JP2004022976A - 積層型電圧非直線抵抗体、及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】バリスタ電圧を低く抑制することができ、良好な電圧非直線性や制限電圧特性を有し、漏れ電流も小さく、大きなサージ電流耐量を有し、しかも耐静電気放電特性にも優れた小形の積層型バリスタ得るようにする。
【解決手段】ZnOを主成分とするセラミック焼結体と、セラミック焼結体の内部に形成された内部電極と、セラミック焼結体の外表面に形成された外部電極とを有し、前記セラミック焼結体は、ZnO100molに対し、CoがCoOに換算して0.05〜5mol、MnがMnOに換算して0.001〜5mol、及び、Sr又はBaのうちの少なくとも1種がSrO,BaOにそれぞれ換算して0.01〜5mol添加されている。さらに好ましくは、WがWO3に換算して0.001〜1mol添加され、Co成分及びMn成分は、平均粒径25〜100nmのCo3O4及びMn3O4を使用する。
【選択図】 図1
【解決手段】ZnOを主成分とするセラミック焼結体と、セラミック焼結体の内部に形成された内部電極と、セラミック焼結体の外表面に形成された外部電極とを有し、前記セラミック焼結体は、ZnO100molに対し、CoがCoOに換算して0.05〜5mol、MnがMnOに換算して0.001〜5mol、及び、Sr又はBaのうちの少なくとも1種がSrO,BaOにそれぞれ換算して0.01〜5mol添加されている。さらに好ましくは、WがWO3に換算して0.001〜1mol添加され、Co成分及びMn成分は、平均粒径25〜100nmのCo3O4及びMn3O4を使用する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は積層型電圧非直線抵抗体とその製造方法に関し、特に、ZnOを主成分とするセラミック焼結体からなる積層型の電圧非直線抵抗体(Variable Resistor;以下、「バリスタ」という)とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話機等の通信機器においては、ノイズ防護用素子として積層型バリスタが広く使用されている。
【0003】
上記積層型バリスタでは、大きなサージ電流耐量を有し、かつ実際の使用電圧に対してノイズ電圧を極力抑制する必要があり、また静電気等高速ノイズに対する優れた応答性能が要求されている。
【0004】
さらに、省エネルギの観点からは低消費電力化を促進すべく実装時における漏れ電流領域の電流量(以下、「漏れ電流」という)を抑制することが要求されており、また回路の高周波化に伴って低静電容量のバリスタが望まれている。
【0005】
そして、この種の積層型バリスタとしては、従来からZnOを主成分としてBi2O3を所定量含有することにより、電圧非直線性等のバリスタ特性に優れたZnO−Bi系バリスタが既に提案されている(例えば、特開平10−12406号公報参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の積層型バリスタでは、静電容量を低くしようとすると、電極面積が小さくなってサージ電流耐量が低下し、所望のバリスタ特性が得られなくという問題点があった。すなわち、例えば、数pF〜数10pF程度の低静電容量の積層型バリスタを製造しようとした場合、電極面積をかなり小さくする必要があり、このためサージ電流耐量が数A以下となって実用性に欠けるという問題点があった。これに対してバリスタ電圧を高くして電極面積を大きくした場合は、バリスタ電圧が高いためノイズの電圧成分を吸収しきれなくなり、回路の保護能力が低下してしまうという問題点があった。
【0007】
また、上記特開平10−12406号公報のようなZnO−Bi系バリスタでは、バリスタ原料(セラミック成形体)に焼成処理を施した場合にBi成分であるBi2O3が粒界に析出する。これにより、静電気放電(Electrostatic discharge:ESD)時に生じる急峻な放電パルスによって酸素欠陥を増大させ、ESD劣化を引き起こすという問題点があった。
【0008】
すなわち、ZnO−Bi系バリスタでは、上述したように焼成段階でBi2O3が粒界に析出するが、Bi2O3は化学的に不安定であって酸素欠損を生じ易く、Bi2O3中の酸素が容易に欠損してBiOやBi上に酸素が吸着した状態となる。そして、このような状態でESDにより急峻な放電パルスが発生すると、その放電エネルギによりBiOやBi上に吸着している酸素が剥離し、その結果Bi2O3中の結晶格子における酸素が抜けて空孔となり、いわゆる酸素欠陥が増大する結果となってESD劣化を引き起こすという問題点があった。
【0009】
このような問題点を解消する方策としては、凝集塊を粒界の一部に意図的に形成する方法や、Bi系材料に代えてPr系材料を使用する方法が考えられる。
【0010】
しかしながら、前者は焼成条件等の製造条件の制御が困難であり、後者のZnO−Pr系バリスタはZnO−Bi系バリスタに比べてサージ電流耐量が低いという問題点が生じる。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、バリスタ電圧を低く抑制することができ、かつ良好な電圧非直線性や制限電圧特性を有し、さらに漏れ電流も少なく、しかも優れた耐静電気放電特性と大きなサージ電流耐量を有する小形の積層型バリスタ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明に係る積層型バリスタは、ZnOを主成分とするセラミック焼結体と、該セラミック焼結体の内部に形成された対となる内部電極と、前記セラミック焼結体の外表面に形成され、前記内部電極のいずれかと電気的接続される外部電極とを有し、前記セラミック焼結体は、ZnO100molに対し、CoがCoOに換算して0.05〜5mol、MnがMnOに換算して0.001〜5mol、及び、Sr又はBaのうちの少なくとも1種がSrO,BaOにそれぞれ換算して0.01〜5mol添加されたものからなることを特徴としている(請求項1)。
【0013】
また、本発明の積層型バリスタは、前記セラミック焼結体には、BiおよびPrが含有されていないことを特徴としている(請求項2)。
【0014】
さらに、本発明の積層型バリスタは、前記セラミック焼結体には、WがWO3に換算して0.001〜1mol添加されていることがより望ましい(請求項3)。
【0015】
また、本発明に係る積層型バリスタの製造方法は、ZnOを主成分とするセラミックグリーンシートを準備する工程と、前記セラミックグリーンシートの上に内部電極となる導電性ペーストを塗布して、内部電極を形成する工程と、前記内部電極が対向状となるように前記セラミックグリーンシートを積層して積層体を作製する工程と、前記積層体を焼成して前記セラミック焼結体を作製する工程と、前記セラミック焼結体の外表面に形成して前記内部電極のいずれかと電気的接続される外部電極を形成する工程とを含み、前記セラミックグリーンシートは、ZnO100molに対し、CoがCoOに換算して0.05〜5mol、MnがMnOに換算して0.001〜5mol、及び、Sr又はBaのうち少なくとも1種がSrO,BaOにそれぞれ換算して0.01〜5mol添加され、Co、Mnは原料としてCo3O4、Mn3O4の各平均粒径が25〜100nmであることを特徴としている(請求項4)。
【0016】
また、本発明の積層型バリスタの製造方法は、前記ZnOを主成分とするセラミックグリーンシートには、BiおよびPrが添加されていないことを特徴としている(請求項5)。
【0017】
また、本発明の積層型バリスタの製造方法は、前記ZnOを主成分とするセラミックグリーンシートには、WがWO3に換算して0.001〜1mol添加されていることがより望ましい(請求項6)。
【0018】
上記請求項1、2記載の積層型バリスタ、及び請求項4、5記載の積層型バリスタの製造方法によれば、Bi成分やPr成分を含有しなくても、(i)バリスタ電圧を低く抑制できる、(ii)良好な電圧非直線性や制限電圧特性を有し、漏れ電流を小さくできる、(iii)耐静電気放電特性や大きなサージ電流耐量等バリスタ特性に優れた小形の積層型バリスタを容易に得ることができる。
【0019】
さらに、上記請求項3記載の積層型バリスタ、及び請求項6記載の積層型バリスタの製造方法によれば、バリスタ電圧のより一層の低電圧化が可能となり、さらに粒成長を促進して焼結性を向上させることができるために、より安定した特性を有するバリスタを得ることのできる。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳説する。
【0021】
図1は本発明に係る積層型バリスタの一実施の形態を示す縦断面図であり、図2は図1のA−A断面図である。
【0022】
本積層型バリスタは、セラミック焼結体1には、PtやAg等の導電性部材からなる内部電極2a〜2fが埋設されると共に、該セラミック焼結体1の両端部には前記導電性部材からなる外部電極3a、3bが形成されている。
【0023】
前記セラミック焼結体1は、ZnO100molに対し、CoがCoOに換算して0.05〜5mol、MnがMnOに換算して0.001〜5mol、及び、Sr又はBaのうちの少なくとも1種がSrO又はBaOに換算して0.01〜5mol、WがWO3に換算して0.001〜1mol添加され、Biが無添加であり、しかも、Co及びMnはCo3O4及びMn3O4の形態でZnOに添加されると共に、これらCo3O4及びMn3O4の平均粒径は25nm〜100nmとされている。
【0024】
そしてこれにより電極面積が小さくても、バリスタ電圧を低く抑制することができ、且つ良好な電圧非直線性や制限電圧特性を有し、さらに漏れ電流も小さく、しかも優れた耐静電気放電特性と大きなサージ電流耐量を有する積層型バリスタを得ることができる。
【0025】
以下、前記セラミック焼結体1の組成成分について詳述する。
【0026】
(1)Co
セラミック焼結体1中に適量のCoを含有させることにより、ESD(静電気放電)の劣化を抑制して耐静電気放電特性を向上させることができる。また、CoをCo3O4の形態で添加することにより、粒成長が促進されて結晶化が進み、その結果粒界での空孔の形成が抑制され、熱的安定性が増して焼結性が向上し、これにより大きなサージ電流耐量を得ることができる。
【0027】
しかしながら、Coの添加量がCoOに換算して0.05mol未満の場合は、ESD劣化を十分に抑制することができず、しかも電圧非直線性の低下や漏れ電流の増大等バリスタ特性の悪化を引き起こす。一方、Coの添加量がCoOに換算して5molを超えるとZnO粒子の電流の流れを阻害し、このためバリスタ特性の安定性低下を引き起こしてサージ電流耐量の低下や制限電圧特性の悪化をきたし、ESDの劣化も著しく大きくなる。
【0028】
そこで、本実施の形態では、Coの添加量を、CoOに換算して0.05〜5mol、好ましくは0.5〜5molに限定した。
【0029】
(2)Mn
Mnはバリスタの電圧非直線性向上に寄与する作用を有し、またMnをMn3O4の形態で添加することによりCo3O4の場合と同様、焼結性の向上を図ることができる。
【0030】
しかしながら、Mnの添加量がMnOに換算して0.001mol未満の場合は、電圧非直線性向上に十分寄与することができない。一方、Mnの添加量がMnOに換算して5molを超えた場合は、ZnO粒子の電流の流れを阻害するため、バリスタ特性の安定性低下を引き起こし、サージ電流耐量の低下や制限電圧特性の悪化をきたし、ESDの劣化も著しく大きくなる。
【0031】
そこで、本実施の形態では、Mnの添加量を、MnOに換算して0.001〜5mol、好ましくは0.1〜1molに限定した。
【0032】
(3)Sr及びBa
Sr及びBaは漏れ電流を小さくするのに寄与する成分であり、また、セラミック焼結体1中に適量含有させることにより、Co3O4やMn3O4と同様、焼結性が向上してサージ電流耐量の向上に寄与する。
【0033】
しかしながら、Sr又はBaの少なくとも一方の添加量がSrO又はBaOに換算して0.01mol未満の場合はSrやBaの有する上述の作用効果を十分に発揮することができない。一方、Sr又はBaの少なくとも一方の添加量がSrO又はBaOに換算して5molを超えた場合は粒界への析出量が多くなってZnO粒子の電流の流れを阻害し、その結果バリスタ電圧の上昇やサージ電流耐量の低下、更には制限電圧特性の悪化を引き起こす。
【0034】
そこで、本実施の形態では、Sr又はBaの少なくとも一方の添加量をSrO又はBaOに換算して0.01〜5mol、好ましくは0.05〜1molに限定した。
【0035】
(4)W
Wは、上記各成分(Co、Mn、Sr、Ba)と同様、粒成長を促進して焼結性向上に寄与する成分である。
【0036】
しかしながら、Wの添加量がWO3に換算して0.001mol未満の場合は上述の作用効果を十分発揮することができない。一方、Wの添加量がWO3に換算して1molを超えた場合はMn3O4やCo3O4との間で凝集が生じて結晶組織が不均一となり、電流の直線的な流れを阻害し、その結果サージ電流耐量等のバリスタ特性が悪化する。
【0037】
そこで、本実施の形態では、Wの添加量をWO3に換算して0.001〜1mol、好ましくは0.005〜0.5molに限定した。
【0038】
(5)Bi,Pr(無添加)
通常、Biは電圧非直線性等のバリスタ特性を確保する観点から、Bi2O3の形態でZnOに添加されるが、Bi2O3は焼成段階で粒界に析出する。このBi2O3は化学的に不安定であり酸素欠損を生じ易く、ESDにより急峻な放電パルスが発生すると、酸素欠陥が促進され、絶縁抵抗(IR)が大幅に低下し、ESD劣化が顕著になる。例えば、静電気放電の印加前の絶縁抵抗が1〜10MΩである場合に、約30kVの静電気放電を印加すると絶縁抵抗は0.01〜0.1MΩとなり、印加前に比べて大幅に低下することが知られている。
【0039】
また、上述のようにZnO−Bi系バリスタでは、酸素欠陥が増大し、ESD劣化を引き起こす。そこで、その解決策としてBi系材料に代えてPr系材料を使用する方法がとられ、一般にPr2O3の形態としてZnOに添加される。
【0040】
しかしながら、ZnO−Pr系バリスタはZnO−Bi系バリスタに比べてサージ電流耐量が非常に低くなる。
【0041】
そこで、本実施の形態では、Bi、及びPrを無添加にし、Co、Mn、Sr、Baを上述の範囲とすることにより、ESD劣化を抑制して耐静電気放電特性を向上させることとした。
【0042】
(6)Co3O4及びMn3O4の平均粒径
Co3O4及びMn3O4はCoOやMnOに比べて焼成中に酸素を多く放出することにより、ZnO粒子の焼結が促進されるので、本実施の形態では、Co及びMnはCo3O4やMn3O4の形態でZnOに添加している。
【0043】
そして、Co3O4やMn3O4の微粉末は、ZnO表面に凝集して均一な粉体状のセラミック組成物を形成し、表面エネルギも大きいので、表面積を小さくするように早期焼結を促進する。
【0044】
しかしながら、Co3O4及びMn3O4の平均粒径が25nm未満の場合は、ZnO表面に凝集して均一な粉体状のセラミック組成物を形成することができない。一方、通常、セラミック焼結体1の主成分であるZnOの平均粒径は0.3〜0.5μmであることから、Co3O4及びMn3O4の平均粒径が100nmを超えるとZnOとの粒径差が小さくなってCo3O4又はMn3O4同士での凝集が生じ、添加物の均一な分散が困難となる。
【0045】
そこで、本実施の形態では、平均粒径が25〜100nm、好ましくは30〜70nmのCo3O4及びMn3O4を使用することにした。
【0046】
次に、上記積層型バリスタの製造方法を詳述する。
【0047】
まず、ZnO100molに対し、CoがCoOに換算して0.05〜5mol、MnがMnOに換算して0.001〜5mol、Sr又はBaのうちの少なくとも1種がSrO,BaOに換算して0.01〜5mol、WがWO3に換算して0.001〜1molとなるように、平均粒径0.3〜0.5μmのZnO、平均粒径25nm〜100nmのCo3O4及びMn3O4、平均粒径0.3〜1μmのSrO又はBaOのうち少なくとも1種、及び平均粒径0.5〜2μmのWO3をそれぞれ秤量する。そしてこれら原料をボールミルに投入して湿式粉砕し、乾燥した後、所定温度(例えば、700℃)で仮焼し、仮焼粉末を作製する。
【0048】
次いで、この仮焼粉末にエタノールやトルエン等の有機溶剤やバインダ、可塑剤、分散剤を加えスラリ状粉末とした後、ドクターブレード法により所定寸法のセラミックグリーンシートを複数個作製する。
【0049】
次に、内部電極の有効対向面積が所定面積となるように各セラミックシートの表面にAgやPtを主成分とする導電性ペーストをスクリーン印刷した後、セラミックグリーンシートを積み重ねる。
【0050】
次に、積み重ねたセラミックグリーンシートを所定圧力(例えば、2.0×109Pa)を負荷して圧着し、所定寸法に切断して積層体を作製する。
【0051】
次に、前記積層体に所定温度(例えば、1000〜1200℃)で所定時間(例えば、2時間)焼成処理を施し、セラミック焼結体1を作製する。
【0052】
次に、内部電極2a〜2fと電気的に接続可能となるように該セラミック焼結体1の両端面に前記導電性ペーストを塗布し、所定温度(例えば、800℃)で焼付処理を施して外部電極3a、3bを形成する。
【0053】
以上、これらの工程を経て、上記積層型バリスタが製造される。
【0054】
このように本発明の積層型バリスタによれば、セラミック焼結体1にはBi2O3等のBi成分が含まれていないので、ESDにより酸素欠陥を増大させるBi成分が粒界に析出することもなく、耐静電気放電特性の悪化を抑制することができる。
【0055】
また、CoをCoOに換算して0.05〜5mol、MnをMnOに換算して0.001〜5mol、及び、Sr又はBaのうちの少なくとも1種をSrO,BaOに換算して0.01〜5mol、WをWO3に換算して0.001〜1mol添加し、さらにCo及びMnはそれぞれCo3O4,Mn3O4の形態で平均粒径が25nm〜100nmの微粉末状態で添加しているので、バリスタ電圧を低く抑制することができ、また漏れ電流も少なく、制限電圧特性にも優れ、しかも大きなサージ電流耐量を有する各種バリスタの安定した小形の積層型バリスタを容易に得ることができる。
【0056】
【実施例】
〔第1の実施例〕
本発明者らは、ZnOに対し、各添加物の添加量の異なる積層型バリスタを作製し、各種バリスタ特性を評価した。
【0057】
(実施例1〜6)
ZnOに対するCoOの添加量を1mol、及びMnOの添加量を0.5molと一定にし、SrOの添加量を本発明範囲内である0.01〜5molとした試験片を作製した。
【0058】
すなわち、ZnO100molに対し、CoOが1mol、MnOが0.5mol、SrOが0.01〜5molとなるように、平均粒径0.5μmのZnO、平均粒径50nmのCo3O4及びMn3O4、平均粒径0.8μmのSrCO3をそれぞれ秤量する。そしてこれら原料をボールミルに投入して混合し、湿式粉砕した後、乾燥し、700℃で仮焼し、仮焼粉末を作製した。
【0059】
次いで。この仮焼粉末に有機溶剤としてのエチルアルコール及びトルエン、バインダとしてのポリビニルブチラール、可塑剤としてのジブチルフタレート、分散剤としてのポリカルボン酸アンモニウム塩を加えスラリー状粉末とした後、ドクターブレード法により厚みが30±2μmのセラミックグリーンシートを作製した。
【0060】
次に、前記セラミックグリーンシートを所定サイズに打ち抜き、内部電極の面積が1±0.2mm2となるように前記セラミックグリーンシートの表面にPtペーストをスクリーン印刷し、これらセラミックグリーンシートを積み重ねた。
【0061】
次に、積み重ねたセラミックグリーンシートを2.0×109Paの圧力を負荷して圧着し、所定サイズに切断して積層体を作製した。
【0062】
次に、前記積層体を1000〜1200℃で2時間焼成し、セラミック焼結体を作製した。
【0063】
次に、内部電極と電気的に接続可能となるようにセラミック焼結体の両端面にAgペーストを塗布し、800℃で焼付処理を施して外部電極を形成した。
【0064】
以上、これらの工程を経て、縦1.6mm、横0.8mm、厚み0.8mmの積層型バリスタを作製した。
【0065】
(実施例7〜12)
CoOの添加量を1mol、MnOの添加量を0.5molと一定にし、BaOの添加量を本発明範囲内である0.01〜5molとした積層型バリスタを実施例1〜実施例6と同様の手順・方法で作製した。
【0066】
(実施例13、14)
CoOの添加量を1mol、MnOの添加量を0.5molと一定にし、SrO及びBaOの添加量を本発明範囲内である0.1mol又は0.5molとした積層型バリスタを実施例1〜実施例6と同様の手順・方法で作製した。
【0067】
(実施例15〜19)
MnO及びSrOの添加量を共に0.5molと一定にし、CoOの添加量を本発明範囲内である0.05〜5molとした積層型バリスタを実施例1〜実施例6と同様の手順・方法で作製した。
【0068】
(実施例20〜27)
CoOの添加量を1mol、SrOの添加量を0.5molと一定にし、MnOの添加量を本発明範囲内である0.001〜5molとした積層型バリスタを実施例1〜実施例6と同様の手順・方法で作製した。
【0069】
(実施例28〜34)
CoO、MnO及びSrOに加えてWO3をZnOに添加した積層型バリスタを作製した。
【0070】
すなわち、CoOの添加量を1mol、MnO及びSrOの添加量を共に0.5molと一定にし、WO3の添加量を本発明範囲内である0.001〜1molとした積層型バリスタを実施例1〜実施例6と同様の手順・方法で作製した。
【0071】
(比較例1、2)
CoOの添加量を1mol、MnOの添加量を0.5molと一定にし、SrOの添加量を本発明範囲外である0.01mol未満又は10molとした積層型バリスタを実施例1〜実施例6と同様の手順・方法で作製した。
【0072】
(比較例3、4)
CoOの添加量を1mol、MnOの添加量を0.5molと一定にし、BaOの添加量を本発明範囲外である0.01mol未満又は10molとした積層型バリスタを実施例1〜実施例6と同様の手順・方法で作製した。
【0073】
(比較例5、6)
MnO及びSrOの添加量を共に0.5molと一定にし、CoOの添加量を本発明範囲外である0.01mol又は10molとした積層型バリスタを実施例1〜実施例6と同様の手順・方法で作製した。
【0074】
(比較例7、8)
CoOの添加量を1mol、SrOの添加量を0.5molと一定にし、MnOの添加量を本発明範囲外である0.001mol未満又は10molとした積層型バリスタを実施例1〜実施例6と同様の手順・方法で作製した。
【0075】
(比較例9)
CoOの添加量を1mol、MnO及びSrOの添加量を共に0.5molと一定にし、WO3の添加量を本発明範囲外である5molとした積層型バリスタを実施例1〜実施例6と同様の手順・方法で作製した。
【0076】
表1は上記各実施例の添加物組成を示し、表2は上記各比較例の添加物組成を示している。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
なお、表2において、*は本発明の範囲外を示している。
【0079】
そして、上記各試験片(実施例1〜34、比較例1〜9)について電流−電圧特性を測定し、バリスタ電圧V1mA及び電圧非直線係数αを算出した。
【0080】
ここで、バリスタ電圧V1mAは、1mAの直流電流を流した時の各試験片の両端電圧を測定して求めた。
【0081】
また、電圧非直線係数αは、0.1mAの直流電流を流した時の各試験片の両端電圧とバリスタ電圧V1mAとから数式(1)に基づき算出した。
【0082】
【数1】
さらに、各試験片について漏れ電流、耐静電気放電特性、制限電圧特性、サージ電流耐量を評価した。
【0083】
漏れ電流は、1μAの直流電流を流した時の各試験片の両端電圧を測定し、バリスタ電圧V1mAとの比である漏れ電流比V1μA/V1mAで評価した。すなわち、V1μA値が高いと絶縁抵抗(IR)が高くなって漏れ電流は小さくなり、したがって漏れ電流比V1μA/V1mAが「1」に近いほど漏れ電流は少ないこととなる。
【0084】
耐静電気放電特性は、ノイズ研究所社製の静電気放電シミュレータを用いた。測定条件及び評価方法を以下に示す。すなわち、印加電圧30KV、放電コンデンサの静電容量500pF、放電抵抗0Ωの条件下で、静電気を0.5秒間隔で10回印加し、1μAの直流電流を流した時の各試験片の両端電圧V1μAを測定し、数式(2)によりESD変化率を算出して評価した。
【0085】
【数2】
制限電圧特性は、8/20μsの三角波形で且つ電流ピークが1Aの電流サージを各試験片に試料に印加し、このときの各試験片の最大となる両端電圧を制限電圧V1Aとして測定し、バリスタ電圧V1mAとの比である制限電圧比V1A/V1mAを算出し評価した。
【0086】
すなわち、バリスタ電圧V1mAが高くなると両端電圧V1Aも高くなるため、制限電圧比が「1」に近いほど制限電圧特性は良好なものとなる。
【0087】
また、サージ電流耐量は、8/20μsの三角波形で且つ電流ピークが50Aの電流サージを各試験片に印加し、数式(3)に基づき印加前後のバリスタ電圧V1mAを測定し、数式(3)に基づいてサージ変化率を算出し評価した。
【0088】
【数3】
表3は各実施例のバリスタ特性、表4は各比較例のバリスタ特性を示している。
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
なお、表3において、*は本発明範囲外を示す。
【0091】
表2及び表4から明らかなように、比較例1はSrOが0.01mol未満と少なく、しかもBaOが添加されていないため、V1μA値が低く、このため漏れ電流比が0.42と小さくなり、したがって漏れ電流も多く絶縁抵抗(IR)が低下することが分かった。また所望の焼結性を得ることができないためサージ変化率も10.7%と大きく、さらに電圧非直線係数αも18.7と小さく、バリスタ特性に劣ることが分かった。
【0092】
また、比較例2はSrOが10molと過剰に含有されているため、バリスタ電圧V1mAが56.5Vまで上昇し、ESD変化率が12.5%、サージ変化率が9.8%と共に大きくなり、また制限電圧比も1.92と高く、制限電圧特性が悪化することが確認された。これは、SrOが絶縁物として粒界に大量に析出して電流経路を阻害し、このためバリスタ特性の悪化を引き起こしているものと推認される。
【0093】
比較例3はBaOが0.01mol未満と少なく、しかもSrOが添加されていないため、比較例1と略同様、漏れ電流比が0.43と小さくなり、またサージ変化率も10.9%と悪化することが分かった。
【0094】
比較例4はBaOが10molと過剰に含有されているため、比較例2と略同様、バリスタ電圧V1mAが76.4Vと上昇し、ESD変化率が15.6%、サージ変化率が12.8%と共に大きくなり、また制限電圧特性も制限電圧比が2.10と悪化することが確認された。
【0095】
比較例5はCoOの添加量が0.01molと少ないため、ESD変化率が12.3%と大きく、また電圧非直線係数αが3.7、漏れ電流比が0.14といずれも極端に小さく、バリスタ特性の顕著な劣化が認められた。
【0096】
比較例6はCoOが10molと過剰に含有されているため、バリスタとしての安定性を損ない、制限電圧比が1.84、サージ変化率が15.6%、ESD変化率が12.3%となり、各種バリスタ特性が悪化することが分かった。
【0097】
比較例7はMnOの添加量が0.001mol未満と少ないため、電圧非直線係数αが15.8と低く、しかも漏れ電流比も0.35と小さく、バリスタ特性が悪化することが分かった。
【0098】
比較例8はMnOが10molと過剰に含有されているため、ESD変化率が9.8%であり、サージ変化率も7.5%と共に悪化することが分かった。
【0099】
比較例9はWO3が5molと過剰に含有されているため、WO3がMn3O4やCo3O4と凝集して粒成長を阻害し、このため焼結性を促進することができず、しかも斯かる凝集により組織が不均一となってサージ変化率が5.7%と悪化することが分かった。
【0100】
これに対し実施例1〜27は、表1及び表3から明らかなように、CoOが0.05〜5mol、MnOが0.001〜5mol、SrO又はBaOが0.01〜5mol添加されており、さらに、実施例28〜34は上記各成分に加えてWO3が0.001〜1mol添加されており、Bi2O3等のBi酸化物およびPr2O3等のPr酸化物が含有されていないので、ESD変化率が1.4〜4.6と耐静電気放電特性が良好であり、しかも、バリスタ電圧V1mAは9.6〜35.8Vと低く、電圧非直線係数αも27.5〜35.9と良好であり、漏れ電流比V1μA/V1mAは0.65〜0.85と漏れ電流も少なく、制限電圧比V1A/V1mAも1.47〜1.64と良好な制限電圧特性を有し、サージ変化率も1.7〜4.7と小さく、優れたバリスタ特性を有することが確認された。
【0101】
〔第2の実施例〕
粒径の異なるCo3O4及びMn3O4を使用すると共に、各添加物を本発明範囲内で添加した積層型バリスタを作製し、各種バリスタ特性を評価した。
【0102】
(実施例41〜46)
ZnO100molに対し、CoOが1mol、MnOが0.5mol、SrOが0.5mol、WO3が0.1molとなるように、平均粒径0.5μmのZnO、平均粒径25nm、50nm、100nmのCo3O4及びMn3O4、平均粒径0.8μmのSrCO3をそれぞれ秤量し、第1の実施例と同様の方法・手順で積層型バリスタを作製した。
【0103】
(比較例41、42)
ZnO100molに対し、CoOが1mol、MnOが0.5mol、SrOが0.5mol、WO3が0.1molとなるように、平均粒径0.5μmのZnO、平均粒径50nm、300nmのCo3O4及びMn3O4、平均粒径0.8μmのSrCO3をそれぞれ秤量し、第1の実施例と同様の方法・手順で積層型バリスタを作製した。
【0104】
次に、上記各実施例及び比較例について、第1の実施例と同様、バリスタ電圧V1mA、電圧非直線係数α、漏れ電流比V1μm/V1mA、ESD変化率、制限電圧比V1A/V1mA、サージ変化率を算出し、バリスタ特性を評価した。
【0105】
表5はその測定結果を示している。
【0106】
【表5】
この表5から明らかなように、比較例41、42はCo3O4又はMn3O4の平均粒径が300nmと大きいため、ZnOとの粒径差が小さくなってCo3O4又はMn3O4同士が凝集し、Co3O4又はMn3O4が均一に分散せず、このため焼結性の向上を図ることができず、サージ変化率が5.7〜5.8%と大きくなり、電圧非直線係数αも17.0〜18.0と小さく、バリスタ特性に劣ることが分かった。
【0107】
これに対して実施例41〜46はCo3O4及びMn3O4の平均粒径が25nm〜100nmであるため、良好な焼結性を有しており、サージ変化率その他のバリスタ特性も良好であることが確認された。
【0108】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明の請求項1、2に係る積層型バリスタ、及び請求項4、5に係る積層型バリスタの製造方法によれば、電極面積が小さくてもバリスタ電圧を低く抑制することができ、良好な電圧非直線性や制限電圧特性を有し、漏れ電流も小さく、大きなサージ電流耐量を有し、しかもBiが含有されていないので、耐静電気放電特性にも優れた各種バリスタ特性の良好な小形の積層型バリスタを容易に得ることができる。
【0109】
さらに、請求項3に係る積層型バリスタ、及び請求項6に係る積層型バリスタの製造方法によれば、WO3に換算して0.001〜1molのWを添加するので、更なる焼結性の向上を図ることができ、バリスタ特性の更なる安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る積層型バリスタの一実施の形態を示す縦断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【符号の説明】
1 セラミック焼結体
【発明の属する技術分野】
本発明は積層型電圧非直線抵抗体とその製造方法に関し、特に、ZnOを主成分とするセラミック焼結体からなる積層型の電圧非直線抵抗体(Variable Resistor;以下、「バリスタ」という)とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話機等の通信機器においては、ノイズ防護用素子として積層型バリスタが広く使用されている。
【0003】
上記積層型バリスタでは、大きなサージ電流耐量を有し、かつ実際の使用電圧に対してノイズ電圧を極力抑制する必要があり、また静電気等高速ノイズに対する優れた応答性能が要求されている。
【0004】
さらに、省エネルギの観点からは低消費電力化を促進すべく実装時における漏れ電流領域の電流量(以下、「漏れ電流」という)を抑制することが要求されており、また回路の高周波化に伴って低静電容量のバリスタが望まれている。
【0005】
そして、この種の積層型バリスタとしては、従来からZnOを主成分としてBi2O3を所定量含有することにより、電圧非直線性等のバリスタ特性に優れたZnO−Bi系バリスタが既に提案されている(例えば、特開平10−12406号公報参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の積層型バリスタでは、静電容量を低くしようとすると、電極面積が小さくなってサージ電流耐量が低下し、所望のバリスタ特性が得られなくという問題点があった。すなわち、例えば、数pF〜数10pF程度の低静電容量の積層型バリスタを製造しようとした場合、電極面積をかなり小さくする必要があり、このためサージ電流耐量が数A以下となって実用性に欠けるという問題点があった。これに対してバリスタ電圧を高くして電極面積を大きくした場合は、バリスタ電圧が高いためノイズの電圧成分を吸収しきれなくなり、回路の保護能力が低下してしまうという問題点があった。
【0007】
また、上記特開平10−12406号公報のようなZnO−Bi系バリスタでは、バリスタ原料(セラミック成形体)に焼成処理を施した場合にBi成分であるBi2O3が粒界に析出する。これにより、静電気放電(Electrostatic discharge:ESD)時に生じる急峻な放電パルスによって酸素欠陥を増大させ、ESD劣化を引き起こすという問題点があった。
【0008】
すなわち、ZnO−Bi系バリスタでは、上述したように焼成段階でBi2O3が粒界に析出するが、Bi2O3は化学的に不安定であって酸素欠損を生じ易く、Bi2O3中の酸素が容易に欠損してBiOやBi上に酸素が吸着した状態となる。そして、このような状態でESDにより急峻な放電パルスが発生すると、その放電エネルギによりBiOやBi上に吸着している酸素が剥離し、その結果Bi2O3中の結晶格子における酸素が抜けて空孔となり、いわゆる酸素欠陥が増大する結果となってESD劣化を引き起こすという問題点があった。
【0009】
このような問題点を解消する方策としては、凝集塊を粒界の一部に意図的に形成する方法や、Bi系材料に代えてPr系材料を使用する方法が考えられる。
【0010】
しかしながら、前者は焼成条件等の製造条件の制御が困難であり、後者のZnO−Pr系バリスタはZnO−Bi系バリスタに比べてサージ電流耐量が低いという問題点が生じる。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、バリスタ電圧を低く抑制することができ、かつ良好な電圧非直線性や制限電圧特性を有し、さらに漏れ電流も少なく、しかも優れた耐静電気放電特性と大きなサージ電流耐量を有する小形の積層型バリスタ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明に係る積層型バリスタは、ZnOを主成分とするセラミック焼結体と、該セラミック焼結体の内部に形成された対となる内部電極と、前記セラミック焼結体の外表面に形成され、前記内部電極のいずれかと電気的接続される外部電極とを有し、前記セラミック焼結体は、ZnO100molに対し、CoがCoOに換算して0.05〜5mol、MnがMnOに換算して0.001〜5mol、及び、Sr又はBaのうちの少なくとも1種がSrO,BaOにそれぞれ換算して0.01〜5mol添加されたものからなることを特徴としている(請求項1)。
【0013】
また、本発明の積層型バリスタは、前記セラミック焼結体には、BiおよびPrが含有されていないことを特徴としている(請求項2)。
【0014】
さらに、本発明の積層型バリスタは、前記セラミック焼結体には、WがWO3に換算して0.001〜1mol添加されていることがより望ましい(請求項3)。
【0015】
また、本発明に係る積層型バリスタの製造方法は、ZnOを主成分とするセラミックグリーンシートを準備する工程と、前記セラミックグリーンシートの上に内部電極となる導電性ペーストを塗布して、内部電極を形成する工程と、前記内部電極が対向状となるように前記セラミックグリーンシートを積層して積層体を作製する工程と、前記積層体を焼成して前記セラミック焼結体を作製する工程と、前記セラミック焼結体の外表面に形成して前記内部電極のいずれかと電気的接続される外部電極を形成する工程とを含み、前記セラミックグリーンシートは、ZnO100molに対し、CoがCoOに換算して0.05〜5mol、MnがMnOに換算して0.001〜5mol、及び、Sr又はBaのうち少なくとも1種がSrO,BaOにそれぞれ換算して0.01〜5mol添加され、Co、Mnは原料としてCo3O4、Mn3O4の各平均粒径が25〜100nmであることを特徴としている(請求項4)。
【0016】
また、本発明の積層型バリスタの製造方法は、前記ZnOを主成分とするセラミックグリーンシートには、BiおよびPrが添加されていないことを特徴としている(請求項5)。
【0017】
また、本発明の積層型バリスタの製造方法は、前記ZnOを主成分とするセラミックグリーンシートには、WがWO3に換算して0.001〜1mol添加されていることがより望ましい(請求項6)。
【0018】
上記請求項1、2記載の積層型バリスタ、及び請求項4、5記載の積層型バリスタの製造方法によれば、Bi成分やPr成分を含有しなくても、(i)バリスタ電圧を低く抑制できる、(ii)良好な電圧非直線性や制限電圧特性を有し、漏れ電流を小さくできる、(iii)耐静電気放電特性や大きなサージ電流耐量等バリスタ特性に優れた小形の積層型バリスタを容易に得ることができる。
【0019】
さらに、上記請求項3記載の積層型バリスタ、及び請求項6記載の積層型バリスタの製造方法によれば、バリスタ電圧のより一層の低電圧化が可能となり、さらに粒成長を促進して焼結性を向上させることができるために、より安定した特性を有するバリスタを得ることのできる。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳説する。
【0021】
図1は本発明に係る積層型バリスタの一実施の形態を示す縦断面図であり、図2は図1のA−A断面図である。
【0022】
本積層型バリスタは、セラミック焼結体1には、PtやAg等の導電性部材からなる内部電極2a〜2fが埋設されると共に、該セラミック焼結体1の両端部には前記導電性部材からなる外部電極3a、3bが形成されている。
【0023】
前記セラミック焼結体1は、ZnO100molに対し、CoがCoOに換算して0.05〜5mol、MnがMnOに換算して0.001〜5mol、及び、Sr又はBaのうちの少なくとも1種がSrO又はBaOに換算して0.01〜5mol、WがWO3に換算して0.001〜1mol添加され、Biが無添加であり、しかも、Co及びMnはCo3O4及びMn3O4の形態でZnOに添加されると共に、これらCo3O4及びMn3O4の平均粒径は25nm〜100nmとされている。
【0024】
そしてこれにより電極面積が小さくても、バリスタ電圧を低く抑制することができ、且つ良好な電圧非直線性や制限電圧特性を有し、さらに漏れ電流も小さく、しかも優れた耐静電気放電特性と大きなサージ電流耐量を有する積層型バリスタを得ることができる。
【0025】
以下、前記セラミック焼結体1の組成成分について詳述する。
【0026】
(1)Co
セラミック焼結体1中に適量のCoを含有させることにより、ESD(静電気放電)の劣化を抑制して耐静電気放電特性を向上させることができる。また、CoをCo3O4の形態で添加することにより、粒成長が促進されて結晶化が進み、その結果粒界での空孔の形成が抑制され、熱的安定性が増して焼結性が向上し、これにより大きなサージ電流耐量を得ることができる。
【0027】
しかしながら、Coの添加量がCoOに換算して0.05mol未満の場合は、ESD劣化を十分に抑制することができず、しかも電圧非直線性の低下や漏れ電流の増大等バリスタ特性の悪化を引き起こす。一方、Coの添加量がCoOに換算して5molを超えるとZnO粒子の電流の流れを阻害し、このためバリスタ特性の安定性低下を引き起こしてサージ電流耐量の低下や制限電圧特性の悪化をきたし、ESDの劣化も著しく大きくなる。
【0028】
そこで、本実施の形態では、Coの添加量を、CoOに換算して0.05〜5mol、好ましくは0.5〜5molに限定した。
【0029】
(2)Mn
Mnはバリスタの電圧非直線性向上に寄与する作用を有し、またMnをMn3O4の形態で添加することによりCo3O4の場合と同様、焼結性の向上を図ることができる。
【0030】
しかしながら、Mnの添加量がMnOに換算して0.001mol未満の場合は、電圧非直線性向上に十分寄与することができない。一方、Mnの添加量がMnOに換算して5molを超えた場合は、ZnO粒子の電流の流れを阻害するため、バリスタ特性の安定性低下を引き起こし、サージ電流耐量の低下や制限電圧特性の悪化をきたし、ESDの劣化も著しく大きくなる。
【0031】
そこで、本実施の形態では、Mnの添加量を、MnOに換算して0.001〜5mol、好ましくは0.1〜1molに限定した。
【0032】
(3)Sr及びBa
Sr及びBaは漏れ電流を小さくするのに寄与する成分であり、また、セラミック焼結体1中に適量含有させることにより、Co3O4やMn3O4と同様、焼結性が向上してサージ電流耐量の向上に寄与する。
【0033】
しかしながら、Sr又はBaの少なくとも一方の添加量がSrO又はBaOに換算して0.01mol未満の場合はSrやBaの有する上述の作用効果を十分に発揮することができない。一方、Sr又はBaの少なくとも一方の添加量がSrO又はBaOに換算して5molを超えた場合は粒界への析出量が多くなってZnO粒子の電流の流れを阻害し、その結果バリスタ電圧の上昇やサージ電流耐量の低下、更には制限電圧特性の悪化を引き起こす。
【0034】
そこで、本実施の形態では、Sr又はBaの少なくとも一方の添加量をSrO又はBaOに換算して0.01〜5mol、好ましくは0.05〜1molに限定した。
【0035】
(4)W
Wは、上記各成分(Co、Mn、Sr、Ba)と同様、粒成長を促進して焼結性向上に寄与する成分である。
【0036】
しかしながら、Wの添加量がWO3に換算して0.001mol未満の場合は上述の作用効果を十分発揮することができない。一方、Wの添加量がWO3に換算して1molを超えた場合はMn3O4やCo3O4との間で凝集が生じて結晶組織が不均一となり、電流の直線的な流れを阻害し、その結果サージ電流耐量等のバリスタ特性が悪化する。
【0037】
そこで、本実施の形態では、Wの添加量をWO3に換算して0.001〜1mol、好ましくは0.005〜0.5molに限定した。
【0038】
(5)Bi,Pr(無添加)
通常、Biは電圧非直線性等のバリスタ特性を確保する観点から、Bi2O3の形態でZnOに添加されるが、Bi2O3は焼成段階で粒界に析出する。このBi2O3は化学的に不安定であり酸素欠損を生じ易く、ESDにより急峻な放電パルスが発生すると、酸素欠陥が促進され、絶縁抵抗(IR)が大幅に低下し、ESD劣化が顕著になる。例えば、静電気放電の印加前の絶縁抵抗が1〜10MΩである場合に、約30kVの静電気放電を印加すると絶縁抵抗は0.01〜0.1MΩとなり、印加前に比べて大幅に低下することが知られている。
【0039】
また、上述のようにZnO−Bi系バリスタでは、酸素欠陥が増大し、ESD劣化を引き起こす。そこで、その解決策としてBi系材料に代えてPr系材料を使用する方法がとられ、一般にPr2O3の形態としてZnOに添加される。
【0040】
しかしながら、ZnO−Pr系バリスタはZnO−Bi系バリスタに比べてサージ電流耐量が非常に低くなる。
【0041】
そこで、本実施の形態では、Bi、及びPrを無添加にし、Co、Mn、Sr、Baを上述の範囲とすることにより、ESD劣化を抑制して耐静電気放電特性を向上させることとした。
【0042】
(6)Co3O4及びMn3O4の平均粒径
Co3O4及びMn3O4はCoOやMnOに比べて焼成中に酸素を多く放出することにより、ZnO粒子の焼結が促進されるので、本実施の形態では、Co及びMnはCo3O4やMn3O4の形態でZnOに添加している。
【0043】
そして、Co3O4やMn3O4の微粉末は、ZnO表面に凝集して均一な粉体状のセラミック組成物を形成し、表面エネルギも大きいので、表面積を小さくするように早期焼結を促進する。
【0044】
しかしながら、Co3O4及びMn3O4の平均粒径が25nm未満の場合は、ZnO表面に凝集して均一な粉体状のセラミック組成物を形成することができない。一方、通常、セラミック焼結体1の主成分であるZnOの平均粒径は0.3〜0.5μmであることから、Co3O4及びMn3O4の平均粒径が100nmを超えるとZnOとの粒径差が小さくなってCo3O4又はMn3O4同士での凝集が生じ、添加物の均一な分散が困難となる。
【0045】
そこで、本実施の形態では、平均粒径が25〜100nm、好ましくは30〜70nmのCo3O4及びMn3O4を使用することにした。
【0046】
次に、上記積層型バリスタの製造方法を詳述する。
【0047】
まず、ZnO100molに対し、CoがCoOに換算して0.05〜5mol、MnがMnOに換算して0.001〜5mol、Sr又はBaのうちの少なくとも1種がSrO,BaOに換算して0.01〜5mol、WがWO3に換算して0.001〜1molとなるように、平均粒径0.3〜0.5μmのZnO、平均粒径25nm〜100nmのCo3O4及びMn3O4、平均粒径0.3〜1μmのSrO又はBaOのうち少なくとも1種、及び平均粒径0.5〜2μmのWO3をそれぞれ秤量する。そしてこれら原料をボールミルに投入して湿式粉砕し、乾燥した後、所定温度(例えば、700℃)で仮焼し、仮焼粉末を作製する。
【0048】
次いで、この仮焼粉末にエタノールやトルエン等の有機溶剤やバインダ、可塑剤、分散剤を加えスラリ状粉末とした後、ドクターブレード法により所定寸法のセラミックグリーンシートを複数個作製する。
【0049】
次に、内部電極の有効対向面積が所定面積となるように各セラミックシートの表面にAgやPtを主成分とする導電性ペーストをスクリーン印刷した後、セラミックグリーンシートを積み重ねる。
【0050】
次に、積み重ねたセラミックグリーンシートを所定圧力(例えば、2.0×109Pa)を負荷して圧着し、所定寸法に切断して積層体を作製する。
【0051】
次に、前記積層体に所定温度(例えば、1000〜1200℃)で所定時間(例えば、2時間)焼成処理を施し、セラミック焼結体1を作製する。
【0052】
次に、内部電極2a〜2fと電気的に接続可能となるように該セラミック焼結体1の両端面に前記導電性ペーストを塗布し、所定温度(例えば、800℃)で焼付処理を施して外部電極3a、3bを形成する。
【0053】
以上、これらの工程を経て、上記積層型バリスタが製造される。
【0054】
このように本発明の積層型バリスタによれば、セラミック焼結体1にはBi2O3等のBi成分が含まれていないので、ESDにより酸素欠陥を増大させるBi成分が粒界に析出することもなく、耐静電気放電特性の悪化を抑制することができる。
【0055】
また、CoをCoOに換算して0.05〜5mol、MnをMnOに換算して0.001〜5mol、及び、Sr又はBaのうちの少なくとも1種をSrO,BaOに換算して0.01〜5mol、WをWO3に換算して0.001〜1mol添加し、さらにCo及びMnはそれぞれCo3O4,Mn3O4の形態で平均粒径が25nm〜100nmの微粉末状態で添加しているので、バリスタ電圧を低く抑制することができ、また漏れ電流も少なく、制限電圧特性にも優れ、しかも大きなサージ電流耐量を有する各種バリスタの安定した小形の積層型バリスタを容易に得ることができる。
【0056】
【実施例】
〔第1の実施例〕
本発明者らは、ZnOに対し、各添加物の添加量の異なる積層型バリスタを作製し、各種バリスタ特性を評価した。
【0057】
(実施例1〜6)
ZnOに対するCoOの添加量を1mol、及びMnOの添加量を0.5molと一定にし、SrOの添加量を本発明範囲内である0.01〜5molとした試験片を作製した。
【0058】
すなわち、ZnO100molに対し、CoOが1mol、MnOが0.5mol、SrOが0.01〜5molとなるように、平均粒径0.5μmのZnO、平均粒径50nmのCo3O4及びMn3O4、平均粒径0.8μmのSrCO3をそれぞれ秤量する。そしてこれら原料をボールミルに投入して混合し、湿式粉砕した後、乾燥し、700℃で仮焼し、仮焼粉末を作製した。
【0059】
次いで。この仮焼粉末に有機溶剤としてのエチルアルコール及びトルエン、バインダとしてのポリビニルブチラール、可塑剤としてのジブチルフタレート、分散剤としてのポリカルボン酸アンモニウム塩を加えスラリー状粉末とした後、ドクターブレード法により厚みが30±2μmのセラミックグリーンシートを作製した。
【0060】
次に、前記セラミックグリーンシートを所定サイズに打ち抜き、内部電極の面積が1±0.2mm2となるように前記セラミックグリーンシートの表面にPtペーストをスクリーン印刷し、これらセラミックグリーンシートを積み重ねた。
【0061】
次に、積み重ねたセラミックグリーンシートを2.0×109Paの圧力を負荷して圧着し、所定サイズに切断して積層体を作製した。
【0062】
次に、前記積層体を1000〜1200℃で2時間焼成し、セラミック焼結体を作製した。
【0063】
次に、内部電極と電気的に接続可能となるようにセラミック焼結体の両端面にAgペーストを塗布し、800℃で焼付処理を施して外部電極を形成した。
【0064】
以上、これらの工程を経て、縦1.6mm、横0.8mm、厚み0.8mmの積層型バリスタを作製した。
【0065】
(実施例7〜12)
CoOの添加量を1mol、MnOの添加量を0.5molと一定にし、BaOの添加量を本発明範囲内である0.01〜5molとした積層型バリスタを実施例1〜実施例6と同様の手順・方法で作製した。
【0066】
(実施例13、14)
CoOの添加量を1mol、MnOの添加量を0.5molと一定にし、SrO及びBaOの添加量を本発明範囲内である0.1mol又は0.5molとした積層型バリスタを実施例1〜実施例6と同様の手順・方法で作製した。
【0067】
(実施例15〜19)
MnO及びSrOの添加量を共に0.5molと一定にし、CoOの添加量を本発明範囲内である0.05〜5molとした積層型バリスタを実施例1〜実施例6と同様の手順・方法で作製した。
【0068】
(実施例20〜27)
CoOの添加量を1mol、SrOの添加量を0.5molと一定にし、MnOの添加量を本発明範囲内である0.001〜5molとした積層型バリスタを実施例1〜実施例6と同様の手順・方法で作製した。
【0069】
(実施例28〜34)
CoO、MnO及びSrOに加えてWO3をZnOに添加した積層型バリスタを作製した。
【0070】
すなわち、CoOの添加量を1mol、MnO及びSrOの添加量を共に0.5molと一定にし、WO3の添加量を本発明範囲内である0.001〜1molとした積層型バリスタを実施例1〜実施例6と同様の手順・方法で作製した。
【0071】
(比較例1、2)
CoOの添加量を1mol、MnOの添加量を0.5molと一定にし、SrOの添加量を本発明範囲外である0.01mol未満又は10molとした積層型バリスタを実施例1〜実施例6と同様の手順・方法で作製した。
【0072】
(比較例3、4)
CoOの添加量を1mol、MnOの添加量を0.5molと一定にし、BaOの添加量を本発明範囲外である0.01mol未満又は10molとした積層型バリスタを実施例1〜実施例6と同様の手順・方法で作製した。
【0073】
(比較例5、6)
MnO及びSrOの添加量を共に0.5molと一定にし、CoOの添加量を本発明範囲外である0.01mol又は10molとした積層型バリスタを実施例1〜実施例6と同様の手順・方法で作製した。
【0074】
(比較例7、8)
CoOの添加量を1mol、SrOの添加量を0.5molと一定にし、MnOの添加量を本発明範囲外である0.001mol未満又は10molとした積層型バリスタを実施例1〜実施例6と同様の手順・方法で作製した。
【0075】
(比較例9)
CoOの添加量を1mol、MnO及びSrOの添加量を共に0.5molと一定にし、WO3の添加量を本発明範囲外である5molとした積層型バリスタを実施例1〜実施例6と同様の手順・方法で作製した。
【0076】
表1は上記各実施例の添加物組成を示し、表2は上記各比較例の添加物組成を示している。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
なお、表2において、*は本発明の範囲外を示している。
【0079】
そして、上記各試験片(実施例1〜34、比較例1〜9)について電流−電圧特性を測定し、バリスタ電圧V1mA及び電圧非直線係数αを算出した。
【0080】
ここで、バリスタ電圧V1mAは、1mAの直流電流を流した時の各試験片の両端電圧を測定して求めた。
【0081】
また、電圧非直線係数αは、0.1mAの直流電流を流した時の各試験片の両端電圧とバリスタ電圧V1mAとから数式(1)に基づき算出した。
【0082】
【数1】
さらに、各試験片について漏れ電流、耐静電気放電特性、制限電圧特性、サージ電流耐量を評価した。
【0083】
漏れ電流は、1μAの直流電流を流した時の各試験片の両端電圧を測定し、バリスタ電圧V1mAとの比である漏れ電流比V1μA/V1mAで評価した。すなわち、V1μA値が高いと絶縁抵抗(IR)が高くなって漏れ電流は小さくなり、したがって漏れ電流比V1μA/V1mAが「1」に近いほど漏れ電流は少ないこととなる。
【0084】
耐静電気放電特性は、ノイズ研究所社製の静電気放電シミュレータを用いた。測定条件及び評価方法を以下に示す。すなわち、印加電圧30KV、放電コンデンサの静電容量500pF、放電抵抗0Ωの条件下で、静電気を0.5秒間隔で10回印加し、1μAの直流電流を流した時の各試験片の両端電圧V1μAを測定し、数式(2)によりESD変化率を算出して評価した。
【0085】
【数2】
制限電圧特性は、8/20μsの三角波形で且つ電流ピークが1Aの電流サージを各試験片に試料に印加し、このときの各試験片の最大となる両端電圧を制限電圧V1Aとして測定し、バリスタ電圧V1mAとの比である制限電圧比V1A/V1mAを算出し評価した。
【0086】
すなわち、バリスタ電圧V1mAが高くなると両端電圧V1Aも高くなるため、制限電圧比が「1」に近いほど制限電圧特性は良好なものとなる。
【0087】
また、サージ電流耐量は、8/20μsの三角波形で且つ電流ピークが50Aの電流サージを各試験片に印加し、数式(3)に基づき印加前後のバリスタ電圧V1mAを測定し、数式(3)に基づいてサージ変化率を算出し評価した。
【0088】
【数3】
表3は各実施例のバリスタ特性、表4は各比較例のバリスタ特性を示している。
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
なお、表3において、*は本発明範囲外を示す。
【0091】
表2及び表4から明らかなように、比較例1はSrOが0.01mol未満と少なく、しかもBaOが添加されていないため、V1μA値が低く、このため漏れ電流比が0.42と小さくなり、したがって漏れ電流も多く絶縁抵抗(IR)が低下することが分かった。また所望の焼結性を得ることができないためサージ変化率も10.7%と大きく、さらに電圧非直線係数αも18.7と小さく、バリスタ特性に劣ることが分かった。
【0092】
また、比較例2はSrOが10molと過剰に含有されているため、バリスタ電圧V1mAが56.5Vまで上昇し、ESD変化率が12.5%、サージ変化率が9.8%と共に大きくなり、また制限電圧比も1.92と高く、制限電圧特性が悪化することが確認された。これは、SrOが絶縁物として粒界に大量に析出して電流経路を阻害し、このためバリスタ特性の悪化を引き起こしているものと推認される。
【0093】
比較例3はBaOが0.01mol未満と少なく、しかもSrOが添加されていないため、比較例1と略同様、漏れ電流比が0.43と小さくなり、またサージ変化率も10.9%と悪化することが分かった。
【0094】
比較例4はBaOが10molと過剰に含有されているため、比較例2と略同様、バリスタ電圧V1mAが76.4Vと上昇し、ESD変化率が15.6%、サージ変化率が12.8%と共に大きくなり、また制限電圧特性も制限電圧比が2.10と悪化することが確認された。
【0095】
比較例5はCoOの添加量が0.01molと少ないため、ESD変化率が12.3%と大きく、また電圧非直線係数αが3.7、漏れ電流比が0.14といずれも極端に小さく、バリスタ特性の顕著な劣化が認められた。
【0096】
比較例6はCoOが10molと過剰に含有されているため、バリスタとしての安定性を損ない、制限電圧比が1.84、サージ変化率が15.6%、ESD変化率が12.3%となり、各種バリスタ特性が悪化することが分かった。
【0097】
比較例7はMnOの添加量が0.001mol未満と少ないため、電圧非直線係数αが15.8と低く、しかも漏れ電流比も0.35と小さく、バリスタ特性が悪化することが分かった。
【0098】
比較例8はMnOが10molと過剰に含有されているため、ESD変化率が9.8%であり、サージ変化率も7.5%と共に悪化することが分かった。
【0099】
比較例9はWO3が5molと過剰に含有されているため、WO3がMn3O4やCo3O4と凝集して粒成長を阻害し、このため焼結性を促進することができず、しかも斯かる凝集により組織が不均一となってサージ変化率が5.7%と悪化することが分かった。
【0100】
これに対し実施例1〜27は、表1及び表3から明らかなように、CoOが0.05〜5mol、MnOが0.001〜5mol、SrO又はBaOが0.01〜5mol添加されており、さらに、実施例28〜34は上記各成分に加えてWO3が0.001〜1mol添加されており、Bi2O3等のBi酸化物およびPr2O3等のPr酸化物が含有されていないので、ESD変化率が1.4〜4.6と耐静電気放電特性が良好であり、しかも、バリスタ電圧V1mAは9.6〜35.8Vと低く、電圧非直線係数αも27.5〜35.9と良好であり、漏れ電流比V1μA/V1mAは0.65〜0.85と漏れ電流も少なく、制限電圧比V1A/V1mAも1.47〜1.64と良好な制限電圧特性を有し、サージ変化率も1.7〜4.7と小さく、優れたバリスタ特性を有することが確認された。
【0101】
〔第2の実施例〕
粒径の異なるCo3O4及びMn3O4を使用すると共に、各添加物を本発明範囲内で添加した積層型バリスタを作製し、各種バリスタ特性を評価した。
【0102】
(実施例41〜46)
ZnO100molに対し、CoOが1mol、MnOが0.5mol、SrOが0.5mol、WO3が0.1molとなるように、平均粒径0.5μmのZnO、平均粒径25nm、50nm、100nmのCo3O4及びMn3O4、平均粒径0.8μmのSrCO3をそれぞれ秤量し、第1の実施例と同様の方法・手順で積層型バリスタを作製した。
【0103】
(比較例41、42)
ZnO100molに対し、CoOが1mol、MnOが0.5mol、SrOが0.5mol、WO3が0.1molとなるように、平均粒径0.5μmのZnO、平均粒径50nm、300nmのCo3O4及びMn3O4、平均粒径0.8μmのSrCO3をそれぞれ秤量し、第1の実施例と同様の方法・手順で積層型バリスタを作製した。
【0104】
次に、上記各実施例及び比較例について、第1の実施例と同様、バリスタ電圧V1mA、電圧非直線係数α、漏れ電流比V1μm/V1mA、ESD変化率、制限電圧比V1A/V1mA、サージ変化率を算出し、バリスタ特性を評価した。
【0105】
表5はその測定結果を示している。
【0106】
【表5】
この表5から明らかなように、比較例41、42はCo3O4又はMn3O4の平均粒径が300nmと大きいため、ZnOとの粒径差が小さくなってCo3O4又はMn3O4同士が凝集し、Co3O4又はMn3O4が均一に分散せず、このため焼結性の向上を図ることができず、サージ変化率が5.7〜5.8%と大きくなり、電圧非直線係数αも17.0〜18.0と小さく、バリスタ特性に劣ることが分かった。
【0107】
これに対して実施例41〜46はCo3O4及びMn3O4の平均粒径が25nm〜100nmであるため、良好な焼結性を有しており、サージ変化率その他のバリスタ特性も良好であることが確認された。
【0108】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明の請求項1、2に係る積層型バリスタ、及び請求項4、5に係る積層型バリスタの製造方法によれば、電極面積が小さくてもバリスタ電圧を低く抑制することができ、良好な電圧非直線性や制限電圧特性を有し、漏れ電流も小さく、大きなサージ電流耐量を有し、しかもBiが含有されていないので、耐静電気放電特性にも優れた各種バリスタ特性の良好な小形の積層型バリスタを容易に得ることができる。
【0109】
さらに、請求項3に係る積層型バリスタ、及び請求項6に係る積層型バリスタの製造方法によれば、WO3に換算して0.001〜1molのWを添加するので、更なる焼結性の向上を図ることができ、バリスタ特性の更なる安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る積層型バリスタの一実施の形態を示す縦断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【符号の説明】
1 セラミック焼結体
Claims (6)
- ZnOを主成分とするセラミック焼結体と、該セラミック焼結体の内部に形成された対となる内部電極と、前記セラミック焼結体の外表面に形成され、前記内部電極のいずれかと電気的に接続される外部電極とを有し、
前記セラミック焼結体は、ZnO100molに対し、CoがCoOに換算して0.05〜5mol、MnがMnOに換算して0.001〜5mol、及び、Sr又はBaのうちの少なくとも1種がSrO、BaOにそれぞれ換算して0.01〜5mol添加されたものからなることを特徴とする積層型電圧非直線抵抗体。 - 前記セラミック焼結体には、BiおよびPrが含有されていないことを特徴とする請求項1に記載の積層型電圧非直線抵抗体。
- 前記ZnOを主成分とするセラミック焼結体には、WがWO3に換算して0.001〜1mol添加されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の積層型電圧非直線抵抗体。
- ZnOを主成分とするセラミックグリーンシートを準備する工程と、
前記セラミックグリーンシートの上に内部電極となる導電性ペーストを塗布して、内部電極を形成する工程と、
前記内部電極が対向状となるように前記セラミックグリーンシートを積層して積層体を作製する工程と、
前記積層体を焼成してZnOを主成分とするセラミック焼結体を作製する工程と、
前記セラミック焼結体の外表面に形成して前記内部電極のいずれかと電気的に接続される外部電極を形成する工程とを含み、
前記セラミックグリーンシートは、ZnO100molに対し、CoがCoOに換算して0.05〜5mol、MnがMnOに換算して0.001〜5mol、及び、Sr又はBaのうち少なくとも1種がSrO、BaOにそれぞれ換算して0.01〜5mol添加され、Co、Mnは原料としてCo3O4、Mn3O4の各平均粒径が25〜100nmであることを特徴とする積層型電圧非直線抵抗体の製造方法。 - 前記セラミックグリーンシートには、BiおよびPrが添加されていないことを特徴とする請求項4に記載の積層型電圧非直線抵抗体の製造方法。
- 前記セラミックグリーンシートには、WがWO3に換算して0.001〜1mol添加されていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の積層型電圧非直線抵抗体の製造方法。
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