JP2004023862A - モータ制御装置及び空調装置用モータ - Google Patents
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Abstract
【課題】異音や振動の発生を抑制若しくは防止でき、特に、作動開始時における異音や振動の発生を効果的に抑制若しくは防止できるモータ制御装置を得る。
【解決手段】制御電圧演算部52では、ロータの実回転数Srが切替回転数Scよりも小さい場合には、最終目標回転数Steに1よりも十分に小さな回転係数Ksを欠けて目標回転数Stを設定し、この目標回転数Stと実回転数Srとの偏差Seに基づいて制御電圧Vm1を設定する。このようにすることで、偏差Seが実回転数Srと最終目標回転数Steとの偏差よりも小さくなる。これにより、ブラシレスブロアモータ作動開始直後において各コイルに印加する電圧を意図的に小さくでき、ブラシレスブロアモータ作動開始時における異音や振動の発生を効果的に抑制若しくは防止できる。
【選択図】 図1
【解決手段】制御電圧演算部52では、ロータの実回転数Srが切替回転数Scよりも小さい場合には、最終目標回転数Steに1よりも十分に小さな回転係数Ksを欠けて目標回転数Stを設定し、この目標回転数Stと実回転数Srとの偏差Seに基づいて制御電圧Vm1を設定する。このようにすることで、偏差Seが実回転数Srと最終目標回転数Steとの偏差よりも小さくなる。これにより、ブラシレスブロアモータ作動開始直後において各コイルに印加する電圧を意図的に小さくでき、ブラシレスブロアモータ作動開始時における異音や振動の発生を効果的に抑制若しくは防止できる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、通常の直流モータやブラシレスモータ等の各種モータの通電制御を行なうモータ制御装置及び車両等の空調装置でブロワを回転させるために用いる空調装置用モータに関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、車両の室内に冷風や温風を供給するための空調装置用のブラシレスDCモータは、通常、駆動回路に設けられたパワートランジスタ等のスイッチング素子を所定のタイミングでON/OFFすることでステータ(固定子)を構成する複数相のコイルに対して所定のタイミングで通電及び通電解除を行ない、コイルの周囲に回転磁界を形成することで、ロータ(回転子)を構成する永久磁石が形成する磁界との相互作用によりロータを回転させている。
【0003】
一方、上記のようなブラシレスDCモータでは、所望の回転速度で安定してロータを回転させるための制御回路等の制御装置が設けられている。この制御装置は、ロータの周囲に設けられた複数のホールIC素子に接続されている。これらのホールIC素子はロータと一体的に回転する永久磁石の磁極を検出しており、各ホールIC素子での検出結果に基づき、制御装置ではロータの回転位置を検出し、更に、実際のロータの回転数(以下、便宜上、「実回転数」と称する)を検出している。
【0004】
また、制御装置は、この実回転数と操作スイッチ等により設定された回転数(以下、便宜上、「最終目標回転数」と称する)との偏差を比較演算している。この偏差に基づいて所謂「PID制御」等により各出力電圧を演算し、この出力電圧の演算結果に基づきスイッチング素子のON/OFFのタイミングを設定することで、最終目標回転数にロータの実回転数を到達させている。
【0005】
一方、一般的にブラシレスDCモータは、上記の複数のホールIC素子における検出結果に基づき、ロータの実際の回転に同期にした方形波の通電波形で各コイルに対して通電を行なっている。これに対して、例えば、特開2000−224890号の公報に開示されている技術では、モータの作動開始時から最終目標回転数よりも小さなロータが所定の回転数(以下、便宜上「切替回転数」と称する)に達するまでの間だけ、ロータの実際の回転に同期にした方形波の通電波形で通電を行ない、実回転数が切替回転数を超えた場合には、ロータの実際の回転とは別に、計算して得た予測値に同期した、例えば、正弦波や台形波の任意の通電波形で通電を行なっている。
【0006】
上記のような制御装置の場合、各ホールIC素子からの検出結果に基づいてロータの回転位置を検出している。このため、上記のようなロータの回転に同期した通電も、実際には各ホールIC素子の取付誤差に起因した通電タイミングの誤差が生じることになる。このような通電タイミングの誤差は、トルクリプルの要因ともなり、ひいては、このトルクリプルの発生に起因する異音や振動の発生の要因になる。
【0007】
上記公報で開示されている技術では、実回転数が切替回転数を超えると計算で得た予測値に同期した任意の通電波形(例えば、正弦波や台形波)で通電を行なうため、通電のタイミングに各ホールIC素子の取付誤差の影響が及ばない。このため、異音や振動の発生を抑制できるというメリットがある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に開示され技術であっても、ロータの回転数が切替回転数に達するまでは、従前の一般的な通電方法を採用しているため、モータの始動直後からロータの回転数が切替回転数に達するまでの間でトルクリプルの発生を抑制若しくは防止することができず、したがって、トルクリプルに起因する異音や振動が発生する可能性が極めて高い。
【0009】
本発明は、上記事実を考慮して、異音や振動の発生を抑制若しくは防止でき、特に、作動開始時における異音や振動の発生を効果的に抑制若しくは防止できるモータ制御装置を得ることが目的である。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、複数相のコイルに所定のタイミングで整流された電流を流すことで生じる回転磁界と永久磁石が形成する磁界との相互作用で生じる回転力により回転子を回転させるモータに適用されるモータ制御装置であって、前記回転子の回転数を直接或いは間接的に検出して、前記回転数に対応した回転数検出信号を出力する回転数検出手段と、予め設定されて最終的に前記回転子が到達する最終目標回転数よりも小さな所定の切替回転数と前記回転数検出信号に基づく実回転数とを比較し、当該実回転数が前記切替回転数よりも小さいか否かを判定する判定手段と、前記実回転数が前記切替回転数よりも小さい場合に、所定の演算式により算出された第1制御電圧に基づく通電波形で前記回転子の回転に同期して前記コイルを通電して前記回転子の回転数を変化させると共に、前記実回転数が前記切替回転数以上の場合に、前記第1制御電圧よりも大きな第2制御電圧に基づく任意の通電波形で前記コイルを通電して前記回転子の回転数を変化させる通電制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0011】
上記構成のモータ制御装置では、例えば、操作スイッチ等の操作によりモータが作動開始させられると共に、最終的に到達させるモータを回転数、すなわち、回転子の最終目標回転数が設定されると、回転検出手段によって実際の回転子の回転数が直接或いは間接的に検出され、回転子の実際の回転数に対応した回転数検出信号が回転検出手段から出力される。
【0012】
一方、上記のようにモータが作動させられると、最終目標回転数よりも充分に小さな切替回転数が設定され、回転数検出信号に基づく回転子の実回転数が切替回転数よりも小さいか否かが判定手段によって判定される。
【0013】
ここで、回転子の実回転数が切替回転数よりも小さいと判定手段によって判定された場合には、所定の演算式により算出された第1制御電圧に基づく通電波形で、回転子の回転に同期してコイルが通電される。これにより、回転子の回転数が切替回転数、ひいては、最終目標回転数へ向けて変化(増加)する。
【0014】
また、このように、回転子の回転数が変化していくと、回転子の実回転数が切替回転数以上になる。これにより、回転子の実回転数が切替回転数よりも小さくないと判定手段に判定された場合には、上記の第1制御電圧よりも大きな第2制御電圧に基づき、例えば、台形波や正弦波等の任意の通電波形でコイルが通電される。このようにして、回転子の回転数を変化(増加)させられ、最終的には回転子の回転数が最終目標回転数に到達する。
【0015】
ここで、本モータ制御装置では、モータの作動開始時から回転子の回転数が所定の切替回転数に達するまでは、回転子の回転に同期した同期通電が行なわれるが、回転子の回転数を修正(変化)させるために得る偏差が第2制御電圧よりも小さな第1制御電圧に基づく。このため、各コイルに対する印加電圧の急激な上昇が抑制若しくは防止される。これにより、モータの作動開始時から回転子の回転数が所定の切替回転数に達するまで間におけるトルクリプルを抑制若しくは防止でき、トルクリプルに起因する異音や振動の発生を抑制若しくは防止できる。
【0016】
また、回転子の回転数が所定の切替回転数に達した後は、第1制御電圧よりも大きな第2制御電圧に基づきコイルが通電されるこのため、各コイルに対する印加電圧を早期に上昇させることができ、比較的早期に回転子の回転数を最終目標回転数に到達させることができる。
【0017】
さらに、このように、回転子の回転数が所定の切替回転数に達した後は第2制御電圧に基づき通電されるが、このときの通電波形が、例えば、正弦波や台形波等の任意波形となるため、トルクリプルの発生を抑制若しくは防止でき、トルクリプルに起因する異音や振動の発生を抑制若しくは防止できる。
【0018】
請求項2記載の本発明は、請求項1記載のモータ制御装置において、前記実回転数が前記切替回転数よりも小さい場合に、前記最終目標回転数と1未満の係数との積である目標回転数と前記実回転数との偏差を算出すると共に、前記実回転数が前記切替回転数以上の場合に、前記目標回転数を前記最終目標回転数に置き換えて前記偏差を算出する偏差演算手段を備え、前記偏差が大きくなるにつれて算出結果が大きくなる前記演算式によって前記通電制御手段が前記第1制御電圧及び前記第2制御電圧を算出する、ことを特徴としている。
【0019】
上記構成のモータ制御装置では、実回転数が切替回転数よりも小さい場合に偏差演算手段で最終目標回転数と1未満の係数との積である目標回転数と、実回転数との偏差が算出される。
【0020】
これに対し、実回転数が切替回転数以上の場合には、偏差演算手段で最終目標回転数と実回転数との偏差が算出される。
【0021】
通電制御手段では、この偏差に基づく演算式によって制御電圧が算出されるが、算出結果は偏差が大きくなるにつれて大きくなる。このため、実回転数が切替回転数以上の場合に算出される制御電圧は、実回転数が切替回転数よりも小さい場合に算出される制御電圧よりも大きくなる。このようにして、本モータ制御装置では、第1制御電圧と、第1制御電圧よりも大きな第2制御電圧とが算出される。
【0022】
請求項3記載の本発明は、請求項1記載のモータ制御装置において、前記実回転数が前記切替回転数以上の場合に、前記最終目標回転数と前記実回転数との第1偏差を算出し、前記実回転数が前記切替回転数よりも小さい場合に、予め設定されると共に前記第1偏差よりも充分に小さな第2偏差を読み込む偏差演算手段を備え、前記偏差に基づく前記演算式によって前記通電制御手段が前記第1制御電圧及び前記第2制御電圧を算出する、ことを特徴としている。
【0023】
上記構成のモータ制御装置では、実回転数が切替回転数以上の場合に偏差演算手段で最終目標回転数と実回転数との第1偏差が算出され、通電制御手段ではこの第1偏差に基づく演算式によって第2制御電圧が算出される。
【0024】
これに対し、実回転数が切替回転数よりも小さい場合には、上記の第1偏差が記憶手段等に予め設定された第2偏差に置き換えられる。ここで、本モータ制御装置において、第1制御電圧を算出する演算式と第2制御電圧を算出する演算式は基本的に同じになるが、第2偏差は第1偏差よりも小さく設定されているため、この第2偏差に基づく演算式により算出される制御電圧は、第2制御電圧よりも小さな第1制御電圧となる。
【0025】
請求項4記載の本発明は、請求項1記載のモータ制御装置において、前記演算式は、前記最終目標回転数と前記実回転数との偏差と、所定の第1係数に基づき前記第1制御電圧及び前記第2制御電圧の何れか一方を求めると共に、前記第1係数を前記第1係数とは異なる第2係数に置き換えて前記第1制御電圧及び前記第2制御電圧の何れか他方を求める、ことを特徴としている。
【0026】
上記構成のモータ制御装置では、第1制御電圧及び第2制御電圧を算出するための演算式は基本的に同じで、最終目標回転数と前記実回転数との偏差と、所定の係数に基づき制御電圧が算出される。しかしながら、第1制御電圧及び第2制御電圧の何れか一方を求める際には第1係数を用いるのに対し、何れか他方を求める際には第1係数が、第1係数とは異なる第2係数に置き換えられる。このため、第2制御電圧が第1制御電圧よりも大きくなる。
【0027】
請求項5記載の空調装置用モータは、複数相のコイルに所定のタイミングで整流された電流を流すことで生じる回転磁界と永久磁石が形成する磁界との相互作用で生じる回転力により回転子を回転させ、当該回転子の回転を空調装置のブロワに伝えて当該ブロワを回転させる駆動部と、前記回転子の回転数を直接或いは間接的に検出して、前記回転数に対応した回転数検出信号を出力する回転数検出手段と、予め設定されて最終的に前記回転子が到達する最終目標回転数に対し、前記回転数検出信号に基づく実回転数の側に設定された所定の切替回転数と前記実回転数とを比較し、当該実回転数と前記切替回転数との差異が所定値よりも小さいか否かを判定する判定手段と、前記実回転数と前記切替回転数未満との差異が所定値の場合に、所定の演算式により算出された第1制御電圧に基づく通電波形で前記回転子の回転に同期して前記コイルを通電して前記回転子の回転数を変化させると共に、前記差異が所定値よりも小さい場合に前記第1制御電圧よりも大きな第2制御電圧に基づく任意の通電波形で前記コイルを通電して前記回転子の回転数を変化させる通電制御手段と、を備えている。
【0028】
上記構成の空調装置用モータでは、例えば、車両のインパネ等に設けられた操作スイッチ等の操作により駆動部が作動開始させられ、これにより、駆動部を構成する回転子が回転する。回転子の回転は空調装置を構成するブロワに伝えられ、これによりブロワが回転すると、車両室内に送風される。
【0029】
また、操作スイッチ等の操作により駆動部が作動開始させられると共に、最終的に到達させる駆動部を構成する回転子の最終目標回転数が設定されると、回転検出手段によって実際の回転子の回転数が直接或いは間接的に検出され、回転子の実際の回転数に対応した回転数検出信号が回転検出手段から出力される。
【0030】
一方、上記のように駆動部が作動させられると、最終目標回転数よりも実回転数側に(すなわち、最終目標回転数が実回転数よりも大きければ、最終目標回転数よりも小さく、最終目標回転数が実回転数よりも小さければ最終目標回転数よりも大きい)切替回転数が設定され、回転数検出信号に基づく回転子の実回転数と切替回転数との差異が所定値(所定値は「0」であってもよい)よりも小さいか否かが判定手段によって判定される。
【0031】
ここで、回転子の実回転数がと切替回転数との差異が所定値以上であると判定手段によって判定された場合には、所定の演算式により算出された第1制御電圧に基づく通電波形で、回転子の回転に同期してコイルが通電される。これにより、回転子の回転数が切替回転数、ひいては、最終目標回転数へ向けて変化(増加若しくは減少)する。
【0032】
また、このように、回転子の回転数が変化していくと、回転子の実回転数と切替回転数との差異が小さくなり(すなわち、実回転数が切替回転数に接近して)、この差異が所定値よりも小さくなる。これにより、実回転数と切替回転数との差異が所定値よりも小さいと判定手段に判定された場合には、上記の第1制御電圧よりも大きな第2制御電圧に基づき、例えば、台形波や正弦波等の任意の通電波形でコイルが通電される。このようにして、回転子の回転数を変化(増加若しくは減少)させられ、最終的には回転子の回転数が最終目標回転数に到達する。
【0033】
ここで、本空調装置用モータでは、駆動部の作動開始時から回転子の回転数が所定の切替回転数に達するまでは、回転子の回転に同期した同期通電が行なわれるが、回転子の回転数を修正(変化)させるために得る偏差が第2制御電圧よりも小さな第1制御電圧に基づく。このため、各コイルに対する印加電圧の急激な上昇が抑制若しくは防止される。これにより、駆動部の作動開始時から回転子の回転数が所定の切替回転数に達するまで間におけるトルクリプルを抑制若しくは防止でき、トルクリプルに起因する異音や振動の発生を抑制若しくは防止できる。
【0034】
また、回転子の回転数が所定の切替回転数に達した後は、第1制御電圧よりも大きな第2制御電圧に基づきコイルが通電されるこのため、各コイルに対する印加電圧を早期に上昇させることができ、比較的早期に回転子の回転数を最終目標回転数に到達させることができる。
【0035】
さらに、このように、回転子の回転数が所定の切替回転数に達した後は第2制御電圧に基づき通電されるが、このときの通電波形が、例えば、正弦波や台形波等の任意波形となるため、トルクリプルの発生を抑制若しくは防止でき、トルクリプルに起因する異音や振動の発生を抑制若しくは防止できる。
【0036】
【発明の実施の形態】
<第1の実施の形態の構成>
(ブラシレスブロワモータ12の構成の概略)
図2には、本発明の第1の実施の形態に係るモータ制御装置10を備えた車両用ブロワモータとしてのブラシレスブロワモータ12を一部破断した正面断面図が示されている。
【0037】
この図に示されるように、本ブラシレスブロワモータ12はハウジング14を備えており、その内側には駆動部16とモータ制御装置10の基板18が収容されている。
【0038】
ハウジング14は一端が開口した浅底の略箱状に形成されており、ハウジング14の開口端には略円筒形状の筒部20がハウジング14に対して一体的に設けられている。
【0039】
また、ハウジング14には略円筒形状の支持部22が設けられており、支持部22の外周部には駆動部16を構成する固定子としてのステータ24が一体的に取り付けられている。ステータ24は、薄珪素鋼板等から成る複数枚のコア片を積層して形成されたコア26を備えており、更に、コア26には各々が巻線としての三相のコイル30U、30V、30Wから成るコイル群30(図3参照)が巻き掛けられている。これらのコイル30U〜30Wは、電気的な位相が120度ずれるように設けられており、これらのコイル30U〜30Wが所定のタイミングで交互に通電或いは通電解除されることにより、ステータ24の周囲に所定の回転磁界を形成する。
【0040】
一方、支持部22の内側には一対の軸受32が固定されており、これらの軸受32によってシャフト34が支持部22並びに筒部20に対して同軸的で且つ自らの軸周りに回転自在に支持されている。
【0041】
シャフト34の軸方向一端側は筒部20を貫通しており、その一端部若しくは一端部近傍にてシャフト34の回転力を受けて回動する図示しない空調装置本体に設けられた送風用のブロワへ機械的に連結されている。
【0042】
また、シャフト34の筒部20から貫通した部分には駆動部を構成する回転子としてのロータ36が一体的に取り付けられている。ロータ36はハウジング14の開口方向とは反対方向へ向けて開口した筒部20並びに支持部22に対して同軸の有底筒形状に形成されており、ロータ36の上底部をシャフト34が貫通している。
【0043】
ロータ36の内周部には、永久磁石としての略円筒形状のマグネット38がロータ36に対して同軸的に固定されている。マグネット38はその軸心を介して半径方向一方の側はN極で他方の側がS極となるように形成されていると共に、自らの軸心周りに所定角度(例えば、60度)毎に磁極の極性が変わるように形成され、その周囲に所定の磁界を形成する。
【0044】
マグネット38は支持部22の半径方向に沿ってステータ24の外側でステータ24と対向する如く設けられており、上述したコイル群30が通電されてステータ24の周囲に回転磁界が形成されると、この回転磁界とマグネット38が形成する磁界との相互作用で支持部22周りの回転力がマグネット38に生じ、これにより、シャフト34が回転する構成である。
【0045】
一方、図2に示されるように、ステータ24よりもハウジング14の底部側には基板18が配置されている。基板18は表面及び裏面の少なくとも何れか一方にプリント配線が施されており、複数の抵抗素子やトランジスタ素子、更にはマイクロコンピュータ等の素子が上記のプリント配線を介して適宜に接続されている。
【0046】
(モータ制御装置10の構成の概略)
次に、本モータ制御装置10の構成の概略について説明する。
【0047】
図1に示されるように、モータ制御装置10は、回転数検出手段としての回転検出装置40を備えている。
【0048】
回転検出装置40はセンサマグネット42(図2参照)を備えている。センサマグネット42は、シャフト34の軸方向他端側にシャフト34に対して同軸的且つ一体的に固定されている。センサマグネット42もまた永久磁石で、その軸心周りに所定角度(例えば、60度)毎にN極とS極とが交互に位置する多極磁石とされており、その周囲に特定の磁界を形成する。
【0049】
このセンサマグネット42の側方には、センサマグネット42と共に回転検出装置40を構成するホールIC素子44U、44V、44Wが設けられている。ホールIC素子44U〜44Wは、センサマグネット42の半径方向外側でセンサマグネット42の軸心周りに120度毎に設けられており、各々の位置でセンサマグネット42の磁界を構成する磁力線を検出し、検出した磁力線の強度に対応したレベル(例えば電圧)の位置検出信号Hu、Hv、Hwを出力する。
【0050】
一方、モータ制御装置10を構成する基板18には速度指令回路46が設けられている。速度指令回路46は、フィルタ回路や増幅回路、比較回路等の各種回路、或いは、これらの回路を含めた構成と同等の機能を有するICチップやマイコン等により構成されており、例えば、車両のインパネ等に設けられた空調装置のON/OFF用や風量の切り替え用として用いられる1乃至複数の操作スイッチ48からの操作信号が入力され、この操作信号に応じた設定信号としての速度指令信号Vsを出力する。
【0051】
また、基板18には判定手段、偏差演算手段、及び通電制御手段としての速度制御部50が設けられている。速度制御部50は主にECU(CPU)によって構成された制御電圧演算部52を備えている。制御電圧演算部52は、直接或いは間接的に速度指令回路46に接続されており、速度指令回路46から出力された速度指令信号Vsが入力される。また、制御電圧演算部52はRAM54に接続されており、演算結果等を一時的にRAM54に記憶させ、又は、RAM54に記憶させた演算結果等を読み込む。
【0052】
さらに、制御電圧演算部52はROM56に接続されている。ROM56には、後述する制御電圧演算プログラムや1乃至複数の回転係数Ks、切替回転数Sc等が予め記憶させられており、速度制御部50はROM56から制御電圧演算プログラムを読み込んで制御電圧演算プログラムを実行すると共に、制御電圧演算プログラムの実行中において適宜に回転係数Ksや切替回転数Scを読み込んで演算に用いる。さらに、制御電圧演算部52は、回転位置演算部60に接続されている。
【0053】
回転位置演算部60は、上述したホールIC素子44U〜44Wに接続されており、各ホールIC素子44U〜44Wから出力された位置検出信号Hu〜Hwに基づいてセンサマグネット42の回転位置を演算し、更に、この演算結果からセンサマグネット42の実際の回転数に対応するデジタルの実回転信号Vrを出力する。また、制御電圧演算部52では、制御電圧演算プログラムを実行して入力された実回転信号Vrや速度指令信号Vs、更には、回転係数Ksや切替回転数Scに基づいて制御電圧Vm1若しくは御電圧Vm2を演算し、演算結果に対応したデジタルの制御電圧信号Vd1若しくは制御電圧信号Vd2を出力する。
【0054】
一方、図1に示されるように、制御電圧演算部52はデジタル−アナログ(D/A)変換部62に接続されており、制御電圧演算部52から出力されたデジタル信号Vd1若しくはデジタル信号Vd2を所定波形のアナログの制御電圧信号Va1若しくは制御電圧信号Va2に変換する。また、D/A変換部62は、主に比較器(コンパレータ回路)等によって構成されたPWM信号生成部64に接続されている。
【0055】
PWM信号生成部64は、参照波としての所定のこぎり歯や三角波を生成して出力する参照波生成部66に接続されており、参照波生成部66から出力された参照波と、D/A変換部62から出力された制御電圧信号Va1若しくは制御電圧信号Va2がPWM信号生成部64に入力される。PWM信号生成部64は、入力された参照波と制御電圧信号Va1若しくは制御電圧信号Va2とに基づいてPWM信号P1若しくはPWM信号P2を生成して出力する。
【0056】
なお、本実施の形態は、制御電圧演算部52、回転位置演算部60、D/A変換部62、PWM信号生成部64、及び、参照波生成66が個々に独立した構成として説明した。しかしながら、これは、あくまでも本実施の形態の理解を容易にするために、敢えて機能別に構成を分けたものである。したがって、このように、各機能毎に独立した構造としてもよいのは当然であるが、各機能毎に構成が独立していなくてもよく、例えば、上記の各機能を有する1乃至複数のマイコン等で上記の各機能に対応する処理を行なう構成としてもよい。
【0057】
さらに、PWM信号生成部64は整流手段を構成するベースドライブ回路68を介してベースドライブ回路68と共に整流手段を構成する三相インバータ70に接続されている。ベースドライブ回路68は、PWM信号生成部64から出力されたPWM信号P1若しくはPWM信号P2が入力されると、PWM信号P1若しくはPWM信号P2に基づいてスイッチング信号S1若しくはスイッチング信号S2を出力する。図3に示されるように、ベースドライブ回路68は三相インバータ70を構成するスイッチング素子としての電界効果トランジスタ(以下、「MOSFET」と称する)72U、72V、72W、74U、74V、74Wの各ゲート端子に接続されており、ベースドライブ回路68から出力されたスイッチング信号がMOSFET72U〜72W、74U〜74Wの各ゲート端子に入力される。
【0058】
従来から周知のようにMOSFET72U〜72W、74U〜74Wは「LOW」レベルのスイッチング信号がゲート端子に入力された状態では「OFF」状態で基本的に電源76からの電流がドレイン端子からソース端子へ流れることはないが、「HIGH」レベルのスイッチング信号がゲート端子に入力されることで「ON」状態となり電源76からの電流がドレイン端子からソース端子へ流れる。
【0059】
これらのMOSFET72U〜72W、74U〜74Wのうち、MOSFET72Uのソース端子及びMOSFET74Uのドレイン端子はコイル30Uの端子へ接続されている。また、MOSFET72Vのソース端子及びMOSFET74Vのドレイン端子はコイル30Vの端子へ接続されており、MOSFET72Wのソース端子及びMOSFET74Wのドレイン端子はコイル30Wの端子へ接続されている。
【0060】
<本実施の形態の作用、効果>
次に、図4のフローチャートを用いたモータ制御装置10によるブラシレスブロワモータ12の速度制御に関する説明を通して、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0061】
本モータ制御装置10を構成する速度制御部50の制御電圧演算部52では、先ず、ステップ100で車両用空調装置が作動開始させられると、ステップ102の初期設定で例えば各パラメータ等のイニシャライズが行なわれる。次いで、ステップ104では、例えば、風量設定のための速度指令信号Vsが制御電圧演算部52に入力されたか否かが判定される。この状態で、例えば、特に風量切り替え用の操作スイッチ48が操作されておらず、このため、速度指令回路46に操作スイッチ48から操作信号が出力されていなければ、速度指令回路46から速度指令信号Vsが出力されることはなく、この場合には、ステップ106へ進み、フラグF1に1が代入されているか否かが判定される。
【0062】
上記のように、車両用空調装置が作動開始させられた直後では、ステップ102の初期設定で各パラメータがイニシャライズされているため、この状態では、フラグF1に1は代入されていない。このような場合には、ステップ104に戻り、速度指令信号Vsが入力されるまでステップ104からステップ106を経てステップ104に戻る速度指令信号Vsの入力待機状態になる。
【0063】
これに対して、風量切り替え用の操作スイッチ48が操作されて速度指令回路46に操作スイッチ48から出力された操作信号が入力されると、速度指令回路46では、操作信号を制御電圧演算部52で処理可能なデジタルの速度指令信号Vsに変換して出力する。速度指令回路46から出力された速度指令信号Vsは制御電圧演算部52に入力される。この状態では、ステップ104で速度指令信号Vsが入力されたと判定され、ステップ108で速度指令信号Vsに基づき最終的なロータ36の回転数である最終目標回転数Steが設定される。次いで、ステップ110ではこの最終目標回転数Steに対応した切替回転数ScをROM56から読み込み、ステップ112ではフラグF1に1が代入される。
【0064】
一方、車両用空調装置が作動開始すると、各ホールIC素子44U〜44Wでの磁力線の検出が開始され、センサマグネット42の回転位置、すなわち、ロータ36の回転位置に対応した位置検出信号Hu〜Hwが各ホールIC素子44U〜44Wから出力される。各ホールIC素子44U〜44Wから出力された位置検出信号Hu〜Hwは回転位置演算部60に入力される。回転位置演算部60では、各位置検出信号Hu〜Hwに基づいてセンサマグネット42の回転位置、すなわち、ロータ36の回転位置を演算し、更に、この演算結果からロータ36の実際の回転数に対応するデジタルの実回転信号Vrを出力する。
【0065】
回転位置演算部60から出力された実回転信号Vrがステップ114で制御電圧演算部52に入力されると、ステップ116で実回転信号Vrに基づくロータ36の実際の回転数(以下、便宜上、実回転数Srと称する)がステップ110で読み込んだ切替回転数Scよりも小さいか否かが判定される。
【0066】
ここで、上記のように、車両用空調装置の作動直後の場合には、ロータ36の実際の回転数が充分に早くなっていないため、ステップ116で実回転数Srが切替回転数Scよりも小さいと判定される。このような場合には、ステップ118で1未満(1よりも充分に小さな)回転係数KsがROM56から読み込まれ、ステップ120で回転係数Ksと最終目標回転数Steとの積が目標回転数Stに代入される。次いで、ステップ122でフラグF2に1が代入され、ステップ124で目標回転数Stと実回転数Srとの差が偏差Se(この場合の偏差は、特許請求の範囲で言うところの第2偏差に相当する)に代入される。
【0067】
この状態からステップ126では、フラグF2に1が代入されているか否かが判定され、フラグF2に1が代入されている場合には、ステップ128で制御電圧Vm1が演算される。
【0068】
本実施の形態では、所謂「PID制御」が行なわれており、以下に示す式(1)に基づき制御電圧Vm1が演算される。
Vm1=Kp・Se+Ki∫Se・dt+Kd・dSe/dt ・・・(1)
但し、Kp:比例定数、Ki:積分定数、Kd:微分定数
ステップ128での演算で求められた制御電圧Vm1に対応したデジタルの制御電圧信号Vd1は、ステップ130で制御電圧演算部52から出力され、D/A変換部62で所定波形のアナログの制御電圧信号Va1に変換され、上記のホールIC素子44U〜44Wの位置検出信号Hu〜Hwに基づくロータ36の回転に同期して出力される。ここで、この場合に制御電圧演算部52から出力された制御電圧信号Va1の波形は方形波となる。
【0069】
次いで、制御電圧演算部52から出力された制御電圧信号Va1はPWM信号生成部64に入力される。PWM信号生成部64には参照波生成部から出力された三角波やのこぎり波等の参照波が入力され、これらの制御電圧信号Va1と参照波に基づいてPWM信号P1が生成されて出力される。ここで、上記のように、制御電圧信号Va1の波形は方形波であるため、PWM信号P1は、一定のパルス幅を有する定パルス幅信号となる。
【0070】
PWM信号生成部64から出力されたPWM信号P1はベースドライブ回路68に入力される。ベースドライブ回路68では、入力されたPWM信号P1に基づいてスイッチング信号S1を出力する。三相インバータ70では、ベースドライブ回路68から出力されたスイッチング信号S1に基づいてMOSFET72U〜72W、74U〜74WをON(導通)/OFF(導通解除)する。
【0071】
これにより、各コイル30U〜30Wがスイッチング信号S1のタイミングで通電若しくは通電停止され、このように、各コイル30U〜30Wが通電若しくは通電停止されることで各コイル30U〜30Wの周囲に回転磁界が生じる。この回転磁界とマグネット38が形成する磁界との相互作用で回転力が生じ、この回転力でロータ36が回転し、更にはロータ36に機械的に接続されたファンが回転して送風される。
【0072】
ここで、この場合には、制御電圧信号Va1がホールIC素子44U〜44Wの位置検出信号Hu〜Hwに基づくロータ36の回転に同期して出力され、且つ、制御電圧信号Va1に基づくPWM信号P1が定パルス幅信号であるため、各コイル30U〜30Wの通電波形は、ロータ36の回転に同期した方形波(例えば、120度毎の方形波)となる。
【0073】
一方、ステップ130で制御電圧信号Va1が制御電圧演算部52から出力されると、ステップ132で入力された速度指令信号Vsがリセットされてステップ104に戻る。ステップ104では速度指令信号Vsが入力されたか否か判定される。但し、この状態では、操作スイッチ48が操作されて速度指令信号Vsが変更される等が行なわれていなければ、ステップ132で速度指令信号Vsがリセットされているため、ステップ106に進み、フラグF1に1が代入されているか否かが判定される。
【0074】
この状態では、先にフラグF1に1が代入されているため、そのままステップ114に進み、回転位置演算部60から出力された実回転信号Vrがステップ114で制御電圧演算部52に入力されると、ステップ116で実回転数Srが既に設定されている切替回転数Scよりも小さいか否かが判定される。すなわち、実回転数Srが既に設定されている切替回転数Sc以上になるまで、上記のステップが繰り返される。
【0075】
一方、ロータ36の回転数が上昇して実回転数Srが切替回転数Sc以上になると、ステップ116で実回転数Srが切替回転数Scより小さくないと判定されてステップ134に進む。ステップ134では、先にステップ108で設定された最終目標回転数Steが目標回転数Stに代入される。次いで、ステップ136でフラグF2に0が代入され、ステップ124で目標回転数Stと実回転数Srとの差が偏差Se(この場合の偏差は、特許請求の範囲で言うところの第1偏差に相当する)に代入される。
【0076】
この状態からステップ126では、フラグF2に1が代入されているか否かが判定される。この状態では、フラグF2に0が代入されているため、ステップ138で制御電圧Vm2が演算される。なお、この制御電圧Vm2の演算もまた上記の制御電圧Vm1の演算と同様に式(1)に基づき演算される。なお、制御電圧Vm2を求めるための演算式に関して言えば、比例定数Kp、積分定数Ki、微分定数Kdが制御電圧Vm1を求めるための演算式(1)と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0077】
ステップ138での演算で求められた制御電圧Vm2に対応したデジタルの制御電圧信号Vd2は、ステップ140で制御電圧演算部52から出力され、D/A変換部62で所定波形のアナログの制御電圧信号Va2に変換され、上記のホールIC素子44U〜44Wの位置検出信号Hu〜Hwに基づくロータ36の回転に特に同期させずに出力される。ここで、この場合に制御電圧演算部52から出力された制御電圧信号Va2の波形は適宜に電圧が変化する任意の波形となっている。
【0078】
次いで、制御電圧演算部52から出力された制御電圧信号Va2はPWM信号生成部64に入力される。PWM信号生成部64には参照波生成部から出力された三角波やのこぎり波等の参照波が入力され、これらの制御電圧信号Va2と参照波に基づいてPWM信号P2が生成されて出力される。ここで、上記のように、制御電圧信号Va2の波形は上記のような任意の波形であるため、PWM信号P2は、パルス幅が適宜に異なる信号となる。
【0079】
PWM信号生成部64から出力されたPWM信号P2はベースドライブ回路68に入力される。ベースドライブ回路68では、入力されたPWM信号P2に基づいてスイッチング信号S2を出力する。三相インバータ70では、ベースドライブ回路68から出力されたスイッチング信号S2に基づいてMOSFET72U〜72W、74U〜74WをON/OFFする。これにより、各コイル30U〜30Wがスイッチング信号S2のタイミングで通電若しくは通電停止される。
【0080】
ここで、この場合には、制御電圧信号Va2がロータ36の回転に特に同期せずに出力され、且つ、制御電圧信号Va2に基づくPWM信号P2のパルス幅が適宜に異なるため、各コイル30U〜30Wの通電波形は、ロータ36の回転に対して非同期の任意波形(正弦波や台形波)となる。
【0081】
ところで、図5に実線で示されるように、本モータ制御装置10では、作動開始してからロータ36の実回転数Srが切替回転数Scに達するまでに要する時間T1が経過するまでは、ロータ36の回転に同期した同期通電が行なわれる。しかしながら、この場合には、目標回転数Stが最終目標回転数Steと1未満の回転係数Ksの積であることから目標回転数Stが最終目標回転数Steよりも小さくなる。したがって、目標回転数Stと実回転数Srとの偏差Seは、最終目標回転数Steと実回転数Srとの偏差よりも小さくなる。
【0082】
このため、ロータ36の実回転数Srが切替回転数Scに達するまでは、制御電圧Vm1が比較的小さな値となり、この結果、各コイル30U〜30Wに流れる電流が小さくなる。これにより、ロータ36の実回転数Srが切替回転数Scに達するまで間、すなわち、ブラシレスブロワモータ12の作動開始直後におけるトルクリプルが抑制され、トルクリプルに起因する異音の発生や振動の発生を抑制若しくは防止できる。
【0083】
また、図5に実線で示されるように、時間T1経過後にロータ36の実回転数Srが切替回転数Sc以上になると、偏差Seが最終目標回転数Steと実回転数Srとの差になる。したがって、この場合には、ロータ36の実回転数Srが切替回転数Scに達するまで場合に比べて偏差Seが大きくなるため、制御電圧Vm2が比較的大きな値となり、この結果、各コイル30U〜30Wに流れる電流が大きくなる。これにより、ロータ36の実回転数Srを最終目標回転数Steに早急に到達させることができる。
【0084】
さらに、この場合には、制御電圧Vm2が比較的大きな値となって各コイル30U〜30Wに流れる電流が大きくなるが、ロータ36の回転に特に同期しない非同期通電が行なわれ、しかも、各コイル30U〜30Wに流れる電流の通電波形が正弦波や台形波等の任意の通電波形となる。このように、非同期通電で任意波形の通電を行なうことにより、ブラシレスブロワモータ12の作動開始直後におけるトルクリプルが抑制され、トルクリプルに起因する異音の発生や振動の発生を抑制若しくは防止できる。
【0085】
なお、本実施の形態では、制御電圧Vm1、Vm2を求めるにあたり、所謂「PID制御」を適用したが、基本的には、偏差Se1、Se2を用いて制御電圧Vm1、Vm2を求める手法であれば、「PID制御」に限定されるものではない。
【0086】
また、本実施の形態では、制御電圧Vm1、Vm2を求めるにあたり所謂「PID制御」を適用した。しかしながら、制御電圧Vm1、Vm2を求める際に用いる比例定数Kp、積分定数Ki、微分定数Kdに関しては特に限定するものではない。但し、図5の一点鎖線で示されるように、ロータ36の回転開始時から最終目標回転数Ste到達時まで時間Tに比例してロータ36の回転数Sが増加する構成での演算式の各定数Kp、Ki、Kdに比べて制御電圧Vm1を求める演算式では回転数Sの増加率が小さくなるように各定数Kp、Ki、Kdを設定し、制御電圧Vm2を求める演算式では時間Tに比例してロータ36の回転数Sが増加する構成での演算式の各定数Kp、Ki、Kdに比べて回転数Sの増加率が大きくなるように各定数Kp、Ki、Kdを設定することが好ましい。
【0087】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、本第2の実施の形態は、基本的に制御電圧演算部52における処理の流れが前記第1の実施の形態と異なるだけで、構成は前記第1の実施の形態と同じであるため、構成の説明は省略する。また、以下、図6のフローチャートを用いて本第2の実施の形態について説明するが、制御電圧演算部52における各処理において図4のフローチャートに基づいて前記第1の実施の形態で説明した処理と同様の処理に関しては、同じステップ番号を付与してその説明を省略する。
【0088】
本実施の形態では、車両用空調装置が作動開始させられ、ステップ114で実回転数Srが入力されると、ステップ152で予めROM56に記憶させておいた設定偏差Se1が読み込まれる。ここで、設定偏差Se1は、最終目標回転数Steよりも充分に小さな値で、好ましくは最終目標回転数Steと切替回転数Scとの差よりも充分に小さく、更に好ましくは切替回転数Scよりも充分に小さな値に設定されている。さらに、ステップ154で実回転数Srと最終目標回転数Steとの偏差Seが演算される。
【0089】
次いで、ステップ116で実回転数Srが切替回転数Scよりも小さいと判定される。ここで、例えば、作動開始直後等であるために実回転数Srが切替回転数Scよりも小さいと判定されると、ステップ156で偏差Seに設定偏差Se1が代入される。
【0090】
その後、ステップ122でフラグF2に1が代入される。さらに、ステップ126でフラグF2に1が代入されているか否かが判定され、この場合には、ステップ128で制御電圧Vm1が演算された後に、ステップ130で制御電圧Vm1に基づいたデジタルの制御電圧信号Vd1が出力される。
【0091】
一方、ロータ36の回転数が上昇して、ステップ116で実回転数Srが切替回転数Scを超えたと判定されると、ステップ158で偏差Seが設定偏差Se1より大きいか否かが判定される。偏差Seが設定偏差Se1未満であると判定された場合には、ステップ156で偏差Seに設定偏差Se1が代入され、実回転数Srが切替回転数Scよりも小さい場合と同様にステップ130で制御電圧Vm1に基づいたデジタルの制御電圧信号Vd1が出力される。
【0092】
これに対し、ステップ158で偏差Seが設定偏差Se1を超えたと判定された場合には、ステップ154で偏差Seは算出された偏差Seのまま維持され、ステップ136でフラグF2がリセットされる。
【0093】
次いで、ステップ126でフラグF2に1が代入されているか否かが判定された後、ステップ138で制御電圧Vm2が算出され、ステップ140で制御電圧Vm2に基づいたデジタルの制御電圧信号Vd2が出力される。
【0094】
ところで、本実施の形態では、上記のように、実回転数Srが切替回転数Scよりも小さい場合又は設定偏差が実際の偏差Seよりも小さい場合には、予め設定された設定偏差Se1を用い、この設定偏差Se1を偏差Seに代入する。ここで、上述したように、設定偏差Se1は、最終目標回転数Steよりも充分に小さな値で、好ましくは最終目標回転数Steと切替回転数Scとの差よりも充分に小さく、更に好ましくは切替回転数Scよりも充分に小さな値に設定されている。
【0095】
したがって、実回転数Srが切替回転数Scよりも小さい場合又は設定偏差が実際の偏差Seよりも小さい場合には、設定偏差Se1が代入された偏差Seは、最終目標回転数Steと実回転数Srとの実際の偏差Se以下となる。このため、ロータ36の実回転数Srが切替回転数Scに達するまでは、制御電圧Vm1が比較的小さな値となり、この結果、各コイル30U〜30Wに流れる電流が小さくなる。これにより、ロータ36の実回転数Srが切替回転数Scに達するまで間、すなわち、ブラシレスブロワモータ12の作動開始直後におけるトルクリプルが抑制され、トルクリプルに起因する異音の発生や振動の発生を抑制若しくは防止できる。
【0096】
また、ロータ36の実回転数Srが切替回転数Sc以上になると、偏差Seが最終目標回転数Steと実回転数Srとの差になる。したがって、この場合には、ロータ36の実回転数Srが切替回転数Scに達するまで場合に比べて偏差Seが大きくなるため、制御電圧Vm2が比較的大きな値となり、この結果、各コイル30U〜30Wに流れる電流が大きくなる。これにより、ロータ36の実回転数Srを最終目標回転数Steに早急に到達させることができる。
【0097】
さらに、この場合には、制御電圧Vm2が比較的大きな値となって各コイル30U〜30Wに流れる電流が大きくなるが、ロータ36の回転に特に同期しない非同期通電が行なわれ、しかも、各コイル30U〜30Wに流れる電流の通電波形が正弦波や台形波等の任意の通電波形となる。このように、非同期通電で任意波形の通電を行なうことにより、ブラシレスブロワモータ12の作動開始直後におけるトルクリプルが抑制され、トルクリプルに起因する異音の発生や振動の発生を抑制若しくは防止できる。
【0098】
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、本第3の実施の形態は、基本的に制御電圧演算部52における処理の流れが前記第1及び第2の実施の形態と異なるだけで、構成は前記第1及び第2の実施の形態と同じであるため、構成の説明は省略する。また、以下、図7のフローチャートを用いて本第3の実施の形態について説明するが、制御電圧演算部52における各処理において図4及び図6のフローチャートに基づいて前記第1及び第2の実施の形態で説明した処理と同様の処理に関しては、同じステップ番号を付与してその説明を省略する。
【0099】
本実施の形態では、上記の式(1)で用いた係数Kpに対応すると共に係数Kpとは値が異なるKp1、係数Kiに対応すると共に係数Kiとは値が異なるKi1、及び、係数Kdに対応すると共に係数Kdとは値が異なるKd1が上述したROM56に予め記憶されている。式(1)において、係数Kp、Ki、Kdを係数Kp1、Ki1、Kd1に置き換えることにより、最終的に算出される数値が置き換え前よりも大きくなるように係数Kp1、Ki1、Kd1の数値が設定されている。なお、本実施の形態では、全ての係数Kp、Ki、Kdに対応して係数Kp1、Ki1、Kd1を設定したが、係数Kp、Ki、Kdの少なくとも何れか1つに対応して係数Kp1、Ki1、Kd1の何れかが設定されていればよい。
【0100】
図7に示されるように、以上の係数Kp1、Ki1、Kd1が設定された本実施の形態では、ステップ114までは前記第2の実施の形態と同様の処理が行なわれる。ステップ114の処理を終了した後、ステップ152の処理はなされず、ステップ154で偏差Seが算出される。
【0101】
次いで、ステップ136で実回転数Srが切替回転数Scよりも小さいか否かが判定され、実回転数Srが切替回転数Scよりも小さい場合には、ステップ2122でフラグF2に1が代入される。次いで、ステップ126でフラグF2に1が代入されているか否かが判定され、更に、ステップ128で制御電圧Vm1が演算された後に、ステップ130で制御電圧Vm1に基づいたデジタルの制御電圧信号Vd1が出力される。
【0102】
一方、ロータ36の回転数が上昇して、ステップ116で実回転数Srが切替回転数Sc以上であると判定された場合には、ステップ172で係数置換処理が行なわれる。この係数置換処理では、ROM56から上記の式(1)と係数Kp1、Ki1、Kd1とが読み込まれ、式(1)の各係数Kp、Ki、Kdが係数Kp1、Ki1、Kd1に置き換えられる。
【0103】
次いで、ステップ136でフラグF2がリセットされ、更に、ステップ126でフラグF2に1が代入されているか否かが判定され。この状態では、ステップ138で制御電圧Vm2が算出され、ステップ140で制御電圧Vm2に基づいたデジタルの制御電圧信号Vd2が出力される。その後に、ステップ174で再び係数置換が行なわれ、式(1)の各係数Kp1、Ki1、Kd1が元の係数Kp、Ki、Kdに置き換えられる。
【0104】
ところで、本実施の形態では、制御電圧Vm1及び制御電圧Vm2を求める式は基本的に同じ式(1)であるが、制御電圧Vm2を求める際には、ステップ172における係数置換で、式(1)の各係数Kp、Ki、Kdが係数Kp1、Ki1、Kd1に置き換えられる。このため、式(1)で制御電圧Vm2を求めると、制御電圧Vm1よりも大きくなる。
【0105】
このように、実回転数Srが切替回転数Scよりも小さい場合と実回転数Srが切替回転数Sc以上の場合とで制御電圧に差異をつけることができ、その結果、ロータ36の実回転数Srが切替回転数Scに達するまでは、各コイル30U〜30Wに流れる電流が小さく、ロータ36の実回転数Srが切替回転数Sc以上になると、各コイル30U〜30Wに流れる電流が大きくなる。このように、本実施の形態は、最終的に前記第2の実施の形態と同様の作用を奏することになり、このため前記第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0106】
なお、上記各実施の形態は、本モータ12の駆動開始直後の状態を例に説明したが、当然、本モータ12の駆動中に上記の制御を行なってもよい。
【0107】
また、上記の実施の形態では、本モータ12の駆動開始直後の状態を例にしているため、基本的にモータ12の実回転数Srを上昇させる際の制御となっている。しかしながら、請求項5記載の本発明の観点からすれば、モータ12の実回転数Srを上昇させる際の制御だけでなく、例えば、上記の各実施の形態でステップ116における実回転数Srと切替回転数Scの大小の比較を反対にする等を行なったうえでモータ12の実回転数Srを下降させる際の制御に応用してもよいことについては言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るモータ制御装置(車両用ブロワモータ)の全体構成の概略を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る車両用ブロワモータ構成の概略を示す断面図である。
【図3】整流手段としての三相インバータの構成の概略を示す回路図とブロック図の複合図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るモータ制御装置の通電制御手段における処理の流れの概略を示すフローチャートである。
【図5】モータ作動開始からの径か時間と、回転子の回転数の変化との関係を示すグラフである。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るモータ制御装置の通電制御手段における処理の流れの概略を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係るモータ制御装置の通電制御手段における処理の流れの概略を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10・・・モータ制御装置、12・・・ブラシレスブロワモータ(モータ)、24・・・ステータ(固定子)、30U、30V、30W・・・コイル、36・・・ロータ(回転子)、38・・・マグネット(永久磁石)、40・・・回転検出装置(回転数検出手段)、50・・・速度制御部(判定手段、偏差演算手段、通電制御手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、通常の直流モータやブラシレスモータ等の各種モータの通電制御を行なうモータ制御装置及び車両等の空調装置でブロワを回転させるために用いる空調装置用モータに関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、車両の室内に冷風や温風を供給するための空調装置用のブラシレスDCモータは、通常、駆動回路に設けられたパワートランジスタ等のスイッチング素子を所定のタイミングでON/OFFすることでステータ(固定子)を構成する複数相のコイルに対して所定のタイミングで通電及び通電解除を行ない、コイルの周囲に回転磁界を形成することで、ロータ(回転子)を構成する永久磁石が形成する磁界との相互作用によりロータを回転させている。
【0003】
一方、上記のようなブラシレスDCモータでは、所望の回転速度で安定してロータを回転させるための制御回路等の制御装置が設けられている。この制御装置は、ロータの周囲に設けられた複数のホールIC素子に接続されている。これらのホールIC素子はロータと一体的に回転する永久磁石の磁極を検出しており、各ホールIC素子での検出結果に基づき、制御装置ではロータの回転位置を検出し、更に、実際のロータの回転数(以下、便宜上、「実回転数」と称する)を検出している。
【0004】
また、制御装置は、この実回転数と操作スイッチ等により設定された回転数(以下、便宜上、「最終目標回転数」と称する)との偏差を比較演算している。この偏差に基づいて所謂「PID制御」等により各出力電圧を演算し、この出力電圧の演算結果に基づきスイッチング素子のON/OFFのタイミングを設定することで、最終目標回転数にロータの実回転数を到達させている。
【0005】
一方、一般的にブラシレスDCモータは、上記の複数のホールIC素子における検出結果に基づき、ロータの実際の回転に同期にした方形波の通電波形で各コイルに対して通電を行なっている。これに対して、例えば、特開2000−224890号の公報に開示されている技術では、モータの作動開始時から最終目標回転数よりも小さなロータが所定の回転数(以下、便宜上「切替回転数」と称する)に達するまでの間だけ、ロータの実際の回転に同期にした方形波の通電波形で通電を行ない、実回転数が切替回転数を超えた場合には、ロータの実際の回転とは別に、計算して得た予測値に同期した、例えば、正弦波や台形波の任意の通電波形で通電を行なっている。
【0006】
上記のような制御装置の場合、各ホールIC素子からの検出結果に基づいてロータの回転位置を検出している。このため、上記のようなロータの回転に同期した通電も、実際には各ホールIC素子の取付誤差に起因した通電タイミングの誤差が生じることになる。このような通電タイミングの誤差は、トルクリプルの要因ともなり、ひいては、このトルクリプルの発生に起因する異音や振動の発生の要因になる。
【0007】
上記公報で開示されている技術では、実回転数が切替回転数を超えると計算で得た予測値に同期した任意の通電波形(例えば、正弦波や台形波)で通電を行なうため、通電のタイミングに各ホールIC素子の取付誤差の影響が及ばない。このため、異音や振動の発生を抑制できるというメリットがある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に開示され技術であっても、ロータの回転数が切替回転数に達するまでは、従前の一般的な通電方法を採用しているため、モータの始動直後からロータの回転数が切替回転数に達するまでの間でトルクリプルの発生を抑制若しくは防止することができず、したがって、トルクリプルに起因する異音や振動が発生する可能性が極めて高い。
【0009】
本発明は、上記事実を考慮して、異音や振動の発生を抑制若しくは防止でき、特に、作動開始時における異音や振動の発生を効果的に抑制若しくは防止できるモータ制御装置を得ることが目的である。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、複数相のコイルに所定のタイミングで整流された電流を流すことで生じる回転磁界と永久磁石が形成する磁界との相互作用で生じる回転力により回転子を回転させるモータに適用されるモータ制御装置であって、前記回転子の回転数を直接或いは間接的に検出して、前記回転数に対応した回転数検出信号を出力する回転数検出手段と、予め設定されて最終的に前記回転子が到達する最終目標回転数よりも小さな所定の切替回転数と前記回転数検出信号に基づく実回転数とを比較し、当該実回転数が前記切替回転数よりも小さいか否かを判定する判定手段と、前記実回転数が前記切替回転数よりも小さい場合に、所定の演算式により算出された第1制御電圧に基づく通電波形で前記回転子の回転に同期して前記コイルを通電して前記回転子の回転数を変化させると共に、前記実回転数が前記切替回転数以上の場合に、前記第1制御電圧よりも大きな第2制御電圧に基づく任意の通電波形で前記コイルを通電して前記回転子の回転数を変化させる通電制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0011】
上記構成のモータ制御装置では、例えば、操作スイッチ等の操作によりモータが作動開始させられると共に、最終的に到達させるモータを回転数、すなわち、回転子の最終目標回転数が設定されると、回転検出手段によって実際の回転子の回転数が直接或いは間接的に検出され、回転子の実際の回転数に対応した回転数検出信号が回転検出手段から出力される。
【0012】
一方、上記のようにモータが作動させられると、最終目標回転数よりも充分に小さな切替回転数が設定され、回転数検出信号に基づく回転子の実回転数が切替回転数よりも小さいか否かが判定手段によって判定される。
【0013】
ここで、回転子の実回転数が切替回転数よりも小さいと判定手段によって判定された場合には、所定の演算式により算出された第1制御電圧に基づく通電波形で、回転子の回転に同期してコイルが通電される。これにより、回転子の回転数が切替回転数、ひいては、最終目標回転数へ向けて変化(増加)する。
【0014】
また、このように、回転子の回転数が変化していくと、回転子の実回転数が切替回転数以上になる。これにより、回転子の実回転数が切替回転数よりも小さくないと判定手段に判定された場合には、上記の第1制御電圧よりも大きな第2制御電圧に基づき、例えば、台形波や正弦波等の任意の通電波形でコイルが通電される。このようにして、回転子の回転数を変化(増加)させられ、最終的には回転子の回転数が最終目標回転数に到達する。
【0015】
ここで、本モータ制御装置では、モータの作動開始時から回転子の回転数が所定の切替回転数に達するまでは、回転子の回転に同期した同期通電が行なわれるが、回転子の回転数を修正(変化)させるために得る偏差が第2制御電圧よりも小さな第1制御電圧に基づく。このため、各コイルに対する印加電圧の急激な上昇が抑制若しくは防止される。これにより、モータの作動開始時から回転子の回転数が所定の切替回転数に達するまで間におけるトルクリプルを抑制若しくは防止でき、トルクリプルに起因する異音や振動の発生を抑制若しくは防止できる。
【0016】
また、回転子の回転数が所定の切替回転数に達した後は、第1制御電圧よりも大きな第2制御電圧に基づきコイルが通電されるこのため、各コイルに対する印加電圧を早期に上昇させることができ、比較的早期に回転子の回転数を最終目標回転数に到達させることができる。
【0017】
さらに、このように、回転子の回転数が所定の切替回転数に達した後は第2制御電圧に基づき通電されるが、このときの通電波形が、例えば、正弦波や台形波等の任意波形となるため、トルクリプルの発生を抑制若しくは防止でき、トルクリプルに起因する異音や振動の発生を抑制若しくは防止できる。
【0018】
請求項2記載の本発明は、請求項1記載のモータ制御装置において、前記実回転数が前記切替回転数よりも小さい場合に、前記最終目標回転数と1未満の係数との積である目標回転数と前記実回転数との偏差を算出すると共に、前記実回転数が前記切替回転数以上の場合に、前記目標回転数を前記最終目標回転数に置き換えて前記偏差を算出する偏差演算手段を備え、前記偏差が大きくなるにつれて算出結果が大きくなる前記演算式によって前記通電制御手段が前記第1制御電圧及び前記第2制御電圧を算出する、ことを特徴としている。
【0019】
上記構成のモータ制御装置では、実回転数が切替回転数よりも小さい場合に偏差演算手段で最終目標回転数と1未満の係数との積である目標回転数と、実回転数との偏差が算出される。
【0020】
これに対し、実回転数が切替回転数以上の場合には、偏差演算手段で最終目標回転数と実回転数との偏差が算出される。
【0021】
通電制御手段では、この偏差に基づく演算式によって制御電圧が算出されるが、算出結果は偏差が大きくなるにつれて大きくなる。このため、実回転数が切替回転数以上の場合に算出される制御電圧は、実回転数が切替回転数よりも小さい場合に算出される制御電圧よりも大きくなる。このようにして、本モータ制御装置では、第1制御電圧と、第1制御電圧よりも大きな第2制御電圧とが算出される。
【0022】
請求項3記載の本発明は、請求項1記載のモータ制御装置において、前記実回転数が前記切替回転数以上の場合に、前記最終目標回転数と前記実回転数との第1偏差を算出し、前記実回転数が前記切替回転数よりも小さい場合に、予め設定されると共に前記第1偏差よりも充分に小さな第2偏差を読み込む偏差演算手段を備え、前記偏差に基づく前記演算式によって前記通電制御手段が前記第1制御電圧及び前記第2制御電圧を算出する、ことを特徴としている。
【0023】
上記構成のモータ制御装置では、実回転数が切替回転数以上の場合に偏差演算手段で最終目標回転数と実回転数との第1偏差が算出され、通電制御手段ではこの第1偏差に基づく演算式によって第2制御電圧が算出される。
【0024】
これに対し、実回転数が切替回転数よりも小さい場合には、上記の第1偏差が記憶手段等に予め設定された第2偏差に置き換えられる。ここで、本モータ制御装置において、第1制御電圧を算出する演算式と第2制御電圧を算出する演算式は基本的に同じになるが、第2偏差は第1偏差よりも小さく設定されているため、この第2偏差に基づく演算式により算出される制御電圧は、第2制御電圧よりも小さな第1制御電圧となる。
【0025】
請求項4記載の本発明は、請求項1記載のモータ制御装置において、前記演算式は、前記最終目標回転数と前記実回転数との偏差と、所定の第1係数に基づき前記第1制御電圧及び前記第2制御電圧の何れか一方を求めると共に、前記第1係数を前記第1係数とは異なる第2係数に置き換えて前記第1制御電圧及び前記第2制御電圧の何れか他方を求める、ことを特徴としている。
【0026】
上記構成のモータ制御装置では、第1制御電圧及び第2制御電圧を算出するための演算式は基本的に同じで、最終目標回転数と前記実回転数との偏差と、所定の係数に基づき制御電圧が算出される。しかしながら、第1制御電圧及び第2制御電圧の何れか一方を求める際には第1係数を用いるのに対し、何れか他方を求める際には第1係数が、第1係数とは異なる第2係数に置き換えられる。このため、第2制御電圧が第1制御電圧よりも大きくなる。
【0027】
請求項5記載の空調装置用モータは、複数相のコイルに所定のタイミングで整流された電流を流すことで生じる回転磁界と永久磁石が形成する磁界との相互作用で生じる回転力により回転子を回転させ、当該回転子の回転を空調装置のブロワに伝えて当該ブロワを回転させる駆動部と、前記回転子の回転数を直接或いは間接的に検出して、前記回転数に対応した回転数検出信号を出力する回転数検出手段と、予め設定されて最終的に前記回転子が到達する最終目標回転数に対し、前記回転数検出信号に基づく実回転数の側に設定された所定の切替回転数と前記実回転数とを比較し、当該実回転数と前記切替回転数との差異が所定値よりも小さいか否かを判定する判定手段と、前記実回転数と前記切替回転数未満との差異が所定値の場合に、所定の演算式により算出された第1制御電圧に基づく通電波形で前記回転子の回転に同期して前記コイルを通電して前記回転子の回転数を変化させると共に、前記差異が所定値よりも小さい場合に前記第1制御電圧よりも大きな第2制御電圧に基づく任意の通電波形で前記コイルを通電して前記回転子の回転数を変化させる通電制御手段と、を備えている。
【0028】
上記構成の空調装置用モータでは、例えば、車両のインパネ等に設けられた操作スイッチ等の操作により駆動部が作動開始させられ、これにより、駆動部を構成する回転子が回転する。回転子の回転は空調装置を構成するブロワに伝えられ、これによりブロワが回転すると、車両室内に送風される。
【0029】
また、操作スイッチ等の操作により駆動部が作動開始させられると共に、最終的に到達させる駆動部を構成する回転子の最終目標回転数が設定されると、回転検出手段によって実際の回転子の回転数が直接或いは間接的に検出され、回転子の実際の回転数に対応した回転数検出信号が回転検出手段から出力される。
【0030】
一方、上記のように駆動部が作動させられると、最終目標回転数よりも実回転数側に(すなわち、最終目標回転数が実回転数よりも大きければ、最終目標回転数よりも小さく、最終目標回転数が実回転数よりも小さければ最終目標回転数よりも大きい)切替回転数が設定され、回転数検出信号に基づく回転子の実回転数と切替回転数との差異が所定値(所定値は「0」であってもよい)よりも小さいか否かが判定手段によって判定される。
【0031】
ここで、回転子の実回転数がと切替回転数との差異が所定値以上であると判定手段によって判定された場合には、所定の演算式により算出された第1制御電圧に基づく通電波形で、回転子の回転に同期してコイルが通電される。これにより、回転子の回転数が切替回転数、ひいては、最終目標回転数へ向けて変化(増加若しくは減少)する。
【0032】
また、このように、回転子の回転数が変化していくと、回転子の実回転数と切替回転数との差異が小さくなり(すなわち、実回転数が切替回転数に接近して)、この差異が所定値よりも小さくなる。これにより、実回転数と切替回転数との差異が所定値よりも小さいと判定手段に判定された場合には、上記の第1制御電圧よりも大きな第2制御電圧に基づき、例えば、台形波や正弦波等の任意の通電波形でコイルが通電される。このようにして、回転子の回転数を変化(増加若しくは減少)させられ、最終的には回転子の回転数が最終目標回転数に到達する。
【0033】
ここで、本空調装置用モータでは、駆動部の作動開始時から回転子の回転数が所定の切替回転数に達するまでは、回転子の回転に同期した同期通電が行なわれるが、回転子の回転数を修正(変化)させるために得る偏差が第2制御電圧よりも小さな第1制御電圧に基づく。このため、各コイルに対する印加電圧の急激な上昇が抑制若しくは防止される。これにより、駆動部の作動開始時から回転子の回転数が所定の切替回転数に達するまで間におけるトルクリプルを抑制若しくは防止でき、トルクリプルに起因する異音や振動の発生を抑制若しくは防止できる。
【0034】
また、回転子の回転数が所定の切替回転数に達した後は、第1制御電圧よりも大きな第2制御電圧に基づきコイルが通電されるこのため、各コイルに対する印加電圧を早期に上昇させることができ、比較的早期に回転子の回転数を最終目標回転数に到達させることができる。
【0035】
さらに、このように、回転子の回転数が所定の切替回転数に達した後は第2制御電圧に基づき通電されるが、このときの通電波形が、例えば、正弦波や台形波等の任意波形となるため、トルクリプルの発生を抑制若しくは防止でき、トルクリプルに起因する異音や振動の発生を抑制若しくは防止できる。
【0036】
【発明の実施の形態】
<第1の実施の形態の構成>
(ブラシレスブロワモータ12の構成の概略)
図2には、本発明の第1の実施の形態に係るモータ制御装置10を備えた車両用ブロワモータとしてのブラシレスブロワモータ12を一部破断した正面断面図が示されている。
【0037】
この図に示されるように、本ブラシレスブロワモータ12はハウジング14を備えており、その内側には駆動部16とモータ制御装置10の基板18が収容されている。
【0038】
ハウジング14は一端が開口した浅底の略箱状に形成されており、ハウジング14の開口端には略円筒形状の筒部20がハウジング14に対して一体的に設けられている。
【0039】
また、ハウジング14には略円筒形状の支持部22が設けられており、支持部22の外周部には駆動部16を構成する固定子としてのステータ24が一体的に取り付けられている。ステータ24は、薄珪素鋼板等から成る複数枚のコア片を積層して形成されたコア26を備えており、更に、コア26には各々が巻線としての三相のコイル30U、30V、30Wから成るコイル群30(図3参照)が巻き掛けられている。これらのコイル30U〜30Wは、電気的な位相が120度ずれるように設けられており、これらのコイル30U〜30Wが所定のタイミングで交互に通電或いは通電解除されることにより、ステータ24の周囲に所定の回転磁界を形成する。
【0040】
一方、支持部22の内側には一対の軸受32が固定されており、これらの軸受32によってシャフト34が支持部22並びに筒部20に対して同軸的で且つ自らの軸周りに回転自在に支持されている。
【0041】
シャフト34の軸方向一端側は筒部20を貫通しており、その一端部若しくは一端部近傍にてシャフト34の回転力を受けて回動する図示しない空調装置本体に設けられた送風用のブロワへ機械的に連結されている。
【0042】
また、シャフト34の筒部20から貫通した部分には駆動部を構成する回転子としてのロータ36が一体的に取り付けられている。ロータ36はハウジング14の開口方向とは反対方向へ向けて開口した筒部20並びに支持部22に対して同軸の有底筒形状に形成されており、ロータ36の上底部をシャフト34が貫通している。
【0043】
ロータ36の内周部には、永久磁石としての略円筒形状のマグネット38がロータ36に対して同軸的に固定されている。マグネット38はその軸心を介して半径方向一方の側はN極で他方の側がS極となるように形成されていると共に、自らの軸心周りに所定角度(例えば、60度)毎に磁極の極性が変わるように形成され、その周囲に所定の磁界を形成する。
【0044】
マグネット38は支持部22の半径方向に沿ってステータ24の外側でステータ24と対向する如く設けられており、上述したコイル群30が通電されてステータ24の周囲に回転磁界が形成されると、この回転磁界とマグネット38が形成する磁界との相互作用で支持部22周りの回転力がマグネット38に生じ、これにより、シャフト34が回転する構成である。
【0045】
一方、図2に示されるように、ステータ24よりもハウジング14の底部側には基板18が配置されている。基板18は表面及び裏面の少なくとも何れか一方にプリント配線が施されており、複数の抵抗素子やトランジスタ素子、更にはマイクロコンピュータ等の素子が上記のプリント配線を介して適宜に接続されている。
【0046】
(モータ制御装置10の構成の概略)
次に、本モータ制御装置10の構成の概略について説明する。
【0047】
図1に示されるように、モータ制御装置10は、回転数検出手段としての回転検出装置40を備えている。
【0048】
回転検出装置40はセンサマグネット42(図2参照)を備えている。センサマグネット42は、シャフト34の軸方向他端側にシャフト34に対して同軸的且つ一体的に固定されている。センサマグネット42もまた永久磁石で、その軸心周りに所定角度(例えば、60度)毎にN極とS極とが交互に位置する多極磁石とされており、その周囲に特定の磁界を形成する。
【0049】
このセンサマグネット42の側方には、センサマグネット42と共に回転検出装置40を構成するホールIC素子44U、44V、44Wが設けられている。ホールIC素子44U〜44Wは、センサマグネット42の半径方向外側でセンサマグネット42の軸心周りに120度毎に設けられており、各々の位置でセンサマグネット42の磁界を構成する磁力線を検出し、検出した磁力線の強度に対応したレベル(例えば電圧)の位置検出信号Hu、Hv、Hwを出力する。
【0050】
一方、モータ制御装置10を構成する基板18には速度指令回路46が設けられている。速度指令回路46は、フィルタ回路や増幅回路、比較回路等の各種回路、或いは、これらの回路を含めた構成と同等の機能を有するICチップやマイコン等により構成されており、例えば、車両のインパネ等に設けられた空調装置のON/OFF用や風量の切り替え用として用いられる1乃至複数の操作スイッチ48からの操作信号が入力され、この操作信号に応じた設定信号としての速度指令信号Vsを出力する。
【0051】
また、基板18には判定手段、偏差演算手段、及び通電制御手段としての速度制御部50が設けられている。速度制御部50は主にECU(CPU)によって構成された制御電圧演算部52を備えている。制御電圧演算部52は、直接或いは間接的に速度指令回路46に接続されており、速度指令回路46から出力された速度指令信号Vsが入力される。また、制御電圧演算部52はRAM54に接続されており、演算結果等を一時的にRAM54に記憶させ、又は、RAM54に記憶させた演算結果等を読み込む。
【0052】
さらに、制御電圧演算部52はROM56に接続されている。ROM56には、後述する制御電圧演算プログラムや1乃至複数の回転係数Ks、切替回転数Sc等が予め記憶させられており、速度制御部50はROM56から制御電圧演算プログラムを読み込んで制御電圧演算プログラムを実行すると共に、制御電圧演算プログラムの実行中において適宜に回転係数Ksや切替回転数Scを読み込んで演算に用いる。さらに、制御電圧演算部52は、回転位置演算部60に接続されている。
【0053】
回転位置演算部60は、上述したホールIC素子44U〜44Wに接続されており、各ホールIC素子44U〜44Wから出力された位置検出信号Hu〜Hwに基づいてセンサマグネット42の回転位置を演算し、更に、この演算結果からセンサマグネット42の実際の回転数に対応するデジタルの実回転信号Vrを出力する。また、制御電圧演算部52では、制御電圧演算プログラムを実行して入力された実回転信号Vrや速度指令信号Vs、更には、回転係数Ksや切替回転数Scに基づいて制御電圧Vm1若しくは御電圧Vm2を演算し、演算結果に対応したデジタルの制御電圧信号Vd1若しくは制御電圧信号Vd2を出力する。
【0054】
一方、図1に示されるように、制御電圧演算部52はデジタル−アナログ(D/A)変換部62に接続されており、制御電圧演算部52から出力されたデジタル信号Vd1若しくはデジタル信号Vd2を所定波形のアナログの制御電圧信号Va1若しくは制御電圧信号Va2に変換する。また、D/A変換部62は、主に比較器(コンパレータ回路)等によって構成されたPWM信号生成部64に接続されている。
【0055】
PWM信号生成部64は、参照波としての所定のこぎり歯や三角波を生成して出力する参照波生成部66に接続されており、参照波生成部66から出力された参照波と、D/A変換部62から出力された制御電圧信号Va1若しくは制御電圧信号Va2がPWM信号生成部64に入力される。PWM信号生成部64は、入力された参照波と制御電圧信号Va1若しくは制御電圧信号Va2とに基づいてPWM信号P1若しくはPWM信号P2を生成して出力する。
【0056】
なお、本実施の形態は、制御電圧演算部52、回転位置演算部60、D/A変換部62、PWM信号生成部64、及び、参照波生成66が個々に独立した構成として説明した。しかしながら、これは、あくまでも本実施の形態の理解を容易にするために、敢えて機能別に構成を分けたものである。したがって、このように、各機能毎に独立した構造としてもよいのは当然であるが、各機能毎に構成が独立していなくてもよく、例えば、上記の各機能を有する1乃至複数のマイコン等で上記の各機能に対応する処理を行なう構成としてもよい。
【0057】
さらに、PWM信号生成部64は整流手段を構成するベースドライブ回路68を介してベースドライブ回路68と共に整流手段を構成する三相インバータ70に接続されている。ベースドライブ回路68は、PWM信号生成部64から出力されたPWM信号P1若しくはPWM信号P2が入力されると、PWM信号P1若しくはPWM信号P2に基づいてスイッチング信号S1若しくはスイッチング信号S2を出力する。図3に示されるように、ベースドライブ回路68は三相インバータ70を構成するスイッチング素子としての電界効果トランジスタ(以下、「MOSFET」と称する)72U、72V、72W、74U、74V、74Wの各ゲート端子に接続されており、ベースドライブ回路68から出力されたスイッチング信号がMOSFET72U〜72W、74U〜74Wの各ゲート端子に入力される。
【0058】
従来から周知のようにMOSFET72U〜72W、74U〜74Wは「LOW」レベルのスイッチング信号がゲート端子に入力された状態では「OFF」状態で基本的に電源76からの電流がドレイン端子からソース端子へ流れることはないが、「HIGH」レベルのスイッチング信号がゲート端子に入力されることで「ON」状態となり電源76からの電流がドレイン端子からソース端子へ流れる。
【0059】
これらのMOSFET72U〜72W、74U〜74Wのうち、MOSFET72Uのソース端子及びMOSFET74Uのドレイン端子はコイル30Uの端子へ接続されている。また、MOSFET72Vのソース端子及びMOSFET74Vのドレイン端子はコイル30Vの端子へ接続されており、MOSFET72Wのソース端子及びMOSFET74Wのドレイン端子はコイル30Wの端子へ接続されている。
【0060】
<本実施の形態の作用、効果>
次に、図4のフローチャートを用いたモータ制御装置10によるブラシレスブロワモータ12の速度制御に関する説明を通して、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0061】
本モータ制御装置10を構成する速度制御部50の制御電圧演算部52では、先ず、ステップ100で車両用空調装置が作動開始させられると、ステップ102の初期設定で例えば各パラメータ等のイニシャライズが行なわれる。次いで、ステップ104では、例えば、風量設定のための速度指令信号Vsが制御電圧演算部52に入力されたか否かが判定される。この状態で、例えば、特に風量切り替え用の操作スイッチ48が操作されておらず、このため、速度指令回路46に操作スイッチ48から操作信号が出力されていなければ、速度指令回路46から速度指令信号Vsが出力されることはなく、この場合には、ステップ106へ進み、フラグF1に1が代入されているか否かが判定される。
【0062】
上記のように、車両用空調装置が作動開始させられた直後では、ステップ102の初期設定で各パラメータがイニシャライズされているため、この状態では、フラグF1に1は代入されていない。このような場合には、ステップ104に戻り、速度指令信号Vsが入力されるまでステップ104からステップ106を経てステップ104に戻る速度指令信号Vsの入力待機状態になる。
【0063】
これに対して、風量切り替え用の操作スイッチ48が操作されて速度指令回路46に操作スイッチ48から出力された操作信号が入力されると、速度指令回路46では、操作信号を制御電圧演算部52で処理可能なデジタルの速度指令信号Vsに変換して出力する。速度指令回路46から出力された速度指令信号Vsは制御電圧演算部52に入力される。この状態では、ステップ104で速度指令信号Vsが入力されたと判定され、ステップ108で速度指令信号Vsに基づき最終的なロータ36の回転数である最終目標回転数Steが設定される。次いで、ステップ110ではこの最終目標回転数Steに対応した切替回転数ScをROM56から読み込み、ステップ112ではフラグF1に1が代入される。
【0064】
一方、車両用空調装置が作動開始すると、各ホールIC素子44U〜44Wでの磁力線の検出が開始され、センサマグネット42の回転位置、すなわち、ロータ36の回転位置に対応した位置検出信号Hu〜Hwが各ホールIC素子44U〜44Wから出力される。各ホールIC素子44U〜44Wから出力された位置検出信号Hu〜Hwは回転位置演算部60に入力される。回転位置演算部60では、各位置検出信号Hu〜Hwに基づいてセンサマグネット42の回転位置、すなわち、ロータ36の回転位置を演算し、更に、この演算結果からロータ36の実際の回転数に対応するデジタルの実回転信号Vrを出力する。
【0065】
回転位置演算部60から出力された実回転信号Vrがステップ114で制御電圧演算部52に入力されると、ステップ116で実回転信号Vrに基づくロータ36の実際の回転数(以下、便宜上、実回転数Srと称する)がステップ110で読み込んだ切替回転数Scよりも小さいか否かが判定される。
【0066】
ここで、上記のように、車両用空調装置の作動直後の場合には、ロータ36の実際の回転数が充分に早くなっていないため、ステップ116で実回転数Srが切替回転数Scよりも小さいと判定される。このような場合には、ステップ118で1未満(1よりも充分に小さな)回転係数KsがROM56から読み込まれ、ステップ120で回転係数Ksと最終目標回転数Steとの積が目標回転数Stに代入される。次いで、ステップ122でフラグF2に1が代入され、ステップ124で目標回転数Stと実回転数Srとの差が偏差Se(この場合の偏差は、特許請求の範囲で言うところの第2偏差に相当する)に代入される。
【0067】
この状態からステップ126では、フラグF2に1が代入されているか否かが判定され、フラグF2に1が代入されている場合には、ステップ128で制御電圧Vm1が演算される。
【0068】
本実施の形態では、所謂「PID制御」が行なわれており、以下に示す式(1)に基づき制御電圧Vm1が演算される。
Vm1=Kp・Se+Ki∫Se・dt+Kd・dSe/dt ・・・(1)
但し、Kp:比例定数、Ki:積分定数、Kd:微分定数
ステップ128での演算で求められた制御電圧Vm1に対応したデジタルの制御電圧信号Vd1は、ステップ130で制御電圧演算部52から出力され、D/A変換部62で所定波形のアナログの制御電圧信号Va1に変換され、上記のホールIC素子44U〜44Wの位置検出信号Hu〜Hwに基づくロータ36の回転に同期して出力される。ここで、この場合に制御電圧演算部52から出力された制御電圧信号Va1の波形は方形波となる。
【0069】
次いで、制御電圧演算部52から出力された制御電圧信号Va1はPWM信号生成部64に入力される。PWM信号生成部64には参照波生成部から出力された三角波やのこぎり波等の参照波が入力され、これらの制御電圧信号Va1と参照波に基づいてPWM信号P1が生成されて出力される。ここで、上記のように、制御電圧信号Va1の波形は方形波であるため、PWM信号P1は、一定のパルス幅を有する定パルス幅信号となる。
【0070】
PWM信号生成部64から出力されたPWM信号P1はベースドライブ回路68に入力される。ベースドライブ回路68では、入力されたPWM信号P1に基づいてスイッチング信号S1を出力する。三相インバータ70では、ベースドライブ回路68から出力されたスイッチング信号S1に基づいてMOSFET72U〜72W、74U〜74WをON(導通)/OFF(導通解除)する。
【0071】
これにより、各コイル30U〜30Wがスイッチング信号S1のタイミングで通電若しくは通電停止され、このように、各コイル30U〜30Wが通電若しくは通電停止されることで各コイル30U〜30Wの周囲に回転磁界が生じる。この回転磁界とマグネット38が形成する磁界との相互作用で回転力が生じ、この回転力でロータ36が回転し、更にはロータ36に機械的に接続されたファンが回転して送風される。
【0072】
ここで、この場合には、制御電圧信号Va1がホールIC素子44U〜44Wの位置検出信号Hu〜Hwに基づくロータ36の回転に同期して出力され、且つ、制御電圧信号Va1に基づくPWM信号P1が定パルス幅信号であるため、各コイル30U〜30Wの通電波形は、ロータ36の回転に同期した方形波(例えば、120度毎の方形波)となる。
【0073】
一方、ステップ130で制御電圧信号Va1が制御電圧演算部52から出力されると、ステップ132で入力された速度指令信号Vsがリセットされてステップ104に戻る。ステップ104では速度指令信号Vsが入力されたか否か判定される。但し、この状態では、操作スイッチ48が操作されて速度指令信号Vsが変更される等が行なわれていなければ、ステップ132で速度指令信号Vsがリセットされているため、ステップ106に進み、フラグF1に1が代入されているか否かが判定される。
【0074】
この状態では、先にフラグF1に1が代入されているため、そのままステップ114に進み、回転位置演算部60から出力された実回転信号Vrがステップ114で制御電圧演算部52に入力されると、ステップ116で実回転数Srが既に設定されている切替回転数Scよりも小さいか否かが判定される。すなわち、実回転数Srが既に設定されている切替回転数Sc以上になるまで、上記のステップが繰り返される。
【0075】
一方、ロータ36の回転数が上昇して実回転数Srが切替回転数Sc以上になると、ステップ116で実回転数Srが切替回転数Scより小さくないと判定されてステップ134に進む。ステップ134では、先にステップ108で設定された最終目標回転数Steが目標回転数Stに代入される。次いで、ステップ136でフラグF2に0が代入され、ステップ124で目標回転数Stと実回転数Srとの差が偏差Se(この場合の偏差は、特許請求の範囲で言うところの第1偏差に相当する)に代入される。
【0076】
この状態からステップ126では、フラグF2に1が代入されているか否かが判定される。この状態では、フラグF2に0が代入されているため、ステップ138で制御電圧Vm2が演算される。なお、この制御電圧Vm2の演算もまた上記の制御電圧Vm1の演算と同様に式(1)に基づき演算される。なお、制御電圧Vm2を求めるための演算式に関して言えば、比例定数Kp、積分定数Ki、微分定数Kdが制御電圧Vm1を求めるための演算式(1)と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0077】
ステップ138での演算で求められた制御電圧Vm2に対応したデジタルの制御電圧信号Vd2は、ステップ140で制御電圧演算部52から出力され、D/A変換部62で所定波形のアナログの制御電圧信号Va2に変換され、上記のホールIC素子44U〜44Wの位置検出信号Hu〜Hwに基づくロータ36の回転に特に同期させずに出力される。ここで、この場合に制御電圧演算部52から出力された制御電圧信号Va2の波形は適宜に電圧が変化する任意の波形となっている。
【0078】
次いで、制御電圧演算部52から出力された制御電圧信号Va2はPWM信号生成部64に入力される。PWM信号生成部64には参照波生成部から出力された三角波やのこぎり波等の参照波が入力され、これらの制御電圧信号Va2と参照波に基づいてPWM信号P2が生成されて出力される。ここで、上記のように、制御電圧信号Va2の波形は上記のような任意の波形であるため、PWM信号P2は、パルス幅が適宜に異なる信号となる。
【0079】
PWM信号生成部64から出力されたPWM信号P2はベースドライブ回路68に入力される。ベースドライブ回路68では、入力されたPWM信号P2に基づいてスイッチング信号S2を出力する。三相インバータ70では、ベースドライブ回路68から出力されたスイッチング信号S2に基づいてMOSFET72U〜72W、74U〜74WをON/OFFする。これにより、各コイル30U〜30Wがスイッチング信号S2のタイミングで通電若しくは通電停止される。
【0080】
ここで、この場合には、制御電圧信号Va2がロータ36の回転に特に同期せずに出力され、且つ、制御電圧信号Va2に基づくPWM信号P2のパルス幅が適宜に異なるため、各コイル30U〜30Wの通電波形は、ロータ36の回転に対して非同期の任意波形(正弦波や台形波)となる。
【0081】
ところで、図5に実線で示されるように、本モータ制御装置10では、作動開始してからロータ36の実回転数Srが切替回転数Scに達するまでに要する時間T1が経過するまでは、ロータ36の回転に同期した同期通電が行なわれる。しかしながら、この場合には、目標回転数Stが最終目標回転数Steと1未満の回転係数Ksの積であることから目標回転数Stが最終目標回転数Steよりも小さくなる。したがって、目標回転数Stと実回転数Srとの偏差Seは、最終目標回転数Steと実回転数Srとの偏差よりも小さくなる。
【0082】
このため、ロータ36の実回転数Srが切替回転数Scに達するまでは、制御電圧Vm1が比較的小さな値となり、この結果、各コイル30U〜30Wに流れる電流が小さくなる。これにより、ロータ36の実回転数Srが切替回転数Scに達するまで間、すなわち、ブラシレスブロワモータ12の作動開始直後におけるトルクリプルが抑制され、トルクリプルに起因する異音の発生や振動の発生を抑制若しくは防止できる。
【0083】
また、図5に実線で示されるように、時間T1経過後にロータ36の実回転数Srが切替回転数Sc以上になると、偏差Seが最終目標回転数Steと実回転数Srとの差になる。したがって、この場合には、ロータ36の実回転数Srが切替回転数Scに達するまで場合に比べて偏差Seが大きくなるため、制御電圧Vm2が比較的大きな値となり、この結果、各コイル30U〜30Wに流れる電流が大きくなる。これにより、ロータ36の実回転数Srを最終目標回転数Steに早急に到達させることができる。
【0084】
さらに、この場合には、制御電圧Vm2が比較的大きな値となって各コイル30U〜30Wに流れる電流が大きくなるが、ロータ36の回転に特に同期しない非同期通電が行なわれ、しかも、各コイル30U〜30Wに流れる電流の通電波形が正弦波や台形波等の任意の通電波形となる。このように、非同期通電で任意波形の通電を行なうことにより、ブラシレスブロワモータ12の作動開始直後におけるトルクリプルが抑制され、トルクリプルに起因する異音の発生や振動の発生を抑制若しくは防止できる。
【0085】
なお、本実施の形態では、制御電圧Vm1、Vm2を求めるにあたり、所謂「PID制御」を適用したが、基本的には、偏差Se1、Se2を用いて制御電圧Vm1、Vm2を求める手法であれば、「PID制御」に限定されるものではない。
【0086】
また、本実施の形態では、制御電圧Vm1、Vm2を求めるにあたり所謂「PID制御」を適用した。しかしながら、制御電圧Vm1、Vm2を求める際に用いる比例定数Kp、積分定数Ki、微分定数Kdに関しては特に限定するものではない。但し、図5の一点鎖線で示されるように、ロータ36の回転開始時から最終目標回転数Ste到達時まで時間Tに比例してロータ36の回転数Sが増加する構成での演算式の各定数Kp、Ki、Kdに比べて制御電圧Vm1を求める演算式では回転数Sの増加率が小さくなるように各定数Kp、Ki、Kdを設定し、制御電圧Vm2を求める演算式では時間Tに比例してロータ36の回転数Sが増加する構成での演算式の各定数Kp、Ki、Kdに比べて回転数Sの増加率が大きくなるように各定数Kp、Ki、Kdを設定することが好ましい。
【0087】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、本第2の実施の形態は、基本的に制御電圧演算部52における処理の流れが前記第1の実施の形態と異なるだけで、構成は前記第1の実施の形態と同じであるため、構成の説明は省略する。また、以下、図6のフローチャートを用いて本第2の実施の形態について説明するが、制御電圧演算部52における各処理において図4のフローチャートに基づいて前記第1の実施の形態で説明した処理と同様の処理に関しては、同じステップ番号を付与してその説明を省略する。
【0088】
本実施の形態では、車両用空調装置が作動開始させられ、ステップ114で実回転数Srが入力されると、ステップ152で予めROM56に記憶させておいた設定偏差Se1が読み込まれる。ここで、設定偏差Se1は、最終目標回転数Steよりも充分に小さな値で、好ましくは最終目標回転数Steと切替回転数Scとの差よりも充分に小さく、更に好ましくは切替回転数Scよりも充分に小さな値に設定されている。さらに、ステップ154で実回転数Srと最終目標回転数Steとの偏差Seが演算される。
【0089】
次いで、ステップ116で実回転数Srが切替回転数Scよりも小さいと判定される。ここで、例えば、作動開始直後等であるために実回転数Srが切替回転数Scよりも小さいと判定されると、ステップ156で偏差Seに設定偏差Se1が代入される。
【0090】
その後、ステップ122でフラグF2に1が代入される。さらに、ステップ126でフラグF2に1が代入されているか否かが判定され、この場合には、ステップ128で制御電圧Vm1が演算された後に、ステップ130で制御電圧Vm1に基づいたデジタルの制御電圧信号Vd1が出力される。
【0091】
一方、ロータ36の回転数が上昇して、ステップ116で実回転数Srが切替回転数Scを超えたと判定されると、ステップ158で偏差Seが設定偏差Se1より大きいか否かが判定される。偏差Seが設定偏差Se1未満であると判定された場合には、ステップ156で偏差Seに設定偏差Se1が代入され、実回転数Srが切替回転数Scよりも小さい場合と同様にステップ130で制御電圧Vm1に基づいたデジタルの制御電圧信号Vd1が出力される。
【0092】
これに対し、ステップ158で偏差Seが設定偏差Se1を超えたと判定された場合には、ステップ154で偏差Seは算出された偏差Seのまま維持され、ステップ136でフラグF2がリセットされる。
【0093】
次いで、ステップ126でフラグF2に1が代入されているか否かが判定された後、ステップ138で制御電圧Vm2が算出され、ステップ140で制御電圧Vm2に基づいたデジタルの制御電圧信号Vd2が出力される。
【0094】
ところで、本実施の形態では、上記のように、実回転数Srが切替回転数Scよりも小さい場合又は設定偏差が実際の偏差Seよりも小さい場合には、予め設定された設定偏差Se1を用い、この設定偏差Se1を偏差Seに代入する。ここで、上述したように、設定偏差Se1は、最終目標回転数Steよりも充分に小さな値で、好ましくは最終目標回転数Steと切替回転数Scとの差よりも充分に小さく、更に好ましくは切替回転数Scよりも充分に小さな値に設定されている。
【0095】
したがって、実回転数Srが切替回転数Scよりも小さい場合又は設定偏差が実際の偏差Seよりも小さい場合には、設定偏差Se1が代入された偏差Seは、最終目標回転数Steと実回転数Srとの実際の偏差Se以下となる。このため、ロータ36の実回転数Srが切替回転数Scに達するまでは、制御電圧Vm1が比較的小さな値となり、この結果、各コイル30U〜30Wに流れる電流が小さくなる。これにより、ロータ36の実回転数Srが切替回転数Scに達するまで間、すなわち、ブラシレスブロワモータ12の作動開始直後におけるトルクリプルが抑制され、トルクリプルに起因する異音の発生や振動の発生を抑制若しくは防止できる。
【0096】
また、ロータ36の実回転数Srが切替回転数Sc以上になると、偏差Seが最終目標回転数Steと実回転数Srとの差になる。したがって、この場合には、ロータ36の実回転数Srが切替回転数Scに達するまで場合に比べて偏差Seが大きくなるため、制御電圧Vm2が比較的大きな値となり、この結果、各コイル30U〜30Wに流れる電流が大きくなる。これにより、ロータ36の実回転数Srを最終目標回転数Steに早急に到達させることができる。
【0097】
さらに、この場合には、制御電圧Vm2が比較的大きな値となって各コイル30U〜30Wに流れる電流が大きくなるが、ロータ36の回転に特に同期しない非同期通電が行なわれ、しかも、各コイル30U〜30Wに流れる電流の通電波形が正弦波や台形波等の任意の通電波形となる。このように、非同期通電で任意波形の通電を行なうことにより、ブラシレスブロワモータ12の作動開始直後におけるトルクリプルが抑制され、トルクリプルに起因する異音の発生や振動の発生を抑制若しくは防止できる。
【0098】
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、本第3の実施の形態は、基本的に制御電圧演算部52における処理の流れが前記第1及び第2の実施の形態と異なるだけで、構成は前記第1及び第2の実施の形態と同じであるため、構成の説明は省略する。また、以下、図7のフローチャートを用いて本第3の実施の形態について説明するが、制御電圧演算部52における各処理において図4及び図6のフローチャートに基づいて前記第1及び第2の実施の形態で説明した処理と同様の処理に関しては、同じステップ番号を付与してその説明を省略する。
【0099】
本実施の形態では、上記の式(1)で用いた係数Kpに対応すると共に係数Kpとは値が異なるKp1、係数Kiに対応すると共に係数Kiとは値が異なるKi1、及び、係数Kdに対応すると共に係数Kdとは値が異なるKd1が上述したROM56に予め記憶されている。式(1)において、係数Kp、Ki、Kdを係数Kp1、Ki1、Kd1に置き換えることにより、最終的に算出される数値が置き換え前よりも大きくなるように係数Kp1、Ki1、Kd1の数値が設定されている。なお、本実施の形態では、全ての係数Kp、Ki、Kdに対応して係数Kp1、Ki1、Kd1を設定したが、係数Kp、Ki、Kdの少なくとも何れか1つに対応して係数Kp1、Ki1、Kd1の何れかが設定されていればよい。
【0100】
図7に示されるように、以上の係数Kp1、Ki1、Kd1が設定された本実施の形態では、ステップ114までは前記第2の実施の形態と同様の処理が行なわれる。ステップ114の処理を終了した後、ステップ152の処理はなされず、ステップ154で偏差Seが算出される。
【0101】
次いで、ステップ136で実回転数Srが切替回転数Scよりも小さいか否かが判定され、実回転数Srが切替回転数Scよりも小さい場合には、ステップ2122でフラグF2に1が代入される。次いで、ステップ126でフラグF2に1が代入されているか否かが判定され、更に、ステップ128で制御電圧Vm1が演算された後に、ステップ130で制御電圧Vm1に基づいたデジタルの制御電圧信号Vd1が出力される。
【0102】
一方、ロータ36の回転数が上昇して、ステップ116で実回転数Srが切替回転数Sc以上であると判定された場合には、ステップ172で係数置換処理が行なわれる。この係数置換処理では、ROM56から上記の式(1)と係数Kp1、Ki1、Kd1とが読み込まれ、式(1)の各係数Kp、Ki、Kdが係数Kp1、Ki1、Kd1に置き換えられる。
【0103】
次いで、ステップ136でフラグF2がリセットされ、更に、ステップ126でフラグF2に1が代入されているか否かが判定され。この状態では、ステップ138で制御電圧Vm2が算出され、ステップ140で制御電圧Vm2に基づいたデジタルの制御電圧信号Vd2が出力される。その後に、ステップ174で再び係数置換が行なわれ、式(1)の各係数Kp1、Ki1、Kd1が元の係数Kp、Ki、Kdに置き換えられる。
【0104】
ところで、本実施の形態では、制御電圧Vm1及び制御電圧Vm2を求める式は基本的に同じ式(1)であるが、制御電圧Vm2を求める際には、ステップ172における係数置換で、式(1)の各係数Kp、Ki、Kdが係数Kp1、Ki1、Kd1に置き換えられる。このため、式(1)で制御電圧Vm2を求めると、制御電圧Vm1よりも大きくなる。
【0105】
このように、実回転数Srが切替回転数Scよりも小さい場合と実回転数Srが切替回転数Sc以上の場合とで制御電圧に差異をつけることができ、その結果、ロータ36の実回転数Srが切替回転数Scに達するまでは、各コイル30U〜30Wに流れる電流が小さく、ロータ36の実回転数Srが切替回転数Sc以上になると、各コイル30U〜30Wに流れる電流が大きくなる。このように、本実施の形態は、最終的に前記第2の実施の形態と同様の作用を奏することになり、このため前記第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0106】
なお、上記各実施の形態は、本モータ12の駆動開始直後の状態を例に説明したが、当然、本モータ12の駆動中に上記の制御を行なってもよい。
【0107】
また、上記の実施の形態では、本モータ12の駆動開始直後の状態を例にしているため、基本的にモータ12の実回転数Srを上昇させる際の制御となっている。しかしながら、請求項5記載の本発明の観点からすれば、モータ12の実回転数Srを上昇させる際の制御だけでなく、例えば、上記の各実施の形態でステップ116における実回転数Srと切替回転数Scの大小の比較を反対にする等を行なったうえでモータ12の実回転数Srを下降させる際の制御に応用してもよいことについては言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るモータ制御装置(車両用ブロワモータ)の全体構成の概略を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る車両用ブロワモータ構成の概略を示す断面図である。
【図3】整流手段としての三相インバータの構成の概略を示す回路図とブロック図の複合図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るモータ制御装置の通電制御手段における処理の流れの概略を示すフローチャートである。
【図5】モータ作動開始からの径か時間と、回転子の回転数の変化との関係を示すグラフである。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るモータ制御装置の通電制御手段における処理の流れの概略を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係るモータ制御装置の通電制御手段における処理の流れの概略を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10・・・モータ制御装置、12・・・ブラシレスブロワモータ(モータ)、24・・・ステータ(固定子)、30U、30V、30W・・・コイル、36・・・ロータ(回転子)、38・・・マグネット(永久磁石)、40・・・回転検出装置(回転数検出手段)、50・・・速度制御部(判定手段、偏差演算手段、通電制御手段)
Claims (5)
- 複数相のコイルに所定のタイミングで整流された電流を流すことで生じる回転磁界と永久磁石が形成する磁界との相互作用で生じる回転力により回転子を回転させるモータに適用されるモータ制御装置であって、
前記回転子の回転数を直接或いは間接的に検出して、前記回転数に対応した回転数検出信号を出力する回転数検出手段と、
予め設定されて最終的に前記回転子が到達する最終目標回転数よりも小さな所定の切替回転数と前記回転数検出信号に基づく実回転数とを比較し、当該実回転数が前記切替回転数よりも小さいか否かを判定する判定手段と、
前記実回転数が前記切替回転数よりも小さい場合に、所定の演算式により算出された第1制御電圧に基づく通電波形で前記回転子の回転に同期して前記コイルを通電して前記回転子の回転数を変化させると共に、前記実回転数が前記切替回転数以上の場合に、前記第1制御電圧よりも大きな第2制御電圧に基づく任意の通電波形で前記コイルを通電して前記回転子の回転数を変化させる通電制御手段と、
を備えることを特徴とするモータ制御装置。 - 前記実回転数が前記切替回転数よりも小さい場合に、前記最終目標回転数と1未満の係数との積である目標回転数と前記実回転数との偏差を算出すると共に、前記実回転数が前記切替回転数以上の場合に、前記目標回転数を前記最終目標回転数に置き換えて前記偏差を算出する偏差演算手段を備え、
前記偏差が大きくなるにつれて算出結果が大きくなる前記演算式によって前記通電制御手段が前記第1制御電圧及び前記第2制御電圧を算出する、
ことを特徴とする請求項1記載のモータ制御装置。 - 前記実回転数が前記切替回転数以上の場合に、前記最終目標回転数と前記実回転数との第1偏差を算出し、前記実回転数が前記切替回転数よりも小さい場合に、予め設定されると共に前記第1偏差よりも充分に小さな第2偏差を読み込む偏差演算手段を備え、
前記偏差に基づく前記演算式によって前記通電制御手段が前記第1制御電圧及び前記第2制御電圧を算出する、
ことを特徴とする請求項1記載のモータ制御装置。 - 前記演算式は、前記最終目標回転数と前記実回転数との偏差と、所定の第1係数に基づき前記第1制御電圧及び前記第2制御電圧の何れか一方を求めると共に、前記第1係数を前記第1係数とは異なる第2係数に置き換えて前記第1制御電圧及び前記第2制御電圧の何れか他方を求める、
ことを特徴とする請求項1記載のモータ制御装置。 - 複数相のコイルに所定のタイミングで整流された電流を流すことで生じる回転磁界と永久磁石が形成する磁界との相互作用で生じる回転力により回転子を回転させ、当該回転子の回転を空調装置のブロワに伝えて当該ブロワを回転させる駆動部と、
前記回転子の回転数を直接或いは間接的に検出して、前記回転数に対応した回転数検出信号を出力する回転数検出手段と、
予め設定されて最終的に前記回転子が到達する最終目標回転数に対し、前記回転数検出信号に基づく実回転数の側に設定された所定の切替回転数と前記実回転数とを比較し、当該実回転数と前記切替回転数との差異が所定値よりも小さいか否かを判定する判定手段と、
前記実回転数と前記切替回転数未満との差異が所定値の場合に、所定の演算式により算出された第1制御電圧に基づく通電波形で前記回転子の回転に同期して前記コイルを通電して前記回転子の回転数を変化させると共に、前記差異が所定値よりも小さい場合に前記第1制御電圧よりも大きな第2制御電圧に基づく任意の通電波形で前記コイルを通電して前記回転子の回転数を変化させる通電制御手段と、
を備える空調装置用モータ。
Priority Applications (1)
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2006213082A (ja) * | 2005-02-01 | 2006-08-17 | Valeo Thermal Systems Japan Corp | ブロアユニット及びそれを用いた車両用換気装置 |
CN110545064A (zh) * | 2018-05-28 | 2019-12-06 | 杭州三花研究院有限公司 | 一种控制方法及控制系统 |
-
2002
- 2002-06-14 JP JP2002173875A patent/JP2004023862A/ja active Pending
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