JP2003313047A - 異常分散性を有する光学ガラス - Google Patents

異常分散性を有する光学ガラス

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 屈折率(nd)が1.48〜1.55未満、
アッベ数(νd)が45〜55の範囲であり、正の異常
分散性を示す光学ガラスを提供する。 【解決手段】 質量%で、SiO2 40〜60%、B2
3 3〜9%、TiO23〜15%、Nb25 0.1〜
5.0%、Al23 3〜15%、WO3 0.5〜5.
0%、MgO 0〜3%、CaO 0〜3%、SrO 0
〜3%、BaO 0〜3%、K2O 10%を超え21%
まで、Na2O 0〜10%、Sb23 0〜1%及び上
記各金属元素の一種またはニ種以上の酸化物の一部又は
全部と置換した弗化物のFとしての合計3〜10%を含
有し、不純物としての不可避的な混入を除きPbO及び
As23を含有せず、屈折率(nd)が1.48〜1.
55未満、アッベ数(νd)が45〜55の範囲であ
り、Δθg,Fの値が+0.0010以上であることを
特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、屈折率(nd)が
1.48〜1.55未満、アッベ数(νd)が45〜5
5の範囲の光学定数を有し、異常分散性を示すΔθg,
Fの値が+0.0010以上であり、正の異常分散性を
有し、特にリヒートプレス成形に適した光学ガラスに関
する。
【0002】
【従来の技術】光学機器のレンズ系は、通常、異なる光
学的性質を持つ複数のガラスレンズを組み合わせて設計
されており、正または負の異常分散性ガラスを使用した
レンズは、二次スペクトルを補正するために使用され、
正の異常分散性をもつ低屈折率ガラスは、生産量は必ず
しも多くはないが、多様化する光学機器のレンズ系の設
計の自由度を広げることができるため技術的に重要であ
る。
【0003】大量に生産されない光学ガラスからレンズ
等の光学素子を製造する方法としては、経済的に多品種
少量生産に適していることから、板状もしくはブロック
状に成形した常温の光学ガラスを切断または割断し、研
磨し、所定重量に調整したガラス塊を再加熱して軟化さ
せて保温してプレス成形(リヒートプレス成形)し、所
望の光学素子に近似した形状のプレス成形品を得、プレ
ス成形品を研磨して所望形状とし、研磨面にコーティン
グを施して光学素子とする方法が一般的である。
【0004】上記リヒートプレス成形に適したガラス粘
度に相当するガラスの温度は、ガラスの転移温度(T
g)より200℃〜300℃高い温度域であり、リヒー
トプレス成形は上記温度域の範囲内に保温したガラス
を、ガラスとの焼き付きを防止するためガラスよりも低
い温度に保温されているプレス成形型内に入れプレス成
形して行われるが、プレス成形の際、高温のガラスとプ
レス成形型とが接触することプレス成形型の損耗を少な
くするためにはガラスの温度は低い方が好ましいため、
リヒートプレス成形は、ガラスをその転移温度(Tg)
より200℃〜250℃の間に保温して行うことがより
好ましい。転移温度(Tg)より200℃〜300℃高
い温度域で30分間ガラスを保温して、ガラスに失透
や、分相による乳白が生じなければガラスをリヒートプ
レス成形することができ、上述した理由から転移温度
(Tg)より200℃〜250℃高い温度域で30分間
ガラスを保温して、ガラスに失透や、分相による乳白が
生じなければ、プレス成形型の損耗を少なくしてガラス
をリヒートプレス成形することができる。
【0005】ところが、失透や、乳白を生じやすいガラ
スの場合、ガラスを再加熱し、転移温度(Tg)より2
00℃〜300℃高い温度域で30分間ガラスを保温す
ると、失透や、分相による乳白が発生する。このような
失透や、乳白が発生するガラスを、上記温度域で保温す
ることなくさらに昇温させて、保温温度をより高くすれ
ばするほど、失透や、乳白は生じにくくなるが、Tg+
250℃より高い温度で保温してリヒートプレス成形す
ると、上述した理由からプレス成形型が損耗しやすく、
成形型の寿命が短くなるため好ましくない。また、Tg
+300℃より高い温度で保温するとガラスの粘度が低
くなり、ガラスをリヒートプレス成形することが困難に
なる。
【0006】ところで、光学ガラスの成分のうち、Pb
OおよびAs23は、環境に悪影響を及ぼす物質として
問題になってきており、これらのガラスを製造および加
工する際に出るガラス屑やスラッジ等の廃棄物が環境を
汚染するという問題があるため、廃棄物を処理する際に
環境対策上の特別な配慮を講じる必要があり、ヨーロッ
パにおいては、PbOを含有する光学ガラスの使用を禁
止する予定であることから、これらの成分を含まない光
学ガラスが求められている。しかし、特にPbOは、ガ
ラスの光学的および化学的性質に与える影響が大きいた
め、従来のPbOを含有するガラスと同等の光学的およ
び化学的性質を有し、かつ、PbOを含有しない光学ガ
ラスを開発することは、多大な困難を伴う。
【0007】屈折率(nd)が1.48〜1.55未
満、アッベ数(νd)が45〜55の範囲の光学定数を
有する様々な組成のガラスが、非常に広い組成範囲を特
許請求範囲とするドイツ特許第973350号公報の中
に複数開示されている。それら様々な組成のガラスの中
にSiO2−B23−Al23−K2O−PbO−As2
3−TiO2−F系のガラスがあるが、このガラスはP
bOおよびAs23を含有しているため、上述した環境
汚染の問題があることに加えて、ガラスを再加熱してそ
の転移温度(Tg)より200〜250℃高い温度域で
保温すると分相によりガラスが乳白化するという欠点が
ある。
【0008】また、上記公報には、上記範囲の光学定数
を有し、PbOを含有しないガラスも複数開示されてい
るが、それらのガラスのほとんどは、環境汚染物質であ
るAs23を含有(0.3%〜5.0重量%)してお
り、さらに下記(1)〜(5)の諸欠点のうち少なくと
も一つを有する。(1)ガラスを再加熱してその転移温
度(Tg)より200〜250℃高い温度域で保温する
と分相によりガラスが乳白化しやすい。(2)化学的耐
久性が劣る。(3)可視光線波長域の短波長側における
光線透過率が悪い。(4)溶融性が悪く、高温での溶融
を必要とするため、弗素が揮発して均質かつ所望の光学
的性質を有するガラスを得がたい。(5)Sb23を多
く(3.0〜15.0重量%)含有しているため、溶融
ガラス中のSb金属および/またはSbイオンと溶解装
置の白金とが合金化しやすい。
【0009】また、上記公報には、さらに上記範囲の光
学定数を有し、PbOおよびAs23を含有しない組成
ガラスも数例開示されているが、これらのガラスは、す
べて、非常に大量のSb23(20.0〜30.0重量
%)を含有しているため、上述した合金化がさらに起こ
り易い。高品質な光学ガラスを連続的に製造するため、
現在、ほとんどの光学ガラスは、少なくとも溶融ガラス
と接触する部分が白金で形成された溶解装置を使用して
製造されているが、Sb金属および/またはSbイオン
と白金とが合金化した場合、合金化した部分の耐熱性は
非常に悪くなるため、穴が開いて溶融ガラスが流出する
事故が起こり危険である。その場合直ちに溶融を中止し
て溶融中のガラスを廃棄しなければならないうえ、溶解
装置を解体して、開口部を補修しなければならないた
め、長期間にわたり操業不能となる。さらに、白金は高
価であるから廃棄せずに合金化した白金を再精製するこ
ととなり、合金化事故による危険性および経済的損失は
非常に大きい。
【0010】また、特開平6−92675号公報には、
屈折率(nd)が1.48〜1.55未満、アッベ数
(νd)が45〜55の範囲の光学定数を有し、PbO
およびAs23を含有せず、弗素を含有する光学ガラス
の具体的な組成が複数開示されているが、これらのガラ
スも、上記(1)および(2)の欠点のうち少なくとも
一つを有している。
【0011】また、特開平8−290936号公報に
は、屈折率(nd)が1.48〜1.55未満、アッベ
数(νd)が45〜55の範囲の光学定数を有し、Pb
OおよびAs23を含有しない光学ガラスの具体的な組
成が複数開示されているが、これらのガラスは、正の異
常分散性を有していない、または、ガラスが着色すると
いう問題がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上
記、従来技術の有する諸欠点を総合的に解決し、環境汚
染物質であるPbOおよびAs23を含有せず、屈折率
(nd)が1.48〜1.55未満、アッベ数(νd)
が45〜55の範囲の光学定数を有し、ガラスを再加熱
して、その転移温度(Tg)よりも200〜300℃高
い温度域で保温しても乳白せず、特にその転移温度(T
g)よりも200〜250℃高い温度域で保温しても乳
白せず、耐失透性、化学的耐久性および光線透過性が優
れ、かつ、ガラス溶融中に白金が合金化することなく、
安全に生産することのできる正の異常分散性を示す光学
ガラスを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、鋭意試験
研究を重ねた結果、従来、具体的に開示されていないS
iO2−B23−TiO2−Nb25−Al23−WO3
−K2O−弗素系組成のガラスにおいて、前記目的を達
成するガラスが得られることを見出し本発明をなすに至
った。
【0014】すなわち、前記目的を達成するための請求
項1に記載の本発明の正の異常分散性を有する光学ガラ
スは、質量%で、SiO2 40〜60%、B23 3〜
9%、TiO2 3〜15%、Nb25 0.1〜5.0
%、Al23 3〜15%、WO3 0.5〜5.0%、
MgO 0〜3%、CaO 0〜3%、SrO 0〜3
%、BaO 0〜3%、K2O 10%を超え21%ま
で、Na2O 0〜10%、Sb23 0〜1%および上
記各金属元素の一種またはニ種以上の酸化物の一部また
は全部と置換した弗化物のFとしての合計量3〜10%
を含有し、不純物としての不可避的な混入を除きPbO
およびAs23を含有せず、屈折率(nd)が1.48
〜1.55未満、アッベ数(νd)が45〜55の範囲
の光学定数を有し、異常分散性を示すΔθg,Fの値が
+0.0010以上であることを特徴とする。
【0015】ここで、異常分散性を示すΔθg,Fの値
は、以下の方法により算出したものである。すなわち、
下記の式1により、部分分散比(θg,F)をもとめ、
縦軸に部分分散比(θg,F)、横軸にアッベ数(ν
d)をとり、異常分散性を示さない正常な光学ガラスの
うち、下記の表1に示す部分分散比(θg,F)および
アッベ数(νd)を有する2種類の光学ガラス、NSL
7およびPBM2(共にオハラ商品名)を基準分散ガラ
スとして選び、これら2種類の光学ガラスの座標(θ
g,F、νd)を直線で結び、この直線と、比較するガ
ラスのθg,Fおよびνdを示す座標との縦座標の差
(Δθg,F)を部分分散比の偏り、すなわち異常分散
性を示す値とした。このようにして算出したΔθg,F
の値がプラスの場合、すなわち、ガラスの座標(Δθ
g,F、νd)が上記直線より上方に位置している場
合、そのガラスは正の異常分散性を有している。
【0016】 θg,F=(ng−nF)/(nF−nc) −式1 (ngは、光源が水銀で波長が435.835nmのス
ペクトル線に対するガラスの屈折率、nFは、光源が水
素で波長が486.13nmのスペクトル線に対するガ
ラスの屈折率、ncは、光源が水素で波長が656.2
7nmのスペクトル線に対するガラスの屈折率を意味
し、(nF−nc)を主分散と称す。)
【0017】
【表1】
【0018】また、前記目的を達成するための請求項2
に記載の本発明の正の異常分散性を有する光学ガラス
は、質量%で、SiO2 40〜60%、B23 3〜9
%、TiO2 3〜15%、Nb25 0.1〜5.0
%、Al23 3〜15%、WO30.5〜5.0%、た
だし、TiO2+WO3 4〜20%、MgO 0〜3%、
CaO 0〜3%、SrO 0〜3%、BaO 0〜3
%、K2O 10%を超え21%まで、Na2O 0〜10
%、ただし、K2O+Na2O 25%未満、Sb23
〜1%および上記各金属元素の一種またはニ種以上の酸
化物の一部または全部と置換した弗化物のFとしての合
計量3〜10%を含有し、不純物としての不可避的な混
入を除きPbOおよびAs23を含有せず、屈折率(n
d)が1.48〜1.55未満、アッベ数(νd)が4
5〜55の範囲の光学定数を有し、異常分散性を示すΔ
θg,Fの値が+0.0010以上であることを特徴と
する。ここで、異常分散性を示すΔθg,Fの値は、前
記段落番号0015〜0017に記載した方法により算
出したものである。
【0019】また、前記目的を達成するための請求項3
に記載の本発明の正の異常分散性を有する光学ガラス
は、請求項1または2に記載の正の異常分散性を有する
光学ガラスにおいて、ガラスの転移温度(Tg)よりも
200〜300℃高い温度域で30分間保温して、ガラ
スが乳白および失透しないことを特徴とする。本発明の
構成による作用は、リヒートプレス成形に適したガラス
粘度に相当する温度域であるガラスの転移温度(Tg)
より200℃〜300℃高い温度域で30分間保温し
て、ガラスが乳白および失透しないため、光学ガラスか
ら、多品種少量生産に適したリヒートプレス成形により
プレス成形品を成形できるという効果を奏する。
【0020】また、前記目的を達成するための請求項4
に記載の本発明の正の異常分散性を有する光学ガラス
は、請求項1または2に記載の正の異常分散性を有する
光学ガラスにおいて、ガラスを再加熱し、ガラスの転移
温度(Tg)よりも200〜250℃高い温度域におい
て30分間保温して、ガラスが乳白および失透しないこ
とを特徴とする。本発明の構成による作用は、プレス成
形型に与える高温によるダメージが少なくかつリヒート
プレス成形に適したガラスの転移温度(Tg)より20
0℃〜250℃高い温度域で30分間保温して、ガラス
が乳白および失透しないため、リヒートプレスに使用す
るプレス成形型の損耗を抑制する効果を奏する。
【0021】また、前記目的を達成するための請求項5
に記載の本発明の正の異常分散性を有する光学ガラス
は、請求項1、2、3または4に記載の正の異常分散性
を有する光学ガラスにおいて、日本光学硝子工業会規格
JOGIS06-1999「光学ガラスの化学的耐久性の測
定方法(粉末法)」により測定するガラスの耐水性が級
1であることを特徴とする。本発明の構成による作用
は、ガラスの耐水性が優れているため、プレス成形品を
研磨する工程中から研磨面にコーティングを施す前まで
の間に特に発生しやすいガラス研磨面の白ヤケが生じに
くいという効果を奏する。
【0022】また、前記目的を達成するための請求項6
に記載の本発明の正の異常分散性を有する光学ガラス
は、請求項1、2、3、4または5に記載の正の異常分
散性を有する光学ガラスにおいて、厚さ10±0.1m
mのガラスを、反射損失を含む分光透過率80%で透過
する光線の波長が390nm以下であることを特徴とす
る。本発明の構成による作用は、可視光線波長域の短波
長側における光線透過率が優れていることから、ガラス
をレンズ等の光学素子として使用する上で望ましくない
透過光量低下を回避できるという効果を奏する。
【0023】
【発明の実施の形態】前記のとおり、ガラスの各成分の
組成範囲を限定した理由は以下のとおりである。SiO
2は、本発明において、ガラス形成酸化物として欠くこ
とができない成分であるが、40%未満では、安定なガ
ラスが得られにくく、化学的耐久性も不充分になる。ま
た、その量が60%を超えると、本発明が目的とする前
記光学定数を有するガラスを得ることが困難になり、ガ
ラスの溶融性も悪くなる。
【0024】B23は、ガラスの溶融性および耐失透性
を改善する効果があるため、本発明のガラスにおいて必
須の成分であるが、 3%未満ではこれらの効果を充分
に得ることができず、その量が9%を超えると、ガラス
を再加熱して、その転移温度(Tg)よりも200〜2
50℃高い温度域で保温した際に、ガラスが非常に乳白
化しやすくなり、また、ガラスの化学的耐久性および光
線透過性も悪くなる。
【0025】TiO2は、屈折率を高め、分散大きくす
る(アッベ数を小さくする)成分であり、光学定数を本
発明が目的とする前記範囲内に調整する効果があり、さ
らに、本発明において、後述するWO3 成分と共存させ
ることにより、ガラスを再加熱して、その転移温度(T
g)よりも200〜250℃高い温度域で保温した際に
発生するガラスの乳白化を防止する効果を見出した重要
な成分であるが、3%未満では上記効果が充分に得られ
ず、その量が15%を超えると、本発明が目的とする光
学定数が得られず、光線透過性の悪化が顕著になる。
【0026】Nb25 は、光学定数を本発明が目的と
する前記範囲内に維持する効果があり、かつ、ガラスの
溶融性および耐失透性を向上させる効果があるので、本
発明において必須の成分であり、0.1%未満では上記
効果が充分に得られず、その量が5.0%を超えると、
本発明が目的とする前記範囲の光学定数が得られない。
【0027】Al23 は、ガラスの化学的耐久性を向
上させる効果があり、3%未満ではその効果が充分に得
られず、その量が15%を超えると、ガラスの失透性が
増大する傾向がある。
【0028】WO3は、上述したNb25 と同様の効果
を有するうえに、本発明において、TiO2成分と共存
させることにより、ガラスを再加熱して、その転移温度
(Tg)よりも200〜250℃高い温度域で保温した
際に発生するガラスの乳白化を防ぐ効果が大きいことを
見出した重要な成分であり、0.5%未満では上記効果
が充分でなく、その量が5.0%を超えると、失透が発
生する等、かえってガラスが不安定になる傾向がある。
【0029】また、WO3およびTiO2成分の合計量を
4%以上にすると、特にガラスの乳白化を防ぐ効果が顕
著になるため、これら両成分の合計量を4〜20%の範
囲とすることがより好ましい。
【0030】MgO、CaO 、SrO、BaOおよび
Na2Oは、光学定数の調整およびガラスの溶融性の向
上を目的として、必要に応じて任意に添加し得るが こ
れらの成分の量が、それぞれ3%、3%、3%、3%お
よび10%を超えると、ガラスの化学的耐久性が低下す
る。
【0031】K2Oは、ガラスの溶融性を改善し、か
つ、本発明が目的とする前記範囲内の光学定数を有する
ガラスを得るために必須な成分であるが、10%以下で
はガラスの溶融性が悪く、その量が21%を超えるとガ
ラスの化学的耐久性が著しく低下する。
【0032】また、特に化学的耐久性が優れたガラスを
得るためには、Na2OおよびK2O両成分の合計量を2
5%未満とすることがより好ましい。
【0033】Sb23は、ガラスを清澄し、均質化する
効果があり、任意に添加し得るが、上記効果を得るため
には、その量は1%までで充分である。
【0034】弗素は、上述の各金属元素の一種またはニ
種以上の酸化物の一部または全部と置換した弗化物、例
えばKHF2、KF、AlF3、NaF、CaF2、Ba
2およびBaSiF6等としてガラスに含有させること
により、ガラスに正の異常分散性を与える効果があるた
め、本発明のガラスにおいて必須の成分であり、また、
屈折率を低下させて光学定数を調整し、ガラスの溶融性
を向上させる効果も有する。しかし、上述の各金属元素
の一種またはニ種以上の酸化物の一部または全部と置換
した弗化物の弗素(F)としての合計量が、3%未満で
は、上記効果が充分に得られず、10%を超えると、ガ
ラスに脈理等が生じ、ガラスの品質が著しく低下する。
【0035】
【実施例】表2〜表5に本発明の正の異常分散性を有す
る光学ガラスの実施例(No.1〜No.8)および従
来の光学ガラスの比較例(No.A〜No.F)の組成
を示し、各実施例および各比較例のガラスの屈折率(n
d)、アッベ数(νd)、θg,F、Δθg,F、厚さ1
0±0.1mmのガラスを、反射損失を含む分光透過率
80%で透過する光線の波長(T80)、転移温度(T
g)、耐水性(級)およびリヒートテストの結果を示し
た。ただし、比較例(No.D)のガラスは、ガラス全
体が褐色となったため、上記諸物性を示していない。な
お、表2および表3において(K2O)の欄の数値は、
弗化物により置換されたK2Oの質量%を示し、(F)
の欄はK2Oを置換した弗化物のFとしての量(質量
%)を示したものである。
【0036】また、ここでθg,FおよびΔθg,Fは
ガラスのng、nFおよびncを測定し、前記段落番号
0015から0017の記載に基づき算出したものであ
る。
【0037】また、T80は、日本光学硝子工業会規格
「光学ガラスの着色度の測定方法」JOGIS02−
1975に準じ、平行に対面を研磨した厚さ10±0.1m
mのガラスの分光透過率を測定し、反射損失を含む分光
透過率80%で透過する光線の波長を示したものであ
り、T80の数値が小さいほど。可視光線波長域の短波長
側における光線透過率が優れていることを意味する。
【0038】また、耐水性(級)は、日本光学硝子工業
会規格「光学ガラスの化学的耐久性の測定方法(粉末
法)」JOGIS06−1999に基づき、得られたガラス
を粒度425〜600μmに破砕し、破砕したガラス試
料を比重グラムとり、白金かごの中に入れ、白金かごを
純水の入った石英ガラス製丸底フラスコに入れて、沸騰
水浴中で60分間処理した後、処理後のガラス試料の減
量率(%)を算出して、減量率が0.05%未満の場合
を級1、減量率が0.05〜0.10%未満の場合を級
2、減量率が減量率が0.10〜0.25%未満の場合
を級3としたものであり、級の数が小さいほど、ガラス
の耐水性が優れていることを意味する。
【0039】また、リヒートテストは、横幅および厚さ
が15mmで長さが30mmの角柱としたガラス試料
を、耐火物上に載せて電気炉に入れて再加熱し、常温か
ら150分で各ガラス試料の転移温度(Tg)より25
0℃高い温度まで昇温し、その温度で30分間保温した
後、常温まで降温し、炉外に取り出し、内部を観察でき
るよう対向する二面を研磨したガラス試料を目視観察す
る方法で行い。ガラスに乳白および失透が認められず無
色透明なものを○とし、乳白または失透が認められたも
のを×として、リヒートテスト結果を示した。
【0040】
【表2】(質量%)
【0041】
【表3】(質量%)
【0042】
【表4】(質量%)
【0043】
【表5】(質量%)
【0044】表4〜表5に示したとおり、比較例(N
o.A)のガラスは、リヒートテストの結果、ガラスが
乳白し、リヒートプレス成形に適していない。また、比
較例(No.B)のガラスは、正の異常分散性を有して
おらず、耐水性が級2であり化学的耐久性が良好でな
い。また、比較例(No.C)のガラスは、リヒートテ
ストの結果、ガラスが乳白し、リヒートプレス成形に適
しておらず、耐水性が級3であり化学的耐久性が良好で
ない。また、比較例(No.D)のガラスは、上述した
ようにガラス全体が褐色となり、無色透明であることが
要求される光学ガラスとして使用することができない。
また、比較例(No.E)のガラスは、リヒートテスト
の結果、ガラスが乳白し、リヒートプレス成形に適して
おらず、耐水性が級2であり化学的耐久性が良好でな
く、T80が400nmであり、可視光線波長域の短波長
側における光線透過率が良好でない。また、比較例(N
o.F)のガラスは、耐水性が級3であり化学的耐久性
が良好でない。
【0045】一方、表2〜表3に示したとおり、本発明
の正の異常分散性を有する光学ガラスの実施例(No.
1〜No.8)は、いずれも、屈折率(nd)が1.4
8〜1.55未満、アッベ数(νd)が45〜55の範
囲内の光学定数を有し、異常分散性を示すΔθg,Fの
値が+0.0010以上であり、正の異常分散性を有し
ている。また、T80が390nm以下であり可視光線波
長域の短波長側における光線透過率が優れており、耐水
性が級1であって化学的耐久性が優れており、リヒート
テストの結果、乳白および失透が認められず無色透明で
あり、リヒートプレス成形に適している。比較例(N
o.A〜No.F)と較べて、光線透過率、化学的耐久
性およびリヒートテストの結果のうち少なくとも1以上
の点において優れている。
【0046】なお、表2〜表3に示した本発明にかかる
実施例のガラスは、いずれも、酸化物、炭酸塩、硝酸
塩、弗素化合物および水酸化物等の通常の光学ガラス用
の原料を表2〜表3に示した組成になるように秤量、混
合した後、白金製のるつぼに投入し、組成による溶融性
の相違に応じて、1300〜1500℃の温度で3〜4
時間、溶融し、攪拌して均質化した後、降温して金型等
に鋳込み、冷却することにより容易に得ることができ
た。
【0047】
【発明の効果】以上、述べたとおり本発明にかかる正の
異常分散性を有する光学ガラスは、特定組成範囲のSi
2−B23−TiO2−Nb25−Al23−WO3
2O−弗素系組成のガラスであるから、正の異常分散
性を示すΔθg,Fの値が+0.0010以上であり、
光学機器等の光学系のレンズ等として使用して二次スペ
クトルを補正するために有用であり、また、耐乳白性お
よび耐失透性が優れているため、リヒートプレス成形に
使用するのに好適である。さらに、高品質な光学ガラス
に要求される化学的耐久性および光線透過性が優れてい
ることに加えて、ガラス溶融中に白金が合金化すること
なく、安全に生産することができ、かつ、環境汚染物質
であるPbOおよびAs23を含有していないという利
点があり、産業上非常に有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4G062 AA04 BB01 DA05 DA06 DB03 DB04 DC03 DD01 DE01 DF01 EA01 EB01 EB02 EB03 EC04 ED01 ED02 ED03 EE01 EE02 EE03 EF01 EF02 EF03 EG01 EG02 EG03 FA01 FB03 FB04 FC01 FD01 FE01 FF01 FG02 FG03 FH01 FJ01 FK01 FL01 GA01 GA10 GB01 GC01 GD01 GE01 GE03 HH01 HH03 HH05 HH08 HH09 HH11 HH13 HH15 HH17 JJ01 JJ03 JJ04 JJ05 JJ07 JJ10 KK01 KK03 KK05 KK07 KK10 MM02 NN01 NN34

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】質量%で、SiO2 40〜60%、B23
    3〜9%、TiO2 3〜15%、Nb25 0.1〜
    5.0%、Al23 3〜15%、WO3 0.5〜5.
    0%、MgO 0〜3%、CaO 0〜3%、SrO 0
    〜3%、BaO 0〜3%、K2O 10%を超え21%
    まで、Na2O 0〜10%、Sb23 0〜1%および
    上記各金属元素の一種またはニ種以上の酸化物の一部ま
    たは全部と置換した弗化物のFとしての合計量3〜10
    %を含有し、不純物としての不可避的な混入を除きPb
    OおよびAs23を含有せず、屈折率(nd)が1.4
    8〜1.55未満、アッベ数(νd)が45〜55の範
    囲の光学定数を有し、異常分散性を示すΔθg,Fの値
    が+0.0010以上であることを特徴とする正の異常
    分散性を有する光学ガラス。
  2. 【請求項2】質量%で、SiO2 40〜60%、B23
    3〜9%、TiO2 3〜15%、Nb25 0.1〜
    5.0%、Al23 3〜15%、WO3 0.5〜5.
    0%、ただし、TiO2+WO3 4〜20%、MgO 0
    〜3%、CaO 0〜3%、SrO 0〜3%、BaO
    0〜3%、K2O 10%を超え21%まで、Na2O 0
    〜10%、ただし、K2O+Na2O 25%未満、Sb2
    3 0〜1%および上記各金属元素の一種またはニ種以
    上の酸化物の一部または全部と置換した弗化物のFとし
    ての合計量3〜10%を含有し、不純物としての不可避
    的な混入を除きPbOおよびAs23を含有せず、屈折
    率(nd)が1.48〜1.55未満、アッベ数(ν
    d)が45〜55の範囲の光学定数を有し、異常分散性
    を示すΔθg,Fの値が+0.0010以上であること
    を特徴とする正の異常分散性を有する光学ガラス。
  3. 【請求項3】ガラスを再加熱し、ガラスの転移温度(T
    g)よりも200〜300℃高い温度域で30分間保温
    して、ガラスが乳白および失透しないことを特徴とする
    請求項1または2に記載の正の異常分散性を有する光学
    ガラス。
  4. 【請求項4】ガラスを再加熱し、ガラスの転移温度(T
    g)よりも200〜250℃高い温度域で30分間保温
    して、ガラスが乳白および失透しないことを特徴とする
    請求項1または2に記載の正の異常分散性を有する光学
    ガラス。
  5. 【請求項5】日本光学硝子工業会規格JOGIS06
    -1999「光学ガラスの化学的耐久性の測定方法(粉末
    法)」により測定するガラスの耐水性が級1であること
    を特徴とする請求項1、2、3または4に記載の正の異
    常分散性を有する光学ガラス。
  6. 【請求項6】厚さ10±0.1mmのガラスを、反射損
    失を含む分光透過率80%で透過する光線の波長が39
    0nm以下であることを特徴とする請求項1、2、3、
    4または5に記載の正の異常分散性を有する光学ガラ
    ス。
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