JP2003512997A - シリコン誘導体から作られた層を備えた透明基材 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 本発明の主題は透明基材であって、特に硝子から作られ、その表面の少なくとも一つに、少なくとも部分的に酸化されたシリコン誘導体をベースとした層を備えており、これらのシリコン誘導体は二酸化シリコン、または酸素に関して化学量論的に不完全なシリコン酸化物、シリコンオキシ炭化物またはシリコンオキシ窒化物から選ばれたものであって、且つ本透明基材は親水特性を有する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】 本発明は、透明基材に対して薄い層、特に干渉作用を起す程度の厚さを有する
ような薄い層を付着させ、これら基材に特別の機能を与えることに関する。

【０００２】 本透明基材は、以下に詳述するグレージング、スクリーンまたは鏡等のタイプ
の種々の応用において、有機ポリマー、結晶化硝子または好ましくは硝子から作
ることができる。

【０００３】 硝子タイプの透明基材（または半透明基材）に関して再発する問題は、それら
が徐々に汚れて厄介な周期的な浄化を必要とすることである。もう一つの問題は
結露現象であり、この場合それは水蒸気との接触による好ましくない曇りを生じ
させ、また単なる曇りを超えて視野を妨げる水滴の形成を生ずる。

【０００４】 既に少なくとも部分的な解決法は提案されてきており、即ち、フルオロポリマ
ーをベースとする被覆は知られており、そのポリマーの高度の疎水性表面が水を
寄せ付けず、汚れの付着をより少なくしている。光触媒特性を有する被覆も知ら
れており、例えばアナターゼ型の結晶の酸化チタンを有する被覆は酸化によって
少なくとも有機汚染を分解するのに有効である。

【０００５】 これらの種々のタイプの被覆は有効であるが、併し比較的複雑である。更にそ
れらの何れも前述の問題の全てを最良に解決するとは限らない。即ち、疎水性被
覆は結露現象を防ぐものではないし、対照的に光触媒性被覆は紫外線放射に曝さ
れた時に真に有効であるに過ぎず、従って住居内よりも住居外でより多く使用す
ることができる。

【０００６】 従って本発明の目的は、使用が簡単で、硝子タイプまたは類似の基材の浄化を
容易にし、且つ、またはそれらの表面上への水蒸気の結露現象を軽減し、または
少なくとも結露が曇りまたは多くの水滴の出現をもたらすのを防止することがで
きる被覆を見出すことである。

【０００７】 本発明の主題は透明基材であって、これは特に硝子から作られ、少なくともそ
の表面の一つに、二酸化シリコン、シリコンオキシ炭化物またはシリコンオキシ
窒化物から選ばれた少なくとも部分的に酸化されたシリコン誘導体をベースとし
た層を備え、親水特性を有するものである。

【０００８】 本発明において、シリコン誘導体は、二酸化シリコンの場合はＳｉ及びＯ元素
のみから成り、オキシ窒化物の場合はＳｉ、Ｏ及びＮ元素のみから成り、オキシ
炭化物の場合はＳｉ、Ｏ及びＣ元素のみから成る。併しながら本発明のシリコン
誘導体はまた、シリコンと比べて少量の（重量で）、アルミニウム、亜鉛または
ジルコニウムのような少なくとも一つの金属を更に含む物質を有する。金属の添
加は三つの利点を有することができる。この添加は反応性スパッタリングによっ
てシリコンターゲットをドーピングすることに等しく、シリコンターゲットをよ
り導電性とし、これによって付着の速度を高め、または付着を促進する。更に付
着法がどうであっても（例えば熱分解法）、アルミニウムタイプの金属の添加は
物質の耐久性を増し、特に物質が炭素または窒素を殆どまたは全く含まない場合
に然りである。最後にこのタイプの金属の量を制御して層中に添加することによ
って、その屈折率を変化させることを可能とし、特にそれを増加させることを可
能とする（アルミニウム酸化物は約１．６５の屈折率を有し、一方亜鉛及びジル
コニウムの酸化物は約２の屈折率を有する）。

【０００９】 本発明において、シリコン誘導体もまたＳｉＯ_Ｘの化学式でｘが２より小さく
、酸素に関して化学量論的に不完全なシリコン酸化物を含む。

【００１０】 このように本発明は、このタイプの物質の新しい特徴、即ちその物質に予期し
ない特性を与える或る親水性を明らかにした。即ち、このタイプの層を与えられ
た基材、好ましくは硝子は、何も処理されてない硝子よりも遥かに容易に綺麗に
なる（硝子を布で浄化するための摩擦力がより少なく、汚れの殆どは水を振り掛
けることによって何の努力もなしに除去される）。更に汚れの割合が少なく、浄
化作業の頻度が減少し、この効果は硝子が外に在って周期的に雨に曝される場合
に一層顕著であることが観察された。即ち雨は硝子を流れ落ちることによって、
自然に汚れを運び去るのである。第三の予期しない効果は、このようにして被覆
された硝子の表面に何らかの水凝縮現象が在ったとしても、グレージングを通し
て視界を減少させることはなく、または視界を減少させることがあったとしても
ごく僅かであるということである。即ち、水は目に見えない透明で均一な液膜の
形で出現し、最早小滴の形では現れないようにみえる。

【００１１】 同じ改良は、本発明による層を載せた多層フイルムを備えた硝子を、多層フイ
ルム（例えば本発明の層とは化学的に異なる層、例えば金属酸化物または金属窒
化物の層で終る、太陽光制御または低輻射率機能、または光学的機能を有するフ
イルム）のみを与えられた硝子と比較する時に観察される。

【００１２】 これらの有利な効果は、化学的組成、表面外観及び選択された付着の方法を変
えることによって、調節または増加させることができる。

【００１３】 このようにして、前記の層は約１．４５の屈折率（純二酸化シリコンの場合）
、またはシリコン亜酸化物の場合或は前記誘導体が炭素または窒素を含む場合に
１．４５より大きい屈折率を有することができる。後者の場合、屈折率は１．４
５−１．８０、特に１．５０−１．７８または１．５５−１．６８に調節される
ことが有利である。「屈折率」なる用語は、本発明に関する限り、層が組成に関
して及び屈折率に関してその厚さを通して均一である場合には、その用語の通常
の意味でのその屈折率を意味するか、またはその層が厚さを通して変化する組成
または屈折率を有する場合には、その見かけの平均屈折率を意味するものと理解
されるべきである。実際本発明の一つの有利な実施態様は、屈折率が支持基材か
ら層の外部表面に向かって減少する層に関する。

【００１４】 低屈折率を選ぶ場合二つの利点がある。即ち、 一方において、これが基材である場合にはその屈折率は硝子の屈折率に近く、
これによって硝子が反射的外観を有することを防止する。

【００１５】 他方において、屈折率が多くなる程より高い価値につながり、炭素または窒素
含量が増すほど酸素の損失が増加し、そして層の親水性はその酸素含量の増加に
よって高められることになる。

【００１６】 層の親水性に影響を及ぼすことができるもう一つのパラメーターは、本発明の
或る実施態様において、標準の未処理の硝子の表面粗さよりも遥かに高いその表
面粗さである。

【００１７】 本発明による層は、このタイプの薄い層を付着させることができる任意のタイ
プの方法によって付着させることができる。即ち、その方法はスパッタリング、
特に磁場で高められたスパッタリング（例えばシリコンターゲットで始め、選択
的に硼素またはアルミニウムでドーピングされる）のような真空操作であること
ができる。高い親水性に都合のよいＳｉ−ＯＨ基を表面上に生成するのを助ける
ために、例えばＯ_２タイプの単に酸化するだけの化合物に加えて水素を含む化合
物を含む反応性雰囲気を使用すること及び、または水素と酸素の両方を含む化合
物を使用することが可能である。このようにして反応性雰囲気は、シリコン酸化
物が製造される時、Ｏ_２／Ｈ_２、Ｏ_２／Ｈ_２ＯまたはＨ_２Ｏ_２の混合物を含むこ
とができる。シリコンオキシ窒化物を付着させようとする時には、窒素及び、ま
たは水素の化合物として、例えばアミン、イミン、ヒドラジンまたはアンモニア
を含む反応性雰囲気を使用することが可能である。反応性スパッタリングによっ
て付着させられた二酸化シリコン（選択的に少量の金属または硼素によってドー
ピングされた）をベースとした層は、極めて可変性の屈折率を有することができ
る。このようにして選択された付着パラメーター、特にターゲットをスパッタリ
ングする時の圧力によって、層の屈折率（３８０−７８０ｎｍの平均値）は、極
めて緻密な層をもたらす１．４−１．５の領域に在ることが可能である。屈折率
はまたより低い値の約１．２５−１．４０、特に１．２８−１．３５、例えば凡
そ１．３０（±０．０５以内）を有することが可能である。それゆえこの場合層
は緻密度がより少なく、或る量の気孔率及び、または表面粗さを有し、これは層
の親水性に好都合である可能性がある。

【００１８】 好ましくは付着はゾル−ゲル法または熱分解法、特にＣＶＤ（化学気相堆積法
）によって行なうことができる。ゾル−ゲル法による付着の場合、ゾルはテトラ
エチルオルソシリケートＴＥＯＳをベースとした先駆物質を含むことができ、浸
漬、吹付け塗りまたは回転塗り、または他の流れ塗りといわれる付着方法のよう
な公知の技術によって付着される。このようにしてＣＶＤによる付着の場合には
、ＳｉＨ_４タイプのシランの形態のシリコン前駆物質を使用することができる。
シリコン先駆物質はまたＲＳｉＸ_３タイプのオルガノシロキサンであることがで
き、ここでＸは塩素タイプのハロゲンで、Ｒはアルキル（線状または分枝してい
て例えば１−１０またはそれよりも多い炭素原子を有する）。シリコン先駆物質
はＲ_ｙＳｉＸ_４−ｙタイプのオルガノシロキサンであることができ、ここでＲ及
びＸに関して同じ取り決めを有し、或はエトキシシランの系統に属する化合物で
あることができる。他の気体または先駆物質、例えばエチレンまたは窒素含有誘
導体、例えばアンモニアまたはアミン（特に第一アミン）をシリコン先駆物質に
加えることができる。酸化剤（Ｏ_２、Ｈ_２Ｏ、Ｈ_２Ｏ_２等）もまた存在可能であ
る。

【００１９】 層における或る量の表面粗さは層の前述の有益な効果に都合がよく、その粗さ
は特に層の付着を支配するパラメーター並びに層自体が付着する表面の実際の調
製によって制御することができることもまた認められてきた。

【００２０】 本発明による水と被覆との間の測定された接触角は３５度よりも小、または２
５度以下、例えば１５−２５度であることが都合がよい。即ちこれは実際に親水
性を示す（標準の未処理の硝子上の接触角が一般に４５度であるのと比較して）
。これは本発明の有益な効果をもたらす親水性の程度としては必ずしも非常に高
いものではなく、または控えめな親水性ですらあるが、併し未処理の硝子の親水
性よりは著しく大きく有効である。結露現象は必ずしも除去されてはいないが、
併し水滴の出現を防止する（実際に接触角が７度よりも小または１０度である場
合、結露がなお存在しても曇りは見えなくなる）。

【００２１】 或る実施態様によれば、特にＣＶＤによって付着した層の場合、接触角は１５
度より小であることができ、特に１０度より小であることさえ可能である。

【００２２】 本発明による層はその厚さを通して変化する化学組成を有することができる。
本層はその外部表面（即ち、支持基材から最も離れた表面）に向かって増加する
酸素濃度を持ち得ることが有利である。このようにして、基材に最も近い層面近
くでは殆ど純粋のＳｉまたはＳｉ_３Ｎ_４の層でさえあるほどより一層ＣまたはＮ
に富み、また層の外側表面近くではＣまたはＮにより富んだ化学組成を有する層
の最上部では殆ど純粋の（薄い）ＳｉＯ_２の層が形成されさえするほどＯにより
富んだシリコンオキシ炭化物またはオキシ窒化物層を持つことが可能である。こ
の酸素濃度勾配は付着条件の調節または付着後の表面酸化、例えば熱処理によっ
て得ることが可能である。

【００２３】 層の表面上の高い酸素濃度は、実際に表面上の高含量のヒドロキシル結合Ｓｉ
−Ｏ−Ｈをもたらし、表面を親水化するという意味で都合がよい。

【００２４】 本発明による層は好ましくは少なくとも５ｎｍの厚さ、特に５−１００ｎｍ、
例えば１０−６０ｎｍの厚さを有する。

【００２５】 本発明の層は、基材から最も離れた層であるフイルムの最後の層（または与え
られたフイルムに対する追加の層）であることにより、薄い複数の層から成るフ
イルムの一部を形成することができる。それは例えば反射防止膜（高屈折率の層
と低屈折率の層が交互に置かれたもので、例えばＴｉＯ_２／ＳｉＯ_２／ＴｉＯ_２ ／本発明による層で、ここでＴｉＯ_２はＮｂ_２Ｏ_５、Ｓｉ_３Ｎ_４、ＳｎＯ_２等で
置換が可能）であることができる。それはまた、選択的な下の層／ＴｉＮ／本発
明による層或はＴｉＯ_２または鉄コバルトとクロム酸化物との混合物をベースと
した太陽光制御層から成るタイプのフイルムのような、太陽光制御タイプのフイ
ルムであることができる。このようにして被覆したグレージングは夫々“Ｖｉｓ
ｉｏｎ−Ｌｉｔｅ”“Ｓｔａｒｅｌｉｏ”及び““Ａｎｔｅｌｉｏ”の名前でＳ
ａｉｎｔ−Ｇｏｂａｉｎ Ｇｌａｓｓ Ｆｒａｎｃｅによって販売されている。
それはまた低輻射率または太陽光制御機能を有する少なくとも一つの銀をベース
とした層から成る多層フイルム（このように被覆したグレージングは“Ｐｌａｎ
ｉｔｈｅｒｍ”の名前でＳａｉｎｔ−Ｇｏｂａｉｎ Ｇｌａｓｓ Ｆｒａｎｃｅ
によって販売されている）、または機能層が弗素をドーピングした錫酸化物であ
る低輻射率フイルム（このように被覆したグレージングは“ＥＫＯ”グレージン
グの名前でＳａｉｎｔ−Ｇｏｂａｉｎ Ｇｌａｓｓ Ｆｒａｎｃｅによって販売
されている）、またはその他機能層がスチールまたはＮｉ／Ｃｒ合金をベースと
した太陽光制御フイルム（このように被覆した透明板硝子は“Ｃｏｏｌ−Ｌｉｔ
ｅ”透明板硝子の名前でＳａｉｎｔ−Ｇｏｂａｉｎ Ｖｉｔｒａｇｅによって販
売されている）を含むことができる。更に詳細には、読者は特許ＥＰ−６３８
５２８、ＥＰ−７１８ ２５０、ＥＰ−５１１ ９０１、ＥＰ−７２８ ７１２
、ＷＯ９７／４３２２４、ＥＰ−６３８ ５２７及びＥＰ−５７３ ３２５を参
照することができる。

【００２６】 基材が硝子でできている場合、その層または複数層の付着の前または後に、基
材の彎曲及び、または強化またはアニールの加工を行なうことができる。

【００２７】 本発明の主題はまた、「結露防止」効果及び、または「汚れ防止」効果を有す
るグレージング及び、または浄化の容易なグレージングの製造に対する前述の基
材の応用である（本発明に関する限り、「結露防止」とは結露は有り得るが、併
しそれがグレージングを通しての視界に否定的な結果を全くまたは殆ど伴わない
ことを意味する）。本グレージングは、建築物用、乗物用、鏡用、及び特に浴室
鏡、バックミラー、シャワー室の硝子、硝子窓のあるドア及び内部の仕切り、都
会風家具、ディスプレーパネル及びテレビジョンのディスプレースクリーンまた
はコンピュータースクリーンタイプ用であることができる。

【００２８】 本発明を、制限を与えるものではない実施例と添付の図面の助けを借りて更に
詳細に説明する。

【００２９】 全ての実施例において、Ｓａｉｎｔ−Ｇｏｂａｉｎ Ｇｌａｓｓ Ｆｒａｎｃ
ｅによって販売されている“Ｐｌａｎｉｌｕｘ”タイプの透明なシリカ−ソーダ
−石灰の硝子上に、５０ｎｍのシリコンオキシ炭化物の層をＣＶＤ（例えば特許
ＥＰ−５１８ ７５５による）によって、ＳｉＨ_４、エチレン及び場合によって
は酸化性化合物をも含めて使用し、層が約１．５８から１．７５の屈折率を有す
るように先駆物質の量及び付着温度を変化させることによって付着させた。それ
は最も親水性であり且つ汚れの割合を減少することに関して最も有効な、最低の
屈折率を有するＳｉＯＣ層で被覆された硝子であることが確認された。これらの
硝子は、水との接触角が約１５度から３０度でそれほど低くはなかったが、極め
て著しい「結露防止」効果を有していた。その層は硝子の屈折率（屈折率１．５
２）に近い比較的低い屈折率を有しているので、硝子の外観をほんの少し変える
に過ぎないことが認められるべきである。本発明による他の実施例は、１５度ま
たは１０度より小さい接触角を有する。

【００３０】 熱分解法による付着被覆は、浮動流れ製造ラインで連続式に直接付着ができる
利点を有する。

【００３１】 得られた被覆は一般に極めて耐久性がある。実施例１−４ 下の表１は、実施例１，２，３及び４に対しての、このようにして得られた４
個のシリコンオキシ炭化物をベースとした層の屈折率ｎ、及び浄化後の水との接
触角の値（θ）、及び本層で被覆した硝子を摂氏３０度で９５％の相対湿度を有
する雰囲気内に１８時間貯蔵することから成る試験結果（“ＹＥＳ”は層上に目
に見える水の小滴が全く現れないという意味で「曇り防止」効果があることを意
味し、一方“ＮＯ”はそのような小滴が肉眼で見えることを意味する）を与える
。

【００３２】

【表１】

【００３３】 表面活性剤を使用した洗浄を、水道水で濯ぎ、脱イオン水を用いた最後の濯ぎに
よって完結させることにより、二つのステップで行ない、次いで窒素流中で乾燥
した。

【００３４】 このデータから、最も有益な層は１．７０より小さい最低の屈折率を有する層
であることが判るであらう。最も親水性で、最も酸素に富んでいるのもこれらの
層である。実施例５−７ これらはさきのようにして得られたＳｉＯＣの５０ｎｍ層を上に載せたＰｌａ
ｎｉｌｕｘ硝子から成る。下の表２は、これらの実施例に対してのそれらの屈折
率を与える（硝子は層の付着前にさきのように洗浄した）。

【００３５】

【表２】

【００３６】 図１−３は実施例５による層のＳＥＭ（走査電子顕微鏡）によって得られた写
真で、三つの異なる倍率を有する。大きさが極めて不規則で、極めて平坦な頂部
を持った、種々の小さなふくれのある著しい多孔性が存在することが認められよ
う。図３は最高の倍率で撮られたもので、基部が最大の寸法で６０−８０ｎｍか
ら１００−１１０ｎｍの範囲内にある「ふくれ」を示している。

【００３７】 それらは対比用の例である層の無いＰｌａｎｉｌｕｘ硝子からなる比較例８と
対比される。即ち、 実験室試験（“ｌａｂ ｔｅｓｔ”）により、それらは実施例１−４に関して
説明した雰囲気、即ち摂氏３０度で９５％の相対湿度中に１日、６日及び１４日
間貯蔵された。

【００３８】 工業用地での屋外暴露試験（“ｉｎｄｕｓｔｒｉａｌ ｓｉｔｅ ｔｅｓｔ”
）により、それらは摂氏３０度で９５％の相対湿度の雰囲気中に１日及び１０日
間貯蔵された。

【００３９】 結果（表１と同様に“ＹＥＳ”または“ＮＯ”として表示）は下の表３及び４
に与えられる。

【００４０】

【表３】

【００４１】

【表４】

【００４２】 これらの結果は、本発明による層は耐久力のある「曇り防止」効果を有するの
に対し、未処理の硝子ではこの効果がほんの極めて一時的であるに過ぎないこと
を示している。

【００４３】 もう一つの試験を実施例６、７及び比較例８について行なった。即ち、実施例
６及び７による層を与えられた硝子、並びに比較例８の未処理の硝子の曇り度を
、工業用地での１０日間の屋外貯蔵後に測定した（曇り度とは公知の方法でパー
セントとして表わした拡散光透過度である）。

【００４４】 結果は次のようである。即ち、実施例６及び７は１０日後に限られた曇り度（
１％より小）を有するのに対し、比較例８は１０日後に硝子上の汚れの生成によ
ってかなりの曇り度（少なくとも５％）を有していた。この試験は、本発明によ
る層の汚れ遅れ効果を確認するものである。実施例９ この実施例はＳａｉｎｔ−Ｇｏｂａｉｎ Ｇｌａｓｓ Ｆｒａｎｃｅによって
“Ａｎｔｅｌｉｏ ｃｌａｉｒ”の名前で販売されている太陽光制御硝子に関す
る。

【００４５】 これは公知の方法で液相熱分解法により付着された、約４５ｎｍの厚さのＦｅ
、Ｃｏ、Ｃｒの混合酸化物層を上に載せた、６ｍｍの厚さのＰｌａｎｉｌｕｘで
ある。

【００４６】 本発明により、前記の混合酸化物層上に、本発明による薄いＳｉＯ_２をベース
とした層がゾル−ゲル法により付着された。

【００４７】 ゾルは溶剤、即ち２−プロパノール、Ｈ_２Ｏ中の０．３ＮのＨＣｌ及びテトラ
エチルオルソシロケートＴＥＯＳから作られた。

【００４８】 層を付着させ従来の方法で硬化した。得られた層は２０ｎｍ以下の厚さ及び約
１．４５の屈折率を有していた。

【００４９】 硝子／Ｆｅ、Ｃｏ、Ｃｒの混合酸化物の構成のグレージングからまさに成る、
比較例１０と対比される測定により接触角の測定を行なった。

【００５０】 比較例９及び１０に連続して次の処理を行なった。即ち、 （ａ） 層の表面上に吸着された炭素含有物質を除去するための前記の洗浄、
オゾン処理及び紫外線処理。

【００５１】 （ｂ） ２日間の屋外放置。

【００５２】 （ｃ） １９日間の屋外放置。

【００５３】 （ｄ） 前記と同じ洗浄試験。

【００５４】 これらの処理の夫々の後で水との接触角を測定した。結果は下の表５のとおり
である。

【００５５】

【表５】

【００５６】 このデータから比較例１０では、接触角θは屋外で急速に増加すること、また
標準の洗浄操作では低接触角を回復するのに成功しないことが認められよう。他
方において実施例９は汚れの速さは遥かに遅く、その水との接触角は数週間後に
おいても比較的低く留まる。とりわけその汚れは標準の洗浄操作の後遥かに速く
落ちる。そのグレージングは容易に再び清浄になる。実施例１１ この実施例はシリコンと酸素だけをベースとする層の付着に関する（場合によ
っては他の元素を含むが、併し不純物としてだけであってその量は無視し得るも
のである）。実施例１−４の場合におけると同様に、ＳｉＨ_４及び酸化性化合物
を使用するがエチレンは使用せずに、ＣＶＤによって層が“Ｐｌａｎｉｌｕｘ”
硝子に付着させられる。１．５０の屈折率を有する５０ｎｍのシリコン酸化物層
が得られた。実施例１−４の場合におけるのと同様にして測定された水との接触
角は低く１０度より小さかった（約７度）。その層は実施例１及び２の層と同様
の曇り防止効果を有していた。

【図面の簡単な説明】

【図１】 実施例の一つによる層の表面の走査電子顕微鏡検査によって得られた写真（倍
率：×５００００）。

【図２】 実施例の一つによる層の表面の走査電子顕微鏡検査によって得られた写真（倍
率：×１０００００）。

【図３】 実施例の一つによる層の表面の走査電子顕微鏡検査によって得られた写真（倍
率：×３０００００）。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 ＥＰ(ＡＴ，ＢＥ，ＣＨ，ＣＹ， ＤＥ，ＤＫ，ＥＳ，ＦＩ，ＦＲ，ＧＢ，ＧＲ，ＩＥ，Ｉ Ｔ，ＬＵ，ＭＣ，ＮＬ，ＰＴ，ＳＥ)，ＯＡ(ＢＦ，ＢＪ ，ＣＦ，ＣＧ，ＣＩ，ＣＭ，ＧＡ，ＧＮ，ＧＷ，ＭＬ， ＭＲ，ＮＥ，ＳＮ，ＴＤ，ＴＧ)，ＡＰ(ＧＨ，ＧＭ，Ｋ Ｅ，ＬＳ，ＭＷ，ＭＺ，ＳＤ，ＳＬ，ＳＺ，ＴＺ，ＵＧ ，ＺＷ)，ＥＡ(ＡＭ，ＡＺ，ＢＹ，ＫＧ，ＫＺ，ＭＤ， ＲＵ，ＴＪ，ＴＭ)，ＡＥ，ＡＧ，ＡＬ，ＡＭ，ＡＴ， ＡＵ，ＡＺ，ＢＡ，ＢＢ，ＢＧ，ＢＲ，ＢＹ，ＢＺ，Ｃ Ａ，ＣＨ，ＣＮ，ＣＲ，ＣＵ，ＣＺ，ＤＥ，ＤＫ，ＤＭ ，ＤＺ，ＥＥ，ＥＳ，ＦＩ，ＧＢ，ＧＤ，ＧＥ，ＧＨ， ＧＭ，ＨＲ，ＨＵ，ＩＤ，ＩＬ，ＩＮ，ＩＳ，ＪＰ，Ｋ Ｅ，ＫＧ，ＫＰ，ＫＲ，ＫＺ，ＬＣ，ＬＫ，ＬＲ，ＬＳ ，ＬＴ，ＬＵ，ＬＶ，ＭＡ，ＭＤ，ＭＧ，ＭＫ，ＭＮ， ＭＷ，ＭＸ，ＭＺ，ＮＯ，ＮＺ，ＰＬ，ＰＴ，ＲＯ，Ｒ Ｕ，ＳＤ，ＳＥ，ＳＧ，ＳＩ，ＳＫ，ＳＬ，ＴＪ，ＴＭ ，ＴＲ，ＴＴ，ＴＺ，ＵＡ，ＵＧ，ＵＳ，ＵＺ，ＶＮ， ＹＵ，ＺＡ，ＺＷ (72)発明者 アゾッパルディ，マリー−ジョゼ フランス国，エフ−94300 バンセンヌ， ブールバール ドゥ ラ リベラシオン， 52 (72)発明者 デュランドー，アンヌ フランス国，エフ−75009 パリ，リュ ペトレル，28 Ｆターム(参考） 4G059 AA01 AC21 AC22 EA05 EA11 EA12 EB01 EB07

Claims (12)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 特に硝子から作られた透明基材であって、その表面の少なく
   とも一つに、少なくとも部分的に酸化されたシリコン誘導体を備え、該シリコン
   誘導体が、二酸化シリコンまたは酸素に関して化学量論的に不完全であるシリコ
   ン酸化物、シリコンオキシ炭化物またはシリコンオキシ窒化物から選ばれたもの
   であり、且つ親水特性を有する透明基材。
2. 【請求項２】 シリコン誘導体をベースとした層の屈折率が１．４５−１．
   ８０、特に１．５０−１．７５、好ましくは１．５５−１．６８であることを特
   徴とする、請求項１に記載の基材。
3. 【請求項３】 前記の層がゾル−ゲル法または熱分解法、特に化学気相堆積
   法ＣＶＤによる付着層であることを特徴とする、請求項１及び２の何れかに記載
   の基材。
4. 【請求項４】 前記の層は、外部表面が粗面であることを特徴とする、請求
   項１−３の一つに記載の基材。
5. 【請求項５】 前記の層の表面と水との間の接触角が３５度よりも小、特に
   ３０度以下、例えば１５−２５度または１０度以下であることを特徴とする、請
   求項１−４の一つに記載の基材。
6. 【請求項６】 前記の層が外側表面に向かって増加する酸素濃度を有するこ
   とを特徴とする、請求項１−５の一つに記載の基材。
7. 【請求項７】 前記の層は外部表面に高含量のヒドロキシル結合Ｓｉ−ＯＨ
   を有することを特徴とする、請求項１−６の一つに記載の基材。
8. 【請求項８】 前記の層が少なくとも５ｎｍ、特に１０−６０ｎｍの厚さを
   有することを特徴とする、請求項１−７の一つに記載の基材。
9. 【請求項９】 前記の層が複数の薄い層から成るフイルム、特に反射防止フ
   イルム、太陽光制御フイルムまたは低輻射率フイルムの最後の層であることを特
   徴とする、請求項１−８の一つに記載の基材。
10. 【請求項１０】 前記の層の付着の前または後に、彎曲加工及び、または強
    化加工またはアニール処理されたことを特徴とする、請求項１−９の一つに記載
    の硝子基材。
11. 【請求項１１】 シリコン誘導体もまたシリコンに関して少量の、少なくと
    も一つの添加物、特にアルミニウム、亜鉛またはジルコニウムのような金属を含
    むことを特徴とする、請求項１−１０の一つに記載の硝子基材。
12. 【請求項１２】 「結露防止」及び、または「曇り防止」効果を有し、且つ
    、または「汚れ防止」効果を有し、且つ、または浄化が容易であるグレージング
    、特に建築物用、乗物用、鏡、特に浴室鏡またはバックミラー用のグレージング
    、シャワー室、硝子窓のあるドア及び内部の仕切り用の硝子、都会風家具、ディ
    スプレーパネル及びディスプレースクリーン等の製造に対する前記の基材の応用
    。