JP2003324225A - 積層フェリ型磁性薄膜並びにそれを使用した磁気抵抗効果素子及び強磁性トンネル素子 - Google Patents

積層フェリ型磁性薄膜並びにそれを使用した磁気抵抗効果素子及び強磁性トンネル素子

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JP2003324225A
JP2003324225A JP2002127656A JP2002127656A JP2003324225A JP 2003324225 A JP2003324225 A JP 2003324225A JP 2002127656 A JP2002127656 A JP 2002127656A JP 2002127656 A JP2002127656 A JP 2002127656A JP 2003324225 A JP2003324225 A JP 2003324225A
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JP2002127656A
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Kaoru Mori
馨 森
Atsushi Kamijo
敦 上條
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NEC Corp
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    • H10N50/00Galvanomagnetic devices
    • H10N50/10Magnetoresistive devices
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    • Y10T428/00Stock material or miscellaneous articles
    • Y10T428/32Composite [nonstructural laminate] of inorganic material having metal-compound-containing layer and having defined magnetic layer

Abstract

(57)【要約】 【課題】 大きな反強磁性的交換結合エネルギー及び優
れた軟磁気特性を同時に実現し、かつ精密な非磁性中間
層膜厚制御の必要がない積層フェリ型磁性薄膜を提供す
る。 【解決手段】 積層フェリ型磁性薄膜は、2つの強磁性
層308,309と、それらに挟まれた非磁性中間層3
04よりなり、各強磁性層が非磁性中間層を介して反強
磁性的に磁気結合する。各強磁性層は複数の層よりな
る。各強磁性層において、非磁性中間層と接する層はC
o又はCoを含む合金とし、その膜厚を夫々0.1nm
以上とする。また、各強磁性層において、少なくとも1
層以上はNi又はNiを含む合金とし、その膜厚を夫々
強磁性層の膜厚の少なくとも60%以上とする。非磁性
中間層304はRu、Rh、Ir、Cuか、又はその合
金により形成されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気抵抗効果素子
又は強磁性トンネル接合素子のフリー磁性層に適した磁
化反転特性を持つ積層フェリ型磁性薄膜並びにそれを使
用した磁気抵抗効果素子及び強磁性トンネル素子に関す
る。
【0002】
【従来の技術】磁気抵抗効果とは、外部磁場によって電
気抵抗が変化する現象である。磁気抵抗効果素子は、素
子に印加された外部磁場の大きさを素子抵抗値の変化と
して感知し、又はその状態を素子抵抗値の大きさとして
保持する機能を持つ素子である。特に、常温で低外部磁
場領域において大きな磁気抵抗変化率(MR比)を持つ
スピンバルブ型GMR素子及び強磁性トンネル接合素子
は、高記録密度対応再生用磁気ヘッド及び高密度固体磁
気メモリ(MRAM)への応用に多くの期待が寄せられ
ている。
【0003】これらの磁気抵抗効果素子は、外部磁場に
対してその磁化方向を自由にできるフリー磁性層、外部
磁場に対してその磁化方向を固定する機構を備えたピン
ド磁性層、及びそれらの中間に配置され双方に接する非
磁性層よりなる。磁気抵抗効果は、非磁性層を挟んだ両
側の磁性層の相対磁化角度により素子の抵抗が変化する
ことによって生じる。フリー磁性層とピンド磁性層の間
の磁気的な結合をほとんど無くすことで外部磁場に対し
てフリー磁性層の磁化方向のみが変化するいわゆるスピ
ンバルブ型の素子動作を実現し、外部磁場に対して敏感
な磁気抵抗効果を得る。
【0004】磁性材料(強磁性体)としては、Co、N
i、Fe及びそれらの合金等が広く知られ、特にCo又
はCoを含む合金、特にCoFe合金はその大きな飽和
磁化が、またNi又はNiを含む合金、特にNiFe合
金はその優れた軟磁気特性(低保磁力)が特長である。
磁気抵抗効果素子のフリー磁性層材料としては、小さな
外部磁場で俊敏に磁化反転させる必要性から、NiFe
のような磁気的にソフトな(軟磁気特性が優れた)磁性
材料が好適であり、広く使用されている。
【0005】また、ピンド磁性層の磁化方向を外部磁場
に対して固定する機構としては、材料として磁気的にハ
ードな磁性材料を使用し、その反転保磁力をフリー磁性
層のそれよりも大きくする方法(保磁力差型)と、ピン
ド磁性層に反強磁性層を接触させることで、より積極的
にその磁化方向を一方向に固定する方法(交換バイアス
型)とが使用されている。
【0006】非磁性層として、Cu、Ag、Au等の非
磁性導電体を使用するものが米国特許第5159513
号に代表的に開示されているスピンバルブ型GMR素子
であり、非磁性層として、Al酸化物、Al窒化物等の
非磁性絶縁体を使用するものが米国特許第565095
8号に代表的に開示されている強磁性トンネル接合素子
である。前者よりも後者では、より高いMR比が得られ
る。また、両者は電流を流す方向にも相違がある。高密
度固体磁気メモリ(MRAM)への応用には素子の面内
高集積化が重要であるため、より高いMR比を持ち、面
直方向に通電を行う強磁性トンネル接合素子がより好適
である。
【0007】一方で、これらの磁気抵抗効果素子におけ
る強磁性層(フリー磁性層又はピンド磁性層)への応用
が可能な薄膜構造のひとつとして、積層フェリ型磁性薄
膜といわれる多層磁性膜がある。これは、米国特許第5
341118号にその基本構造が開示されているよう
に、少なくとも2層の強磁性層と、それらの間に配置さ
れ双方に接する非磁性中間層とからなる多層薄膜であ
る。非磁性中間層材料として好適な非磁性遷移金属を使
用すると、両強磁性層間には非磁性中間層を介した極め
て強力な反強磁性的相互作用(交換結合)が作用し、互
いの磁化方向は低磁場においては常に反平行となる。こ
のため、積層フェリ型磁性薄膜を構成する各強磁性層の
磁気モーメントは常に相殺され、各強磁性層の膜厚差分
に相当する小さな磁気モーメントを持つ人工的なフェリ
磁性状態を実現することができる。積層フェリ型磁性薄
膜においては、各強磁性層の膜厚を極薄化することなく
実効的に磁気的膜厚を大幅に低下することが可能であ
る。
【0008】積層フェリ型磁性薄膜における強磁性層間
の反強磁性的交換結合の大きさは非磁性中間層の材料及
び膜厚に依存する。フィジカル・レビュー・レターズ第
67巻3598頁(1991年)には、積層フェリ型磁
性薄膜における強磁性層間の反強磁性的交換結合強度が
非磁性中間層材料に依存し、その膜厚に対し周期的な振
動を見せること、また繰り返し回数=1であるシンプル
サンドイッチ構造で各強磁性層膜厚が等しい積層フェリ
型磁性薄膜においては、飽和磁場をH、使用する強磁
性層の飽和磁化をM、強磁性層膜厚をtとすると、そ
の結合強度(J:反強磁性的交換結合エネルギー)はJ
=H×M×t/2により求まることが示されてい
る。同報告では、強磁性層としてCoを使用した場合に
おいて、反強磁性的交換結合強度と数多くの非磁性中間
層材料との関係が記載されており、非磁性中間層材料が
5d族、4d族、3d族遷移金属である順に、また同一
周期においては、最外殻d電子が多いほど反強磁性的交
換結合エネルギーの大きさは増加する傾向にあることが
述べられている。そのなかでも、特に、Ru、Rh、I
r、Cuは、反強磁性的交換結合エネルギーが最大で1
−3J/m(1erg/cm)以上と、他の元素
に比べて格段に大きな材料である。なお、ジャーナル・
オブ・マグネティズム・アンド・マグネティック・マテ
リアルズ第165巻524頁(1997)によると、各
強磁性層の膜厚が異なる場合の反強磁性的交換結合エネ
ルギーは、各強磁性層膜厚をt、tとすると、J=
×MS×t×t/(t+t)で与えられ
る。
【0009】積層フェリ型磁性層の交換結合強度は使用
する強磁性層の材料にも依存することが知られている。
フィジカル・レビュー・B第56巻7819頁(199
7年)には、非磁性中間層としてCuを、強磁性層とし
てNiFeを使用した場合の反強磁性的交換結合エネル
ギーがJ=6×10−5J/m(0.06erg/c
)以下であることが述べられているが、この値は強
磁性層としてCoを使用した場合に比べるとはるかに小
さい。また、ジャーナル・オブ・アプライド・フィジク
ス第73巻5986頁(1993年)には、非磁性中間
層がRuであるとき、強磁性層としてCoを使用した場
合よりも、NiFe(パーマロイ:Permalloy)を使用
した場合の方が交換結合強度が小さいことが述べられて
おり、これはCoと比較して飽和磁化が小さいことの影
響である可能性が指摘されている。特開2001−14
3223号には、積層フェリ型磁性薄膜における強磁性
層材料にNiFe及びCoを使用した場合において、夫
々、得られる飽和磁場の大きさが好適となる非磁性中間
層(Ru、Cr、Ir、Rh)の膜厚範囲が開示されて
いる。ここに開示されている飽和磁場と非磁性中間層膜
厚との関係、各強磁性層材料の飽和磁化とその膜厚との
関係、及び前述の反強磁性的交換結合エネルギーJと飽
和磁場Hの関係式(J=H×M×t×t
(t+t))を使用して、強磁性層材料がNiFe
及びCoである場合について、夫々反強磁性的交換結合
強度の非磁性中間層膜厚依存性を求めることができる。
【0010】図1及び図2は、夫々このようにして求め
たNiFe及びCoの反強磁性的交換結合エネルギーと
非磁性中間層(Ru、Rh、Ir)膜厚との関係を示す
グラフ図である。
【0011】次に、積層フェリ型磁性薄膜の磁気抵抗効
果素子への応用に関する従来技術について述べる。先
ず、積層フェリ型ピンド磁性層を持つ磁気抵抗効果素子
について述べる。磁気抵抗効果素子においては、前述の
ように、外部磁場の変化に対応してフリー磁性層を磁化
反転させる(磁気抵抗効果素子をスピンバルブ的に動作
させる)ために、フリー磁性層とピンド磁性層間の磁気
的な作用をほとんど無くす必要があるが、ピンド磁性層
に積層フェリ型磁性薄膜を適用すると、フリー磁性層の
磁化反転に及ぼすピンド磁性層の影響を更に低減するこ
とができる。積層フェリ型ピンド磁性層を持つ磁気抵抗
効果素子の基本構造は米国特許第5465185号に開
示されている。通常、磁気抵抗効果素子においては、ピ
ンド磁性層端部の磁荷がつくる静磁界の影響により、フ
リー磁性層の反転磁場が一定量シフトする現象がみられ
るが、積層フェリ型ピンド磁性層を持つ磁気抵抗効果素
子では、ピンド磁性層の磁気的膜厚低下効果により、ピ
ンド磁性層が作る静磁界を極めて小さくすることがで
き、フリー磁性層の反転磁場シフトを小さくすることが
できる。この積層フェリ型ピンド磁性層を持つ磁気抵抗
効果素子においては、ピンド磁性層を更に好適とする
(フリー磁性層に及ぼすピンド磁性層の磁気的な作用を
更に低下させる)改良が進められている。例えば、特開
2001−052317号公報には、積層フェリ型ピン
ド磁性層を構成する2つの強磁性層のうち、フリー磁性
層側の強磁性層を適切な材料及び膜厚の3層構造とする
ことで、バッファー効果により粒成長が抑制され、ピン
ド磁性層のフリー磁性層側上面を平滑化する方法が開示
されている。これにより、ピンド磁性層とフリー磁性層
との間に働くラフネス起因の直接的な強磁性結合(一般
にネールカップリングといわれる)を低減することがで
きる。これらの積層フェリ型ピンド磁性層においては、
上記の効果に加え、ピンド磁性層を磁気的によりハード
にする効果もあることが知られている。つまり、積層フ
ェリ型ピンド磁性層を持つ磁気抵抗効果素子において
は、外部磁場に対してピンド磁性層がより反転しにくく
なるため、その磁化方向を固定する必要があるピンド磁
性層としては、更に好適である。ジャーナル・オブ・ア
プライド・フィジクス第85巻5276頁には、この効
果を利用した保磁力差型強磁性トンネル接合の報告があ
る。
【0012】次に、積層フェリ型フリー磁性層を持つ磁
気抵抗効果素子について述べる。その基本構造は米国特
許第5408377号に開示されている。フリー磁性層
に積層フェリ型磁性薄膜を使用することによる効果は、
フリー磁性層の実効的な磁気的膜厚を小さくすること
で、これと比例関係にあるフリー磁性層自身のつくる反
磁場の大きさを低減できることにある。微細加工された
フリー磁性層の反転磁界は、反磁場の影響により素子サ
イズに反比例して大きくなるが、積層フェリ型フリー磁
性層を使用した磁気抵抗効果素子ではこれを低減するこ
とが可能となる。これにより、磁気ヘッドにおいては、
微細素子の磁場感度を向上させることが可能となり、ま
た固体磁気メモリにおいては、微細素子のスイッチング
磁界を低減でき、省電力化が可能となる。
【0013】而して、再生用磁気ヘッドの高記録密度化
に対する要求と、固体磁気メモリの高集積化に対する要
求には、素子サイズの微細化が必須であり、上述の微細
化によるフリー磁性層反転磁界の増大を抑制することは
将来的に極めて重要になると予想されるが、ピンド磁性
層の場合と異なり、フリー磁性層に対して積層フェリ型
磁性薄膜を適用した磁気抵抗効果素子については、その
改良報告がほとんどない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
積層フェリ型磁性薄膜においては、強磁性層材料として
Co又はCoFeを使用した場合には大きな反強磁性的
交換結合エネルギーが容易に得られるが、Ni又はNi
Feを使用して大きな反強磁性的交換結合エネルギーを
生じさせることは困難である。図2によると、強磁性層
材料としてCoを使用した場合には、非磁性中間層がR
u、Ir、Rhであれば、いずれも0.6nm程度の広
い非磁性中間層膜厚範囲において大きな反強磁性的交換
結合エネルギーが得られるのに対し、図1によると、N
iFeを使用した場合では、例えば10−3J/m
(1erg/cm)以上の大きな反強磁性的交換結
合エネルギーが得られる非磁性中間層膜厚範囲は、非磁
性中間層がRu、Irの場合には存在せず、またRhに
おいても0.1nm以下と極めて狭い。つまり、強磁性
層材料として、Ni又はNiFeを使用した場合は、C
o又はCoFeを使用した場合と比べ、極めて精密な非
磁性中間層膜厚の制御が必要となる。デバイスへの応用
に際しては、ロット間又はウェハ内の膜厚ばらつきを考
慮する必要があり、これは大きな問題となる。磁気抵抗
効果素子のフリー磁性層に適した積層フェリ型磁性薄膜
として、大きな反強磁性的交換結合エネルギー及びNi
又はNiFeと同等の優れた軟磁気特性を同時に実現
し、かつ精密な非磁性中間層膜厚制御の必要がない積層
フェリ型磁性薄膜が必要である。
【0015】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、大きな反強磁性的交換結合エネルギー及び
優れた軟磁気特性を同時に実現し、かつ精密な非磁性中
間層膜厚制御の必要がない積層フェリ型磁性薄膜を提供
することを目的とする。
【0016】また、本発明の他の目的は、フリー磁性層
の磁化反転が急峻かつ低保磁力であり、かつ作製が容易
な磁気抵抗効果素子及び強磁性トンネル接合素子を提供
することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明に係る積層フェリ
型磁性薄膜は、第1強磁性層、第2強磁性層、及びそれ
らの中間に配置されて双方に接する非磁性中間層よりな
り、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層が前記非磁性
中間層を介して反強磁性的に磁気結合する積層フェリ型
磁性薄膜である。
【0018】本願第1発明に係る積層フェリ型磁性薄膜
においては、前記第1強磁性層が少なくとも1層以上の
層よりなる第1主強磁性層と、前記第1主強磁性層と前
記非磁性中間層の中間に配置されて双方に接する第1界
面強磁性層とからなる。また、前記第2強磁性層が少な
くとも1層以上の層よりなる第2主強磁性層と、前記第
2主強磁性層と前記非磁性中間層の中間に配置されて双
方に接する第2界面強磁性層とからなる。前記第1界面
強磁性層及び前記第2界面強磁性層はCo又はCoを含
む合金により形成されている。前記第1主強磁性層のう
ちの少なくとも1層及び前記第2主強磁性層のうちの少
なくとも1層が軟磁性膜により形成され、前記第1主強
磁性層のうちの軟磁性膜よりなる層の合計膜厚が前記第
1強磁性層の膜厚の60%以上であり、前記第2主強磁
性層のうちの軟磁性膜よりなる層の合計膜厚が前記第2
強磁性層の膜厚の60%以上である。
【0019】本願第2発明に係る積層フェリ型磁性薄膜
においては、前記第1強磁性層が第1主強磁性層と、前
記第1主強磁性層と前記非磁性中間層の中間に配置され
て双方に接する第1界面強磁性層との2層からなる。前
記第2強磁性層は第2主強磁性層と、前記第2主強磁性
層と前記非磁性中間層の中間に配置されて双方に接する
第2界面強磁性層との2層からなる。前記第1界面強磁
性層及び前記第2界面強磁性層はCo又はCoを含む合
金により形成されている。前記第1主強磁性層及び前記
第2主強磁性層は軟磁性膜により形成され、前記第1主
強磁性層の膜厚が前記第1強磁性層の膜厚の60%以上
であり、前記第2主強磁性層の膜厚が前記第2強磁性層
の膜厚の60%以上である。
【0020】これらの積層フェリ型磁性薄膜において、
例えば、前記非磁性中間層がRu、Rh、Ir及びCu
からなる群から選択された1種の金属、又はRu、R
h、Ir及びCuからなる群から選択された1種を主成
分とする合金により形成されている。
【0021】また、前記Coを含む合金が、例えば、C
o−Fe合金又はCoFe1−X(0.75≦X<
1)合金である。更に、前記軟磁性膜が、例えば、Ni
又はNiを含む合金である。この場合に、前記軟磁性膜
は、例えば、Ni−Fe合金又はNiFe
1−X(0.35≦X<1)合金である。
【0022】一方、本発明に係る磁気抵抗効果素子は、
外部磁場に対してその磁化方向を自由にできるフリー磁
性層と、外部磁場に対してその磁化方向を固定する機構
を備えたピンド磁性層と、前記フリー磁性層及び前記ピ
ンド磁性層の中間に配置されて双方に接する非磁性層と
を有し、外部磁場の印加により素子抵抗が変化する磁気
抵抗効果素子において、前記フリー磁性層は、前記積層
フェリ型磁性薄膜であることを特徴とする。
【0023】また、本発明に係る強磁性トンネル接合素
子は、外部磁場に対してその磁化方向を自由にできるフ
リー磁性層と、外部磁場に対してその磁化方向を固定す
る機構を備えたピンド磁性層と、前記フリー磁性層及び
前記ピンド磁性層の中間に配置されて双方に接する非磁
性絶縁層とを有し、外部磁場の印加により素子抵抗が変
化する強磁性トンネル接合素子において、前記フリー磁
性層は、前記請求項1乃至8のいずれか1項に記載の積
層フェリ型磁性薄膜であることを特徴とする。
【0024】本発明者は、磁気抵抗効果素子における積
層フェリ型フリー磁性層に適した磁化反転特性を持つ積
層フェリ型磁性薄膜についての種々の検討及び実験を通
し、磁気抵抗効果素子における積層フェリ型フリー磁性
層として好適な小さな反転保磁力を得るためには、積層
フェリ型フリー磁性層を構成する2つの強磁性層間の反
強磁性的交換結合エネルギーが大きいこと、及び強磁性
層全体がNi又はNiを含む合金(NiFeなど)と同
等に軟磁気特性に優れた材料であることを同時に実現す
る必要があることを究明した。
【0025】即ち、本発明者は、積層フェリ型磁性薄膜
における強磁性層の構成、材料及びその膜厚に着目し、
種々の実験を重ねた結果、非磁性中間層の材料、及び強
磁性層の構成、材料、膜厚を特許請求の範囲に記載のも
のとすることによって、大きな反強磁性的交換結合エネ
ルギー及び優れた軟磁気特性の双方を同時に実現する積
層フェリ型磁性薄膜を容易に(精密な非磁性中間層膜厚
制御を行うことなく)得ることができることを初めて見
いだし、本発明を完成させたものである。
【0026】本発明の積層フェリ型磁性薄膜は、Co/
Ru/Co系と同等の強固で非磁性中間層膜厚に対する
マージンの大きな強磁性層間の反強磁性的交換結合及び
Ni系磁性材料と同等の優れた軟磁気特性の双方を同時
に実現できる。
【0027】このため、本発明によって、磁気抵抗効果
素子のフリー磁性層に好適な磁気特性(急峻かつ保磁力
の小さな磁化反転)を持つ積層フェリ型磁性薄膜を、容
易に(精密な非磁性中間層膜厚制御なしに)得ることが
できる。
【0028】また、本発明の磁気抵抗効果素子及び強磁
性トンネル接合素子は、そのフリー磁性層に前記本発明
の積層フェリ型磁性薄膜を使用することを特徴とするた
め、好適な磁気特性(フリー磁性層の磁化反転が急峻か
つ低保磁力)を容易に得ることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適実施形態につ
いて、添付の図面を参照して具体的に説明する。
【0030】「第1実施形態」図3は本発明の第1実施
形態の積層フェリ型磁性薄膜の層構成を示す断面図であ
る。基板300上にバッファー層301が形成されてお
り、このバッファー層301上に、第1主強磁性層30
2、第1界面強磁性層303、非磁性中間層304、第
2界面強磁性層305、第2主強磁性層306及びキャ
ップ層307がこの順で積層されている。
【0031】非磁性中間層304を構成する材料は、R
u、Rh、Ir又はCuのうちのいずれかの非磁性遷移
金属であり、又はこれらの元素のうちのいずれかを主成
分とする合金である。
【0032】第1界面強磁性層303及び第2界面強磁
性層305の材料は、Co又はCoを含む合金である。
Coを含む合金としては、Co−Fe、Co−Cr、C
o−Cu、Co−Pt、Co−Mn等が好適であり、中
でもCo−Feは最も好適である。更に、その組成をC
Fe1−X(0.75≦X<1)とし、Co組成X
を75原子%以上とするとより好適となる。
【0033】第1界面強磁性層303及び第2界面強磁
性層305の膜厚は少なくとも0.1nm以上である。
【0034】第1主強磁性層302及び第2主強磁性層
306の材料は、Ni又はNi合金の軟磁性膜である。
Ni合金の軟磁性膜として、具体的には、Ni−Fe、
Ni−Fe−Mo、Ni−Fe−Nb、Ni−Fe−
B、Ni−Fe−Cr−Cu、Ni−Fe−Co、Ni
−Co等が挙げられる。そのなかでも、特に、Ni−F
eは軟磁性が優れており、最も好適である。更に、パー
マロイ(NiFe1− (0.35≦X<1))と
し、Ni組成Xを35原子%以上とすれば、保磁力を7
9A/m(1(Oe))以下にまで低減することが可能とな
る。この軟磁性膜は、第1及び第2界面強磁性層30
3,305を構成するCo又はCo合金よりも保磁力が
小さく、優れた軟磁性特性を有したものである。
【0035】本実施形態においては、第1主強磁性層3
02及び第2主強磁性層306は単層であり、全厚が軟
磁性膜である。従って、第1主強磁性層302の膜厚は
第1強磁性層308の膜厚の60%以上であり、第2主
強磁性層306の膜厚は第2強磁性層309の膜厚の6
0%以上である。但し、第1主強磁性層302及び第2
主強磁性層306の膜厚の上限値は、図3に示す構造に
おいては、夫々第1強磁性層308及び第2強磁性層3
09から第1界面強磁性層303及び第2界面強磁性層
305の厚さを減じたものである。
【0036】バッファー層301には、Ta、Zr、T
i等を使用する。但し、第1主強磁性層302と基板3
00の間の密着性を高める等の機能を有するものであれ
ば、他の材料を使用することができる。また、場合によ
っては、バッファー層301は形成しなくてもよい。
【0037】キャップ層307には、Ta、Zr、T
i、Al等を使用する。但し、第2主強磁性層306が
大気暴露により表面変質することを防止することができ
るものであれば、それ以外の材料を使用することができ
る。また、場合によっては、キャップ層307は形成し
なくてもよい。
【0038】第1主強磁性層302及び第1界面強磁性
層303は第1強磁性層308を構成し、第2主強磁性
層306及び第2界面強磁性層305は第2強磁性層3
09を構成する。第1強磁性層308と第2強磁性層3
09の磁気モーメントの方向は、非磁性中間層304を
介した反強磁性的交換結合作用により、互いに反平行と
なるように磁気カップリングされる。
【0039】次に、上述のごとく構成された磁気積層フ
ェリ型磁性薄膜の動作について説明する。本実施例の積
層フェリ型磁性薄膜を、例えば、磁気抵抗効果素子又は
強磁性トンネル素子のフリー磁性層として使用した場
合、非磁性中間層605を間に挟んでCo又はCo合金
からなる第1界面強磁性層604及び第2界面強磁性層
606が積層されているので、極めて優れたカップリン
グ特性が得られる。また、第1強磁性層308及び第2
強磁性層309はその膜厚の60%以上が軟磁性膜であ
るNi又はNi合金からなる第1主強磁性層302及び
第2主強磁性層306で形成されているので、強磁性層
全体として、従来のNiFe合金等の強磁性層を使用し
た場合と同等の軟磁気特性が得られる。
【0040】第1界面強磁性層303及び第2界面強磁
性層305がCo又はCo合金で形成されているので、
図2に示すように、非磁性中間層304の膜厚が広大な
範囲において、反強磁性的交換結合エネルギが高くな
り、10−3J/m(1erg/cm)以上の反強
磁性的交換結合エネルギが得られる非磁性中間層の厚さ
の選択範囲が広い。このため、非磁性中間層を形成する
際の厚さの精度は低くても足りる。なお、この強磁性層
がNiFe合金である場合は、図1に示すように、反強
磁性的交換結合エネルギが低く、非磁性中間層としてR
hを使用した場合においても、10−3J/m(1e
rg/cm)という結合エネルギが得られる厚さの範
囲は0.47乃至0.6nm程度であり、極めて狭い。
このため、この程度の結合エネルギを得るためにも、非
磁性中間層の厚さを前記範囲に高精度で形成する必要が
ある。よって、本実施形態の磁気積層フェリ型磁性薄膜
は、製造が容易であり、かつ容易に高性能の磁気積層フ
ェリ型磁性薄膜を製造することができる。また、本実施
形態においては、強磁性層が、夫々このCo又はCo合
金からなる界面強磁性層と、Co又はCo合金よりも保
磁力が小さく、軟磁気特性が優れた軟磁性膜であるNi
又はNi合金からなる主強磁性層302、306との2
層積層体であるので、軟磁気特性も優れており、フリー
磁性層としての磁気スピンのメモリ効果も優れている。
【0041】なお、上述の磁気積層フェリ型磁性薄膜
は、後述するように、ピンド磁性層と組み合わせて、磁
気抵抗効果素子又は強磁性トンネル素子のフリー磁性層
として使用することができる。また、この磁気積層フェ
リ型磁性薄膜は、後述するように、図7に示す材料及び
膜厚で形成した場合には、図8に示す特性を有する。こ
のため、例えば、この磁気積層フェリ型磁性薄膜は、そ
れ単独で、磁気シールドとして使用することができる。
【0042】「第2実施形態」次に、本発明の第2実施
形態について説明する。図4は本発明の第2実施形態に
係る積層フェリ型磁性薄膜の層構成を示す断面図であ
る。この積層フェリ型磁性薄膜は、基本的には図3に示
す積層フェリ型磁性薄膜と同様の構造を有するものであ
るが、第2実施形態の積層フェリ型磁性薄膜は、図3に
示す第1実施形態の積層フェリ型磁性薄膜に対し、前記
第1主強磁性層、前記第2主強磁性層のうちいずれか一
方、又は双方を2層以上の複数の層により構成した点が
異なる。但し、図4の図示例は、第1主強磁性層及び第
2主強磁性層の双方が2層の磁性層よりなるものであ
る。以下、図4を例として、本第2実施形態の積層フェ
リ型磁性薄膜について説明する。
【0043】図4に示すように、本実施形態の積層フェ
リ型磁性薄膜においては、基板600上にバッファー層
601が形成されており、更にこのバッファー層601
の上に、第1強磁性層602、第2強磁性層603、第
1界面強磁性層604、非磁性中間層605、第2界面
強磁性層606、第3強磁性層607、第4強磁性層6
08及びキャップ層609がこの順に積層されている。
【0044】非磁性中間層605は、Ru、Rh、I
r、又はCuのいずれかの非磁性遷移金属、又はこの非
磁性遷移金属を主成分とする合金である。
【0045】第1界面強磁性層604及び第2界面強磁
性層606の材料はCo又はCoを含む合金とする。C
oを含む合金としては、Co−Fe、Co−Cr、Co
−Cu、Co−Pt、Co−Mn等が好適であり、中で
もCo−Fe合金は最も好適である。更に、その組成を
CoFe1−X(0.75≦X<1)とし、Co組成
Xを75原子%以上とすると、より好適となる。
【0046】第1界面強磁性層604及び第2界面強磁
性層606の膜厚は少なくとも0.1nm以上とする。
【0047】第1強磁性層602及び第2強磁性層60
3のうちの少なくとも一方の材料はNi又はNiを含む
合金とする。また、第3強磁性層607及び第4強磁性
層608のうちの少なくとも一方の材料は、Ni又はN
iを含む合金とする。Ni、又はNiを含む合金として
は、Niを成分として含む軟磁性膜が好適である。Ni
を成分として含む軟磁性膜として、具体的にはNi−F
e、Ni−Fe−Mo、Ni−Fe−Nb、Ni−Fe
−B、Ni−Fe−Cr−Cu、Ni−Fe−Co、N
i−Co、Ni−Fe−Co等の合金が挙げられる。そ
の中でも、特にNi−Fe合金は軟磁性が優れており、
最も好適である。更に、パーマロイ(NiFe1−X
(0.35≦X<1))とし、Ni組成Xを35原子%
以上とすれば、保磁力を79A/m(1(Oe))以下にま
で低減することが可能となる。
【0048】第1強磁性層602及び第2強磁性層60
3のうちのNi又はNiを含む合金により形成された層
の合計膜厚は第1強磁性層612の膜厚の60%以上と
する。また、第3強磁性層607及び第4強磁性層60
8のうちのNi又はNiを含む合金により形成された層
の合計膜厚は第2強磁性層613の膜厚の60%以上と
する。
【0049】バッファー層601は、Ta、Zr、Ti
等により形成することができる。但し、第1強磁性層6
02と基板600の間の密着性を高めることができるも
のであれば、他の材料によりバッファー層601を形成
することができる。また、場合によってはバッファー層
601は形成しなくてもよい。
【0050】キャップ層609は、Ta、Zr、Ti、
Al等により形成することができる。但し、第4強磁性
層608が大気暴露により表面変質することを防止する
ことができれば、キャップ層609として、他の材料を
使用することも可能であり、場合によっては形成しなく
てもよい。
【0051】第1強磁性層602及び第2強磁性層60
3は、第1主強磁性層610を構成し、第3強磁性層6
07及び第4強磁性層608は、第2主強磁性層611
を構成する。また、第1主強磁性層610及び第1界面
強磁性層604は第1強磁性層612を構成し、第2主
強磁性層611及び第2界面強磁性層606は第2強磁
性層613を構成する。第1強磁性層612と第2強磁
性層613の磁気モーメントの方向は、非磁性中間層6
05を介した反強磁性的交換結合作用により、互いに反
平行となるように磁気カップリングされる。
【0052】以上、前記第1主強磁性層及び前記第2主
強磁性層の双方が2層の磁性層よりなる場合の第2実施
形態の一例について説明したが、前記第1主強磁性層、
前記第2主強磁性層のうちの一方が第1実施形態と同様
の1層構造でもかまわない。また、前記第1主強磁性層
のうちの少なくとも1層以上をNi又はNiを含む合金
により構成し、前記第1主強磁性層のうちのNi又はN
iを含む合金によりなる層の合計膜厚を前記第1強磁性
層の膜厚の60%以上とすれば、前記第1主強磁性層が
3層以上の磁性層よりなる構造でも良い。同様に、前記
第2主強磁性層のうちの少なくとも1層以上をNi又は
Niを含む合金により構成し、前記第2主強磁性層のう
ちのNi又はNiを含む合金によりなる層の合計膜厚を
前記第2強磁性層の膜厚の60%以上とすれば、前記第
2主強磁性層が3層以上の磁性層よりなる構造でも良
い。また、前記第1主強磁性層又は前記第2主強磁性層
の層数の上限に特に制限はなく、また材料の成分濃度に
層厚方向の傾斜をつけた層が含まれていても良い。
【0053】なお、前記第1主強磁性層又は前記第2主
強磁性層のうち、Ni又はNiを含む合金によりなる層
以外の層の材料は、磁性材料であれば特に制限は無い。
しかし、その層についても、何らかの他の効果を持つ材
料であることが望ましい。
【0054】「第3実施形態」次に、本発明の第3実施
形態に係る磁気抵抗効果素子について、その構造及び製
造方法を説明する。本実施形態の磁気抵抗効果素子は、
第1実施形態の積層フェリ型磁性薄膜をそのフリー磁性
層に使用した磁気抵抗効果素子である。
【0055】本発明の第3実施形態に係る磁気抵抗効果
素子は、図5に示すように、基板400上に第1バッフ
ァー層401が形成され、この第1バッファー層401
上に下地電極層402が形成され、更にこの上に、第2
バッファー層403、ピンド磁性層404、非磁性層4
05、第1主強磁性層406、第1界面強磁性層40
7、非磁性中間層408、第2界面強磁性層409、第
2主強磁性層410及びキャップ層411が順次形成さ
れている。
【0056】非磁性中間層408の材料はRu、Rh、
Ir、Cuのうちのいずれか、又はいずれかを主成分と
する非磁性遷移金属とする。
【0057】第1界面強磁性層407及び第2界面強磁
性層409の材料は、Co又はCo合金とする。Co合
金としては、Co−Fe 、Co−Cr 、Co−Cu
、Co−Pt 、Co−Mn等が好適であり、中でもC
o−Feは最も好適である。更に、その組成をCo
1−X(0.75≦X<1)とし、Co組成Xを75
原子%以上とすると、より好適となる。
【0058】第1界面強磁性層407及び第2界面強磁
性層409の膜厚は少なくとも0.1nm以上とする。
【0059】第1主強磁性層406及び第2主強磁性層
410は、Ni又はNi合金により形成することができ
る。Ni合金としては、Niを成分として含む軟磁性膜
が好適である。Niを成分として含む軟磁性膜として、
具体的にはNi−Fe、Ni−Fe−Mo、Ni−Fe
−Nb、Ni−Fe−B、Ni−Fe−Cr−Cu、N
i−Fe−Co、Ni−Co、Ni−Fe−Co等が挙
げられる。その中でも、特にNi−Feは軟磁性が優れ
ており、最も好適である。更に、パーマロイ(Ni
1−X(0.35≦X<1))とし、Ni組成Xを3
5原子%以上とすれば、保磁力を79A/m(1(Oe))
以下にまで低減することが可能となる。
【0060】第1主強磁性層406の膜厚は第1フリー
磁性層412の膜厚の60%以上とし、第2主強磁性層
410の膜厚は第2フリー磁性層413の膜厚の60%
以上とする。
【0061】第1バッファー層401及び第2バッファ
ー層403は、Ta、Zr、Ti等により形成すること
ができる。但し、下地電極層402と基板400との
間、又はピンド磁性層404と下地電極層402との間
の密着性を高める等の機能を持つ材料であれば良く、場
合によってこれらのバッファー層401,403は形成
しなくてもよい。
【0062】キャップ層411にはTa、Zr、Ti、
Alなどを使用する。但し、第2主強磁性層410が大
気暴露により表面変質することを防止する等の機能を持
つ少なくとも1層以上の層であれば、さらに他の材料を
使用することも可能であり、場合によっては形成しなく
てもよい。
【0063】下地電極層402はAlにより形成するこ
とができる。但し、比抵抗が小さいAg、Cu、Au、
Pt等の他の金属材料により形成してもよく、場合によ
っては下地電極層402はその他の材料により形成して
も良く、又は形成しなくてもよい。
【0064】ピンド磁性層404の材料はCo又はCo
Feなどが好適である。但し、外部磁場に対して反転し
にくい磁気特性を備えていれば、その他の材料を使用す
ることもできる。また、ピンド磁性層404を複数の層
により構成することも可能であり、特に積層フェリ型の
3層構造、又は強磁性層/反強磁性層の2層構造は、そ
の磁化方向をより積極的に固定できるため、より好適で
ある。
【0065】非磁性層405には、Cu、Au、Agな
どの非磁性良導体、又はAl酸化物、Ta酸化物、又は
Al窒化物などの非磁性絶縁体を使用する。Cu、A
u、Ag等の非磁性良導体を使用したタイプはスピンバ
ルブ型GMR素子、またAl酸化物、Ta酸化物又はA
l窒化物等の非磁性絶縁体を使用したタイプは強磁性ト
ンネル接合素子と呼ばれる。強磁性トンネル接合素子の
場合、Alなどの非磁性体金属層を成膜した後に、その
表面を酸素又は窒素等を含むガスにより酸化又は窒化し
て絶縁体の非磁性層405を形成する方法を使用するこ
ともできる。
【0066】次に、上述のごとく構成された磁気抵抗効
果素子の動作について説明する。第1主強磁性層406
及び第1界面強磁性層407は第1フリー磁性層412
を構成し、第2主強磁性層410及び第2界面強磁性層
408は第2フリー磁性層413を構成する。第1フリ
ー磁性層412と第2フリー磁性層413の磁気モーメ
ントの方向は、非磁性中間層408を介した反強磁性的
交換結合作用により、互いに反平行となるように磁気カ
ップリングされ、フリー磁性層として機能する。第1フ
リー磁性層412、非磁性中間層408、第2フリー磁
性層413がフリー磁性層414を構成する。また、ピ
ンド磁性層404、非磁性層405、及びフリー磁性層
414が磁気抵抗効果部415を構成し、外部磁場の変
化により抵抗変化して、磁気抵抗効果を発現する。
【0067】近時、薄膜デバイスの高集積化の要求によ
り、磁気抵抗効果素子においても高集積化及び小型化が
要求されている。この場合に、平面形状を小さくするた
めには、各層の膜厚も薄くする必要がある。しかし、膜
厚を薄くすることは、上下に隣接する層との間での原子
レベルのミキシングの問題があり、薄層化には限界があ
る。しかし、本実施形態の磁気抵抗効果素子は、フリー
磁性層414が、非磁性中間層408を間に挟んで、第
1フリー磁性層412と第2フリー磁性層413とが積
層されて構造を有しているので、第1フリー磁性層41
2と第2フリー磁性層413に相互に反対方向を向く磁
気モーメントが形成されて磁場が打ち消しあい、実際の
膜厚はあつくても、磁気的な膜厚は極めて薄い。即ち、
実際の膜厚は薄くしなくても、磁気的には薄いフリー磁
性層として振る舞う。このため、本実施形態の磁気抵抗
効果素子は、高集積化に有利である。
【0068】次に、本第3実施形態の磁気抵抗効果素子
の製造方法について説明する。先ず、基板400上に第
1バッファー層401、下地電極層402、バッファー
層2403を成膜する。下地電極層402上部の凹凸が
激しい場合には、ここで膜表面にイオンビーム照射等の
表面平坦化処理を行うと良い。続いて、ピンド磁性層4
04及び非磁性層405を成膜する。更に、その上に、
第1主強磁性層406、第1界面強磁性層407、非磁
性中間層408、第2界面強磁性層409、第2主強磁
性層410及びキャップ層411を成膜し、本第3実施
形態の磁気抵抗効果素子の多層薄膜構造が完成する。
【0069】なお、本発明の効果は、ピンド磁性層40
4とフリー磁性層414の絶対的な位置関係(成膜順
序)とは相関がなく、磁気抵抗効果部415に関して
は、全体的に上下逆転した構造(全体的に逆転させた成
膜順序)としてもかまわない。
【0070】得られた多層薄膜に対して以下のように加
工プロセスを行い、本第3実施形態の磁気抵抗効果素子
を完成させる。
【0071】先ず、光学露光又は電子線露光技術を使用
し、得られた多層薄膜上に、下地電極形状を規定するレ
ジストを作製し、イオンミリング又はケミカルエッチン
グ技術を使用して、得られた多層薄膜の全層を目的の下
地電極形状へと加工する。なお、磁気抵抗効果素子がス
ピンバルブ型GMR素子の場合には、下地電極層402
は特に必要なく、この下地電極形状加工工程も特に必要
がない。
【0072】続いて、光学露光又は電子線露光技術を使
用し、素子形状及び素子サイズを規定するレジストを作
製し、イオンミリング又はケミカルエッチング技術を使
用して、下地電極形状へ加工された多層膜の磁気抵抗効
果部415及びキャップ層411を目的の素子形状及び
素子サイズへと加工する。
【0073】その後、電極間絶縁層による被覆を行った
後、上部電極を形成し、本発明の第3実施形態の磁気抵
抗効果素子を完成させる。
【0074】「第4実施形態」次に、本発明の第4実施
形態の磁気抵抗効果素子について、その構造及び作製方
法を図面を使用して説明する。本実施形態の磁気抵抗効
果素子は、積層フェリ型磁性薄膜をそのフリー磁性層に
使用した磁気抵抗効果素子である。本第4実施形態の磁
気抵抗効果素子は、基本的には第3実施形態の磁気抵抗
効果素子と同様のものであるが、第3実施形態の磁気抵
抗効果素子に対し、前記第1主強磁性層及び前記第2主
強磁性層のうちいずれか一方、又は双方を2層以上の複
数の層により構成した点が異なる。
【0075】図6は本発明の第4実施形態の一例とし
て、第1主強磁性層及び第2主強磁性層の双方が2層の
磁性層により構成されたものを示す断面図である。図6
に示すように、本実施形態の磁気抵抗効果素子において
は、基板800上に、第1バッファー層801、下地電
極層802、第2バッファー層803、ピンド磁性層8
04、非磁性層805、第1強磁性層806、第2強磁
性層807、第1界面強磁性層808、非磁性中間層8
09、第2界面強磁性層810、第3強磁性層811、
第4強磁性層812、及びキャップ層813が順次形成
されている。
【0076】非磁性中間層809は、Ru、Rh、Ir
及びCuのいずれかの非磁性遷移金属により形成する
か、又はこの非磁性遷移金属を主成分とする合金により
形成する。
【0077】第1界面強磁性層808及び第2界面強磁
性層810の材料は、Co又はCoを含む合金とする。
Coを含む合金としては、Co−Fe 、Co−Cr 、
Co−Cu 、Co−Pt 、Co−Mn等が好適であ
り、中でもCo−Feは最も好適である。更に、その組
成をCoFe1−X(0.75≦X<1)とし、Co
組成Xを75原子%以上とすると、より好適となる。
【0078】第1界面強磁性層808及び第2界面強磁
性層810の膜厚は少なくとも0.1nm以上とする。
【0079】第1強磁性層806及び第2強磁性層80
7のうちの少なくとも一方の材料は、Ni又はNiを含
む合金とする。また、第3強磁性層811及び第4強磁
性層812のうちの少なくとも一方の材料は、Ni又は
Ni合金とする。前記、Ni又はNi合金としては、N
iを成分として含む軟磁性膜が好適である。Niを成分
として含む軟磁性膜として、具体的には、Ni−Fe、
Ni−Fe−Mo、Ni−Fe−Nb、Ni−Fe−
B、Ni−Fe−Cr−Cu、Ni−Fe−Co、Ni
−Co、Ni−Fe−Co等が挙げられる。そのなかで
も、特にNi−Feは軟磁性が優れており、最も好適で
ある。更に、パーマロイ(NiFe1− (0.35
≦X<1))とし、Ni組成Xを35原子%以上とすれ
ば、保磁力を79A/m(1(Oe))以下にまで低減する
ことが可能となる。
【0080】第1強磁性層806及び第2強磁性層80
7のうちのNi又はNiを含む合金よりなる層の合計膜
厚は第1フリー磁性層816の膜厚の60%以上とす
る。また、第3強磁性層811及び第4強磁性層812
のうちのNi又はNiを含む合金よりなる層の合計膜厚
は第2フリー磁性層817の膜厚の60%以上とする。
【0081】第1バッファー層801及び第2バッファ
ー層803は、Ta、Zr、Ti等により形成すること
ができる。但し、下地電極層802と基板800又はピ
ンド磁性層804と下地電極層802との間の密着性を
高める等の機能を持つものであれば、他の材料でも良
く、場合によっては形成しなくてもよい。
【0082】キャップ層813は、Ta、Zr、Ti、
Al等により形成することができる。但し、第4強磁性
層812が大気暴露により表面変質することを防止する
などの機能を持つものであれば、他の材料を使用するこ
とも可能であり、場合によっては形成しなくてもよい。
【0083】下地電極層802はAlにより形成するこ
とができる。但し、比抵抗が小さいAg、Cu、Au、
Pt等の他の金属材料も好適であり、また場合によって
はその他の材料でも良く、又は形成しなくてもよい。
【0084】ピンド磁性層804の材料は、Co又はC
oFe等が好適である。但し、外部磁場に対して反転し
にくい磁気特性を備えていれば、その他の材料を使用す
ることもできる。また、ピンド磁性層804を複数の層
により構成することも可能であり、特に積層フェリ型の
3層構造、又は強磁性層/反強磁性層の2層構造は、そ
の磁化方向をより積極的に固定できるため、より好適で
ある。
【0085】非磁性層805は、Cu、Au、Ag等の
非磁性良導体、Al酸化物若しくはTa酸化物、又はA
l窒化物などの非磁性絶縁体により形成することができ
る。Cu、Au、Ag等の非磁性良導体を使用したタイ
プは、スピンバルブ型GMR素子といわれ、Al酸化
物、Ta酸化物又はAl窒化物等の非磁性絶縁体を使用
したタイプは、強磁性トンネル接合素子といわれる。強
磁性トンネル接合素子の場合、Al等の非磁性体金属層
を成膜した後に、その表面を酸素又は窒素等を含むガス
により酸化又は窒化することにより、絶縁性の非磁性層
805を形成することができる。
【0086】第1強磁性層806及び第2強磁性層80
7は第1主強磁性層814を構成し、第3強磁性層81
1及び第4強磁性層812は第2主強磁性層815を構
成する。また、第1主強磁性層814及び第1界面強磁
性層808は第1フリー磁性層816を構成し、第2主
強磁性層815及び第2界面強磁性層810は第2フリ
ー磁性層817を構成する。第1フリー磁性層816と
第2フリー磁性層817の磁気モーメントの方向は、非
磁性中間層809を介した反強磁性的交換結合作用によ
り、互いに反平行となるように磁気カップリングされ、
フリー磁性層として機能する。第1フリー磁性層81
6、非磁性中間層809、及び第2フリー磁性層817
がフリー磁性層818を構成する。ピンド磁性層80
4、非磁性層805、及びフリー磁性層818が磁気抵
抗効果部819を構成し、外部磁場の変化により抵抗変
化して、磁気抵抗効果を発現する。
【0087】次に、本第4実施形態の磁気抵抗効果素子
の作製方法について説明する。先ず、基板800上に、
第1バッファー層801、下地電極層802、第2バッ
ファー層803を成膜する。下地電極層802上部の凹
凸が激しい場合には、ここで膜表面にイオンビーム照射
等の表面平坦化処理を行うと良い。続いて、ピンド磁性
層804、非磁性層805を成膜する。更にその上に、
第1強磁性層806、第2強磁性層807、第1界面強
磁性層808、非磁性中間層809、第2界面強磁性層
810、第3強磁性層811、第4強磁性層812及び
キャップ層813を成膜する。これにより、本第4実施
形態の磁気抵抗効果素子の多層薄膜構造が得られる。
【0088】なお、本発明の効果は、ピンド磁性層80
4とフリー磁性層818の絶対的な位置関係(成膜順
序)とは相関がなく、磁気抵抗効果部819に関して
は、全体的に上下逆転した構造(全体的に逆転させた成
膜順序)としてもかまわない。
【0089】得られた多層薄膜に対して、以下に示す加
工方法により加工すると、本発明の第4実施形態の磁気
抵抗効果素子が得られる。
【0090】先ず、光学露光又は電子線露光技術によ
り、得られた多層薄膜上に、下地電極形状を規定するレ
ジストを作製し、イオンミリング又はケミカルエッチン
グ技術を使用して、得られた多層薄膜の全層を目的の下
地電極形状へと加工する。なお、磁気抵抗効果素子がス
ピンバルブ型GMR素子の場合には下地電極層802は
特には必要なく、この下地電極形状加工工程も特には必
要がない。
【0091】続いて、光学露光又は電子線露光技術を用
い、素子形状及び素子サイズを規定するレジストを作製
し、イオンミリング又はケミカルエッチング技術を使用
して、下地電極形状へ加工された多層膜の磁気抵抗効果
部819及びキャップ層813を目的の素子形状及び素
子サイズへと加工する。
【0092】その後、電極間絶縁層による被覆を行った
後、上部電極を形成することにより、第4実施形態の磁
気抵抗効果素子が完成する。
【0093】以上は、前記第1主強磁性層及び前記第2
主強磁性層の双方が2層の磁性層よりなる場合の例であ
るが、前記第1主強磁性層、前記第2主強磁性層のうち
の一方が第3実施形態と同様の1層構造でもかまわな
い。また、前記第1主強磁性層のうちの少なくとも1層
以上をNi又はNi合金により構成し、前記第1主強磁
性層のうちのNi又はNi合金よりなる層の合計膜厚を
前記第1強磁性層の膜厚の60%以上とすれば、前記第
1主強磁性層が3層以上の磁性層よりなる構造でも良
い。同様に、前記第2主強磁性層のうちの少なくとも1
層以上をNi又はNi合金により構成し、前記第2主強
磁性層のうちのNi又はNi合金よりなる層の合計膜厚
を前記第2強磁性層の膜厚の60%以上とすれば、前記
第2主強磁性層が3層以上の磁性層よりなる構造でも良
い。
【0094】なお、前記第1主強磁性層又は前記第2主
強磁性層のうちのNi又はNi合金によりなる層以外の
層の材料は、磁性材料であれば特に制限は無いが、何ら
かの他の効果を持つ層であればさらに良い。
【0095】
【実施例】以下、本発明の実施例に係る積層フェリ型磁
性薄膜を作製し、その磁気特性を評価した結果について
説明する。
【0096】「第1実施例」第1実施例の積層フェリ型
磁性薄膜は、図7に示すように、熱酸化シリコン基板5
00/第1Ta層501/第1NiFe層502/第1
CoFe層503/Ru層504/第2CoFe層50
5/第2NiFe層506/第2Ta層507の積層構
造を有する。NiFe層及びCoFe層の組成は、夫々
Ni0.8Fe0.2(Ni組成80原子%)、Co
0.9Fe0.1(Co組成90原子%)である。各層
の膜厚は、図中に示したとおり、第1Ta層501が
1.5nm、第1NiFe層502が6nm、第1Co
Fe層503が0.5nm、Ru層504が1nm、第
2CoFe層505が0.5nm、第2NiFe層50
6が6nm、第2Ta層507が3nmである。第1実
施例は、第1実施形態の基板300として、熱酸化シリ
コン基板500を、バッファー層301及びキャップ層
307として夫々Ta層501,507を、第1主強磁
性層302及び第2主強磁性層306として夫々NiF
e層502,506を、第1界面強磁性層303及び第
2界面強磁性層305として夫々CoFe層503,5
05を、非磁性中間層304としてRu層504を夫々
使用したものである。
【0097】第1NiFe層502及び第1CoFe層
503は第1強磁性層508を構成し、第2NiFe層
506及び第2CoFe層505は第2強磁性層509
を構成する。第1強磁性層508と第2強磁性層509
の磁気モーメントの方向は、Ru層504を介した反強
磁性的交換結合作用により、互いに反平行となるように
磁気カップリングされる。実施例1の積層フェリ型磁性
薄膜は、第1強磁性層508と第2強磁性層509の各
膜厚(磁気モーメント)を同一としたタイプであり、第
1強磁性層508と第2強磁性層509との間に働く反
強磁性的交換結合の大きさを評価するのに最も適した構
造である。
【0098】次に、この製造方法について説明する。先
ず、熱酸化シリコン基板500上に、1.5nm厚の第
1Ta層501を成膜した。続いて、6nm厚の第1N
iFe層502、0.5nm厚の第1CoFe層50
3、1nm厚のRu層504、0.5nm厚の第2Co
Fe層505、6nm厚の第2NiFe層506を成膜
した。更に、その上に3nm厚の第2Ta層507を成
膜し、本発明の実施例1の積層フェリ型磁性薄膜を完成
させた。
【0099】使用した薄膜形成装置は、直径2インチの
スパッタターゲットを8基備えるDCマグネトロンスパ
ッタ装置である。成膜室の真空度は5×10−9Tor
r、スパッタ時のアルゴンガス圧は3mTorrとし
た。
【0100】このようにして作製した積層フェリ型磁性
薄膜を、1cm×1cmの大きさに切り出し、振動試料
型磁力計によりその磁気特性を評価した。
【0101】図8は、第1実施例の積層フェリ型磁性薄
膜の磁化曲線である。同図は外部磁場(横軸)の変化に
対する単位膜面積あたりの磁気モーメント(縦軸)の変
化を示している。外部磁場は−395000A/m(−
5000(Oe))から395000A/m(5000(O
e))までを往復走査させたものである。
【0102】この図8から、本発明の積層フェリ型磁性
薄膜においては、低磁場における磁気的膜厚の低減効果
を確認することができる。図8においては、外部磁場が
ゼロのとき、単位膜面積あたりの磁気モーメントは0
T・nmである。これは、第1強磁性層508と第2強
磁性層509との間に働く反強磁性的交換結合により、
両者の磁気モーメントの方向が互いに反平行となり、本
実施例においては、第1強磁性層508と第2強磁性層
509との磁気モーメントが等しいために、その大きさ
が完全に相殺された状態を示している。
【0103】また、外部磁場が244900A/m(3
100(Oe))(=飽和磁場(H))以上においては、
単位膜面積あたりの磁気モーメントは一定値となる。こ
れは、第1強磁性層508と第2強磁性層509との間
に働く反強磁性的交換結合に打ち勝つ大きな外部磁場が
印加され、第1強磁性層508及び第2強磁性層509
の向きが完全に同一方向(磁場印加方向)に揃えられて
いる状態(磁気飽和状態)である。磁気飽和状態におけ
る単位膜面積あたりの磁気モーメントが11.4 T・
nmであることから、第1強磁性層508及び第2強磁
性層509の各単位膜面積あたりの飽和磁気モーメント
(M)は5.7 T・nmであることがわかる。
【0104】前述の各強磁性層膜厚が等しい場合の反強
磁性的交換結合エネルギー(J)と飽和磁場(H)と
の関係式(J=H×M×t/2)において、M×
tは各強磁性層の単位膜面積あたりの飽和磁気モーメン
トを表す。従って、本実施例の積層フェリ型磁性薄膜の
反強磁性的交換結合エネルギー(J)は、飽和磁場(H
)、及び前記単位膜面積あたりの飽和磁気モーメント
(M)を使用して、J=H×M/2 により算出でき
る。
【0105】この関係式より求めた第1実施例の積層フ
ェリ型磁性薄膜における強磁性層間の反強磁性的交換結
合エネルギーは7×10−4J/m(0.7erg/
cm )であった。
【0106】なお、第1界面強磁性層及び第2界面強磁
性層の材料としてCo、Co−Pt、及びCo−Crを
使用した積層フェリ型磁性薄膜においても、同様の効果
が得られた。但し、その反強磁性的交換結合エネルギー
は、Ru膜厚が1nmのとき、5×10−4〜6×10
−4J/m(0.5〜0.6erg/cm)であ
り、CoFeを使用した場合に比べるとやや小さかっ
た。
【0107】また、第1界面強磁性層及び第2界面強磁
性層の材料としてCoFeを使用した積層フェリ型磁性
薄膜においては、CoFeの組成によらず、Ru膜厚1
nmで4×10−4〜7×10−4J/m(0.4〜
0.7erg/cm)の大きな反強磁性的交換結合エ
ネルギーが得られたが、Co組成が75原子%以上のと
き、特に大きな反強磁性的交換結合エネルギー(6×1
−4J/m(0.6erg/cm)以上)が得ら
れた。
【0108】「第1比較例」第1実施例に対する第1比
較例として、CoFeを使用した従来の積層フェリ型磁
性薄膜を作製し、その磁気特性を評価した。
【0109】第1比較例の積層フェリ型磁性薄膜は、図
9に示すように、熱酸化シリコン基板700/第1Ta
層701/第1CoFe層702/Ru層703/第2
CoFe層704/第2Ta層705の積層構造を有す
る。使用したNiFe層及びCoFe層の組成は夫々N
0.8Fe0.2(Ni組成80原子%)及びCo
0.9Fe0.1(Co組成90原子%)である。各層
の膜厚は、図中にも示したとおり、第1Ta層701が
1.5nm、第1CoFe層702が4nm、Ru層7
03が1nm、第2CoFe層704が4nm、第2T
a層705が3nmである。基板として熱酸化シリコン
基板を、バッファー層及びキャップ層としてTaを、強
磁性層としてCoFeを、非磁性中間層としてRuを使
用したタイプの従来の積層フェリ型磁性薄膜である。
【0110】第1CoFe層702と第2CoFe層7
04の磁気モーメントの方向は、Ru層703を介した
反強磁性的交換結合作用により、互いに反平行となるよ
うに磁気カップリングされる。第1比較例の積層フェリ
型磁性薄膜は、第1CoFe層702と第2CoFe層
704の膜厚(磁気モーメント)を同一としたタイプで
あり、第1CoFe層702と第2CoFe層704の
間に働く反強磁性的交換結合の大きさを評価するのに最
も適した構造である。
【0111】次に、この積層フェリ型磁性薄膜の成膜方
法について説明する。先ず、熱酸化シリコン基板700
上に、1.5nm厚の第1Ta層701を成膜した。続
いて、4nm厚の第1CoFe層702、1nm厚のR
u層703、4nm厚の第2CoFe層704を成膜し
た。更に、その上に3nm厚の第2Ta層705を成膜
し、比較例1の積層フェリ型磁性薄膜を完成させた。
【0112】使用した薄膜形成装置は、第1実施例に使
用したものと同一の直径2インチのスパッタターゲット
を8基備えるDCマグネトロンスパッタ装置である。成
膜室の真空度は5×10−9Torr、スパッタ時のア
ルゴンガス圧は3mTorrとした。
【0113】このように作製した第1比較例の積層フェ
リ型磁性薄膜を、1cm×1cmの大きさに切り出し、
振動試料型磁力計によりその磁気特性を評価した。
【0114】図10は、第1比較例の積層フェリ型磁性
薄膜の磁化曲線である。同図は外部磁場(横軸)の変化
に対する単位膜面積あたりの磁気モーメント(縦軸)の
変化を示している。外部磁場は−395000A/m
(−5000(Oe))から395000A/m(5000
(Oe))までを往復走査させた。
【0115】同図から、第1実施例の場合と同様に、第
1比較例の積層フェリ型磁性薄膜の低磁場における磁気
的膜厚の低減効果を確認することができる。図10にお
いては、外部磁場がゼロのとき、単位膜面積あたりの磁
気モーメントは0 T・nmである。これは、第1Co
Fe層702と第2CoFe層704との間に働く反強
磁性的交換結合により、両者の磁気モーメントの方向が
互いに反平行となり、本第1比較例においては、第1C
oFe層702と第2CoFe層704の磁気モーメン
トが等しいために、その大きさが完全に相殺された状態
を示している。
【0116】また、外部磁場が244900A/m(3
100(Oe))(=飽和磁場(H))以上においては、
単位膜面積あたりの磁気モーメントは一定値となる。こ
れは、第1CoFe層702と第2CoFe層704の
間に働く反強磁性的交換結合に打ち勝つ大きな外部磁場
が印加され、第1CoFe層702及び第2CoFe層
704の向きが完全に同一方向(磁場印加方向)に揃え
られている状態(磁気飽和状態)である。磁気飽和状態
における単位膜面積あたりの磁気モーメントが11.4
T・nmであることから、第1CoFe層702及び第
2CoFe層704の各単位膜面積あたりの飽和磁気モ
ーメント(M)は5.7T・nmであることがわかる。
【0117】第1実施例の場合と同様に、第1比較例の
積層フェリ型磁性薄膜の反強磁性的交換結合エネルギー
(J)は、飽和磁場(H)及び飽和時の各強磁性層の
単位膜面積あたりの磁気モーメント(M)を使用して、
J=H×M/2により算出できる。この関係式より求
めた第1比較例の積層フェリ型磁性薄膜における強磁性
層間の反強磁性的交換結合エネルギーは7×10−4
/m(0.7erg/cm)であった。
【0118】第1実施例の積層フェリ型磁性薄膜の特性
を、第1比較例のそれと比較する。両者の反強磁性的交
換結合エネルギーは全く同一(7×10−4J/m
(0.7erg/cm))である。第1実施例の積
層フェリ型磁性薄膜の反強磁性的交換結合強度は、Co
Fe/Ru/CoFe系と同等に強力なものであるとい
える。図1によると、NiFe/Ru/NiFe系の反
強磁性的交換結合エネルギーは、Ru膜厚が1nmのと
き、約5×10−5J/m(0.05erg/c
)であり、第1実施例の結合強度(7×10−4
/m(0.7erg/cm))は生じ得ない。第1
実施例の積層フェリ型磁性薄膜においては、Ru界面に
おける0.5nm厚のCoFe(第1界面強磁性層及び
第2界面強磁性層)がその磁気結合を担っていると言え
る。また、第1実施例及び第1比較例の積層フェリ型磁
性薄膜においては、Ru膜厚が1nmと厚めの膜厚にお
いても充分な磁気結合が得られている。これは、両者と
もに、精密なRu膜厚の制御を必要としない(Ru膜厚
に対するマージンの大きい)Co系磁気結合の長所を備
えていることを示している。
【0119】なお、第1実施例では非磁性中間層の材料
としてRuを使用したが、Ruと同等の大きな反強磁性
的交換結合エネルギーを与えるRh、Ir、又はCuを
非磁性中間層材料として使用しても、同様の効果が得ら
れることはいうまでもない。
【0120】「第2実施例」第1実施例と同様な構造を
持つ積層フェリ型磁性薄膜において、界面強磁性層(C
oFe)の膜厚を変化させた複数のサンプルを作製し、
第1及び第2界面強磁性層にCoFeを使用した場合の
その膜厚と本発明の効果との関係を調べた。使用したN
iFe及びCoFeの組成は夫々Ni0.8Fe0.2
(Ni組成80原子%)、Co0.9Fe0.1(Co
組成90原子%)である。
【0121】第2実施例の積層フェリ型磁性薄膜の構造
は、第1実施例と同じく、第1実施形態に記載の基板3
00として熱酸化シリコン基板を、バッファー層301
及びキャップ層307としてTaを、第1主強磁性層3
02及び第2主強磁性層306としてNiFeを、第1
界面強磁性層303及び第2界面強磁性層305として
CoFeを、非磁性中間層304としてRuを使用した
ものである。但し、第1主強磁性層302及び第2主強
磁性層306の膜厚、及び第1界面強磁性層303及び
第2界面強磁性層305の膜厚が第1実施例のそれとは
異なる。
【0122】本実施例の作製サンプルの膜構造は下記表
1のとおりである。括弧内の数字は各層の膜厚(nm)
を示す。
【0123】
【表1】
【0124】作製方法も実施例1とほぼ同様である。ま
ず、熱酸化シリコン基板上に1.5nm厚のTa層、目
的厚のNiFe層、目的厚のCoFe層を成膜し、続い
て1nm厚のRu層、目的厚のCoFe層、目的厚のN
iFe層を成膜した。さらにその上に3nm厚のTa層
を成膜し、本発明の実施例2の積層フェリ型磁性薄膜の
基本構造を完成させた。
【0125】使用した薄膜形成装置は、実施例1に使用
したものと同一の、直径2インチのスパッタターゲット
を8基備えるDCマグネトロンスパッタ装置である。成
膜室の真空度は5×10−9Torr、スパッタ時のア
ルゴンガス圧は3mTorrとした。
【0126】このようにして作製した第2実施例の積層
フェリ型磁性薄膜を、1cm×1cmの大きさに切り出
し、振動試料型磁力計によりその磁気特性を評価し、実
施例1の場合と同様にその飽和磁場(H)及び第1強
磁性層308及び第2強磁性層309の単位膜面積あた
りの飽和磁気モーメント(M×t)を求めた。更に、
第1実施例の場合と同様に、J=H×(M×t)/
2の関係式を使用して、各サンプルにおける反強磁性的
交換結合エネルギーの大きさを算出した。
【0127】図11は、このようにして求めた第2実施
例の積層フェリ型磁性薄膜の界面強磁性層(CoFe)
膜厚と反強磁性的交換結合エネルギーとの関係を示す。
なお、図11には、参考のため、CoFe膜厚=0.5
nmに相当する第1実施例の積層フェリ型磁性薄膜のプ
ロット点及びCoFe膜厚=0nmに相当する基板/T
a(1.5nm)/NiFe(7nm)/Ru(1n
m)/NiFe(7nm)/Ta(3nm)のプロット
点を併記してある。
【0128】図11より、本発明においてはその界面強
磁性層(CoFe)の膜厚が0.1nm以上のときにそ
の効果が現れ、強磁性層間の反強磁性的交換結合が強固
かつRu膜厚に対するマージンが大きなものとなること
がわかる。なお、界面強磁性層(CoFe)膜厚が0.
3nm以上のとき反強磁性的交換結合エネルギーは7×
10−4J/m(0.7erg/cm)であり、そ
の強度及びRu膜厚に対するマージンはCoFe/Ru
/CoFe系のそれとまったく同一となる。
【0129】また、同図より、本発明を用いない場合
(CoFe膜厚=0nm)の結合強度は6×10−5
/m(0.06erg/cm)と極めて小さく、N
iFe/Ru/NiFe系カップリングは結合強度が小
さくRu膜厚に対するマージンが狭いことがわかる。
【0130】なお、第1界面強磁性層及び第2界面強磁
性層の材料としてCo、Co−Pt及びCo−Crを使
用した積層フェリ型磁性薄膜においても、本発明の効果
を得るためには、少なくとも0.1nm以上の第1界面
強磁性層及び第2界面強磁性層膜厚が必要であった。
【0131】「第3実施例」本発明の第1実施形態の一
実施例(第3実施例)として、積層フェリ型磁性薄膜を
作製し、その磁気特性を評価した。この第3実施例の積
層フェリ型磁性薄膜は、図12に示すように、熱酸化シ
リコン基板100/第1Ta層101/第1NiFe層
102/第1CoFe層103/Ru層104/第2C
oFe層105/第2NiFe層106/第2Ta層1
07の積層構造を有する。使用したNiFe及びCoF
eの組成は夫々Ni0.8Fe0.2(Ni組成80原
子%)、Co0.9Fe0.1(Co組成90原子%)
である。
【0132】各層の膜厚は、図中にも示したとおり、第
1Ta層101が1.5nm、第1NiFe層102が
6nm、第1CoFe層103が0.5nm、Ru層1
04が1nm、第2CoFe層105が0.5nm、第
2NiFe層106が4nm、第2Ta層107が3n
mである。第1実施形態に記載の基板300として熱酸
化シリコン基板100を、バッファー層301及びキャ
ップ層307としてTa101,107を、第1主強磁
性層302及び第2主強磁性層306としてNiFe層
102、106を、第1界面強磁性層303及び第2界
面強磁性層305としてCoFe層103、105を、
非磁性中間層304としてRu層104を使用した。
【0133】第1NiFe層102及び第1CoFe層
103は第1強磁性層108を構成し、第2NiFe層
106及び第2CoFe層105は第2強磁性層109
を構成する。第1強磁性層108と第2強磁性層109
の磁気モーメントの方向は、Ru層104を介した反強
磁性的交換結合作用により、互いに反平行となるように
磁気カップリングされる。第1実施例又は第2実施例と
は異なり、第3実施例の積層フェリ型磁性薄膜は、第1
強磁性層108と第2強磁性層109の磁気モーメント
に差を設けてある。これは、低磁場において、第1強磁
性層108と第2強磁性層109が磁気カップリングし
たまま、積層フェリ型磁性薄膜全体が磁化反転する際の
磁気特性を評価するのに適した構造である。
【0134】先ず、熱酸化シリコン基板100上に1.
5nm厚の第1Ta層101を成膜した。続いて、6n
m厚の第1NiFe層102、0.5nm厚の第1Co
Fe層103、1nm厚のRu層104、0.5nm厚
の第2CoFe層105、4nm厚の第2NiFe層1
06を成膜した。更に、その上に、3nm厚の第2Ta
層107を成膜することにより、本第3実施例の積層フ
ェリ型磁性薄膜が完成された。
【0135】使用した薄膜形成装置は、第1実施例に使
用したものと同一の直径2インチのスパッタターゲット
を8基備えるDCマグネトロンスパッタ装置である。成
膜室の真空度は5×10−9Torr、スパッタ時のア
ルゴンガス圧は3mTorrとした。
【0136】このようにして製造した本実施例の積層フ
ェリ型磁性薄膜を、1cm×1cmの大きさに切り出
し、振動試料型磁力計によりその磁気特性を評価した。
【0137】図13は、この第3実施例の積層フェリ型
磁性薄膜の磁化曲線である。同図は外部磁場(横軸)の
変化に対する単位膜面積あたりの磁気モーメント(縦
軸)の変化を示している。外部磁場は−158A/m
(−2(Oe))から158A/m(2(Oe))までを往復
走査させた。この磁場走査範囲においては、積層フェリ
の反強磁性的カップリングは未飽和である。なお、別
途、本実施例の積層フェリ型磁性薄膜の飽和磁場が31
6000A/m(4000(Oe))であることを測定し
た。また、そのときの単位膜面積あたりの磁気モーメン
トは10T・nmであることも確認されている。
【0138】同図からも、本発明の積層フェリ型磁性薄
膜の低磁場における磁気的膜厚の低減効果を確認するこ
とができる。即ち、図13においては、外部磁場がゼロ
のときの単位膜面積あたりの磁気モーメントは2T・n
mである。これは、第1強磁性層108と第2強磁性層
109の間に働く反強磁性的交換結合により、両者の磁
気モーメントの方向が互いに反平行となり、その磁気モ
ーメントの大きさが部分的に相殺された状態を示してい
る。本実施例においては、第1強磁性層108と第2強
磁性層109の磁気的膜厚にNiFeで2nm分の差を
設けてある。NiFeの飽和磁化(M)は約1Tであ
るので、外部磁場がゼロのときに観察される2T・nm
の単位膜面積あたりの磁気モーメントは、設計した磁気
的膜厚差と完全に一致する。同図中に見られるヒステリ
シスは、第1強磁性層108と第2強磁性層109が反
強磁性的に磁気カップリングしたまま積層フェリ型磁性
薄膜全体が磁化反転していることを示している。
【0139】また、その反転保磁力(本明細書では差分
磁化反転保磁力(H)という)及び反転終了磁界は、
約79A/m(1(Oe))と極めて小さく、本実施例の積
層フェリ型磁性薄膜は磁気抵抗効果素子のフリー磁性層
として充分に好適で、優れた軟磁気特性を持つことがわ
かる。
【0140】「第2比較例」第3実施例に対する比較例
として、CoFeを使用した従来の積層フェリ型磁性薄
膜を作製し、その磁気特性を評価した。この第2比較例
の積層フェリ型磁性薄膜は、図14に示すように、熱酸
化シリコン基板120/第1Ta層121/第1CoF
e層122/Ru層123/第2CoFe層124/第
2Ta層125の積層構造を有する。使用したNiFe
及びCoFeの組成は夫々Ni0.8Fe0.2(Ni
組成80原子%)、Co0.9Fe0.1(Co組成9
0原子%)である。各層の膜厚は、図中にも示したとお
り、第1Ta層121が1.5nm、第1CoFe層1
22が4nm、Ru層123が1nm、第2CoFe層
124が3nm、第2Ta層125が3nmである。こ
の第2比較例の積層フェリ型磁性薄膜は、基板として熱
酸化シリコン基板を、バッファー層及びキャップ層とし
てTaを、強磁性層としてCoFeを、非磁性中間層と
してRuを使用したものである。
【0141】第1CoFe層122と第2CoFe層1
24の磁気モーメントの方向は、Ru層123を介した
反強磁性的交換結合作用により、互いに反平行となるよ
うに磁気カップリングされる。第1比較例とは異なり、
第2比較例の積層フェリ型磁性薄膜は、第1CoFe層
122と第2CoFe層124の磁気モーメントに差を
設けたタイプであり、低磁場において第1CoFe層1
22と第2CoFe層124が磁気カップリングしたま
ま積層フェリ型磁性薄膜全体が磁化反転する際の磁気特
性を評価するのに適した構造である。
【0142】この積層フェリ型磁性薄膜の形成方法につ
いて説明する。先ず、熱酸化シリコン基板120上に
1.5nm厚の第1Ta層121を成膜した。続いて、
4nm厚の第1CoFe層122、1nm厚のRu層1
23、3nm厚の第2CoFe層124を成膜した。更
に、その上に、3nm厚の第2Ta層125を成膜し、
第2比較例の積層フェリ型磁性薄膜を完成させた。
【0143】使用した薄膜形成装置は、第1実施例に使
用したものと同一の直径2インチのスパッタターゲット
を8基備えるDCマグネトロンスパッタ装置である。成
膜室の真空度は5×10−9Torr、スパッタ時のア
ルゴンガス圧は3mTorrとした。
【0144】このようにして作製した第2比較例の積層
フェリ型磁性薄膜を、1cm×1cmの大きさに切り出
し、振動試料型磁力計によりその磁気特性を評価した。
【0145】図15は、第2比較例の積層フェリ型磁性
薄膜の磁化曲線である。同図は外部磁場(横軸)の変化
に対する、単位膜面積あたりの磁気モーメント(縦軸)
の変化を示している。外部磁場は−79000A/m
(−1000(Oe))から79000A/m(1000(O
e))までを往復走査させた。この磁場走査範囲において
は積層フェリの反強磁性的カップリングは未飽和であ
る。別途の測定により、本第2比較例の積層フェリ型磁
性薄膜の飽和磁場は316000A/m(4000(O
e))、またそのときの単位膜面積あたりの磁気モーメン
トは9.9 T・nmであることを確認している。
【0146】同図からも、第3実施例と同様の低磁場に
おける磁気的膜厚の低減効果を確認することができる。
即ち、図15においては、外部磁場がゼロの時の単位膜
面積あたりの磁気モーメントは約2T・nmである。こ
れは、第1CoFe層122と第2CoFe層124と
の間に働く反強磁性的交換結合により、両者の磁気モー
メントの方向が互いに反平行となり、その磁気モーメン
トの大きさが部分的に相殺された状態を示している。本
第2比較例においては、第1CoFe層122と第2C
oFe層124の磁気的膜厚にCoFeで1nm分の差
を設けてある。CoFeの飽和磁化(M)は約2Tで
あるので、外部磁場がゼロのときに観察される2T・n
mの単位膜面積あたりの磁気モーメントは設計した磁気
的膜厚差に一致する。同図中にみられるヒステリシス
は、第1CoFe層122と第2CoFe層124とが
反強磁性的に磁気カップリングしたまま、積層フェリ型
磁性薄膜全体が磁化反転していることを示している。
【0147】しかしながら、その反転保磁力は1975
0A/m(250(Oe))、また反転終了磁界は約395
00A/m(500(Oe))と極めて大きい。磁化反転に
必要な磁場が大きすぎるため、本第2比較例の積層フェ
リ型磁性薄膜は磁気抵抗効果素子のフリー磁性層として
は全く適さない。
【0148】第1実施例と第1比較例の比較、及び第2
実施例と第2比較例との比較により、CoFe/Ru/
CoFe系の積層フェリ型磁性薄膜は強固でRu膜厚に
対するマージンが広い反強磁性的磁気結合を有するが、
差分磁化反転時の軟磁気特性に劣ること、そして、本発
明の積層フェリ型磁性薄膜は強固でRu膜厚に対するマ
ージンの広い反強磁性的磁気結合及び差分磁化反転時の
軟磁気特性の双方を同時に実現できることがわかる。
【0149】「第4実施例」第3実施例と同様な構造を
持つ本発明の積層フェリ型磁性薄膜において、主強磁性
層(NiFe)と界面強磁性層(CoFe)との比を変
化させた複数のサンプルを作製し、NiFeの占める割
合と発明効果(軟磁気特性)との関係を調べた。この第
4実施例の積層フェリ型磁性薄膜の構造は、第3実施例
と同じく、第1実施形態の基板300として熱酸化シリ
コン基板を、バッファー層301及びキャップ層307
としてTaを、第1主強磁性層302及び第2主強磁性
層306としてNiFeを、第1界面強磁性層303及
び第2界面強磁性層305としてCoFeを、非磁性中
間層304としてRuを使用したタイプのものである。
但し、第1主強磁性層302及び第2主強磁性層306
の膜厚、及び第1界面強磁性層303及び第2界面強磁
性層305の膜厚が第3実施例のそれとは異なる。
【0150】本第4実施例の作製サンプルの膜構造は下
記表2に示すとおりである。括弧内の数字は各層の膜厚
(nm)を示す。
【0151】
【表2】
【0152】第1主強磁性層302の膜厚を3nm、第
2主強磁性層306の膜厚を2nmとすることで、第1
強磁性層308と第2強磁性層309の磁気モーメント
に差を設けた。また、第1界面強磁性層303及び第2
界面強磁性層305の膜厚を0.5nm〜6nmの範囲
で変化させることにより、各強磁性層における主強磁性
層(NiFe)膜厚の割合を25〜86%の範囲で変化
させた。
【0153】作製方法も第3実施例とほぼ同様である。
先ず、熱酸化シリコン基板上に1.5nm厚のTa層、
目的厚のNiFe層、目的厚のCoFe層を成膜し、続
いて1nm厚のRu層、目的厚のCoFe層、目的厚の
NiFe層を成膜した。更に、その上に3nm厚のTa
層を成膜し、本発明の実施例4の積層フェリ型磁性薄膜
を完成させた。
【0154】使用した薄膜形成装置は、第1実施例に使
用したものと同一の直径2インチのスパッタターゲット
を8基備えるDCマグネトロンスパッタ装置である。成
膜室の真空度は5×10−9Torr、スパッタリング
時のアルゴンガス圧は3mTorrとした。
【0155】上記により作製した第4実施例の積層フェ
リ型磁性薄膜を、1cm×1cmの大きさに切り出し、
振動試料型磁力計によりその磁気特性を評価した。
【0156】いずれのサンプルもゼロ磁場近傍におい
て、設計した磁気的膜厚差(NiFe:1nm)に一致する
大きさ(1T・nm)の差分磁化反転が観察された。第
3実施例の場合と同様にして、各サンプルにおける差分
磁化反転保磁力(H)を評価した。
【0157】図16は、このようにして求めた第4実施
例の積層フェリ型磁性薄膜の各強磁性層における主強磁
性層(NiFe)膜厚の割合と差分磁化反転保磁力(H
)の関係を示すグラフ図である。
【0158】NiFe(主強磁性層材料)の保磁力は7
9A/m(1(Oe))である。図16から、第1強磁性層
及び第2強磁性層における各主強磁性層(NiFe)膜
厚の割合が少なくとも60%以上のとき、本発明の積層
フェリ型磁性薄膜の差分磁化反転保磁力はその主強磁性
層材料の保磁力と同等に小さくなることがわかる。
【0159】なお、第1主強磁性層及び第2主強磁性層
の材料として、Ni、Ni−Fe−Nb、Ni−Fe−
B、及びNi−Fe−Coを使用した積層フェリ型磁性
薄膜においても、同様の効果が観察され、いずれの場合
も各強磁性層における主強磁性層膜厚の割合を少なくと
も60%以上としたとき差分磁化反転保磁力は主強磁性
層材料の保磁力と一致した。
【0160】本発明の積層フェリ型磁性薄膜は、Co系
積層フェリ型磁性薄膜と同等の強固でRu膜厚に対する
マージンが大きな反強磁性的交換結合及びNi系磁性材
料と同等の優れた軟磁気特性の双方を同時に実現するこ
とが可能である。
【0161】「第5実施例」本発明の第2実施形態の一
実施例(第5実施例)として、本発明の積層フェリ型磁
性薄膜を作製し、その磁気特性を評価した。この第5実
施例の積層フェリ型磁性薄膜は、図17に示すように、
熱酸化シリコン基板200/第1Ta層201/第1C
oFe層202/第1NiFe層203/第2CoFe
層204/Ru層205/第3CoFe層206/第2
NiFe層207/第4CoFe層208/第2Ta層
209積層構造を有する。第1NiFe層203及び第
2NiFe層207の組成はNi0.8Fe0.2(N
i組成80原子%)である。また、第1CoFe層20
2及び第4CoFe層208の組成はCo0.3Fe
.7(Co組成30原子%)であり、第2CoFe層2
04及び第3CoFe層206の組成はCo0.9Fe
0.1(Co組成90原子%)である。各層の膜厚は、
図中にも示したとおり、第1Ta層201が1.5n
m、第1CoFe層202が0.2nm、第1NiFe
層203が5.6nm、第2CoFe層204が0.5
nm、Ru層205が1nm、第3CoFe層206が
0.5nm、第2NiFe層207が3.6nm、第4
CoFe層208が0.2nm、第2Ta層209が3
nmである。この第5実施例は、第2実施形態の基板6
00として熱酸化シリコン基板を、バッファー層601
及びキャップ層609としてTaを、第1強磁性層60
2及び第4強磁性層608としてCo0.3Fe0.7
を、第2強磁性層603及び第3強磁性層607として
NiFeを、第1界面強磁性層604及び第2界面強磁
性層606としてCo0.9Fe0.1を、非磁性中間
層605としてRuを使用したものである。
【0162】第1CoFe層202、第1NiFe層2
03、第2CoFe層204は第1強磁性層210を構
成し、第3CoFe層206、第2NiFe層207、
第4CoFe層208は第2強磁性層211を構成す
る。第1強磁性層210と第2強磁性層211の磁気モ
ーメントの方向は、Ru層205を介した反強磁性的交
換結合作用により、互いに反平行となるように磁気カッ
プリングされる。第1強磁性層210と第2強磁性層2
11の磁気モーメントには差を設けた。
【0163】先ず、熱酸化シリコン基板200上に1.
5nm厚の第1Ta層201を成膜した。続いて0.2
nm厚の第1CoFe層202、5.6nm厚の第1N
iFe層203、0.5nm厚の第2CoFe層20
4、1nm厚のRu層205、0.5nm厚の第3Co
Fe層206、3.6nm厚の第2NiFe層207、
0.2nm厚の第4CoFe層208を成膜した。更
に、その上に3nm厚の第2Ta層209を成膜し、本
第5実施例の積層フェリ型磁性薄膜を完成させた。
【0164】使用した薄膜形成装置は、第1実施例に使
用したものと同一の直径2インチのスパッタターゲット
を8基備えるDCマグネトロンスパッタ装置である。成
膜室の真空度は5×10−9Torr、スパッタ時のア
ルゴンガス圧は3mTorrとした。
【0165】このようにして作製した本発明の積層フェ
リ型磁性薄膜を、1cm×1cmの大きさに切り出し、
振動試料型磁力計によりその磁気特性を評価した。
【0166】本第5実施例においても、第3実施例と同
様の2 T・nm、H=79A/m(1(Oe))の差分
磁化反転が観察された。本実施例の積層フェリ型磁性薄
膜は磁気抵抗効果素子のフリー磁性層として充分に好適
な優れた軟磁気特性を持つ。更に、本第5実施例の積層
フェリ型磁性薄膜を強磁性トンネル接合素子のフリー磁
性層に使用すると、スピン分極率の高い材料がトンネル
バリアと接するため、素子MR比も向上する。
【0167】なお、本第5実施例においても、差分磁化
反転保磁力(H)が79A/m(1(Oe))となるの
は、第1及び第2強磁性層におけるNiFe層膜厚の割
合が60%以上のときであった。
【0168】「第6実施例」本発明の第3実施形態の一
実施例(第6実施例)として、磁気抵抗効果素子を作製
した。本第6実施例は、そのフリー磁性層として本発明
の第1実施形態の積層フェリ型磁性薄膜を使用した強磁
性トンネル接合素子である。第6実施例の強磁性トンネ
ル接合素子は、図18に示すように、熱酸化シリコン基
板150/第1Ta層151/Al層152/第2Ta
層153/IrMn層154/第3CoFe層155/
トンネルバリア層156/第1NiFe層157/第1
CoFe層158/Ru層159/第2CoFe層16
0/第2NiFe層161/Ta層(3)162の積層
構造を有する。使用したNiFe及びCoFeの組成は
夫々Ni0.8Fe0.2(Ni組成80原子%)、C
0.9Fe0.1(Co組成90原子%)である。各
層の膜厚は、図中にも示したとおり、第1Ta層151
が1.5nm、Al層152が20nm、第2Ta層1
53が3nm、IrMn層154が10nm、第3Co
Fe層155が3nm、第1NiFe層157が3.4
nm、第1CoFe層158が0.3nm、Ru層15
9が1nm、第2CoFe層160が0.3nm、第2
NiFe層161が2.4nm、Ta層(3)162が
3nmである。第3実施形態の基板400として熱酸化
シリコン基板を、下地電極層402としてAlを、また
第1バッファー層401、第2バッファー層403、キ
ャップ層411には全てTaを、第1主強磁性層406
及び第2主強磁性層410としてNiFeを、第1界面
強磁性層407及び第2界面強磁性層409としてCo
Feを、非磁性中間層408としてRuを使用したタイ
プの構造である。非磁性層405は絶縁体のトンネルバ
リア層156を使用した。また、ピンド磁性層404は
IrMn層154/第3CoFe層155の2層構造と
し、反強磁性体であるIrMn層と組み合わせることで
第3CoFe層の磁化方向を固定するタイプ(交換バイ
アス型)とした。なお、トンネルバリア層156はAl
の酸化物を使用した。
【0169】第1NiFe層157及び第1CoFe層
158は第1フリー磁性層164を構成し、第2NiF
e層161及び第2CoFe層160は第2フリー磁性
層165を構成する。第1フリー磁性層164と第2フ
リー磁性層165の磁気モーメントの方向は、Ru層1
59を介した反強磁性的交換結合作用により、互いに反
平行となるように磁気カップリングされ、フリー磁性層
として機能する。第1フリー磁性層164、Ru層15
9、第2フリー磁性層165の全体がフリー磁性層16
6となる。第1フリー磁性層164と第2フリー磁性層
165の磁気モーメントには差を設けた。
【0170】先ず、熱酸化シリコン基板150上に1.
5nm厚の第1Ta層151、20nm厚のAl層15
2、3nm厚の第2Ta層153、10nm厚のIrM
n層154、3nm厚の第3CoFe層155を成膜し
た。続いて、トンネルバリア層となる金属層として2.
2nm厚のAlを成膜した。真空下で0.05mTor
rの純酸素を導入し、プラズマガンを使用した酸化処理
(100ワット、10分間)により、トンネルバリア層
156を形成した。導入した純酸素を完全に排気し高真
空状態に戻した後、更にその上に3.4nm厚の第1N
iFe層157、0.3nm厚の第1CoFe層15
8、1nm厚のRu層159、0.3nm厚の第2Co
Fe層160、2.4nm厚の第2NiFe層161、
3nm厚の第3Ta層162を成膜し、第6実施例の磁
気抵抗効果素子の多層薄膜構造を完成させた。
【0171】使用した薄膜形成装置は、第1実施例に使
用したものと同一の直径2インチのスパッタターゲット
を8基備えるDCマグネトロンスパッタ装置である。成
膜室の真空度は5×10−9Torr、スパッタ時のア
ルゴンガス圧は3mTorrとした。
【0172】次に、完成した強磁性トンネル接合膜に対
して、光学露光及び電子線露光技術とイオンミリング技
術を使用して、接合素子形状への加工を行った。その工
程を図19を使用して説明する。図19(a)乃至
(g)はこの第6実施例の強磁性トンネル接合膜の素子
形状加工プロセスを示す図である。図示の簡略化のた
め、図18における第1Ta層151/Al層152/
第2Ta層153を下地電極層71と表記し、IrMn
層154/第3CoFe層155をピンド磁性層72と
表記する。また、第1NiFe層157/第1CoFe
層158/Ru層159/第2CoFe層160/第2
NiFe層161/第3Ta層162をフリー磁性層7
4と表記する。なお、トンネルバリア層156はトンネ
ルバリア層73に対応する。
【0173】先ず、図19(a)に示すように、前述の
方法により成膜を完了した第6実施例の多層膜面上に、
光学露光技術を使用して下地電極形状のフォトレジスト
75を形成し、図19(b)に示すように、イオンミリ
ングにより接合膜構成の全層を下地電極の配線パターン
形状に加工した。
【0174】次に、図19(c)に示すように、フォト
レジスト75を除去した後、電子線露光技術を使用して
膜面上に接合寸法を規定する電子線レジスト76を形成
し、図19(d)に示すように、ピンド磁性層72の上
部までをイオンミリングした。
【0175】図19(e)に示すように、この電子線レ
ジスト76を残したまま電極間絶縁層77を蒸着形成
し、その後、図19(f)に示すように、電子線レジス
ト76を除去した。電極間絶縁層77にはアルミナを使
用した。更に、図19(g)に示すように、この上に、
光学露光技術を使用して、フォトレジスト形成、Al膜
の蒸着形成、フォトレジストのリフトオフ、の各工程を
順に行い、上部電極の配線パターンを持つ上部電極層7
8を形成した。以上により、強磁性トンネル接合膜の素
子形状加工を完了した。
【0176】完成した強磁性トンネル接合素子は、直流
四端子法により磁場中での抵抗変化を測定し、特性評価
を行った。この第6実施例の強磁性トンネル接合素子
(接合面積=0.052μm)の特性は、規格化接合
抵抗が1MΩμm、MR比が32%、磁化容易軸から
45度方向へ磁場を印加した際のフリー磁性層の反転磁
界が395A/m(5(Oe))と、高密度固体磁気メモリ
(MRAM)、又は高記録密度対応磁気ヘッドへの応用
に極めて好適なものであった。
【0177】なお、前述の方法により多層膜構造の成膜
までを完了した第6実施例のサンプルに対し、別途、振
動試料型磁力計による磁気特性評価を行ったところ、1
T・nmの差分磁化反転が観察された。
【0178】「第7実施例」本発明の第4実施形態の一
実施例(第7実施例)として、本発明の磁気抵抗効果素
子を作製した。本第7実施例は、そのフリー磁性層とし
て本発明の第2実施形態の積層フェリ型磁性薄膜を使用
した強磁性トンネル接合素子である。
【0179】第7実施例の強磁性トンネル接合素子は、
図20に示すように、熱酸化シリコン基板900/第1
Ta層901/Al層902/第2Ta層903/Ir
Mn層904/第5CoFe層905/トンネルバリア
層906/第1CoFe層907/第1NiFe層90
8/第2CoFe層909/Ru層910/第3CoF
e層911/第2NiFe層912/第4CoFe層9
13/第3Ta層914、の基本構造を有する。
【0180】第1NiFe層908及び第2NiFe層
912の組成はNi0.8Fe0. (Ni組成80原
子%)である。また、第1CoFe層907及び第4C
oFe層913の組成はCo0.3Fe0.7(Co組
成30原子%)であり、第2CoFe層909、第3C
oFe層911、第5CoFe層905の組成はCo
0.9Fe0.1(Co組成90原子%)である。各層
の膜厚は、図中にも示したとおり、第1Ta層901が
1.5nm、Al層902が20nm、第2Ta層90
3が3nm、IrMn層904が10nm、第5CoF
e層905が3nm、第1CoFe層908が0.2n
m、第1NiFe層908が3.4nm、第2CoFe
層909が0.3nm、Ru層910が1nm、第3C
oFe層911が0.3nm、第2NiFe層912が
2.4nm、第4CoFe層913が0.2nm、第3
Ta層914が3nmである。第4実施形態の基板80
0として熱酸化シリコン基板を、下地電極層802とし
てAlを、また第1バッファー層801、第2バッファ
ー層803、キャップ層813には全てTaを、第1強
磁性層806及び第4強磁性層812としてCo0.3
Fe0.7を、第2強磁性層807及び第3強磁性層8
11としてNiFeを、第1界面強磁性層808及び第
2界面強磁性層810としてCo0.9Fe0.1を、
非磁性中間層809としてRuを使用したタイプの構造
である。非磁性層805は絶縁体のトンネルバリア層9
06を使用した。また、ピンド磁性層804はIrMn
層904/第5CoFe層905の2層構造とし、反強
磁性体であるIrMn層と組み合わせることで第5Co
Fe層の磁化方向を固定するタイプ(交換バイアス型)
とした。なお、トンネルバリア層906はAlの酸化物
を使用した。
【0181】第1CoFe層907、第1NiFe層9
08、第2CoFe層909は第1フリー磁性層915
を構成し、第3CoFe層911、第2NiFe層91
2、第4CoFe層913が第2フリー磁性層916を
構成する。第1フリー磁性層915と第2フリー磁性層
916の磁気モーメントの方向は、Ru層910を介し
た反強磁性的交換結合作用により、互いに反平行となる
ように磁気カップリングされ、フリー磁性層として機能
する。第1フリー磁性層915、Ru層910、第2フ
リー磁性層916の全体がフリー磁性層918となる。
第1フリー磁性層915と第2フリー磁性層916の磁
気モーメントには差を設けた。
【0182】先ず、熱酸化シリコン基板900上に1.
5nm厚の第1Ta層901、20nm厚のAl層90
2、3nm厚の第2Ta層903、10nm厚のIrM
n層904、3nm厚の第5CoFe層905を成膜し
た。続いて、トンネルバリア層となる金属層として2.
2nm厚のAlを成膜した。真空下で0.05mTor
rの純酸素を導入し、プラズマガンを使用した酸化処理
(100ワット、10分間)により、トンネルバリア層
906を形成した。導入した純酸素を完全に排気し高真
空状態に戻した後、更にその上に0.2nm厚の第1C
oFe層907、3.4nm厚の第1NiFe層90
8、0.3nm厚の第2CoFe層909、1nm厚の
Ru層910、0.3nm厚の第3CoFe層911、
2.4nm厚の第2NiFe層912、0.2nm厚の
第4CoFe層913、3nm厚の第3Ta層914を
成膜し、第6実施例の磁気抵抗効果素子の多層薄膜構造
を完成させた。
【0183】使用した薄膜形成装置は、第1実施例に使
用したものと同一の直径2インチのスパッタターゲット
を8基備えるDCマグネトロンスパッタ装置である。成
膜室の真空度は5×10−9Torr、スパッタ時のア
ルゴンガス圧は3mTorrとした。
【0184】完成した強磁性トンネル接合膜は、第6実
施例と同様の工程(図19(a)乃至(g))により、
接合素子形状への加工を行った。
【0185】完成した強磁性トンネル接合素子は、直流
四端子法により磁場中での抵抗変化を測定し、特性評価
を行った。
【0186】第7実施例の強磁性トンネル接合素子(接
合面積=0.052μm)の特性は、規格化接合抵抗
が0.9MΩμm、MR比が39%、磁化容易軸から
45度方向へ磁場を印加した際のフリー磁性層の反転磁
界が395A/m(5(Oe))と、高密度固体磁気メモリ
(MRAM)、又は高記録密度対応磁気ヘッドへの応用
に極めて好適なものであった。本実施例の強磁性トンネ
ル接合素子は実施例6の強磁性トンネル接合素子より
も、さらにMR比が大きく、より好適なものであった。
【0187】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
磁気抵抗効果素子における積層フェリ型フリー磁性層に
好適の大きな反強磁性的交換結合エネルギー及び磁性層
全体の優れた軟磁気特性を同時に実現することができる
積層フェリ型磁性薄膜を容易に作製することが可能とな
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】強磁性層としてNiFeを使用した従来の積層
フェリ型磁性薄膜の反強磁性的交換結合エネルギーと非
磁性中間層膜厚との関係を示す図である。
【図2】強磁性層としてCoを使用した従来の積層フェ
リ型磁性薄膜の反強磁性的交換結合エネルギーと非磁性
中間層膜厚との関係を示す図である。
【図3】第1実施形態の積層フェリ型磁性薄膜の基本膜
構造を示す断面図である。
【図4】第2実施形態の積層フェリ型磁性薄膜の基本膜
構造を示す断面図である。
【図5】第3実施形態の磁気抵抗効果素子の基本膜構造
を示す断面図である。
【図6】第4実施形態の磁気抵抗効果素子の基本膜構造
を示す断面図である。
【図7】第1実施例の積層フェリ型磁性薄膜の基本膜構
造を示す断面図である。
【図8】第1実施例の積層フェリ型磁性薄膜における外
部磁場と単位膜面積あたりの磁気モーメントの関係を示
す図である。
【図9】第1比較例の積層フェリ型磁性薄膜の基本膜構
造を示す断面図である。
【図10】第1比較例の積層フェリ型磁性薄膜における
外部磁場と単位膜面積あたりの磁気モーメントの関係を
示す図である。
【図11】第2実施例の積層フェリ型磁性薄膜における
反強磁性的交換結合エネルギーと界面強磁性層(CoF
e)膜厚との関係を示す図である。
【図12】第3実施例の積層フェリ型磁性薄膜の基本膜
構造を示す断面図である。
【図13】第3実施例の積層フェリ型磁性薄膜における
外部磁場と単位膜面積あたりの磁気モーメントの関係を
示す図である。
【図14】第2比較例の積層フェリ型磁性薄膜の基本膜
構造を示す断面図である。
【図15】第2比較例の積層フェリ型磁性薄膜におけ
る、外部磁場と単位膜面積あたりの磁気モーメントの関
係を示す図である。
【図16】第4実施例の積層フェリ型磁性薄膜におけ
る、差分磁化反転保磁力(H)と各強磁性層における
主強磁性層(NiFe)膜厚の割合(%)との関係を示
す図である。
【図17】第5実施例の積層フェリ型磁性薄膜の基本膜
構造を示す断面図である。
【図18】第6実施例の強磁性トンネル接合素子の基本
膜構造を示す断面図である。
【図19】第6実施例及び第7実施例の強磁性トンネル
接合素子の素子形状加工プロセスを示す図である。
【図20】第7実施例の強磁性トンネル接合素子の基本
膜構造を示す断面図である。
【符号の説明】 71 ;下地電極層 75 ;フォトレジスト 76 ;電子線レジスト 77 ;電極間絶縁層 78 ;上部電極層 70、300、400、600、800;基板 301、601;バッファー層 302、406、610、814;第1主強磁性層 303、407、604、808;第1界面強磁性層 304、408、605、809;非磁性中間層 305、409、606、810;第2界面強磁性層 306、410、611、815;第2主強磁性層 307、411、609、813;キャップ層 108、210、308、412、508、612;第
1強磁性層 109、211、309、413、509、613;第
2強磁性層 602、806;第1強磁性層 603、807;第2強磁性層 607、811;第3強磁性層 608、812;第4強磁性層 401、801;第1バッファー層 71、402、802;下地電極層 403、803;第2バッファー層 72、404、804、917;ピンド磁性層 405、805;非磁性層 414、918;フリー磁性層 100、120、150、200、500、700、9
00;熱酸化シリコン基板 101、121、151、201、501、701、9
01;第1Ta層 102、157、203、502、908;第1NiF
e層 103、122、158、202、503、702、9
07;第1CoFe層 104、123、159、205、504、703、9
10;Ru層 105、124、160、204、505、704、9
09;第2CoFe層 106、161、207、506、912;第2NiF
e層 107、125、153、209、507、705、9
03;第2Ta層 206、911;第3CoFe層 208、913;第4CoFe層 905;第5CoFe層 152、902;Al層 154、904;IrMn層 155;第3CoFe層 73、156、906;トンネルバリア層 162、914;第3Ta層 164、412、816、915;第1フリー磁性層 165、413、817、916;第2フリー磁性層 74、166、414、818;フリー磁性層 415、819;磁気抵抗効果部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01L 43/10 H01L 43/10 Fターム(参考) 5D034 BA02 BA03 BA04 BA05 CA04 CA08 5E049 AA04 AA07 BA06 BA12 DB12

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1強磁性層、第2強磁性層、及びそれ
    らの中間に配置されて双方に接する非磁性中間層を有
    し、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層が前記非磁性
    中間層を介して反強磁性的に磁気結合する積層フェリ型
    磁性薄膜において、 前記第1強磁性層が、少なくとも1層以上の層よりなる
    第1主強磁性層と、前記第1主強磁性層と前記非磁性中
    間層の中間に配置されて双方に接する第1界面強磁性層
    とからなり、 前記第2強磁性層が、少なくとも1層以上の層よりなる
    第2主強磁性層と、前記第2主強磁性層と前記非磁性中
    間層の中間に配置されて双方に接する第2界面強磁性層
    とからなり、 前記第1界面強磁性層及び前記第2界面強磁性層がCo
    又はCo合金により形成され、 前記第1主強磁性層のうちの少なくとも1層及び前記第
    2主強磁性層のうちの少なくとも1層が前記第1界面強
    磁性層及び前記第2界面強磁性層より保磁力が小さい軟
    磁性膜により形成され、 前記第1主強磁性層のうちの軟磁性膜よりなる層の合計
    膜厚が前記第1強磁性層の膜厚の60%以上であり、 前記第2主強磁性層のうちの軟磁性膜よりなる層の合計
    膜厚が前記第2強磁性層の膜厚の60%以上であること
    を特徴とする積層フェリ型磁性薄膜。
  2. 【請求項2】 第1強磁性層、第2強磁性層、及びそれ
    らの中間に配置されて双方に接する非磁性中間層よりな
    り、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層が前記非磁性
    中間層を介して反強磁性的に磁気結合する積層フェリ型
    磁性薄膜において、 前記第1強磁性層が第1主強磁性層と、前記第1主強磁
    性層と前記非磁性中間層の中間に配置されて双方に接す
    る第1界面強磁性層との2層からなり、 前記第2強磁性層が第2主強磁性層と、前記第2主強磁
    性層と前記非磁性中間層の中間に配置されて双方に接す
    る第2界面強磁性層との2層からなり、 前記第1界面強磁性層及び前記第2界面強磁性層がCo
    又はCo合金により形成され、 前記第1主強磁性層及び前記第2主強磁性層が前記第1
    界面強磁性層及び前記第2界面強磁性層より保磁力が小
    さい軟磁性膜により形成され、 前記第1主強磁性層の膜厚が前記第1強磁性層の膜厚の
    60%以上であり、 前記第2主強磁性層の膜厚が前記第2強磁性層の膜厚の
    60%以上であることを特徴とする積層フェリ型磁性薄
    膜。
  3. 【請求項3】 磁気抵抗効果素子又は強磁性トンネル素
    子のフリー層であることを特徴とする請求項1又は2に
    記載の積層フェリ型磁性薄膜。
  4. 【請求項4】 前記非磁性中間層がRu、Rh、Ir及
    びCuからなる群から選択された1種の金属、又はR
    u、Rh、Ir及びCuからなる群から選択された1種
    を主成分とする合金により形成されていることを特徴と
    する請求項1又は2に記載の積層フェリ型磁性薄膜。
  5. 【請求項5】 前記Co合金が、Co−Fe合金である
    ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載
    の積層フェリ型磁性薄膜。
  6. 【請求項6】 前記Co合金が、CoFe
    1−X(0.75≦X<1)合金であることを特徴とす
    る請求項1乃至4のいずれか1項に記載の積層フェリ型
    磁性薄膜。
  7. 【請求項7】 前記軟磁性膜がNi又はNi合金である
    ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載
    の積層フェリ型磁性薄膜。
  8. 【請求項8】 前記軟磁性膜がNi−Fe合金であるこ
    とを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の
    積層フェリ型磁性薄膜。
  9. 【請求項9】 前記軟磁性膜がNiFe1−X(0.
    35≦X<1)合金であることを特徴とする請求項1乃
    至6のいずれか1項に記載の積層フェリ型磁性薄膜。
  10. 【請求項10】 外部磁場に対してその磁化方向を自由
    にできるフリー磁性層と、外部磁場に対してその磁化方
    向を固定する機構を備えたピンド磁性層と、前記フリー
    磁性層及び前記ピンド磁性層の中間に配置されて双方に
    接する非磁性層とを有し、外部磁場の印加により素子抵
    抗が変化する磁気抵抗効果素子において、前記フリー磁
    性層は、前記請求項1乃至9のいずれか1項に記載の積
    層フェリ型磁性薄膜であることを特徴とする磁気抵抗効
    果素子。
  11. 【請求項11】 外部磁場に対してその磁化方向を自由
    にできるフリー磁性層と、外部磁場に対してその磁化方
    向を固定する機構を備えたピンド磁性層と、前記フリー
    磁性層及び前記ピンド磁性層の中間に配置されて双方に
    接する非磁性絶縁層とを有し、外部磁場の印加により素
    子抵抗が変化する強磁性トンネル接合素子において、前
    記フリー磁性層は、前記請求項1乃至9のいずれか1項
    に記載の積層フェリ型磁性薄膜であることを特徴とする
    強磁性トンネル接合素子。
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