JP2004356094A - 積層体および積層体の製造方法 - Google Patents

積層体および積層体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、有機溶剤により溶出することがなく、フラーレン類の表面処理剤としての機能を最大限活かすことが可能なフラーレン類を含有するフラーレン層を有する積層体およびその製造方法を提供することを主目的とする。
【解決手段】 本発明は、基材と、基材表面に形成されたフラーレン類を含有するフラーレン層とを有する積層体であって、上記フラーレン類の球殻構造同士が少なくとも1つの原子を介して架橋、または上記フラーレン類の球殻構造が少なくとも1つの原子を介して基材と化学結合していることを特徴とする積層体を提供することにより上記目的を達成するものである。
【選択図】 無し

Description

本発明は、基材と、基材表面に形成されたフラーレン類を含有するフラーレン層とを有する積層体およびその製造方法に関する。
1990年にC60の大量合成法が確立されて以来、フラーレン類に関する研究が一層精力的に展開されるとともに、フラーレン類の用途開発が望まれている。
これら用途のうちでも、フラーレン類の有する極めて特異的な結合構造、化学的性質、電子状態等に由来する様々な機能に着目し、電気電子機器、自動車、建築資材、工業機械の部品など様々な製品へ応用される表面処理剤としての適用は、フラーレン類の用途として大きく期待される分野の一つである。
本発明者は、フラーレン類を表面処理剤として適用する例として、既にリチウム二次電池の正極活物質表面にフラーレン類を存在させることにより、リチウム二次電池の安全性、特にフロート充電時における安全性が有効に確保されることを見出している(特願2003−370653号明細書)。
さらに、本発明者の共同研究者らによっても、リチウム二次電池の負極活物質表面に分子量が6以上の基を有するフラーレン誘導体を存在させることにより、リチウム二次電池の充電容量、放電容量および初期効率を改善することができ、この効果が、フラーレン誘導体を負極活物質表面に存在させることにより更に高められることについても見出している(特願2003−344638号明細書)。
このように正極活物質表面または負極活物質表面にフラーレン類を存在させるだけでも、リチウム二次電池の特性は十分に改良されるものである。
しかしながら、フラーレン類は一部の有機溶媒(極性の低い有機溶媒)には溶解する性質がある。従って、上記のようにフラーレン類を正極活物質表面又は負極活物質表面に存在させた場合においても、経時的にフラーレン類が正極活物質表面又は負極活物質表面から溶け出してしまう場合がある。このため、このような有機溶媒に対する溶出を抑制してやれば経時的にもより安定した性能を得ることができ、フラーレン類の表面処理剤としての応用可能性はさらに拡がることが期待される。
またフラーレン類は分子であるため、その集合体の機械的強度は高いとは言えない。そのため上記のようにフラーレン類を正極活物質表面又は負極活物質表面に存在させた例においても、その後に粉体分散工程が行われたり、電極形成後の取り扱い時に応力が印可されたりすると、フラーレン類が正極活物質表面又は負極活物質表面から脱離してしまう可能性がある。このため、フラーレン類の集合体としての機械的強度を高くすることができれば、機械的刺激が加えられるような用途に対しても適用できる等、応用可能性がさらに拡がることが期待される。
そこで、本発明は、有機溶剤への溶出等を抑制し、フラーレンの集合体の強度を高めて、フラーレン類の表面処理剤としての機能を最大限活かすことが可能なフラーレン類を含有するフラーレン層を有する積層体およびその製造方法を提供することを主目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、フラーレン類の球殻構造が隣接するフラーレン類の球殻構造または基材と少なくとも一つの原子を介して間接結合することにより、フラーレン類の有機溶媒に対する安定性が高められることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、基材と、基材表面に形成されたフラーレン類を含有するフラーレン層とを有する積層体であって、上記フラーレン類の球殻構造同士が少なくとも1つの原子を介して架橋していることを特徴とする積層体を提供する。
本発明においては、フラーレン層を構成する隣接するフラーレン類の球殻構造同士が少なくとも1つの原子を介して架橋した構造を有しているので、フラーレン類の有機溶媒に対する溶出を抑制することができる。また、基材に対する密着性も高くフラーレン層が容易に剥離することがなく、工業的にも容易に製造することができる。
本発明はまた、基材と、基材表面に形成されたフラーレン類を含有するフラーレン層とを有する積層体であって、上記フラーレン類の球殻構造が少なくとも1つの原子を介して基材と化学結合していることを特徴とする積層体を提供する。
本発明においては、フラーレン層を構成するフラーレン類の球殻構造が少なくとも1つの原子を介して基材と化学結合した構造を有しているので、フラーレン類の有機溶媒に対する溶出を抑制することができ、基材に対する密着性も高く、工業的にも製造が容易である。
上記発明においては、上記少なくとも一つの原子が酸素原子であることが好ましい。酸素原子は、工業的に入手が容易であり、及び比較的簡単で小さな構造を有し架橋したフラーレン層の構造を密にすることができる、もしくは、フラーレン類の球殻構造または基材の両方に反応性が高いからである。
また本発明は、基材と、基材表面に形成されたフラーレン類を含有するフラーレン層とを有する積層体であって、下記試験方法において、上記フラーレン層から溶出するフラーレン類の単位重量当たりの溶出量が2mg/g以下となることを特徴とする積層体を提供する。
[試験方法]
(1)トリメチルベンゼン溶媒またはN−メチルピロリドン溶媒に、0.1gの上記積層体を添加してサンプル液を調製する。
(2)上記サンプル液を常温(25±5℃)かつ常湿(50±15%RH)で24時間放置する。
(3)上記放置後のサンプル液の上澄み液を回収し、上澄み液に含有されるフラーレン類の含有量を測定する。
(4)上記測定値を上記サンプル液の総溶出量に換算し、換算値を0.1gで割る。
本発明においては、フラーレン層から溶出するフラーレン類の単位重量当たりの溶出量が2mg/g以下となることにより、表面処理効果の安定性が高いフラーレン層とすることができる。
また本発明においては、上記基材が粒子状であることが好ましい。
上記発明においては、上記基材がリチウム遷移金属複合酸化物であり、上記積層体がリチウム二次電池用正極材料として用いられてもよい。また、上記基材が炭素性物質であり、上記積層体がリチウム二次電池用負極材料として用いられてもよい。
本発明はまた、上記積層体を含有することを特徴とするリチウム二次電池の正極を提供する。また本発明は、上記積層体を含有することを特徴とするリチウム二次電池の負極を提供する。
さらに本発明は、上記リチウム二次電池の正極、あるいは、上記リチウム二次電池の負極を用いることを特徴とするリチウム二次電池を提供する。
本発明はまた、基材と、基材表面に形成されたフラーレン類を含有するフラーレン層とを有する積層体の製造方法であって、基材表面にフラーレン類を存在させるフラーレン類担持工程と、上記フラーレン類の球殻構造同士を少なくとも1つの原子を介して架橋させる架橋工程又は上記フラーレン類の球殻構造を少なくとも1つの原子を介して基材と化学結合させる化学結合工程のうち少なくとも1つの工程と、を有することを特徴とする積層体の製造方法を提供する。
本発明の製造方法によれば、基材表面に、有機溶媒に対するフラーレン類の溶出を抑制することのできるフラーレン層を形成させることが可能となる。得られるフラーレン層は基材との密着性が高いため容易に剥離することがなく、また生産性にも優れている。
上記発明においては、上記架橋工程または化学結合工程を、100℃以上の加熱処理によって行うことが好ましい。フラーレン類の有機溶媒に対する溶出をより確実に抑制することができるからである。
さらに、上記発明においては、上記少なくとも1つの原子が酸素原子であることが好ましい。酸素原子は、工業的に入手が容易であり、及び比較的簡単で小さな構造を有し架橋したフラーレン層の構造を密にすることができる、もしくは、フラーレン類の球殻構造または基材の両方に反応性が高いからである。
本発明によれば、基材の特徴を維持しつつ、フラーレン類の有する様々な機能を発現する積層体を得ることができる。また、有機溶媒に対するフラーレン類の溶出を抑制させることができるため、フラーレン類による表面処理効果の安定性が高い。さらに、フラーレン層と基材との密着性が高く、工業的に製造しやすいという利点をも有するものである。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
A.積層体
本発明の積層体は、基材と、基材表面に形成されたフラーレン類を含有するフラーレン層とを有するものであって、フラーレン層の機械的強度に優れ、フラーレン層の構造自由度が高く、有機溶媒に対するフラーレン類の溶出を抑制することができるものである。このような本発明の積層体としては、下記の4態様がある。以下、各態様について説明する。
なお、本発明においては、「基材表面」は、基材が多孔体である場合には、多孔体の孔内の内壁をも含む意味に用いる。
1.第1の態様
第1の態様の積層体は、基材と、基材表面に形成されたフラーレン類を含有するフラーレン層とを有する積層体であって、上記フラーレン類の球殻構造同士が少なくとも1つの原子を介して架橋していることを特徴としている。
第1の態様の積層体においては、フラーレン層を構成するフラーレン類が単にファンデルワールス力によって集合しているだけでなく、隣接するフラーレン類の球殻構造同士が少なくとも1つの原子を介して架橋していることにより、フラーレン層の強度が高まり、有機溶媒に対するフラーレン類の溶出を抑制することができるといった利点を有する。
以下、第1の態様を構成する各要素について説明する。
a.基材
基材は、一定の形状を保持するものであれば特に限定されず、板状であっても粉体状であってもよい。
基材表面でフラーレン類を架橋する場合には耐熱性が必要であるから、基材の融点は通常100℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくは500℃以上である。一方、通常4000℃以下、好ましくは3500℃以下、より好ましくは3000℃以下である。
基材が板状の場合における基材の膜厚は、用途によっても大きく異なるものであるが、通常1μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは100μm以上である。一方、基材の膜厚は、通常1m以下、好ましくは10cm以下、より好ましくは1cm以下、最も好ましくは1mm以下である。
上述の通り、基材は粉体状であってもよい。基材が粉体状であるとは、基材が粒子状であることを意味する。ここで、基材が粒子状であるとは、基材が一つの粒子からなる場合(一次粒子である場合)及び、基材が複数の粒子が凝集して形成されている場合(二次粒子である場合)のいずれの場合も含む。
基材が粒子状の場合における基材の粒径は、通常1nm以上、好ましくは10nm以上、より好ましくは100nm以上であり、一方、通常1mm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。
なお、基材の形状が不定形である場合(例えば、基材がH型鉄鋼、住宅建設用のプラスチック部材等である場合)は、フラーレン層で被覆したその基材(部材)の該当部分における、基材の実効的な厚みを考えれば良い。同様に、直径が1mmより大きい粒子状の基材は、粉体(粒子)というよりは塊というべきものである。このため、このような基材は板状と同様に考えればよい。例えば、直径1mの球体に対しては、厚みが1mの板状の基材と同様に考えればよい。
基材の材料としては、特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択されるものであり、有機材料または無機材料のいずれを使用することもできる。
無機材料としては、金属(純金属および合金)、金属の酸化物、金属の複合酸化物、金属の硫化物、金属の弗化物、金属の塩化物、半導体(例えばSi、Ge、GaAs)、ガラス類、コンクリート、アスファルト、各種セラミック、各種岩石、木等の木材等を挙げることができる。これらの中でも機能性が高いことから、金属の酸化物、金属の複合酸化物、ガラス類が好ましい。より具体的には、顔料として用いられるアルミナ、シリカ、チタニアおよび酸化鉄、リチウム二次電池の正極活物質として用いられるリチウム遷移金属複合酸化物(リチウム遷移金属複合酸化物としては、例えばリチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物を挙げることができる。)、MnO、V、V13が特に好ましい。本願発明の表面処理の効果が顕著に発揮される点で好ましいのは、アルミナ、シリカ、チタニア等の金属酸化物、又はリチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物である。基材としてリチウム遷移金属複合酸化物を用いた積層体の用途としては、リチウム二次電池用正極材料を挙げることができる。
有機材料としては、有機化合物であれば特に限定されるものではないが、グラファイト等の炭素性物質や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、アクリル樹脂、シロキサン樹脂等の高分子材料などを挙げることができる。これらの中でも、例えば積層体の用途としてリチウム二次電池を考慮した場合は、機能性が高いことから、炭素性物質が好適に用いられる。基材として炭素性物質を用いた積層体の用途としては、リチウム二次電池用負極材料を挙げることができる。
炭素性物質としては、例えば、グラファイト等の黒鉛材料、石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチもしくは石油系ピッチの炭化物、またはこれらのピッチを酸化処理したもの、ニードルコークス、ピッチコークス、フェノール樹脂、結晶セルロース等を挙げることができる。さらに、上記炭素性物質を一部黒鉛化した炭素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等を挙げることもできる。
これらの炭素性物質の中でも、好ましいのはコークスおよびグラファイト等の黒鉛材料であるが、例えばリチウム二次電池等に用いた場合に容量が大きい点から、グラファイト等の黒鉛材料が特に好ましい。
黒鉛材料としては、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛粉末およびその精製品、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の導電性カーボンブラックの黒鉛化品、気相成長炭素繊維等の炭素繊維が挙げられる。これらの中でも、容量の点から、人造黒鉛または天然黒鉛が好ましく、リチウム二次電池等に用いた場合には電池性能を制御しやすいことから人造黒鉛が特に好ましい。これらの黒鉛材料は、表面をアモルファス処理したものであってもよい。
b.フラーレン層
上記基材表面には、フラーレン類を含有するフラーレン層が形成されている。
第1の態様のフラーレン層においては、フラーレン類の球殻構造同士が少なくとも1つの原子を介して架橋していることを特徴としている。ここで架橋とは、隣接するフラーレン類が少なくとも1つの原子からなる結合基を介して間接的に結合している状態をいい、2量体であってもよく多量体であってもよい。また、フラーレン類が直鎖状または網目状に連なった高分子を形成していてもよい。
隣接するフラーレン類同士がこのような架橋構造を有していることにより、フラーレン類同士の自由度が上がるのみならず、フラーレン層の機械的強度が高まり、有機溶媒に対するフラーレン類の溶出を抑制することができ、表面処理効果の安定性の高いフラーレン層を得ることができる。
フラーレン層におけるフラーレン類の存在量は、基材の表面積に対して規定される。具体的には、基材が粉体状の場合は窒素吸着法におけるBET解析で測定される表面積に対して規定され、基材が板状の場合は幾何学的に測定した表面積に対して規定される。本発明においては、フラーレン層におけるフラーレン類の存在量は、基材の単位面積当たり0.01mg/m以上が好ましく、より好ましくは0.1mg/m以上、さらに好ましくは1mg/m以上とする。フラーレン類の存在量があまりに少ないと表面処理効果が十分に得られない場合があるからである。一方、通常20kg/m以下、好ましくは1kg/m以下、より好ましくは1000mg/m以下、さらに好ましくは100mg/m、特に好ましくは20mg/m以下、最も好ましくは10mg/m以下とする。フラーレン類の存在量が多すぎると、基材に対するフラーレン層の割合が高くなりすぎ、表面処理効率が低下する場合があるからである。
基材が板状の場合であって表面積の測定が困難な場合には、フラーレン類の存在量をフラーレン層の厚みで規定してもよい。膜厚は、基材表面の状態がアモルファス状態もしくは結晶状態である場合や、膜厚に分布が生じる場合を考慮すると、通常0.01nm以上とする。なお、膜厚は平均膜厚である。したがって、フラーレン類の1分子のサイズは約1nmであることから、分子サイズ以下の膜厚を規定することになるが、基材表面積の被覆率が1%であれば膜厚は分子厚みの1/100となるため矛盾はない。好ましくは、0.1nm以上、より好ましくは1nm以上とする。
一方、フラーレン層の平均膜厚は、通常1cm以下、好ましくは1mm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは100nm以下、さらにまた好ましくは20nm以下、特に好ましくは10nm以下、最も好ましくは5nm以下とする。表面処理効果としては、この範囲で十分な効果が得られる。
上記平均膜厚とは別に、表面処理の不均一性に由来する最大膜厚に対する考慮も必要である。基材表面においてフラーレン層の膜厚が特に厚い領域が存在することは、他の領域の表面処理が不完全になるだけでなく、過剰のフラーレン類を要することになるからである。特に表面に粒状、柱状、球状に突起した部分が存在することは好ましくない。最大膜厚としては、平均膜厚に対し通常5倍以下、好ましくは2倍以下、より好ましくは1.5倍以下、さらに好ましくは1.2倍以下とする。
また、基材が粉体状の場合には、フラーレン類の存在量を粉体重量当たりの重量として規定してもよい。重量%による規定は工程の管理上利便性が高いからである。具体的には、フラーレン類の存在量を、通常0.001重量%以上、好ましくは0.005重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上とする。一方、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.3重量%以下、最も好ましくは0.1重量%以下とする。
なお、基材とフラーレン類との上記の重量比からもわかるように、本発明においては、基材表面全体がフラーレン類で覆われている必要はない。フラーレン層は、本発明の効果が十分に発揮されるならば、基材表面に局在して形成されていてもよい。もちろん、基材表面全面にフラーレン層が形成されていることが好ましい。
以下、本発明に用いられるフラーレン層を構成するフラーレン類、およびフラーレン類同士を結合する結合基について説明する。
(フラーレン類)
本発明において「フラーレン類」とは、炭素からなる球殻構造を分子内に有する物質をいう。例えば、球殻状炭素分子であるフラーレン、及びフラーレンを構成する炭素に有機基等や無機元素等の基が結合したフラーレン誘導体は、「フラーレン類」に含まれる。なお、上記球殻構造は、完全に球状になる必要はなく、球を構成する炭素の一部が欠損していてもよい。
以下、フラーレン類のうち、フラーレン、フラーレン誘導体について説明する。
フラーレンとは球殻状炭素分子を指す。用いるフラーレンとしては、本発明の目的を満たす限り限定されないが、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C96、C100等又はこれら化合物の2量体、3量体等を挙げることができる。これらフラーレンは、本発明の要旨の範囲内において、複数種類を用いることができ、複数種類を用いる場合の各々のフラーレンの混合比率も任意とすることができる。
これらフラーレンの中でも好ましいのは、C60、C70、又はこれらの2量体、3量体である。C60、C70は溶媒への溶解性も高いため、リチウム二次電池への添加が行いやすいという利点がある。また、C60、C70は工業的に得やすい利点もある。当然上記フラーレンは複数を併用してもよいが、併用する場合、好ましいのはC60とC70とをともに用いることである。この組み合わせで用いることにより、基材表面に対する均一分散性が高くなるからである。
このように、C60およびC70を併用する場合、C60:C70の重量比を、通常99:1〜1:99、特に95:5〜10:90、中でも90:10〜20:80の範囲とすることが好ましい。上記範囲内で用いることにより、C60とC70との相互作用が良好となり、分散安定性が向上するからである。
フラーレンは、通常、抵抗加熱法、レーザー加熱法、アーク放電法、燃焼法などにより得られたフラーレン含有スートから抽出分離することによって得られる。この際、スートからフラーレンを完全に分離する必要は必ずしもなく、性能を損なわない範囲でスート中のフラーレンの含有率を調整することができる。
フラーレンは、常温(25℃)、常湿(50%RH)では、通常粉末状の性状を有し、その二次粒径は、通常10nm以上、好ましくは15nm以上、より好ましくは20nm以上、特に好ましくは50nm以上であり、通常1mm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは100μm以下である。
フラーレン誘導体とは、上記のフラーレンを構成する少なくとも1つの炭素に有機化合物の一部分を形成する原子団や無機元素からなる原子団が結合した化合物をいう。フラーレン誘導体としては、例えば、水素化フラーレン、酸化フラーレン、水酸化フラーレン、ハロゲン(F、Cl、Br、I)化フラーレン等を用いることができる。フラーレン誘導体を得るために用いるフラーレンとしては、本発明の目的を満たす限り限定されず、上記具体的に示したフラーレンのいずれを用いてもよい。
なお、フラーレン誘導体は、本発明の要旨の範囲内において、複数種類を用いても良く、複数用いる場合には、各々のフラーレン誘導体の混合比率も任意とすることができる。
本発明で用いるフラーレン誘導体は、フラーレンを構成する1以上の炭素に所定の基が結合したものである。フラーレンを構成する炭素のうち、所定の基が結合する炭素としては、C60分子を例に取れば、C60分子中の(6−6)結合を構成する2個の炭素原子を好ましく挙げることができる。これは、上記(6−6)結合を形成する2個の炭素原子の電子吸引性が高くなっているからである。結合される基は、(6−6)結合のいずれかの炭素又は両方の炭素に結合する場合が考えられ、両方の炭素に結合する場合は、両方の炭素に同一の基が結合する場合、異なる基が結合する場合、及び、両方の炭素が環の一部となるように環化付加する場合を挙げることができる。
環化付加する場合としては、3員環、4員環、5員環、6員環を形成する各種の反応があり、環の構成分子にさらに置換基を有するものを用いることにより様々なフラーレン誘導体を得ることができる。
60分子を例に取ると、3員環形成の付加反応としては(6−5)開環系フレロイドや(6−6)閉環系メタノフラーレンが挙げられる。フレロイドやメタノフラーレンにおいて付加された炭素原子はメチレン基であるが、このメチレン基の2個の水素を所定の置換基で置換すれば、より高次の誘導体が得られる。窒素原子により3員環を形成する場合はアザフレロイドとなり、窒素原子が有する3つの結合手のうち、フラーレン部分に結合する2つの結合手以外の結合手に結合する基を置換することにより多様な誘導体を得ることができる。
60分子における5員環を形成する付加としては、ピラゾリン縮合体、オキサゾリジン縮合体、ジヒドロフラン縮合体、ピロリジン縮合体などを形成するものが挙げられる。また、C60分子における6員環を形成する付加としては、ジエン類を付加する反応が知られている。そして、上記5又は6員環を形成する原子に結合する基を置換することによって、より高次の誘導体が得られることとなる。また、5又は6員環においては、環を形成する原子数が多いことから、置換基を導入できる部位も複数あり多様な誘導体を形成することが可能となる。
フラーレン誘導体を合成する他の方法としては、以下のような方法を挙げることができる。
例えば、求核付加反応においては、有機リチウム試薬やグリニャール試薬などとの反応により、アルキル基やフェニル基などをフラーレンに導入することができる。また、例えば、同じく炭素求核剤であるシアン化ナトリウムとの反応によれば、シアノ基をフラーレンに導入することができる。このように、導入される基は用いられる試薬により変更することができる。上記求核付加反応や、シアン化ナトリウムとの反応により合成されるフラーレン誘導体は、アニオンとして塩を形成することもできるが、アニオンを求電子剤で捕捉することにより1,2―ジヒドロフラーレン誘導体とすることが多い。プロトンで捕捉すれば1,2―ジヒドロフラーレン誘導体の1置換体を得ることができ、求電子剤の種類によれば第2の置換基としてメチル基やシアノ基を有する1,2―ジヒドロフラーレン誘導体の2置換体を得ることができる。求核付加反応では他にシリルリチウムとの反応やアミンとの反応によりフラーレン誘導体を合成することもできる。
また、酸化反応、還元反応によれば水素化フラーレンや酸化フラーレン、水酸化フラーレンを得ることができる。またラジカル反応によりフッ素などのハロゲンを導入することも可能である。
フラーレン誘導体を得るために、フラーレンに直接結合させる基又はフラーレンを環化付加した場合に付加した環を構成する元素が形成する基としては、特に制限はないが、工業的に得やすい点から、水素原子、アルカリ金属原子、カルコゲン原子、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基、酸素を含む特性基、硫黄を含む特性基、及び窒素を含む特性基からなる群から選ばれる1つであることが好ましい。
アルカリ金属原子としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムを挙げることができるが、工業的に合成し易い点から好ましいのは、リチウム、ナトリウム、カリウムである。
カルコゲン原子としては、例えば酸素、イオウ、セレン、テルルを挙げることができるが、工業的に合成し易い点から好ましいのは、酸素、イオウである。
ハロゲン原子としては、例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を挙げることができるが、工業的に合成し易い点から好ましいのは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素である。尚、ハロゲン原子を含む基、例えばヨードシル基を用いてもよい。
脂肪族炭化水素基のうち、脂鎖式炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、エチニル基を挙げることができる。工業的に合成し易い点から好ましいのは、メチル基、エチル基、プロピル基である。
脂肪族炭化水素基のうち、脂環式炭化水素基としては、例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−シクロヘキセニル基を挙げることができる。工業的に合成し易い点から好ましいのは、シクロヘキシル基である。
芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、スチリル基、ビフェニリル基、ナフチル基を挙げることができる。工業的に合成し易い点から好ましいのは、フェニル基、ベンジル基、ビフェニリル基である。
複素環基としては、例えばフリル基、フルフリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、ピペリジノ基、ピペリジル基、キノリル基を挙げることができるが、工業的に合成し易い点から好ましいのは、フリル基、ピリジル基である。
酸素を含む特性基は、酸素を含む基であれば何でもよいが、例えば水酸基、過酸化水素基、酸素(エポキシ基)、カルボニル基を挙げることができる。工業的に合成し易い点から好ましいのは水酸基、酸素である。
その他、酸素を含む特性基としては以下のようなものが挙げられる。
アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基を挙げることができるが、工業的に合成し易い点から好ましいのは、メトキシ基、エトキシ基である。
カルボン酸、エステル基としては、例えばカルボキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、アセトキシ基を挙げることができるが、工業的に合成し易い点から好ましいのは、カルボキシ基、アセトキシ基である。
アシル基としては、例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、ラウロイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オレオイル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、クロロホルミル基、オキサル基、シクロヘキサンカルボニル基、ベンゾイル基、トルオイル基、ナフトイル基を挙げることができる。工業的に合成し易い点から好ましいのは、ホルミル基、アセチル基である。
また、例えばアセトニル基、フェナシル基、サリチル基、サリチロイル基、アニシル基、アニソイル基を挙げることができる。工業的に合成し易い点から好ましいのは、アセトニル基、サリチル基である。
硫黄を含む特性基としては、硫黄を含む基であれば何でもよいが、例えばメルカプト基、チオ基(−S−)、メチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、チオホルミル基、チオアセチル基、チオカルボキシ基、ジチオカルボキシ基、チオカルバモイル基、スルホン酸基、メシル基、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基、トシル基、スルホアミノ基を挙げることができる。工業的に合成し易い点から好ましいのは、メルカプト基、スルホン酸基である。
窒素を含む特性基としては、窒素を含む基であれば何でもよいが、例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、トルイジノ基、キシリジノ基、シアノ基、イソシアノ基、シアナート基、イソシアナート基、チオシアナート基、イソチオシアナート基、ヒドロキシアミノ基、アセチルアミノ基、ベンザミド基、スクシンイミド基、カルバモイル基、ニトロソ基、ニトロ基、ヒドラジノ基、フェニルアゾ基、ナフチルアゾ基、ウレイド基、ウレイレン基、アミジノ基、グアニジノ基を挙げることができるが、工業的に合成し易い点から好ましいのは、アミノ基、シアノ基、シアナート基である。
以上述べた所定の基は、さらに他の基で置換されていてもよい。
上記した所定の基のうち、特に好ましいのは、水素原子、ナトリウム、カリウム、酸素、水酸基、アミノ基、スルホン酸基、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、ビフェニリル基、エトキシ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素である。上記基の中で、酸素は結合手が2つあるが、それぞれの結合手がフラーレンを構成する炭素原子と結合してエポキシ基を形成する。
特に好ましいフラーレン誘導体の例としては、例えば、水素化フラーレン、酸化フラーレン、水酸化フラーレン、ハロゲン(F、Cl、Br、I)化フラーレン、スルホン化フラーレン、ビフェニルフラーレン(単数又は複数のビフェニリル基がフラーレンの球殻構造に結合したフラーレン誘導体)からなる群から選ばれる少なくとも1つを挙げることができるが、電池特性を向上させる点で最も好ましいのは、酸化フラーレン、水酸化フラーレンである。
上記所定の基は、フラーレンを構成する炭素原子のうちの1つ以上に結合していればよい。一方、フラーレンに結合する上記所定の基の数は、通常36個以下、好ましくは10個以下、より好ましくは4個以下である。
上記フラーレン誘導体は、常温常湿(25℃/50%RH)においては、粉末状であり、その2次粒径は、通常10nm以上、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上であり、一方通常1mm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは100μm以下である。上記範囲とすることによりフロート充電時の安全性等が確保されるようになる。
本発明の効果を発揮させるために好ましいフラーレン類は、C60、C70、水素化フラーレン、酸化フラーレン、水酸化フラーレン、ハロゲン化フラーレン、スルホン化フラーレン、及びビフェニルフラーレンからなる群から選ばれる少なくとも1つである。
(結合基)
少なくとも1つの原子からなる結合基としては、2価以上の結合手を有する基であれば特に限定されるものではなく、具体的には、酸素、硫黄、セレンなどの原子、カルボニル基(−CO−)、カルボニルオキシ基(−COO−)、イミノ基(−NH−)、カルボニルイミノ基(−CO−NH−)等を挙げることができる。これら、結合基は、結合基長を延長する目的でメチレン基、エチレン基などの結合基を導入してもよい。
また、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ネオブチレン基などの脂肪族炭化水素基、フェニレン基、ナフチレン基などの芳香族炭化水素基、シクロへキシレン基などの脂環式炭化水素基等の炭化水素から2以上の水素原子を除去した基を用いることもできる。
これらの炭化水素基には、用途に応じて構造を調整したり反応性を高める目的で、フラーレン類の球殻構造と結合する末端部分に、酸素、硫黄、セレンなどの原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基、イミノ基、カルボニルイミノ基などの結合基を導入することができる。また、上記結合基のうち脂肪族炭化水素基以外の結合基においては、結合基長を延長する目的でメチレン基、エチレン基などの基をさらに導入してもよい。
これらの結合基の中でも、工業的に入手が容易である点、及び比較的簡単で小さな構造を有し架橋したフラーレン層の構造を密にすることができる点で、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、イミノ基が好ましく、特に好ましいのは酸素である。
当然ながら、本発明の要旨の範囲内において、結合基は2種以上を任意の割合で用いてもよい。
また、第1の態様のフラーレン層としては、上述のように隣接するフラーレン類の球殻構造同士が少なくとも1つの原子を介して架橋する構造を有しているものであるが、これに加えてさらに球殻構造同士が有機基を介さずに直接結合した部位を併有していてもよい。例えば、隣接するフラーレン類がフラン化またはチオラン化して結合する場合などが挙げられる。
(その他)
本発明のフラーレン層はフラーレン類を含有するが、フラーレン類以外の物質を含有していてもよい。例えば、フラーレン層の機械的強度をさらに上げるための無機、有機の添加剤やバインダーをフラーレン類と共に用いてもよい。
2.第2の態様
第2の態様の積層体は、基材と、基材表面に形成されたフラーレン類を含有するフラーレン層とを有する積層体であって、上記フラーレン類の球殻構造が少なくとも1つの原子を介して基材と化学結合していることを特徴としている。
第2の態様の積層体においては、フラーレン層を構成するフラーレン類が単にファンデルワールス力によって基材に吸着しているだけでなく、フラーレン類の球殻構造が少なくとも1つの原子を介して基材と化学結合していることにより、フラーレン類と基材との間において構造の自由度が高くなる上、有機溶媒に対するフラーレン類の溶出を抑制することができるといった利点を有する。
以下、第2の態様の各要素について説明する。
a.基材
第2の態様に用いられる基材の形状、融点、膜厚および材料としては、第1の態様で説明したものと同じものを挙げることができる。
ただし、第2の態様においては、フラーレン層を構成するフラーレン類と基材とが少なくとも1つの原子を介して化学結合するものであるので、基材表面に水酸基、チオール基、ビニル基やアリル基等の不飽和二重結合を有する基等の反応性の基を有しているものが好ましい。
b.フラーレン層
上記基材表面には、フラーレン類を含有するフラーレン層が形成されている。
第2の態様のフラーレン層においては、フラーレン類の球殻構造が少なくとも1つの原子を介して基材と化学結合していることを特徴としている。
このようにフラーレン類が基材と結合していることにより、有機溶媒に対するフラーレン類の溶出を抑制することができ、表面処理効果の安定性の高いフラーレン層を得ることができる。
第2の態様のフラーレン層におけるフラーレン類の存在量の好ましい範囲は第1の態様と同じであるので、ここでの説明は省略する。また、第2の態様に用いられるフラーレン類、フラーレン類の球殻構造が少なくとも1つの原子を介して基材と化学結合するための結合基は、第1の態様で説明したものと同じものを挙げることができる。
なお、第2の態様においては、第1の態様と同様に、基材表面全体がフラーレン類で覆われている必要はない。フラーレン層は、本発明の効果が十分に発揮されるならば、基材表面に局在して形成されていてもよい。もちろん、基材表面全面にフラーレン層が形成されていることが好ましい。
ただし、結合基としては、基材に対する反応性の観点から、基材に結合している基と反応性が高い基が好ましい。例えば、基材に水酸基が結合している場合は、フラーレン類が有する結合基は、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基を用いることが好ましい。上記のような組み合わせとすれば、反応効率を高くすることができる。
3.第3の態様
第3の態様の積層体は、基材と、基材表面に形成されたフラーレン類を含有するフラーレン層とを有する積層体であって、上記フラーレン類の球殻構造同士が少なくとも1つの原子を介して架橋する構造と、上記フラーレン類の球殻構造が少なくとも1つの原子を介して基材と化学結合する構造の両方を併有することを特徴としている。
この場合において、フラーレン類の球殻構造同士が架橋した構造と、フラーレン類の球殻構造と基材との化学結合した構造とは、相互に連鎖していてもよく、分離していてもよい。
第3の態様の積層体においては、フラーレン層を構成するフラーレン類が、フラーレン類同士または基材と架橋もしくは化学結合していることにより、有機溶媒に対するフラーレン類の溶出を抑制する効果をさらに高めることができる。
第3の態様に用いられる基材、フラーレン層は、第1の態様および第2の態様で説明したものと同じものを使用できる。ただし、少なくとも1つの原子からなる結合基としては、フラーレン類の球殻構造または基材の両方に反応性の高いものを1種類で用いるか、それぞれに反応性の高いものを2種類以上組み合わせて用いることが好ましい。両方に反応性が高い結合基としては、好ましくは、酸素原子等が挙げられる。
4.第4の態様
第4の態様の積層体は、基材と、基材表面に形成されたフラーレン類を含有するフラーレン層とを有する積層体であって、後述する試験方法において、上記フラーレン層から溶出するフラーレン類の単位重量当たりの溶出量が2mg/g以下となることを特徴としている。
上記第1の態様、第2の態様および第3の態様に記載した構成の積層体では、フラーレン類が架橋及び/又は基材表面に化学結合されていることにより、溶媒耐性や機械特性を向上させることができるものであり、このような積層体を溶媒に浸せきした際に、表面に存在している架橋されたフラーレン類及び/又は基材表面に化学結合されたフラーレン類は全く溶出しないことが好ましいが、実際には架橋や化学結合が不十分な箇所が存在することや、基材の種類によってはマイルドな架橋条件が必要であることから、処理されたフラーレン類のうちの一部は有機溶媒に溶出する場合がある。第4の態様の積層体においては、溶出量を所定の範囲とすることにより、表面処理効果の安定性の高いフラーレン層とすることができる。
後述する試験方法において、上記フラーレン層から溶出するフラーレン類の溶出量は、積層体の単位重量あたり2mg/g以下である。重量あたりの溶出量は処理量や粉体比表面積によって変化する値であるが、塗料を初めとする用途を考慮した場合、(1)その組成は重量基準で通常決定されること、及び、(2)溶出した成分は本来の効果を発揮しないばかりでなく、塗料の溶媒中や他の成分に付着して存在することになり性能低下を引き起こす可能性があること、から、処理された基材の安定的な応用のためには、単位重量あたりの溶出量は一定量以下であることが好ましい。溶出量はより好ましくは1.5mg/g以下であり、更に好ましくは1.3mg/g以下であり、特に好ましくは1.0mg/g以下であり、最も好ましくは0.5mg/g以下である。理想的には、フラーレン類の溶出が全くないことが好ましい。なお、「溶出が全くない」とは、溶出を測定する測定装置の検出限界以下の溶出量を含むものとする。
一方、上記試験を行った後の、基材上に残っているフラーレン類の存在量を把握することも重要である。具体的には、処理の有効性の視点からは基材表面でのフラーレン類の存在量は、基材の表面積に対して規定することが好ましい。これは表面を被覆し処理するという観点からは、単位面積あたりの存在量を見積もることにより、より的確にフラーレン類による好ましい処理状態を規定できるからである。
具体的には、上記試験を行った後の基材表面に残留するフラーレン類の量が、基材が粒子状(粉体)である場合は窒素吸着法におけるBET解析で測定される表面積に対して、0.01mg/m以上、好ましくは0.1mg/m以上、より好ましくは1mg/m以上とする。存在量が過度に少ないと、表面処理による効果が不十分となる。尚、基材が平板の場合には、フラーレン類の残留量は、幾何学的寸法で規定される表面積の単位面積当たり上記数値範囲であればよい。
本発明において、溶出量の検討を行うための試験方法は以下の通りである。
[試験方法]
(1)トリメチルベンゼン溶媒(本明細書においてはTMBという場合がある。)またはN−メチルピロリドン溶媒(本明細書においてはNMPという場合がある。)に、0.1gの上記積層体を添加してサンプル液を調製する。
(2)上記サンプル液を常温(25±5℃)かつ常湿(50±15%RH)で24時間放置する。
(3)上記放置後のサンプル液の上澄み液を回収し、上澄み液に含有されるフラーレン類の含有量を測定する。
(4)上記測定値を上記サンプル液の総溶出量に換算し、換算値を0.1gで割る。
ここで、上記試験方法の(3)におけるフラーレン類の含有量の測定方法は特に限定されるものではないが、例えば、回収した上澄み液を乾燥することにより溶媒を蒸発させて残留分の重量を測定することにより行うことができる。
さらに、フラーレン層におけるフラーレン類の含有量が予め分かっている場合には、上記試験方法の(3)において、トリメチルベンゼン溶媒またはN−メチルピロリドン溶媒所定量(例えば2mL)中の総溶出量を算出した後、上記フラーレン類の含有量で割ってやることにより、溶媒へのフラーレン類の溶出率(%)を算出することもできる。溶出率は、80%以下であることが好ましく、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%以下、特に好ましくは25%以下の範囲である。理想的には、フラーレン類の溶出率がゼロであることが好ましい。なお、「溶出率がゼロ」とは、溶出を測定する測定装置の検出限界以下の溶出量を含むものとする。
また、上記試験方法の(3)における、上澄み液に含有されるフラーレン類の含有量を測定する他の具体的方法としては、紫外−可視吸光分析による方法を挙げることができる。紫外−可視吸光分析の具体的な方法としては、例えば、上記試験方法の(3)において得られた上澄み液を採取して、溶出分の濃度を紫外−可視吸光分析にて定量すれば良い。濃度はあらかじめ検量線を作製しておくことにより決定できる。吸光分析による手法はスペクトルの形状により分子構造の変化を把握することも可能となる利点がある。例えば上澄みの濃度が0.5mg/mLと決定された場合、溶媒の量は2mLであることから、粉体から溶出した成分は1mgであると決定でき、積層体の重量が0.1gであることから溶出量は10mg/gと算出できる。
この手法においては積層体及び溶媒の量は、検出する手法に応じて、測定が容易になるように決定することが好ましい。溶出量は最終的に積層体単位重量あたりの溶出重量として算出されるため、積層体及び溶媒の量を変更しても測定結果に大きな影響はない。ただし、溶媒の量は予測される溶出量に対して、これを十分に溶解できる量を確保しておくことが好ましい。
溶媒はTMBまたはNMPが特に好ましいが、定量手法による必要性から他の溶媒であってもよい。この場合、TMBまたはNMPに対する溶解度の差異を考慮して補正すれば、本発明における効果を確保することができる。
また、用いるフラーレン類の種類によって溶媒を使い分けても良い。例えば、非修飾フラーレン(例えばC60、C70)やアルキル基を有するフラーレン誘導体、芳香族基を有するフラーレン誘導体をフラーレン類として用いる場合はTMBを用いる。また、NMPは極性溶媒であるものの、C60、C70を溶解することもできるため、C60、C70をフラーレン類として用いる場合は、溶媒としてNMPと用いることもできる。さらに、極性基を有するフラーレン誘導体の場合はNMPを用いることが好ましい。
第4の態様の積層体は、特に限定されるものではないが、第1の態様、第2の態様および第3の態様の積層体の構成をとることが好ましい。上記構成をとることにより、有機溶媒に対するフラーレン類の溶出量を抑制できるからである。また、フラーレン類の溶出量が所定の範囲であり、かつ上記構成をとる積層体は、様々な分野への応用が可能となるからである。
なお、第4の態様に用いられる基材、フラーレン層は、第1の態様、第2の態様および第3の態様で説明したものと同じものを使用できる。
B.製造方法
上記本発明の積層体を製造する方法としては、上記構成を達成しうるものであれば特に限定されるものではない。例えば、フラーレン類を基材表面に存在させた後に、架橋または化学結合させることによりフラーレン層を形成してよく、一部または全部のフラーレン類を予め架橋または化学結合させた後に、基材表面に存在させることもできる。好ましくは以下の方法により製造される。
本発明の積層体の製造方法は、基材と、基材表面に形成されたフラーレン類を含有するフラーレン層とを有する積層体の製造方法であって、
基材表面にフラーレン類を存在させるフラーレン類担持工程と、
上記フラーレン類の球殻構造同士を少なくとも1つの原子を介して架橋させる架橋工程又は上記フラーレン類の球殻構造を少なくとも1つの原子を介して基材と化学結合させる化学結合工程のうち少なくとも1つの工程と、
を有することを特徴としている。以下、各工程について説明する。
1.フラーレン類担持工程
フラーレン類担持工程においては、基材表面にフラーレン類を存在させる。基材およびフラーレン類は上記積層体において説明したものと同じものを使用できる。
フラーレン類を基材表面に存在させる方法としては、フラーレン類を基材表面に均一に分散できるものであれば特に限定されない。例えば、フラーレン類を気体状にして基材と接触させる気相中処理、フラーレン類を溶剤に溶解または分散させて基材と接触させる液相中処理、基材に固体状のフラーレン類を接触させる固相中処理など様々な方法がある。これらの中でも最も簡易な方法は液相中処理である。
a.液相中処理
基材が粉体状である場合の液相中処理の具体例としては、フラーレン類を溶解させた溶液またはフラーレン類を分散させた分散液に粉体を混合し、所定時間撹拌した後、デカンテーションにより溶液を除去、乾燥することにより処理粉体を得る方法を挙げることができる。この方法においては、デカンテーションによる溶液除去の程度にもよるが、基本的には粉体表面へ吸着したフラーレン類が粉体表面を処理する分子となる。溶液中からの分子の吸着によって比較的容易に単分子吸着層を形成することが可能であり、粉体表面でのフラーレン類の存在量は極微量でありながら、極めて効果的に表面性状を改質することが可能である。
基材が粉体状である場合における液相中処理の他の具体例としては、粉体を、フラーレン類を溶解させた溶液またはフラーレン類を分散させた分散液に所望の修飾割合となる分量だけ投入、撹拌の後、溶剤を蒸発させて除去することにより処理粉体を得る方法を挙げることができる。この方法においては、投入したフラーレン類を全て粉体の表面処理に用いるため、フラーレン類の粉体表面での存在量を制御しやすい利点がある。また、容器の中に処理される粉体をフラーレン類の溶液に投入し、そのまま乾燥するだけでよいため工程的には簡便である。なお、この方法の場合は、溶媒種、乾燥条件、フラーレン類濃度、基材に対するフラーレン類の総量等を考慮して系を調整することが好ましい。フラーレン類が分離析出したり、処理はされても余剰のフラーレン類が粉体表面で多量に析出したりする場合があるからである。
基材が粉体状である場合における液相中処理の他の具体例としては、粉体を、フラーレン類を溶解させた溶液またはフラーレン類を分散させた分散液に所望の修飾割合となる分量だけ噴霧混合し乾燥させるいわゆるスプレードライ手法が挙げられる。この手法は必要とされる溶媒の量を少なくすることができ、連続工程も可能であることから生産性に優れる。
基材が板状である場合の液相中処理の具体例としては、フラーレン類を溶解させた溶液またはフラーレン類を分散させた分散液に板状基材表面(基板)を浸漬させ、その後引き上げて乾燥させる方法、例えばディップコーティングによる膜形成を用いる方法を挙げることができる。所望の修飾割合を得るためには溶液濃度、溶液温度、溶媒種、引き上げ速度、乾燥速度を制御することにより調整することができる。
また、基材が板状である場合における液相中処理の他の具体例としては、フラーレン類を溶解させた溶液またはフラーレン類を分散させた分散液を所望の修飾割合となる分量だけ板状基材表面(基板)上に存在させる方法、例えばスピンコーティングやグラビアコーティング、ダイコーティングなどの一般的な塗布乾燥による膜形成方法を用いる方法を挙げることができる。
上記液相中処理において、フラーレンを溶解又は分散させるために用いる溶媒としては、特に制限はないが、フラーレン類を溶解するような溶媒であることが好ましい。このような溶媒としては、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、トリメチルベンゼン等の芳香族化合物;ジフェニスルフィド、テトラメチレンスルホキシド、テトラメチレンスルホン、ジメチルスルホキシド等の硫黄含有化合物;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、ホルムアミド等の窒素含有化合物等を挙げることができる。上記溶媒を複数用いてもよい。
また、上記液相中処理において用いる溶媒中のフラーレン類の濃度は、特に制限はないが、用いる溶媒におけるフラーレン類の溶解度範囲内であることが好ましい。具体的には、濃度は、通常0.01mg/mL以上、好ましくは0.1mg/mL以上、一方、通常100mg/mL以下、好ましくは50mg/mL以下、より好ましくは20mg/mL以下とする。
さらに、上記液相中処理において、フラーレン類を溶解させた溶液又はフラーレン類を分散させた分散液と基材とを接触させる(例えば、フラーレン類を溶解させた溶液に基材を投入して攪拌する)場合には、その接触時間としては、特に制限はないものの、通常5分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは15分以上、一方、通常3時間以下、好ましくは1時間以下とする。また接触時の温度についても、特に制限はないが、通常0℃以上、好ましくは20℃以上、一方、通常100℃以下とする。フラーレン類が溶解又は分散している溶媒の沸点以上でフラーレン類と基材との接触を行う場合は、密閉して行えばよい。
上記液相中処理においてフラーレン類を溶解させた溶液又はフラーレン類を分散させた分散液と基材とを接触させた(例えば、フラーレン類を溶解させた溶液に基材を投入して攪拌した)後に、溶媒を除去する場合には、除去時の温度は、特に制限はないが、通常20℃以上、好ましくは50℃以上、一方、通常200℃以下、好ましくは150℃以下とする。また、除去の時間は、特に制限はないが、通常10分以上、好ましくは30分以上、一方、通常12時間以下、好ましくは10時間以下、より好ましくは5時間以下とする。
b.固相中処理
基材が粉体状である場合の固相中処理の具体例としては、微粒子状のフラーレン類と粉体を混合し、高速で撹拌、せん断することにより、フラーレンを粉体表面に存在させる手法が挙げられる。この手法は、その撹拌方法により、気流中で粒子を衝突させるジェットミル法、比較的高密度になっている粉体をブレードで強力に撹拌するプラネタリー撹拌法等に分類される。
c.気相中処理
基材が板状である場合の気相中処理の具体例としては、フラーレン類を好ましくは真空中で加熱し昇華させることにより、対向して設置された基板に堆積させる、いわゆる真空蒸着法が挙げられる。
2.架橋工程または化学結合工程
本発明の製造方法は、架橋工程または化学結合工程のうち少なくとも1つの工程を有している。これらの工程は順次行ってもよく、これらの工程を同時に行ってもよい。順次行う場合には、その順番は特に限定されるものではない。同時に行う場合には、例えば同じ加熱処理条件によりこれらの工程を同時に行えるように反応条件を設定すればよい。以下、それぞれの工程について説明する。
a.架橋工程
架橋工程においては、基材表面に存在するフラーレン類の球殻構造同士を少なくとも1つの原子を介して架橋させる。
上記フラーレン類担持工程において、存在させたフラーレン類が潜在的に架橋性の官能基を有していない場合には、フラーレン類に架橋性の官能基を有する化合物を接触させることにより架橋させることができる(以下、付加反応という)。
付加反応させるために接触させる化合物としては、例えば酸素、硫黄、及び少なくとも2つの架橋性官能基を有する化合物等を挙げることができる。反応性の観点からは、酸素、硫黄、及び少なくとも2つの架橋性官能基を有する化合物が好ましい。
少なくとも2つの架橋性官能基を有する化合物は、特に限定されない。反応性の観点からは、架橋性官能基を末端に有している化合物が好ましい。
ここで、架橋性官能基としては、水酸基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシル基、イソシアネート基、エポキシ基、ビニル基、アクリル基などが挙げられる。これらの官能基は1種類でもよく2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
これらの少なくとも2つの架橋性官能基を有する化合物は、フラーレン類の表面処理効果をより高めるために、低分子量のものが好ましく、具体的には、分子量40以上、特に50以上であることが好ましい。また、200以下、特に100以下であることが好ましい。上記分子量範囲とすれば、架橋されるフラーレン類同士の距離又は基板と結合するフラーレン類との距離が短くなり、フラーレン層を密な構造とすることができる。
付加反応により架橋される方法としては、具体的には、フラーレンにジアミノプロピレンなどの2価のアミンを溶媒中または気相中で接触させ、アミンとフラーレンの化学反応により架橋させる方法、2以上のカルボキシル基を有するフラーレン類に2価のアミンを溶媒中または気相中で接触させ、アミド結合により架橋させる方法、2以上のカルボキシル基を有するフラーレン類にエチレングリコールなどの2価のアルコールを溶媒中または気相中で接触させ、エステル結合により架橋させる方法などが挙げられる。2つのカルボキシル基を有するフラーレンに2価のアルコールとしてエチレングリコールを用いれば、ポリエチレンテレフタレートの構造においてベンゼン環の部分をフラーレンに置換したものに相当する高分子化合物が生成されることになる。さらには、フラーレンに加熱酸化やオゾン接触、酸化性物質処理などにより酸素を付加し、エーテル結合により架橋させる方法も挙げられる。
これらの中でも、工業的に容易に製造できることから、フラーレン類の球殻構造同士が酸素原子を介したエーテル結合により架橋される方法が好ましく、エーテル結合により架橋させる方法の中でも加熱酸化を用いることが好ましい。
これに対して、フラーレン類が潜在的に架橋性の官能基を有している場合には、これらの基の結合反応により架橋させることができる。さらに架橋性の官能基を有する化合物を接触させる反応を併用することもできる。
フラーレン類が有する架橋性の官能基としては、硫黄原子、酸素、水酸基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシル基、イソシアネート基、エポキシ基、ビニル基、アクリル基等を挙げることができる。
上記結合反応により架橋される方法としては、具体的には、水酸基を有するフラーレン類の縮合反応により架橋させる方法が挙げられ、この方法では隣接するフラーレン類の水酸基の脱水反応を進行させ、エーテル結合により架橋させることができる。このような水酸基を有するフラーレン類としてはC60もしくはC70に水酸基が直接結合したフレノール類が好ましい。
ここで、フラーレン類1分子における水酸基の数は、通常2以上、好ましくは4以上、より好ましくは6以上である。水酸基が少なすぎると架橋結合数が少なくなりフラーレン類の溶出抑制効果が十分に得られない場合があるからである。一方、通常70以下、好ましくは36以下、より好ましくは20以下である。水酸基が多すぎるとフラーレン類の球殻構造が不安定になるとともに電子状態が変化し、用途によってはフラーレン類による表面処理効果が失われる場合があるからである。フラーレン類に水酸基を導入する部位は多数存在するため、水酸基はフラーレン類の球殻構造を構成する炭素原子に対してランダムに結合している場合がある。好ましくは水酸基が均一に存在していることである。
また、導入された水酸基の数がフラーレン類によって異なる場合があるが特に問題はない。好ましくは導入数が平均値を中心として狭い範囲に分布していることが好ましい。
架橋工程は、加熱処理(加熱酸化を伴う場合を含む)、紫外線照射処理、電子線照射処理などにより行うことができるが、簡便であることから加熱処理によって行うのが好ましい。
加熱温度は、処理条件によっても異なるが、通常60℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、最も好ましくは200℃以上とする。ただし加熱酸化させる場合には、通常0℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは250℃以上、最も好ましくは300℃以上とする。温度が低すぎると架橋が十分に進行しない場合があるからである。一方、通常1500℃以下、好ましくは1000℃以下、より好ましくは500℃以下、最も好ましくは400℃以下とする。温度が高すぎるとフラーレン類の球殻構造が破壊したり、加熱酸化させる場合にフラーレン類が焼失したりする場合があるからである。
加熱時間は、処理条件によっても異なるが、通常1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上、最も好ましくは1時間以上とする。短すぎると架橋が十分に進行しない場合があるからである。一方、通常24時間以下、好ましくは12時間以下、より好ましくは6時間以下、最も好ましくは4時間以下とする。長すぎるとフラーレン類の球殻構造が破壊したり、加熱酸化させる場合にフラーレン類が焼失したりする場合があり、生産効率も低下するからである。
好ましい雰囲気は不活性雰囲気である。不活性雰囲気としては、窒素、希ガス、真空が挙げられ、より好ましくは窒素または真空である。ただし加熱酸化させる場合には空気又は酸素を用いる。圧力は処理条件によっても異なるが、通常10−5気圧以上とする。真空雰囲気の場合は圧力が低い方が好ましいが、生産性を考慮すると通常の油回転ポンプやアスピレータで減圧できる範囲が現実的圧力となる。一方、通常10気圧以下、好ましくは1.1気圧以下、より好ましくは1気圧以下とする。圧力が高すぎると脱水した水分の除去が遅くなったり不十分になったりする場合があるからである。
ただし加熱酸化させる場合の酸素圧力は、処理条件によっても異なるが、通常10−5気圧以上、好ましくは10−3気圧以上、より好ましくは0.1気圧以上、最も好ましくは大気圧とする。酸素圧力が低すぎると酸化が十分に進行せず、フラーレン類が架橋しない場合や架橋速度が遅くなり生産効率が低下する場合があるからである。一方、通常10気圧以下、好ましくは1気圧以下、より好ましくは0.3気圧以下、最も好ましくは空気中の酸素分圧(0.2気圧程度)とする。あまりに酸素圧力が高いと爆発安全性や生産設備等に対する配慮が必要になるからである。
b.化学結合工程
化学結合工程においては、基材表面に存在するフラーレン類の球殻構造と基材とを少なくとも1つの原子を介して化学結合させる。
化学結合させる方法としては、上記架橋工程において述べた手法と同様の手法を用いることができる。
具体的には、上記フラーレン類担持工程において、存在させたフラーレン類または基材が潜在的に化学結合性の官能基を有していない場合には、フラーレン類または基材に化学結合性の官能基を有する化合物を接触させる付加反応により化学結合させることができる。
また、フラーレン類または基材が潜在的に化学結合性の官能基を有している場合には、これらの基の結合反応により、またはさらに付加反応を併用することにより化学結合させることができる。なお、基材が金属の酸化物または金属の複合酸化物等の場合には、基材表面に水酸基が存在していることが多い。
付加反応させるために接触させる化合物としては、例えば酸素、硫黄、及び少なくとも2つの化学結合性官能基を有する化合物等を挙げることができる。反応性の観点からは、酸素、硫黄、及び少なくとも2つの化学結合性官能基を有する化合物が好ましい。
少なくとも2つの化学結合性官能基を有する化合物は、特に限定されない。反応性の観点からは、化学結合性官能基を末端に有している化合物が好ましい。化学結合性の官能基としては、水酸基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシル基、イソシアネート基、エポキシ基、ビニル基、アクリル基などが挙げられる。これらの官能基は1種類でもよく2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
これらの官能基を有する化合物は、フラーレン類の表面処理効果をより高めるためには、低分子量のものが好ましく、具体的には、分子量40以上、特に50以上であることが好ましい。また、200以下、特に100以下であることが好ましい。上記分子量範囲とすれば、架橋されるフラーレン類同士の距離又は基板と結合するフラーレン類との距離が短くなり、フラーレン層が密な構造となる。
付加反応により結合させる方法としては、具体的には、フラーレンにジアミノプロピレンなどの2価のアミンを溶媒中または気相中で接触させ、アミンとフラーレンと基材の化学反応により結合させる方法、2以上のカルボキシル基を有するフラーレン類に2価のアミンを溶媒中または気相中で接触させ、アミド結合により基材と結合させる方法、2以上のカルボキシル基を有するフラーレン類にエチレングリコールなどの2価のアルコールを溶媒中または気相中で接触させ、エステル結合により基材と結合させる方法などが挙げられる。さらには、フラーレンに加熱酸化やオゾン接触、酸化性物質処理などにより酸素を付加し、エーテル結合により基材と結合させる方法も挙げられる。
これらの中でも、工業的に容易に製造できることから、フラーレン類の球殻構造同士が酸素原子を介したエーテル結合により基材と結合される方法が好ましく、エーテル結合により基材と結合させる方法の中でも加熱酸化を用いることが好ましい。
これに対して、フラーレン類が潜在的に結合性の官能基を有し、基材も結合性の官能基を有している場合には、これらの基の結合反応により基材と結合させることができる。
フラーレン類が有する結合性の官能基としては、硫黄原子、酸素、水酸基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシル基、イソシアネート基、エポキシ基、ビニル基、アクリル基等を挙げることができる。
上記結合反応により化学結合させる方法としては、水酸基を有するフラーレン類および基材の縮合反応(脱水反応)を進行させ、エーテル結合により化学結合させる方法が挙げられる。このような水酸基を有するフラーレン類としてはC60もしくはC70に水酸基が直接結合したフレノール類が好ましいが、水酸基を有するフラーレン類の好ましい例は架橋工程で述べたものと同様である。
化学結合工程は、加熱処理(加熱酸化を伴う場合を含む)、紫外線照射処理、電子線照射処理などにより行うことができ、簡便であることから加熱処理によって行うことが好ましい。好ましい処理条件は架橋工程において述べたものを同じである。
C.得られる積層体
上記方法により得られる積層体は、基材の特徴を維持しつつ、フラーレン類の有する特異的な結晶構造、化学的性質、電子状態等に由来する様々な機能を発現することができる。具体的には、紫外線吸収、ラジカルトラップ、光伝導、触媒作用などが挙げられ、さらには特殊構造を有する炭素物質としても利用することができる。本発明においては、有機溶媒に対するフラーレン類の溶出が抑制できるので、有機溶媒に接触する必要がある用途においても、フラーレン類による表面処理効果を安定して持続させることができる。さらに本発明においては、フラーレン層がフラーレン類の球殻構造同士またはフラーレン類の球殻構造と基材とが少なくとも1つの原子を介して架橋または化学結合した構造を有しているので、これらの球殻構造同士または球殻構造と基材とが直接結合した場合に比べて、構造の自由度があるため基材に対する密着性が高く、表面処理効果が非常に優れている。また、直接結合の場合に比べて、工業的に製造しやすいという利点もある。
このような利点を有する本発明の積層体の適用範囲は極めて広範なものとなる。具体的には、UVカット、ラジカル失活、光スイッチ、太陽電池、各種二次電池、複合材、固体潤滑材などが挙げられる。
これら様々な用途の一例として、リチウム二次電池に用いる正極活物質または負極活物質への適用がある。以下これについて説明する。
1.リチウム二次電池
正極活物質および負極活物質は、リチウム二次電池において電気の運び手となるリチウムイオンの吸蔵・放出を行う物質であるが、このような正極活物質または負極活物質を基材とし、この表面にフラーレン層を設けて本発明の積層体とすることにより、リチウム二次電池の電池性能を向上させることができる。より具体的には、正極活物質(例えばリチウム遷移金属複合酸化物)の表面にフラーレン層を設けたリチウム二次電池用正極材料とすることができる。また、負極活物質(例えば炭素性物質)の表面にフラーレン層を設けたリチウム二次電池用負極材料とすることができる。さらに、これらのリチウム二次電池用正極材料あるいはリチウム二次電池用負極材料を用いることにより、リチウム二次電池の正極あるいは負極を得ることができる。正極活物質表面にフラーレン層を設けると正極の抵抗値の経時安定性が向上し、負極活物質表面にフラーレン層を設けると初期効率が改良される。
以下、リチウム二次電池用正極材料、リチウム二次電池用負極材料、およびリチウム二次電池の正極、負極、ならびにその他の構成材料について説明する。
a.リチウム二次電池用正極材料
本発明の積層体は、基材が正極活物質であり、その正極活物質の表面にフラーレン層を設けたリチウム二次電池用正極材料として用いることができる。
リチウム二次電池の正極活物質としては、下記のものが使用できる。
(正極活物質)
正極活物質としては、遷移金属酸化物、リチウムと遷移金属との複合酸化物(リチウム遷移金属複合酸化物)、遷移金属硫化物等各種の無機化合物が挙げられる。ここで遷移金属としてはFe、Co、Ni、Mn等が用いられる。具体的には、MnO、V 、V13、TiO等の遷移金属酸化物粉末、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物などのリチウムと遷移金属との複合酸化物粉末、TiS 、FeS、MoS などの遷移金属硫化物粉末等が挙げられる。これらの化合物はその特性を向上させるために部分的に元素置換したものであっても良い。また、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセン、ジスルフィド系化合物、ポリスルフィド系化合物、N−フルオロピリジニウム塩等の有機化合物を混合して用いてもよい。
上記正極活物質のうち、高性能なリチウム二次電池を得る観点から、正極活物質は、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物とすることが好ましく、より好ましくはリチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物とすることである。リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物は、フロート充電時に不安定になりやすく、又、充電状態における酸化反応が発生し安いため、フラーレン類で表面処理する効果が顕著に発揮されるようになる。また、リチウムコバルト複合酸化物は、放電曲線が平坦であるためレート特性に優れる有用な正極活物質であり、リチウムニッケル複合酸化物は単位重量あたりの電流容量が大きいため電池容量を大きくすることができる利点もある。
正極活物質として、本発明の要旨の範囲内において、上記リチウム遷移金属複合酸化物の複数種類を任意の比率で用いてもよい。
これらリチウム遷移金属複合酸化物の遷移金属サイトの一部は他の元素で置換されていてもよい。遷移金属サイトの一部を他の元素で置換することにより、リチウム二次電池の安全性を向上させることができるようになる。また、これらリチウム遷移金属複合酸化物は、遷移金属の一部を他の元素で置換することにより、結晶構造の安定性を向上させることができる。この際の該遷移金属サイトの一部を置換する他元素(以下、置換元素と表記する)としては、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr等が挙げられ、好ましくはAl、Cr、Fe、Co、Li、Ni、Mg、Ga、更に好ましくは、Co、Alである。なお、遷移金属サイトは2種以上の他元素で置換されていてもよい。置換元素による置換割合は通常ベースとなる遷移金属元素の2.5モル%以上、好ましくはベースとなる遷移金属元素の3モル%以上、より好ましくはベースとなる遷移金属元素の3.5モル%以上であり、通常ベースとなる遷移金属元素の30モル%以下、好ましくはベースとなる遷移金属元素の20モル%以下である。置換割合が少なすぎると結晶構造の安定化が十分図れない場合があり、多すぎると電池にした場合の容量が低下してしまう場合がある。
リチウムニッケル複合酸化物を正極活物質として用いる場合、リチウムニッケル複合酸化物としては、下記一般式(1)で表される、無置換又はNiサイトがCo及び所定の元素で置換される化合物であることが好ましい。
LiαNiCo2-ββ (1)
一般式(1)中、αは、電池内での充放電の状況により変化する数であり、αは、通常0以上、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.95以上であり、一方、通常1.1以下、好ましくは1.08以下である。この範囲とすれば、高容量を維持しつつ、繰り返し充放電特性(本明細書においては、サイクル特性という場合がある。)が良好となる。特にαを0.95以上とすれば、容量とサイクル特性のバランスがより良好に保たれる。
Xは、0.1以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上であり、一方、1以下、好ましくは0.9以下である。この範囲とすれば、容量を高く保ちつつ、サイクル特性も良好となる。容量の点からは、Xは1に近いことが好ましいがサイクル特性を考慮すると特に良好なのはXを0.7以上0.9以下とすることである。
Yは、0以上、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上であり、一方、0.9以下、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下である。この範囲とすればサイクル特性を良好に保ちつつ、リチウム二次電池としての安全性も確保されるようになる。
Zは、0以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上であり、一方、0.8以下、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.05以下である。この範囲とすれば、電池容量を落とさずに、リチウム二次電池としての安全性を確保することができるようになる。
なお、上記のX、Y、Zは、0.9≦X+Y+Z≦1.1の関係を満たすが、通常X+Y+Z=1.0である。
βは、0以上、好ましくは0.01以上であり、一方、0.5以下、好ましくは0.1以下である。この範囲とすれば、リチウムニッケル複合酸化物の結晶に取り込まれるようになるので、リチウム二次電池としての安全性を高くすることができる。
Mは、Li,Mg,Ca,Sr,Cu,Zn,Al,Ga,Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,及びFeからなる群から選ばれる少なくとも1つである。Mを上記元素の少なくとも1つとすることにより、リチウム二次電池としての安全性を高くすることができるようになる。好ましくは、MをLi、Mg、Al、Ga、Ti、Nb、Cr、Mo、Mn、及びFeからなる群から選ばれる少なくとも1つとすることである。これら元素は、Niとイオン半径が近く、Niと置換されやすいという利点があるのみならず、工業的にも入手しやすいという利点がある。さらに好ましくは、MをMn、Mg、Al、Gaの少なくともいずれか1つとすることである。これら元素は工業的に特に入手しやすいからである。特に好ましいのは、MをAl及び/又はMnとすることである。Al、Mnはコストが安価である利点がある。最も好ましいのは、MをAlとすることである。
正極活物質の比表面積は、通常0.01m/g以上、好ましくは0.1m/g以上、より好ましくは0.4m/g以上であり、また通常10m/g以下、好ましくは5m/g以下、より好ましくは2m/g以下である。比表面積が小さすぎるとレート特性の低下、容量の低下を招き、大きすぎると電解液等と反応し、サイクル特性を低下させることがある。比表面積の測定はBET法に従う。
正極活物質の平均二次粒径は、通常0.1μm以上、好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上、最も好ましくは0.5μm以上であり、通常300μm以下、好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下、最も好ましくは20μm以下である。平均二次粒径が小さすぎると電池のサイクル劣化が大きくなったり、安全性に問題が生じたりする場合があり、大きすぎると電池の内部抵抗が大きくなり、出力が出にくくなる場合がある。
b.リチウム二次電池用負極材料
本発明の積層体は、基材が負極活物質であり、その負極活物質の表面にフラーレン層を設けたリチウム二次電池用負極材料として用いることができる。
リチウム二次電池の負極活物質としては、下記のものが使用できる。
(負極活物質)
負極活物質は、通常炭素性物質を用いる。炭素性物質としては、例えば、グラファイト等の黒鉛材料;石炭系コークス、石油系コークス;石炭系ピッチ若しくは石油系ピッチの炭化物、又はこれらピッチを酸化処理したものの炭化物;ニードルコークス、ピッチコークス、フェノール樹脂、結晶セルロース等の炭化物を挙げることができる。さらに上記炭素性物質を一部黒鉛化した炭素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等を挙げることもできる。上記炭素性物質の他、負極活物質としては、ケイ素、錫、亜鉛、マンガン、鉄、ニッケルなどの酸化物、あるいは硫酸塩さらには金属リチウムやLi−Al、Li−Bi−Cd、Li−Sn−Cdなどのリチウム合金、リチウム遷移金属窒化物、ケイ素、錫などの金属なども使用できる。
上記炭素性物質のうち、好ましいのは、コークス及びグラファイト等の黒鉛材料であるが、容量が大きい点で、グラファイト等の黒鉛材料が特に好ましい。
黒鉛材料としては、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛粉末及びその精製品、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の導電性カーボンブラックの黒鉛化品、気相成長炭素繊維等の炭素繊維が挙げられる。このような黒鉛材料ならどれでもよいが、容量の点から好ましいのは人造黒鉛又は天然黒鉛である。電池性能を制御し易いという観点から特に好ましいのは人造黒鉛である。
なお、黒鉛材料は、表面をアモルファス処理してもよい。
黒鉛材料の平均粒径は、通常1μm以上、好ましくは5μm以上であり、また通常45μm以下、好ましくは35μm以下、さらに好ましくは25μm以下である。平均粒径が過度に小さいと、黒鉛材料の比表面積が増えることとなり不可逆容量が増え電池容量が低下してしまう可能性がある。一方、平均粒径が過度に大きいと活物質層の膜厚が制限され均一な活物質層を基材の上に形成させることが難しくなる場合がある。
黒鉛材料の比表面積は、通常0.1m/g以上、好ましくは0.3m/g以上、より好ましくは0.5m/g以上とする。比表面積が過度に小さいと電池のレート特性が低下する場合がある。一方、黒鉛材料の比表面積は、通常30m/g以下、好ましくは20m/g以下、より好ましくは10m/g以下とする。比表面積が過度に大きいと電池の初期効率が低下する可能性がある。比表面積の測定はBET法に従う。
c.リチウム二次電池の正極および負極
本発明においては、上記リチウム二次電池用正極材料、または上記リチウム二次電池用負極材料を用いて、リチウム二次電池の正極または負極とすることができる。すなわち、本発明のリチウム二次電池の正極および負極は、上記積層体を含有することを特徴としている。
リチウム二次電池の正極または負極は、通常、フラーレン層を設けた正極活物質または負極活物質をバインダーや導電剤等とともに、溶剤を用いて分散塗料化し、その塗料を集電体上に塗布、乾燥することにより製造することができる。分散塗料化、及び集電体上への塗布・乾燥は、一般的な方法を用いればよい。
バインダーとしては、電解液等に対して安定である必要があり、耐候性、耐薬品性、耐熱性、難燃性等の観点から各種の材料が使用される。好ましいバインダー樹脂としては、フッ素系樹脂、CN基含有ポリマーが挙げられ、より好ましくはポリフッ化ビニリデンが挙げられる。
活物質層中には、必要に応じて、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の導電性材料、補強材など各種の機能を発現する添加剤、粉体、充填材などを含有させてもよい。
活物質層を形成する際に使用する溶剤としては、例えばN−メチルピロリドンや、ジメチルホルムアミドを挙げることができ、好ましくはN−メチルピロリドンである。
活物質層の厚さは、通常10μm以上、好ましくは20μm以上であり、通常200μm以下、好ましくは150μm以下である。活物質層の厚さが過度に薄いと、電池の容量が小さくなりすぎる。一方、過度に厚いとレート特性が低下しることとなる。
正極に使用される集電体の材料としては、通常、アルミニウム、銅、ニッケル、錫、ステンレス鋼等の金属、これら金属の合金等を用いることができる。この場合、正極の集電体としては、通常アルミニウムが用いられる。集電体の形状は特に制限されず、例えば、板状やメッシュ状の形状を挙げることができる。集電体の厚みは通常1μm以上、一方、通常50μm以下、好ましくは30μm以下である。薄すぎると機械的強度が弱くなるが、厚すぎると電池が大きくなり、電池の中で占めるスペースが大きくなってしまい、電池のエネルギー密度が小さくなる。
負極に使用される集電体としては、電気化学的に溶出等の問題が生じず、電池の集電体として機能しうる各種のものを使用でき、通常は銅、ニッケル、ステンレス等の金属や合金が用いられる。好ましくは、銅を使用する。集電体の形状としては、例えば、板状やメッシュ状の形状を挙げることができる。集電体の厚みは、通常0.1μm以上、好ましくは1μm以上であり、また通常100μm以下、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。薄すぎると機械的強度が弱くなるが、厚すぎると電池が大きくなり、電池の中で占めるスペースが大きくなってしまい、電池のエネルギー密度が小さくなる。
なお、リチウム二次電池の電極として金属リチウムを用いてもよい。
d.その他のリチウム電池の構成材料
リチウム二次電池に使用される電解液は、通常、支持電解質であるリチウム塩を非水系溶媒に溶解してなる。
非水系溶媒としては、比較的高誘電率の溶媒が好適に用いられる。具体的にはエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの非環状カーボネート類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のグライム類、γ−ブチルラクトン等のラクトン類、スルフォラン等の硫黄化合物、アセトニトリル等のニトリル類等を挙げることができる。以上の非水系溶媒は、複数種を併用することができる。
電解液に含有させる支持電解質であるリチウム塩としては、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiBF、LiClO、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF、LiSCN、LiSOCF等を挙げることができる。これらのうちでは特にLiPF及びLiClOが好適である。これら支持電解質の電解液における含有量は、通常0.5〜2.5mol/Lである。
また、電解液中には、必要に応じて、電池の性能向上のために各種の添加剤を添加することができる。
電解液は、正極と負極との内部、及び正極と負極との間に存在するが、正極と負極との間には、正極と負極との短絡防止のために、多孔質フィルムのような支持体(セパレータ)を存在させるのが好ましい。多孔質フィルムとしては、高分子樹脂からなるフィルムや、粉体とバインダーからなる薄膜が好ましく使用でき、より好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン等からなる多孔質膜である。
正極、負極、及び電解液を有する電池要素はケースに収納される。電池要素としては、例えば、正極と負極とを電解質層を介して積層した積層体を巻回した形態、正極と負極と電解質層を介して平板状に積層した形態、又は上記平板状に積層した電池要素を複数個用意してさらに積層した形態を挙げることができる。
電池要素を収納するケースは、通常、コインセル、乾電池用の金属缶、及び形状可変性を有するケース(例えばアルミラミネートフィルムを用いたケース)を挙げることができる。
e.用途
リチウム二次電池が電源として使用される電気機器としては、例えば、携帯用パーソナルコンピュータ、ペン入力パーソナルコンピュータ、モバイルパーソナルコンピュータ、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)等を挙げることができる。これら電気機器の中でも、リチウム二次電池をバックアップ電源として用いるものが好ましい。バックアップ電源においては、リチウム二次電池がフロート充電される可能性が高く、本発明の効果が有効に発揮されるようになる。上記した電気機器のうち、バックアップ電源としてリチウム二次電池を用いるものは、モバイルパーソナルコンピュータ、ページャー、ハンディーターミナル、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、電気シェーバー、ラジオ、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)等を挙げることができる。
また、本発明のリチウム二次電池を、電気自動車用途等の大型電源として用いることもできる。大型電源は電池容量が大きくなる分、用いる正極活物質量も増えるため、正極活物質表面にフラーレン類を存在させることによって抵抗率の経時安定性を確保する意義がより一層高くなる。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(1)フラーレン類担持工程(フラーレン類による表面処理)
基材として、グラファイト(BET表面積4.2m/g、平均粒径15μm)を5g、50ccのビーカーに秤量し、これにフラーレンC60の1,2,4−トリメチルベンゼン溶液(濃度10mg/mL)を0.5mL加え、さらに1,2,4−トリメチルベンゼンを3.5mL添加した後、良く撹拌することによってペースト状の混合物を得た。これを120℃のオーブン中において窒素気流中3時間乾燥させ、溶媒を完全に除去して粉体1Aを得た。
(2)架橋工程または化学結合工程(不溶化処理)
粉体1Aを1g、50ccのビーカーに秤量し、空気気流中3時間350℃に加熱することにより不溶化処理を行い、粉体1Bを得た。
(3)負極電極の作製
負極活物質として、表面処理されたグラファイト(粉体1B)を90重量部、ポリフッ化ビニリデン10重量部、及びN−メチル−2−ピロリドン150重量部を混練し、負極塗料とした。
この塗料を作製後1時間以内に銅箔(厚み10μm)上にドクターブレード(ブレードコーター)にて塗布、乾燥させ、100kN/mの線圧にてロールプレス処理し、負極を得た。ついでφ13mmに打ち抜きコインセル用の負極とした。
(4)電池の作製
コインセルを作製する際には、対極にはLi金属箔(厚さ0.5mm、φ14mm)、電解液、及びセパレータを用いた。なお、用いた電解液及びセパレータは以下のとおりである。
電解液は、非水系溶媒として、エチレンカーボネート及びジメチルカーボネート(いずれも三菱化学(株)製)を1:1の割合(体積%)で用い、リチウム塩として、LiPF6を用いた。リチウム塩の濃度は、1mol/Lとした。
セパレータは、膜厚16μmのポリエチレンシ−ト(東燃化学(株)製)を用いた。
(実施例2)
負極電極の作製において、負極塗料を作製後1週間放置してその後、再撹拌してから塗布を行い、電極を作製した以外は実施例1と同様にして電池を作製した。
(実施例3)
フラーレン類担持工程において、フラーレンC70の1,2,4−トリメチルベンゼン溶液(濃度10mg/mL)を0.5mL用いた以外は実施例1と同様にして電池を作製した。
(実施例4)
負極電極の作製において、負極塗料を作製後1週間放置してその後、再撹拌してから塗布を行い、電極を作製した以外は実施例3と同様にして電池を作製した。
(実施例5)
フラーレン類担持工程において、フラーレンC70の1,2,4−トリメチルベンゼン溶液(濃度5mg/mL)を3mL加え、さらに1,2,4−トリメチルベンゼンを1.5mL添加以外は実施例1と同様にして電池を作製した。
(実施例6)
フラーレン類担持工程において、フラーレンC60とフラーレンC70の混合物(Mixed フラーレン C60:C70=3:1)の1,2,4−トリメチルベンゼン溶液(濃度10mg/mL)を0.5mL加え、さらに1,2,4−トリメチルベンゼンを3.5mL添加以外は実施例1と同様にして電池を作製した。
(実施例7)
フラーレン類担持工程において、フラーレンC60の1,2−ジメチルベンゼン溶液(濃度5mg/mL)を1mL加え、さらにトルエンを4mL添加したこと、及び、不溶化処理の条件は空気気流中3時間300℃としたこと、以外は実施例1と同様にして電池を作製した。
(比較例1)
実施例1において、フラーレンC60を用いずに(実施例1の(1)及び(2)の工程を行わない)負極活物質としてグラファイトをそのまま用いたこと以外は実施例1と同様に電池を作製した。
(比較例2)
実施例1において、不溶化処理を実施しなかったこと以外は実施例1と同様に電池を作製した。
(実施例8)
(1)フラーレン類担持工程(フラーレン類による表面処理)
基材として、グラファイト(BET表面積4.2m/g、平均粒径15μm)を5g、100ccのビーカーに秤量し、これに水酸基導入フラーレンC60(OH)n(nは中心値が10、以下この水酸基導入フラーレンC60を水酸化C60と呼ぶ。)のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液(濃度10mg/mL)を0.5mL加え、さらにNMPを1.5mL、ジメチルホルムアミド(DMF)を2mL添加した後、良く撹拌することによってペースト状の混合物を得た。これを120℃のオーブン中において窒素気流中3時間乾燥、溶媒を完全に除去して粉体8Aを得た。
(2)架橋工程または化学結合工程(不溶化処理)
粉体8Aを1g、100ccのビーカーに秤量し、窒素気流中3時間350℃に加熱することにより不溶化処理を行い、粉体8Bを得た。
(3)負極電極の作製
粉体8Bを用いて実施例1と同様にして行った。
(4)電池の作製
粉体8Bを用いた電極を使用して実施例1と同様にして行った。
(実施例9)
負極塗料を作製後1週間放置してその後、再撹拌してから塗布を行い、電極を作製した以外は実施例8と同様にして電池を作製した。
(実施例10)
フラーレン類担持工程において、水酸基導入フラーレンC70(OH)n(nは中心値が12、以下水酸化C70と呼ぶ。)のNMP溶液(濃度10mg/mL)を0.5mL用いた以外は実施例8と同様にして電池を作製した。
(実施例11)
負極塗料を作製後1週間放置してその後、再撹拌してから塗布を行い、電極を作製した以外は実施例10と同様にして電池を作製した。
(実施例12)
フラーレン類担持工程において以下の条件を採用したこと、及び、架橋工程または化学結合工程において以下の条件を採用したこと、以外は実施例8と同様にして電池を作製した。
(1)フラーレン類担持工程(フラーレン類による表面処理)
グラファイトを4g、100ccのビーカーに秤量し、水酸化C60のNMP溶液(濃度5mg/mL)を0.8mL加え、さらにNMPを3.2mL添加した後、良く撹拌することによってペースト状の混合物を得た。これを120℃のオーブン中において窒素気流中5時間乾燥させた後、真空乾燥機を用いて120℃真空乾燥を1時間行い、溶媒を完全に除去して粉体12Aを得た。
(2)架橋工程または化学結合工程(不溶化処理)
不溶化処理の条件は窒素気流中3時間300℃とした。
[試験例]
実施例1〜12及び比較例1〜2で得られた電池の電池特性を評価した。
電池特性は、上記コインセルの充放電を行い1回目の充電容量、1回目の放電容量より初期効率を算出することにより評価した。充電条件は、0.3mA/cmで3mVまで定電流充電し0.03mA/cmまで定電圧充電した。放電条件は0.3mA/cmで1.5Vまで定電流放電した。初期効率は、(1回目の放電容量)/(1回目の充電容量)から算出した。
上記のようにして測定した初期効率を表−1に示す。
Figure 2004356094
表−1より、不溶化処理を行うことにより、初期効率が1〜3%程度上昇することがわかる。また、実施例2の結果から、C60を溶解する溶媒として知られているNMP(例えば、R. S. Ruoff他、J. Phys. Chem., 97, 3379-3383 (1993)には、NMP中への溶解量が0.89mg/mLと記載されている。)を負極製造時の塗料溶媒として用いても、グラファイト表面に存在する不溶化処理されたフラーレンが溶出することなく、1週間後の電池製造においても電池性能の改善効果が十分に発揮されることがわかる。
また、実施例8〜12の結果から、フラーレン類担持工程に使用したフラーレン類を溶解することができる溶媒(NMP)と同じ溶媒を、負極製造時の塗料溶媒として使用しても効果が上がることがわかる。
一方、比較例2に示すようにC60で処理した場合は効果が低い。これはC60が塗料溶媒であるNMPに可溶である点にも一因があると思われるが、塗料調製後1時間という短時間で塗布、乾燥していることから、NMP中への溶解というよりも電池中において充電されるとき還元雰囲気におかれる負極表面上においてC60が還元され、電解液に可溶な分子種となり電解液中に溶出したことが主因と思われる。このようにフラーレン類の不溶化処理を行うことは塗料溶媒以外の因子に対しても解決策を提供するものである。
(実施例13)
(1)フラーレン類担持工程(フラーレン類による表面処理)
基材として、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO、BET表面積0.60m/g、平均粒径5μm)を45g、1Lのビーカーに秤量し、これにフラーレンC60のジフェニルスルフィド溶液(濃度10mg/mL)を4.5mL加え、さらにジフェニルスルフィド溶媒(以下DPS)を19.5mL追加して良く撹拌しペースト状の混合物を得た。これを180℃のオーブン中において窒素気流中5時間乾燥させ溶媒を除去して粉体13Aを得た。
(2)架橋工程または化学結合工程(不溶化処理)
粉体13Aを30g、1Lのビーカーに秤量し、空気気流中3時間350℃に加熱することにより不溶化処理を行い、粉体13Bを得た。
(3)正極電極の作製
正極活物質として、粉体13Bを90重量部、ポリフッ化ビニリデン5重量部、アセチレンブラック5重量部、及びN−メチル−2−ピロリドン(三菱化学株式会社製)80重量部を混練し、正極塗料とした。
この塗料を作製後3時間以内にアルミニウム箔(厚み 20μm)上にドクターブレード(ブレードコーター)にて塗布、乾燥させ、100kN/mの線圧にてロールプレス処理し、正極を得た。ついで所定のサイズに裁断し平板状の正極1とした。
(4)負極電極の作製
負極活物質として、グラファイトを90重量部、ポリフッ化ビニリデン10重量部、及びN−メチル−2−ピロリドン150重量部を混練し、負極塗料とした。
この塗料を銅箔(厚み 10μm)上にドクターブレード(ブレードコーター)にて塗布、乾燥させ、100kN/mの線圧にてロールプレス処理し、負極を得た。ついで所定のサイズに裁断し、負極とした。
(5)電池の作製
上記正極及び負極に電流取り出し用の端子を取り付けた後、膜厚16μmのポリエチレン製セパレータを介して積層して、ラミネートフィルムからなるケースに封入した。ケースを密封する前に電解液として非水系溶媒として、エチレンカーボネート及びジメチルカーボネートを1:1の割合(体積%)混合したLiPFの1mol/L溶液を注液した。
(実施例14)
フラーレン類による表面処理においてC60のDPS溶液(濃度10mg/mL)を13.5mL、さらに添加するDPSを10.5mLとした以外は実施例13と同様にして電池を作製した。
(実施例15)
フラーレン類による表面処理においてC60のDPS溶液(濃度10mg/mL)を27mL、さらに添加するDPSを0mLとした以外は実施例13と同様にして電池を作製した。
(比較例3)
実施例13において、フラーレン類による表面処理((1)フラーレン類担持工程)、不溶化処理((2)架橋工程又は化学結合工程)を省略し処理を加えていないリチウムコバルト複合酸化物をそのまま正極活物質として使用した以外は実施例13と同様に電池を作製した。
[試験例]
実施例13〜15及び比較例3で得られた電池の電池特性を評価した。
充電条件は、0.5Cの電流値で4.2Vまで定電流充電し電流値が0.1Cに低下するまで定電圧充電した。放電条件は0.2Cで3.0Vまで定電流放電した。
自己放電試験は、上記条件により充電した電池を、25℃の条件下で120時間放置した後、放電条件は0.2Cで3.0Vまで定電流放電した。
そして、自己放電試験前後のインピーダンスの値を、電池電圧を3.8Vに充電した状態でポテンシトスタットを介してインピーダンスアナライザーで測定することにより求めた。
上記のようにして測定した自己放電特性を自己放電試験前後のインピーダンスの値の増加率として、表−2に示す。
Figure 2004356094
表−2より、フラーレン類(C60)による表面処理及び不溶化処理を行うことにより、満充電保存時における抵抗増加が抑制されることがわかる。これはフラーレン類により正極活物質表面が被覆され、充電(酸化)された状態における不安定なコバルト含有酸化物表面での電解液の分解反応が抑制されるためと推定される。
(実施例16)
(1)フラーレン類担持工程(フラーレン類による表面処理)
基材として、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO、BET表面積0.60m/g、平均粒径5μm)を30g、1Lのビーカーに秤量し、これに水酸化C60のNMP溶液(濃度10mg/mL)を3mL加え、さらにNMPを9mL添加した後、良く撹拌しペースト状の混合物を得た。これを150℃のオーブン中において窒素気流中2時間乾燥させ溶媒を除去して粉体16Aを得た。
(2)架橋工程または化学結合工程(不溶化処理)
粉体16Aを25g、1Lのビーカーに秤量し、窒素気流中3時間400℃に加熱することにより架橋及びまたは基材表面への結合処理をおこない粉体16Bを得た。
(3)正極電極の作製
正極活物質として、粉体16Bを90重量部、ポリフッ化ビニリデン5重量部、アセチレンブラック5重量部、及びN−メチル−2−ピロリドン(三菱化学株式会社製)80重量部を混練し、正極塗料とした。
この塗料を作製後3時間以内にアルミニウム箔(厚み 20μm)上にドクターブレード(ブレードコーター)にて塗布、乾燥させ、100kN/mの線圧にてロールプレス処理し、正極を得た。ついで所定のサイズに裁断し平板状の正極とした。
(4)負極電極の作製
負極活物質として、グラファイトを90重量部、ポリフッ化ビニリデン10重量部、及びN−メチル−2−ピロリドン150重量部を混練し、負極塗料とした。
この塗料を銅箔(厚み 10μm)上にドクターブレード(ブレードコーター)にて塗布、乾燥させ、100kN/mの線圧にてロールプレス処理し、負極を得た。ついで所定のサイズに裁断し、負極とした。
(5)電池の作製
上記正極及び負極に電流取り出し用の端子を取り付けた後、膜厚16μmのポリエチレン製セパレータを介して積層して、ラミネートフィルムからなるケースに封入した。ケースを密封する前に電解液として非水系溶媒として、エチレンカーボネート及びジメチルカーボネートを1:1の割合(体積%)混合したLiPFの1mol/L溶液を注液した。
(実施例17)
フラーレン類による表面処理において水酸化C60のNMP溶液(濃度10mg/mL)を9mL、さらに添加するNMPを3mLとした以外は実施例16と同様にして電池を作製した。
(実施例18)
フラーレン類による表面処理において水酸化C60のNMP溶液(濃度10mg/mL)を18mL、さらに添加するNMPを0mLとした以外は実施例16と同様にして電池を作製した。
(実施例19)
正極塗料を作製後1週間放置してその後、再撹拌してから塗布を行い、電極を作製した以外は実施例16と同様にして電池を作製した。
(実施例20)
正極塗料を作製後1週間放置してその後、再撹拌してから塗布を行い、電極を作製した以外は実施例17と同様にして電池を作製した。
(実施例21)
正極塗料を作製後1週間放置してその後、再撹拌してから塗布を行い、電極を作製した以外は実施例18と同様にして電池を作製した。
(比較例4)
実施例16において、フラーレン類による表面処理((1)フラーレン類担持工程)、不溶化処理((2)架橋工程または化学結合工程)を省略し処理を加えていないリチウムコバルト複合酸化物をそのまま正極活物質として使用した以外は実施例16と同様に電池を作製し電池特性を評価した。
[試験例]
実施例16〜21及び比較例4で得られた電池の電池特性を評価した。
充電条件は、0.5Cの電流値で4.2Vまで定電流充電し電流値が0.1Cに低下するまで定電圧充電した。放電条件は0.2Cで3.0Vまで定電流放電した。
自己放電試験は0.5Cの電流値で4.2Vまで定電流充電し電流値が0.1Cに低下するまで定電圧充電した状態において、25℃の条件下で120時間放置した後、放電条件は0.2Cで3.0Vまで定電流放電した。自己放電試験前後のインピーダンスの値を、電池電圧を3.8Vに充電した状態でポテンシトスタットを介してインピーダンスアナライザーで測定することにより求めた。
上記のようにして測定した自己放電特性を自己放電試験前後のインピーダンスの値の増加率として表−3に示す。
Figure 2004356094
表−3より、架橋及びまたは表面に結合されたフラーレン類(水酸化C60)で表面処理及び不溶化処理を行うことにより、満充電保存時における抵抗増加が抑制されることがわかる。これはフラーレン類により正極活物質表面が被覆され、充電(酸化)された状態における不安定なコバルト含有酸化物表面での電解液の分解反応が抑制されるためと推定される。また、実施例16〜18及び19〜21の結果から、フラーレン類担持工程時の溶媒として使用され、水酸化C60を溶解することが可能なNMPを正極製造時の塗料溶媒として用いても、処理された水酸化C60が溶出することなく1週間後でも効果が失われないことがわかる。
(実施例22)
(1)フラーレン類担持工程(フラーレン類による表面処理)
基材として、グラファイト(BET表面積4.2m/g、平均粒径15μm)を5g、50ccのビーカーに秤量し、これにフラーレンC60の1,2−ジメチルベンゼン溶液(濃度5mg/mL)を3mL加え、さらにトルエンを2mL添加した後、良く撹拌することによってペースト状の混合物を得た。これを90℃のオーブン中において窒素気流中2時間乾燥させた後、真空乾燥機をもちいて120℃真空乾燥を3時間おこない溶媒を完全に除去して粉体22Aを得た。
(2)架橋工程または化学結合工程(不溶化処理)
粉体22Aを1g、50ccのビーカーに秤量し、空気気流中3時間300℃に加熱することにより架橋及びまたは基材表面への結合処理をおこない粉体22Bを得た。
また加熱条件を、空気気流中3時間350℃に加熱として粉体22Cを得た。
(3)不溶化の評価
粉体22A、粉体22B、粉体22Cをそれぞれ0.1g、5ccのサンプル瓶に秤量し、NMP2mLを加えて良く撹拌した。その後、静置し24hr後に上澄みを採取して紫外吸収スペクトルを測定し、C60のNMP溶液に対する検量線と比較することにより濃度を定量した。濃度の定量は、その後120hr、144hr、360hr、624hr、960hrの時間において適宜実施した。尚、紫外吸収スペクトルの測定は紫外可視吸光分析装置(島津製作所社製 紫外線可視分光光度計 UV−1650−PC)を用いた。
ここで、粉体に対するC60の処理量は3mg/gであることから、処理されたC60が完全に溶出するとサンプル瓶中のC60溶液濃度は0.15mg/mLとなることから、測定された濃度を溶出率に換算することができる。得られた溶出率の時間依存性を図1に示す。また24hr後の溶出量を表−4に示す。
Figure 2004356094
(実施例23)
(1)フラーレン類担持工程(フラーレン類による表面処理)
基材として、グラファイト(BET表面積4.2m/g、平均粒径15μm)を4g、100ccのビーカーに秤量し、これに水酸化C60のNMP溶液(濃度5mg/mL)を2.4mL加え、さらにNMPを1.6mL添加した後、良く撹拌することによってペースト状の混合物を得た。これを120℃のオーブン中において窒素気流中5時間乾燥させた後、真空乾燥機をもちいて120℃真空乾燥を1時間行い、溶媒を完全に除去して粉体23Aを得た。
(2)架橋工程または化学結合工程(不溶化処理)
粉体23Aを1g、100ccのビーカーに秤量し、窒素気流中3時間300℃に加熱することにより架橋及びまたは基材表面への結合処理をおこない粉体23Bを得た。
また加熱条件を、窒素気気流中3時間400℃に加熱として粉体23Cを得た。
(3)不溶化の評価
粉体23A、粉体23B、粉体23Cをそれぞれ0.1g、5ccのサンプル瓶に秤量し、NMP2mLを加えて良く撹拌した。その後静置し24hr後に上澄みを採取して紫外吸収スペクトルを測定し、水酸化C60のNMP溶液に対する検量線と比較することにより濃度を定量した。濃度の定量は、その後120hr、144hr、360hr、624hr、960hrの時間において適宜実施した。尚、紫外吸収スペクトルの測定は、紫外可視吸光分析装置(島津製作所社製 紫外線可視分光光度計 UV−1650−PC)を用いた。
粉体に対する水酸化C60の処理量は3mg/gであることから、完全に溶出するとサンプル瓶中の水酸化C60溶液濃度は0.15mg/mLとなることから、測定された濃度を溶出率に換算した。得られた溶出率の時間依存性を図2に示す。また24hr後の溶出量を表−5に示す。
Figure 2004356094
(実施例24)
(1)フラーレン類担持工程(フラーレン類による表面処理)
基材として、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO、BET表面積0.60m/g、平均粒径5μm)を30g、100ccのビーカーに秤量し、これにフラーレンC60の1,2−ジメチルベンゼン溶液(濃度5mg/mL)を15mL加え、良く撹拌しペースト状の混合物を得た。これを90℃のオーブン中において窒素気流中3時間乾燥させ溶媒を除去して粉体24Aを得た。
(2)架橋工程または化学結合工程(不溶化処理)
粉体24Aを1g、100ccのビーカーに秤量し、空気気流中3時間350℃に加熱することにより架橋及びまたは基材表面への結合処理をおこない粉体24Bを得た。
(3)不溶化の評価−24−1
粉体24A、粉体24Bをそれぞれ0.1g、5ccのサンプル瓶に秤量し、1,2,4−トリメチルベンゼン(以下TMB)2mLを加えて良く撹拌した。その後静置し24hr後に上澄みを採取して紫外吸収スペクトルを測定し、C60のTMB溶液に対する検量線と比較することにより濃度を定量した。濃度の定量はその後120hr、624hrの時間において適宜実施した。尚、紫外吸収スペクトルの測定は、紫外可視吸光分析装置(島津製作所社製 紫外線可視分光光度計 UV−1650−PC)を用いた。
粉体に対するC60の処理量は2.5mg/gであることから、完全に溶出するとサンプル瓶中のC60溶液濃度は0.125mg/mLとなることから、測定された濃度を溶出率に換算した。得られた溶出率の時間依存性を図3に示す。また24hr後の溶出量を表−6に示す。
(4)不溶化の評価−24−2
上記不溶化の評価−24−1において、用いる溶媒を、TMBからN−メチル−2ピロリドン(以下NMP、リチウム電池用グレード)とした以外は、上記不溶化の評価−24−1と同様にして評価をおこなった。得られた溶出率の時間依存性を図3に示す。また24hr後の溶出量を表−6に示す。
Figure 2004356094
(実施例25)
(1)不溶化の評価−25−1
実施例16における粉体16A、粉体16B、及び実施例17、18における不溶化処理前の粉体をそれぞれ17A、18A、不溶化処理後の粉体をそれぞれ17B、18Bとして不溶化の確認を行った。各粉体をそれぞれ0.1g、10ccのサンプル瓶に秤量し、NMP3mLを加えて良く撹拌した。その後静置し24hr後に上澄みを採取して紫外吸収スペクトルを測定し、水酸化C60のNMP溶液に対する検量線と比較することにより濃度を定量した。濃度の定量はその後120hr、168hr、504hrの時間において適宜実施した。尚、紫外吸収スペクトルの測定は、紫外可視吸光分析装置(島津製作所社製 紫外線可視分光光度計 UV−1650−PC)を用いた。
粉体に対する水酸化C60の処理量は実施例16で1mg/g、実施例17で3mg/g、実施例18で6mg/gであることから、完全に溶出するとサンプル瓶中の水酸化C60溶液濃度は実施例16で0.033mg/mL、実施例17で0.1mg/mL、実施例18で0.2mg/mLとなることから、測定された濃度を溶出率に換算した。24hr後、168hr、504hr後における溶出率の結果を図4に示す。また24hr後の、溶出量の結果を表−7に示す。
Figure 2004356094
(2)不溶化の評価−25−2
粉体17A、粉体17Bをそれぞれ0.1g、5ccのサンプル瓶に秤量し、NMP3mLを加えて良く撹拌した。その後静置し24hr後に濾過分離し、濾残を洗浄乾燥して粉体17AW、粉体17BWを得た。これらの粉体をTPD−MS(昇温脱離−質量分析法)により粉体表面上の炭素量を定量した。尚、TPD−MSは、アネルバ社製のAGS−7000を使用しEI法を用いることによってHe雰囲気下において測定した。
測定は粉体17A、粉体17B及び処理を加えていないリチウムコバルト複合酸化物に対しても実施した。
TPD−MS測定時の温度条件は、昇温速度10℃/分において900℃まで加熱する条件を用いた。加熱時に発生する分解成分を質量分析計において質量数28(CO)及び44(CO)の成分を検出して炭素数を検出した。フラーレン類は、不活性雰囲気下においては比較的安定であるため、600℃―900℃において検出される成分をフラーレン由来とした。質量数44の成分の測定結果を図5に示す。質量数28の成分の測定結果は、質量数44の成分の測定結果と比較して、ほぼ同様の傾向を示すがイオン強度が1桁程度低い。
図5に示されるように、比較サンプルである未処理のリチウムコバルト複合酸化物に対する結果では、各温度において検出される質量数44の成分は極めて微量であり、不純物や表面に存在する炭酸リチウムに由来する炭素はほとんど無視できることがわかる。フラーレンで表面を処理した粉体はCOが検出されフラーレンが存在していることが示唆される。
図5において600℃―900℃の範囲で検出された二酸化炭素量を表−8に示す。不溶化処理を施していない粉体17AをNMPに浸せき濾過した粉体17AWでは検出される炭素量が低くなっており、水酸化C60が溶出していることがわかる。一方不溶化処理した粉体17Bと、これをNMPに浸せき濾過した粉体17BWとでは、NMPへの浸積前後で炭素量がほとんど変化せず、表面処理された水酸化C60が溶媒(NMP)に溶出することなく安定であることがわかる。
Figure 2004356094
(実施例26)
(1)フラーレン類担持工程(フラーレン類による表面処理)
基材として、シリカ(BET表面積4m/g、平均粒径1μm)を5g、100ccのビーカーに秤量し、これにフラーレンC60のジフェニルスルフィド溶液(濃度10mg/mL)を2.5mL加え、さらにジフェニルスルフィド(以下DPS)を1.25mL追加して良く撹拌しペースト状の混合物を得た。これを180℃のオーブン中において窒素気流中5時間乾燥させ溶媒を除去して粉体26Aを得た。
(2)架橋工程または化学結合工程(不溶化処理)
粉体26Aを3g、100ccのビーカーに秤量し、空気気流中3時間350℃に加熱することにより架橋及びまたは基材表面への結合処理をおこない粉体26Bを得た。
(3)不溶化の評価
粉体26A、粉体26Bをそれぞれ0.1g、5ccのサンプル瓶に秤量し、1,2,4−トリメチルベンゼン(以下TMB)3mLを加えて良く撹拌した。その後静置し24hr後に上澄みを採取して、紫外吸収スペクトルを測定し、C60のTMB溶液に対する検量線と比較することにより濃度を定量した。尚、紫外吸収スペクトルの測定は、紫外可視吸光分析装置(島津製作所社製 紫外線可視分光光度計 UV−1650−PC)を用いた。
溶出量の定量結果を表−9に示す。
(実施例27)
(1)フラーレン類担持工程(フラーレン類による表面処理)
基材として、アルミナ(BET表面積2.2m/g、平均粒径1μm)を5g、100ccのビーカーに秤量し、これにフラーレンC60のジフェニルスルフィド溶液(濃度10mg/mL)を2.5mL加え、さらにジフェニルスルフィド(以下DPS)を1.25mL追加して良く撹拌しペースト状の混合物を得た。これを180℃のオーブン中において窒素気流中5時間乾燥させ溶媒を除去して粉体27Aを得た。
(2)架橋工程または化学結合工程(不溶化処理)
粉体27Aを3g、100ccのビーカーに秤量し、空気気流中3時間350℃に加熱することにより架橋及びまたは基材表面への結合処理をおこない粉体27Bを得た。
(3)不溶化の評価
粉体27A、粉体27Bをそれぞれ0.1g、5ccのサンプル瓶に秤量し、1,2,4−トリメチルベンゼン(以下TMB)3mLを加えて良く撹拌した。その後静置し24hr後に上澄みを採取して、紫外吸収スペクトルを測定し、C60のTMB溶液に対する検量線と比較することにより濃度を定量した。尚、紫外吸収スペクトルの測定は、紫外可視吸光分析装置(島津製作所社製 紫外線可視分光光度計 UV−1650−PC)を用いた。
溶出量の定量結果を表−9に示す。
Figure 2004356094
表−9に示すようにシリカやアルミナなどの無機酸化物に対してC60を処理した場合でも、不溶化処理により溶出量が減少することがわかる。
(実施例28)
(1)フラーレン類担持工程(フラーレン類による表面処理)
基材として、シリカ(BET表面積4m/g、平均粒径1μm)を5g、100ccのビーカーに秤量し、これに水酸化C60のNMP溶液(濃度10mg/mL)を2.5mL加え、さらにNMP)を1mL追加して良く撹拌しペースト状の混合物を得た。これを150℃のオーブン中において窒素気流中5時間乾燥させ溶媒を除去して粉体28Aを得た。
(2)架橋工程または化学結合工程(不溶化処理)
粉体28Aを3g、100ccのビーカーに秤量し、窒素気流中3.5時間400℃に加熱することにより架橋及びまたは基材表面への結合処理をおこない粉体28Bを得た。
(3)不溶化の評価
粉体28A、粉体28Bをそれぞれ0.1g、5ccのサンプル瓶に秤量し、NMP3mLを加えて良く撹拌した。その後静置し24hr後に上澄みを採取して、紫外吸収スペクトルを測定し、水酸化C60のNMP溶液に対する検量線と比較することにより濃度を定量した。尚、紫外吸収スペクトルの測定は、紫外可視吸光分析装置(島津製作所社製 紫外線可視分光光度計 UV−1650−PC)を用いた。
溶出量の結果を表−10に示す。
(実施例29)
(1)フラーレン類担持工程(フラーレン類による表面処理)
基材として、アルミナ(BET表面積2.2m/g、平均粒径1μm)を5g、100ccのビーカーに秤量し、これに水酸化C60のNMP溶液(濃度10mg/mL)を2.5mL加え、良く撹拌しペースト状の混合物を得た。これを150℃のオーブン中において窒素気流中5時間乾燥させ溶媒を除去して粉体29Aを得た。
(2)架橋工程または化学結合工程(不溶化処理)
粉体29Aを3g、100ccのビーカーに秤量し、空気気流中3時間350℃に加熱することにより架橋及びまたは基材表面への結合処理をおこない粉体29Bを得た。
(3)不溶化の評価
粉体29A、粉体29Bをそれぞれ0.1g、5ccのサンプル瓶に秤量し、NMP3mLを加えて良く撹拌した。その後静置し24hr後に上澄みを採取して、紫外吸収スペクトルを測定し、水酸化C60のNMP溶液に対する検量線と比較することにより濃度を定量した。溶出量の結果を表−10に示す。
Figure 2004356094
表−10に示すようにシリカやアルミナなどの無機酸化物に対して水酸化C60を処理した場合でも、不溶化処理により溶出量が減少することがわかる。
(参考例)
上記実施例における、架橋工程または化学結合工程(不溶化処理)において、フラーレン類が架橋している又は基板と結合しているか否かを調べるために、フラーレン類に水酸化C60を用いて下記実験を行った。
(1)加熱による脱水
水酸化C60の粉末を、表面付着水分を除去するため真空乾燥機を用いて120℃で3時間乾燥した後、5mgを分取し、加熱脱離水分検出型のカールフィッシャー水分計により所定温度まで加熱して脱離する水分量を測定した。ここで、加熱脱離水分検出型のカールフィッシャー水分計として、三菱化学社製のVA−06を用いた。
測定された水分量を表−11に示す。
Figure 2004356094
(2)加熱された水酸化C60の溶解性の確認
上記の各温度で加熱脱水された水酸化C60を1mg、20ccのサンプル瓶に秤量し10mLのプロビレンカーボネートを添加して、良く撹拌した後、24時間静置して上澄みの濃度を紫外可視分光光度計により定量した。完全に溶解した場合の溶液濃度は0.1mg/mLとなる。ここで、水酸化C60のプロピレンカーボネートに対する飽和溶解度は0.48mg/mLであり、採用された仕込みの条件は、投入された水酸化C60を完全に溶解するために十分な組成となっている。尚、紫外吸収スペクトルの測定は、紫外可視吸光分析装置(島津製作所社製 紫外線可視分光光度計 UV−1650−PC)を用いた。
測定された溶液濃度を表−11に示す。
実験に用いた水酸基が約10個付加された水酸化C60においては、水酸基の占める割合は約19wt%である。脱水縮合の場合は2個の水酸基から水1分子が脱離しエーテル結合が形成されると想定されるため、脱離する水分は約10wt%になる。検出された水分量はこれより低いが、この理由は以下の3つが考えられる。すなわち、まず、すべての水酸基が架橋形成に寄与する訳ではないことと、第2に、表面付着水分を除去するための120℃−3時間の真空乾燥により一部の水酸基が既に反応している可能性があること、第3に、未反応の水酸基がさらに高温で反応していく可能性があることである。
一方、水酸化C60がプロピレンカーボネート中に完全に溶解すると溶液濃度が0.1mg/mLとなるが、温度を高くするとともに溶解量が低下していることが上記測定からわかる。
このように、加熱温度の上昇によって脱離する水分が増加すること、及び、加熱温度の上昇によってプロピレンカーボネート中への水酸化C60の溶解濃度が下がっていくこと、から、加熱により水酸化C60が脱水し水酸化C60同士で縮合反応して架橋していることがわかる。
(実施例30)
(1)フラーレン類担持工程(フラーレン類による表面処理)
基材として、ニッケル酸リチウム(LiαNiCoAl(α=1.05,X=0.82,Y=0.15,Z=0.03)、比表面積0.5m/g、平均2次粒径7μm)を30g、300ccのビーカーに秤量し、これにフラーレンC60のTMB溶液(濃度10mg/mL)を1.5mL加え、さらにTMB溶媒を9.5mL追加して良く撹拌しペースト状の混合物を得た。これを90℃において圧縮エアーのブロー下、撹拌しながら30分乾燥し粉末を得た。さらに120℃のオーブン中において窒素気流中3時間乾燥させ溶媒を除去して表面処理粉体を得た。
(2)架橋工程または化学結合工程(不溶化処理)
上記表面処理粉体を25g、300ccのビーカーに秤量し、空気気流中3時間350℃に加熱することにより不溶化処理を行い、不溶化処理粉体を得た。
(3)正極電極の作製
正極活物質として、上記不溶化処理粉体を90重量部、ポリフッ化ビニリデン5重量部、アセチレンブラック5重量部、及びN−メチル−2−ピロリドン(三菱化学株式会社製)80重量部を混練し、正極塗料とした。
この塗料を作製後3時間以内にアルミニウム箔(厚み 20μm)上にドクターブレード(ブレードコーター)にて塗布、乾燥させ、100kN/mの線圧にてロールプレス処理し、正極を得た。ついで所定のサイズに裁断し平板状の正極2とした。
(4)負極電極の作製
負極活物質として、グラファイトを90重量部、ポリフッ化ビニリデン10重量部、及びN−メチル−2−ピロリドン150重量部を混練し、負極塗料とした。
この塗料を銅箔(厚み 10μm)上にドクターブレード(ブレードコーター)にて塗布、乾燥させ、100kN/mの線圧にてロールプレス処理し、負極を得た。ついで所定のサイズに裁断し、負極とした。
(5)電池の作製
上記正極及び負極に電流取り出し用の端子を取り付けた後、膜厚16μmのポリエチレン製セパレータを介して積層して、ラミネートフィルムからなるケースに封入した。ケースを密封する前に電解液として非水系溶媒として、エチレンカーボネート及びジメチルカーボネートを1:1の割合(体積%)混合したLiPFの1mol/L溶液100部にフェニルエーテルを5部添加した溶液を注液した。
(実施例31)
フラーレン類による表面処理においてC60のTMB溶液(濃度10mg/mL)を3.0mL、さらに添加するTMBを8.0mLとした以外は実施例30と同様にして電池を作製した。
(実施例32)
フラーレン類による表面処理においてC60のTMB溶液(濃度10mg/mL)を6.0mL、さらに添加するTMBを5.0mLとした以外は実施例30と同様にして電池を作製した。
(比較例5)
実施例30において、フラーレン類による表面処理((1)フラーレン類担持工程)、不溶化処理((2)架橋工程又は化学結合工程)を省略し、処理を加えていないニッケル酸リチウムをそのまま正極活物質として使用した以外は実施例30と同様に電池を作製した。
[試験例]
実施例30〜32及び比較例5で得られた電池の電池特性を評価した。
充電条件は、0.5Cの電流値で4.2Vまで定電流充電し電流値が0.1Cに低下するまで定電圧充電した。放電条件は0.2Cで3.0Vまで定電流放電した。
自己放電試験は、上記条件により充電した電池を、25℃の条件下で120時間放置した後、放電条件は0.2Cで3.0Vまで定電流放電した。
そして、自己放電試験前後のインピーダンスの値を、電池電圧を3.8Vに充電した状態でポテンシトスタットを介してインピーダンスアナライザーで測定することにより求めた。
サイクル特性は、0.6Cの電流値で4.2Vまで定電流充電し電流値が0.1Cに低下するまで定電圧充電し、次いで0.2Cで3.0Vまで定電流放電するサイクルを400回繰り返したときの2サイクル目と400サイクル目の容量の維持率で表した。
上記のようにして測定した自己放電特性を自己放電試験前後のインピーダンスの値の増加率として、またサイクル特性を容量の維持率として表−12に示す。
Figure 2004356094
表−12より、フラーレン類(C60)による表面処理及び不溶化処理を行うことにより、満充電保存時における抵抗増加が抑制されることがわかる。これはフラーレン類で正極活物質表面が被覆されることにより、充電(酸化)された状態における不安定なニッケル酸リチウム表面での電解液の分解反応が抑制されるためと推定される。またサイクル特性も向上することがわかる。多数回のサイクルによって電池は充電状態に繰り返しさらされるが、フラーレン類(C60)による表面処理及び不溶化処理を行うことにより、自己放電特性の改善と同様に理由により特性が改善したものと思われる。
(実施例33)
(1)フラーレン類担持工程(フラーレン類による表面処理)
基材として、ニッケル酸リチウム(LiαNiCoAl(α=1.05,X=0.82,Y=0.15,Z=0.03)、比表面積0.5m/g,平均2次粒径7μm)を30g、1Lのビーカーに秤量し、これに水酸化C60のNMP溶液(濃度10mg/mL)を0.75mL加え、さらにNMPを9.25mL添加した後、良く撹拌しペースト状の混合物を得た。これを90℃において圧縮エアーのブロー下、撹拌しながら30分乾燥し粉末を得た。さらに120℃のオーブン中において窒素気流中3時間乾燥させ溶媒を除去して表面処理粉体を得た。
(2)架橋工程または化学結合工程(不溶化処理)
上記表面処理粉体を25g、300ccのビーカーに秤量し、窒素気流中4時間400℃に加熱することにより不溶化処理を行い、不溶化処理粉体を得た。
(3)正極電極の作製
正極活物質として、上記不溶化処理粉体を90重量部、ポリフッ化ビニリデン5重量部、アセチレンブラック5重量部、及びN−メチル−2−ピロリドン(三菱化学株式会社製)80重量部を混練し、正極塗料とした。
この塗料を作製後3時間以内にアルミニウム箔(厚み 20μm)上にドクターブレード(ブレードコーター)にて塗布、乾燥させ、100kN/mの線圧にてロールプレス処理し、正極を得た。ついで所定のサイズに裁断し平板状の正極とした。
(4)負極電極の作製
負極活物質として、グラファイトを90重量部、ポリフッ化ビニリデン10重量部、及びN−メチル−2−ピロリドン150重量部を混練し、負極塗料とした。
この塗料を銅箔(厚み 10μm)上にドクターブレード(ブレードコーター)にて塗布、乾燥させ、100kN/mの線圧にてロールプレス処理し、負極を得た。ついで所定のサイズに裁断し、負極とした。
(5)電池の作製
上記正極及び負極に電流取り出し用の端子を取り付けた後、膜厚16μmのポリエチレン製セパレータを介して積層して、ラミネートフィルムからなるケースに封入した。ケースを密封する前に電解液として非水系溶媒として、エチレンカーボネート及びジメチルカーボネートを1:1の割合(体積%)混合したLiPFの1mol/L溶液を注液した。
(実施例34)
フラーレン類による表面処理において水酸化C60のNMP溶液(濃度10mg/mL)を1.5mL、さらに添加するNMPを8.0mLとした以外は実施例33と同様にして電池を作製した。
(実施例35)
フラーレン類による表面処理において水酸化C60のNMP溶液(濃度10mg/mL)を2.25mL、さらに添加するNMPを7.25mLとした以外は実施例33と同様にして電池を作製した。
(比較例6)
実施例33において、フラーレン類による表面処理((1)フラーレン類担持工程)、不溶化処理((2)架橋工程または化学結合工程)を省略し、処理を加えていないリチウムコバルト複合酸化物をそのまま正極活物質として使用した以外は実施例33と同様に電池を作製し電池特性を評価した。
[試験例]
実施例33〜35及び比較例6で得られた電池の電池特性を評価した。
充電条件は、0.5Cの電流値で4.2Vまで定電流充電し電流値が0.1Cに低下するまで定電圧充電した。放電条件は0.2Cで3.0Vまで定電流放電した。
自己放電試験は以下のようにして行った。すなわち、まず、0.5Cの電流値で4.2Vまで定電流充電し電流値が0.1Cに低下するまで定電圧充電した状態において、25℃の条件下で120時間放置した。その後、0.2Cで3.0Vまで定電流放電した。そして、自己放電試験前後のインピーダンスの値を、電池電圧を3.8Vに充電した状態でポテンシトスタットを介してインピーダンスアナライザーで測定することにより求めた。
上記のようにして測定した自己放電特性を自己放電試験前後のインピーダンスの値の増加率として表−13に示す。
Figure 2004356094
表−13より、架橋及びまたは表面に結合されたフラーレン類(水酸化C60)で表面処理及び不溶化処理を行うことにより、満充電保存時における抵抗増加が抑制されることがわかる。これはフラーレン類により正極活物質表面が被覆され、充電(酸化)された状態において特に不安定なニッケル酸リチウム表面での電解液の分解反応が抑制されるためと推定される。
実施例22におけるフラーレン類の溶出量の時間依存性を示すグラフである。 実施例23におけるフラーレン類の溶出量の時間依存性を示すグラフである。 実施例24におけるフラーレン類の溶出量の時間依存性を示すグラフである。 実施例25におけるフラーレン類の溶出率と浸せき時間の関係を示すグラフである。 実施例25における質量数44の成分のマスクロマトグラムを示すグラフである。

Claims (14)

  1. 基材と、基材表面に形成されたフラーレン類を含有するフラーレン層とを有する積層体であって、前記フラーレン類の球殻構造同士が少なくとも1つの原子を介して架橋していることを特徴とする積層体。
  2. 基材と、基材表面に形成されたフラーレン類を含有するフラーレン層とを有する積層体であって、前記フラーレン類の球殻構造が少なくとも1つの原子を介して基材と化学結合していることを特徴とする積層体。
  3. 前記少なくとも1つの原子が酸素原子であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の積層体。
  4. 基材と、基材表面に形成されたフラーレン類を含有するフラーレン層とを有する積層体であって、下記試験方法において、前記フラーレン層から溶出するフラーレン類の単位重量当たりの溶出量が2mg/g以下となることを特徴とする積層体。
    [試験方法]
    (1)トリメチルベンゼン溶媒またはN−メチルピロリドン溶媒に、0.1gの前記積層体を添加してサンプル液を調製する。
    (2)前記サンプル液を常温(25±5℃)かつ常湿(50±15%RH)で24時間放置する。
    (3)前記放置後のサンプル液の上澄み液を回収し、上澄み液に含有されるフラーレン類の含有量を測定する。
    (4)前記測定値を前記サンプル液の総溶出量に換算し、換算値を0.1gで割る。
  5. 前記基材が粒子状であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の積層体。
  6. 前記基材がリチウム遷移金属複合酸化物であり、リチウム二次電池用正極材料として用いることを特徴とする請求項5に記載の積層体。
  7. 前記基材が炭素性物質であり、リチウム二次電池用負極材料として用いることを特徴とする請求項5に記載の積層体。
  8. 請求項6に記載の積層体を含有することを特徴とするリチウム二次電池の正極。
  9. 請求項7に記載の積層体を含有することを特徴とするリチウム二次電池の負極。
  10. 請求項8に記載のリチウム二次電池の正極を用いることを特徴とするリチウム二次電池。
  11. 請求項9に記載のリチウム二次電池の負極を用いることを特徴とするリチウム二次電池。
  12. 基材と、基材表面に形成されたフラーレン類を含有するフラーレン層とを有する積層体の製造方法であって、
    基材表面にフラーレン類を存在させるフラーレン類担持工程と、
    前記フラーレン類の球殻構造同士を少なくとも1つの原子を介して架橋させる架橋工程又は前記フラーレン類の球殻構造を少なくとも1つの原子を介して基材と化学結合させる化学結合工程のうち少なくとも1つの工程と、
    を有することを特徴とする積層体の製造方法。
  13. 前記架橋工程または化学結合工程を、100℃以上の加熱処理によって行うことを特徴とする請求項12に記載の積層体の製造方法。
  14. 前記少なくとも1つの原子が酸素原子である請求項12又は請求項13に記載の積層体の製造方法。
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