JP3867021B2 - 熱可塑性樹脂組成物およびこれを用いた防湿紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物および該組成物が紙に塗工されてなるリサイクル可能な防湿紙に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
従来、防湿紙としては、紙にポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンを塗工したものが広く用いられている。このポリオレフィンは塗工し易く、塗工した防湿紙は、防湿性に優れ、低コストであるという長所を有している。
しかし、ポリオレフィンが塗工された防湿紙をリサイクル原料として再使用しようとすると、紙を再生しパルプ化する工程において、防湿層の被膜強度が強すぎるために離解機で十分に離解せず、紙から脱離したポリオレフィン層が塊やフィルムとして残り、これらが抄紙機の乾燥ロールに付着したり、再生紙の表面の滲みや凹凸の原因となったりするため、古紙のリサイクルを困難にしている。
【0003】
リサイクル可能な防湿紙として、合成ゴムラテックスとワックスエマルジョンからなるエマルジョン、合成ゴムラテックスとワックスエマルジョンと樹脂エマルジョンからなるエマルジョンを塗工した防湿紙が提案されている。これらの防湿紙は、防湿性に優れ、リサイクル性も有しているが、塗工液がエマルジョンであるために長大な乾燥設備が必要となり生産性が悪い欠点がある。
【0004】
また、非晶質ポリオレフィンと粘着付与樹脂とワックスとを主成分としてなる防湿性熱可塑性樹脂組成物を塗工した防湿紙も提案されている(特開平9−316252号公報、特開平11−158330号公報)。この防湿紙は防湿性と離解性に優れ、しかも安価な非晶質ポリオレフィンを主成分とするため、低コストで生産できる利点がある。しかし、非晶質ポリオレフィンが非結晶性で柔らかいため、防湿紙にタックが出易く、タックを抑えると折り曲げたときに防湿層が割れ易く、各種物性のバランスが取りにくいという問題点がある。
【0005】
【発明の目的】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであって、タック性が少なく、防湿性に優れ、リサイクル時の離解性に優れた防湿紙を提供することを目的とするとともに、このような防湿紙に用いられる熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的としている。
【0006】
【発明の概要】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、
(a)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量(Mn)が2,000〜10,000の範囲にあり、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が65〜100℃の範囲にあり、密度勾配管法で測定した密度が880〜910kg/m3の範囲にあり、示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶化温度(Tc(℃)、降温速度2℃/分で測定。)と、前記密度(D(kg/m3))との関係が下記式(I)
0.501×D−366 ≧ Tc …(I)
で示す関係を満たすポリエチレンと、
(b)粘着付与樹脂と、
(c)ワックスと
を含有することを特徴としている。
【0007】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、上記ポリエチレン(a)を20〜90重量%、上記粘着付与樹脂(b)を5〜40重量%、上記ワックス(c)を5〜50重量%(但し、(a)+(b)+(c)は100重量%)の割合で含有することが好ましい。
また、上記ワックス(c)の融点が、100〜170℃の範囲にあることが好ましい。
【0008】
本発明に係る防湿紙は、上記熱可塑性樹脂組成物が紙に塗工されてなることを特徴としている。
【0009】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物およびこれを用いた防湿紙について具体的に説明する。
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、
(a)ポリエチレンと、
(b)粘着付与樹脂と、
(c)ワックスと
を含有している。
【0010】
まず、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物に含有される各成分について具体的に説明する。
((a)ポリエチレン)
本発明で用いられるポリエチレン(a)は、エチレン単独重合体またはエチレンと炭素原子数3〜20のα-オレフィンとの共重合体である。
【0011】
ここでα−オレフィンとして好ましくは炭素原子数3〜10のα−オレフィンであり、より好ましくは炭素原子数3のプロピレン、炭素原子数4の1−ブテン、炭素原子数5の1−ペンテン、炭素原子数6の1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、炭素原子数8の1−オクテンなどが挙げられ、好ましくはプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンである。
【0012】
ポリエチレン(a)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量(Mn)が2,000〜10,000、好ましくは3,000〜10,000、より好ましくは4,000〜10,000の範囲にある。
ポリエチレン(a)の数平均分子量が上記範囲内にあると、タック性が少なく、かつ流動性が優れた熱可塑性樹脂組成物が得られる。
【0013】
ポリエチレン(a)は、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が65〜100℃、好ましくは70〜100℃より好ましくは80〜100℃の範囲にある。
ポリエチレン(a)の融点が上記範囲内にあると、タック性が少なく、紙にコート後の防湿層が割れにくい熱可塑性樹脂組成物が得られる。
【0014】
ポリエチレン(a)は、密度勾配管法で測定した密度が880〜910kg/m3、好ましくは890〜910kg/m3、より好ましくは890〜900kg/m3の範囲にある。
ポリエチレン(a)の密度が上記範囲内にあると、タック性が少なく、紙にコート後の防湿層が割れにくい熱可塑性樹脂組成物が得られる。
【0015】
ポリエチレン(a)は、示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶化温度(Tc(℃)、降温速度2℃/分で測定。)と、密度勾配管法で測定した密度(D(kg/m3))との関係が下記式(I)
0.501×D−366 ≧ Tc …(I)
好ましくは、下記式(Ia)
0.501×D−366.5 ≧ Tc …(Ia)
より好ましくは、下記式(Ib)
0.501×D−367 ≧ Tc …(Ib)
を満たす。
【0016】
ポリエチレン(a)において結晶化温度(Tc)と、密度(D)との関係が上記式を満たすと、ポリエチレン(a)のコモノマー組成がより均一になる結果、ポリエチレン(a)のベタつき成分が減少し、ポリエチレン(a)を含む熱可塑性樹脂組成物を塗工した防湿紙はタック性が少なくなる傾向がある。
ポリエチレン(a)は、アセトン抽出分量が好ましくは0〜20重量%、より好ましくは0〜15重量%の範囲にある。
【0017】
ポリエチレン(a)のアセトン抽出分量が上記範囲内にあると、非結晶かつ低分子量の成分が少なくなるので、ポリエチレン(a)を含む熱可塑性樹脂組成物を塗工した防湿紙はタック性が少なくなる傾向がある。
なお、アセトン抽出分量は以下のようにして測定される。
ソックスレー抽出器(ガラス製)に、フィルター(ADVANCE社製、No.84)を使用し、下段の丸底フラスコ(300ml)にアセトン200mlを装入に70℃の湯浴で5時間抽出を行う。初めのワックスは10gをフィルター上にセットする。
【0018】
ポリエチレン(a)は、Mw/Mnが好ましくは3以下、より好ましくは2.9以下、さらに好ましくは2.8以下である。
Mw/Mnが上記範囲内にあると、低分子量成分の少ない、より耐熱接着性に優れたホットメルト接着剤組成物を得ることができる。
ポリエチレン(a)は、エチレンと、プロピレンおよび/または1-ブテンとから得られるエチレン・α−オレフィン共重合体であることが好ましい。
【0019】
ポリエチレン(a)は、常温で固体であり、80〜120℃以上で、低粘度の液体となる。
上述したようなポリエチレン(a)は、例えば周期表第4族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物および/またはイオン化イオン性化合物とからなる以下のようなメタロセン系触媒を用いて製造することができる。
【0020】
(メタロセン化合物)
メタロセン系触媒を形成するメタロセン化合物は、周期表第4族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物であり、具体的な例としては下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
M1Lx …(1)
ここで、M1は周期表第4族から選ばれる遷移金属、xは遷移金属M1の原子価、Lは配位子である。
【0021】
M1で示される遷移金属の例としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウムなどがある。Lは遷移金属M1に配位する配位子であって、そのうち少なくとも1個の配位子Lはシクロペンタジエニル骨格を有する配位子であって、このシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は置換基を有していてもよい。
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子Lとしては、例えばシクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、n−またはi−プロピルシクロペンタジエニル基、n−、i−、sec−またはt−ブチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、メチルプロピルシクロペンタジエニル基、メチルブチルシクロペンタジエニル基、メチルベンジルシクロペンタジエニル基等のアルキルまたはシクロアルキル置換シクロペンタジエニル基;さらにインデニル基、4,5,6,7−テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基などが挙げられる。このシクロペンタジエニル骨格を有する配位子の水素は、ハロゲン原子またはトリアルキルシリル基などで置換されていてもよい。
【0022】
前記のメタロセン化合物が、配位子Lとしてシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を2個以上有する場合には、そのうち2個のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子同士が、エチレン、プロピレン等のアルキレン基;イソプロピリデン、ジフェニルメチレン等の置換アルキレン基;シリレン基またはジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルフェニルシリレン基等の置換シリレン基などを介して結合されていてもよい。
【0023】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子(シクロペンタジエニル骨格を有しない配位子)Lとしては、炭素原子数1〜12の炭化水素基、アルコキシ基、アリーロキシ基、スルホン酸含有基(−SO3R1)、ハロゲン原子または水素原子(ここで、R1はアルキル基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アリール基、ハロゲン原子で置換されたアリール基またはアルキル基で置換されたアリール基である。)などが挙げられる。
【0024】
(メタロセン化合物の例−1)
上記一般式(1)で表されるメタロセン化合物が、例えば遷移金属の原子価が4である場合、より具体的には下記一般式(2)で表される。
R2 kR3 lR4 mR5 nM1 …(2)
ここで、M1は周期表第4族から選ばれる遷移金属、R2はシクロペンタジエニル骨格を有する基(配位子)、R3、R4およびR5はそれぞれ独立にシクロペンタジエニル骨格を有するかまたは有しない基(配位子)である。kは1以上の整数であり、k+l+m+n=4である。
【0025】
M1がジルコニウムであり、かつシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を少なくとも2個含むメタロセン化合物の例を次に挙げる。
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノクロリドモノハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1−メチル−3−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドなど。
【0026】
前記の化合物の中で、1,3−位置換シクロペンタジエニル基を1,2−位置換シクロペンタジエニル基に置き換えた化合物も用いることができる。
またメタロセン化合物の別の例としては、上記一般式(2)において、R2、R3、R4およびR5の少なくとも2個、例えばR2およびR3がシクロペンタジエニル骨格を有する基(配位子)であり、この少なくとも2個の基がアルキレン基、置換アルキレン基、シリレン基または置換シリレン基などを介して結合されているブリッジタイプのメタロセン化合物を使用することもできる。このときR4およびR5は、それぞれ独立に、前述したシクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子Lと同様である。
【0027】
このようなブリッジタイプのメタロセン化合物としては、エチレンビス(インデニル)ジメチルジルコニウム、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
【0028】
(メタロセン化合物の例−2)
また別のメタロセン化合物の例としては、下記一般式(3)で表される特開平4−268307号公報記載のメタロセン化合物が挙げられる。
【0029】
【化1】
【0030】
ここで、M1は周期表第4族遷移金属であり、具体的にはチタニウム、ジルコニウム、ハフニウムが挙げられる。
R11およびR12は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子;炭素原子数1〜10のアルキル基;炭素原子数1〜10のアルコキシ基;炭素原子数6〜10のアリール基;炭素原子数6〜10のアリーロキシ基;炭素原子数2〜10のアルケニル基;炭素原子数7〜40のアリールアルキル基;炭素原子数7〜40のアルキルアリール基;炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基;またはハロゲン原子であり、R11およびR12は、塩素原子であることが好ましい。
【0031】
R13およびR14は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子;ハロゲン原子;ハロゲン化されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基;炭素原子数6〜10のアリール基;−N(R20)2、−SR20、−OSi(R20)3、−Si(R20)3または−P(R20)2基である。ここで、R20はハロゲン原子、好ましくは塩素原子;炭素原子数1〜10、好ましくは1〜3のアルキル基;または炭素原子数6〜10、好ましくは6〜8のアリール基である。R13およびR14は、特に水素原子であることが好ましい。
【0032】
R15およびR16は、水素原子が含まれないことを除きR13およびR14と同じであって、互いに同じでも異なっていてもよく、好ましくは同じである。R15およびR16は、好ましくはハロゲン化されていてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、トリフルオロメチル等が挙げられ、特にメチルが好ましい。
【0033】
上記一般式(3)において、R17は次の群から選ばれる。
【0034】
【化2】
【0035】
=BR21、=AlR21、−Ge−、−Sn−、−O−、−S−、=SO、=SO2、=NR21、=CO、=PR21、=P(O)R21など。M2はケイ素、ゲルマニウムまたは錫、好ましくはケイ素またはゲルマニウムである。
ここで、R21、R22およびR23は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子;ハロゲン原子;炭素原子数1〜10のアルキル基;炭素原子数1〜10のフルオロアルキル基;炭素原子数6〜10のアリール基;炭素原子数6〜10のフルオロアリール基;炭素原子数1〜10のアルコキシ基;炭素原子数2〜10のアルケニル基;炭素原子数7〜40アリールアルキル基;炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基;または炭素原子数7〜40のアルキルアリール基である。「R21とR22」または「R21とR23」とは、それぞれそれらが結合する原子と一緒になって環を形成してもよい。
【0036】
また、R17は、=CR21R22、=SiR21R22、=GeR21R22、−O−、−S−、=SO、=PR21または=P(O)R21であることが好ましい。
R18およびR19は互いに同一でも異なっていてもよく、R21と同じものが挙げられる。
mおよびnは互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ0、1または2、好ましくは0または1であり、m+nは0、1または2、好ましくは0または1である。
【0037】
上記一般式(3)で表されるメタロセン化合物の例としては、次の化合物が挙げられる。rac−エチレン(2−メチル−1−インデニル)2−ジルコニウム−ジクロライド、rac−ジメチルシリレン(2−メチル−1−インデニル)2−ジルコニウム−ジクロライドなど。これらのメタロセン化合物は、例えば、特開平4−268307号公報に記載の方法で製造することができる。
【0038】
(メタロセン化合物の例−3)
また、メタロセン化合物としては、下記一般式(4)で表されるメタロセン化合物を用いることもできる。
【0039】
【化3】
【0040】
式中、M3は、周期表第4族の遷移金属原子を示し、具体的にはチタニウム、ジルコニウム、ハフニウムなどである。
R24およびR25は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基を示す。
【0041】
R24は炭化水素基であることが好ましく、特にメチル、エチルまたはプロピルの炭素原子数1〜3のアルキル基であることが好ましい。
R25は水素原子または炭化水素基が好ましく、特に水素原子、またはメチル、エチルもしくはプロピルの炭素原子数1〜3のアルキル基であることが好ましい。
【0042】
R26、R27、R28およびR29は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基を示す。これらの中では水素原子、炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基であることが好ましい。R26とR27、R27とR28、R28とR29のうち少なくとも1組は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、単環の芳香族環を形成していてもよい。また芳香族環を形成する基以外に、炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基が2個以上ある場合には、これらが互いに結合して環状になっていてもよい。なおR29が芳香族基以外の置換基である場合、水素原子であることが好ましい。
【0043】
X1およびX2は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基またはイオウ含有基を示す。
Yは、炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基、炭素原子数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2−、−NR30−、−P(R30)−、−P(O)(R30)−、−BR30−または−AlR30−(ただし、R30は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基)を示す。
【0044】
式(4)において、R26とR27、R27とR28、R28とR29のうち少なくとも1組が互いに結合して形成する単環の芳香族環を含み、M3に配位する配位子としては、次式で表されるものなどが挙げられる。
【0045】
【化4】
【0046】
(式中、Yは前式に示したものと同じである。)
(メタロセン化合物の例−4)
メタロセン化合物としては、また下記一般式(5)で表されるメタロセン化合物を用いることもできる。
【0047】
【化5】
【0048】
式中、M3、R24、R25、R26、R27、R28およびR29は、上記一般式(4)と同じである。
R26、R27、R28およびR29のうち、R26を含む2個の基がアルキル基であることが好ましく、R26とR28、またはR28とR29がアルキル基であることが好ましい。このアルキル基は、2級または3級アルキル基であることが好ましい。またこのアルキル基は、ハロゲン原子、ケイ素含有基で置換されていてもよく、ハロゲン原子、ケイ素含有基としては、R24、R25で例示した置換基が挙げられる。
【0049】
R26、R27、R28およびR29のうち、アルキル基以外の基は、水素原子であることが好ましい。
またR26、R27、R28およびR29は、これらから選ばれる2種の基が互いに結合して芳香族環以外の単環あるいは多環を形成していてもよい。ハロゲン原子としては、上記R24およびR25と同様のものが挙げられる。
【0050】
X1、X2およびYとしては、上記と同様のものが挙げられる。
上記一般式(5)で表されるメタロセン化合物の具体的な例を次に示す。rac−ジメチルシリレン−ビス(4,7−ジメチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレン−ビス(2,4,7−トリメチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレン−ビス(2,4,6−トリメチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリドなど。
【0051】
これらの化合物において、ジルコニウム金属を、チタニウム金属、ハフニウム金属に置換えた遷移金属化合物を用いることもできる。遷移金属化合物は、通常ラセミ体として用いられるが、R型またはS型を用いることもできる。
(メタロセン化合物の例−5)
メタロセン化合物として、下記一般式(6)で表されるメタロセン化合物を使用することもできる。
【0052】
【化6】
【0053】
式中、M3、R24、X1、X2およびYは、上記一般式(4)と同じである。
R24は炭化水素基であることが好ましく、特にメチル、エチル、プロピルまたはブチルの炭素原子数1〜4のアルキル基であることが好ましい。
R25は、炭素原子数6〜16のアリール基を示す。R25はフェニル、ナフチルであることが好ましい。アリール基は、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基または炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基で置換されていてもよい。
【0054】
X1およびX2としては、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。
上記一般式(6)で表されるメタロセン化合物の具体的な例を次に示す。
rac−ジメチルシリレン−ビス(4−フェニル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(α−ナフチル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(β−ナフチル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(1−アントリル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリドなど。またこれら化合物において、ジルコニウム金属をチタニウム金属またはハフニウム金属に置き換えた遷移金属化合物を用いることもできる。
【0055】
(メタロセン化合物の例−6)
またメタロセン化合物として、下記一般式(7)で表されるメタロセン化合物を用いることもできる。
LaM4X3 2 …(7)
ここで、M4は周期表第4族またはランタニド系列の金属である。Laは非局在化π結合基の誘導体であり、金属M4活性サイトに拘束幾何形状を付与している基である。X3は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数20以下の炭化水素基、20以下のケイ素を含有するシリル基または20以下のゲルマニウムを含有するゲルミル基である。
【0056】
この化合物の中では、次式(8)で示される化合物が好ましい。
【0057】
【化7】
【0058】
M4は、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムである。
X3は上記一般式(7)で説明したものと同様である。
CpはM4にπ結合しており、かつ置換基Zを有する置換シクロペンタジエニル基である。
Zは酸素、イオウ、ホウ素または周期表第4族の元素(例えばケイ素、ゲルマニウムまたは錫)である。
【0059】
Yは窒素、リン、酸素またはイオウを含む配位子であり、ZとYとで縮合環を形成していてもよい。
このような式(8)で表されるメタロセン化合物の具体的な例を次に示す。
(ジメチル(t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)シラン)チタンジクロリド、((t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイル)チタンジクロリドなど。またこのメタロセン化合物において、チタンをジルコニウムまたはハフニウムに置き換えた化合物を挙げることもできる。
【0060】
(メタロセン化合物の例−7)
またメタロセン化合物としては、下記一般式(9)で表されるメタロセン化合物を使用することもできる。
【0061】
【化8】
【0062】
M3は周期表第4族の遷移金属原子であり、具体的には、チタニウム、ジルコニウムまたはハフニウムであり、好ましくはジルコニウムである。
R31は互いに同一でも異なっていてもよく、そのうち少なくとも1個が炭素原子数11〜20のアリール基、炭素原子数12〜40のアリールアルキル基、炭素原子数13〜40のアリールアルケニル基、炭素原子数12〜40のアルキルアリール基またはケイ素含有基であるか、またはR31で示される基のうち隣接する少なくとも2個の基が、それらの結合する炭素原子とともに、単数または複数の芳香族環または脂肪族環を形成している。この場合、R31により形成される環は、R31が結合する炭素原子を含んで全体として炭素原子数が4〜20である。
【0063】
アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アルキルアリール基および芳香族環、脂肪族環を形成しているR31以外のR31は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基またはケイ素含有基である。
R32は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基、炭素原子数7〜40のアルキルアリール基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基である。
【0064】
また、R32で示される基のうち隣接する少なくとも2個の基が、それらの結合する炭素原子とともに、単数または複数の芳香族環または脂肪族環を形成していてもよい。この場合、R32により形成される環は、R32が結合する炭素原子を含んで全体として炭素原子数が4〜20であり、芳香族環、脂肪族環を形成しているR32以外のR32は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基またはケイ素含有基である。
【0065】
なお、R32で示される2個の基が、単数または複数の芳香族環または脂肪族環を形成して構成される基にはフルオレニル基が次式のような構造になる態様も含まれる。
【0066】
【化9】
【0067】
R32は、水素原子またはアルキル基であることが好ましく、特に水素原子またはメチル、エチル、プロピルの炭素原子数1〜3の炭化水素基であることが好ましい。このような置換基としてR32を有するフルオレニル基としては、2,7−ジアルキル−フルオレニル基が好適な例として挙げられ、この場合の2,7−ジアルキルのアルキル基としては、炭素原子数1〜5のアルキル基が挙げられる。また、R31とR32は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0068】
R33およびR34は互いに同一でも異なっていてもよく、前記と同様の水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基、炭素原子数7〜40のアルキルアリール基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基である。これらのうち、R33およびR34は、少なくとも一方が炭素原子数1〜3のアルキル基であることが好ましい。
【0069】
X1およびX2は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基もしくは窒素含有基、またはX1とX2とから形成された共役ジエン残基である。
X1とX2とから形成された共役ジエン残基としては、1,3−ブタジエン、2,4−ヘキサジエン、1−フェニル−1,3−ペンタジエン、1,4−ジフェニルブタジエンの残基が好ましく、これらの残基はさらに炭素原子数1〜10の炭化水素基で置換されていてもよい。
【0070】
X1およびX2としては、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基またはイオウ含有基であることが好ましい。
Yは、炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基、炭素原子数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2−、−NR35−、−P(R35)−、−P(O)(R35)−、−BR35−または−AlR35−(ただし、R35は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基)を示す。
【0071】
これらの2価の基のうちでも、−Y−の最短連結部が1個または2個の原子で構成されているものが好ましい。また、R35は、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基である。
Yは、炭素原子数1〜5の2価の炭化水素基、2価のケイ素含有基または2価のゲルマニウム含有基であることが好ましく、2価のケイ素含有基であることがより好ましく、アルキルシリレン、アルキルアリールシリレンまたはアリールシリレンであることが特に好ましい。
【0072】
(メタロセン化合物の例−8)
またメタロセン化合物としては、下記一般式(9)で表されるメタロセン化合物を用いることもできる。
【0073】
【化10】
【0074】
式中、M3は周期表第4族の遷移金属原子であり、具体的にはチタニウム、ジルコニウムまたはハフニウムであり、好ましくはジルコニウムである。
R36は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基である。なお、上記アルキル基およびアルケニル基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0075】
R36はこれらのうち、アルキル基、アリール基または水素原子であることが好ましく、特にメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピルの炭素原子数1〜3の炭化水素基、フェニル、α−ナフチル、β−ナフチルなどのアリール基または水素原子であることが好ましい。
R37は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基、炭素原子数7〜40のアルキルアリール基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基である。なお、上記アルキル基、アリール基、アルケニル基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アルキルアリール基は、ハロゲンが置換していてもよい。
【0076】
R37はこれらのうち、水素原子またはアルキル基であることが好ましく、特に水素原子またはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、tert−ブチルの炭素原子数1〜4の炭化水素基であることが好ましい。また、前記R36とR37は、互いに同一でも異なっていてもよい。
R38およびR39は、いずれか一方が炭素原子数1〜5のアルキル基であり、他方は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基である。
【0077】
これらのうち、R38およびR39は、いずれか一方がメチル、エチル、プロピルなどの炭素原子数1〜3のアルキル基であり、他方は水素原子であることが好ましい。
X1およびX2は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基もしくは窒素含有基、またはX1とX2とから形成された共役ジエン残基である。これらのうち、ハロゲン原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。
【0078】
Yは、炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基、炭素原子数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2−、−NR40−、−P(R40)−、−P(O)(R40)−、−BR40−または−AlR40−(但し、R40は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基)を示す。
【0079】
これらのうちYは、炭素原子数1〜5の2価の炭化水素基、2価のケイ素含有基または2価のゲルマニウム含有基であることが好ましく、2価のケイ素含有基であることがより好ましく、アルキルシリレン、アルキルアリールシリレンまたはアリールシリレンであることが特に好ましい。
以上に説明したメタロセン化合物は、単独であるいは2種以上組み合せて用いられる。またメタロセン化合物は、炭化水素またはハロゲン化炭化水素などに希釈して用いてもよい。
【0080】
(有機アルミニウムオキシ化合物)
有機アルミニウムオキシ化合物は、公知のアルミノオキサンであってもよく、またベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
このような公知のアルミノオキサンは、具体的には次式で表される。
【0081】
【化11】
【0082】
ここで、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭化水素基であり、好ましくはメチル基、エチル基、特に好ましくはメチル基であり、mは2以上、好ましくは5〜40の整数である。
アルミノオキサンは式(OAl(R’))で表されるアルキルオキシアルミニウム単位および式(OAl(R''))で表されるアルキルオキシアルミニウム単位(ここで、R'およびR''はRと同様の炭化水素基を例示することができ、R'およびR''は相異なる基を表す。)からなる混合アルキルオキシアルミニウム単位から形成されていてもよい。なお有機アルミニウムオキシ化合物は、少量のアルミニウム以外の金属の有機化合物成分を含有していてもよい。
【0083】
(イオン化イオン性化合物)
イオン化イオン性化合物(イオン性イオン化化合物、イオン性化合物と称される場合もある)としては、ルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物を例示することができる。
ルイス酸としては、BR3(Rは、フッ素、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素である。)で表される化合物が挙げられる。ルイス酸の具体的なものとしては、トリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p−トリル)ボロン、トリス(o−トリル)ボロン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ボロンなどが挙げられる。
【0084】
前記イオン性化合物としては、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N−ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などが挙げられる。イオン性化合物としてのトリアルキル置換アンモニウム塩としては、トリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。イオン性化合物としてのジアルキルアンモニウム塩としては、ジ(1−プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0085】
前記イオン性化合物としては、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを挙げることもできる。
前記ボラン化合物としては、デカボラン(9);ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0086】
前記カルボラン化合物としては、4−カルバノナボラン(9)、1,3−ジカルバノナボラン(8)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩などが挙げられる。
このようなイオン化イオン性化合物は、単独であるいは2種以上組み合せて用いられる。また有機アルミニウムオキシ化合物およびイオン化イオン性化合物は、前記担体化合物に担持させて用いることもできる。
【0087】
またメタロセン系触媒を形成するに際しては、有機アルミニウムオキシ化合物および/またはイオン化イオン性化合物とともに、以下のような有機アルミニウム化合物を用いてもよい。
(有機アルミニウム化合物)
必要に応じて用いられる有機アルミニウム化合物としては、分子内に少なくとも1個のAl−炭素結合を有する化合物が使用できる、このような化合物としては、例えば下記一般式(11)で表される有機アルミニウム化合物、
(R6)m Al(OR7)n Hp X4 q …(11)
(式中、R6およびR7は互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子を通常1〜15個、好ましくは1〜4個含む炭化水素基である。X4はハロゲン原子である。mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3を満たす数であって、しかもm+n+p+q=3である。)
下記一般式(12)で表される第1属金属とアルミニウムとの錯アルキル化物などが挙げられる。
【0088】
(M5)Al(R6) …(12)
(式中、M5はLi、NaまたはKであり、R6は前記一般式(11)のR6と同じである。)
(重合)
本発明で用いられるポリエチレン(a)は、上記メタロセン系触媒の存在下に、エチレンを通常液相で単独重合するか、またはエチレンおよびα−オレフィンを共重合させることにより得られる。この際、一般に炭化水素溶媒が用いられるが、α−オレフィンを溶媒として用いてもよい。なお、ここで用いる各モノマーは、前述した通りである。
【0089】
重合方法は、ポリエチレン(a)がヘキサン等の溶媒中に粒子として存在する状態で重合する懸濁重合、溶媒を用いないで重合する気相重合、そして140℃以上の重合温度で、ポリエチレン(a)が溶剤と共存または単独で溶融した状態で重合する溶液重合が可能であり、その中でも溶液重合が経済性と品質の両面で好ましい。
【0090】
重合反応は、バッチ法あるいは連続法いずれの方法で行ってもよい。重合をバッチ法で実施するに際しては、前記の触媒成分は次に説明する濃度下で用いられる。
重合系内のメタロセン化合物の濃度は、通常0.00005〜0.1ミリモル/リットル(重合容積)、好ましくは0.0001〜0.05ミリモル/リットルである。
【0091】
有機アルミニウムオキシ化合物は、重合系内のメタロセン化合物中の遷移金属に対するアルミニウム原子のモル比(Al/遷移金属)で、1〜10000、好ましくは10〜5000の量で供給される。
イオン化イオン性化合物は、重合系内のメタロセン化合物に対するイオン化イオン性化合物のモル比(イオン化イオン性化合物/メタロセン化合物)で表して、0.5〜20、好ましくは1〜10の量で供給される。
【0092】
また有機アルミニウム化合物が用いられる場合には、通常約0〜5ミリモル/リットル(重合容積)、好ましくは約0〜2ミリモル/リットルとなるような量で用いられる。
重合反応は、通常温度が−20〜+200℃、好ましくは50〜180℃、さらに好ましくは70〜180℃で、圧力が0を超えて7.8MPa(80kgf/cm2、ゲージ圧)以下、好ましくは0を超えて4.9MPa(50kgf/cm2、ゲージ圧)以下の条件下に行われる。
【0093】
重合に際して、エチレンおよび必要に応じて用いられるα−オレフィンは、前記した特定組成のポリエチレン(a)が得られるような量割合で重合系に供給される。また重合に際しては、水素などの分子量調節剤を添加することもできる。このようにして重合させると、生成した重合体は通常これを含む重合液として得られるので、常法により処理するとポリエチレン(a)が得られる。
【0094】
重合反応は、特に(メタロセン化合物の例−6)で示したメタロセン化合物を含む触媒の使用が好ましい。
((b)粘着付与樹脂)
本発明で用いられる粘着付与樹脂(b)は、熱可塑性樹脂組成物に離解性を付与する効果があるものであれば特に限定されず、例えばテルペン系樹脂(テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、およびそれらの水素化物など)、脂肪族系樹脂、脂環族系樹脂、芳香族系樹脂、クマロン・インデン樹脂、ロジンおよびその誘導体などが挙げられる。これらの中では、テルペン系樹脂および脂環族系樹脂が防湿性に優れているため好ましい。
【0095】
テルペン系樹脂とは、例えばα−ピネン、β−ピネン、ジペンテンなどのテルペン単量体、またはそれらと芳香族単量体などを、有機溶媒中でフリーデルクラフト型触媒存在下で重合、または重合後さらに水素添加処理して得られる(共)重合体である。具体的には、YSレジンPX、YSレジンTO、クリアロン、YSポリスター、マイティエース(以上商品名、ヤスハラケミカル(株)製)などが挙げられる。
【0096】
また、脂環族系樹脂としては、例えばエスコレッツ1202(商品名、トーネックス(株)製)などが挙げられる。
上記粘着付与樹脂(b)は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
粘着付与樹脂(b)の軟化点は、好ましくは70〜180℃、より好ましくは100〜160℃である。粘着付与樹脂(b)の軟化点が70℃未満であると、粘着付与樹脂(b)を含有する熱可塑性樹脂組成物を塗工した防湿紙にタックが出やすくなり、防湿紙をリサイクルするとき、乾燥工程でドライヤーにピッチが付きやすくなる。一方、180℃を超えると、防湿紙を折り曲げたとき防湿層が割れやすくなる。
【0097】
((c)ワックス)
本発明で用いられるワックス(c)としては、熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度を下げ、軟化点を上げる効果があるものであれば特に限定されず、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、ポリエチレンワックス(上記ポリエチレン(a)を含まない。)およびポリプロピレンワックスなどが挙げられる。これらの中ではパラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスが好ましい。
【0098】
上記ワックス(c)は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
ワックス(c)の融点、好ましくは100〜170℃、より好ましくは110〜160℃の範囲である。ワックス(c)の融点が100℃未満であると、ワックス(c)を含有する熱可塑性樹脂組成物を塗工した防湿紙をリサイクルする際の乾燥工程でドライヤーにピッチが付き易くなる。一方、170℃を超えると取り扱いが難しくなる。
【0099】
(組成物)
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、上述したようなポリエチレン(a)、粘着付与樹脂(b)、ワックス(c)からなり、
ポリエチレン(a)を、20〜90重量%、好ましくは30〜80重量%、より好ましくは40〜60重量%、
粘着付与樹脂(b)を、5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%、より好ましくは20〜30重量%、
ワックス(c)を、5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%より好ましくは20〜30重量%、の割合で含有している(但し、(a)+(b)+(c)の合計量は100重量%である。)。
【0100】
ポリエチレン(a)の含有割合が20重量%未満であると、熱可塑性樹脂組成物を塗工した防湿紙を折り曲げたときに防湿層が割れ易く、一方、90重量%を超えると熱可塑性樹脂組成物を塗工した防湿紙をリサイクルする際の離解性が悪くなる。
粘着付与樹脂(b)の含有割合が5重量%未満であると、熱可塑性樹脂組成物を塗工した防湿紙をリサイクルする際の離解性が悪くなり、一方、40重量%を超えると、防湿紙を折り曲げたときに防湿層が割れやすくなる。
【0101】
ワックス(c)の含有割合が5重量%未満であると、熱可塑性樹脂組成物を塗工した防湿紙をリサイクルする際に、乾燥工程でドライヤーにピッチが付きやすくなる。一方、50重量%を超えると、防湿紙を折り曲げたとき防湿層が割れやすくなる。
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、軟化点が、好ましくは100〜200℃、さらに好ましくは120〜180℃である。組成物の軟化点が100℃未満であると該組成物を塗工した防湿性紙のリサイクルの乾燥工程でドライヤーにピッチが付き易くなる。一方、200℃を超えると、紙への塗工性が悪くなる。
【0102】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記ポリエチレン(a)、粘着付与樹脂(b)およびワックス(c)を混合することにより得られるが、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じてピッチ付着防止のためにポリプロピレンなどのポリオレフィン(上記ポリエチレン(a)を含まない。)やポリスチレン、AS樹脂(スチレン−アクリルニトリル共重合物)、熱可塑性エラストマーなどを加えてもよい。
【0103】
さらに、本発明の目的の範囲内で、必要に応じて炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、タルク、クレー、カーボンブラックなどの充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、可塑剤またはオイルなどの添加剤を配合することができる。これら添加剤は特に限定されるものではなく、通常、熱可塑性樹脂組成物に用いられる従来公知のものが使用される。
【0104】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を調製するに際して、各成分の混合方法は特に限定されず、全成分を一括添加して混合してもよく、各成分を逐次添加してもよい。
(防湿紙)
本発明に係る防湿紙は、紙に上記熱可塑性樹脂組成物が塗工されてなる。
【0105】
熱可塑性樹脂組成物を塗工する紙の種類は、特に限定されない。また紙の坪量は、特に限定されないが、好ましくは50〜200g/m2の範囲である。
熱可塑性樹脂組成物を紙に塗工する方法としては従来公知の方法が用いられ、例えば、熱可塑性樹脂組成物を加熱溶融(ホットメルト)して使用する方法である、ロールコーターやスロットオリフィスコーター、ヘッドコーター、エクストルージョンコーターなどが利用できる。
【0106】
塗工量は、特に限定されないが、好ましくは10〜50g/m2の範囲である。上記塗工量の調整は、例えば、マイヤーバーなど一般に使用される方法で行われる。
【0107】
【発明の効果】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物を用いると、タック性が少なく、従来のオレフィン系樹脂組成物を塗工した防湿紙より優れた防湿性を有する防湿紙を得ることができ、また、リサイクルする際にエマルジョン塗工タイプ、ホットメルトコーティグタイプのリサイクル性防湿紙と同等の優れた離解性を有する防湿紙を得ることができる。
【0108】
本発明の防湿紙は、タック性が少なく、従来のオレフィン系樹脂組成物を塗工した防湿紙より優れた防湿性を有し、また、リサイクルする際にエマルジョン塗工タイプ、ホットメルトコーティグタイプのリサイクル性防湿紙と同等の優れた離解性を有する。
【0109】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
物性評価は、下記の方法によって測定した。
(1)数平均分子量(Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定。
(2)DSC融点
通常の方法で、昇温速度10℃/min.で測定した。
(3)DSC結晶化速度
降温速度2℃/min.で測定した。
(4)酸価
JIS K5902に準拠した。
(5)タック
指触試験にて、防湿紙サンプル表面のタックを評価した。
(6)離解性
JIS 8209に準じて、標準離解機(Tappi標準離解機、3000rpm)を用いて、常温の水道水に約2.5cm角の防湿紙サンプルをパルプ濃度3%となる量加えて、離解を10分間行い、離解後の液及び手すきシート作製後の繊維状態と観察し目視で以下のように判断した。
【0110】
◎; 完全に紙が繊維状に離解
○; 70%以上の紙が繊維状に離解
×; 70未満の紙が繊維状に離解
(7)耐にじみ温度
上記離解性テストと同様に、防湿紙サンプルを再抄紙した後に、再生紙を乾燥機内に100〜160℃の温度(10℃刻み)で10分間入れて乾燥し、樹脂残存物などによる滲みの有無を確認し、滲みの発生しない上限温度を耐滲み温度とした。
(8)透湿度
カップ法(JIS Z0208準拠)で透湿度を測定した。透湿度は平板状と十字折りについて測定した。なお、十字折りは、サンプルを中央から十文字に折り、2kgのロールを2往復させて折り目を付けた後に測定した。透湿度の単位は、24時間後のg/m2である。
【0111】
【合成例1】
メタロセン触媒を用いて、次のようにしてポリエチレンを合成した。
充分に窒素置換した内容積2リットルのステンレス製オートクレーブにヘキサン910mlおよびブテン−1 90mlを装入し、水素を0.1Mpa(ゲージ圧)導入した。次いで、系内の温度を150℃に昇温した後、トリイソブチルアルミニウム 0.3ミリモル、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート 0.04ミリモル、(t−ブチルアミド)ジメチル(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)シランチタンジクロライド(シグマアルドリッチ社製)0.002ミリモルをエチレンで圧入することにより重合を開始した。その後、エチレンのみを連続的に供給することにより全圧を2.9Mpa(ゲージ圧)に保ち、150℃で20分間重合を行った。
【0112】
少量のエタノールを系内に添加することにより重合を停止した後、未反応のエチレンをパージした。得られたポリマー溶液を、100℃減圧下で一晩乾燥した。その結果、Mnが4,100であり、密度が889kg/m3であり、DSC融点温度が75℃であるポリエチレン(I)を20gを得た。
【0113】
【合成例2】
メタロセン触媒を用いて、次のようにしてポリエチレンを合成した。
充分に窒素置換した内容積2リットルのステンレス製オートクレーブにヘキサン 900mlおよびプロピレン 100mlを装入し、水素を0.05Mpa(ゲージ圧)導入した。次いで、系内の温度を150℃に昇温した後、トリイソブチルアルミニウム 0.3ミリモル、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート 0.04ミリモル、(t−ブチルアミド)ジメチル(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)シランチタンジクロライド(シグマアルドリッチ社製)0.002ミリモルをエチレンで圧入することにより重合を開始した。その後、エチレンのみを連続的に供給することにより全圧を2.9Mpa(ゲージ圧)に保ち、150℃で20分間重合を行った。
【0114】
少量のエタノールを系内に添加することにより重合を停止した後、未反応のエチレンとプロペンをパージした。得られたポリマー溶液を、100℃減圧下で一晩乾燥した。
その結果、Mnが8,200であり、密度が891kg/m3であり、DSC融点温度が78℃であるエチレン重合体(ポリエチレン(II))を33gを得た。
【0115】
【合成例3】
上記合成例2で合成されたポリエチレン(II)20gをトルエン100ml中に入れ、160℃で耐圧オートクレーブ中で完全に溶解後、70℃の無水マレイン酸0.7gおよび常温のジターシャリーブチルパーオキサイド(日本油脂製、パーブチルD)1.2gを別個に3時間で均等フィードし、1時間熟成後、1mmHgの真空度で溶剤を除去し、20.6gのポリエチレン(III)を得た。
【0116】
【表1】
【0117】
【実施例1】
ポリエチレン(I)60重量部、粘着付与樹脂(荒川化学製 水添芳香族炭化水素樹脂、商品名:アルコンP−125)20重量部およびポリエチレンワックス(三井化学製、商品名:ハイワックス HW110P)20重量部を、実験室にて手動で混合しながら、180℃で溶融混合し、メルテックス(株)製ヘッドコーターを用いて、100g/m2のクラフト紙に塗工量22g/m2で塗工して防湿紙サンプルを得た。
【0118】
【実施例2】
ポリエチレン(II)60重量部、粘着付与樹脂(荒川化学製 水添芳香族炭化水素樹脂、商品名:アルコンP−125)20重量部およびポリエチレンワックス(三井化学製、商品名:ハイワックス HW110P)20重量部を使用した以外は実施例1と同様に行い、防湿紙サンプルを得た。
【0119】
【実施例3】
ポリエチレン(III)60重量部、粘着付与樹脂(荒川化学製 水添芳香族炭化水素樹脂、商品名:アルコンP−125)20重量部およびポリエチレンワックス(三井化学製、商品名:ハイワックス HW110P)20重量部を使用した以外は実施例1と同様に行い、防湿紙サンプルを得た。
【0120】
【比較例1】
ポリエチレン(IV)60重量部、粘着付与樹脂(荒川化学製 水添芳香族炭化水素樹脂、商品名:アルコンP−125)20重量部およびポリエチレンワックス(三井化学製、商品名:ハイワックス HW110P)20重量部を使用した以外は実施例1と同様に行い、防湿紙サンプルを得た。
【0121】
上記実施例1〜3、比較例1の防湿紙サンプルの評価結果を、表2に示す。
【0122】
【表2】
Claims (4)
- (a)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量(Mn)が2,000〜10,000の範囲にあり、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が65〜100℃の範囲にあり、密度勾配管法で測定した密度が880〜910kg/m3の範囲にあり、示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶化温度(Tc(℃)、降温速度2℃/分で測定。)と、前記密度(D(kg/m3))との関係が下記式(I)
0.501×D−366 ≧ Tc …(I)
で示す関係を満たすポリエチレンと、
(b)粘着付与樹脂と、
(c)ワックスと
を含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。 - 上記ポリエチレン(a)を20〜90重量%、上記粘着付与樹脂(b)を5〜40重量%、上記ワックス(c)を5〜50重量%(但し、(a)+(b)+(c)は100重量%)の割合で含有することを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 上記ワックス(c)の融点が、100〜170℃の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物が紙に塗工されてなることを特徴とする防湿紙。
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