JP4606671B2 - エチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法 - Google Patents

エチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、気相重合法によるエチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法に関し、さらに詳しくは、内部オレフィンの存在下に、気相法にて、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合させるエチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エチレン・α−オレフィン共重合体は、種々の用途に利用されており、例えば、エチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン(以下、LLDPEと略すことがある。)から形成されるフィルムは、ヒートシール性に優れ、柔軟で、かつ強靱であり、耐水性、耐湿性、耐薬品性に優れており、しかも安価であるなどの諸特性に優れている。従って、LLDPEは、フィルム成形用材料として広く利用されている。
【0003】
上記LLDPEは、一般に、エチレンとα−オレフィンとを、チーグラー触媒の存在下、低圧下にて共重合することにより製造されている。該LLDPEは、通常、溶液重合、スラリー重合などの液相重合法によって製造されているが、重合を気相重合法にて行えば、重合後の共重合体が粒子状で得られ、重合溶液からの粒子析出あるいは粒子分離などの工程が不要となって製造プロセスを簡略化することができるので、近年、気相重合法によるLLDPEの製造が盛んに研究されている。
【0004】
気相重合法においては、重合反応器下部から重合モノマーガスを供給することによって、触媒および生成エチレン・α−オレフィン共重合体からなる固体粒子を流動化させた流動層を形成して重合反応を行い、生成する共重合体を連続的あるいは断続的に重合反応器から抜き出す。
このような気相重合法においては、重合熱の除去が大きな課題であり、従来、流動層反応器に液化可能な飽和脂肪族炭化水素を供給し、重合反応器から排出されるガスを、圧縮、冷却して該飽和脂肪族炭化水素の一部を液化させ、気液混合状態で重合反応器に循環させることにより重合熱を除去する方法が知られている(特開平11−100406号公報など)。
【0005】
上記のエチレン・α−オレフィン共重合体の気相重合法において、重合熱除去用化合物として高沸点の飽和脂肪族炭化水素、例えば、n−ヘキサン、イソペンタンなどが用いられるのは、循環ガスの露点を下げ、気化熱により重合熱を効率よく除去するためである。しかし、上記の重合熱除去の目的で導入される化合物は、本来、高沸点の飽和脂肪族炭化水素に限定されるものではない。すなわち、好適な沸点を有し、かつ、重合反応に影響を与えない化合物であれば、高沸点の飽和脂肪族炭化水素以外の化合物でも上記目的に使用可能である。例えば、2−ヘキセンなどの内部オレフィンは、好適な沸点を有し、かつ、その不飽和二重結合の位置が重合に寄与し得ないものであり、重合反応に影響を与えないので重合熱除去用化合物として好適である。
【0006】
しかしながら、2−ヘキセンなどの内部オレフィンは、エチレン・1−ヘキセン共重合体などのエチレン・α−オレフィン共重合体の気相重合反応に、従来、用いられてきたチタン系触媒を失活させるという性質を有しており、重合反応に重大な悪影響を及ぼす。このため、2−ヘキセンなどの内部オレフィンの使用は、気相重合において忌避され、重合熱除去用化合物としてn−ヘキサン、イソペンタンなどの飽和脂肪族炭化水素が用いられてきたのが現状である。
【0007】
ところで、エチレン・α−オレフィンの共重合、例えば、エチレン・1−ヘキセンの共重合を行う際に供給する原料のα−オレフィン(1−ヘキセン)は、不純物として内部オレフィン(2−ヘキセンなど)を含有する。エチレンとの共重合にて、消費されるのは、α−オレフィン(1−ヘキセン)のみであるので、内部オレフィン(2−ヘキセン)は重合系に残存し、そして、重合を長時間連続して継続すると、内部オレフィン(2−ヘキセン)が重合系に蓄積し、遂には、触媒を失活させ得る濃度に到達する。このような現象を防ぐため、従来の重合工程においては、
(i)気相重合反応器から排出される未反応モノマーを重合系に循環する前に分留を行い、α−オレフィン(1−ヘキセン)と内部オレフィン(2−ヘキセン)とを分離し、内部オレフィン(2−ヘキセン)の除去を行ってから循環を行う必要がある。しかしながら、沸点の近接したα−オレフィン(1−ヘキセン)と内部オレフィン(2−ヘキセン)とを蒸留にて分離することは、容易ではなく、そのためには、巨大な設備および膨大なコストが必要とされる、
(ii)共重合の原料として供給するα−オレフィン(1−ヘキセン)は、不純物として内部オレフィン(2−ヘキセン)を含有するが、重合反応へ悪影響を及ぼさないためには、高純度のα−オレフィン(1−ヘキセン)を使用する必要がある。このような高純度のα−オレフィン(1−ヘキセン)は、上記の分留が困難であることより高価なものであり、製造コストの上昇を招く、といった問題点を有していた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、エチレンとα−オレフィンとの共重合体を気相重合法によって製造する方法において、(i)巨大な設備および膨大なコストを必要とするα−オレフィンと内部オレフィンとの分離設備を不要とする、(ii)高価な高純度α−オレフィンの使用を不要とする、および(iii)重合熱除去用化合物として、原料であるα−オレフィンに含有される内部オレフィンを使用することにより、従来、用いられてきた飽和脂肪族炭化水素使用量の低減化または廃止を可能とし、製造コストの低減および装置の簡略化が図り得るようなエチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法を提供することを課題とする。
【0009】
【発明を解決するための手段】
本発明者らは、気相重合法によるエチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法について鋭意検討したところ、特定濃度以上の内部オレフィンの存在下にて気相重合反応を行うことにより、触媒系を失活させず、かつ、従来と同様に重合熱の除去が可能である重合方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを、気相法にて共重合させるエチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法において、重合系の気相中の内部オレフィン濃度が、0.1〜0.55モル%であるエチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを、気相法にて共重合させるエチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法において、重合系の気相中の内部オレフィンが、炭素数3〜20のα−オレフィン1モルに対して0.05〜0.32ルであるエチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法が提供される。
【0011】
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1または第2の発明において、重合系に外部から供給される炭素数3〜20のα−オレフィンに含有される内部オレフィン濃度が、0.2モル%以上であるエチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明の第の発明によれば、第1から第のいずれか1つの発明において、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを、メタロセン化合物を含有する触媒系の存在下で共重合させるエチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第の発明によれば、第の発明における触媒系が、少なくとも
[A]周期律表第IVB族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物、および
[B](B-1) 有機アルミニウムオキシ化合物、(B-2) 有機アルミニウム化合物、および(B-3) 該メタロセン化合物[A]と反応してイオン対を形成しうる化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物、
を含む触媒系であるエチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るエチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法について具体的に説明する。
なお、本発明において、「重合」という語は単独重合のみならず共重合を包含した意味で用いられることがあり、また「重合体」という語は単独重合体のみならず、共重合体を包含した意味で用いられることがある。
【0014】
また、本発明において、「内部オレフィン」とは、化合物の末端に炭素−炭素二重結合を有せず、化合物の内部に炭素−炭素二重結合を有する炭化水素化合物を意味する。
また、内部オレフィン量の測定は、従来公知の各種の方法により行うことができるが、ガスクロマトグラフィーによる測定が、最も便利である。内部オレフィンとα−オレフィンとは、異性体の関係にあるので両者の分離は難しく、十分な精度をもって分離、測定を行うためには、複数のカラムを組み合わせて使用することが好ましい。
【0015】
本発明では、流動層反応器内を流通する重合モノマーを含む循環ガス流によって触媒を含む固体粒子が流動状態に保持された流動層において、触媒の存在下に重合モノマーとしてのエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを、気相法で共重合させてエチレン・α−オレフィン共重合体を製造するに際し、重合系に特定濃度以上の内部オレフィンを存在させて上記共重合を行うことを特徴としている。
【0016】
ここにおいて本発明を、図1を参照しながら具体的に説明する。
流動層反応器1において、触媒をライン2から供給し、またライン9から供給されたガス状共重合モノマーを、反応器下部の供給口3から反応器下部に設けられた多孔板などの分散板7から流動層5へ吹き込み、反応器上部のライン4から排出させることにより反応器内を循環させて、このガス流(流動化ガス)によって固体粒子(固体触媒および生成共重合体)を流動状態に保持することにより流動層(反応系)5が形成される。
【0017】
このような流動層5において、エチレンと炭素数3〜20のオレフィンとの共重合により生成した共重合体は、反応器下部からライン6を介して連続的または断続的に抜き出される。
一方、反応器1からライン4を介して排出されるガスは、未反応共重合モノマーおよび内部オレフィンなどを含有しており、通常、冷却された後、循環ガスとしてライン11から供給口3を介して反応器1に循環される。
【0018】
上記のように供給口3からは、共重合モノマーおよび循環ガスからなる流動化ガスが反応器1に導入され、該ガスにより流動層5を流動状態に保持することができるような流量で流通されるが、具体的に、供給口3から導入されるガス量は、流動層の最小流動化速度をUmfとするとき、約3Umf〜50Umf程度、好ましくは約5Umf〜30Umf程度の流量であることが望ましい。流動層5を機械的に攪拌することもでき、例えば、イカリ型攪拌機、スクリュウ型攪拌機、リボン型攪拌機など種々の型式の攪拌機を用いて攪拌することができる。
【0019】
本発明では、上記のように流動状態に保持された流動層5において、反応器内に供給された共重合モノマー、すなわち、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合させる。
本発明において、エチレンと共重合させる炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的に、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセンなどのオレフィンが挙げられる。これらのうちでも、炭素数5〜8のα−オレフィンが特に好ましく用いられる。また、これらのα−オレフィンを2種以上組み合わせて共重合することもできる。
【0020】
重合反応器に供給するエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとは、目的とする共重合体によっても異なるが、通常、エチレン1モルに対して、α−オレフィン0.015〜0.15モル、好ましくは0.02〜0.08モルの量で供給される。
また、本発明では、エチレンとα−オレフィンとともに、必要に応じてポリエン類などを共重合させてもよく、例えば、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン類、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5-ビニル-2-ノルボルネンなどの非共役ジエン類を共重合させることができる。
【0021】
本発明では、上記共重合は、内部オレフィンの共存下に行われる。内部オレフィンとしては、具体的に、例えば、2−ブテン、2−ペンテン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、4−メチル−シス−2−ペンテン、4−メチル−トランス−2−ペンテン、2−ヘプテン、2−オクテン、2−ノネン、2−デセンなどが挙げられる。これらは、組み合わせて用いることもできる。
【0022】
また、該内部オレフィンは、原料である共重合モノマー(α−オレフィン)に不純物として含有される内部オレフィンであってもよいし、共重合モノマーとは別に供給される内部オレフィンであってもよい。
上記のような内部オレフィンは、非重合性の炭化水素であり、一旦、反応器内に供給されると重合により消費されることがなく、ライン4を介して反応器から排出されるガス中に含まれる循環ガスとして反応器に循環される。
【0023】
この内部オレフィンは、流動層に液状またはガス状もしくは気液混合状態で導入される。
また、内部オレフィンは、上記のように、通常、共重合モノマーとともにライン9から供給口3を介して反応器1に導入されるが、反応器の任意の場所から供給することができ、例えば、触媒供給口2からガス状で直接流動層に供給してもよい。
【0024】
本発明では、重合系の気相中の内部オレフィン濃度が、0.1モル%以上であることが必要であり、0.2モル%以上であることが好ましく、さらに0.5モル%以上であることが望ましい。内部オレフィン濃度が上記範囲であると、組成分布が狭く、かつ、分子量分布が狭く、諸物性に優れたエチレン・α−オレフィン共重合体を得ることができる。
【0025】
また、本発明では、重合系の気相中の内部オレフィンが、炭素数3〜20のα−オレフィン1モルに対し0.05モル以上であることが必要であり、0.5モル以上であることが好ましく、さらに1モル以上であることが望ましい。内部オレフィンが上記範囲であると、組成分布が狭く、かつ、分子量分布が狭く、諸物性に優れたエチレン・α−オレフィン共重合体を得ることができる。
【0026】
さらに、本発明では、重合系に外部から供給される炭素数3〜20のα−オレフィンに含有される内部オレフィン濃度が、0.2モル%以上であることが好ましく、0.5モル%以上であることがより好ましく、さらに1.0モル%以上であることが望ましい。内部オレフィン濃度が上記範囲であると、上記に効果を容易に達成することができる。
【0027】
流動層5において、上記のような濃度の内部オレフィンの存在下に行われるエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合は、共重合するα−オレフィンの種類および割合、内部オレフィンの割合、流動層の流動状態などによっても異なるが、通常、重合圧力が1〜100kg/cm2、好ましくは2〜40kg/cm2、重合温度が、流動化ガスの露点以上の温度であって、通常、20〜130℃、好ましくは50〜120℃、より好ましくは70〜110℃の条件下で行われることが望ましい。
【0028】
上記共重合を、反応条件を同じか、もしくは、変えて2段以上に分けて行うこともできる。
また上記共重合は、必要に応じて水素などの分子量調節剤の存在下に行うこともでき、該分子量調節剤は、反応器1の任意の場所、例えば、ライン9から供給することができる。
【0029】
上記のような反応系流動層から排出されるガス、すなわち反応器上部のライン4から排出されるガスは、未反応共重合モノマーおよび内部オレフィンなどを含有している。
反応器から排出されたガスは、通常、熱交換器8に導かれて冷却され、重合熱が除去された後、循環ガスとして供給口3から反応器1に循環される。このように排出ガスを反応器に循環させる際には、排出ガスの一部を、例えば、ライン10からパージしてもよい。
【0030】
本発明で得られるエチレン・α−オレフィン共重合体の分子量は、重合温度などの重合条件を変更することにより調節することができるし、水素(分子量調節剤)の使用量を制御することにより調節することもできる。
また、内部オレフィンを流動層に導入して、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合させると、組成分布が狭く、かつ、分子量分布が狭く、諸物性に優れたエチレン・α−オレフィン共重合体を得ることができる。
【0031】
本発明では、上記のような共重合を、各種エチレン重合用触媒を用いて行うことができるが、このような触媒のうちでも、特にメタロセン系触媒を用いることが望ましい。具体的に、本発明において好ましく用いられるメタロセン系触媒は、例えば、少なくとも
[A]周期律表第IVB族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物、および
[B](B-1) 有機アルミニウムオキシ化合物、
(B-2) 有機アルミニウム化合物、および
(B-3) メタロセン化合物[A]と反応してイオン対を形成する化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物、
を含んでなる。
【0032】
遷移金属のメタロセン化合物は、具体的に、下記式(I) で示される。
MLx (I)
(式中、MはZr、Ti、Hf、V、Nb、TaおよびCrから選ばれる遷移金属であり、Lは遷移金属に配位する配位子であり、少なくとも1個のLはシクロペンタジエニル骨格を有する配位子であり、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外のLは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の炭化水素基、アルコキシ基、アリーロキシ基、トリアルキルシリル基またはSO3R基(ここで、Rはハロゲン原子などの置換基を有していてもよい炭素数1〜8の炭化水素基)であり、xは遷移金属の原子価である。)
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては、例えば、シクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、メチルエチルシクロペンタジエニル基、プロピルシクロペンタジエニル基、メチルプロピルシクロペンタジエニル基、ブチルシクロペンタジエニル基、メチルブチルシクロペンタジエニル基、ヘキシルシクロペンタジエニル基などのアルキル置換シクロペンタジエニル基あるいはインデニル基、4,5,6,7-テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基などを例示することができる。これらの基は、ハロゲン原子、トリアルキルシリル基などで置換されていてもよい。
【0033】
これらの中では、アルキル置換シクロペンタジエニル基が特に好ましい。
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子としては、具体的に、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられ、炭素数1〜12の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、トリル基などのアリール基、ベンジル基、ネオフィル基などのアラルキル基などが挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられ、アリーロキシ基としては、フェノキシ基などが挙げられ、SO3R基としては、p-トルエンスルホナト基、メタンスルホナト基、トリフルオロメタンスルホナト基などが挙げられる。
【0034】
上記一般式(I)で表される化合物がシクロペンタジエニル骨格を有する基を2個以上含む場合には、そのうち2個のシクロペンタジエニル骨格を有する基同士が、エチレン、プロピレンなどのアルキレン基、イソプロピリデン、ジフェニルメチレンなどの置換アルキレン基、シリレン基またはジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルフェニルシリレン基などの置換シリレン基などを介して結合されていてもよい。
【0035】
このようなシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含むメタロセン化合物は、例えば、遷移金属の原子価が4である場合、より具体的には、下記式(II)で示される。
2 k3 l4 m5 nM (II)
(式中、Mは上記遷移金属であり、R2はシクロペンタジエニル骨格を有する基(配位子)であり、R3、R4およびR5はシクロペンタジエニル骨格を有する基または上記したような他の基であり、kは1以上の整数であり、k+l+m+n=4である。)
本発明では上記式R2 k3 l4 m5 nMにおいて、R2、R3、R4およびR5のうち少なくとも2個すなわちR2およびR3が、シクロペンタジエニル骨格を有する基(配位子)であるメタロセン化合物が好ましく用いられる。これらのシクロペンタジエニル骨格を有する基は、アルキレン基、置換アルキレン基、シリレン基または置換シリレン基などを介して結合されていてもよい。
【0036】
上記のようなメタロセン化合物としては、具体的にMがジルコニウムであるとき、
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジブロミド、
ビス(シクロペンタジエニル)メチルジルコニウムモノクロリド、
ビス(シクロペンタジエニル)エチルジルコニウムモノクロリド、
ビス(シクロペンタジエニル)シクロヘキシルジルコニウムモノクロリド、
ビス(シクロペンタジエニル)フェニルジルコニウムモノクロリド、
ビス(シクロペンタジエニル)ベンジルジルコニウムモノクロリド、
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノクロリドモノハイドライド、
ビス(シクロペンタジエニル)メチルジルコニウムモノハイドライド、
ビス(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
ビス(シクロペンタジエニル)ジフェニルジルコニウム、
ビス(シクロペンタジエニル)ジベンジルジルコニウム、
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムメトキシクロリド、
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムエトキシクロリド、
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(メタンスルホナト)、
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(p-トルエンスルホナト)、
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムエトキシクロリド、
ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、
ビス(エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(メチルエチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(メチルプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(メタンスルホナト)、
ビス(トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(ヘキシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(インデニル)ジルコニウムジブロミド、
ビス(インデニル)ジルコニウムビス(p-トルエンスルホナト)、
ビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジブロミド、
エチレンビス(インデニル)ジメチルジルコニウム、
エチレンビス(インデニル)ジフェニルジルコニウム、
エチレンビス(インデニル)メチルジルコニウムモノクロリド、
エチレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(メタンスルホナト)、
エチレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(p-トルエンスルホナト)、
エチレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、
エチレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
イソプロピリデン(シクロペンタジエニル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
イソプロピリデン(シクロペンタジエニル-メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(2-メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(2-メチル,4-イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(2,4,7-トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、
ジメチルシリレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルシリレンビス(2-メチル,4-イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルシリレンビス(2,4,7-トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
メチルフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
【0037】
なお、上記例示において、シクロペンタジエニル環の二置換体は1,2-および1,3-置換体を含み、三置換体は1,2,3-および1,2,4-置換体を含む。また、プロピル、ブチルなどのアルキル基は、n-、i-、sec-、tert-などの異性体を含む。
また、上記のようなジルコニウムメタロセン化合物において、ジルコニウムを、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタルまたはクロムに置き換えた化合物を挙げることもできる。
【0038】
本発明では、メタロセン化合物[A]として、少なくとも2個のシクロペンタジエニル骨格を含む配位子を有するジルコニウムメタロセン化合物が好ましく用いられる。これらの化合物は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明で用いられる(B-1)有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のベンゼン可溶性のアルミノキサンであっても、また、特開平2−276807号公報に開示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0039】
上記のようなアルミノキサンは、例えば、下記のような方法によって製造することができる。
(1) 吸着水を含有する化合物あるいは結晶水を含有する塩類、例えば、塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などを懸濁した炭化水素懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して反応させる方法。
【0040】
上記炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ガソリン、灯油、軽油などの石油留分あるいは上記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のハロゲン化物、とりわけ塩素化物、臭素化物などの炭化水素溶媒を用いることができる。さらに、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を用いることもできる。これらのうち、特に芳香族炭化水素が好ましく用いられる。
(2) ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷または水蒸気を作用させる方法。
(3) デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0041】
なお、このアルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有していてもよい。また、回収されたアルミノキサンの溶液から溶媒あるいは未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、溶媒に再溶解して用いてもよい。
アルミノキサンを製造する際に用いられる有機アルミニウム化合物としては、具体的には、有機アルミニウム化合物(B-2)として後述するようなものが挙げられ、これらを2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0042】
これらのうち、トリアルキルアルミニウムおよびトリシクロアルキルアルミニウムが特に好ましい。
また、本発明で用いられるベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であり、ベンゼンに対して不溶性あるいは難溶性である。
【0043】
このような有機アルミニウムオキシ化合物のベンゼンに対する溶解性は、100ミリグラム原子のAlに相当する該有機アルミニウムオキシ化合物を100mlのベンゼンに懸濁した後、攪拌下60℃で6時間混合した後、ジャケット付G−5ガラス製フィルターを用い、60℃で熱時濾過を行い、フィルター上に分離された固体部を60℃のベンゼン50mlを用いて4回洗浄した後の全濾液中に存在するAl原子の存在量(xミリモル)を測定することにより求められる(x%)。
【0044】
本発明では、有機アルミニウムオキシ化合物(B-1)を2種以上組み合わせて用いることもできる。
本発明で用いられる有機アルミニウム化合物(B-2)は、例えば、下記式(III) で示される。
1 nAlX3-n (III)
(式中、R1 は炭素数1〜12の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子または水素原子であり、nは1〜3である。)
上記一般式(III) において、R1 は炭素数1〜12の炭化水素基、例えば、アルキル基、シクロアルキル基またはアリ−ル基であるが、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基などである。
【0045】
このような有機アルミニウム化合物(B-2)としては、具体的には、
トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリ2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、
イソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム、
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミドなどのジアルキルアルミニウムハライド、
メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、
エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド、
メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライド、
ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライドなどを挙げることができる。
【0046】
また有機アルミニウム化合物(B-2)として、下記式(IV)で示される化合物を用いることもできる。
1 nAlY3-n (IV)
(R1は上記と同様であり、Yは−OR2基、−OSiR3 3基、−OAlR4 2基、−NR5 2基、−SiR6 3基または−N(R7)AlR8 2基であり、nは1〜2であり、R2、R3、R4およびR8はメチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基などであり、R5は水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェニル基、トリメチルシリル基などであり、R6 およびR7 はメチル基、エチル基などである。)
具体的には、下記のような化合物が挙げられる。
(1) R1 nAl(OR2)3-n で示される化合物、例えば
ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシドなど、
(2) R1 nAl(OSiR3 3)3-n で示される化合物、例えば
Et2Al(OSi Me3)、(iso-Bu)2Al(OSiMe3)、(iso-Bu)2 Al(OSiEt3)など、
(3) R1 nAl(OAlR4 2)3-n で示される化合物、例えば
Et2AlOAlEt2 、(iso-Bu)2AlOAl(iso-Bu)2 など、
(4) R1 nAl(NR5 2)3-n で示される化合物、例えば
Me2AlNEt2 、Et2AlNHMe 、Me2AlNHEt 、Et2AlN(SiMe3)2、(iso-Bu)2AlN(SiMe3)2など、
(5) R1 nAl(SiR6 3)3-n で示される化合物、例えば
(iso-Bu)2AlSi Me3など、
(6) R1 nAl(N(R7)AlR8 2)3-n で示される化合物、例えば
Et2AlN(Me)AlEt2
(iso-Bu)2AlN(Et)Al(iso-Bu)2 など。
【0047】
これらのうちでは、トリアルキルアルミニウムが好ましく、トリイソブチルアルミニウムが特に好ましい。有機アルミニウム化合物(B-2) を2種以上組み合わせて用いることもできる。
本発明で用いられる前記メタロセン化合物[A]と反応してイオン対を形成する化合物(B-3)としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、US−547718号明細書などに記載されたルイス酸、イオン性化合物およびカルボラン化合物を挙げることができる。
【0048】
ルイス酸としては、トリフェニルボロン、トリス(4-フルオロフェニル)ボロン、トリス(p-トリル)ボロン、トリス(o-トリル)ボロン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、MgCl2、Al23、SiO2-Al23 などを挙げることができる。
イオン性化合物としては、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリn-ブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを挙げることができる。
【0049】
カルボラン化合物としては、ドデカボラン、1-カルバウンデカボラン、ビスn-ブチルアンモニウム(1-カルベドデカ)ボレート、トリn-ブチルアンモニウム(7,8-ジカルバウンデカ)ボレート、トリn-ブチルアンモニウム(トリデカハイドライド-7-カルバウンデカ)ボレートなどを挙げることができる。
これらは、2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0050】
本発明では、共触媒成分[B]として、上記のような成分(B-1)、(B-2)および(B-3)から選ばれる少なくとも1種の化合物が用いられ、これらを適宜組み合わせて用いることもできる。これらのうちでも共触媒成分[B]として、少なくとも(B-2)または(B-3)を用いることが好ましい。
本発明では、上記のようなメタロセン触媒成分および共触媒成分を含む触媒を用いることが好ましいが、通常、これら触媒成分を粒子状担体化合物と接触させて、担体担持型触媒(固体触媒)として用いることが望ましい。
【0051】
担体化合物としては、粒径10〜300μm、好ましくは20〜200μmの顆粒状ないしは微粒子状固体が用いられる。この担体の比表面積は、通常、50〜1000m2/gであり、細孔容積は、0.3〜2.5cm3/gであることが望ましい。
このような担体としては、多孔質無機酸化物が好ましく用いられ、具体的には、SiO2、Al23、MgO、ZrO2、TiO2、B23、CaO、ZnO、BaO、ThO2など、またはこれらの混合物、例えば、SiO2-MgO、SiO2-Al23、SiO2-TiO2、SiO2-V25、SiO2-Cr23、SiO2-TiO2-MgOなどが用いられる。これらの中では、SiO2および/またはAl23を主成分とするものが好ましい。
【0052】
上記無機酸化物には、少量のNa2CO3、K2CO3、CaCO3、MgCO3、Na2SO4、Al2(SO4)3、BaSO4、KNO3、Mg(NO3)2、Al(NO3)3、Na2O、K2O、Li2Oなどの炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物成分が含有されていてもよい。
また、担体として有機化合物を用いることもでき、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンなどの炭素数2〜14のα-オレフィンを主成分として生成される(共)重合体あるいはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される重合体あるいは共重合体を用いることができる。
【0053】
担体と上記各成分の接触は、通常−50〜150℃、好ましくは−20〜120℃の温度で、1分〜50時間、好ましくは10分〜25時間行うことが望ましい。
上記のようにして調製される固体触媒は、担体1g当りメタロセン化合物[A]が遷移金属原子として5×10-6〜5×10-4グラム原子、好ましくは10-5〜2×10-4グラム原子の量で、成分[B]は、担体1g当りアルミニウム原子またはホウ素原子として10-3〜5×10-2グラム原子、好ましくは2×10-3〜2×10-2グラム原子の量で担持されていることが望ましい。
【0054】
さらに、本発明では、上記のような固体触媒をそのままで重合に用いることができるが、この固体触媒にオレフィンを予備重合して予備重合触媒を形成してから用いることもできる。
本発明では、固体触媒または予備重合触媒は、遷移金属/リットル(重合容積)で、通常10-8〜10-3グラム原子/リットル、さらには、10-7〜10-4グラム原子/リットルとなる量で用いられることが望ましい。
【0055】
また、予備重合触媒を用いるときには、成分[B]を用いても用いなくてもよいが、重合系の遷移金属に対する成分[B]中のアルミニウムまたはホウ素の原子比(AlまたはB/遷移金属)で、5〜300、好ましくは10〜200、さらに好ましくは15〜150となる量にて必要に応じて用いることができる。
本発明では、上記のような気相重合により、エチレン・α−オレフィン共重合体を顆粒状粒子で得ることができる。この粒子の平均粒径は、250〜3000μm程度、好ましくは400〜1500μm程度であることが望ましい。
【0056】
上記のようにして得られるエチレン・α−オレフィン共重合体の密度(ASTM D 150 E)は、0.865〜0.930g/cm3、好ましくは0.880〜0.920g/cm3であることが望ましい。
このエチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンから導かれる単位を87.0〜97.6モル%、好ましくは90.0〜96.8モル%の量で、炭素数3〜20のα−オレフィンから導かれる単位を13.0〜2.4モル%、好ましくは10.0〜3.2モル%の量で含有していることが望ましい。
【0057】
また、本発明に係るエチレン・α−オレフィン共重合体は、前述のポリエン類などから導かれる単位を10重量%以下、好ましくは5重量%以下、特に好ましくは3重量%以下の量で含んでいてもよい。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、(i)巨大な設備および膨大なコストを必要とするα−オレフィンと内部オレフィンとの分離設備を不要とし、(ii)高価な高純度α−オレフィンの使用を不要とし、かつ(iii)重合熱除去用化合物として、原料であるα−オレフィンに含有される内部オレフィンが使用可能であるので、製造コストの低減および装置の簡略化が可能なエチレン・α−オレフィン共重合体の製造が可能となる。
【0059】
また、本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法によれば、組成分布が狭く、かつ、分子量分布が狭く、諸物性に優れたエチレン・α−オレフィン共重合体を製造することができる。
【0060】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
内部オレフィンである2−ヘキセン量の測定は、横河電機株式会社製のガスクロマトグフラフィー装置を用いて行った。カラムとして、YGC-0150Q-1125,YGC-0150Q-1825,YGC-0111K,YGC-0150Q-0225,YGC-0111Kおよびキャピラリーを組み合わせて使用した。検出器には、TDC(Thermal Conductivity Detector)を使用した。
【0061】
なお、得られた共重合体の23℃におけるn-デカン可溶成分量(C10sol.)は、以下のようにして求めた。すなわち、1リットルのフラスコに、3gの試料(共重合体)、20mgの2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、500mlのn-デカンを入れ、145℃で加熱して溶解させた。溶解後、8時間かけて23℃まで冷却し、23℃にて8時間維持し、析出した固体と、溶解した重合体を含むn-デカン溶液とをグラスフィルターで濾過分離した。液相を減圧下150℃で恒量になるまで乾燥し、その重量を測定し、得られた重合体溶解量を、試料の重量に対する百分率として算出して、共重合体の23℃デカン可溶成分量(C10sol.)とした。
【0062】
また、得られた共重合体のメルトインデックス(MI)は、ASTM D1238に準拠して190℃、2.16kg荷重下で測定した。
【0063】
【実施例1】
[固体触媒成分の調製]
250℃で10時間乾燥したシリカ(SiO2)10kgを、154リットルのトルエンに懸濁した後、0℃まで冷却した。
この懸濁液にメチルアルミノオキサンのトルエン溶液(Al=1.52モル/リットル)50.5リットルを、1時間かけて懸濁液の温度を0〜5℃に保持しながら滴下し、引続き0℃で30分間保持した後、1.5時間かけて95℃まで昇温して95℃にて4時間保持した。
【0064】
その後、60℃まで降温し、上澄み液をデカンテーションにより除去した。
このようにして得られた固体触媒成分をトルエンで2回洗浄した後、トルエン100リットルで再懸濁して全量160リットルとした。
得られた懸濁液に、ビス(1,3-n-ブチルメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液(Zr=25.7ミリモル/リットル)22.0リットルを80℃で30分かけて滴下し、さらに、80℃にて2時間保持した。
【0065】
その後上澄み液を除去し、ヘキサンで2回洗浄することにより、シリカ1g当り、3.2mgのジルコニウムを含有する固体触媒成分を得た。
[固体触媒成分の予備重合]
十分に窒素置換した350リットルの反応器に、上記固体触媒成分7.0kgを装入し、さらにヘキサンを装入して全容積285リットルのヘキサン懸濁液とした。系内を10℃まで冷却した後、エチレンを流量8Nm3/hrにて5分間、固体触媒成分のヘキサン懸濁液中に吹き込んだ。この間、系内の温度は10〜15℃に保持した。
【0066】
エチレンの供給を、一旦停止した後、トリイソブチルアルミニウムを2.4モルおよび1-ヘキセン1.2kgを供給し、系内を密封系にした。その後、エチレンの供給を再開し、流量8Nm3/hrで15分間供給した後、流量を2Nm3/hrに下げて、系内の圧力を0.8kg/cm2G にした。この間に系内温度は35℃まで上昇した。
【0067】
その後、系内の温度を32〜35℃にコントロールしながら、エチレンを4Nm3/hrの流量で3.5時間供給した。この間、系内の圧力は0.7〜0.8kg/cm2G に保持した。次いで系内を窒素置換し、上澄み液を除去した後、ヘキサンで2回洗浄した。予備重合後の上澄み液は無色透明であった。
上記のようにして固体触媒成分1g当り3gの予備重合体を含む予備重合触媒を得た。この予備重合触媒(予備重合体)の極限粘度[η]は2.1dl/gであり、1-ヘキセン単位含量は4.8重量%であった。予備重合触媒の形状は良好であり、嵩密度は0.4g/cm3 であった。
[気相重合]
連続式流動床反応器を用いて気相重合を行った。
【0068】
上記で得られた予備重合触媒を62g/hrの量で連続的に供給して、エチレンと1−ヘキセンとを連続的に共重合させ、密度0.920g/cm3 の直鎖状低密度ポリエチレンを製造した。
重合の間、反応器上部からの抜出しガスが、表1に示すような一定組成となるように反応器内にエチレン、1−ヘキセン、水素、窒素および2−ヘキセンを導入した。
【0069】
重合は、重合温度=80℃、重合圧力=20kg/cm2G 、ガス線速u=70cm/sec.、重合速度=61kg/hrの条件下に行った。
重合条件および得られたエチレン・1−ヘキセン共重合体の物性を表1に示す。
【0070】
【比較例1】
2−ヘキセンを導入せずに、表1に示す重合条件で、実施例1と同様にしてエチレンと1−ヘキセンとの気相重合を行い、密度0.920g/cm3 の直鎖状低密度ポリエチレンを製造した。
重合条件および得られたエチレン・1−ヘキセン共重合体の物性を表1に示す。
【0071】
【実施例2】
表1に示す重合条件で、実施例1と同様にしてエチレンと1−ヘキセンとの気相重合を行い、密度0.900g/cm3 の直鎖状低密度ポリエチレンを製造した。
重合条件および得られたエチレン・1−ヘキセン共重合体の物性を表1に示す。
【0072】
【比較例2】
2−ヘキセンを導入せずに、表1に示す重合条件で、実施例1と同様にしてエチレンと1−ヘキセンとの気相重合を行い、密度0.900g/cm3 の直鎖状低密度ポリエチレンを製造した。
重合条件および得られたエチレン・1−ヘキセン共重合体の物性を表1に示す。
【0073】
【表1】
Figure 0004606671

【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るエチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法の重合プロセス概略説明図を示す。

Claims (5)

  1. エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを、気相法にて共重合させるエチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法において、重合系の気相中の内部オレフィン濃度が、0.1〜0.55モル%であることを特徴とするエチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法。
  2. エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを、気相法にて共重合させるエチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法において、重合系の気相中の内部オレフィンが、炭素数3〜20のα−オレフィン1モルに対して0.05〜0.32ルであることを特徴とするエチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載のエチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法において、重合系に外部から供給される炭素数3〜20のα−オレフィンに含有される内部オレフィン濃度が、0.2モル%以上であることを特徴とするエチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法。
  4. エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを、メタロセン化合物を含有する触媒系の存在下で共重合させることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載のエチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法。
  5. 前記触媒系が、少なくとも
    [A]周期律表第IVB族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物、および
    [B](B-1) 有機アルミニウムオキシ化合物、(B-2) 有機アルミニウム化合物、および(B-3) 該メタロセン化合物[A]と反応してイオン対を形成しうる化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物、
    を含む触媒系であることを特徴とする請求項に記載のエチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法。
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