JP2007221086A - トンネル型磁気検出素子及びその製造方法 - Google Patents

トンネル型磁気検出素子及びその製造方法 Download PDF

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Kazumasa Nishimura
和正 西村
Masaji Saito
正路 斎藤
Masahiko Ishizone
昌彦 石曽根
Yosuke Ide
洋介 井出
Akira Nakabayashi
亮 中林
Takuya Kiyono
拓哉 清野
Naoya Hasegawa
直也 長谷川
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Abstract

【課題】 特に、RAを小さくし、且つ抵抗変化率(ΔR/R)を大きくすることが可能なトンネル型磁気検出素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 酸化チタン等の絶縁酸化物で形成された絶縁障壁層5の上に形成されるフリー磁性層6のうち前記絶縁障壁層5と接する位置にエンハンス層6aが形成されている。前記絶縁障壁層5の下には固定磁性層4を構成する第2固定磁性層4cが形成される。前記第2固定磁性層4cは、膜面と平行な方向に{111}面が優先配向する面心立方構造で形成され、前記絶縁障壁層5は、ルチル型構造等で形成され、前記エンハンス層6aは、膜面と平行な方向に{110}面が優先配向する体心立方構造で形成される。これにより、RAを小さくし、且つ抵抗変化率(ΔR/R)を大きくすることが可能である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、例えばハードディスク装置に搭載されたり、あるいはMRAM(磁気抵抗メモリ)として用いられるトンネル型磁気検出素子に係り、特に、RA(素子抵抗R×素子面積A)を小さく、且つ抵抗変化率(ΔR/R)を高く出来るトンネル型磁気検出素子及びその製造方法に関する。
下記特許文献にはトンネル型磁気検出素子の発明が開示されている。前記トンネル型磁気検出素子は、少なくとも固定磁性層と、フリー磁性層と、前記固定磁性層と前記フリー磁性層との間に介在する絶縁障壁層との積層構造を有する。
前記固定磁性層及び前記フリー磁性層は、FeCo、NiFe等の磁性材料で形成される(例えば下記の特許文献1の[0045]欄、特許文献2の[0040]欄、特許文献3の[0035]欄)。
ところで、トンネル型磁気検出素子では、RA(素子抵抗R×素子面積A)を小さく、且つ抵抗変化率(ΔR/R)を高く出来るようにすることが課題の一つとなっている。
例えば、スピン分極率の高い磁性材料層を前記絶縁障壁層と接する側に配置することで、前記抵抗変化率(ΔR/R)を高く出来るものと期待される。例えばCoFe合金は、NiFe合金に比べてスピン分極率が高い。
特開2001―6130号公報 特開2001―6127号公報 特開2002―164590号公報 特開2005―228998号公報 特開2004−6589号公報
前記固定磁性層は、例えば、第1固定磁性層と、第2固定磁性層と、前記第1固定磁性層と前記第2固定磁性層との間に介在する非磁性中間層とが積層されて成る積層フェリ構造で形成される。前記第2固定磁性層が前記絶縁障壁層に接する。
また前記フリー磁性層には、特許文献1の[0067]欄にも記載されているように、例えば、絶縁障壁層(特許文献1ではトンネルバリア層30と記載されている)と接する位置に、高いスピン分極率を有するエンハンス層が設けられる(特許文献1では、強磁性フリー層20とトンネルバリア層30との間に高電子伝導のスピン分極材料からなる強磁性薄膜層が介在すると記載されている)。
上記した前記固定磁性層及び前記フリー磁性層の構成において、前記抵抗変化率(ΔR/R)に主に寄与する層は、前記固定磁性層では前記第2固定磁性層であり、前記フリー磁性層では前記エンハンス層である。そして従来では、前記第2固定磁性層及び前記エンハンス層を同じ組成からなる磁性材料で形成していた。例えば、前記第2固定磁性層及び前記エンハンス層をCo90at%Fe10at%で形成していた。また特許文献1の[0070]欄や特許文献2の[0056]欄には、エンハンス層及び固定磁性層をCoで形成していることが開示されている。
しかし従来のトンネル型磁気検出素子では、RAを小さくすると抵抗変化率(ΔR/R)も小さくなってしまい、前記RAを小さくし、且つ抵抗変化率(ΔR/R)を大きくすることが困難であった。
また特許文献5の[0209]欄には、フリー磁性層(フリー層)又は固定磁性層(ピン層)が面心立方構造(fcc)や体心立方構造(bcc)で形成されることが好ましいと記載されているが、具体的な好ましい結晶構造の組み合わせは記載されていない。なお特許文献5には絶縁障壁層(スペーサ層)の好ましい結晶構造は記載されていない。
上記したように、従来では、通常、前記第2固定磁性層及び前記エンハンス層を同じ組成で形成していたので、当然、結晶構造も同じとなる。
しかし、後述する実験によれば、前記第2固定磁性層及び前記エンハンス層の結晶構造が同じであると、RAを小さく且つ抵抗変化率(ΔR/R)を大きくすることができず、また第2固定磁性層及びエンハンス層の結晶構造のみならず、前記絶縁障壁層の結晶構造も合わせて、各層の結晶構造を適正化しないと、効果的に、RAを小さく且つ抵抗変化率(ΔR/R)を大きくできないことがわかった。
そこで本発明は上記従来の課題を解決するものであり、特に、RAを小さくし、且つ抵抗変化率(ΔR/R)を大きくすることが可能なトンネル型磁気検出素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明におけるトンネル型磁気検出素子は、
下から下側磁性層、絶縁障壁層、上側磁性層の順に積層され、一方の前記磁性層は、磁化が固定される固定磁性層の全部あるいは一部を成し、他方の前記磁性層は、磁化が外部磁界により変動するフリー磁性層の全部あるいは一部を成し、
少なくとも前記下側磁性層の一部は、膜面と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向する面心立方構造で形成され、
少なくとも前記絶縁障壁層の一部は、非晶質構造、体心立方構造、体心正方構造、又は、ルチル型構造のうち1種又は2種以上の混合状態で形成され、
少なくとも前記上側磁性層の一部は、膜面と平行な方向に代表的に{110}面として表される等価な結晶面が優先配向する体心立方構造で形成されることを特徴とするものである。
本発明では、少なくとも前記下側磁性層の一部が、膜面と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向する面心立方構造で形成されている。前記面心立方構造の{111}面は最稠密面であるため、前記絶縁障壁層を形成する過程での酸化等の影響が前記下側磁性層の内部にまで及びにくく、前記下側磁性層の劣化を効果的に抑制できる。また、面心立方構造にするには、例えば下側磁性層をCoFe合金で形成する場合、Fe組成比を小さくすることが必要である。ここでCoとFeとの酸化物の標準生成自由エネルギーを比較するとFeのほうが酸化物の標準生成自由エネルギーが低いため、FeはCoに比べて酸化されやすいが、面心立方構造を得るためにFe組成比を小さくすることで酸化の影響を適切に弱めることができる。これにより前記下側磁性層のスピン分極率を適切に向上させることが出来る。
また、下側磁性層が酸化の影響を受けやすい状態であると、絶縁障壁層内の酸素元素が前記下側磁性層側に引き寄せられやすくなり、前記絶縁障壁層の内部で酸素量の勾配が生じやすくなるが、本発明では、前記下側磁性層が酸化の影響を受けにくくなっているので、前記絶縁障壁層内部での酸素量の勾配を極力小さくできる。
さらに本発明では、少なくとも前記絶縁障壁層の一部は、非晶質構造、体心立方構造、あるいは体心正方構造、又は、ルチル型構造のうち1種又は2種以上の混合状態で形成され、少なくとも前記上側磁性層の一部は、膜面と平行な方向に代表的に{110}面として表される等価な結晶面が優先配向する体心立方構造で形成される。
前記{110}面は体心立方構造における最稠密面であり、絶縁障壁層から上側磁性層に拡散する酸素やTi等が前記上側磁性層の内部にまで侵入するのを抑制する効果がある。これにより、スピン分極率が大きくなるFe組成比で形成された上側磁性層であっても、アニール等による酸素等の拡散によるスピン分極率の低下を適切に抑制することが可能である。この効果は、絶縁障壁層が結晶構造であっても非晶質構造であってもどちらでも有効である。
また上記した絶縁障壁層と上側磁性層の結晶構造の組み合わせにより、前記絶縁障壁層と前記上側磁性層との界面での格子整合性は向上し、前記上側磁性層は結晶性良く形成される。これにより前記上側磁性層のスピン分極率を向上させることが出来る。
以上により、前記下側磁性層及び上側磁性層のスピン分極率を適切に向上させることができ、RA(Rは素子抵抗、Aは素子面積)を小さくし、且つ抵抗変化率(ΔR/R)を大きくすることが可能になる。
本発明では、少なくとも前記絶縁障壁層の一部は、ルチル型構造で形成されることが好ましい。具体的には、前記絶縁障壁層は、酸化チタンで形成されることが好ましい。ルチル型構造を構成する一元素(酸化チタンではチタン)は、体心正方構造をとり、ルチル型構造で形成された絶縁障壁層上に、体心立方構造の上側磁性層が形成されると、前記絶縁障壁層と前記上側磁性層との界面での格子整合性を適切に向上させることが出来る。なお絶縁障壁層が非晶質ライクであっても、非晶質中の短範囲での秩序性が上記した体心立方的、体心正方的あるいはルチル的な原子配列を一部でも有していれば、上記した効果を発揮できるものと考えられる。また、特に酸化チタンを絶縁障壁層として選択すると、後述する実験でも証明されているように、より効果的に、RAを小さく且つ抵抗変化率(ΔR/R)を大きくすることが可能になる。
本発明では、前記下側磁性層は、Co100−xFe(ただし、Feの組成比xは、0at%以上で20at%以下の範囲内)で形成されることが好ましい。これにより前記下側磁性層を、適切に、膜面と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向する面心立方構造で形成できる。
また、本発明では、前記上側磁性層は、Co100−yFe(ただしFeの組成比yは、30at%以上で100at%以下の範囲内)、CoFeAl、CoFeSi、CoFeGa、CoFeGe、CoCr0.6Fe0.4Alで形成されることが好ましい。これにより、前記上側磁性層を、適切に、膜面と平行な方向に代表的に{110}面として表される等価な結晶面が優先配向する体心立方構造で形成できる。
本発明では、前記絶縁障壁層下に前記固定磁性層が形成され、前記固定磁性層は、下から第1固定磁性層、非磁性中間層、及び第2固定磁性層の順に積層された積層フェリ構造で、前記第2固定磁性層が前記絶縁障壁層の下面に接して形成され、
前記絶縁障壁層上に前記フリー磁性層が形成され、前記フリー磁性層は、前記絶縁障壁層の上面に接して形成されるエンハンス層と、前記エンハンス層上に形成される軟磁性層の積層構造で形成され、
前記第2固定磁性層の少なくとも一部が前記下側磁性層で形成され、前記エンハンス層の少なくとも一部が前記上側磁性層で形成されることが好ましい。
前記固定磁性層を構成する第2固定磁性層、及び、前記フリー磁性層の一部を構成するエンハンス層は、共に、抵抗変化率(ΔR/R)に主に寄与する層であり、前記第2固定磁性層及び前記エンハンス層の結晶構造を上記のように適切に調整することで、RAを小さく、且つ抵抗変化率(ΔR/R)を大きくすることが可能である。
上記構成において、前記軟磁性層は、前記上側磁性層の磁歪と逆符号の磁歪の磁歪調整領域を有することが好ましい。このとき、前記上側磁性層はCoFe合金で形成され、前記磁歪調整領域は、NiFe100−Zで形成され、Niの組成比Zは、81.5at%より大きく100at%以下で形成されることが好ましい。このように上側磁性層の磁歪と前記磁歪調整領域の磁歪との符号を逆にすることで、前記フリー磁性層全体の磁歪の絶対値を小さくできる。特に、前記絶縁障壁層の上に前記フリー磁性層が形成される形態では、前記エンハンス層の全部あるいは一部を構成する上側磁性層のFe組成比は体心立方構造を得るために大きくされ、前記上側磁性層の磁歪が正に大きくなることがわかっている。したがって、少なくとも前記軟磁性層の磁歪調整領域での組成を上記のように調整して前記磁歪調整領域での磁歪を負にすることで、フリー磁性層全体の磁歪の絶対値が小さくなるように調整できる。
また本発明では、前記絶縁障壁層の下に前記フリー磁性層が形成され、前記フリー磁性層は、下から、軟磁性層、エンハンス層の順で積層され、前記エンハンス層が前記絶縁障壁層の下面に接して形成され、
前記絶縁障壁層の上に前記固定磁性層が形成され、前記固定磁性層は、下から前記絶縁障壁層の上面に接する第2固定磁性層、非磁性中間層、及び第1固定磁性層の順に積層された積層フェリ構造で形成され、
前記エンハンス層の少なくとも一部が、前記下側磁性層で形成され、前記第2固定磁性層の少なくとも一部が前記上側磁性層で形成される形態であってもよい。
本発明におけるトンネル型磁気検出素子の製造方法は、以下の工程を有することを特徴とするものである。
(a) 下側磁性層を形成し、このとき、少なくとも前記下側磁性層の一部を、膜面と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向する面心立方構造で形成する工程、
(b) 前記下側磁性層上に、少なくとも一部が、非晶質構造、体心立方構造、体心正方構造、又は、ルチル型構造のうち1種又は2種以上の混合状態で形成された絶縁障壁層を形成する工程、
(c) 前記絶縁障壁層上に上側磁性層を形成し、このとき、少なくとも前記上側磁性層の一部を、膜面と平行な方向に代表的に{110}面として表される等価な結晶面が優先配向する体心立方構造で形成する工程、
本発明では、前記(a)工程で、前記下側磁性層を、膜面と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向する面心立方構造で形成するので、前記下側磁性層には、膜面と平行な方向に最稠密面が配向し、前記下側磁性層は前記(b)工程で絶縁障壁層を形成する際の酸化等の影響を受けにくい。
また前記(c)工程では、非晶質構造、体心立方構造、体心正方構造、又は、ルチル型構造を有する絶縁障壁層上に、膜面と平行な方向に代表的に{110}面として表される等価な結晶面が優先配向する体心立方構造を有する上側磁性層を形成するため、絶縁障壁層から上側磁性層への酸素等の拡散を抑制でき、前記絶縁障壁層と前記上側磁性層との界面での格子整合性を適切に向上させることができ、前記上側磁性層を結晶性良く形成できる。
以上により、上記した製造方法では、前記下側磁性層、及び前記上側磁性層のスピン分極率を適切に向上させることができ、したがってRAを小さく、且つ抵抗変化率(ΔR/R)の大きいトンネル型磁気検出素子を適切且つ容易に製造することができる。
本発明では、前記(b)工程において、前記下側磁性層上に、金属層又は半導体層を形成し、前記金属層又は前記半導体層を酸化して酸化絶縁物から成る絶縁障壁層を形成することが好ましい。具体的には、前記(b)工程において、前記下側磁性層上に、チタン層を形成し、前記チタン層を酸化して酸化チタンから成る前記絶縁障壁層を形成することが好ましい。これにより、RAを小さく、且つ抵抗変化率(ΔR/R)の大きいトンネル型磁気検出素子をより適切且つ容易に製造することができて好ましい。
また本発明では、前記(a)工程において、前記下側磁性層を、Co100−xFe(ただし、Feの組成比xは、0以上で20at%以下の範囲内)で形成することが、前記下側磁性層を、適切に、膜面と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向する面心立方構造で形成でき好ましい。
また本発明では、前記(c)工程において、前記上側磁性層を、Co100−yFe(ただしFeの組成比yは、30以上で100at%以下の範囲内)、CoFeAl、CoFeSi、CoFeGa、CoFeGe、CoCr0.6Fe0.4Alで形成することが、前記上側磁性層を、適切に、膜面と平行な方向に代表的に{110}面として表される等価な結晶面が優先配向する体心立方構造で形成でき好ましい。
本発明によれば、RAを小さく且つ抵抗変化率(ΔR/R)を大きくすることができる。
図1は本実施形態のトンネル型磁気抵抗効果素子を備えた再生ヘッドを記録媒体との対向面と平行な方向から切断した断面図である。
トンネル型磁気抵抗効果素子は、例えばハードディスク装置に設けられた浮上式スライダのトレーリング側端部などに設けられて、ハードディスクなどの記録磁界を検出するものである。なお、図中においてX方向は、トラック幅方向、Y方向は、磁気記録媒体からの洩れ磁界の方向(ハイト方向)、Z方向は、ハードディスクなどの磁気記録媒体の移動方向及び前記トンネル型磁気抵抗効果素子の各層の積層方向、である。
図1の最も下に形成されているのは、例えばNiFe合金で形成された下部シールド層21である。前記下部シールド層21上に前記積層体T1が形成されている。なお前記トンネル型磁気抵抗効果素子は、前記積層体T1と、前記積層体T1のトラック幅方向(図示X方向)の両側に形成された下側絶縁層22、ハードバイアス層23、上側絶縁層24とで構成される。
前記積層体T1の最下層は、Ta,Hf,Nb,Zr,Ti,Mo,Wのうち1種または2種以上の元素などの非磁性材料で形成された下地層1である。この下地層1の上に、シード層2が設けられる。前記シード層2は、NiFeCrまたはCrによって形成される。
前記シード層2の上に形成された反強磁性層3は、元素α(ただしαは、Pt,Pd,Ir,Rh,Ru,Osのうち1種または2種以上の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料、又は、元素αと元素α′(ただし元素α′は、Ne,Ar,Kr,Xe,Be,B,C,N,Mg,Al,Si,P,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Ag,Cd,Sn,Hf,Ta,W,Re,Au,Pb、及び希土類元素のうち1種または2種以上の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料で形成される。例えば前記反強磁性層3は、IrMnやPtMnで形成される。
前記反強磁性層3上には固定磁性層4が形成されている。前記固定磁性層4は、下から第1固定磁性層4a、非磁性中間層4b、第2固定磁性層4cの順で積層された積層フェリ構造である。前記反強磁性層3との界面での交換結合磁界及び非磁性中間層4bを介した反強磁性的交換結合磁界(RKKY的相互作用)により前記第1固定磁性層4aと第2固定磁性層4cの磁化方向は互いに反平行状態にされる。これは、いわゆる積層フェリ構造と呼ばれ、この構成により前記固定磁性層4の磁化を安定した状態にでき、また前記固定磁性層4と反強磁性層3との界面で発生する交換結合磁界を見かけ上大きくすることができる。
前記第1固定磁性層4aは、CoFe、NiFe,CoFeNiなどの強磁性材料で形成されている。また非磁性中間層4bは、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuなどの非磁性導電材料で形成される。前記第2固定磁性層4cについては後述する。
前記固定磁性層4上に形成された絶縁障壁層5は、絶縁酸化物で形成される。好ましくは前記絶縁障壁層5は酸化チタン(Ti−O)で形成される。
前記絶縁障壁層5上には、フリー磁性層6が形成されている。前記フリー磁性層6は、NiFe合金等の磁性材料で形成される軟磁性層6bと、前記軟磁性層6bと前記絶縁障壁層5との間に形成されるエンハンス層6aとで構成される。前記軟磁性層6bは、軟磁気特性に優れた磁性材料で形成されることが好ましく、前記エンハンス層6aは、前記軟磁性層6bよりもスピン分極率の大きい磁性材料で形成される。
前記フリー磁性層6のトラック幅方向(図示X方向)の幅寸法でトラック幅Twが決められる。
前記フリー磁性層6上にはTa等の非磁性導電材料で形成された保護層7が形成されている。
図1に示すように、前記積層体T1のトラック幅方向(図示X方向)における両側端面11,11は、下側から上側に向けて徐々に前記トラック幅方向の幅寸法が小さくなるように傾斜面で形成されている。
図1に示すように、前記積層体T1の両側に広がる下部シールド層21上から前記積層体T1の両側端面11上にかけて下側絶縁層22が形成され、前記下側絶縁層22上にハードバイアス層23が形成され、さらに前記ハードバイアス層23上に上側絶縁層24が形成されている。
前記下側絶縁層22と前記ハードバイアス層23間にバイアス下地層(図示しない)が形成されていてもよい。前記バイアス下地層は例えばCr、W、Tiで形成される。
前記絶縁層22,24はAlやSiO等の絶縁材料で形成されたものであり、前記積層体T1内を各層の界面と垂直方向に流れる電流が、前記積層体T1のトラック幅方向の両側に分流するのを抑制すべく前記ハードバイアス層23の上下を絶縁するものである。前記ハードバイアス層23は例えばCo−Pt(コバルト−白金)合金やCo−Cr−Pt(コバルト−クロム−白金)合金などで形成される。
前記積層体T1上及び上側絶縁層24上にはNiFe合金等で形成された上部シールド層26が形成されている。
図1に示す実施形態では、前記下部シールド層21及び上部シールド層26が前記積層体T1に対する電極層として機能し、前記積層体T1の各層の膜面に対し垂直方向(図示Z方向と平行な方向)に電流が流される。
前記フリー磁性層6は、前記ハードバイアス層23からのバイアス磁界を受けてトラック幅方向(図示X方向)と平行な方向に磁化されている。一方、固定磁性層4を構成する第1固定磁性層4a及び第2固定磁性層4cはハイト方向(図示Y方向)と平行な方向に磁化されている。前記固定磁性層4は積層フェリ構造であるため、第1固定磁性層4aと第2固定磁性層4cはそれぞれ反平行に磁化されている。前記固定磁性層4は磁化が固定されている(外部磁界によって磁化変動しない)が、前記フリー磁性層6の磁化は外部磁界により変動する。
前記フリー磁性層6が、外部磁界により磁化変動すると、第2固定磁性層4cとフリー磁性層6との磁化が反平行のとき、前記第2固定磁性層4cとフリー磁性層6との間に設けられた絶縁障壁層5を介してトンネル電流が流れにくくなって、抵抗値は最大になり、一方、前記第2固定磁性層4cとフリー磁性層6との磁化が平行のとき、最も前記トンネル電流は流れ易くなり抵抗値は最小になる。
この原理を利用し、外部磁界の影響を受けてフリー磁性層6の磁化が変動することにより、変化する電気抵抗を電圧変化としてとらえ、記録媒体からの洩れ磁界が検出されるようになっている。
図1の実施形態における特徴的部分について以下に説明する。図1に示す前記固定磁性層4を構成する前記第2固定磁性層(下側磁性層)4cは、前記絶縁障壁層5の下面に接して形成され、前記フリー磁性層6を構成するエンハンス層(上側磁性層)6aは、前記絶縁障壁層5の上面に接して形成され、第2固定磁性層4c/絶縁障壁層5/エンハンス層6aが主に抵抗変化率(ΔR/R)に寄与する層となっている。
本実施形態では、前記絶縁障壁層5の下に形成される前記第2固定磁性層4cの少なくとも一部は、膜面(図示X―Y面)と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向する面心立方構造(fcc)で形成される。ここで、「代表的に{111}面として表される結晶面」とは、ミラー指数を用いて表した結晶格子面を示し、前記{111}面として表される等価な結晶面としては、(111)面、(−111)面、(1−11)面、(11―1)面、(−1−11)面、(−11―1)面、(1―1―1)面、(−1―1―1)面が存在する。
前記第2固定磁性層4cは全体的に、前記面心立方構造で形成されることが好ましいが、一部にのみ形成される場合には、前記面心立方構造は、前記絶縁障壁層5との界面から前記第2固定磁性層4cの内部方向(図示Z方向の逆方向)の途中にかけて形成されていることが好ましい。
図3は面心立方構造の{111}面を平面から見た模式図である。前記面心立方構造の{111}面は最稠密面である。このため、前記絶縁障壁層5を形成する過程での酸化等の影響が前記第2固定磁性層4cの内部にまで及びにくく、前記第2固定磁性層4cの劣化を効果的に抑制できる。
本実施形態では、前記第2固定磁性層4cは、Co100−xFe(ただし、Feの組成比xは、0at%以上で20at%以下の範囲内)で形成されることが好ましい。これにより、前記第2固定磁性層4cを適切に、膜面と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向する面心立方構造(fcc)で形成できる。
上記のようにCoFe合金で前記第2固定磁性層4cを形成するときFe組成比xを小さくする。ここでCoとFeとの酸化物の標準生成自由エネルギーを比較するとFeのほうが酸化物の標準生成自由エネルギーが低いため、FeはCoに比べて酸化されやすいが、面心立方構造を得るためにFe組成比xを小さくすることで酸化の影響を適切に弱めることができる。これにより前記第2固定磁性層4cのスピン分極率を適切に向上させることが出来る。
また前記第2固定磁性層4cが酸化の影響を受けやすい状態であると、前記絶縁障壁層5内の酸素元素が前記第2固定磁性層4c側に引き寄せられやすくなり、前記絶縁障壁層5の内部で酸素量の勾配が生じやすくなるが、本実施形態では、前記第2固定磁性層4cが酸化の影響を受けにくくなっているので、前記絶縁障壁層5内部での酸素量の勾配を極力小さくできる。
次に、前記絶縁障壁層5の少なくとも一部は、非晶質構造、体心立方構造(bcc)、体心正方構造、あるいは、ルチル型構造(rutile structure)のうち1種又は2種以上の混合状態であることが好ましい。前記絶縁障壁層5が、Ti−O、Sn−O、Pd−O、V−O、Nb−O、Mn−O、Ni―F、Mg―Fで形成されると、前記絶縁障壁層5をルチル型構造に出来る。図4は、前記ルチル型構造を示す。例えば酸化チタンの場合、図4に示すようにチタン(Ti)は体心正方構造をとる。
次に、前記エンハンス層6aの少なくとも一部は、体心立方構造(bcc)で、膜面(図示X−Y面)に平行な方向に代表的に{110}面として表される等価な結晶面が優先配向している。ここで、「代表的に{110}面として表される結晶面」とは、ミラー指数を用いて表した結晶格子面を示し、前記{110}面として表される等価な結晶面としては、(110)面、(−110)面、(1−10)面、(−1―10)面、(101)面、(−101)面、(10−1)面、(―10−1)面、(011)面、(0−11面)、(01―1面)、(0−1―1)面が存在する。なお図5は、体心立方構造の{110}面を平面から見た模式図である。
前記エンハンス層6aは全体的に、前記体心立方構造で形成されることが好ましいが、一部にのみ形成される場合には、前記体心立方構造は、前記絶縁障壁層5との界面から前記エンハンス層6aの内部方向(図示Z方向)の途中にかけて形成されていることが好ましい。
{110}面は体心立方構造における最稠密面であり、絶縁障壁層5からエンハンス層6aに拡散する酸素やTi等が前記エンハンス層6aの内部にまで侵入するのを抑制する効果がある。これにより、スピン分極率が大きくなるFe組成比で形成されたエンハンス層6aであっても、アニール等による酸素等の拡散によるスピン分極率の低下を適切に抑制することが可能である。この効果は、絶縁障壁層5が結晶構造であっても非晶質構造であってもどちらでも有効である。
また上記したように、少なくとも前記絶縁障壁層5の一部は、体心立方構造、あるいは体心正方構造、又は、ルチル型構造を有して形成され、少なくとも前記絶縁障壁層5上に形成されるエンハンス層6aの一部は、膜面と平行な方向に代表的に{110}面として表される等価な結晶面が優先配向する体心立方構造で形成されると、前記絶縁障壁層5と前記エンハンス層6aとの界面での格子整合性は向上し、前記エンハンス層6aは結晶性良く形成される。これにより前記エンハンス層6aのスピン分極率を向上させることが出来る。なお絶縁障壁層5が非晶質ライクであっても、非晶質中の短範囲での秩序性が上記した体心立方的、体心正方的あるいはルチル的な原子配列を一部でも有していれば、上記した効果を発揮できるものと考えられる。また、前記絶縁障壁層5は全体的に、非晶質構造、体心立方構造、あるいは体心正方構造、又は、ルチル型構造のうち1種又は2種の混合状態で形成されることが好ましいが、一部にのみ形成される場合には、前記エンハンス層6aとの界面から前記絶縁障壁層5の内部方向(図示Z方向と逆方向)の途中にかけて形成されていることが好ましい。
前記絶縁障壁層5上に形成される前記エンハンス層6aは、Co100−yFe(ただしFeの組成比yは、30at%以上で100at%以下の範囲内)、CoFeAl、CoFeSi、CoFeGa、CoFeGe、CoCr0.6Fe0.4Alで形成されることが好ましい。これにより前記エンハンス層6aを、適切に、膜面と平行な方向に代表的に{110}面として表される等価な結晶面が優先配向する体心立方構造で形成できる。
ところで前記エンハンス層6aをCoFe合金で形成するとき、前記エンハンス層6aのFe組成比yは、前記絶縁障壁層5の下に形成される第2固定磁性層4cをCoFe合金で形成した場合のFe組成比xに比べて大きくされる。これにより前記第2固定磁性層4cを面心立方構造で、前記エンハンス層6aを体心立方構造で適切に形成できる。このように前記エンハンス層6aをCoFe合金で形成する場合、Fe組成比yを大きくすることが必要であるが、Fe組成比yを大きくしても前記絶縁障壁層5の上に形成されるエンハンス層6aは、前記絶縁障壁層5の形成過程での酸化等の影響を受けにくいので、前記絶縁障壁層5の下に形成される第2固定磁性層4cのように、酸化等の影響を特に考慮することなく、前記エンハンス層6aには元々スピン分極率の高い磁性材料を選択することが出来る。
また、前記絶縁障壁層5を金属層又は半導体層を形成した後、前記金属層又は前記半導体層を酸化して成る絶縁酸化物で形成した場合、前記第2固定磁性層4cの前記絶縁障壁層との界面付近は酸化の影響を受けるが、前記絶縁障壁層5の上に形成されるエンハンス層6aのFe組成比を、前記絶縁障壁層5の下に形成される第2固定磁性層4cのFe組成比よりも大きくすることで、前記第2固定磁性層4cの前記絶縁障壁層5との界面付近での酸素が前記エンハンス層6a側に引き寄せられ(すなわち前記第2固定磁性層4cの前記界面付近は還元され)、前記第2固定磁性層4cの前記界面付近での酸素量が減少するものと考えられる。
以上により、前記第2固定磁性層4c及びエンハンス層6aのスピン分極率を適切に向上させることができ、その結果、RA(Rは素子抵抗、Aは素子面積)を小さくし、且つ抵抗変化率(ΔR/R)を大きくすることが可能になる。
前記絶縁障壁層5はルチル型構造を有することが好ましい。具体的には、前記絶縁障壁層5は酸化チタンで形成されることが好ましい。前記絶縁障壁層5を酸化チタンで形成すると、前記絶縁障壁層5の結晶構造は、熱的に最も安定なルチル型構造が支配的となる。図4で説明したように、ルチル型構造を構成する一元素(酸化チタンではチタン)は、体心正方構造をとり、ルチル型構造で形成された絶縁障壁層5上に、体心立方構造のエンハンス層6aが形成されると、前記絶縁障壁層5と前記エンハンス層6aとの界面での格子整合性を適切に向上させることが出来る。また、特に酸化チタンを絶縁障壁層5として選択すると、後述する実験でも証明されているように、より効果的に、RAを小さく且つ抵抗変化率(ΔR/R)を大きくすることが可能になる。前記絶縁障壁層5は、非晶質構造、体心立方構造、あるいは体心正方構造、又はルチル型構造から選択される1種以上と他の結晶構造との混相であってもよい。
前記絶縁障壁層5上に形成されるエンハンス層6aがCoFe合金で形成されるとき、Fe組成比xは上記したように30at%以上で100at%以下の範囲内で形成されることが好ましく、50at%以下で100at%以下の範囲内で形成されることがより好ましく、70at%以上で100at%以下の範囲内で形成されることがさらに好ましい。上記のようにFe組成比Xの下限値を上げていくと、より効果的に、RAを小さく且つ抵抗変化率(ΔR/R)を大きくできることがわかっている。
また前記絶縁障壁層5上に形成される前記エンハンス層6aには、CoFeAl等のホイスラー合金を用いてもよい。ホイスラー合金は、スピン分極率が大きい金属であり、伝導電子のほとんどが、アップスピン電子またはダウン電子のいずれか一方のみからなるハーフメタルである。前記エンハンス層6aにホイスラー合金を用いることで、より適切に抵抗変化率(ΔR/R)を大きくすることができる。
次に前記フリー磁性層6を構成する軟磁性層6bは、NiFe合金で形成されることが、前記軟磁性層6bの軟磁気特性を適切に向上させることができ好ましい。ところで後述する実験に示すように、例えば前記絶縁障壁層5上に形成されるエンハンス層6aをCo50at%Fe50at%で形成し、前記軟磁性層6bを、Ni81.5at%Fe18.5at%で形成したとき、前記エンハンス層6aをCo90at%Fe10at%で形成し、前記軟磁性層6bを、Ni81.5at%Fe18.5at%で形成した場合に比べて、抵抗変化率(ΔR/R)を向上させることが出来るものの、前記フリー磁性層6の磁歪λの絶対値は大きくなってしまうという問題が生じる。したがって、前記軟磁性層6bには、前記エンハンス層6aの磁歪の符号と逆符号の磁歪を有する材質を選択して、前記フリー磁性層6の磁歪の絶対値を小さくすることが好ましい。たとえば、上記したように前記絶縁障壁層5上に形成される前記エンハンス層6aをCoFe合金で形成するときFe組成比を30at%以上に大きくするが、Fe組成比を大きくすると正磁歪となるため、前記軟磁性層6bには負磁歪となる軟磁性材料を選択することが好ましい。
前記エンハンス層6aがCoFe合金で形成され、前記軟磁性層6bがNiFe100−zで形成されるとき、Niの組成比zは、81.5at%より大きく100at%以下で形成されることが好ましい。これにより前記フリー磁性層6の磁歪の絶対値を適切に小さくすることができる。
なおNiの組成比zが、81.5at%より大きく100at%以下で形成されるNiFe100−Zから成る軟磁性層を磁歪調整層として、従来と同様の組成からなる軟磁性層6bと、前記エンハンス層6aとの間に設ける構造であってもよい。
なお組成分析には、SIMS分析装置や電解放射型透過電子顕微鏡(FE−TEM)を用いたナノビーム特性X線分析(Nano−beam EDX)等を用いる。
また図1では前記絶縁障壁層5の下に形成される前記第2固定磁性層4cの全体が本実施形態における「下側磁性層」として形成されるが、例えば、前記第2固定磁性層4cが磁性層の積層構造で、そのうち少なくとも前記絶縁障壁層5と接する磁性層が本実施形態での「下側磁性層」として形成されるものであってもよい。また、積層フェリ構造でなく、前記固定磁性層4が磁性層の単層構造、あるいは磁性層の積層構造で形成される等、図1の形態に限定されない。かかる場合、いずれにしても本実施形態における「下側磁性層」は、前記固定磁性層4の全体あるいは一部(少なくとも前記絶縁障壁層5との接する磁性層)として設けられていればよい。
また、図1では、前記絶縁障壁層5の上に形成される前記エンハンス層6aの全体が本実施形態における「上側磁性層」として形成されるが、例えば、前記エンハンス層6aが磁性層の積層構造で、そのうち、少なくとも前記絶縁障壁層5と接する磁性層が本実施形態での「上側磁性層」として形成されるものであってもよい。あるいは前記フリー磁性層6に前記エンハンス層6aが設けられていない構成である等、図1の形態に限定されない。なお本明細書においてエンハンス層6aとは、前記軟磁性層6bよりスピン分極率が高く、前記軟磁性層6bを構成する少なくとも一元素(NiFeで形成される場合はNi)が前記絶縁障壁層5に拡散するのを防止する役割を有する層である。このようなエンハンス層6aが形成されていなくてもよい。いずれにしても本実施形態において、前記フリー磁性層6の全部あるいは一部(少なくとも前記絶縁障壁層5と接する磁性層)が本実施形態における「上側磁性層」として形成されていればよい。
図1に示す実施形態では、前記絶縁障壁層5の下に固定磁性層4が形成され、前記絶縁障壁層5の上にフリー磁性層6が形成されているが、前記絶縁障壁層5の下にフリー磁性層6が形成され、前記絶縁障壁層5の上に固定磁性層4が形成される形態の場合、具体的には、下から軟磁性層6b/エンハンス層6a/絶縁障壁層5/第2固定磁性層4c/非磁性中間層4b/第1固定磁性層4aの順に積層される場合、少なくとも前記エンハンス層6a(下側磁性層)の一部は、膜面と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向する面心立方構造で形成され、少なくとも前記第2固定磁性層4c(上側磁性層)の一部は、膜面と平行な方向に代表的に{110}面として表される等価な結晶面が優先配向する体心立方構造で形成される。すなわち、図1と逆構造の場合、前記絶縁障壁層5の下に形成される前記エンハンス層6aを、図1に示す第2固定磁性層4cと同じ結晶構造や組成で形成し、前記絶縁障壁層5の上に形成される前記第2固定磁性層4cを、図1に示すエンハンス層6aと同じ結晶構造や組成で形成するのである。
図2は、第2の実施形態のトンネル型磁気抵抗効果素子を備えた再生ヘッドを記録媒体との対向面と平行な方向から切断した断面図である。なお図1と同じ符号が付けられている層は図1と同じ層を示している。
図2では前記トンネル型磁気検出素子はデュアル型となっている。すなわち、前記トンネル型磁気検出素子を構成する積層体T2は、下から、下地層1、シード層2、下側反強磁性層30、下側固定磁性層31、下側絶縁障壁層32、フリー磁性層33、上側絶縁障壁層34、上側固定磁性層35、上側反強磁性層36、及び保護層37の順に積層されている。
前記下側固定磁性層31は、下から下側第1固定磁性層31a、下側非磁性中間層31b、下側第2固定磁性層31cの順に積層された積層フェリ構造である。
前記上側固定磁性層35は、下から上側第2固定磁性層35c、上側非磁性中間層35b、上側第1固定磁性層35aの順に積層された積層フェリ構造である。
前記フリー磁性層33は、エンハンス層33a/軟磁性層33b/エンハンス層33cの順に積層されている。
図2に示す実施形態では、前記絶縁障壁層32,34が2層設けられている。したがって夫々の絶縁障壁層32,34の上下に形成された磁性層の結晶構造を適切に調整する必要がある。なお前記絶縁障壁層32,34の少なくとも一部は、非晶質構造、体心立方構造、あるいは体心正方構造、又は、ルチル型構造のうち1種又は2種以上の混合状態で形成される。
前記下側絶縁障壁層32の下に形成された前記下側第2固定磁性層31c(下側磁性層)の少なくとも一部は、膜面と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向する面心立方構造で形成される。
また、前記下側絶縁障壁層32の上に形成された前記フリー磁性層33の最下層である前記エンハンス層33a(上側磁性層)の少なくとも一部は、膜面と平行な方向に代表的に{110}面として表される等価な結晶面が優先配向する体心立方構造で形成される。
次に、前記上側絶縁障壁層34の下に形成されたフリー磁性層33の最上層であるエンハンス層33c(下側磁性層)の少なくとも一部は、膜面と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向する面心立方構造で形成される。
また、前記上側絶縁障壁層34の上に形成された前記上側第2固定磁性層35c(上側磁性層)の少なくとも一部は、膜面と平行な方向に代表的に{110}面として表される等価な結晶面が優先配向する体心立方構造で形成される。
上記構成により、RAを小さく、且つ抵抗変化率(ΔR/R)を大きくすることができる。
図2に示す各絶縁障壁層32,34上に当接して形成された前記エンハンス層33a及び前記上側第2固定磁性層35cは、図1で説明したエンハンス層6aと同様の組成で形成されることが好ましく、図2に示す各絶縁障壁層32,34の下に当接して形成された前記エンハンス層33c及び、前記下側第2固定磁性層31cは、図1で説明した第2固定磁性層4cと同様の組成で形成されることが好ましい。
本実施形態のトンネル型磁気検出素子の製造方法について説明する。なお各層の材質については図1で説明したのでそちらを参照されたい。
図1に示す実施形態では、下部シールド層21上に、下地層1、シード層2、反強磁性層3、第1固定磁性層4a、非磁性中間層4b、第2固定磁性層4cを連続して同真空中にてスパッタ成膜する。
次に前記同真空中にて、前記第2固定磁性層4c上に、金属層又は半導体層をスパッタ成膜する。
ここで、図1に示す絶縁障壁層5を酸化チタンで形成する場合、Tiターゲットを用い、前記第2固定磁性層4c上にチタン層を形成する。そして、前記チタン層を自然酸化、ラジカル酸化、イオン酸化あるいはプラズマ酸化等により酸化して酸化チタンから成る絶縁障壁層5を形成する。
次に、前記絶縁障壁層5上に、エンハンス層6a、軟磁性層6b及び保護層7を連続して同真空中でスパッタ成膜する。
前記保護層7まで積層した後、磁場中熱処理を施す。磁場をハイト方向(図示Y方向)に向けて行う。これにより前記固定磁性層4を構成する第1固定磁性層4aと前記第2固定磁性層4cとをハイト方向と平行な方向で且つ互いに逆方向に向くように磁化固定できる。
そして図1に示すように、前記積層体T1をトラック幅方向(図示X方向)の幅寸法が下から上に向かうにしたがって徐々に小さくなる略台形状にエッチング加工し、その後、前記積層体T1のトラック幅方向(図示X方向)の両側に下から下側絶縁層22、ハードバイアス層23、上側絶縁層24の順に積層し、さらに前記保護層7上及び前記上側絶縁層24上に上部シールド層26を形成する。
図2に示すトンネル型磁気検出素子の製造方法は、上記した図1に示すトンネル型磁気検出素子の製造方法に準じた方法により形成できる。
本実施形態の製造方法では、前記第2固定磁性層4cの少なくとも一部を、膜面と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向する面心立方構造で形成する。具体的には前記第2固定磁性層4cを、Co100−xFe(ただし、Feの組成比xは、0at%以上で20at%以下の範囲内)で形成する。
また本実施形態では、前記絶縁障壁層5を酸化チタン等のルチル型構造を有する絶縁物で形成する。なおルチル型構造以外に、前記絶縁障壁層5を、非晶質構造、体心立方構造、あるいは、体心正方構造を有する絶縁物で形成してもよい。また前記絶縁障壁層5は、2種以上の上記構造の混合状態であってもよい。
そして、前記絶縁障壁層5上に形成されるエンハンス層6aの少なくとも一部を、膜面と平行な方向に代表的に{110}面として表される等価な結晶面が優先配向する体心立方構造で形成する。具体的には、前記エンハンス層6aを、Co100−yFe(ただしFeの組成比yは、30at%以上で100at%以下の範囲内)、CoFeAl、CoFeSi、CoFeGa、CoFeGe、CoCr0.6Fe0.4Alで形成する。
上記のように、前記絶縁障壁層5の下に形成される前記第2固定磁性層4cの少なくとも一部を、膜面と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向する面心立方構造で形成することで、前記膜面と平行な方向に最稠密面が配向し、前記第2固定磁性層4cは、前記絶縁障壁層5を形成する過程での酸化等の影響を受けにくい。
また前記絶縁障壁層5上に形成される前記エンハンス層6aの少なくとも一部を、膜面と平行な方向に代表的に{110}面として表される等価な結晶面が優先配向する体心立方構造で形成することで、体心立方構造、あるいは体心正方構造、又は、ルチル型構造を有する絶縁障壁層5との界面で格子整合性が向上し、前記エンハンス層6aを結晶性良く形成できる。
また、前記トンネル型磁気検出素子の製造過程において熱処理が施される。上記したように前記固定磁性層4の磁化固定のための熱処理が代表的な熱処理である。このような熱処理により、絶縁障壁層5の結晶質状態を促進でき、前記絶縁障壁層5の上に形成されるエンハンス層6aとの界面での格子整合性をより効果的に、向上させることが出来る。
以上により、本実施形態のトンネル型磁気検出素子の製造方法によれば、主に抵抗変化率(ΔR/R)に寄与する第2固定磁性層4c及び前記エンハンス層6aの双方のスピン分極率を適切に向上させることができ、したがってRAが小さく且つ抵抗変化率(ΔR/R)が大きい前記トンネル型磁気検出素子を適切且つ簡単に製造することが可能である。
なお本実施形態のトンネル型磁気検出素子は、ハードディスク装置のみならずMRAM(磁気抵抗メモリ)として用いられてもよい。
図1に示す構造のトンネル型磁気検出素子を形成した。図1に示す積層体T1の基本膜構成は、下から、
下地層:Ta(80)/シード層:NiFeCr(50)/反強磁性層:IrMn(70)/固定磁性層[第1固定磁性層:Co70at%Fe30at%(14)/非磁性中間層:Ru(8.5)/第2固定磁性層:Co100−xFe/絶縁障壁層:Ti−O(14)/フリー磁性層[Co100−yFe(10)/Ni86at%Fe14at%(40)]/保護層:Ta(200)
なお括弧内の数値は膜厚を示しており、単位はÅである。上記のように前記第2固定磁性層を、Co100−xFeで、前記フリー磁性層を構成するエンハンス層をCo100−yFeで形成した。Fe組成比x、yの単位はat%である。
なお前記絶縁障壁層はTi層を形成した後、前記Ti層を酸化して形成した。
実験では、下記に示す構成A,構成Bあるいは構成Cの夫々に基づいて前記第2固定磁性層のFe組成比x及びエンハンス層のFe組成比yを種々変化させたトンネル型磁気検出素子を形成した。
(構成A)
第2固定磁性層をCo90at%Fe10at%で統一し、前記エンハンス層のCo100−yFeのFe組成比yを0〜100at%まで10at%刻みで形成した各トンネル型磁気検出素子を形成した。
(構成B)
エンハンス層をCo50at%Fe50at%で統一し、第2固定磁性層のCo100−xFeのFe組成比xを0at%、10at%、30at%、及び50at%とした各トンネル型磁気検出素子を形成した。
(構成C)
エンハンス層をCo90at%Fe10at%で統一し、第2固定磁性層のCo100−xFeのFe組成比xを20at%、30at%、40at%、50at%および60at%とした各トンネル型磁気検出素子を形成した。
そして上記により形成された各トンネル型磁気検出素子のRAと抵抗変化率(ΔR/R)との関係を求めるとともに、前記第2固定磁性層と前記エンハンス層の結晶構造を調べた。その結果を図6に示す。
図6に示すように、グループAに含まれるトンネル型磁気検出素子は、第2固定磁性層(絶縁障壁層の下に設けられる磁性層)が面心立方構造(fcc)で、エンハンス層(絶縁障壁層の上に設けられる磁性層)が体心立方構造(bcc)となっている。グループBに含まれるトンネル型磁気検出素子は、第2固定磁性層(絶縁障壁層の下に設けられる磁性層)が体心立方構造(bcc)で、エンハンス層(絶縁障壁層の上に設けられる磁性層)が体心立方構造(bcc)となっている。グループCに含まれるトンネル型磁気検出素子は、第2固定磁性層(絶縁障壁層の下に設けられる磁性層)が体心立方構造(bcc)で、エンハンス層(絶縁障壁層の上に設けられる磁性層)が面心立方構造(fcc)となっている。グループDに含まれるトンネル型磁気検出素子は、第2固定磁性層(絶縁障壁層の下に設けられる磁性層)が面心立方構造(fcc)で、エンハンス層(絶縁障壁層の上に設けられる磁性層)が面心立方構造(fcc)となっている。
図6に示すように、RAを小さく且つ抵抗変化率(ΔR/R)を大きくできるグループはグループAであることがわかった。すなわち、第2固定磁性層(絶縁障壁層の下に設けられる磁性層)を面心立方構造(fcc)で、エンハンス層(絶縁障壁層の上に設けられる磁性層)を体心立方構造(bcc)とすれば、より効果的に、RAを小さく且つ抵抗変化率(ΔR/R)を大きくできることがわかった。
図6に示す実験から、前記絶縁障壁層上に形成されるエンハンス層をCo100−yFeで形成するとき、Fe組成比yを30at%〜100at%の範囲内とすれば前記エンハンス層を体心立方構造で形成できることがわかった。
また前記絶縁障壁層下に形成される第2固定磁性層をCo100−xFeで形成するとき、Fe組成比xを0at%〜20at%で形成すれば、前記第2固定磁性層を面心立方構造で形成出来ることがわかった。
ところでグループAのようにエンハンス層及び第2固定磁性層の結晶構造を適正化することで、RAを小さく且つ抵抗変化率(ΔR/R)を大きくできるのは、絶縁障壁層下に形成される第2固定磁性層は、最稠密面である面心立方構造の{111}面が膜面と平行な方向に優先配向されているため、前記第2固定磁性層は前記絶縁障壁層の形成過程で行われる酸化の影響を受けにくいこと、前記エンハンス層を体心立方構造で形成すると、スピン分極率を大きくできるとともに、エンハンス層は体心立方構造における最稠密面である{110}面が優先配向していることにより、絶縁障壁層からエンハンス層への酸素等の拡散侵入を抑制し、前記エンハンス層のスピン分極率の劣化を抑制すること、酸化チタンで形成された絶縁障壁層はルチル型構造を有するため、前記絶縁障壁層と前記エンハンス層との界面での格子整合性は向上し、前記エンハンス層の結晶性を良好な状態に出来ること等が挙げられる。
次に、前記絶縁障壁層上に形成されるエンハンス層をCo100−yFeで形成したときのより好ましいFe組成比yを導き出すべく、上記構成Aで形成されたトンネル型磁気検出素子を使用して、各トンネル型磁気検出素子のFe組成比yと、RAとの関係、及び、Fe組成比yと抵抗変化率(ΔR/R)との関係について調べた。その結果を図7及び図8に示す。
図7に示すように、Fe組成比yが20at%程度となるとRAは最大となり、前記Fe組成比yを20at%よりも大きくするほど、RAは小さくなることがわかった。
また図8に示すようにFe組成比yが大きくなるほど、抵抗変化率(ΔR/R)は大きくなることがわかった。
図7,図8から、Fe組成比yのより好ましい範囲を50at%〜100at%、さらに好ましい範囲を70at%〜100at%の範囲と設定した。
次に、上記した基本膜構成において、第2固定磁性層をCo90at%Fe10at%、エンハンス層をCo50at%Fe50at%としたトンネル型磁気検出素子を形成し、このトンネル型磁気検出素子を膜厚方向と平行な方向から切断し、その切断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測した。そのTEM写真(実施例)を図9に示す。
また、上記した基本膜構成において、第2固定磁性層及びエンハンス層を共にCo90at%Fe10at%としたトンネル型磁気検出素子を形成し、このトンネル型磁気検出素子を膜厚方向と平行な方向から切断し、その切断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測した。そのTEM写真(比較例)を図10に示す。
図9及び図10では、点線で囲んだ箇所を拡大して示している。図9では拡大写真が4箇所、図10では拡大写真が1箇所である。写真に白く写っている部分がTi−Oで形成された絶縁障壁層であり、前記絶縁障壁層の上下において前記絶縁障壁層よりも色濃い部分が、第2固定磁性層及びエンハンス層である(図9の右下の拡大写真に、各層が表記されている)。
図9の実施例は、図10の比較例に比べて、前記第2固定磁性層及びエンハンス層の部分では膜面と平行な方向に格子縞がはっきり見えることがわかった。また絶縁障壁層の部分では、格子縞が見える箇所とぼやけている箇所があり結晶構造と非晶質構造との混相であると考えられる。
一方、図10の比較例では、前記絶縁障壁層と第2固定磁性層及びエンハンス層との界面付近がぼやける箇所が多く見られ、これは、前記絶縁障壁層と前記第2固定磁性層及びエンハンス層との間で元素拡散が大きく、あるいは、界面での格子整合性が弱く適切に結晶成長していないためであると考えられる。また図10の比較例では、図9の実施例に比べて、第2固定磁性層及びエンハンス層において格子縞が見える部分でも、前記格子縞が斜め方向に走っている箇所が多く、図9の実施例のように膜面と平行な方向に見える格子縞が少なかった。
このように実施例では、前記第2固定磁性層及びエンハンス層の部分で膜面と平行な方向に格子縞がはっきり見え、前記第2固定磁性層及びエンハンス層が、良好な結晶状態を保っていることがわかった。
次に上記の基本膜構成を有するトンネル型磁気検出素子を用い、フリー磁性層の構成を以下の構成とした各トンネル型磁気検出素子の抵抗変化率(ΔR/R)と、各トンネル型磁気検出素子のフリー磁性層の磁歪とを求めた。
前記フリー磁性層の構成を、エンハンス層:Co90at%Fe10at%/軟磁性層:Ni81.5at%Fe18.5at%(比較例1)、エンハンス層:Co50at%Fe50at%/軟磁性層:Ni81.5at%Fe18.5at%(実施例1)、エンハンス層:Co50at%Fe50at%/軟磁性層:Ni86at%Fe14at%(実施例2)とした。
比較例1では、前記エンハンス層(絶縁障壁層の上に形成される磁性層)と第2固定磁性層(絶縁障壁層の下に形成される磁性層)のFe組成比が同じとなっている。前記エンハンス層と前記第2固定磁性層は共に面心立方構造となっている。
一方、実施例1,実施例2はいずれも前記エンハンス層(絶縁障壁層の上に形成される磁性層)のほうが、第2固定磁性層(絶縁障壁層の下に形成される磁性層)に比べてFe組成比が大きくなっている。実施例1,2ではいずれも前記エンハンス層が体心立方構造であり、第2固定磁性層が面心立方構造である。また実施例2のほうが、実施例1よりも軟磁性層のNi組成比を大きくしている。
図11に示すように、実施例1,2のほうが、比較例1に比べて抵抗変化率(ΔR/R)が大きくなることがわかった。
一方、図12に示すように、フリー磁性層の磁歪は、比較例1と実施例2とが小さいのに対し、実施例1では大きくなることがわかった。
前記抵抗変化率(ΔR/R)を大きく、且つ、フリー磁性層の磁歪を小さくするには、実施例2に示すように、軟磁性層の組成を調整する必要があることがわかった。CoFe合金においてFe組成比を大きくしていくとCoFe合金は大きな正磁歪となる。本実施例でのエンハンス層は大きな正磁歪を有する。このため、実施例2のように軟磁性層をNiFe合金で形成した場合にNi組成比を大きくして前記軟磁性層を負磁歪とすることで、前記フリー磁性層の磁歪の絶対値を小さくできることがわかった。具体的にはNi組成比を81.5at%より大きく100at%以下の範囲内にすれば、前記軟磁性層を適切に負磁歪にでき、前記フリー磁性層の磁歪の絶対値を適切に小さくできる。
なお、上記のフリー磁性層の磁歪実験では、前記フリー磁性層を絶縁障壁層の上に設けた構成としている。前記絶縁障壁層の下にフリー磁性層を設ける場合は、そもそも、前記フリー磁性層を構成する前記エンハンス層のFe組成比を面心立方構造にすべく従来と同様に小さくするので、特に軟磁性層の組成変更によって前記フリー磁性層の磁歪調整を行う必要性はない。
本実施形態のトンネル型磁気抵抗効果素子を備えた再生ヘッドを記録媒体との対向面と平行な方向から切断した断面図、 図1とは異なる実施形態のトンネル型磁気検出素子を備えた再生ヘッドを記録媒体との対向面と平行な方向から切断した断面図、 面心立方構造の{111}面を平面から見た模式図、 酸化チタンの結晶構造を示す模式図、 体心立方構造の{110}面を平面から見た模式図、 エンハンス層又は第2固定磁性層のFe組成比が異なる複数のトンネル型磁気検出素子のRAと抵抗変化率(ΔR/R)との関係を、特に結晶構造別にグループ分けして示すグラフ、 絶縁障壁層上に形成されるエンハンス層のFe組成比yとRAとをの関係を示すグラフ、 絶縁障壁層上に形成されるエンハンス層のFe組成比yと抵抗変化率(ΔR/R)との関係を示すグラフ、 第2固定磁性層をCo90at%Fe10at%、エンハンス層をCo50at%Fe50at%としたトンネル型磁気検出素子を形成し、このトンネル型磁気検出素子を膜厚方向と平行な方向から切断し、その切断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測した写真(実施例)、 第2固定磁性層及びエンハンス層を共にCo90at%Fe10at%としたトンネル型磁気検出素子を形成し、このトンネル型磁気検出素子を膜厚方向と平行な方向から切断し、その切断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測した写真(比較例)、 絶縁障壁層の上に形成されるエンハンス層のFe組成比のほうが、前記絶縁障壁層の下に形成される第2固定磁性層のFe組成比よりも大きい実施例1、実施例2(ただし実施例1と実施例2とでは、軟磁性層のNi組成比が異なる)及び、前記エンハンス層のFe組成比と前記第2固定磁性層のFe組成比とが同じ比較例1の各トンネル型磁気検出素子の抵抗変化率(ΔR/R)を示すグラフ、 実施例1,実施例2及び比較例1のフリー磁性層の磁歪の大きさを示すグラフ、
符号の説明
3、30、36 反強磁性層
4、31、35 固定磁性層
4a、31a、35a 第1固定磁性層
4b、31b、35b 非磁性中間層
4c、31c、35c 第2固定磁性層
5、32、34 絶縁障壁層
6、33 フリー磁性層
7、37 保護層

Claims (14)

  1. 下から下側磁性層、絶縁障壁層、上側磁性層の順に積層され、一方の前記磁性層は、磁化が固定される固定磁性層の全部あるいは一部を成し、他方の前記磁性層は、磁化が外部磁界により変動するフリー磁性層の全部あるいは一部を成し、
    少なくとも前記下側磁性層の一部は、膜面と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向する面心立方構造で形成され、
    少なくとも前記絶縁障壁層の一部は、非晶質構造、体心立方構造、体心正方構造、又は、ルチル型構造のうち1種又は2種以上の混合状態で形成され、
    少なくとも前記上側磁性層の一部は、膜面と平行な方向に代表的に{110}面として表される等価な結晶面が優先配向する体心立方構造で形成されることを特徴とするトンネル型磁気検出素子。
  2. 少なくとも前記絶縁障壁層の一部は、ルチル型構造で形成される請求項1記載のトンネル型磁気検出素子。
  3. 前記絶縁障壁層は、酸化チタンで形成される請求項1又は2記載のトンネル型磁気検出素子。
  4. 前記下側磁性層は、Co100−xFe(ただし、Feの組成比xは、0at%以上で20at%以下の範囲内)で形成される請求項1ないし3のいずれかに記載のトンネル型磁気検出素子。
  5. 前記上側磁性層は、Co100−yFe(ただしFeの組成比yは、30at%以上で100at%以下の範囲内)、CoFeAl、CoFeSi、CoFeGa、CoFeGe、CoCr0.6Fe0.4Alで形成される請求項1ないし4のいずれかに記載のトンネル型磁気検出素子。
  6. 前記絶縁障壁層下に前記固定磁性層が形成され、前記固定磁性層は、下から第1固定磁性層、非磁性中間層、及び第2固定磁性層の順に積層された積層フェリ構造で、前記第2固定磁性層が前記絶縁障壁層の下面に接して形成され、
    前記絶縁障壁層上に前記フリー磁性層が形成され、前記フリー磁性層は、前記絶縁障壁層の上面に接して形成されるエンハンス層と、前記エンハンス層上に形成される軟磁性層の積層構造で形成され、
    前記第2固定磁性層の少なくとも一部が前記下側磁性層で形成され、前記エンハンス層の少なくとも一部が前記上側磁性層で形成される請求項1ないし5のいずれかに記載のトンネル型磁気検出素子。
  7. 前記軟磁性層は、前記上側磁性層の磁歪と逆符号の磁歪の磁歪調整領域を有する請求項6記載のトンネル型磁気検出素子。
  8. 前記上側磁性層はCoFe合金で形成され、前記磁歪調整領域は、NiFe100−zで形成され、Niの組成比zは、81.5at%より大きく100at%以下で形成される請求項7記載のトンネル型磁気検出素子。
  9. 前記絶縁障壁層の下に前記フリー磁性層が形成され、前記フリー磁性層は、下から、軟磁性層、エンハンス層の順で積層され、前記エンハンス層が前記絶縁障壁層の下面に接して形成され、
    前記絶縁障壁層の上に前記固定磁性層が形成され、前記固定磁性層は、下から前記絶縁障壁層の上面に接する第2固定磁性層、非磁性中間層、及び第1固定磁性層の順に積層された積層フェリ構造で形成され、
    前記エンハンス層の少なくとも一部が、前記下側磁性層で形成され、前記第2固定磁性層の少なくとも一部が前記上側磁性層で形成される請求項1ないし5のいずれかに記載のトンネル型磁気検出素子。
  10. 以下の工程を有することを特徴とするトンネル型磁気検出素子の製造方法。
    (a) 下側磁性層を形成し、このとき、少なくとも前記下側磁性層の一部を、膜面と平行な方向に代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向する面心立方構造で形成する工程、
    (b) 前記下側磁性層上に、少なくとも一部が、非晶質構造、体心立方構造、体心正方構造、又は、ルチル型構造のうち1種又は2種以上の混合状態で形成された絶縁障壁層を形成する工程、
    (c) 前記絶縁障壁層上に上側磁性層を形成し、このとき、少なくとも前記上側磁性層の一部を、膜面と平行な方向に代表的に{110}面として表される等価な結晶面が優先配向する体心立方構造で形成する工程、
  11. 前記(b)工程において、前記下側磁性層上に、金属層又は半導体層を形成し、前記金属層又は前記半導体層を酸化して酸化絶縁物から成る絶縁障壁層を形成する請求項10記載のトンネル型磁気検出素子の製造方法。
  12. 前記(b)工程において、前記下側磁性層上に、チタン層を形成し、前記チタン層を酸化して酸化チタンから成る前記絶縁障壁層を形成する請求項11記載のトンネル型磁気検出素子の製造方法。
  13. 前記(a)工程において、前記下側磁性層を、Co100−xFe(ただし、Feの組成比xは、0at%以上で20at%以下の範囲内)で形成する請求項10ないし12のいずれかに記載のトンネル型磁気検出素子の製造方法。
  14. 前記(c)工程において、前記上側磁性層を、Co100−yFe(ただしFeの組成比yは、30at%以上で100at%以下の範囲内)、CoFeAl、CoFeSi、CoFeGa、CoFeGe、CoCr0.6Fe0.4Alで形成する請求項10ないし13のいずれかに記載のトンネル型磁気検出素子の製造方法。
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