JP2003511632A - 焼結炭化物摩耗部品及びラップ仕上げ方法 - Google Patents

焼結炭化物摩耗部品及びラップ仕上げ方法

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JP2003511632A JP2001528228A JP2001528228A JP2003511632A JP 2003511632 A JP2003511632 A JP 2003511632A JP 2001528228 A JP2001528228 A JP 2001528228A JP 2001528228 A JP2001528228 A JP 2001528228A JP 2003511632 A JP2003511632 A JP 2003511632A
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、摩擦及び摩耗性が改良された摩耗表面を有する焼結炭化物摩耗部品に関する。これは、厚さ0.5μm〜25μm、好ましくは1〜10μmで、WCの平均粒度が500nm未満の表面層を摩耗表面を提供することによって得られる。この表面相は、少なくとも10分間にわたって、1,000〜3,000rpm及び0.1〜0.5MPaにおいて、好ましくは研磨媒体なしで、研磨ディスクによって摩耗表面をラップ仕上げすることによって得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 本発明は、焼結炭化物摩耗部品、特に大きい滑り速度及び大きい圧力で滑動さ
せるときに使用することが要求される摩耗部品、例えば改良された摩擦性及び摩
耗性を有するシールリングに関する。
【0002】 焼結炭化物、特にWC−Co、WC−TiC−Co、WC−TaC−Co、W
C−TiC−TaC−Co材料は、摩耗部品の分野で多くの用途がある。これは
、それらの優れた機械的性質、例えば靭性と硬さの独自の組み合わせによる大き
い耐摩耗性、小さい摩擦、及び大きい熱伝導性に関連している。
【0003】 ナノ結晶質構造としても言及されることがある非常に微細な粒度の焼結炭化物
、すなわちナノメートル単位の大きさ炭化物粒子は、従来の粗い粒子の材料と比
較して良好な機械的性質を有する。ナノ結晶質焼結炭化物は既に作られているが
、それらの製造に関する問題によって高価なものとなっている。
【0004】 しかしながら、ナノ結晶質材料が非常に有力な候補となっている用途が複数存
在し、これは例えば金属切削インサート、木用の切刃等である。
【0005】 産業的に重要な例は、大きい負荷条件で作用するポンプ、例えば排水ポンプ及
び海水ポンプのためのシールリングで使用される焼結炭化物である。図1で示さ
れるシールリングパッケージは、使用前に長期間にわたって貯蔵されることが多
く、結果として周囲空気によってもたらされる密着プロセスを受け、これによっ
て始動の瞬間に深刻なシール/ポンプの損傷を受ける。またシールリングパッケ
ージ又はベアリングパッケージの始動期間には、摩擦及び摩耗性がかなり必要と
される用途で問題が起きることがある。シール表面における焼結炭化物の早期の
破損は、シール表面を完全に破損させることがある。従っていくらかの用途では
、シールリングで2つのタイプの材料の組み合わせを使用すること、例えば焼結
炭化物に対して硬質の焼結SiCを使用することが必要である。そのような材料
の組み合わせは、比較的柔らかい焼結炭化物の摩擦性と表面硬さとを必要とする
【0006】 完全にナノ結晶質の部分の製造の重要な代替案としては、部品の表面のナノ結
晶質表面層と、バルクの従来の粗い粒子の焼結炭化物との組み合わせを挙げるこ
とができる。
【0007】 酸性環境ではCoの耐腐食性は小さい。Coを他の比較的耐腐食性の金属、例
えばCr、Ni若しくはMo又はそれらの組み合わせで置換することによって、
材料の耐腐食性を増加させることができる。全体が耐腐食性金属に基づく材料で
できた部品を作ることの代替案としては、WC、及びCoと混合された耐腐食性
金属からなる表面層を作ることを挙げることができる。
【0008】 本発明では、ラップ仕上げ(lapping)処理によってシール表面を処理
して、改良された性質のシールリングを得る。予想外に、表面処理の間に、シー
ルリング表面の外側表面部分が、良好な摩擦性を有する非常に微細な粒子構造の
硬質で耐摩耗性の層になることが分かった。
【0009】 本発明では、シール表面に、厚さ0.5〜25μm、好ましくは1〜10μm
の表面層を有するシールリングを提供する。シールリングは、WCと、4〜15
重量%、好ましくは5〜12重量%のCo、Ni及び/又はFeとからなってい
る。少なくとも表面層では、バインダー相に数パーセントのCr及び/又はMo
が添加されていてもよい。WCの粒度は2〜6μmである。5%までの立方晶炭
化物、例えばTiC、TaC、NbCが、焼結炭化物中に存在していてもよい。
あるいは、シールリングは、Co及び/又はNi及び/又はFeが1重量%未満
の、バインダーレス(バインダーを伴わない)焼結炭化物で作られている。
【0010】 1つの態様においては、層の最も外側の部分は本質的に、平均サイズが500
nm未満、好ましくは200nm未満、最も好ましくは約100nm未満の非常
に微細なWC粒子、及び1〜25体積%、好ましくは5〜12体積%の約10n
mの結晶質酸化物、例えばCaWO、WO又はCoWOから本質的になっ
ていてよい。
【0011】 第2の態様においては、層は、バインダー相金属の水酸化物も含有している。
【0012】 第3の態様においては、酸化物又は水酸化物が全く存在しない。
【0013】 これら3つ全ての態様において、層のバインダー相含有率は、シールリングの
内側部分と本質的に同じ又はいくらか大きい。
【0014】 本発明の方法では、焼結炭化物シールリングのシール表面を、研磨ディスク、
例えば純粋な焼結アルミナ又はSiC又はダイヤモンドによって、少なくとも1
0分間にわたって、1,000〜3,000rpm、0.1〜0.5MPaで、
好ましくは研磨媒体を用いずにラップ仕上げする。好ましくは、CaOHが10
〜25%でpHが8〜9のラップ仕上げ液体を使用する。またB、S及び/又は
金属、例えばCr及びMoが、適当な可溶性塩として存在していてもよい。
【0015】 あるいは、例えばラップ仕上げ処理の前に、PVD又はCVDのような既知の
堆積技術を使用することによって、又は少量の金属粉末で表面を覆うことによっ
て、微細粒子の表面層を得て、表面に耐腐食性の金属を追加してこの方法を実施
することもできる。
【0016】 本発明は、材料の酸化を全くもたらさない気体、例えばAr又はN中におい
て実施することもできる。窒素中では、少量の窒化物のみが形成される。
【0017】 処理は他の方法、例えばダイヤモンド、アルミナ又はSiCの研磨媒体でブラ
シ掛けすることによって行うこともできる。
【0018】 あるいは、焼結炭化物リングを、上述のセラミックディスクの代わりに使用す
ることができる。
【0019】 本発明はシールリングを参照して説明してきたが、本発明が他の摩耗部品の用
途、例えばベアリングのような滑り性をかなり必要とする高速滑動及び高表面圧
力の用途例えばLdPE(低密度ポリエチレン)反応器のベアリングでも使用で
きることは明らかである。
【0020】 例1 外径55mmで6重量%のCoと粒度約5μmのWCの組成の、焼結炭化物シ
ールリングを、研磨媒体の添加なしで空気中において30分間にわたって、滑り
対向体(sliding counterpart)としての純粋なアルミナセ
ラミックディスクでラップ仕上げした。ラップ仕上げ処理の間の表面圧力は約0
.2MPaであり、回転速度は2,000rpmであった。処理の後では、リン
グは、ナノ結晶質WC及びCoとAlの混合物からなる厚さ3μmの層で
完全に覆われていた。表面組成物中のアルミナの量は少量であった。XRD解析
によれば、少量のWO及びCoWOも表面層に存在していた。
【0021】 例2 外径55mmで6重量%のCoと粒度約5μmのWCの組成の、2つの自己付
着性(self-mated)焼結炭化物シールリングを、一方を静止させて互いに相対的
に回転させた。ここで表面圧力は約0.2MPaであった。リングは、15分間
にわたって回転速度2,000rpmで、研磨媒体を添加しないで回転させた。
処理の後では、リングは、ナノ結晶質WC及びCoからなる厚さ4μmの層で完
全に覆われていた。これについては図2で示している。表面層には少量のWO 及びCoWOも存在していた。
【0022】 例3 外径55mmで6重量%のCoと粒度約5μmのWCの組成の、2つのつや消
し(dull)表面滑らかさの自己付着性フラット焼結炭化物リングを、一方を
静止させて互いに相対的に回転させた。ここで表面圧力は約0.2MPaであっ
た。試験は、回転リングの周囲に窒素ガスを満たした容器で行った。リングは、
15分間にわたって回転速度2,000rpmで、研磨媒体を添加しないで回転
させた。処理の後では、リングは、ナノ結晶質WC及びCoからなる厚さ3μm
の層で完全に覆われていた。この層では酸化物が検出されず、少量の窒化物のみ
が検出された。
【0023】 例4 外径55mmで11重量%のCoと粒度約5μmのWCの組成の、2つの自己
付着性フラット焼結炭化物リングを、一方を静止させて互いに相対的に回転させ
た。ここで表面圧力は約0.2MPaであった。試験の前に、静止リングをCr
の100nmPVD表面層でコーティングした。リングは、15分間にわたって
回転速度2,000rpmで、研磨媒体を添加しないで回転させた。処理の後で
は、リングは、ナノ結晶質WC、Cr及びCoからなる厚さ2μmの層で完全に
覆われていた。この表面層では、少量のWO、Cr酸化物及びW−Co−Cr
の混合酸化物も存在していた。
【0024】 例5 外径55mmで6重量%のNiと粒度約5μmのWCの組成の、2つの自己付
着性フラット焼結炭化物リングを、一方を静止させて互いに相対的に回転させた
。ここで表面圧力は約0.2MPaであった。試験の前に、静止リングを約1m
gのCr粉末で覆った。リングは、15分間にわたって回転速度2,000rp
mで、研磨媒体を添加しないで回転させた。処理の後では、リングは、ナノ結晶
質WC、Cr及びNiからなる厚さ3μmの層で完全に覆われていた。この表面
層では、少量のWO、Cr酸化物及びW−Ni−Crの混合酸化物も、XRD
解析で見出された。
【0025】 例6 外径55mmで6重量%のNiと粒度約5μmのWCの組成の、2つの自己付
着性焼結炭化物シールを、一方を静止させて互いに相対的に回転させた。ここで
表面圧力は約0.2MPaであった。リングは、15分間にわたって回転速度2
,000rpmで、研磨媒体を添加しないで回転させた。処理の後では、リング
は、ナノ結晶質WC及びNiからなる厚さ1〜2μmの層で完全に覆われていた
。この表面層では、少量のWOも存在していた。
【0026】 例7 従来技術の2つの自己付着性焼結炭化物リングの初期摩擦係数は、300kP
aの圧力で0.4であった。例2の2つのシールリングは、同じ試験において初
期摩擦係数が0.17であった。
【0027】 例8 従来技術の2つの自己付着性焼結炭化物リングは、700時間にわたって3k
Paで水潤滑接触させて滑動させた後で、規則的に間隔を空けたクラックパター
ンを示した。例6の2つの自己付着性焼結炭化物リングは、同じ条件で700時
間試験した後にクラックを全く示さなかった。
【0028】 例9 WCに加えて3重量%のTiC、1.5重量%のTaC、0.5重量%のNb
C及び0.5重量%のCoを含有する組成でWC粒度が約3μmの、外径55m
mの「バインダーレス」WC−MeC等級の2つの自己付着性フラットリングを
、一方を静止させて互いに相対的に回転させた。ここで表面圧力は約0.2MP
aであった。試験の間には、リングの容器をpHが8のCaOH溶液で満たして
いた。リングは、15分間にわたって回転速度2,000rpmで、研磨媒体を
添加しないで回転させた。処理の後では、XRD解析によればリングは、ナノ結
晶質WC、TiC、CaWO及びWOからなる厚さ2μmの層で完全に覆わ
れていた。これについては図3で示している。
【0029】 例10 従来技術によるシールリングとの比較を、質に関して行った。試験条件は以下
に示すようなものであった: 圧力側の媒体: 水 周囲側の媒体: ドライ 回転速度: 3,000rpm シールリング圧力(MPa): 0.4 温度(℃): 40 時間(h): 800
【0030】 従来技術のリングのシール表面は、滑らかな光沢表面であった。本発明のリン
グ(例6)は、フラットでつや消しのシール表面を有していた。
【0031】 本発明のリングは試験期間全体にわたって、軽い操作で非常にうまく機能した
。早期の破損は見出されなかった。
【0032】 従来技術のリングは、大きい破損及び危険な操作条件のために12時間後に停
止した。表面からの焼結炭化物のチッピング及びクラック発生によって早期の破
損が起こった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、シールリングパッケージを示している。
【図2】 図2は、本発明による表面層の4000倍の倍率のSEM写真である。
【図3】 図3は、本発明によるシール表面のXRD回折パターンである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B24B 37/04 B24B 37/04 A 57/02 57/02 C22C 29/08 C22C 29/08 (72)発明者 アクセン,ニクラス スウェーデン国,エス−740 21 ジェー ルローサ,セトラルナ Fターム(参考) 3C047 FF08 GG15 3C058 AA07 AA11 AC04 BA02 CA01 CB01 CB03 3J040 FA11 HA01

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 WCと、Co、Ni及び/又はFeのバインダー相に基づく
    摩耗表面を有する焼結炭化物摩耗部品であって、前記摩耗表面が厚さ0.5μm
    〜25μm、好ましくは1〜10μmの、平均粒度が500nm未満の表面層を
    有することを特徴とする、焼結炭化物摩耗部品。
  2. 【請求項2】 前記表面層が1〜25体積%、好ましくは5〜12体積%の
    、約10nmのCaWO、WO又はCoWOのような結晶性酸化物を含有
    していることを特徴とする、請求項1に記載の焼結炭化物摩耗部品。
  3. 【請求項3】 前記表面が、バインダー相金属の水酸化物を更に含有してい
    ることを特徴とする、請求項1又は2に記載の焼結炭化物摩耗部品。
  4. 【請求項4】 WCと、4〜15重量%、好ましくは5〜12重量%のCo
    及び/又はNi及び/又はFeとからなることを特徴とする、請求項1〜3のい
    ずれかに記載の焼結炭化物摩耗部品。
  5. 【請求項5】 WCと、1重量%未満のバインダー相とからなることを特徴
    とする、請求項1〜3のいずれかに記載の焼結炭化物摩耗部品。
  6. 【請求項6】 少なくとも10分間にわたって、1,000〜3,000r
    pm及び0.1〜0.5MPaで、好ましくは研磨媒体しで、研磨ディスクによ
    って摩耗表面をラップ仕上げすることを特徴とする、摩耗表面を有する焼結炭化
    物摩耗部品の製造方法。
  7. 【請求項7】 pHが8〜9でCaOHが10〜25%のラップ仕上げ液体
    を使用することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
  8. 【請求項8】 適当な可溶性塩として存在するCr及びMoのような金属、
    S及び/又はBも含有するラップ仕上げ液体を使用することを特徴とする、請求
    項6又は7のいずれかに記載の方法。
  9. 【請求項9】 例えばラップ仕上げ処理の前に、PVD又はCVDのような
    既知の堆積方法を使用すること、又は少量の金属粉末で前記表面を覆うことによ
    って、前記表面に耐腐食性金属を適用することを特徴とする、請求項6〜8のい
    ずれかに記載の方法。
  10. 【請求項10】 研磨ディスクとして焼結炭化物リングを使用することを特
    徴とする、請求項6〜9のいずれかに記載の方法。
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