JP2004017635A - タック紙及び該タック紙を用いたインクジェット記録方法 - Google Patents
タック紙及び該タック紙を用いたインクジェット記録方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】顔料インクを用いたインクジェット記録が可能で、比較的安価に製造することができ、発色性にも優れるタック紙及び該タック紙を用いたインクジェット記録方法を提供すること。
【解決手段】本発明のタック紙1は、インクジェット記録方式により表面に印刷が施されるラベル基材2、該ラベル基材2の裏面に設けられた粘着剤層3及び該粘着剤層3を被覆する剥離紙4を具備し、該ラベル基材2に、該表面に打ち込まれたインクジェット記録用の顔料インクを該表面にて凝集させる性質を付与してなる。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明のタック紙1は、インクジェット記録方式により表面に印刷が施されるラベル基材2、該ラベル基材2の裏面に設けられた粘着剤層3及び該粘着剤層3を被覆する剥離紙4を具備し、該ラベル基材2に、該表面に打ち込まれたインクジェット記録用の顔料インクを該表面にて凝集させる性質を付与してなる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラベルの形成用材料等として使用されるタック紙に関し、特に、顔料インクを用いたインクジェット記録が可能なタック紙及び該タック紙を用いたインクジェット記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
タック紙は、一般に、剥離紙上に粘着剤層を形成し、該粘着剤層にラベル基材を貼り合わせた構成となっている。このタック紙は、ラベル基材の表面に適宜印刷を施した後、剥離紙を引き剥がして粘着剤層を外部に露出させ、該粘着剤層を介して、被着対象物、例えば、書類、ビンや紙パック等の各種容器、台紙などに該ラベル基材を貼り付けることにより使用される。
【0003】
これまで、上記ラベル基材への印刷は、主にオフセット印刷方式やグラビア印刷方式等により行われてきたが、最近では、インクジェット記録方式による印刷も行われるようになってきている。インクジェット記録方式は、記録ヘッドの微小なジェットノズルからインクの液滴を吐出させ、紙等の記録媒体に付着させて印字を行う印刷方式であり、印刷版が不要で工程が簡素である、多色印字を高速に行える、記録パターンの融通性が大きい、オンデマンド少ロット対応も可能である等の理由により、種々の用途において急速に普及している。インクジェット記録用のインクとしては、染料や顔料等の色材を水やアルコール等を含む水性媒体中に溶解又は分散させたものが用いられ、これまでは染料を色材とする染料インクが主流であったが、最近では、ポスターやディスプレイ用途など、記録画像の長期保存性が重視される用途を中心に、染料インクに比して耐水性や耐光性等に優れる顔料インクが多用されるようになってきている。
【0004】
従来のタック紙は、インクジェット記録方式による印刷を想定して設計されておらず、ラベル基材のインク吸収性に乏しいため、該ラベル基材にインクジェット記録を行っても十分な画像濃度を得ることはできず、むしろインクが溢れて滲んでしまうなど、満足のいく画質を得ることは出来なかった。
【0005】
そこで、インクジェット記録が可能なタック紙として、特開平7−68924号公報には、ラベル基材を、インク吸収性を微妙に調整した塗層(いわゆるインク受容層)を有するインクジェット記録紙としたインクジェットタック紙が開示されている。しかし、このインクジェットタック紙は、シリカやアルミナ等の高価な多孔質無機粒子を多量に使用し、更に場合によってはインク受容層の鏡面光沢仕上げを必要とするインクジェット記録紙を構成材料とするため、製造コストが高くつくという問題があった。また、このインクジェットタック紙は、顔料インクを用いたインクジェット記録を特に考慮したものではなく、顔料インクを用いて画像を形成すると、画像濃度が不十分で発色性に欠けるという問題もあった。
【0006】
従って、本発明の目的は、顔料インクを用いたインクジェット記録が可能で、比較的安価に製造することができ、発色性にも優れるタック紙及び該タック紙を用いたインクジェット記録方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、インクジェット記録方式により表面に印刷が施されるラベル基材、該ラベル基材の裏面に設けられた粘着剤層及び該粘着剤層を被覆する剥離紙を具備してなるタック紙において、上記ラベル基材に、上記表面に打ち込まれたインクジェット記録用の顔料インクを該表面にて凝集させる性質を付与したことを特徴とするタック紙を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0008】
また、本発明は、上記タック紙を用いたインクジェット記録方法であって、該タック紙の表面に顔料インクによりインクジェット記録を行う記録工程と、該記録工程で該顔料インクが打ち込まれた該表面に、樹脂粒子を含有するオーバーコート液を塗布した後、該タック紙を加熱乾燥する後処理工程とを備えることを特徴とするインクジェット記録方法を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のタック紙について詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明のタック紙の一実施形態の断面模式図である。このタック紙1は、インクジェット記録方式により表面に印刷が施されるラベル基材2、粘着剤層3及び剥離紙4を順次積層してなる。
【0011】
ラベル基材2の表面の全面には、インクジェット記録用の顔料インクと接触したときにその分散状態を破壊し凝集させる性質を有する金属塩を含有する金属塩溶液が塗布されており、ラベル基材2は、表面に打ち込まれたインクジェット記録用の顔料インクを該表面にて凝集させる性質(顔料インク凝集能)を有している。尚、ここでいう「顔料インク凝集能」には、いわゆる自己分散型の顔料系色材を使用した顔料インクに対して、該顔料系色材自体に直接作用してこれを凝集させる性質も含まれるし、また、自己分散型ではない通常の顔料系色材を分散剤の作用により系中に分散させている顔料インクに対して、該分散剤を凝集させる結果として該顔料系色材を凝集させる性質も含まれる。要は、顔料インクの種類に拘わらず、結果として印字後に顔料系色材をラベル基材の表面で凝集させることができればよい。
【0012】
上記金属塩としては、金属イオンと、これに結合する陰イオンとから構成され、水に可溶なものが好ましく用いられる。
【0013】
上記金属イオンとしては、例えば、K+、Na+、Li+、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、Ba2+、Fe2+、Zr2+、Al3+、Fe3+、Cr3+、Zr3+、Zr4+等が挙げられる。
また、上記陰イオンとしては、Cl−、NO3 −、I−、Br−、ClO3 −、CH3COO−、F−、SO4 2−、SO3 2−等が挙げられる。
【0014】
上記カルボン酸イオン(陰イオン)としては、炭素数1〜6の飽和脂肪族モノカルボン酸及び炭素数6〜10の炭素環式モノカルボン酸からなる群から選ばれる1種又は2種以上のカルボン酸から誘導されるものが好ましい。
炭素数1〜6の飽和脂肪族モノカルボン酸の好ましい例としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ビバル酸、ヘキサン酸等が挙げられる。特に蟻酸、酢酸が好ましい。この炭素数1〜6の飽和脂肪族モノカルボン酸の飽和脂肪族炭化水素基上の水素原子は、水酸基で置換されていてもよく、そのようなカルボン酸の好ましい例としては、乳酸が挙げられる。
また、炭素数6〜10の炭素環式モノカルボン酸の好ましい例としては、安息香酸、ナフトエ酸等が挙げられ、より好ましくは安息香酸である。
【0015】
金属塩として特に好ましいものとしては、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、臭化マグネシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムが挙げられる。これらは、単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0016】
金属塩溶液は、水に金属塩を溶解させることにより得られる。金属塩の含有量は、金属塩の種類や金属塩溶液の塗布方法などを考慮して、所定の顔料インク凝集効果が得られるように適宜調整すればよい。金属塩溶液には、水及び金属塩以外に、取扱性、塗布性、ラベル基材への浸透性、インクジェット方式により塗布する場合の吐出安定性等を向上させるため、必要に応じ、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の湿潤剤;アルコールやトリエチレングリコールモノブチルエーテル等の浸透剤;各種界面活性剤;その他の添加剤として、紫外線吸収剤、光安定剤、消光剤、酸化防止剤、耐水化剤、防黴剤、防腐剤、増粘剤、流動性改良剤、pH調整剤、消泡剤、抑泡剤、レベリング剤、帯電防止剤等を含有させることができる。
【0017】
このような組成の金属塩溶液が塗布されるラベル基材としては、この種のタック紙におけるラベル基材として使用可能で且つ該金属塩溶液を吸収し得るものを用いることができる。このようなものとしては、例えば、上質紙、再生紙、アート紙、コート紙、微塗工紙、意匠紙、キャスト塗工紙、板紙、和紙、不織布、合成紙等のインクジェット適性を特に考慮されていない一般印刷用紙が挙げられる。勿論、ラベル基材として、インクジェット記録用に開発されたインクジェット記録用紙を用いることもできるが、本発明のタック紙は、高価なインクジェット記録用紙を用いずに、高画質の画像を提供することを目的としているので、ラベル基材としては、上記のような一般印刷用紙を用いることが好ましい。尚、ラベル基材の厚みは特に制限されず、用途などに応じて適宜調整すればよい。
【0018】
上記上質紙は、NBKP,LBKPなどの木材パルプの他、藁、バガス、麻などの植物原料を主原料にし且つ顔料コーティングされていない紙である。該上質紙には、平成10年発行の「紙・板紙統計年表」に記載の「紙の品種分類表」(日本製紙連合会発表)において、印刷情報用紙に分類されるもののうち、非塗工印刷用紙に分類されるもの及び情報用紙に分類されたフォーム用紙、PPC用紙などに該当するもの等が含まれる。また、上記再生紙は、上記上質紙に分類されるもののうち、再生古紙原料を使用しているものをいう。
【0019】
また、上記アート紙及び上記コート紙は、上記「紙の品種分類表」において塗工印刷用紙に分類されるものであり、計量コート紙に分類されるものも含む。また、上記微塗工紙は、上記「紙の品種分類表」において微塗工印刷用紙1〜3に分類されるものである。また、上記意匠紙には、特殊印刷用紙やその他の塗工印刷用紙に分類されるファンシーペーパーやエンボス紙等が含まれる。また、上記キャスト塗工紙は、上記「紙の品種分類表」においてその他印刷用紙に分類されるキャストコート紙であり、平滑性の優れた高級印刷用途に使用されるものである。また、上記板紙は、上記「紙の品種分類表」においてダンボール原紙、紙器用板紙に分類されるものである。また、上記和紙には、こうぞ、みつまた等の植物原料を用いた手漉き紙の他、これを模した機械抄紙和紙なども含まれる。また、上記不織布には、水を用いずにシート形成したものも含まれる。また、上記合成紙は、合成樹脂原料を軸延伸加工等でシート状物に形成したものである。
【0020】
ラベル基材として上記のうちの何れを用いるかは、タック紙の用途や印刷内容等を考慮して決定される。例えば、タック紙の用途が、各種食品包装ラベルやカタログ、ポスター等への貼合用途などである場合は、ラベル基材としてコート紙、アート紙、キャスト塗工紙などの塗工紙が多用され、特殊ラベル用途では、意匠紙、不織布、合成紙、板紙などが多用される。また、文字やバーコードが主体の印刷をする場合は、微塗工紙や上質紙が多用される。尚、これらはあくまでも例示であり、要は、顔料インク凝集能を有する材料を塗工あるいは含有させることができるものであれば、いかようなものもラベル基材として使用することができる。
【0021】
ラベル基材への金属塩溶液の塗布方法は、特に限定されず、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、サイズプレス等の公知の塗工装置を用いて塗布する方法や、スプレー、インクジェットヘッド、ジェットノズル等を用いてラベル基材と非接触で塗布する方法等を採ることができる。また、金属塩溶液中にラベル基材を浸積する方法を採ることもできる。金属塩溶液は、通常、ラベル基材の表面の全面に塗布するが、該表面の一部に塗布してもよい。ラベル基材の表面に金属塩溶液を塗布した後は、必要に応じ、該ラベル基材を加熱乾燥する。
【0022】
金属塩溶液のラベル基材への塗布量は、該金属塩溶液中の金属塩濃度にもよるが、固形分換算で0.5〜5g/m2が好ましい。金属塩溶液の塗布量が0.5g/m2未満では、インクの凝集効果に乏しく発色性に劣るおそれがあり、5g/m2超では、過度の凝集による画質劣化を招くおそれがある。但し、求める画像の品位によっては、塗布量が0.5g/m2超でも問題ない場合もある。
【0023】
粘着剤層3は、ラベル基材2を、水や溶剤や熱等の賦活作用を必要とせずに、軽い指圧のような弱い圧力で、被着対象物(例えば、書類、ビンや紙パック等の各種容器、台紙など)に貼り付け可能とする層であり、ラベル基材2(若しくは金属塩溶液が塗布されていないラベル基材)の裏面又は後述する剥離紙4の離型処理面に、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニル系粘着剤等の各種粘着剤を塗布し、乾燥することにより形成される。
【0024】
上記アクリル系粘着剤には非架橋型と架橋型があり、何れも粘着剤層3の形成材料として用いることができるが、凝集性、粘着性、接着性等の点で、架橋型(アクリル系架橋型粘着剤)が好ましい。このアクリル系架橋型粘着剤としては、(1)接着性を付与する低ガラス転移温度(Tg)の主モノマー成分、(2)接着性や凝集力を付与する高Tgのコモノマー成分、(3)架橋や接着性改良のための官能基含有モノマー成分を主とする重合体又は共重合体(アクリルポリマー)を弾性材料とするものを用いることができる。
【0025】
上記主モノマー成分としては、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル等のアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アルキルエステル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0026】
上記コモノマー成分としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0027】
上記官能基含有モノマー成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸等のカルボキシ含有モノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド等のヒドロキシル基含有モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、グリシジルメタクリレート等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0028】
上記アクリルポリマーを含む溶液に添加される架橋剤としては、イソシアナート系、エポキシ系、エチレンイミン系、アルキレート系等が挙げられ、これらの中から官能基と反応し得る種類の架橋剤を適宜選択して用いる。
【0029】
上記アクリル系粘着剤には、通常、上記アクリルポリマー(架橋型の場合は更に架橋剤)以外に、ロジン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、石油系炭化水素樹脂、クロマン系樹脂等の粘着付与剤を含有させる。粘着付与剤の含有量は、アクリルポリマーの固形分100重量部に対して、固形分比で5〜50重量部が好ましく、10〜30重量部が更に好ましい。
【0030】
さらに、上記アクリル系粘着剤には、必要に応じ、フタル酸エステル、リン酸エステル、塩化パラフィン、液状ポリブテン、ラノリン、動・植物性油、鉱物油等の軟化剤や可塑剤;亜鉛華、酸化チタン、クレー、炭酸カルシウム、水和アルミニウム、顔料等の充填剤;ジチオカーバメイト、金属キレート剤等の老化防止剤等の1種又は2種以上を含有させることができる。尚、アクリル系粘着剤の形態にはエマルジョン型と溶剤型があるが、粘着剤層3の形成材料としてはどちらの形態も使用可能である。
【0031】
また、上記ゴム系粘着剤としては、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ポリイソプレン、ブチルゴム等の弾性材料と、ロジン、テルペン、石油系樹脂等の粘着付与剤、可塑剤、充填剤、老化防止剤などから形成されるものを用いることができる。尚、ゴム系粘着剤の形態には、溶剤型やエマルジョン型の他、無溶媒型のスチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)やスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)等を主成分とするホットメルト型等があるが、粘着剤層3の形成材料としては何れの形態も使用可能である。
【0032】
また、上記シリコーン系粘着剤としては、例えば、ゴム状シリコーン樹脂及び樹脂状シリコーン樹脂を弾性材料とするものを用いることができる。
また、上記ビニル系粘着剤としては、例えば、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール等のビニル系重合体を弾性材料とするものを用いることができる。
【0033】
これら粘着剤の塗布量は、特に制限されず、被着対象物への粘着力や剥離紙の剥離性などに応じて適宜調整すればよい。尚、粘着剤層3は、通常、ラベル基材2の裏面の全面に形成されるが、該裏面の一部に形成してもよい。
【0034】
剥離紙4は、粘着剤層3を保護するためのもので、上質紙;グラシン紙;紙上にポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂層を設けた構成の樹脂被覆紙;ポリエステルフィルムやポリプロピレンフィルム等のフィルム等から構成され、その粘着剤層3側の面は、シリコーン系等の離型剤が塗布された離型処理面となっている。離型剤の塗布量は0.1〜3g/m2程度である。尚、剥離紙4の厚みは特に制限されず、用途などに応じて適宜調整すればよい。また、剥離紙4は、粘着剤層3の全面を被覆し得る大きさであればよく、ラベル基材2及び粘着剤層3よりもやや大きめにして、剥離紙4を剥がし易くすることもできる。
【0035】
また、剥離紙4は、JIS P8147又はTAPPI T−503に準拠の静摩擦係数が0.05以上であることが好ましい。該静摩擦係数が0.05未満では、タック紙の印刷時においてインクジェット記録装置内部での給紙がうまくいかず、給紙トラブルを招くおそれがある。
【0036】
タック紙1は、(1)剥離紙4の離型処理面に、上記の各種粘着剤を塗布・乾燥して粘着剤層3を形成した後、該粘着剤層3にラベル基材2(若しくは金属塩溶液が塗布されていないラベル基材)を貼り合わせることにより製造することもできるし、(2)ラベル基材2(若しくは金属塩溶液が塗布されていないラベル基材)の裏面に、上記の各種粘着剤を塗布・乾燥して粘着剤層3を形成した後、該粘着剤層3に剥離紙4を離型処理面を介して貼り合わせることにより製造することもできる。(2)の製造方法では、ラベル基材2の印刷適性を損なわないようにする観点から、粘着剤としてホットメルト型粘着剤のような無溶媒型粘着剤を使用することが好ましい。
【0037】
尚、上記(1)の製造方法において、粘着剤層3に、金属塩溶液が塗布されていないラベル基材を貼り合わせた場合〔上記(1)のカッコ書き〕は、貼り合わされた該ラベル基材に金属塩溶液を塗布することにより、タック紙1が製造される。また、上記(2)の製造方法において、金属塩溶液が塗布されていないラベル基材の裏面に粘着剤層3を形成した場合〔上記(2)のカッコ書き〕は、剥離紙4の貼り合わせ後に、該ラベル基材に金属塩溶液を塗布することにより、タック紙1が製造される。
【0038】
タック紙1は、インクジェット記録方式の記録装置(インクジェットプリンタ)により、ラベル基材2の表面に文字及び/又は画像を印刷した後、剥離紙4のみを剥がし取って粘着剤層3を外部に露出させ、該粘着剤層3を被着対象物に押し当てるようにして、印刷済みのラベル基材2を該被着対象物に貼り付けて使用される。
【0039】
本発明のタック紙は、上述したように、顔料インクを用いたインクジェット記録に対して特に有効であり、画像濃度が高く、インク滲みなども観られない高画質の画像を提供することができる。インクジェット記録用の顔料インクは、顔料系色材を含有する水性インクであり、通常、保湿や浸透調整等のため、各種有機溶剤や界面活性剤等が更に含有されている。カラー画像を形成する場合は、イエロー、マゼンタ及びシアンの減法混色の3原色の顔料インク、あるいはこれにブラックその他の色の顔料インクを加えた4色以上の顔料インクを用いる。
【0040】
尚、上記インクジェット記録方式には、ノズルから一定時間間隔でインクを吐出し続け、吐出されたインク液滴を偏向させることにより画像を形成するコンティニュアス方式と、画像データに対応してインクを吐出させるオンデマンド方式とがあるが、本発明のタック紙は何れの方式でも使用できる。また、インクジェットプリンタのインク吐出制御方式には、圧電素子を用いて電圧により制御する方式や、発熱抵抗素子を用いて熱エネルギーにより制御する方式等があるが、これについても特に制限されない。
【0041】
本発明のタック紙は、上記の如き通常のインクジェット記録方法、即ち、タック紙の表面に顔料インクによりインクジェット記録を行う記録工程のみからなるインクジェット記録方法のみならず、更に、該記録工程で該顔料インクが打ち込まれた該表面に、樹脂粒子を含有するオーバーコート液を塗布した後、該タック紙を加熱乾燥する後処理工程を備えるインクジェット記録方法にも適用可能である。このような後処理工程を備えたインクジェット記録方法によれば、顔料インク印刷物の欠点である耐擦性の弱さを十分カバーすることができる。
【0042】
上記後処理工程で使用するオーバーコート液について、以下に説明する。
【0043】
オーバーコート液は、水及び樹脂粒子を必須成分として含有する。この樹脂粒子としては、塗被面上に一定の表面強度を有する透明な樹脂皮膜を形成し得るものが好ましく、エチレン、プロピレン、スチレン、スルホン化イソプレン、アクリル酸及びメタクリル酸並びにこれらの誘導体からなる群から選ばれる1種又は2種以上をモノマーとする重合体から構成されるものが好ましい。アクリル酸及びメタクリル酸の誘導体としては、アクリル酸エステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等)、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸エステル等が挙げられる。
【0044】
また、樹脂粒子の平均粒子径は、皮膜形成の促進、オーバーコート液をインクジェット方式により塗布する場合のインクジェットノズルからの吐出安定性等の観点から、好ましくは10〜200nm、更に好ましくは50〜100nmである。
【0045】
尚、樹脂粒子としては、水性媒体中に該樹脂粒子を分散させた樹脂エマルジョン形態のものを使用することができる。このような樹脂エマルジョンとしては、例えば、ダイナフローK201(JSR製)、アクアキュアー513(BYK製)、ケミパール(三井化学製)等の市販の樹脂エマルジョンが好ましく用いられる。
【0046】
樹脂粒子の含有量は、皮膜形成効果とジェットノズルからの吐出安定性とのバランスの観点から、オーバーコート液中、好ましくは0.1〜20重量%、更に好ましくは1〜10重量%である。
【0047】
オーバーコート液には、樹脂粒子以外に、必要に応じ、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の湿潤剤;アルコールやトリエチレングリコールモノブチルエーテル等の浸透剤;各種界面活性剤;その他の添加剤として、紫外線吸収剤、光安定剤、消光剤、酸化防止剤、耐水化剤、防黴剤、防腐剤、増粘剤、流動性改良剤、pH調整剤、消泡剤、抑泡剤、レベリング剤、帯電防止剤等を含有させることができる。
【0048】
オーバーコート液は、皮膜形成の促進、皮膜の表面強度、インクジェット方式により塗布する場合のジェットノズルからの吐出信頼性等の観点から、下記物性値が、それぞれ下記範囲にあることが好ましい。
・液温20℃における粘度;2〜5mPa・s
・表面張力;15〜40mN/m
・pH;7〜9.5
上記各物性値の調整は、各成分の含有量を調整したり、樹脂成分を適宜選択することにより行うことができる。
【0049】
上記後処理工程では、このような組成及び物性のオーバーコート液を、記録工程で顔料インクが打ち込まれた部分(印刷部分)に重ねて塗布する。印刷部分と非印刷部分(インクが打ち込まれていない部分)との間の面質差が問題となる場合は、非印刷部分も含めたラベル基材の全面に塗布する。オーバーコート液の塗布方法は、特に限定されず、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、サイズプレス等の公知の塗工装置を用いて塗布する方法や、スプレー、インクジェットヘッド、ジェットノズル等を用いてタック紙と非接触で塗布する方法等を採ることができる。特に、記録工程と同じ方式であるジェットノズル(インクジェットヘッド)を用いたインクジェット方式によるオーバーコート液の塗布は、塗布パターンや塗布量の融通性が高く、また、全工程の高速化が可能となるため好ましい。さらに、後処理工程の有無で印刷物の外観を変化させないためには、オーバーコート液の塗布量はなるべく少ないことが好ましいところ、インクジェット方式による塗布であれば、このような低塗布量のコントロールを容易に行うことができる。
【0050】
オーバーコート液の塗布量は、固形分換算で0.5〜2g/m2が好ましい。塗布量が0.5g/m2未満では耐擦性の向上の効果に乏しく、2g/m2超では樹脂皮膜の形成に時間がかかる、ブロッキングが発生する、不快なギラツキが発生し印刷物本来の風合いが損なわれる等の不都合が生じるおそれがある。但し、塗布量は上記範囲に限定される訳ではなく、例えば、より優れた耐擦性や高光沢感を求める場合などは2g/m2超の塗布量でよい。
【0051】
オーバーコート液の塗布後に行うタック紙の加熱乾燥は、塗布されたオーバーコート液の皮膜化を促進するための処理であり、赤外線式加熱装置や熱風加熱装置などの公知の加熱装置を用いて常法通り行うことができる。インクジェットプリンタの適当な箇所、例えば、排紙口付近などにこのような加熱装置を配置すれば、該インクジェットプリンタにタック紙を1回給紙する(1パス)だけで、全ての工程(記録工程及び後処理工程)を行うことが可能となり、高速印字が可能となる。
【0052】
加熱温度や加熱時間(ラインスピード)等の加熱条件は、いわゆるブリスター(火ぶくれ)を発生させずに皮膜形成が効率良く行えるように適宜設定される。ラベル基材の含水量が多く湿った状態にある場合は、これを高温で一気に加熱乾燥するとブリスターを生じ易いので、例えば、乾燥ゾーン1は風乾、乾燥ゾーン2は60℃熱風乾燥、乾燥ゾーン3は130℃熱風乾燥というように、多段乾燥で緩やかに乾燥することが好ましい。
【0053】
本発明のタック紙は、インクジェット記録方式により表面に印刷が施されるラベル基材、該ラベル基材の裏面に設けられた粘着剤層及び該粘着剤層を被覆する剥離紙を具備してなるタック紙において、上記ラベル基材に、上記表面に打ち込まれたインクジェット記録用の顔料インクを該表面にて凝集させる性質(顔料インク凝集能)を付与してあればよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記ラベル基材への顔料インク凝集能の付与方法は、上記実施形態に制限されるものではなく、要は、タック紙を構成するラベル基材が、前述したような顔料インク凝集能を有していればよい。
【0054】
また、図1に示す如き構成のタック紙において、ラベル基材2と粘着剤層3との間に、疎水性樹脂を主成分とするインク浸透防止層を設けることもできる。
また、粘着剤層3は、1種類の粘着剤から形成された単層構造としてもよいし、複数種の粘着剤を重ね塗りすることにより形成される多層構造としてもよい。また、剥離紙4として、各種の紙やフィルム上に、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、クレー、アルキッド樹脂等を含有する目止め層を設けた構成のものを用いてもよい。該目止め層の厚みは0.5〜50μm程度である。この場合、該目止め層上にシリコーン系離型剤などを塗布して離型処理面とし、該離型処理面と粘着剤層3とを対向させる。また、剥離紙4の裏面(粘着剤層3と対向していない面)側に、該目止め層を設けることにより、カール防止を図ることも可能である。
【0055】
【実施例】
以下に、本発明の実施例及び本発明の効果を示す試験例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、斯かる実施例により何等制限されるものではない。
【0056】
〔実施例1〕
下記組成の金属塩溶液を調整した。
【0057】
一般印刷用の(インクジェット適性の無い)キャストコート紙(「ミラーコートプラチナ」王子製紙製)の被記録面の全面に対して、インクジェットプリンタ(「EM930C」セイコーエプソン製)のシアンインクと上記金属塩溶液とを入れ替えたものを用いて、シアン100%となるベタパターンで、固形分換算で1.2g/m2の塗布量で上記金属塩溶液を打ち込んで、ラベル基材を作成した。
【0058】
また、厚み38μmのグラシン紙の片面に、厚み9μmのポリエチレンフィルムをラミネートした後、このラミネート表面にシリコーンを固形分換算で1.2g/m2の塗布量で塗布し、乾燥して、該ラミネート表面を離型処理面とし、剥離紙を作成した。
【0059】
次に、シリコーン系粘着剤(「TSR1510」東芝シリコーン製)を、上記剥離紙の離型処理面に乾燥後の塗布量が8g/m2となるように塗布し、乾燥させた。その後、該粘着剤の塗布面に、上記ラベル基材を、金属塩溶液を塗布されていない面を押し当てるように貼り合わせて、タック紙を製造した。このようにして得られたタック紙を、実施例1のサンプルとした。
【0060】
〔比較例1〕
実施例1において、ラベル基材として、金属塩溶液を塗布していない上記ミラーコートプラチナそのものを用いた以外は実施例1と同様にしてタック紙を製造し、これを比較例1のサンプルとした。
【0061】
〔比較例2〕
実施例1において、ラベル基材として、金属塩溶液を塗布していないインクジェット記録用紙(「GP201」キャノン製)を用いた以外は実施例1と同様にしてタック紙を製造し、これを比較例2のサンプルとした。
【0062】
〔比較例3〕
市販のインクジェット対応ラベル向けタック紙(「MIJ65K/P22/U5W」OKタック社製)をそのまま比較例3のサンプルとした。
【0063】
実施例1及び比較例1〜3の上記各サンプルについて、発色性及びカラーブリードを下記方法で評価した。それらの結果を下記表1に示す。
【0064】
〔発色性の評価方法〕
各サンプルのラベル基材の表面に対し、6色顔料インクジェットプリンタ(「MC2000」セイコーエプソン製)を用いて、各色の100%カラーパッチを印刷した。そして、CMYBkの各カラーパッチについて、グレタグマクベス社製のスペクトロリーノSPM−50を用い、視野角2°、光源D50、フィルター無しの条件で反射光学濃度(OD値)を測定し、下記評価基準により評価した。
(評価基準)
A:CMYBkの4色のOD値の合計が7.5を超える。発色性良好。
B:4色のOD値の合計が7.5〜6.0。実用上問題なし。
C:4色のOD値の合計が6.0未満(平均でOD値1.5未満)。実用に堪えない。
【0065】
〔カラーブリードの評価試験〕
上記各カラーパッチのイエロー領域とブラック領域とが隣接する部分(画質低下が最も判別し易い領域)をそれぞれ目視により観察し、それらの色境界での不均一な色混じりの程度を下記評価基準により評価した。
(評価基準)
A:色混じりの無い、良好な画像が得られた。
B:色混じりが僅かに生じた。実用上問題なし。
C:色の境界がはっきりしない程、色混じりが起こった。実用に堪えない。
【0066】
【表1】
【0067】
【発明の効果】
本発明のタック紙は、顔料インクを用いたインクジェット記録が可能で、比較的安価に製造することができ、発色性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のタック紙の一実施形態の断面模式図である。
【符号の説明】
1 タック紙
2 ラベル基材
3 粘着剤層
4 剥離紙
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラベルの形成用材料等として使用されるタック紙に関し、特に、顔料インクを用いたインクジェット記録が可能なタック紙及び該タック紙を用いたインクジェット記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
タック紙は、一般に、剥離紙上に粘着剤層を形成し、該粘着剤層にラベル基材を貼り合わせた構成となっている。このタック紙は、ラベル基材の表面に適宜印刷を施した後、剥離紙を引き剥がして粘着剤層を外部に露出させ、該粘着剤層を介して、被着対象物、例えば、書類、ビンや紙パック等の各種容器、台紙などに該ラベル基材を貼り付けることにより使用される。
【0003】
これまで、上記ラベル基材への印刷は、主にオフセット印刷方式やグラビア印刷方式等により行われてきたが、最近では、インクジェット記録方式による印刷も行われるようになってきている。インクジェット記録方式は、記録ヘッドの微小なジェットノズルからインクの液滴を吐出させ、紙等の記録媒体に付着させて印字を行う印刷方式であり、印刷版が不要で工程が簡素である、多色印字を高速に行える、記録パターンの融通性が大きい、オンデマンド少ロット対応も可能である等の理由により、種々の用途において急速に普及している。インクジェット記録用のインクとしては、染料や顔料等の色材を水やアルコール等を含む水性媒体中に溶解又は分散させたものが用いられ、これまでは染料を色材とする染料インクが主流であったが、最近では、ポスターやディスプレイ用途など、記録画像の長期保存性が重視される用途を中心に、染料インクに比して耐水性や耐光性等に優れる顔料インクが多用されるようになってきている。
【0004】
従来のタック紙は、インクジェット記録方式による印刷を想定して設計されておらず、ラベル基材のインク吸収性に乏しいため、該ラベル基材にインクジェット記録を行っても十分な画像濃度を得ることはできず、むしろインクが溢れて滲んでしまうなど、満足のいく画質を得ることは出来なかった。
【0005】
そこで、インクジェット記録が可能なタック紙として、特開平7−68924号公報には、ラベル基材を、インク吸収性を微妙に調整した塗層(いわゆるインク受容層)を有するインクジェット記録紙としたインクジェットタック紙が開示されている。しかし、このインクジェットタック紙は、シリカやアルミナ等の高価な多孔質無機粒子を多量に使用し、更に場合によってはインク受容層の鏡面光沢仕上げを必要とするインクジェット記録紙を構成材料とするため、製造コストが高くつくという問題があった。また、このインクジェットタック紙は、顔料インクを用いたインクジェット記録を特に考慮したものではなく、顔料インクを用いて画像を形成すると、画像濃度が不十分で発色性に欠けるという問題もあった。
【0006】
従って、本発明の目的は、顔料インクを用いたインクジェット記録が可能で、比較的安価に製造することができ、発色性にも優れるタック紙及び該タック紙を用いたインクジェット記録方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、インクジェット記録方式により表面に印刷が施されるラベル基材、該ラベル基材の裏面に設けられた粘着剤層及び該粘着剤層を被覆する剥離紙を具備してなるタック紙において、上記ラベル基材に、上記表面に打ち込まれたインクジェット記録用の顔料インクを該表面にて凝集させる性質を付与したことを特徴とするタック紙を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0008】
また、本発明は、上記タック紙を用いたインクジェット記録方法であって、該タック紙の表面に顔料インクによりインクジェット記録を行う記録工程と、該記録工程で該顔料インクが打ち込まれた該表面に、樹脂粒子を含有するオーバーコート液を塗布した後、該タック紙を加熱乾燥する後処理工程とを備えることを特徴とするインクジェット記録方法を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のタック紙について詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明のタック紙の一実施形態の断面模式図である。このタック紙1は、インクジェット記録方式により表面に印刷が施されるラベル基材2、粘着剤層3及び剥離紙4を順次積層してなる。
【0011】
ラベル基材2の表面の全面には、インクジェット記録用の顔料インクと接触したときにその分散状態を破壊し凝集させる性質を有する金属塩を含有する金属塩溶液が塗布されており、ラベル基材2は、表面に打ち込まれたインクジェット記録用の顔料インクを該表面にて凝集させる性質(顔料インク凝集能)を有している。尚、ここでいう「顔料インク凝集能」には、いわゆる自己分散型の顔料系色材を使用した顔料インクに対して、該顔料系色材自体に直接作用してこれを凝集させる性質も含まれるし、また、自己分散型ではない通常の顔料系色材を分散剤の作用により系中に分散させている顔料インクに対して、該分散剤を凝集させる結果として該顔料系色材を凝集させる性質も含まれる。要は、顔料インクの種類に拘わらず、結果として印字後に顔料系色材をラベル基材の表面で凝集させることができればよい。
【0012】
上記金属塩としては、金属イオンと、これに結合する陰イオンとから構成され、水に可溶なものが好ましく用いられる。
【0013】
上記金属イオンとしては、例えば、K+、Na+、Li+、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、Ba2+、Fe2+、Zr2+、Al3+、Fe3+、Cr3+、Zr3+、Zr4+等が挙げられる。
また、上記陰イオンとしては、Cl−、NO3 −、I−、Br−、ClO3 −、CH3COO−、F−、SO4 2−、SO3 2−等が挙げられる。
【0014】
上記カルボン酸イオン(陰イオン)としては、炭素数1〜6の飽和脂肪族モノカルボン酸及び炭素数6〜10の炭素環式モノカルボン酸からなる群から選ばれる1種又は2種以上のカルボン酸から誘導されるものが好ましい。
炭素数1〜6の飽和脂肪族モノカルボン酸の好ましい例としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ビバル酸、ヘキサン酸等が挙げられる。特に蟻酸、酢酸が好ましい。この炭素数1〜6の飽和脂肪族モノカルボン酸の飽和脂肪族炭化水素基上の水素原子は、水酸基で置換されていてもよく、そのようなカルボン酸の好ましい例としては、乳酸が挙げられる。
また、炭素数6〜10の炭素環式モノカルボン酸の好ましい例としては、安息香酸、ナフトエ酸等が挙げられ、より好ましくは安息香酸である。
【0015】
金属塩として特に好ましいものとしては、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、臭化マグネシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムが挙げられる。これらは、単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0016】
金属塩溶液は、水に金属塩を溶解させることにより得られる。金属塩の含有量は、金属塩の種類や金属塩溶液の塗布方法などを考慮して、所定の顔料インク凝集効果が得られるように適宜調整すればよい。金属塩溶液には、水及び金属塩以外に、取扱性、塗布性、ラベル基材への浸透性、インクジェット方式により塗布する場合の吐出安定性等を向上させるため、必要に応じ、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の湿潤剤;アルコールやトリエチレングリコールモノブチルエーテル等の浸透剤;各種界面活性剤;その他の添加剤として、紫外線吸収剤、光安定剤、消光剤、酸化防止剤、耐水化剤、防黴剤、防腐剤、増粘剤、流動性改良剤、pH調整剤、消泡剤、抑泡剤、レベリング剤、帯電防止剤等を含有させることができる。
【0017】
このような組成の金属塩溶液が塗布されるラベル基材としては、この種のタック紙におけるラベル基材として使用可能で且つ該金属塩溶液を吸収し得るものを用いることができる。このようなものとしては、例えば、上質紙、再生紙、アート紙、コート紙、微塗工紙、意匠紙、キャスト塗工紙、板紙、和紙、不織布、合成紙等のインクジェット適性を特に考慮されていない一般印刷用紙が挙げられる。勿論、ラベル基材として、インクジェット記録用に開発されたインクジェット記録用紙を用いることもできるが、本発明のタック紙は、高価なインクジェット記録用紙を用いずに、高画質の画像を提供することを目的としているので、ラベル基材としては、上記のような一般印刷用紙を用いることが好ましい。尚、ラベル基材の厚みは特に制限されず、用途などに応じて適宜調整すればよい。
【0018】
上記上質紙は、NBKP,LBKPなどの木材パルプの他、藁、バガス、麻などの植物原料を主原料にし且つ顔料コーティングされていない紙である。該上質紙には、平成10年発行の「紙・板紙統計年表」に記載の「紙の品種分類表」(日本製紙連合会発表)において、印刷情報用紙に分類されるもののうち、非塗工印刷用紙に分類されるもの及び情報用紙に分類されたフォーム用紙、PPC用紙などに該当するもの等が含まれる。また、上記再生紙は、上記上質紙に分類されるもののうち、再生古紙原料を使用しているものをいう。
【0019】
また、上記アート紙及び上記コート紙は、上記「紙の品種分類表」において塗工印刷用紙に分類されるものであり、計量コート紙に分類されるものも含む。また、上記微塗工紙は、上記「紙の品種分類表」において微塗工印刷用紙1〜3に分類されるものである。また、上記意匠紙には、特殊印刷用紙やその他の塗工印刷用紙に分類されるファンシーペーパーやエンボス紙等が含まれる。また、上記キャスト塗工紙は、上記「紙の品種分類表」においてその他印刷用紙に分類されるキャストコート紙であり、平滑性の優れた高級印刷用途に使用されるものである。また、上記板紙は、上記「紙の品種分類表」においてダンボール原紙、紙器用板紙に分類されるものである。また、上記和紙には、こうぞ、みつまた等の植物原料を用いた手漉き紙の他、これを模した機械抄紙和紙なども含まれる。また、上記不織布には、水を用いずにシート形成したものも含まれる。また、上記合成紙は、合成樹脂原料を軸延伸加工等でシート状物に形成したものである。
【0020】
ラベル基材として上記のうちの何れを用いるかは、タック紙の用途や印刷内容等を考慮して決定される。例えば、タック紙の用途が、各種食品包装ラベルやカタログ、ポスター等への貼合用途などである場合は、ラベル基材としてコート紙、アート紙、キャスト塗工紙などの塗工紙が多用され、特殊ラベル用途では、意匠紙、不織布、合成紙、板紙などが多用される。また、文字やバーコードが主体の印刷をする場合は、微塗工紙や上質紙が多用される。尚、これらはあくまでも例示であり、要は、顔料インク凝集能を有する材料を塗工あるいは含有させることができるものであれば、いかようなものもラベル基材として使用することができる。
【0021】
ラベル基材への金属塩溶液の塗布方法は、特に限定されず、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、サイズプレス等の公知の塗工装置を用いて塗布する方法や、スプレー、インクジェットヘッド、ジェットノズル等を用いてラベル基材と非接触で塗布する方法等を採ることができる。また、金属塩溶液中にラベル基材を浸積する方法を採ることもできる。金属塩溶液は、通常、ラベル基材の表面の全面に塗布するが、該表面の一部に塗布してもよい。ラベル基材の表面に金属塩溶液を塗布した後は、必要に応じ、該ラベル基材を加熱乾燥する。
【0022】
金属塩溶液のラベル基材への塗布量は、該金属塩溶液中の金属塩濃度にもよるが、固形分換算で0.5〜5g/m2が好ましい。金属塩溶液の塗布量が0.5g/m2未満では、インクの凝集効果に乏しく発色性に劣るおそれがあり、5g/m2超では、過度の凝集による画質劣化を招くおそれがある。但し、求める画像の品位によっては、塗布量が0.5g/m2超でも問題ない場合もある。
【0023】
粘着剤層3は、ラベル基材2を、水や溶剤や熱等の賦活作用を必要とせずに、軽い指圧のような弱い圧力で、被着対象物(例えば、書類、ビンや紙パック等の各種容器、台紙など)に貼り付け可能とする層であり、ラベル基材2(若しくは金属塩溶液が塗布されていないラベル基材)の裏面又は後述する剥離紙4の離型処理面に、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニル系粘着剤等の各種粘着剤を塗布し、乾燥することにより形成される。
【0024】
上記アクリル系粘着剤には非架橋型と架橋型があり、何れも粘着剤層3の形成材料として用いることができるが、凝集性、粘着性、接着性等の点で、架橋型(アクリル系架橋型粘着剤)が好ましい。このアクリル系架橋型粘着剤としては、(1)接着性を付与する低ガラス転移温度(Tg)の主モノマー成分、(2)接着性や凝集力を付与する高Tgのコモノマー成分、(3)架橋や接着性改良のための官能基含有モノマー成分を主とする重合体又は共重合体(アクリルポリマー)を弾性材料とするものを用いることができる。
【0025】
上記主モノマー成分としては、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル等のアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アルキルエステル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0026】
上記コモノマー成分としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0027】
上記官能基含有モノマー成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸等のカルボキシ含有モノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド等のヒドロキシル基含有モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、グリシジルメタクリレート等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0028】
上記アクリルポリマーを含む溶液に添加される架橋剤としては、イソシアナート系、エポキシ系、エチレンイミン系、アルキレート系等が挙げられ、これらの中から官能基と反応し得る種類の架橋剤を適宜選択して用いる。
【0029】
上記アクリル系粘着剤には、通常、上記アクリルポリマー(架橋型の場合は更に架橋剤)以外に、ロジン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、石油系炭化水素樹脂、クロマン系樹脂等の粘着付与剤を含有させる。粘着付与剤の含有量は、アクリルポリマーの固形分100重量部に対して、固形分比で5〜50重量部が好ましく、10〜30重量部が更に好ましい。
【0030】
さらに、上記アクリル系粘着剤には、必要に応じ、フタル酸エステル、リン酸エステル、塩化パラフィン、液状ポリブテン、ラノリン、動・植物性油、鉱物油等の軟化剤や可塑剤;亜鉛華、酸化チタン、クレー、炭酸カルシウム、水和アルミニウム、顔料等の充填剤;ジチオカーバメイト、金属キレート剤等の老化防止剤等の1種又は2種以上を含有させることができる。尚、アクリル系粘着剤の形態にはエマルジョン型と溶剤型があるが、粘着剤層3の形成材料としてはどちらの形態も使用可能である。
【0031】
また、上記ゴム系粘着剤としては、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ポリイソプレン、ブチルゴム等の弾性材料と、ロジン、テルペン、石油系樹脂等の粘着付与剤、可塑剤、充填剤、老化防止剤などから形成されるものを用いることができる。尚、ゴム系粘着剤の形態には、溶剤型やエマルジョン型の他、無溶媒型のスチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)やスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)等を主成分とするホットメルト型等があるが、粘着剤層3の形成材料としては何れの形態も使用可能である。
【0032】
また、上記シリコーン系粘着剤としては、例えば、ゴム状シリコーン樹脂及び樹脂状シリコーン樹脂を弾性材料とするものを用いることができる。
また、上記ビニル系粘着剤としては、例えば、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール等のビニル系重合体を弾性材料とするものを用いることができる。
【0033】
これら粘着剤の塗布量は、特に制限されず、被着対象物への粘着力や剥離紙の剥離性などに応じて適宜調整すればよい。尚、粘着剤層3は、通常、ラベル基材2の裏面の全面に形成されるが、該裏面の一部に形成してもよい。
【0034】
剥離紙4は、粘着剤層3を保護するためのもので、上質紙;グラシン紙;紙上にポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂層を設けた構成の樹脂被覆紙;ポリエステルフィルムやポリプロピレンフィルム等のフィルム等から構成され、その粘着剤層3側の面は、シリコーン系等の離型剤が塗布された離型処理面となっている。離型剤の塗布量は0.1〜3g/m2程度である。尚、剥離紙4の厚みは特に制限されず、用途などに応じて適宜調整すればよい。また、剥離紙4は、粘着剤層3の全面を被覆し得る大きさであればよく、ラベル基材2及び粘着剤層3よりもやや大きめにして、剥離紙4を剥がし易くすることもできる。
【0035】
また、剥離紙4は、JIS P8147又はTAPPI T−503に準拠の静摩擦係数が0.05以上であることが好ましい。該静摩擦係数が0.05未満では、タック紙の印刷時においてインクジェット記録装置内部での給紙がうまくいかず、給紙トラブルを招くおそれがある。
【0036】
タック紙1は、(1)剥離紙4の離型処理面に、上記の各種粘着剤を塗布・乾燥して粘着剤層3を形成した後、該粘着剤層3にラベル基材2(若しくは金属塩溶液が塗布されていないラベル基材)を貼り合わせることにより製造することもできるし、(2)ラベル基材2(若しくは金属塩溶液が塗布されていないラベル基材)の裏面に、上記の各種粘着剤を塗布・乾燥して粘着剤層3を形成した後、該粘着剤層3に剥離紙4を離型処理面を介して貼り合わせることにより製造することもできる。(2)の製造方法では、ラベル基材2の印刷適性を損なわないようにする観点から、粘着剤としてホットメルト型粘着剤のような無溶媒型粘着剤を使用することが好ましい。
【0037】
尚、上記(1)の製造方法において、粘着剤層3に、金属塩溶液が塗布されていないラベル基材を貼り合わせた場合〔上記(1)のカッコ書き〕は、貼り合わされた該ラベル基材に金属塩溶液を塗布することにより、タック紙1が製造される。また、上記(2)の製造方法において、金属塩溶液が塗布されていないラベル基材の裏面に粘着剤層3を形成した場合〔上記(2)のカッコ書き〕は、剥離紙4の貼り合わせ後に、該ラベル基材に金属塩溶液を塗布することにより、タック紙1が製造される。
【0038】
タック紙1は、インクジェット記録方式の記録装置(インクジェットプリンタ)により、ラベル基材2の表面に文字及び/又は画像を印刷した後、剥離紙4のみを剥がし取って粘着剤層3を外部に露出させ、該粘着剤層3を被着対象物に押し当てるようにして、印刷済みのラベル基材2を該被着対象物に貼り付けて使用される。
【0039】
本発明のタック紙は、上述したように、顔料インクを用いたインクジェット記録に対して特に有効であり、画像濃度が高く、インク滲みなども観られない高画質の画像を提供することができる。インクジェット記録用の顔料インクは、顔料系色材を含有する水性インクであり、通常、保湿や浸透調整等のため、各種有機溶剤や界面活性剤等が更に含有されている。カラー画像を形成する場合は、イエロー、マゼンタ及びシアンの減法混色の3原色の顔料インク、あるいはこれにブラックその他の色の顔料インクを加えた4色以上の顔料インクを用いる。
【0040】
尚、上記インクジェット記録方式には、ノズルから一定時間間隔でインクを吐出し続け、吐出されたインク液滴を偏向させることにより画像を形成するコンティニュアス方式と、画像データに対応してインクを吐出させるオンデマンド方式とがあるが、本発明のタック紙は何れの方式でも使用できる。また、インクジェットプリンタのインク吐出制御方式には、圧電素子を用いて電圧により制御する方式や、発熱抵抗素子を用いて熱エネルギーにより制御する方式等があるが、これについても特に制限されない。
【0041】
本発明のタック紙は、上記の如き通常のインクジェット記録方法、即ち、タック紙の表面に顔料インクによりインクジェット記録を行う記録工程のみからなるインクジェット記録方法のみならず、更に、該記録工程で該顔料インクが打ち込まれた該表面に、樹脂粒子を含有するオーバーコート液を塗布した後、該タック紙を加熱乾燥する後処理工程を備えるインクジェット記録方法にも適用可能である。このような後処理工程を備えたインクジェット記録方法によれば、顔料インク印刷物の欠点である耐擦性の弱さを十分カバーすることができる。
【0042】
上記後処理工程で使用するオーバーコート液について、以下に説明する。
【0043】
オーバーコート液は、水及び樹脂粒子を必須成分として含有する。この樹脂粒子としては、塗被面上に一定の表面強度を有する透明な樹脂皮膜を形成し得るものが好ましく、エチレン、プロピレン、スチレン、スルホン化イソプレン、アクリル酸及びメタクリル酸並びにこれらの誘導体からなる群から選ばれる1種又は2種以上をモノマーとする重合体から構成されるものが好ましい。アクリル酸及びメタクリル酸の誘導体としては、アクリル酸エステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等)、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸エステル等が挙げられる。
【0044】
また、樹脂粒子の平均粒子径は、皮膜形成の促進、オーバーコート液をインクジェット方式により塗布する場合のインクジェットノズルからの吐出安定性等の観点から、好ましくは10〜200nm、更に好ましくは50〜100nmである。
【0045】
尚、樹脂粒子としては、水性媒体中に該樹脂粒子を分散させた樹脂エマルジョン形態のものを使用することができる。このような樹脂エマルジョンとしては、例えば、ダイナフローK201(JSR製)、アクアキュアー513(BYK製)、ケミパール(三井化学製)等の市販の樹脂エマルジョンが好ましく用いられる。
【0046】
樹脂粒子の含有量は、皮膜形成効果とジェットノズルからの吐出安定性とのバランスの観点から、オーバーコート液中、好ましくは0.1〜20重量%、更に好ましくは1〜10重量%である。
【0047】
オーバーコート液には、樹脂粒子以外に、必要に応じ、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の湿潤剤;アルコールやトリエチレングリコールモノブチルエーテル等の浸透剤;各種界面活性剤;その他の添加剤として、紫外線吸収剤、光安定剤、消光剤、酸化防止剤、耐水化剤、防黴剤、防腐剤、増粘剤、流動性改良剤、pH調整剤、消泡剤、抑泡剤、レベリング剤、帯電防止剤等を含有させることができる。
【0048】
オーバーコート液は、皮膜形成の促進、皮膜の表面強度、インクジェット方式により塗布する場合のジェットノズルからの吐出信頼性等の観点から、下記物性値が、それぞれ下記範囲にあることが好ましい。
・液温20℃における粘度;2〜5mPa・s
・表面張力;15〜40mN/m
・pH;7〜9.5
上記各物性値の調整は、各成分の含有量を調整したり、樹脂成分を適宜選択することにより行うことができる。
【0049】
上記後処理工程では、このような組成及び物性のオーバーコート液を、記録工程で顔料インクが打ち込まれた部分(印刷部分)に重ねて塗布する。印刷部分と非印刷部分(インクが打ち込まれていない部分)との間の面質差が問題となる場合は、非印刷部分も含めたラベル基材の全面に塗布する。オーバーコート液の塗布方法は、特に限定されず、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、サイズプレス等の公知の塗工装置を用いて塗布する方法や、スプレー、インクジェットヘッド、ジェットノズル等を用いてタック紙と非接触で塗布する方法等を採ることができる。特に、記録工程と同じ方式であるジェットノズル(インクジェットヘッド)を用いたインクジェット方式によるオーバーコート液の塗布は、塗布パターンや塗布量の融通性が高く、また、全工程の高速化が可能となるため好ましい。さらに、後処理工程の有無で印刷物の外観を変化させないためには、オーバーコート液の塗布量はなるべく少ないことが好ましいところ、インクジェット方式による塗布であれば、このような低塗布量のコントロールを容易に行うことができる。
【0050】
オーバーコート液の塗布量は、固形分換算で0.5〜2g/m2が好ましい。塗布量が0.5g/m2未満では耐擦性の向上の効果に乏しく、2g/m2超では樹脂皮膜の形成に時間がかかる、ブロッキングが発生する、不快なギラツキが発生し印刷物本来の風合いが損なわれる等の不都合が生じるおそれがある。但し、塗布量は上記範囲に限定される訳ではなく、例えば、より優れた耐擦性や高光沢感を求める場合などは2g/m2超の塗布量でよい。
【0051】
オーバーコート液の塗布後に行うタック紙の加熱乾燥は、塗布されたオーバーコート液の皮膜化を促進するための処理であり、赤外線式加熱装置や熱風加熱装置などの公知の加熱装置を用いて常法通り行うことができる。インクジェットプリンタの適当な箇所、例えば、排紙口付近などにこのような加熱装置を配置すれば、該インクジェットプリンタにタック紙を1回給紙する(1パス)だけで、全ての工程(記録工程及び後処理工程)を行うことが可能となり、高速印字が可能となる。
【0052】
加熱温度や加熱時間(ラインスピード)等の加熱条件は、いわゆるブリスター(火ぶくれ)を発生させずに皮膜形成が効率良く行えるように適宜設定される。ラベル基材の含水量が多く湿った状態にある場合は、これを高温で一気に加熱乾燥するとブリスターを生じ易いので、例えば、乾燥ゾーン1は風乾、乾燥ゾーン2は60℃熱風乾燥、乾燥ゾーン3は130℃熱風乾燥というように、多段乾燥で緩やかに乾燥することが好ましい。
【0053】
本発明のタック紙は、インクジェット記録方式により表面に印刷が施されるラベル基材、該ラベル基材の裏面に設けられた粘着剤層及び該粘着剤層を被覆する剥離紙を具備してなるタック紙において、上記ラベル基材に、上記表面に打ち込まれたインクジェット記録用の顔料インクを該表面にて凝集させる性質(顔料インク凝集能)を付与してあればよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記ラベル基材への顔料インク凝集能の付与方法は、上記実施形態に制限されるものではなく、要は、タック紙を構成するラベル基材が、前述したような顔料インク凝集能を有していればよい。
【0054】
また、図1に示す如き構成のタック紙において、ラベル基材2と粘着剤層3との間に、疎水性樹脂を主成分とするインク浸透防止層を設けることもできる。
また、粘着剤層3は、1種類の粘着剤から形成された単層構造としてもよいし、複数種の粘着剤を重ね塗りすることにより形成される多層構造としてもよい。また、剥離紙4として、各種の紙やフィルム上に、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、クレー、アルキッド樹脂等を含有する目止め層を設けた構成のものを用いてもよい。該目止め層の厚みは0.5〜50μm程度である。この場合、該目止め層上にシリコーン系離型剤などを塗布して離型処理面とし、該離型処理面と粘着剤層3とを対向させる。また、剥離紙4の裏面(粘着剤層3と対向していない面)側に、該目止め層を設けることにより、カール防止を図ることも可能である。
【0055】
【実施例】
以下に、本発明の実施例及び本発明の効果を示す試験例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、斯かる実施例により何等制限されるものではない。
【0056】
〔実施例1〕
下記組成の金属塩溶液を調整した。
【0057】
一般印刷用の(インクジェット適性の無い)キャストコート紙(「ミラーコートプラチナ」王子製紙製)の被記録面の全面に対して、インクジェットプリンタ(「EM930C」セイコーエプソン製)のシアンインクと上記金属塩溶液とを入れ替えたものを用いて、シアン100%となるベタパターンで、固形分換算で1.2g/m2の塗布量で上記金属塩溶液を打ち込んで、ラベル基材を作成した。
【0058】
また、厚み38μmのグラシン紙の片面に、厚み9μmのポリエチレンフィルムをラミネートした後、このラミネート表面にシリコーンを固形分換算で1.2g/m2の塗布量で塗布し、乾燥して、該ラミネート表面を離型処理面とし、剥離紙を作成した。
【0059】
次に、シリコーン系粘着剤(「TSR1510」東芝シリコーン製)を、上記剥離紙の離型処理面に乾燥後の塗布量が8g/m2となるように塗布し、乾燥させた。その後、該粘着剤の塗布面に、上記ラベル基材を、金属塩溶液を塗布されていない面を押し当てるように貼り合わせて、タック紙を製造した。このようにして得られたタック紙を、実施例1のサンプルとした。
【0060】
〔比較例1〕
実施例1において、ラベル基材として、金属塩溶液を塗布していない上記ミラーコートプラチナそのものを用いた以外は実施例1と同様にしてタック紙を製造し、これを比較例1のサンプルとした。
【0061】
〔比較例2〕
実施例1において、ラベル基材として、金属塩溶液を塗布していないインクジェット記録用紙(「GP201」キャノン製)を用いた以外は実施例1と同様にしてタック紙を製造し、これを比較例2のサンプルとした。
【0062】
〔比較例3〕
市販のインクジェット対応ラベル向けタック紙(「MIJ65K/P22/U5W」OKタック社製)をそのまま比較例3のサンプルとした。
【0063】
実施例1及び比較例1〜3の上記各サンプルについて、発色性及びカラーブリードを下記方法で評価した。それらの結果を下記表1に示す。
【0064】
〔発色性の評価方法〕
各サンプルのラベル基材の表面に対し、6色顔料インクジェットプリンタ(「MC2000」セイコーエプソン製)を用いて、各色の100%カラーパッチを印刷した。そして、CMYBkの各カラーパッチについて、グレタグマクベス社製のスペクトロリーノSPM−50を用い、視野角2°、光源D50、フィルター無しの条件で反射光学濃度(OD値)を測定し、下記評価基準により評価した。
(評価基準)
A:CMYBkの4色のOD値の合計が7.5を超える。発色性良好。
B:4色のOD値の合計が7.5〜6.0。実用上問題なし。
C:4色のOD値の合計が6.0未満(平均でOD値1.5未満)。実用に堪えない。
【0065】
〔カラーブリードの評価試験〕
上記各カラーパッチのイエロー領域とブラック領域とが隣接する部分(画質低下が最も判別し易い領域)をそれぞれ目視により観察し、それらの色境界での不均一な色混じりの程度を下記評価基準により評価した。
(評価基準)
A:色混じりの無い、良好な画像が得られた。
B:色混じりが僅かに生じた。実用上問題なし。
C:色の境界がはっきりしない程、色混じりが起こった。実用に堪えない。
【0066】
【表1】
【0067】
【発明の効果】
本発明のタック紙は、顔料インクを用いたインクジェット記録が可能で、比較的安価に製造することができ、発色性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のタック紙の一実施形態の断面模式図である。
【符号の説明】
1 タック紙
2 ラベル基材
3 粘着剤層
4 剥離紙
Claims (11)
- インクジェット記録方式により表面に印刷が施されるラベル基材、該ラベル基材の裏面に設けられた粘着剤層及び該粘着剤層を被覆する剥離紙を具備してなるタック紙において、
上記ラベル基材に、上記表面に打ち込まれたインクジェット記録用の顔料インクを該表面にて凝集させる性質を付与したことを特徴とするタック紙。 - 上記ラベル基材の表面に金属塩溶液を塗布したことを特徴とする請求項1記載のタック紙。
- 上記金属塩溶液が、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、臭化マグネシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化アルミニウム及び硝酸アルミニウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上の金属塩を含有することを特徴とする請求項2記載のタック紙。
- 上記金属塩溶液の塗布量が固形分換算で0.5〜5g/m2であることを特徴とする請求項2又は3記載のタック紙。
- 上記ラベル基材が、上質紙、アート紙、コート紙、意匠紙、和紙、不織布、合成紙の何れかであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のタック紙。
- 上記粘着剤層が、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤及びビニル系粘着剤からなる群から選ばれる1種又は2種以上から形成されることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のタック紙。
- 請求項1〜6の何れかに記載のタック紙を用いたインクジェット記録方法であって、該タック紙の表面に顔料インクによりインクジェット記録を行う記録工程と、該記録工程で該顔料インクが打ち込まれた該表面に、樹脂粒子を含有するオーバーコート液を塗布した後、該タック紙を加熱乾燥する後処理工程とを備えることを特徴とするインクジェット記録方法。
- 上記樹脂粒子が、エチレン、プロピレン、スチレン、スルホン化イソプレン、アクリル酸及びメタクリル酸並びにこれらの誘導体からなる群から選ばれる1種又は2種以上をモノマーとする重合体であることを特徴とする請求項7記載のインクジェット記録方法。
- 上記樹脂粒子の平均粒子径が10〜200nmであることを特徴とする請求項7又は8記載のインクジェット記録方法。
- 上記オーバーコート液の塗布がインクジェット方式により行われることを特徴とする請求項7〜9の何れかに記載のインクジェット記録方法。
- 上記オーバーコート液の塗布量が固形分換算で0.2〜5g/m2であることを特徴とする請求項7〜10の何れかに記載のインクジェット記録方法。
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2002
- 2002-06-20 JP JP2002180406A patent/JP2004017635A/ja not_active Withdrawn
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