JP2003313649A - 窒化処理方法および焼結部材 - Google Patents

窒化処理方法および焼結部材

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JP2003313649A
JP2003313649A JP2002122110A JP2002122110A JP2003313649A JP 2003313649 A JP2003313649 A JP 2003313649A JP 2002122110 A JP2002122110 A JP 2002122110A JP 2002122110 A JP2002122110 A JP 2002122110A JP 2003313649 A JP2003313649 A JP 2003313649A
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nitriding
gas
sintered body
nitrogen
sintered
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Hitoshi Yano
仁 谷野
Hiroshi Okajima
博司 岡島
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Toyota Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 面圧疲労強度を有する焼結部材を得ることが
できる焼結体への窒化処理方法および焼結部材を提供す
ること。 【解決手段】 本発明の窒化処理方法は、窒素が含まれ
るガス雰囲気中で焼結体を陰極としてグロー放電を生じ
させる窒化処理方法において、窒素が含まれるガス雰囲
気を構成する窒素を有するガスのガス分圧が150Pa
以下であることを特徴とする。また、本発明の焼結部材
は、焼結体に窒化処理方法が施されてなる。本発明の窒
化処理方法は、化合物層の厚さを薄くすることができ、
焼結体に封孔処理やプレス等の処理を施すことなく、面
圧疲労強度に優れた焼結部材を製造することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、焼結体に窒化処理
を施す窒化処理方法に関し、詳しくは、化合物層の生成
が抑制された焼結部材を製造することができる窒化処理
方法およびその窒化処理方法が施されてなる焼結部材に
関する。
【0002】
【従来の技術】近年、様々な用途の部材に、圧粉体を焼
結して製造した焼結部材が用いられている。
【0003】高強度を要求される焼結部材には、焼き入
れ、焼き戻しや、窒化処理等の各種熱処理が施されてい
る。これらの熱処理が施された焼結部材は、高い疲労強
度を有する。
【0004】これらの熱処理のうち、特に寸法精度を要
求される部品においては、熱処理時の寸法変化の小さい
窒化処理が利用されている。すなわち、焼き入れ、焼き
戻しなどの変態を伴う熱処理を行うと、処理後の焼結部
材の寸法精度が大きく低下し、新たに寸法精度を上げる
ための加工が必要になり、コストの上昇を招いていた。
【0005】一般に、焼結体に窒化処理を施すと、表面
側の化合物層と、化合物層の内部の拡散層と、からなる
窒化層が形成される。
【0006】窒化層の表面側に形成される化合物層は、
脆弱であることが知られている。脆弱な化合物層には、
剥離が生じやすいという問題があった。エンジンのカム
などの摺動部材に窒化処理が施された焼結部材を用いる
ためには、機械加工を施して脆弱な化合物層を除去する
必要があった。
【0007】さらに、焼結体に施される窒化処理がガス
窒化処理のときには、焼結部材の内部に脆弱な化合物層
が存在するという問題があった。すなわち、窒化処理が
行われているときに、焼結体の空孔を通って窒素ガスが
内部に侵入し、この空孔の表面に化合物層を有する窒化
層を形成するためである。そして、焼結部材の内部に化
合物層が存在すると、化合物層の剥離、破壊起点になる
等の理由から、高強度を有する焼結部材が得られなくな
る。
【0008】このような問題を解決するために、窒化処
理の前処理として水蒸気等により封孔処理を施したり、
プレスなどにより高密度化して空孔を減少させる処理方
法があった。すなわち、空孔量を減らすことで、窒素ガ
スが空孔を通って焼結体の内部に侵入することを抑えて
いる。
【0009】しかしながら、これらの処理を施すこと
で、焼結部材を得るための加工コストが上昇するという
問題があった。
【0010】そして、空孔の表面に化合物層を形成しな
い窒化処理方法として、イオン窒化処理法がある。一般
的なイオン窒化処理は、被処理物を窒素ガス(N2)、
水素ガス(H2)および他のガスの混合物の雰囲気中に
配し、被処理物を陰極としたグロー放電を起こさせるこ
とで、窒素原子を被処理物に拡散侵入させる処理方法で
ある。
【0011】しかしながら、イオン窒化処理は、表面に
厚い化合物層が形成されるという問題を有していた。
【0012】上述したように、窒化処理が施された焼結
部材においては、高い面圧疲労強度が得られないという
問題があった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記実情に鑑
みてなされたものであり、高い面圧疲労強度を有する焼
結部材を得ることができる焼結体への窒化処理方法およ
び焼結部材を提供することを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明者らは窒化処理における処理条件について検討
を重ねた結果、窒化処理を行うときの窒素換算のガス分
圧を低下させることで、厚い化合物層の形成が抑えられ
た窒化層が形成されることを見いだした。
【0015】すなわち、本発明の窒化処理方法は、鉄系
金属粉末の圧粉体が焼結されてなる焼結体を窒素が含ま
れるガス雰囲気中に保持し、焼結体を陰極としてグロー
放電を生じさせる窒化処理方法において、窒素が含まれ
るガス雰囲気を構成する窒素を有するガスのガス分圧が
150Pa以下であることを特徴とする。
【0016】本発明の窒化処理方法は、窒化処理時の窒
素を有するガスのガス分圧を150Pa以下としたこと
で、処理により形成される化合物層の厚さを薄くするこ
とができる。すなわち、本発明の窒化処理方法は、焼結
体に封孔処理やプレス等の処理を施すことなく、面圧疲
労強度に優れた焼結部材を製造することができる。
【0017】また、本発明の焼結部材は、金属粉末の圧
粉体が焼結されてなる焼結体を窒素が含まれるガス雰囲
気中に保持し、焼結体を陰極としてグロー放電を生じさ
せて形成された焼結部材であって、窒素ガス雰囲気を構
成する窒素を有するガスのガス分圧が150Pa以下で
あり、かつ化合物層の厚さが8μm以下であることを特
徴とする。
【0018】本発明の焼結部材は、窒素を有するガスの
ガス分圧が150Pa以下で窒化処理が施されて化合物
層の厚さが8μm以下としている。また、本発明の焼結
部材は、化合物層の厚さが8μm以下と薄くなっている
ため、面圧疲労強度に優れた焼結部材となっている。
【0019】
【発明の実施の形態】(窒化処理方法)本発明の窒化処
理方法は、鉄系金属粉末の圧粉体が焼結されてなる焼結
体を窒素が含まれるガス雰囲気中に保持し、焼結体を陰
極としてグロー放電を生じさせる窒化処理方法におい
て、窒素が含まれるガス雰囲気を構成する窒素を有する
ガスのガス分圧が150Pa以下である。
【0020】本発明の窒化処理方法は、金属粉末の圧粉
体が焼結されてなる焼結体を窒素が含まれるガス雰囲気
中に保持し、焼結体を陰極としてグロー放電を行うこと
で、焼結体を窒化できる。すなわち、本発明の窒化処理
方法において施される窒化処理は、窒素が含まれるガス
雰囲気中でグロー放電を行うことで、雰囲気ガスがイオ
ン化されるとともにイオン化したガスの成分が焼結体と
衝突を生じ、スパッタリング作用等により窒化を進行さ
せる窒化処理である。
【0021】そして、本発明の窒化処理方法は、窒素が
含まれるガス雰囲気を構成する窒素を有するガスのガス
分圧が150Pa以下となることで、焼結体が窒化処理
されて形成される化合物層の厚さを薄くすることができ
る。すなわち、雰囲気中の窒素量をかなり少なくするこ
とで、焼結体の表面に生じる化合物層の厚さを薄くでき
る。
【0022】また、焼結体等の被処理物の表面を窒化で
きる従来の窒化処理方法として、イオン窒化処理、プラ
ズマ窒化処理、ラジカル窒化処理と呼ばれる窒化処理方
法があった。しかしながら、これらの窒化処理方法にお
いて、窒素が含まれるガス雰囲気を構成する窒素を有す
るガスのガス分圧は200Pa以上と大きく、化合物層
の厚さが厚くなっていた。
【0023】本発明の窒化処理方法において、窒化処理
が施される焼結体は鉄系金属粉末の圧粉体が焼結されて
なる焼結体であれば、限定されるものではない。すなわ
ち、焼結体を形成するための焼結体の製造方法につい
て、特に限定されるものではない。
【0024】鉄系金属は、全体を100wt%としたと
きに、0.2〜1.5%のCと、0.5〜5%のCr、
V、Al、Mn、Mo、Ti、Niより選ばれる少なく
とも1種の元素と、残部のFeと、からなることが好ま
しい。
【0025】Cは、Fe系材料の強度にもっとも影響を
与える元素であることが知られている。そして、本発明
において、含有量を0.2〜1.5%とすることで、高
強度の焼結部材を得られる。
【0026】窒化処理において高硬度の窒化層を得るた
めには、被処理物が窒化物形成元素を有することが求め
られる。この窒化物形成元素がCr、V、Al、Mn、
Mo、Ti、Niである。これらの窒化物形成元素は、
含有量が多くなるほど焼結体の硬度を高くできる。そし
て、これらの窒化物形成元素は焼き入れ性向上元素でも
あり0.5%以上含有することで、窒化処理が施された
ときに窒化しない内部の生地部の強度が上昇する。すな
わち、焼結体の製造工程中の焼結後の冷却過程において
ベイナイト、マルテンサイト或いはこれらの混合組織と
なり焼結体の強度が上昇する。また、含有量が5%を超
えて多くなると、圧粉体の成形時の圧縮性が低下するよ
うになる。これらの元素において、鉄系金属は、特にC
rを含有することが好ましい。
【0027】窒化反応時のグロー放電を生じさせるため
の陽極は、特に限定されるものではないが、窒化反応の
反応室を形成する炉を陽極とすることが好ましい。ま
た、グロー放電を生じさせるための放電電圧は、特に限
定されるものではない。たとえば、300〜1000V
で放電が行われることが好ましい。
【0028】窒化反応時の窒素が含まれるガス雰囲気全
体の圧力は、100〜3000Paであることが好まし
い。ガス雰囲気全体の圧力が100Pa以上に維持され
ることで、焼結体に窒化反応を生じさせることができ
る。
【0029】窒化処理時に焼結体の保持される雰囲気が
窒素を有することで、グロー放電を生じることで窒化反
応が進行するようになる。すなわち、窒素が含まれるガ
ス雰囲気を構成する窒素を有するガスが反応時の窒素イ
オンの窒素源となる。また、窒素を有するガスとは、特
に限定されないが、アンモニアガス(NH3)、窒素ガ
ス(N2)であることが好ましい。また、焼結体の保持
される雰囲気において、窒素を有するガス以外の成分の
ガスとしては、特に限定あれるものではない。たとえ
ば、水素ガス(H2)、メタンガス(CH4)をあげるこ
とができる。
【0030】窒化反応時に焼結体は、400〜600℃
に加熱されたことが好ましい。焼結体が400℃以上に
加熱されることで、窒化反応が進行するようになる。
【0031】処理後に形成される化合物層の厚さが8μ
m以下であることが好ましい。化合物層の厚さが8μm
以下となることで、面圧強度に優れた焼結部材が得られ
るようになる。
【0032】本発明の窒化処理方法が施される焼結体
は、前処理が施されることが好ましい。前処理を焼結体
に施すことで、窒化反応の進行が阻害されなくなる。す
なわち、焼結体は、酸化被膜や取り扱い時に付着した油
脂等が表面に付着しているため、これらを除去する前処
理を施すことが好ましい。
【0033】本発明の窒化処理方法は、焼結体の外表面
に窒化層を形成する窒化処理であるとともに、窒化層中
の化合物層の厚さを薄くすることができる。すなわち、
破壊起点となる化合物層の形成が抑えられているため、
高い硬度を有する拡散層の特性が発揮されるようにな
る。この結果、本発明の処理方法が施された焼結体の面
圧疲労強度が向上する。
【0034】本発明の窒化処理方法は、カムやギアなど
の高面圧が負荷される部材の処理に適している。
【0035】本発明の窒化処理方法は、窒化処理時の窒
素を有するガスのガス分圧を150Pa以下としたこと
で、処理により形成される化合物層の厚さを薄くするこ
とができる。すなわち、本発明の窒化処理方法は、焼結
体に封孔処理やプレス等の処理を施すことなく、面圧疲
労強度に優れた焼結部材を製造することができる。
【0036】(焼結部材)本発明の焼結部材は、金属粉
末の圧粉体が焼結されてなる焼結体を窒素が含まれるガ
ス雰囲気中に保持し、焼結体を陰極としてグロー放電を
生じさせて形成された焼結部材であって、窒素ガス雰囲
気を構成する窒素を有するガスのガス分圧が150Pa
以下であり、かつ化合物層の厚さが8μm以下である。
【0037】本発明の焼結部材が、鉄系金属粉末の圧粉
体が焼結されてなる焼結体を窒素が含まれるガス雰囲気
中に保持し、焼結体を陰極としてグロー放電を生じさせ
て形成された焼結部材であることで、内部の空孔の表面
に形成されることなく、外表面に窒化層が形成された焼
結部材となる。すなわち、本発明の焼結部材に施された
窒化処理は、窒素が含まれるガス雰囲気中でグロー放電
を行うことで、雰囲気ガスがイオン化されるとともにイ
オン化したガスの成分が焼結体と衝突を生じ、スパッタ
リング作用等により窒化を進行させる窒化処理である。
【0038】窒素混合ガス雰囲気中の窒素ガス分圧が1
50Pa以下で窒化処理が施されることで、焼結体が窒
化処理されて形成される化合物層の厚さを薄くすること
ができる。すなわち、雰囲気中の窒素量をかなり少なく
することで、焼結体の表面に生じる化合物層の厚さを薄
くできる。
【0039】焼結体等の被処理物の表面を窒化できる従
来の窒化処理方法として、イオン窒化処理、プラズマ窒
化処理、ラジカル窒化処理と呼ばれる窒化処理方法があ
った。しかしながら、これらの窒化処理方法において、
窒素が含まれるガス雰囲気を構成する窒素を有するガス
のガス分圧は200Pa以上と大きく、化合物層の厚さ
が厚くなっていた。
【0040】本発明の焼結部材は、化合物層の厚さが8
μm以下となることで、高い硬度を有する拡散層の特性
が発揮されるようになる。すなわち、破壊起点となる化
合物層の形成が抑えられているためである。この結果、
本発明の焼結部材は、高い面圧疲労強度を有する。
【0041】本発明の焼結部材において、窒化処理が施
される焼結体は鉄系金属粉末の圧粉体が焼結されてなる
焼結体であれば、限定されるものではない。すなわち、
焼結体を形成するための製造方法について、特に限定さ
れるものではない。
【0042】鉄系金属は、全体を100wt%としたと
きに、0.2〜1.5%のCと、0.5〜5%のCr、
V、Al、Mn、Mo、Ti、Niより選ばれる少なく
とも1種の元素と、残部のFeと、からなることが好ま
しい。
【0043】Cは、Fe系材料の強度にもっとも影響を
与える元素であることが知られている。そして、本発明
において、含有量を0.2〜1.5%とすることで、高
強度の焼結部材を得られる。
【0044】窒化処理において高硬度の窒化層を得るた
めには、被処理物が窒化物形成元素を有することが求め
られる。この窒化物形成元素がCr、V、Al、Mn、
Mo、Ti、Niである。これらの窒化物形成元素は、
含有量が多くなるほど焼結体の硬度を高くできる。そし
て、これらの窒化物形成元素は焼き入れ性向上元素であ
り、0.5%以上含有することで、窒化処理が施された
ときに窒化しない内部の生地部の強度が上昇する。すな
わち、焼結体の製造工程中の焼結後の冷却過程において
ベイナイト、マルテンサイト或いはこれらの混合組織と
なり焼結体の強度が上昇する。また、含有量が5%を超
えて多くなると、圧粉体の成形時の圧縮性が低下するよ
うになる。これらの元素において、鉄系金属は、特にC
rを含有することが好ましい。
【0045】窒化反応時のグロー放電を生じさせるため
の陽極は、特に限定されるものではないが、窒化反応の
反応室を形成する炉を陽極とすることが好ましい。ま
た、グロー放電を生じさせるための放電電圧は、特に限
定されるものではない。たとえば、300〜1000V
で放電が行われることが好ましい。
【0046】窒化反応時の窒素が含まれるガス雰囲気全
体の圧力は、100〜3000Paであることが好まし
い。ガス雰囲気全体の圧力が100Pa以上に維持され
ることで、焼結体に窒化反応を生じさせることができ
る。
【0047】窒化処理時に焼結体の保持される雰囲気が
窒素を有することで、グロー放電を生じることで窒化反
応が進行するようになる。すなわち、窒素が含まれるガ
ス雰囲気を構成する窒素を有するガスが反応時の窒素イ
オンの窒素源となる。また、窒素を有するガスとは、特
に限定されないが、アンモニアガス(NH3)、窒素ガ
ス(N2)であることが好ましい。また、焼結体の保持
される雰囲気において、窒素を有するガス以外の成分の
ガスとしては、特に限定あれるものではない。たとえ
ば、水素ガス(H2)、メタンガス(CH4)をあげるこ
とができる。
【0048】窒化反応時に焼結体は、400〜600℃
に加熱されたことが好ましい。焼結体が400℃以上に
加熱されることで、窒化反応が進行するようになる。
【0049】本発明の焼結部材は、カム、ギアなどの高
面圧が負荷される部材であることが好ましい。
【0050】本発明の焼結部材は、窒化処理時の窒素を
有するガスのガス分圧を150Pa以下とし、処理によ
り形成される化合物層の厚さを8μm以下としている。
すなわち、本発明の焼結部材は、高い面圧疲労強度を有
する部材となっている。さらに、本発明の焼結部材は、
焼結体に封孔処理やプレス等の処理を施していないた
め、安価に製造できる。
【0051】
【実施例】以下、実施例を用いて本発明を説明する。
【0052】本発明の実施例として、焼結体を製造しイ
オン窒化処理を施した。
【0053】(実施例1)まず、平均粒径80μmの金
属粉末99.4重量部と、10μm以下の黒鉛粉末0.
6重量部と、10μm以下の潤滑剤であるステアリン酸
亜鉛粉末0.8重量部と、を秤量した。なお、金属粉末
は、Fe−1wt%Cr−0.3wt%Mo−0.3w
t%Vの組成を有していた。
【0054】秤量された各粉末をV型混粉機に投入し
て、30分間混粉した。V型混粉機により混粉された混
合粉末を5880kN(600tf)の圧力でプレス
し、密度が7.1g/cm3の平カム形状の成形体を形
成した。
【0055】形成された成形体を、加熱炉内に配置し
た。そして、大気雰囲気中で加熱炉の内部温度を112
5℃に上昇させた。1125℃で30分間保持し、成形
体を焼結して焼結体を得た。そして、30℃/分の冷却
速度で焼結体を冷却した。
【0056】つづいて、得られた焼結体にイオン窒化処
理を施した。
【0057】具体的なイオン窒化処理は、まず、焼結体
を内部の雰囲気を調節できるイオン窒化炉内に配置し
た。つづいて、真空ポンプにより窒化炉内中の空気を排
気し、排気を続けながら水素ガスを2000ml/分で
供給し、炉内雰囲気を650Paに維持した。同時に加
熱ヒーターを用いて焼結体の温度を550℃に加熱し
た。
【0058】その後、窒化炉にもうけられた直流電源か
ら600Vの電圧を焼結体に印加して水素ガスによる直
流グロー放電プラズマを起こし、窒化炉の内壁と焼結体
の表面を10分間清浄化した。続いて、窒化炉内に水素
ガスと窒素ガスとからなる窒素混合ガスを2500ml
/分の流量で導入した。このときの窒化炉内の圧力は、
800Paであった。そして、焼結体を陰極として、印
加電圧600Vでグロー放電を生じさせた。グロー放電
による反応時間は10時間であった。また、窒素混合ガ
ス中の窒素ガス分圧は、25〜320Paの間で調節さ
れた。
【0059】以上のイオン窒化処理により、実施例の焼
結部材が得られた。
【0060】(比較材)実施例において作製された焼結
体にガス軟窒化処理を施した比較材を作製した。
【0061】比較材は、実施例と同様に焼結体を製造
し、以下に示したガス軟窒化処理を施して製造した。
【0062】ガス軟窒化処理は、Rxガス:NH3ガス=
50:50のガス雰囲気中で570℃で30分間処理す
ることでなされた。
【0063】(評価)実施例において製造された焼結部
材の化合物層の厚さを測定した。化合物層の厚さの測定
は、焼結部材を切断して樹脂に埋め込んだ後に、水研
磨、バフ研磨を施して、エッチング処理を施した。そし
て、エッチング処理された表面の組織をレーザー顕微鏡
で拡大撮影し、撮影された画像から化合物層の厚さを測
定した。測定された化合物層の厚さと窒素ガス分圧との
関係を図3に示した。また、窒素ガス分圧が100Pa
の窒化処理が施された焼結部材および比較材の表面近傍
の断面写真を図1および図2に示した。
【0064】図3より、窒素ガス分圧が大きくなればな
るほど、化合物層の厚さが大きくなっていることがわか
る。すなわち、窒素ガス分圧を150Pa以下とするこ
とで化合物層の厚さを8μm以下とできる。
【0065】また、実施例において製造された焼結部材
の面圧疲労強度を測定した。この面圧疲労強度の測定
は、実機評価が施され、ピッチング面積率を測定するこ
とで行われた。すなわち、実機評価用の焼結部材として
エンジンのカムを製造し、このカムを組み付けたエンジ
ンを稼働し、稼働終了後のカム表面のピッチング面積率
を測定した。
【0066】詳しくは、まず、S45相当材を用いて、
カムがシャフトに焼きばめされたカムシャフトを製造し
た。製造されたカムシャフト、カムシャフトのカムが摺
動するバルブリフタを洗浄、乾燥して摺動面を清浄化し
た。洗浄されたカムシャフトおよびバルブリフタの摺動
面にエンジンオイルを塗布し、実際のエンジンに組み付
けた。バルブクリアランスを調節した後に、エンジンを
稼働した。エンジンは、アイドル回転数で4000時間
稼働された。そして、エンジンが停止した後に、カムを
取り外し、カム表面のピッチング面積率を測定した。
【0067】また、ピッチング面積率の測定は、エンジ
ンで摺動したカムの表面を写真撮影し、撮影された写真
に画像処理を施すことでなされた。測定されたピッチン
グ面積率と窒化処理時の窒素ガス分圧の関係を図4に示
した。
【0068】具体的には、まず、カムの摺動面中のカム
山の頂点近傍の摺動面部におけるピッチング面積を求め
た。得られたピッチング面積が摺動面部の面積中に占め
る割合を算出し、ピッチング面積率とした。なお、カム
山の頂点近傍の摺動面部は、カム山の頂点とカムの回転
軸の軸心とを結ぶ直線を対称軸として±15°の範囲の
摺動面である。ここで、摺動面部がわかるようにカムの
側面図を図5に、ピッチング面積率を算出する数式を数
1に示した。
【0069】
【数1】
【0070】図4より、化合物層の厚さが大きくなるに
つれてピッチング面積率が増加していることがわかる。
さらに、化合物層の厚さが8μmより大きくなると、ピ
ッチング面積率が急増している。すなわち、化合物層の
厚さが8μm以下となることで、高い面圧疲労強度が得
られることがわかる。
【0071】(実施例2)実施例2として、組成の異な
る金属粉末よりなる焼結体に本発明の窒化処理を施して
カムを製造した。
【0072】詳しくは、まず、表1に示した組成の金属
粉末を用いて実施例1と同様にしてカム形状を有する焼
結体を製造した。そして、窒素ガス分圧を100Pa、
処理時間を15時間とした以外は、実施例1と同様の窒
化処理を焼結体に施して実施例2のカムを製造した。
【0073】
【表1】
【0074】(評価)実施例2のカムの評価として、窒
化処理が施された表面の硬度(Hv0.2)を測定し
た。測定結果を表1にあわせて示した。カムの表面の硬
度(Hv0.2)の測定は、カムを切断しバフ研磨によ
り空孔出しを行い、表面から50μmの地点で空孔の無
い部分を選んで硬さ測定を行うことで行われた。
【0075】表1より、0.2〜1.5%のCと、0.
5〜5%のCr、V、Al、Mn、Mo、Ti、Niよ
り選ばれる少なくとも1種の元素と、残部のFeと、か
らなる試料3〜11のカムは、Hvが900以上と高い
硬度を有することがわかる。そして、カムの高い硬度
は、十分な厚さの拡散層が形成されかつ化合物層の厚さ
が薄いことを示し、耐ピッチング性が高いことを示す。
【0076】すなわち、実施例2においては、焼結体を
形成するための材料が0.2〜1.5%のCと、0.5
〜5%のCr、V、Al、Mn、Mo、Ti、Niより
選ばれる少なくとも1種の元素と、残部のFeと、から
なることで、面圧疲労強度に優れたカムを製造できるこ
とがわかる。
【0077】
【発明の効果】本発明の窒化処理方法は、窒化処理時の
窒素ガス分圧を150Pa以下としたことで、窒化層の
化合物層の厚さを薄くすることができる。この結果、本
発明の窒化処理方法は、封孔処理やプレス等の処理を施
すことなく、面圧疲労強度に優れた焼結部材を製造する
ことができる。
【0078】また、本発明の焼結部材は、上述の窒化処
理方法が施されてなる焼結部材であることから、強度に
優れた焼結部材となっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 窒素ガス分圧が100Paの窒化処理が施さ
れた試料の表面近傍の断面写真である。
【図2】 比較材の表面近傍の断面写真である。
【図3】 窒素ガス分圧と化合物層の厚さの関係を示し
た図である。
【図4】 化合物層の厚さとピッチング面積率の関係を
示した図である。
【図5】 カムの側面を示した図である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成14年5月9日(2002.5.9)
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正内容】
【図2】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4K018 AA24 AA30 AA32 AA34 FA08 KA02 KA03 4K028 BA02 BA12

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉄系金属粉末の圧粉体が焼結されてなる
    焼結体を窒素が含まれるガス雰囲気中に保持し、該焼結
    体を陰極としてグロー放電を生じさせる窒化処理方法に
    おいて、 該窒素が含まれるガス雰囲気を構成する窒素を有するガ
    スのガス分圧が150Pa以下であることを特徴とする
    窒化処理方法。
  2. 【請求項2】 処理後に形成される化合物層の厚さが8
    μm以下である請求項1記載の窒化処理方法。
  3. 【請求項3】 前記鉄系金属は、全体を100wt%と
    したときに、0.2〜1.5%のCと、0.5〜5%の
    Cr、V、Al、Mn、Mo、Ti、Niより選ばれる
    少なくとも1種の元素と、残部のFeと、からなる請求
    項1記載の窒化処理方法。
  4. 【請求項4】 鉄系金属粉末の圧粉体が焼結されてなる
    焼結体を窒素が含まれるガス雰囲気中に保持し、該焼結
    体を陰極としてグロー放電を生じさせて形成された焼結
    部材であって、該窒素が含まれるガス雰囲気を構成する
    窒素を有するガスのガス分圧が150Pa以下であり、
    かつ化合物層の厚さが8μm以下であることを特徴とす
    る焼結部材。
  5. 【請求項5】 前記鉄系金属は、全体を100wt%と
    したときに、0.2〜1.5%のCと、0.5〜5%の
    Cr、V、Al、Mn、Mo、Ti、Niより選ばれる
    少なくとも1種の元素と、残部のFeと、からなる請求
    項4記載の焼結部材。
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