JP2004026887A - 顔料分散剤およびマスターバッチ組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】顔料分散剤は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量が500〜5,000の範囲にあり、示差走査型熱量計(DSC)で測定した結晶化温度(Tc(℃)、降温速度2℃/分)と、密度勾配管法で測定した密度(D(kg/m3))の関係が下記式(I)
0.501×D−360≧Tc …(I)
で示される関係を満たすエチレン・α−オレフィン共重合体(a)からなる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、顔料分散剤およびマスターバッチ組成物に関し、さらに詳しくは、特定の物性を有するエチレン・α−オレフィン共重合体からなる顔料分散剤および該共重合体と顔料とを含むマスターバッチに関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
従来、熱可塑性樹脂の成形の際に使用する着色剤としては、成形材料を直接着色するドライカラーやカラードペレットがあり、また顔料を高濃度に含有し、着色成形時に必要濃度に希釈するマスターバッチが製造されている。
しかし、ドライカラーは、顔料の飛散・汚染性が大きく作業性に問題がある。また、カラードペレット法では着色コストや物流コストが高くなる等の欠点がある。これに対してマスターバッチは、分散性が良好で着色コストが低く、保存や計量が容易であると共に、汚染性が無い等の着色剤として優れた性質を有している。
【0003】
このようなマスターバッチには、製造の際に担体樹脂中への顔料分散性が良好であること、着色成形の際に使用する希釈樹脂中へのマスターバッチの混練分散が容易であることが必要であり、いずれか一方の工程において混合状態が不十分であると、成形品に着色剤の分散不良を原因とする各種の不良現象や色むら等が生じ、成形品の品質が安定しない欠点がある。
【0004】
このように着色成形の際に希釈樹脂中ヘマスターバッチをいかに良好に分散するかが重要な問題であり、このためには顔料の担体樹脂中へ分散性も優れていることが必要である。この目的を達成するためにマスターバッチは、良好な流動性が必要であり、このため着色成形に使用する希釈樹脂より溶融粘度が低く調整され、これにより着色成形の際に顔料分散の優れた成形品が得られる。そして一般に、マスターバッチと希釈樹脂の溶融粘度の差が大きくなるほど、顔料の分散性も向上している。
【0005】
そこで例えばポリオレフィンの着色成形に使用するカラーマスターバッチの製造では、担体樹脂に高圧ポリエチレン、直鎖状ポリエチレンやポリプロピレンを使用し、これに顔料が高濃度に配合できるように、分散剤としてオレフィンワックスを配合している。
しかし、ポリオレフィン用のマスターバッチ製造の際に優れた顔料分散効果を発揮するためにオレフィンワックスを多量に配合して、系全体の流動性の向上をはかると、滑性効果が強くなり過ぎて拡散性が低下し易くなり、顔料の分散性が低下する。そして、押出機スターリンの目詰まりや目ヤニ(ダイのリップに付着する異物)の発生が激しくなり、生産性が低下する欠点がある。
【0006】
これは、マスターバッチ製造の際の溶融混練で原料がスリップし易くなり、充分な混練が不可能となるためである。また、このようなマスターバッチを使用した場合には、得られる成形品の衝撃強度や引張強さ等の機械的強度を低下したり、成形品表面には色むら、色わかれ、すじ等(以後、フローマークと称する)が発生したりして、光沢が著しく低下し、成形品の商品価値を著しく低下する欠点がある。
【0007】
【発明の目的】
本発明は上記のような従来技術に鑑みなされたものであって、従来と同量の添加量で顔料の分散性に優れ、外観に優れた成形品が得られるような顔料分散剤および該顔料分散剤を含むマスターバッチ組成物を提供することを目的としている。
【0008】
【発明の概要】
本発明に係る顔料分散剤は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量が500〜5,000の範囲にあり、示差走査型熱量計(DSC)で測定した結晶化温度(Tc(℃)、降温速度2℃/分)と、密度勾配管法で測定した密度(D(kg/m3))の関係が下記式(I)
0.501×D−360≧Tc …(I)
で示される関係を満たすエチレン・α−オレフィン共重合体(a)からなることを特徴としている。
【0009】
上記エチレン・α−オレフィン共重合体(a)は、エチレンと炭素原子数3〜10のα−オレフィンとの共重合体であり、エチレンから導かれる構成単位を88〜99モル%、α−オレフィンから導かれる構成単位を1〜12モル%の割合で含有することが好ましい。
また、上記エチレン・α−オレフィン共重合体(a)は、酸化変性または酸グラフト変性されたエチレン・α−オレフィン共重合体であってもよい。
【0010】
上記エチレン・α−オレフィン共重合体(a)は、メタロセン触媒の存在下に、エチレン、α−オレフィンおよび水素を重合系に供給して、エチレンとα−オレフィンとを共重合することにより得られたものであることが好ましい。
本発明に係るマスターバッチ組成物は、
(a)上記エチレン・α−オレフィン共重合体 70〜30重量%
(b)顔料 30〜70重量%と
を含有することを特徴としている。
【0011】
本発明に係るマスターバッチ組成物は、
(a)上記エチレン・α−オレフィン共重合体 5〜40重量%と、
(b)顔料 30〜60重量%と、
(c)低密度ポリエチレン 20〜60重量%
とを含有することを特徴としている。
【0012】
上記顔料(b)は、カーボンブラックであることが好ましい。
【0013】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る顔料分散剤およびマスターバッチ組成物について具体的に説明する。
(顔料分散剤)
本発明に係る顔料分散剤は、下記のようなエチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとの共重合体であるエチレン・α−オレフィン共重合体(a)からなる。
【0014】
ここでα−オレフィンとして好ましくは炭素原子数3〜10のα−オレフィンであり、より好ましくは炭素原子数3のプロピレン、炭素原子数4の1−ブテン、炭素原子数5の1−ペンテン、炭素原子数6の1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、炭素原子数8の1−オクテンなどであり、特に好ましくは、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンである。
【0015】
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)は、エチレンから導かれる構成単位を88〜99モル%、好ましくは88〜95モル%、より好ましくは90〜95モル%、α−オレフィンから導かれる構成単位を1〜12モル%、好ましくは5〜12モル%、より好ましくは5〜10モル%の割合で含有している。
エチレンから導かれる構成単位およびα−オレフィンから導かれる構成単位の含有量が上記範囲内にあると、顔料との濡れ性が高いために、凝集した顔料の細部に溶融したエチレン・α−オレフィン共重合体(a)が浸透し顔料表面を被覆し、顔料の分散性を向上することができ、マスタ−バッチの高色再現性を実現する。
【0016】
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量(Mn)が500〜5,000、好ましくは1,000〜4,500、より好ましくは1,500〜4,000の範囲にある。
数平均分子量(Mn)が上記範囲内にあると、顔料マスターバッチ製造時の混練性を損なわず、かつ、顔料マスターバッチが樹脂に添加ざれた後の色むら等の問題を最小限度にすることができる。
【0017】
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)は、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が75〜120℃、好ましくは75〜115℃、より好ましくは75〜110℃の範囲にある。
融点が上記範囲内にあると、混練時に高温の加熱が不要となり、最適温度で混練が可能となるため、顔料マスターバッチ全般の生産性向上および品質の向上に寄与する。
【0018】
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)は、密度が(880〜925)kg/m3、好ましくは(890〜920)kg/m3、より好ましくは(890〜
915)kg/m3の範囲にある。
密度が上記範囲内にあると、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の組成場合と同様に、顔料との高濡れ性が期待でき、顔料分散性が向上するので、顔料マスタ−バッチの色再現性に寄与する。
【0019】
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)は、示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶化温度(Tc(℃)、降温速度2℃/分)と密度勾配管法で測定した密度(D(kg/m3))の関係が下記式(I)
0.501×D−360 ≧ Tc …(I)
好ましくは
0.501×D−362 ≧ Tc …(Ia)
より好ましくは
0.501×D−364 ≧ Tc …(Ib)
を満たす。
【0020】
結晶化温度と密度の関係が上記式を満たすと、コモノマー組成分布の狭いエチレン・α−オレフィン共重合体となるので、低分子量で低密度な成分が減少し、顔料マスターバッチの常温範囲でのべたつきが減少するため、紙袋などに充填された顔料マスターバッチペレットの夏場でのブロッキングが減少する。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)は、Mw/Mnが3.5以下、好ましくは3.2以下、より好ましくは3.0以下である。
【0021】
Mw/Mnが上記範囲内にあると、微量な低分子量成分が減少し、顔料マスターバッチペレットの夏場でのブロッキングが減少する。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)は、アセトン抽出分量が0〜40重量%、好ましくは0〜20重量%の範囲にある。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のアセトン抽出分量が上記範囲内にあると、低分子量および低結晶性の成分が少ないために、顔料マスターバッチペレットの夏場でのブロッキングが減少する。
【0022】
なお、アセトン抽出分量は以下のようにして測定される。ソックスレー抽出法により、沸騰アセトンで4時間の抽出をおこなう。
本発明に係る顔料分散剤は、従来と同量の添加量で、従来のワックスより低温でかつ十分に顔料に濡れるため、マスターバッチ製造時の混練により顔料表面をコーティングする。また、着色成形の際における希釈樹脂との混練でも顔料の分散が容易で、フローマークを生じにくく、かつ顔料の再凝集に起因するブツが発生しにくい。
【0023】
上述したようなエチレン・α−オレフィン共重合体は、例えば周期表第4族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物および/またはイオン化イオン性化合物とからなる以下のようなメタロセン系触媒を用いて製造することができる。
(メタロセン化合物)
メタロセン系触媒を形成するメタロセン化合物は、周期表第4族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物であり、具体的な例としては下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0024】
M1Lx …(1)
ここで、M1は周期表第4族から選ばれる遷移金属、xは遷移金属M1の原子価、Lは配位子である。
M1で示される遷移金属の例としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウムなどがある。Lは遷移金属M1に配位する配位子であって、そのうち少なくとも1個の配位子Lはシクロペンタジエニル骨格を有する配位子であって、このシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は置換基を有していてもよい。
【0025】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子Lとしては、例えばシクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、n−またはi−プロピルシクロペンタジエニル基、n−、i−、sec−またはt−ブチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、メチルプロピルシクロペンタジエニル基、メチルブチルシクロペンタジエニル基、メチルベンジルシクロペンタジエニル基等のアルキルまたはシクロアルキル置換シクロペンタジエニル基;さらにインデニル基、4,5,6,7−テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基などが挙げられる。このシクロペンタジエニル骨格を有する配位子の水素は、ハロゲン原子またはトリアルキルシリル基などで置換されていてもよい。
【0026】
上記のメタロセン化合物が、配位子Lとしてシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を2個以上有する場合には、そのうち2個のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子同士が、エチレン、プロピレン等のアルキレン基;イソプロピリデン、ジフェニルメチレン等の置換アルキレン基;シリレン基またはジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルフェニルシリレン基等の置換シリレン基などを介して結合されていてもよい。
【0027】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子(シクロペンタジエニル骨格を有しない配位子)Lとしては、炭素原子数1〜12の炭化水素基、アルコキシ基、アリーロキシ基、スルフォン酸含有基(−SO3R1)、ハロゲン原子または水素原子(ここで、R1はアルキル基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アリール基、ハロゲン原子で置換されたアリール基またはアルキル基で置換されたアリール基である。)などが挙げられる。
【0028】
(メタロセン化合物の例−1)
上記一般式(1)で表されるメタロセン化合物が、例えば遷移金属の原子価が4である場合、より具体的には下記一般式(2)で表される。
R2 kR3 lR4 mR5 nM1 …(2)
ここで、M1は周期表第4族から選ばれる遷移金属、R2はシクロペンタジエニル骨格を有する基(配位子)、R3、R4およびR5はそれぞれ独立にシクロペンタジエニル骨格を有するかまたは有しない基(配位子)である。kは1以上の整数であり、k+l+m+n=4である。
【0029】
M1がジルコニウムであり、かつシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を少なくとも2個含むメタロセン化合物の例を次に挙げる。
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノクロリドモノハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1−メチル−3−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドなど。
【0030】
上記の化合物の中で、1,3−位置換シクロペンタジエニル基を1,2−位置換シクロペンタジエニル基に置き換えた化合物も用いることができる。
またメタロセン化合物の別の例としては、上記一般式(2)において、R2、R3、R4およびR5の少なくとも2個、例えばR2およびR3がシクロペンタジエニル骨格を有する基(配位子)であり、この少なくとも2個の基がアルキレン基、置換アルキレン基、シリレン基または置換シリレン基などを介して結合されているブリッジタイプのメタロセン化合物を使用することもできる。このときR4およびR5は、それぞれ独立に、前述したシクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子Lと同様である。
【0031】
このようなブリッジタイプのメタロセン化合物としては、エチレンビス(インデニル)ジメチルジルコニウム、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
【0032】
(メタロセン化合物の例−2)
また別のメタロセン化合物の例としては、下記一般式(3)で表される特開平4−268307号公報記載のメタロセン化合物が挙げられる。
【0033】
【化1】
【0034】
ここで、M1は周期表第4族遷移金属であり、具体的にはチタニウム、ジルコニウム、ハフニウムが挙げられる。
R11およびR12は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子;炭素原子数1〜10のアルキル基;炭素原子数1〜10のアルコキシ基;炭素原子数6〜10のアリール基;炭素原子数6〜10のアリーロキシ基;炭素原子数2〜10のアルケニル基;炭素原子数7〜40のアリールアルキル基;炭素原子数7〜40のアルキルアリール基;炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基;またはハロゲン原子であり、R11およびR12は、塩素原子であることが好ましい。
【0035】
R13およびR14は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子;ハロゲン原子;ハロゲン化されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基;炭素原子数6〜10のアリール基;−N(R20)2、−SR20、−OSi(R20)3、−Si(R20)3または−P(R20)2基である。ここで、R20はハロゲン原子、好ましくは塩素原子;炭素原子数1〜10、好ましくは1〜3のアルキル基;または炭素原子数6〜10、好ましくは6〜8のアリール基である。R13およびR14は、特に水素原子であることが好ましい。
【0036】
R15およびR16は、水素原子が含まれないことを除きR13およびR14と同じであって、互いに同じでも異なっていてもよく、好ましくは同じである。R15およびR16は、好ましくはハロゲン化されていてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、トリフルオロメチル等が挙げられ、特にメチルが好ましい。
【0037】
上記一般式(3)において、R17は次の群から選ばれる。
【0038】
【化2】
【0039】
=BR21、=AlR21、−Ge−、−Sn−、−O−、−S−、=SO、=SO2、=NR21、=CO、=PR21、=P(O)R21など。M3はケイ素、ゲルマニウムまたは錫、好ましくはケイ素またはゲルマニウムである。
ここで、R21、R22およびR23は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子;ハロゲン原子;炭素原子数1〜10のアルキル基;炭素原子数1〜10のフルオロアルキル基;炭素原子数6〜10のアリール基;炭素原子数6〜10のフルオロアリール基;炭素原子数1〜10のアルコキシ基;炭素原子数2〜10のアルケニル基;炭素原子数7〜40アリールアルキル基;炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基;または炭素原子数7〜40のアルキルアリール基である。「R21とR22」または「R21とR23」とは、それぞれそれらが結合する原子と一緒になって環を形成してもよい。
【0040】
また、R17は、=CR21R22、=SiR21R22、=GeR21R22、−O−、−S−、=SO、=PR21または=P(O)R21であることが好ましい。
R18およびR19は互いに同一でも異なっていてもよく、R21と同じものが挙げられる。
mおよびnは互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ0、1または2、好ましくは0または1であり、m+nは0、1または2、好ましくは0または1である。
【0041】
上記一般式(3)で表されるメタロセン化合物の例としては、次の化合物が挙げられる。rac−エチレン(2−メチル−1−インデニル)2−ジルコニウム−ジクロライド、rac−ジメチルシリレン(2−メチル−1−インデニル)2−ジルコニウム−ジクロライドなど。これらのメタロセン化合物は、例えば、特開平4−268307号公報に記載の方法で製造することができる。
【0042】
(メタロセン化合物の例−3)
また、メタロセン化合物としては、下記一般式(4)で表されるメタロセン化合物を用いることもできる。
【0043】
【化3】
【0044】
式中、M3は、周期表第4族の遷移金属原子を示し、具体的にはチタニウム、ジルコニウム、ハフニウムなどである。
R24およびR25は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基を示す。
【0045】
R24は炭化水素基であることが好ましく、特にメチル、エチルまたはプロピルの炭素原子数1〜3のアルキル基であることが好ましい。
R25は水素原子または炭化水素基が好ましく、特に水素原子、またはメチル、エチルもしくはプロピルの炭素原子数1〜3のアルキル基であることが好ましい。
【0046】
R26、R27、R28およびR29は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基を示す。これらの中では水素原子、炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基であることが好ましい。R26とR27、R27とR28、R28とR29のうち少なくとも1組は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、単環の芳香族環を形成していてもよい。また芳香族環を形成する基以外に、炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基が2個以上ある場合には、これらが互いに結合して環状になっていてもよい。なおR29が芳香族基以外の置換基である場合、水素原子であることが好ましい。
【0047】
X1およびX2は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基またはイオウ含有基を示す。
Yは、炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基、炭素原子数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2−、−NR30−、−P(R30)−、−P(O)(R30)−、−BR30−または−AlR30−(ただし、R30は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基)を示す。
【0048】
式(4)において、R26とR27、R27とR28、R28とR29のうち少なくとも1組が互いに結合して形成する単環の芳香族環を含み、M3に配位する配位子としては、次式で表されるものなどが挙げられる。
【0049】
【化4】
【0050】
(式中、Yは前式に示したものと同じである。)
(メタロセン化合物の例−4)
メタロセン化合物としては、また下記一般式(5)で表されるメタロセン化合物を用いることもできる。
【0051】
【化5】
【0052】
式中、M3、R24、R25、R26、R27、R28およびR29は、上記一般式(4)と同じである。
R26、R27、R28およびR29のうち、R26を含む2個の基がアルキル基であることが好ましく、R26とR28、またはR28とR29がアルキル基であることが好ましい。このアルキル基は、2級または3級アルキル基であることが好ましい。またこのアルキル基は、ハロゲン原子、ケイ素含有基で置換されていてもよく、ハロゲン原子、ケイ素含有基としては、R24、R25で例示した置換基が挙げられる。
【0053】
R26、R27、R28およびR29のうち、アルキル基以外の基は、水素原子であることが好ましい。
またR26、R27、R28およびR29は、これらから選ばれる2種の基が互いに結合して芳香族環以外の単環あるいは多環を形成していてもよい。ハロゲン原子としては、上記R24およびR25と同様のものが挙げられる。
【0054】
X1、X2およびYとしては、上記と同様のものが挙げられる。
上記一般式(5)で表されるメタロセン化合物の具体的な例を次に示す。rac−ジメチルシリレン−ビス(4,7−ジメチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレン−ビス(2,4,7−トリメチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレン−ビス(2,4,6−トリメチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリドなど。
【0055】
これらの化合物において、ジルコニウム金属を、チタニウム金属、ハフニウム金属に置換えた遷移金属化合物を用いることもできる。遷移金属化合物は、通常ラセミ体として用いられるが、R型またはS型を用いることもできる。
(メタロセン化合物の例−5)
メタロセン化合物として、下記一般式(6)で表されるメタロセン化合物を使用することもできる。
【0056】
【化6】
【0057】
式中、M3、R24、X1、X2およびYは、上記一般式(4)と同じである。
R24は炭化水素基であることが好ましく、特にメチル、エチル、プロピルまたはブチルの炭素原子数1〜4のアルキル基であることが好ましい。
R25は、炭素原子数6〜16のアリール基を示す。R25はフェニル、ナフチルであることが好ましい。アリール基は、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基または炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基で置換されていてもよい。
【0058】
X1およびX2としては、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。
上記一般式(6)で表されるメタロセン化合物の具体的な例を次に示す。
rac−ジメチルシリレン−ビス(4−フェニル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(α−ナフチル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(β−ナフチル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(1−アントリル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリドなど。またこれら化合物において、ジルコニウム金属をチタニウム金属またはハフニウム金属に置き換えた遷移金属化合物を用いることもできる。
【0059】
(メタロセン化合物の例−6)
またメタロセン化合物として、下記一般式(7)で表されるメタロセン化合物を用いることもできる。
LaM4X3 2 …(7)
ここで、M4は周期表第4族またはランタニド系列の金属である。Laは非局在化π結合基の誘導体であり、金属M4活性サイトに拘束幾何形状を付与している基である。X3は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数20以下の炭化水素基、20以下のケイ素を含有するシリル基または20以下のゲルマニウムを含有するゲルミル基である。
【0060】
この化合物の中では、次式(8)で示される化合物が好ましい。
【0061】
【化7】
【0062】
M4は、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムである。
X3は上記一般式(7)で説明したものと同様である。
CpはM4にπ結合しており、かつ置換基Zを有する置換シクロペンタジエニル基である。
Zは酸素、イオウ、ホウ素または周期表第4族の元素(例えばケイ素、ゲルマニウムまたは錫)である。
【0063】
Yは窒素、リン、酸素またはイオウを含む配位子であり、ZとYとで縮合環を形成していてもよい。
このような式(8)で表されるメタロセン化合物の具体的な例を次に示す。
(ジメチル(t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)シラン)チタンジクロリド、((t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイル)チタンジクロリドなど。またこのメタロセン化合物において、チタンをジルコニウムまたはハフニウムに置き換えた化合物を挙げることもできる。
【0064】
(メタロセン化合物の例−7)
またメタロセン化合物としては、下記一般式(9)で表されるメタロセン化合物を使用することもできる。
【0065】
【化8】
【0066】
M3は周期表第4族の遷移金属原子であり、具体的には、チタニウム、ジルコニウムまたはハフニウムであり、好ましくはジルコニウムである。
R31は互いに同一でも異なっていてもよく、そのうち少なくとも1個が炭素原子数11〜20のアリール基、炭素原子数12〜40のアリールアルキル基、炭素原子数13〜40のアリールアルケニル基、炭素原子数12〜40のアルキルアリール基またはケイ素含有基であるか、またはR31で示される基のうち隣接する少なくとも2個の基が、それらの結合する炭素原子とともに、単数または複数の芳香族環または脂肪族環を形成している。この場合、R31により形成される環は、R31が結合する炭素原子を含んで全体として炭素原子数が4〜20である。
【0067】
アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アルキルアリール基および芳香族環、脂肪族環を形成しているR31以外のR31は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基またはケイ素含有基である。
R32は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基、炭素原子数7〜40のアルキルアリール基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基である。
【0068】
また、R32で示される基のうち隣接する少なくとも2個の基が、それらの結合する炭素原子とともに、単数または複数の芳香族環または脂肪族環を形成していてもよい。この場合、R32により形成される環は、R32が結合する炭素原子を含んで全体として炭素原子数が4〜20であり、芳香族環、脂肪族環を形成しているR32以外のR32は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基またはケイ素含有基である。
【0069】
なお、R32で示される2個の基が、単数または複数の芳香族環または脂肪族環を形成して構成される基にはフルオレニル基が次式のような構造になる態様も含まれる。
【0070】
【化9】
【0071】
R32は、水素原子またはアルキル基であることが好ましく、特に水素原子またはメチル、エチル、プロピルの炭素原子数1〜3の炭化水素基であることが好ましい。このような置換基としてR32を有するフルオレニル基としては、2,7−ジアルキル−フルオレニル基が好適な例として挙げられ、この場合の2,7−ジアルキルのアルキル基としては、炭素原子数1〜5のアルキル基が挙げられる。また、R31とR32は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0072】
R33およびR34は互いに同一でも異なっていてもよく、上記と同様の水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基、炭素原子数7〜40のアルキルアリール基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基である。これらのうち、R33およびR34は、少なくとも一方が炭素原子数1〜3のアルキル基であることが好ましい。
【0073】
X1およびX2は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基もしくは窒素含有基、またはX1とX2とから形成された共役ジエン残基である。
X1とX2とから形成された共役ジエン残基としては、1,3−ブタジエン、2,4−ヘキサジエン、1−フェニル−1,3−ペンタジエン、1,4−ジフェニルブタジエンの残基が好ましく、これらの残基はさらに炭素原子数1〜10の炭化水素基で置換されていてもよい。
【0074】
X1およびX2としては、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基またはイオウ含有基であることが好ましい。
Yは、炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基、炭素原子数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2−、−NR35−、−P(R35)−、−P(O)(R35)−、−BR35−または−AlR35−(ただし、R35は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基)を示す。
【0075】
これらの2価の基のうちでも、−Y−の最短連結部が1個または2個の原子で構成されているものが好ましい。また、R35は、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基である。
Yは、炭素原子数1〜5の2価の炭化水素基、2価のケイ素含有基または2価のゲルマニウム含有基であることが好ましく、2価のケイ素含有基であることがより好ましく、アルキルシリレン、アルキルアリールシリレンまたはアリールシリレンであることが特に好ましい。
【0076】
(メタロセン化合物の例−8)
またメタロセン化合物としては、下記一般式(9)で表されるメタロセン化合物を用いることもできる。
【0077】
【化10】
【0078】
式中、M3は周期表第4族の遷移金属原子であり、具体的にはチタニウム、ジルコニウムまたはハフニウムであり、好ましくはジルコニウムである。
R36は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基である。なお、上記アルキル基およびアルケニル基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0079】
R36はこれらのうち、アルキル基、アリール基または水素原子であることが好ましく、特にメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピルの炭素原子数1〜3の炭化水素基、フェニル、α−ナフチル、β−ナフチルなどのアリール基または水素原子であることが好ましい。
R37は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基、炭素原子数7〜40のアルキルアリール基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基である。なお、上記アルキル基、アリール基、アルケニル基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アルキルアリール基は、ハロゲンが置換していてもよい。
【0080】
R37はこれらのうち、水素原子またはアルキル基であることが好ましく、特に水素原子またはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、tert−ブチルの炭素原子数1〜4の炭化水素基であることが好ましい。また、上記R36とR37は、互いに同一でも異なっていてもよい。
R38およびR39は、いずれか一方が炭素原子数1〜5のアルキル基であり、他方は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基である。
【0081】
これらのうち、R38およびR39は、いずれか一方がメチル、エチル、プロピルなどの炭素原子数1〜3のアルキル基であり、他方は水素原子であることが好ましい。
X1およびX2は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基もしくは窒素含有基、またはX1とX2とから形成された共役ジエン残基である。これらのうち、ハロゲン原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。
【0082】
Yは、炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基、炭素原子数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2−、−NR40−、−P(R40)−、−P(O)(R40)−、−BR40−または−AlR40−(ただし、R40は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基)を示す。
【0083】
これらのうちYは、炭素原子数1〜5の2価の炭化水素基、2価のケイ素含有基または2価のゲルマニウム含有基であることが好ましく、2価のケイ素含有基であることがより好ましく、アルキルシリレン、アルキルアリールシリレンまたはアリールシリレンであることが特に好ましい。
以上に説明したメタロセン化合物は、単独であるいは2種以上組み合せて用いられる。またメタロセン化合物は、炭化水素またはハロゲン化炭化水素などに希釈して用いてもよい。
【0084】
(有機アルミニウムオキシ化合物)
有機アルミニウムオキシ化合物は、公知のアルミノオキサンであってもよく、またベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
このような公知のアルミノオキサンは、具体的には次式で表される。
【0085】
【化11】
【0086】
ここで、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭化水素基であり、好ましくはメチル基、エチル基、特に好ましくはメチル基であり、mは2以上、好ましくは5〜40の整数である。
アルミノオキサンは式(OAl(R’))で表されるアルキルオキシアルミニウム単位および式(OAl(R’’))で表されるアルキルオキシアルミニウム単位(ここで、R’およびR’’はRと同様の炭化水素基を例示することができ、R’およびR’’は相異なる基を表す。)からなる混合アルキルオキシアルミニウム単位から形成されていてもよい。なお有機アルミニウムオキシ化合物は、少量のアルミニウム以外の金属の有機化合物成分を含有していてもよい。
【0087】
(イオン化イオン性化合物)
イオン化イオン性化合物(イオン性イオン化化合物、イオン性化合物と称される場合もある)としては、ルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物を例示することができる。
ルイス酸としては、BR3(Rは、フッ素、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素である。)で表される化合物が挙げられる。ルイス酸の具体的なものとしては、トリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p−トリル)ボロン、トリス(o−トリル)ボロン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ボロンなどが挙げられる。
【0088】
上記イオン性化合物としては、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N−ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などが挙げられる。イオン性化合物としてのトリアルキル置換アンモニウム塩としては、トリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。イオン性化合物としてのジアルキルアンモニウム塩としては、ジ(1−プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0089】
上記イオン性化合物としては、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを挙げることもできる。
上記ボラン化合物としては、デカボラン(9);ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0090】
上記カルボラン化合物としては、4−カルバノナボラン(9)、1,3−ジカルバノナボラン(8)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩などが挙げられる。
このようなイオン化イオン性化合物は、単独であるいは2種以上組み合せて用いられる。また有機アルミニウムオキシ化合物およびイオン化イオン性化合物は、上記担体化合物に担持させて用いることもできる。
【0091】
またメタロセン系触媒を形成するに際しては、有機アルミニウムオキシ化合物および/またはイオン化イオン性化合物とともに、以下のような有機アルミニウム化合物を用いてもよい。
(有機アルミニウム化合物)
必要に応じて用いられる有機アルミニウム化合物としては、分子内に少なくとも1個のAl−炭素結合を有する化合物が使用できる、このような化合物としては、例えば下記一般式(11)で表される有機アルミニウム化合物、
(R6)m Al(OR7)n Hp X4 q …(11)
(式中、R6およびR7は互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子を通常1〜15個、好ましくは1〜4個含む炭化水素基である。X4はハロゲン原子である。mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3を満たす数であって、しかもm+n+p+q=3である。)
下記一般式(12)で表される第1属金属とアルミニウムとの錯アルキル化物などが挙げられる。
【0092】
(M5)Al(R6) …(12)
(式中、M5はLi、NaまたはKであり、R6は上記一般式(11)のR6と同じである。)
(重合)
本発明で用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体は、上記メタロセン系触媒の存在下に、エチレンおよびα−オレフィンを通常液相で共重合させることにより得られる。この際、一般に炭化水素溶媒が用いられるが、α−オレフィンを溶媒として用いてもよい。なお、ここで用いる各モノマーは、前述した通りである。
【0093】
重合方法は、エチレン・α−オレフィン共重合体がヘキサン等の溶媒中に粒子として存在する状態で重合する懸濁重合、溶媒を用いないで重合する気相重合、そして140℃以上の重合温度で、エチレン・α−オレフィン共重合体が溶剤と共存または単独で溶融した状態で重合する溶液重合が可能であり、その中でも溶液重合が経済性と品質の両面で好ましい。
【0094】
重合反応は、バッチ法あるいは連続法いずれの方法で行ってもよい。重合をバッチ法で実施するに際しては、上記の触媒成分は次に説明する濃度下で用いられる。
重合系内のメタロセン化合物の濃度は、通常0.00005〜0.1ミリモル/リットル(重合容積)、好ましくは0.0001〜0.05ミリモル/リットルである。
【0095】
有機アルミニウムオキシ化合物は、重合系内のメタロセン化合物中の遷移金属に対するアルミニウム原子のモル比(Al/遷移金属)で、1〜10000、好ましくは10〜5000の量で供給される。
イオン化イオン性化合物は、重合系内のメタロセン化合物に対するイオン化イオン性化合物のモル比(イオン化イオン性化合物/メタロセン化合物)で表して、0.5〜20、好ましくは1〜10の量で供給される。
【0096】
また有機アルミニウム化合物が用いられる場合には、通常約0〜5ミリモル/リットル(重合容積)、好ましくは約0〜2ミリモル/リットルとなるような量で用いられる。
重合反応は、通常温度が−20〜+170℃、好ましくは100〜170℃、さらに好ましくは150〜170℃で、圧力が0を超えて7.8MPa(80kgf/cm2、ゲージ圧)以下、好ましくは0を超えて4.9MPa(50kgf/cm2、ゲージ圧)以下の条件下に行われる。
【0097】
重合に際して、エチレンおよびα−オレフィンは、上記した特定組成のエチレン・α−オレフィン共重合体が得られるような量割合で重合系に供給される。
重合に際しては、分子量調節剤としての水素が添加される。重合器中の水素濃度は、重合容積1リットル当たり、0.04〜0.2モル、好ましくは0.04〜0.1モルの範囲である。
【0098】
このようにして重合させると、生成した共重合体は通常これを含む重合液として得られるので、常法により処理すると、本発明に係るエチレン・α−オレフィン共重合体が得られる。
重合反応は、特に(メタロセン化合物の例−6)で示したメタロセン化合物を含む触媒の使用が好ましい。
【0099】
(変性エチレン・α−オレフィン共重合体)
本発明で用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体は、未変性のエチレン・α−オレフィン共重合体(以下「原料共重合体」ともいう。)が、酸化変性または酸グラフト変性された変性エチレン・α−オレフィン共重合体であってもよい。
【0100】
原料共重合体としては、変性後に上述したような性状のエチレン・α−オレフィン共重合体が得られるエチレン・α−オレフィン共重合体であれば特に限定されないが、好ましくは上述したようなメタロセン系触媒を用いて製造された、数平均分子量が500〜5,000の範囲にあり、密度が880〜925kg/m3の範囲にあり、融点が75〜120℃の範囲にあるエチレン・α−オレフィン共重合体である。
【0101】
(酸化変性)
酸化変性された変性エチレン・α−オレフィン共重合体は、原料共重合体を溶融状態で攪拌下に酸素または酸素含有ガスと接触させることにより得られる。
原料共重合体は、通常130〜200℃、好ましくは140〜170℃の温度で溶融状態にする。
【0102】
酸化変性する際には、原料共重合体を溶融状態で攪拌下に酸素または酸素含有ガスと接触させて酸化反応を行うが、「酸素または酸素含有ガス」という語は、純酸素(通常の液体空気分留や水の電解によって得られる酸素であって、他成分を不純物程度含んでいても差し支えない)、純酸素と他のガスとの混合ガス、例えば空気、およびオゾンを含んで用いられる。
【0103】
原料共重合体と酸素等との接触方法としては、具体的には、酸素含有ガスを反応器下部より連続的に供給して、原料共重合体と接触させる方法が好ましい。またこの場合、酸素含有ガスは、原料混合物1kgに対して1分間当たり1.0〜8.0NL相当の酸素量となるように供給することが好ましい。
このようにして得られる変性エチレン・α−オレフィン共重合体の酸価(JIS K5902)は、好ましくは1〜30mgKOH/g、より好ましくは5〜20mgKOH/gである。
【0104】
ここに、酸価とは、試料1g当たりの中和に要する水酸化カリウムのmg数を指す。
酸化変性された変性エチレン・α−オレフィン共重合体の酸価が6〜30mgKOH/gであるとき、この変性エチレン・α−オレフィン共重合体は、針入硬度(JIS K 2207)が通常0.2mm以下となる。
【0105】
(酸グラフト変性)
酸グラフト変性された変性エチレン・α−オレフィン共重合体は、従来公知の方法で調製することができ、例えば▲1▼原料エチレン・α−オレフィン共重合体と、▲2▼不飽和カルボン酸もしくはその誘導体またはスルフォン酸塩とを、▲3▼有機過酸化物などの重合開始剤の存在下に溶融混練するか、または▲1▼原料エチレン・α−オレフィン共重合体と、▲2▼不飽和カルボン酸もしくはその誘導体またはスルフォン酸塩とを有機溶媒に溶解した溶液中で▲3▼有機過酸化物などの重合開始剤の存在下に混練することにより得られる。
【0106】
酸グラフト変性に用いられる不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−sec−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−2−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸イソヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸−2−クロロフェニル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸−3−メトキシブチル、アクリル酸ジエチレングリコールエトキシレート、アクリル酸−2,2,2−トリフルオロエチルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−sec−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−2−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸−2−クロロヘキシル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸−2−ヘキシルエチル、メタクリル酸−2,2,2−トリフルオロエチル等のメタクリル酸エステル類:マレイン酸エチル、マレイン酸プロピル、マレイン酸ブチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル類:フマル酸エチル、フマル酸ブチル、フマル酸ジブチル等のフマル酸エステル類;マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、クロトン酸、ナジック酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸類;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水アリルコハク酸、無水グルタコン酸、無水ナジック酸などの無水物などが挙げられる。
【0107】
酸グラフト変性された変性エチレン・α−オレフィン共重合体は、不飽和カルボン酸またはその誘導体での変性量が、KOH滴定換算で、重合体1g当たり30〜100mgKOHであることが好ましく、30〜60mgKOHであることがさらに好ましい。
不飽和カルボン酸またはその誘導体での変性量が上記範囲内にあると、水性分散体から得られる微粒子の吸湿性が適度であり、耐水性、耐候性等に優れる傾向がある。また、水添加後の転相が十分であり、水性分散体が高収率で得られる傾向がある。
【0108】
スルフォン酸塩で変性されている場合は、変性量が重合体1g当たり0.1〜100ミリモルであることが好ましく、5〜50ミリモルであることがさらに好ましい。
スルフォン酸塩での変性量が上記範囲内にあると、未乳化物が発生し難く、かつ乳化物以外にスルフォン酸塩の凝集物が発生し難くなる傾向がある。
【0109】
(マスターバッチ組成物)
本発明に係る顔料マスターバッチ用組成物は、上記エチレン・α−オレフィン共重合体(a)と、顔料(b)とを含み、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)を70〜30重量%、好ましくは60〜30重量%、より好ましくは50〜30重量%、顔料(b)を30〜70重量%、好ましくは40〜70重量%、より好ましくは50〜70重量%の割合で含有している。
【0110】
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)と、顔料(b)との含有割合が上記範囲内にあると、
本発明に係るマスターバッチ組成物は、ポリオレフィン用に使用する場合には、上記エチレン・α−オレフィン共重合体(a)および顔料(b)に加えて低密度ポリエチレン(c)を含有することが好ましい。
【0111】
このようなマスターバッチ組成物は、
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)を5〜40重量%、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは5〜20重量%、
顔料(b)を30〜60重量%、好ましくは40〜60重量%、より好ましくは50〜60重量%、
低密度ポリエチレン(c)を20〜60重量%、好ましくは20〜50重量%、より好ましくは20〜40重量%の割合で含有している。
【0112】
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)と、顔料(b)と、低密度ポリエチレン(c)との含有割合が上記範囲内にあると、顔料マスターバッチ製造時の混練適性を損なわずに、高顔料濃度が達成できる。
(顔料)
本発明で用いられる顔料としては、従来から合成樹脂の着色に知られている全ての顔料を使用することができる。具体的には、アルミニウム、銀、金などの金属類;炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどの炭酸塩;ZnO、TiO2などの酸化物;Al2O3・nH2O、Fe2O3・nH2Oなどの水酸化物;CaSO4、BaSO4などの硫酸塩;Bi(OH)2NO3などの硝酸塩;PbCl2などの塩化物;CaCrO4、BaCrO4などのクロム酸塩;CoCrO4などの亜クロム酸塩、マンガン酸塩および過マンガン酸塩;Cu(BO)2などの硼酸塩;Na2U2O7・6H2Oなどのウラン酸塩;K3Co(NO2)6・3H2Oなどの亜硝酸塩;SiO2などの珪酸塩;CuAsO3・Cu(OH)2などのひ酸塩および亜ひ酸塩;Cu(C2H3O2)2・Cu(OH)2などの酢酸塩;(NH4)2MnO2(P2O7)2などの燐酸塩;アルミ酸塩、モリブデン酸塩、亜鉛酸塩、アンチモン酸塩、タングステン酸塩セレン化物、チタン酸塩、シアン化鉄塩、フタル酸塩、CaS、ZnS、CdS、黒鉛、カーボンブラックなどの無機顔料、コチニール・レーキ、マダー・レーキなどの天然有機顔料、ナフトール・グリーンY、ナフトール・グリーンBなどのニトロソ顔料;ナフトールエローS、ピグメント・クロリン2Gなどのニトロ顔料;パーマネント・レッド4R;ハンザエロー、ブリリアント・カーミン68、スカーレット2Rなどのアゾ顔料;マラカイン・グリーン、ローダミンBなどの塩基性染料レーキ、アシツド、グリーンレーキ、エオシン・レーキなどの酸性染料レーキ、アリザリン・レーキ、プルプリン・レーキ、などの媒染染料レーキ、チオ・インジゴ・レッドB、インタンスレン・オレンジなどの建染染料顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン顔料などの有機顔料などが挙げられる。
【0113】
((c)低密度ポリエチレン)
本発明で用いられる低密度ポリエチレン(c)は、公知の低密度ポリエチレンであり、ASTM D1238−65Tに従い190℃、2.16kg荷重の条件下に測定されるMFRが、通常0.1〜50g/10分、好ましくは0.2〜10g/10分の範囲にあり、密度が0.865〜0.935g/cm3 、好ましくは0.890〜0.925g/cm3の範囲にある。
【0114】
低密度ポリエチレン(c)は、いわゆる高圧ラジカル重合により製造される長鎖分岐を有する分岐の多いポリエチレンであってもよく、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)であってもよい。
(組成物の製法)
本発明に係るマスターバッチ組成物は、例えばエチレン・α−オレフィン共重合体(a)および顔料(b)を高速ミキサー、粉砕機で混合し、バンバリーミキサーやニーダーで混練した後、加熱2本ロールや加熱3本ロールにて微細に磨砕処理し、次いで単軸スクリューや2軸スクリュー押出機等の混練機で低密度ポリエチレン(c)と混練する、またはエチレン・α−オレフィン共重合体(a)、顔料(b)、および低密度ポリエチレン(c)を一度に混合し、バンバリーミキサー、ニーダー、高速回転インテンシブミキサー、単軸スクリューや2軸スクリュ押出機等で溶融混練することにより製造することができる。
【0115】
本発明に係るマスターバッチ組成物は、例えばポリエチレン(高圧ラジカル法ポリエチレン、直鎖状ポリエチレンが含まれる。)、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリブテン−1、ポリ4−メチル−1−ペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン樹脂;ポリスチレン、ABSなどのスチレン系樹脂;ビスフェノール−Aとホスゲンから得られるポリカーボネート樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリフェニレンオキサイド樹脂;ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂の着色に用いることができる。
【0116】
【発明の効果】
本発明に係る顔料分散剤は、従来と同量の添加量で、従来のワックスがより低温でかつ十分に顔料に濡れるため、顔料分散性に優れる。
本発明に係るマスターバッチ組成物は、着色成形の際における希釈樹脂との混練でも顔料の分散が容易で、フローマークを生じにくく、かつ顔料の再凝集に起因するブツが発生しにくい。
【0117】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0118】
【製造例1】
(エチレン・α−オレフィン共重合体の製造)
メタロセン触媒を用いて、次のようにしてエチレン・α−オレフィン共重合体を製造した。
充分に窒素置換した内容積2リットルのステンレス製オートクレーブにヘキサン 950mlおよびプロピレン 50mlを装入し、水素を0.1MPa(ゲージ圧)となるまで導入した。次いで、系内の温度を150℃に昇温した後、トリイソブチルアルミニウム 0.3ミリモル、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート 0.004ミリモル、(t−ブチルアミド)ジメチル(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)シランチタンジクロライド(シグマアルドリッチ社製)0.02ミリモルをエチレンで圧入することにより重合を開始した。その後、エチレンのみを連続的に供給することにより全圧を2.9MPa(ゲージ圧)に保ち、150℃で20分間重合を行った。少量のエタノールを系内に添加することにより重合を停止した後、未反応のエチレンおよびプロピレンをパージした。得られたポリマー溶液を、100℃減圧下で一晩乾燥した。
【0119】
その結果、Mnが2,050であり、プロピレン含量が7.3モル%であり、密度が920kg/m3であり、結晶化温度が93℃であるエチレン・プロピレン共重合体(WAX1)32.5gを得た。
【0120】
【製造例2】
(エチレン・α−オレフィン共重合体の製造)
製造例1の重合において、ヘキサンの使用量を935mlとし、α−オレフィン成分としてプロピレンに代えて1−ブテンを65ml装入し、水素を0.15MPa(ゲージ圧)となるまで導入した以外は製造例1と同様に重合を行った。
【0121】
その結果、Mnが1,900であり、1−ブテン含量が5.6モル%であり、密度が920kg/m3であり、結晶化温度が93℃であるエチレン・1−ブテン共重合体(WAX2)37.5gを得た。
【0122】
【製造例3】
(エチレン・α−オレフィン共重合体の製造)
製造例1の重合において、ヘキサンの使用量を920mlとし、α−オレフィン成分としてプロピレンに代えて1−ヘキセンを80ml装入し、水素を0.2MPa(ゲージ圧)となるまで導入した以外は製造例1と同様に重合を行った。
【0123】
その結果、Mnが2,100であり、1−ヘキセン含量が3.4モル%であり、密度が917kg/m3であり、結晶化温度が93℃であるエチレン・1−ヘキセン共重合体(WAX3)43.2gを得た。
【0124】
【製造例4】
(エチレン・α−オレフィン共重合体の製造)
製造例1の重合において、ヘキサンの使用量を910mlとし、α−オレフィン成分としてプロピレンに代えて4−メチル−1−ペンテンを90ml装入し、水素を0.2MPa(ゲージ圧)となるまで導入した以外は製造例1と同様に重合を行った。
【0125】
その結果、Mnが2,000であり、4−メチル−1−ペンテン含量が3.7モル%であり、密度が918kg/m3であり、結晶化温度が93℃であるエチレン・4−メチル−1−ペンチン共重合体(WAX4)41.2gを得た。
【0126】
【製造例5】
(エチレン・α−オレフィン共重合体の製造)
製造例1の重合において、ヘキサンの使用量を935mlとし、α−オレフィン成分としてプロピレンに代えて1−ブテンを65m1装入し、水素を0.34MPa(ゲージ圧)となるまで導入した以外は製造例1と同様に重合を行った。
【0127】
その結果、Mnが600であり、1−ブテン含量が5.2モル%であり、密度が920kg/m3であり、結晶化温度が92であるエチレン・1−ブテン共重合体(WAX5)31.2gを得た。
【0128】
【製造例6】
(エチレン・α−オレフィン共重合体の製造)
製造例1の重合において、ヘキサンの使用量を935mlとし、α−オレフィン成分としてプロピレンに代えて1−ブテンとし65ml装入し、水素を0.1MPa(ゲージ圧)となるまで導入した以外は製造例1と同様に重合を行った。
【0129】
その結果、Mnが4,000であり、1−ブテン含量が5.7モル%であり、密度が920kg/m3であり、結晶化温度が92℃であるエチレン・1−ブテン共重合体(WAX6)38.8gを得た。
【0130】
【製造比較例1】
(チタン触媒成分の調製)
内容積1.5リットルのガラス製オートクレーブにおいて、市販の無水塩化マグネシウム 25gをヘキサン 500mlで懸濁させた。これを30℃に保ち攪拌しながらエタノール 92mlを1時間で滴下し、さらに1時間反応させた。反応終了後、ジエチルアルミニウムモノクロリド 93mlを1時間で滴下し。さらに1時間反応させた。反応終了後、四塩化チタン90mlを滴下し、反応容器を80℃に昇温して1時間反応させた。反応終了後、固体部をデカンテーションにより遊離のチタンが検出されなくなるまでヘキサンで洗浄した。得られたチタン触媒成分をヘキサン懸濁液としてチタン濃度を滴定により定量し、以下の実験に供した。
【0131】
(エチレン・α−オレフィン共重合体の製造)
充分に窒素置換した内容積2リットルのステンレス製オートクレーブにヘキサン 930mlおよび1−ブテン 70m1を装入し、水素を2.0MPa(ゲージ圧)となるまで導入した。次いで、系内の温度を170℃に昇温した後、トリエチルアルミニウム 0.1ミリモル、エチルアルミニウムセスキクロリド 0.4ミリモル、上記で得たチタン触媒成分を原子換算で0.008ミリモルをエチレンで圧入することにより重合を開始した。その後、エチレンのみを連続的に供給することにより全圧を3.9MPa(ゲージ圧)に保ち、170℃で40分間重合を行った。少量のエタノールを系内に添加することにより重合を停止した後、未反応のエチレンおよび1−ブテンをパージした。得られたポリマー溶液を、100℃減圧下で一晩乾燥した。
【0132】
その結果、Mnが2,000であり、1−ブテン含量が5.4モル%であり、密度が917kg/m3であり、結晶化温度が101℃であるエチレン・1−ブテン共重合体(WAX7)129gを得た。
【0133】
【製造比較例2】
(エチレン・α−オレフィン共重合体の製造)
製造比較例1の重合において、ヘキサンの使用量を850mlとし、α−オレフィン成分として1−ブテンに代えて4−メチル−1−ペンテンを150ml装入し、水素を2.1MPa(ゲージ圧)となるまで導入した以外は製造比較例1と同様に重合を行った。
【0134】
その結果、Mnが2,100であり、4−メチル−1−ペンテン含量が3.7モル%であり、密度が919kg/m3であり、結晶化温度が105℃であるエチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体(WAX8)99gを得た。
【0135】
【製造比較例3】
(エチレン重合体の製造)
製造例1の重合において、ヘキサンの使用量を1000mlとし、α−オレフィン成分を使用せず、かつ水素を0.25MPa(ゲージ圧)となるまで導入した以外は製造例1と同様に重合を行った。
【0136】
その結果、Mnが2,000であり、密度が977kg/m3であり、結晶化温度が126℃であるエチレン重合体(WAX9)34.4gを得た。
上記製造例および製造比較例で製造した重合体の物性を下記表1に示す。
【0137】
【表1】
【0138】
【実施例1〜6、比較例1〜3】
顔料分散剤(WAX1〜9)の微粉末100重量部を180℃で溶解し、これにフタロシアニンブルー100重量部を混練しながら徐々に添加して半径約2.5cmの球状混練物を得た。この混練固形物を130℃の三本ロール混練機に供給し、混練物(マスターバッチ用組成物)を得た。
【0139】
さらにこの混練物およびポリスチレン(商品名:トーポレックス、三井化学社製、以下「GPPS」と記載する。)、またはABS(商品名:クラスチックMH、住友化学製)を、混練成形中の顔料濃度が1重量%になるような割合で50rpmの速度で回転している20mmφ押出機に供給して混練し、マスターバッチを得た。なお、混練温度はGPPSの場合は190℃、ABSの場合は230℃とした。
【0140】
(押出加工性)
押出加工性は、押出機での押出時のストランドの表面状態およびストランド径の均一性を目視判定することにより評価した。
(フィルム性能)
マスターバッチフィルムの透明性については、GPPSを基材とするマスターバッチを用いて、プレス温度190℃の条件下で、プレス加工し、0.1mm厚みのマスターバッチフィルムを得た。
【0141】
(顔料分散性の性能評価方法)
このマスターバッチフィルム中の顔料分散剤は、次の1〜5の5段階で評価した。
(50μm以上の粒子数について)
5: 1.00×103個/cm3未満
4: 1.00×103個/cm3以上7.00×103個/cm3未満
3: 7.00×103個/cm3以上2.7×104個/cm3未満
2: 2.7×104個/cm3以上7×104個/cm3未満
1: 7×104個/cm3以上
なお、測定は、東洋インキ社製Luzex450画像処理機でおこなった。また、得られたフィルムの霞み度をフィルムヘイズとして測定した。この値が小さいもの程透明性が良好である。
【0142】
以上の結果を表2に示す。
【0143】
【表2】
Claims (8)
- ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量が500〜5,000の範囲にあり、示差走査型熱量計(DSC)で測定した結晶化温度(Tc(℃)、降温速度2℃/分)と、密度勾配管法で測定した密度(D(kg/m3))の関係が下記式(I)
0.501×D−360≧Tc …(I)
で示される関係を満たすエチレン・α−オレフィン共重合体(a)からなることを特徴とする顔料分散剤。 - 上記エチレン・α−オレフィン共重合体(a)が、エチレンと炭素原子数3〜10のα−オレフィンとの共重合体であり、エチレンから導かれる構成単位を88〜99モル%、α−オレフィンから導かれる構成単位を1〜12モル%の割合で含有することを特徴とする請求項1に記載の顔料分散剤。
- 上記エチレン・α−オレフィン共重合体(a)が、酸化変性または酸グラフト変性されたエチレン・α−オレフィン共重合体であることを特徴とする請求項1または2に記載の顔料分散剤。
- 上記エチレン・α−オレフィン共重合体(a)が、メタロセン触媒の存在下に、エチレン、α−オレフィンおよび水素を重合系に供給して、エチレンとα−オレフィンとを共重合することにより得られたものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の顔料分散剤。
- (a)請求項1〜4のいずれか1項に記載のエチレン・α−オレフィン共重合体
70〜30重量%と、
(b)顔料 30〜70重量%と、
とを含有することを特徴とする顔料マスターバッチ用組成物。 - 上記顔料(b)が、カーボンブラックであることを特徴とする請求項5に記載のマスターバッチ組成物。
- (a)請求項1〜4のいずれか1項に記載のエチレン・α−オレフィン共重合体
5〜40重量%と、
(b)顔料 30〜60重量%と、
(c)低密度ポリエチレン 20〜60重量%
とを含有することを特徴とするマスターバッチ組成物。 - 上記顔料(b)が、カーボンブラックであることを特徴とする請求項7に記載のマスターバッチ組成物。
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