JP2004022485A - 加熱体、加熱装置および画像形成装置 - Google Patents

加熱体、加熱装置および画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】製造するために高温の焼成炉を必要とし、複数層の被膜を形成するので、製造コストが高かった。鉛フリーという環境要求を満たすことは困難、加熱体の表面及び裏面に熱伝導性に違いが生じ、正しい温度で非加熱体である転写材を加熱する事ができないという課題があった。
【解決手段】厚みが30μ以下の金属箔発熱体の両面を高熱伝導フィラーを含有する厚み80μ以下のポリイミド樹脂フィルムで被覆し、前記金属箔発熱体両面のポリイミド樹脂フィルムの熱伝導率が概略同等としたものである。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、加熱体(以下、ヒータとも称する)、この加熱体を熱源とする加熱装置および該加熱装置を加熱定着装置として適用した画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の画像形成装置にあっては、紙などの転写材(被記録材、被加熱材)上に形成されたトナー像を該転写材に加熱融着させて定着固定するために、熱ローラ方式、フラッシュ加熱方式、オーブン加熱方式など種々な提案がなされている。特に加熱ローラとこれに圧接する加圧ローラの当接部位に、トナー像を担持する転写材を通過させて該トナー像を該転写材上に加熱融着させる熱ローラ方式のものが一定の効果を上げて多用されていることはよく知られている。
【0003】
しかしながら、近来、省エネルギー化、電源投入から出力可能になる迄の時間を短縮して作業能率の向上をはかる趣旨から、例えば、特開昭63−313128号公報、特開平2−157878号公報などに見られるように、固定支持された小型の加熱体と、これに当接しながら走行する耐熱性の定着フィルム(加熱フイルム)、これを介して転写材を前記加熱体に圧接させる加圧部材とからなり、全体としての熱容量が可及的に小さくなるように構成したものが提案されている。
【0004】
図5はこのような定着装置の一例を示す概略側断面図である。同図において、10は耐熱性エンドレスベルト状の定着フィルムで、厚み20〜70μm程度のポリイミドフィルムからなる基層の外側(転写材に当接する側)にトナーとの離型性を考慮して厚み5〜20μmのフッ素樹脂の離型層を形成してなるものである。
【0005】
上記定着フイルム10の内面に接するように、転写材Pの搬送方向に直交する方向に延設して表面が絶縁性、耐熱性、低熱容量の加熱体12が配設してある。この加熱体12の定着フィルム10が接する側とは反対側にサーミスタなどの温度センサ14が配置してある。
【0006】
前記加熱体12を囲繞するようにほぼ半円弧状の耐熱モールド材製のフィルムガイド13が配設してあり、また、このフィルムガイド13の背面には、熱による撓みを防止するためにFe、Alなどの金属からなる板金ステー(図示せず)が配設してある。加熱体12は前記フィルムガイド13の表面に露出して支持されており、定着フィルム10はフィルムガイド13にルーズに係合し加熱体12で加熱されながら走行する。
【0007】
前記加熱体12に対向する位置には、芯金11aの周囲に離型性のよいゴム層11b、このゴム層11bの表面に離型層11cを設け、不図示の駆動手段で図示反時計方向に回転駆動される加圧ローラ11が配設してあり、前記加熱体12に総圧4〜15Kg程度の当接圧で当接してニップNを形成している。これによって前記定着フィルム10が従動走行する。
【0008】
このような定着装置において、トナー像Tを担持する転写材Pを図示右方から前記ニップ部Nに搬送、通過させると、この位置でトナー像Tは転写材に融着固定されてハードコピーが完成して機外に排出される。
【0009】
このような構成とすることによって、加熱部分の熱容量を非常に小さくできるので、装置のスイッチオンから定着部位が定着可能温度に達する迄の時間を大幅に短縮でき、作業性が顕著に向上する。
【0010】
ところでこの種の従来の定着装置では、加熱体12としては図6に断面図が示されるような以下の構成をとっていた。
【0011】
即ち厚み0.5〜1.0mm、幅8〜15mm(長手方向は通紙幅によって異なる。A4縦通紙なら概略260mm程度であるし、A3通紙なら約350mm程度)のアルミナセラミック基板12aの上にパラジウム合金などの粉末をガラス素材と混ぜ合わせ、印刷技術を用いてパターン形成し、これを焼成して発熱層12bを形成していた。更に定着フィルムとの摺動性や、絶縁性を保つために保護層12cとしてガラス被膜を発熱体と同様に印刷焼成していた。
【0012】
また、特開平2−207285号公報、特開平10−340020号公報に上述セラミック基板の代わりに耐熱樹脂を基板として上記と同様の方法で発熱層を形成する提案もなされている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のセラミック基板上に発熱層を設ける加熱体は、焼成技術によって形成するので、製造するために高温の焼成炉を必要とし、複数層の被膜を形成するので、製造コストが高かった。更に、耐熱性は十分にあるが、焼成体であるために靱性が小さく、組み立て時の取り扱い性が悪いという欠点もあった。更に表面保護層である焼成ガラスの硬度は定着フィルムより格段に高く、且つ摺動性が良くないので長期の使用において、高価な耐熱グリスを多量に使用しないと定着フィルムが摩耗してしまうという欠点もあった。更に基板が焼成体であるので表面形状を任意にすることが困難であり、ニップ幅を広くしたり、ニップ内の圧力分布を変えることはほとんど不可能であった。
【0014】
また、後者の耐熱樹脂に発熱層を印刷焼成して形成するためには、耐熱樹脂が炭化する温度以下で焼成するために、結着剤であるガラス素材に多量の酸化鉛を混入することになり、鉛フリーという環境要求を満たすことは困難であり、一般的な製法であるスクリーン印刷後に低温焼成した場合は、スクリーンのメッシュ模様が発熱体表面に残ってしまう。この凹凸は定着フィルムを介しての熱伝導の際の熱障壁となるので好ましくない。
【0015】
また、低融点ガラスの熱膨張率はポリイミド樹脂の熱膨張率より大きく、発熱層のポリイミド樹脂に対する溶融接着強度は強くできないので、急激な加熱で発熱体が剥離する危険があり、立ち上がり時の投入電力に制限があった。更に発熱体がセラミックであるので、ポリイミド樹脂基板が湾曲したときにセラミック発熱体の剥離や破断が発生することもあった。
【0016】
蒸着等により発熱層を耐熱樹脂にパターニングする方法もあるが、設備が大がかりになるので、加熱体(以下、ヒータとも称する)が非常に高価になるばかりでなく上述発熱体と耐熱樹脂の接着強度も大きくできないという欠点がある。従って、速度の速い画像形成装置のフィルム定着装置に用いられるヒータとしては不向きであった。
【0017】
また、ヒータの定着フィルム当接面の裏面側に温度検知素子を当接させる構成とする場合、ヒータ基板としてアルミナ等のセラミックポリイミド樹脂基板等を用い、定着フィルム当接面にガラス層を設けると、ヒータの表面(定着フィルム当接面を以下、表面側と称す)及びヒータの裏面(定着フィルムとの非当接面を以下、裏面側と称す)側に熱伝導性に違いが生じ、ヒータ表面とヒータ裏面に温度差を生じ、正しい温度で非加熱体である転写材を加熱する事ができず、現像剤の溶融不足による定着不良や高温による現像剤の過溶融によるオフセット(高温オフセット)を発生する場合がある。特に、この現象は画像形成装置が高速になった場合に顕著に影響が表れるという課題があった。
【0018】
本発明は上記のような課題を解消するためになされたもので、加熱体の低コスト化、加熱装置の環境配置・温調の容易化、画像形成装置の画像形成の高品質化を図ることを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明は下記の構成を有することを特徴とする加熱体、加熱装置および画像形成装置である。
【0020】
(1)厚みが30μ以下の金属箔発熱体の両面を高熱伝導フィラーを含有する厚み80μ以下のポリイミド樹脂フィルムで被覆し、前記金属箔発熱体両面のポリイミド樹脂フィルムの熱伝導率が概略同等としたことを特徴とする加熱体。
【0021】
(2)ポリイミド樹脂フィルムの熱伝導率の比は、金属箔発熱体の表面側:金属箔発熱体の裏面側=1:0.9〜1:1.1であることを特徴とする(1)記載の加熱体。
【0022】
(3)金属箔発熱体は厚み50μ以下のニクロム箔であることを特徴とする(1)記載の加熱体。
【0023】
(4)金属箔発熱体が厚み30μ以下のステンレス箔であることを特徴とする(1)記載の加熱体。
【0024】
(5)金属抵抗フィルム発熱体を挟む高熱伝導フィラーを含有するポリイミド樹脂フィルムは、平均粒径10μ以下の窒化硼素粒子を10Wt%以上分散させたポリイミド樹脂フィルムあることを特徴とする(1)または(2)の記載の加熱体。
【0025】
(6)加熱体と、前記加熱体に対向して配置される回転加圧体と、前記加熱体を内包するように該加熱体と加圧体との間に挟持された加熱フィルムを有し、加熱体と加圧体との加熱フィルム挟持部で加熱フィルムと加圧体との間に被加熱材を挟持搬送させて加熱処理を行なう加熱装置において、前記加熱体として(1)〜(5)のうちのいずれか1項記載の加熱体を用いたことを特徴とする加熱装置。
【0026】
(7)被記録材上に未定着トナー画像を形成する画像形成手段と、その未定着トナー画像を前記被記録材上に加熱融着させて定着固定する加熱定着手段とを有する画像形成装置において、前記加熱定着手段として(6)記載の加熱装置を適用したことを特徴とする画像形成装置。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態を添付図面について説明する。
【0028】
(実施例1)
図1は本発明の実施例1をあらわす加熱体の断面図である。図1において、本発明に係るところの発熱体12であり、1aは保護層、1cは基層となる高熱伝導性ポリイミドフィルムで、ポリイミドの熱伝導性を上げるために平均粒径3μの窒化硼素を30Wt%ポリイミドに分散させたものであり、厚さは20μとした。このポリイミド層1a、1cは圧延された厚さ7μのニクロム箔1bの表裏両面上に塗布形成したものである。ポリイミド層1aの両端は電極を形成するためにマスキングを行っている。また、温度制御用の温度検知素子(サーミスタ)14を基層1cに高熱伝導シリコン接着剤で接着している。
【0029】
図2は上記加熱体12を熱源として装着した加熱装置の適用例である加熱定着装置のニップ部の概略断面図であり、図2において、10はエンドレスベルト状の定着フィルム、13はPPS、LCP、フェノールなどの耐熱樹脂からなる断面形状が半円弧状のフィルムガイド部材であり、上記定着フィルム10が周長に余裕を持たせて外嵌され該定着フィルムの回転をガイドする。また、フィルムガイド部材13は加熱体12を支持するホルダとしての役割も有しており、下面に加熱体12を固定支持している。
【0030】
11は不図示の装置側板間に回転可能に支持され、定着フィルム10を介して加熱体12に対し圧接して圧接(定着)ニップ部Nを形成する加圧体としての加圧ローラであり、不図示の駆動手段に回転駆動させられてフィルム10を駆動する駆動ローラとしての機能も兼ねている。この加圧ローラ11はアルミ、鉄等の芯金11aの上にシリコーンゴム層11bを設け、該ゴム層11の外周に離型層としてPFAチューブ層11cを設けている。
【0031】
なお、定着フィルム10はフイルムガイド部材13とともに別に設けた駆動ローラに掛け回し該駆動ローラで該定着フィルムを駆動させる、あるいは定着フィルム10をフイルムガイド部材13と別に設けた駆動ローラおよびガイドローラに掛け回し該駆動ローラで該定着フィルムを駆動させ、この定着フィルムの駆動に従動させて加圧ローラ11を駆動させるようにしても良い。
【0032】
而して、定着フィルム10は加圧ローラ11の回転により、少なくとも画像定着実行時は図2中矢示の時計方向に加熱体12の下面と摺動しながら所定の周速度、即ち不図示の画像形成部側から搬送されてくる未定着トナー画像Tを担持した転写材Pの搬送速度と略同一速度でシワなく回転駆動される。
【0033】
そして、電力給電により加熱体12が加熱され、定着フィルム10が回転駆動されている状態において、加圧ローラ11の離型層11c,ゴム層11bの変形によって形成される定着ニップ部Nの定着フィルム10と加圧ローラ11との間に転写材(被記録材、被加熱材)Pが導入され、この転写材Pを定着フィルム10の外周面に密着させて該定着フィルムと一緒の重なり状態で該定着ニップ部Nを通過させ、このニップ部通過程で転写材Pに加熱体12からの熱エネルギーが定着フィルム10を介して付与されて該転写材上の未定着トナー画像Tが加熱溶融定着される。定着処理された転写材Pは定着ニップ部通過後定着フィルム10から分離して装置外に排出される。
【0034】
上記図2に示す加熱定着装置に用いる定着フィルム10としては、熱容量を小さくしてクイックスタート性を向上させるために、肉厚を80μm以下、好ましくは60μm以下20μm以上としたポリイミドベースフィルムにPTFE、PFAなどを含む高離型性フッ素樹脂を塗工したものを用いることができる。熱伝導性を上げるためにポリイミドベース層に絶縁性の熱伝導フィラーを添加したり、更には静電オフセットを防止し、熱伝導性を上げるためにカーボン等の導電性フィラーを離型樹脂に混入することにより定着性能を更に上げることができる。また、ステンレスやアルミニウムなどの金属を圧延してシームレスフィルムとしたものやニッケル等を電鋳形成したシームレスフィルムに離型層を設けた定着フィルムを使用してもよい。
【0035】
加圧ローラ11は熱ローラ定着装置にも通常使用される加圧ローラを使用することができる。一般的には鉄やアルミニウムなどの金属芯金の周囲に耐熱性シリコンゴム等の弾性層を形成し、更に表層にPFA、FEPなどのフッ素樹脂層やフッ素エラストマー層を形成して用いる。弾性層は発泡ゴムにすると断熱性が増すので、表面温度が上がりやすいという利点がある。
【0036】
図2に示す加熱定着装置としては、定着フィルム10として層厚み50μ、外径30mmのポリイミドベースに1μのプライマーを塗工し、最外層に8μの半導電PFA層を形成したものを用いた。また、加圧ローラ11としては外径10mmの鉄芯金の周囲に外径30mmのシリコンスポンジローラを形成し、厚み50μのPFAチューブを接着被覆したものを使用した。この加圧ローラ11の製品硬度は53°(アスカーC)であった。上記加圧ローラ11を総加圧力18Kgで上記定着フィルム10に加圧しつつ、フィルム速度が150mm/秒となるように不図示の駆動装置で回転駆動した。
【0037】
加熱体12は図1に示した構成のものを使用した。幅は12mmで長さは330mmの加熱体12をホルダーとしてのフイルムガイド部材13に耐熱シリコンゴムで接着した。シリコンゴム接着剤は硬化しても弾性が保持できるので、急速加熱時のひずみを吸収する効果がある。
【0038】
上記加熱体12は裏面にサーミスタなどの検温素子14を高熱伝導接着剤で接着し、加熱体12の温度を正確に検知し、不図示の制御回路にフィードバックして加熱体12に供給する電力を制御する。
【0039】
本実施例に示す加熱定着装置を搭載した後記の画像形成装置はエネルギー消費を下げるため所定時間、画像形成信号がこない場合は加熱定着装置への給電を完全に止めるので、室温まで温度は下がってしまう。そして、画像形成信号が来てから加熱定着装置を定着可能な初期設定温度(210℃)まで上げるのに5秒とする必要があったため、初期は900Wの電力を入れなくてはならなかった。即ち平均昇温速度は約40℃/秒となる。
【0040】
このような条件で冷却と加温を150.000回繰り返したが定着性は問題なく、装置に不都合は生じなかった。また、従来セラミックヒータを用いた場合には低温環境で封筒のような厚紙がトラブルで重送(厚みが1mm以上)した場合、加熱体12が加圧ローラ11から完全に離間してしまい、離間した部分は熱が消費されないので瞬間的に異常昇温し、転写紙のある部分と無い部分の温度差で破損してしまうこともあったが、本発明に係る加熱体12では靱性があるので全く破損することはなかった。更に加熱体12と定着フィルム10間の摺動性を確保するために、500mg塗布していた耐熱グリス量を150mgに減らしても連続300.000枚以上の通紙に対してもトルクアップや定着フィルムの摩耗等の問題が発生することなく十分な耐久性が得られた。
【0041】
また、定着フィルム速度を450mm/secにしても ヒータ表面側と裏面側の温度差は小さく オフセットのない良好な定着画像が得られた。
【0042】
比較例1
図2に示した加熱定着装置に従来用いられている厚み1.0mmのアルミナセラミック基板にAg/Pd系の発熱層と80μmのガラス保護層を設けた幅12mm、長さ330mmの加熱体12を装着して耐久試験を行った。この加熱体12の場合は熱容量が大きいので、実施例1と同じ昇温速度を得るためには980Wが必要であった。また、低温時の封筒五重送を10回繰り返したところ10台のユニットのうち1台でアルミナ基板の破損が見られた。更に通紙耐久を行ったところ、500mgのグリスを使用しても平均180.000枚でトルクアップし耐久寿命となった。
【0043】
また 定着フィルム速度を450mm/secにしても、ヒータ表面側と裏面側の温度差が大きくなり、熱伝導率の悪いヒータ表面側の温度が下がり、定着不良気味の画像となった。
【0044】
比較例2
図2に示した加熱定着装置に従来のアルミナセラミック基板の代わりに100μのポリイミド樹脂を用い、Ag/Pd系の発熱層を焼結形成し、更にポリイミド樹脂で20μ保護層を設けた加熱体12を装着した。この定着装置を実施例1と同様に900Wの電力で40℃/秒の昇温速度で繰り返し加温をしたところ、約1000回の繰り返しで加熱体12の基板からの剥離が発生した。
【0045】
また、定着フィルム速度を450mm/secにしたところ、加熱体裏面側の熱伝導率が悪く、加熱体表面側の温度が上昇し、高温オフセットを発症した。
【0046】
(実施例2)
図3は本発明に係る加熱体12の他の実施例である。本実施例においては厚さ10μのニクロム箔1−1bの両面に保護層および基層として厚さ20μの高熱伝導ポリイミドフィルム層1−2bをポリイミド接着剤で設けた。この高熱伝導ポリイミド1−2bには熱伝導フィラーとして平均粒径3μの窒化硼素30Wt%をポリイミド樹脂中に分散させ、更に表面側のポリイミド樹脂には摺動性を更に上げるために3Wt%のPTFE粉末を分散させたものを使用した。電極部分は実施例1と同様にマスキングを行って露出させた。
【0047】
このようにして得られた加熱体12を図2に示した加熱定着装置のフイルムガイド部材13である耐熱樹脂ホルダに接着し検討を行ったところ良好な定着性が得られた。この耐熱樹脂ホルダは液晶ポリマーで成型し、図5に断面図を示すように加圧ローラの外周曲率にほぼ等しい曲率を有している。このために従来平面のヒータに比べて定着ニップ幅を大きくすることができたので、定着性は更に有利となった。
【0048】
表面側に3Wt%のPTFE粉末を分散させ、熱伝導率を裏面側と変化させているが、出願人等の実験によると、表面と裏面側の熱伝導率の比が450mm/sec等の高速の場合には、好ましくは1:0.9〜1:1.1の範囲にあると、表面と裏面の温度差を抑えることが可能であり、高温オフセット及び定着不良のない良好な定着画像を得ることができる。
【0049】
実施例2について更に詳細に説明する。図5において、加熱体12は上述構成のもので幅20mm、長手方向長さ340mmのものを使用した。定着フィルム10は外径24mmで厚み40μのポリイミド樹脂に0.8μの導電プライマーを塗工し、更に離型層として表面抵抗10のPFAを積層コートしたものを使用した。
【0050】
加圧ローラ11は外径10mmの芯金11aの外周にシリコンゴム層11bを設け、表層には離型層として厚さ50ミクロンのPFA樹脂層11cを設けた外径25mm、製品硬度53°(アスカーC)のものを使用した。総加圧力は20kgとした。従って、ホルダ13(フイルムガイド部材)の曲率はR12.5とした。このような構成にすることにより従来平面の加熱体12では定着ニップ幅は約5mmであったが、14mmの定着ニップ幅を形成することができ、定着温度を実施例1よりも約20℃下げることができた。
【0051】
(実施例3)
図4は本発明の加熱装置を加熱定着装置として適用した画像形成装置の一例の概略構成を示したもので、この画像形成装置は原稿台往復動型・回転ドラム型・転写式・プロセスカートリッジ着脱方式の電子写真複写装置である。
【0052】
図4において、100は装置機筺、101はその装置機筺100の上面板102上に配設したガラス板等の透明板部材よりなる往復動型の原稿載置台であり、機筺上面板101上を図面上右方a、左方a´に夫々所定の速度で往復移動駆動される。
【0053】
Gは原稿であり、複写すべき画像面側を下向きにして原稿載置台101の上面に所定の載置基準に従って載置し、その上に原稿圧着板103をかぶせて押え込むことによりセットされる。
【0054】
104は機筺上面板102面に原稿載置台101の往復移動方向とは直角の方向(紙面に垂直の方向)を長手として開口された原稿照明部としてのスリット開口部である。
【0055】
原稿載置台101上に載置セットした原稿Gの下向き画像面は、原稿載置台101の右方aへの往動移動過程で右辺側から左辺側にかけて順次にスリット開口部104の位置を通過していき、その通過過程でランプ105の光Lをスリット開口部104、透明な原稿載置台101を通して受けて照明走査され、その照明走査光の原稿面反射光が像素子アレイ106によって感光ドラム107面に結像露光される。
【0056】
感光ドラム107は例えば酸化亜鉛感光層・有機半導体感光層等の感光層が被覆処理され、中心支軸108を中心に所定の周速度で矢示bの時計方向に回転駆動され、その回転過程で帯電器109により正極性又は負極性の一様な帯電処理を受け、その一様帯電面に前記の原稿画像の結像露光(スリット露光)を受けることにより、感光ドラム107面には結像露光した原稿画像に対応した静電潜像が順次に形成される。
【0057】
この静電潜像は現像器110により加熱で軟化溶融する樹脂等より成るトナーにて順次に顕像化され、この顕像化されたトナー画像が転写部としての転写放電器111の配設部位へ移行する。
【0058】
Sは被記録材としての転写材シートPを積載収納したカセットであり、このカセット内のシートが給送ローラ112の回転により1枚宛繰出し給送され、次いでレジストローラ113により、感光ドラム107上のトナー画像形成部の先端が転写放電器111の部位に到達したとき転写材シートPの先端も転写放電器111と感光ドラム107との間位置に丁度到達して両者一致するようにタイミングどりされて同期給送される。そして、その給送シートの面に対して転写放電器111により感光ドラム107側のトナー画像が順次に転写される。
【0059】
転写部でトナー画像転写を受けたシートは、不図示の分離手段で感光ドラム107面から順次に分離され、搬送装置114によって像加熱装置(加熱定着装置)50に導かれて担持している未定着トナー画像の加熱定着を受け、画像形成物(コピー)として排出ローラ116を通って排紙トレイ117上に排出される。
【0060】
画像転写後の感光ドラム107の面は、クリーニング装置118により転写残りトナー等の付着汚染物の除去を受けて繰り返して画像形成に使用される。PCは装置本体100内のカートリッジ着脱部120に着脱されるプロセスカートリッジであり、本例の場合は、像担持体としての感光ドラム107、帯電器109、現像器110、クリーニング装置118の4つのプロセス機器を包含させて一括して装置本体100に対して着脱交換自在としてある。
【0061】
図4において、加熱体2は図3構成のもので幅20mm、長手方向長さ340mmのものを使用した。定着フィルム10は外径40mmで厚み18μのポリイミド樹脂に0.8μの導電プライマーを塗工し、更に離型層として表面抵抗10のPFAを積層コートしたものを使用した。この定着フィルム1は、不図示の駆動手段により 回転駆動する表面にシリコンゴムを被覆した駆動ローラ11によって時計回りに70mm/secの速度で駆動される。12は金属製のテンションローラであり、定着フィルム1が駆動されてもシワが発生しないように所定の張力が得られるように、不図示のばねで定着フィルム1を外側に引っ張っているとともに、定着フィルム1の蛇行を補正するために不図示の駆動機構によりテンションローラの一端を上下に変位させている(例えば 特開平4−204681を参照)。
【0062】
加圧ローラ11は外径10mmの芯金11aの外周にシリコンゴム層11bを設け、表層には離型層として厚さ50ミクロンのPFA樹脂層11cを設けた外径25mm、製品硬度53°(アスカーC)のものを使用した。総加圧力は20kgとした。
【0063】
この加熱装置を不図示の温度制御手段により180℃に温調し、定着動作を行ったところ 200Wの電力で給紙開始から所定温度にすることが可能であり、従来のセラミック基板を使用した物に比べて約1/2に減らすことができると共に
少ない電力で良好な定着画像を得ることができた。また 表裏の温度差も少ないので 高温オフセット 光沢ムラ等のない高品位の画像を得ることができた。
【0064】
なお、以上の実施例では、本発明の加熱体を熱源とした加熱装置を、加熱定着装置をして適用した場合について説明したが、本発明の加熱装置は例えば、画像担持した被記録材を加熱して表面性(艶など)を改質する装置、仮定着処理する装置など、他の被加熱体を加熱処理する装置として広く適用できる。
【0065】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、厚みが30μ以下の金属箔発熱体の両面を高熱伝導フィラーを含有する厚み80μ以下のポリイミド樹脂フィルムで被覆し、前記金属箔発熱体両面のポリイミド樹脂の熱伝導率が概略同等に構成したので、少なくともポリイミドの縮合反応温度以下で製造することが可能となり、セラミック基板ヒータに比べて非常に安価に得ることができる。また、靱性もあるので、欠けたり、割れることもなく組み立て性が非常に良い。従って、本発明の加熱体を用いる装置の組み立て不良率を下げることができ、コストの低廉化が可能となった。
【0066】
セラミック基板を用いたヒータに比べて熱容量が小さいので、加熱体の立ち上がり時間を短くできる。また、セラミック基板を用いたヒータに比べて表面潤滑性がよいので、長寿命化が可能である。
【0067】
発熱体を焼成成型する方法に比べて、剥がれにくく、割れたりすることがないので容易に屈曲させてホルダーに設置でき、ニップ形状やニップ内の圧力分布も自由に制御できるということも可能となる。
発熱体を焼成成型する方法に比べて、剥がれにくく、割れたりすることがないので急激な温度上昇が可能になり、画像形成装置の立ち上がり時間を短縮できた。
【0068】
発熱体を焼成成型する方法に比べて、ヒーター表面が平滑なので熱伝達効率が上がる。さらに、ヒータの両面の材質が同一なので、厚みを管理することにより容易に表面側と裏面側の熱伝導率を概略同一とする事ができ、ヒータの表面側と裏面側の温度差を小さくできるので、温調精度が向上し、高速で定着動作を行っても高温オフセット等のない良好な定着性能を得る事ができる等の効果がある。
【0069】
本発明によれば、ポリイミド樹脂の熱伝導率の比が、金属箔発熱体の表面側:金属箔発熱体の裏面側=1:0.9〜1:1.1で構成したので、表面側及び裏面側表面の温度差を小さくできるので、高速で用いても高温オフセットのない良好な加熱性を得ることができるという効果がある。
【0070】
本発明によれば、金属箔発熱体が厚み50μ以下のニクロム箔で構成したので、ポリイミド樹脂とニクロム箔は接着性がよく、電流を多く流しても剥離することが無く、温度の立ち上がりを速くすることができるという効果がある。
【0071】
本発明によれば、金属箔発熱体が厚み30μ以下のステンレス箔で構成したので、ポリイミド樹脂とステンレス箔は接着性がよく、電流を多く流しても剥離することが無く、温度の立ち上がりを速くすることができるという効果がある。
【0072】
本発明によれば、金属抵抗フィルム発熱体を挟む高熱伝導フィラーを含有するポリイミド樹脂フィルムは、平均粒径10μ以下の窒化硼素粒子を10Wt%以上分散させたポリイミド樹脂フィルムで構成したので、取り扱い性や摺動性が向上するという効果がある。
【0073】
本発明によれば、加熱体と、前記加熱体に対向して配置される回転加圧体と、前記加熱体を内包するように該加熱体と加圧体との間に挟持された定着フィルムを有し、加熱体と加圧体との定着フィルム挟持部で定着フィルムと加圧体との間に被加熱材を挟持搬送させて加熱処理を行なう加熱装置において、前記加熱体として本発明の加熱体を用いて構成したので、表面側と裏面側の熱伝導率をほぼ同一にしたので、表面側及び裏面側表面の温度差を小さくできるので、高速で用いても高温オフセット及び加熱不良のない良好な加熱性を得ることができるという効果がある。
【0074】
本発明によれば、被記録材上に未定着トナー画像を形成する画像形成手段と、その未定着トナー画像を前記被記録材上に加熱溶融させて定着固定する加熱定着手段とを有する画像形成装置において、前記加熱定着手段として本発明の加熱装置を適用するように構成したので、装置のスイッチオンから定着部位が定着可能温度に達する迄の時間を大巾に短縮した画像形成装置を得ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の加熱体を示す構成図である。
【図2】その加熱体を熱源とする加熱装置を加熱定着装置として適用した構成図である。
【図3】本発明の実施例2の加熱体を示す構成図である。
【図4】本発明の加熱装置を加熱定着装置として適用した画像形成装置の概略構成図である。
【図5】従来の加熱定着装置の概略構成図である。
【図6】従来の加熱体の構成図である。
【符号の説明】
1a、1−2b 保護層
1b、1−1b ニクロム箔
1c、1−2b 基層
10 定着フィルム
11 加圧ローラ
11a 芯金
11b シリコーンゴム層
11c PFAチューブ層
12 発熱体
13 フィルムガイド部材(耐熱樹脂ホルダ)
14 温度検知素子(サーミスタ)
P 転写材
N 定着ニップ部
50 像加熱装置(加熱定着装置)
100 装置機筐
101 原稿載置台
102 上面板
103 原稿圧着板
107 感光ドラム
109 帯電器
110 現像器
111 転写放電器

Claims (7)

  1. 厚みが30μ以下の金属箔発熱体の両面を高熱伝導フィラーを含有する厚み80μ以下のポリイミド樹脂フィルムで被覆し、前記金属箔発熱体両面のポリイミド樹脂フィルムの熱伝導率が概略同等としたことを特徴とする加熱体。
  2. ポリイミド樹脂フィルムの熱伝導率の比は、金属箔発熱体の表面側:金属箔発熱体の裏面側が1:0.9〜1:1.1であることを特徴とする請求項1記載の加熱体。
  3. 金属箔発熱体は厚み50μ以下のニクロム箔であることを特徴とする請求項1記載の加熱体。
  4. 金属箔発熱は厚み30μ以下のステンレス箔であることを特徴とする請求項1記載の加熱体。
  5. 金属抵抗フィルム発熱体を挟む高熱伝導フィラーを含有するポリイミド樹脂フィルムは、平均粒径10μ以下の窒化硼素粒子を10Wt%以上分散させたポリイミド樹脂フィルムあることを特徴とする請求項1または請求項2記載の加熱体。
  6. 加熱体と、前記加熱体に対向して配置される回転加圧体と、前記加熱体を内包するように該加熱体と加圧体との間に挟持された加熱フィルムを有し、加熱体と加圧体との加熱フィルム挟持部で加熱フィルムと加圧体との間に被加熱材を挟持搬送させて加熱処理を行なう加熱装置において、前記加熱体として請求項1〜請求項5のうちのいずれか1項記載の加熱体を用いたことを特徴とする加熱装置。
  7. 被記録材上に未定着トナー画像を形成する画像形成手段と、その未定着トナー画像を前記被記録材上に加熱融着させて定着固定する加熱定着手段とを有する画像形成装置において、前記加熱定着手段として請求項6記載の加熱装置を適用したことを特徴とする画像形成装置。
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