JP4034952B2 - プラスチック表面処理法、プラスチック窓、該窓を形成可能なプラスチック板およびその製造方法。 - Google Patents
プラスチック表面処理法、プラスチック窓、該窓を形成可能なプラスチック板およびその製造方法。 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、元来硬さが柔かいことからその応用が制限されているプラスチック基材に対し、表面に無機複合材料をコートすることによって、ガラス並の硬さを与え従来不可能であった用途にも耐えられるような素材に改良する表面処理法、このようなプラスチックの用途に関する。
【0002】
また本発明における無機複合膜は、親媒性を有し親水性の他に界面活性剤をその表面に吸着残留され、これが水滴を吸収することによって、プラスチック表面に曇りが生じにくいプラスチック窓、このようなプラスチック窓を形成するプラスチック板およびこのプラスチック板を形成するための表面処理方法に関する。
【0003】
【従来の技術】
プラスチックの表面硬化としては、ポリカーボネートやアクリル基材の表面に多官能アクリル系ハードコート材を直接コートしたもの及びシラノール基同士の脱水縮合反応によりシロキサン結合を形成し、これを硬化皮膜とするシリコーン系ハードコートが一般的である。特にアクリルは、ポリカーボネートに比べ熱に弱く約60℃付近を超えると軟化を開始し、基材に変形が生じてしまう。
【0004】
したがって、ポリカーボネートのように120℃でのシリコンハードコート処理を施すことは出来ず、硬度の上で多官能アクリル系ハードコートは施せてもポリカーボネートのハードコート品ほど硬度を高めることはできなかった。しかもシリコンハードコートが可能でもコスト高といった欠点を克服することは難しい。
【0005】
またメガネ用途では、未処理のプラスチックレンズ基材に、ディップ法によってハードコート材をコートし、焼成処理(120℃)をしたもの(シリコーン系ハードコート)も用いられているが、一般にはシリカ、ジルコニア及びチタニアの各層を真空蒸着法によって多層積層し、反射率を低減化したものがコート材として用いられるため、一般に膜硬度は高い。
【0006】
しかし、このような多層膜を一般のプラスチック製品に用いることはこれらを大面積にコートすること自体技術的困難があるのと、コスト高であることの理由から一般に用いられることは稀である。
そこで、このような多層膜にすることなく、低コストで表面硬化が可能であれば、プラスチックの用途は、大幅に拡大することが予想される。
【0007】
まず考えられる第一の候補は、窓材料である。例えばカーポートやアーケードの天井は、透明なポリカーボネートが使用されるが、風に乗って運ばれる砂粒に表面が晒され、無数の傷が生じ外観が著しく損なわれる。またこれらを清掃する際も表面に傷を生じさせないような細心の注意を要し困難を伴う。
また高速道路の防音壁への応用や一般建築窓材でもこのような類似の問題が避けられない。
【0008】
更には一般の家電製品に使用されるプラスチック窓は、オーディオ機器の透過パネル等に多く使用されるが、これは埃が表面に付着すると拭き取る際に表面に傷が生じ易く問題がある。
一方、表面硬化機能の他に、曇り防止のため光触媒酸化チタンをコートしたプラスチック窓がある。これは光触媒酸化チタンの超親水性効果を使った防曇法である。しかし光触媒活性は、長期の使用ではプラスチック基材自体を分解するため、基材と酸化チタンの接触部分に劣化が生じ剥離等の問題を生じる。そこで一般には、これらの機能を封止するため下地にシリカ膜を設け、光触媒効果がプラスチックに影響しないような処置がとられている。しかしこのようなシリカ膜のコート(シリコーン系ハードコート)は、高価であることから普及していない。またシリコーンハードコートの工程では、120℃の加熱処理が必要であるため、アクリルのような熱に弱い基材に対しては、有効なコート処理とはならない。
【0009】
さらに単にシリコーン系界面活性剤等をプラスチック表面に塗布しただけの防曇材料もあるが、単純塗布であるためその保持性が弱く、長期の安定した機能発現には乏しい。
【0010】
【発明の目的】
本発明は、表面硬度に優れ、また防曇効果を発現するプラスチック表面処理、この表面処理を施したプラスチック板及びこれらの製造方法を提供することを目的としている。
また本発明は、防曇性に優れたプラスチック窓、この窓を形成するプラスチック板およびこれらの製造方法を提供することを目的としている。
【0011】
【発明の概要】
本発明のプラスチック表面処理技術によるプラスチックは、従来品のハードコート処理を施されたポリカーボネートやアクリル製品よりも、更に高い硬度及び耐久性を有する。
また本発明のプラスチック表面は、親水性の他に界面活性剤分子をその表面に吸着残留させる親媒性を有し、この界面活性剤が水滴を吸収することによって表面を曇りにくくする機能を有している。
【0012】
本発明のプラスチックの表面処理法は、ハードコート処理を施した基材プラスチックの表面に、無機硬質層をプラスチック基材に付着析出する前に、当該ハードコートプラスチック基材の表面を、NaOH或いはKOHを2〜10モル/リットルの濃度で含有する強アルカリ水溶液中で20〜100℃、1〜60分処理するか、プラズマ表面照射処理し、次いで、少なくとも一種類の化合物からなる無機複合材料を、単一層或いは複数層膜付けして無機硬質層を形成することを特徴としている。具体的に示すと、本発明の表面処理方法では、従来のハードコートを施した膜上に珪素、チタン及びジルコニウムの単純酸化物及び複合酸化物からなる複合体膜を水溶液法によってコートし、更にこれらの硬度及び耐久性を高める処理技術で、特にアクリル系ハードコート及びシリコーン系ハードコートを施したアクリル或いはポリカーボネート等のプラスチック基材を、まずNaOHやKOHの水溶液中で一定時間アルカリ処理(7mol/リットルの濃度で60℃、20分)し、これを水洗したものをヘキサフルオロチタン酸塩(例えば(NH4)2TiF6)、ヘキサフルオロ珪酸塩(例えば(NH4)2SiF6)及びヘキサフルオロジルコニウム酸塩(例えば(NH4)2ZrF6)よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の錯塩とを含有するヘキサフルオロ金属錯塩の水溶液にフッ素捕捉剤を添加して作成した処理液中、例えば40℃で6時間浸漬する。
【0013】
このようにして一定時間浸漬保持後、処理液中から出した基材を水洗し、更に低温例えば60℃以下で乾燥加熱処理する。このときの処理時間は、通常30〜90分程度である。
このようにして作成した表面処理アクリル板は、従来のいかなるハードコートアクリル板よりも、硬度及び耐久性において優れている。表面状態及び光透過性において、本来のアクリル板と比較し全く遜色がない。
【0014】
一方当該表面処理アクリル板は、表面に酸化チタンを含有する硬質無機膜を有し、その表面に界面活性剤分子を吸着残存させる親媒性を有するため、空気中の蒸気圧が高くなっても、表面に付着した水滴が界面活性剤に吸収され、水膜状に変化するため曇りを生ずることがない。
さらに、本発明の表面処理法は、無機複合材料が、珪素、ジルコニウム及びチタン或いは珪素及びジルコニウムの単純酸化物或いは複合酸化物を含有することが好ましい。
【0015】
また、本発明の表面処理法では、無機硬質層は、チタン原子に対するジルコニア原子の原子比が99.9:0.1〜70:30の範囲内にあり、珪素原子に対するチタン原子及びジルコニウム原子の原子比が99.9:0.1〜40:60の範囲内になるような原子比を有するようにすることが好ましい。
本発明の表面処理法によって形成される無機複合材料層の厚さは、10-3〜0.5μmの範囲内であることが好ましい。
【0016】
また、本発明よって形成される無機複合材料層は、LPD法或いは真空蒸着法によって、当該プラスチック基材表面に付着析出させることが好ましい。
さらに本発明の表面処理法を実施するに際して、無機複合材料をプラスチック基材に付着析出する前に、当該ハードコートプラスチック基材の表面を、NaOH或いはKOHを2〜10モル/リットルの濃度で含有する強アルカリ水溶液中で20〜100℃、1〜60分処理するか、プラズマ表面照射処理することが好ましい。
【0017】
このようにして形成された無機硬質層は、プラスチック基材の表面に付着析出後に、20〜140℃で15〜360分加熱処理することにより形成される。
上記のようにして形成された無機硬質層のモース硬度は5〜9の範囲内にあることが好ましい。
さらに、本発明のプラスチック窓は、光透過性プラスチック板と該光透過性プラスチック板の周縁部に配置された枠体とを有するプラスチック窓であり、該光透過性プラスチック板は、その少なくとも一方の表面に、チタンの単純酸化物あるいはチタンを含む金属の複合酸化物からなり20〜140℃に15〜360分間加熱された熱履歴を有する無機硬質層を有し、かつ該無機硬質層に、チタン酸化物の光触媒活性を抑制する光触媒抑制成分が含有されていることを特徴としている。
【0018】
また、本発明は、枠体に挿嵌されることにより光透過性のプラスチック窓を形成可能な光透過性プラスチック板であって、該光透過性プラスチック板は、プラスチック基板と、プラスチック基板の少なくとも一方の表面にチタンの単純酸化物あるいはチタンを含む金属の複合酸化物からなる無機硬質層とを有し、無機硬質層が、チタンの単純酸化物あるいはチタンを含む金属の複合酸化物が20〜140℃の範囲内に15〜360分間加熱された熱履歴を有するとともに、該無機硬質層に、チタン酸化物の光触媒活性を抑制する光触媒抑制成分が含有されていることを特徴とするプラスチック窓形成可能な光透過性プラスチック板にある。
【0019】
また、本発明のプラスチック窓形成可能な光透過性プラスチック板は、枠体に挿嵌されることにより光透過性のプラスチック窓を形成可能な光透過性プラスチック板を形成する方法であって、光透過性プラスチック板は、プラスチック基板と該プラスチック基板の少なくとも一方の表面にチタンの単純酸化物あるいはチタンを含む金属の複合酸化物からなる無機硬質層が形成されており、該無機硬質層が、ヘキサフルオロチタン酸塩と、ヘキサフルオロ珪酸塩およびヘキサフルオロジルコニウム酸塩よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の塩とを含有するヘキサフルオロ金属塩の水性媒体溶液にフッ素捕捉剤を添加して、該水性媒体溶液中に含有される金属を単独酸化物あるいは複合酸化物としてプラスチック基板表面に析出させた後、該析出した単純酸化物あるいは複合酸化物を20〜140℃の範囲内の温度に15〜360分間加熱することにより形成することを特徴するプラスチック窓を形成可能な光透過性プラスチック板の製造方法により形成することができ、本発明のプラスチック窓は、この光透過性プラスチック板を枠体に挿嵌することにより製造することができる。
【0020】
そして、本発明のプラスチック窓で使用される光透過性プラスチック板は、その表面に特定の金属酸化物からなる非常に高い親水性を有しており、水がこの光透過性プラスチック板の表面に滴状の形態で存在することができず、非常に薄い水膜となってしまう。従って、本発明の窓を構成する光透過性プラスチック板の表面には水は水滴の形態では存在できないので、この光透過性プラスチック板は非常に曇りにくく、このプラスチック板自体が非常に優れた防曇性を有する。
【0021】
【発明の具体的説明】
次に本発明のプラスチック表面処理法、プラスチック窓、枠体に嵌め込むことによってプラスチック窓を形成可能なプラスチック板および、これらを製造する方法について具体的に説明する。
以下、本発明のプラスチック表面処理法をプラスチック窓の説明に沿って説明する。
【0022】
図1に示すように、本発明のプラスチック窓10は、枠体12と周囲にこの枠体12が配置された光透過性プラスチック板14とを有する。図1には本発明のプラスチック窓の例としてゴーグルが示されており、従って、この枠体12の外横壁には、このゴーグルを着用するためのストラップ17を固定するための係合具18,18が備え付けられている。
【0023】
本発明のプラスチック窓が、上記のようなゴーグルのように曲面から形成されている顔面に密着する必要がある場合には、枠体12は、可撓性を有しており、硬質でない合成樹脂などで形成することができる。また、建築物の窓のように窓を配置する構造物が硬質である場合には、枠体12は硬質な素材で形成されていてもよく、例えばアルミニウムなどの金属、ABS樹脂のような硬質な樹脂、木材などの硬質部材で形成することができる。さらに、この枠体12は、光透過性プラスチック板14の全周を覆っている必要はなく、この光透過性プラスチック板14が窓として機能するように、枠体を介して基体に固定可能にされていればよく、例えばゴーグルのような場合、枠体とストラップとを一体化して弾性樹脂などを用いて、光透過性プラスチック板の1辺(一部)と接合しいてもよい。
【0024】
このような枠体14に挿嵌されている光透過性プラスチック板14は、図2および図3に示すように、透明性の高いプラスチック基板20と、このプラスチック基板20の表面に形成された無機硬質層22とを有する。
プラスチック基板20は、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、アクリル、メタクリルなどの光透過性の高い合成樹脂から形成されている。このプラスチック基板20の有する光透過率は、400〜700nmの可視光線の透過率が、通常は70〜95%、好ましくは80〜99%の範囲内にある。従って、このプラスチック基板20は、上記のような樹脂に、上記のような透過率の範囲内で染料、顔料などを含有していてもよく、さらに、例えばゴーグルとして使用する場合には、紫外線吸収剤など、可視光以外の光線の遮光剤などが配合されていてもよい。
【0025】
このようなプラスチック基板20の厚さは、本発明のプラスチック窓の用途によって適宜設定することができるが、通常は、0.5〜10mm、好ましくは1〜5mmの範囲内にある。
上記のようなプラスチック基板の表面に、チタンの単純酸化物あるいはチタンを含む金属の複合酸化物を一部含有する無機硬質層22が形成されている。この無機硬質層22は、光透過性プラスチック板の最外層を形成している。
【0026】
この無機硬質層22は、チタンの単純酸化物あるいはチタンと他の金属との複合酸化物からなる。ここで他の金属の例としては、シリカ、ジルコニウムを挙げることができる。すなわち、チタン酸化物は、それが結晶相のアナターゼであれば、光触媒活性を有しており、このチタン酸化物の有する光触媒活性を利用することにより、表面に付着した水分の表面張力を低下させることができるが、プラスチック窓のようにこの窓を通過した光を肉眼で認識することが予定されている用途においては、チタン酸化物の光触媒活性を発現させるのに充分な光をプラスチック窓に照射し続けるのはプラスチックの劣化につながり必ずしも好ましいこととはいえない。従って、このような光触媒活性を抑制する必要がある。
【0027】
このような無機硬質層には、Siと、このSiのほかに、Ti、Zrよりなる群から選ばれる少なくとも一種類の金属を含有すると共に、F、N、B、HおよびOよりなる群から選ばれる少なくとも一種類の原子を含有することが好ましい。特に本発明では、この無機硬質層がSi、Ti、Zrを含有していることが好ましい。この場合にSi:Zr:Tiは、原子%比で、通常は20:1:10〜2000:10:1、好ましくは200:1:10〜200:10:1の範囲内の量になるようにすることが望ましい。
【0028】
特に、少量のTiおよび/またはZrを含有することにより、Siを含有する無機硬質層の接着強度が高くなる。
これに対し、TiやZrの含有量がSiに対して多いと、無機硬質層の屈折率の上昇を招き、また特にTiが多すぎると無機硬質層の耐擦傷性が著しく低下する。従って、Siに対するTiあるいはZrの含有率は、このプラスチック窓に応用する場合に制限を受けることがある。特にTiとZrとの原子比(Ti/Zr)を、通常は99.9/0.1〜70/30、好ましくは99.9/0.1〜85/15の範囲内にすることにより、より強度の高い無機硬質層を形成することができる。また、この無機硬質層におけるSiと(Ti+Zr)との原子比(Si/(Ti+Zr))は、通常は、99.9/0.1〜40/60、好ましくは99.9/0.1〜45/55、特に好ましくは95/5〜50/50の範囲内にすることにより、強度が著しく高く、親水性に著しく優れた無機硬質層を形成することができる。この親水性は無機硬質層の表面形状や組織とも密接な関連がある。また、このように少量のTiおよびZrは、この無機硬質層の下部にある層あるいはプラスチック板中の酸素原子と何らかの形態の強固な結合(例えば、化学的結合、物理化学的結合、物理的結合など)を形成しているものと推定される。このTiおよびZrと酸素原子との結合力は、Siと酸素原子との結合力よりも著しく高いので、微量のTiおよびZrが無機硬質層中に存在することにより、この無機硬質層の下層に対する接合強度が著しく向上するとともに、このTiおよびZrを含有する無機硬質層の親水性は、Siのみを含有する層より高く、適度の親水性を有する。
【0029】
また、このような無機硬質層は、前述のように均一層を形成していることは稀で、通常は複数種の化合物がそれぞれ部分的に析出した構成を有することから、その平均厚さを求めることは必ずしも容易ではないが、析出した化合物とこの化合物の析出面積から算定した無機硬質層の平均厚さは、通常は10-3〜0.5μm、好ましくは10Å〜0.5μm、さらに好ましくは500Å〜0.3μmの範囲内にあることが望ましい。このような厚さで無機硬質層を形成することにより、プラスチック板の透明性に悪影響を及ぼすことなく、良好な親水性を示す無機硬質層を形成することができる。また、上記範囲内の平均厚さの無機硬質層は、耐久性にも優れており、プラスチック窓であるゴーグルを例にして示すと、このゴーグルを少なくとも2年間程度水洗により清浄化を繰り返して使用しても、その親水性が損なわれることがない。即ち、実験の結果、少なくとも2年はこの無機硬質層は形成当初と同等の状態で維持することができる。
【0030】
本発明のプラスチック窓において、上記の無機硬質層22は、界面活性剤を含浸可能に形成されていることが好ましい。すなわち、この無機硬質層22は、チタンの単純酸化物あるいはチタンを含む金属の複合酸化物が含有されており、一般にこのようなチタン酸化物あるいはチタン複合酸化物は光触媒活性を有しているために、通常の場合、このような光触媒活性を有する層に界面活性剤を塗布すると、界面活性剤はこのチタン酸化物の有する光触媒活性により比較的短時間で界面活性剤としての機能が喪失する。ここで酸化チタンの光触媒活性とは、酸化チタンが、太陽光や照明灯などの光によって、その化合物表面が活性化されて、接触する物質に作用を及ぼす触媒活性である。従って、上記のように酸化チタンあるいはチタンを含む複合酸化物を含有する無機硬質層22の表面に親水性を向上させるために界面活性剤を塗布して薄膜を形成しても、チタン酸化物の有する光触媒活性によりこの界面活性剤は比較的短時間で界面活性剤として機能しなくなる。そこで、本発明では無機硬質層22に含有されるチタン酸化物あるいはチタンを含有する複合酸化物の光触媒作用を抑制して界面活性剤が長期間安定に含浸できるように光触媒活性の抑制剤を含有させている。
【0031】
このチタン酸化物あるいはチタンを含有する複合酸化物の光触媒活性は、この無機硬質層に少量のジルコニウムの酸化物を含有させることにより抑制することができる。すなわち、上述したような量でジルコニウムの酸化物を含有する無機硬質層におけるチタン酸化物あるいはチタンを含有する複合酸化物の有する光触媒活性は、界面活性剤の機能が喪失するほどには高くなく、この光触媒活性が抑制されることにより、無機硬質層には界面活性剤が長期間に安定に含浸される。
【0032】
本発明において、無機硬質層に含浸される界面活性剤に特に制限はなく、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、および非イオン性界面活性剤のいずれでもよい。具体的には、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、脂肪酸メチルグルカミド、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、アルキルアミンオキシド、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びシリコーン系界面活性剤などが挙げられる。このような界面活性剤は、無機硬質層中に20重量%以上の量で、好ましくは30重量%以上の量で含浸されていることが望ましい。また塗布量は、直径80mmのプラスチック板に対して10-2〜200mg、好ましくは10-1〜50mgの範囲内に設定される。
【0033】
この界面活性剤は、無機硬質層を形成させた後、水洗する際に水の中に界面活性剤を混在させることにより含浸させても良いし、この無機硬質層に直接塗布し、塗布後拭き取って薄く延ばすことにより含浸させても良い。最後に残る界面活性剤の曇りは、例えば息を吹きかけるだけで透明均一化できる。これは無機硬質層に含有される抑制されたチタン酸化物あるいはチタンを含有する複合酸化物に起因する親水性と、この無機硬質層に含浸される界面活性剤とが共同して本発明のプラスチック窓の表面における親水性が著しく高くなり、本発明のプラスチック窓の表面に水が水滴の状態で存在できないからである。従って、本発明のプラスチック窓では、表面に水滴が付着することに伴う窓の曇りが発生しにくく、非常に優れた防曇性を有している。
【0034】
本発明において、無機硬質層は、LPD法(水溶液析出物法)により水性媒体中にSiと、Ti、Zrよりなる群から選ばれる金属を含有する化合物を溶解させた後、この水溶液中に処理しようとするプラスチック板を浸漬してこのプラスチック板表面に上記金属を含有する化合物を析出させることにより形成した後、所定の温度に加熱することにより形成することができる。
【0035】
ここで使用する水性媒体は、通常は水であるが、水性媒体の特性を損なわない範囲内でアルコールなど有機溶媒が混合されていてもよい。
また、上記金属を含有する化合物の例としてはヘキサフルオロ金属酸塩を挙げることができ、特にヘキサフルオロ金属のアンモニウム塩を用いることが好ましい。具体的には、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム((NH4)2SiF6:6フッ化ケイ素酸アンモニウム)、ヘキサフルオロチタン酸アンモニウム((NH4)2TiF6:6フッ化チタンアンモニウム)およびヘキサフルオロジルコニウム酸アンモニウム((NH4)2ZrF6:6フッ化ジルコニウムアンモニウム)を挙げることができる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。なお、本発明では、上記のようなヘキサフルオロ金属のアンモニウム塩を使用することが好ましいが、このようなヘキサフルオロ金属のアンモニウム塩中に、例えば、ヘキサフルオロスズ酸アンモニウム((NH4)2SnF6)、ヘキサフルオロ鉄酸アンモニウム((NH4)2FeF6)、ヘキサフルオロ亜鉛酸アンモニウム((NH4)2ZnF6)、ヘキサフルオロストロンチウム酸アンモニウム((NH4)2SrF6)、ヘキサフルオロタングステン酸アンモニウム((NH4)2WF6)、および、ヘキサフルオロビスマス酸アンモニウム((NH4)2BiF6)などの他のヘキサフルオロ金属酸塩が含有されていてもよい。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0036】
また、上記の例示した化合物は、アンモニウム塩の例であるが、Li、K、Naなどのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などであってもよい。
特に本発明では、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム((NH4)2SiF6)、ヘキサフルオロジルコニウム酸アンモニウム((NH4)2ZrF6)、ヘキサフルオロチタン酸アンモニウム((NH4)2TiF6)を使用することが好ましい。このようにケイ素含有化合物とチタン含有化合物とを組み合わせて使用する場合には、前述したように、無機硬質層(親媒性部)におけるSi:Zr:Tiの原子%との比が、通常は20:1:10〜2000:10:1、好ましくは200:1:10〜200:10:1の範囲内の量になるように上記化合物を使用することが望ましい。
【0037】
さらに詳述すると、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウムと、ヘキサフルオロジルコニウム酸アンモニウムと、ヘキサフルオロチタン酸アンモニウムとを、ヘキサフルオロ金属塩中に含有される金属原子比で表わすと、ケイ素原子とチタン原子とを通常は99.9:0.1〜60:40、好ましくは99.9:0.1〜80:20の範囲で、チタン原子とジルコニウム原子とを通常は99.9:0.1〜90:10、好ましくは99.9:0.1〜95:5、特に好ましくは99.9:0.1〜97:3の範囲で、ケイ素とジルコニウムとを通常は99.9:0.1〜90:10、好ましくは99.9:0.1〜95:5の範囲内になるような量で使用することが望ましい。
【0038】
一般にヘキサフルオロ金属酸塩化合物を溶解させた水溶液に、フッ素捕捉剤として、例えば、酸化ホウ素等を添加すると、ホウ素とヘキサフルオロ金属酸塩化合物中のフッ素とが結びつき安定なフッ化ホウ素イオンを形成するため、ヘキサフルオロ金属酸塩化合物を形成していた金属が活性な状態でプラスチック板(基材)の表面に析出する。
【0039】
このような方法によって基材に金属化合物薄膜を形成する方法は、前述したように一般にLPD法と呼ばれている。この方法により、従来、シリカ膜、酸化チタン膜あるいはジルコニア膜などの単体膜の形成に利用されている。但し、これらは連続膜となる(層状の析出する)こともあるし、連続した膜の形態には至らない析出化合物となる(不連続な層となる)こともある。
【0040】
本発明のプラスチック窓を形成する光透過性プラスチック板は、例えば、(NH4)2SiF6、(NH4)2ZrF6、(NH4)2TiF6をそれぞれ適量(例えば2000:1:10〜2000:10:1のモル比)溶解する水溶液(水性媒体液)にフッ素捕捉剤として酸化ホウ素を添加し、SiO2、ZrO2、TiO2成分を、この水溶液中に浸漬したプラスチック板の表面に同時に析出させて複合膜を形成し、次いで、この複合膜を所定の温度に加熱することにより、無機硬質層とすることにより形成することができる。以下に、金属がケイ素である場合の反応を示す。
【0041】
【化1】
【0042】
なお、(NH4)2ZrF6、および、(NH4)2TiF6などの他のヘキサフルオロ金属酸塩も同様に反応して酸化物が析出するものと考えられる。
この無機硬質層は、優れた親水性および耐擦傷性を有している。すなわち、プラスチック板の表面に形成された複合膜がSiO2およびTiO2加えて少量のZrO2を含有することにより、この複合膜の耐擦傷性が向上する。例えば、セム皮を用いて行った耐擦傷性テストでは、SiO2-TiO2複合膜の有する耐擦傷性に対して、少量のZrO2を含有することにより、その耐擦傷性は、5〜10倍程度に耐擦傷性が向上する。
【0043】
このようにして形成される無機硬質層22のプラスチック板20に対する付着性は、無機硬質層22を恒久的にプラスチック板の表面に付着させるほどには高くはない。
この無機硬質層22の付着性を向上させるために、本発明では、プラスチック板20の表面に下地層24を介して無機硬質層22を形成する方法、あるいは、上記のようにして析出させることにより形成された無機硬質層22を基材となるプラスチック板が熱変形を起こさない温度以下の温度、具体的には使用するプラスチック板によって加熱温度は適宜設定することができるが、使用するプラスチック板の熱変形温度(HDT)以下の温度、通常は20〜140℃、好ましくは30〜60℃の範囲内の温度で熱処理する方法を採用することが望ましい。このような加熱条件で、通常1分〜10時間、好ましくは15分〜360分間処理する。このように熱処理することにより、この無機硬質層22のプラスチック板20表面に対する密着性は著しく向上する。
【0044】
また、本発明では、プラスチック板20の表面に予め下地層24を形成した後、無機硬質層22を形成することにより、この無機硬質層22の密着性が著しく向上する。
ここで下地層24は、シリカあるいはシリカを主体とした層、最外層にケイ素を主成分とする層を有する反射防止多層膜からなる下地層あるいは多官能アクリル系下地層である。この下地層24は、ケイ素含有化合物を用いた蒸着法、ゾル−ゲル法(ディップ焼成法)、塗布紫外線硬化法などの方法を利用して形成することができる。ただし、この下地層24には、チタン酸化物およびチタンを含有する複合酸化物は含有されていない。上記のようにして形成された下地層24の厚さに特に制限はないが、通常は0.1〜3μm、好ましくは0.5〜2μmの厚さを有している。このようにして形成された下地層24は基材であるプラスチック板2との密着性がよく、さらにこの下地層24は無機硬質層22との密着性も良好である。従って、このプラスチック板20の表面に下地層24を介して無機硬質層22を形成することにより、無機硬質層22の耐久性が著しく向上する。
【0045】
本発明のプラスチック窓を製造する際には、上述のようにプラスチック板20の表面に直接無機硬質層22を形成し、この無機硬質層22を加熱処理して無機硬質層22の付着性を改善することもできるし、上記のようにして下地層24を形成した後、形成された下地層24の表面に無機硬質層22を形成して付着性を改善することもできる。さらに、プラスチック板20の表面に下地層24を形成し、次いでこの下地層24の表面に無機硬質層22を形成した後、この無機硬質層22を上述のようにして加熱処理することもできる。
【0046】
このようにしてプラスチック板20表面に、好適には下地層24を形成した後、この下地層24上に無機硬質層22を形成した後、この無機硬質層22を所定の温度に加熱することによって形成される本発明のプラスチック窓10においては、表面に形成されている無機硬質層22が必ずしも均一に形成されているとは限らない。例えば、上記詳述したようにLPD法によって形成された無機硬質層22、すなわち、チタンの単純酸化物あるいはチタンを含む金属の複合酸化物を含有すると共に20〜140℃に15〜360分間加熱された熱履歴を有し、かつチタン酸化物の光触媒活性を抑制する光触媒抑制成分が含有されている無機硬質層22は、この層を形成する成分が必ずしも均一に析出して均一層を形成しているとは限らず、一般的には不均一層を形成している場合が多い。このような無機硬質層22はできるだけ均一であることが望ましいので、上記のようにして形成された無機硬質層22の表面が平滑になるように研磨することが好ましい。しかしながら、無機物の研磨に通常使用されている研磨材を用いたのでは、この無機硬質層22自体が著しい損傷を受けることがあるので、この無機硬質層22を研磨する場合には、例えばセム皮などを用いたソフト研磨をすることが好ましい。このようにソフト研磨することにより、無機硬質層22の均一性が高くなり、本発明のプラスチック窓の親水性が良好になる。
【0047】
上記のように好適にはソフト研磨した無機硬質層22に界面活性剤を含浸させる。
このようにして形成された光透過性プラスチック板に所望の枠体を配置することにより本発明のプラスチック窓を形成することができる。
こうして形成された本発明のプラスチック窓は、表面が非常に高い親水性を有しており、このプラスチック窓の表面に水分が滴状の形態では存在することができず、水の薄い膜となる。従って、本発明のプラスチック窓は優れた防曇性を有している。
【0048】
このような本発明のプラスチック窓が有する高い防曇性や親水性を利用して、本発明のプラスチック窓は、ゴーグル、建築物の窓、カメラのファインダー、監視用カメラカバー、プラスチック水槽窓、携帯電話の表示窓、アーケード採光窓、カーポート、遮音板(高速道路)、看板等として使用することができる。
【0049】
【発明の効果】
本発明のプラスチック窓は、無機硬質層を有する光透過性プラスチック板の表面が非常に優れた親水性を有しており、水分が表面に水滴状に存在することができない。従って、本発明のプラスチック窓は、防曇性に優れている。
特に無機硬質層が、光触媒活性を有するチタンの酸化物あるいはチタンを含有する複合酸化物を含有されているが、この光触媒活性を抑制する成分としてジルコニウムの酸化物も含有されており、この無機硬質層が界面活性剤をその機能を短時間で喪失する程の光触媒活性は有していない。従って、この無機硬質層に界面活性剤を長期安定的に含浸させることにより、抑制されたチタン酸化物あるいはチタンを含有する複合酸化物の表面に含浸した界面活性剤が主として働いて無機硬質層に非常に優れた親水性を発現させる。
【0050】
また、上記ジルコニウムの酸化物を含有することにより、この無機硬質層の耐擦傷性が向上すると共に、下地層との密着性も非常に良好になり、この無機硬質層の耐久性も向上する。
さらに、無機硬質層を加熱処理することにより、この加熱処理によって無機硬質層の耐久性が著しく向上する。すなわち、このような加熱処理は、基材がレンズのように非常に厳格な屈折率の変化が必要である場合には行うことが難しいが、本発明のプラスチック窓のように屈折率の厳格な制御を必要としない用途においては、このような加熱処理することにより、無機硬質層の耐久性が著しく向上する。また、この無機硬質層は良好な帯電防止機能も有している。
【0051】
【実施例】
次に本発明の実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定的に解されるべきではない。
【0052】
【実施例1】
ヘキサフルオロ珪酸アンモニウム:(NH4)2SiF6、ヘキサフルオロチタン酸アンモニウム:(NH4)2TiF6及びヘキサフルオロジルコニウム酸アンモニウムを、それぞれ25g、1.25g及び0.25g秤量し、これを40℃の純水1000ccに完全に溶解した。その後酸化ホウ素25gをこの水溶液に添加し、完全に溶解させ、処理液を作成した。
【0053】
これとは別に7モル/リットルの濃度の55℃NaOH水溶液中に20分浸して表面処理した多官能アクリル系ハードコートを施したアクリル板(120×120×1mm)を用意し、上記処理液に6時間浸漬した。
浸漬後アクリル板を取り出し洗浄した後、約55℃で2時間乾燥処理した。このように作成した表面コートアクリル板を更に、ヘキサフルオロ珪酸アンモニウム、ヘキサフルオロジルコニウム酸アンモニウム、及び酸化ホウ素をそれぞれ25g、8.3g、15gを純水1000ccに添加し、完全溶解させて作成した40℃の処理液に更に6時間浸漬し、積層コートした。その後処理液からアクリル板を取り出し、洗浄後55℃で2時間加熱乾燥した。
【0054】
その結果、アクリル表面の硬度が、多官能アクリル系ハードコートを施したアクリル基材より2〜3倍硬度が高くなった。
【0055】
【実施例2】
多官能アクリル系ハードコートを施した基材を、7モル/リットルの濃度の55℃NaOH水溶液中に20分程浸して表面処理したものを、ヘキサフルオロ珪酸アンモニウム25g、ヘキサフルオロジルコニウム酸アンモニウム8.3g及び酸化ホウ素15gを純水中で混合溶解した40℃の処理液1000ccに浸漬した。6時間浸漬後、当該基材を処理液から取り出し洗浄後、更に55℃で3時間加熱乾燥した。
【0056】
その結果、基材の硬度より数倍硬い無機質保護膜を基材表面に形成することができた。
【0057】
【実施例3】
ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム(6フッ化ケイ素酸アンモニウム:(NH4)2SiF6)、ヘキサフルオロチタン酸アンモニウム(6フッ化チタンアンモニウム:(NH4)2TiF6)、および、ヘキサフルオロジルコニウム酸アンモニウム(6フッ化ジルコニウムアンモニウム:(NH4)2ZrF6)を、それぞれ、25g、8.3gおよび0.25g秤量し、これらを50℃の純水1000ccに投入して完全に溶解させた。その後、酸化ホウ素25gをこの溶液に添加して完全に溶解させた。
【0058】
これとは別に、NaOH水溶液で表面洗浄した100mm×100mm×1mmの多官能アクリル系ハードコートを施したアクリル板を用意した。
上記のハードコートアクリル板を、上記のようにして調製された透明化した溶液に8時間浸漬した。浸漬後、アクリル板を上記水溶液から取出し、超音波洗浄器を用いて純水中で軽く洗浄した、
このアクリル板を乾燥機の中で50〜60℃に3時間放置して加熱処理した。得られた無機硬質層の平均厚さは0.2μmであった。
【0059】
この結果、ハードコートアクリル板表面に形成された無機硬質膜(層)の密着性が向上した。
さらに、この無機硬質層が形成されたアクリル板に、界面活性剤を塗布し表面に薄く伸ばして無機硬質層に界面活性剤を含浸させた。
こうして得られた光透過性プラスチック板に息をふきかけたところ、この光透過性プラスチック板は曇らず、透明状態が維持された。
【0060】
この光透過性プラスチック板の外周に枠体を配置してゴーグルを形成した。
このゴーグルを3週間放置したが、その防曇性は維持することができた。さらに、このゴーグルを布で拭きながら使用したが、防曇性がわずかに低下したところで再び界面活性剤を塗布することで、当初の防曇性が回復した。
この際、表面をワイヤーウールで拭いても、いかなるスクラッチ傷を生じなかった。
【0061】
【実施例4】
実施例1において、アクリル板の代わりに表面に下地層としてシリカコート層が形成されたアクリル板を使用した以外は同様にして光透過性プラスチック板を製造した。この光透過性プラスチック板におけるシリカコート層の平均厚さは2μmであり、この下地層の表面に形成された無機硬質層の平均厚さは0.2μmであった。
【0062】
この結果、アクリル板表面に形成された下地層の表面に形成された無機硬質膜(層)の密着性が向上した。
さらに、この無機硬質層が形成されたアクリル板に、界面活性剤を塗布し表面に薄く伸ばして無機硬質層に界面活性剤を含浸させた。
こうして得られた光透過性プラスチック板に息をふきかけたところ、この光透過性プラスチック板は曇らず、透明状態が維持された。
【0063】
この光透過性プラスチック板の外周に枠体を配置してゴーグルを形成した。
このゴーグルを3週間放置したが、その防曇性は維持することができた。さらに、このゴーグルを布で拭きながら使用したが、防曇性がわずかに低下したところで再び界面活性剤を塗布することで、当初の防曇性が回復した。
なおこの際、表面をワイヤーウールで拭いてもプラスチックにいかなるスクラッチ傷も生じなかった。
【0064】
上記実施例1および2は、光透過性プラスチック板の外周に枠体を配置してゴーグルを製造したが、枠体をアルミサッシにすることにより建築用窓を製造したが、同様に優れた防曇性を有していた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明のプラスチック窓の例であるゴーグルを示す斜視図である。
【図2】 図2は、上記図1におけるA−A断面図である。
【図3】 図3は、上記図2における光透過性プラスチック板の拡大断面図である。
【符号の説明】
10・・・ゴーグル(プラスチック窓)
12・・・枠体
14・・・光透過性プラスチック板
17・・・ストラップ
18・・・係合具
20・・・プラスチック板
22・・・無機硬質層
24・・・下地層
Claims (22)
- ハードコート処理を施した基材プラスチックの表面に、無機硬質層をプラスチック基材に付着析出する前に、当該ハードコートプラスチック基材の表面を、NaOH或いはKOHを2〜10モル/リットルの濃度で含有する強アルカリ水溶液中で20〜100℃、1〜60分処理するか、プラズマ表面照射処理し、次いで、少なくとも一種類の化合物からなる無機複合材料を、単一層或いは複数層膜付けして無機硬質層を形成することを特徴とするプラスチック表面処理法。
- 前記無機硬質層が、珪素、ジルコニウム及びチタン、或いは、珪素及びジルコニウムの単純酸化物或いは複合酸化物を含有することを特徴とする請求項第1項記載の表面処理法。
- 前記無機硬質層の構成原子が、チタン原子に対するジルコニウム原子の原子比が99.9:0.1〜70:30の範囲内にあり、珪素原子に対するチタン原子及びジルコニウム原子の原子比が99.9:0.1〜40:60の範囲内にあることを特徴とする請求項第1項又は第2項記載の表面処理法。
- 前記無機硬質層の厚さが10-3〜0.5μmの範囲内であることを特徴とする請求項第1項〜第3項のいずれかの項記載の表面処理法。
- 前記無機硬質層をLPD法或いは真空蒸着法によって、当該プラスチック基材表面に付着析出させることを特徴とする請求項第1項〜第4項のいずれかの項記載の表面処理法。
- 前記無機硬質層をプラスチック基材の表面に付着析出させた後に、20〜140℃で15〜360分加熱処理することを特徴とする請求項第1項〜第5項のいずれかの項記載の表面処理法。
- 前記無機硬質層のモース硬度が5〜9の範囲内にあることを特徴とする請求項第1項〜第6項のいずれかの項記載の表面処理法。
- 光透過性プラスチック板と該光透過性プラスチック板の周縁部に配置された枠体とを有するプラスチック窓であり、該光透過性プラスチック板は、その少なくとも一方の表面に、チタンの単純酸化物あるいはチタンを含む金属の複合酸化物を含有すると共に20〜140℃に15〜360分加熱された熱履歴を有する無機硬質層を有し、かつ該無機硬質層に、チタン酸化物の光触媒活性を抑制する光触媒抑制成分が含有されていることを特徴とするプラスチック窓。
- 前記光触媒抑制成分が、酸化ジルコニウムを含むものであることを特徴とする請求項第8項記載のプラスチック窓。
- 前記無機硬質層がチタン原子、ジルコニウム原子および珪素原子を含有し、該無機硬質層におけるチタン原子とジルコニウム原子との含有率が原子比で99.9:0.1〜70:30の範囲内にあり、かつ珪素原子に対するチタン原子とジルコニウム原子合計の含有率との原子比が、原子比で99.9:0.1〜40:60の範囲内にあることを特徴とする請求項第8項記載のプラスチック窓。
- 前記無機硬質層が、界面活性剤を含浸可能に形成されていることを特徴とする請求項第8項記載のプラスチック窓。
- 前記プラスチック窓が、プラスチック基板と、無機硬質層との間に珪素を主成分とする、又は多官能アクリル系を主体とする下地層を有することを特徴とする請求項第8項記載のプラスチック窓。
- 前記無機硬質層をプラスチック基材に付着析出する前に、当該ハードコートプラスチック基材の表面を強アルカリ水溶液であるNaOH或いはKOHの2〜10モル/リットル水溶液中で20〜100℃、1〜60分処理するか、プラズマ表面照射処理することを特徴とする請求項第8項〜第12項のいずれかの項記載のプラスチック窓。
- 前記プラスチック窓が、ゴーグル、カメラのファインダー、あるいは監視カメラのカバー、携帯電話の表示窓であることを特徴とする請求項第8項記載のプラスチック窓。
- 枠体に挿嵌されることにより光透過性のプラスチック窓を形成可能な光透過性プラスチック板であって、該光透過性プラスチック板は、その少なくとも一方の表面にチタンの単純酸化物あるいはチタンを含む金属の複合酸化物からなる無機硬質層が形成されており、無機硬質層が、チタンの単純酸化物あるいはチタンを含む金属の複合酸化物が20〜140℃の範囲内に15〜360分間加熱された熱履歴を有するとともに、該無機硬質層に、チタン酸化物の光触媒活性を抑制する光触媒抑制成分が含有されていることを特徴とするプラスチック窓形成可能な光透過性プラスチック板。
- 前記光触媒抑制成分が、酸化ジルコニウムを含むものであることを特徴とする請求項第15項記載のプラスチック窓形成可能な光透過性プラスチック板。
- 前記無機硬質層がチタン原子、ジルコニウム原子および珪素原子を含有し、該無機硬質層におけるチタン原子とジルコニウム原子との含有率が原子比で99.9:0.1〜70:30の範囲内にあり、かつ珪素原子に対するチタン原子とジルコニウム原子合計の含有率との原子比が、原子比で99.9:0.1〜40:60の範囲内にあることを特徴とする請求項第15項記載のプラスチック窓形成可能な光透過性プラスチック板。
- 前記無機硬質層に界面活性剤が含浸可能に形成されていることを特徴とする請求項第15項記載のプラスチック窓形成可能な光透過性プラスチック板。
- 前記光透過性プラスチック板の表面に、珪素を主成分とする下地層、あるいは多官能アクリル系下地層を介して無機硬質層が形成されていることを特徴とする請求項第15項記載のプラスチック窓形成可能な光透過性プラスチック板。
- 枠体に挿嵌されることにより光透過性のプラスチック窓を形成可能な光透過性プラスチック板を形成する方法であって、該光透過性プラスチック板は、プラスチック基板の少なくとも一方の表面にチタンの単純酸化物あるいはチタンを含む金属の複合酸化物からなる無機硬質層が形成されており、該無機硬質層が、ヘキサフルオロチタン酸塩と、ヘキサフルオロ珪酸塩およびヘキサフルオロジルコニウム酸塩よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の塩とを含有するヘキサフルオロ金属塩の水性媒体溶液にフッ素捕捉剤を添加して、該水性媒体溶液中に含有される金属を単独酸化物あるいは複合酸化物としてプラスチック基板表面に析出させた後、該析出した単純酸化物あるいは複合酸化物を20〜140℃の範囲内の温度に15〜360分間加熱することにより形成することを特徴とするプラスチック窓を形成可能な光透過性プラスチック板の製造方法。
- 前記フッ素捕捉剤が、ホウ素系化合物であることを特徴とする請求項第20項記載のプラスチック窓を形成可能な光透過性プラスチック板の製造方法。
- 前記無機硬質層を、界面活性剤が含浸可能に形成することを特徴とする請求項第20項記載のプラスチック窓を形成可能な光透過性プラスチック板の製造方法。
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