JP4030379B2 - ポリエチレンワックス粒子の製造方法およびポリエチレンワックス粒子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエチレンワックス粒子の製造方法およびこの方法により得られる粒径分布の狭いポリエチレンワックス粒子に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
ポリオレフィンワックスは、多くの分野において使用されており、例えば刷インキおよび表面コーティング剤の添加剤として用いられている。印刷インキにポリオレフィンワックスを用いると、印刷された製品の摩滅、摩耗および傷に対する耐性が改善される。また表面コーティング剤にポリオレフィンワックスを用いると、コーティング表面の機械特性を改善するだけでなく、つや消し作用も発揮する。
【0003】
近年印刷業界では、印刷時の省人化、省力化、自動化、高速化の要求が高まってきており、様々な印刷条件下において長時間安定して高品位な印刷物が得られるような印刷インキが望まれている。
中でも印刷物の擦れに対する要求品質は非常に高いものがあり、オフセット枚葉印刷においては先行面の印刷後に後刷り面を印刷する場合など、できるだけ早い乾燥性が求められかつ印刷機のコロ等での傷つきが発生しないように、また最終的な製本時での擦れが発生しないように十分な耐摩擦性が求められている。
【0004】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、インキ等に用いられる耐摩耗材に好適に用いられる小粒径で粒度分布の狭いポリエチレンワックス粒子を製造しうるようなポリエチレンワックス粒子の製造方法およびこの方法により得られた小粒径で粒度分布の狭いポリエチレンワックス粒子を提供することを目的としている。
【0005】
【発明の概要】
本発明に係るポリエチレンワックス粒子の製造方法は、メタロセン系触媒を用いて得られたエチレン単独重合体またはエチレン・α−オレフィン共重合体であって、密度勾配管法で測定した密度が870〜950kg/m3の範囲にあり、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が70〜125℃の範囲にあり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量(Mn)が800〜7,000の範囲にあり、Mw/Mn(Mw:重量平均分子量)が3.0以下であるポリエチレンワックスを、溶媒に溶解させた後、この溶液を徐冷してポリエチレンワックスを析出させるに際し、100〜90℃から80〜70℃までの温度範囲での降温速度を他の温度範囲での降温速度の1/6〜1/30とすることを特徴としている。
【0006】
本発明では、上記ポリエチレンワックスが、エチレンと炭素原子数3〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとの共重合体であることが好ましい。
また本発明では、上記溶媒が、芳香族炭化水素、鎖状炭化水素、脂環式炭化水素、アルコール、エステルもしくはケトンまたはこれらの混合物であることが好ましく、特に芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、鎖状炭化水素またはアルコールと、ケトンまたはエステルとの混合溶媒であること好ましい。
【0007】
本発明では、ポリエチレンワックスが溶解した溶液を徐冷する際に、ポリエチレンワックスが析出を開始する温度より1〜10℃度高い温度から析出し終わる温度までの温度範囲では降温速度を0.2〜10℃/時間とし、他の温度範囲での降温速度を6〜60℃/時間とすることが好ましい。
【0008】
本発明では、ポリエチレンワックスを溶媒に溶解する際に、溶媒1(容量)に対しポリエチレンワックスを0.05〜0.3(重量)の割合で用いることが好ましい。
本発明に係るポリエチレンワックス粒子は、上記ポリエチレンワックスの製造方法により得られ、平均粒径が0.1〜10μmの範囲にあり、積算重量が10%となるときの粒径(X10)と、積算重量が90%となるときの粒径(X90)との比(X90/X10)が5.0以下であることを特徴としている。
【0009】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係るポリエチレンワックス粒子の製造方法およびポリエチレンワックス粒子について具体的に説明する。
本発明に係るポリエチレンワックス粒子の製造方法で以下のようなポリエチレンワックスが用いられる。
【0010】
(ポリエチレンワックス)
本発明で用いられるポリエチレンワックスは、メタロセン系触媒を用いて得られたエチレン単独重合体またはエチレン・α−オレフィン共重合体である。
ここでα-オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどの炭素原子数3〜12のα−オレフィンが挙げられ、好ましくは炭素原子数3〜8のα−オレフィンであり、より好ましくはプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンである。
【0011】
ポリエチレンワックスは、エチレン単位を70〜100モル%、好ましくは80〜100モル%の割合で含有することが望ましい。
ポリエチレンワックスは、密度勾配管法で測定した密度が870〜960kg/m3、好ましくは885〜950kg/m3、より好ましくは900〜940kg/m3の範囲にある。
【0012】
ポリエチレンワックスの密度が上記範囲内にあると、平均粒径が細かく、かつ、積算重量が10%となるときの粒径(X10)と積算重量が90%となるときの粒径(X90)との比(X90/X10)も小さくなる。
ポリエチレンワックスは、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が70〜125℃、好ましくは80〜125℃、より好ましくは90〜120℃の範囲にある。
【0013】
ポリエチレンワックスの融点が上記範囲内にあると、平均粒径が細かく、かつ、積算重量が10%となるときの粒径(X10)と積算重量が90%となるときの粒径(X90)との比(X90/X10)も小さくなる。
ポリエチレンワックスは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量(Mn)が800〜7,000、好ましくは1,0000〜6,000、より好ましくは1,500〜5,000の範囲にある。
【0014】
ポリエチレンワックスの数平均分子量が上記範囲内にあると、平均粒径が細かく、かつ、積算重量が10%となるときの粒径(X10)と積算重量が90%となるときの粒径(X90)との比(X90/X10)も小さくなる。
ポリエチレンワックスは、Mw/Mnが3.0以下、好ましくは2.9以下、より好ましくは2.8以下である。
【0015】
Mw/Mnが上記範囲内にあると、平均粒径が細かく、かつ、積算重量が10%となるときの粒径(X10)と積算重量が90%となるときの粒径(X90)との比(X90/X10)も小さくなる。
ポリエチレンワックスは、示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶化温度(Tc(℃)、降温速度2℃/分で測定。)と、密度勾配管法で測定した密度(D(kg/m3))との関係が下記式(I)
0.501×D−366 ≧ Tc …(I)
好ましくは、下記式(Ia)
0.501×D−366.5 ≧ Tc …(Ia)
より好ましくは、下記式(Ib)
0.501×D−367 ≧ Tc …(Ib)
を満たすことが望ましい。
【0016】
ポリエチレンワックスにおいて結晶化温度(Tc)と、密度(D)との関係が上記式を満たすと、ポリエチレンワックスのコモノマー組成がより均一になる結果、ポリエチレンワックスのベタつき成分が減少する傾向がある。
ポリエチレンワックスは、エチレンと、プロピレンまたは1-ブテンとから得られるエチレン・α−オレフィン共重合体であることが好ましい。
【0017】
ポリエチレンワックスは、常温で固体であり、70〜125℃以上で、低粘度の液体となる。
上述したようなポリエチレンワックスは、例えば周期表第4族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物および/またはイオン化イオン性化合物とからなる以下のようなメタロセン系触媒を用いて製造することができる。
【0018】
(メタロセン化合物)
メタロセン系触媒を形成するメタロセン化合物は、周期表第4族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物であり、具体的な例としては下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
M1Lx …(1)
ここで、M1は周期表第4族から選ばれる遷移金属、xは遷移金属M1の原子価、Lは配位子である。
【0019】
M1で示される遷移金属の例としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウムなどがある。Lは遷移金属M1に配位する配位子であって、そのうち少なくとも1個の配位子Lはシクロペンタジエニル骨格を有する配位子であって、このシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は置換基を有していてもよい。
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子Lとしては、例えばシクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、n−またはi−プロピルシクロペンタジエニル基、n−、i−、sec−またはt−ブチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、メチルプロピルシクロペンタジエニル基、メチルブチルシクロペンタジエニル基、メチルベンジルシクロペンタジエニル基等のアルキルまたはシクロアルキル置換シクロペンタジエニル基;さらにインデニル基、4,5,6,7−テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基などが挙げられる。このシクロペンタジエニル骨格を有する配位子の水素は、ハロゲン原子またはトリアルキルシリル基などで置換されていてもよい。
【0020】
上記のメタロセン化合物が、配位子Lとしてシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を2個以上有する場合には、そのうち2個のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子同士が、エチレン、プロピレン等のアルキレン基;イソプロピリデン、ジフェニルメチレン等の置換アルキレン基;シリレン基またはジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルフェニルシリレン基等の置換シリレン基などを介して結合されていてもよい。
【0021】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子(シクロペンタジエニル骨格を有しない配位子)Lとしては、炭素原子数1〜12の炭化水素基、アルコキシ基、アリーロキシ基、スルフォン酸含有基(−SO3R1)、ハロゲン原子または水素原子(ここで、R1はアルキル基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アリール基、ハロゲン原子で置換されたアリール基またはアルキル基で置換されたアリール基である。)などが挙げられる。
【0022】
(メタロセン化合物の例−1)
上記一般式(1)で表されるメタロセン化合物が、例えば遷移金属の原子価が4である場合、より具体的には下記一般式(2)で表される。
R2 kR3 lR4 mR5 nM1 …(2)
ここで、M1は周期表第4族から選ばれる遷移金属、R2はシクロペンタジエニル骨格を有する基(配位子)、R3、R4およびR5はそれぞれ独立にシクロペンタジエニル骨格を有するかまたは有しない基(配位子)である。kは1以上の整数であり、k+l+m+n=4である。
【0023】
M1がジルコニウムであり、かつシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を少なくとも2個含むメタロセン化合物の例を次に挙げる。
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノクロリドモノハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1−メチル−3−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドなど。
【0024】
上記の化合物の中で、1,3−位置換シクロペンタジエニル基を1,2−位置換シクロペンタジエニル基に置き換えた化合物も用いることができる。
またメタロセン化合物の別の例としては、上記一般式(2)において、R2、R3、R4およびR5の少なくとも2個、例えばR2およびR3がシクロペンタジエニル骨格を有する基(配位子)であり、この少なくとも2個の基がアルキレン基、置換アルキレン基、シリレン基または置換シリレン基などを介して結合されているブリッジタイプのメタロセン化合物を使用することもできる。このときR4およびR5は、それぞれ独立に、前述したシクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子Lと同様である。
【0025】
このようなブリッジタイプのメタロセン化合物としては、エチレンビス(インデニル)ジメチルジルコニウム、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
【0026】
(メタロセン化合物の例−2)
また別のメタロセン化合物の例としては、下記一般式(3)で表される特開平4−268307号公報記載のメタロセン化合物が挙げられる。
【0027】
【化1】
【0028】
ここで、M1は周期表第4族遷移金属であり、具体的にはチタニウム、ジルコニウム、ハフニウムが挙げられる。
R11およびR12は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子;炭素原子数1〜10のアルキル基;炭素原子数1〜10のアルコキシ基;炭素原子数6〜10のアリール基;炭素原子数6〜10のアリーロキシ基;炭素原子数2〜10のアルケニル基;炭素原子数7〜40のアリールアルキル基;炭素原子数7〜40のアルキルアリール基;炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基;またはハロゲン原子であり、R11およびR12は、塩素原子であることが好ましい。
【0029】
R13およびR14は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子;ハロゲン原子;ハロゲン化されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基;炭素原子数6〜10のアリール基;−N(R20)2、−SR20、−OSi(R20)3、−Si(R20)3または−P(R20)2基である。ここで、R20はハロゲン原子、好ましくは塩素原子;炭素原子数1〜10、好ましくは1〜3のアルキル基;または炭素原子数6〜10、好ましくは6〜8のアリール基である。R13およびR14は、特に水素原子であることが好ましい。
【0030】
R15およびR16は、水素原子が含まれないことを除きR13およびR14と同じであって、互いに同じでも異なっていてもよく、好ましくは同じである。R15およびR16は、好ましくはハロゲン化されていてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、トリフルオロメチル等が挙げられ、特にメチルが好ましい。
【0031】
上記一般式(3)において、R17は次の群から選ばれる。
【0032】
【化2】
【0033】
=BR21、=AlR21、−Ge−、−Sn−、−O−、−S−、=SO、=SO2、=NR21、=CO、=PR21、=P(O)R21など。M2はケイ素、ゲルマニウムまたは錫、好ましくはケイ素またはゲルマニウムである。
ここで、R21、R22およびR23は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子;ハロゲン原子;炭素原子数1〜10のアルキル基;炭素原子数1〜10のフルオロアルキル基;炭素原子数6〜10のアリール基;炭素原子数6〜10のフルオロアリール基;炭素原子数1〜10のアルコキシ基;炭素原子数2〜10のアルケニル基;炭素原子数7〜40アリールアルキル基;炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基;または炭素原子数7〜40のアルキルアリール基である。「R21とR22」または「R21とR23」とは、それぞれそれらが結合する原子と一緒になって環を形成してもよい。
【0034】
また、R17は、=CR21R22、=SiR21R22、=GeR21R22、−O−、−S−、=SO、=PR21または=P(O)R21であることが好ましい。
R18およびR19は互いに同一でも異なっていてもよく、R21と同じものが挙げられる。
mおよびnは互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ0、1または2、好ましくは0または1であり、m+nは0、1または2、好ましくは0または1である。
【0035】
上記一般式(3)で表されるメタロセン化合物の例としては、次の化合物が挙げられる。rac−エチレン(2−メチル−1−インデニル)2−ジルコニウム−ジクロライド、rac−ジメチルシリレン(2−メチル−1−インデニル)2−ジルコニウム−ジクロライドなど。これらのメタロセン化合物は、例えば、特開平4−268307号公報に記載の方法で製造することができる。
【0036】
(メタロセン化合物の例−3)
また、メタロセン化合物としては、下記一般式(4)で表されるメタロセン化合物を用いることもできる。
【0037】
【化3】
【0038】
式中、M3は、周期表第4族の遷移金属原子を示し、具体的にはチタニウム、ジルコニウム、ハフニウムなどである。
R24およびR25は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基を示す。
【0039】
R24は炭化水素基であることが好ましく、特にメチル、エチルまたはプロピルの炭素原子数1〜3のアルキル基であることが好ましい。
R25は水素原子または炭化水素基が好ましく、特に水素原子、またはメチル、エチルもしくはプロピルの炭素原子数1〜3のアルキル基であることが好ましい。
【0040】
R26、R27、R28およびR29は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基を示す。これらの中では水素原子、炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基であることが好ましい。R26とR27、R27とR28、R28とR29のうち少なくとも1組は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、単環の芳香族環を形成していてもよい。また芳香族環を形成する基以外に、炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基が2個以上ある場合には、これらが互いに結合して環状になっていてもよい。なおR29が芳香族基以外の置換基である場合、水素原子であることが好ましい。
【0041】
X1およびX2は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基またはイオウ含有基を示す
Yは、炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基、炭素原子数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2−、−NR30−、−P(R30)−、−P(O)(R30)−、−BR30−または−AlR30−(ただし、R30は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基)を示す。
【0042】
式(4)において、R26とR27、R27とR28、R28とR29のうち少なくとも1組が互いに結合して形成する単環の芳香族環を含み、M3に配位する配位子としては、次式で表されるものなどが挙げられる。
【0043】
【化4】
【0044】
(式中、Yは前式に示したものと同じである。)
(メタロセン化合物の例−4)
メタロセン化合物としては、また下記一般式(5)で表されるメタロセン化合物を用いることもできる。
【0045】
【化5】
【0046】
式中、M3、R24、R25、R26、R27、R28およびR29は、上記一般式(4)と同じである。
R26、R27、R28およびR29のうち、R26を含む2個の基がアルキル基であることが好ましく、R26とR28、またはR28とR29がアルキル基であることが好ましい。このアルキル基は、2級または3級アルキル基であることが好ましい。またこのアルキル基は、ハロゲン原子、ケイ素含有基で置換されていてもよく、ハロゲン原子、ケイ素含有基としては、R24、R25で例示した置換基が挙げられる。
【0047】
R26、R27、R28およびR29のうち、アルキル基以外の基は、水素原子であることが好ましい。
またR26、R27、R28およびR29は、これらから選ばれる2種の基が互いに結合して芳香族環以外の単環あるいは多環を形成していてもよい。ハロゲン原子としては、上記R24およびR25と同様のものが挙げられる。
【0048】
X1、X2およびYとしては、上記と同様のものが挙げられる。
上記一般式(5)で表されるメタロセン化合物の具体的な例を次に示す。rac−ジメチルシリレン−ビス(4,7−ジメチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレン−ビス(2,4,7−トリメチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレン−ビス(2,4,6−トリメチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリドなど。
【0049】
これらの化合物において、ジルコニウム金属を、チタニウム金属、ハフニウム金属に置換えた遷移金属化合物を用いることもできる。遷移金属化合物は、通常ラセミ体として用いられるが、R型またはS型を用いることもできる。
(メタロセン化合物の例−5)
メタロセン化合物として、下記一般式(6)で表されるメタロセン化合物を使用することもできる。
【0050】
【化6】
【0051】
式中、M3、R24、X1、X2およびYは、上記一般式(4)と同じである。
R24は炭化水素基であることが好ましく、特にメチル、エチル、プロピルまたはブチルの炭素原子数1〜4のアルキル基であることが好ましい。
R25は、炭素原子数6〜16のアリール基を示す。R25はフェニル、ナフチルであることが好ましい。アリール基は、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基または炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基で置換されていてもよい。
【0052】
X1およびX2としては、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。
上記一般式(6)で表されるメタロセン化合物の具体的な例を次に示す。
rac−ジメチルシリレン−ビス(4−フェニル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(α−ナフチル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(β−ナフチル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(1−アントリル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリドなど。またこれら化合物において、ジルコニウム金属をチタニウム金属またはハフニウム金属に置き換えた遷移金属化合物を用いることもできる。
【0053】
(メタロセン化合物の例−6)
またメタロセン化合物として、下記一般式(7)で表されるメタロセン化合物を用いることもできる。
LaM4X3 2 …(7)
ここで、M4は周期表第4族またはランタニド系列の金属である。Laは非局在化π結合基の誘導体であり、金属M4活性サイトに拘束幾何形状を付与している基である。X3は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数20以下の炭化水素基、20以下のケイ素を含有するシリル基または20以下のゲルマニウムを含有するゲルミル基である。
【0054】
この化合物の中では、次式(8)で示される化合物が好ましい。
【0055】
【化7】
【0056】
M4は、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムである。
X3は上記一般式(7)で説明したものと同様である。
CpはM4にπ結合しており、かつ置換基Zを有する置換シクロペンタジエニル基である。
Zは酸素、イオウ、ホウ素または周期表第4族の元素(例えばケイ素、ゲルマニウムまたは錫)である。
【0057】
Yは窒素、リン、酸素またはイオウを含む配位子であり、ZとYとで縮合環を形成していてもよい。
このような式(8)で表されるメタロセン化合物の具体的な例を次に示す。
(ジメチル(t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)シラン)チタンジクロリド、((t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイル)チタンジクロリドなど。またこのメタロセン化合物において、チタンをジルコニウムまたはハフニウムに置き換えた化合物を挙げることもできる。
【0058】
(メタロセン化合物の例−7)
またメタロセン化合物としては、下記一般式(9)で表されるメタロセン化合物を使用することもできる。
【0059】
【化8】
【0060】
M3は周期表第4族の遷移金属原子であり、具体的には、チタニウム、ジルコニウムまたはハフニウムであり、好ましくはジルコニウムである。
R31は互いに同一でも異なっていてもよく、そのうち少なくとも1個が炭素原子数11〜20のアリール基、炭素原子数12〜40のアリールアルキル基、炭素原子数13〜40のアリールアルケニル基、炭素原子数12〜40のアルキルアリール基またはケイ素含有基であるか、またはR31で示される基のうち隣接する少なくとも2個の基が、それらの結合する炭素原子とともに、単数または複数の芳香族環または脂肪族環を形成している。この場合、R31により形成される環は、R31が結合する炭素原子を含んで全体として炭素原子数が4〜20である。
【0061】
アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アルキルアリール基および芳香族環、脂肪族環を形成しているR31以外のR31は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基またはケイ素含有基である。
R32は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基、炭素原子数7〜40のアルキルアリール基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基である。
【0062】
また、R32で示される基のうち隣接する少なくとも2個の基が、それらの結合する炭素原子とともに、単数または複数の芳香族環または脂肪族環を形成していてもよい。この場合、R32により形成される環は、R32が結合する炭素原子を含んで全体として炭素原子数が4〜20であり、芳香族環、脂肪族環を形成しているR32以外のR32は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基またはケイ素含有基である。
【0063】
なお、R32で示される2個の基が、単数または複数の芳香族環または脂肪族環を形成して構成される基にはフルオレニル基が次式のような構造になる態様も含まれる。
【0064】
【化9】
【0065】
R32は、水素原子またはアルキル基であることが好ましく、特に水素原子またはメチル、エチル、プロピルの炭素原子数1〜3の炭化水素基であることが好ましい。このような置換基としてR32を有するフルオレニル基としては、2,7−ジアルキル−フルオレニル基が好適な例として挙げられ、この場合の2,7−ジアルキルのアルキル基としては、炭素原子数1〜5のアルキル基が挙げられる。また、R31とR32は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0066】
R33およびR34は互いに同一でも異なっていてもよく、上記と同様の水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基、炭素原子数7〜40のアルキルアリール基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基である。これらのうち、R33およびR34は、少なくとも一方が炭素原子数1〜3のアルキル基であることが好ましい。
【0067】
X1およびX2は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基もしくは窒素含有基、またはX1とX2とから形成された共役ジエン残基である。
X1とX2とから形成された共役ジエン残基としては、1,3−ブタジエン、2,4−ヘキサジエン、1−フェニル−1,3−ペンタジエン、1,4−ジフェニルブタジエンの残基が好ましく、これらの残基はさらに炭素原子数1〜10の炭化水素基で置換されていてもよい。
【0068】
X1およびX2としては、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基またはイオウ含有基であることが好ましい。
Yは、炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基、炭素原子数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2−、−NR35−、−P(R35)−、−P(O)(R35)−、−BR35−または−AlR35−(ただし、R35は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基)を示す。
【0069】
これらの2価の基のうちでも、−Y−の最短連結部が1個または2個の原子で構成されているものが好ましい。また、R35は、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基である。
Yは、炭素原子数1〜5の2価の炭化水素基、2価のケイ素含有基または2価のゲルマニウム含有基であることが好ましく、2価のケイ素含有基であることがより好ましく、アルキルシリレン、アルキルアリールシリレンまたはアリールシリレンであることが特に好ましい。
【0070】
(メタロセン化合物の例−8)
またメタロセン化合物としては、下記一般式(10)で表されるメタロセン化合物を用いることもできる。
【0071】
【化10】
【0072】
式中、M3は周期表第4族の遷移金属原子であり、具体的にはチタニウム、ジルコニウムまたはハフニウムであり、好ましくはジルコニウムである。
R36は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基である。なお、上記アルキル基およびアルケニル基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0073】
R36はこれらのうち、アルキル基、アリール基または水素原子であることが好ましく、特にメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピルの炭素原子数1〜3の炭化水素基、フェニル、α−ナフチル、β−ナフチルなどのアリール基または水素原子であることが好ましい。
R37は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基、炭素原子数7〜40のアルキルアリール基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基である。なお、上記アルキル基、アリール基、アルケニル基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アルキルアリール基は、ハロゲンが置換していてもよい。
【0074】
R37はこれらのうち、水素原子またはアルキル基であることが好ましく、特に水素原子またはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、tert−ブチルの炭素原子数1〜4の炭化水素基であることが好ましい。また、上記R36とR37は、互いに同一でも異なっていてもよい。
R38およびR39は、いずれか一方が炭素原子数1〜5のアルキル基であり、他方は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基である。
【0075】
これらのうち、R38およびR39は、いずれか一方がメチル、エチル、プロピルなどの炭素原子数1〜3のアルキル基であり、他方は水素原子であることが好ましい。
X1およびX2は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基もしくは窒素含有基、またはX1とX2とから形成された共役ジエン残基である。これらのうち、ハロゲン原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。
【0076】
Yは、炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基、炭素原子数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2−、−NR40−、−P(R40)−、−P(O)(R40)−、−BR40−または−AlR40−(ただし、R40は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基)を示す。
【0077】
これらのうちYは、炭素原子数1〜5の2価の炭化水素基、2価のケイ素含有基または2価のゲルマニウム含有基であることが好ましく、2価のケイ素含有基であることがより好ましく、アルキルシリレン、アルキルアリールシリレンまたはアリールシリレンであることが特に好ましい。
以上に説明したメタロセン化合物は、単独であるいは2種以上組み合せて用いられる。またメタロセン化合物は、炭化水素またはハロゲン化炭化水素などに希釈して用いてもよい。
【0078】
(有機アルミニウムオキシ化合物)
有機アルミニウムオキシ化合物は、公知のアルミノオキサンであってもよく、またベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
このような公知のアルミノオキサンは、具体的には次式で表される。
【0079】
【化11】
【0080】
ここで、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭化水素基であり、好ましくはメチル基、エチル基、特に好ましくはメチル基であり、mは2以上、好ましくは5〜40の整数である。
アルミノオキサンは式(OAl(R’))で表されるアルキルオキシアルミニウム単位および式(OAl(R''))で表されるアルキルオキシアルミニウム単位(ここで、R'およびR''はRと同様の炭化水素基を例示することができ、R'およびR''は相異なる基を表す。)からなる混合アルキルオキシアルミニウム単位から形成されていてもよい。なお有機アルミニウムオキシ化合物は、少量のアルミニウム以外の金属の有機化合物成分を含有していてもよい。
【0081】
(イオン化イオン性化合物)
イオン化イオン性化合物(イオン性イオン化化合物、イオン性化合物と称される場合もある)としては、ルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物を例示することができる。
ルイス酸としては、BR3(Rは、フッ素、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素である。)で表される化合物が挙げられる。ルイス酸の具体的なものとしては、トリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p−トリル)ボロン、トリス(o−トリル)ボロン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ボロンなどが挙げられる。
【0082】
上記イオン性化合物としては、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N−ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などが挙げられる。イオン性化合物としてのトリアルキル置換アンモニウム塩としては、トリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。イオン性化合物としてのジアルキルアンモニウム塩としては、ジ(1−プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0083】
上記イオン性化合物としては、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを挙げることもできる。
上記ボラン化合物としては、デカボラン(9);ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0084】
上記カルボラン化合物としては、4−カルバノナボラン(9)、1,3−ジカルバノナボラン(8)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩などが挙げられる。
このようなイオン化イオン性化合物は、単独であるいは2種以上組み合せて用いられる。また有機アルミニウムオキシ化合物およびイオン化イオン性化合物は、上記担体化合物に担持させて用いることもできる。
【0085】
またメタロセン系触媒を形成するに際しては、有機アルミニウムオキシ化合物および/またはイオン化イオン性化合物とともに、以下のような有機アルミニウム化合物を用いてもよい。
(有機アルミニウム化合物)
必要に応じて用いられる有機アルミニウム化合物としては、分子内に少なくとも1個のAl−炭素結合を有する化合物が使用できる、このような化合物としては、例えば下記一般式(11)で表される有機アルミニウム化合物、
(R6)m Al(OR7)n Hp X4 q …(11)
(式中、R6およびR7は互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子を通常1〜15個、好ましくは1〜4個含む炭化水素基である。X4はハロゲン原子である。mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3を満たす数であって、しかもm+n+p+q=3である。)
下記一般式(12)で表される第1属金属とアルミニウムとの錯アルキル化物などが挙げられる。
【0086】
(M5)Al(R6) …(12)
(式中、M5はLi、NaまたはKであり、R6は上記一般式(11)のR6と同じである。)
(重合)
本発明で用いられるポリエチレンワックスは、上記メタロセン系触媒の存在下に、エチレンを通常液相で単独重合するか、またはエチレンおよびα−オレフィンを共重合させることにより得られる。この際、一般に炭化水素溶媒が用いられるが、α−オレフィンを溶媒として用いてもよい。なお、ここで用いる各モノマーは、前述した通りである。
【0087】
重合方法は、ポリエチレンワックスがヘキサン等の溶媒中に粒子として存在する状態で重合する懸濁重合、溶媒を用いないで重合する気相重合、そして140℃以上の重合温度で、ポリエチレンワックスが溶剤と共存または単独で溶融した状態で重合する溶液重合が可能であり、その中でも溶液重合が経済性と品質の両面で好ましい。
【0088】
重合反応は、バッチ法あるいは連続法いずれの方法で行ってもよい。重合をバッチ法で実施するに際しては、上記の触媒成分は次に説明する濃度下で用いられる。
重合系内のメタロセン化合物の濃度は、通常0.00005〜0.1ミリモル/リットル(重合容積)、好ましくは0.0001〜0.05ミリモル/リットルである。
【0089】
有機アルミニウムオキシ化合物は、重合系内のメタロセン化合物中の遷移金属に対するアルミニウム原子のモル比(Al/遷移金属)で、1〜10000、好ましくは10〜5000の量で供給される。
イオン化イオン性化合物は、重合系内のメタロセン化合物に対するイオン化イオン性化合物のモル比(イオン化イオン性化合物/メタロセン化合物)で表して、0.5〜20、好ましくは1〜10の量で供給される。
【0090】
また有機アルミニウム化合物が用いられる場合には、通常約0〜5ミリモル/リットル(重合容積)、好ましくは約0〜2ミリモル/リットルとなるような量で用いられる。
重合反応は、通常温度が−20〜+150℃、好ましくは0〜120℃、さらに好ましくは0〜100℃で、圧力が0を超えて7.8MPa(80kgf/cm2、ゲージ圧)以下、好ましくは0を超えて4.9MPa(50kgf/cm2、ゲージ圧)以下の条件下に行われる。
【0091】
重合に際して、エチレンおよび必要に応じて用いられるα−オレフィンは、上記した特定組成のポリエチレンワックスが得られるような量割合で重合系に供給される。また重合に際しては、水素などの分子量調節剤を添加することもできる。
このようにして重合させると、生成した重合体は通常これを含む重合液として得られるので、常法により処理すると、上述したようなポリエチレンワックスが得られる。
【0092】
重合反応は、特に(メタロセン化合物の例−6)で示したメタロセン化合物を含む触媒の使用が好ましい。さらに本発明では、エチレン・α-オレフィン共重合体を製造することが好ましい。
(製造方法)
本発明に係るポリエチレンワックス粒子の製造方法では、上述したようなポリエチレンワックスを常圧または加圧下で加熱して溶媒に完全に溶解させた後、この溶液を降温してポリエチレンワックスを析出させる。
【0093】
ポリエチレンワックスを溶解させる溶媒としては、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クメン、サイメン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の鎖状炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン、メチルデカリン等の脂環式炭化水素;ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デナノール等のアルコール;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のエステル;メチルエチルケトン、イソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;などが挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0094】
ポリエチレンワックスを溶解させる溶媒として、上記芳香族炭化水素、鎖状炭化水素または脂環式鎖状炭を用いると、ポリエチレンワックスの高濃度で溶解できるので、生産効率が高くなる。
また本発明では、ポリエチレンワックスを溶解させる溶媒として、上記芳香族炭化水素、鎖状炭鎖状炭、脂環式炭化水素またはアルコールと、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステルまたはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類との混合溶媒を用いることもできる。
【0095】
溶媒として芳香族炭化水素、鎖状炭鎖状炭、脂環式炭化水素またはアルコール類と、エステルまたはケトン類との混合溶媒を用いると得られるポリエチレンワックスの平均粒径が細かくなる。
ポリエチレンワックスを溶媒に溶解するに際し、ポリエチレンワックスは溶媒1(容量)に対し通常0.05〜0.3(重量)、好ましくは0.1〜0.25(重量)の割合で用いられる。
【0096】
ポリエチレンワックスを溶媒に溶解する際には、0.1〜0.5MPa、好ましくは0.1〜0.3MPaに加圧しながら、100〜200℃、好ましくは110〜170℃に加熱することが望ましい。また加熱温度は、ポリエチレンワックスの融点+30℃を超える温度、好ましくは融点+50℃以上の温度であることが望ましい。ポリエチレンワックスを溶媒に溶解する際には、攪拌することが好ましく、ポリエチレンワックスを完全に溶解することが好ましい。
【0097】
本発明では上記のように調製したポリエチレンワックスの溶液を徐冷するが、ポリエチレンワックスが析出を開始する温度より1〜10℃高い温度から析出が終わるまでの温度範囲での降温速度を、0.2〜30℃/時間、好ましくは0.5〜20℃/時間とすることが望ましい。その他の温度範囲では、降温速度を、6〜60℃/時間、好ましくは10〜50℃/時間とすることが好ましい。また、ポリエチレンワックスが析出を開始する温度より1〜10℃高い温度から析出が終わるまでの温度範囲での降温速度は、その他の温度範囲での降温速度の1/2〜1/30であることが好ましい。
【0098】
上記のようにして得られるポリエチレンワックス粒子は、平均粒径が0.1〜10μm、好ましくは0.1〜7μmの範囲にあり、積算重量が10%となるときの粒径(X10)と、積算重量が90%となるときの粒径(X90)との比(X90/X10)が5以下、好ましくは4以下である。
平均粒径および(X90/X10)が上記範囲内にあるポリエチレンワックス粒子は、小粒径で粒度分布が狭いのでインキの耐摩耗材として好適である。
【0099】
なお、平均粒径およびX90、X10は、コーターカウンターを用いて常温で測定した。
【0100】
【発明の効果】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、成形加工性に優れ、得られた成形体はベタつきが少ない。
【0101】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0102】
【合成例1】
(ポリエチレンワックスの合成)
充分に窒素置換した内容積2リットルのステンレス製オートクレーブにヘキサン985mlおよびプロペンを15ml装入し、水素を0.1MPa(ゲージ圧)となるまで導入した。次いで、系内温度を150℃に昇温した後、トリイソブチルアルミニウム 0.3ミリモル、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート 0.004ミリモル、(t−ブチルアミド)ジメチル(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)シランチタンジクロライド(シグマアルドリッチ社製)0.002ミリモルをエチレンで圧入することにより重合を開始した。その後、エチレンのみを連続的に供給することにより全圧を2.9MPaに保ち、150℃で20分間重合を行った。少量のエタノールを系内に添加することにより重合を停止した後、未反応のエチレンおよび1−ブテンをパージした。得られたポリマー溶液を、100℃減圧下で一晩乾燥した。その結果、得られたポリエチレンワックスの物性は、以下のとおりであった。
分子量(GPC);Mn=2,300、Mw=5,900、Mw/Mn=2.6
密度;951kg/m3
融点(DSC法);117℃
【0103】
【合成例2】
ヘキサンを965mlおよびプロペンを35ml装入した以外は合成例1と同様にしてポリエチレンワックスを重合した。その結果、得られたポリエチレンワックスの物性は、以下のとおりであった。
分子量(GPC);Mn=2,200、Mw=5,900、Mw/Mn=2.7
密度;930kg/m3
融点(DSC法);104℃
【0104】
【実施例1】
(ポリエチレンワックス粒子の製造)
1Lのガラス製オートクレーブに500mlのトルエンと合成例1のワックスを75g仕込み、150℃まで加熱して均一溶液を得た。次いで、攪拌しながら110℃まで降温速度60℃/時間で冷却した。溶液温度が90℃に達したところで、降温速度を6℃/時間に変えて冷却した。溶液温度が70℃まで下がった後、降温速度を60℃/時間に戻して室温まで冷却した。
【0105】
得られたポリエチレンワックス粒子の粒径を測定した結果を表1に示す。
【0106】
【実施例2】
(ポリエチレンワックス粒子の製造)
1Lのガラス製オートクレーブに250mlの1−オクタノール、250mlのn−ブチルアセテートおよび合成例1のワックスを50g仕込み、150℃まで加熱して均一溶液を得た。次いで、攪拌しながら110℃まで降温速度60℃/時間で冷却した。溶液温度が100℃に達したところで、降温速度を10℃/時間に変えて冷却した。溶液温度が80℃まで下がった後、降温速度を60℃/時間に戻して室温まで冷却した。
【0107】
得られたワックス粒子の粒径を測定した結果を表1に示す。
【0108】
【実施例3】
(ポリエチレンワックス粒子の製造)
1Lのガラス製オートクレーブに500mlのトルエンと合成例2のワックスを75g仕込み、150℃まで加熱して均一溶液を得た。次いで、攪拌しながら110℃まで降温速度60℃/時間で冷却した。溶液温度が95℃に達したところで、降温速度を6℃/時間に変えて冷却した。溶液温度が75℃まで下がった後、降温速度を60℃/時間に戻して室温まで冷却した。
【0109】
得られたポリエチレンワックス粒子の粒径を測定した結果を表1に示す。
【0110】
【合成例3】
(触媒の調製)
内容積1.5リットルのガラス製オートクレーブ内で、市販の無水塩化マグネシウム 25gをヘキサン 500mlに懸濁させた。これを30℃に保ち攪拌しながらエタノール92mlを1時間で滴下し、さらに1時間反応させた。反応終了後、ジエチルアルミニウムモノクロリド 93mlを1時間で滴下し、さらに1時間反応させた。反応終了後、四塩化チタンを90ml滴下し、反応容器を80℃に昇温して1時間反応させた。
【0111】
反応終了後、固体部をデカンテーションにより遊離のチタンが検出されなくなるまでヘキサン洗浄した。このものをヘキサン懸濁液としてチタン濃度を滴定により定量し、以下の実験に供した。
(ポリエチレンワックスの合成)
充分に窒素置換した内容責2リットルのステンレス製オートクレーブにヘキサン 960mlおよびプロペン 40mlを装入し、水素を0.25MPa(ゲージ圧)となるまで導入した。次いで、系内の温度を170℃に昇温した後、トリエチルアルミニウム 0.1ミリモル、エチルアルミニウムセスキクロライド 0.4ミリモル、前記で得た触媒をチタン成分原子換算で0.008ミリモルをエチレンで圧入することにより重合を開始した。その後、エチレンのみを連続的に供給することにより全圧を3.9MPaに保ち、170℃で40分間重合を行った。少量のエタノールを系内に添加することにより重合を停止した後、未反応のエチレンおよび1−ブテンをパージした。得られたポリマー溶液を、100℃減圧下で一晩乾燥した。得られたワックスの物性を評価して次の値を得た。
分子量(GPC);Mn=2,000、Mw=6,000、Mw/Mn=3.0
密度;930kg/m3
融点(DSC法);112℃
【比較例1】
(ポリエチレンワックス粒子の製造)
上記のポリエチレンワックスを用いたこと以外は実施例3と同様にしてポリエチレンワックス粒子を製造した。その結果を表1に示す。
【0112】
【表1】
Claims (7)
- メタロセン系触媒を用いて得られたエチレン単独重合体またはエチレン・α−オレフィン共重合体であって、密度勾配管法で測定した密度が870〜950kg/m3の範囲にあり、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が70〜125℃の範囲にあり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量(Mn)が800〜7,000の範囲にあり、Mw/Mn(Mw:重量平均分子量)が3.0以下であるポリエチレンワックスを、溶媒に溶解させた後、この溶液を徐冷してポリエチレンワックスを析出させるに際し、100〜90℃から80〜70℃までの温度範囲での降温速度を他の温度範囲での降温速度の1/6〜1/30とすることを特徴とするポリエチレンワックス粒子の製造方法。
- 上記ポリエチレンワックスが、エチレンと炭素原子数3〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとの共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のポリエチレンワックス粒子の製造方法。
- 上記溶媒が、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、鎖状炭化水素、アルコール、エステルもしくはケトンまたはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエチレンワックス粒子の製造方法。
- 上記溶媒が、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、鎖状炭化水素またはアルコールと、ケトンまたはエステルとの混合溶媒であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエチレンワックス粒子の製造方法。
- 100〜90℃から80〜70℃までの温度範囲での降温速度を0.2〜10℃/時間とし、他の温度範囲での降温速度を6〜60℃/時間とすることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエチレンワックスの製造方法。
- ポリエチレンワックスを溶媒に溶解する際に、溶媒1(容量)に対しポリエチレンワックスを0.05〜0.3(重量)の割合で用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエチレンワックスの製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリエチレンワックスの製造方法により得られ、平均粒径が0.1〜10μmの範囲にあり、積算重量が10%となるときの粒径(X10)と、積算重量が90%となるときの粒径(X90)との比(X90/X10)が5.0以下であることを特徴とするポリエチレンワックス粒子。
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