JP2004013045A - 像加熱装置及び画像形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】像加熱装置あるいは該像加熱装置を具備する画像形成装置において、小サイズ記録材を通紙して大サイズ記録材を通紙する場合に発生するホットオフセットを防止する。
【解決手段】加熱部材27と加圧部材18とのニップNで画像を担持した記録材Pを挟持搬送させて記録材上の画像を加熱する像加熱装置であり、装置の最大通紙幅よりも幅の狭い記録材が通紙された後にそれよりも幅の広い記録材を通紙する場合は装置の加熱温度を通常の設定温度より低く設定するシーケンスを有し、幅の狭い記録材の通紙後の幅の広い記録材の通紙時の設定加熱温度は、幅の狭い記録材の通紙枚数が多いほど低く、且つ幅の狭い記録材の通紙終了から幅の広い記録材の通紙開始までの時間が短いほど低いことを特徴とした像加熱装置。
【選択図】図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録材上の画像を加熱する像加熱装置(未定着画像を記録材上に永久画像として加熱定着させる定着装置、未定着画像を記録材上に仮定着させる加熱装置、画像を担持した記録材を再加熱してつや等の画像表面性を改質する加熱装置など)、及び該像加熱装置を具備する画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真方式などの複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に具備させる加熱定着手段としては、熱効率、安全性が良好な接触加熱型の熱ローラ方式の加熱定着装置や、クイックスタート性(オンデマンド性)を有しスタンバイ時に装置に電力を供給せず、消費電力を極力低く抑えた、省エネルギータイプのフィルム加熱方式の加熱定着装置等が採用されている。
【0003】
熱ローラ方式の加熱定着装置は、ハロゲンヒータ等の内装熱源で加熱されて所定の温度に温調される加熱部材としての回転定着ローラと、この定着ローラに所定に圧接された加圧部材としての回転加圧ローラとを有し、両ローラの圧接ニップ部(定着ニップ部)に記録材を導入して挟持搬送させることで未定着画像を記録材面に加熱定着させるものである。
【0004】
フィルム加熱方式の加熱定着装置は特開昭63−313182号公報・特開平1−263679号公報・特開平2−157878号公報・特開平4−44075〜44083号公報等に提案されており、加熱体に移動部材としての耐熱フィルムを加圧部材で押圧密着させて走行させ、耐熱フィルムを挟んで加熱体と加圧部材とで形成される圧接ニップ部(定着ニップ部)の耐熱フィルムと加圧部材との間に記録材を導入して耐熱フィルムに密着させて耐熱フィルムと一緒に定着ニップ部を通過させることで加熱体の熱を耐熱フィルムを介して記録材に与えて未定着画像を記録材面に加熱定着させるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような加熱定着装置において、装置の最大通紙幅よりも幅の狭い記録材(小サイズメディア)を連続的に通紙して加熱定着を続けた場合、定着ニップ部の記録材が通過しない領域(非通紙域)では、熱を奪うメディアが無いため温度が上昇し続ける。一方、定着ニップ部の記録材が通過する領域(通紙域)では温調系により所定の定着温度に保たれているため、定着ニップ部の非通紙域と通紙域の温度差が大きくなる、いわゆる非通紙部過昇温現象を生じる(図12)。
【0006】
ここで、図12のグラフの横軸は時間である。小サイズプリントと記載した領域では小サイズを連続プリントしている。その直後に普通紙を連続プリントしているが、それが普通サイズプリントと記載した領域である。この時の非通紙域と通紙域の温度測定を行っており、非通紙部昇温が大きくなることを説明したグラフである。
【0007】
このような非通紙部過昇温現象状態の時に上記記録材よりも幅の広い記録材(大サイズメディア)をプリントした場合、定着ニップ部内の長手方向温度分布は図13のようになっているため、すなわち、小サイズにおける通紙域では所定の定着温度に保たれるため、この小サイズにおける通紙域に対応している画像領域は良好な定着画像が得られるが、非通紙域は幅の狭い記録材プリントにより昇温しているため、通紙域の設定温度より高い温度まで上昇し、この小サイズにおける非通紙域に対応している画像領域は過定着によるホットオフセットが発生してしまう。
【0008】
また、非通紙域で加圧ローラが異常に昇温すると記録材である紙から蒸発する水分の量が増加し、加圧ローラの搬送力が失われることによって記録材がスリップするという問題もある。
【0009】
ホットオフセットを防止するために、幅の狭い記録材プリント後に幅の広い記録材をプリントする場合に定着温度を通常より低くするシーケンスを有した場合(特開平11−143291号公報)、幅の狭い記録材プリント終了から幅の広い記録材プリントまでの経過時間が短い場合、普通サイズ(大サイズメディア)プリント時のニップ内温度は図14の▲1▼のようになっており、ホットオフセット、定着性ともに良好な画像が得られる。しかし、経過時間が長い場合は小サイズにおける通紙域で経過時間が短い場合と同様の温調を行うが、加圧ローラ温度が低くなっているため、結果として図14の▲2▼のように必要以上に定着温度を下げ過ぎて通紙域の定着性が悪化するという問題があった。
【0010】
本発明は上記課題を解決する、すなわち、画像加熱定着装置に代表される像加熱装置あるいは該像加熱装置を具備する画像形成装置において、小サイズ記録材を通紙して大サイズ記録材を通紙する場合に発生するホットオフセットを防止することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明では上記課題を解決するため以下のことを特徴とする像加熱装置及び画像形成装置とする。
【0012】
(1)加熱部材と加圧部材とのニップで画像を担持した記録材を挟持搬送させて記録材上の画像を加熱する像加熱装置であり、
装置の最大通紙幅よりも幅の狭い記録材が通紙された後にそれよりも幅の広い記録材を通紙する場合は装置の加熱温度を通常の設定温度より低く設定するシーケンスを有し、
幅の狭い記録材の通紙後の幅の広い記録材の通紙時の設定加熱温度は、幅の狭い記録材の通紙枚数が多いほど低く、且つ幅の狭い記録材の通紙終了から幅の広い記録材の通紙開始までの時間が短いほど低いことを特徴とした像加熱装置。
【0013】
(2)可撓性の移動部材と、該移動部材と摺動する摺動面を有し移動部材を支持する支持部材と、移動部材を挟んで支持部材とニップを形成する加圧部材を有し、ニップにおいて移動部材を支持部材の面に摺動移動させ、ニップの移動部材と加圧部材との間で画像を担持した記録材を挟持搬送させて記録材上の画像を加熱する像加熱装置であり、
装置の最大通紙幅よりも幅の狭い記録材が通紙された後にそれよりも幅の広い記録材を通紙する場合は装置の加熱温度を通常の設定温度より低く設定するシーケンスを有し、
幅の狭い記録材の通紙後の幅の広い記録材の通紙時の設定加熱温度は、幅の狭い記録材の通紙枚数が多いほど低く、且つ幅の狭い記録材の通紙終了から幅の広い記録材の通紙開始までの時間が短いほど低いことを特徴とした像加熱装置。
【0014】
(3)前記支持部材のニップに対応する部分には加熱体が存在しており、該加熱体により記録材上の画像を移動部材を介して加熱することを特徴とした(1)または(2)に記載の像加熱装置。
【0015】
(4)前記通常の設定温度より低く設定された幅の広い記録材の加熱温度を通常の設定温度に戻す際に段階的に温度を上げていくことを特徴とした(1)から(3)の何れかに記載の像加熱装置。
【0016】
(5)前記幅の狭い記録材の通紙後に幅の広い記録材を通紙する場合に加熱温度を通常の設定温度より低くするというシーケンスを保持する時間が幅の狭い記録材の通紙枚数により異なることを特徴とした(1)から(4)の何れかに記載の像加熱装置。
【0017】
(6)前記ニップに通紙される記録材上の画像は未定着画像であることを特徴とした(1)から(5)の何れかに記載の像加熱装置。
【0018】
(7)記録材に未定着画像を形成担持させる作像手段と、未定着画像を記録材上に永久画像として加熱定着させる加熱定着手段を有する画像形成装置において、前記加熱定着手段が(1)から(6)の何れかに記載の像加熱装置であることを特徴とした画像形成装置。
【0019】
〈作 用〉
すなわち、像加熱装置の最大通紙幅よりも幅の狭い記録材が通紙された後にそれよりも幅の広い記録材を通紙する場合は装置の加熱温度を通常の設定温度より低く設定するシーケンスを有し、幅の狭い記録材の通紙後の幅の広い記録材の通紙時の設定加熱温度は、幅の狭い記録材の通紙枚数が多いほど低く、且つ幅の狭い記録材の通紙終了から幅の広い記録材の通紙開始までの時間が短いほど低くする制御にすることで、幅の狭い記録材プリントから幅の広い記録材プリントまでの間隔に関わらずホットオフセット、定着性ともに問題の無い良好な画像を得ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
〈実施例1〉
以下に、本発明に係る実施例を示すが、まず図1は、本発明に係る画像形成装置の構成略図である。
【0021】
(1)画像形成装置の説明
本例の画像形成装置は電子写真プロセス利用のレーザプリンタである。
【0022】
19は感光ドラムであり、OPC、アモルファスSe、アモルファスSi等の感光材料がアルミニウムやニッケルなどのシリンダ状の基盤上に形成されている。
【0023】
感光ドラム19は矢印の方向に回転駆動され、まず、その表面は帯電装置としての帯電ローラ20によって一様帯電される。
【0024】
次に、その回転感光ドラム19の一様帯電面に対してレーザスキャナユニット21によりレーザビーム走査露光Lが施されて画像情報の静電潜像が形成される。感光ドラム19に対するレーザビーム走査露光Lは画像情報に応じてON/OFF制御されたレーザビームがレーザスキャナユニット21内で回転するポリゴンミラーにより反射されてなされる。
【0025】
この静電潜像は現像装置22で現像、可視化される。現像方法としては、ジャンピング現像法、2成分現像法、FEED現像法などが用いられ、イメージ露光と反転現像とを組み合わせて用いられることが多い。
【0026】
可視化されたトナー像は、転写装置としての転写ローラ23により、不図示の給紙機構部から所定のタイミングで搬送された記録材P上に感光ドラム19上より転写される。ここで感光ドラム19上のトナー像の画像形成位置と記録材の先端の書き出し位置が合致するようにセンサ24にて記録材Pの先端を検知し、タイミングを合わせている。所定のタイミングで搬送された記録材Pは感光ドラム19と転写ローラ23に一定の加圧力で挟持搬送される。なお、本例においては記録材の装置内搬送は中央基準搬送でなされる。
【0027】
このトナー像が転写された記録材Pは加熱定着装置25へと搬送され、永久画像として定着される。
【0028】
一方、感光ドラム19上に残存する転写残りの残留トナーは、クリーニング装置26により感光ドラム19表面より除去される。
【0029】
また、記録材が現像される前の搬送路(感光ドラムと転写ローラによって形成されるニップより前の記録材搬送路上)に記録材が所定以上の幅を持つものである場合に動作する幅センサを設けており、この幅センサの信号または不図示の給紙カセットに設けられたセンサ信号により記録材のサイズを判断し、現像及び定着の制御を自動的に変えることができる。
【0030】
(2)加熱定着装置25
図2は加熱定着装置25の概略構成模型図である。本例の加熱定着装置25は、特開平4−44075〜44083、4−204980〜204984号公報等に開示の、移動部材として円筒状(エンドレスベルト状)の定着フィルムを用いた、フィルム加熱方式、加圧用回転体駆動方式(テンションレスタイプ)の加熱装置である。
【0031】
1)装置25の全体的構成
27は定着部材(定着ユニット)、18は加圧部材としての加圧ローラであり、両者27・18の圧接により定着ニップ部Nを形成させている。
【0032】
定着部材27は図面に垂直方向を長手とする部材であり、横断面略半円弧状樋型の耐熱性・剛性を有するステイホルダー(支持体)17と、このステイホルダー17の下面に、該部材の長手に沿って設けた凹溝部に嵌め入れて固定して配設した、加熱体としてのセラミックヒータ15と、該ヒータ15を取り付けたステイホルダー17にルーズに外嵌した移動部材としての、熱容量の小さな、円筒状の耐熱性の定着フィルム14等からなる。
【0033】
加圧ローラ18は、芯金29と、該芯金上に同心一体に形成具備させたシリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱ゴムあるいはシリコーンゴムを発泡して形成された弾性層30とから成る回転体である。弾性層30上にはPFA、PTFE、FEP等のフッ素樹脂などから成る耐熱離型性層31を形成してあってもよい。
【0034】
より具体的に、加圧ローラ18は芯金29の外部にシリコンゴムを成形した弾性層あるいはシリコンゴムを発泡して成るスポンジ弾性層30、さらにその外層にPTFEあるいはPFA、FEP等の離型性層31をチューブ状に、あるいはコーティング塗工して形成して成る。
【0035】
加圧ローラ18は芯金29の両端部を装置シャーシー(不図示)の手前側と奥側の側板間に軸受部材を介して回転自由に軸受保持させて配設してある。
【0036】
定着部材27は、この加圧ローラ18の上側に、ヒータ15側を下向きにして加圧ローラ18に並行に配置し、ステイホルダー17の両端部を不図示のバネ等の加圧手段にて加圧ローラ18の軸線方向に附勢することで、ヒータ15の下向き面を定着フィルム14を介して加圧ローラ18の弾性層30に該弾性層の弾性に抗して所定の押圧力をもって圧接させ、加熱定着に必要な所定幅の定着ニップ部Nを形成させてある。加圧ローラ30側を加圧手段にて定着部材27の下面に押し上げ附勢して所定幅の定着ニップ部Nを形成する装置構成にすることもできる。
【0037】
加圧ローラ18は駆動手段Mにより矢印の反時計方向に所定の周速度で回転駆動される。この加圧ローラ18の回転駆動による該加圧ローラ18の外面と定着フィルム14との、定着ニップ部Nにおける圧接摩擦力により円筒状の定着フィルム14に回転力が作用して該定着フィルム14がその内面側がヒータ15の下向き面に密着して摺動しながらステイホルダー17の外回りを矢印の時計方向に従動回転状態になる。
【0038】
加圧ローラ18が回転駆動され、それに伴って円筒状の定着フィルム14が従動回転状態になり、またヒータ15に通電がなされ、該ヒータ15が昇温して所定の温度に立ち上がり温調された状態において、定着ニップ部Nの定着フィルム14と加圧ローラ18との間に未定着トナー像を担持した記録材Pが耐熱性の定着入口ガイド32に沿って案内されて導入され、定着ニップ部Nにおいて記録材Pのトナー像担持面側が定着フィルム14の外面に密着してフィルム14と一緒に定着ニップ部Nを挟持搬送されていく。この挟持搬送過程において、ヒータ15の熱が定着フィルム14を介して記録材Pに付与され、記録材P上の未定着トナー像が記録材P上に加熱・加圧されて溶融定着される。定着ニップ部Nを通過した記録材Pは定着フィルム14から曲率分離され、耐熱性の定着排紙ガイド33に案内されて不図示の排出トレイ上に排出される。
【0039】
2)ヒータ15
図3は本例における加熱体としてのセラミックヒータ15の構造模型図であり、(a)は一部切欠き表面模型図、(b)は裏面模型図、(c)は拡大横断面模型図である。
【0040】
このヒータ15は、
▲1▼.通紙方向と直交する方向を長手とする横長の、アルミナ等のセラミック、ポリイミド、PPS、液晶ポリマーなどの耐熱性、高絶縁性・良熱伝導性・低熱容量の部材からなるヒータ基板a、
▲2▼.上記のヒータ基板aの表面側に長手に沿ってスクリーン印刷等により線状あるいは帯状に塗工した、電流が流れることにより発熱する銀パラジウム(Ag/Pd)、RuO、TaNなどの電気抵抗材料の、厚み10μm程度、幅1〜5mm程度の発熱層(通電発熱抵抗層)b、
▲3▼.上記の発熱層bに対する給電パターンとして、同じくヒータ基板aの表面側に銀ペーストのスクリーン印刷等によりパターン形成した、第1と第2の電極部c・d及び延長電路部e・f、並びに後記するサーミスタ出力用の第3と第4の電極部g・h、
▲4▼.発熱層bと延長電路部e・fの保護と絶縁性を確保するためにそれ等の上に形成した、定着フィルム14との摺擦に耐えることが可能な、厚み10μm程度の薄肉のガラスコート、フッ素樹脂層等の保護層i、
▲5▼.ヒータ基板aの裏面側に設けた、温度検知素子としてのサーミスタ28及びサーミスタ出力用の延長電路部k・m、
等からなる。
【0041】
サーミスタ出力用の第3と第4の電極部g・hと、サーミスタ出力用の延長電路部k・mの端末はそれぞれスルーホールn・oを介して電気的に導通させてある。
【0042】
上記のヒータ15は表面側を下向きに露呈させてステイホルダー17に固定して支持させてある。
【0043】
上記ヒータ15の第1と第2の電極部c・d側には給電用コネクタ34が装着される。また第3と第4の電極部g・h側には温調回路用コネクタ35が装着される。
【0044】
ヒータ駆動回路部36から上記の給電用コネクタ34を介して第1と第2の電極部c・dに給電されることで発熱層bが発熱してヒータ15が迅速に昇温する(ACライン)。
【0045】
そのヒータ15の温度がサーミスタ28により検知され、検知温度の電気的情報が第3と第4の電極部g・hと上記の温調回路用コネクタ35を介してヒータ駆動回路部36に入力する(DCライン)。
【0046】
ヒータ駆動回路部36はサーミスタ28の検知温度が所定の設定温度(定着温度)に維持されるように給電回路部の出力電力を、電圧のデューティー比や波数等を適切に制御する。これにより、定着ニップ部Nにおいて定着フィルム14の表面温度を定着可能な温度に保つ。すなわち、定着ニップ部Nでの温調温度を略一定に保ち記録材上のトナー像を定着するのに必要な加熱を行う。
【0047】
ヒータ15は、金属製基板上の定着ニップ反対側に絶縁層、通電発熱抵抗層を順次積層してなる金属製加熱用ヒータであり、該金属製基板は定着ニップ側が湾曲した形状であっても良い。ヒータ基板aとして耐摩耗性に優れ、熱伝導性の良好なAlN(チッ化アルミ)等を用いた場合には発熱層bを上記基板に対して定着ニップ部と反対側に形成してあっても良い。
【0048】
2)ステイホルダー17
ステイホルダー17は、例えば耐熱性プラスチック製部材より形成され、ヒータ15を保持するとともに定着フィルム14の搬送ガイドも兼ねている。よって定着フィルム14との摺動性を高めるために、定着フィルム14とヒータ15やステイホルダー17の外周面の間に耐熱性の高いグリース等を介在させてある。
【0049】
より具体的に、ステイホルダー17はヒータ15を保持し、定着ニップ部Nと反対方向への放熱を防ぐための断熱部材であり、液晶ポリマー、フェノール樹脂、PPS、PEEK等により形成されており、定着フィルム14が余裕をもってルーズに外嵌されていて、矢印の方向に回転自在に配置されている。定着フィルム14は内部のヒータ15およびステイホルダー17に摺擦しながら回転するため、ヒータ15およびステイホルダー17と定着フィルム14の間の摩擦抵抗を小さく抑える必要がある。このためヒータ15およびステイホルダー17の表面に耐熱性グリース等の潤滑剤を介在させてある。これにより定着フィルム14はスムーズに回転することが可能となる。
【0050】
3)定着フィルム14
移動部材としての定着フィルム14は熱容量を小さくしてクイックスタート性を向上させるために、膜厚を総厚100μm以下、好ましくは60μm以下とするのがよい。さらにオフセット防止や記録材の分離性を確保するために表層にはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)、CTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)等のフッ素樹脂、シリコーン樹脂等の離型性の良好な耐熱樹脂を混合ないし単独で被覆したものである。
【0051】
より具体的には、定着フィルム14は、定着ニップ部Nにおいてヒータ15の熱を効率よく記録材に与えるため、厚みは20〜70μmとかなり薄くしている。定着フィルム14はフィルム基層、導電性プライマー層、離型性層の3層構成で構成されており、フィルム基層側がヒータ側であり、離型性層が加圧ローラ側である。フィルム基層は絶縁性の高いポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK等であり、耐熱性、高弾性を有しており、可撓性のある厚み15〜60μm程度で形成されている。また、フィルム基層により定着フィルム14全体の引裂強度等の機械的強度を保っている。導電性プライマー層は厚み2〜6μm程度の薄い層で形成されており、定着フィルム表面に一部露出している。静電オフセット等を防止するため、定着フィルム表面に露出した導電性プライマー層には不図示の導電ブラシが接しており、プリント中はトナーと同極性のバイアスを印加している。離型性層は定着フィルム14に対するトナーオフセット防止層であり、離型性の良好なPFA、PTFE、FEP等のフッ素樹脂を厚み5〜15μm程度に被覆して形成してある。また、定着フィルム14表面のチャージアップを軽減し、静電オフセットを防止するため、離型性層中には比抵抗が10Ωcm〜10Ωcm程度のカーボンブラック等の導電部材が混入されている。
【0052】
(3)ホットオフセット防止対策
以上のような構成の画像形成装置において、小サイズ記録材を145℃温調で連続プリントした後、普通サイズ(大サイズ)の記録材をプリントした時の小サイズ記録材における非通紙域の温度を測定した。結果を図4に示す。なお、「通常の設定温度」は普通サイズの記録材定着時の設定温度である。
【0053】
ここで図4において横軸は時間である。小サイズ紙を連続プリントした後20秒後に普通サイズ紙をプリントした場合の非通紙域の温度測定結果が、「20秒後」というグラフである。また、60秒後に普通サイズ紙をプリントした場合の非通紙域の温度測定結果が「60秒後」というグラフである。普通サイズ▲1▼、▲2▼は小サイズ紙プリント終了からそれぞれ20秒後、60秒後に普通サイズをプリントしたことを表している。
【0054】
定着ニップ内を小サイズの記録材が通過する場合、ヒータ15の発熱層bの幅(長さ)と比較して記録材の幅が十分に小さく非通紙域ではヒータの熱が奪われないまま加熱されるため、非通紙域の温度は小サイズの記録材プリント枚数が増加するにつれて高くなっていく。それに対して通紙域は温度検知素子によって一定に保たれているため通紙域と非通紙域温度差は大きくなる。
【0055】
小サイズプリント終了後、非通紙部温度は時間の経過とともに下がっていく。図4の▲1▼は小サイズプリント終了から20秒後に通常温度で普通サイズ記録材のプリントを行ったものである。この場合、小サイズプリント終了から普通サイズプリントまでの時間が短かく、非通紙部の温度が下がらないうちから普通サイズ記録材プリントを行ったため小サイズにおける非通紙域で温度が250℃以上に上昇してしまい激しいホットオフセットが発生した。
【0056】
それに対して図4の▲2▼は小サイズプリント終了から60秒後に通常温度で普通サイズ記録材のプリントを行ったものである。この場合、小サイズプリント終了から普通サイズプリントまでの時間が比較的長く、非通紙部の温度がある程度下がった状態から普通サイズのプリントを行ったため、小サイズにおける非通紙の温度は230℃をわずかに越えた程度であった。またこの時もホットオフセットは若干発生していたが、20秒後にプリントしたものと比較すると格段に良化していた。
【0057】
そこで、本実施例では図5のように小サイズ記録材をプリントした後所定時間内に普通サイズ記録材を通紙する場合の温度制御を通常の定着温度より低くする。また、その時の温度設定は表1に示すように小サイズ記録材プリント枚数と、小サイズプリントから普通サイズプリントまでの時間tによって決定される。
【0058】
本実施例では図5のように、表1で設定される定着温度でプリントするのは3枚とし、4枚目以降は通常の定着温度でプリントを行い定着性が悪化するのを防止している。
【0059】
上記の定着温度の設定制御はヒータ駆動回路部36(図3)でなされる。すなわちこのヒータ駆動回路部36には画像形成装置のエンジンコントローラー37から、通紙使用されている記録材の幅情報(サイズ情報)、小サイズプリント枚数情報、小サイズプリントを終了してから普通サイズプリントの実行までの時間情報が入力される。ヒータ駆動回路部37には表1の定着温度設定テーブルが参照データとしてメモリされており、ヒータ駆動回路部37はエンジンコントローラー37から入力する上記の情報に基づいて表1の定着温度設定テーブルに従って定着設定温度を変更し、定着装置をその変更温度で温調制御する。
【0060】
なお、上記において「通常温度」または「通常の定着温度」は普通紙の定着温度である。また、図5において、縦軸の定着温度は上の目盛りほど温度は高くなる。小サイズの定着温度は145℃でであり、普通紙の定着温度である通常の定着温度と145℃温調とは異なる。
【0061】
図6に本実施例においてヒータ駆動回路部37が実行する「定着温度設定動作」のフローを示した。
【0062】
【表1】
Figure 2004013045
【0063】
以上の制御でcom#10サイズの封筒を60枚プリントした後、LTRサイズ紙を30秒後、60秒後、90秒後、120秒後にプリントした時の定着性、ホットオフセットを評価した。
【0064】
比較例1として図7のように小サイズ記録材プリント後の普通サイズプリント時においても通常の定着温度でプリントを行ったもの、比較例2として表2のように普通サイズの定着温度を小サイズ記録材プリント枚数によってのみ決定したものも同様に定着性、ホットオフセットの評価を行った。
【0065】
図7において、普通サイズの領域の温度が「通常の設定温度」であり、図7は小サイズ通紙後、普通サイズをプリントする場合に通常の設定温度より低くしないことを表している。
【0066】
【表2】
Figure 2004013045
【0067】
定着性評価は定着不良の発生しやすいボンド紙、ホットオフセット評価はホットオフセットの発生しやすい薄紙で行った。
【0068】
結果を表3と表4に示す。
【0069】
【表3】
Figure 2004013045
【0070】
【表4】
Figure 2004013045
【0071】
以上のように比較例1では小サイズ記録材プリント後の普通サイズ記録材プリントでの定着温度を通常どおりに設定するため小サイズ記録材における非通紙域でニップ内温度が高くなってしまいホットオフセットが発生している。
【0072】
ホットオフセットは小サイズ記録材プリント終了から普通サイズ記録材プリント開始までの時間が長くなるほど良化していくが、120秒後でも若干発生している。
【0073】
比較例2では30秒後は本実施例と同様の温度設定であるため、ホットオフセット、定着性ともに問題のない良好な画像が得られているが、小サイズ記録材プリントからの経過時間が長くなると、ニップ内の温度が低くなっているにもかかわらず経過時間が短い場合と同様に普通サイズ記録材の定着温度を通常より40℃低くしているため、小サイズ記録材における通紙域で定着不良が発生している。
【0074】
それに対して本実施例では小サイズ記録材プリント終了から普通サイズ記録材プリント終了までの経過時間に応じて普通サイズ記録材プリント時の定着温度を決定しているためホットオフセット、定着性ともに良好な画像を得ることができた。
【0075】
以上のように、小サイズ記録材プリント後、普通サイズ記録材をプリントする場合には、定着温度を通常より低く設定するが、その設定温度を、小サイズ記録材プリント枚数が多いほど低くすること、小サイズ記録材プリント終了から普通サイズ記録材プリントまでの時間が短いほど低くすることにより、定着不良、ホットオフセットの発生しない良好な画像を得ることができた。また、非通紙部の昇温を抑えることでスリップに対するマージンも大きくすることができた。
【0076】
〈実施例2〉
本実施例において、画像形成装置および加熱定着装置全体の構成は前記実施例1と同様であるため再度の説明を省く。
【0077】
本実施例でも小サイズ記録材プリント後の普通サイズ記録材プリント時に定着温度を通常より低くするが、図8のように普通サイズ記録材が1枚通過する毎に定着温度を徐々に通常温度に近づけることを特徴とする。小サイズプリントによって非通紙部の温度は高くなるが普通サイズ記録材を通紙することで小サイズにおける非通紙部の熱は普通サイズ記録材に奪われるため小サイズにおける非通紙部の温度は低くなる。そのため普通サイズ記録材を数枚プリントするとホットオフセットは発生しなくなる。
【0078】
ここで、図8において「4枚目以降」における定着温度が通常温度で、145℃温調とは異なる。小サイズの定着温度と普通サイズの定着温度はもともと異なり、普通サイズの定着温度の方が高い設定となっている。
【0079】
そこで本実施例では小サイズ記録材プリント後の普通サイズ記録材プリント時の定着温度を表5〜表8のような設定にする。
【0080】
【表5】
Figure 2004013045
【0081】
【表6】
Figure 2004013045
【0082】
【表7】
Figure 2004013045
【0083】
【表8】
Figure 2004013045
【0084】
図9に本実施例においてヒータ駆動回路部37が実行する「定着温度設定動作」のフローを示した。
【0085】
以上ような制御でcom#10封筒のプリントを60枚行った後、LTRサイズ記録材のプリントを行った。1枚目は実施例1と同じ定着温度であるためホットオフセット、定着性ともに問題のない画像が得られる。さらに2枚目以降は通常の定着温度になるまで1枚プリント毎に10℃づつ上げているが、ホットオフセットの発生はなく、定着性は実施例1よりも良くすることができた。
【0086】
〈その他〉
1)加熱体としてのセラミックヒータ15の構成形態は実施例のものに限られないことは勿論である。
【0087】
ヒータ15は必ずしも定着ニップ部Nに位置していなくてもよい。例えば、図10のようにヒータ15を定着ニップ部Nよりもフィルム移動方向上流側に位置させて配設することも出来る。
【0088】
2)ヒータ15はセラミックヒータに限られるものではない。例えば鉄板等の電磁誘導発熱性部材とすることも出来る。図11はヒータとして鉄板等の電磁誘導発熱性部材15Aを用い、これを定着ニップ部Nの位置に配設して、これに交番磁束発生手段としての電磁コイル38と磁性コア39により発生させた高周波磁界を作用させることで発熱させる装置構成にすることも出来る。この場合もヒータとしての電磁誘導発熱性部材15Aは必ずしも定着ニップ部Nに位置していなくてもよい。
【0089】
また移動部材としてのフィルム15自体を電磁誘導発熱性部材にして交番磁束発生手段で発熱させる装置構成にすることも出来る。
【0090】
3)フィルム加熱方式の加熱定着装置は、実施例のものは加圧用回転体駆動方式であるが、エンドレスの定着フィルムの内周面に駆動ローラを設け、フィルムにテンションを加えながら駆動する方式の装置であってもよいし、フィルムをロール巻きの有端ウエブ状にし、これを走行駆動させる方式の装置であってもよい。
【0091】
4)本発明において像加熱装置はフィルム加熱方式に限られるものではなく、加熱部材と加圧部材とのニップで画像を担持した記録材を挟持搬送させて記録材上の画像を加熱する像加熱装置であればよい。
【0092】
5)本発明の像加熱装置には、未定着画像を記録材上に永久画像として加熱定着させる定着装置ばかりでなく、未定着画像を記録材上に仮定着させる加熱装置、画像を担持した記録材を再加熱してつや等の画像表面性を改質する加熱装置なども包含される。
【0093】
6)画像形成装置の作像方式は電子写真方式に限られず、静電記録方式、磁気記録方式等であってもよいし、また転写方式でも直接方式でもよい。
【0094】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、像加熱装置の最大通紙幅よりも幅の狭い記録材が通紙された後にそれよりも幅の広い記録材を通紙する場合は装置の加熱温度を通常の設定温度より低く設定するシーケンスを有し、幅の狭い記録材の通紙後の幅の広い記録材の通紙時の設定加熱温度は、幅の狭い記録材の通紙枚数が多いほど低く、且つ幅の狭い記録材の通紙終了から幅の広い記録材の通紙開始までの時間が短いほど低くする制御にすることで、幅の狭い記録材プリントから幅の広い記録材プリントまでの間隔に関わらずホットオフセット、定着性ともに問題の無い良好な画像を得ることができる。
【0095】
また、通常の設定温度より低く設定された幅の広い記録材の加熱温度を通常の設定温度に戻す際に段階的に温度を上げていくことことでホットオフセットを防止しながら定着性を更に良くすることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における画像形成装置の構成略図
【図2】加熱定着装置の構成略図
【図3】加熱体としてのセラミックヒータの構成模型図
【図4】小サイズ非通紙域の温度測定結果
【図5】実施例1における定着設定温度
【図6】実施例1においてヒータ駆動回路部が実行する定着温度設定動作のフロー図
【図7】比較例1における定着設定温度
【図8】実施例2における定着設定温度
【図9】実施例2においてヒータ駆動回路部が実行する定着温度設定動作のフロー図
【図10】他の構成の加熱定着装置の構成模型図
【図11】更に他の構成の加熱定着装置の構成模型図
【図12】従来例における小サイズ非通紙域の温度測定結果
【図13】従来例におけるヒータ内長手方向温度分布の概念図(その1)
【図14】従来例におけるヒータ内長手方向温度分布の概念図(その2)
【符号の説明】
25・・像加熱装置としての画像加熱定着装置、27・・定着部材、29・・加圧部材、15・・加熱体としてのセラミックヒータ、17・・ステイホルダー、14・・定着フィルム、N・・定着ニップ部、P・・記録材、28・・温度検知部材(サーミスタ等)、36・・ヒータ駆動回路部

Claims (7)

  1. 加熱部材と加圧部材とのニップで画像を担持した記録材を挟持搬送させて記録材上の画像を加熱する像加熱装置であり、
    装置の最大通紙幅よりも幅の狭い記録材が通紙された後にそれよりも幅の広い記録材を通紙する場合は装置の加熱温度を通常の設定温度より低く設定するシーケンスを有し、
    幅の狭い記録材の通紙後の幅の広い記録材の通紙時の設定加熱温度は、幅の狭い記録材の通紙枚数が多いほど低く、且つ幅の狭い記録材の通紙終了から幅の広い記録材の通紙開始までの時間が短いほど低いことを特徴とした像加熱装置。
  2. 可撓性の移動部材と、該移動部材と摺動する摺動面を有し移動部材を支持する支持部材と、移動部材を挟んで支持部材とニップを形成する加圧部材を有し、ニップにおいて移動部材を支持部材の面に摺動移動させ、ニップの移動部材と加圧部材との間で画像を担持した記録材を挟持搬送させて記録材上の画像を加熱する像加熱装置であり、
    装置の最大通紙幅よりも幅の狭い記録材が通紙された後にそれよりも幅の広い記録材を通紙する場合は装置の加熱温度を通常の設定温度より低く設定するシーケンスを有し、
    幅の狭い記録材の通紙後の幅の広い記録材の通紙時の設定加熱温度は、幅の狭い記録材の通紙枚数が多いほど低く、且つ幅の狭い記録材の通紙終了から幅の広い記録材の通紙開始までの時間が短いほど低いことを特徴とした像加熱装置。
  3. 前記支持部材のニップに対応する部分には加熱体が存在しており、該加熱体により記録材上の画像を移動部材を介して加熱することを特徴とした請求項1または請求項2に記載の像加熱装置。
  4. 前記通常の設定温度より低く設定された幅の広い記録材の加熱温度を通常の設定温度に戻す際に段階的に温度を上げていくことを特徴とした請求項1から請求項3の何れかに記載の像加熱装置。
  5. 前記幅の狭い記録材の通紙後に幅の広い記録材を通紙する場合に加熱温度を通常の設定温度より低くするというシーケンスを保持する時間が幅の狭い記録材の通紙枚数により異なることを特徴とした請求項1から請求項4の何れかに記載の像加熱装置。
  6. 前記ニップに通紙される記録材上の画像は未定着画像であることを特徴とした請求項1から請求項5の何れかに記載の像加熱装置。
  7. 記録材に未定着画像を形成担持させる作像手段と、未定着画像を記録材上に永久画像として加熱定着させる加熱定着手段を有する画像形成装置において、前記加熱定着手段が請求項1から請求項6の何れかに記載の像加熱装置であることを特徴とした画像形成装置。
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