JP4529504B2 - 内包フラーレンの製造方法及び製造装置 - Google Patents

内包フラーレンの製造方法及び製造装置 Download PDF

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本発明は、C60等のフラーレン分子の内部に銅等のゲスト元素を内包させた内包フラーレンの製造方法及びその製造装置に関するものである。
フラーレン分子の内部にランタン元素(La)が内包されたランタン内包フラーレンは、1985年にC60が発見されたすぐ後に発見された(J. R. Heath et al., 'Lanthannum complexes of spheroidal carbon shells', J. Am. Chem. Soc. 1985, 107, 7779)。数年後、肉眼で見える多量のランタン元素がフラーレン分子Cn(nは60、70、74、82)の内部に内包されたランタン内包フラーレンが、レーザーアブレーション法によって製造された(Y. Chai et al., J. Phys. Chem. 1991, 95, 7564)。また、1990年初期には、ランタン元素以外の元素が内包された内包フラーレンが、レーザーアブレーション法又はアーク放電法によって世界中の様々な研究所で作製された。
希土類金属元素はフラーレン分子の内部に簡単に内包させることができる。
例えば、フラーレン分子Cn(nは60以上)の内部に元素が1つ内包された錯体では、内包される元素としてスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)又はルテチウム(Lu)が挙げられる。
また、フラーレン分子Cn(nは80以上)の内部に元素が2つ内包された錯体では、内包される元素としてイットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、テブビウム(Tb)、ホルミウム(Ho)又はルテチウム(Lu)が挙げられる。
また、フラーレン分子Cn(nは82以上)の内部に元素が3つ内包された錯体では、内包される元素としてスカンジウム(Sc)又はランタン(La)が挙げられる。
さらに、フラーレン分子Cn(nは80以上)の内部に元素が4つ内包された錯体では、内包される元素としてスカンジウム(Sc)又はエルビウム(Er)が挙げられる(例えば、後記の非特許文献1又は非特許文献2参照。)。
現在にいたっては、純ランタノイド内包フラーレンがアーク放電法によって専ら製造されている。
前述のランタノイド元素(3A族)を除く他の元素、具体的にはリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、鉛(Rb)、セシウム(Cs)(1A族)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)(2A族)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)(4A族)、窒素(N)、リン(P)(5B族)、ヘリウム(He)、キセノン(Xe)等(0族)もまた、フラーレン分子の内部に内包された例が最近になって報告されている。
イオンインプランテーションは、上記した元素をフラーレン分子の内部に内包させる手法の一つである。例えばリチウムイオン(Li+)のような十分なエネルギーのイオンビームを、単層又は多層からなる基質フラーレン分子に放射し、イオンがフラーレン分子を貫くことによって、その内部に導入することができる(例えば、後記の非特許文献3参照。)。この方法によれば、内包フラーレンを数%含有した厚さ数百nmの薄膜が得られる。イオンインプランテーションは、アルカリ金属元素及び5B族元素のイオン源を比較的容易に得ることができるため、フラーレン分子の内部にこれらの元素が内包されてなる内包フラーレンを、少量製造するのに適していると考えられている。
H. Shinohara, 'endohedral metallofullerenes: structures and electronic properties', Advances in metal and semiconductor clusters, 1998, 4, 205-226 'endohedral metallofullerenes', Rep. Prog. Phys., 2000, 63, 843-892 R. Tellgmann et al., Nature, 1996, 382, 407
しかしながら、上述したような従来の手法は、周期表における全ての元素に対して適用することができない。即ち、上記の1A族、2A族、3A族、4A族、5B族、0族元素以外の元素を用いて、上記の手法によって内包フラーレンを作製した場合、高精度の分析法によって内包フラーレンの存在を確認することはできても、その量は微々たるものであるため、内包フラーレンのみを分取することはできない。
なぜなら、フラーレン分子の内部に上記の1A族、2A族、3A族、4A族、5B族、0族元素以外の元素を内包させようとした場合、通常の高温合成技術(例えば3000℃)、例えば2A又は4A族の金属元素を内包させるためのアーク放電又はレーザーアブレーションのような技術では、内包フラーレンの状態で存在するのが困難なためである。また、1A又は5B族元素を内包させるためのイオンインプランテーション法、及び0族元素を内包させるための高温(例えば800℃)、高圧(例えば108Pa)法には適用できないためである。
本発明は、かかる従来の実情に鑑みてなされたものであり、周期表の全ての元素に適用可能であり、容易かつ効果的にフラーレン分子の内部に元素を内包させることができる、内包フラーレンの製造方法及び製造装置を提供することにある。
即ち、本発明は、フラーレン分子の内部にゲスト元素を内包させた内包フラーレン(endohedral fulleren)の製造方法において、
前記ゲスト元素の供給源と前記フラーレン分子の供給源とをプラズマ発生室内に存在 させる工程と、
このプラズマ発生室内で前記供給源からの前記ゲスト元素と前記フラーレン分子とを プラズマ励起下で互いに反応させる工程と
を有することを特徴とする、内包フラーレンの製造方法に係るものである。
また、フラーレン分子の内部にゲスト元素を内包させた内包フラーレンを製造する装置において、前記ゲスト元素の供給手段と、前記フラーレン分子の供給手段と、プラズマ励起手段とを有することを特徴とする、内包フラーレンの製造装置に係るものである。
本発明によれば、前記ゲスト元素の供給源と前記フラーレン分子の供給源とを前記プラズマ発生室内に存在させる工程と、このプラズマ発生室内で前記供給源からの前記ゲスト元素と前記フラーレン分子とをプラズマ励起下で互いに反応させる工程とを有するので、容易、安全かつ効果的に前記フラーレン分子の内部に前記ゲスト元素を内包させることができる。また、低温(例えば25℃)、低圧(例えば25Pa)による製造方法なので、周期表の全ての元素に適用可能である。
また、原材料として純粋な前記フラーレン分子を使用するので、生成された前記内包フラーレンは、従来例のようなアーク放電法又はレーザーアブレーション法によって生成されるものと比較して、ほとんど不純物を含まず、材料のポスト処理が簡単である。
本発明の内包フラーレンの製造方法は、前記ゲスト元素と前記フラーレン分子とを互いに衝突反応させて前記ゲスト元素を前記フラーレン分子の内部に導入し、得られた内包フラーレンを精製するのが望ましい。
また、前記プラズマ励起を高周波プラズマ電源によって行うことが好ましい。
具体的には、前記高周波プラズマ電源の電圧を0.1〜1000MHzの周波数に制御することが好ましく、より好ましくは1〜100MHzであり、最適なのは13.56MHzである。
また、前記高周波プラズマ電源のパワーを1〜1000Wとするのが好ましく、より好ましくは20〜200Wである。
前記ゲスト元素がガス状態の場合、ガス状態で供給された前記ゲスト元素と、前記供給源の加熱蒸発により生成した前記フラーレン分子とを反応させればよい。
また、前記ゲスト元素が固体の場合、前記供給源の加熱蒸発により生成した前記フラーレン分子と、前記供給源から飛翔させた粒子状の前記ゲスト元素とを反応させることが好ましい。
上記した前記フラーレン分子の加熱蒸発は、前記フラーレン分子からなる前記供給源の抵抗加熱又は電子ビーム加熱を行えばよい。
また、前記粒子状のゲスト元素を前記供給源から飛翔させるには、前記ゲスト元素からなる前記供給源の抵抗加熱、電子ビーム加熱又はスパッタを行えばよい。前記スパッタの場合、水素、窒素又は不活性ガスの雰囲気ガス下で行うことが好ましい。
また、前記フラーレン分子と前記ゲスト元素との反応を0.1〜10000Paのガス圧中で行うのが好ましく、より好ましくは1〜100Paである。
さらに、上記した前記内包フラーレンの精製工程が、
溶媒によって堆積物の可溶性部分を抽出する工程と、
不必要な沈殿物を濾過する工程と、
HPLC(high-performance liquid chromatography:高速液体クロマトグラフィー )によって目的物を分離する工程と
を有するのが好ましい。
本発明の内包フラーレンの製造装置において、前記プラズマ励起手段が、前記プラズマ発生室内に設けられた対向電極と、この対向電極間に高周波電圧を供給する高周波プラズマ電源とを有するのが望ましい。
具体的には、前記高周波プラズマ電源が0.1〜1000MHzの周波数に制御されるのが好ましく、より好ましくは1〜100MHzであり、最適なのは13.56NHzである。
また、前記高周波プラズマ電源のパワーが1〜1000Wであることが好ましく、より好ましくは20〜200Wである。
また、前記プラズマ発生室内に配された前記供給手段の加熱により前記フラーレン分子が蒸発し、前記ゲスト元素の前記供給手段が前記プラズマ発生室に設けられたゲスト元素含有ガスの導入管からなるのが好ましい。
さらに、前記プラズマ発生室内に配された前記供給手段の加熱により前記フラーレン分子が蒸発し、前記ゲスト元素の前記供給手段から粒子状の前記ゲスト元素が飛翔することが好ましい。
前記フラーレン分子が前記供給手段の抵抗加熱、電子ビーム加熱によって供給されるのが好ましく、前記ゲスト元素が抵抗加熱、電子ビーム加熱又はスパッタによって供給されることが好ましい。前記スパッタの場合、水素、窒素又は不活性ガスの雰囲気下ガス下で行われるのがよい。
また、前記フラーレン分子と前記ゲスト元素との反応を行う際の前記プラズマ発生室内のガス圧が0.1〜10000Paに制御されることが好ましく、より好ましくは1〜100Paである。
本発明に基づく内包フラーレンの製造装置では、前記対向電極に前記ゲスト元素の前記供給手段が接合されているか、或いは、前記対向電極の少なくとも一部が前記ゲスト元素の前記供給手段からなっていることが好ましい。
また、前記対向電極及び前記ゲスト元素の前記供給手段の表面形状が平坦又は粗面化されているのがよい。粗面化された前記対向電極及び前記ゲスト元素の前記供給手段を用いた場合、より効率良く前記ゲスト元素と前記フラーレン分子との前記反応を行うことができる。
さらに、前記対向電極間に、前記フラーレン分子及び前記ゲスト元素の前記供給手段が配置されているのが好ましい。
本発明において、前記フラーレン分子はCn(nは20〜200)で表されるのが望ましい。このフラーレン分子は、炭素のみからなる一連の球状炭素系分子の総称であり、12個の5員環と任意の数の6員環を含んでいる。即ち、20〜200個の炭素原子が球状に結合してクラスター(分子集合体)を構成してなる球状炭素系分子である。前記フラーレン分子Cnの炭素数nは、特に60〜70であることが好ましい。
本発明に基づく内包フラーレンの製造方法及び製造装置によれば、前記ゲスト元素を前記フラーレン分子1つに対して1〜10個内包させることができる。
前記ゲスト元素としては、特に、水素、セシウム、フランシウム、ベリリウム、マグネシウム、ラジウム、プロメチウム、アクチニウム、トリウム、プロトアクチニウム、ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム、バークリウム、カリホルニウム、アインスタイニウム、フェルミウム、メンデレビウム、ノーベリウム、ローレンシウム、ジルコニウム、バナジウム、ニオビウム、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、テクネチウム、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、水銀、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、ヒ素、アンチモン、ビスマス、酸素、硫黄、テルル、ポロニウム、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アスタチン、ネオン、ラドンを含む元素群から選ばれた元素を内包させるのが好ましい。
また、前記ゲスト元素として、遷移金属元素、非遷移金属元素又は半金属元素を内包させるのが好ましい。
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面参照下により具体的に詳細に説明する。
第1の実施の形態
図1は、本発明に基づく内包フラーレンの製造装置の一例の概略断面図である。
図1に示すように、本発明に基づく製造装置1は、プラズマ発生室2内に対向電極(プラズマ電極3a及びグランド電極3b)が設けられ、また、この対向電極3a、3b間に高周波電圧を供給する高周波プラズマ電源4を有する。また、前記フラーレン分子の供給手段として、DC熱源5に接続された加熱板6上にフラーレン分子供給源7が配されている。さらに、ガス導入管8及び真空吸引管9を有する。
前記フラーレン分子は、フラーレン分子供給源7の加熱蒸発により生成することができる。このとき、フラーレン分子供給源7の加熱蒸発は、抵抗加熱又は電子ビーム加熱を行えばよい。
ここで、前記ゲスト元素がヘリウム(He)や窒素(N)等のようなガス状態の場合、ゲスト元素含有ガスをガス導入管8を介してプラズマ発生室2内に導入することができる。ガス状態で供給された前記ゲスト元素と、供給源7の加熱蒸発により生成した前記フラーレン分子とを反応させる。即ち、プラズマ励起下で、前記ゲスト元素と前記フラーレン分子とを互いに衝突反応させて前記ゲスト元素を前記フラーレン分子の内部に導入する。
一方、前記ゲスト元素が銅(Cu)等の固体の場合、図中仮想線で示すように、プラズマ電極3aにゲスト元素供給源(ターゲット材)10を接合すればよい。そして、この供給源10のスパッタを行うことによって、供給源10から粒子状のゲスト元素を飛翔させ、この粒子状のゲスト元素と、上記と同様にして供給源7の加熱蒸発により生成したフラーレン分子とを、プラズマ励起下で互いに衝突反応させて前記ゲスト元素を前記フラーレン分子の内部に導入することができる。
前記スパッタは、水素、窒素又は不活性ガスの雰囲気ガス下で行うことが好ましい。なお、上記したようなガスはガス導入管8からプラズマ発生室2内に導入すればよい。
また、前記フラーレン分子と前記ゲスト元素との反応を0.1〜10000Paのガス圧中で行うのが好ましく、より好ましくは1〜100Paである。
高周波プラズマ電源4は0.1〜1000MHzの周波数に制御されるのが好ましく、より好ましくは1〜100MHzであり、最適なのは13.56Hzである。
また、高周波プラズマ電源4のパワーが1〜1000Wであることが好ましく、より好ましくは20〜200Wである。
本発明に基づく内包フラーレンの製造装置及び製造方法によれば、前記ゲスト元素の供給源10と前記フラーレン分子の供給源7とをプラズマ発生室2内に存在させ、このプラズマ発生室2内で供給源10、7からの前記ゲスト元素と前記フラーレン分子とをプラズマ励起下で互いに衝突反応させることにより、前記ゲスト元素を前記フラーレン分子の内部に導入するので、容易、安全かつ効果的に前記フラーレン分子の内部に前記ゲスト元素を内包させることができる。また、低温(例えば25℃)、低圧(例えば25Pa)で前記内包フラーレンを製造することができるので、前記ゲスト元素として周期表の全ての元素に適用することが可能である。
また、原材料として純粋な前記フラーレン分子を使用するので、生成された前記内包フラーレンは、従来例のようなアーク放電法又はレーザーアブレーション法から生成されるものと比較して、ほとんど不純物を含まず、材料のポスト処理が簡単である。
図2は、本発明に基づく製造方法及び製造装置によって作製することができる前記内包フラーレンの模式図である。図2(a)と(b)とでは、フラーレン分子(例えばC60)11の内部に内包されたゲスト元素12の位置、及び内包されたゲスト元素12とフラーレン分子11との間の化学結合の種類が異なる。即ち、図2(a)では、ゲスト元素12がフラーレン分子11の内部の中央に位置している。図2(b)では、ゲスト元素12がフラーレン分子11の内壁に付着している。
上記したような、(a)と(b)の間の違いは、フラーレン分子11に内包されたゲスト元素12の種類によって決まる。例えば、ゲスト元素12として窒素(N)やヘリウム(He)等を用いた場合、図2(a)に示すように、これらのゲスト元素12はフラーレン分子11の中央に位置する傾向がある。これに対し、ゲスト元素12として銅(Cu)や金(Au)を用いた場合、図2(b)に示すように、これらのゲスト元素12はフラーレン分子11の内壁に付着する傾向がある。これは、フラーレン分子11の中央部が最小のエネルギーであるためであり、また内包されたゲスト元素12とフラーレン分子11との間の弱い相互作用に関係する。
フラーレン分子11の内部にゲスト元素12が内包されることにより、フラーレン分子11の構造的及び電子的な特性が変化するか、或いはゲスト元素12の特性がフラーレン分子11に付与されると考えられる。これにより、内包フラーレン13は、フラーレン分子11単独にはない機能を発現し得ると考えられる。
第2の実施の形態
本発明に基づく内包フラーレンの製造装置において、前記ゲスト元素が金(Au)や銅(Cu)のような固体の場合、前記対向電極及び前記ゲスト元素の前記供給手段の表面形状は平坦であってもよく、或いは粗面化されていてもよい。
図3は、プラズマ電極3aに表面形状が粗面化されたゲスト元素供給源(ターゲット材)10が接合されてなる、本発明に基づく内包フラーレンの製造装置の一部概略断面図である。図3に示すように、ゲスト元素供給源10の表面形状が粗面化されていれば、より効率良くゲスト元素12をプラズマ発生室内に供給することができ、ゲスト元素12と、前記供給源が加熱蒸発されて生成したフラーレン分子11との前記衝突反応をより効果的に行うことができる。これにより、内包フラーレン13をより効率的に製造することが可能となる。
第3の実施の形態
上記の第1の実施の形態で説明したように、前記ゲスト元素が固体の場合、前記ゲスト元素の前記供給源のスパッタにより前記ゲスト元素を前記プラズマ発生室内に供給することができる。しかしながら、前記供給源の加熱蒸発により生成した前記フラーレン分子が前記対向電極を被ってしまい、その結果、前記ゲスト元素の供給量が減少することがある。
そこで、絶え間なくかつ効果的に前記ゲスト元素を供給することができるよう、例えば図4に示すように、プラズマ電極3aにゲスト元素供給源10を接合すると共に、プラズマ発生室2内に2つの加熱板6a、6bを設置し、上部に位置する加熱板6a上にはフラーレン分子供給源7を配し、下部に位置する加熱板6b上にゲスト元素供給源10’を配してもよい。
そして、供給源10のスパッタを行うことによって、供給源10から粒子状の前記ゲスト元素を飛翔させると共に、供給源10’の加熱蒸発によって前記ゲスト元素を生成し、これらゲスト元素と、供給源7の加熱蒸発により生成した前記フラーレン分子とを、プラズマ励起下で互いに衝突反応させて前記ゲスト元素を前記フラーレン分子の内部に導入する。これによって、より効果的に前記内包フラーレンを製造することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は下記例に何ら限定されるものではない。
実施例1(窒素内包フラーレン)
窒素内包フラーレンを生成するために、図1に示すような、本発明に基づく製造装置を構成した。前記ゲスト元素供給源として、純窒素を用いた。前記フラーレン分子供給源としてのフラーレン分子C60(250mg、純度99.8%以上)を前記加熱板であるモリブデンボート上に配し、ガス導入管を介して純窒素ガスをプラズマ発生室内に導入した。そして、25Paの圧力下、窒素プラズマ中でフラーレン分子を抵抗加熱によって気化した。また、容易に生成物を集めるために、アルミニウムホイルで高周波プラズマ電極を覆って、生成物をその上に堆積させた。高周波プラズマは13.56MHz、50Wで制御した。なお、操作はフラーレン分子C60の重合を避けるために10分で終わらせた。
反応終了後、室温まで冷まし、原料のフラーレン分子C60、ポリマー化されたフラーレン分子及び目的物である窒素内包フラーレンを含む生成物を収集し、これをCS2中に溶かした。得られた溶液を0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルタを通してろ過することによって、可溶性部分を分離した。通常、収集した生成物のうちの10〜20%が可溶性であった。ろ過された溶液をESR(electron spin resonance:電子スピン共鳴)測定のための真空配管中に凝縮し、密閉した。
図5は上記のようにして得られた生成物のESRスペクトルである。ハイパーファインカップリング定数は約0.567mTであり、またg値は2.00235であった。これらのESRパラメーターは、イオンインプランテーションによる生成物と同様であり、窒素内包フラーレンが高周波プラズマによって作製されたことを確認した。なお、窒素内包フラーレンとフラーレン分子との比率(窒素内包フラーレン/フラーレン分子)は上記したような最適な条件下において、10-4〜10-3の間であった。これはイオンインプランテーションによるそれとほぼ同等か、又はそれ以上である。
実施例2(銅内包フラーレン)
銅内包フラーレンを生成するために、図1に示すような、本発明に基づく製造装置を構成した。前記ゲスト元素供給源として、銅のホイルを高周波プラズマ電極に接合した。また、前記フラーレン分子供給源として、フラーレン分子C60(250mg、純度99.8%以上)を前記加熱板であるモリブデンボート上に配した。ガス導入管を介して窒素(N2)ガスをプラズマ発生室内に導入し、25Paの圧力下、フラーレン分子を抵抗加熱によって気化した。高周波プラズマは13.56MHz、50Wで制御した。なお、操作はフラーレン分子C60の重合を避けるために10分で終わらせた。
十分なパワーで高周波プラズマ電源をつけたとき、銅は激しい音をたてた。用いた高周波プラズマ電源のパワーが高ければ高いほど、より効率的なスパッタリング効果を得ることができた。
反応終了後、室温まで冷まし、原料のフラーレン分子C60、ポリマー化されたフラーレン分子及び目的物である銅内包フラーレンを含む生成物を収集し、これをCS2中に溶かした。得られた溶液を0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルタを通してろ過することによって、可溶性部分を分離した。通常、収集した生成物のうちの10〜20%が可溶性であった。ろ過された溶液をESR測定のための真空配管中に凝縮し、密閉した。
図6は上記のようにして得られた生成物のESRスペクトルである。銅の天然存在比(Natural Abundance)は2つであり、またスピン多重度は2(ダブレット)である。また、核スピンが3/2である。精度良く分析された4本の線は、銅元素が互いにリンクし合わず、またフラーレン分子C60によって隔離されていることを指摘している。4本の線の中心のg値は2.0473であり、明らかにジエタノールアミン−Cu2+のような一般的なCu2+複合体におけるg値2.10〜2.40に比べて小さい。このようなg値の下降は、フラーレン分子C60の反磁性的なシールドのためであり、この現象は、フラーレン分子C60の内部に銅イオン(Cu2+)が内包された場合にのみ起こった。
図7は、精製した銅内包フラーレンのTOF−MS(time of flight mass spectrometry:飛行時間型質量分析)スペクトルである。図7より明らかなように、銅内包フラーレン(フラーレン分子C60)に由来するピークの存在が、フラーレン分子C60の内部に銅イオン(Cu2+)が内包されていることを立証する。なお、銅内包フラーレン(フラーレン分子C58)は、レーザー照射下においてフラーレン分子C60の炭素原子2つが消失し、生成した。
以上、本発明を実施の形態及び実施例に基づいて説明したが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
例えば、上記に図1を参照してプラズマ電極3aに前記ゲスト元素の供給源(ターゲット材)11が接合されている例を説明したが、これに対し、前記対向電極、特にプラズマ電極3aの少なくとも一部が前記ゲスト元素の前記供給手段からなっていてもよい。
本発明の実施の形態による、本発明に基づく内包フラーレンの製造装置の概略断面図である。 同、本発明に基づく内包フラーレンの製造方法によって得られる内包フラーレンの模式図である。 同、本発明に基づく内包フラーレンの製造装置の一部概略断面図である。 同、本発明に基づく内包フラーレンの製造装置の他の例の概略断面図である。 本発明の実施例による、窒素内包フラーレンを含む生成物のESRスペクトルである。 同、銅内包フラーレンを含む生成物のESRスペクトルである。 同、銅内包フラーレンのTOF−MSスペクトルである。
符号の説明
1…内包フラーレンの製造装置、2…プラズマ発生室、3a…プラズマ電極、
3b…グランド電極、4…高周波プラズマ電源、5…DC熱源、6…加熱板、
7…フラーレン分子供給源、8…ガス導入管、9…真空吸引管、
10…ゲスト元素供給源(ターゲット材)、11…フラーレン分子、12…ゲスト元素、13…内包フラーレン

Claims (2)

  1. フラーレン分子の内部にゲスト元素を内包させた内包フラーレンの製造方法において、
    高周波プラズマ電源による高周波電圧を印加する対向電極をプラズマ発生室内に設け ると共に、前記対向電極間にこれらの電極から離間して前記フラーレン分子の供給源を 配し、この状態で、前記供給源の加熱蒸発により生成させた前記フラーレン分子とガス 状又は粒子状の前記ゲスト元素とを前記対向電極間に存在させる工程と、
    前記対向電極間に前記高周波プラズマ電源による高周波電圧を印加して、前記プラズ マ発生室内で前記フラーレン分子と前記ゲスト元素とを前記高周波プラズマ電源による プラズマ励起下で互いに反応させる工程と
    を有することを特徴とする、内包フラーレンの製造方法。
  2. フラーレン分子の内部にゲスト元素を内包させた内包フラーレンを製造する装置において、ガス状又は粒子状の前記ゲスト元素の供給手段と、前記フラーレン分子の供給手段と、高周波プラズマ電源を有するプラズマ励起手段とを具備し、
    前記プラズマ励起手段が、プラズマ発生室内に設けられた対向電極と、この対向電極 間に高周波電圧を印加する前記高周波プラズマ電源とを有し、
    前記フラーレン分子の前記供給手段が、前記対向電極間にこれらの電極から離間して 配され、前記フラーレン分子を加熱蒸発させるように構成されてい
    ことを特徴とする、内包フラーレンの製造装置。
JP2004083919A 2004-03-23 2004-03-23 内包フラーレンの製造方法及び製造装置 Expired - Fee Related JP4529504B2 (ja)

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