JP3018804B2 - チタン系合金部材の表面処理法 - Google Patents

チタン系合金部材の表面処理法

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JP3018804B2
JP3018804B2 JP4353647A JP35364792A JP3018804B2 JP 3018804 B2 JP3018804 B2 JP 3018804B2 JP 4353647 A JP4353647 A JP 4353647A JP 35364792 A JP35364792 A JP 35364792A JP 3018804 B2 JP3018804 B2 JP 3018804B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、チタン系合金の表面に
アルミニウム及び窒素を拡散することにより、高強度で
かつ耐摩耗性に優れた処理層を形成する処理法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】
【0003】TiAl金属間化合物は、他の金属間化合
物と同様に、通常の金属や合金に比べて脆く、常温延性
に乏しく、そのため比較的延性の出やすいTi寄りのT
iAl+Ti3Al相境界に近い組成の化合物を中心に
検討が続けられており、従ってTi−Al系合金の実用
組成としては、化学量論組成である36重量%Alより
さらにTiリッチな化合物に、延性または耐酸化性を改
善するためMn、V、Si、Nb、Cr、Mo等の第3
元素が添加されたものである。
【0004】ところで、これらTiAl系合金部材をエ
ンジンバルブやバルブステム等の動弁系部材として使用
しようとすると耐摩耗性の問題が出てくる。特開平3−
75385号公報のTiAl基合金製摺動部用部品の発
明においては、これらTiAl系合金をエンジンバルブ
として用いるには充分な耐摩耗性を具備しないことを指
摘すると共に、TiAl合金部材の表面を、物理的プロ
セスによる気相メッキまたはガス窒化等の処理によっ
て、厚さ2〜10μmの窒化チタン層で被覆することに
より、耐摩耗性が改善されることが開示されている。
【0005】一方TiAlを含むTi系合金では、例え
ば、特開平1−111858号公報においては、耐酸化
性を向上させるためにアルミニウム拡散浸透処理により
チタン基材表面にアルミニウム濃度60〜70wt%に
およぶ金属間化合物TiAl3を被覆させ、その後熱処
理することにより、表面のTiAl3合金被覆層からT
iAl2、TiAl等のアルミニウム濃度を下げる合金
被覆層を素地にむけて形成する方法が開示してある。つ
まり、アルミニウムリッチな層を表面に形成することに
より酸素雰囲気下においてアルミニウムが酸化し、Ti
Al3上にAl23層が形成される。
【0006】しかしながら、上記基材を高面圧で接する
部位や無潤滑環境など非常に厳しい環境(例えば、エン
ジンバルブフェース部、ピストンピン、クランクシャフ
ト)で使用すると、耐摩耗性の面において充分でない。
図7は、各種処理皮膜及び処理層の硬度を比較したもの
であるが、上記アルミニウム拡散処理方法により得た処
理層は、図7において処理方法をAl浸透としたところ
に示されているように、ほかの処理皮膜に比べて硬度が
劣ることがわかる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、TiA
l合金部材をガス窒化法により窒化処理する場合は、鋼
等の窒化処理と異なり、700℃以下の低温では窒化層
が形成されず、それ以上の温度に加熱する必要がある。
また、大気中で窒化処理を行うため、TiAlの酸化が
生じ、良好な窒化層が形成出来ない。
【0008】その上、TiAl合金部材に酸化が起こる
と、表面粗さが極度に悪化する。例えば、加熱前の真空
度が0.4Paであっても、1100℃で8時間のガス
窒化により、表面粗さはRzで25.2μmになってし
まう。このようにTiAl合金部材の表面粗さが粗くな
ると、相手攻撃性が増し摺動する相手部材を摩耗させる
こととなる。また、製品としての表面粗さが確保できな
くなり、その結果、例えば、バルブステム部でのオイル
下がりのような問題が発生する。
【0009】請求項1の処理法はTiAl合金部材に耐
摩耗性を付与するために行われるガス窒化法による窒化
処理の前記のごとき問題点を解決すべくなされたもので
あって、表面粗さが細かく相手攻撃性が低く、耐摩耗性
に優れた窒化層皮膜が得られるTiAl合金部材の窒化
処理方法を提供することを目的とする。
【0010】請求項2の処理法はチタン系合金を基材と
してアルミニウム拡散浸透処理をした処理層において耐
酸化性はあるものの硬度が低いということに鑑み、チタ
ン系合金にアルミニウムと窒素を同時に浸透させること
により、耐酸化性を維持しつつ高硬度でかつ耐摩耗性に
優れた十分な膜厚の処理層をチタン系合金上に形成する
方法を提供することを目的とする。
【0011】また、チタン系合金部材の表面にアルミニ
ウム拡散浸透処理をすると、表面に厚い処理層が形成さ
れるが、表面粗さが悪化するため、そのままでは摺動部
位に使用することは困難であり、処理後に機械加工仕上
げが必要である。一方、チタン合金部材をガス窒化法に
より窒化処理する場合は、表面粗さは良好な面が得られ
るが、アルミニウム拡散浸透処理のように厚い効果層が
得られない。そのため一部の部位では耐摩耗性が不足す
る場合もある。
【0012】そこで、請求項3の処理法はチタン系合金
部材に要求される耐摩耗性のレベルに応じて、アルミニ
ウム拡散浸透処理とガス窒化法を使い分けることによ
り、表面処理後の機械加工仕上げを一部省きながら、十
分な耐摩耗部材が得られるチタン合金部材の表面処理法
を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】発明者はガス窒化処理中
の酸化を防止する手段として加熱窒化前にTiAl部材
を真空中に保持することを着想し、その真空度について
鋭意検討を重ねた結果、最低限必要な真空度を見出し
た。また、TiAl合金部材の窒化処理前の表面清浄度
についても検討をすると共に、ガス窒化処理における加
熱温度と形成される窒化層の厚さの関係について研究を
重ねた結果、Al含有量に応じて上限を規制して請求項
1の処理法を完成した。
【0014】請求項1のチタン系合金部材の表面処理方
法は、TiAl部材の表面を脱脂、洗浄する工程と、脱
脂、洗浄したTiAl部材を、1×10-3Torr以上
の真空度で、800℃以上、(500+25×Al重量
%)℃以下の温度条件で窒素ガスを導入し窒化処理する
工程とからなることを要旨とする。
【0015】請求項1の対象となるチタン系合金は、T
3Al(α2相)とTiAl(γ相)の両相を含んだ金
属間化合物を中心とする。TiAlにMn、Cr、M
o、Si等を第3元素として添加した材料にも有効であ
る。TiAlのAl量としては30〜37重量%であ
る。これ以外の組成では延性が低いため実用に適しな
い。
【0016】TiAl部材の脱脂および洗浄は従来から
公知の手法により行うことができる。例えば、脱脂であ
ればアルカリ脱脂、電解脱脂、溶剤脱脂等を用いること
ができる。また、洗浄後の水分・有機溶剤が残留する
と、これらが高温でTiAl母材と反応してしまうの
で、真空で余熱をかけ、これら成分を表面から除去して
から、所定の温度まで昇温することが望ましい。
【0017】また、TiAl部材を加熱窒化処理前に1
×10-3Torr以上の真空に保持することにより、T
iAlの酸化が防止され良好な窒化層が形成されると共
に、表面粗さも滑らかとなる。
【0018】窒化処理温度を800℃以上とすることに
より、TiAl部材の表面に窒化層が形成されるが、T
iAl部材のAl含有量に応じて(500+25×Al
重量%)℃以下に上限を規制したので、組織が変化し材
料強度が低下することがない。
【0019】窒化処理前の真空度を1×10-3Torr
以上としたのは、真空度が1×10-3Torr以下の低
真空ではTiAlの酸化が生じ、良好な窒化層が形成さ
れず、また部材の表面粗さも粗くなるからである。
【0020】また、窒化処理温度を800℃以上、(5
00+25×Al重量%)℃以下としたのは、窒化処理
温度が800℃未満である場合は、窒化層が形成されな
いからであり、800℃以上の温度では温度上昇につれ
て窒化層が厚く形成されるが、(500+25×Al重
量%)℃を越えると、著しく組織が変化し材料強度が低
下するからである。
【0021】請求項2のチタン系合金からなる処理部材
の表面にチタン・アルミニウム・窒素の化合物を拡散さ
せるチタン系合金部材用アルミニウム拡散浸透処理法
は、チタン系合金からなる処理部材を5〜60wt%の
アルミニウム粉末と、0.1〜5wt%のハロゲン化合
物と、残部焼結防止粉末からなる処理粉末で覆い、窒素
を20〜100vol%含む窒素雰囲気中、700〜1
200℃の温度で加熱することにより、前記チタン系合
金部材表面にチタン・アルミニウム・窒素の化合物を拡
散させることを要旨とする。なお、ここで述べるチタン
系合金は、その中にチタンアルミ金属間化合物を含む。
【0022】請求項2の処理粉末中のアルミニウム粉量
は、5〜60wt%確保する必要がある。アルミニウム
粉量が5wt%以下では十分な膜厚が得られず、また6
0wt%以上になると、残部焼結防止用粉末粒子間にA
lが溶融状態で保持されることなく流出してしまうた
め、Alの浸透が阻害されてしまう。また、処理粉末中
の焼結防止剤は、埋設されたチタン系合金材料を適当に
分散して担持する担持体として働く、この焼結防止剤に
はアルミナ等のセラミックが用いられる。
【0023】処理粉末中のハロゲン化合物は、アルミニ
ウムのチタンへの移送体として働き、その配合量は0.
1〜5wt%とする。0.1wt%以下では均一な拡散
層が形成されず、5wt%以上になると、加熱時にハロ
ゲン化合物が昇華し粉末剤体積が減少するため、被処理
物を処理粉末中に保持することが困難となる。このハロ
ゲン化合物には塩化アンモニウム、フッ化アルミニウム
等が用いられる。
【0024】処理雰囲気は20〜100vol%の窒素
を含有し、残部を不活性ガス(例えばアルゴン)からな
る窒素雰囲気とする。窒素が20vol%以下の窒素雰
囲気下においては、皮膜中への窒素拡散率が低下し窒化
物生成が阻害されるため十分な硬度が得られない。ま
た、処理温度は700〜1200℃とする。処理温度が
高くなるのに従い処理厚さ、硬度とも増加するが、70
0℃未満では処理層が非常に薄くなる。また1200℃
を越える温度では母材自身が歪むという問題が生じる。
【0025】また、発明者等は同じチタン系合金部材で
も、アルミニウム拡散浸透処理により形成される処理層
のように特に耐摩耗性を必要とする部位と、ガス窒化法
により形成される窒化層でも十分な部位のあることに鑑
み、両者を組み合わせた処理方法に着目し、鋭意研究の
結果請求項3の処理法を完成したものである。
【0026】請求項3のチタン系合金部材の表面処理方
法は、チタン系合金からなる処理部材の表面を脱脂、洗
浄した後、特定部位を5〜60wt%のアルミニウム粉
末と、0.1〜5wt%のハロゲン化合物と、残部焼結
防止粉末からなる処理粉末で覆い、1×10-3Torr
以上の真空度で、800℃以上1200℃以下の温度条
件で、窒素を20〜100vol%、残部不活性ガスか
らなる処理ガスをアルミニウム粉末で覆われない部位か
らアルミニウム粉末で覆われている部位に向けて流すこ
とを要旨とする。
【0027】処理粉末に埋設された特定部位には、表面
に厚い処理層が形成されるが、表面粗さが悪化するの
で、そのままでは摺動部位に使用することは困難であ
り、処理後に機械加工仕上げが必要である。ガス窒化層
の形成された部位は、表面粗さが良好なので、機械加工
を省略してそのまま摺動部位に使用することができる。
【0028】窒素を含む不活性ガスからなる処理ガスを
アルミニウム粉末で覆われない部位からアルミニウム粉
末で覆われている部位に向けて流すが、ガスの流れが逆
になった場合、アルミニウム拡散浸透処理が不要な部分
にまで行われるため好ましくない。
【0029】請求項3の処理法は被処理材は800℃以
上1200℃以下の温度条件で処理されるが、この処理
温度はチタン系合金の組成および目的とする組織により
適宜選択される。例えば、α型およびα+β型合金の場
合で引張強さおよび高温低サイクル疲労を重視するとき
は、β変態点以下の温度で処理を行い、等軸α相組織を
得られるような熱処理とし、クリープ強さおよび破壊靱
性を重視するときは、β変態点以上の温度で処理を行
い、針状α組織を得られるように熱処理する。また、β
合金の場合、粒径を大きく調製したいときは、β変態点
以上の温度で処理を行い、粒径の調製が不要のときは、
β変態点以下の温度で処理を行う。なお、いずれの場合
も上記溶体化処理後に時効処理を行い、析出α相の制御
を行うことが可能である。
【0030】
【作用】
(請求項1)TiAl部材を脱脂、洗浄する工程によ
り、部材表面から水分や有機質が除去されるので、真空
引き後加熱して窒素ガスを導入して窒化処理を施して
も、TiAlが水分や有機質と反応することが防止され
良質の窒化層が形成される。
【0031】(請求項2)チタン系合金からなる処理部
材をアルミニウム粉末とハロゲン化合物と焼結防止粉末
からなる処理粉末で覆い、窒素雰囲気中で加熱すること
により、チタン・アルミニウム・窒素の化合物からなる
厚い処理層が形成される。
【0032】(請求項3)チタン系合金からなる処理部
材の表面を脱脂、洗浄した後、特定部位を処理粉末で覆
い、1×10-3Torr以上の真空度で、800℃以上
1200℃以下の温度条件で、窒素を20〜100vo
l%含有する不活性ガスからなる処理ガスを処理粉末で
覆われない部位からアルミニウム粉末で覆われている部
位に向けて流すことにより、処理粉末で覆われない部位
には表面粗さの良好な窒化層が形成され、処理粉末で覆
われた部位は耐摩耗性に優れた厚い処理層が形成され
る。そのため、一つの処理部材で異なる要求特性を必要
に応じて付与することができる。
【0033】
【実施例】本発明の実施例を比較例と併せて説明し本発
明の効果を明らかにする。 (実施例1〜10)Al含有量が34重量%のTiAl
合金部材の表面を脱脂・洗浄した後、真空加熱炉に入れ
1×10-3Torrの真空にした。次いで500℃から
1400℃間の各温度に加熱し、圧力760Torrの
窒素ガスを真空加熱炉に導入し、8時間の窒化処理を行
った。
【0034】得られた各TiAl合金部材の窒化層の厚
さを測定し、結果を窒化層厚さと窒化処理温度との関係
図として図1に示した。図1に示したように、800℃
未満の温度では殆ど窒化層が形成されなかったが、80
0℃を越えると窒化層の厚さは窒化処理温度の上昇と共
に直線的に増加した。
【0035】(実施例11、12)Al含有量が31重
量%および34重量%のTiAl合金からなる試料を脱
脂・洗浄した後、真空加熱炉に入れ1×10-3Torr
の真空にした。次に表1に示す各温度に加熱し、圧力7
60Torrの窒素ガスを真空加熱炉に導入し、2時間
の窒化処理を行った。窒化処理後に各試料の引張強さを
測定し、結果を表1に示した。なお、(500+25×
Al重量%)℃は31Al重量%で1275℃、34A
l重量%で1350℃である。
【0036】
【表1】
【0037】表1から明らかなように、処理温度が(5
00+25×Al重量%)℃の上限温度を越えた比較例
1および2は、組織が変化したため、引張強度が14.
4〜15.7kgf/mm2と著しく低下した。これに
対して、処理温度が(500+25×Al重量%)℃の
上限温度以下であった本発明の実施例1および2は本来
の引張強度が維持されることが判明し本発明の効果が確
認された。
【0038】(実施例13、14)Al含有量が34重
量%のTiAl合金部材の表面を脱脂・洗浄した後、真
空加熱炉に入れ表2に示す真空にした。次いで表2に示
す各温度に加熱し、圧力760Torrの窒素ガスを真
空加熱炉に導入し、表2に示す時間の窒化処理を行っ
た。窒化処理後部材の表面粗さを測定したところ、表2
に示す結果を得た。なお、真空度はPaで示したが、1
×10-3Torrは0.133Paである。
【0039】
【表2】
【0040】表2から知られるように、窒化処理加熱前
の真空度が0.133Pa以下であった比較例3および
4は、表面粗さが13.2μmあるいは25.2μmと
何れも粗かった。これに対して本発明の実施例13およ
び14では表面粗さが1.1μmおよび3.2μmであ
って、0.133Pa以上の真空度での窒化処理によ
り、表面粗さの優れた窒化層の得られることが判明し
た。
【0041】(実施例15、16、17)表3に示すA
l含有量のTiAl合金からなる試験片を用意し、脱脂
・洗浄した後、真空加熱炉に入れ1×10-3Torrの
真空中に保持した。次いで表3に示す各温度に加熱し、
表3に示すガス圧の窒素ガスを真空加熱炉に導入し、表
3に示す時間の窒化処理を行った。窒化層の厚さを測定
したところ、表3に示すような結果を得た。なお、図5
は実施例13の金属組織を表す400倍の顕微鏡写真で
ある。図5の写真から分かるように、TiAl母材の表
面に窒化層が形成されていることが良く分かる。
【0042】
【表3】
【0043】これら試験片について窒化処理後にLFW
摩耗試験を行った。この摩耗試験は、図4に示すよう
に、外径35mm、内径30mm、幅10mmの鋳鉄
(JISFC20)製の円筒試験片を相手材とし、実施
例15〜17および比較例5〜6の試験片を接触させ接
触部に常温の潤滑油を供給しつつ、回転数5rpm、相
手材への押圧力60kgfで30分間摩耗試験を行うも
のである。得られた結果は図2にまとめて示した。
【0044】図2に示したように、比較例5〜6は窒化
層が殆ど形成されなかったため、耐摩耗性に劣り、いず
れも摩耗量は145μmまたは170μmであった。ま
た、別に比較例として700℃の窒素ガス圧1×10-4
Torrで1時間窒化処理したものは、摩耗量は145
〜150μmと耐摩耗性に劣り、700℃の窒素ガス圧
1×10-4Torrで8時間窒化処理したものは、摩耗
量が0.8〜140μmと非常に摩耗量のバラツキが大
きかった。これに対して本発明の実施例15〜17は窒
化層が形成されており、摩耗量は0.5〜0.7μm程
度であり、本発明方法によれば、耐摩耗性に優れたTi
Al合金部材が得られることが確認された。
【0045】(実施例18、19、20)表4に示すA
l含有量のTiAl合金から図3に示すようなエンジン
バルブを製造し、脱脂・洗浄した後、真空加熱炉に入れ
1×10-3Torrの真空中に保持した。次い表4に示
す窒化処理条件でエンジンバルブの軸部および軸端部に
窒化処理を施した。なお、導入した窒素ガス圧は760
Torrであった。
【0046】窒化処理後のエンジンバルブをエンジンに
組み付け耐摩耗性を評価した。使用したエンジンは排気
量2000cc、1気筒4バルブで4気筒の構成になっ
ているもので、試験条件はモータリングにて5000r
pmで100時間行いバルブの軸端部と軸部の摩耗量を
測定した。なお、軸端部の摩耗量はエンジンバルブの長
さを測定し、軸部の摩耗量はエンジンバルブの軸部の直
径を測定した。得られた結果は表4にまとめて示した。
【0047】
【表4】
【0048】表4に示したように、窒化処理温度が70
0℃以下であった比較例9および10、無処理であった
比較例10は共に激しく摩耗し、軸端部摩耗量で1.2
8〜1.50mm、軸部摩耗量で0.17〜0.20m
mであった。これに対して本発明の実施例18〜20
は、軸端部摩耗および軸部摩耗が0であって、本発明の
効果が確認された。
【0049】(実施例21)鋳造によって、チタン合金
(Ti−6wt%Al−4wt%V)を作製し、次いで
機械加工により直径10mm、長さ10mmの円柱形状
の試験片を作成した。この試験片1を図6で示す装置に
配置し、アルミニウム粉末(80〜100メッシュ)2
0wt%、塩化アンモニウム粉末(275メッシュ)2
wt%、アルミナ粉末(80〜200メッシュ)78w
t%からなる処理粉末2を充填し、窒素99.99vo
l%、残部アルゴンガスからなる窒素ガス3を圧力1気
圧で20リットル/minの流量で流した。この状態で
熱源4により950℃に保って、10時間加熱し拡散浸
透処理を行った。
【0050】得られた試料の処理層厚さは約50μmで
あり、その硬度はHv800であった。図8は処理層断
面の金属組織の顕微鏡写真(×100)を示したもので
あるが、チタン合金上に処理層が形成されていることが
わかる。さらにX線回折によって処理層の同定を行った
結果、処理前からの母材合金であるチタン合金及びアル
ミニウムの拡散によって生じたTi−Al系合金、T
i、TiAl、Ti3Al、TiAl3、と、アルミニウ
ムの浸透とともに浸透した窒素との化合物であるTi
N、AlN、Ti2AlNの合金が検出された。
【0051】また処理層断面の組成分布をEPMAライ
ン分析によって調査した結果を図9に示す。図9より窒
素がアルミニウムとともに内部まで浸透していることが
わかる。さらに耐酸化性を調べるため、得た試料を大気
中にて900℃に200時間連続加熱して、単位面積当
りの重量増加mg/cm2を測定した。また比較例とし
て、無処理品、PVDによりTiNを蒸着させた品、窒
化処理品についても同様に評価を行った。その結果は図
12に示す。
【0052】(実施例22)鋳造によって、チタンアル
ミ金属間化合物(Ti−34wt%Al)を作製し、次
いで機械加工により直径10mm、長さ10mmの円柱
形状の試験片を作成した。これを実施例21と同様な方
法及び条件で本発明処理を行った。得られた試料の処理
層厚さは約50μmであり、その硬度はHv800であ
った。図10は処理層断面の金属組織の顕微鏡写真(×
100)を示したものであるが、チタンアルミ金属間化
合物上に処理層が形成されていることがわかる。
【0053】さらにX線回折によって処理層の同定を行
った結果、実施例21と同様な結果が得られ、処理前か
らの母材合金であるチタンアルミ金属間化合物及びアル
ミニウムの拡散によって生じたTi−Al系合金、Ti
Al、Ti3Al、TiAl3、と、アルミニウムの浸透
とともに浸透した窒素との化合物であるTiN、Al
N、Ti2AlNの合金が検出された。
【0054】また処理層断面の組成分布をEPMAライ
ン分析によって調査した結果を図11に示す。図11よ
り実施例21と同様に窒素がアルミニウムとともに内部
まで浸透していることがわかる。さらに実施例21と同
様な方法により耐酸化性を調べるたた。その結果を実施
例21の結果とともに図12に示す。図12より本発明
処理により得た試料は、高温においても酸化増量が低く
従来の処理に比べて、耐酸化性の面でも優れていること
がわかる。
【0055】(実施例23)処理粉末中におけるアルミ
ニウム粉末の含有量を所定割合に変化させること以外は
実施例21と同様な条件で、本発明拡散浸透処理を行っ
た。その結果を図13に示す。図13よりアルミニウム
粉末の含有量を増加させることでアルミニウムは母材内
に深く浸透し、それに相ともなって窒素も同時に内部ま
で浸透し、処理層厚さが増大することがわかる。よって
本発明処理法によると、通常の窒化処理層厚さ(約5μ
m)に比べてかなりの処理層厚さが確保できるので、高
面圧部位及び長時間使用に際しても、処理層が薄いとい
うことで摩耗により処理層が消滅することはないことが
わかる。
【0056】(実施例24)処理ガスを所定割合に変化
させ、処理温度と処理時間を所定域に変化させること以
外は実施例21と同様な条件で、本発明拡散浸透処理を
行った。その結果を表5に示す。
【0057】
【表5】
【0058】表5より本発明処理においては、窒素が2
0〜100vol%、残部が不活性ガスからなる窒素雰
囲気中、700〜1200℃の温度時処理した場合にお
いて、硬度、処理層厚さに優れたチタン・アルミニウム
・窒素の化合物を表面に有するチタン系合金部材が得ら
れる。ただしここで処理温度を1300℃とした場合、
高硬度な処理層が得られているが1200℃を越えた温
度では母材自身が歪むので、処理温度の上限は1200
℃とする。
【0059】処理時間については長くなるに伴い処理層
厚さは多少増加するが、その増加率は10時間を越える
と大きな変化はみられないことがわかる。実施例8およ
び9により本発明処理において、窒素分圧、処理温度、
処理時間、処理粉末中のアルミニウム粉末量を調節する
ことにより、硬度の調節および処理層厚さの調節が可能
になることがわかる。例えば摺動部材として使用する場
合、単に硬質化するだけでは逆に相手材の摩耗を招いて
しまう。よってその相手部材に応じて硬度を変える必要
があり、本発明処理はそれを容易に行うことができる。
【0060】(実施例25)チタン合金(Ti−6wt
%Al−4wt%V)およびチタンアルミ金属間化合物
(Ti−34wt%Al)によってエンジンバルブを作
成し、実施例21と同様な方法、条件で本発明処理を行
い、また比較例として、無処理品、アルミ拡散浸透処理
(アルゴン雰囲気)のエンジンバルブを作成した。これ
らのエンジンバルブを3リットル−8気筒エンジンに組
み込み、実機評価を行った。試験条件は、過吸圧650
mmHgでの4000prm全負荷運転を6分、アイド
ル運転を1分、停止を6分、アイドル運転を1分を1サ
イクルとし、このサイクルを繰り返しエンジンバルブが
欠損するまでの耐久時間を調べた結果を表6に示す。
【0061】
【表6】
【0062】表6より、無処理であるエンジンバルブ及
びアルミ拡散浸透処理(アルゴン雰囲気)をしたエンジ
ンバルブについては、評価途中に酸化もしくは摩耗が認
められ、ついにはエンジンバルブが欠損してしまった
が、本発明処理により得たエンジンバルブは少なくとも
500時間は実機評価に耐えうる性能を備えるものであ
ることが示された。
【0063】(実施例26)チタンアルミ金属間化合物
(Ti−34wt%Al)によってエンジンバルブを作
成し、このエンジンバルブを図14で示すアルミニウム
拡散浸透処理とガス窒化処理を同時に行う装置に配置
し、傘部のみをアルミニウム粉末(80〜100メッシ
ュ)20wt%、塩化アンモニウム粉末(275メッシ
ュ)2wt%、アルミナ粉末(80〜200メッシュ)
78wt%からなる処理粉末2中に埋没させ、容器を密
封し1×10-4Torrの真空にした後、窒素99.9
9vol%、残部アルゴンガスからなる窒素ガス3を圧
力1気圧で20リットル/minの流量で流した。この
状態で熱源4により950℃に保って、10時間加熱し
拡散浸透処理を行った。
【0064】処理後、表面粗さが悪化したフェース部の
みを加工して仕上げた。次いで、このエンジンバルブ
を、排気量2リットル、4気筒の構成のエンジンに組み
込み、モータリングにて5000rpm×100時間の
試験を行い、バルブ摩耗状態を調査した結果、良好な結
果が得られた。
【0065】(実施例27)α+β型チタン合金(Ti
−6wt%Al−4wt%V)によってエンジンバルブ
を作成し、このエンジンバルブを図14で示すアルミニ
ウム拡散浸透処理とガス窒化処理を同時に行う装置に配
置し、傘部のみをアルミニウム粉末(80〜100メッ
シュ)20wt%、塩化アンモニウム粉末(275メッ
シュ)2wt%、アルミナ粉末(80〜200メッシ
ュ)78wt%からなる処理粉末2中に埋没させ、容器
を密封し1×10-4Torrの真空にした後、窒素9
9.99vol%、残部アルゴンガスからなる窒素ガス
3を圧力1気圧で20リットル/minの流量で流し
た。この状態で熱源4により860℃に保って、4時間
加熱し拡散浸透処理を行うことにより、等軸α相の組織
を表面処理と同時に得た。処理後に、表面粗度が悪化し
たバルブフェースのみを加工して仕上げた。
【0066】β型チタン合金(Ti−13wt%V−1
1wt%Cr−3wt%Al)によってエンジンバルブ
を作成し、このエンジンバルブを図14で示す装置に配
置し、傘部のみをアルミニウム粉末(80〜100メッ
シュ)20wt%、塩化アンモニウム粉末(275メッ
シュ)2wt%、アルミナ粉末(80〜200メッシ
ュ)78wt%からなる処理粉末2中に埋没させ、容器
を密封し1×10-4Torrの真空にした後、窒素9
9.99vol%、残部アルゴンガスからなる窒素ガス
3を圧力1気圧で20リットル/minの流量で流し
た。この状態で熱源4により810℃に保って、2時間
加熱し拡散浸透処理を行うことにより、等軸α相の組織
を表面処理と同時に得た。処理後に、表面粗度が悪化し
たバルブフェースのみを加工して仕上げた。
【0067】次いで、このα+β型チタン合金製および
β型チタン合金製のエンジンバルブを、排気量2リット
ル、4気筒の構成のエンジンに組み込み、モータリング
にて5000rpm×100時間の試験を行い、バルブ
摩耗状態を調査した結果、いずれのエンジンバルブも良
好な結果が得られた。
【0068】なお、本実施例でのメリットは次の通りで
ある。バルブの耐摩耗性の要求レベルは部位によって異
なる。フェース部ではステム部やステムエンド部より厚
く頑健な表面処理が必要である。ステム部、ステムエン
ド部ではガス窒化処理で充分な耐摩耗性がある場合で
も、フェース部の耐摩耗性はガス窒化処理では不充分な
エンジンも存在する。
【0069】このとき全表面でアルミニウム拡散処理を
行うと、処理後に再度加工して仕上げる必要がある。し
かし、必要部位のみに、アルミニウム拡散浸透処理を行
うことにより、再度の加工を一部省くことが可能とな
る。また、チタン系合金では熱処理によって、各種の材
料強度を調製する材料である。本処理を行うことによ
り、チタン系合金の熱処理の一部(焼なまし処理など)
を兼用することができる。
【0070】
【発明の効果】請求項1の処理法の場合は、TiAl部
材を脱脂、洗浄する工程により、部材表面から水分や有
機質が除去されるので、真空引き後加熱して窒素ガスを
導入して窒化処理を施しても、TiAlが水分や有機質
と反応することが防止され良質の窒化層が形成される。
また、TiAl部材を加熱窒化処理前に1×10-3To
rr以上の真空に保持することにより、TiAlの酸化
が防止され良好な窒化層が形成されると共に、表面粗さ
も滑らかとなる。請求項2の処理法の場合は、本発明は
アルミニウムの拡散浸透に伴い窒素を同時に浸透させる
ことにより、チタン系合金の表面に、チタン・アルミニ
ウム・窒素の化合物からなる高硬度でかつ耐摩耗性に優
れ、また耐酸化性にも優れた充分な膜厚の処理層を形成
することができた。また非常に簡単な処理法であり、そ
の上大量に処理することができるので、コスト面、生産
面で優れた処理法となる。請求項3の処理法の場合は、
チタン系合金からなる処理部材の表面を脱脂、洗浄した
後、特定部位を処理粉末で覆い、1×10-3Torr以
上の真空度で、800℃以上1200℃以下の温度条件
で、窒素を20〜100vol%含有する不活性ガスか
らなる処理ガスを処理粉末で覆われない部位からアルミ
ニウム粉末で覆われている部位に向けて流すことによ
り、処理粉末で覆われない部位には表面粗さの良好な窒
化層が形成され、処理粉末で覆われた部位は耐摩耗性に
優れた厚い処理層が形成される。そのため、一つの処理
部材で異なる要求特性を必要に応じて付与することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】窒化処理温度と窒化層厚さとの関係を示す線図
である。
【図2】本発明の実施例と比較例の耐摩耗試験における
摩耗量を示す線図である。
【図3】耐摩耗性試験に供したエンジンバルブの側面図
である。
【図4】耐摩耗試験片および相手材の側面図である。
【図5】本発明の実施例の金属組織を表す400倍の顕
微鏡写真である。
【図6】アルミニウム拡散浸透処理を行う装置を示す図
である。
【図7】各処理方法における処理層の硬度を示す図であ
る。
【図8】実施例6における拡散処理層の金属組織を示す
顕微鏡写真(×100)である。
【図9】実施例6における拡散処理層の処理断面組成分
布をEPMAライン分析によって調べた結果を示す図で
ある。
【図10】実施例7における拡散処理層の金属組織を示
す顕微鏡写真(×100)である。
【図11】実施例7における拡散処理層の処理断面組成
分布をEPMAライン分析によって調べた結果を示す図
である。
【図12】実施例6および実施例7における酸化増量を
示す図である。
【図13】実施例8における処理粉末中のアルミニウム
含有量と処理層深さの関係を示す図である。
【図14】アルミニウム拡散浸透処理とガス窒化処理を
同時に行う装置を示す図である。
【符号の説明】
1 試験片またはエンジンバルブ 2 処理粉末 3 窒素ガス 4 熱源
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 8/24,10/34

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 TiAl部材の表面を脱脂、洗浄する工
    程と、脱脂、洗浄したTiAl部材を、1×10-3To
    rr以上の真空度で、800℃以上、(500+25×
    Al重量%)℃以下の温度条件で窒素ガスを導入し窒化
    処理する工程とからなることを特徴とするチタン合金系
    部材の表面処理法。
  2. 【請求項2】 チタン系合金からなる処理部材を、5〜
    60wt%のアルミニウム粉末と、0.1〜5wt%の
    ハロゲン化合物と、残部焼結防止粉末からなる処理粉末
    で覆い、窒素を20〜100vol%含む窒素雰囲気
    中、700〜1200℃の温度で加熱することにより、
    前記チタン系合金部材表面にチタン・アルミニウム・窒
    素の化合物を拡散させることを特徴とするチタン系部材
    合金用アルミニウム拡散浸透処理法。
  3. 【請求項3】 チタン系合金からなる処理部材の表面を
    脱脂、洗浄した後、特定部位を5〜60wt%のアルミ
    ニウム粉末と、0.1〜5wt%のハロゲン化合物と、
    残部焼結防止粉末からなる処理粉末で覆い、1×10-3
    Torr以上の真空度で、800℃以上1200℃以下
    の温度条件で、窒素を20〜100vol%、残部不活
    性ガスからなる処理ガスをアルミニウム粉末で覆われな
    い部位からアルミニウム粉末で覆われている部位に向け
    て流すことを特徴とするチタン系合金部材の表面処理
    法。
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