JP2003327421A - 炭素クラスター製造用原料 - Google Patents
炭素クラスター製造用原料Info
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 ロースートの生成効率を高め、結果的に炭素
クラスター乃至はクラスター化合物の回収効率を高めて
製造コストを低減させる。 【解決手段】 炭素クラスター製造用原料を、メソフェ
ーズカーボンを骨材とする圧粉体を高温処理して得られ
る成形体で構成する。
クラスター乃至はクラスター化合物の回収効率を高めて
製造コストを低減させる。 【解決手段】 炭素クラスター製造用原料を、メソフェ
ーズカーボンを骨材とする圧粉体を高温処理して得られ
る成形体で構成する。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、C60等のフラーレン類
やこれにLa、Y、Sc等ランタニドなどの金属や金属
化合物を内包あるいは付着させた金属入りフラーレン
類、あるいはカーボンナノチューブなどの炭素クラスタ
ー乃至は炭素クラスター化合物を製造するための炭素ク
ラスター製造用原料に関する。
やこれにLa、Y、Sc等ランタニドなどの金属や金属
化合物を内包あるいは付着させた金属入りフラーレン
類、あるいはカーボンナノチューブなどの炭素クラスタ
ー乃至は炭素クラスター化合物を製造するための炭素ク
ラスター製造用原料に関する。
【0002】
【従来の技術】フラーレンは、建築家のバックミンスタ
ー・フラーの名前から由来したもので、C60を代表とし
て、多くの炭素クラスター分子の総称である。このうち
C60は炭素原子60個がサッカーボール状を呈したクラ
スター分子(原子集団)であり、アーク放電、レーザー
蒸発等で発生したすすの中に含まれる。正五角形が12
個と正六角形が20個の32面体の各頂点に炭素原子が
存在する構造となっている。炭素の結晶としては黒鉛と
ダイヤモンドが知られているが、C60は何れとも構造が
違い、第3の炭素といわれている。金属入りフラーレン
はそれら炭素クラスターに金属元素が内包されているか
或いは周囲に付着している炭素クラスター化合物をい
う。C60は中性のままでは伝導キャリアーがないので絶
縁体であるが、C60フィルム中に金属をドープすること
によりLUMOバンドにキャリアーが注入されて金属フ
ラーレンアニオンラジカル塩となる。そして、その中に
高い超伝導転移点を有するものが存在することが確認さ
れている。更にドープのもう1つの形態として、金属が
フラーレン球殻内に入るかあるいは周囲に付着すること
が確認され、その特性が注目されている。炭素クラスタ
ーについては、1970年に大澤により構造モデルが提
唱され、1985年に英国サセックス大学のクロト、米
国ライス大学のスモーリーらによりその存在が確認され
た後、1990年にクレッチマー、ホフマンらによって
合成・単離方法が見い出された。
ー・フラーの名前から由来したもので、C60を代表とし
て、多くの炭素クラスター分子の総称である。このうち
C60は炭素原子60個がサッカーボール状を呈したクラ
スター分子(原子集団)であり、アーク放電、レーザー
蒸発等で発生したすすの中に含まれる。正五角形が12
個と正六角形が20個の32面体の各頂点に炭素原子が
存在する構造となっている。炭素の結晶としては黒鉛と
ダイヤモンドが知られているが、C60は何れとも構造が
違い、第3の炭素といわれている。金属入りフラーレン
はそれら炭素クラスターに金属元素が内包されているか
或いは周囲に付着している炭素クラスター化合物をい
う。C60は中性のままでは伝導キャリアーがないので絶
縁体であるが、C60フィルム中に金属をドープすること
によりLUMOバンドにキャリアーが注入されて金属フ
ラーレンアニオンラジカル塩となる。そして、その中に
高い超伝導転移点を有するものが存在することが確認さ
れている。更にドープのもう1つの形態として、金属が
フラーレン球殻内に入るかあるいは周囲に付着すること
が確認され、その特性が注目されている。炭素クラスタ
ーについては、1970年に大澤により構造モデルが提
唱され、1985年に英国サセックス大学のクロト、米
国ライス大学のスモーリーらによりその存在が確認され
た後、1990年にクレッチマー、ホフマンらによって
合成・単離方法が見い出された。
【0003】その間、アルカリ金属やアルカリ土類金属
のドープによる超伝導体や光が関与した半導体機能、非
線形光学素子への応用、C60とテトラキス[ジメチルア
ミノ]エチレンとの分子錯体が強磁性を有する炭素クラ
スター化合物となる可能性の示唆、水素吸蔵物質や分子
レベルのボールベアリングへの応用など、用途に関する
提案が数多くなされており、将来的にも幅広い利用分野
の開拓が期待される。
のドープによる超伝導体や光が関与した半導体機能、非
線形光学素子への応用、C60とテトラキス[ジメチルア
ミノ]エチレンとの分子錯体が強磁性を有する炭素クラ
スター化合物となる可能性の示唆、水素吸蔵物質や分子
レベルのボールベアリングへの応用など、用途に関する
提案が数多くなされており、将来的にも幅広い利用分野
の開拓が期待される。
【0004】フラーレン等の製造方法としては、現在ア
ーク放電方式やレーザー加熱方式によるものが広く利用
されている。これは炭素表面を3000℃付近まで加熱
して蒸発させ、炭素クラスター乃至はクラスター化合物
を含むすす(ロースート)を得る方法である。その後、
このすすから溶媒抽出法などにより炭素クラスター乃至
はクラスター化合物を分離する。例えばレーザー蒸発法
により、ヤン・チャイ、リチャード・イー・スモーリー
ら[Yan Chai,Richard E.Small
ey et.al,J.Phys.Chem.,95,
7564(1991)]がLaC82の生成を見い出して
いる。その際、この金属入りフラーレンの製造に使用す
る電極を、酸化ランタンと黒鉛粉末[ウルトラ・カーボ
ン(Ultra Carbon)社製黒鉛粉末、ウルト
ラ「エフ」純度(Ultra"F"Purity)]とを
骨材とし、黒鉛セメント[ダイロン・インダストリイズ
(Dylon Industries)社製、ジー・シ
ー(GC)グレード]を結合剤として加えて成形した
後、アルゴン雰囲気中1200℃で焼成して製造してい
る。
ーク放電方式やレーザー加熱方式によるものが広く利用
されている。これは炭素表面を3000℃付近まで加熱
して蒸発させ、炭素クラスター乃至はクラスター化合物
を含むすす(ロースート)を得る方法である。その後、
このすすから溶媒抽出法などにより炭素クラスター乃至
はクラスター化合物を分離する。例えばレーザー蒸発法
により、ヤン・チャイ、リチャード・イー・スモーリー
ら[Yan Chai,Richard E.Small
ey et.al,J.Phys.Chem.,95,
7564(1991)]がLaC82の生成を見い出して
いる。その際、この金属入りフラーレンの製造に使用す
る電極を、酸化ランタンと黒鉛粉末[ウルトラ・カーボ
ン(Ultra Carbon)社製黒鉛粉末、ウルト
ラ「エフ」純度(Ultra"F"Purity)]とを
骨材とし、黒鉛セメント[ダイロン・インダストリイズ
(Dylon Industries)社製、ジー・シ
ー(GC)グレード]を結合剤として加えて成形した
後、アルゴン雰囲気中1200℃で焼成して製造してい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、この様に黒
鉛粉末を焼き固めて製造した原料を使用すると、結果的
にロースートの生成効率が悪く、多大の電力を必要と
し、ひいては炭素クラスター乃至はクラスター化合物の
製造コストが上昇してしまうという不都合があった。そ
こで、本発明者らはアーク放電方式やレーザー加熱方式
により炭素クラスター乃至はクラスター化合物を安価に
製造できる原料を見つけるべく鋭意検討した結果、黒鉛
粉末、即ち既黒鉛化炭素質材料の成形体よりも寧ろ未黒
鉛化炭素質材料乃至は難黒鉛化性炭素質材料の圧粉体を
高温処理して得られる成形体を用いた方が、ロースート
の生成効率がはるかに高く、結果的に炭素クラスター乃
至はクラスター化合物の回収効率が著しく高まり、製造
コストが顕著に低下することを見い出し、本発明を完成
するに至った。
鉛粉末を焼き固めて製造した原料を使用すると、結果的
にロースートの生成効率が悪く、多大の電力を必要と
し、ひいては炭素クラスター乃至はクラスター化合物の
製造コストが上昇してしまうという不都合があった。そ
こで、本発明者らはアーク放電方式やレーザー加熱方式
により炭素クラスター乃至はクラスター化合物を安価に
製造できる原料を見つけるべく鋭意検討した結果、黒鉛
粉末、即ち既黒鉛化炭素質材料の成形体よりも寧ろ未黒
鉛化炭素質材料乃至は難黒鉛化性炭素質材料の圧粉体を
高温処理して得られる成形体を用いた方が、ロースート
の生成効率がはるかに高く、結果的に炭素クラスター乃
至はクラスター化合物の回収効率が著しく高まり、製造
コストが顕著に低下することを見い出し、本発明を完成
するに至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明の炭素クラ
スター製造用原料は、未黒鉛化炭素質材料乃至は難黒鉛
化性炭素質材料を骨材とする圧粉体を高温処理して得ら
れる成形体で構成され、前記成形体の電気固有抵抗が1
0〜81μΩ・mで、かつ、三点曲げ強さが10〜10
1MPaであることを特徴とする。
スター製造用原料は、未黒鉛化炭素質材料乃至は難黒鉛
化性炭素質材料を骨材とする圧粉体を高温処理して得ら
れる成形体で構成され、前記成形体の電気固有抵抗が1
0〜81μΩ・mで、かつ、三点曲げ強さが10〜10
1MPaであることを特徴とする。
【0007】本発明において使用する前記未黒鉛化炭素
質材料乃至は難黒鉛化性炭素質材料とは、天然黒鉛や人
造黒鉛粉末といった既に黒鉛化が十分に進行した炭素質
材料以外の炭素質材料を意味する。ここで、炭素質材料
とは炭素から実質的に成る又は炭素を主成分とする材料
を意味するが、炭素を主成分とするものでも適宜の高温
処理により炭素から実質的に成る材料に転化し得るもの
であることが必要である。
質材料乃至は難黒鉛化性炭素質材料とは、天然黒鉛や人
造黒鉛粉末といった既に黒鉛化が十分に進行した炭素質
材料以外の炭素質材料を意味する。ここで、炭素質材料
とは炭素から実質的に成る又は炭素を主成分とする材料
を意味するが、炭素を主成分とするものでも適宜の高温
処理により炭素から実質的に成る材料に転化し得るもの
であることが必要である。
【0008】具体的に述べると、前記未黒鉛化炭素質材
料は常圧下又は加圧下での適宜の高温処理により黒鉛化
が十分に乃至はある程度進行する炭素質材料を意味し、
以下に定義する難黒鉛化性炭素質材料を除く各種コーク
ス類(例えばニードルコークス等の石油系や石炭系の仮
焼された又は仮焼されていないコークス類やアントラセ
ン、ポリ塩化ビニル等の有機物を炭素化して得られるコ
ークス類を包含する)、各種ピッチ類(コールタールピ
ッチや石油系ピッチを包含する)、メソフェーズカーボ
ン(メソカーボンマイクロビーズやバルクメソフェーズ
などを包含する)、熱分解炭素などを包含する。また、
前記難黒鉛化性炭素質材料は高温処理によっても黒鉛化
が進行し難い炭素質材料を意味し、各種カーボンブラッ
ク類(サーマルブラック、ファーネスブラック、ランプ
ブラック、チャネルブラックなどを包含する)、難黒鉛
化性コークス類(フリュードコークス、ギルソナイトコ
ークスなどを包含する)、ガラス状炭素、フェノール樹
脂やフラン樹脂の炭素化物などを包含する。
料は常圧下又は加圧下での適宜の高温処理により黒鉛化
が十分に乃至はある程度進行する炭素質材料を意味し、
以下に定義する難黒鉛化性炭素質材料を除く各種コーク
ス類(例えばニードルコークス等の石油系や石炭系の仮
焼された又は仮焼されていないコークス類やアントラセ
ン、ポリ塩化ビニル等の有機物を炭素化して得られるコ
ークス類を包含する)、各種ピッチ類(コールタールピ
ッチや石油系ピッチを包含する)、メソフェーズカーボ
ン(メソカーボンマイクロビーズやバルクメソフェーズ
などを包含する)、熱分解炭素などを包含する。また、
前記難黒鉛化性炭素質材料は高温処理によっても黒鉛化
が進行し難い炭素質材料を意味し、各種カーボンブラッ
ク類(サーマルブラック、ファーネスブラック、ランプ
ブラック、チャネルブラックなどを包含する)、難黒鉛
化性コークス類(フリュードコークス、ギルソナイトコ
ークスなどを包含する)、ガラス状炭素、フェノール樹
脂やフラン樹脂の炭素化物などを包含する。
【0009】これらの未黒鉛化炭素質材料乃至は難黒鉛
化性炭素質材料を用いて圧粉体を製造する際には、生コ
ークスやメソフェーズカーボン等の自己結合性炭素質材
料を用いる場合には単独で圧粉体を形成し得るし、それ
以外は適宜の骨材(粒子状以外に繊維状等の形状でもよ
い)と結合剤とを組み合せて圧粉体を形成することがで
きる。その際に、骨材や結合剤として未黒鉛化炭素質材
料と難黒鉛化性炭素質材料とを適宜組み合わせて使用す
ることもできる。具体的には、コークスやカーボンブラ
ック等の骨材とピッチ等の結合剤とを用いて圧粉体を形
成することができる。粒子状の骨材を用いる場合には、
平均粒径が50μm以下の粉粒体を用いることが好まし
い。平均粒径が50μmを超えると、炭素クラスター製
造時に蒸発しにくくなり、またスパッターによる粒子脱
落が多くなり、効率の低下を招く。更に別の観点から見
ると、成形体の強度低下を招き易くなり、歩留りも悪く
なる可能性がある。
化性炭素質材料を用いて圧粉体を製造する際には、生コ
ークスやメソフェーズカーボン等の自己結合性炭素質材
料を用いる場合には単独で圧粉体を形成し得るし、それ
以外は適宜の骨材(粒子状以外に繊維状等の形状でもよ
い)と結合剤とを組み合せて圧粉体を形成することがで
きる。その際に、骨材や結合剤として未黒鉛化炭素質材
料と難黒鉛化性炭素質材料とを適宜組み合わせて使用す
ることもできる。具体的には、コークスやカーボンブラ
ック等の骨材とピッチ等の結合剤とを用いて圧粉体を形
成することができる。粒子状の骨材を用いる場合には、
平均粒径が50μm以下の粉粒体を用いることが好まし
い。平均粒径が50μmを超えると、炭素クラスター製
造時に蒸発しにくくなり、またスパッターによる粒子脱
落が多くなり、効率の低下を招く。更に別の観点から見
ると、成形体の強度低下を招き易くなり、歩留りも悪く
なる可能性がある。
【0010】骨材と結合剤とを組み合わせた圧粉体の製
造は、常法により骨材を粉砕して適宜の粒度に調整し、
次いで結合剤と適宜の温度で混和し、かくして得られる
造粒物を再度粉砕して粒度を調整した後、冷間等方圧加
圧成形、押出、型込め等の成形法を用いて成形すること
により行なうことができる。あるいは、熱間等方圧加圧
成形やホットプレス法を用いて前記高温処理と並行して
行なうこともできる。また、自己結合性の炭素質材料を
用いる場合には、この炭素質材料を適宜の粒度に調整し
た後、前述の様な成形法により成形して圧粉体を製造す
ることができる。なお、金属入りフラーレンの製造に用
いる電極を作製する場合は、例えば前記混和の際に所望
する金属化合物(例えばSc、Y、La、Ce、Pr、
Nd、Gd、Lu等の元素周期律表IIIa族元素の酸
化物)を前記未黒鉛化炭素質材料乃至は難黒鉛化性炭素
質材料と混和することにより含有させればよい。
造は、常法により骨材を粉砕して適宜の粒度に調整し、
次いで結合剤と適宜の温度で混和し、かくして得られる
造粒物を再度粉砕して粒度を調整した後、冷間等方圧加
圧成形、押出、型込め等の成形法を用いて成形すること
により行なうことができる。あるいは、熱間等方圧加圧
成形やホットプレス法を用いて前記高温処理と並行して
行なうこともできる。また、自己結合性の炭素質材料を
用いる場合には、この炭素質材料を適宜の粒度に調整し
た後、前述の様な成形法により成形して圧粉体を製造す
ることができる。なお、金属入りフラーレンの製造に用
いる電極を作製する場合は、例えば前記混和の際に所望
する金属化合物(例えばSc、Y、La、Ce、Pr、
Nd、Gd、Lu等の元素周期律表IIIa族元素の酸
化物)を前記未黒鉛化炭素質材料乃至は難黒鉛化性炭素
質材料と混和することにより含有させればよい。
【0011】次に、かくして得られる圧粉体を高温処理
する。この高温処理は、炭素質材料から揮発分を除き、
炭素化が十分に進行する温度での熱処理程度でもよく、
黒鉛化が十分に進行する温度での熱処理を必ずしも必要
としない。あるいは、炭素化を進行させる熱処理(焼
成)と黒鉛化を進行させる熱処理(黒鉛化処理)とを組
み合わせて行なってもよい。また、常法に従って、焼成
品を緻密化させるためのピッチや樹脂の含浸、二次焼成
を合わせて行なってもよい。通常、高温処理は800乃
至3000℃の温度範囲で行ない、その際には従来公知
の焼成炉、含浸装置、黒鉛化炉などを使用することがで
きるし、ホットプレスや熱間等方圧加圧成形を用いるこ
ともできる。
する。この高温処理は、炭素質材料から揮発分を除き、
炭素化が十分に進行する温度での熱処理程度でもよく、
黒鉛化が十分に進行する温度での熱処理を必ずしも必要
としない。あるいは、炭素化を進行させる熱処理(焼
成)と黒鉛化を進行させる熱処理(黒鉛化処理)とを組
み合わせて行なってもよい。また、常法に従って、焼成
品を緻密化させるためのピッチや樹脂の含浸、二次焼成
を合わせて行なってもよい。通常、高温処理は800乃
至3000℃の温度範囲で行ない、その際には従来公知
の焼成炉、含浸装置、黒鉛化炉などを使用することがで
きるし、ホットプレスや熱間等方圧加圧成形を用いるこ
ともできる。
【0012】かくして得られる高温処理物を、必要に応
じて機械加工することにより所望する炭素クラスター製
造用原料の成形体を得ることができる。成形体は、アー
ク放電方式用の柱状をはじめとして様々な形状とするこ
とができる。成形体のかさ密度は、1.00乃至2.0
0Mg/m3であることが好ましい。かさ密度が1.0
0Mg/m3未満であると、多孔質となり、使用の際の
固定が難しくなり、またスパッターによる粒子脱落が多
くなる。更に、単位体積あたりの材料量が少ないため
に、より多くの作業回数を必要とし、経済的な効率が悪
くなる。かさ密度が2.00Mg/m3を超えると、耐
スポーリング性が劣化し、放電の際の熱衝撃によりクラ
ックが発生し易くなり、ひいては成形体の破損につなが
る。また、成形体の電気固有抵抗は、10μΩ・m以上
であることが好ましい。固有抵抗が10μΩ・m未満で
あると、アーク放電がしにくく、発熱量が不足し、カー
ボンの蒸発速度が著しく低下するという不都合がある。
このため、放電の際に、より多くの電流を流す必要があ
り、経済性が悪くなる。更に、成形体が炭素質材料のみ
から成る成形体である場合の三点曲げ強さは10MPa
以上であることが好ましい。即ち、アーク放電方式の場
合には、放電に耐え得る強度や耐熱衝撃性を保つ上で1
0MPa以上の曲げ強さが必要であり、これより低いと
粒子脱落が生じ易くなる。
じて機械加工することにより所望する炭素クラスター製
造用原料の成形体を得ることができる。成形体は、アー
ク放電方式用の柱状をはじめとして様々な形状とするこ
とができる。成形体のかさ密度は、1.00乃至2.0
0Mg/m3であることが好ましい。かさ密度が1.0
0Mg/m3未満であると、多孔質となり、使用の際の
固定が難しくなり、またスパッターによる粒子脱落が多
くなる。更に、単位体積あたりの材料量が少ないため
に、より多くの作業回数を必要とし、経済的な効率が悪
くなる。かさ密度が2.00Mg/m3を超えると、耐
スポーリング性が劣化し、放電の際の熱衝撃によりクラ
ックが発生し易くなり、ひいては成形体の破損につなが
る。また、成形体の電気固有抵抗は、10μΩ・m以上
であることが好ましい。固有抵抗が10μΩ・m未満で
あると、アーク放電がしにくく、発熱量が不足し、カー
ボンの蒸発速度が著しく低下するという不都合がある。
このため、放電の際に、より多くの電流を流す必要があ
り、経済性が悪くなる。更に、成形体が炭素質材料のみ
から成る成形体である場合の三点曲げ強さは10MPa
以上であることが好ましい。即ち、アーク放電方式の場
合には、放電に耐え得る強度や耐熱衝撃性を保つ上で1
0MPa以上の曲げ強さが必要であり、これより低いと
粒子脱落が生じ易くなる。
【0013】
【実施例】本発明を以下の実施例に基づき具体的に説明
するが、本発明の実施態様はこれらに限定されない。
するが、本発明の実施態様はこれらに限定されない。
【0014】実施例1
石油系コークス(平均粒径:20μm)100質量部に
対し市販のコールタールピッチ(中ピッチ、軟化点95
℃)65質量部を加え、150〜250℃で混練りを行
なった。この混練物を平均粒径約100μmに粉砕後、
約98MPaの加圧力で冷間等方圧加圧成形を行なっ
た。その後、得られた圧粉体を約1000℃で焼成し、
不活性雰囲気下で約2800℃まで昇温して熱処理を行
ない、300×200×80(mm)の寸法の黒鉛化物
を得た。この黒鉛化物のかさ密度は1.7Mg/m3で
あり、電気固有抵抗は13μΩ・mであり、三点曲げ強
さは30MPaであった。
対し市販のコールタールピッチ(中ピッチ、軟化点95
℃)65質量部を加え、150〜250℃で混練りを行
なった。この混練物を平均粒径約100μmに粉砕後、
約98MPaの加圧力で冷間等方圧加圧成形を行なっ
た。その後、得られた圧粉体を約1000℃で焼成し、
不活性雰囲気下で約2800℃まで昇温して熱処理を行
ない、300×200×80(mm)の寸法の黒鉛化物
を得た。この黒鉛化物のかさ密度は1.7Mg/m3で
あり、電気固有抵抗は13μΩ・mであり、三点曲げ強
さは30MPaであった。
【0015】実施例2
石油系コークス100質量部に対しコールタールピッチ
65質量部を加え、焼成後にピッチ含浸と二次焼成を行
なった以外は実施例1と同様にして黒鉛化物を得た。こ
の黒鉛化物のかさ密度は1.8Mg/m3であり、電気
固有抵抗は11μΩ・mであり、三点曲げ強さは38M
Paであった。
65質量部を加え、焼成後にピッチ含浸と二次焼成を行
なった以外は実施例1と同様にして黒鉛化物を得た。こ
の黒鉛化物のかさ密度は1.8Mg/m3であり、電気
固有抵抗は11μΩ・mであり、三点曲げ強さは38M
Paであった。
【0016】実施例3
メソカーボンマイクロビーズ(平均粒径:10μm)を
単独で冷間等方圧加圧成形した以外は実施例1と同様に
して黒鉛化物を得た。この黒鉛化物のかさ密度は1.9
Mg/m3であり、電気固有抵抗は14μΩ・mであ
り、三点曲げ強さは101MPaであった。
単独で冷間等方圧加圧成形した以外は実施例1と同様に
して黒鉛化物を得た。この黒鉛化物のかさ密度は1.9
Mg/m3であり、電気固有抵抗は14μΩ・mであ
り、三点曲げ強さは101MPaであった。
【0017】実施例4
市販のファーネスブラック(電子顕微鏡法により測定し
た平均粒径:約0.1μm、窒素吸着法により測定した
比表面積:23m2/g)100質量部に対し市販のコ
ールタールピッチ(中ピッチ、軟化点95℃)75質量
部を加え、Z型ミキサー内で150〜200℃で混練り
を行なった。この混練物を平均粒径約50μmに粉砕
後、型押しプレスを用いて約98MPaの加圧力で成形
を行なった。その後、得られた圧粉体を約1000℃で
焼成し、不活性雰囲気下で約2800℃まで昇温して熱
処理を行ない、120×240×50(mm)の寸法の
高温処理物を得た。この高温処理物のかさ密度は1.8
Mg/m3であり、電気固有抵抗は55μΩ・mであ
り、三点曲げ強さは41MPaであった。
た平均粒径:約0.1μm、窒素吸着法により測定した
比表面積:23m2/g)100質量部に対し市販のコ
ールタールピッチ(中ピッチ、軟化点95℃)75質量
部を加え、Z型ミキサー内で150〜200℃で混練り
を行なった。この混練物を平均粒径約50μmに粉砕
後、型押しプレスを用いて約98MPaの加圧力で成形
を行なった。その後、得られた圧粉体を約1000℃で
焼成し、不活性雰囲気下で約2800℃まで昇温して熱
処理を行ない、120×240×50(mm)の寸法の
高温処理物を得た。この高温処理物のかさ密度は1.8
Mg/m3であり、電気固有抵抗は55μΩ・mであ
り、三点曲げ強さは41MPaであった。
【0018】実施例5
ファーネスブラックの代わりに市販のサーマルブラック
(電子顕微鏡法により測定した平均粒径:約0.1μ
m、窒素吸着法により測定した比表面積:19m 2/
g)を用い、ピッチの添加割合をサーマルブラック10
0質量部に対して45質量部とした以外は、実施例4と
同様にして高温処理物を得た。この高温処理物のかさ密
度は1.8Mg/m3であり、電気固有抵抗は81μΩ
・mであり、三点曲げ強さは30MPaであった。
(電子顕微鏡法により測定した平均粒径:約0.1μ
m、窒素吸着法により測定した比表面積:19m 2/
g)を用い、ピッチの添加割合をサーマルブラック10
0質量部に対して45質量部とした以外は、実施例4と
同様にして高温処理物を得た。この高温処理物のかさ密
度は1.8Mg/m3であり、電気固有抵抗は81μΩ
・mであり、三点曲げ強さは30MPaであった。
【0019】実施例6
実施例4で用いたファーネスブラック60質量部と実施
例1で用いた石油系コークス40質量部とに実施例1で
用いたピッチ70質量部を加えて混練りした以外は実施
例1と同様にして高温処理物を得た。この高温処理物の
かさ密度は1.7Mg/m3であり、電気固有抵抗は3
5μΩ・mであり、三点曲げ強さは34MPaであっ
た。
例1で用いた石油系コークス40質量部とに実施例1で
用いたピッチ70質量部を加えて混練りした以外は実施
例1と同様にして高温処理物を得た。この高温処理物の
かさ密度は1.7Mg/m3であり、電気固有抵抗は3
5μΩ・mであり、三点曲げ強さは34MPaであっ
た。
【0020】参考例1
石油系コークスの代わりに市販の天然りん状黒鉛(平均
粒径:約100μm)を用い、ピッチの添加割合を天然
黒鉛100質量部に対して40質量部とし、混練物の粉
砕後の平均粒径を約500μmとした以外は、実施例1
と同様にして高温処理物を得た。この高湿処理物のかさ
密度は1.7Mg/m3であり、電気固有抵抗は9μΩ
・mであり、三点曲げ強さは8MPaであった。なお、
本参考例で得られた高温処理物は異方性が強いが、電気
固有抵抗と三点曲げ強さの測定値は試料の長手方向に関
する値である。
粒径:約100μm)を用い、ピッチの添加割合を天然
黒鉛100質量部に対して40質量部とし、混練物の粉
砕後の平均粒径を約500μmとした以外は、実施例1
と同様にして高温処理物を得た。この高湿処理物のかさ
密度は1.7Mg/m3であり、電気固有抵抗は9μΩ
・mであり、三点曲げ強さは8MPaであった。なお、
本参考例で得られた高温処理物は異方性が強いが、電気
固有抵抗と三点曲げ強さの測定値は試料の長手方向に関
する値である。
【0021】実施例1乃至6及び参考例1で得られた黒
鉛化物乃至は高温処理物の夫々から、機械加工により6
×6×120(mm)の寸法のフラーレン製造用電極棒
を切り出し、これを図1に示したフラーレン製造実験装
置11に装着して、アーク放電方式により放電電流を6
0Aとして放電させてロースートを生成させた。
鉛化物乃至は高温処理物の夫々から、機械加工により6
×6×120(mm)の寸法のフラーレン製造用電極棒
を切り出し、これを図1に示したフラーレン製造実験装
置11に装着して、アーク放電方式により放電電流を6
0Aとして放電させてロースートを生成させた。
【0022】放電の際には、実験装置11内を、導入口
12からヘリウムガスを流し、100Torr封入で放
電を行なった。得られた電極棒13を直流電源14と接
続した陽極15に取り付け、ターゲットの役割を有する
陰極16側には黒鉛材17を用いた。放電室18の下部
にロースート回収口19、上部にトラップ20を介して
ロータリーポンプと連結した排気口21が存在する。ロ
ースートは前記トラップ部にも付着した。ロースートと
スパッター物との分離には、35メッシュのふるいを用
いた。ロースート変換率を、これら全てのロースートの
質量を、電極棒の消耗量に対する百分率として求めた。
12からヘリウムガスを流し、100Torr封入で放
電を行なった。得られた電極棒13を直流電源14と接
続した陽極15に取り付け、ターゲットの役割を有する
陰極16側には黒鉛材17を用いた。放電室18の下部
にロースート回収口19、上部にトラップ20を介して
ロータリーポンプと連結した排気口21が存在する。ロ
ースートは前記トラップ部にも付着した。ロースートと
スパッター物との分離には、35メッシュのふるいを用
いた。ロースート変換率を、これら全てのロースートの
質量を、電極棒の消耗量に対する百分率として求めた。
【0023】次に、かくして得られたロースートから、
溶剤としてベンゼンを用いてフラーレンを抽出した。こ
のフラーレンのベンゼン溶液の紫外光スペクトルの測定
からフラーレンを定量し、ロースートに対する百分率と
してフラーレン収率を求めた。また、陰極堆積物の電極
消耗量に対する百分率を計算して、陰極堆積物変換率を
求めた。また、放電時間を30分としたときの夫々の電
極棒の消耗率を測定した。これらの結果を、合せて表1
に示した。
溶剤としてベンゼンを用いてフラーレンを抽出した。こ
のフラーレンのベンゼン溶液の紫外光スペクトルの測定
からフラーレンを定量し、ロースートに対する百分率と
してフラーレン収率を求めた。また、陰極堆積物の電極
消耗量に対する百分率を計算して、陰極堆積物変換率を
求めた。また、放電時間を30分としたときの夫々の電
極棒の消耗率を測定した。これらの結果を、合せて表1
に示した。
【0024】
【表1】
【0025】表1、特に30分の放電による電極消耗量
のデータから明らかな様に、本発明による炭素クラスタ
ー製造用原料を用いると、黒鉛粉末を原料とした場合よ
りロースートの生成効率が高く、あるいは放電電力を低
減させることができ、結果的にロースートの製造コスト
を低下させることができる。これは、放電時間、ロース
ート変換率及びフラーレン収率から総合的に判断したフ
ラーレンの回収効率を見ても明らかである。なお、トラ
ップ20の部分から回収したロースートのみについてフ
ラーレン収率を別途求めたが、何れも表1に示したロー
スート全体のフラーレン収率の平均値より約1乃至3%
高い値を示した。個別に見ると、コークスとピッチとを
原料とした実施例1はロースート変換率が良く効率が良
い。ピッチ含浸、二次焼成によってかさ密度を高めた実
施例2では、ロースートの変換効率が高いと共に、フラ
ーレン収率も高く、また放電がし易い。メソカーボンマ
イクロビーズを用いた実施例3では、ロースート変換率
が良く、効率が良いと共に、放電がし易い。カーボンブ
ラックを用い、固有抵抗の高い実施例4乃至6は、実施
例1乃至3に比べて全般的に電極消耗料が高く、放電効
率が良い。更に個々に見ると、ファーネスブラックを用
いた実施例4は、放電がし易いと共にフラーレン収率が
高い。サーマルブラックを用いた実施例5では、放電が
非常にし易い。更に、ファーネスブラックとコークスと
の混合物を用いた実施例6では、高いフラーレン収率を
保ちながら放電がし易くなる。
のデータから明らかな様に、本発明による炭素クラスタ
ー製造用原料を用いると、黒鉛粉末を原料とした場合よ
りロースートの生成効率が高く、あるいは放電電力を低
減させることができ、結果的にロースートの製造コスト
を低下させることができる。これは、放電時間、ロース
ート変換率及びフラーレン収率から総合的に判断したフ
ラーレンの回収効率を見ても明らかである。なお、トラ
ップ20の部分から回収したロースートのみについてフ
ラーレン収率を別途求めたが、何れも表1に示したロー
スート全体のフラーレン収率の平均値より約1乃至3%
高い値を示した。個別に見ると、コークスとピッチとを
原料とした実施例1はロースート変換率が良く効率が良
い。ピッチ含浸、二次焼成によってかさ密度を高めた実
施例2では、ロースートの変換効率が高いと共に、フラ
ーレン収率も高く、また放電がし易い。メソカーボンマ
イクロビーズを用いた実施例3では、ロースート変換率
が良く、効率が良いと共に、放電がし易い。カーボンブ
ラックを用い、固有抵抗の高い実施例4乃至6は、実施
例1乃至3に比べて全般的に電極消耗料が高く、放電効
率が良い。更に個々に見ると、ファーネスブラックを用
いた実施例4は、放電がし易いと共にフラーレン収率が
高い。サーマルブラックを用いた実施例5では、放電が
非常にし易い。更に、ファーネスブラックとコークスと
の混合物を用いた実施例6では、高いフラーレン収率を
保ちながら放電がし易くなる。
【0026】
【発明の効果】上記実施例でも実証した様に、本発明の
炭素クラスター製造用原料を用いると、従来の黒鉛粉末
を用いて製造された原料を用いた場合に比べてロースー
トの生成効率がはるかに高くなり、結果的に炭素クラス
ター乃至はクラスター化合物の回収効率が著しく高ま
り、製造コストが顕著に低下する。
炭素クラスター製造用原料を用いると、従来の黒鉛粉末
を用いて製造された原料を用いた場合に比べてロースー
トの生成効率がはるかに高くなり、結果的に炭素クラス
ター乃至はクラスター化合物の回収効率が著しく高ま
り、製造コストが顕著に低下する。
【図1】炭素クラスター製造装置の一例を示した模式図
である。
である。
11 フラーレン製造装置
12 ヘリウムガス導入口
13 本発明の炭素クラスター製造用原料である電極棒
14 直流電源
15 陽極
16 陰極
17 黒鉛材
18 放電室
19 ロースート回収口
20 トラップ
21 排気口
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成15年6月10日(2003.6.1
0)
0)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 炭素クラスター製造用原料
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、C60等のフラーレン類
やこれにLa、Y、Sc等ランタニドなどの金属や金属
化合物を内包あるいは付着させた金属入りフラーレン
類、あるいはカーボンナノチューブなどの炭素クラスタ
ー乃至は炭素クラスター化合物を製造するための炭素ク
ラスター製造用原料に関する。
やこれにLa、Y、Sc等ランタニドなどの金属や金属
化合物を内包あるいは付着させた金属入りフラーレン
類、あるいはカーボンナノチューブなどの炭素クラスタ
ー乃至は炭素クラスター化合物を製造するための炭素ク
ラスター製造用原料に関する。
【0002】
【従来の技術】フラーレンは、建築家のバックミンスタ
ー・フラーの名前から由来したもので、C60を代表とし
て、多くの炭素クラスター分子の総称である。このうち
C60は炭素原子60個がサッカーボール状を呈したクラ
スター分子(原子集団)であり、アーク放電、レーザー
蒸発等で発生したすすの中に含まれる。正五角形が12
個と正六角形が20個の32面体の各頂点に炭素原子が
存在する構造となっている。炭素の結晶としては黒鉛と
ダイヤモンドが知られているが、C60は何れとも構造が
違い、第3の炭素といわれている。金属入りフラーレン
はそれら炭素クラスターに金属元素が内包されているか
或いは周囲に付着している炭素クラスター化合物をい
う。C60は中性のままでは伝導キャリアーがないので絶
縁体であるが、C60フィルム中に金属をドープすること
によりLUMOバンドにキャリアーが注入されて金属フ
ラーレンアニオンラジカル塩となる。そして、その中に
高い超伝導転移点を有するものが存在することが確認さ
れている。更にドープのもう1つの形態として、金属が
フラーレン球殻内に入るかあるいは周囲に付着すること
が確認され、その特性が注目されている。炭素クラスタ
ーについては、1970年に大澤により構造モデルが提
唱され、1985年に英国サセックス大学のクロト、米
国ライス大学のスモーリーらによりその存在が確認され
た後、1990年にクレッチマー、ホフマンらによって
合成・単離方法が見い出された。
ー・フラーの名前から由来したもので、C60を代表とし
て、多くの炭素クラスター分子の総称である。このうち
C60は炭素原子60個がサッカーボール状を呈したクラ
スター分子(原子集団)であり、アーク放電、レーザー
蒸発等で発生したすすの中に含まれる。正五角形が12
個と正六角形が20個の32面体の各頂点に炭素原子が
存在する構造となっている。炭素の結晶としては黒鉛と
ダイヤモンドが知られているが、C60は何れとも構造が
違い、第3の炭素といわれている。金属入りフラーレン
はそれら炭素クラスターに金属元素が内包されているか
或いは周囲に付着している炭素クラスター化合物をい
う。C60は中性のままでは伝導キャリアーがないので絶
縁体であるが、C60フィルム中に金属をドープすること
によりLUMOバンドにキャリアーが注入されて金属フ
ラーレンアニオンラジカル塩となる。そして、その中に
高い超伝導転移点を有するものが存在することが確認さ
れている。更にドープのもう1つの形態として、金属が
フラーレン球殻内に入るかあるいは周囲に付着すること
が確認され、その特性が注目されている。炭素クラスタ
ーについては、1970年に大澤により構造モデルが提
唱され、1985年に英国サセックス大学のクロト、米
国ライス大学のスモーリーらによりその存在が確認され
た後、1990年にクレッチマー、ホフマンらによって
合成・単離方法が見い出された。
【0003】その間、アルカリ金属やアルカリ土類金属
のドープによる超伝導体や光が関与した半導体機能、非
線形光学素子への応用、C60とテトラキス[ジメチルア
ミノ]エチレンとの分子錯体が強磁性を有する炭素クラ
スター化合物となる可能性の示唆、水素吸蔵物質や分子
レベルのボールベアリングへの応用など、用途に関する
提案が数多くなされており、将来的にも幅広い利用分野
の開拓が期待される。
のドープによる超伝導体や光が関与した半導体機能、非
線形光学素子への応用、C60とテトラキス[ジメチルア
ミノ]エチレンとの分子錯体が強磁性を有する炭素クラ
スター化合物となる可能性の示唆、水素吸蔵物質や分子
レベルのボールベアリングへの応用など、用途に関する
提案が数多くなされており、将来的にも幅広い利用分野
の開拓が期待される。
【0004】フラーレン等の製造方法としては、現在ア
ーク放電方式やレーザー加熱方式によるものが広く利用
されている。これは炭素表面を3000℃付近まで加熱
して蒸発させ、炭素クラスター乃至はクラスター化合物
を含むすす(ロースート)を得る方法である。その後、
このすすから溶媒抽出法などにより炭素クラスター乃至
はクラスター化合物を分離する。例えばレーザー蒸発法
により、ヤン・チャイ、リチャード・イー・スモーリー
ら[Yan Chai,Richard E.Small
ey et.al,J.Phys.Chem.,95,
7564(1991)]がLaC82の生成を見い出して
いる。その際、この金属入りフラーレンの製造に使用す
る電極を、酸化ランタンと黒鉛粉末[ウルトラ・カーボ
ン(Ultra Carbon)社製黒鉛粉末、ウルト
ラ「エフ」純度(Ultra"F"Purity)]とを
骨材とし、黒鉛セメント[ダイロン・インダストリイズ
(Dylon Industries)社製、ジー・シ
ー(GC)グレード]を結合剤として加えて成形した
後、アルゴン雰囲気中1200℃で焼成して製造してい
る。
ーク放電方式やレーザー加熱方式によるものが広く利用
されている。これは炭素表面を3000℃付近まで加熱
して蒸発させ、炭素クラスター乃至はクラスター化合物
を含むすす(ロースート)を得る方法である。その後、
このすすから溶媒抽出法などにより炭素クラスター乃至
はクラスター化合物を分離する。例えばレーザー蒸発法
により、ヤン・チャイ、リチャード・イー・スモーリー
ら[Yan Chai,Richard E.Small
ey et.al,J.Phys.Chem.,95,
7564(1991)]がLaC82の生成を見い出して
いる。その際、この金属入りフラーレンの製造に使用す
る電極を、酸化ランタンと黒鉛粉末[ウルトラ・カーボ
ン(Ultra Carbon)社製黒鉛粉末、ウルト
ラ「エフ」純度(Ultra"F"Purity)]とを
骨材とし、黒鉛セメント[ダイロン・インダストリイズ
(Dylon Industries)社製、ジー・シ
ー(GC)グレード]を結合剤として加えて成形した
後、アルゴン雰囲気中1200℃で焼成して製造してい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、この様に黒
鉛粉末を焼き固めて製造した原料を使用すると、結果的
にロースートの生成効率が悪く、多大の電力を必要と
し、ひいては炭素クラスター乃至はクラスター化合物の
製造コストが上昇してしまうという不都合があった。そ
こで、本発明者らはアーク放電方式やレーザー加熱方式
により炭素クラスター乃至はクラスター化合物を安価に
製造できる原料を見つけるべく鋭意検討した結果、黒鉛
粉末、即ち既黒鉛化炭素質材料の成形体よりも寧ろ未黒
鉛化炭素質材料であるメソフェーズカーボンを骨材とす
る圧粉体を高温処理して得られる成形体を用いた方が、
ロースートの生成効率がはるかに高く、結果的に炭素ク
ラスター乃至はクラスター化合物の回収効率が著しく高
まり、製造コストが顕著に低下することを見い出し、本
発明を完成するに至った。
鉛粉末を焼き固めて製造した原料を使用すると、結果的
にロースートの生成効率が悪く、多大の電力を必要と
し、ひいては炭素クラスター乃至はクラスター化合物の
製造コストが上昇してしまうという不都合があった。そ
こで、本発明者らはアーク放電方式やレーザー加熱方式
により炭素クラスター乃至はクラスター化合物を安価に
製造できる原料を見つけるべく鋭意検討した結果、黒鉛
粉末、即ち既黒鉛化炭素質材料の成形体よりも寧ろ未黒
鉛化炭素質材料であるメソフェーズカーボンを骨材とす
る圧粉体を高温処理して得られる成形体を用いた方が、
ロースートの生成効率がはるかに高く、結果的に炭素ク
ラスター乃至はクラスター化合物の回収効率が著しく高
まり、製造コストが顕著に低下することを見い出し、本
発明を完成するに至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明の炭素クラ
スター製造用原料は、メソフェーズカーボンを骨材とす
る圧粉体を高温処理して得られる成形体で構成されてい
ることを特徴とする。
スター製造用原料は、メソフェーズカーボンを骨材とす
る圧粉体を高温処理して得られる成形体で構成されてい
ることを特徴とする。
【0007】本発明において使用するメソフェーズカー
ボンは、いわゆる未黒鉛化炭素質材料と呼ばれ、常圧下
又は加圧下での適宜の高温処理により黒鉛化が十分に乃
至はある程度進行する炭素質材料の一種である。メソカ
ーボンマイクロビーズやバルクメソフェーズなどを包含
するメソフェーズカーボン以外の未黒鉛化炭素質材料と
しては、難黒鉛化性炭素質材料を除く各種コークス類
(例えばニードルコークス等の石油系や石炭系の仮焼さ
れた又は仮焼されていないコークス類やアントラセン、
ポリ塩化ビニル等の有機物を炭素化して得られるコーク
ス類を包含する)、各種ピッチ類(コールタールピッチ
や石油系ピッチを包含する)、熱分解炭素などがある。
なお、難黒鉛化性炭素質材料とは、高温処理によっても
黒鉛化が進行し難い炭素質材料を意味し、各種カーボン
ブラック類(サーマルブラック、ファーネスブラック、
ランプブラック、チャネルブラックなどを包含する)、
難黒鉛化性コークス類(フリュードコークス、ギルソナ
イトコークスなどを包含する)、ガラス状炭素、フェノ
ール樹脂やフラン樹脂の炭素化物などを包含する。
ボンは、いわゆる未黒鉛化炭素質材料と呼ばれ、常圧下
又は加圧下での適宜の高温処理により黒鉛化が十分に乃
至はある程度進行する炭素質材料の一種である。メソカ
ーボンマイクロビーズやバルクメソフェーズなどを包含
するメソフェーズカーボン以外の未黒鉛化炭素質材料と
しては、難黒鉛化性炭素質材料を除く各種コークス類
(例えばニードルコークス等の石油系や石炭系の仮焼さ
れた又は仮焼されていないコークス類やアントラセン、
ポリ塩化ビニル等の有機物を炭素化して得られるコーク
ス類を包含する)、各種ピッチ類(コールタールピッチ
や石油系ピッチを包含する)、熱分解炭素などがある。
なお、難黒鉛化性炭素質材料とは、高温処理によっても
黒鉛化が進行し難い炭素質材料を意味し、各種カーボン
ブラック類(サーマルブラック、ファーネスブラック、
ランプブラック、チャネルブラックなどを包含する)、
難黒鉛化性コークス類(フリュードコークス、ギルソナ
イトコークスなどを包含する)、ガラス状炭素、フェノ
ール樹脂やフラン樹脂の炭素化物などを包含する。
【0008】本発明で使用するメソフェーズカーボン
は、自己結合性炭素質材料であり、単独で圧粉体を形成
し得る。粒子状の骨材を用いる場合には、平均粒径が5
0μm以下の粉粒体を用いることが好ましい。平均粒径
が50μmを超えると、炭素クラスター製造時に蒸発し
にくくなり、またスパッターによる粒子脱落が多くな
り、効率の低下を招く。更に別の観点から見ると、成形
体の強度低下を招き易くなり、歩留りも悪くなる可能性
がある。そして、適宜の粒度に調整した後、冷間等方圧
加圧成形、押出、型込め等の成形法を用いて成形して圧
粉体を製造することができる。あるいは、熱間等方圧加
圧成形やホットプレス法を用いて前記高温処理と並行し
て行なうこともできる。なお、金属入りフラーレンの製
造に用いる電極を作製する場合は、例えば、所望する金
属化合物(例えばSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、
Gd、Lu等の元素周期律表IIIa族元素の酸化物)
を、メソフェーズカーボンに混和することにより含有さ
せればよい。
は、自己結合性炭素質材料であり、単独で圧粉体を形成
し得る。粒子状の骨材を用いる場合には、平均粒径が5
0μm以下の粉粒体を用いることが好ましい。平均粒径
が50μmを超えると、炭素クラスター製造時に蒸発し
にくくなり、またスパッターによる粒子脱落が多くな
り、効率の低下を招く。更に別の観点から見ると、成形
体の強度低下を招き易くなり、歩留りも悪くなる可能性
がある。そして、適宜の粒度に調整した後、冷間等方圧
加圧成形、押出、型込め等の成形法を用いて成形して圧
粉体を製造することができる。あるいは、熱間等方圧加
圧成形やホットプレス法を用いて前記高温処理と並行し
て行なうこともできる。なお、金属入りフラーレンの製
造に用いる電極を作製する場合は、例えば、所望する金
属化合物(例えばSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、
Gd、Lu等の元素周期律表IIIa族元素の酸化物)
を、メソフェーズカーボンに混和することにより含有さ
せればよい。
【0009】次に、かくして得られる圧粉体を高温処理
する。この高温処理は、炭素質材料から揮発分を除き、
炭素化が十分に進行する温度での熱処理程度でもよく、
黒鉛化が十分に進行する温度での熱処理を必ずしも必要
としない。あるいは、炭素化を進行させる熱処理(焼
成)と黒鉛化を進行させる熱処理(黒鉛化処理)とを組
み合わせて行なってもよい。また、常法に従って、焼成
品を緻密化させるためのピッチや樹脂の含浸、二次焼成
を合わせて行なってもよい。通常、高温処理は800乃
至3000℃の温度範囲で行ない、その際には従来公知
の焼成炉、含浸装置、黒鉛化炉などを使用することがで
きるし、ホットプレスや熱間等方圧加圧成形を用いるこ
ともできる。
する。この高温処理は、炭素質材料から揮発分を除き、
炭素化が十分に進行する温度での熱処理程度でもよく、
黒鉛化が十分に進行する温度での熱処理を必ずしも必要
としない。あるいは、炭素化を進行させる熱処理(焼
成)と黒鉛化を進行させる熱処理(黒鉛化処理)とを組
み合わせて行なってもよい。また、常法に従って、焼成
品を緻密化させるためのピッチや樹脂の含浸、二次焼成
を合わせて行なってもよい。通常、高温処理は800乃
至3000℃の温度範囲で行ない、その際には従来公知
の焼成炉、含浸装置、黒鉛化炉などを使用することがで
きるし、ホットプレスや熱間等方圧加圧成形を用いるこ
ともできる。
【0010】かくして得られる高温処理物を、必要に応
じて機械加工することにより所望する炭素クラスター製
造用原料の成形体を得ることができる。成形体は、アー
ク放電方式用の柱状をはじめとして様々な形状とするこ
とができる。成形体のかさ密度は、1.00乃至2.0
0Mg/m3であることが好ましい。かさ密度が1.0
0Mg/m3未満であると、多孔質となり、使用の際の
固定が難しくなり、またスパッターによる粒子脱落が多
くなる。更に、単位体積あたりの材料量が少ないため
に、より多くの作業回数を必要とし、経済的な効率が悪
くなる。かさ密度が2.00Mg/m3を超えると、耐
スポーリング性が劣化し、放電の際の熱衝撃によりクラ
ックが発生し易くなり、ひいては成形体の破損につなが
る。また、成形体の電気固有抵抗は、10μΩ・m以上
であることが好ましい。固有抵抗が10μΩ・m未満で
あると、アーク放電がしにくく、発熱量が不足し、カー
ボンの蒸発速度が著しく低下するという不都合がある。
このため、放電の際に、より多くの電流を流す必要があ
り、経済性が悪くなる。更に、成形体が炭素質材料のみ
から成る成形体である場合の三点曲げ強さは10MPa
以上であることが好ましい。即ち、アーク放電方式の場
合には、放電に耐え得る強度や耐熱衝撃性を保つ上で1
0MPa以上の曲げ強さが必要であり、これより低いと
粒子脱落が生じ易くなる。
じて機械加工することにより所望する炭素クラスター製
造用原料の成形体を得ることができる。成形体は、アー
ク放電方式用の柱状をはじめとして様々な形状とするこ
とができる。成形体のかさ密度は、1.00乃至2.0
0Mg/m3であることが好ましい。かさ密度が1.0
0Mg/m3未満であると、多孔質となり、使用の際の
固定が難しくなり、またスパッターによる粒子脱落が多
くなる。更に、単位体積あたりの材料量が少ないため
に、より多くの作業回数を必要とし、経済的な効率が悪
くなる。かさ密度が2.00Mg/m3を超えると、耐
スポーリング性が劣化し、放電の際の熱衝撃によりクラ
ックが発生し易くなり、ひいては成形体の破損につなが
る。また、成形体の電気固有抵抗は、10μΩ・m以上
であることが好ましい。固有抵抗が10μΩ・m未満で
あると、アーク放電がしにくく、発熱量が不足し、カー
ボンの蒸発速度が著しく低下するという不都合がある。
このため、放電の際に、より多くの電流を流す必要があ
り、経済性が悪くなる。更に、成形体が炭素質材料のみ
から成る成形体である場合の三点曲げ強さは10MPa
以上であることが好ましい。即ち、アーク放電方式の場
合には、放電に耐え得る強度や耐熱衝撃性を保つ上で1
0MPa以上の曲げ強さが必要であり、これより低いと
粒子脱落が生じ易くなる。
【0011】
【実施例】本発明を以下の実施例に基づき具体的に説明
するが、本発明の実施態様はこれらに限定されない。
するが、本発明の実施態様はこれらに限定されない。
【0012】メソカーボンマイクロビーズ(平均粒径:
10μm)を単独で約98MPaの加圧力で冷間等方圧
加圧成形した。その後、得られた圧粉体を約1000℃
で焼成し、不活性雰囲気下で約2800℃まで昇温して
熱処理を行ない、300×200×80(mm)の寸法
の黒鉛化物を得た。この黒鉛化物のかさ密度は1.9M
g/m3であり、電気固有抵抗は14μΩ・mであり、
三点曲げ強さは101MPaであった。
10μm)を単独で約98MPaの加圧力で冷間等方圧
加圧成形した。その後、得られた圧粉体を約1000℃
で焼成し、不活性雰囲気下で約2800℃まで昇温して
熱処理を行ない、300×200×80(mm)の寸法
の黒鉛化物を得た。この黒鉛化物のかさ密度は1.9M
g/m3であり、電気固有抵抗は14μΩ・mであり、
三点曲げ強さは101MPaであった。
【0013】(参考例)市販の天然りん状黒鉛(平均粒
径:約100μm)100質量部に対し市販のコールタ
ールピッチ(中ピッチ、軟化点95℃)40質量部を加
え、150〜250℃で混練りを行なった。この混練物
を平均粒径約500μmに粉砕後、約98MPaの加圧
力で冷間等方圧加圧成形を行なった。その後、得られた
圧粉体を約1000℃で焼成し、不活性雰囲気下で約2
800℃まで昇温して熱処理を行ない、300×200
×80(mm)の寸法の黒鉛化物を得た。この黒鉛化物
のかさ密度は1.7Mg/m3であり、電気固有抵抗は
9μΩ・mであり、三点曲げ強さは8MPaであった。
なお、本参考例で得られた高温処理物は異方性が強い
が、電気固有抵抗と三点曲げ強さの測定値は試料の長手
方向に関する値である。
径:約100μm)100質量部に対し市販のコールタ
ールピッチ(中ピッチ、軟化点95℃)40質量部を加
え、150〜250℃で混練りを行なった。この混練物
を平均粒径約500μmに粉砕後、約98MPaの加圧
力で冷間等方圧加圧成形を行なった。その後、得られた
圧粉体を約1000℃で焼成し、不活性雰囲気下で約2
800℃まで昇温して熱処理を行ない、300×200
×80(mm)の寸法の黒鉛化物を得た。この黒鉛化物
のかさ密度は1.7Mg/m3であり、電気固有抵抗は
9μΩ・mであり、三点曲げ強さは8MPaであった。
なお、本参考例で得られた高温処理物は異方性が強い
が、電気固有抵抗と三点曲げ強さの測定値は試料の長手
方向に関する値である。
【0014】上記実施例及び参考例により得られた黒鉛
化物乃至は高温処理物の夫々から、機械加工により6×
6×120(mm)の寸法のフラーレン製造用電極棒を
切り出し、これを図1に示したフラーレン製造実験装置
11に装着して、アーク放電方式により放電電流を60
Aとして放電させてロースートを生成させた。
化物乃至は高温処理物の夫々から、機械加工により6×
6×120(mm)の寸法のフラーレン製造用電極棒を
切り出し、これを図1に示したフラーレン製造実験装置
11に装着して、アーク放電方式により放電電流を60
Aとして放電させてロースートを生成させた。
【0015】放電の際には、実験装置11内を、導入口
12からヘリウムガスを流し、100Torr封入で放
電を行なった。得られた電極棒13を直流電源14と接
続した陽極15に取り付け、ターゲットの役割を有する
陰極16側には黒鉛材17を用いた。放電室18の下部
にロースート回収口19、上部にトラップ20を介して
ロータリーポンプと連結した排気口21が存在する。ロ
ースートは前記トラップ部にも付着した。ロースートと
スパッター物との分離には、35メッシュのふるいを用
いた。ロースート変換率を、これら全てのロースートの
質量を、電極棒の消耗量に対する百分率として求めた。
12からヘリウムガスを流し、100Torr封入で放
電を行なった。得られた電極棒13を直流電源14と接
続した陽極15に取り付け、ターゲットの役割を有する
陰極16側には黒鉛材17を用いた。放電室18の下部
にロースート回収口19、上部にトラップ20を介して
ロータリーポンプと連結した排気口21が存在する。ロ
ースートは前記トラップ部にも付着した。ロースートと
スパッター物との分離には、35メッシュのふるいを用
いた。ロースート変換率を、これら全てのロースートの
質量を、電極棒の消耗量に対する百分率として求めた。
【0016】次に、かくして得られたロースートから、
溶剤としてベンゼンを用いてフラーレンを抽出した。こ
のフラーレンのベンゼン溶液の紫外光スペクトルの測定
からフラーレンを定量し、ロースートに対する百分率と
してフラーレン収率を求めた。また、陰極堆積物の電極
消耗量に対する百分率を計算して、陰極堆積物変換率を
求めた。また、放電時間を30分としたときの夫々の電
極棒の消耗率を測定した。これらの結果を、合せて表1
に示した。
溶剤としてベンゼンを用いてフラーレンを抽出した。こ
のフラーレンのベンゼン溶液の紫外光スペクトルの測定
からフラーレンを定量し、ロースートに対する百分率と
してフラーレン収率を求めた。また、陰極堆積物の電極
消耗量に対する百分率を計算して、陰極堆積物変換率を
求めた。また、放電時間を30分としたときの夫々の電
極棒の消耗率を測定した。これらの結果を、合せて表1
に示した。
【0017】
【表1】
【0018】表1、特に30分の放電による電極消耗量
のデータから明らかな様に、本発明による炭素クラスタ
ー製造用原料を用いると、黒鉛粉末を原料とした場合よ
りロースートの変換率、生成効率が高く、放電がし易い
ことが分かる。このため、放電電力を低減させることが
でき、結果的にロースートの製造コストを低下させるこ
とができる。これは、放電時間、ロースート変換率及び
フラーレン収率から総合的に判断したフラーレンの回収
効率を見ても明らかである。なお、トラップ20の部分
から回収したロースートのみについてフラーレン収率を
別途求めたが、何れも表1に示したロースート全体のフ
ラーレン収率の平均値より約1乃至3%高い値を示し
た。
のデータから明らかな様に、本発明による炭素クラスタ
ー製造用原料を用いると、黒鉛粉末を原料とした場合よ
りロースートの変換率、生成効率が高く、放電がし易い
ことが分かる。このため、放電電力を低減させることが
でき、結果的にロースートの製造コストを低下させるこ
とができる。これは、放電時間、ロースート変換率及び
フラーレン収率から総合的に判断したフラーレンの回収
効率を見ても明らかである。なお、トラップ20の部分
から回収したロースートのみについてフラーレン収率を
別途求めたが、何れも表1に示したロースート全体のフ
ラーレン収率の平均値より約1乃至3%高い値を示し
た。
【0019】
【発明の効果】上記実施例でも実証した様に、本発明の
炭素クラスター製造用原料を用いると、従来の黒鉛粉末
を用いて製造された原料を用いた場合に比べてロースー
トの生成効率がはるかに高くなり、結果的に炭素クラス
ター乃至はクラスター化合物の回収効率が著しく高ま
り、製造コストが顕著に低下する。
炭素クラスター製造用原料を用いると、従来の黒鉛粉末
を用いて製造された原料を用いた場合に比べてロースー
トの生成効率がはるかに高くなり、結果的に炭素クラス
ター乃至はクラスター化合物の回収効率が著しく高ま
り、製造コストが顕著に低下する。
【図面の簡単な説明】
【図1】炭素クラスター製造装置の一例を示した模式図
である。
である。
【符号の説明】
11 フラーレン製造装置
12 ヘリウムガス導入口
13 本発明の炭素クラスター製造用原料である電極棒
14 直流電源
15 陽極
16 陰極
17 黒鉛材
18 放電室
19 ロースート回収口
20 トラップ
21 排気口
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 長澤 健
東京都文京区湯島2丁目10番10号マキノビ
ル 東洋炭素株式会社内
Fターム(参考) 4G146 AA01 AA02 AA07 AB05 AC20B
AC22B AC23B BA01 BA02
BA22 BA23 BA24 BA27 BA40
BA46 BB04 BB05 BB06 BB10
BC04 BC07 BC17 BC23 BC33B
BC35B
Claims (2)
- 【請求項1】 メソフェーズカーボンを骨材とする圧粉
体を高温処理して得られる成形体で構成されていること
を特徴とする炭素クラスター製造用原料。 - 【請求項2】 前記圧粉体に、元素周期律表IIIa族の
元素の酸化物が混和されている請求項1に記載の炭素ク
ラスター製造用原料。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003163844A JP2003327421A (ja) | 2003-06-09 | 2003-06-09 | 炭素クラスター製造用原料 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003163844A JP2003327421A (ja) | 2003-06-09 | 2003-06-09 | 炭素クラスター製造用原料 |
Related Parent Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP02300694A Division JP3466691B2 (ja) | 1994-01-07 | 1994-01-07 | 炭素クラスター製造用原料 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003327421A true JP2003327421A (ja) | 2003-11-19 |
Family
ID=29707539
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003163844A Pending JP2003327421A (ja) | 2003-06-09 | 2003-06-09 | 炭素クラスター製造用原料 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2003327421A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011106030A (ja) * | 2009-11-17 | 2011-06-02 | Siemens Ag | 金属ナノクラスターのフラーライドの合成方法並びに金属ナノクラスターのフラーライドを含む材料 |
CN114213128A (zh) * | 2021-12-28 | 2022-03-22 | 成都炭素有限责任公司 | 一种等静压成型制氟碳阳极板的制备方法 |
-
2003
- 2003-06-09 JP JP2003163844A patent/JP2003327421A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011106030A (ja) * | 2009-11-17 | 2011-06-02 | Siemens Ag | 金属ナノクラスターのフラーライドの合成方法並びに金属ナノクラスターのフラーライドを含む材料 |
CN114213128A (zh) * | 2021-12-28 | 2022-03-22 | 成都炭素有限责任公司 | 一种等静压成型制氟碳阳极板的制备方法 |
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Date | Code | Title | Description |
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A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20040629 |
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A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20040826 |
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