JP2004022838A - 貼り合わせsoi基板およびその製造方法 - Google Patents

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Shuhei Tsuda
津田 修平
Shinichi Tomita
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Abstract

【課題】埋め込み酸化膜をアンダーカットすることなく、テラス部に残存する酸化膜を除去する貼り合わせSOI基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】貼り合わせウェーハ30の活性層用ウェーハ10を外周エッチング後、テラス部の外周部に存在するシリコン酸化膜10a,30aの残存部aの付近だけを露出し、貼り合わせウェーハ30の露出面の略全域をレジスト膜40により覆う。次にフッ酸溶液で残存部aをエッチングし、続いてレジスト膜40を溶剤で溶かし、さらに活性層用ウェーハ10を表面研削、表面研磨して貼り合わせSOI基板を作製する。これにより、残存部エッチング時、SOI層10Aと支持基板用ウェーハ20との間に埋まった埋め込み酸化膜10bをウェーハ半径方向の中心に向かって浸食するアンダーカットが発生しない。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は貼り合わせSOI基板およびその製造方法、詳しくは活性層用ウェーハと、これを裏面側から支持する支持基板用ウェーハとを埋め込み酸化膜を介して貼り合わせ、活性層用ウェーハを所定の厚さまで減厚して、SOI層を形成するようにした貼り合わせSOI基板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
2枚のシリコンウェーハを貼り合わせた貼り合わせ基板の一種として、貼り合わせSOI(Silicon on Insulator)基板が知られている。これは、表面にデバイスが形成されるSOI層(活性層)と、これを裏側から支持する支持基板用ウェーハとの間に、厚さ数μmの埋め込み酸化膜(シリコン酸化膜)が埋め込まれた貼り合わせSOI基板である。
【0003】
図8および図9を参照して従来の貼り合わせSOI基板の製造方法を説明する。図8は、従来手段に係る貼り合わせSOI基板の製造方法を示すフローシートである。図9は、従来手段に係る貼り合わせSOI基板の埋め込み酸化膜のアンダーカット部の発生状態を示す要部拡大断面図である。
まず、CZ法により引き上げられた単結晶シリコンインゴットをスライスし、面取りし、ラッピング、エッチング、研磨して、片面または両面が鏡面に仕上げられた2枚のシリコンウェーハ101,102を用意する(図8(a))。このうち、活性層用ウェーハ101には、熱酸化炉を用いた熱酸化処理により、その露出面の全体に絶縁性のシリコン酸化膜101aが形成されている。
次いで、活性層用ウェーハ101と、支持基板用ウェーハ102とを常温で重ね合わせ、貼り合わせウェーハ103を作製する。これにより、2枚のウェーハ101,102の間に埋め込み酸化膜101bが現出される。その後、この貼り合わせウェーハ103に、雰囲気ガスに酸素を使用し、加熱温度800℃以上の貼り合わせ熱処理を施す(図8(b))。これにより、接合(または接着)強度が増すとともに、貼り合わせウェーハ103の露出面全体にシリコン酸化膜103aが形成される。このとき、活性層用ウェーハ101は、あらかじめシリコン酸化膜101aにより覆われている。このため、この貼り合わせ熱処理の熱により酸化膜がさらに成長し、厚くなる。説明の都合上、図8(図1も同様)ではシリコン酸化膜101aと、シリコン酸化膜103aとを区別している。
【0004】
次に、面取りされた両ウェーハ101,102の外周部形状に起因した貼り合わせ不良領域を除去するため、活性層用ウェーハ101の外周部が研削される(図8(c))。貼り合わせ不良領域が存在すれば、その後の洗浄工程、研磨工程などにおいて、この不良部分が剥がれて飛散し、それが付着してSOI層(活性層)の表面を汚染したり、付着した飛散物により、後工程のウェーハ加工時にSOI層の表面を傷つけるおそれがある。この外周研削は、貼り合わせ界面に達しない程度に止められる。その結果、活性層用ウェーハ101の外周部に若干量の削り残し部101cが現出する。
【0005】
続いて、この削り残し部101cが、アルカリエッチにより除去される(図8(d))。すなわち、貼り合わせウェーハ103が、KOHなどのアルカリ性エッチング液と接触し、その削り残し部101cが溶かされる。こうして、支持基板用ウェーハ102の外周部上の、埋め込み酸化膜101bの外周部が露出される。この領域をテラス部という。
さらに、活性層用ウェーハ101を所望の厚みまで表面研削し、さらに鏡面研磨することで、薄いSOI層101Aがその裏面側から支持基板用ウェーハ102により支持された貼り合わせSOI基板が作製される(図8(e))。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したアルカリエッチングでは、シリコン酸化膜101a,103aは、ほとんどエッチングされない。そのため、活性層用ウェーハ101の表面研削および表面研磨後、支持基板用ウェーハ102のテラス部の外周部にシリコン酸化膜101a,103aの削り残し部分である髭形状の残存部aが残ってしまい(図8(e))、これが剥がれて飛散し、SOI層101Aの表面に付着して汚染したり、その付着物により、後工程のウェーハ加工時にSOI層101Aの表面を傷つけたり、デバイス作成時のパターン切れの原因になるという問題がある。
【0007】
そこで、従来、このテラス部に残る残存部aの除去方法として、フッ酸などによるエッチング法、具体的にはフッ酸溶液中に貼り合わせSOI基板を浸漬し、埋め込み酸化膜101bの露出部分を含めて、この髭形状のシリコン酸化膜101a,103aの残存部aを溶失させる方法が知られている。しかしながら、テラス部の一帯からこの残存部aをエッチング(残存部エッチング)により除去する際、アンダーカットが発生し、SOI層101Aと支持基板用ウェーハ102との間に存在する埋め込み酸化膜101bまで、ウェーハ半径方向に2〜3μm程度を溶かすという課題があった(図9)。
その結果、このアンダーカット部bには塵埃が溜まりやすく、その塵埃が後工程で発塵源となるおそれがあった。または、デバイスが形成されるSOI層101Aの周縁部が欠けて、それが飛散し、SOI層101Aの表面の汚染、損傷の原因にもなった。
【0008】
これを踏まえて、発明者らは、鋭意研究の結果、以下の知見を得た。すなわち、フッ酸によるエッチング時、あらかじめテラス部に残存する埋め込み酸化膜101bのうち、SOI層101Aに近い内周側部分に例えばレジスト膜などの保護膜を被着し、露出部分はシリコン酸化膜101a,103aの残存部aが存在するテラス部の外周部だけとする。この結果、残存部aの除去時、埋め込み酸化膜101bのテラス部領域の内周側部分を残して残存部エッチングすることができる。よって、この残存部エッチング後、テラス部領域の内周側部分に残った埋め込み酸化膜101bは、SOI層101Aと支持基板用ウェーハ102との間に埋もれた埋め込み酸化膜101bと連続しているため、フッ酸などによる埋め込み酸化膜101bのアンダーカットの発生をなくすことができる。
【0009】
【発明の目的】
この発明は、埋め込み酸化膜をアンダーカットすることなく、テラス部に残存する酸化膜を除去することができる貼り合わせSOI基板の製造方法および、この製法で製造した貼り合わせSOI基板を提供することを、その目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、活性層用ウェーハと、これを裏面側から支持する支持基板用ウェーハとを埋め込み酸化膜を介して貼り合わせ、この貼り合わせにより得られた貼り合わせウェーハに熱処理を施し、この貼り合わせウェーハの露出面全域にシリコン酸化膜を形成し、次いで前記活性層用ウェーハの外周部を貼り合わせ界面付近まで研削し、この活性層用ウェーハの削り残した外周部をアルカリエッチングして埋め込み酸化膜の外周部を露出し、続いて前記貼り合わせウェーハの活性層用ウェーハ側に表面研削、表面研磨を順次施し、この活性層用ウェーハを減厚してSOI層とした貼り合わせSOI基板において、前記埋め込み酸化膜が、前記SOI層の貼り合わせ側の面の全域に形成され、その後、前記埋め込み酸化膜の露出した外周部から、前記シリコン酸化膜の残存部を除去した貼り合わせSOI基板である。
【0011】
活性層用ウェーハと支持基板用ウェーハとは、例えばシリコンウェーハである。貼り合わせSOI基板において、酸化膜により覆われるのは活性層用ウェーハ、またはそのウェーハ裏面に貼着される支持基板用ウェーハのいずれでもよい。または、活性層用ウェーハと支持基板用ウェーハとの両方でもよい。酸化膜の形成方法は限定されない。例えば、ドライ酸化、ウェット酸化などを採用することができる。
SOI層の厚さは限定されない。例えば厚膜のSOI層では20〜50μm、好ましくは30μm以下である。また、薄膜のSOI層では0.5〜20μmである。
埋め込み酸化膜が、SOI層の貼り合わせ側の面の全域に形成されるとは、SOI層と支持基板用ウェーハとの貼り合わせ界面の領域に存在する埋め込み酸化膜において、アンダーカットがない状態をいう。
埋め込み酸化膜の露出した外周部に存在するシリコン酸化膜とは、貼り合わせの前工程で、埋め込み酸化膜を形成するために必要に応じて形成された活性層用ウェーハの酸化膜と、貼り合わせ熱処理時に形成された酸化膜などである。
【0012】
請求項2に記載の発明は、活性層用ウェーハと、これを裏面側から支持する支持基板用ウェーハとを埋め込み酸化膜を介して貼り合わせる貼り合わせ工程と、この貼り合わせにより作製された貼り合わせウェーハの貼り合わせ強度を増強し、この貼り合わせウェーハの露出面全域にシリコン酸化膜を形成する熱処理工程と、この貼り合わせ強度を増強した貼り合わせウェーハの外周部の活性層用ウェーハ側を、貼り合わせ界面付近まで研削する外周研削工程と、この外周研削後の活性層用ウェーハの削り残した外周部を、アルカリエッチングにより除去し、前記埋め込み酸化膜の外周部を露出させる外周エッチング工程と、この外周エッチング後、前記貼り合わせウェーハの活性層用ウェーハ側を表面研削し、この活性層用ウェーハを減厚する表面研削工程と、この減厚された活性層用ウェーハの表面研削面を表面研磨し、SOI層とする表面研磨工程と、この外周エッチング後、前記埋め込み酸化膜の外周部の露出部分のうち、少なくともその内周側部分を保護膜により覆う保護膜形成工程と、この保護膜を形成した後、前記埋め込み酸化膜の露出した外周部から、前記シリコン酸化膜の残存部をエッチングにより除去する残存部エッチング工程と、この残存部エッチングされた貼り合わせウェーハから、前記保護膜を除去する保護膜除去工程とを備えた貼り合わせSOI基板の製造方法である。
【0013】
活性層用ウェーハおよび支持基板用ウェーハの貼り合わせは、例えば常温により両ウェーハを重ね合わせた後、貼り合わせ熱処理することで行われる。この貼り合わせ熱処理の加熱温度は800℃以上、例えば1100℃である。貼り合わせ熱処理の時間は、例えば2時間である。使用する熱酸化炉内の雰囲気ガスには酸素などが用いられる。
外周研削とは、活性層用ウェーハと支持基板用ウェーハとの貼り合わせ不良部分を除去するため、活性層用ウェーハの外周部を研削する工程である。この貼り合わせ不良部分が存在すれば、その後の洗浄工程、研磨工程などにおいて、この不良部分が剥がれて飛散し、それが発塵源となり、SOI層の表面(デバイス形成面)の汚染および損傷などの原因となる。
この外周研削は、貼り合わせ界面付近までとなる。外周研削後の活性層用ウェーハの外周部の残厚は10〜60μm程度である。外周研削の幅、すなわちウェーハ半径方向の長さは0.5〜5mm程度である。
外周エッチングとは、外周研削により発生した加工ダメージを含む活性層用ウェーハの外周部の削り残し部をアルカリ性エッチング液により除去する工程である。アルカリ性エッチング液としては、例えばKOH、NaOHなどを採用することができる。
【0014】
また、活性層用ウェーハを表面研削する際には、例えば表面研削砥石による研削が行われる。表面研削の条件は、例えば、#300〜#2000のレジノイド研削砥石を使用し、ウェーハ残厚が10〜60μmになるまで表面研削する。
表面研磨としては、例えば研磨装置の研磨ヘッドに表面研削された貼り合わせウェーハを装着し、研磨液中に遊離砥粒を含む研磨剤(スラリー)を供給しながら、活性層用ウェーハの研削面を研磨定盤上に展張された研磨布に押しつける方法が挙げられる。研磨装置は、枚葉式の研磨装置でも、バッチ式の研磨装置でもよい。さらにはワックスタイプの片面研磨装置でも、ワックスレスタイプの装置でもよい。
研磨布としては、例えばポリエステルフェルトにポリウレタンを含浸させた多孔性の不織布タイプ、発泡したウレタンのブロックをスライスした発泡性ウレタンタイプ、そのほかポリエステルフェルトにポリウレタンが含浸された基材の表面に発泡ポリウレタンを積層し、このポリウレタンの表層部分を除去して発泡層に開口部を形成したスエードタイプなどを採用することができる。
【0015】
保護膜としては、例えばネガ型またはポジ型のレジスト膜(東京応化製のOMR−85、または、日化精工製のスカイコートワックス)を採用することができる。保護膜の形成範囲は、テラス部のうち、SOI層と支持基板用ウェーハとの間に存在する埋め込み酸化膜と連続した少なくとも内周側部分である。ただし、貼り合わせ熱処理時に形成されたシリコン酸化膜の残存部は除かれる。それ以外にも、貼り合わせウェーハの他の領域に保護膜を形成してもよい。
具体的には、例えば活性層用ウェーハからテラス部の内周側部分までの範囲、その他、支持基板用ウェーハの裏面または端面を加えた範囲である。
残存部エッチング後の保護膜の除去には、例えば硫酸と過酸化水素水との混合液などによる溶失方法を採用することができる。そのほか、プラズマを使ったバレル型アッシャ、ダウンフロー型アッシャなどのプラズマアッシングでもよい。さらには、オゾンを使ったオゾン分解アッシングなどでもよい。
【0016】
活性層用ウェーハの外周研削後、活性層用ウェーハの削り残し部に外周エッチングを施すと、テラス部の外周部に、貼り合わせ熱処理時に形成されたシリコン酸化膜の一部分(残存部)が断面視して髭形状に残る。このシリコン酸化膜の残存部をエッチング液により除去することが、残存部エッチング工程である。
残存部エッチングには、例えばHF洗浄液によるHF洗浄などを採用することができる。
次に、貼り合わせSOI基板の製造方法における工程順は限定されない。例えば、(1) 外周エッチング工程を施した後に、保護膜形成工程、残存部エッチング工程、保護膜除去工程、表面研削工程、表面研磨工程を順次施してもよい。また、(2) 外周エッチング工程後に、表面研削工程、保護膜形成工程、残存部エッチング工程、保護膜除去工程、表面研磨工程を順次施してもよい。さらには、(3) 外周エッチング工程後に、表面研削工程、表面研磨工程、保護膜形成工程、残存部エッチング工程、保護膜除去工程を順次施してもよい。
【0017】
請求項3に記載の発明は、前記保護膜形成工程が、前記外周エッチング後、前記貼り合わせウェーハの全面または表面側だけを保護膜により覆う工程で、その後、この保護膜を、前記埋め込み酸化膜の外周部の露出部分のうち、少なくとも内周側部分を残して剥がす工程を有している請求項2に記載の貼り合わせSOI基板の製造方法である。
剥がし工程後は、埋め込み酸化膜の露出した外周部から、シリコン酸化膜の残存部をエッチングにより除去(残存部エッチング)し、それから、この残存部エッチングされた貼り合わせウェーハから保護膜を除去する。
【0018】
【作用】
この発明によれば、外周エッチング後、埋め込み酸化膜の外周部の露出部分のうち、少なくともその内周側部分を保護膜により覆う一方、シリコン酸化膜の残存部を露出させ、この状態のまま、例えばフッ酸などのエッチング溶液により、その不要な残存部をエッチング(残存部エッチング)して除去する。この残存部エッチング後、前記露出部分の内周側部分に残った埋め込み酸化膜は、SOI層と支持基板用ウェーハとの間に埋まった埋め込み酸化膜と連続することから、例えばフッ酸などによる埋め込み酸化膜のアンダーカットが発生しない。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施例を図面を参照して説明する。まず、図1〜図6に基づき、第1の実施例を説明する。
図1は、この発明の第1の実施例に係る貼り合わせSOI基板の製造方法を示すフローシートである。図2は、この発明の第1の実施例に係るオリエテーションフラット付きの貼り合わせSOI基板の平面図である。図3は、この発明の第1の実施例に係る裏面からシリコン酸化膜が除去された貼り合わせSOI基板の要部拡大断面図である。図4は、この発明の第1の実施例に係る保護膜塗布治具の概略構成を示す正面図である。図5は、この発明の第1の実施例に係る保護膜塗布装置の概略構成を示す正面図である。図6は、この発明の第1の実施例に係る保護膜剥離装置の概略構成を示す要部正面図である。
【0020】
図1に示すように、まずCZ法により単結晶シリコンインゴットの引き上げ、その後、この得られた単結晶シリコンインゴットに、オリエンテーションフラット(以下、オリフラ)加工、スライス、面取り、ラッピング、エッチング、鏡面研磨などを施すことで、厚さ675μm、直径150mmの片面または両面が鏡面仕上げされたオリフラ付きの活性層用ウェーハ10を用意する。一方、この活性層用ウェーハ10と同じ製法により、同じ厚さ、同一口径の鏡面仕上げされたオリフラ付きの支持基板用ウェーハ20を用意する(図1(a))。このうち、活性層用ウェーハ10は、熱酸化炉に挿入して熱酸化処理され、その露出面の全体が絶縁性のシリコン酸化膜10aにより覆われている。
【0021】
その後、両ウェーハ10,20の鏡面同士をクリーンルームの室温下で重ね合わせる(図1(b))。これにより、貼り合わせウェーハ30が形成される。この貼り合わせにより、活性層用ウェーハ10と支持基板用ウェーハ20との間に介在されたシリコン酸化膜10aの部分が埋め込み酸化膜10bとなる。
次に、この貼り合わせウェーハ30を、貼り合わせ用の熱酸化炉に挿入し、酸素ガス雰囲気で貼り合わせ熱処理する。これにより、接合(または接着)強度が増す。貼り合わせ温度は1100℃,熱処理時間は2時間である(図1(b))。これにより、貼り合わせウェーハ30の露出面全体がシリコン酸化膜30aにより覆われる。その結果、活性層用ウェーハ10の酸化膜は厚くなる。
【0022】
次いで、超音波照射によるボイド検査を行う。良品の貼り合わせウェーハ30については、面取りされた両ウェーハ10,20の外周部形状に起因した貼り合わせ不良領域を除去するため、活性層用ウェーハ10の外周部が、そのデバイス形成面側から#300〜#2000のレジノイド研削砥石を用いて研削される(図1(c))。貼り合わせ不良領域が存在すれば、その後の洗浄工程、研磨工程などにおいて、この不良部分が剥がれて飛散し、それが付着してSOI層の表面が汚染されたり、この付着した飛散物により、後工程のウェーハ加工時にSOI層の表面を傷つける。この外周研削は、貼り合わせ界面に達しない深さに止められる。これにより現出される活性層ウェーハ10の外周部の削り残し部10cの厚さは、50μm程度である。削り残し部10cのウェーハ半径方向の長さは2mm程度である。
【0023】
続いて、この削り残し部10cが、アルカリエッチにより除去される(図1(d))。すなわち、貼り合わせウェーハ30が、KOHなどのアルカリ性エッチング液に浸漬され、その削り残し部10cが溶かされる。こうして、支持基板用ウェーハ20の外周部の領域(テラス部分)、具体的には埋め込み酸化膜10bの外周部が露出される。その際、テラス部分の外周部に、厚さ2μm程度のシリコン酸化膜10a,30aの残存部aが現出する。
次に、活性層用ウェーハ10がそのデバイス形成面側から#360〜#2000のレジノイド研削砥石を用いて表面研削される(図1(e))。このとき、表面研削量は600〜650μm、加工により減厚された活性層用ウェーハ10の厚さは20μm程度とする。この活性層用ウェーハ10の表面のTTVは1μm程度とする。
【0024】
その後、この活性層用ウェーハ10の研削面に表面研磨が施される。具体的には、図示しない研磨装置の研磨ヘッドの下面に表面研削された貼り合わせウェーハ30を活性層用ウェーハ10側を下方に向けて保持する。次いで、活性層用ウェーハ10の研削面を、研磨定盤の上面にスポンジゴムを介して貼着された研磨布に押し付け、表面研磨する。研磨布には、ロデール社製の軟質不織布パッド、Suba600(Asker硬度80°)が採用されている。
表面研磨時、研磨ヘッドの回転速度は30rpm、研磨定盤の回転速度は60rpm、研磨砥粒を含む研磨剤(コロイダルシリカ)の供給量は、1800ml/分である。研磨量は10〜15μm程度、研磨後に得られたSOI層10Aの厚さは10μm程度である。活性層用ウェーハ10の研磨面のTTVは1μm程度となる。
【0025】
次に、この表面研磨された貼り合わせウェーハ30の表面に、テラス部の残存部aの近辺だけが環状に露出するように、ネガ型のレジスト膜(保護膜)40を形成する(図1(f))。このレジスト膜40の形成には、図4に示す保護膜塗布治具50または図5に示す保護膜塗布装置60が利用される。
図4に示すように、保護膜塗布治具50は、表面研磨後の貼り合わせウェーハ30の保持穴51aが上面に形成されたウェーハ保持台51と、このウェーハ保持台51の一端部上に回動ピン52を介して垂直面内で回動自在に保持され、貼り合わせウェーハ30のSOI層10A側の面に、ペースト状のレジストを刷毛塗りする領域を示す大口径のガイド孔53aが形成された塗布ガイド枠53とを備えている。
【0026】
レジスト塗布時には、まずウェーハ保持台51の保持穴51aに、支持基板用ウェーハ20側の面を下向きにして貼り合わせウェーハ30を収納する。次いで、回動ピン52を中心にして塗布ガイド枠53を垂直回動し、貼り合わせウェーハ30のSOI層10A側の面に塗布ガイド枠53を被せる。このとき、ガイド孔53aからSOI層10A側の面の範囲、具体的にはSOI層10Aのデバイス形成面の全域からテラス部の内周部までの範囲がガイド孔53aより露出される。それから、この露出部分にレジストが刷毛塗りされる。その後、このレジストを乾燥して硬化させた後、支持基板用ウェーハ20の裏面全域に、スピンコート法によりレジストを塗布し、これを乾燥して硬化させ、貼り合わせウェーハ30のテラス部の残存部aの周辺だけを除く全域に、レジスト膜40を形成する(図1(f))。
【0027】
次に、図5を参照して保護膜塗布装置60を説明する。この保護膜塗布装置60は、貼り合わせウェーハ30を、その支持基板用ウェーハ20側から真空吸着して保持する。チャック板61と、ペースト状のレジストが貯液されたレジストタンク62と、このレジストタンク62から導出され、レジストを貼り合わせウェーハ30のSOI層10A側の面に一定量で吐出するノズル63と、レジストノズル63を、XY平面(水平面)上で移動させるXY移動テーブル64とを備えている。
レジスト塗布時には、貼り合わせウェーハ30をあらかじめセンタリング、位置合わせ(図示せず)、その支持基板用ウェーハ20側からチャック板61に真空吸着し、XY移動テーブル64によりノズル63をXY面上で移動させながら、レジストタンク62にNガスを供給する。すると、そのガス圧により、タンク内のレジストがノズル63の吐出口から貼り合わせウェーハ30のSOI層10A側の面に所定量塗布される。塗布量の調整は、ノズル63の途中に設けられた流量調整弁63aによる。このときのレジストの塗布範囲は、貼り合わせ熱処理時に形成されたシリコン酸化膜10a,30aの残存部aを除く、SOI層10Aのデバイス形成面の端部からテラス部の内周部までの範囲である。その後、このレジストを乾燥して硬化し、レジスト膜40とする。
また、貼り合わせウェーハ30の支持基板用ウェーハ20側の面にレジストを塗布する場合は、保護膜塗布治具50と同じように、スピンコートによって全面塗布し、乾燥して硬化する。
【0028】
次に、図6を参照して保護膜剥離装置70を説明する。
図6に示すように、この保護膜剥離装置70は、貼り合わせウェーハ30を、その支持基板用ウェーハ20側から真空吸着して保持するチャック板71と、レジスト膜40に接触してこれを剥がす保護膜剥がし部72と、この保護膜剥がし部72をXY平面(水平面)上で移動させるXY移動テーブル73とを備えている。
保護膜剥がし時には、レジスト膜40が塗布された貼り合わせウェーハ30をセンタリングステージ上でセンタリングおよび位置合わせする。その後、貼り合わせウェーハ30を支持基板用ウェーハ20側からチャック板71に真空吸着する。続いて、XY移動テーブル73により保護膜剥がし部72をXY平面上で移動させながら、先に塗布されたレジスト膜40を剥がしていく。このとき、レジスト膜40の剥離範囲は、テラス部のうち、シリコン酸化膜10a,30aの残存部aを含む部分である。ここでは、レジスト膜40を、貼り合わせウェーハ30の全面に塗布している。ただし、貼り合わせウェーハ30の活性層用ウェーハ10側の面だけに塗布してもよい。
【0029】
次に、この残存部a(図1(f)の部分拡大図)を、バッファードフッ酸(BHF)のエッチング溶液によりエッチングする。具体的には、24℃のバッファードフッ酸液中に貼り合わせウェーハ30を30分間浸漬し、レジスト膜40から露出した前記残存部aを溶かして除去する(図1(f))。
それから、貼り合わせウェーハ30の露出面からレジスト膜40を除去する。すなわち、120℃の硫酸と過酸化水素水とからなる混合液(200:1)に、10分間だけ浸漬してこれを除去する(図1(g))。その結果、テラス部の内周部に埋め込み酸化膜10bが露出されたオリフラ付きの貼り合わせSOI基板が作製される(図2)。
その後、得られた貼り合わせSOI基板は、洗浄され、ウェーハケースなどに梱包されてから、デバイスメーカに出荷される。
【0030】
このように、外周エッチング後、埋め込み酸化膜10bの外周部の露出部分のうち、その内周側部分をレジスト膜40により覆い、露出部分はシリコン酸化膜10a,30aが存在する残存部aの周辺だけとし、この状態のまま、バッファードフッ酸により不要な残存部aが除去される。そのため、バッファードフッ酸による埋め込み酸化膜10bのアンダーカットを防止することができる。これは、テラス部の内周部に残った埋め込み酸化膜10bが、SOI層10Aと支持基板用ウェーハ20との間に埋まった埋め込み酸化膜10bと連続して存在することによる。
また、前記支持基板用ウェーハ20の裏面にレジスト膜40を形成せず、貼り合わせウェーハ30をバッファードフッ酸のエッチング溶液に浸漬すれば、図3に示す支持基板用ウェーハ20の裏面からシリコン酸化膜30aを除去した貼り合わせSOI基板を製造することができる。
【0031】
次に、図7に基づき、この発明の第2の実施例に係る貼り合わせSOI基板およびその製造方法を説明する。
図7は、この発明の第2の実施例に係る貼り合わせSOI基板の製造方法を示すフローシートである。
この第2の実施例では、活性層用ウェーハ10の外周部の削り残し部10cに対する外周エッチング後、順次、レジスト膜40の形成工程、シリコン酸化膜10a,30aの残存部aのエッチング工程、レジスト膜40の除去工程、活性層用ウェーハ10の表面研削工程および表面研磨工程を施すことで、貼り合わせSOI基板を製造する。
その他の構成、作用および効果は、第1の実施例と略同じであるので説明を省略する。
【0032】
【発明の効果】
この発明によれば、外周エッチング後、埋め込み酸化膜の外周部の露出部分のうち、少なくともその内周側部分を保護膜により覆い、その後、埋め込み酸化膜の露出した外周部からシリコン酸化膜の残存部をエッチングにより除去するので、埋め込み酸化膜をアンダーカットすることなく、埋め込み酸化膜の外周部の露出部分に存在する、貼り合わせ熱処理時に発生したシリコン酸化膜の残存部を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施例に係る貼り合わせSOI基板の製造方法を示すフローシートである。
【図2】この発明の第1の実施例に係るオリエテーションフラット付きの貼り合わせSOI基板の平面図である。
【図3】この発明の第1の実施例に係る裏面からシリコン酸化膜が除去された貼り合わせSOI基板の要部拡大断面図である。
【図4】この発明の第1の実施例に係る保護膜塗布治具の概略構成を示す正面図である。
【図5】この発明の第1の実施例に係る保護膜塗布装置の概略構成を示す正面図である。
【図6】この発明の第1の実施例に係る保護膜剥離装置の概略構成を示す要部正面図である。
【図7】この発明の第2の実施例に係る貼り合わせSOI基板の製造方法を示すフローシートである。
【図8】従来手段に係る貼り合わせSOI基板の製造方法を示すフローシートである。
【図9】従来手段に係る貼り合わせSOI基板の埋め込み酸化膜のアンダーカット部の発生状態を示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
10 活性層用ウェーハ、
10a シリコン酸化膜、
10b 埋め込み酸化膜、
10c 削り残し部、
10A SOI層、
20 支持基板用ウェーハ、
30 貼り合わせウェーハ、
30a シリコン酸化膜、
40 レジスト膜、
a 残存部。

Claims (3)

  1. 活性層用ウェーハと、これを裏面側から支持する支持基板用ウェーハとを埋め込み酸化膜を介して貼り合わせ、この貼り合わせにより得られた貼り合わせウェーハに熱処理を施し、この貼り合わせウェーハの露出面全域にシリコン酸化膜を形成し、次いで前記活性層用ウェーハの外周部を貼り合わせ界面付近まで研削し、この活性層用ウェーハの削り残した外周部をアルカリエッチングして埋め込み酸化膜の外周部を露出し、続いて前記貼り合わせウェーハの活性層用ウェーハ側に表面研削、表面研磨を順次施し、この活性層用ウェーハを減厚してSOI層とした貼り合わせSOI基板において、
    前記埋め込み酸化膜が、前記SOI層の貼り合わせ側の面の全域に形成され、その後、前記埋め込み酸化膜の露出した外周部から、前記シリコン酸化膜の残存部を除去した貼り合わせSOI基板。
  2. 活性層用ウェーハと、これを裏面側から支持する支持基板用ウェーハとを埋め込み酸化膜を介して貼り合わせる貼り合わせ工程と、
    この貼り合わせにより作製された貼り合わせウェーハの貼り合わせ強度を増強し、この貼り合わせウェーハの露出面全域にシリコン酸化膜を形成する熱処理工程と、
    この貼り合わせ強度を増強した貼り合わせウェーハの外周部の活性層用ウェーハ側を、貼り合わせ界面付近まで研削する外周研削工程と、
    この外周研削後の活性層用ウェーハの削り残した外周部を、アルカリエッチングにより除去し、前記埋め込み酸化膜の外周部を露出させる外周エッチング工程と、
    この外周エッチング後、前記貼り合わせウェーハの活性層用ウェーハ側を表面研削し、この活性層用ウェーハを減厚する表面研削工程と、
    この減厚された活性層用ウェーハの表面研削面を表面研磨し、SOI層とする表面研磨工程と、
    この外周エッチング後、前記埋め込み酸化膜の外周部の露出部分のうち、少なくともその内周側部分を保護膜により覆う保護膜形成工程と、
    この保護膜を形成した後、前記埋め込み酸化膜の露出した外周部から、前記シリコン酸化膜の残存部をエッチングにより除去する残存部エッチング工程と、
    この残存部エッチングされた貼り合わせウェーハから、前記保護膜を除去する保護膜除去工程とを備えた貼り合わせSOI基板の製造方法。
  3. 前記保護膜形成工程が、前記外周エッチング後、前記貼り合わせウェーハの全面または表面側だけを保護膜により覆う工程で、
    その後、この保護膜を、前記埋め込み酸化膜の外周部の露出部分のうち、少なくとも内周側部分を残して剥がす工程を有している請求項2に記載の貼り合わせSOI基板の製造方法。
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