JPH10279302A - 炭素薄膜の製造方法及びその製造装置 - Google Patents

炭素薄膜の製造方法及びその製造装置

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JPH10279302A
JPH10279302A JP9080138A JP8013897A JPH10279302A JP H10279302 A JPH10279302 A JP H10279302A JP 9080138 A JP9080138 A JP 9080138A JP 8013897 A JP8013897 A JP 8013897A JP H10279302 A JPH10279302 A JP H10279302A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 大面積にわたって均一かつ優れた表面性を有
し、また、強度や電気伝導性等に優れた炭素薄膜(特に
フラーレン重合体からなる薄膜)の製造方法、及びその
実施の際に使用できる製造装置を提供すること。 【解決手段】 Cn (但し、nは幾何学的に球状化合物
を形成し得る整数である。)で表されるフラーレン分子
を、マイクロ波誘起によって重合してフラーレン重合体
を形成し、このフラーレン重合体を基体上に堆積するこ
とによって、前記フラーレン重合体からなる炭素薄膜を
形成する、炭素薄膜の製造方法。Cn (但し、nは前記
したものと同様である。)で表されるフラーレン分子の
供給源8と、この供給源8から供給されるフラーレン分
子13にマイクロ波15を作用させるマイクロ波作用部
17と、このマイクロ波15による誘起によって生成す
るフラーレン重合体14を基体11上に堆積させ、フラ
ーレン重合体からなる炭素薄膜を形成する成膜部10と
を有する、炭素薄膜の製造装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フラーレン重合体
(フラーレン分子の多量体)等からなる炭素薄膜の製造
方法、及びその製造装置に係るものである。
【0002】
【従来の技術】フラーレンは、C60(図27参照)やC
70(図28参照)等からなる球状炭素分子の総称で、19
85年に炭素のレーザーアブレーションによるクラスター
ビームの質量分析スペクトル中に発見された(Kroto,H.
W.; Heath,J.R.; O'Brien,S.C.; Curl,R.F.; Smalley,
R.E. Nature 1985, 318,162. 参照)。
【0003】ダイヤモンド、グラファイトに次ぐ第3の
結晶炭素として球状炭素化合物であるフラーレンの存在
が明らかにされ、マクロ量の合成法が確立されたのは19
90年になってからである(Kratschmer,W.; Fostiropoul
os,K.; Huffman,D.R. Chem.Phys.Lett. 1990, 170,167.
及び Kratschmer,W.; Lamb,L.D.; Fostiropoulos,K.;Hu
ffman,D.R. Nature 1990, 347,354.参照)。
【0004】1990年に炭素電極のアーク放電法によるフ
ラーレン(C60)の製造方法が発見されて以来、フラー
レンは炭素系半導体材料等として注目されてきた。フラ
ーレン分子は真空下或いは減圧下において容易に気化で
きることから、蒸着薄膜を形成し易い素材である。
【0005】フラーレンは、炭素のみからなる一連の球
状炭素化合物であり、炭素60個からなるC60及びそれ以
上の偶数個の炭素からなるいわゆるHigher Fullerene
s の総称であり、12個の5員環と20個又はそれ以上の6
員環を含んでいる。即ち、60個、70個、76個、78個、80
個、82個又は84個等(炭素原子数は幾何学的に球状構造
を形成し得る数から選択される。)の炭素原子が球状に
結合してクラスター(分子集合体)を構成してなる球状
炭素Cn であって、それぞれ、C60、C70、C76
78、C80、C82、C84等のように表される。
【0006】例えばC60は、正二十面体の頂点をすべて
切り落として正五角形を出した“切頭二十面体”と呼ば
れる多面体構造を有し、図27に示すように、この多面
体の60個の頂点をすべて炭素原子Cで置換したクラスタ
ーであり、公式サッカーボール型の分子構造を有する。
同様に、図28に示すC70、またC76、C84等は、いわ
ばラグビーボール型の分子構造を有する。
【0007】こうしたフラーレンは、その用途等につい
て種々研究が進められており、例えば、C60フラーレン
にアルカリ金属をドープした物質が超電導性を示すこと
が確認されたことから、電子材料として応用が盛んに研
究されている。
【0008】但し、C60フラーレンからなる薄膜(フラ
ーレン薄膜)は真空蒸着法で成膜可能であるが、こうし
た膜は、導電性がそれ程高くはなく、また機械的強度に
優れないという欠点がある。
【0009】また、フラーレンは炭素のみからなる化合
物であり、しかも真空下の加熱により容易に気化させる
ことが可能である。従って、この化合物の蒸着過程で、
或いは蒸着膜の状態で、フラーレン分子同士が重合する
に十分なエネルギーを与えることにより、フラーレンの
重合体(又は多量体)を得ることができる。
【0010】こうした炭素のみからなるフラーレン多量
体は、上記したC60フラーレン膜の用途に加えて、更に
異なる用途にも使用可能であり、例えば、炭素保護膜、
炭素セパレータ膜、薄膜センサー、電池電極材料等への
応用、或いはダイヤモンド膜等を得ることが可能であ
る。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】このような炭素薄膜を
得るには、従来、炭化水素化合物のピロリシス(熱分
解)による方法が一般的であり、こうした方法から得ら
れる炭素膜は一般に不定形の炭素膜(アモルファスな炭
素薄膜)であった。従って、炭素源である出発物質の物
性を保持するような炭素薄膜の製造方法は存在しなかっ
た。
【0012】また、炭素源を用いた炭素薄膜の製造方法
として、炭素スパッタ法も知られているが、この方法で
得られる炭素薄膜の構造も不定形であり、しかもスパッ
タに際しては、炭素を蒸発させるための高エネルギーが
必要であった。
【0013】更に、最も大量に得ることのできるC60
70等のフラーレン分子においては、分子内の双極子モ
ーメントがゼロであることから、分子間の結合にはファ
ン・デル・ワールス力しか働かず、真空蒸着法等により
得られる蒸着薄膜は脆弱である。フラーレンを用いた薄
膜電子デバイスを作成する上で、このような脆弱さは、
デバイスの安定性等に対して問題となる。
【0014】また、蒸着法によるフラーレン薄膜(フラ
ーレン蒸着薄膜:以下、同様)は、フラーレン分子間に
酸素分子が拡散進入することによって薄膜内に常磁性中
心が発現し、この薄膜の安定性の点で問題があった。
【0015】また、近年、フラーレンの2量体や3量体
等のフラーレン重合体を作成する方法として、光誘起に
よるフラーレン重合体の作成方法が知られている〔(a)
Rao,A.M.; Zhou,P.; Wang,K.-A.; Hager,G.T.; Holden,
J.M.; Wang,Y.; Lee,W.-T.;Bi,X.-X.; Eklund,P.C.; Co
rnett,D.S.; Duncan,M.A.; Amster,I.J. Science 1993,
256,955. (b) Cornett,D.C.; Amster,I.J.; Duncan,M.
A.; Rao,A.M.; Eklund,P.C. J.Phys.Chem.1993, 97,503
6. (c) Li,J.; Ozawa,M.; Kino,N.; Yoshizawa,T.; Mit
uki,T.; Horiuchi,H.; Tachikawa,O.; Kishino,K.; Kit
azawa,K. Chem.Phys.Lett.1994, 227,572. 参照〕。
【0016】しかしながら、この方法では、予め作成し
たフラーレン蒸着薄膜に対して光照射を行ってフラーレ
ン分子を重合させているので、フラーレン分子の重合に
際して、前記フラーレン蒸着薄膜の体積収縮が起きるた
めに、その表面に無数のひび割れ等が生じてしまい、強
度や表面性等の点で問題があった。従って、光誘起によ
るフラーレン重合薄膜の作成方法では、大面積にわたっ
て均一かつ表面性の優れた薄膜を作成することは極めて
困難であった。
【0017】更に、圧力や熱を加えフラーレン分子同士
を衝突させることによってフラーレン重合体を作成でき
ることが知られているが、フラーレン重合体の作成が限
界であって、フラーレン重合体による薄膜(即ちフラー
レン重合薄膜)の形成は困難である〔1.分子衝突法
(a)Yeretzian,C.; Hansen,K.; Diederich,F.; Whetten,
R.L. Nature 1992, 359,44. (b)Whetten,R.L.; Yeretzi
an,C. Int.J.Mod.Phys,1992, B6,3801 (c)Hansen,K.; Y
eretzian,C.; Whetten,R.L. Chem.Phys.Lett.1994, 21
8,462 (d)Seifelt,G.; Schmidt,R.; Int.J.Mod.Phys,19
92, B6,3845. 2.イオンビーム法 (a)Seraphin,S.; Z
hou,D.; Jiao,J. J.Mater.Res.1993, 8,1995. (b)Gabe
r,H.; Busmann,H.-G.; Hiss,R.; Hertel,I.V.; Romber
g,H.; Fink,J.; Bruder,F.; Brenn,R. J.Phys.Chem,199
3, 97,8244. 3.圧力法 (a)Duclos,S.J.; Brister,K.;
Haddon,R.C.; Kortan,A.R.; Thiel,F.A. Nature 1991,
351,380. (b)Snoke,D.W.; Raptis,Y.S.; Syassen,K. 1
Phys.Rev.1992, B45,14419. (c)Yamazaki,H.; Yoshid
a,M.; Kakudate,Y.; Usuda,S.; Yokoi,H.; Fujiwara,
S.;Aoki,K.; Ruoff,R.; Malhotra,R.; Lorents,D.J. J.
Phys.Chem. 1993, 97,11161. (d)Rao,C.N.R.; Govindar
aj,A.; Aiyer,H.N.; Seshadri,R. J.Phys.Chem. 1995,9
9,16814.参照〕。
【0018】本発明の目的は、大面積にわたって均一か
つ優れた表面性を有し、また、強度や電気伝導性等の物
性に優れた炭素薄膜(特にフラーレン重合体からなる薄
膜)の製造方法、及びその実施の際に使用できる製造装
置を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上述した課
題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、マイクロ波
誘起を用いた重合法によって、大面積にわたって均一か
つ優れた表面性を有し、また、強度や電気伝導性等の物
性に優れた炭素薄膜(特にフラーレン重合体からなる炭
素薄膜)を製造することができることを見出した。ここ
で、この方法で得られる炭素薄膜は、主として、原料と
なるフラーレン分子の電子励起状態を経て重合した炭素
薄膜(特にフラーレン重合薄膜:以下、同様)である。
【0020】即ち、本発明は、Cn (但し、nは幾何学
的に球状化合物を形成し得る整数である。)で表される
フラーレン分子を、マイクロ波誘起によって重合してフ
ラーレン重合体を形成し、このフラーレン重合体を基体
上に堆積することによって、前記フラーレン重合体から
なる炭素薄膜を形成する、炭素薄膜の製造方法(以下、
本発明の製造方法と称する。)に係るものである。
【0021】本発明の製造方法によれば、Cn (但し、
nは幾何学的に球状化合物を形成し得る整数である。例
えば、C60やC70等)で表されるフラーレン分子を、マ
イクロ波誘起によって重合してフラーレン重合体(フラ
ーレン多量体)を形成し、このフラーレン重合体を基体
(例えば、半導体基板としてのシリコン等)上に堆積さ
せることによって、主として前記フラーレン重合体から
なる炭素薄膜を形成するので、大面積(広面積)にわた
って均一かつ優れた表面性を有し、また、特にマイクロ
波誘起によって強度や電気伝導性等の物性に優れた炭素
薄膜(特にフラーレン重合体からなる薄膜)を製造する
ことができる。
【0022】ここで、上記Cn (但し、nは上述したも
のと同様である。)で表されるフラーレン分子(原料フ
ラーレン:以下、同様)は、例えばC60又はC70のみか
らなるものであってもよいし、C60及びC70の混合物か
らなるものであってもよい(以下、同様)。
【0023】また、上記マイクロ波とは発振周波数が3
00GHz〜300MHz(法定周波数:2450±3
0MHz)の極超短波であり、このマイクロ波によって
前記フラーレン分子(原料フラーレン)が誘起(励起、
プラズマ化)されて重合してフラーレン重合体(2量
体、3量体等の多量体)を形成する。
【0024】また、本発明は、Cn (但し、nは幾何学
的に球状化合物を形成し得る整数である。)で表される
フラーレン分子の供給源と、この供給源から供給される
前記フラーレン分子にマイクロ波を作用させるマイクロ
波作用部と、このマイクロ波による誘起によって生成す
るフラーレン重合体を基体上に堆積させて前記フラーレ
ン重合体からなる炭素薄膜を形成する成膜部とを有す
る、炭素薄膜の製造装置(以下、本発明の製造装置と称
する。)に係るものである。
【0025】本発明の製造装置によれば、Cn (但し、
nは幾何学的に球状化合物を形成し得る整数である。例
えば、C60やC70等)で表されるフラーレン分子の供給
源(例えば原料フラーレンが配された容器)と、この供
給源から供給される前記フラーレン分子にマイクロ波を
作用させるマイクロ波作用部と、このマイクロ波による
誘起によって生成するフラーレン重合体(フラーレン多
量体)を基体(例えば、半導体基板としてのシリコン基
板等)上に堆積させ、主として前記フラーレン重合体か
らなる炭素薄膜を形成する成膜部(特に、前記マイクロ
波作用部の径よりも大径となされた反応室)とを有して
いるので、前記マイクロ波作用部にて、前記フラーレン
分子を効率よく、かつ高密度に励起、重合化し、更に、
重合したフラーレン分子(フラーレン重合体)を前記基
体上に効率よく堆積させることができるので、大面積に
わたって均一かつ優れた表面性を有し、また、特にマイ
クロ波を用いているので、強度や電気伝導性等の物性に
優れた炭素薄膜(特にフラーレン重合体からなる薄膜)
を製造することができる。
【0026】但し、本発明の製造方法及び本発明の製造
装置において、前記炭素薄膜はフラーレン重合薄膜から
なる膜であって、このフラーレン重合薄膜とは、主にフ
ラーレン重合体を主成分とする薄膜であるが、前記フラ
ーレン重合体がアモルファス構造やダイヤモンド構造を
とることもある。このダイヤモンド構造の薄膜は、キャ
リアガスと共に水素ガスを導入することによって得ら
れ、更に前記基体がダイヤモンドである場合に形成され
易い。
【0027】また、本発明の製造方法及び製造装置によ
れば、マイクロ波によってフラーレン分子(原料フラー
レン)を誘起(励起、プラズマ化)するので、フラーレ
ンの構造を著しく破壊することなく、大面積にわたって
均一かつ表面性に優れたフラーレン重合薄膜を成膜する
ことができる。更に、このようにして得られたフラーレ
ン重合薄膜においては、摩擦に対して破壊を受けにくい
高強度かつ柔軟性に優れた物性を達成することができ
る。
【0028】
【発明の実施の形態】本発明の製造方法において、前記
フラーレン分子(原料フラーレン)を飛翔させ、このフ
ラーレン分子をキャリアガスに連行させ、所定位置にて
マイクロ波の作用によって誘起、プラズマ重合化して前
記フラーレン重合体とし、フラーレン重合体を主成分と
する炭素薄膜、アモルファスな炭素薄膜、或いはダイヤ
モンド構造の炭素薄膜(ダイヤモンドライクカーボン
膜)として前記基体上に堆積させることができる。
【0029】即ち、本発明の製造装置においては、前記
フラーレン分子(原料フラーレン)が前記供給源から飛
翔され、このフラーレン分子がキャリアガス(例えばア
ルゴンガス、ヘリウムガス等)に連行され、この連行経
路中の所定位置に設けられたマイクロ波の作用部でのマ
イクロ波の照射によって誘起、プラズマ重合化されて前
記フラーレン重合体とされ、フラーレン重合体を主成分
とする炭素薄膜、アモルファスな炭素薄膜、或いは、前
記キャリアガスが水素を含む場合にはダイヤモンド構造
の炭素薄膜(特に前記マイクロ波のパワーが大きい場合
や前記基体の温度が高い場合)とされて、前記基体(例
えばシリコン基板等)上に堆積される、炭素薄膜の製造
装置を構成することができる。
【0030】また、本発明の製造方法において、前記フ
ラーレン重合体を前記所定位置から離れて配置された前
記基体上に導くこと、前記マイクロ波の導波管を横断し
て前記フラーレン分子を連行する前記キャリアガスの流
路を配し、この流路が前記基体の配された成膜空間に開
口されていること、前記成膜空間を前記流路の径よりも
大きくすることが好ましい。
【0031】即ち、本発明の製造装置においては、前記
フラーレン重合体が前記マイクロ波作用部から離れて配
置された前記基体上に導かれる構成、前記マイクロ波の
導波管を横断して前記フラーレン分子を連行する前記キ
ャリアガスの流路が配され、この流路が前記基体の配さ
れた成膜空間に開口されている構成、前記成膜空間が前
記流路の径よりも大きく形成されている構成とすること
ができる。
【0032】まず、前記フラーレン重合体を前記所定位
置(マイクロ波作用部)から離れて配置することによっ
て、前記フラーレン重合体を十分に励起、重合化した後
に所定の速度をもって、前記基体上に堆積させることが
できる。
【0033】また、前記マイクロ波の導波管を横断して
前記フラーレン分子を連行する前記キャリアガスの流路
を配し、この流路が前記基体の配された成膜空間に開口
されていることによって、前記フラーレン分子を十分に
励起、重合化することができると共に、前記キャリアガ
スを十分に励起することができ、更に、効率よく、これ
らの物質を前記成膜空間に導くことができる。
【0034】更に、前記成膜空間(反応室)を前記流路
の径よりも大きくすることによって、大面積(広面積)
の基体を前記成膜空間に配することができ、このような
大面積の基体であっても、前記基体の表面に均一かつ表
面性良く前記フラーレン重合体を堆積させることができ
る。
【0035】また、本発明の製造方法及び本発明の製造
装置においては、前記マイクロ波のパワーを0〜100
0Wとすることができる。これは更に、300〜400
Wとすることが好ましい。
【0036】勿論、原料フラーレンの種類や量、反応装
置のサイズ等によって異なるが、マイクロ波のパワー
(強度)は、通常1kW程度までであり数百W程度で十
分である。特に300〜400Wとすると、フラーレン
分子を十分に重合し、電気伝導度(導電性)に優れたフ
ラーレン重合薄膜とすることができる。マイクロ波のパ
ワーが300Wより小さくなると、フラーレン重合薄膜
の導電性が低下することがある。これは、フラーレン分
子同士の重合が十分でないまま、基体上に堆積されるこ
とによるものと考えられる。
【0037】また、本発明の製造方法及び本発明の製造
装置においては、前記フラーレン分子をC60及び/又は
70からなるフラーレン分子とすることが好ましい。
【0038】本発明においては、原料フラーレンとし
て、特にC60(分子構造は図27を参照)の単体を用い
ることが好ましいが、C70(分子構造は図28を参照)
の単体、或いは、C60及びC70の混合物を使用すること
もできる。C60の単体を原料とした場合、作成された薄
膜の導電性が高く、これは、C60分子が重合反応を起こ
しやすいことに起因すると考えられる。
【0039】また、C60やC70の分子間のクロスリンク
構造(多量体の構造)については詳しくは後述するが、
一般に、炭素電極の直流アーク放電で得られるススから
トルエン、ベンゼン、二硫化炭素等の有機溶媒で抽出さ
れたフラーレン分子は、C60やC70の他にも、C76、C
78、C80、C82、C84等のいわゆる高次フラーレンと呼
ばれる球状炭素分子を少量含んでいる。本発明における
原料フラーレンとしてはC60やC70の単体、或いはこれ
らの混合物に限定されるものではなく、前記高次フラー
レンを含んでいても、或いは前記高次フラーレンからな
るもののみであってもよい。
【0040】また、本発明の製造方法及び本発明の製造
装置においては、前記キャリアガスをヘリウム、アルゴ
ン、キセノン、ラドン及び水素からなる群より選ばれた
少なくとも一種のガスとすることができる。
【0041】前記キャリアガスとしては高純度アルゴン
ガスを用いることが好ましいが、上記のような不活性ガ
ス(単原子分子ガス)を使用しても構わない。このキャ
リアガスは、フラーレン分子を連行させ基体上に導くと
共に、フラーレン分子の供給前にこのキャリアガスを流
せば、前記キャリアガスがマイクロ波によって誘起(励
起、プラズマ化)されて基体の表面をエッチング(ボン
バード)して、その表面性を向上させ、前記炭素薄膜の
接着性(密着性)を向上させることができる。
【0042】また、フラーレン分子と共に流通するキャ
リアガス(例えばアルゴンガス)は、前記フラーレン分
子が重合化されると同時に、励起(プラズマ化)され、
基体上に堆積していくフラーレン重合薄膜の重合性を向
上させる作用、前記フラーレン重合薄膜の表面性を向上
させる作用も有すると考えられる。また、このキャリア
ガスに水素が含まれる場合、前記フラーレン重合薄膜
(炭素薄膜)はダイヤモンド構造を有する薄膜になるこ
とがある。
【0043】また、本発明の製造方法及び本発明の製造
装置においては、前記基体に負極性のバイアス、或いは
正極性のバイアスをかけることが好ましい。
【0044】前記基体に、例えば、直接或いは間接的に
直流電場バイアスをかけることにより、より緻密で高強
度の重合膜を得ることが十分に可能であり、基体にかけ
る(印加する)電荷は正負のどちらでもよいが、負電荷
をかけて(即ち、負極性のバイアスをかけて)反応室中
のプラスイオンを堆積する場合の方が成膜速度の点で効
果的である。
【0045】また、前記基体を帯電させる(即ち、直流
電場バイアスをかける)と、作成された薄膜の電気伝導
度が増すと共に、ダングリングボンド(ダングリングス
ピン)の数が減少して前記薄膜の表面エネルギーが小さ
くなり、表面性を適切に制御することができる。
【0046】また、本発明の製造方法においては、前記
フラーレン重合体を堆積させる前に、予め前記キャリア
ガスをプラズマ化して基体をエッチングすることが好ま
しい。
【0047】上述したように、原料フラーレンを流通さ
せる前に、予め前記キャリアガス(例えばアルゴンガ
ス)をプラズマ化して基体をエッチング(ボンバード)
すると、基体の表面性を向上させると共に、炭素薄膜の
接着性(密着性)を向上させることができる。本発明の
製造方法においては、原料フラーレンを流通させる動作
(即ち、原料フラーレンが配されている容器の加熱等)
を行わなければ、基体のエッチングを行うことができ、
基体の表面性を向上させることができる。また、適宜、
原料フラーレンを流通させる動作と、前記キャリアガス
のみを流通させる動作とを交互に行ってもよい。
【0048】本発明の製造方法及び本発明の製造装置に
おいては、前記基体をシリコン、ガラス、透明電極(例
えばITOなど)、金、白金及びアルミニウムからなる
群より選ばれた基体とすることができる。
【0049】本発明に基づいて形成される炭素薄膜は、
シリコンやガラス等の単体基体、ITO(Indium Tin O
xide)等の透明電極基体、シリコンやガラス等の基体上
に蒸着やスパッタリング等によって形成される金、白
金、アルミニウム等の金属基体等上に成膜することがで
きる。或いは、マスクを用いて金、白金、アルミニウム
等を櫛形に蒸着或いはスパッタリングした、いわゆる櫛
形電極上に成膜することもできる。更に、ガラスやシリ
コン基体等に成膜した金属電極、或いはITOのような
透明電極上にフラーレン重合体を一定或いは任意の厚さ
に成膜後、作製されたフラーレン重合薄膜上にマスクを
配し、更に金、白金、アルミニウム等の金属、或いはI
TO等の透明電極を蒸着或いはスパッタリングによって
成膜することにより形成された、即ち、電極で挟まれた
サンドイッチ状構造物を作製することも可能である。
【0050】また、本発明の製造方法及び本発明の製造
装置においては、前記基体の温度を調節することによっ
て、前記炭素薄膜のダングリングスピン(ダングリング
ボンド)の量(数)を調節することができる。
【0051】前記ダングリングスピン(ダングリングボ
ンド)は、前記炭素薄膜の導電性やバンド構造、或いは
物性そのものの経時的安定性等に大きく影響を与えると
考えられており、このダングリングスピンの量は、上述
のように、フラーレン重合薄膜を成膜する基体の温度を
調節することにより、ある程度減少させることができ
る。
【0052】また、前記ダングリングスピンの量は、フ
ラーレン重合薄膜の成膜後、水素のプラズマ等の雰囲気
下にさらすことによって(即ち、水素雰囲気中でマイク
ロ波処理することによって)減少させることも可能であ
り、更に、フラーレン重合薄膜の成膜後、この薄膜を熱
処理することにより減少させることも可能である。ダン
グリングスピンの量が減少すると、電気伝導性が向上す
ることになり、また、表面性(表面の摩擦力や表面エネ
ルギー)を向上させることになると考えられている。
【0053】ここで、本発明に基づく炭素薄膜(フラー
レン重合薄膜)の表面には、フラーレン分子の構造が部
分的に残り、π電子軌道が表面に多数存在することか
ら、二重結合性の結合が多く存在していることが本発明
者により解明された。即ち、表面に存在する二重結合性
の結合によって、付加反応等が生じ易く、表面状態の改
質が望まれる場合がある。この炭素薄膜の表面は、様々
な手法で表面修飾が可能である。
【0054】例えば、フラーレン重合薄膜の成膜後、ア
セチレン、メタン、エタン、プロパン、ブタン、トルエ
ン、ベンゼン、アセトン、アセトニトリル、エタノー
ル、メタノール等の炭化水素の存在下、或いは、酸素、
水素、塩素、フッ素等のガスの雰囲気下、或いは含ハロ
ゲン炭化水素ガスの雰囲気下に、マイクロ波誘起、直流
或いは交流プラズマ法等の手法を用いて、前記薄膜の表
面修飾が可能である。また、成膜されたフラーレン重合
薄膜を、溶液中での反応、即ち、金属錯体(キレート)
反応や有機ラジカル反応等によって表面処理を施すこと
も可能である。
【0055】このような表面処理を施すこと(表面修
飾)は、前記薄膜を薄膜センサーや半導体基体として用
いる際に、目的とする基質に対する特異性を持たせる上
で特に有用である。
【0056】以下、本発明に基づく炭素薄膜の製造の実
施の際に使用可能な製造装置(本発明の製造装置の一
例)を図1を参照しながら説明する。
【0057】図1に示す製造装置は、マイクロ波誘起に
よるフラーレン重合薄膜の製造装置であり、例えばC60
やC70等の原料フラーレンの供給源として前記フラーレ
ン分子が配される容器(例えばモリブデンボート)8
と、この容器(供給源)8から供給(飛翔)されるフラ
ーレン分子13にマイクロ波15を作用させるマイクロ
波作用部17と、マイクロ波15による誘起(励起、プ
ラズマ化)によって生成するフラーレン重合体(フラー
レン多量体)14を基体11上に堆積させてフラーレン
重合体14からなる炭素薄膜を形成する反応室(成膜
部)10とからなるものである。
【0058】また、前記フラーレン分子が配される容器
8が配される位置の近接には、キャリアガス(例えばア
ルゴンガス)が導入されるキャリアガス導入管7が設け
られている。ここから導入されるキャリアガス12は、
フラーレン分子13を連行させ基体上に導くといった原
料フラーレンのキャリア能を有すると共に、フラーレン
分子13の供給前にこのキャリアガス12を流せば、キ
ャリアガスがマイクロ波作用部にて励起(プラズマ化)
され、励起したキャリアガス12’が基体11の表面を
エッチング(ボンバード)することによって、基体11
の表面性を向上させて前記炭素薄膜の接着性(密着性)
を向上させることができる。
【0059】また、マイクロ波作用部17にマイクロ波
を発生させるマイクロ波発生装置(マイクロ波ユニッ
ト)は、マグネトロン等の発振源からなるマイクロ波発
振源1と、マイクロ波の整流能を有するアイソレータ2
と、マイクロ波のパワーの検出能を有するパワーメータ
3と、マイクロ波の発振数を調節しマイクロ波の整合能
を有するスリースタブチューナー4と、マイクロ波を反
射すると共に波長を整合することによってマイクロ波作
用部でのマイクロ波を定常波とすることができる反射キ
ャビティ5とが導波管6によって接続されている構造を
有する。
【0060】更に、フラーレン重合体14が堆積し炭素
薄膜(フラーレン重合薄膜)を形成する反応室(成膜
部、反応チャンバー)10は、キャリアガス12及びフ
ラーレン分子13の流路である共振管9の径よりも大径
に構成することができ、共振管9のマイクロ波作用部1
7にて効率よくかつ高密度に誘起(励起)されるフラー
レン重合体を、図示しない支持体に設けられた基体(特
にシリコン基板)11上に、効率よく、かつ均一に導
き、堆積させることができる。また、反応室10には真
空系(真空排気系)16が設けられており、反応室10
内が所定の圧力になされている。
【0061】ここで、前記支持体は導電物からなるもの
であっても、絶縁物からなるものであってもよく、ま
た、前記支持体を加熱(例えば導電)させるための加熱
手段(導電手段)が配されていてもよい。
【0062】このような製造装置を用いた実際の炭素薄
膜形成のプロセスでは、例えば、反応室10の内部をア
ルゴン雰囲気中0.05〜1Torr程度に保ち、容器
(モリブデンボート)8を抵抗加熱手段により容器8に
配されているフラーレンを気化、飛翔させ、マイクロ波
作用部17にて13.56MHz程度の高周波プラズマ
をフラーレン分子に照射することによってフラーレン分
子を重合化しフラーレン重合体を形成し、基体11上に
導くことができる。
【0063】基体11は加熱してもよいが、基体温度3
00℃以下でフラーレン重合体薄膜を形成することがで
きる。基体温度が300℃を超えると前記薄膜の付着量
が低下することがある(しかし、上記のバイアスをかけ
ると付着し易くなる)。このようなマイクロ波励起によ
る(即ち非平衡プラズマによる)薄膜形成の際の基体温
度は特にコントロールしなくても、例えば100Wのマ
イクロ波のパワーでは100℃を超えることはほとんど
ない。逆に、前記基体をマイクロ波の作用部に置くと1
000℃付近まで昇温することがある。
【0064】このような本発明に基づく製造方法及び本
発明の製造装置の利点は、フラーレン分子(原料フラー
レン)の気化前に基体表面をプラズマ化したキャリアガ
ス(例えばアルゴンガス)で基体表面をエッチング(ボ
ンバード)することができるので、基体の表面性を向上
させ、基体と薄膜との接合面で薄膜の密着性を良好にす
ることができること、また、フラーレン分子をマイクロ
波作用部にて十分に重合させて大面積の基体上に導くこ
とができるので、広範囲に均一かつ表面性の良い薄膜を
形成できること、更に、マイクロ波のパワー(プラズマ
パワー)が任意にコントロールできること等が挙げられ
る。
【0065】また、アルゴン等の単原子分子はマイクロ
波誘起によってプラズマ中で寿命の長い準安定励起状態
となり、この分子の緩和過程でフラーレン分子が励起さ
れることから、フラーレン分子の重合効率が良いという
利点もある。
【0066】更に、フラーレン分子を十分に重合した後
に基体上へ導き、前記基体上にフラーレン重合体を堆積
することができるので、例えば、フラーレン蒸着薄膜上
に光を照射して重合体を形成するといった、上述の光誘
起によるフラーレン重合体からなる薄膜の作成の際に見
られる体積収縮(体積歪み)による無数のひび割れ(ク
ラックの発生)等が生じることがない。
【0067】ここで、上記キャリアガス12としては高
純度アルゴンを用いるが、不活性ガスであるヘリウム、
キセノン、ラドン等を用いることも可能である。また、
原料となるフラーレンは、モリブデンボートのような発
熱体の中に充填し、通電加熱等の手段により飛翔させ、
マイクロ波作用部17及び反応室10に導かれる。
【0068】また、反応室10及び共振管9の部位に電
磁石等で電場を作り、内部を流通するフラーレン分子、
フラーレン重合体、キャリアガス等をプラズマ状態にす
ることで、いわゆるマイクロ波プラズマ重合体を得るこ
とができる。
【0069】更に、基体11に、直接或いは間接的に直
流電場バイアスをかけることにより、より緻密で高強度
の重合膜を得ることが十分に可能である。上述したよう
に基体にかける(印加する)電荷は正負のどちらでもよ
いが、負電荷をかけて(即ち、負極性のバイアスをかけ
て)反応室中のプラスイオンを堆積する場合の方が成膜
速度の点で効果的である。
【0070】また、このようなマイクロ波誘起による炭
素薄膜の製造装置を用い、一般に試験用に用いられてい
るマイクロ波の帯域、2450±30MHz(300G
Hz〜300MHz)での連続発振によりフラーレン分
子を重合させることによって、フラーレン重合体を形成
し、基体上にフラーレン重合薄膜を成膜することができ
る。ここで、マイクロ波の強度(パワー)は1kW程度
までであり、通常数百W(特に300〜400W)程度
で十分である。詳しくは後述するが、このパワーが小さ
すぎると、フラーレン分子の重合化が不十分になること
があり、作製された薄膜の導電性が弱くなることがあ
る。
【0071】このようにして得られるマイクロ波誘起に
よるフラーレン重合薄膜は、真空蒸着法等によるフラー
レン蒸着薄膜に比べて、その強度が格段に増加してお
り、また、緻密な構造を有すると共に、柔軟性に富んだ
薄膜となる。
【0072】更に、フラーレン蒸着薄膜では、フラーレ
ン分子間の隙間に酸素分子や水分子等が拡散進入して、
前記薄膜の物性に大きな影響を与えることがあるが、本
発明に基づくマイクロ波誘起によるフラーレン重合薄膜
では、真空中及び大気中での電子物性(電気伝導性やバ
ンドギャップ等)がほとんど変化しないことから、薄膜
が緻密であり、酸素分子等が薄膜の内部に拡散進入する
ことなく、高密度かつ高純度の炭素薄膜が構成されてい
ると考えられる。
【0073】また、詳しくは後述するが、図2に示すよ
うに、実際にこのような方法で得られるフラーレン重合
薄膜のレーザーアブレーション法に基づく飛行時間型質
量分析(Time-of-Flight Mass Spectroscopy)を行う
と、フラーレンの多量体が生成していることが確認され
る。また、フラーレン重合薄膜の電子物性は、その重合
形態(表面性含む)に大きく依存しているものと思われ
る。このTOF−MSスペクトルは、フラーレン単体が
光重合を起こさない程度の弱いレーザーパワー下で測定
されたものであり、明らかに重合体の存在を確認でき
る。しかしながら、重合体薄膜を直接レーザーアブレー
ションして測定していることから、実際のポリマーの分
子量分布を正しく反映したものではない。
【0074】更に、本発明に基づく炭素薄膜(フラーレ
ン重合薄膜)の製造に使用できる図1に示した製造装置
において、基体11はマイクロ波作用部17の近接、若
しくはマイクロ波作用部17のマイクロ波が作用する位
置に配されていてもよい。この際、基体11の支持基板
が絶縁物であれば、基体11及び基体11上に形成され
る前記薄膜にマイクロ波が直接作用して、前記薄膜の膜
質を改質し、その物性を適宜調節することができるし、
また、基体11の支持基板が導電物であれば、基体11
及び基体11上に形成される前記薄膜は誘導加熱される
ことになる。
【0075】また、前記の製造装置において、基体11
及び基体11の支持基板(支持体)は固定式であっても
よいし、基体11を搬送しながら順次炭素薄膜を形成す
るように構成してもよい。このように構成することで、
大面積の基体に連続的に前記薄膜を成膜でき、さらに、
複数の基体を連続的に成膜することもできる。また、基
体11(及びその支持体)を共振管の径よりも小さくし
て、図示の位置とマイクロ波作用部17の位置との間で
上下に移動可能となるように構成することもできる。こ
の場合、基体11に対する前記マイクロ波のパワーを適
宜調節できると共に、前記薄膜の成膜速度や膜質などを
変化させることができ、例えばマイクロ波作用部17内
では基体の温度上昇によってダイヤモンド状のカーボン
(ダイヤモンドライクカーボン)膜を成膜できる。
【0076】次に、本発明に基づいてフラーレン分子が
重合(多量体化)するメカニズムを図3〜図26及び図
29を参照しながら詳細に説明する。
【0077】まず、本発明の製造方法におけるC60の重
合プロセス、更に、C60分子間のクロスリンク構造につ
いて述べる。
【0078】C60のシクロペンタトリエン部の1,2
位、1,4位、及び1,2+1,4位のクロスリンク結
合で形成される4種の2量体のエネルギー計算結果(省
略)は、図3(C120 (a))に示すような〔2+2〕
環状付加反応で形成される1,2−(C602 が安定構
造であることを示唆している。この構造では、シクロブ
タン環の歪みが大きいものの、クロスリンク結合部位以
外では本来のC60の結合交替が保存される。
【0079】また、フラーレン重合体を溶解する溶媒が
存在しないことから、重合体の実際の分子量分布を直接
評価することは困難である。レーザーデソープションイ
オン化飛行時間型質量分析法〔Laser Desorption Ioniz
ation Time-of-Flight MassSpectroscopy(以下、LD
ITOF−MSと称する。)〕による質量評価も、適当
な溶媒が無いこと、C60とマトリックス分子との反応に
よりマトリックスアシスト法で行えないこと等の理由に
より、実際の重合体の質量分布を正確に評価することは
困難である。
【0080】しかし、重合構造に関しては、C60が重合
を起こさない程度のレーザーパワーのアブレーションで
観測したLDITOF−MSの多量体のピーク位置や2
量体のプロフィールから知見を得ることができる。例え
ば、プラズマパワー50Wで得られたC60重合膜のLD
ITOF−MSは、C60分子間の重合が4個の炭素のロ
スを伴う過程が最も確率的に高いことを示した。また、
2量体の質量領域においてC120 はマイナープロダクト
であり、最も高い確率で生成するのはC116 である。こ
れは、半経験的レベルのC120 の2量体の計算に基づい
て、このC116は図8(C116 )に示すようなD2h対称
116 であると考えられる。
【0081】C116 はC58の再結合で得られるが、C60
のイオン化状態を含む高い電子励起状態からC2 の脱離
によりC58が生成することが報告されている[(a)Fieber
-Erdmann, M. et al, Z.Phys. D 1993, 26, 308. (b)Pe
trie, S. et al, Nature 1993, 356, 426. (c)Eckhoff,
W. C. ; Scuseria, G. E., Chem. Phys. Lett. 1993,
216, 399. 参照] 。
【0082】この開殻C58分子が5員環2個が隣接する
構造へ転移する以前に2分子で結合すれば、図8のC
116 が得られる。しかし、本発明者は、C60のプラズマ
重合の初期過程はあくまでも励起3重項メカニズムによ
る〔2+2〕環状付加反応であると考えている。また、
最も高い確率で生成するC116 は、C60の電子励起3重
項状態から〔2+2〕環状付加反応により生成した(C
602 のシクロブタンを形成する4個のSP3 炭素原子
の脱離と、2個のC58開殻分子の再結合によると考えら
れる。
【0083】例えば、TOF−MS(飛行時間型質量分
析:以下、同様)のイオン化ターゲット上のC60微結晶
に強いパルスレーザー光を照射した場合、上記マイクロ
波誘起による重合と同様に、フラーレンの電子励起状態
を経る重合が起きるが、C60光重合体のピークと共にC
58、C56等のイオンも観測される。しかし、C58 2+或い
はC2 + 等のフラグメントイオンは観測されないことか
ら、上記Fieber-Erdmannらの文献に述べられているよう
なC60 3+から直接C58 2+とC2 + へのフラグメンテーシ
ョンはこの場合には考えられない。
【0084】また、C2 4 ガスプラズマ中でC60を気
化させ成膜した場合、そのLDITOF−MSにはC60
のF或いはC2 4 のフラグメクトイオンの付加体のみ
が観測され、C60重合体は観測されない。
【0085】このようにC60重合体の観測されないLD
ITOF−MSには、C58、C56等のイオンも観測され
ないという特徴がある。これらの観測結果もまた、C2
のロスがC60重合体を経てから起きることを支持してい
る。
【0086】上述したように、本発明の製造方法による
重合体生成プロセスでは、フラーレン分子間の重合に際
してC2 ユニットの損失が観測されるが、重合体形成に
際するC2 のロスが〔2+2〕環状付加反応による1,
2−(C602 (図3)から直接起きるかどうかという
事が問題となる。ここで、Murry らは1,2−(C60
2 の構造緩和のプロセスを提唱している[(a)Murry, R.
L. et al, Nature 1993, 366, 665. (b)stout, D. L. e
t al, Chem. Phys. Lett. 1993, 214, 576. Osawa, E.
参照] 。
【0087】両者とも図3で示す1,2−(C602
構造緩和の初期過程は、クロスリンク部位の最も歪みの
大きい1,2−C−C結合の開裂した図4のC
120 (b)の構造を経て、Stone-Wales 転移(Stone,
A. J. ; Wales, D. J. Chem. Phys. Lett. 1986, 128,
501. (b)Saito, R. Chem. Phys. Lett. 1992, 195, 53
7.参照)によるはしご型のクロスリンクを有するC120
(c)(図5参照)からC120 (d)(図6参照)の生
成であるとしている。1,2−(C602 (図3)から
120 (b)(図4)へはエネルギー的に不安定化する
が、さらにC120 (c)(図5)からC120 (d)(図
6)と転移するに連れて再度安定化する。
【0088】マイクロ波誘起によるC60の重合において
観測されるnC2 のロスが、その初期過程から得られる
1,2−(C602 から直接起きるのか、或いは、これ
がある程度構造緩和した後で起きるのか明確な知見は得
られていないが、観測されるC118 は図6のC
120 (d)からのC2 の脱離とダングリングの再結合に
よる図7の様な構造と考えられる。
【0089】また、図7のC118 の梯子型クロスリンク
の2個の炭素の脱離とダングリングの再結合で、図8に
示したC116 が得られる。2量体のTOF−MSに奇数
個のクラスターがほとんど観測されないことや構造の安
定さから、1,2−(C602 (図3)から直接C2
ロスが起きるよりも、図6のC120 (d)を経て起きる
と考えた方が理にかなっているように思われる。
【0090】また、大澤らはC120 (a)(図3)から
の多段階のStone-Wales 転移による構造緩和から、D5d
対称C120 構造が得られることを示している。このC
120 の構造はC70分子のグラファイト構造がC120 まで
延びたもので、C60重合体からナノチューブが得られる
ことを示唆する点で興味深い。しかし、プラズマ照射に
よる重合体形成に際しては、C60重合体のTOF−MS
を見るかぎり、このような多段階の転移反応による構造
緩和よりもC2 のロスを伴う構造緩和の過程が優先する
と考えられる。
【0091】一般に、π軌道とσ軌道が直交する平面共
役化合物では励起一重項 1(π−π* )と励起三重項 3
(π−π* )間のスピン遷移は禁制であり、振電相互作
用によりσ軌道が混合する場合に許容となる。C60の場
合にはπ共役系の非平面性によりπ軌道とσ軌道とがミ
キシングすることから 1(π−π* )− 3(π−π*
間のスピン−軌道相互作用による項間交叉が可能とな
り、前記三重項状態からのC60の高い光化学反応性がも
たらされる。
【0092】また、C60分子の切頭20面体という高い
対称性は電子励起状態間や振動順位間の遷移に厳しい禁
制則をもたらす反面、平面分子では禁制であるスピン多
重度の異なる(π−π* )性の状態間の遷移を許容とす
る点がフラーレン、特にC60の電子励起状態の挙動の特
徴である。
【0093】本発明の製造方法は、C70分子の重合にも
応用可能である。C70分子間の重合プロセスを理解する
ことは、C60の場合より複雑である。ここで便宜的に用
いるC70の炭素原子のナンバリングを図29に示す。
【0094】C70の105本のC−C結合は、図29に
示すナンバリングシステムを用いるとC(1)−C
(2)、C(2)−C(4)、C(4)−C(5)、C
(5)−C(6)、C(5)−C(10)、C(9)−
C(10)、C(10)−C(11)、C(11)−C
(12)で代表される8種類のC−C結合に分類され、
このうちC(2)−C(4)、C(5)−C(6)はC
60のC=C結合と同程度の二重結合性を有している。
【0095】更に、この分子のC(9)、C(10)、
C(14)、C(15)を含む6員環のπ電子は非極在
化し、5員環を形成するC(9)−C(10)結合が二
重結合性を帯びると同時に、C(11)−C(12)結
合が単結合性となる。
【0096】次に、C70の重合プロセスを、二重結合性
のC(2)−C(4)、C(5)−C(6)、C(9)
−C(10)、C(10)−C(11)について考え
る。C(11)−C(12)結合はほぼ単結合である
が、2つの6員環にわたる結合(6,6−ring fusion
)であるので、この結合の付加反応性についても吟味
する。
【0097】まず、C70の〔2+2〕環状付加反応を考
える。この5種類のC−C結合〔C(2)−C(4)、
C(5)−C(6)、C(9)−C(10)、C(1
0)−C(11)及びC(11)−C(12)〕の〔2
+2〕環状付加反応からは25種類のC70の2量体が得
られるが、計算の便宜のために同じC−C結合間の9種
の付加反応のみを考える。
【0098】下記の表1にMNDO/AM−1及びPM
−3レベルの2分子のC70からC140 の生成過程の反応
熱(ΔHf O (r) )を示す。表中、C140 (a)(図
9)と(b)(図10)、C140 (c)(図11)と
(d)(図12)、C140 (e)(図13)とC
140 (f)(図14)及びC140 (g)(図15)とC
140 (h)(図16)はそれぞれC(2)−C(4)、
C(5)−C(6)、C(9)−C(10)、C(1
0)−C(11)結合のanti-syn異性体のペアである。
C(11)−C(12)結合間の付加反応ではD2h対称
のC140 (i)(図17)のみが得られる。これらの構
造は図9〜図17に示した。
【0099】 表1 ──────────────────────────────────── クラスター ΔHf 0(r) ΔHf 0(r) クロスリンク 結合長 (参照図) (kcal/mol) (kcal/mol) (Å) AM−1 PM−3 ──────────────────────────────────── C140(a) −34.63 −38.01 C(2)-C(2')、C(4)-C(4') 1.544 (図9) C(2)-C(4) 、C(2')-C(4') 1.607 C140(b) −34.33 −38.00 C(2)-C(4')、C(4)-C(2') 1.544 (図10) C(2)-C(4) 、C(2')-C(4') 1.607 C140(c) −33.94 −38.12 C(5)-C(5')、C(6)-C(6') 1.550 (図11) C(5)-C(6) 、C(5')-C(6') 1.613 C140(d) −33.92 −38.08 C(5)-C(6')、C(6)-C(5') 1.551 (図12) C(5)-C(6) 、C(5')-C(6') 1.624 C140(e) −19.05 −20.28 C(9)-C(9')、C(10)-C(10') 1.553 (図13) C(9)-C(10)、C(9')-C(10') 1.655 C140(f) −18.54 −19.72 C(9)-C(10') 、C(10)-C(9') 1.555 (図14) C(9)-C(10)、C(9')-C(10') 1.655 C140(g) +3.19 −3.72 C(10)-C(10')、C(11)-C(11') 1.559 (図15) C(10)-C(11) 、C(10')-C(11') 1.613 C140(h) +3.27 −3.23 C(10)-C(11')、C(11)-C(10') 1.560 (図16) C(10)-C(11) 、C(10')-C(11') 1.613 C140(i) +64.30 +56.38 C(11)-C(11')、C(12)-C(12') 1.560 (図17) C(11)-C(12) 、C(11')-C(12') 1.683 ────────────────────────────────────
【0100】ここで、ΔHf 0(r)AM−1及びΔHf°
(r)PM−3とは、J. J. P. Stewartによる半経験的
分子起動法であるMNDO法のパラメタリゼーションを
用いる場合の反応熱の計算値である。
【0101】また、クロスリンクのナンバーリングシス
テムは図29に示し、これはC70のナンバリングに準ず
るものである。なお、「’」印は同じナンバリングを有
する隣のC70のものである。更に、結合長とは、前述の
MNDO/AM−1法に基づく反応熱の計算値から予測
された前記クロスリンクを構成するシクロブタン環のC
−C原子間の結合距離である。
【0102】表1から、anti-syn異性体間のエネルギー
差は認められない。また、C(2)−C(4)及びC
(5)−C(6)結合間の付加反応は、C60の付加反応
と同程度に発熱的であり、逆にC(11)−C(12)
結合間の付加反応は大きく吸熱的である。
【0103】ところで、C(1)−C(2)結合は明ら
かに単結合であるが、この結合間の環状付加反応の反応
熱はAM−1及びPM−3レベルでそれぞれ+0.19
及び−1.88kcal/molとなり、表1のC140 (g)と
140 (h)の反応熱とほぼ等しい。このことは、C
(10)−C(11)結合間の付加反応も熱力学的に起
き得ないことを示唆している。従って、C70分子間の付
加重合反応はC(2)−C(4)及びC(5)−C
(6)結合で優先的に起き、C(9)−C(10)結合
間の重合は起きたとしてもその確率は低いものと考えら
れる。
【0104】なお、単結合性であるC(11)−C(1
2)結合間の反応熱がC(1)−C(2)結合間の反応
熱より大きく発熱的になるのは、C140 (i)のシクロ
ブタン構造、とりわけC(11)−C(12)結合の歪
みが極めて大きいことによると考えられる。また、この
ような〔2+2〕環状付加体に際してのクロスリンク結
合に隣接するsp2 炭素の2PZ ローブの重なりの効果
を評価するために、C70の2量体、C70−C60重合体及
びC702 の生成熱の比較を行った。詳細な数値データ
は割愛するが、この重なりによる効果はC140 (a)〜
(h)にわたってほぼ無視できると思われる。
【0105】C70の重合膜のLDITOF−MSによる
2量体付近の質量分布は、C136 、C138 等の2量体が
主生成物である。次に、C60からD2h−Sym.C116 を得
るプロセスと同様に、2量体(C702 のシクロブタン
を形成する4個の炭素原子を脱離させ、残りのC68の再
結合によるC136 の構造について考える。これらの構造
は図18〜図26に示した。
【0106】また、表2にC136 の生成熱(ΔHf 0
の相対比較を示す。C136 (a)−(i)はそれぞれC
140 (a)−(i)に対応しており、例えばC
140 (a)でクロスリンクを形成していたC(2)、C
(4)はC136 (a)では脱離している。また、C136
(a)の4本のクロスリンクに関与する炭素はC
(1)、C(3)、C(5)及びC(8)であり、これ
らはSP2 炭素である。表1に示した2量体のうちPM
−3レベルで最も安定な構造と予測されたのはC
140 (c)であったことから、表2ではC140 (c)か
ら得られるC136 (c)のΔHf 0 を比較の基準とし
た。
【0107】 表2 ──────────────────────────────────── クラスター ΔHf 0(r) ΔHf 0(r) クロスリンク 結合長 (参照図) (kcal/mol) (kcal/mol) (Å) AM−1 PM−3 ──────────────────────────────────── C136(a) −65.50 −61.60 C(1)-C(8')、C(3)-C(5') 1.351 (図18) C(5)-C(3')、C(8)-C(1') 1.351 C136(b) −64.44 −61.54 C(1)-C(3')、C(3)-C(1') 1.351 (図19) C(5)-C(8')、C(8)-C(5') 1.351 C136(c) 0 0 C(4)-C(13') 、C(7)-C(10') 1.352 (図20) C(10)-C(7') 、C(13)-C(4') 1.352 C136(d) +0.09 +0.11 C(4)-C(7')、C(7)-C(4') 1.351 (図21) C(10)-C(13')、C(13)-C(10') 1.354 C136(e) +112.98 +102.89 C(5)-C(8')、C(8)-C(5') 1.353 (図22) C(11)-C(14')、C(14)-C(11') 1.372 C136(f) +69.47 +59.44 C(5)-C(14') 、C(14)-C(5') 1.358 (図23) C(11)-C(8') 、C(8)-C(11') 1.352 C136(g) −3.74 −9.20 C(5)-C(15') 、C(15)-C(5') 1.344 (図24) C(12)-C(9') 、C(9)-C(12') 1.352 C136(h) +2.82 −5.30 C(5)-C(9')、C(9)-C(5') 1.372 (図25) C(12)-C(15')、C(15)-C(12') 1.334 C136(i) +98.50 +84.36 C(13)-C(10')、C(15)-C(16') 1.376 (図26) C(10)-C(13')、C(16)-C(15') 1.376 ────────────────────────────────────
【0108】但し、表2中のΔHf 0 AM−1、ΔHf
0 PM−3、クロスリンク、結合長は、上記した表1と
同様である。
【0109】表2からC136 (a)及び(b)の構造が
大きく安定化すること、C136 (e)、(f)及び
(i)は不安定化することがわかる。また、計算した全
てのC140 及びC136 構造の単位炭素原子当たりのΔH
f 0 の値を評価すると、C140 からC136 構造への過程
で構造緩和するのはC140 (a)及び(b)からC136
(a)及び(b)への過程のみである。
【0110】従って、MNDO近似レベルの計算から、
70のクロスリンクにおいては、初期過程の〔2+2〕
環状付加反応の部位が分子主軸が通る両端の5員環の付
近に限定されるのみならず、C136 のようなπ共役系の
クロスリンク構造もC(2)−C(4)結合間の環状付
加反応によるC70の2量体から得られるC136 のみに限
定されることが示唆されている。
【0111】このようなマイクロ波誘起の重合法で得ら
れるC60の重合膜の導電性は半導体的であり、暗電流の
温度依存性から評価したバンドギャップは2eV程度で
ある。大気中の酸素拡散の影響が蒸着膜に比べて少ない
こともまた重合膜の特徴である。
【0112】また、マイクロ波パワー200Wで得られ
るC60重合膜の暗電流は10-7〜10-8S/cm程度で
あるのに対し、同じマイクロ波パワーで得られるC70
合膜では10-13 S/cm以下とほぼ絶縁体である。こ
のような重合膜の電気電導性の違いは、その重合膜の構
造に起因すると考えられる。例えば、C60重合膜の場
合、上の図の〔2+2〕環状付加反応による1,2−
(C602 の2量体のクロスリンクは、2分子のC60
開殻ビラジカル状態となる1本のクロスリンクボンド同
様に、導電性の向上には寄与しないと考えられる。これ
に対し、C116 の様な分子間クロスリンクはπ共役系を
形成することから、導電性の向上に寄与すると考えられ
る。C118 、C114 、C112 等のクロスリンク構造につ
いても現在検討中であるが、1,2−(C602 のクロ
スリンク部位の炭素の脱離と再結合からなる導電性に寄
与するπ共役したクロスリンクであると考えられる。
【0113】通常、導電性はフラーレン分子間の導電性
のクロスリンクの数に対してリニアに増加するのではな
く、ある一定の数で浸透限界を超えて大きく変化するは
ずである。上述したように、C70の場合にはC60に比べ
〔2+2〕環状付加反応の確率が低いだけでなく、C
140 からC136 の様な導電性のクロスリンク構造への構
造緩和も特定の部位のみでしか起きえないと考えられ
る。
【0114】従って、C60の重合膜には、導電性に寄与
するクロスリンクの数が多く浸透限界を越えているが、
70の場合には低い重合の確率と導電性のクロスリンク
の形成の制限から浸透限界を越えていないことが、両者
の大きな導電性の違いの原因と考えられる。
【0115】
【実施例】以下、本発明を具体的な実施例について説明
するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではな
い。
【0116】実施例1 <原料フラーレンの作製>直径10mm、長さ35cm
のグラファイトロッドを正極とし、ヘリウム雰囲気中、
100Torr下で150アンペアの直流電流によるア
ーク放電を行った。次いで、原料として用いたグラファ
イトロッドがほとんど気化してフラーレンを含むススが
得られた後、用いた電極の極性を逆にして、本来の負極
上に堆積したカーボンナノチューブ等の堆積物をさらに
気化させ、ススとした。そして、水冷反応管内に堆積し
たススを掃除機で回収し、トルエンで抽出して粗製のフ
ラーレンを得た。更に、得られた粗製フラーレンをヘキ
サンで洗浄乾燥後、真空昇華により精製した。
【0117】このようにして得られたフラーレンサンプ
ルの飛行時間型質量分析の結果、C60、C70が約9:1
の割合で含まれていた。
【0118】<薄膜の作製>フラーレン試料を容器(モ
リブデンボート)8に充填し、図7のマイクロ波重合装
置の所定位置に設置した。
【0119】真空排気系16としての分子ターボポンプ
により十分に脱気した後、キャリアガス導入管7よりア
ルゴンガスの導入を開始した。反応室内部が0.05T
orrと一定になったところでマイクロ波発振源1を作
動させ、チューナー4で調整を行いながら400Wのマ
イクロ波パワーとした。
【0120】マイクロ波の出力が一定となったところで
モリブデンボートを通電させ、徐々に電流値をあげるこ
とにより昇温してフラーレンを気化、流通させ、シリコ
ン基板上に薄膜を形成した。
【0121】フラーレンの気化、堆積は、基体(シリコ
ン基板)11の横に設置した図示しない水晶膜厚センサ
ーによりモニターした。確認のため、接触型膜厚計を用
いてフラーレン重合薄膜の膜厚を測定した。電流値の測
定にはナノアンメータを用いた。
【0122】また、フラーレン重合薄膜のバンドギャッ
プは電流値の温度依存性から決定した。フラーレン重合
薄膜の質量分析は、窒素パルスレーザーによるアブレー
ションとイオン化により飛行時間型質量分析計により行
った。
【0123】また、タングリングスピンの測定は、窒素
雰囲気中でxバンド電子スピン共鳴装置を用いて行っ
た。標準スピンとしてDi−tert-butylnitroxide のトル
エン溶液を用い、デジタルマンガンマーカーの低磁場か
ら3番目と4番目の吸収線との相対比較法により、フラ
ーレン重合薄膜の単位重量当たりのダングリングスピン
数を求めた。以下、実施例2〜16及び比較例1〜3に
おける前記各物性値の測定は、上述の測定方法に準じた
ものである。
【0124】<薄膜の評価>以下は、本実施例で得られ
たフラーレン重合薄膜の物性値である。
【0125】 膜厚(接触膜厚計) : 30nm 電気伝導度 : 1.1×10-8S/cm バンドギャップ : 2.0eV ダングリングスピン数 : 2.2×1018 spins/g 摩擦係数 : 5.0
【0126】図2は、実施例1のマイクロ波パワー40
0Wで得られたC60及びC70の混合物の重合薄膜の飛行
時間型質量分析結果である。測定に際しては、C60蒸着
膜に対して重合が起きない程度まで窒素レーザーのパワ
ーを落とした。従って、質量スペクトルに観測されてい
るフラーレン多量体はマイクロ波誘起の多量体であり、
測定に際しての窒素レーザーの照射による多量体ではな
い。
【0127】図2において、質量数が720付近のピー
クはC60(M=720)のモノマー、M=840付近の
ピークはC70(M=840)のモノマーであることを示
している。また、M=1400〜1500付近のピーク
はC60及びC70の2量体、更に、M=2000〜220
0付近のピークはC60及びC70の3量体、M=2600
〜2900付近のピークはC60及びC70の4量体が生成
していることを示している。
【0128】このように、本実施例で得られたフラーレ
ン重合薄膜はC60及びC70のモノマー、及びC60及び/
又はC70の多量体が生成したことが分かる。
【0129】実施例2 実施例1で得られた組成のフラーレン(C60:C70
9:1)をヘキサンで洗浄、乾燥した後、再度トルエン
の飽和溶液とし、活性炭と粉末シリカゲルを混合しトル
エンでペースト状にして耐圧カラムに充填したフラッシ
ュカラムに吸着させた。このカラムにトルエンを5気圧
の圧縮窒素を用いて導入し、C60のトルエン溶液を取り
出した。溶媒トルエンを蒸留除去後、n−ヘキサンで洗
浄し、乾燥した。
【0130】このようにして得られたC60のTOF−M
SではC70に相当するピークは全く観測されなかった。
同試料を長さ50cmの石英ガラス管にアセチレンバー
ナーを用いて真空封入し、左右2個のヒーターを有する
電気炉に設置した。そして、設置した石英管の試料を詰
めた側のヒーターを590℃に、一方を500℃に設定
し、約1週間放置した。冷却後、低温に設定した部位に
昇華されたC60のサンプルを取り出した。
【0131】次いで、実施例1と同様の装置を用い、か
つ、同様の手順でシリコン基板上にフラーレン重合薄膜
を形成した。以下、本実施例で得られたフラーレン重合
薄膜の物性値である。
【0132】 膜厚(接触膜厚計) : 30nm 電気伝導度 : 1.2×10-7S/cm バンドギャップ : 1.96eV ダングリングスピン数 : 2.5×1018 spins/g 摩擦係数 : 4.6
【0133】実施例3 実施例2と同様に製造及び精製したC60を、マイクロ波
パワー250Wで重合薄膜を作成した。以下、このよう
な条件で得られた重合薄膜の物性について記す。
【0134】 膜厚(接触膜厚計) : 37nm 電気伝導度 : 8.7×10-8S/cm バンドギャップ : 1.87eV ダングリングスピン数 : 1.3×1018 spi
ns/g 摩擦係数 : 5.8
【0135】実施例4 実施例2と同様に製造及び精製したC60を、マイクロ
波パワー100Wで重合薄膜を作成した。以下、このよ
うな条件で得られた重合薄膜の物性について記す。
【0136】 膜厚(接触膜厚計) : 35nm 電気伝導度 : 3.7×10-8S/cm バンドギャップ : 1.80eV ダングリングスピン数 : 1.0×1018 spins/g 摩擦係数 : 6.2
【0137】このように実施例2〜4で、マイクロ波の
パワーを減じた条件では、重合薄膜の導電性は低下する
傾向があった。これは、マイクロ波のパワーが不十分で
あったため、分子間の重合が十分でなかったことによる
と考えられる。
【0138】実施例5 市販のC70サンプルをn−ヘキサンにより洗浄、乾燥
後、実施例2に用いた電気炉により昇華、精製した。
【0139】得られたC70サンプルの飛行時間型質量分
析を行った結果、C70に対して不純物としてのC60が約
0.01%程度含まれていた。この試料を実施例1と同
様にモリブデンボートに封入し、マイクロ波パワー40
0Wで重合薄膜を作成した。各物性値の測定結果は以下
の通りである。
【0140】 膜厚(接触膜厚計) : 40nm 電気伝導度 : 6.5×10-11 S/cm バンドギャップ : 1.85eV ダングリングスピン数 : 2.7×1018 spins/g 摩擦係数 : 7.0
【0141】実施例6 実施例5で精製したC70サンプルを用いて、重合薄膜
を、マイクロ波パワー250Wで作成した。薄膜の物性
は以下の通りである。
【0142】 膜厚(接触膜厚計) : 32nm 電気伝導度 : 2.2×10-11 S/cm バンドギャップ : 1.85eV ダングリングスピン数 : 2.5×1018 spins/g 摩擦係数 : 7.5
【0143】実施例7 実施例5で精製したC70サンプルを用いて、重合薄膜
を、マイクロ波パワー100Wで作成した。薄膜の物性
は以下の通りである。
【0144】 膜厚(接触膜厚計) : 34nm 電気伝導度 : 8.5×10-12 S/cm バンドギャップ : 1.85eV ダングリングスピン数 : 1.8×1018 spins/g 摩擦係数 : 8.0
【0145】実施例5〜7から、C70の場合は、マイク
ロ波のパワーが高い場合でも、薄膜の導電性が低く、導
電性はC60薄膜の導電性に比べて低い。これはC70分子
がC60分子に比べ、重合反応を起こしにくいことによる
と考えられる。
【0146】実施例8 実施例2で作成したC60を原料としたフラーレン重合薄
膜を、真空下400℃に加熱し、この状態で8時間保存
した。徐冷却後、同様に薄膜の物性を測定した。
【0147】 電気伝導度 : 2.2×10-7S/cm バンドギャップ : 1.70eV ダングリングスピン数 : 8.9×1017 spins/g 摩擦係数 : 4.6
【0148】実施例9 実施例3で作成したC60を原料としたフラーレン重合薄
膜を、真空下400℃に加熱し、この状態で8時間保存
した。徐冷却後、同様に薄膜の物性を測定した。
【0149】 電気伝導度 : 1.1×10-7S/cm バンドギャップ : 1.66eV ダングリングスピン数 : 5.5×1017 spins/g 摩擦係数 : 5.8
【0150】実施例10 実施例4で作成したC60を原料としたフラーレン重合薄
膜を、真空下400℃に加熱し、この状態で8時間保存
した。徐冷却後、同様に薄膜の物性を測定した。
【0151】 電気伝導度 : 7.7×10-8S/cm バンドギャップ : 1.68eV ダングリングスピン数 : 4.4×1017 spins/g 摩擦係数 : 6.2
【0152】実施例8〜10から、フラーレン重合膜の
ダングリングスピン数は真空下、400℃に加熱し、こ
の状態で8時間保存するといった熱処理によって効果的
に減少し、薄膜の導電性の向上が認められる。薄膜の導
電性の向上はダングリングボンドの加熱による再結合に
よると考えられる。
【0153】実施例11 実施例2で得られたC60を原料としてフラーレン重合薄
膜の作成直後に、反応室内に水素ガスを導入し、3分間
100Wのマイクロ波を照射後、電気伝導度と単位重量
当たりのダングリングスピン数及び薄膜の摩擦係数を評
価した。
【0154】 電気伝導度 : 7.4×10-8S/cm ダングリングスピン数 : 2.7×1017 spins/g 摩擦係数 : 3.8
【0155】実施例12 実施例3で得られたC60を原料としてフラーレン重合薄
膜の作成直後に、反応室内に水素ガスを導入し、3分間
100Wのマイクロ波を照射後、電気伝導度と単位重量
当たりのダングリングスピン数及び薄膜の摩擦係数を評
価した。
【0156】 電気伝導度 : 2.8×10-8S/cm ダングリングスピン数 : 5.2×1017 spins/g 摩擦係数 : 4.0
【0157】実施例13 実施例4で得られたC60を原料としてフラーレン重合薄
膜の作成直後に、反応室内に水素ガスを導入し、3分間
100Wのマイクロ波を照射後、電気伝導度と単位重量
当たりのダングリングスピン数及び薄膜の摩擦係数を評
価した。
【0158】 電気伝導度 : 2.0×10-11 S/cm ダングリングスピン数 : 3.3×1017 spi
ns/g 摩擦係数 : 4.2
【0159】実施例11〜13において、フラーレン重
合薄膜表面をマイクロ波処理した水素プラズマによって
表面処理(表面修飾)することにより、明らかにダング
リングスピン数は減少している。また、摩擦係数は減少
する傾向にある。これは表面が炭化水素構造となってい
ることを示唆している。
【0160】実施例14 実施例2のフラーレン重合薄膜の作成手順と同様の手順
で、3分間、400Wのマイクロ波を照射する過程でシ
リコン基板上に蒸着した白金電極に−1kVの電圧を基
板へのバイアスとして印加した。得られた薄膜の電気伝
導度と単位重量当たりのダングリングスピン数及び薄膜
の摩擦係数を評価した。
【0161】 電気伝導度 : 3.2×10−6S/cm ダングリングスピン数 : 3.9×1015 spins/g 摩擦係数 : 4.6
【0162】実施例15 実施例3のフラーレン重合薄膜の作成手順と同様の手順
で、3分間、250Wのマイクロ波を照射する過程でシ
リコン基板上に蒸着した白金電極に−1kVの電圧を基
板へのバイアスとして印加した。得られた薄膜の電気伝
導度と単位重量当たりのダングリングスピン数及び薄膜
の摩擦係数を評価した。
【0163】 電気伝導度 : 2.0×10-6S/cm ダングリングスピン数 : 3.3×1015 spins/g 摩擦係数 : 3.8
【0164】実施例16 実施例4のフラーレン重合薄膜の作成手順と同様の手順
で、3分間、100Wのマイクロ波を照射する過程でシ
リコン基板上に蒸着した白金電極に−1kVの電圧を基
板へのバイアスとして印加した。得られた薄膜の電気伝
導度と単位重量当たりのダングリングスピン数及び薄膜
の摩擦係数を評価した。
【0165】 電気伝導度 : 1.9×10-8S/cm ダングリングスピン数 : 8.9×1015 spins/g 摩擦係数 : 4.5
【0166】以上、実施例14〜16から、重合薄膜作
成に関しては基板を帯電させること(特に負極性のバイ
アスをかけること)により、電気伝導度が増し、ダング
リングスピン数が減少する傾向があることが分かる。
【0167】比較例1 実施例1で得られたC60、C70混合原料を用いてフラー
レン蒸着薄膜を作成し、同様な検討を行った。
【0168】 膜厚(接触膜厚計) : 33nm 電気伝導度 : 1.1×10-13 S/cm バンドギャップ : 1.6eV ダングリングスピン数 : 9.6×1016 spins/g 摩擦係数 : 7
【0169】比較例2 実施例2で得られたC60原料を用いてフラーレン蒸着薄
膜を作成し、この蒸着薄膜の物性を評価した。
【0170】 膜厚(接触膜厚計) : 41nm 電気伝導度 : 3.5×10-13 S/cm バンドギャップ : 1.6eV ダングリングスピン数 : 1.0×1017 spins/g 摩擦係数 : 7
【0171】比較例1及び2から、フラーレン蒸着薄膜
に比べて、本実施例のマイクロ波誘起による重合薄膜
が、特に薄膜の導電性に大きく寄与していることが確認
された。
【0172】比較例3 図30に示す外部電極式容量結合型のプラズマ重合装置
を用いてシリコン基板上に実施例2と同様にC60を原料
としてフラーレン重合薄膜を形成した。
【0173】このプラズマ重合装置は、容量約20リッ
トルの反応器21を有し、この反応器21にはガス供給
管22、23が設けられている。また、反応器21の底
部には、油拡散ポンプ24やロータリーポンプ25、2
6、液体窒素トラップ27、28等からなり、真空排気
系に連結された排気口29が設けられている。
【0174】また、反応器21の上部には、プラズマ発
生用電極30、30’が3.5cmの間隔を隔てて反応
器21の外部に設置され、プラズマ電源31にインピー
ダンス整合器32を介して接続されている。また、反応
器21内には、フラーレン昇華用のモリブデンボート3
3及び試料基板34が7cmの間隔を隔てて対向して設
置されており、モリブデンボート33には直流電源35
が接続されている。
【0175】プラズマ電源31の出力は、交流13.5
6MHzのラジオ波で最高出力150Wである。ここで
は、100Wで13.5パスカルに設定したアルゴンガ
スの一定流量系にてアルゴンプラズマを発生させ、この
プラズマ中に、モリブデンボート33に入れたフラーレ
ンを数100℃で昇華させてプラズマ重合を行い、基板
34上にフラーレンプラズマ重合体を堆積させた。な
お、重合中の膜厚は、センサー36により連続的にモニ
ターした。キャリアガスとしてはアルゴンガス、窒素ガ
スを使用した。
【0176】この薄膜の物性は次の通りであった。
【0177】 膜厚(接触膜厚計) : 30nm 電気伝導度 : 8.0×10-19 S/cm バンドギャップ : 1.7eV ダングリングスピン数 : 5.0×1018 spins/g
【0178】比較例3より、外部電極式容量結合型のプ
ラズマ重合装置を用いて形成したフラーレン重合薄膜
は、比較例1及び2の蒸着薄膜よりは導電性の向上、ダ
ングリングスピン数の減少といった点で優れているが、
本実施例(例えば実施例2)と比較すれば、本実施例の
マイクロ波誘起による重合薄膜の方が、上記の各物性に
おいて優れていることが分かる。
【0179】以上、各実施例及び比較例から、マイクロ
波誘起によるフラーレン重合薄膜の製造方法及び製造装
置においては、フラーレンの構造を著しく破壊すること
なく、広面積にわたって均一かつ表面性に優れた炭素薄
膜(フラーレン重合薄膜)を製造することができること
が分かる。
【0180】また、このようにして得られた炭素薄膜に
おいては、摩擦に対して高強度、かつ柔軟性の高い薄膜
が形成することができる。
【0181】更に、前記炭素薄膜の表面を上述した種々
のガスプラズマ中で修飾することや、適宜基板温度や前
記薄膜温度を調節することによって、半導体的電気伝導
性の保存等の前記炭素薄膜の物性を適宜調節できること
等から、太陽光利用発電、薄膜ガスセンサー、光半導体
触媒等としての機能性化が容易である。
【0182】また、このフラーレン重合薄膜は、半導体
素子の表面保護膜等の電子材料を始め、磁気テープや磁
気ディスク等の磁気記録媒体の表面保護膜、光磁気ディ
スク装置の光学ピックアップ側の表面保護膜等として広
範囲に使用可能である。
【0183】
【発明の作用効果】本発明の製造方法によれば、C
n (但し、nは幾何学的に球状化合物を形成し得る整数
である。例えば、C60やC70等)で表されるフラーレン
分子を、マイクロ波誘起によって重合してフラーレン重
合体(フラーレン多量体)を形成し、このフラーレン重
合体を基体(例えば、半導体基板としてのシリコン等)
上に堆積させることによって、主として前記フラーレン
重合体からなる炭素薄膜を形成するので、大面積(広面
積)にわたって均一かつ優れた表面性を有し、また、特
にマイクロ波誘起によって強度や電気伝導度等に優れた
炭素薄膜(特にフラーレン重合体からなる薄膜)を製造
することができる。
【0184】本発明の製造装置によれば、Cn (但し、
nは幾何学的に球状化合物を形成し得る整数である。例
えば、C60やC70等)で表されるフラーレン分子の供給
源と、この供給源から供給される前記フラーレン分子に
マイクロ波を作用させるマイクロ波作用部と、このマイ
クロ波による誘起によって生成するフラーレン重合体
(フラーレン多量体)を基体(例えば、半導体基板とし
てのシリコン等)上に堆積させ、前記フラーレン重合体
からなる炭素薄膜を形成する成膜部(特に、前記マイク
ロ波作用部の径よりも大径となされた反応室)とを有し
ているので、前記マイクロ波作用部にて、前記フラーレ
ン分子を効率よく高密度に重合させ、更に、重合したフ
ラーレン分子(フラーレン重合体)を前記基体上に効率
よく堆積させることができるので、大面積(広面積)に
わたって均一かつ優れた表面性を有し、また、マイクロ
波誘起によって強度や電気伝導度等に優れた炭素薄膜
(例えばフラーレン重合体からなる薄膜)を製造するこ
とができる。
【0185】また、本発明の製造方法及び製造装置によ
れば、マイクロ波によってフラーレン分子(原料フラー
レン)を誘起(励起、プラズマ化)しているので、フラ
ーレンの構造を著しく破壊することなく、大面積にわた
って均一かつ表面性に優れたフラーレン重合薄膜を成膜
することができる。更に、このようにして得られたフラ
ーレン重合薄膜においては、摩擦に対して破壊を受けに
くい高強度かつ柔軟性に優れた物性を達成することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に基づく炭素薄膜を製造する際に使用で
きるマイクロ波誘起によるフラーレン重合薄膜の製造装
置の要部概略図である。
【図2】本実施例1におけるフラーレン重合薄膜の飛行
時間型質量分析スペクトルの測定結果を示すグラフであ
る。
【図3】本発明に基づくフラーレン重合体の生成過程で
生じるものと考えられるC60分子の2量体構造(C
120(a))を示す図である。
【図4】同フラーレン重合体の生成過程で生じるものと
考えられるC60分子の他の2量体構造(C120(b))を示
す図である。
【図5】同フラーレン重合体の生成過程で生じるものと
考えられるC60分子の他の2量体構造(C120(c))を示
す図である。
【図6】同フラーレン重合体の生成過程で生じるものと
考えられるC60分子の他の2量体構造(C120(d))を示
す図である。
【図7】同フラーレン重合体の生成過程で生じるものと
考えられるC118 分子の構造示す図である。
【図8】同フラーレン重合体の生成過程で生じるものと
考えられるC116 分子の構造示す図である。
【図9】同フラーレン重合体の生成過程で生じるものと
考えられるC70分子の2量体構造(C140(a))を示す図
である。
【図10】同フラーレン重合体の生成過程で生じるもの
と考えられるC70分子の他の2量体構造(C140(b))を
示す図である。
【図11】同フラーレン重合体の生成過程で生じるもの
と考えられるC70分子の他の2量体構造(C140(c))を
示す図である。
【図12】同フラーレン重合体の生成過程で生じるもの
と考えられるC70分子の他の2量体構造(C140(d))を
示す図である。
【図13】同フラーレン重合体の生成過程で生じるもの
と考えられるC70分子の他の2量体構造(C140(e))を
示す図である。
【図14】同フラーレン重合体の生成過程で生じるもの
と考えられるC70分子の他の2量体構造(C140(f))を
示す図である。
【図15】同フラーレン重合体の生成過程で生じるもの
と考えられるC70分子の他の2量体構造(C140(g))を
示す図である。
【図16】同フラーレン重合体の生成過程で生じるもの
と考えられるC70分子の他の2量体構造(C140(h))を
示す図である。
【図17】同フラーレン重合体の生成過程で生じるもの
と考えられるC70分子の他の2量体構造(C140(i):D
2h対称)を示す図である。
【図18】同フラーレン重合体の生成過程で生じるもの
と考えられるC70分子の他の2量体構造(C136(a))を
示す図である。
【図19】同フラーレン重合体の生成過程で生じるもの
と考えられるC70分子の他の2量体構造(C136(b))を
示す図である。
【図20】同フラーレン重合体の生成過程で生じるもの
と考えられるC70分子の他の2量体構造(C136(c))を
示す図である。
【図21】同フラーレン重合体の生成過程で生じるもの
と考えられるC70分子の他の2量体構造(C136(d))を
示す図である。
【図22】同フラーレン重合体の生成過程で生じるもの
と考えられるC70分子の他の2量体構造(C136(e))を
示す図である。
【図23】同フラーレン重合体の生成過程で生じるもの
と考えられるC70分子の他の2量体構造(C136(f))を
示す図である。
【図24】同フラーレン重合体の生成過程で生じるもの
と考えられるC70分子の他の2量体構造(C136(g))を
示す図である。
【図25】同フラーレン重合体の生成過程で生じるもの
と考えられるC70分子の他の2量体構造(C136(h))を
示す図である。
【図26】同フラーレン重合体の生成過程で生じるもの
と考えられるC70分子の他の2量体構造(C136(i))を
示す図である。
【図27】C60の分子構造を示す図である。
【図28】C70の分子構造を示す図である。
【図29】C70分子のナンバリングシステムを示す図で
ある。
【図30】従来より使用されている外部電極式容量結合
型プラズマ重合装置の要部概略図である。
【符号の説明】
1…マイクロ波発振源、2…アイソレータ、3…パワー
メータ、4…スリースタブチューナー、5…反射キャビ
ティ、6…導波管、7…キャリアガス導入管、8…供給
源(容器)、9…共振管、10…反応管(成膜部)、1
1…基体、12…キャリアガス、13…フラーレン分
子、14…フラーレン重合体、15…マイクロ波、16
…真空排気系、17…マイクロ波作用部

Claims (23)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Cn (但し、nは幾何学的に球状化合物
    を形成し得る整数である。)で表されるフラーレン分子
    を、マイクロ波誘起によって重合してフラーレン重合体
    を形成し、このフラーレン重合体を基体上に堆積するこ
    とによって、前記フラーレン重合体からなる炭素薄膜を
    形成する、炭素薄膜の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記フラーレン分子を飛翔させ、このフ
    ラーレン分子をキャリアガスに連行させ、所定位置にて
    マイクロ波の作用によって誘起、プラズマ重合化して前
    記フラーレン重合体とし、フラーレン重合体を主成分と
    する炭素薄膜、アモルファスな炭素薄膜、或いはダイヤ
    モンド構造の炭素薄膜として、前記基体上に堆積させ
    る、請求項1に記載した製造方法。
  3. 【請求項3】 前記フラーレン重合体を前記所定位置か
    ら離れて配置された前記基体上に導く、請求項2に記載
    した製造方法。
  4. 【請求項4】 前記マイクロ波の導波管を横断して前記
    フラーレン分子を連行する前記キャリアガスの流路を配
    し、この流路が前記基体の配された成膜空間に開口され
    ている、請求項3に記載した製造方法。
  5. 【請求項5】 前記成膜空間を前記流路の径よりも大き
    くする、請求項4に記載した製造方法。
  6. 【請求項6】 前記マイクロ波のパワーを0〜1000
    Wとする、請求項1に記載した製造方法。
  7. 【請求項7】 前記フラーレン分子を、C60及び/又は
    70からなるフラーレン分子とする、請求項1に記載し
    た製造方法。
  8. 【請求項8】 前記キャリアガスをヘリウム、アルゴ
    ン、キセノン、ラドン及び水素からなる群より選ばれた
    少なくとも一種のガスとする、請求項2に記載した製造
    方法。
  9. 【請求項9】 前記基体に負極性のバイアス、或いは正
    極性のバイアスをかける、請求項1に記載した製造方
    法。
  10. 【請求項10】 前記フラーレン重合体を堆積させる前
    に、予め前記キャリアガスをプラズマ化して基体をエッ
    チングする、請求項2に記載した製造方法。
  11. 【請求項11】 前記基体をシリコン、ガラス、透明電
    極、金、白金及びアルミニウムからなる群より選ばれた
    基体とする、請求項1に記載した製造方法。
  12. 【請求項12】 前記基体の温度を調節することによっ
    て前記炭素薄膜のダングリングスピンの量を調節する、
    請求項1に記載した製造方法。
  13. 【請求項13】 Cn (但し、nは幾何学的に球状化合
    物を形成し得る整数である。)で表されるフラーレン分
    子の供給源と、この供給源から供給される前記フラーレ
    ン分子にマイクロ波を作用させるマイクロ波作用部と、
    このマイクロ波による誘起によって生成するフラーレン
    重合体を基体上に堆積させて前記フラーレン重合体から
    なる炭素薄膜を形成する成膜部とを有する、炭素薄膜の
    製造装置。
  14. 【請求項14】 前記フラーレン分子が前記供給源から
    飛翔され、このフラーレン分子がキャリアガスに連行さ
    れ、この連行経路中の所定位置に設けられたマイクロ波
    の作用部でのマイクロ波の照射によって誘起、プラズマ
    重合化されて前記フラーレン重合体とされ、フラーレン
    重合体を主成分とする炭素薄膜、アモルファスな炭素薄
    膜、或いは、キャリアガスが水素を含む場合にはダイヤ
    モンド構造の炭素薄膜とされて、前記基体上に堆積され
    る、請求項13に記載した製造装置。
  15. 【請求項15】 前記フラーレン重合体が前記マイクロ
    波作用部から離れて配置された前記基体上に導かれる、
    請求項14に記載した製造装置。
  16. 【請求項16】 前記マイクロ波の導波管を横断して前
    記フラーレン分子を連行する前記キャリアガスの流路が
    配され、この流路が前記基体の配された成膜空間に開口
    されている、請求項15に記載した製造装置。
  17. 【請求項17】 前記成膜空間が前記流路の径よりも大
    きく形成されている、請求項16に記載した製造装置。
  18. 【請求項18】 前記マイクロ波のパワーが0〜100
    0Wとされる、請求項13に記載した製造装置。
  19. 【請求項19】 C60及び/又はC70からなるフラーレ
    ン分子が前記供給源に配されている、請求項13に記載
    した製造装置。
  20. 【請求項20】 前記キャリアガスがヘリウム、アルゴ
    ン、キセノン、ラドン及び水素からなる群より選ばれた
    少なくとも一種のガスである、請求項14に記載した製
    造装置。
  21. 【請求項21】 前記基体に負極性のバイアス、或いは
    正極性のバイアスがかけられる、請求項13に記載した
    製造装置。
  22. 【請求項22】 前記基体がシリコン、ガラス、透明電
    極、金、白金及びアルミニウムからなる群より選ばれた
    基体である、請求項13に記載した製造装置。
  23. 【請求項23】 前記基体の温度が調節されることによ
    って前記炭素薄膜のダングリングスピンの量が調節され
    る、請求項13に記載した製造装置。
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