JPH09309711A - 炭素クラスター、それを製造するための原料及びその炭素クラスターの製造方法 - Google Patents

炭素クラスター、それを製造するための原料及びその炭素クラスターの製造方法

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JPH09309711A
JPH09309711A JP8181239A JP18123996A JPH09309711A JP H09309711 A JPH09309711 A JP H09309711A JP 8181239 A JP8181239 A JP 8181239A JP 18123996 A JP18123996 A JP 18123996A JP H09309711 A JPH09309711 A JP H09309711A
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carbon cluster
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Shigeyuki Ukita
茂幸 浮田
Toshiaki Sogabe
敏明 曽我部
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Toyo Tanso Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、新規な炭素クラスター,この炭素
クラスターを製造する原料及びその炭素クラスターの製
造方法を提供し、かつMC60,MC70の抽出方法を提供
する。 【解決手段】 本発明に係る新規な炭素クラスターは、
SrC60,SrC70の組成を有する炭素クラスターであ
る。この炭素クラスターは、炭素質原料に酸化ストロン
チウム等のストロンチウム化合物を添加したものを原料
とし、アーク放電等により製造するようにした。また、
MC60,MC70(但し、MはSrを除く金属)を含むス
スより、アニリンを用いて抽出した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規な炭素クラス
ター、特にSrC60,SrC70の組成を有する炭素クラ
スター、この炭素クラスターを製造するための原料及び
その炭素クラスターを製造する方法に関するものであ
り、さらにMC60,MC70の組成を有する炭素クラスタ
ーを製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】炭素クラスターは、1985年、ライス
大学のクロトー(Kroto)とスモーリー(Smal
ley)らによって発見されたC60やC70等のいわゆる
フラーレン類を始めとして、これまでに各種の炭素クラ
スターが発見されており、世界中で炭素クラスターの物
性や製造方法が盛んに研究されるようになってきた。例
えば、ヘバードら〔A.F.Hebard et a
l.,Nature,350,600(1991)〕に
より、C60薄膜にカリウム(K)をドーピングすれば、
臨界温度Tc=18Kの超伝導体になることが発見さ
れ、また谷垣ら〔K.Tanigaki et a
l.,Nature,352,222(1991)〕に
より、Cs2 RbC60がTc=33Kの超伝導体である
ことが報告されている。また、ある種の置換基を付加し
たC60(水溶性)がヒト免疫不全ウイスル(HIV)の
増殖を抑えることがフリードマンら〔S.H.Frie
dman et al.,J.Am.Chem.So
c.,115,6506(1993)〕によって報告さ
れている。
【0003】また、ヘテロ原子を含有した炭素クラスタ
ーの一種である、炭素クラスターのかごの中に金属原子
を内包した金属内包クラスターは、超原子の典型であ
り、内包される元素や内包するクラスターの構造によ
り、様々な物性を示すことが予想され、有益な特性が期
待されている。期待される特性の一つとして、上述の超
伝導性が挙げられ、金属をドーピングした炭素クラスタ
ーは大気中で不安定であることに対して、金属内包クラ
スターは大気中で比較的安定している。従って、金属内
包クラスターで超伝導性を有するものが発見されれば、
その意義は極めて大きい。その他、金属内包クラスター
は、半導体材料,導電材料,磁性材料等の産業上かなり
広い分野の用途が期待されている。
【0004】上記のように、現在、金属内包クラスター
に対する関心は高く、各種の研究が盛んに進められてい
る。例えば、スモーリーやチャイら〔R.E.Smal
ley,Y.Chai et al.,J.Phys.
Chem.,95,7564(1991)〕による炭素
クラスターC82にランタン(La)原子を内包したLa
@C82、篠原や佐藤ら〔H.Shinohara,H.
Sato et al.,J.Phys.Chem.,
96,3571(1992)〕による炭素クラスターC
82にイットリウム(Y)原子を内包したY@C82又はY
2 @C82、同じく篠原や佐藤ら〔H.Shinohar
a,H.Sato et al.,Nature,35
7,52(1992)〕による炭素クラスターC82にス
カンジウム(Sc)原子を内包したSc@C82、Sc2
@C82、Sc3 @C82、ギランら〔E.G.Gilla
n et al.,J.Phys.Chem.,96,
6869(1992)〕による炭素クラスターC82にセ
リウム(Ce)、ネオジウム(Nd)、サマリウム(S
m)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、
テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミ
ウム(Ho)、エルビウム(Er)の各原子を内包した
各種金属内包クラスターの生成の報告があり、炭素クラ
スターC82やC84の中に周期表III A族金属のほとんど
が内包されることが知られている。これら各種金属内包
炭素クラスターC82やC84は、La@C82,Y@C82
Gd@C82を始めとして二硫化炭素,トルエン等の有機
溶媒で抽出可能であり、分離,精製により単離され、そ
の物性についての研究が進められつつある。
【0005】さらに近年、スモーリーやグオら〔R.
E.Smalley,T.Guo et al.,Sc
ience,257,1661(1992)〕により炭
素クラスターC28やC60にウラン(U),ハフニウム
(Hf),ジルコニウム(Zr),チタン(Ti)原子
を内包したU@C28,U@C60,Hf@C28,Zr@C
28,Ti@C28の生成が報告され、またスモーリーやワ
ンら〔R.E.Smalley,L.S.Wang e
t al.,Z.Phys.,D,印刷中〕により、酸
化カルシウム(CaO)を炭素に対して原子数比で0.
3%添加した炭素質原料を使用して、アーク放電にてC
a@C60が生成され、二硫化炭素で抽出可能であること
が報告されている。また、田路ら〔田路和幸,高橋英志
等,第10回フラーレン総合シンポジウム講演要旨集,
P150,1996〕により、La@C60,Y@C60
Gd@C60,Ce@C60,Pr@C60などが生成された
ことが報告されている。このように最近では、各種金属
内包炭素クラスターM@C60が各種金属内包炭素クラス
ターM@C82に比べて種類は少ないものの、その生成は
着実に確認され始めている。しかし、生成していても、
溶媒により抽出できるものはこれまでにCa@C60のみ
しか確認されておらず、溶媒で抽出可能な新規な金属内
包炭素クラスターM@C60の生成、さらには既知のM@
60に対しても有効な溶媒抽出方法の実現が要望されて
いた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等も、従来か
ら、炭素クラスターC60へのドーピングにより超伝導性
が観測されることに着目して、種々のアルカリ金属やア
ルカリ土類金属について新素材となりうる金属内包炭素
クラスターの生成,抽出を目的に鋭意実験を行ってきた
が、遂にストロンチウム(Sr)について所期の目的に
達したものである。即ち、SrC60,SrC70の組成を
有するストロンチウム原子含有炭素クラスターに対して
も、今までにない新規な特性を有する化合物,新素材と
して期待されていたが、今までにSrC60,SrC70
生成は報告されておらず、期待される有益な特性を確か
めることができなかった。そこで、本発明は、新規な炭
素クラスターであるSrC60,SrC70の組成を有する
ストロンチウム原子含有炭素クラスター、この炭素クラ
スターを製造するための原料及びその炭素クラスターの
製造方法を提供することを目的とし、また同時に、これ
までに発見されたMC60,MC70の優れた抽出方法を提
供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る炭素クラス
ターは、SrC60,SrC70の組成を有する炭素クラス
ターである。かかる炭素クラスターは、炭素質原料にス
トロンチウム化合物を添加した原料を用いれば製造でき
る。この炭素クラスターを製造する方法としては、従来
から知られている炭素クラスターを製造する方法であれ
ば良く、例えば炭素質材料から成る電極を原料としてこ
の電極間にアーク放電によって原料を蒸発させる方法
(アーク放電方式)、炭素質原料に高電流を流して原料
を蒸発させる方法(抵抗加熱方式)、レーザー照射によ
って原料を蒸発させる方法(レーザー蒸発方式)等があ
る。
【0008】本発明に係る炭素質原料とは、実質的に炭
素から成り、その他製造上不可避の不純物元素、例え
ば、Si,Fe,V,Na,Al,Ni,Pb,Cr,
Mg,Ti,S,P,N等を含んでいてもよい。本発明
は、このような炭素質原料に、炭酸ストロンチウム,酸
化ストロンチウム,フッ化ストロンチウム等の、炭酸
塩,硫酸塩,硝酸塩,酢酸塩,リン酸塩,シュウ酸塩,
フッ化物,塩化物,臭化物,ヨウ化物,アルキル化物,
有機化合物などのストロンチウム化合物(但し、本発明
では、ストロンチウム単体もストロンチウム化合物に含
むものとする。)を一種又は二種以上混合して添加した
原料を用いて、炭素クラスターを製造する。
【0009】そして、SrC60,SrC70を製造するた
めの原料に存在するストロンチウムは、添加したストロ
ンチウム化合物の形態として、又は原料炭素と化学結合
した形態として存在していてもよい。但し、いずれの形
態でも、原料に存在するストロンチウムは、その効果が
均一に現れるようにするため、炭素とストロンチウムが
均一に混在していることが好ましい。かかる原料として
は、ストロンチウム化合物と炭素質粉との混合物や、そ
れらを成形、さらにはそれを熱処理した材料が使用でき
る。また、成形体に限らず、粉末状であってもよい。
【0010】次に、本発明に係る原料の代表的な製造方
法を以下に詳細に記述する。
【0011】ストロンチウム化合物としては、固体,液
体又は気体状のものが挙げられる。固体のものを使用す
る場合は、ストロンチウム化合物を均一に混在させるた
め、平均粒径0.1μm〜1mmの粉末又はその大きさ
に粉末化したものを使用することが好ましい。
【0012】炭素質粉を具体的に挙げると、ニードルコ
ークス,レギュラーコークス,ピッチコークス,フリュ
ードコークス,ギルソナイトコークス等の石油系や石炭
系のか焼された又はか焼されていない各種コークス粉
類、PAN系やピッチ系等の各種炭素繊維粉、メソカー
ボンマイクロビーズやバルクメソフェーズ等の各種メソ
フェーズカーボン粉、サーマルブラック,ファーネスブ
ラック,ランプブラック,チャンネルブラック等の各種
カーボンブラック粉、各種ガラス状炭素粉、各種熱分解
炭素粉,各種人造黒鉛粉及び各種天然黒鉛粉などの、従
来から炭素材料の骨材として使用されているものが適応
できる。また、燃焼すれば炭素質に変化するものなども
使用可能である。これらの炭素質粉は、ストロンチウム
化合物を均一に混合できるものにするため、平均粒径
0.1μm〜1mmの粉末又はその大きさに粉末化した
ものを用いることが好ましい。粉末化は、公知の方法で
行えばよく、例えばハンマーミル,ジェットミル,ボー
ルミル等の粉砕機で行えばよい。
【0013】これらのストロンチウム化合物と炭素質粉
とを結合させるものとして、必須のものではないが、炭
素質粉が自己粘結性を有していない場合等には、コール
タールピッチや石油系ピッチ等の各種ピッチ類,フェノ
ール樹脂やフラン樹脂等の各種合成樹脂などの接着作用
を奏する結合剤を用いることが好ましい。これらの結合
剤を用いると、ストロンチウム化合物と炭素質粉とが密
着し易くなり、ストロンチウム化合物の添加による効果
が発揮され易くなるからである。
【0014】ストロンチウム化合物,炭素質粉及び必要
に応じて用いる結合剤の混合は、公知の方法で行えばよ
く、例えば、ワーナー型,パドル羽根型等の各種混合機
で行い、また加熱ニーダーも併用するなどして、通常は
100〜250°C程度の温度で行うが、本発明はこれ
らの混合機や温度等の混合条件に特別の制約を受けるも
のでないことはもちろんである。
【0015】次いで、常法に従い、例えば、型押し成
形,押出し成形,振動型込め成形,冷間静水圧加圧成形
及びホットプレス等の方法で成形し、ストロンチウム化
合物,炭素質粉及び必要に応じて用いる結合剤の混合物
又はその混合物を粉砕した二次粉を成形する。
【0016】かくして得られた成形体は、そのままでも
SrC60,SrC70を製造するための原料として使用で
きるが、強度が低いため、ストロンチウム化合物が揮
散,蒸発しない程度の温度で熱処理を行い、強度を高め
ることが好ましい。通常は400〜1500°Cで熱処
理を行う。この熱処理により、結合剤は炭化してストロ
ンチウム化合物や炭素質粉と渾然一体となってSr
60,SrC70を製造するための原料の一成分として機
能し、さらには成形体の強度も高くなる。かかる熱処理
は、単独炉,連続炉,トンネル炉等の加熱炉を用いるな
どして常法に従い、成形体の酸化及び変形を防止するた
めのコークス粉やケイ砂等のパッキング材中に埋めた
り、窒素ガスやアルゴンガス等の非酸化性雰囲気下で行
う。
【0017】成形体は、この熱処理によって炭素質粉や
結合剤に含まれる揮発分の揮散等によって気孔が多く形
成され、強度や嵩密度が低下するため、必要に応じて各
種ピッチ類等を成形体に含浸させてその気孔を塞ぎ、さ
らに再熱処理を行ってもよい。この含浸・再熱処理によ
って強度及び嵩密度を向上することができる。
【0018】一方、ストロンチウム化合物を人造黒鉛体
や炭素成形体等の中に含浸し、必要に応じて加熱処理を
施した材料も、原料として使用することができる。
【0019】成形体の場合において、原料炭素やストロ
ンチウム化合物が粒子状のものを用いて成形体を製造す
る場合には、平均粒径が100μmを超えると、炭素ク
ラスター製造時に蒸発しにくくなり、またスパッターに
よる粒子脱落が多くなり、効率低下を招く。さらに別の
観点から見ると、成形体の強度低下を招き易くなり、歩
留りも悪くなる。従って、粒子状のものを用いる場合に
は、平均粒径100μm以下の粉末で成形体を製造する
ことが好ましい。
【0020】また、炭素質粉,ストロンチウム化合物及
び結合剤には、本発明の目的を阻害しない範囲であれ
ば、その形態を問わず他の元素が存在していてもよい。
【0021】成形体の場合において、嵩密度が1.00
Mg/m3 未満であると、多孔質になってしまい使用の
際に所定の位置に固定することが難しくなり、またスパ
ッターによる粒子脱落も多くなる。さらには、単位体積
当たりの材料量が少ないために、より多くの作業回数を
必要とし、経済性も悪くなる。また、成形体の嵩密度が
2.00Mg/m3 を超えると、耐スポーリング性が劣
化し、放電の際の熱衝撃によって亀裂が発生し易くな
り、ひいては成形体の破損を生じさせる原因にもなる。
従って、成形体の嵩密度は1.00〜2.00Mg/m
3 であることが好ましい。
【0022】また、成形体の場合において、アーク放電
方式によって炭素クラスターを製造する場合には、放電
に耐え得る強度や耐熱衝撃性を保つ上で10MPa以上
の曲げ強さが必要であり、これより低いと粒子脱落が生
じ易くなる。それ故、成形体の曲げ強さは10MPa以
上であることが好ましい。
【0023】このような成形体を、必要に応じて所望の
形状に加工する。例えば、アーク放電方式や抵抗加熱方
式用の原料とする場合には、柱状を始めとして様々な形
状の成形体を製作・加工すればよい。
【0024】また、特開平6−80410号に記載の技
術に代表されるように、微粉末状のものを炭素クラスタ
ー製造用原料とする場合には、ストロンチウム化合物と
炭素質粉とを混合したものや、すでにストロンチウム化
合物が材料中に存在している場合には、その材料を粉砕
した粉末を用いれば足りる。
【0025】炭素クラスター製造用原料に添加するスト
ロンチウム化合物の量は、炭素クラスター発生装置や発
生方法によって適宜任意に調整すればよいが、ストロン
チウムが炭素100質量部に対して10質量部を超える
とススの発生量がやや低下し始め、20質量部を超える
とスス発生量が著しく低下してしまう。一方、ストロン
チウムが炭素100質量部に対して0.02質量部未満
では、SrC60,SrC70炭素クラスターを多量に生成
できず、ストロンチウム化合物添加の効果が現れにくく
なる。従って、炭素100質量部に対して添加するスト
ロンチウムとしては、0.02〜20質量部、特に好ま
しくは0.2〜10質量部になるようにストロンチウム
化合物を添加することが好ましい。
【0026】このような原料を使用することに本発明の
特徴があり、その原料には本発明の目的を阻害しない範
囲であれば、その形態を問わず他の元素が存在していて
もよい。また、原料の形状,炭素クラスターの製造方
法,製造装置,圧力,雰囲気,相手電極材等の製造条件
について特別の制約はない。
【0027】こうして、ストロンチウム化合物を添加し
た原料を用いて、アーク放電式,抵抗加熱式,レーザ蒸
発式等により炭素クラスターを製造すると、ストロンチ
ウム化合物からストロンチウム原子が分解される過程
で、生成途中のC60,C70に含有され、SrC60,Sr
70の炭素クラスターが生成されるものと思われる。
【0028】こうして得られたSrC60,SrC70炭素
クラスターを含むスス,及び既知の方法によって得られ
たストロンチウム以外のMC60,MC70炭素クラスタを
含むススをソックスレー抽出器を用いてアニリンで抽出
し、高速液体クロマトグラフィー等で分離するなどし
て、SrC60,SrC70の組成を有する炭素クラスタ
ー,及びストロンチウム以外のMC60,MC70炭素クラ
スターを得ることができる。なお、抽出溶媒としてアニ
リン以外にもベンゼン,トルエン,二硫化炭素等の溶媒
についてその使用の可能性を試みたが、抽出は確認でき
なかった。
【0029】
【実施例】以下、実施例によって本発明をさらに具体的
に説明する。
【0030】実施例1 人造黒鉛粉〔東洋炭素(株)製,灰分0.01質量%,
平均粒径5〜15μm〕100質量部に対し、酸化スト
ロンチウム(Sr0)〔三津和化学薬品製,純度97
%〕を平均粒径20μmに粉砕したもの3.24質量
部、さらにメチルアルコールとフルフリルアルコールを
若干量(約10質量部)加え、Z型ミキサーで混合後、
ノボラックフェノール樹脂〔住友デュレス(株)製〕を
約50質量部を加えてさらに混合した後、熱ロール(約
100°C)で混合を完結させた。この混合物を平均粒
径が30〜60μmになるように二次粉砕した。この二
次粉を圧力98MPaで室温にて金型成形を行い、成形
体を得た。その後、鉄製サガーを用い詰め粉(炭素粉)
中に成形体を詰め、800°Cで一時焼成を行った。さ
らに、真空中で1100°Cで熱処理を行った。得られ
た材料は、嵩密度1.5Mg/m3 ,曲げ強さ19MP
a及び固有抵抗38μΩ・m(室温)であった。
【0031】この材料をアーク放電方式の製造装置の陽
極電極棒として使用し、常法に従いアーク放電を行っ
た。この際の放電電流及び電圧は80Aと25V,装置
のチャンバー内はヘリウム雰囲気とし、その圧力は10
0Torrとした。このアーク放電により発生したスス
を回収した。さらに、回収したススをアニリンで抽出
し、その抽出溶液をレーザー脱離飛行時間型(LD−T
OF)質量分析計で調べた結果を図1に示す。
【0032】図1から明らかなように、C60,C70の他
にSrC60に対応する質量数808の位置に、またSr
70に対応する質量数928の位置にそれぞれ強いピー
クが検出されたことから、SrC60,SrC70の組成を
有する炭素クラスターが生成し、抽出されていることが
確認できる。また、イオン化しても壊れていないことか
ら、それぞれストロンチウムを内包した炭素クラスター
Sr@C60,Sr@C70であると推測できる。
【0033】実施例2 イットリウム(Y),ランタン(La),ガドリニウム
(Gd),セリウム(Ce),プラセオジウム(P
r),ネオジウム(Nd),バリウム(Ba),カルシ
ウム(Ca)のそれぞれの酸化物混合炭素棒を陽極電極
として使用し、実施例1と同様の条件でアーク放電を行
って発生したススをそれぞれ回収した。回収したススを
アニリンによりそれぞれ抽出し、その抽出溶液をレーザ
脱離飛行時間型(LD−TOF)質量分析計で調べた結
果を図2〜図9に示す。
【0034】図2から明らかなように、C60,C70,C
74,C76の他にYC60に対応する質量数809の位置
に、またYC70に対応する質量数929の位置にそれぞ
れ強いピークが検出されたことから、YC60,YC70
組成を有する炭素クラスターが抽出されていることが確
認できる。また、イオン化しても壊れていないことか
ら、それぞれイットリウムを内包した炭素クラスターY
@C60,Y@C70であると推測できる。
【0035】図3から明らかなように、C60,C70の他
にLaC60に対応する質量数859の位置に、またLa
70に対応する質量数979の位置にそれぞれ強いピー
クが検出されたことから、LaC60,LaC70の組成を
有する炭素クラスターが抽出されていることが確認でき
る。また、イオン化しても壊れないことから、それぞれ
ランタンを内包した炭素クラスターLa@C60,La@
70であると推測できる。
【0036】図4から明らかなように、C60,C70の他
にGdC60に対応する質量数877の位置に、またGd
70に対応する質量数997の位置にそれぞれ強いピー
クが検出されたことから、GdC60,GdC70の組成を
有する炭素クラスターが抽出されていることが確認でき
る。また、イオン化しても壊れていないことから、それ
ぞれガドリニウムを内包した炭素クラスターGd@
60,Gd@C70であると推測できる。
【0037】図5から明らかなように、C60,C70の他
にCeC60に対応する質量数860の位置に、またCe
70に対応する質量数980の位置にそれぞれ強いピー
クが検出されたことから、CeC60,CeC70の組成を
有する炭素クラスターが抽出されていることが確認でき
る。また、イオン化しても壊れていないことから、それ
ぞれセリウムを内包した炭素クラスターCe@C60,C
e@C70であると推測できる。
【0038】図6から明らかなように、C60,C70の他
にPrC60に対応する質量数861の位置に、またPr
70に対応する質量数981の位置にそれぞれ強いピー
クが検出されたことから、PrC60,PrC70の組成を
有する炭素クラスターが抽出されていることが確認でき
る。また、イオン化しても壊れていないことから、それ
ぞれプラセオジウムを内包した炭素クラスターPr@C
60,Pr@C70であると推測できる。
【0039】図7から明らかなように、C60,C70の他
にNdC60に対応する質量数864の位置に、またNd
70に対応する質量数984の位置にそれぞれ強いピー
クが検出されたことから、NdC60,NdC70の組成を
有する炭素クラスターが抽出されていることが確認でき
る。また、イオン化しても壊れていないことから、それ
ぞれネオジウムを内包した炭素クラスターNd@C60
Nd@C70であると推測できる。
【0040】図8から明らかなように、C60,C70の他
にBaC60に対応する質量数857の位置に、またBa
70に対応する質量数977の位置にそれぞれ強いピー
クが検出されたことから、BaC60,BaC70の組成を
有する炭素クラスターが抽出されていることが確認でき
る。また、イオン化しても壊れていないことから、それ
ぞれバリウムを内包した炭素クラスターBa@C60,B
a@C70であると推測できる。
【0041】図9から明らかなように、C60,C70,C
74,C78の他にCaC60に対応する質量数760の位置
に強いピークが、またCaC70に対応する質量数880
の位置に弱いピークが検出されたことから、CaC60
CaC70の組成を有する炭素クラスターが抽出されてい
ることが確認できる。また、イオン化しても壊れていな
いことから、それぞれカルシウムを内包した炭素クラス
ターCa@C60,Ca@C70であると推測できる。
【0042】比較例1 酸化ストロンチウムを用いないで、それ以外は実施例1
記載の方法と同一方法で100%炭素質から成る材料を
製造した。この材料を陽極電極棒として使用し、実施例
1と同様の条件でアーク放電を行って発生したススを回
収した。回収したススをLD−TOF質量分析計で調べ
た結果、C60,C70等の従来の炭素クラスター以外に
は、何も検出できなかった。
【0043】比較例2 イットリウム,ランタン,ガドリニウム,セリウム,プ
ラセオジウム,ネオジウム,バリウム,カルシウムのそ
れぞれの酸化物混合炭素棒を陽極電極として使用し、実
施例1と同様の条件でアーク放電を行って発生したスス
をそれぞれ回収した。回収したススをベンゼン,トルエ
ン,二硫化炭素の3種類の溶媒でそれぞれ抽出し、その
抽出溶液をレーザー脱離飛行時間型(LD−TOF)質
量分析計で調べた結果、いずれもC60,C70等のCnで
表される炭素クラスターは検出されたが、MC60,MC
70は検出できなかった。
【0044】
【発明の効果】本発明により、新規な炭素クラスターで
あるSrC60,SrC70の組成を有する炭素クラスター
を提供することができる。また、この新規な炭素クラス
ターSrC60,SrC70,及びMC60,MC70はアニリ
ンを用いることにより効率よく抽出できるため、抽出後
の一般的な精製,分離操作で容易に単離することができ
る。従って、本発明は、導電材料,半導体材料,超伝導
材料,磁性材料などへの利用やその物性研究にとって非
常に有益である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で発生したススをアニリンで抽出した
もののLD−TOF質量スペクトルの一部を示す図であ
る。
【図2】実施例2の酸化イットリウム混合炭素棒をアー
ク放電して得たススをアニリンで抽出したもののLD−
TOF質量スペクトルの一部を示す図である。
【図3】実施例2の酸化ランタン混合炭素棒をアーク放
電して得たススをアニリンで抽出したもののLD−TO
F質量スペクトルの一部を示す図である。
【図4】実施例2の酸化ガドリニウム混合炭素棒をアー
ク放電して得たススをアニリンで抽出したもののLD−
TOF質量スペクトルの一部を示す図である。
【図5】実施例2の酸化セリウム混合炭素棒をアーク放
電して得たススをアニリンで抽出したもののLD−TO
F質量スペクトルの一部を示す図である。
【図6】実施例2の酸化プラセオジウム混合炭素棒をア
ーク放電して得たススをアニリンで抽出したもののLD
−TOF質量スペクトルの一部を示す図である。
【図7】実施例2の酸化ネオジウム混合炭素棒をアーク
放電して得たススをアニリンで抽出したもののLD−T
OF質量スペクトルの一部を示す図である。
【図8】実施例2の酸化バリウム混合炭素棒をアーク放
電して得たススをアニリンで抽出したもののLD−TO
F質量スペクトルの一部を示す図である。
【図9】実施例2の酸化カルシウム混合炭素棒をアーク
放電して得たススをアニリンで抽出したもののLD−T
OF質量スペクトルの一部を示す図である。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 SrC60,SrC70の組成を有すること
    を特徴とする炭素クラスター。
  2. 【請求項2】 炭素質原料にストロンチウム化合物を添
    加したことを特徴とするSrC60,SrC70から成る又
    はSrC60,SrC70を含む炭素クラスターを製造する
    ための原料。
  3. 【請求項3】 炭素質原料にストロンチウム化合物を添
    加した原料を用いて、SrC60,SrC70から成る又は
    SrC60,SrC70を含む炭素クラスターを得ることを
    特徴とする炭素クラスターの製造方法。
  4. 【請求項4】 SrC60,SrC70から成る又はSrC
    60,SrC70を含む炭素クラスターをアーク放電により
    製造することを特徴とする請求項3に記載の炭素クラス
    ターの製造方法。
  5. 【請求項5】 SrC60,SrC70から成る又はSrC
    60,SrC70を含む炭素クラスターをアニリンにより抽
    出することを特徴とする請求項3に記載の炭素クラスタ
    ーの製造方法。
  6. 【請求項6】 MC60,MC70から成る又はMC60,M
    70を含む炭素クラスターをアニリンにより抽出するこ
    とを特徴とするMC60,MC70の組成を有する炭素クラ
    スターの製造方法(但し,MはSrを以外の金属であ
    る。)。
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