JP3569052B2 - 分子量分布が広いポリオレフィンの製造方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、分子量分布が広く、流動特性等の物性に優れたポリオレフィンの製造方法に関するものである。
さらに詳しくは、溶融弾性(メルトテンション、ダイスウェル比等)、流動特性(N−値、臨界せん断速度等)および機械的特性(引張衝撃値、耐環境応力亀裂性等)などの各種物性のバランスに優れた、分子量分布が広いポリオレフィンの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリオレフィンの工業的製造は連続生産により行われており、回分式の重合は工業的生産において全く省みられていない。
一方、例えばポリエチレンの流動特性を改良するために、分子量の異なる複数のポリエチレンを混合して分子量分布を広げることが行われている。具体的な方法としては、ポリマーブレンド法や複数個の重合器を用いる多段重合法などがあるが、機械的混合によるポリマーブレンド法は均質混合性に欠けるため、得られたポリエチレン混合物の物性が劣るので、連続多段重合法が好ましいとされている。
すなわち、従来は別個の2基の反応器で重合を行って2成分を製造することにより分子量分布を広げる連続2段重合法が多数提案されている。例えば、特公昭60−39082号公報、特公昭60−39083号公報、特公昭60−39084号公報、特公昭60−39085号公報、特公昭46−11349号公報、特公昭48−42716号公報、特開昭51−47079号公報、特開昭52−19788号公報、特開昭56−010506号公報、特開昭59−193913号公報などが挙げられる。
また、別個の反応器を3基用いて重合を行い、3成分系とすることにより分子量分布を広げる連続3段重合法も提案されている。例えば、特公昭59−10724号公報、特公昭46−11349号公報、特公昭48−42716号公報、特開昭62−25109号公報、特開昭62−25105号公報、特開昭62−25106号公報、特開昭62−25107号公報、特開昭62−25108号公報、特開昭59−227913号公報、特開昭61−130310号公報、特開昭61−14207号公報、特開平2−235947号公報、特開昭57−141409号公報などが挙げられる。
【0003】
上記のように複数基の重合器を用いる連続重合法によると、分子量分布を一定の範囲に広げることは可能であるが、分子量分布がある程度以上広い場合には、高分子量成分と低分子量成分の粘度差が大きくなりすぎ、成形の際に押出機内で混練不良が生じ、衝撃強度などの機械的特性が低下したり、未溶融ゲルが発生する等、物性および加工性などに問題点が発生することがある。
この原因は、得られたポリマー粒子の不均一性にある。すなわち、複数基の重合器を用いる上記多段重合法は、機械的なポリマーブレンド法に比べて、一般に得られたポリマーの均一性に優れているが、必ずしも十分ではない。
【0004】
ここで、不均一系固体遷移金属触媒により、オレフィン、例えばエチレンを重合する場合を想定する。重合活性点は、固体触媒粒子の表面上に存在するが、粒子表面の全面にわたって存在するのではなく、表面上の極く小部分にしか存在しないと考えられている。
このように重合活性点が分布する固体触媒粒子を用いて、複数基の重合器により連続的に重合する場合、最初の重合器内では一個の固体触媒粒子上の全ての活性点において、ほぼ同一の性状を有するポリマーが生成する。そして、次の重合器では別の重合条件が設定されているので、最初のポリマーとは異なる物性のポリマーが、全ての重合活性点から設定された別の条件に従って生成する。このような重合挙動から、複数基の重合器を用いる連続重合においては、通常多層構造のポリマー粒子が得られると考えられている。ただし、実際には活性金属種から成長したポリマーの活性金属/ポリマー間にエチレンなどのモノマーが侵入しながらポリマー鎖が成長し重合が進行するとされているので、ポリマー粒子が単純な多層構造を形成しているとはいい難い。しかし、いかなる形態にせよ、一個の触媒粒子から生成するポリマー粒子の内部では、各重合器において生成した重合体がそれぞれブロックを形成していると考えられる。
【0005】
最終的な樹脂製品は、このような各粒子をペレタイザイーやホモジナイザー等による機械的な混合によりペレット化した後、各種成形機により成形することにより得られる。
重合器で得られるポリマー粒子の径は最大数mm程度の大きさであり、その粒子の内部において互いに異なるポリマーがブロックを形成して局在する領域はさらに小さいため、このような粒子を機械的に溶融混合する場合、ある程度までの混合は可能であるが、理想的な完全に均一な状態まで混合することはきわめて困難であると予想される。従って、重合器で得られるポリマー粒子内における異なるポリマーの分散状態は、最終製品になんらかの影響を及ぼさざるを得ない。
得られたポリマー粒子の内部において、生成したポリマーの分散がより微細な領域まで均一であるほど、それらを溶融混合して得られる樹脂製品の物性が良好であると考えられる。上記のように、複数基の重合器を用いる多段重合法では、各ポリマー粒子の内部において、各重合器で生成した異なるポリマーがそれぞれ一定の領域を占めてブロックを形成しているので、粒子内の均一性は十分でなく、ポリマー粒子を機械的に混合しても均質化には限界があるため、その改善が望まれている。
【0006】
複数の重合器内で分子量の異なるポリマーを製造することにより分子量分布が広い樹脂製品を得ようとする多段重合法の場合には、分子量の差による溶融粘度の相違により、ポリマー粒子の溶融混合がさらに不十分になり易く、ポリマー粒子内における生成ポリマーの分散が不均一になるため物性低下が著しい。
そのほか、重合器を複数個必要とするため、多額の設備投資が必要であるばかりでなく、重合工程が複雑かつ煩雑であり、各反応器における重合系の制御および工程管理が極めて難しいという問題点も存在する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の点に鑑み、均質で溶融弾性(メルトテンション、ダイスウェル比等)、流動特性(N−値、臨界せん断速度等)、機械的特性(引張衝撃値、耐環境応力亀裂性等)などの各種物性のバランスに優れた、分子量分布が広いポリオレフィンを簡便かつ容易に製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的に沿って鋭意検討した結果、同一の重合器に送入する水素の供給量を、間欠的にあるいは周期的に変えることにより、同一触媒粒子の表面に異なる分子量を有するポリオレフィンを生成させて、分子量分布が広く、かつ均質なポリオレフィンを連続的に製造し得ることを見出して本発明に到達した。
すなわち本発明の第1は、同一重合器内の反応相における水素濃度を、重合器内における平均滞留時間の1/2未満の時間間隔で、平均滞留時間内に3段階以上変化させながら、遷移金属触媒成分[A]と、有機金属化合物(B−1)および前記遷移金属触媒成分[A]と反応してイオン対を形成する化合物(B−2)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物[B]とからなるオレフィン重合用触媒により、連続的にオレフィンを重合することを特徴とする分子量分布が広いポリオレフィンの製造方法に関する。
本発明の第2は、同一重合器内に送入する水素ガス供給量を、重合器内における平均滞留時間の1/2未満の時間間隔で、平均滞留時間内に3段階以上変化させながら、遷移金属触媒成分[A]と、有機金属化合物(B−1)および前記遷移金属触媒成分[A]と反応してイオン対を形成する化合物(B−2)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物[B]とからなるオレフィン重合用触媒により、連続的にオレフィンを重合することを特徴とする分子量分布が広いポリオレフィンの製造方法に関する。
本発明の第3は、同一重合器内の反応相における水素濃度を、重合器内における平均滞留時間の1/2未満の時間間隔で、平均滞留時間内に3段階以上変化させながら、固体遷移金属触媒成分と有機金属化合物とを触媒として連続的にオレフィンを重合することを特徴とする分子量分布が広いポリオレフィンの製造方法に関する。
また本発明の第4の発明は、同一重合器内に送入する水素ガス供給量を、重合器内における平均滞留時間の1/2未満の時間間隔で、平均滞留時間内に3段階以上変化させながら、固体遷移金属触媒成分と有機金属化合物とを触媒として連続的にオレフィンを重合することを特徴とする分子量分布が広いポリオレフィンの製造方法に関する。
さらに本発明の第5の発明は、上記第1から第4の発明のいずれかにおいて、水素濃度または水素ガス供給量の変化を、不連続的に行うことを特徴とする分子量分布が広いポリオレフィンの製造方法に関する。
【0009】
前述のように、触媒表面の極く小部分にしか重合活性点が存在しない場合には、各重合活性点を中心として異なる分子量のポリオレフィン、例えばポリエチレンがそれぞれブロックを形成するが、本発明の方法によれば、ペレタイザーなどにより機械的に溶融混合して得られる樹脂製品の分子量分布が広いにもかかわらず、均一なものが得られる。その理由は明かでないが、異なる分子量のポリオレフィンからなる各ブロックが比較的小さいために、ポリマー粒子内における分子量の異なるポリマーの分散状態がより微細な領域まで均一になることによると推定される。
【0010】
以下、さらに本発明を詳述する。
本発明においては、遷移金属触媒成分[A]と、有機金属化合物(B−1)および前記遷移金属触媒成分[A]と反応してイオン対を形成する化合物(B−2)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物[B]とからなるオレフィン重合用触媒により連続的にオレフィンを重合する。
遷移金属触媒成分[A]としては、周期律表第IV族〜第VIII族、好ましくは第IV族〜第VI族の化合物を使用することができ、具体例としては、Ti、Zr、Hf、V、Cr、Mo等の化合物が挙げられる。この [A] にはシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含むIVB族の遷移金属化合物も含まれる。
上記遷移金属触媒成分[A]と組み合わせて用いられる化合物[B]は、有機金属化合物(B−1)および前記遷移金属触媒成分[A]と反応してイオン対を形成する化合物(B−2)から選ばれる。これらは単独でまたは混合して用いることができる。
本発明においては、上記の構成を有し、水素がオレフィン重合の連鎖移動作用を示すようなオレフィン重合用触媒であればいずれも使用することができる。
特に不均一系触媒の場合には、重合活性点が局在しているため、本発明の効果が顕著に発揮される。
【0011】
まず、[A] 遷移金属触媒成分のうち、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む遷移金属化合物について説明する。
本発明で用いるシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IVB族の遷移金属化合物は、特に限定されるものではなく、下記一般式[I]で示される。
MLx ・ ・ ・ ・ ・ ・[I]
上式中、Mは周期律表第IVB族から選ばれる遷移金属原子であり、具体的には、ジルコニウム、チタンまたはハフニウム、好ましくはジルコニウムである。Lは遷移金属に配位する配位子であり、その少なくとも1個はシクロペンタジエニル骨格を有し、その他のLは、炭素数1〜12の炭化水素基、アルコキシ基、アリーロキシ基、トリアルキルシリル基、SO3R基(ただし、Rはハロゲンなどの置換基を有していてもよい炭素数1〜8の炭化水素基)、ハロゲン原子または水素原子であり、xは遷移金属の原子価である。
【0012】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては、シクロペンタジエニル基のほか、例えばメチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、メチルエチルシクロペンタジエニル基、プロピルシクロペンタジエニル基、メチルプロピルシクロペンタジエニル基、ブチルシクロペンタジエニル基、メチルブチルシクロペンタジエニル基、ヘキシルシクロペンタジエニル基などのアルキル置換シクロペンタジエニル基あるいはインデニル基、4,5,6,7−テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基などを例示することができる。これらの基は、トリアルキルシリル基、ハロゲン原子などで置換されていてもよい。
【0013】
これらのシクロペンタジエニル骨格を有する配位子の中では、アルキル置換シクロペンタジエニル基が特に好ましい。また、上記一般式[I]で表される化合物がシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を2個以上含む場合には、そのうち2個のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子が、エチレン、プロピレンなどのアルキレン基、イソプロピリデン、ジフェニルメチレンなどの置換アルキレン基、シリレン基、またはジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルフェニルシリレン基などの置換シリレン基などを介して相互に結合していてもよい。
【0014】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子Lとしては、具体的に下記のものが挙げられる。
すなわち、炭素数1〜12の炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられ、より具体的には、アルキル基としてメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基など、シクロアルキル基としてシクロペンチル基、シクロヘキシル基など、アリール基としてフェニル基、トリル基などが例示され、アラルキル基としてベンジル基、ネオフィル基などが例示される。
また、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが例示され、アリーロキシ基としてはフェノキシ基などが挙げられ、ハロゲンとしてフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などを例示することができる。
SO3Rで表される配位子としては、p−トルエンスルホナート基、メタンスルホナート基、トリフルオロメタンスルホナート基などが例示される。
【0015】
上記のようにシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を少なくとも1個含む遷移金属化合物は、例えば遷移金属の原子価が4である場合、下記一般式[II]で示される。
(R2)k(R3)l(R4)m(R5)nM ・ ・ ・ ・ ・ ・[II]
上式中、Mは前記遷移金属原子であり、R2をシクロペンタジエニル骨格を有する基(配位子)とすれば、R3、R4およびR5は、前記の通りシクロペンタジエニル骨格を有する基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、トリアルキルシリル基、SO3R基、ハロゲン原子または水素原子であり、kは1以上の整数であり、k+l+m+n=4である。
本発明では、上記一般式[II]において、R2からR5の基のうち2個(例えばR2およびR3)がシクロペンタジエニル骨格を有する基であるメタロセン化合物が好ましく用いられる。この場合には、前記のように、2個のシクロペンタジエニル骨格を有する基が各種の2価の基を介して結合していてもよい。
【0016】
以下に、遷移金属がジルコニウムであるメタロセン化合物について具体的な例を示す。
すなわち、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(インデニル)ジルコニウムジブロミド、ビス(インデニル)ジルコニウムビス(p−トルエンスルホナト)、ビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジブロミド、エチレンビス(インデニル)ジメチルジルコニウム、エチレンビス(インデニル)ジフェニルジルコニウム、エチレンビス(インデニル)メチルジルコニウムモノクロリド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(メタンスルホナト)、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(p−トルエンスルホナト)、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジブロミド、ビス(シクロペンタジエニル)メチルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)エチルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)シクロヘキシルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)フェニルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ベンジルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノクロリドモノハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)メチルジルコニウムモノハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジフェニルジルコニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジベンジルジルコニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムメトキシクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムエトキシクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(メタンスルホナト)、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(p−トルエンスルホナト)、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムエトキシクロリド、ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(メチルエチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(メチルプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(メタンスルホナト)、ビス(トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ヘキシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
なお上記の例示において、シクロペンタジエニル骨格を有する基が2個存在する二置換体は1,2−および1,3−置換体を含み、三置換体は1,2,3−および1,2,4−置換体を含む。またプロピル、ブチルなどのアルキル基は、n−、 iso−、sec−、tert−などの異性体を含む。
【0017】
なお、上記のジルコニウム化合物において、ジルコニウムをチタンまたはハフニウムに置換えたものも用いることができる。
これらの中でも特にビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド等が好ましい。
【0018】
[B](B−1)の有機金属化合物としては、有機アルミニウム化合物と有機アルミニウムオキシ化合物が挙げられる。
まず、上記のうち有機アルミニウムオキシ化合物について詳述する。
本発明において用いる有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0019】
上記アルミノキサンは、例えば下記の方法によって製造することができる。
(1)吸着水を有する化合物あるいは結晶水を有する塩類、例えば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第一セリウム水和物などを炭化水素媒体に懸濁させて得た懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して反応させ、炭化水素の溶液として回収する方法。
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、水や氷あるいは水蒸気を直接作用させて炭化水素の溶液として回収する方法。
(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
なお、アルミノキサンは少量の有機金属化合物成分を含有していてもよい。また回収された上記のアルミノキサンの溶液から溶媒あるいは未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、アルミノキサンを溶媒に再溶解してもよい。
【0020】
アルミノキサンを調製する際に用いる有機アルミニウム化合物としては、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−sec−ブチルアルミニウム、トリ−tert−ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;ジエチルアルミニウムフェノキシドなどのジアルキルアルミニウムアリーロキシドなどが挙げられる。
これらのうち、トリアルキルアルミニウムおよびトリシクロアルキルアルミニウムが特に好ましい。
上記の有機アルミニウム化合物は、単独であるいは組合せて用いることができる。また、これらの有機アルミニウム化合物は、(B−1)の有機金属化合物としてそのまま用いることもできる。
【0021】
アルミノキサンの溶液を得る際に用いる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ガソリン、灯油、軽油などの石油留分、あるいは上記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のハロゲン化物、特に塩素化物、臭素化物などの炭化水素溶媒が挙げられる。その他、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を用いることもできる。これらの溶媒のうち特に芳香族炭化水素が好ましい。
【0022】
本発明において用いる遷移金属触媒成分 [A] と反応してイオン対を形成する化合物(B−2)としては、特表平1−501950号公報、特表平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、米国特許第547,718号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物を挙げることができる。
なお、以下に述べる成分(B−2)は、2種以上混合して用いることができる。
【0023】
上記ルイス酸としては、マグネシウム含有ルイス酸、アルミニウム含有ルイス酸、ホウ素含有ルイス酸などが挙げられ、こられのうちではホウ素含有ルイス酸が好ましい。ホウ素原子を含有するルイス酸は、下記一般式[III]で表すことができる。
B(R6)(R7)(R8) ・ ・ ・ ・ ・ ・[III]
上式中、R6、R7およびR8はそれぞれ、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有してもよいフェニル基、またはフッ素原子を示す。上記一般式で表される化合物として具体的には、トリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p−トリル)ボロン、トリス(o−トリル)ボロン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ボロンなどが挙げられる。これらのうちではトリス(ペンタフルオロフェニル)ボロンが特に好ましい。
【0024】
本発明において成分(B−2)として用いられるイオン性化合物とは、カチオンとアニオンとからなる塩である。アニオンは、前記遷移金属触媒成分[A]と反応することにより遷移金属触媒成分をカチオン化し、イオン対を形成して遷移金属カチオン種を安定化する作用を示す。そのようなアニオンとしては、有機ホウ素化合物アニオン、有機ヒ素化合物アニオン、有機アルミニウム化合物アニオンなどがあり、比較的嵩高で遷移金属カチオン種を安定化するものが好ましい。
カチオンとしては、金属カチオン、有機金属カチオン、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどが挙げられる。さらに具体的には、トリフェニルカルベニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチルアンモニウムカチオン、フェロセニウムカチオンなどが挙げられる。
【0025】
本発明において使用するイオン性化合物としては、アニオンとしてホウ素化合物を含有するものが好ましい。具体的には、トリアルキル置換アンモニウム塩を含むものとしては、例えばトリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p−トリル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(o−トリル)ホウ素、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p−ジメチルフェニル)ホウ素、トリブチルアンモニウムテトラ(m,m−ジメチルフェニル)ホウ素、トリブチルアンモニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(o−トリル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(4−フルオロフェニル)ホウ素などが挙げられ、N,N−ジアルキルアニリニウム塩を含むものとしては、例えばN,N−ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N−ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられ、ジアルキルアンモニウム塩を含むものとしては、例えばジ(n−プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられ、トリアリールホスホニウム塩を含むものとしては、例えばトリフェニルホスホニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
さらに、本発明においては、ホウ素原子を含有するイオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなども挙げることができる。
【0026】
また以下のようなイオン性化合物も例示することができる。なお、以下に列挙するイオン性化合物において、カチオンはトリ(n−ブチル)アンモニウムであるが、これに限定されるものではない(以下同様)。
すなわち、ビス[トリ(n−ブチル)アンモニウム]ノナボレート、ビス[トリ(n−ブチル)アンモニウム]デカボレート、ビス[トリ(n−ブチル)アンモニウム]ウンデカボレート、ビス[トリ(n−ブチル)アンモニウム]ドデカボレート、ビス[トリ(n−ブチル)アンモニウム]デカクロロデカボレート、ビス[トリ(n−ブチル)アンモニウム]ドデカクロロドデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム−1−カルバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム−1−カルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム−1−カルバドデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム−1−トリメチルシリル−1−カルバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムブロモ−1−カルバドデカボレートなどを挙げることができる。
【0027】
さらに、本発明においては、成分(B−2)として、ボラン化合物およびカルボラン化合物を挙げることができる。
まず、ボランおよびカルボラン錯化合物、ならびにカルボランアニオンを含む塩が用いられ、例えばデカボラン(14)、7,8−ジカルバウンデカボラン (13)、2,7−ジカルバウンデカボラン(13)、ウンデカハイドライド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボラン、ドデカハイドライド−11−メチル−2,7−ジカルバウンデカボラン、トリ(n−ブチル)アンモニウム−6−カルバデカボレート(14)、トリ(n−ブチル)アンモニウム−6−カルバデカボレート(12)、トリ(n−ブチル)アンモニウム−7−カルバウンデカボレート(13)、トリ(n−ブチル)アンモニウム−7,8−ジカルバウンデカボレート(12)、トリ(n−ブチル)アンモニウム−2,9−ジカルバウンデカボレート(12)、トリ(n−ブチル)アンモニウムドデカハイドライド−8−メチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−8−エチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−8−ブチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−8−アリル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−9−トリメチルシリル−7,8−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−4,6−ジブロモ−7−カルバウンデカボレートなどが挙げられる。
また、カルボランおよびカルボランの塩が用いられ、4−カルバノナボラン(14)、1,3−ジカルバノナボラン(13)、6,9−ジカルバデカボラン(14)、ドデカハイドライド−1−フェニル−1,3−ジカルバノナボラン、ドデカハイドライド−1−メチル−1,3−ジカルバノナボラン、ウンデカハイドライド−1,3−ジメチル−1,3−ジカルバノナボランなどを例示することができる。
【0028】
さらに以下のような化合物も例示することができる。
すなわち、金属カルボランの塩および金属ボランアニオンとして、例えばトリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド−1,3−ジカルバノナボレート)コバルテート(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)フェレート(鉄酸塩)(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)コバルテート(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)ニッケレート (III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)キュプレート(銅酸塩)(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)アウレート(金酸塩)(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボレート)フェレート(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボレート)クロメート(クロム酸塩)(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(トリブロモオクタハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)コバルテート(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ドデカハイドライドジカルバドデカボレート)コバルテート(III)、ビス[トリ(n−ブチル)アンモニウム]ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケレート(III)、トリス[トリ(n−ブチル)アンモニウム]ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)クロメート(III)、ビス[トリ(n−ブチル)アンモニウム]ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)マンガネート(IV)、ビス[トリ(n−ブチル)アンモニウム]ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)コバルテート(III)、ビス[トリ(n−ブチル)アンモニウム]ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)ニッケレート(IV)などが挙げられる。
【0029】
本発明で用いるオレフィン重合触媒の好ましい例としては、遷移金属触媒成分[A]としてのTiおよび/またはVの化合物と、有機金属化合物(B−1)としての有機アルミニウム化合物とからなる固体チーグラー触媒がある。その中でも特に好ましいオレフィン重合用の固体遷移金属触媒成分としては、少なくともチタンおよび/またはバナジウムならびにマグネシウムを含有するものが挙げられる。次に、この固体遷移金属触媒成分について説明する。
【0030】
上記のように、オレフィン重合用触媒としては、従来公知のチーグラー系触媒に用いられるチタンおよびマグネシウムを含有する固体触媒成分、バナジウムおよびマグネシウムを含有する固体触媒成分、またはチタン、バナジウムおよびマグネシウムを含有する固体触媒成分等を使用することができる。
例えば金属マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム等、また珪素、アルミニウム、カルシウムから選ばれる元素とマグネシウムとを含有する複塩、複酸化物、炭酸塩、塩化物あるいは水酸化物等、さらにこれらの無機固体化合物を含酸素化合物、含硫黄化合物、芳香族炭化水素、ハロゲン含有物質で処理しまたは反応させたもの等のマグネシウムを含む無機固体化合物に、チタン化合物および/またはバナジウム化合物を公知の方法により担持させたものが挙げられる。
【0031】
上記含酸素化合物としては、例えば水;ポリシロキサン;アルコール、フェノール、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、エステル、酸アミド等の有機含酸素化合物;金属アルコキシド;金属のオキシ塩化物等の無機含酸素化合物を例示することができる。含硫黄化合物としては、チオール、チオエーテル等の有機硫黄化合物あるいは二酸化硫黄、三酸化硫黄、硫酸等の無機硫黄化合物が挙げられる。また芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、アントラセン、フェナントレン等の各種単環または多環芳香族炭化水素を例示することができる。ハロゲン含有物質としては、塩素、塩化水素、金属塩化物、有機ハロゲン化物等が挙げられる。
【0032】
前記のチタン化合物としては、チタンのハロゲン化物、アルコキシハロゲン化物、アルコキシド、ハロゲン化酸化物等を挙げることができる。これらのうち、4価のチタン化合物と3価のチタン化合物が好適であり、4価のチタン化合物としては、具体的には一般式Ti(OR)nX4−n(ここでRは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基またはアラルキル基等の炭化水素残基をを示し、Xはハロゲン元素を示す。nは0≦n≦4の範囲の数である。)で示されるものが好ましく、具体的には四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン、モノメトキシトリクロロチタン、ジメトキシジクロロチタン、トリメトキシモノクロロチタン、テトラメトキシチタン、モノエトキシトリクロロチタン、ジエトキシジクロロチタン、トリエトキシモノクロロチタン、テトラエトキシチタン、モノイソプロポキシトリクロロチタン、ジイソプロポキシジクロロチタン、トリイソプロポキシモノクロロチタン、テトライソプロポキシチタン、モノブトキシトリクロロチタン、ジブトキシジクロロチタン、トリブトキシモノクロロチタン、テトラブトキシチタン、モノペントキシトリクロロチタン、モノフェノキシトリクロロチタン、ジフェノキシジクロロチタン、トリフェノキシモノクロロチタン、テトラフェノキシチタン等を挙げることができる。
3価のチタン化合物としては、一般式Ti(OR)mX4−m(ここでRは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基またはアラルキル基等の炭化水素残基をを示し、Xはハロゲン元素を示す。mは0<m<4の範囲の数である。)で示される4価のハロゲン化アルコキシチタンを、水素、アルミニウム、チタンあるいは周期律表第IからIII族金属の有機金属化合物により還元して得られる3価のチタン化合物が挙げられる。
【0033】
上記のチタン化合物のうち、4価のチタン化合物が特に好ましい。
これらの触媒の具体的なものとしては、例えばMgO−RX−TiCl4系(特公昭51−3514号公報)、Mg−SiCl4−ROH−TiCl4系(特公昭50−23864号公報)、MgCl2−Al(OR)3−TiCl4系(特公昭51−152号公報、特公昭52−15111号公報)、MgCl2−SiCl4−ROH−TiCl4系(特開昭49−106581号公報)、Mg(OOCR)2−Al(OR)3−TiCl4系(特公昭52−11710号公報)、Mg−POCl3−TiCl4系(特公昭51−153号公報)、MgCl2−AlOCl−TiCl4系(特公昭54−15316号公報)、MgCl2−Al(OR)nX3−n−Si(OR’)mX4−m−TiCl4系(特開昭56−95909号公報)、MgCl2−ROH−シロキサン−Ti(OR)mX4−m−TiCl4系(特願平5−284095号公報)、MgCl2−ROH−界面活性剤−Ti(OR)mX4−m−TiCl4系(特願平5−284096号公報)等の固体触媒成分(前記式中において、RおよびR’は有機残基、Xはハロゲン原子を示す。)に有機アルミニウム化合物を組み合わせたものが好ましい例として挙げられる。
【0034】
前記バナジウム化合物としては、四塩化バナジウム、四臭化バナジウム、四ヨウ化バナジウム等の4価のバナジウム化合物、オキシ三塩化バナジウム、オルソアルキルバナデート等の5価のバナジウム化合物、三塩化バナジウム、バナジウムトリエトキシド等の3価のバナジウム化合物などが挙げられる。
バナジウム化合物は、単独であるいはチタン化合物と併用して用いられる。
【0035】
他の触媒系の例としては、固体触媒成分としていわゆるグリニャール化合物などの有機マグネシウム化合物とチタン化合物および/またはバナジウム化合物との反応生成物を用い、これに有機アルミニウム化合物を組み合わせた触媒系を例示することができる。有機マグネシウム化合物としては、例えば一般式RMgX、R2Mg、RMg(OR) 等で示されるマグネシウム化合物(ここで、Rは炭素数1〜20の有機残基、Xはハロゲン原子を示す。)およびこれらのエーテル錯体、またはこれらの有機マグネシウム化合物に、さらに他の有機金属化合物、例えば有機ナトリウム、有機リチウム、有機カリウム、有機ホウ素、有機カルシウム、有機亜鉛等を加えて変性したものを用いることができる。
上記触媒系の具体的な例としては、例えば、RMgX−TiCl4系(特公昭50−39470号公報)、RMgX−フェノール−TiCl4系(特公昭54−12953号公報)、RMgX−ハロゲン化フェノール−TiCl4系(特公昭54−12954号公報)、RMgX−CO2−TiCl4系(特開昭57−73009号公報)等の固体触媒成分に有機アルミニウム化合物を組み合わせたものを挙げることができる。
【0036】
また他の触媒系の例としては、固体触媒成分としてSiO2、Al2O3およびSiO2・Al2O3等の無機酸化物と前記のチタンおよび/またはバナジウムならびにマグネシウムを含有する固体触媒成分とを接触させて得られる固体物質を用い、これに有機アルミニウム化合物を組み合わせたものを例示することができる。無機酸化物としては上記SiO2、Al2O3およびSiO2・Al2O3等のほかにCaO、B2O3、SnO2等を挙げることができ、またこれらの酸化物の複酸化物も使用することができる。これら各種の無機酸化物とチタンおよび/またはバナジウムならびにマグネシウムを含有する固体触媒とを接触させるためには公知の方法を採用することができる。すなわち、不活性炭化水素、アルコール類、フェノール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、アミン類、ニトリル類またはこれらの混合物などの有機溶媒の存在下または不存在下で、温度20から400℃、好ましくは50〜300℃において通常5分〜20時間反応させる方法が用いられる。
上記触媒系の具体的な例としては、例えばSiO2−ROH−MgCl2−TiCl4(特開昭56−47407号公報)、SiO2−ROR’−MgO−AlCl3−Ti Cl4(特開昭57−187305号公報)、SiO2−MgCl2−Al(OR)3−TiCl4−Si(OR’)4(特開昭58−21405号公報)、SiO2−TiCl4−RnAlCl3−n−MgCl2−Al(OR’)nCl3−n(特開平3−35004号公報)、SiO2−TiCl4−RnAlCl3−n−MgCl2−Al(OR’)nCl3−n−Si(OR’’)mCl4−m(特開平3−64306号公報)、SiO2−MgCl2−Al(OR’)nCl3−n−Ti(OR’’)4−RnAlCl3−n(特開平3−153707号公報)、SiO2− MgCl2−Al(OR’)nCl3−n−Ti(OR’’)nCl4−n−RnAlCl3−n(特開平3−18504号公報)、SiO2−TiCl4−RnAlCl3−n−MgCl2−Al(OR’)n Cl3−n−R’’mSi(OR’’’)nX4−(m+n)(特開平4−261408号公報)、SiO2−RnMgX2−n−Al(OR’)nCl3−n−Ti(OR’’)nCl4−n−R’’’OH−Rn AlX3−n(特開平5−117316号公報)、SiO2−MgCl2−Al(OR’)n Cl3−n−Ti(OR’’)nCl4−n−R’’’OH−RnAlCl3−n(特開平5−194634号公報)(前記式中においてR、R’、R’’、R’’’は炭化水素残基を示す。)等に有機アルミニウム化合物を組み合わせたものを挙げることができる。
【0037】
これらの触媒系において、チタン化合物および/またはバナジウム化合物を有機カルボン酸エステルとの付加物として使用することもでき、また前記のマグネシウムを含む無機固体化合物を有機カルボン酸エステルと接触処理した後使用することもできる。さらに、有機アルミニウム化合物を有機カルボン酸エステルとの付加物として使用することもできる。また、あらゆる場合において、有機カルボン酸エステルの存在下に調製された触媒系を使用することができる。
ここで使用する有機カルボン酸エステルとしては、脂肪族、脂環族、芳香族カルボン酸の各種エステルが挙げられ、好ましくは炭素数8〜12の芳香族カルボン酸エステルが用いられる。具体的な例としては安息香酸、アニス酸、トルイル酸のメチル、エチル等のアルキルエステルを挙げることができる。
固体触媒成分は、反応系に供給する前に予備重合に付して、ポリマーで被覆されたいわゆるプレポリマーの形態で使用することもできる。
【0038】
本発明において、上記の少なくともチタンおよび/またはバナジウムならびにマグネシウムを含有する固体触媒成分と共に用いることのできる有機アルミニウム化合物とは、分子内に少なくとも一個のアルミニウム−炭素原子の結合を有する有機アルミニウム化合物をいう。
例えば、(i)一般式RmAl(OR’)nHpXq(ここで、RおよびR’は炭素原子を通常1〜15個、好ましくは1〜4個を含む炭化水素基、例えばアルキル基、アリール基、アルケニル基、シクロアルキル基等であり、アルキル基の場合にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ヘキシル、オクチル等が挙げられる。RおよびR’は同一であっても異なってもよい。Xはハロゲン原子を示し、m、n、pおよびqはそれぞれ0<m≦3、0≦n<3、0≦p<3および0≦q<3の範囲にあり、かつm+n+p+q=3を満足する数である。)で表される有機アルミニウム化合物、(ii)一般式MAlR4(ここで、MはLi、Na またはKから選ばれる金属であり、Rは前記と同じ炭化水素基である。)で表される、周期律表第I族金属とアルミニウムとの錯アルキル化合物などを挙げることができる。
【0039】
前記(i)に属する有機アルミニウム化合物としては、例えば
一般式 RmAl(OR’)3−m
(ここで、RおよびR’は前記と同じ炭化水素基である。mは好ましくは1.5≦m≦3の範囲である。)、
一般式 RmAlX3−m
(ここで、Rは前記と同じ炭化水素基である。mは好ましくは0<m<3の範囲である。)、
一般式 RmAlH3−m
(ここで、Rは前記と同じ炭化水素基である。mは好ましくは2≦m<3の範囲である。)および
一般式 RmAl(OR’)nXq
(ここで、RおよびR’は前記と同じ炭化水素基である。Xはハロゲン原子を示し、m、nおよびqは好ましくはそれぞれ0<m≦3、0≦n<3、0≦q<3の範囲にあり、かつm+n+q=3を満足する数である。)
で表されるものなどを例示することができる。
【0040】
(i)に属する有機アルミニウム化合物として、具体的には、トリメチルアルミウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−sec−ブチルアルミニウム、トリ−tert−ブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;トリアルケニルアルミニウム;ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシド等のジアルキルアルニミウムアルコキシド;エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシド等のアルキルアルミニウムセスキアルコキシドの他に、R2.5Al(OR)0.5などで表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド等のジアルキルアルミニウムハライド;エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミド等のアルキルアルミニウムセスキハライドのような部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリド等のジアルキルアルミニウムヒドリドおよびエチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリド等のアルキルアルミニウムジヒドリドなど、部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミド等の部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムなどを例示することができる。
前記(ii)に属する有機アルミニウム化合物としては、LiAl(C2H5)4、LiAl(C7H15)4等が挙げられる。
また、(i)に類似する有機アルミニウム化合物として、酸素原子や窒素原子を介して2個以上のアルミニウム原子が結合した有機アルミニウム化合物を用いることもできる。このような化合物として、例えば(C2H5)2AlOAl(C2H5)2、(C4H9)2AlOAl(C4H9)2、(C2H5)2AlN(C2H5)Al(C2H5)2等を例示することができる。
これらの中でも、トリアルキルアルミニウムが好ましい。
【0041】
定常運転中における有機アルミニウム化合物の使用量は特に制限されないが、用いる場合には、通常チタン化合物1モルに対して0.05〜1000モルの範囲が好ましい。
【0042】
本発明の方法はすべてのオレフィンの重合に適用することができるが、特に炭素数2〜12のα−オレフィンの場合に適しており、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等のα−オレフィン類の単独重合ならびにエチレンとプロピレン、エチレンと1−ブテン、エチレンと1−ペンテン、エチレンと1−ヘキセン、エチレンと4−メチル−1−ペンテン、エチレンと1−オクテン等のエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合、プロピレンと1−ブテンとの共重合およびびエチレンと他の2種類以上のα−オレフィンとの共重合等に好適に使用される。
また、ポリオレフィンの改質を目的とする場合のジエンとの共重合にも好ましく用いられる。このとき使用されるジエン化合物の例としては、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン等を挙げることができる。
なお、重合の際のコモノマー含有率は任意に選択することができるが、例えば、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合の場合には、エチレン・α−オレフィン共重合体中のα−オレフィン含有量は0〜40モル%、好ましくは0〜30モル%である。
【0043】
重合条件のうち重合温度としては、0〜300℃の範囲から選択することができる。スラリー重合や気相重合においては生成ポリマーの融点より低い温度で重合を行う。重合圧力は、大気圧〜約100kg/cm2の範囲から選択することができる。
【0044】
本発明の方法によりオレフィンを重合するには、スラリー重合、溶液重合または気相重合のいずれを用いることもできる。特にスラリー重合または気相重合に適用した場合に高い効果が得られる。すなわち、実質的に酸素、水等を断った状態で、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等から選ばれる不活性炭化水素溶媒の存在下または不存在下で、オレフィンの重合を行う。
スラリー重合の場合の反応相は溶剤の液相であり、気相重合のとき反応相は気相である。本発明においては、これらの反応相における水素濃度を、重合器内における平均滞留時間の1/2未満の時間間隔で、平均滞留時間内に3段階以上変化させながら、遷移金属触媒、例えば固体遷移金属触媒成分と有機金属化合物とを触媒として連続的にオレフィンの重合を行う。
【0045】
反応相における水素濃度を変化させる方法には特に制限はない。スラリー重合の場合には、一定量の水素を溶解した溶剤を重合器に供給し、その溶剤中の水素濃度を変化させてもよい。しかし、通常はスラリー重合および気相重合のいずれの場合も、重合器内へ直接水素を供給するシステムを採用し、同一重合器内に送入する水素ガス供給量を、重合器内における平均滞留時間の1/2未満の時間間隔で、平均滞留時間内に3段階以上変化させながら、固体遷移金属触媒成分と有機金属化合物とを触媒として連続的にオレフィンを重合する方法を用いることが簡便であり好ましい。
重合器に送入する水素供給量を変化させる方法には特に制限はない。適宜の水素供給方法を用いることができる。
【0046】
水素濃度は、連続的または不連続的に変化させることができ、特に制限はない。変化させる時間間隔は、対象重合器内における平均滞留時間の1/2未満であるが、好ましくは1/5以下である。時間間隔が短すぎると、応答時間の遅れもあるため、変化の効果が生じ難い。従って、通常は平均滞留時間の1/50以上とする。上記の範囲内であれば、各時間間隔は同一であっても異なってもよい。なお、反応器容積、反応基質流量などにもよるが、通常工業的なスラリー重合器における平均滞留時間は、数十分〜数十時間の範囲である。気相重合の場合も同様である。平均滞留時間はある程度長い方が、水素供給量を変化させた場合にその効果が発現し易い。従って、通常は平均滞留時間が30分以上の重合器を用いて本発明を行うことが好ましい。水素供給量は、平均滞留時間内に3段階以上変化させる。2段階では、連続重合の場合に効果が得られ難いため好ましくない。
【0047】
水素供給量の変化の態様は、連続的に変化させるよりも不連続的に変化させる方が分子量分布を広げる効果が得られ易いので好ましい。
図1は、本発明の例における水素供給量と重合時間との関係を示す模式図である。具体的には、図のように、水素供給量を矩形的に変化させる。この場合、水素供給量の最低値を零にすることもできる。しかし水素供給量を完全に零にすると、生成するポリオレフィンの分子量が高くなりすぎることがある。従って、通常は、水素供給量の最低値を零とせず、一定量を流すことが好ましい。このようにするためには、例えば、重合器に2本の水素供給ラインを設け、一方のラインに一定量の水素を常に供給し、他方のラインの水素供給量を適宜の調節弁により調整する方法を用いることができる。なお、1本の供給ラインまたは複数本の供給ラインに適宜の調整弁を設けることにより、上記の態様を達成することも可能である。
図1のように、矩形的に水素供給量を変化させ、かつ最低でも一定量の水素を流入させる場合には、高供給量に対する低供給量の比は0.1〜0.9が適当であり、好ましくは0.1〜0.8の範囲である。
【0048】
同一重合器内へ供給する水素量を上記のように矩形的に変化させる場合、水素供給量を変化させた後に、生成するポリマーに実際に分子量変化が現れるまでには、一定の時間遅れが生ずることがある。この対策として、例えば水素供給量を増大する場合には、水素を所定の高供給量よりさらに1〜200%程度高い供給量で、所定の供給時間の1〜50%程度送入した後、所定の高供給量および供給時間による水素供給に切り換える。反対に、水素供給量を減少する場合には、水素を所定の低供給量よりさらに1〜100%程度低い供給量で、所定の供給時間の1〜50%程度送入した後、所定の低供給量および供給時間による水素供給に切り換える。このような方法により、水素供給量の変化に対応する効果の遅れを解消することが可能となる。
図2は、上記の方法を用いた例における水素供給量と重合時間との関係を示す模式図である。
【0049】
本発明においては、反応相の水素濃度または水素供給量を変化させることが必要であるが、その他の重合条件、例えば重合温度、触媒供給量、エチレンなどのオレフィンの供給量、1−ブテンなどのコモノマーの供給量、スラリー重合では溶媒の供給量等を、適宜に水素の変化と同時にまたは別個に変化させることも可能である。
【0050】
本発明は、後記の実施例に示す方法の他、種々の態様で実施することが可能である。1基のみの重合器で連続的にポリオレフィンを製造する場合のほか、複数基の重合器を直列もしくは並列、またはこれらを組み合わせて用いるポリオレフィンの連続的製造方法において、重合器のいずれか1基または複数基において本発明の方法を適用することができる。
複数基の重合器を用いる場合に、各重合器は同一または異なるスラリー重合、気相重合または溶液重合のいずれも採用することができる。
【0051】
本発明の方法により製造されたポリオレフィンは、常法に従い、ペレタイザーやホモジナイザー等による機械的な溶融混合によりペレット化した後、各種成形機により成形を行って所望の成形品とする。
また本発明の方法により得られるポリオレフィンには、常法に従い、他のオレフィン系重合体やゴム等のほか、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、加工助剤、着色顔料、架橋剤、発泡剤、無機または有機充填剤、難燃剤等の公知の添加剤を配合することができる。
【0052】
【発明の実施の形態】
同一重合器内に送入する水素ガス供給量を、重合器内における平均滞留時間の1/2未満の時間間隔で、平均滞留時間内に3段階以上変化させながら、遷移金属触媒成分[A]と、有機金属化合物(B−1)および前記遷移金属触媒成分[A]と反応してイオン対を形成する化合物(B−2)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物[B]とからなるオレフィン重合用触媒を用いて、連続的にオレフィンを重合することにより、分子量分布が広く、流動特性や機械的特性など各種物性のバランスに優れたポリオレフィンを製造することができる。
【0053】
【実施例】
次に本発明を実施例によって詳細に説明する。
まず、本発明で使用する試験法を示す。
(1)密度
JIS K6760の規定による密度勾配管法(23℃)で測定する。
(2)N−値
高化式フローテスター(島津製作所製)を使用し、樹脂温度170℃で2mmφ×40mmのダイから押出し、低位試験圧力20kg/cm2および高位試験圧力 150kg/cm2での見かけのせん断速度を求め、次式[IV]により算出する。
【数1】
(3)メルトフローレート(MFR)
JIS K6760の規定により測定する。
(測定温度190℃、荷重2.16kg)
(4)引張降伏強さ(YTS)
JIS K6760の規定による。(引張速度50mm/min、試験片厚み2mm)
(5)引張衝撃値(TIS)
ASTM D1822に準拠して測定。(試験片厚み1.5mm)
(6)曲げこわさ
JIS K7106の規定により測定する。(東洋精機(株)製の曲げこわさ試験機を使用)
(7)メルトテンション(MT)
東洋精機(株)製のメルトテンションテスターにより測定。(測定温度190℃)
(8)臨界せん断速度(γc)
INTESCO(株)製のキャピラリーレオメーターにより測定する。
(測定温度190℃)
(9)耐環境応力亀裂性(ESCR)
JIS K6760の規定による定ひずみESCRのF50の値を求める。
(10)ダイスウェル比(DSR)
高化式フローテスターを用いて、温度170℃で試料を押出し、ストランドの径とダイの内径との比を求める。せん断速度が80sec−1に相当する押出速度で測定する。
【0054】
<触媒製造例>
固体触媒成分として、溶解析出法によるTi系触媒を使用した。その製造方法は以下の通りである。
攪拌機および冷却器を取り付けた容量1リットルの三つ口フラスコの内部を十分に窒素置換した後、乾燥ヘキサン250ml、あらかじめ3リットル振動ミルで1時間粉砕処理を行った無水塩化マグネシウム11.4gおよびn−ブタノール110mlを入れ、68℃で2時間加熱し均一な溶液(A)とした。
この溶液(A)を室温まで冷却した後、25℃の運動粘度が25cStであるメチルハイドロジェンポリシロキサン8gを添加し、1時間攪拌して均一な溶液(B)を得た。溶液(B)を水で冷却した後、この中へ四塩化チタン50mlおよび乾燥ヘキサン50mlを、滴下漏斗を用い1時間を費やして滴下し、溶液(C)を得た。溶液(C)は均一であり、反応生成物の錯体は析出していなかった。
溶液(C)を還流しながら、68℃で2時間加熱処理を行った。加熱を開始して約30分後に反応生成物錯体(D)の析出が見られた。これを採取して乾燥ヘキサン250mlで6回洗浄し、さらに窒素ガスで乾燥して、反応生成物錯体(D)19gを回収した。
反応生成物錯体(D)を分析したところ、Mg14.5wt%、n−ブタノール 44.9wt%およびTi0.3wt%を含有しており、その比表面積は17m2/gであった。また反応生成物錯体(D)を走査電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、球に近い形状であった。
反応生成物錯体(D)4.5gを窒素雰囲気下で攪拌機および冷却器を取り付けた容量1リットルの三つ口フラスコに採取し、これに乾燥ヘキサン250mlおよび四塩化チタン25mlを加えて還流下に68℃で2時間加熱処理を行い、室温まで冷却した後、乾燥ヘキサン250mlで6回洗浄し、窒素ガスで乾燥して固体触媒成分(E)4.6gを回収した。
この固体触媒成分(E)を分析したところ、Mg12.5wt%、n−ブタノール17.0wt%およびTi9.0wt%を含有しており、その比表面積は29m2/gであった。この固体触媒成分(E)をSEMで観察したところ、粒径は均一であり球に近い形状であった。
【0055】
<実施例1および2>
図3(a)は、使用したスラリー法1段重合プロセスの概略工程図である。
図において、反応器1として内容積70リットルの攪拌型反応器を使用し、上記触媒製造例で得られた固体触媒成分(E)を触媒供給ライン2から、また助触媒としてトリエチルアルミニウム(TEA)を有機金属化合物供給ライン3から供給して、表1に示す重合条件により連続的にエチレンと1−ブテンとの重合を行った。図中で、符号4はエチレン供給ライン、同5はコモノマー供給ライン、同6は水素供給ライン(6aは水素連続供給ライン、6bは水素間欠供給ラインを示す)および同7は重合溶媒供給ラインを示す。
水素は、水素連続供給ライン6aおよび水素間欠供給ライン6bを用いて、表1に示す条件によりそれぞれ供給を行った。なお、水素間欠供給装置としては、マスフローメーター(EP−TF−5310)、コントローラー(EP−TC−1000)およびコンバータユニット(TM−7420−23−1)からなる東京計装(株)製の熱式質量流量計を用いた。
反応器1で生成したスラリー状重合生成物を、重合生成物移送ライン8を通してフラッシング槽9へ導入し、重合生成物を連続的に重合物回収ライン10から抜き出し、脱気ライン11から未反応ガスを除去した。
得られたポリマー粒子をペレタイザーで造粒した後、射出成形やインフレ成形により試験片やフィルムを成形し、その物性を評価した。結果を表1に示す。
【0056】
<比較例1>
実施例1および2と同様のプロセスを用い、通常の方法、すなわち水素間欠供給を行わない方法により1段重合を実施した。
重合条件およびポリマーの物性評価結果を表1に示す。
上記の結果から、本発明の方法により得られる分子量分布が広いポリオレフィンおよびそれを含むポリオレフィン組成物は、メルトテンションやダイスウェル比に代表される溶融弾性や臨界せん断速度に代表される流動特性が著しく改良され、機械特性と併せて各種物性のバランスに優れていることが判る。
【0057】
<実施例3>
実施例1および2と同様のプロセスにおいて、水素供給方法として間欠供給のみを用いた。図3(b)は実施例3に用いた水素間欠供給の略示系統図である。すなわち、水素間欠供給装置3基を並列に配列した水素間欠供給ライン6b1、6b2および6b3を用いて、表1に示す重合条件で連続的に1段のスラリー重合を行った。なお、各水素間欠供給ラインにおける水素供給サイクルはそれぞれ以下の通りである。
(1)6b1:40Nl/hrで9分間供給した後、1分間停止する。
(2)6b2:6b1による供給開始の4分後に、200Nl/hrで1分間供給した後、9分間停止する。
(3)6b3:6b1による供給開始の5分後に、120Nl/hrで4分間供給した後、6分間停止する。
重合器内への水素供給量は、上記各ラインの合計として、40Nl/hrで4分間、240Nl/hrで1分間、160Nl/hrで4分間および供給停止1分間からなるサイクルを連続的に繰り返したことになる。このように、所定の低水素量(40Nl/ hr)を供給する前に供給量を0にし、所定の高水素量(160Nl/hr)を供給する前により高い供給量(240Nl/hr)とすることにより、水素供給量の変化に対応する効果の遅れを解消することが可能であった。
得られたポリマーの物性評価の結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【発明の効果】
本発明による分子量分布の広いポリオレフィンは、それぞれ異なる分子量のポリオレフィンからなるブロックが小さいために、ポリマー粒子内におけるそれらの分散状態が均一であり、その結果それらを含むポリオレフィン組成物は、以下の特長を有する。
(1)特にメルトテンション、ダイスウェル比等の溶融弾性に優れている。
(2)引張衝撃値、曲げこわさ、耐環境応力亀裂性等の機械的特性に優れている。
(3)臨界せん断速度などの流動特性に優れているため、高速成形等における成形加工性が良好である。
(4)高分子量ゲルやフィッシュアイの発生が極めて少なく、均質性に優れている。
本発明により、均質であると共に各種物性のバランスに優れたポリオレフィン組成物を、簡便かつ容易に製造することが可能となった。
本発明により得られる分子量分布が広いポリオレフィンおよびそれを含むポリオレフィン組成物は、上記の長所を有することにより、各種のフィルム、シート、パイプ、中空容器、各種被覆材料、発泡材料などに使用することができる。また、押出成形、中空成形、射出成形などの全ての成形法に好適に使用することができるため、広範な成形品とすることができる。
本願の第1および第3の発明によれば、高分子量成分の分散性が良好なポリオレフィンを製造することができる。本願の第2および第4の発明によれば、反応相の水素濃度を容易に変化させることができる。また本願の第5の発明によれば、水素濃度の変化による効果を顕著に発現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】水素供給量と重合時間との関係の例を示す模式図である。
【図2】水素供給量と重合時間との関係の他の例を示す模式図である。
【図3】(a)は本発明の1段重合プロセスの例の概略工程図であり、(b)は他の例の間欠水素供給方法の略示系統図である。
【符号の説明】
1 反応器
2 触媒供給ライン
3 有機金属化合物供給ライン
4 エチレン供給ライン
5 コモノマー供給ライン
6 水素供給ライン
6a 水素連続供給ライン
6b、6b1、6b2、6b3 水素間欠供給ライン
7 重合溶媒供給ライン
8 重合生成物移送ライン
9 フラッシング槽
10 重合物回収ライン
11 脱気ライン
Claims (9)
- 平均滞留時間が30分以上となる重合器を用いて、同一重合器内の反応相における水素濃度を、該重合器内における平均滞留時間の1 / 50以上1/2未満の時間間隔で、該平均滞留時間内に3段階以上間欠的にあるいは周期的に変化させながら、遷移金属触媒成分[A]と、有機金属化合物(B-1)および前記遷移金属触媒成分[A]と反応してイオン対を形成する化合物(B-2)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物[B]とからなるオレフィン重合用触媒により、連続的にオレフィンを重合することを特徴とする分子量分布が広いポリオレフィンの製造方法。
- 平均滞留時間が30分以上となる重合器を用いて、同一重合器内に送入する水素ガス供給量を、該重合器内における平均滞留時間の1 / 50以上1/2未満の時間間隔で、該平均滞留時間内に3段階以上間欠的にあるいは周期的に変化させながら、遷移金属触媒成分[A]と、有機金属化合物(B-1)および前記遷移金属触媒成分[A]と反応してイオン対を形成する化合物(B-2)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物[B]とからなるオレフィン重合用触媒により、連続的にオレフィンを重合することを特徴とする分子量分布が広いポリオレフィンの製造方法。
- 平均滞留時間が30分以上となる重合器を用いて、同一重合器内の反応相における水素濃度を、該重合器内における平均滞留時間の1 / 50以上1 / 5以下の時間間隔で、該平均滞留時間内に3段階以上間欠的にあるいは周期的に変化させながら、遷移金属触媒成分[A]と、有機金属化合物( B-1 )および前記遷移金属触媒成分[A]と反応してイオン対を形成する化合物( B-2 )からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物[B]とからなるオレフィン重合用触媒により、連続的にオレフィンを重合することを特徴とする分子量分布が広いポリオレフィンの製造方法。
- 平均滞留時間が30分以上となる重合器を用いて、同一重合器内に送入する水素ガス供給量を、該重合器内における平均滞留時間の1 / 50以上1 / 5以下の時間間隔で、該平均滞留時間内に3段階以上間欠的にあるいは周期的に変化させながら、遷移金属触媒成分[A]と、有機金属化合物( B-1 )および前記遷移金属触媒成分[A]と反応してイオン対を形成する化合物( B-2 )からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物[B]とからなるオレフィン重合用触媒により、連続的にオレフィンを重合することを特徴とする分子量分布が広いポリオレフィンの製造方法。
- 前記水素濃度または水素ガス供給量の変化を、不連続的に行うことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の分子量分布が広いポリオレフィンの製造方法。
- 水素供給量の最低値を零とせず、少なくとも一定量を流すことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の分子量分布が広いポリオレフィンの製造方法。
- 重合器に2本の水素供給ラインを設け、一方のラインに一定量の水素を常に供給し、他方のラインの水素供給量を適宜の調節弁により調整することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の分子量分布が広いポリオレフィンの製造方法。
- 水素供給量の高供給量に対する低供給量の比が0 . 1〜0 . 9であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の分子量分布が広いポリオレフィンの製造方法。
- 水素供給量を間欠的にあるいは周期的に変化させる際に、水素供給量を増大する場合に、水素を所定の高供給量よりさらに1〜200%高い供給量で、所定の供給時間の1〜50%の時間送入した後、所定の高供給量および供給時間による水素供給に切換え、次に、水素供給量を減少する場合に、水素を所定の低供給量よりさらに1〜100%低い供給量で、所定の供給時間の1〜50%の時間送入した後、所定の供給量および供給時間による水素供給に切換えることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の分子量分布が広いポリオレフィンの製造方法。
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