチルフェニルアミド基などのアリールアミド基のいずれでもよいが、2,4,6−tert−ブチルフェニルアミド基が好ましい。
【0020】
Xが表わすハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子のいずれでもよいが、塩素原子やヨウ素原子が好ましい。
【0021】
Xが表わす炭素数1から20の炭化水素基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチルなどの直鎖又は分枝鎖の脂肪族炭化水素基、フェニル基、トリル基、ナフチル基など芳香族炭化水素基、ベンジル基などのアラルキル基などのほか、トリメチルシリルメチル基、ビストリメチルシリルメチル基などのケイ素原子を含有する炭化水素基であってもよい。これらのうち、メチル基、エチル基、イソブチル基、トリメチルシリルメチル基が好ましい。
【0022】
Xとしては、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1から20の炭化水素基が好ましい。
【0023】
Lが示すルイス塩基性化合物としては、対電子をもって金属に配位できるルイス塩基性の化合物であれば特に限定されず、無機化合物又は有機化合物のいずれであってもよい。ルイス塩基性化合物として、例えば、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物、アミン化合物、ホスフィン化合物、シリルオキシ化合物などを用いることができるが、これらに限定されることはない。
【0024】
一般式(II)においてQは周期律表第III族元素を示すが、該元素の具体例としては、ホウ素、アルミニウム、ガリウムなどを挙げることができ、アルミニウムが好ましい。
【0025】
式(I)で表される希土類金属化合物のメタロセン型錯体の具体例としては、例えば、ビスペンタメチルシクロペンタジエニルビステトラヒドロフランサマリウム、ビステトラメチルイソプロピルシクロペンタジエニルテトラヒドロフランサマリウム、メチルビスペンタメチルシクロペンタジエニルテトラヒドロフランサマリウム、クロロビスペンタメチルシクロペンタジエニルテトラヒドロフランサマリウム、又はヨードビスペンタメチルシクロペンタジエニルテトラヒドロフランサマリウムなどが挙げられ、式(II)で表わされる希土類金属化合物のメタロセン型錯体の具体例としては、例えば、ジメチルアルミニウム(μ−ジメチル)ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)サマリウムなどが挙げられる。
【0026】
助触媒として用いられるイオン性化合物は、非配位性アニオンとカチオンとからなるものであれば特に限定されないが、例えば、上記希土類金属化合物と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるイオン性化合物などを挙げることができる。非配位性アニオンとしては、例えば、テトラ(フェニル)ボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル,ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル),フェニル]ボレート、トリデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレートなどが挙げられる。
【0027】
カチオンとしては、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどを挙げることができる。カルボニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ置換フェニルカルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンを挙げることができる。トリ置換フェニルカルボニウムカチオンの具体例としては、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンを挙げることができる。アンモニウムカチオンの具体例としては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン、ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンを挙げることができる。ホスホニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンを挙げることができる。
【0028】
該イオン性化合物は、非配位性アニオン及びカチオンの中から、それぞれ任意に選択して組み合わせたものを好ましく用いることができる。例えば、イオン性化合物としては、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1’−ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが好ましい。イオン性化合物を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。遷移金属化合物と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるルイス酸として、B(C6F5)3、Al(C6F5)3などを用いることができ、これらを前記のイオン性化合物と組み合わせて用いてもよい。
【0029】
助触媒として用いられるアルミノキサンとしては、例えば、有機アルミニウム化合物と縮合剤とを接触させることによって得られるものを用いることができ、より具体的には、一般式(−Al(R’)O−)n で示される鎖状アルミノキサン又は環状アルミノキサンを用いることができる。上記式において、R’は炭素数1〜10の炭化水素基であり、該炭化水素基はハロゲン原子及び/又はアルコキシ基で置換されていてもよい。nは重合度を示し、好ましくは5以上、より好ましくは10以上である。R’としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基などが挙げられるが、メチル基が好ましい。アルミノキサンの原料として用いられる有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム及びその混合物などが挙げられ、特に好ましいのはトリメチルアルミニウムである。トリメチルアルミニウムとトリブチルアルミニウムとの混合物を原料として用いたアルミノキサンも好適に用いることができる。アルミノキサンをイオン性化合物と組み合わせて用いてもよい。
【0030】
本発明の方法に用いられる触媒組成物は、上記の成分(A)及び(B)を含み、さらに成分(C)として周期律表第I〜III族元素の有機金属化合物を含んでいてもよい。有機金属化合物として、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、有機ホウ素化合物などが挙げられる。より具体的には、メチルリチウム、ブチルリチウム、フェニルリチウム、ベンジルリチウム、ネオペンチルリチウム、トリメチルシリルメチルリチウム、ビストリメチルシリルメチルリチウム、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジエチル亜鉛、ジメチル亜鉛、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどを用いることができる。さらに、エチルマグネシウムクロライド、ブチルマグネシウムクロライド、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、セスキエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどのような有機金属ハロゲン化合物、ジエチルアルミニウムハイドライド、セスキエチルアルミニウムハイドライドのような水素化有機金属化合物を用いてもよい。これらの有機金属化合物を2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0031】
上記組成物における上記成分(A)及び(B)の配合割合は、重合するモノマーの種類や反応の種類や条件に応じて適宜選択することが可能である。一般的には、希土類金属化合物とアルミノキサンとを含む組成物では、成分(A):成分(B)(モル比)を1:1〜1:10000、好ましくは 1:10〜1:1000、さらに好ましくは 1:50〜1:500程度にすることができる。希土類金属化合物とイオン性化合物とを含む組成物では、成分(A):成分(B)(モル比)を1:0.1 〜1:10、好ましくは1:0.2〜1:5、さらに好ましくは1:0.5〜1:2程度にすればよい。また、成分(C)を含む触媒組成物では、希土類金属化合物と成分(C)との配合割合(モル比)は、例えば、1:0.1〜1:1000、好ましくは1:0.2〜1:500、さらに好ましくは1:0.5〜1:50程度である。なお、本発明の方法に用いられる触媒組成物は常法に従って製造することができる。
【0032】
本発明の重合方法における触媒組成物の用量は、重合するモノマーの種類や反応の種類や条件に応じて適宜選択することが可能である。一般的には、モノマー100gに対して、希土類金属化合物を例えば0.00002〜0.02mol、好ましくは0.0002〜0.01mol、さらに好ましくは0.0004〜0.004mol程度使用すればよい。
【0033】
本発明の重合方法で共重合可能な共役ジエン化合物モノマーの種類は特に限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−メチルペンタジエン、4−メチルペンタジエン、又は2,4−ヘキサジエンなどを挙げることができ、これらのうち1,3−ブタジエンが好ましい。これらのモノマー成分を単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
本発明の重合方法で共重合可能な極性モノマーの種類も特に限定されない。例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアクリロニトリル系モノマーなどが用いられる。これらのうちメタクリル酸メチル、アクリロニトリルが好ましい。これらのモノマー成分を単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
本発明の重合方法は、溶媒の存在下又は非存在下のいずれで行なってもよい。溶媒を用いる場合には、溶媒が重合反応において実質的に不活性であり、モノマー及び触媒組成物に対して十分な溶解性を有していれば、その種類は特に限定されない。例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン等の飽和脂環式炭化水素;1−ブテン、2−ブテン等のモノオレフィン類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロルエチレン、パークロルエチレン、1,2−ジクロロエタン、クロルベンゼン、ブロムベンゼン、クロルトルエン等のハロゲン化炭化水素が挙げられるが、これらのうち、トルエンが好ましい。また、溶媒を2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0036】
本発明の重合方法における重合温度は、例えば−100〜100℃の範囲、好ましくは −50〜80℃の範囲である。重合時間は、例えば1分〜50時間程度であり、好ましくは5分〜5時間程度である。もっとも、これらの反応条件は、モノマーの種類や触媒組成物の種類に応じて、適宜選択することが可能であり、上記に例示した範囲に限定されることはない。共役ジエンの単独重合を行って重合反応が所定の重合率に達した後、極性モノマーを添加してさらに重合反応が所定の重合率に達するまで重合を行うことができる。重合反応が所定の重合率に達した後、公知の重合停止剤を重合系に加えて停止させ、次いで通常の方法に従い生成した共重合体を反応系から分離することができる。
【0037】
本発明のブロック共重合体のミクロ構造におけるシス構造の含有量は、通常は80mol%以上、好ましくは85mol% 以上、より好ましくは90mol% 以上、特に好ましくは92mol%以上であり、分子量Mnは5000以上、好ましくは10000以上、より好ましくは20000以上、特に好ましくは50000以上であり、分子量分布 Mw/Mnは2.20以下、好ましくは2.00以下、より好ましくは1.80以下、特に好ましくは1.50以下である。また、本発明の共重合体は、モノマー組成が実質的にブロック性を示すブロック共重合体である。本発明の共重合体は、高い熱的特性(熱安定性等)と機械的特性(引張り弾性率、曲げ弾性率、及び耐衝撃性等)を有することが期待されるので、高分子材料として多様な用途に利用することが可能である。
【0038】
【実施例】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の得られたポリブタジエンのミクロ構造は、1H NMRおよび13C NMRにより得られたピーク[1H NMR: δ 4.8−5.0 (1,2ビニルユニットの=CH2)、5.2−5.8 (1,4ユニットの−CH=と1,2ビニルユニットの=CH2)、13C NMR: δ 27.4 (1,4−シスユニット)、32.7 (1,4−トランスユニット)、127.7−131.8 (1,4ユニット)、113.8−114.8と143.3−144.7 (1,2ビニルユニット)]の積分比からミクロ構造を算出し、メタクリル酸メチルの含有率は1H NMRにより得られたピーク[δ: 4.8−5.0(ブタジエンの1,2−ビニルユニットの=CH2)およびδ: 5.2−5.8(ブタジエンの1,4−ユニットと1,2−ビニルユニットの−CH=)とδ: 3.5−3.7(メタクリル酸メチルユニットのOCH3)] の積分比から、アクリロニトリルの含有率は1H NMRにより得られたピーク[δ: 2.0−2.1(ブタジエンの1,4−ユニットと1,2−ビニルユニットの−CH2−)とδ: 1.4−1.5(アクリロニトリルユニットの−CH2−)] の積分比から求めた。重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)はGPCにより、ポリスチレンを標準物質として用い求めた。
【0039】
<実施例1>
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、十分に乾燥した30ml耐圧ガラスボトルに、ビステトラメチルイソプロピルシクロペンタジエニルテトラヒドロフランサマリウム [(C5Me4iPr)2Sm(THF)](iPr: イソプロピル基;THF: テトラヒドロフラン配位子)を0.02mmol仕込みトルエン8mlで溶解させた。次いでトリイソブチルアルミニウム 0.30mmol、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Ph3CB(C6F5)4)0.02mmolを添加しボトルを打栓した。その後、グローブボックスからボトルを取り出し、1,3−ブタジエンを1.35g仕込み、25℃で10分間重合を行った。ここでサンプリングを行ったところ、1,3−ブタジエンの転化率96%で、ミクロ構造はシス含量が94.8%、重量平均分子量は107,000、数平均分子量は85,200であり、Mw/Mnは1.26であった。このポリマーの1H NMR チャートを図1Aに示す。
その後、ボトルにメタクリル酸メチルを2.6ml添加し、さらに25℃で1時間重合を行った。重合後、大量のメタノールを加えて反応を停止したのち重合体を分離させ、60℃で真空乾燥した。得られた重合体の収量は1.42gであった。重合体中のメタクリル酸メチル含有率は12.2wt% (7.0mol%)であり、重量平均分子量は123,100、数平均分子量は92,200であり、Mw/Mnは1.34であった。このポリマーの1H NMR チャートを図1Bに示す。
【0040】
<実施例2>
実施例1において、メタクリル酸メチルの代わりにアクリロニトリルを1.7ml添加する以外は同様の方法で実験を行った。得られた重合体の収量は1.45gであった。重合体中のアクリロニトリル含有率は15.1wt% (15.3mol%)であり、重量平均分子量は152,500、数平均分子量は92,700であり、Mw/Mnは1.65であった。このポリマーの1H NMR チャートを図1Cに示す。
【0041】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、共役ジエンと極性モノマーとからブロック共重合体を製造することができる。
【0042】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1Aは、実施例1で得られたブタジエンの重合体の1H NMRスペクトルを示す図である。図1Bは、実施例1で得られたブタジエンとメタクリル酸メチルとのブロック共重合体の1H NMRスペクトルを示す図である。図1Cは、実施例2で得られたブタジエンとアクリロニトリルとのブロック共重合体の1H NMRスペクトルを示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は共役ジエンと極性モノマーとのブロック共重合体を製造する方法及び上記方法により製造された特定のブロック共重合体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【0003】
共役ジエン類と極性モノマーを共重合するための触媒については、従来より数多くの提案がなされており、工業的に極めて重要な役割を担っている。特に、熱的・機械的特性において高性能化された共役ジエンと極性モノマーとのブロック共重合体を得る目的で、アルキルリチウムを重合開始剤として用いるリビングアニオン重合が研究・開発されてきた。
【0004】
リビングアニオン重合では、重合開始剤の添加量、モノマーの使用量と添加時期など、各種の重合条件を適宜選択することによって化学構造が異なる種々の特性を有する共重合体を製造することができる。共役ジエンと極性モノマーとの共重合に関しては、アルキルリチウムによるリビングアニオン重合でブタジエンと極性モノマー(例えばアクリレート)を共重合させることが知られている(非特許文献1及び2を参照)。具体的には、ブタジエンの後にメチルアクリレートを重合させたジブロック共重合体、ブタジエンの両側にメチルメタクリレートを重合させたトリブロック共重合体などが開発されている。リビングアニオン重合は、ラジカル重合に比べて一般に重合途中で連鎖移動反応による反応活性末端の失活や新規生成を伴わない反応であり、得られた重合体の分子量分布はラジカル重合による重合体の分子量分布に比べて著しく狭くなることが特徴として知られている。しかしながら、アルキルリチウムを用いた重合系では、共重合体の共役ジエン部分の立体規則性をシス1,4結合に制御することは困難であった。例えば、上記文献において重合体のブタジエン部分のシス1,4含有量は50mol%程度である。
【0005】
一方、共役ジエン部分の立体規則性が、高いシス1,4結合に制御されるような重合触媒が研究・開発されてきた。例えば、ニッケル、コバルト、チタン等の遷移金属化合物を主成分とする複合触媒系や(非特許文献3〜5を参照)、ネオジウム、ガドリニウム等の希土類金属化合物を主成分とする複合触媒系(非特許文献6〜8を参照)などが知られている。しかしながら、これらの触媒系ではある程度高いシス1,4制御性を示すものの、ジエン類の重合反応がリビング的に進行しておらず、重合末端に極性モノマーを導入することは極めて困難であった。これに対し、希土類金属化合物を主成分とする複合触媒系において、ある程度高いシス1,4制御性を示し、重合末端に極性モノマー(例えばラクトン類)を導入する技術が開発されている(特許文献1を参照)。しかしながら、高いシス1,4制御性を示すさらなる重合触媒の開発が望まれていた。また、共役ジエンと(メタ)アクリル系モノマーやアクリロニトリル系モノマーなどの極性モノマーとの重合に適した重合触媒の開発が望まれていた。
【0006】
【非特許文献1】
H. L. Hsieh, R. P. Quirk, Marcel Dekker Inc., New York−Basel, 1996.
【非特許文献2】
Y. S. Yu, R. Jerome, R. Fayt, Ph. Teyssie Macromolecules, 1994, 27, 5957.
【非特許文献3】
工業化学雑誌, 72, 2081, 1969
【非特許文献4】
Plast. Kautsch., 40, 356, 1993
【非特許文献5】
Makromol. Chem. Phys., 195, 2623, 1994
【非特許文献6】
Macromol. Rapid Commun. 16, 563, 1992
【非特許文献7】
J. Polym. Sci., Par A; Polym. Chem., 32, 1195, 1994
【非特許文献8】
Polymer, 37, 349, 1996
【特許文献1】
特開2002−356557号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、共役ジエンと極性モノマーとのブロック共重合体の製造方法を提供することにある。より具体的には、ミクロ構造におけるシス1,4−構造の含有量が高いブロック共重合体の製造方法、及び共役ジエンと(メタ)アクリル系モノマー又はアクリロニトリル系モノマーなどを含む極性モノマーとのブロック共重合体の製造方法を提供することにある。本発明の別の課題は、上記の特徴を有するブロック共重合体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、希土類金属メタロセン型の重合触媒と、非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物及び/又はアルミノキサンを含む助触媒とを組み合わせた触媒組成物を用いることによって、共役ジエン類と(メタ)アクリル系モノマー又はアクリロニトリル系モノマーなどを含む極性モノマーとを効率よくブロック共重合することができること、及び上記の共重合用触媒組成物を用いることにより、共役ジエン類と極性モノマーとを共重合させて、ミクロ構造におけるシス1,4−構造の含有量が高いブロック共重合体を製造できることを見出した。本発明はこれらの知見を基にして完成されたものである。
【0009】
すなわち本発明は、共役ジエンと極性モノマーとのブロック共重合体の製造方法であって、下記の成分:(A)希土類金属化合物のメタロセン型錯体、及び(B)非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物及び/又はアルミノキサンを含む触媒組成物の存在下に共役ジエンの単独重合を行った後、極性モノマーを添加し、共役ジエンと極性モノマーとのブロック共重合体を製造する方法を提供するものである。
【0010】
この発明の好ましい態様によれば、メタロセン型錯体がサマリウム錯体である上記の方法;イオン性化合物がトリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1’−ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである上記の方法;さらに周期律表第I〜III族元素の有機金属化合物を含む上記の方法;及び、極性モノマーが(メタ)アクリル系モノマー又はアクリロニトリル系モノマーである上記の方法が提供される。
【0011】
また、別の観点からは、共役ジエンと(メタ)アクリル系モノマーとのブロック共重合体であって、ミクロ構造におけるシス1,4−構造の含有量が80mol%以上であるブロック共重合体;及び、共役ジエンとアクリロニトリル系モノマーとのブロック共重合体が提供される。これらの共重合体は、上記の方法に従って共役ジエンと(メタ)アクリル系モノマー又はアクリロニトリル系モノマーとをブロック共重合することによって製造することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
希土類金属化合物のメタロセン型錯体としては、例えば、一般式(I):RaMXb・Lc又は一般式(II):RaMXbQXb(式中、Mは希土類金属を示し;Rはシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基、フルオレニル基、又は置換フルオレニル基を示し;Xは水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、又は炭素数1から20の炭化水素基を示し;Lはルイス塩基性化合物を示し;Qは周期律表第III族元素を示し;aは1、2、又は3の整数を示し;bは0、1、又は2の整数を示し;cは0、1、又は2の整数を示す)で示される2価又は3価の希土類金属化合物が挙げられる。
【0013】
上記一般式(I)において、Mが示す希土類金属としては、周期律表中の原子番号57から71の元素を用いることができる。希土類金属の具体例としては、例えば、ランタニウム、セリウム、プラセオジム、ネオジウム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミニウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムを挙げることができ、これらのうちサマリウムが好ましい。
【0014】
aが2又は3である場合、2又は3個のRは同一でも異なっていてもよい。同様に、b又はcが2である場合には、2個のX又はLはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0015】
置換シクロペンタジエニル基、置換インデニル基、又は置換フルオレニル基における置換基の種類、個数、及び置換位置は特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、フェニル基、ベンジル基などのほか、トリメチルシリル基などの珪素原子を含有する炭化水素基などを挙げることができる。RはXの一部と互いにジメチルシリル基、ジメチルメチレン基、メチルフェニルメチレン基、ジフェニルメチレン基、エチレン基、置換エチレン基等の架橋基で結合されていてもよく、また、Rどうしが互いにジメチルシリル基、ジメチルメチレン基、メチルフェニルメチレン基、ジフェニルメチレン基、エチレン基、置換エチレン基等の架橋基で結合されていてもよい。
【0016】
置換シクロペンタジエニル基の具体例としては、例えば、メチルシクロペンタジエニル基、ベンジルシクロペンタジエニル基、ビニルシクロペンタジエニル基、2−メトキシエチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシリルシクロペンタジエニル基、tert−ブチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、フェニルシクロペンタジエニル基、1,2−ジメチルシクロペンタジエニル基、1,3−ジメチルシクロペンタジエニル基、1,3−ジ(tert−ブチル)シクロペンタジエニル基、1,2,3−トリメチルシクロペンタジエニル基、1,2,3,4−テトラメチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基、1−エチル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル基、1−イソプロピル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル基、1−ベンジル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル基、1−フェニル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル基、1−トリメチルシリル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル基、1−トリフルオロメチル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル基などが挙げられる。置換インデニル基の具体例としては、例えば、1,2,3−トリメチルインデニル基、ヘプタメチルインデニル基、1,2,4,5,6,7−ヘキサメチルインデニル基などが挙げられる。Rとしては1−イソプロピル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル基が好ましい。
【0017】
Xが表わすアルコキシド基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基などの脂肪族アルコキシ基、フェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ基、2,6−ジイソプロピルフェノキシ基、2,6−ジネオペンチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−ネオペンチルフェノキシ基、2−イソプロピル−6−ネオペンチルフェノキシ基などのアリールオキシド基のいずれでもよいが、2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ基が好ましい。
【0018】
Xが表わすチオラート基としては、チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオプロポキシ基、チオn−ブトキシ基、チオイソブトキシ基、チオsec−ブトキシ基、チオtert−ブトキシ基などの脂肪族チオラート基、チオフェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチルチオフェノキシ基、2,6−ジイソプロピルチオフェノキシ基、2,6−ジネオペンチルチオフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルチオフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−チオネオペンチルフェノキシ基、2−イソプロピル−6−チオネオペンチルフェノキシ基、2,4,6−トリイソプロピルチオフェノキシ基などのアリールチオラート基のいずれでもよいが、2,4,6−トリイソプロピルチオフェノキシ基が好ましい。
【0019】
Xが表わすアミド基としては、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジイソプロピルアミド基などの脂肪族アミド基、フェニルアミド基、2,6−ジ−tert−ブチルフェニルアミド基、2,6−ジイソプロピルフェニルアミド基、2,6−ジネオペンチルフェニルアミド基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルフェニルアミド基、2−tert−ブチル−6−ネオペンチルフェニルアミド基、2−イソプロピル−6−ネオペンチルフェニルアミド基、2,4,6−tert−ブチルフェニルアミド基などのアリールアミド基のいずれでもよいが、2,4,6−tert−ブチルフェニルアミド基が好ましい。
【0020】
Xが表わすハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子のいずれでもよいが、塩素原子やヨウ素原子が好ましい。
【0021】
Xが表わす炭素数1から20の炭化水素基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチルなどの直鎖又は分枝鎖の脂肪族炭化水素基、フェニル基、トリル基、ナフチル基など芳香族炭化水素基、ベンジル基などのアラルキル基などのほか、トリメチルシリルメチル基、ビストリメチルシリルメチル基などのケイ素原子を含有する炭化水素基であってもよい。これらのうち、メチル基、エチル基、イソブチル基、トリメチルシリルメチル基が好ましい。
【0022】
Xとしては、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1から20の炭化水素基が好ましい。
【0023】
Lが示すルイス塩基性化合物としては、対電子をもって金属に配位できるルイス塩基性の化合物であれば特に限定されず、無機化合物又は有機化合物のいずれであってもよい。ルイス塩基性化合物として、例えば、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物、アミン化合物、ホスフィン化合物、シリルオキシ化合物などを用いることができるが、これらに限定されることはない。
【0024】
一般式(II)においてQは周期律表第III族元素を示すが、該元素の具体例としては、ホウ素、アルミニウム、ガリウムなどを挙げることができ、アルミニウムが好ましい。
【0025】
式(I)で表される希土類金属化合物のメタロセン型錯体の具体例としては、例えば、ビスペンタメチルシクロペンタジエニルビステトラヒドロフランサマリウム、ビステトラメチルイソプロピルシクロペンタジエニルテトラヒドロフランサマリウム、メチルビスペンタメチルシクロペンタジエニルテトラヒドロフランサマリウム、クロロビスペンタメチルシクロペンタジエニルテトラヒドロフランサマリウム、又はヨードビスペンタメチルシクロペンタジエニルテトラヒドロフランサマリウムなどが挙げられ、式(II)で表わされる希土類金属化合物のメタロセン型錯体の具体例としては、例えば、ジメチルアルミニウム(μ−ジメチル)ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)サマリウムなどが挙げられる。
【0026】
助触媒として用いられるイオン性化合物は、非配位性アニオンとカチオンとからなるものであれば特に限定されないが、例えば、上記希土類金属化合物と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるイオン性化合物などを挙げることができる。非配位性アニオンとしては、例えば、テトラ(フェニル)ボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル,ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル),フェニル]ボレート、トリデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレートなどが挙げられる。
【0027】
カチオンとしては、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどを挙げることができる。カルボニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ置換フェニルカルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンを挙げることができる。トリ置換フェニルカルボニウムカチオンの具体例としては、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンを挙げることができる。アンモニウムカチオンの具体例としては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン、ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンを挙げることができる。ホスホニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンを挙げることができる。
【0028】
該イオン性化合物は、非配位性アニオン及びカチオンの中から、それぞれ任意に選択して組み合わせたものを好ましく用いることができる。例えば、イオン性化合物としては、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1’−ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが好ましい。イオン性化合物を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。遷移金属化合物と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるルイス酸として、B(C6F5)3、Al(C6F5)3などを用いることができ、これらを前記のイオン性化合物と組み合わせて用いてもよい。
【0029】
助触媒として用いられるアルミノキサンとしては、例えば、有機アルミニウム化合物と縮合剤とを接触させることによって得られるものを用いることができ、より具体的には、一般式(−Al(R’)O−)n で示される鎖状アルミノキサン又は環状アルミノキサンを用いることができる。上記式において、R’は炭素数1〜10の炭化水素基であり、該炭化水素基はハロゲン原子及び/又はアルコキシ基で置換されていてもよい。nは重合度を示し、好ましくは5以上、より好ましくは10以上である。R’としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基などが挙げられるが、メチル基が好ましい。アルミノキサンの原料として用いられる有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム及びその混合物などが挙げられ、特に好ましいのはトリメチルアルミニウムである。トリメチルアルミニウムとトリブチルアルミニウムとの混合物を原料として用いたアルミノキサンも好適に用いることができる。アルミノキサンをイオン性化合物と組み合わせて用いてもよい。
【0030】
本発明の方法に用いられる触媒組成物は、上記の成分(A)及び(B)を含み、さらに成分(C)として周期律表第I〜III族元素の有機金属化合物を含んでいてもよい。有機金属化合物として、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、有機ホウ素化合物などが挙げられる。より具体的には、メチルリチウム、ブチルリチウム、フェニルリチウム、ベンジルリチウム、ネオペンチルリチウム、トリメチルシリルメチルリチウム、ビストリメチルシリルメチルリチウム、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジエチル亜鉛、ジメチル亜鉛、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどを用いることができる。さらに、エチルマグネシウムクロライド、ブチルマグネシウムクロライド、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、セスキエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどのような有機金属ハロゲン化合物、ジエチルアルミニウムハイドライド、セスキエチルアルミニウムハイドライドのような水素化有機金属化合物を用いてもよい。これらの有機金属化合物を2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0031】
上記組成物における上記成分(A)及び(B)の配合割合は、重合するモノマーの種類や反応の種類や条件に応じて適宜選択することが可能である。一般的には、希土類金属化合物とアルミノキサンとを含む組成物では、成分(A):成分(B)(モル比)を1:1〜1:10000、好ましくは 1:10〜1:1000、さらに好ましくは 1:50〜1:500程度にすることができる。希土類金属化合物とイオン性化合物とを含む組成物では、成分(A):成分(B)(モル比)を1:0.1 〜1:10、好ましくは1:0.2〜1:5、さらに好ましくは1:0.5〜1:2程度にすればよい。また、成分(C)を含む触媒組成物では、希土類金属化合物と成分(C)との配合割合(モル比)は、例えば、1:0.1〜1:1000、好ましくは1:0.2〜1:500、さらに好ましくは1:0.5〜1:50程度である。なお、本発明の方法に用いられる触媒組成物は常法に従って製造することができる。
【0032】
本発明の重合方法における触媒組成物の用量は、重合するモノマーの種類や反応の種類や条件に応じて適宜選択することが可能である。一般的には、モノマー100gに対して、希土類金属化合物を例えば0.00002〜0.02mol、好ましくは0.0002〜0.01mol、さらに好ましくは0.0004〜0.004mol程度使用すればよい。
【0033】
本発明の重合方法で共重合可能な共役ジエン化合物モノマーの種類は特に限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−メチルペンタジエン、4−メチルペンタジエン、又は2,4−ヘキサジエンなどを挙げることができ、これらのうち1,3−ブタジエンが好ましい。これらのモノマー成分を単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
本発明の重合方法で共重合可能な極性モノマーの種類も特に限定されない。例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアクリロニトリル系モノマーなどが用いられる。これらのうちメタクリル酸メチル、アクリロニトリルが好ましい。これらのモノマー成分を単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
本発明の重合方法は、溶媒の存在下又は非存在下のいずれで行なってもよい。溶媒を用いる場合には、溶媒が重合反応において実質的に不活性であり、モノマー及び触媒組成物に対して十分な溶解性を有していれば、その種類は特に限定されない。例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン等の飽和脂環式炭化水素;1−ブテン、2−ブテン等のモノオレフィン類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロルエチレン、パークロルエチレン、1,2−ジクロロエタン、クロルベンゼン、ブロムベンゼン、クロルトルエン等のハロゲン化炭化水素が挙げられるが、これらのうち、トルエンが好ましい。また、溶媒を2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0036】
本発明の重合方法における重合温度は、例えば−100〜100℃の範囲、好ましくは −50〜80℃の範囲である。重合時間は、例えば1分〜50時間程度であり、好ましくは5分〜5時間程度である。もっとも、これらの反応条件は、モノマーの種類や触媒組成物の種類に応じて、適宜選択することが可能であり、上記に例示した範囲に限定されることはない。共役ジエンの単独重合を行って重合反応が所定の重合率に達した後、極性モノマーを添加してさらに重合反応が所定の重合率に達するまで重合を行うことができる。重合反応が所定の重合率に達した後、公知の重合停止剤を重合系に加えて停止させ、次いで通常の方法に従い生成した共重合体を反応系から分離することができる。
【0037】
本発明のブロック共重合体のミクロ構造におけるシス構造の含有量は、通常は80mol%以上、好ましくは85mol% 以上、より好ましくは90mol% 以上、特に好ましくは92mol%以上であり、分子量Mnは5000以上、好ましくは10000以上、より好ましくは20000以上、特に好ましくは50000以上であり、分子量分布 Mw/Mnは2.20以下、好ましくは2.00以下、より好ましくは1.80以下、特に好ましくは1.50以下である。また、本発明の共重合体は、モノマー組成が実質的にブロック性を示すブロック共重合体である。本発明の共重合体は、高い熱的特性(熱安定性等)と機械的特性(引張り弾性率、曲げ弾性率、及び耐衝撃性等)を有することが期待されるので、高分子材料として多様な用途に利用することが可能である。
【0038】
【実施例】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の得られたポリブタジエンのミクロ構造は、1H NMRおよび13C NMRにより得られたピーク[1H NMR: δ 4.8−5.0 (1,2ビニルユニットの=CH2)、5.2−5.8 (1,4ユニットの−CH=と1,2ビニルユニットの=CH2)、13C NMR: δ 27.4 (1,4−シスユニット)、32.7 (1,4−トランスユニット)、127.7−131.8 (1,4ユニット)、113.8−114.8と143.3−144.7 (1,2ビニルユニット)]の積分比からミクロ構造を算出し、メタクリル酸メチルの含有率は1H NMRにより得られたピーク[δ: 4.8−5.0(ブタジエンの1,2−ビニルユニットの=CH2)およびδ: 5.2−5.8(ブタジエンの1,4−ユニットと1,2−ビニルユニットの−CH=)とδ: 3.5−3.7(メタクリル酸メチルユニットのOCH3)] の積分比から、アクリロニトリルの含有率は1H NMRにより得られたピーク[δ: 2.0−2.1(ブタジエンの1,4−ユニットと1,2−ビニルユニットの−CH2−)とδ: 1.4−1.5(アクリロニトリルユニットの−CH2−)] の積分比から求めた。重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)はGPCにより、ポリスチレンを標準物質として用い求めた。
【0039】
<実施例1>
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、十分に乾燥した30ml耐圧ガラスボトルに、ビステトラメチルイソプロピルシクロペンタジエニルテトラヒドロフランサマリウム [(C5Me4iPr)2Sm(THF)](iPr: イソプロピル基;THF: テトラヒドロフラン配位子)を0.02mmol仕込みトルエン8mlで溶解させた。次いでトリイソブチルアルミニウム 0.30mmol、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Ph3CB(C6F5)4)0.02mmolを添加しボトルを打栓した。その後、グローブボックスからボトルを取り出し、1,3−ブタジエンを1.35g仕込み、25℃で10分間重合を行った。ここでサンプリングを行ったところ、1,3−ブタジエンの転化率96%で、ミクロ構造はシス含量が94.8%、重量平均分子量は107,000、数平均分子量は85,200であり、Mw/Mnは1.26であった。このポリマーの1H NMR チャートを図1Aに示す。
その後、ボトルにメタクリル酸メチルを2.6ml添加し、さらに25℃で1時間重合を行った。重合後、大量のメタノールを加えて反応を停止したのち重合体を分離させ、60℃で真空乾燥した。得られた重合体の収量は1.42gであった。重合体中のメタクリル酸メチル含有率は12.2wt% (7.0mol%)であり、重量平均分子量は123,100、数平均分子量は92,200であり、Mw/Mnは1.34であった。このポリマーの1H NMR チャートを図1Bに示す。
【0040】
<実施例2>
実施例1において、メタクリル酸メチルの代わりにアクリロニトリルを1.7ml添加する以外は同様の方法で実験を行った。得られた重合体の収量は1.45gであった。重合体中のアクリロニトリル含有率は15.1wt% (15.3mol%)であり、重量平均分子量は152,500、数平均分子量は92,700であり、Mw/Mnは1.65であった。このポリマーの1H NMR チャートを図1Cに示す。
【0041】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、共役ジエンと極性モノマーとからブロック共重合体を製造することができる。
【0042】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1Aは、実施例1で得られたブタジエンの重合体の1H NMRスペクトルを示す図である。図1Bは、実施例1で得られたブタジエンとメタクリル酸メチルとのブロック共重合体の1H NMRスペクトルを示す図である。図1Cは、実施例2で得られたブタジエンとアクリロニトリルとのブロック共重合体の1H NMRスペクトルを示す図である。
Claims (7)
- 共役ジエンと極性モノマーとのブロック共重合体の製造方法であって、下記の成分:(A)希土類金属化合物のメタロセン型錯体、及び(B)非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物及び/又はアルミノキサンを含む触媒組成物の存在下に共役ジエンの単独重合を行った後、極性モノマーを添加し、共役ジエンと極性モノマーとのブロック共重合体を製造する方法。
- メタロセン型錯体がサマリウム錯体である請求項1に記載の方法。
- イオン性化合物がトリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1’−ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである請求項1又は2に記載の方法。
- さらに周期律表第I〜III族元素の有機金属化合物を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 極性モノマーが(メタ)アクリル系モノマー又はアクリロニトリル系モノマーである請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 共役ジエンと(メタ)アクリル系モノマーとのブロック共重合体であって、ミクロ構造におけるシス1,4−構造の含有量が80mol%以上であるブロック共重合体。
- 共役ジエンとアクリロニトリル系モノマーとのブロック共重合体。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003122245A JP2004323743A (ja) | 2003-04-25 | 2003-04-25 | ブロック共重合体の製造方法 |
PCT/JP2004/005926 WO2004096879A1 (ja) | 2003-04-25 | 2004-04-23 | ブロック共重合体の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003122245A JP2004323743A (ja) | 2003-04-25 | 2003-04-25 | ブロック共重合体の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004323743A true JP2004323743A (ja) | 2004-11-18 |
Family
ID=33410068
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003122245A Pending JP2004323743A (ja) | 2003-04-25 | 2003-04-25 | ブロック共重合体の製造方法 |
Country Status (2)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004323743A (ja) |
WO (1) | WO2004096879A1 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017101150A (ja) * | 2015-12-01 | 2017-06-08 | 株式会社ブリヂストン | 共重合体の製造方法、共重合体、ゴム組成物、及びゴム製品 |
Citations (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH05125134A (ja) * | 1990-12-26 | 1993-05-21 | Asahi Chem Ind Co Ltd | 新規なブロツク共重合体及びその製造方法 |
JP2000154221A (ja) * | 1998-09-15 | 2000-06-06 | Agency Of Ind Science & Technol | 共役ジエン系ブロック共重合体の製造方法、共役ジエン系ブロック共重合体、およびブタジエン系ブロック共重合体 |
JP2001288234A (ja) * | 2000-04-07 | 2001-10-16 | Inst Of Physical & Chemical Res | ブロック共重合体の製造方法 |
JP2003096150A (ja) * | 2001-07-16 | 2003-04-03 | Kanegafuchi Chem Ind Co Ltd | ブロック共重合体 |
Family Cites Families (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CA1038535A (en) * | 1973-08-06 | 1978-09-12 | Goodyear Tire And Rubber Company (The) | Process for the preparation of novel block polymers |
US5002676A (en) * | 1989-12-06 | 1991-03-26 | Shell Oil Company | Block copolymers |
-
2003
- 2003-04-25 JP JP2003122245A patent/JP2004323743A/ja active Pending
-
2004
- 2004-04-23 WO PCT/JP2004/005926 patent/WO2004096879A1/ja active Application Filing
Patent Citations (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH05125134A (ja) * | 1990-12-26 | 1993-05-21 | Asahi Chem Ind Co Ltd | 新規なブロツク共重合体及びその製造方法 |
JP2000154221A (ja) * | 1998-09-15 | 2000-06-06 | Agency Of Ind Science & Technol | 共役ジエン系ブロック共重合体の製造方法、共役ジエン系ブロック共重合体、およびブタジエン系ブロック共重合体 |
JP2001288234A (ja) * | 2000-04-07 | 2001-10-16 | Inst Of Physical & Chemical Res | ブロック共重合体の製造方法 |
JP2003096150A (ja) * | 2001-07-16 | 2003-04-03 | Kanegafuchi Chem Ind Co Ltd | ブロック共重合体 |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017101150A (ja) * | 2015-12-01 | 2017-06-08 | 株式会社ブリヂストン | 共重合体の製造方法、共重合体、ゴム組成物、及びゴム製品 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
WO2004096879A1 (ja) | 2004-11-11 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US7196031B2 (en) | Catalyst composition | |
JP3624290B2 (ja) | 重合用触媒 | |
WO2012014420A1 (ja) | 共重合体の連鎖構造を制御する方法 | |
JP3422733B2 (ja) | 触媒組成物 | |
US6683140B2 (en) | Catalyst for polymerization | |
JP3680516B2 (ja) | 共役ジエン重合用触媒及び共役ジエン重合体の製造方法 | |
US7056994B2 (en) | Catalyst composition | |
JP3738315B2 (ja) | 触媒組成物 | |
US6960631B2 (en) | Catalyst composition and process for producing copolymer | |
US20060058179A1 (en) | Catalyst composition | |
JP2004323743A (ja) | ブロック共重合体の製造方法 | |
JP2001288234A (ja) | ブロック共重合体の製造方法 | |
JP2004238637A (ja) | 重合用触媒 | |
JP2002069117A (ja) | 触媒組成物 | |
JP2002187908A (ja) | 共役ジエン重合触媒及び共役ジエン系重合体の製造方法 | |
JP7009307B2 (ja) | 重合触媒、及び、共重合体の製造方法 | |
JP2004210983A (ja) | 共役ジエン重合体及び製造方法 | |
JP5898975B2 (ja) | 共重合体における単量体単位の含有割合の制御方法 | |
JP2005247901A (ja) | 4−シリル−1−ブテン−3−イン重合体、および共役ジエンとの共重合体、ならびにそれらの製造方法。 | |
JP2008138078A (ja) | 共役ジエンの重合方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Effective date: 20060412 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20091215 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20100608 |